異常監視装置
【課題】従来技術では対応不可能な各種の異常を検出可能として信頼性を高め、マイコンが有する機能を利用して安価な異常監視装置を提供する。
【解決手段】エンコーダ10からの二相の位置検出信号が、ケーブル20等の配線系統を介しアナログ信号として制御装置30に入力される。制御装置30内のマイコン33は、アナログ入力信号の電圧レベルが所定の範囲内に存在する場合に、エンコーダや配線系統の異常を検出するレベル異常検出手段333A,333Bと、二相のアナログ入力信号に対応するディジタル信号のパルス数の差が所定の閾値以上である場合に、エンコーダ等の異常を検出するパルス数比較異常検出手段336と、二相のディジタル信号の合成信号のパルス幅が過去の制御周期のパルス幅と異なることによりエンコーダ等の異常を検出するパルス幅比較異常検出手段339と、を備える。
【解決手段】エンコーダ10からの二相の位置検出信号が、ケーブル20等の配線系統を介しアナログ信号として制御装置30に入力される。制御装置30内のマイコン33は、アナログ入力信号の電圧レベルが所定の範囲内に存在する場合に、エンコーダや配線系統の異常を検出するレベル異常検出手段333A,333Bと、二相のアナログ入力信号に対応するディジタル信号のパルス数の差が所定の閾値以上である場合に、エンコーダ等の異常を検出するパルス数比較異常検出手段336と、二相のディジタル信号の合成信号のパルス幅が過去の制御周期のパルス幅と異なることによりエンコーダ等の異常を検出するパルス幅比較異常検出手段339と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインバータやサーボシステム等の電動機を駆動する電力変換器において、パルスエンコーダ(以下、単にエンコーダともいう)の異常や配線系統の異常を検出し、安全機能を実現するための異常監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の出力軸に取り付けたパルスエンコーダの出力信号から電動機速度や回転子位置を演算し、この演算値をフィードバックして電動機を可変速駆動するインバータやサーボシステムが普及している。これらの装置において、エンコーダの出力信号に異常があると正常な運転が困難になるため、従来より、エンコーダの異常や配線系統の異常を検出して運転を停止する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2008−232978号公報)には、異常監視のためにマイクロプロセッサの内部機能を利用することにより、部品数を少なくして回路を最小限化し、コストの低減を図った配線異常検出装置が開示されている。
この従来技術(便宜上、第1の従来技術という)では、まず、エンコーダの出力信号がアナログ信号として配線異常検出装置に入力される。そして、上記アナログ信号をA/D(アナログ/ディジタル)変換し、変換後の電圧レベルが、過渡状態を除いて所定の中間電圧レベルになっている場合に、信号系統に不完全接触や短絡が生じていると判断して異常を検出している。
以下、図16を参照しながら、この従来技術の回路構成及び動作を説明する。
【0004】
図16において、配線異常検出装置100は、マイクロプロセッサ120と、プログラムメモリ121と、AD変換器123と、定電圧電源回路130と、バッファアンプ135と、直列抵抗131a,131bと、フィルタコンデンサ132a,132bと、プルダウン抵抗134a,134bと、を備えている。なお、122はマイクロプロセッサ120内のメモリである。
また、110は電動機(図示せず)の回転角度を検出するためのロータリーエンコーダであり、このエンコーダ110は、回転角度検出信号として二相(A相,B相)の信号を出力する回転角度検出回路115と、A相,B相信号出力用トランジスタとしてのセンサスイッチ111a,111bと、ドロッパダイオード112a,112b,113a,113bと、ブリーダ抵抗114a,114bとから構成されている。
【0005】
更に、101は直流電源、102は電源スイッチ、103は接地線、104は電源線、105,106は信号線である。
また、エンコーダ110におけるA,BはA相信号,B相信号の出力端子であり、配線異常検出装置100におけるA1,A2はアナログ入力信号、マイクロプロセッサ120におけるD1,D2はセンサスイッチ111a,111bの開閉論理信号、Vmは監視電圧を示している。
【0006】
ロータリーエンコーダ110の動作としては、回転角度検出回路115の出力信号によりセンサスイッチ111a,111bがオンまたはオフすると、ドロッパダイオード112a,112b,113a,113b及びブリーダ抵抗114a,114bの作用により、電圧降下が発生する。この電圧降下による電圧をA相信号、B相信号として出力端子A,Bから出力させ、信号線105,106を介して配線異常検出装置100に入力することにより、以下に述べるような異常検出動作を行う。
【0007】
図17は、配線異常検出装置100に入力されるA相,B相のアナログ入力信号A1,A2の特性を示している。以下では、A相のアナログ入力信号A1の特性について説明するが、B相のアナログ入力信号A2についても全く同様の動作となる。
【0008】
センサスイッチ111aがオンすると、ドロッパダイオード112aのオン電圧降下により、図17の電圧レベルVLが検出される。一方、センサスイッチ111aがオフすると、ブリーダ抵抗114a及びドロッパダイオード113aの電圧降下により、電圧レベルVHが検出される。なお、実際には、ドロッパダイオード112a,113aの特性のバラツキを考慮して、電圧レベルVL,VHを中心とした一定範囲内をそれぞれ正常「L」レベル、正常「H」レベルとしている。
上記のように、アナログ入力信号の電圧レベルが「L」レベルか「H」レベルかを判定することで、回転角度検出用のパルスの有無を検出している。
このとき、例えば信号線105に断線やグランドとの地絡が発生していると、上述した電圧降下成分が検出されず、アナログ入力信号はグランドレベルに固定されるため、異常発生を検出することができる。
【0009】
また、エンコーダ110の出力端子Aが正側電源Vccと短絡した場合は、アナログ入力信号がVHよりも高い電圧レベルで固定されるため、同様に異常が発生したことを検出可能である。更に、正側電源Vccとグランドとの不完全接触や他の信号線との接触が発生すると、アナログ入力信号は図17の中間電圧レベル(論理判定レベル)Vs1またはVs2として検出され、これらの中間電圧レベルVs1またはVs2が一定期間継続した場合も異常と判断する。
【0010】
なお、センサスイッチ111aのオン・オフの切り替え時に、直列抵抗131a及びフィルタコンデンサ132aからなるローパスフィルタによってA相のアナログ入力信号A1の電圧波形がフィルタリングされる。このため、サンプルタイミングによっては、正常時でも中間電圧レベルVs1,Vs2が過渡的に検出されてしまい、結果として異常を誤検出するおそれがある。
上記の誤検出を防止するため、この従来技術では、中間電圧レベルVs1,Vs2が検出された場合に、詳細判定を実行し、この中間電圧レベルVs1,Vs2が過渡的に発生したものか一定期間継続して発生したものかを判断し、一定期間継続している場合には、前述した正側電源Vccとグランドとの不完全接触や他の信号線との接触による異常と判断している。
【0011】
なお、他の従来技術(便宜上、第2の従来技術という)として、エンコーダから出力される二相信号(位相が異なるA相信号及びB相信号)をA/D変換した後に個別のカウンタに入力して一定期間のパルス数をそれぞれカウントし、これらのパルス数に基づいて異常を検出する方法が知られている。
例えば、電動機が回転していると、その回転速度に応じたパルス数がA相信号、B相信号として計測されるが、一方の相の信号線が断線していたり電源線や接地線と接触していると、各相のパルス数に誤差が発生する。従って、各相のパルス数を比較することにより異常を検出することができる。また、各相のパルス数に相当する速度検出値を現在の速度指令値等と比較することで、一方の相だけでなく、二相の同時異常も検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−232978号公報(段落[0010]〜[0017]、図1,図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
第1の従来技術によれば、電動機が停止している場合でも、配線異常検出装置100に入力されるアナログ信号の電圧レベルに応じて配線異常を検出することができる。しかし、電動機の運転中には、配線異常の判断が困難になり、配線が正常な場合でも誤って異常と判断してしまうおそれがある。その理由は次の通りである。
【0014】
一般にエンコーダは、電動機等の回転体の一機械周期(回転電動機の場合は一回転)当たりの出力信号数が決められており、高速になると出力信号の間隔が短くなる。一方、マイクロプロセッサ等の演算処理装置は、通常、一定周期で演算処理を行うため、エンコーダからの出力信号の間隔が演算処理装置の演算周期よりも大幅に短くなることが往々にしてある。
このとき、演算処理装置側のAD変換器によるサンプルタイミングがエンコーダの出力信号変化時に偶然一致してしまうと、前述したような中間電圧レベルが連続的に検出されてしまい、配線系統が正常であるにもかかわらず誤って異常と判断する場合がある。
【0015】
図18は、上述した誤判断時におけるエンコーダ出力信号、AD変換サンプルタイミング、電源電圧Vc、アナログ入力信号の電圧レベルの検出値、及びグランドレベルを示すタイミングチャートである。
図示するように、AD変換サンプルタイミングの周期がエンコーダ出力信号の周期に対して特定倍になった時に、各サンプルタイミングにおける検出値が等しくなり、これによってアナログ入力信号の電圧レベルが中間電圧レベルで固定されている(すなわち異常である)と誤認する可能性がある。
このような誤判断を防いで装置の信頼性を高めるためには、サンプルタイミングの周期が短い高速なAD変換器を用いることが有効であるが、高速のAD変換器は一般に高価であるため、装置のコストが上昇するという問題がある。
【0016】
これに対し、第2の従来技術では、二相のパルス数に基づいて異常を検出する原理上、電動機が停止している状態では異常検出が不可能である。従って、電動機停止時における異常検出手段を別途用意する必要があり、これがコスト上昇の原因となる。
【0017】
また、第1の従来技術と第2の従来技術とを組み合わせれば、電動機運転時、停止時の両方に対応可能な異常検出装置を構成することも可能であるが、以下のようなケースに対しては異常検出が不可能である。
(1)エンコーダの二相の出力信号の位相が異常であるケース。
例えば、信号線が部分的に短絡することにより、二相の出力信号の間隔が一時的に変動する場合。
この場合は、電動機の運転によりエンコーダの出力信号が発生している時にしか異常を検出できず、また、第2の従来技術のように、単にパルスの数を比較するだけでは検出することができない。
(2)本来であれば異常によって二相のパルス数に差があるべきであるにもかかわらず、ノイズ等で出力信号が発振し、たまたま二相のパルス数が一致する場合。
上記以外にも、異常時に他の原因によってパルス数に差が生じないこともあるので、異常を検出できない場合がある。
【0018】
そこで、本発明の目的は、従来技術では対応不可能な各種の異常を検出可能とした信頼性の高い異常監視装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、マイクロコンピュータ(以下、単にマイコンともいう)等の演算処理装置が有する機能を利用して安価な異常監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明では、回転体の位置を検出するエンコーダの出力信号をアナログ信号として制御装置に入力し、回転体の停止時に発生する異常をアナログ入力信号の電圧レベルに基づいて検出する。また、回転体の回転時には、少なくとも二相のアナログ入力信号を変換してなるディジタル信号を用いて、各相の一定周期内のパルス数の差を所定の閾値と比較する。更に、位相が異なる二以上のディジタル信号を合成して得た合成信号のパルス幅、または、各相のディジタル信号のパルス幅をそれぞれ監視して異常を検出する。
【0020】
すなわち、本発明に係る異常監視装置では、エンコーダから出力される例えば二相の位置検出信号が、ケーブル等の配線系統を介しアナログ信号として制御装置に入力される。
この制御装置は、エンコーダまたは配線系統の異常を検出するための第1,第2,第3の異常検出手段、または、第1,第2,第4の異常検出手段を備えており、これらの異常検出手段は、例えば演算処理装置としてのマイコンにより実現される。
【0021】
第1の異常検出手段は、アナログ入力信号をA/D変換して得たディジタル信号からアナログ入力信号の電圧レベルを検出し、この電圧レベルが所定の範囲内に存在する場合に、エンコーダまたは配線系統に異常があると判断する。
第2の異常検出手段は、二相のアナログ入力信号に対応するディジタル信号のパルス数の差を求め、この差が所定の閾値以上である場合に、エンコーダまたは配線系統に異常があると判断する。
更に、第3の異常検出手段は、第2の異常検出手段で用いた二相のディジタル信号を合成し、この合成信号のパルス幅が過去のパルス幅と異なることをもってエンコーダまたは配線系統に異常があると判断する。
第4の異常検出手段は、二相のディジタル信号のパルス幅が、それぞれの過去のパルス幅と異なることにより、あるいは、他相のパルス幅と互いに異なることにより、エンコーダまたは配線系統に異常があると判断する。
【0022】
第1の異常検出手段によれば、回転体の停止中における異常を検出することができ、第2,第3または第4の異常検出手段によれば、回転体の回転時における異常を検出することができる。
【0023】
なお、制御装置は、アナログ入力信号の電圧レベルが、エンコーダの出力が「High」レベルの時には電源電圧からバイアス分を減算したアナログハイレベルとなり、かつ、エンコーダの出力が「Low」レベルの時にはグランドレベルにバイアス分を加算したアナログローレベルとなるバイアス発生手段を備えている。このようなバイアス発生手段は、例えば電源線、信号線及び接地線の間に接続された複数の分圧抵抗により実現可能である。
