説明

発光ダイオードチップおよびその製造方法

【課題】 パッケージのサイズを大きくすることなく、発光部分の面積を大きくして、駆動電圧の上昇を抑制し、信頼性を向上することができる発光ダイオードチップおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体基板2上に複数の一導電型半導体層3および島状の逆導電型半導体層4が積層されて構成される各発光部6を複数設け、各発光部6をそれぞれ共通の第1および第2共通電極7,8に電気的に接続する。第1共通電極7と第2共通電極8とに電圧を印加することによって、並列接続される全ての発光部6の接合部分5において発光が生じるので、各発光部6に電流を分散させて、各発光部6における電流密度の上昇を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明、露光などに用いられる発光ダイオードチップおよびその製造方向に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード素子は発光電力効率に優れるため、信号表示用のほか、高輝度の照明装置としても用いられている。従来の技術として、発光ダイオード(Light Emitting Diode:略称LED)素子を取り扱いが容易な小型パッケージに封止した発光ダイオードチップが知られている(たとえば、特許文献1参照)。このような、発光ダイオードチップでは、小型基板上に複数のLED素子をダイボンドペースト材によって搭載している。そして、各LED素子のアノード側またはカソード側をワイヤボンディングによって共通の電極に電気的に接続している。
【0003】
【特許文献1】特開2006−339541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パッケージの小型化が進むに伴い、LED素子のサイズもより小さいものが求められている。たとえば、600μm×300μm程度のパッケージには、従来のようなワイヤボンディングによって素子を電極で個別に接続する技術では、複数のLED素子を搭載することが難しく、LED素子は1つしか搭載することができない。このような小型の発光ダイオード装置においては、電流密度が大きくなるため駆動電流が大きくなって信頼性が低下し、また駆動電圧が大きくなるという問題がある。また駆動電流を上昇させても、発光量の増加は見込めないという問題がある。
【0005】
そこで本発明は前記問題に鑑み、パッケージのサイズを大きくすることなく、発光部分の面積を大きくして、駆動電圧の上昇を抑制し、信頼性を向上することができる発光ダイオードチップおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光ダイオードチップは、半導体基板と、
該半導体基板上に形成される一導電型半導体層と、該一導電型半導体層に積層される逆導電型半導体層との接合部分をそれぞれが含み、前記接合部分が離間して設けられる複数の発光部と、
前記半導体基板上に設けられ、前記各発光部に含まれる前記一導電型半導体層と電気的に接続される第1共通電極と、
前記半導体基板上に設けられ、前記各発光部に含まれる前記逆導電型半導体層と電気的に接続される第2共通電極と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また本発明に係る発光ダイオードチップの製造方法は、半導体基板を準備する工程と、
前記半導体基板上に、一導電型半導体層と、逆導電型半導体層とを順次形成する工程と、
前記逆導電型半導体層の一部を除去することによって、それぞれ離間した複数の逆導電型半導体層を形成する工程と、
前記一導電型半導体層と電気的に接続される第1共通電極と、前記複数の逆導電型半導体層と電気的に並列に接続される第2共通電極とを形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発光ダイオードチップによれば、半導体基板上に形成される一導電型半導体層と、この一導電型半導体層に積層される逆導電型半導体層との接合部分をそれぞれ含む複数の発光部が、互いに離間した状態で設けられている。一導電型半導体層および逆導電型半導体層は、半導体基板上に結晶成長などによって直接形成されるので、パッケージの小型化に伴って半導体基板のサイズを小さくしても、半導体基板上に複数の発光部を設けることができる。各発光部は、それぞれ共通の第1共通電極および第2共通電極に電気的に接続されているので、第1共通電極と第2共通電極とに電圧を印加することによって、並列接続される全ての発光部の接合部分において発光が生じるので、各発光部に電流を分散させて、各発光部における電流密度の上昇を抑制することができる。これによって、駆動電圧の上昇を抑制することができ、信頼性を向上させることができ、また駆動電流に伴って発光量を増加させることができる。
【0009】
本発明の発光ダイオードチップの製造方法によれば、半導体基板上に一導電型半導体層と、逆導電型半導体層とを順次積層して、前記逆導電型半導体層の一部を除去して、それぞれ離間した複数の逆導電型半導体層を形成することによって、簡単に半導体基板上に複数の発光部を形成することができる。
【0010】
