説明

異常検出装置

【課題】 検査対象物が発生する異常音または異常振動を検出する異常検出装置を提供する。
【解決手段】 本発明は圧力容器のエア漏れ検査の際、静寂時に繰り返し発生する音から逆フィルタ係数群を算出して記憶しておき、検査時に検査対象物が発生する音からディジタル化された時系列信号が得られると、前記逆フィルタ係数群で前記時系列信号をフィルタリング処理し、検査対象物の正常動作時に発生する音または振動を抑制して、検査対象物から発生する異常音を検出するように構成した異常検出装置において、逆フィルタ係数群の個数に応じて逆フィルタを構成する累積積和演算部8cの出力値をフィードバックして縦続フィルタリング処理を行うように構成されている。そのため、現場作業中に新たな種類の正常音が発生しても新たな逆フィルタ係数群を算出して追加記憶するだけで済み、現場作業に適した装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エア漏れ検査を行う圧力容器、回転部を備えた機械装置等の検査対象物が発生する異常音または異常振動を検出する異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械装置等から発生する異常音を検出する装置としては、特開2003−156387号公報に記載の異常音検出装置が知られている。この装置は、走行車両の周囲の騒音や正常走行時の車両走行音の影響を除去するため、騒音抑制用の逆フィルタが備えられている。この逆フィルタでは、走行車両音がFFT(高速フーリエ変換)処理されて得られる時系列信号にフィルタリング処理が施され、周囲の騒音や正常走行時の走行音を抑制した出力信号が得られ、この出力信号から異常音の有無が判定されている。また、このフィルタリング処理技術を利用した装置として、特開2004−47224号公報に記載の異常検出装置がある。この装置は、検査対象物の正常動作時に繰り返し、または非定常時に発生する音からそれぞれ第1逆フィルタ係数群、第2逆フィルタ係数群を算出するように構成されている。しかも、この装置はこれら逆フィルタ係数群によりそれぞれ逆フィルタを構成し、検査時に取り込まれる音響信号をフィルタリング処理して、検査対象物の正常動作時に繰り返し、または非定常時に発生する音を抑制した出力信号を得て、異常音の有無を判定するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003-156387号公報
【特許文献2】特開2006-47225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら装置では、抑制したい音の種類だけ、逆フィルタが必要となることから、装置のコストアップを招くばかりか、この装置を作業現場に設置した後、新たな種類の音が発生することがあって、これを抑制したい時には、逆フィルタを増設するために装置の大がかりな改造が必要となる等の欠点が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決を目的として、本発明は検査対象物の正常動作時に繰り返し発生する音または振動から逆フィルタ係数群を算出して記憶しておき、検査時に検査対象物が発生する音または振動からディジタル化された時系列信号が得られると、前記逆フィルタ係数群から値を呼出し、これを順次逆フィルタを構成する累積積和演算部に設定して前記時系列信号をフィルタリング処理し、検査対象物の正常動作時に発生する音または振動を抑制して、検査対象物から発生する異常音または異常振動を検出するように構成した異常検出装置において、逆フィルタ係数群の個数に応じて累積積和演算部の出力値をフィードバックして順次複数の逆フィルタ係数群でフィルタリング処理を行い、その出力値から検査対象物の異常音または異常振動を検出するように構成されている。
【0006】