そして、第1の異常検出手段は、アナログ入力信号の電圧レベルが、アナログハイレベルとアナログローレベルとの間に存在する場合には信号線または電源線の断線と判断する。また、アナログ入力信号の電圧レベルが、アナログハイレベルよりも電源電圧に近い場合には、信号線が電源線と短絡していると判断し、アナログ入力信号の電圧レベルが、アナログローレベルよりもグランドレベルに近い場合には、信号線が地絡していると判断する。
【0024】
第2の異常検出手段は、二相のディジタル信号のパルスのエッジを検出してパルス数をそれぞれ求め、これらのパルス数の差が所定の閾値以上である場合に異常を検出する。
また、第3の異常検出手段は、今回の制御周期における二相のディジタル信号の合成信号のパルス幅を、過去、例えば前回の制御周期におけるパルス幅と比較し、これらのパルス幅が異なる場合に異常を検出する。
第4の異常検出手段は、二相のディジタル信号のパルス幅をそれぞれの過去のパルス幅と比較し、これらのパルス幅が異なる場合や、ある相のディジタル信号のパルス幅を他相のパルス幅と比較し、これらのパルス幅が異なる場合に異常を検出する。
【0025】
本発明においては、マイコンが有するA/D変換やカウンタ機能、タイマ機能を利用することにより、第1〜第4の異常検出手段における主要な機能を実現することが望ましい。
【0026】
更に、制御装置に複数のマイコンを内蔵して多重化し、各マイコンが各異常検出手段をそれぞれ備えると共に、各マイコンによる検出データを相互に送受信して自他の検出データを比較することにより、マイコン内部の通信機能等の異常を検出することも可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第1,第2,第3の異常検出手段または第1,第2,第4の異常検出手段により、電動機出力軸等の回転体の停止時及び回転時において、位置または速度検出用のエンコーダ自体の異常や配線系統の異常、更には、異常検出用に多重化された演算処理装置自体の異常等を検出することができる。特に、演算処理装置が有する諸機能を利用することで、異常監視装置のコストの低減も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態を示す回路図である。
【図2】図1における正常時のアナログ信号の電圧レベルを示す図である。
【図3】図1における正常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図4A】異常時におけるアナログ信号の電圧レベルの説明図である。
【図4B】異常時におけるアナログ信号の電圧レベルの説明図である。
【図4C】異常時におけるアナログ信号の電圧レベルの説明図である。
【図5】図1における異常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図6】図1における異常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図7】図1における異常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図8】第1実施形態による異常検出処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態を示す回路図である。
【図10】本発明の第3実施形態を示す回路図である。
【図11】図10における正常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図12】図10における異常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図13】図10における異常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図14】図10における異常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図15】本発明の第4実施形態を示す回路図である。
【図16】第1の従来技術に係る配線異常検出装置の回路図である。
【図17】図16における配線異常検出装置のアナログ入力信号の特性図である。
【図18】第1の従来技術の問題点を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示す回路図である。図1において、10は位相が90度異なる二相のアナログ信号を出力するエンコーダ、20は電源線、信号線、接地線からなるケーブル、30はエンコーダ10の出力信号を処理してエンコーダ10の異常やケーブル20を含む配線系統の異常を検出する制御装置である。
【0030】
エンコーダ10は、電動機出力軸等の回転体の回転により、位相が90度異なる二つの相対的な位置検出信号(A相信号及びB相信号)を発生する光学センサを備えている。なお、これらの回転体や光学センサは図示を省略してある。
A相信号及びB相信号は、コンプリメンタリ構成のトランジスタTr1,Tr2のベースにそれぞれ入力されている。ここで、A相信号及びB相信号の処理回路は同一の構成であり、本実施形態のコンプリメンタリ構成とする以外に、図16の従来技術のようにオープンコレクタ構成としても良い。
【0031】
一方のトランジスタTr1のコレクタは電源端子Vc(電源電圧もVcと表記する)に接続され、他方のトランジスタTr2のコレクタはグランド端子Mに接続されている。また、トランジスタTr1,Tr2同士の接続点は、制限抵抗R1を介してA相信号端子A、B相信号端子Bにそれぞれ接続される。
【0032】
エンコーダ10には、制御装置30からケーブル20を介して電源電圧Vcが供給されており、エンコーダ10の各部の電気信号は制御装置30と共通の電位を基準としている。なお、制御装置30内の電源回路は図示を省略する。
通常は、ノイズによる影響を防ぐために、図1におけるA相信号端子A、B相信号端子B等でフォトカプラや絶縁アンプによりエンコーダ10と制御装置30とを電気的に絶縁することがあるが、この実施形態では、説明を簡単にするためにエンコーダ10と制御装置30とを同電位としている。
【0033】
次に、制御装置30において、電源端子Vc、A相信号端子A、グランド端子Mの相互間、及び、電源端子Vc、B相信号端子B、グランド端子Mの相互間には、バイアス発生手段としての分圧抵抗Rx,Ryがそれぞれ接続されている。これらの分圧抵抗Rx,Ryは、エンコーダ10の内部の制限抵抗R1に対して適宜な値に設定すればよく、ダイオードのオン抵抗やツェナーダイオードを用いてもよい。
エンコーダ10から出力されるA相信号が「H」(High)レベル(トランジスタTr1がオンし、トランジスタTr2がオフしている状態)の場合、制御装置30により検出されるA相信号端子Aのアナログ電圧Vadet(図1におけるアナログ信号SigAanaの電圧に相当)は、トランジスタTr1のオン電圧降下を無視すると、数式1によって表される。
【0034】
【数1】
【0035】
一方、A相信号が「L」(Low)レベル(トランジスタTr1がオフし、トランジスタTr2がオンしている状態)の場合、A相信号端子Aのアナログ電圧Vadetは、トランジスタTr2のオン電圧降下を無視すると、数式2によって表される。
【0036】
【数2】
【0037】
すなわち、エンコーダ10に故障がなくケーブル20に断線や短絡、地絡等がない正常時には、図2に示すように、アナログ電圧Vadetとして、A相信号が「H」レベルの時には、電源電圧Vcからバイアス分を減算したアナログハイレベル(Ry・Vc/(R1+Ry)が検出される。また、A相信号が「L」レベルの時には、グランド電圧にバイアス分を加算したアナログローレベル(R1・Vc/(R1+Rx))が検出される。
なお、数式1,2は、B相信号端子Bのアナログ電圧についても同様に成立する。
【0038】
再び図1において、A相信号端子Aのアナログ信号SigAanaとB相信号端子Bのアナログ信号SigBanaとは、制御装置30内の演算処理装置であるマイコン33内のアナログ入力部331A,331Bにそれぞれ入力される。アナログ入力部331A,331Bの出力信号はAD変換部332A,332Bによりディジタル信号に変換される。そして、これらのディジタル信号が入力される後続のレベル異常検出部333A,333Bにおいて、アナログ電圧として前述のアナログハイレベルまたはアナログローレベルが検出されるか否かを判断することにより、異常が検出される。なお、詳細な異常検出方法については後述する。
上記構成において、アナログ入力部331A,331B、AD変換部332A,332B及びレベル異常検出部333A,333Bは、請求項における第1の異常検出手段を構成している。
【0039】
一方、図1におけるディジタル信号処理手段31A,31Bは一種のAD変換手段であり、コンパレータ等によりアナログ信号を閾値と比較してマイコン33に入力するA相,B相のディジタル信号SigA,SigBを作成する。また、信号合成手段32は、上記ディジタル信号SigA,SigBの排他的論理和を演算し、これを合成信号SigABとしてマイコン33に入力する。
【0040】
上記ディジタル信号SigA,SigB及び合成信号SigABは、マイコン33に内蔵されたディジタル入力部334A,334B,337にそれぞれ入力される。
ディジタル入力部334A,334Bの出力信号はカウンタ335A,335Bを介してパルス数比較異常検出部336に入力され、ディジタル信号SigA,SigBのパルス数を比較することにより異常が検出される。
また、ディジタル入力部337の出力信号は、タイマ338を介してパルス幅比較異常検出部339に入力され、合成信号SigABの「H」レベルのパルス幅(または周期)に基づいて異常が検出される。
上記構成において、ディジタル入力部334A,334B、カウンタ335A,335B及びパルス数比較異常検出部336は請求項における第2の異常検出手段を構成し、信号合成手段32、ディジタル入力部337、タイマ338及びパルス幅比較異常検出部339は第3の異常検出手段を構成している。
【0041】
次に、図3は、正常時におけるディジタル信号処理手段31A,31Bの出力信号(ディジタル信号SigA,SigB)、信号合成手段32の出力信号(合成信号SigAB)、カウンタ335A,335B及びタイマ338の出力信号を示すタイミングチャートである。また、制御周期Tsは、マイコン33の一定の演算処理周期を示す。
【0042】
A相のカウンタ335Aは、制御周期Ts間に検出されたディジタル信号SigAの立ち上がりエッジ数をカウントし、制御周期Ts毎に内部のメモリにカウント値を保存する。図3では、前回のカウント値CountA0と、今回の制御周期Ts間に測定されたカウント値CountA1が示されている。この例では、制御周期Ts間にディジタル信号SigAの立ち上がりエッジを4回検出したので、カウント値は4である。
また、B相のカウンタ335Bも、制御周期Ts間に検出されたディジタル信号SigBの立ち上がりエッジ数をカウントし、制御周期Ts毎に内部のメモリにカウント値を保存する。図3では、前回のカウント値CountB0と、今回の制御周期Ts間に測定されたカウント値CountB1が示されており、この例では、制御周期Ts間にディジタル信号SigBの立ち上がりエッジを5回検出したので、カウント値は5である。
【0043】
タイマ338は、合成信号SigABの「H」レベルの幅を測定する。なお、タイマ338を2チャンネル設け、合成信号SigABの「H」レベルの幅と「L」レベルの幅とをそれぞれ測定して比較することもできる。図3の例では、合成信号SigABが「H」レベルから「L」レベルに変化する毎に、測定した「H」レベルの幅をカウント値CountThighとして内部メモリに保存する。
【0044】
次に、本実施形態における異常検出方法について説明する。
始めに、マイコン33に入力されるアナログ信号の電圧レベルを監視することにより、電動機出力軸等の回転体が停止している時でも異常を検出可能な異常検出方法について詳述する。
【0045】
図4A〜図4Cは、異常時におけるA相のアナログ信号SigAanaの電圧レベルを説明するための図である。なお、以下の説明は、異常時におけるB相のアナログ信号SigBanaの電圧レベルについても同様である。
図4Aはケーブル20(電源線、信号線または接地線)が断線した場合、図4BはA相の信号線が電源線(電源電圧Vc)と短絡した場合、図4CはA相の信号線が接地線と短絡(すなわち地絡)した場合を示している。
【0046】
図4Aのケーブル断線時において、回転体の停止等によりトランジスタTr1,Tr2がオンしない場合は、電源線、信号線、接地線のいずれの断線であっても、電流は分圧抵抗Rx,Ryのみにしか流れない。このため、アナログ信号SigAanaの電圧Vadetは数式3となる。なお、トランジスタTr1またはTr2がオンした場合には、前述の数式1または数式2の電圧となるはずである。
【0047】
【数3】
【0048】
つまり、ケーブルの断線によりアナログ電圧Vadetは数式1と数式2との中間レベルになる。従って、数式1の右辺の電圧に下限値を設定すると共に数式2の右辺の電圧に上限値を設定しておき、図1のレベル異常検出部333A,333Bが、上記の下限値と上限値との間の値のアナログ電圧Vadetを検出することにより、ケーブル20が断線していると判断することができる。
【0049】
次に、図4Bに示すようにA相の信号線と電源との短絡時には、トランジスタTr1がオンした場合、分圧抵抗Rxに電流が流れず、電流は短絡経路を通るため、電源電圧Vcは分圧されない。また、トランジスタTr2がオンした場合も、同様に分圧抵抗Rxに電流が流れないので、電源電圧Vcは分圧されない。よって、回転体の回転、停止にかかわらず、アナログ電圧Vadetは数式4によって表される。
【0050】
【数4】
【0051】
すなわち、短絡時には、数式1の右辺の電圧よりも高い電圧がアナログ電圧Vadetとして検出されるため、数式1の右辺の電圧に予め上限値を設定しておき、レベル異常検出部333A,333Bが、この上限値よりも高いアナログ電圧Vadetを検出した場合に、信号線と電源とが短絡していると判断することができる。
【0052】