一導電型半導体層は、各発光部において共通に接続されているので、第1共通電極を一導電型半導体層と電気的に接続することによって、別体で配線を形成することなく、第1共通電極を各発光部に接続することができる。したがって、発光ダイオードチップの製造工程を低減し、また製造に必要な余分な材料を低減して、生産性の向上および生産コストの削減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の実施の一形態の発光ダイオードチップ1の構成を模式的に示す斜視図である。図2は、図1の切断面線A−Aから見た断面図である。図3は、発光ダイオードチップ1の平面図である。なお図1および図3では、図面が煩雑となるのを防止するために、一導電型半導体層3、絶縁層11および保護層12を省略して記載している。
【0012】
発光ダイオードチップ1は、半導体基板2と、半導体基板2上に形成される一導電型半導体層3と、一導電型半導体層3に積層される逆導電型半導体層4との接合部分5をそれぞれが含み、接合部分5が島状に設けられる複数の発光部6と、半導体基板2上に設けられ、各発光部6に含まれる一導電型半導体層3と電気的に接続される第1共通電極7と、半導体基板2上に設けられ、各発光部6に含まれる逆導電型半導体層4と電気的に接続される第2共通電極8と、第2共通電極8および各発光部6に含まれる逆導電型半導体層4とを電気的に接続する接続配線9とを含んで構成される。本実施の形態では、発光部6の数は8つに選ばれている。発光ダイオードチップ1は、絶縁層11および保護層12をさらに備える。
【0013】
半導体基板2は、高抵抗または絶縁性を有する。半導体基板2は、たとえばシリコン(Si)またはガリウム砒素(GaAs)によって形成される。半導体基板2は、一導電型の不純物がドーピングされた一導電型のSiまたはGaAsによって形成されてもよく、ノンドープのSiまたはGaAsによって形成されてもよい。半導体基板2は直方体の板形状に形成される。半導体基板2をSiによって形成する場合には、GaAsによって形成する場合と比較して、加工しやすく、安価であり、放熱性を向上させることができる。
【0014】
一導電型半導体層3は、半導体基板2の厚み方向Zの一方の主面2aの全面に積層して形成される。一導電型半導体層3は、一導電型の不純物がドーピングされた一導電型のGaAsによって形成される。一導電型半導体層3のうち発光部6を構成する部分では、発光部6を構成しない部分と比較して厚さが大きく形成される。この一導電型半導体層3の厚さが部分的に異なるのは、後述する製造プロセス上において生じるものであり、一導電型半導体層3の厚さは均一に形成されていてもよい。
【0015】
逆導電型半導体層4は、一導電型半導体層3の厚み方向Zの一方に積層され、前記厚さが大きい部分に設けられる。逆導電型半導体層4は、たとえば逆導電型の不純物がドーピングされた逆導電型のGaAsによって形成される。複数の逆導電型半導体層4は、相互に間隔をあけて島状に形成されており、前記厚み方向Zに垂直で、かつ相互に垂直であって、主面2aの周縁辺の各辺に平行または垂直な第1方向Xおよび第2方向Yに離間して形成されている。本実施の形態では、第1方向Xを半導体基板2の主面2aの長手方向とし、第2方向Yを半導体基板2の主面2aの短手方向とする。複数の逆導電型半導体層4は、複数の列に並んで配列され、マトリクス状に設けられる。第1方向Xに隣接する逆導電型半導体層4の間隔T1と、第2方向Yに隣接する逆導電型半導体層4の間隔T2とは、たとえば1μm以上10μm未満に選ばれる。本実施の形態では、第1方向Xに4つ配列され、第2方向Yに2つ配列されている。逆導電型半導体層4は、第1方向Xの両端部13を除く領域に形成される。
【0016】
一導電型半導体層3と一導電型半導体層3に積層される逆導電型半導体層4との接合部分5を含む発光部6は、PN接合のダイオード素子を構成している。本実施の形態では、一導電型は、N型であり、逆導電型は、P型としているが、一導電型が、P型であり、逆導電型が、N型に選ばれていてもよい。また半導体基板2をSiによって形成し、一導電型半導体層3および逆導電型半導体層4をGaAsによって形成すると、SiとGaAsとの格子定数の相違によって一導電型半導体層3および逆導電型半導体層4にひずみが生じ、半導体基板2をGaAsによって形成する場合よりも、一導電型半導体層3および逆導電型半導体層4におけるバンドギャップが狭くなり、放射される光の波長が低波長側に20nm程度シフトする。たとえば850nmの波長の光を放射させる場合には、AlGaAsが用いられているが、半導体基板2をSiによって形成し、一導電型半導体層3および逆導電型半導体層4をGaAsによって形成するだけで、同様に850nm程度の波長の光を放射する発光部6を形成することができ、酸化し易いAlを含む材料を用いる必要がなくなるので、製造プロセスにおける手間を低減することができる。
【0017】
一導電型半導体層3および複数の逆導電型半導体層4には、前記発光部6のうち逆導電型半導体層4の一表面4aの中央部と、半導体基板2の第1方向Xにおける端部13のうち一方の端部13aとを除く領域に、絶縁層11が積層されている。絶縁層11は、電気絶縁性を有し、かつ発光部6から放射される光を透過する材料によって形成され、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO)またはポリイミドなどから成る。