また、前記逆フィルタ係数群は検査対象物の正常動作時で非定常時に発生する外乱音または外乱振動からも算出されてもよく、しかもこの逆フィルタ係数群はその個数分累積積和演算部に設定され、前記時系列信号をフィルタリング処理して、フィルタリング処理後の各出力値から検査対象物の異常音または異常振動を検出するように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、検査対象物が正常に動作する時に、複数種類の正常音が繰り返し発生しても、これらに対応して逆フィルタ係数群を算出できるばかりか、これら逆フィルタ係数群の個数に対応して、累積積和演算部の出力値をフィードバックするだけで、複数の逆フィルタ係数群で縦続フィルタリング処理を行うことができ、複数種類の正常音を抑制した出力値を得ることができる。そのため、部品点数が少なくて済み、安価な装置を提供できる。また、現場作業中に新たな種類の正常音または正常振動が発生してもこれらから新たな逆フィルタ係数群を算出してこれらを追加記憶するだけでこの新たな正常音を抑制した出力値を得ることができる。そのため、新たな正常音または正常振動が発生する度に、累積積和演算部を増やす必要がなく、現場作業に適した装置を提供することができる。
【0008】
また、逆フィルタ係数群が検査対象物の正常動作時で非定常時に発生する外乱音または外乱振動から複数種類算出される場合には、これら逆フィルタ係数群をその個数回累積積和演算部に設定して並列フィルタリング処理を行うことができ、各種類の外乱音や外乱振動を抑制した出力値を得て、異常音の有無判定ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1は検査対象物の一例である圧力容器(図示せず)のエア漏れを検出する異常検出装置であり、圧力容器が1個毎搬送される検査位置近くに配置されている。この異常検出装置1は圧力容器の内部に高圧のエアを充填する機構(図示せず)を備えており、圧力容器へのエア充填が完了すると、エア充填完了信号を後記CPU5に出力するように構成されている。また、前記圧力容器の通過に支障のない位置で圧力容器に近接する位置にはマイクロフォン2が設置されており、圧力容器の周辺の音が音響信号として取り込まれるように構成されている。このマイクロフォン2には前記音響信号を所定サンプリング時間毎にディジタル化して時系列信号に変換するA/D変換部3が接続されており、さらにこのA/D変換部3には信号処理部4が接続されている。前記信号処理部4は、前記時系列信号を取り込むように接続されたCPU5、このCPU5に接続された操作部6、各種情報を記憶する記憶部7、前記時系列信号をフィルタリング処理する逆フィルタ部8、正常表示、異常表示等各種情報を表示する表示部9からなっている。
【0010】
前記逆フィルタ部8は、図2に示すように後記するS個の第1逆フィルタ係数群C1(s)とP個の第2逆フィルタ係数群C2(p)とを記憶する係数メモリ部8aを有し、各係数群は、それぞれメモリ群別に記憶されるように構成されている。また、前記逆フィルタ部8は前記時系列信号の値を現在値Xtから遡ってM個分記憶するメモリ群W(1)が配置された演算メモリ部8bを有し、しかもこの演算メモリ部8bには後記累積積和演算部8cの出力値を前記メモリ群W(1)と同個数記憶するメモリ群W(s)が第1逆フィルタ係数群C1(s)の個数Sだけ、すなわちメモリ群W(2)からメモリ群W(S+1)までのS個設けられている(図8参照)。さらに、前記逆フィルタ部8は逆フィルタを構成する累積積和演算部8cを有し、累積積和演算部8cから出力される出力値Y(0)およびY(k)が出力メモリ部8dに送られ、一時記憶されるように構成されている。しかも、前記逆フィルタ部8は演算制御部8eを有し、この演算制御部8eにより各部に指令信号が送られるように構成されている。
【0011】
前記操作部6は、正常音サンプリングモード、外乱音サンプリングモードおよび検査モードを選択でき、正常音サンプリングモード時、外乱音サンプリングモード時にはそれぞれ正常音音響信号、外乱音音響信号がCPU5の入力部に送られるように構成されている。また、この操作部6には呼び出しキー(図示せず)が配置され、この呼び出しキーから呼び出し信号がCPU5の入力部に送られるように構成されている。さらに、操作部6には記憶指令キー(図示せず)が配置されており、この記憶指令キーから記憶指令信号がCPU5の入力部に送られるように構成されている。しかも、前記操作部6には基準音追加キー(図示せず)が配置されており、基準音追加キーからの基準音追加指令信号がCPU5の入力部に送られるように構成されている。