図4Cに示す地絡時には、トランジスタTr1がオンした場合は分圧抵抗Ryに電流が流れず、電流は短絡経路を通るため、電源電圧Vcは分圧されない。また、トランジスタTr2がオンした場合も、同様に分圧抵抗Ryに電流が流れないため、電源電圧Vcは分圧されない。よって、回転体の回転、停止にかかわらず、アナログ電圧Vadetは数式5によって表される。
【0053】
【数5】
【0054】
すなわち、地絡時には、数式2の右辺の電圧よりも低い電圧がアナログ電圧Vadetとして検出されるため、数式2の右辺の電圧に予め下限値を設定しておき、レベル異常検出部333A,333Bが、この下限値よりも低いアナログ電圧Vadetを検出した場合に、信号線が地絡していると判断することができる。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、レベル異常検出部333A,333Bがアナログ入力信号の電圧レベルを検出することにより、回転体が停止している時の異常(ケーブル20の断線、信号線と電源線との短絡、地絡等)を検出することができる。また、回転体が回転している場合でも、信号線と電源線との短絡、地絡を検出可能である。
なお、ケーブル20の断線や短絡、地絡等と同じ現象がエンコーダ10の内部で起こったり、制御装置30の内部においてマイコン33の入力側で起こったような場合も同様にして異常を検出することができる。
【0056】
次に、マイコン33に入力されるディジタル信号を監視することにより、回転体が回転している時の異常を検出するための異常検出方法について詳述する。
図5は、A相のディジタル信号SigA(ディジタル信号処理手段31Aの出力信号)に異常が発生した場合の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。なお、以下の説明はB相のディジタル信号SigBの異常時も同様である。
【0057】
まず、A相の信号線が電源線と短絡した等の理由によりA相のディジタル信号SigAが「H」レベルで固定されると、図1のA相のカウンタ335Aから出力されるパルスの数が減少し、B相のカウンタ335Bから出力されるパルスの数との間に誤差が発生する。従って、図1のパルス数比較異常検出部336が、制御周期Tsごとに両カウンタ335A,335Bのカウント値CountA1,CountB1を比較し、その差が所定の閾値より大きくなった場合に異常と判断する。
なお、制御周期Tsのタイミングにより、正常時でも両カウント値に±1程度の誤差を生じるので、上記の閾値は2より大きい値とすることが望ましい。図5の例では、カウント値CountA1が2、カウント値CountB1が5であるため、例えば閾値を2に設定することにより、異常を検出することができる。
また、信号線と電源線との短絡以外に、ケーブルの断線や地絡等によりディジタル信号が「L」レベルで固定された場合も、同様な原理によって検出可能である。
【0058】
図6は、A相のディジタル信号SigA及びB相のディジタル信号SigBの両方に異常が発生した場合の動作を示している。
図6の例では、カウント値CountA1,CountB1が何れも2であるため、前記パルス数比較異常検出部336や、第2の従来技術では異常を検出することができない。
この場合、本実施形態では、ディジタル信号SigA,SigBの排他的論理和である合成信号(信号合成手段32の出力信号)SigABが、図6に示すように「H」レベルのままで固定されるので、「H」レベルの幅を測定するタイマ338が更新されなくなる。従って、図1のパルス幅比較異常検出部339が、今回のタイマ値(パルス幅)を前回の制御周期Tsにおけるタイマ値と比較したり、あるいは周期測定タイマのオーバフローを検出する等の処理を実行すれば、ディジタル信号SigA,SigBの両方に異常が発生したことを容易に検出可能である。
【0059】
また、図7は、A相のディジタル信号SigAの位相に異常が発生した場合を示す。このようなA相のディジタル信号SigAの位相異常は、例えば、B相側と部分的に短絡する場合や、エンコーダ10内のトランジスタTr1,Tr2の故障等が考えられる。
このような場合、例えば第2の従来技術では、各相のパルス数には変化がなく、部分的な異常であって既に正常状態に移行しているとみなしてしまい、異常検出が不可能である。
これに対し、本実施形態では、タイマ338が合成信号SigABの「H」レベルの幅を測定しているため、今回のタイマ値を前回の制御周期Tsにおけるタイマ値と比較してその時間差を測定することにより、簡単に異常を検出することができる。
【0060】
図8は、上述した異常判断のフローチャートを示している。
まず、回転体が回転中か停止中かを判断する(ステップS1)。例えば、回転体が電動機の出力軸であり、エンコーダを用いて電動機速度や回転子位置を検出する場合、エンコーダの出力パルスが一定期間内に1以上検出されるか否か、または、電動機の速度指令値や運転指令フラグ、電圧指令値、電流検出値等の情報を参考にすれば、回転中か停止中かの判断は容易である。
【0061】
停止中であれば、アナログ信号の電圧レベルにより、前述したようにレベル異常検出部333A,333Bが異常判断を行い、検出したアナログ電圧Vadetが数式1及び数式2に基づく閾値の範囲内にあるか否かにより異常の有無を判断する(ステップS1 Yes,S2,S3)。
回転中であれば、パルス数比較異常検出部336により、パルス数の差が閾値を超えたか否かによって異常の有無を判断する(ステップS1 No,S6,S7)。また、パルス数の差が閾値を超えない場合には、パルス幅比較異常検出部339によりタイマ値(パルス幅)を前回値等と比較して異常の有無を判断する(ステップS7 No,S9,S10)。
【0062】
上記の各判断ステップにおいて異常と判断された場合には(ステップS3 Yes、またはS7 Yes、またはS10 Yes)、回転体すなわち電動機の運転を停止し、外部にアラームとして異常検出信号を出力する等、異常時の処理を実施する(ステップS4,S8,S11)。異常なしと判断された場合には(ステップS3 NoまたはS10 No)、正常モード処理として通常の制御を行うことにより運転を継続する(ステップS5,S12)。
なお、図3から明らかなように、タイマ338によるパルス幅の測定はパルス(合成信号SigAB)のエッジ毎に更新されるため、マイコン33の内部の多重割り込み処理を利用して、パルス数測定と異なる割り込みレベルで実行することができる。このようにすると、制御周期Ts内の一部のみで位相異常が発生した場合にも、見逃すことなく検出することができる。
【0063】
次いで、図9は本発明の第2実施形態を示す回路図である。
この第2実施形態が第1実施形態と異なるのは、制御装置内のマイコンを二重化して相互監視することにより、異常監視装置としての信頼性を向上させた点である。第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、以下では異なる部分を中心に説明する。
【0064】
図9において、制御装置300には二つのマイコン301X,301Yが内蔵されている。これらのマイコン301X,301Yは、図1と同様に、アナログ信号SigAana,SigBanaを処理するアナログ入力部331A,331B、AD変換部332A,332B、レベル異常検出部333A,333Bからなる第1の異常検出手段と、ディジタル信号SigA,SigBを処理するディジタル入力部334A,334B、カウンタ335A,335B、パルス数比較異常検出部336からなる第2の異常検出手段と、信号合成手段32により作成した合成信号SigABを処理する信号ディジタル入力部337、タイマ338、パルス幅比較異常検出部339からなる第3の異常検出手段と、をそれぞれ備えている。
【0065】
更に、一方のマイコン301Xには通信手段302X及びデータ比較手段303Xが設けられ、他方のマイコン301Yにも、通信手段302Y及びデータ比較手段303Yが設けられている。
ここで、通信手段302X,302Yは、各マイコン301X,301Yによる異常検出結果、アナログ信号の電圧レベル、ディジタル信号のパルス数、合成信号の「H」レベルのパルス幅等の検出データを他方のマイコンとの間で相互に送受信するためのものである。また、データ比較手段303X,303Yは、自己が受信した相手方の上記検出データを自己の検出データと比較し、その結果に応じて異常検出信号1,異常検出信号2を出力するためのものである。
【0066】
図9の例では、ディジタル信号処理手段31A,31B及び信号合成手段32の出力側でマイコン301X,301Yを二重化しているが、各マイコン301X,301Yの入力側にディジタル信号処理手段31A,31B及び信号合成手段32をそれぞれ設けて二重化しても良い。
また、マイコン301X,301Y同士の通信形態は、同期式でも非同期式でもよく、特に限定されるものではない。
【0067】
各マイコン301X,301Yによる異常検出動作は第1実施形態と同様であるため、ここでは詳述を省略する。
ただし、本実施形態では、相手方から受信したデータを、データ比較手段303X,303Yにより自己の異常検出結果、アナログ信号の電圧レベル、ディジタル信号のパルス数、パルス幅と比較し、これらが互いに相違する場合や、電圧レベル、パルス数、パルス幅のそれぞれの差が所定の閾値を超えていた場合に異常検出信号1または異常検出信号2を出力する。これらの異常検出信号は、二重化以降の配線の異常や、マイコンの内部機能(AD変換部、カウンタ、タイマ等)または通信系統の異常とみなすことができるから、異常検出信号1または異常検出信号2により、マイコン301X,301Yの機能を診断することができる。
なお、電圧レベル、パルス数、パルス幅の差と比較される上記閾値は、自由に設定可能であるが、マイコンの機能による異常が支配的であるので、誤検出のないように十分に余裕をもった値とすることが望ましい。
ここで、異常検出信号1、異常検出信号2には、本来のレベル異常検出、パルス数比較異常検出、パルス幅比較異常検出による異常検出結果を含めても良いのは勿論である。
【0068】
以上のように、本実施形態によれば、エンコーダからマイコンに至るまでの異常、及びマイコンの内部機能の異常も検出することができ、第1実施形態に比べて、異常監視装置としての信頼性を一層向上させることができる。
【0069】
次に、図10は本発明の第3実施形態を示す回路図である。
前述した第1,第2実施形態において、パルス幅比較異常検出部339がタイマ値(パルス幅)に基づいて異常を検出する場合、信号合成手段32により、位相の異なるA相,B相ディジタル信号SigA,SigBを合成して合成信号SigABを作成する必要がある。しかし、図3等から明らかなように、合成信号SigABの「H」レベルのパルス幅は元のディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルのパルス幅の1/2となる。このため、回転体が高速回転すると合成信号SigABの「H」レベルのパルス幅が短くなり、マイコンのクロック分解能の制約から、上記パルス幅がタイマによる計時間隔より短くなると測定が不可能になる。加えて、第1,第2実施形態ではマイコン内部で合成信号を作成することができず、外部に論理回路を付加して信号合成手段32を実現せざるを得ないので、これがコスト上昇の原因ともなる。
そこで、第3実施形態は、異常検出時の速度範囲を拡大し、しかもコストを一層低減するためになされたものである。
【0070】
以下、この第3実施形態の回路構成を説明する。なお、第1,第2実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図10において、310は制御装置であり、本実施形態では、前述した信号合成手段32が不要である点、及び、マイコン311の内部構成が先の第1,第2実施形態と異なっている。すなわち、ディジタル信号処理手段31A,31Bから出力されたA相,B相ディジタル信号SigA,SigBは、合成されることなくマイコン311内のディジタル入力部337A,337Bにそれぞれ入力されている。ディジタル入力部337A,337Bの出力側には、A相,B相ディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルの幅を測定するタイマ338A,338Bがそれぞれ接続され、タイマ338A,338Bの出力側にパルス幅比較異常検出部340が接続されている。ここで、パルス幅比較異常検出部340は、A相,B相のそれぞれについて、タイマ値(ディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルの幅)の前回値と今回値とを比較し、または、A相のタイマ値とB相のタイマ値とを比較し、これらが所定の閾値を超える場合に異常を検出するものである。
上記構成において、ディジタル入力部337A,337B、タイマ338A,338B及びパルス幅比較異常検出部340は、請求項における第4の異常検出手段を構成している。
【0071】
次いで、この第3実施形態の動作を説明する。なお、回転体の停止時における異常検出はアナログ信号に基づいて行うため、以下では、回転体の回転時におけるA相,B相ディジタル信号SigA,SigBに基づいた異常検出動作について説明する。
図11は、正常時におけるディジタル信号処理手段31A,31Bの出力信号、カウンタ335A,335B及びタイマ338A,338Bの出力信号を示すタイミングチャートである。なお、比較のために、第1実施形態における信号合成手段32の出力信号(合成信号SigAB)も併せて表示してある。
【0072】
図11におけるカウンタ335A,335Bの動作は図3と同一であるため、タイマ338A,338Bの動作を説明する。
タイマ338Aは、A相ディジタル信号SigAの立ち上がりで動作を開始し、立ち下がりでタイマ値を保存することにより、このタイマ値からA相ディジタル信号SigAの「H」レベルの幅を測定する。同様に、タイマ338Bは、B相ディジタル信号SigBの立ち上がりで動作を開始し、立ち下がりでタイマ値を保存することにより、このタイマ値からB相ディジタル信号SigBの「H」レベルの幅を測定する。なお、図11において、TA0,TA1,……,TB0,TB1,……はタイマ値(ディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルの幅)を示す。