【0018】
第1共通電極7は、半導体基板2の第1方向Xにおける一方の端部13aに設けられ、前記絶縁層11が設けられていない領域で、一導電型半導体層3に接触して設けられる。第1共通電極7は、半導体基板2の第1方向Xにおける両端部間にわたって形成されている。第1共通電極7が一導電型半導体層3に接触して設けられ、各発光部6に含まれる一導電型半導体層3が連なって形成されているので、電流が一導電型半導体層3を流れるので、半導体基板2を介して電流を流す場合と比較して、電流が流れやすく発光ダイオードチップ1における発熱を抑制することができる。一導電型半導体層3の不純物濃度は、1E+17atoms/cc〜1E+19atoms/cc程度に選ばれている。
【0019】
第2共通電極8は、半導体基板2の第1方向Xにおける他方の端部13bに設けられ、前記絶縁層11に積層して設けられる。第2共通電極8は、半導体基板2の第1方向Xにおける両端部間にわたって形成されている。しがたって第1および第2共通電極8間に、前記複数の発光部6が設けられている。
【0020】
接続配線9は複数形成されており、各接続配線9は逆導電型半導体層4および絶縁層11に積層して設けられ、それぞれ第2共通電極8に接続されている。各接続配線9は、第2共通電極8から第1方向Xに沿って延び、第1方向Xに並ぶ複数の発光部6の逆導電型半導体層4にそれぞれ接続される。発光部6のうち逆導電型半導体層4の一表面4aの中央部は、絶縁層11に形成される貫通孔14から露出する。前記貫通孔14に接続配線9の一部が形成されて、接続配線9は各逆導電型半導体層4と接触する。このように接続配線9によって複数の発光部6の逆導電型半導体層4を並列に接続することによって、各発光部6と第2共通電極8とを個別に接続する場合と比較して、配線の数および面積を小さくすることができる。
【0021】
各発光部6の一導電型半導体層3と逆導電型半導体層4との接合面15の大きさは、一辺がL1の正方形となるように形成される。前記L1は、たとえば100μm程度に選ばれる。接続配線9の第2方向Yの幅W1は、L1の2%以上10%未満に選ばれる。接続配線9の幅が2μm未満になると接続配線の断線するおそれがあり、10μm以上になると、各発光部6からの光が接続配線9によって反射されてしまい、外部に照射される光量が低下するおそれがあるので、前述のような範囲に選ぶことによって、接続配線9による接続の信頼性を保持しつつも、外部に照射される光量をできるだけ多くすることができる。
【0022】
第1および第2共通電極7,8と、接続配線9とは、金属から成り、たとえばAuCrまたはAg、あるいは、AuSb、AuSiまたはAuGe等の合金によって形成されている。前述した絶縁層11は、一導電型半導体層3と、接続配線9および第2共通電極8とが導通することを防止するために形成されるものであって、少なくとも一導電型半導体層3と、接続配線9および第2共通電極8とのそれぞれの間に形成されていればよい。
【0023】
保護層12は、接続配線9を保護するために形成され、第1および第2共通電極7,8と少なくとも一部分を露出させた状態で、接続配線9と、絶縁層11とを覆って形成されている。保護層12は、発光部6から放射される光を透過する材料によって形成され、SiN、SiOまたはポリイミドなどから成る。アクリルやエポキシなど透光性を有する合成樹脂からなる。保護層12は、接続配線9のみを覆って形成されていればよく、絶縁層11を全て覆う必要はない。
【0024】
次に発光ダイオードチップ1の製造工程について説明する。図4は、発光ダイオードチップ1の製造工程を示す断面図である。発光ダイオードチップ1は、1つの半導体ウェハを用いて、複数個がまとめて製造されるが、図4では、1つの発光ダイオードチップ1となる部分について図示している。
【0025】
製造工程を開始すると、まず第1工程では、半導体基板2となる半導体ウェハを準備する。以下、半導体ウェハについても半導体基板2と記載する。
【0026】
次に第2工程では、半導体基板2の厚み方向の主面2a上に、一導電型半導体層3を形成する材料から成る半導体膜21と、逆導電型半導体層4を形成する材料から成る半導体膜22とを順次形成する。図4(1)は、第2工程の終了時における発光ダイオードチップ1の断面図である。半導体膜21,22は、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって形成される。
【0027】
次に第3工程では、半導体膜22一部を除去することによって、それぞれ離間した複数の逆導電型半導体層4を形成する。図4(2)は、第3工程の終了時における発光ダイオードチップ1の断面図である。第3工程では、半導体膜22にフォトレジスト膜を積層して、パターニングを行ってその一部をエッチングによって除去し、半導体膜22のうち前記フォトレジスト膜から露出する部分をエッチングして、互いに離間した複数の逆導電型半導体層4が形成される。第3工程では、複数の逆導電型半導体層4の間を完全に分離するために、半導体膜22の一部とともに、半導体膜21の一部を除去する。これによって、一部で厚さの異なる一導電型半導体層3が形成される。
【0028】