【0012】
前記記憶部7は、正常音サンプリングモード時、外乱音サンプリングモード時、それぞれ複数種類の正常音音響信号からディジタル化された時系列信号、複数種類の外乱音音響信号からディジタル化された時系列信号を一時記憶する一方、これらから得られる正常音基準時系列信号および外乱音基準時系列信号を記憶するように構成されている。
【0013】
前記CPU5は、図3に示すように正常音サンプリングモード時には(係数メモリ部をリセット)、
1)A/D変換部でディジタル化された時系列信号を正常音音響信号として所定分割時間取り込み、これを一時記憶する(記憶順に)。
2)所定時間経過したか否かを判断し、所定時間経過してない時、1)に戻る。
3)s=1
4)呼び出しキーから出力される呼び出し信号を待ち、これがない時、11)にジャンプする。
5)正常音音響信号として記憶された時系列信号を呼出し(記憶順に)、これを表示部に表示する。
6)記憶指令キーからの記憶指令信号を待ち、これがない時、4)に戻る。
7)呼出された時系列信号からM+1個以上の値を選択してこれらを正常音基準時系列信号として記憶部に記憶する。
8)記憶された正常音基準時系列信号からM個の線形予測係数を順次算出する。
9)M個の線形予測係数を第1逆フィルタ係数群C1(s)として係数メモリ部で記憶する。
10)s=s+1
11)正常音サンプリングモードか否かを判断し、正常音サンプリングモードの時、4)に戻る。
12)sを正常音サンプル個数Sとして記憶する。
13)エンド
となるように構成されている。
【0014】
また、CPU5は図4に示すように外乱音サンプリングモード時には、
1)A/D変換部でディジタル化された時系列信号を外乱音音響信号として所定分割時間取り込み、これを一時記憶する(記憶順に)。
2)所定時間経過したか否かを判断し、所定時間経過してない時、1)に戻る。
3)p=1
4)呼び出しキーから出力される呼び出し信号を待ち、これがない時、11)にジャンプする。
5)外乱音音響信号として記憶された時系列信号を呼出し(記憶順に)、これを表示部に表示する。
6)記憶指令キーからの記憶指令信号を待ち、これがない時、4)に戻る。
7)呼出された時系列信号からM+1個の値を外乱音基準時系列信号として記憶部に記憶する。
8)外乱音基準時系列信号からM個の線形予測係数を算出する。
9)M個の線形予測係数を第2逆フィルタ係数群C2(p)として係数メモリ部で記憶する。
10)p=p+1
11)外乱音サンプリングモードか否かを判断し、外乱音サンプリングモードの時、4)に戻る。
12)pを外乱音サンプル個数Pとして記憶する。
13)エンド
となるように構成されている。
【0015】
さらに、CPU5は図5に示すように、検査モードになると、
1)エア充填完了信号を待つ。
2)演算制御部に演算開始指令信号を出力する。
3)演算制御部からの読取り指令信号を待つ。
4)出力メモリ部の出力値Y(0)を読み込む。
5)Y(0)≧所定レベルか否かを判定し、これが真である時、11)にジャンプする。6)k=1
7)出力メモリ部の出力値Y(k)を読み込む。
8)Y(k)≧所定レベルか否かを判定し、これが真である時、11)にジャンプする。
9)k=Pか否かを判定し、これが真でない時、k=k+1として、7)に戻る。
10)正常音検出信号を表示部へ出力するとともに、エア供給停止指令信号を出力して、 12)にジャンプする。
11)異常音検出信号を表示部へ出力するとともに、エア供給停止指令信号を出力する。
12)検査モードか否かを判断し、検査モードである時、表示リセット信号を出力して、 1)に戻る。
13)エンド
となるように構成されている。
【0016】
なお、CPU5は基準音追加指令信号を待ち、この指令信号を受けて、正常音サンプリングモード時の初期値設定s=1をs=S+1に、また外乱音サンプリングモード時の初期値設定p=1をp=P+1に変更するように構成されている。
【0017】
前記逆フィルタ部8の演算制御部8eは、操作部6で検査モードが選択されると、図6に示すように、