パルス幅比較異常検出部340は、A相,B相のタイマ値の前回値と今回値とをそれぞれ比較し、図11の例では前回値と今回値とが等しいことから正常と判断する。
【0073】
図12は、A相ディジタル信号SigAに異常が発生した場合のタイミングチャートである。A相の信号線が電源線と短絡した等の理由によりA相のディジタル信号SigAが「H」レベルで固定されると、前述した図5と同様に、カウンタ335A,335Bによるカウント値CountA1,CountB1の差が所定の閾値(例えば2)より大きくなった場合に異常と判断する。ケーブルの断線や地絡等によりA相のディジタル信号SigAが「L」レベルで固定された場合や、B相ディジタル信号SigBに異常が発生した場合も、同様な原理によって異常を検出可能である。
【0074】
図13は、A相,B相ディジタル信号SigA,SigBの両方に異常が発生した場合のタイミングチャートである。
この場合、図13の例では、カウント値CountA1,CountB1が何れも2であるため、パルス数比較異常検出部336では異常を検出することができない。そこで、本実施形態では、A相,B相のタイマ値の前回値と今回値とをそれぞれ比較する。
すなわち、図13において、A相,B相共に、異常が発生する直前のディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルの幅(つまりタイマ値)TA1,TB1を測定するが、異常発生によりタイマ値を保存するためのディジタル信号SigA,SigBの立ち下がりエッジが現れないので、異常発生後はA相,B相共にタイマ値が加算されていく。そこで、所定のタイミングでA相,B相について今回加算中のタイマ値TA1,TB1を前回のタイマ値TA0,TB0とそれぞれ比較すれば、TA1とTA0との間、TB1とTB0との間にはそれぞれ大きな差があるため、これらの差が所定の閾値を超えた場合にA相,B相ディジタル信号SigA,SigBの両方に異常が発生したことが検出される。
【0075】
また、図14は、A相ディジタル信号SigAの位相に異常が発生した場合のタイミングチャートである。図7において説明したように、このような位相異常は、B相側との部分的な短絡やエンコーダ10内のトランジスタTr1,Tr2の故障等に起因するものである。
この場合、A相,B相ディジタル信号SigA,SigBのパルス数には閾値(例えば2)以上の差はないが、異常であるA相のタイマ値と正常なB相のタイマ値との間、つまりTAerr1とTB1との間、TAerr2とTB2との間にはそれぞれ差が生じている。更に、例えばA相ディジタル信号SigAの今回のタイマ値TAerr1と前回のタイマ値TA1との間にも差が生じている。
【0076】
そこで、本実施形態では、パルス幅比較異常検出部340が、タイマ値TAerr1とTB1との差、またはタイマ値TAerr2とTB2と差、あるいはタイマ値TAerr1とTA1との差が所定の閾値よりも大きいことをもってA相ディジタル信号SigAの異常を検出する。
なお、図13や図14に示した異常は、例えば第1実施形態によっても検出可能であるが、第3実施形態では、A相,B相ディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルの幅を測定するため、この幅は、第1実施形態の測定対象である合成信号SigABの「H」レベルの幅に対して2倍である。従って、同じクロック周波数のマイコンを使用した場合には、第1実施形態と比べて2倍の回転速度まで測定可能であり、速度範囲を拡大することができる。
更に、第3実施形態によれば、第1,第2実施形態における信号合成手段32としての論理回路が不要になるので、回路構成の簡略化による小型化及びコストの低減が可能になる。
【0077】
第3実施形態による異常判断のフローチャートは、基本的に前述した図8と同様であるが、第3実施形態では、図8のパルス幅計測ステップ(S9)及び異常判断ステップ(S10)において、合成信号SigABを対象とするのではなく、A相,B相ディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルの幅を個別に測定して異常判断を行う点が異なっている。
【0078】
次に、図15は本発明の第4実施形態を示す回路図である。この第4実施形態は、第3実施形態における制御装置内のマイコンを二重化することにより、相互監視を可能にしたものである。
すなわち、図15において、制御装置320は2台のマイコン311X,311Yを備えている。これらのマイコン311X,311Yは、図10に示したマイコン311と同一の検出ブロック(アナログ入力部331A,331B、AD変換部332A,332B、レベル異常検出部333A,333B、ディジタル入力部334A,334B、カウンタ335A,335B、パルス数比較異常検出部336、ディジタル入力部337A,337B,タイマ338A,338B、パルス幅比較異常検出部340からなる)を備えている。また、一方のマイコン311Xは通信手段312X及びデータ比較手段313Xを備え、他方のマイコン311Yも通信手段312Y及びデータ比較手段313Yを備えている。
【0079】
通信手段312X,312Yは、各マイコン311X,311Yによる異常検出結果、アナログ信号の電圧レベル、ディジタル信号のパルス数及び「H」レベルのパルス幅等の検出データを他方のマイコンとの間で相互に送受信する。また、データ比較手段313X,313Yは、自己が受信した相手方の上記検出データを自己の検出データと比較し、その結果に応じて異常検出信号1,異常検出信号2を出力するためのものである。
なお、マイコン311X,311Yを二重化する位置やマイコン311X,311Y同士の通信形態については、図9の第2実施形態と同様に任意に選択可能である。
【0080】
本実施形態においても、通信手段312X,312Yが相手方のマイコンから受信したデータを、データ比較手段313X,313Yが、自己の異常検出結果、アナログ信号の電圧レベル、ディジタル信号のパルス数、パルス幅と比較する。そして、これらのデータが互いに相違する場合や、電圧レベル、パルス数、パルス幅のそれぞれの差が所定の閾値を超えていた場合に、異常検出信号1または異常検出信号2を出力する。これにより、マイコン311X,311Yの機能を診断することができる。
なお、異常検出信号1、異常検出信号2には、本来のレベル異常検出、パルス数比較異常検出、パルス幅比較異常検出による異常検出結果を含めても良い。
本実施形態によれば、エンコーダからマイコンに至るまでの異常、及びマイコンの内部機能の異常も検出することができるため、第3実施形態に比べて、異常監視装置としての信頼性を一層向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、電動機ばかりでなく、各種の回転体の回転速度や位置(角度)を検出するエンコーダ及びその配線系統の異常監視に利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
10:エンコーダ
20:ケーブル
30,300,310,320:制御装置
31A,31B:ディジタル信号処理手段
32:信号合成手段
33,301X,301Y,311,311X,311Y:マイコン
302X,302Y,312X,312Y:通信手段
303X,303Y,313X,313Y:データ比較手段
331A,331B:アナログ入力部
332A,332B:AD変換部
333A,333B:レベル異常検出部
334A,334B:ディジタル入力部
335A,335B:カウンタ
336:パルス数比較異常検出部
337,337A,337B:ディジタル入力部
338,338A,338B:タイマ
339,340:パルス幅比較異常検出部
Tr1,Tr2:トランジスタ
R1:制限抵抗
Rx,Ry:分圧抵抗
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインバータやサーボシステム等の電動機を駆動する電力変換器において、パルスエンコーダ(以下、単にエンコーダともいう)の異常や配線系統の異常を検出し、安全機能を実現するための異常監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の出力軸に取り付けたパルスエンコーダの出力信号から電動機速度や回転子位置を演算し、この演算値をフィードバックして電動機を可変速駆動するインバータやサーボシステムが普及している。これらの装置において、エンコーダの出力信号に異常があると正常な運転が困難になるため、従来より、エンコーダの異常や配線系統の異常を検出して運転を停止する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2008−232978号公報)には、異常監視のためにマイクロプロセッサの内部機能を利用することにより、部品数を少なくして回路を最小限化し、コストの低減を図った配線異常検出装置が開示されている。
この従来技術(便宜上、第1の従来技術という)では、まず、エンコーダの出力信号がアナログ信号として配線異常検出装置に入力される。そして、上記アナログ信号をA/D(アナログ/ディジタル)変換し、変換後の電圧レベルが、過渡状態を除いて所定の中間電圧レベルになっている場合に、信号系統に不完全接触や短絡が生じていると判断して異常を検出している。
以下、図16を参照しながら、この従来技術の回路構成及び動作を説明する。
【0004】
図16において、配線異常検出装置100は、マイクロプロセッサ120と、プログラムメモリ121と、AD変換器123と、定電圧電源回路130と、バッファアンプ135と、直列抵抗131a,131bと、フィルタコンデンサ132a,132bと、プルダウン抵抗134a,134bと、を備えている。なお、122はマイクロプロセッサ120内のメモリである。
また、110は電動機(図示せず)の回転角度を検出するためのロータリーエンコーダであり、このエンコーダ110は、回転角度検出信号として二相(A相,B相)の信号を出力する回転角度検出回路115と、A相,B相信号出力用トランジスタとしてのセンサスイッチ111a,111bと、ドロッパダイオード112a,112b,113a,113bと、ブリーダ抵抗114a,114bとから構成されている。
【0005】
更に、101は直流電源、102は電源スイッチ、103は接地線、104は電源線、105,106は信号線である。
また、エンコーダ110におけるA,BはA相信号,B相信号の出力端子であり、配線異常検出装置100におけるA1,A2はアナログ入力信号、マイクロプロセッサ120におけるD1,D2はセンサスイッチ111a,111bの開閉論理信号、Vmは監視電圧を示している。
【0006】
ロータリーエンコーダ110の動作としては、回転角度検出回路115の出力信号によりセンサスイッチ111a,111bがオンまたはオフすると、ドロッパダイオード112a,112b,113a,113b及びブリーダ抵抗114a,114bの作用により、電圧降下が発生する。この電圧降下による電圧をA相信号、B相信号として出力端子A,Bから出力させ、信号線105,106を介して配線異常検出装置100に入力することにより、以下に述べるような異常検出動作を行う。
【0007】
図17は、配線異常検出装置100に入力されるA相,B相のアナログ入力信号A1,A2の特性を示している。以下では、A相のアナログ入力信号A1の特性について説明するが、B相のアナログ入力信号A2についても全く同様の動作となる。
【0008】
センサスイッチ111aがオンすると、ドロッパダイオード112aのオン電圧降下により、図17の電圧レベルVLが検出される。一方、センサスイッチ111aがオフすると、ブリーダ抵抗114a及びドロッパダイオード113aの電圧降下により、電圧レベルVHが検出される。なお、実際には、ドロッパダイオード112a,113aの特性のバラツキを考慮して、電圧レベルVL,VHを中心とした一定範囲内をそれぞれ正常「L」レベル、正常「H」レベルとしている。
上記のように、アナログ入力信号の電圧レベルが「L」レベルか「H」レベルかを判定することで、回転角度検出用のパルスの有無を検出している。
このとき、例えば信号線105に断線やグランドとの地絡が発生していると、上述した電圧降下成分が検出されず、アナログ入力信号はグランドレベルに固定されるため、異常発生を検出することができる。
【0009】
また、エンコーダ110の出力端子Aが正側電源Vccと短絡した場合は、アナログ入力信号がVHよりも高い電圧レベルで固定されるため、同様に異常が発生したことを検出可能である。更に、正側電源Vccとグランドとの不完全接触や他の信号線との接触が発生すると、アナログ入力信号は図17の中間電圧レベル(論理判定レベル)Vs1またはVs2として検出され、これらの中間電圧レベルVs1またはVs2が一定期間継続した場合も異常と判断する。
【0010】
なお、センサスイッチ111aのオン・オフの切り替え時に、直列抵抗131a及びフィルタコンデンサ132aからなるローパスフィルタによってA相のアナログ入力信号A1の電圧波形がフィルタリングされる。このため、サンプルタイミングによっては、正常時でも中間電圧レベルVs1,Vs2が過渡的に検出されてしまい、結果として異常を誤検出するおそれがある。
上記の誤検出を防止するため、この従来技術では、中間電圧レベルVs1,Vs2が検出された場合に、詳細判定を実行し、この中間電圧レベルVs1,Vs2が過渡的に発生したものか一定期間継続して発生したものかを判断し、一定期間継続している場合には、前述した正側電源Vccとグランドとの不完全接触や他の信号線との接触による異常と判断している。
【0011】
なお、他の従来技術(便宜上、第2の従来技術という)として、エンコーダから出力される二相信号(位相が異なるA相信号及びB相信号)をA/D変換した後に個別のカウンタに入力して一定期間のパルス数をそれぞれカウントし、これらのパルス数に基づいて異常を検出する方法が知られている。
例えば、電動機が回転していると、その回転速度に応じたパルス数がA相信号、B相信号として計測されるが、一方の相の信号線が断線していたり電源線や接地線と接触していると、各相のパルス数に誤差が発生する。従って、各相のパルス数を比較することにより異常を検出することができる。また、各相のパルス数に相当する速度検出値を現在の速度指令値等と比較することで、一方の相だけでなく、二相の同時異常も検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−232978号公報(段落[0010]〜[0017]、図1,図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