次に第4工程では、絶縁層11を形成する。図4(3)は、第4工程の終了時における発光ダイオードチップ1の断面図である。第4工程では、一導電型半導体層3と逆導電型半導体層4との積層体に絶縁層11の材料から成る絶縁膜を積層し、この絶縁膜にフォトレジスト膜を積層して、パターニングを行ってその一部をエッチングによって除去し、絶縁膜のうちフォトレジスト膜から露出する部分をエッチングする。
【0029】
次に第5工程では、第1および第2共通電極8,9ならびに接続配線9を形成する。図4(4)は、第5工程の終了時における発光ダイオードチップ1の断面図である。第5工程では、絶縁層11と、一導電型半導体層3および逆導電型半導体層4からそれぞれ露出する部分とに、第1および第2共通電極8,9ならびに接続配線9の材料から成る金属膜を積層し、この金属膜にフォトレジスト膜を積層して、パターニングを行ってその一部をエッチングによって除去し、金属膜のうちフォトレジスト膜から露出する部分をエッチングする。金属膜は、たとえばスパッタリング法によって形成される。
【0030】
次に第6工程では、保護層12を形成する。第6工程では、第1および第2共通電極8,9ならびに接続配線9と、絶縁層11とを覆って、保護層12の材料から成る保護膜を積層し、この保護膜にフォトレジスト膜を積層して、パターニングを行ってその一部をエッチングによって除去し、保護膜のうちフォトレジスト膜から露出する部分をエッチングする。
【0031】
次に第7工程では、発光ダイオードチップ1の前駆体をダイシングし、個片化することによって発光ダイオードチップ1が形成される。以上の工程を終了することによって、図2に示すような断面を有する発光ダイオードチップ1を製造することができる。
【0032】
以上のような発光ダイオードチップ1では、一導電型半導体層3および逆導電型半導体層4は、半導体基板2上に結晶成長によって直接形成されるので、パッケージの小型化に伴って半導体基板2のサイズを小さくしても、半導体基板2上に複数の発光部6を設けることができる。各発光部6は、それぞれ共通の第1および第2共通電極7,8に電気的に接続されているので、第1共通電極7と第2共通電極8とに電圧を印加することによって、並列接続される全ての発光部6の接合部分5において発光が生じるので、各発光部6に電流を分散させて、各発光部6における電流密度の上昇を抑制することができる。これによって、駆動電圧の上昇を抑制することができ、信頼性を向上させることができ、また駆動電流に伴って発光量を増加させることができる。したがって、パッケージのサイズを大きくしなくても、光量を増加させることができ、発光ダイオードチップ1を用いて小型の発光装置を構成することができる。
【0033】
また発光ダイオードチップ1の製造方法によれば、半導体基板2上に一導電型半導体層3を形成する材料から成る半導体膜21と、逆導電型半導体層4を形成する材料から成る半導体膜22とを順次形成して半導体膜22の一部を除去して、それぞれ離間した複数の逆導電型半導体層4を形成することによって、簡単に半導体基板2上に複数の発光部6を形成することができる。一導電型半導体層3は、各発光部6において共通に接続されているので、第1共通電極7を一導電型半導体層3と電気的に接続することによって、別体で配線を形成することなく、第1共通電極を各発光部に接続することができる。したがって、発光ダイオードチップの製造工程を低減し、また製造に必要な余分な材料を低減して、生産性の向上および生産コストの削減が可能となる。
【0034】
図5は、本発明の実施の他の形態における発光ダイオードチップ30の一部を示す平面図である。図5では、図面が煩雑となるのを防止するために、一導電型半導体層3、絶縁層11および保護層12を省略して記載している。本実施の形態と図1〜図4に示す前述の実施の形態とでは、接続配線9の形状が異なるのみであり、他の構成は同様であるので、同様の部分には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0035】
本実施の形態における接続配線9は、第2方向Yの長さが異なる第1部分31と第2部分32とが、第1方向Xに連なって形成されている。第1部分31は、逆導電型半導体層4に積層して形成されており、第2部分32は、各発光部6の第1方向Xの両端部と、発光部6の間の保護層12とを一体的に覆って形成されている。すなわち第2部分32は、発光部6の第1方向Xにおける側部を覆って形成されている。第2部分32は、その一部が逆導電型半導体層4に厚み方向Zに重なる位置にも形成されている。第1部分31の幅は、発光部6の第2方向Yの幅よりも小さい前述したW1に形成され、第1部分32の幅は、発光部6の第2方向Yの幅よりも大きくなるように形成されている。発光部6が設けられる部分、すなわち逆導電型半導体層4が設けられている部分は逆導電型半導体層4が設けられていない部分と比較して突出しており、接続配線9はこのような凹凸部分に形成されることになる。接続配線9に第2部分32を設けることによって、段差が形成されている部分において、接続配線9の接続の信頼性を向上させることができる。
【0036】
また第2部分32は、発光部6の側方を覆うことになるので、この側方に向かう光を反射することができ、これによって発光部6から厚み方向Zに向かう光をより多く取り出せるようになる。また第2部分32は、第1方向Xの両端部の発光部6の第1方向Xの外側の端部にもそれぞれ形成されていており、これによって第1方向Xの側方への光の拡散を抑制することができる。