1)駆動指令信号を待つ。
2)s=1
3)A/D変換部から得られる時系列信号のサンプリング時間の経過を待つ。
4)演算メモリ部のメモリ群W(s)のシフト指令信号を出力する。
※W(s)は、第s番メモリ群を意味する。
5)時系列信号の値Xtを演算メモリ部のメモリ群W(s、0)にセット指令信号を出力する。
※W(s,0)は第s番メモリ群の第0番目の値を示す。
6)演算メモリ部のメモリ群W(s+1)のシフト指令信号を出力する。
7)累積積和演算部に演算指令信号を出力する。
(累積積和演算部は、次式を演算)
(数1)
【0018】

W(s+1,0)= Σ C1(s,n)W(s,n)
n=0
*C1(s,n)は、係数メモリ部の第sメモリ群の第n番目の値を示す。
W(s,n)は、演算メモリ部の第sメモリ群の第n番目の値を示す。
【0019】
8)s=Sか否かを判断し、これが真でない時、s=s+1として、4)に戻る。
9)演算メモリ部のメモリ群W(s+1,0)を出力メモリ部の出力値Y(0)に記憶する。
10)p=1
11)累積積和演算部に演算指令信号を出力する。
(累積積和演算部は、次式を演算)
(数2)
【0020】

Y(p)= Σ C2(p,n)W(S+1,n)
n=0
【0021】
12)p=Pか否かを判断し、これが真でない時、p=p+1として、11)に戻る。
13)CPUへ出力メモリ部の読込指令信号を出力する。
14)検査モードか否かを判断し、これが真である時、2)に戻る。
15)エンド
となるように構成されている。
【0022】
上記異常検出装置では、所定検査位置に圧力容器が搬送され、これにエア漏れ検出用の高圧エアが充填された後、操作部6で正常音サンプリングモードが選択される。この状態で、静寂時の圧力容器周辺の音がマイクロフォン2により図9(a)に示す音響信号として取り込まれ、この音響信号がA/D変換部3によりサンプリング時間毎にディジタル化されて、図9(b)に示す時系列信号に変換される。この時系列信号が所定分割時間取り込まれ、一時記憶される。この作業が所定時間繰り返された後、操作部6の呼び出しキーが押され、この呼び出しキーからの呼び出し信号により、一時記憶された時系列信号が記憶順に呼出されて表示部9で表示される。作業者が表示部9に表示された時系列信号を見ながら、この信号が正常動作時に繰り返し発生する音の波形であるか否かを判断し、これが真でない時には、呼び出しキーにより次の時系列信号が呼出される。
【0023】
一方、前記信号が正常動作時に繰り返し発生する音の波形である時には、作業者が操作部6の記憶指令キーを押す。これにより、記憶指令信号が出力され、呼出された時系列信号からM+1個以上の値が選択されてこれらが正常音基準時系列信号として記憶部7に記憶される。また、この正常音基準時系列信号からM個の線形予測係数が算出され、この線形予測係数が第1逆フィルタ係数群C1(s)として、係数メモリ部8aの第sメモリ群に記憶される(図7参照)。静寂時の圧力容器周辺の音が各種ある場合にも、同様に正常音サンプリングモードが終了するまで第1逆フィルタ係数群C1(s)が算出され、その種類に応じた個数Sだけ係数メモリ部8aに記憶される。
【0024】
また、正常動作時の圧力容器周辺で非定常時に発生する外乱音があらかじめ予想される時間帯に、操作部6で外乱音サンプリングモードが選択され、外乱音がA/D変換部3でディジタル化されて時系列信号に変換される。この時系列信号が所定分割時間取り込まれ、一時記憶される。この作業が所定時間繰り返された後、操作部6の呼び出しキーが押され、この呼び出しキーからの呼び出し信号により、一時記憶された時系列信号が呼出され、これが表示部9で表示される。作業者が表示部9に表示された時系列信号を見ながら、この信号が正常動作時に非定常時に発生する外乱音の波形であるか否かを判断し、これが真でない時には、呼び出しキーにより次の時系列信号が呼出される。
【0025】