第1の従来技術によれば、電動機が停止している場合でも、配線異常検出装置100に入力されるアナログ信号の電圧レベルに応じて配線異常を検出することができる。しかし、電動機の運転中には、配線異常の判断が困難になり、配線が正常な場合でも誤って異常と判断してしまうおそれがある。その理由は次の通りである。
【0014】
一般にエンコーダは、電動機等の回転体の一機械周期(回転電動機の場合は一回転)当たりの出力信号数が決められており、高速になると出力信号の間隔が短くなる。一方、マイクロプロセッサ等の演算処理装置は、通常、一定周期で演算処理を行うため、エンコーダからの出力信号の間隔が演算処理装置の演算周期よりも大幅に短くなることが往々にしてある。
このとき、演算処理装置側のAD変換器によるサンプルタイミングがエンコーダの出力信号変化時に偶然一致してしまうと、前述したような中間電圧レベルが連続的に検出されてしまい、配線系統が正常であるにもかかわらず誤って異常と判断する場合がある。
【0015】
図18は、上述した誤判断時におけるエンコーダ出力信号、AD変換サンプルタイミング、電源電圧Vc、アナログ入力信号の電圧レベルの検出値、及びグランドレベルを示すタイミングチャートである。
図示するように、AD変換サンプルタイミングの周期がエンコーダ出力信号の周期に対して特定倍になった時に、各サンプルタイミングにおける検出値が等しくなり、これによってアナログ入力信号の電圧レベルが中間電圧レベルで固定されている(すなわち異常である)と誤認する可能性がある。
このような誤判断を防いで装置の信頼性を高めるためには、サンプルタイミングの周期が短い高速なAD変換器を用いることが有効であるが、高速のAD変換器は一般に高価であるため、装置のコストが上昇するという問題がある。
【0016】
これに対し、第2の従来技術では、二相のパルス数に基づいて異常を検出する原理上、電動機が停止している状態では異常検出が不可能である。従って、電動機停止時における異常検出手段を別途用意する必要があり、これがコスト上昇の原因となる。
【0017】
また、第1の従来技術と第2の従来技術とを組み合わせれば、電動機運転時、停止時の両方に対応可能な異常検出装置を構成することも可能であるが、以下のようなケースに対しては異常検出が不可能である。
(1)エンコーダの二相の出力信号の位相が異常であるケース。
例えば、信号線が部分的に短絡することにより、二相の出力信号の間隔が一時的に変動する場合。
この場合は、電動機の運転によりエンコーダの出力信号が発生している時にしか異常を検出できず、また、第2の従来技術のように、単にパルスの数を比較するだけでは検出することができない。
(2)本来であれば異常によって二相のパルス数に差があるべきであるにもかかわらず、ノイズ等で出力信号が発振し、たまたま二相のパルス数が一致する場合。
上記以外にも、異常時に他の原因によってパルス数に差が生じないこともあるので、異常を検出できない場合がある。
【0018】
そこで、本発明の目的は、従来技術では対応不可能な各種の異常を検出可能とした信頼性の高い異常監視装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、マイクロコンピュータ(以下、単にマイコンともいう)等の演算処理装置が有する機能を利用して安価な異常監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明では、回転体の位置を検出するエンコーダの出力信号をアナログ信号として制御装置に入力し、回転体の停止時に発生する異常をアナログ入力信号の電圧レベルに基づいて検出する。また、回転体の回転時には、少なくとも二相のアナログ入力信号を変換してなるディジタル信号を用いて、各相の一定周期内のパルス数の差を所定の閾値と比較する。更に、位相が異なる二以上のディジタル信号を合成して得た合成信号のパルス幅、または、各相のディジタル信号のパルス幅をそれぞれ監視して異常を検出する。
【0020】
すなわち、本発明に係る異常監視装置では、エンコーダから出力される例えば二相の位置検出信号が、ケーブル等の配線系統を介しアナログ信号として制御装置に入力される。
この制御装置は、エンコーダまたは配線系統の異常を検出するための第1,第2,第3の異常検出手段、または、第1,第2,第4の異常検出手段を備えており、これらの異常検出手段は、例えば演算処理装置としてのマイコンにより実現される。
【0021】
第1の異常検出手段は、アナログ入力信号をA/D変換して得たディジタル信号からアナログ入力信号の電圧レベルを検出し、この電圧レベルが所定の範囲内に存在する場合に、エンコーダまたは配線系統に異常があると判断する。
第2の異常検出手段は、二相のアナログ入力信号に対応するディジタル信号のパルス数の差を求め、この差が所定の閾値以上である場合に、エンコーダまたは配線系統に異常があると判断する。
更に、第3の異常検出手段は、第2の異常検出手段で用いた二相のディジタル信号を合成し、この合成信号のパルス幅が過去のパルス幅と異なることをもってエンコーダまたは配線系統に異常があると判断する。
第4の異常検出手段は、二相のディジタル信号のパルス幅が、それぞれの過去のパルス幅と異なることにより、あるいは、他相のパルス幅と互いに異なることにより、エンコーダまたは配線系統に異常があると判断する。
【0022】
第1の異常検出手段によれば、回転体の停止中における異常を検出することができ、第2,第3または第4の異常検出手段によれば、回転体の回転時における異常を検出することができる。
【0023】
なお、制御装置は、アナログ入力信号の電圧レベルが、エンコーダの出力が「High」レベルの時には電源電圧からバイアス分を減算したアナログハイレベルとなり、かつ、エンコーダの出力が「Low」レベルの時にはグランドレベルにバイアス分を加算したアナログローレベルとなるバイアス発生手段を備えている。このようなバイアス発生手段は、例えば電源線、信号線及び接地線の間に接続された複数の分圧抵抗により実現可能である。
そして、第1の異常検出手段は、アナログ入力信号の電圧レベルが、アナログハイレベルとアナログローレベルとの間に存在する場合には信号線または電源線の断線と判断する。また、アナログ入力信号の電圧レベルが、アナログハイレベルよりも電源電圧に近い場合には、信号線が電源線と短絡していると判断し、アナログ入力信号の電圧レベルが、アナログローレベルよりもグランドレベルに近い場合には、信号線が地絡していると判断する。
【0024】
第2の異常検出手段は、二相のディジタル信号のパルスのエッジを検出してパルス数をそれぞれ求め、これらのパルス数の差が所定の閾値以上である場合に異常を検出する。
また、第3の異常検出手段は、今回の制御周期における二相のディジタル信号の合成信号のパルス幅を、過去、例えば前回の制御周期におけるパルス幅と比較し、これらのパルス幅が異なる場合に異常を検出する。
第4の異常検出手段は、二相のディジタル信号のパルス幅をそれぞれの過去のパルス幅と比較し、これらのパルス幅が異なる場合や、ある相のディジタル信号のパルス幅を他相のパルス幅と比較し、これらのパルス幅が異なる場合に異常を検出する。
【0025】
本発明においては、マイコンが有するA/D変換やカウンタ機能、タイマ機能を利用することにより、第1〜第4の異常検出手段における主要な機能を実現することが望ましい。
【0026】
更に、制御装置に複数のマイコンを内蔵して多重化し、各マイコンが各異常検出手段をそれぞれ備えると共に、各マイコンによる検出データを相互に送受信して自他の検出データを比較することにより、マイコン内部の通信機能等の異常を検出することも可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第1,第2,第3の異常検出手段または第1,第2,第4の異常検出手段により、電動機出力軸等の回転体の停止時及び回転時において、位置または速度検出用のエンコーダ自体の異常や配線系統の異常、更には、異常検出用に多重化された演算処理装置自体の異常等を検出することができる。特に、演算処理装置が有する諸機能を利用することで、異常監視装置のコストの低減も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態を示す回路図である。
【図2】図1における正常時のアナログ信号の電圧レベルを示す図である。
【図3】図1における正常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図4A】異常時におけるアナログ信号の電圧レベルの説明図である。
【図4B】異常時におけるアナログ信号の電圧レベルの説明図である。
【図4C】異常時におけるアナログ信号の電圧レベルの説明図である。
【図5】図1における異常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図6】図1における異常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図7】図1における異常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図8】第1実施形態による異常検出処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態を示す回路図である。
【図10】本発明の第3実施形態を示す回路図である。
【図11】図10における正常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図12】図10における異常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図13】図10における異常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図14】図10における異常時の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図15】本発明の第4実施形態を示す回路図である。
【図16】第1の従来技術に係る配線異常検出装置の回路図である。
【図17】図16における配線異常検出装置のアナログ入力信号の特性図である。
【図18】第1の従来技術の問題点を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示す回路図である。図1において、10は位相が90度異なる二相のアナログ信号を出力するエンコーダ、20は電源線、信号線、接地線からなるケーブル、30はエンコーダ10の出力信号を処理してエンコーダ10の異常やケーブル20を含む配線系統の異常を検出する制御装置である。
【0030】
エンコーダ10は、電動機出力軸等の回転体の回転により、位相が90度異なる二つの相対的な位置検出信号(A相信号及びB相信号)を発生する光学センサを備えている。なお、これらの回転体や光学センサは図示を省略してある。
A相信号及びB相信号は、コンプリメンタリ構成のトランジスタTr1,Tr2のベースにそれぞれ入力されている。ここで、A相信号及びB相信号の処理回路は同一の構成であり、本実施形態のコンプリメンタリ構成とする以外に、図16の従来技術のようにオープンコレクタ構成としても良い。
【0031】
一方のトランジスタTr1のコレクタは電源端子Vc(電源電圧もVcと表記する)に接続され、他方のトランジスタTr2のコレクタはグランド端子Mに接続されている。また、トランジスタTr1,Tr2同士の接続点は、制限抵抗R1を介してA相信号端子A、B相信号端子Bにそれぞれ接続される。
【0032】
エンコーダ10には、制御装置30からケーブル20を介して電源電圧Vcが供給されており、エンコーダ10の各部の電気信号は制御装置30と共通の電位を基準としている。なお、制御装置30内の電源回路は図示を省略する。
通常は、ノイズによる影響を防ぐために、図1におけるA相信号端子A、B相信号端子B等でフォトカプラや絶縁アンプによりエンコーダ10と制御装置30とを電気的に絶縁することがあるが、この実施形態では、説明を簡単にするためにエンコーダ10と制御装置30とを同電位としている。
【0033】
次に、制御装置30において、電源端子Vc、A相信号端子A、グランド端子Mの相互間、及び、電源端子Vc、B相信号端子B、グランド端子Mの相互間には、バイアス発生手段としての分圧抵抗Rx,Ryがそれぞれ接続されている。これらの分圧抵抗Rx,Ryは、エンコーダ10の内部の制限抵抗R1に対して適宜な値に設定すればよく、ダイオードのオン抵抗やツェナーダイオードを用いてもよい。
エンコーダ10から出力されるA相信号が「H」(High)レベル(トランジスタTr1がオンし、トランジスタTr2がオフしている状態)の場合、制御装置30により検出されるA相信号端子Aのアナログ電圧Vadet(図1におけるアナログ信号SigAanaの電圧に相当)は、トランジスタTr1のオン電圧降下を無視すると、数式1によって表される。
【0034】
【数1】
【0035】
一方、A相信号が「L」(Low)レベル(トランジスタTr1がオフし、トランジスタTr2がオンしている状態)の場合、A相信号端子Aのアナログ電圧Vadetは、トランジスタTr2のオン電圧降下を無視すると、数式2によって表される。
【0036】
【数2】
【0037】
すなわち、エンコーダ10に故障がなくケーブル20に断線や短絡、地絡等がない正常時には、図2に示すように、アナログ電圧Vadetとして、A相信号が「H」レベルの時には、電源電圧Vcからバイアス分を減算したアナログハイレベル(Ry・Vc/(R1+Ry)が検出される。また、A相信号が「L」レベルの時には、グランド電圧にバイアス分を加算したアナログローレベル(R1・Vc/(R1+Rx))が検出される。
なお、数式1,2は、B相信号端子Bのアナログ電圧についても同様に成立する。
【0038】