【0037】
本実施の形態では、図3に示すように、各接続配線9は相互に離間して形成されているが、本発明の実施のさらに他の形態では、各接続配線9の第2部分32は、相互に連なって形成されてもよい。具体的には、第2共通電極8以外の場所で各接続配線を電気的に接続する接続部を備えていてもよい。これによって複数の接続配線9が、第2共通電極8を介さなくても電気的に接続され、1つの接続配線9の一部が断絶したとしても、接続部から電流を供給することができ、信頼性を向上させることができる。
【0038】
図6は、本発明の実施のさらに他の形態における発光ダイオードチップ40の一部を示す平面図である。図6では、図面が煩雑となるのを防止するために、一導電型半導体層3、絶縁層11および保護層12を省略して記載している。本実施の形態と図1〜図4に示す前述の実施の形態とでは、接続配線9の形状が異なるのみであり、他の構成は同様であるので、同様の部分には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
本実施の形態における接続配線9は、第2共通電極8から第1方向Xに延びる2つの配線部分41,42を備える。配線部分41,42は、第2方向Yに間隔をあけて形成され、それぞれが各発光部6の逆導電型半導体層4の第2方向Yの端部に接続され、逆導電型半導体層4の第2方向Yの両端部間には積層されない。このように接続配線9を形成することによって、発光部6の中央部から強く放射される光を接続配線9によって遮ることなく、厚み方向Zに取り出すことができ、外部に取り出すことができる光量を増加させることができる。絶縁層11には、逆導電型半導体層4に積層される部分で、かつ配線部分41,42が積層される部分に貫通孔43がそれぞれ形成されている。各配線部分41,42は、発光部6の第2方向Yの端部をそれぞれ覆って形成され、逆導電型半導体層4の厚み方向Zだけでなく、発光部6の第2方向Yの側部を覆って形成される。これによって、段差が形成されている部分において、接続配線9の接続の信頼性を向上させることができる。また配線部分41,42は、発光部6の第2方向Yの側方を覆うことになるので、この側方に向かう光を反射することができ、これによって発光部6から厚み方向Zに向かう光をより多く取り出せるようになる。
【0040】
本実施の形態では、各接続配線9は相互に離間して形成されているが、本発明の実施のさらに他の形態では、各接続配線9の配線部分41,42は、第2方向Yで相互に隣接する接続配線9の配線部分41,42に連なって形成されてもよい。具体的には、第2共通電極8以外の場所で各接続配線を電気的に接続する接続部を備えていてもよい。これによって隣接する接続配線9の配線部分41,42が、第2共通電極8を介さなくても電気的に接続され、1つの接続配線9の一部が断絶したとしても、接続部から電流を供給することができ、信頼性を向上させることができる。
【0041】
図7は、本発明の実施のさらに他の形態における発光ダイオードチップ50の一部を示す平面図である。図7では、図面が煩雑となるのを防止するために、一導電型半導体層3、絶縁層11および保護層12を省略して記載している。本実施の形態と図1〜図4に示す前述の実施の形態とでは、接続配線9の形状が異なるのみであり、図6に示す実施の形態の発光ダイオードチップ40において連結部分51を付加した構成であり、他の構成は同様であるので、同様の部分には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0042】
本実施の形態における接続配線9は、第2共通電極8から第1方向Xに延びる2つの配線部分41,42と、配線部分41,42を連結する連結部分51とを含んで構成されている。連結部分51は、各発光部6の第1方向Xの両端部と、発光部6の間の保護層12とを一体的に覆って形成されている。すなわち連結部分51は、発光部6の第1方向Xにおける側部を覆って形成されている。接続配線9に連結部分51を設けることによって、段差が形成されている部分において、接続配線9の接続の信頼性を向上させることができる。また連結部分51は、発光部6の第1方向Xの側方を覆うことになるので、この側方に向かう光を反射することができ、これによって前述の図5および図6に示す実施の形態と比較して、発光部6から厚み方向Zに向かう光をより多く取り出せるようになる。
【0043】
本実施の形態では、各接続配線9は相互に離間して形成されているが、本発明の実施のさらに他の形態では、各接続配線9の配線部分41,42は、第2方向Yで相互に隣接する接続配線9の配線部分41,42に連なって形成されてもよい。具体的には、第2共通電極8以外の場所で各接続配線を電気的に接続する接続部を備えていてもよい。これによ複数の接続配線9が、第2共通電極8を介さなくても電気的に接続され、1つの接続配線9の一部が断絶したとしても、接続部から電流を供給することができ、信頼性を向上させることができる。
【0044】
図8は、本発明の実施のさらに他の形態における発光ダイオードチップ60の一部を示す断面図である。本実施の形態と図1〜図4に示す前述の実施の形態とでは、基本的に一導電型半導体層3の形状が異なり、他の構成は同様であるので、同様の部分には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0045】