前記信号が正常動作時で非定常に発生する外乱音である時には、作業者が操作部6の記憶指令キーを押す。これにより、記憶指令信号が出力され、呼出された時系列信号からM+1個以上の値が選択されてこれらが外乱音基準時系列信号として記憶部7に記憶される。また、この外乱音基準時系列信号からM個の線形予測係数が算出され、この線形予測係数が第2逆フィルタ係数群C2(p)として係数メモリ部8aに記憶される(図7参照)。正常動作時で非定常時に発生する圧力容器周辺の外乱音が各種ある場合にも、同様に外乱音サンプリングモードが終了するまで第2逆フィルタ係数群C2(p)が算出され、その種類に応じた個数Pだけ係数メモリ部8aに記憶される。
【0026】
その後、圧力容器が所定検査位置に搬送され、これにエア漏れ検出用の高圧エアが充填され、エア充填完了信号が出力された後、検査モードが選択されると、圧力容器周辺の音がマイクロフォン2により音響信号として取り込まれる。この音響信号がA/D変換部3でディジタル化され、所定サンプリング時間毎に時系列信号の現在値Xtが演算メモリ部8bのメモリ群W(1,0)にセットされる。その後、所定サンプリング時間毎に時系列信号の値が加わると、演算メモリ部8bのメモリ群W(1)がシフトされ、前回の値がW(1,0)からW(1,1)へ移動した後、時系列信号の値が現在値Xtとして演算メモリ部8bのメモリ群W(1,0)に記憶される(図8参照)。次に演算メモリ部8bの第2メモリ群W(2)がシフトされ、前回の値がW(2,0)からW(2,1)に移動し、順次M個の値が移動する。続いて、前記サンプリング時間内に演算メモリ部8bの第1メモリ群の値と、これに対応する係数メモリ部8aの第1メモリ群に記憶された第1逆フィルタ係数群C1(1)の値とが順次呼出され、累積積和演算部8cで、次式
(数1)
【0027】

W(s+1,0)= Σ C1(s,n)W(s,n)
n=0
【0028】
の演算が行われる。そのため、累積積和演算部8cの出力値が演算メモリ部8bの第2メモリ群W(2)の第1番目の値としてセットされ、これが第1逆フィルタ係数群C1(s)の個数Sだけ、繰り返されて、S回の縦続フィルタリング処理が行われる。この縦続フィルタリング処理により、正常動作時に発生する複数種類の音を抑制した出力値Y(0)が出力メモリ部8dに記憶される。
【0029】
この縦続フィルタリング処理が終了すると、演算メモリ部8bのメモリ群W(S+1)の各値と第2逆フィルタ係数群C2(p)とが順次呼出され、累積積和演算部8cで、次式
(数2)
【0030】

Y(p)= Σ C2(p,n)W(S+1,n)
n=0
【0031】
の演算が行われる。そのため、前記演算メモリ部8bのメモリ群W(S+1)の値が第2逆フィルタ係数群C2(1)でフィルタリング処理されて、フィルタリング処理後の値Y(1)が出力メモリ部8dに記憶される。同様に、係数メモリ部8aに記憶された第2逆フィルタ係数群C2(p)の個数Pだけ、上記動作が繰り返されて、フィルタリング処理後の値Y(p)が出力メモリ部8dに記憶される。P個すべての第2逆フィルタ係数群C2(p)に対してフィルタリング処理が繰り返されてフィルタリング処理が施されると、正常動作時に非定常に発生する複数種類の外乱音を抑制した出力値Y(1,2,……P)が出力メモリ部8dに記憶される。
【0032】
前記累積積和演算部8cの演算が終了し、出力メモリ部8dの読取り指令信号がCPU5に出力されると、出力メモリ部8dに記憶された値Y(0)が読み込まれる。この値Y(0)が所定レベル以下にある時は、前記現在値XtからM個分前の時系列信号が複数種類の正常時基準時系列信号と近似と判断される。続いて、出力メモリ部8dに記憶された値Y(1)が読み込まれ、同様に判定が行われる。この判定で、前記値Y(1)の値が所定レベル以下である時には、前記現在値XtからM個分前の時系列信号が第1番目の外乱音基準時系列信号に近似すると判断され、これが出力メモリ部8dに記憶されたP個の値Y(2,3,……P)について繰り返される。これら判定でいずれの値も所定レベル以下である時には、異常音がないとして正常音検出が表示部9で表示される。その後、検査モードが継続している時には、次回の作業に備える。
【0033】
一方、出力メモリ部8dに記憶された値Y(0,1,……P)のうち、いずれかの値が所定レベル以上になると、前記現在値XtからM個分前の時系列信号が複数種類の正常音基準時系列信号または外乱音基準時系列信号とは近似しないと判断され、異常音として処理され、異常音検出が表示部9で表示される。その後、検査モードが継続している時には、同様に次回の作業に備える。