再び図1において、A相信号端子Aのアナログ信号SigAanaとB相信号端子Bのアナログ信号SigBanaとは、制御装置30内の演算処理装置であるマイコン33内のアナログ入力部331A,331Bにそれぞれ入力される。アナログ入力部331A,331Bの出力信号はAD変換部332A,332Bによりディジタル信号に変換される。そして、これらのディジタル信号が入力される後続のレベル異常検出部333A,333Bにおいて、アナログ電圧として前述のアナログハイレベルまたはアナログローレベルが検出されるか否かを判断することにより、異常が検出される。なお、詳細な異常検出方法については後述する。
上記構成において、アナログ入力部331A,331B、AD変換部332A,332B及びレベル異常検出部333A,333Bは、請求項における第1の異常検出手段を構成している。
【0039】
一方、図1におけるディジタル信号処理手段31A,31Bは一種のAD変換手段であり、コンパレータ等によりアナログ信号を閾値と比較してマイコン33に入力するA相,B相のディジタル信号SigA,SigBを作成する。また、信号合成手段32は、上記ディジタル信号SigA,SigBの排他的論理和を演算し、これを合成信号SigABとしてマイコン33に入力する。
【0040】
上記ディジタル信号SigA,SigB及び合成信号SigABは、マイコン33に内蔵されたディジタル入力部334A,334B,337にそれぞれ入力される。
ディジタル入力部334A,334Bの出力信号はカウンタ335A,335Bを介してパルス数比較異常検出部336に入力され、ディジタル信号SigA,SigBのパルス数を比較することにより異常が検出される。
また、ディジタル入力部337の出力信号は、タイマ338を介してパルス幅比較異常検出部339に入力され、合成信号SigABの「H」レベルのパルス幅(または周期)に基づいて異常が検出される。
上記構成において、ディジタル入力部334A,334B、カウンタ335A,335B及びパルス数比較異常検出部336は請求項における第2の異常検出手段を構成し、信号合成手段32、ディジタル入力部337、タイマ338及びパルス幅比較異常検出部339は第3の異常検出手段を構成している。
【0041】
次に、図3は、正常時におけるディジタル信号処理手段31A,31Bの出力信号(ディジタル信号SigA,SigB)、信号合成手段32の出力信号(合成信号SigAB)、カウンタ335A,335B及びタイマ338の出力信号を示すタイミングチャートである。また、制御周期Tsは、マイコン33の一定の演算処理周期を示す。
【0042】
A相のカウンタ335Aは、制御周期Ts間に検出されたディジタル信号SigAの立ち上がりエッジ数をカウントし、制御周期Ts毎に内部のメモリにカウント値を保存する。図3では、前回のカウント値CountA0と、今回の制御周期Ts間に測定されたカウント値CountA1が示されている。この例では、制御周期Ts間にディジタル信号SigAの立ち上がりエッジを4回検出したので、カウント値は4である。
また、B相のカウンタ335Bも、制御周期Ts間に検出されたディジタル信号SigBの立ち上がりエッジ数をカウントし、制御周期Ts毎に内部のメモリにカウント値を保存する。図3では、前回のカウント値CountB0と、今回の制御周期Ts間に測定されたカウント値CountB1が示されており、この例では、制御周期Ts間にディジタル信号SigBの立ち上がりエッジを5回検出したので、カウント値は5である。
【0043】
タイマ338は、合成信号SigABの「H」レベルの幅を測定する。なお、タイマ338を2チャンネル設け、合成信号SigABの「H」レベルの幅と「L」レベルの幅とをそれぞれ測定して比較することもできる。図3の例では、合成信号SigABが「H」レベルから「L」レベルに変化する毎に、測定した「H」レベルの幅をカウント値CountThighとして内部メモリに保存する。
【0044】
次に、本実施形態における異常検出方法について説明する。
始めに、マイコン33に入力されるアナログ信号の電圧レベルを監視することにより、電動機出力軸等の回転体が停止している時でも異常を検出可能な異常検出方法について詳述する。
【0045】
図4A〜図4Cは、異常時におけるA相のアナログ信号SigAanaの電圧レベルを説明するための図である。なお、以下の説明は、異常時におけるB相のアナログ信号SigBanaの電圧レベルについても同様である。
図4Aはケーブル20(電源線、信号線または接地線)が断線した場合、図4BはA相の信号線が電源線(電源電圧Vc)と短絡した場合、図4CはA相の信号線が接地線と短絡(すなわち地絡)した場合を示している。
【0046】
図4Aのケーブル断線時において、回転体の停止等によりトランジスタTr1,Tr2がオンしない場合は、電源線、信号線、接地線のいずれの断線であっても、電流は分圧抵抗Rx,Ryのみにしか流れない。このため、アナログ信号SigAanaの電圧Vadetは数式3となる。なお、トランジスタTr1またはTr2がオンした場合には、前述の数式1または数式2の電圧となるはずである。
【0047】
【数3】
【0048】
つまり、ケーブルの断線によりアナログ電圧Vadetは数式1と数式2との中間レベルになる。従って、数式1の右辺の電圧に下限値を設定すると共に数式2の右辺の電圧に上限値を設定しておき、図1のレベル異常検出部333A,333Bが、上記の下限値と上限値との間の値のアナログ電圧Vadetを検出することにより、ケーブル20が断線していると判断することができる。
【0049】
次に、図4Bに示すようにA相の信号線と電源との短絡時には、トランジスタTr1がオンした場合、分圧抵抗Rxに電流が流れず、電流は短絡経路を通るため、電源電圧Vcは分圧されない。また、トランジスタTr2がオンした場合も、同様に分圧抵抗Rxに電流が流れないので、電源電圧Vcは分圧されない。よって、回転体の回転、停止にかかわらず、アナログ電圧Vadetは数式4によって表される。
【0050】
【数4】
【0051】
すなわち、短絡時には、数式1の右辺の電圧よりも高い電圧がアナログ電圧Vadetとして検出されるため、数式1の右辺の電圧に予め上限値を設定しておき、レベル異常検出部333A,333Bが、この上限値よりも高いアナログ電圧Vadetを検出した場合に、信号線と電源とが短絡していると判断することができる。
【0052】
図4Cに示す地絡時には、トランジスタTr1がオンした場合は分圧抵抗Ryに電流が流れず、電流は短絡経路を通るため、電源電圧Vcは分圧されない。また、トランジスタTr2がオンした場合も、同様に分圧抵抗Ryに電流が流れないため、電源電圧Vcは分圧されない。よって、回転体の回転、停止にかかわらず、アナログ電圧Vadetは数式5によって表される。
【0053】
【数5】
【0054】
すなわち、地絡時には、数式2の右辺の電圧よりも低い電圧がアナログ電圧Vadetとして検出されるため、数式2の右辺の電圧に予め下限値を設定しておき、レベル異常検出部333A,333Bが、この下限値よりも低いアナログ電圧Vadetを検出した場合に、信号線が地絡していると判断することができる。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、レベル異常検出部333A,333Bがアナログ入力信号の電圧レベルを検出することにより、回転体が停止している時の異常(ケーブル20の断線、信号線と電源線との短絡、地絡等)を検出することができる。また、回転体が回転している場合でも、信号線と電源線との短絡、地絡を検出可能である。
なお、ケーブル20の断線や短絡、地絡等と同じ現象がエンコーダ10の内部で起こったり、制御装置30の内部においてマイコン33の入力側で起こったような場合も同様にして異常を検出することができる。
【0056】
次に、マイコン33に入力されるディジタル信号を監視することにより、回転体が回転している時の異常を検出するための異常検出方法について詳述する。
図5は、A相のディジタル信号SigA(ディジタル信号処理手段31Aの出力信号)に異常が発生した場合の各部の出力信号を示すタイミングチャートである。なお、以下の説明はB相のディジタル信号SigBの異常時も同様である。
【0057】
まず、A相の信号線が電源線と短絡した等の理由によりA相のディジタル信号SigAが「H」レベルで固定されると、図1のA相のカウンタ335Aから出力されるパルスの数が減少し、B相のカウンタ335Bから出力されるパルスの数との間に誤差が発生する。従って、図1のパルス数比較異常検出部336が、制御周期Tsごとに両カウンタ335A,335Bのカウント値CountA1,CountB1を比較し、その差が所定の閾値より大きくなった場合に異常と判断する。
なお、制御周期Tsのタイミングにより、正常時でも両カウント値に±1程度の誤差を生じるので、上記の閾値は2より大きい値とすることが望ましい。図5の例では、カウント値CountA1が2、カウント値CountB1が5であるため、例えば閾値を2に設定することにより、異常を検出することができる。
また、信号線と電源線との短絡以外に、ケーブルの断線や地絡等によりディジタル信号が「L」レベルで固定された場合も、同様な原理によって検出可能である。
【0058】
図6は、A相のディジタル信号SigA及びB相のディジタル信号SigBの両方に異常が発生した場合の動作を示している。
図6の例では、カウント値CountA1,CountB1が何れも2であるため、前記パルス数比較異常検出部336や、第2の従来技術では異常を検出することができない。
この場合、本実施形態では、ディジタル信号SigA,SigBの排他的論理和である合成信号(信号合成手段32の出力信号)SigABが、図6に示すように「H」レベルのままで固定されるので、「H」レベルの幅を測定するタイマ338が更新されなくなる。従って、図1のパルス幅比較異常検出部339が、今回のタイマ値(パルス幅)を前回の制御周期Tsにおけるタイマ値と比較したり、あるいは周期測定タイマのオーバフローを検出する等の処理を実行すれば、ディジタル信号SigA,SigBの両方に異常が発生したことを容易に検出可能である。
【0059】
また、図7は、A相のディジタル信号SigAの位相に異常が発生した場合を示す。このようなA相のディジタル信号SigAの位相異常は、例えば、B相側と部分的に短絡する場合や、エンコーダ10内のトランジスタTr1,Tr2の故障等が考えられる。
このような場合、例えば第2の従来技術では、各相のパルス数には変化がなく、部分的な異常であって既に正常状態に移行しているとみなしてしまい、異常検出が不可能である。
これに対し、本実施形態では、タイマ338が合成信号SigABの「H」レベルの幅を測定しているため、今回のタイマ値を前回の制御周期Tsにおけるタイマ値と比較してその時間差を測定することにより、簡単に異常を検出することができる。
【0060】
図8は、上述した異常判断のフローチャートを示している。
まず、回転体が回転中か停止中かを判断する(ステップS1)。例えば、回転体が電動機の出力軸であり、エンコーダを用いて電動機速度や回転子位置を検出する場合、エンコーダの出力パルスが一定期間内に1以上検出されるか否か、または、電動機の速度指令値や運転指令フラグ、電圧指令値、電流検出値等の情報を参考にすれば、回転中か停止中かの判断は容易である。
【0061】
停止中であれば、アナログ信号の電圧レベルにより、前述したようにレベル異常検出部333A,333Bが異常判断を行い、検出したアナログ電圧Vadetが数式1及び数式2に基づく閾値の範囲内にあるか否かにより異常の有無を判断する(ステップS1 Yes,S2,S3)。
回転中であれば、パルス数比較異常検出部336により、パルス数の差が閾値を超えたか否かによって異常の有無を判断する(ステップS1 No,S6,S7)。また、パルス数の差が閾値を超えない場合には、パルス幅比較異常検出部339によりタイマ値(パルス幅)を前回値等と比較して異常の有無を判断する(ステップS7 No,S9,S10)。
【0062】
上記の各判断ステップにおいて異常と判断された場合には(ステップS3 Yes、またはS7 Yes、またはS10 Yes)、回転体すなわち電動機の運転を停止し、外部にアラームとして異常検出信号を出力する等、異常時の処理を実施する(ステップS4,S8,S11)。異常なしと判断された場合には(ステップS3 NoまたはS10 No)、正常モード処理として通常の制御を行うことにより運転を継続する(ステップS5,S12)。
なお、図3から明らかなように、タイマ338によるパルス幅の測定はパルス(合成信号SigAB)のエッジ毎に更新されるため、マイコン33の内部の多重割り込み処理を利用して、パルス数測定と異なる割り込みレベルで実行することができる。このようにすると、制御周期Ts内の一部のみで位相異常が発生した場合にも、見逃すことなく検出することができる。
【0063】
次いで、図9は本発明の第2実施形態を示す回路図である。
この第2実施形態が第1実施形態と異なるのは、制御装置内のマイコンを二重化して相互監視することにより、異常監視装置としての信頼性を向上させた点である。第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、以下では異なる部分を中心に説明する。
【0064】
図9において、制御装置300には二つのマイコン301X,301Yが内蔵されている。これらのマイコン301X,301Yは、図1と同様に、アナログ信号SigAana,SigBanaを処理するアナログ入力部331A,331B、AD変換部332A,332B、レベル異常検出部333A,333Bからなる第1の異常検出手段と、ディジタル信号SigA,SigBを処理するディジタル入力部334A,334B、カウンタ335A,335B、パルス数比較異常検出部336からなる第2の異常検出手段と、信号合成手段32により作成した合成信号SigABを処理する信号ディジタル入力部337、タイマ338、パルス幅比較異常検出部339からなる第3の異常検出手段と、をそれぞれ備えている。
【0065】
更に、一方のマイコン301Xには通信手段302X及びデータ比較手段303Xが設けられ、他方のマイコン301Yにも、通信手段302Y及びデータ比較手段303Yが設けられている。
ここで、通信手段302X,302Yは、各マイコン301X,301Yによる異常検出結果、アナログ信号の電圧レベル、ディジタル信号のパルス数、合成信号の「H」レベルのパルス幅等の検出データを他方のマイコンとの間で相互に送受信するためのものである。また、データ比較手段303X,303Yは、自己が受信した相手方の上記検出データを自己の検出データと比較し、その結果に応じて異常検出信号1,異常検出信号2を出力するためのものである。