本実施の形態では、一導電型半導体層3が半導体基板2上で、逆導電型半導体層4とともに島状に形成される。このような一導電型半導体層3は、前述した図4に示す実施の形態の第3工程において、半導体膜22一部を除去するときに、半導体膜21の一部を半導体基板2が露出するまで除去すればよい。また本実施の形態では、半導体基板2は、低抵抗を有する。このような半導体基板2は、前述の実施の形態に比べてドーピング濃度を多くすればよい。たとえば半導体基板2における不純物濃度は、1E+18atoms/cc〜1E+20atoms/cc程度に選ばれ、その抵抗値は、1E-3Ω・cm〜1E-4Ω・cm程度に選ばれている。
【0046】
このように各発光部6に含まれる一導電型半導体層3が相互に離間して形成されているので、一導電型半導体層3が形成されていない領域では、第1共通電極7および絶縁層11は、半導体基板2の主面2a上に形成される。第1共通電極7は半導体基板2を介して各一導電型半導体層3と電気的に接続されることになる。本実施の形態では、一導電型半導体層3と逆導電型半導体層4とGaAsによって形成し、半導体基板をSiによって形成すると、エッチングによって形成するときに、前述の第3工程において、GaAsのみを選択的にエッチングするエッチング液を用いて半導体基板2が露出するまでエッチングを行えればよいので、エッチング量を細かく制御しなくてもよくなるという利点がある。また本実施の形態は、前述した各実施の形態のいずれの発光ダイオードチップにも適用することができる。
【0047】
図9は、本発明の実施のさらに他の発光ダイオードチップ70の構成を模式的に示す斜視図である。図10は、図9の切断面線B−Bから見た断面図である。なお図9では、図面が煩雑となるのを防止するために、一導電型半導体層3、絶縁層11および保護層12を省略して記載している。本実施の形態の発光ダイオードチップ70は、図1〜図4に示す前述の実施の形態の発光ダイオードチップ1の構成に付加して、モールド部71を備える構成であり、他の構成は同様であるので、同様の部分には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0048】
モールド部71は、複数の発光部6を覆って形成される。モールド部71は、発光部6から放射される光を透過する材料によって形成される。モールド部71は、略直方体形状、または半導体基板2から離反するにつれて厚み方向Zの断面が小さくなる角錐台形状に形成され、前記保護層12に積層して設けられている。モールド部71の発光部6から放射される光の屈折率は、保護層12の屈折率と同等か、それ以下となるように選ばれ、1.4以上2.0未満に選ばれるのが好ましい。モールド部71は、たとえばエポキシ樹脂材料、アクリル系樹脂材料、またはポリイミドによって形成される。モールド部71は、光透過性の観点から、エポキシ樹脂材料を用いるのが好ましい。モールド部71の厚み方向Zの大きさは、100μm程度に選ばれる。
【0049】
またモールド部71の厚み方向Zの延びる側面74は、この側面74に最も近接する発光部6の側部から第1および第2方向X,Yにそれぞれ予め定める範囲L2内に形成される。前記予め定める範囲L2は、1μm以上25μm未満に選ばれる。また前記側面74が、厚み方向Zに平行な仮想一平面に対して成す角度は、0°以上45°以下に選ばれる。モールド部71の側面74は、発光部6からの光の少なくとも一部を厚み方向Zで各発光部6が臨む領域に導く反射面として機能する。
【0050】
次に発光ダイオードチップ70の製造工程について説明する。図11は、発光ダイオードチップ70の製造工程の一部を示す断面図である。モールド部71を形成する前までの工程は、前述した図4に示す製造工程と同様であるので、その説明を省略する。すなわち第6工程が終了すると、第7工程に移り、モールド部71を形成するための樹脂層72を形成する。図11(1)は、第7工程の終了時における発光ダイオードチップ60の断面図である。第7工程では、前述した保護層12および第1および第2共通電極7,8を覆って、スピンコートによって樹脂を塗布し、予め定める温度でプリベークする。樹脂層72の厚さは、100μm程度である。
【0051】
次に第8工程に移り、レジストマスクを形成する。図11(2)は、第8工程の終了時における発光ダイオードチップ70の断面図である。第8工程では、前記樹脂層72に積層して、フォトレジスト膜を積層して、パターニングを行ってその一部をエッチングによって除去して、レジストマスク73を形成する。
【0052】
次に第9工程に移り、エッチングを行う。図11(3)は、第9工程の終了時における発光ダイオードチップ70の断面図である。第9工程では、樹脂層72をエッチングして、第1および第2共通電極7,8を露出させる。
【0053】
次に第10工程に移り、レジストマスク73を除去し、第11工程に移ってポストベークを行った後、第12工程に移り、発光ダイオードチップ70をダイシングし、個片化することによって発光ダイオードチップ60が形成される。以上の工程を終了することによって、図10に示すような断面を有する発光ダイオードチップ70を製造することができる。
【0054】