【0034】
前記異常検出装置1が作動中、正常動作時に繰り返し発生する新たな音が発生した場合には、操作部6で基準音追加キーが選択された状態で正常音サンプリングモードが選択される。そのため、この基準音追加キーからの基準音追加指令信号により、正常音サンプリングモード時の動作プログラム中、初期値設定s=1がs=S+1に変更され、新たな第1逆フィルタ係数C1(s)が算出され、これらが係数メモリ部8aに追加して記憶される。また、基準音追加キーが押された状態で外乱音サンプリングモードが選択されると、同様に初期値設定p=1がp=P+1に変更されて新たな第2逆フィルタ係数C2(p)が算出され、これらが係数メモリ部8aに追加して記憶される。その後、前述の検査モード時の動作プログラムが実行され、これら新たな正常音、外乱音も抑制した出力値から異常音検出を行うことができる。
【0035】
なお、本実施態様では検査対象物は圧力容器に限定されているが、モータ等の回転機等他の機器にも適用することができる。また、本実施態様では音響信号に限定されているが、これを振動センサから得られる振動信号に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る逆フィルタ部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の正常音サンプリングモード時の動作を説明するフローチャートで ある。
【図4】本発明の外乱音サンプリングモード時の動作を説明するフローチャートで ある。
【図5】本発明の検査モード時の動作を説明するフローチャートである。
【図6】本発明に係る演算制御部の動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明に係る係数メモリ部のメモリマップである。
【図8】本発明に係る演算メモリ部のメモリマップである。
【図9】正常音サンプリングモード時に図1の各点に現われる信号波形図である。
【符号の説明】
【0037】
1 異常検出装置
2 マイクロフォン
3 A/D変換部
4 信号処理部
5 CPU
6 操作部
7 記憶部
8 逆フィルタ部
8a 係数メモリ部
8b 演算メモリ部
8c 累積積和演算部
8d 出力メモリ部
8e 演算制御部
9 表示部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の正常動作時に繰り返し発生する音または振動から逆フィルタ係数群を算出して記憶しておき、検査時に検査対象物が発生する音または振動からディジタル化された時系列信号が得られると、前記逆フィルタ係数群から値を呼出し、これを順次逆フィルタを構成する累積積和演算部に設定して前記時系列信号をフィルタリング処理し、検査対象物の正常動作時に発生する音または振動を抑制して、検査対象物から発生する異常音または異常振動を検出するように構成した異常検出装置において、
逆フィルタ係数群の個数に応じて累積積和演算部の出力値をフィードバックして順次複数の逆フィルタ係数群でフィルタリング処理を行い、その出力値から検査対象物の異常音または異常振動を検出するように構成したことを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
逆フィルタ係数群は、検査対象物の正常動作時で非定常時に発生する外乱音または外乱振動からも算出され、しかもこの逆フィルタ係数群はその個数分累積積和演算部に設定されて前記時系列信号をフィルタリング処理して、フィルタリング処理後の各出力値から検査対象物の異常音または異常振動を検出するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−156732(P2009−156732A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335815(P2007−335815)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】