【0066】
図9の例では、ディジタル信号処理手段31A,31B及び信号合成手段32の出力側でマイコン301X,301Yを二重化しているが、各マイコン301X,301Yの入力側にディジタル信号処理手段31A,31B及び信号合成手段32をそれぞれ設けて二重化しても良い。
また、マイコン301X,301Y同士の通信形態は、同期式でも非同期式でもよく、特に限定されるものではない。
【0067】
各マイコン301X,301Yによる異常検出動作は第1実施形態と同様であるため、ここでは詳述を省略する。
ただし、本実施形態では、相手方から受信したデータを、データ比較手段303X,303Yにより自己の異常検出結果、アナログ信号の電圧レベル、ディジタル信号のパルス数、パルス幅と比較し、これらが互いに相違する場合や、電圧レベル、パルス数、パルス幅のそれぞれの差が所定の閾値を超えていた場合に異常検出信号1または異常検出信号2を出力する。これらの異常検出信号は、二重化以降の配線の異常や、マイコンの内部機能(AD変換部、カウンタ、タイマ等)または通信系統の異常とみなすことができるから、異常検出信号1または異常検出信号2により、マイコン301X,301Yの機能を診断することができる。
なお、電圧レベル、パルス数、パルス幅の差と比較される上記閾値は、自由に設定可能であるが、マイコンの機能による異常が支配的であるので、誤検出のないように十分に余裕をもった値とすることが望ましい。
ここで、異常検出信号1、異常検出信号2には、本来のレベル異常検出、パルス数比較異常検出、パルス幅比較異常検出による異常検出結果を含めても良いのは勿論である。
【0068】
以上のように、本実施形態によれば、エンコーダからマイコンに至るまでの異常、及びマイコンの内部機能の異常も検出することができ、第1実施形態に比べて、異常監視装置としての信頼性を一層向上させることができる。
【0069】
次に、図10は本発明の第3実施形態を示す回路図である。
前述した第1,第2実施形態において、パルス幅比較異常検出部339がタイマ値(パルス幅)に基づいて異常を検出する場合、信号合成手段32により、位相の異なるA相,B相ディジタル信号SigA,SigBを合成して合成信号SigABを作成する必要がある。しかし、図3等から明らかなように、合成信号SigABの「H」レベルのパルス幅は元のディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルのパルス幅の1/2となる。このため、回転体が高速回転すると合成信号SigABの「H」レベルのパルス幅が短くなり、マイコンのクロック分解能の制約から、上記パルス幅がタイマによる計時間隔より短くなると測定が不可能になる。加えて、第1,第2実施形態ではマイコン内部で合成信号を作成することができず、外部に論理回路を付加して信号合成手段32を実現せざるを得ないので、これがコスト上昇の原因ともなる。
そこで、第3実施形態は、異常検出時の速度範囲を拡大し、しかもコストを一層低減するためになされたものである。
【0070】
以下、この第3実施形態の回路構成を説明する。なお、第1,第2実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図10において、310は制御装置であり、本実施形態では、前述した信号合成手段32が不要である点、及び、マイコン311の内部構成が先の第1,第2実施形態と異なっている。すなわち、ディジタル信号処理手段31A,31Bから出力されたA相,B相ディジタル信号SigA,SigBは、合成されることなくマイコン311内のディジタル入力部337A,337Bにそれぞれ入力されている。ディジタル入力部337A,337Bの出力側には、A相,B相ディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルの幅を測定するタイマ338A,338Bがそれぞれ接続され、タイマ338A,338Bの出力側にパルス幅比較異常検出部340が接続されている。ここで、パルス幅比較異常検出部340は、A相,B相のそれぞれについて、タイマ値(ディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルの幅)の前回値と今回値とを比較し、または、A相のタイマ値とB相のタイマ値とを比較し、これらが所定の閾値を超える場合に異常を検出するものである。
上記構成において、ディジタル入力部337A,337B、タイマ338A,338B及びパルス幅比較異常検出部340は、請求項における第4の異常検出手段を構成している。
【0071】
次いで、この第3実施形態の動作を説明する。なお、回転体の停止時における異常検出はアナログ信号に基づいて行うため、以下では、回転体の回転時におけるA相,B相ディジタル信号SigA,SigBに基づいた異常検出動作について説明する。
図11は、正常時におけるディジタル信号処理手段31A,31Bの出力信号、カウンタ335A,335B及びタイマ338A,338Bの出力信号を示すタイミングチャートである。なお、比較のために、第1実施形態における信号合成手段32の出力信号(合成信号SigAB)も併せて表示してある。
【0072】
図11におけるカウンタ335A,335Bの動作は図3と同一であるため、タイマ338A,338Bの動作を説明する。
タイマ338Aは、A相ディジタル信号SigAの立ち上がりで動作を開始し、立ち下がりでタイマ値を保存することにより、このタイマ値からA相ディジタル信号SigAの「H」レベルの幅を測定する。同様に、タイマ338Bは、B相ディジタル信号SigBの立ち上がりで動作を開始し、立ち下がりでタイマ値を保存することにより、このタイマ値からB相ディジタル信号SigBの「H」レベルの幅を測定する。なお、図11において、TA0,TA1,……,TB0,TB1,……はタイマ値(ディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルの幅)を示す。
パルス幅比較異常検出部340は、A相,B相のタイマ値の前回値と今回値とをそれぞれ比較し、図11の例では前回値と今回値とが等しいことから正常と判断する。
【0073】
図12は、A相ディジタル信号SigAに異常が発生した場合のタイミングチャートである。A相の信号線が電源線と短絡した等の理由によりA相のディジタル信号SigAが「H」レベルで固定されると、前述した図5と同様に、カウンタ335A,335Bによるカウント値CountA1,CountB1の差が所定の閾値(例えば2)より大きくなった場合に異常と判断する。ケーブルの断線や地絡等によりA相のディジタル信号SigAが「L」レベルで固定された場合や、B相ディジタル信号SigBに異常が発生した場合も、同様な原理によって異常を検出可能である。
【0074】
図13は、A相,B相ディジタル信号SigA,SigBの両方に異常が発生した場合のタイミングチャートである。
この場合、図13の例では、カウント値CountA1,CountB1が何れも2であるため、パルス数比較異常検出部336では異常を検出することができない。そこで、本実施形態では、A相,B相のタイマ値の前回値と今回値とをそれぞれ比較する。
すなわち、図13において、A相,B相共に、異常が発生する直前のディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルの幅(つまりタイマ値)TA1,TB1を測定するが、異常発生によりタイマ値を保存するためのディジタル信号SigA,SigBの立ち下がりエッジが現れないので、異常発生後はA相,B相共にタイマ値が加算されていく。そこで、所定のタイミングでA相,B相について今回加算中のタイマ値TA1,TB1を前回のタイマ値TA0,TB0とそれぞれ比較すれば、TA1とTA0との間、TB1とTB0との間にはそれぞれ大きな差があるため、これらの差が所定の閾値を超えた場合にA相,B相ディジタル信号SigA,SigBの両方に異常が発生したことが検出される。
【0075】
また、図14は、A相ディジタル信号SigAの位相に異常が発生した場合のタイミングチャートである。図7において説明したように、このような位相異常は、B相側との部分的な短絡やエンコーダ10内のトランジスタTr1,Tr2の故障等に起因するものである。
この場合、A相,B相ディジタル信号SigA,SigBのパルス数には閾値(例えば2)以上の差はないが、異常であるA相のタイマ値と正常なB相のタイマ値との間、つまりTAerr1とTB1との間、TAerr2とTB2との間にはそれぞれ差が生じている。更に、例えばA相ディジタル信号SigAの今回のタイマ値TAerr1と前回のタイマ値TA1との間にも差が生じている。
【0076】
そこで、本実施形態では、パルス幅比較異常検出部340が、タイマ値TAerr1とTB1との差、またはタイマ値TAerr2とTB2と差、あるいはタイマ値TAerr1とTA1との差が所定の閾値よりも大きいことをもってA相ディジタル信号SigAの異常を検出する。
なお、図13や図14に示した異常は、例えば第1実施形態によっても検出可能であるが、第3実施形態では、A相,B相ディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルの幅を測定するため、この幅は、第1実施形態の測定対象である合成信号SigABの「H」レベルの幅に対して2倍である。従って、同じクロック周波数のマイコンを使用した場合には、第1実施形態と比べて2倍の回転速度まで測定可能であり、速度範囲を拡大することができる。
更に、第3実施形態によれば、第1,第2実施形態における信号合成手段32としての論理回路が不要になるので、回路構成の簡略化による小型化及びコストの低減が可能になる。
【0077】
第3実施形態による異常判断のフローチャートは、基本的に前述した図8と同様であるが、第3実施形態では、図8のパルス幅計測ステップ(S9)及び異常判断ステップ(S10)において、合成信号SigABを対象とするのではなく、A相,B相ディジタル信号SigA,SigBの「H」レベルの幅を個別に測定して異常判断を行う点が異なっている。
【0078】
次に、図15は本発明の第4実施形態を示す回路図である。この第4実施形態は、第3実施形態における制御装置内のマイコンを二重化することにより、相互監視を可能にしたものである。
すなわち、図15において、制御装置320は2台のマイコン311X,311Yを備えている。これらのマイコン311X,311Yは、図10に示したマイコン311と同一の検出ブロック(アナログ入力部331A,331B、AD変換部332A,332B、レベル異常検出部333A,333B、ディジタル入力部334A,334B、カウンタ335A,335B、パルス数比較異常検出部336、ディジタル入力部337A,337B,タイマ338A,338B、パルス幅比較異常検出部340からなる)を備えている。また、一方のマイコン311Xは通信手段312X及びデータ比較手段313Xを備え、他方のマイコン311Yも通信手段312Y及びデータ比較手段313Yを備えている。
【0079】
通信手段312X,312Yは、各マイコン311X,311Yによる異常検出結果、アナログ信号の電圧レベル、ディジタル信号のパルス数及び「H」レベルのパルス幅等の検出データを他方のマイコンとの間で相互に送受信する。また、データ比較手段313X,313Yは、自己が受信した相手方の上記検出データを自己の検出データと比較し、その結果に応じて異常検出信号1,異常検出信号2を出力するためのものである。
なお、マイコン311X,311Yを二重化する位置やマイコン311X,311Y同士の通信形態については、図9の第2実施形態と同様に任意に選択可能である。
【0080】
本実施形態においても、通信手段312X,312Yが相手方のマイコンから受信したデータを、データ比較手段313X,313Yが、自己の異常検出結果、アナログ信号の電圧レベル、ディジタル信号のパルス数、パルス幅と比較する。そして、これらのデータが互いに相違する場合や、電圧レベル、パルス数、パルス幅のそれぞれの差が所定の閾値を超えていた場合に、異常検出信号1または異常検出信号2を出力する。これにより、マイコン311X,311Yの機能を診断することができる。
なお、異常検出信号1、異常検出信号2には、本来のレベル異常検出、パルス数比較異常検出、パルス幅比較異常検出による異常検出結果を含めても良い。
本実施形態によれば、エンコーダからマイコンに至るまでの異常、及びマイコンの内部機能の異常も検出することができるため、第3実施形態に比べて、異常監視装置としての信頼性を一層向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、電動機ばかりでなく、各種の回転体の回転速度や位置(角度)を検出するエンコーダ及びその配線系統の異常監視に利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
10:エンコーダ
20:ケーブル
30,300,310,320:制御装置
31A,31B:ディジタル信号処理手段
32:信号合成手段
33,301X,301Y,311,311X,311Y:マイコン
302X,302Y,312X,312Y:通信手段
303X,303Y,313X,313Y:データ比較手段
331A,331B:アナログ入力部
332A,332B:AD変換部
333A,333B:レベル異常検出部
334A,334B:ディジタル入力部
335A,335B:カウンタ
336:パルス数比較異常検出部
337,337A,337B:ディジタル入力部
338,338A,338B:タイマ
339,340:パルス幅比較異常検出部
Tr1,Tr2:トランジスタ
R1:制限抵抗
Rx,Ry:分圧抵抗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の位置を検出するエンコーダの出力信号が、電源線及び信号線を含む配線系統を介して制御装置にアナログ信号として入力され、前記制御装置が、アナログ入力信号を処理して前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する異常監視装置において、