本実施の形態では、発光ダイオードチップ1の効果に加えて、モールド部71を設けることによって、各発光部6をより確実に保護することができるとともに、モールド部71が導光路として機能するため発光部6からの光を厚み方向Zで各発光部6が臨む領域により多く照射させることができる。
【0055】
図12は、本発明の実施のさらに他の発光ダイオードチップ80の構成を模式的に示す斜視図である。図13は、図11の切断面線C−Cから見た断面図である。図14は、発光ダイオードチップ80の平面図である。なお図11および図14では、図面が煩雑となるのを防止するために、一導電型半導体層3、絶縁層11および保護層12を省略して記載している。本実施の形態の発光ダイオードチップ80は、図1〜図4に示す前述の実施の形態の発光ダイオードチップ1の構成に付加して、モールド部81を備える構成であり、図9に示す実施の形態の発光ダイオードチップ70とはモールド部の形状が異なるのみであって、他の構成は同様であるので、同様の部分には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0056】
モールド部81は、複数の発光部6を覆って形成される。モールド部81の厚み方向Zの大きさは、100μm程度に選ばれる。モールド部81は、モールド部71と同様の材料から成る。モールド部81は、各発光部6上で前記保護層12に積層して設けられて、各発光部6を個別にモールドする。各モールド部81は、外表面の一部に、厚み方向Zで発光部6に対向する領域の周囲に設けられて、発光部6からの光の少なくとも一部を厚み方向Zで発光部6が臨む領域に導く反射面82を有する。モールド部81は、略直方体形状、または半導体基板2から離反するにつれて厚み方向Zの断面が小さくなる角錐台形状に形成され、その側面83が、前記反射面82を形成する。
【0057】
またモールド部81の厚み方向Zの延びる側面83は、モールドする発光部6の側部を含み、厚み方向Zに延びる仮想円筒面から、第1および第2方向X,Yにそれぞれ予め定める範囲L3内に形成される。前記予め定める範囲L3は、1μm以上25μm未満に選ばれる。また前記側面83が、厚み方向Zに平行な仮想一平面に対して成す角度は、0°以上45°以下に選ばれる。モールド部81の側面83は、発光部6からの光の少なくとも一部を厚み方向Zで各発光部6が臨む領域に導く反射面として機能する。
【0058】
次に発光ダイオードチップ80の製造工程について説明する。図15は、発光ダイオードチップ80の製造工程の一部を示す断面図である。樹脂層72を形成する工程までは、前述した図4および図11に示す製造工程と同様であるので、その説明を省略する。すなわち図11に示す実施の形態の第7工程が終了すると、第8工程に移り、レジストマスク85を形成する。図11(1)は、第8工程の終了時における発光ダイオードチップ80の前駆体の断面図である。第8工程では、前記樹脂層72に積層して、フォトレジスト膜を積層して、パターニングを行ってその一部をエッチングによって除去して、レジストマスク85を形成する。レジストマスク85は、各発光部6に対応する位置に島状に形成されており、各発光部6の厚み方向Zに重なり、厚み方向Zから見た平面視において発光部6よりも大きくなるように設けられている。
【0059】
次に第9工程に移り、エッチングを行う。図15(2)は、第9工程の終了時における発光ダイオードチップ80の前駆体の断面図である。第9工程では、樹脂層72をエッチングして、第1および第2共通電極7,8を露出させるとともに、各発光部6の間で保護層12が露出して、樹脂層72が分断する。
【0060】
次に第10工程に移り、レジストマスクを除去し、第11工程に移ってポストベークを行った後、第12工程に移り、発光ダイオードチップ80の前駆体をダイシングし、個片化することによって発光ダイオードチップ80が形成される。以上の工程を終了することによって、図12に示すような断面を有する発光ダイオードチップ80を製造することができる。
【0061】
以上のように発光ダイオードチップ80では、各発光部6からの光は周囲に拡散し、モールド部81を透過して外部に放射されるが、各発光部6からの光のうちの一部はモールド部81の側面83において反射される。この側面83が、発光部6からの光の少なくとも一部を発光部6が臨む領域に導く反射面82となるので、外部に取り出せなかった光、および厚み方向Zで各発光部6が臨む領域に照射されなかった光を、各発光部6が臨む領域に取り出すことができる。したがって、従来の発光ダイオードチップよりも、同じ駆動電流でより多くの光を発光部が臨む領域に取り出すことができ、パッケージサイズを大きくすることなく、利用可能な光量を増加することができる。また各発光部6が個別にモールドされることによって、発光部6と反射面82とを近接して設けることができ、それぞれの反射面82の形状を、モールドしている発光部6からの光のみを反射する構成とすればよいので、反射面82の設計を行いやすくすることができる。
【0062】
また本実施の形態の発光ダイオードチップ80の製造方法によれば、発光ダイオードチップ80の反射面82は、樹脂層72の一部を取り除いて形成されるので、樹脂層72によって発光部6をモールドするときに同時に形成することができ、工定数を増加させることなく、発光部6が臨む領域により多くの光を取り出すことができる発光ダイオードチップを製造することができる。
【0063】