前記制御装置は、
アナログ入力信号をディジタル信号に変換し、このディジタル信号から検出したアナログ入力信号の電圧レベルに基づいて前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する第1の異常検出手段と、
少なくとも二つの前記アナログ入力信号をそれぞれ変換して得たディジタル信号のパルス数に基づいて前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する第2の異常検出手段と、
第2の異常検出手段において得られた少なくとも二つのディジタル信号を合成し、この合成信号のパルス幅に基づいて前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する第3の異常検出手段と、
を備えたことを特徴とする異常監視装置。
【請求項2】
回転体の位置を検出するエンコーダの出力信号が、電源線及び信号線を含む配線系統を介して制御装置にアナログ信号として入力され、前記制御装置が、アナログ入力信号を処理して前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する異常監視装置において、
前記制御装置は、
アナログ入力信号をディジタル信号に変換し、このディジタル信号から検出したアナログ入力信号の電圧レベルに基づいて前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する第1の異常検出手段と、
少なくとも二つの前記アナログ入力信号をそれぞれ変換して得たディジタル信号のパルス数に基づいて前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する第2の異常検出手段と、
少なくとも二つの前記アナログ入力信号をそれぞれ変換して得たディジタル信号のパルス幅に基づいて前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する第4の異常検出手段と、
を備えたことを特徴とする異常監視装置。
【請求項3】
請求項1に記載した異常監視装置において、
前記回転体の停止時には第1の異常検出手段により異常を検出し、前記回転体の回転時には、第2または第3の異常検出手段により異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項4】
請求項2に記載した異常監視装置において、
前記回転体の停止時には第1の異常検出手段により異常を検出し、前記回転体の回転時には、第2または第4の異常検出手段により異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載した異常監視装置において、
前記制御装置のアナログ入力信号の電圧レベルが、前記エンコーダの出力が「High」レベルの時には電源電圧からバイアス分を減算したアナログハイレベルとなり、かつ、前記エンコーダの出力が「Low」レベルの時にはグランドレベルにバイアス分を加算したアナログローレベルとなるバイアス発生手段を備え、
第1の異常検出手段は、
アナログ入力信号の電圧レベルが、前記アナログハイレベルと前記アナログローレベルとの間に存在する場合に信号線または電源線の断線と判断し、前記アナログハイレベルよりも電源電圧に近い場合に信号線と電源線との短絡と判断し、前記アナログローレベルよりもグランドレベルに近い場合に信号線の地絡と判断することを特徴とする異常監視装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載した異常監視装置において、
第2の異常検出手段は、少なくとも二つのアナログ入力信号からそれぞれ変換したディジタル信号のパルスのエッジを検出してパルス数をそれぞれ求め、これらのパルス数の差が所定の閾値以上である場合に異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項7】
請求項1または3に記載した異常監視装置において、
第3の異常検出手段は、一定周期における前記合成信号のパルス幅を過去の同一周期におけるパルス幅と比較し、両パルス幅に差がある場合に異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項8】
請求項2または4に記載した異常監視装置において、
第4の異常検出手段は、一定周期における前記アナログ入力信号を変換して得たディジタル信号のパルス幅を、過去の同一周期におけるディジタル信号のパルス幅と比較し、両パルス幅に差がある場合に異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項9】
請求項2または4に記載した異常監視装置において、
第4の異常検出手段は、一定周期における二以上の前記アナログ入力信号をそれぞれ変換して得たディジタル信号のパルス幅の差が所定の閾値以上である場合に異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項10】
請求項1または3に記載した異常監視装置において、
前記制御装置は演算処理装置を備え、
この演算処理装置が、第1の異常検出手段におけるアナログ/ディジタル変換機能と、第2の異常検出手段におけるパルス数の測定機能と、第3の異常検出手段におけるパルス幅の測定機能とを有することを特徴とする異常監視装置。
【請求項11】
請求項2または4に記載した異常監視装置において、
前記制御装置は演算処理装置を備え、
この演算処理装置が、第1の異常検出手段におけるアナログ/ディジタル変換機能と、第2の異常検出手段におけるパルス数の測定機能と、第4の異常検出手段におけるパルス幅の測定機能とを有することを特徴とする異常監視装置。
【請求項12】
請求項1または3に記載した異常監視装置において、
複数多重化された前記演算処理装置が、第1の異常検出手段により検出したアナログ入力信号の電圧レベル、第2の異常検出手段により測定したパルス数、及び、第3の異常検出手段により測定したパルス幅を含むデータを相互に送受信し、各演算処理装置が、送受信した前記データを比較して演算処理装置の異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項13】
請求項2または4に記載した異常監視装置において、
複数多重化された前記演算処理装置が、第1の異常検出手段により検出したアナログ入力信号の電圧レベル、第2の異常検出手段により測定したパルス数、及び、第4の異常検出手段により測定したパルス幅を含むデータを相互に送受信し、各演算処理装置が、送受信した前記データを比較して演算処理装置の異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項1】
回転体の位置を検出するエンコーダの出力信号が、電源線及び信号線を含む配線系統を介して制御装置にアナログ信号として入力され、前記制御装置が、アナログ入力信号を処理して前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する異常監視装置において、
前記制御装置は、
アナログ入力信号をディジタル信号に変換し、このディジタル信号から検出したアナログ入力信号の電圧レベルに基づいて前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する第1の異常検出手段と、
少なくとも二つの前記アナログ入力信号をそれぞれ変換して得たディジタル信号のパルス数に基づいて前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する第2の異常検出手段と、
第2の異常検出手段において得られた少なくとも二つのディジタル信号を合成し、この合成信号のパルス幅に基づいて前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する第3の異常検出手段と、
を備えたことを特徴とする異常監視装置。
【請求項2】
回転体の位置を検出するエンコーダの出力信号が、電源線及び信号線を含む配線系統を介して制御装置にアナログ信号として入力され、前記制御装置が、アナログ入力信号を処理して前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する異常監視装置において、
前記制御装置は、
アナログ入力信号をディジタル信号に変換し、このディジタル信号から検出したアナログ入力信号の電圧レベルに基づいて前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する第1の異常検出手段と、
少なくとも二つの前記アナログ入力信号をそれぞれ変換して得たディジタル信号のパルス数に基づいて前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する第2の異常検出手段と、
少なくとも二つの前記アナログ入力信号をそれぞれ変換して得たディジタル信号のパルス幅に基づいて前記エンコーダまたは前記配線系統の異常を検出する第4の異常検出手段と、
を備えたことを特徴とする異常監視装置。
【請求項3】
請求項1に記載した異常監視装置において、
前記回転体の停止時には第1の異常検出手段により異常を検出し、前記回転体の回転時には、第2または第3の異常検出手段により異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項4】
請求項2に記載した異常監視装置において、
前記回転体の停止時には第1の異常検出手段により異常を検出し、前記回転体の回転時には、第2または第4の異常検出手段により異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載した異常監視装置において、
前記制御装置のアナログ入力信号の電圧レベルが、前記エンコーダの出力が「High」レベルの時には電源電圧からバイアス分を減算したアナログハイレベルとなり、かつ、前記エンコーダの出力が「Low」レベルの時にはグランドレベルにバイアス分を加算したアナログローレベルとなるバイアス発生手段を備え、
第1の異常検出手段は、
アナログ入力信号の電圧レベルが、前記アナログハイレベルと前記アナログローレベルとの間に存在する場合に信号線または電源線の断線と判断し、前記アナログハイレベルよりも電源電圧に近い場合に信号線と電源線との短絡と判断し、前記アナログローレベルよりもグランドレベルに近い場合に信号線の地絡と判断することを特徴とする異常監視装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載した異常監視装置において、
第2の異常検出手段は、少なくとも二つのアナログ入力信号からそれぞれ変換したディジタル信号のパルスのエッジを検出してパルス数をそれぞれ求め、これらのパルス数の差が所定の閾値以上である場合に異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項7】
請求項1または3に記載した異常監視装置において、
第3の異常検出手段は、一定周期における前記合成信号のパルス幅を過去の同一周期におけるパルス幅と比較し、両パルス幅に差がある場合に異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項8】
請求項2または4に記載した異常監視装置において、
第4の異常検出手段は、一定周期における前記アナログ入力信号を変換して得たディジタル信号のパルス幅を、過去の同一周期におけるディジタル信号のパルス幅と比較し、両パルス幅に差がある場合に異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項9】
請求項2または4に記載した異常監視装置において、
第4の異常検出手段は、一定周期における二以上の前記アナログ入力信号をそれぞれ変換して得たディジタル信号のパルス幅の差が所定の閾値以上である場合に異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項10】
請求項1または3に記載した異常監視装置において、
前記制御装置は演算処理装置を備え、
この演算処理装置が、第1の異常検出手段におけるアナログ/ディジタル変換機能と、第2の異常検出手段におけるパルス数の測定機能と、第3の異常検出手段におけるパルス幅の測定機能とを有することを特徴とする異常監視装置。
【請求項11】
請求項2または4に記載した異常監視装置において、
前記制御装置は演算処理装置を備え、
この演算処理装置が、第1の異常検出手段におけるアナログ/ディジタル変換機能と、第2の異常検出手段におけるパルス数の測定機能と、第4の異常検出手段におけるパルス幅の測定機能とを有することを特徴とする異常監視装置。
【請求項12】
請求項1または3に記載した異常監視装置において、
複数多重化された前記演算処理装置が、第1の異常検出手段により検出したアナログ入力信号の電圧レベル、第2の異常検出手段により測定したパルス数、及び、第3の異常検出手段により測定したパルス幅を含むデータを相互に送受信し、各演算処理装置が、送受信した前記データを比較して演算処理装置の異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【請求項13】
請求項2または4に記載した異常監視装置において、
複数多重化された前記演算処理装置が、第1の異常検出手段により検出したアナログ入力信号の電圧レベル、第2の異常検出手段により測定したパルス数、及び、第4の異常検出手段により測定したパルス幅を含むデータを相互に送受信し、各演算処理装置が、送受信した前記データを比較して演算処理装置の異常を検出することを特徴とする異常監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−203903(P2010−203903A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49375(P2009−49375)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
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