図16は、本発明の実施のさらに他の発光ダイオードチップ90の構成を模式的に示す斜視図である。図17は、図16の切断面線D−Dから見た断面図である。なお図16では、図面が煩雑となるのを防止するために、一導電型半導体層3、絶縁層11および保護層12を省略して記載している。本実施の形態の発光ダイオードチップ90は、図1〜図4に示す前述の実施の形態の発光ダイオードチップ1の構成に付加して、モールド部91を備える構成であり、図9および図11に示す実施の形態の発光ダイオードチップ70,80とはモールド部の形状が異なるのみであり、他の構成は同様であるので、同様の部分には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0064】
モールド部91は、複数の発光部6を一体的に覆って形成される。モールド部91の厚み方向Zの大きさは、100μm程度に選ばれる。モールド部91は、モールド部71,81と同様の材料から成る。モールド部91は、各発光部6上で前記保護層12に積層して設けられて、各発光部6を一体的にモールドする。モールド部91は、外表面の一部に、厚み方向Zで発光部6に対向する領域の周囲に設けられて、発光部6からの光の少なくとも一部を厚み方向Zで発光部6が臨む領域に導く反射面92を有する。モールド部91は、略直方体形状、または半導体基板2から離反するにつれて厚み方向Zの断面が小さくなる角錐台形状に形成され、その遊端部93が複数に分割されている。前記遊端部93には、第1および第2方向X,Yに沿ってそれぞれ延びる溝94が形成されており、各溝94は、各発光部6の間領域に臨んで形成されている。言い換えればモールド部91は、モールド部81の基端部97側を一体に形成した形状である。
【0065】
モールド部91は、前述したモールド部71,81と同様の材料から成る。またモールド部91の外方に臨む側面95と、前記溝94に臨む側面96とは、モールドする発光部6の側部を含み、厚み方向Zに延びる仮想円筒面から、第1および第2方向X,Yにそれぞれ予め定める範囲L3内に形成される。また前記側面96が、厚み方向Zに平行な仮想一平面に対して成す角度は、0°以上45°以下に選ばれる。モールド部91の各側面95,96は、発光部6からの光の少なくとも一部を厚み方向Zで各発光部6が臨む領域に導く反射面として機能する。
【0066】
また本実施の形態の発光ダイオードチップ90は、前述した実施の形態の発光ダイオードチップ80と同様の工程で製造することができ、第9工程におけるエッチングにおいて樹脂層72のうちの除去する部分を調整すればよい。このような構成であっても、発光ダイオードチップ80と同様の効果を達成することができる。また前記溝92の深さは、モールド部91の厚み方向Zの大きさの40%程度に形成されるほうが望ましい。また各発光部6が一体的にモールドされることによって、モールド部91の強度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0067】
前述した各実施の形態の発光ダイオードチップでは、発光部6を8個形成しているが、発光部6の数は8個に限らず複数個であればよく、発光部6が第1方向Xに複数並んで配列される構成であればよい。また本発明の実施のさらに他の形態では、前述した各実施の形態のいずれにおいてもモールド部71,81,91のいずれかを設ける構成とすることができ、これによってモールド部71,81,91が設けられる構成と同様の効果を達成することができる。
【0068】
図18は、発光ダイオードチップ70を複数備える発光装置100の斜視図である。発光装置100は、基板101上の一表面101aにダイボンドによって複数の発光ダイオードチップ70を実装して構成される。各発光ダイオードチップ70は、第1および第2方向X,Yに所定の間隔をあけて配列される。本実施の形態では、4つの発光ダイオードチップ70が基板101上に設けられている。基板101は、たとえばSiから成り、ヒートシンクとして機能する。また各発光ダイオードチップ70は、図示しないボンディングワイヤによって、直列または並列となるように接続される。並列に接続する場合には、第2方向Yに隣接する発光ダイオードチップ70の第1共通電極7を相互に接続し、並列に接続する場合には、第1方向Xに隣接する発光ダイオードチップ70の第1共通電極7を相互に接続すればよい。第1および第2共通電極7,8は、前記ボンディングワイヤを介して、実装基板に形成される接続部にそれぞれ電気的に接続される。
【0069】
本実施の形態では、発光装置100は、前述した発光ダイオードチップ70を基板101に実装しているが、基板101に実装される発光ダイオードチップは、発光ダイオードチップ70に限らず、前述のいずれの実施の形態の発光ダイオードチップであってもよい。
【0070】
以下に実施例と比較例とについて説明する。
(実施例)
前述した実施の形態の発光ダイオードチップ80と同様の構成を有し、発光部6を4個有する発光ダイオードチップ80a(実施例1)と、発光部6を12個有する発光ダイオードチップ80b(実施例2)を形成した。図19および図20は、それぞれ実施例における発光ダイオードチップ80a,80bの平面図である。発光ダイオードチップ80a,80bは、発光部6の数と発光部6の大きさが異なるのみであって、その他の構成は同様である。半導体基板2をn型のSiによって形成し、その第1方向Xの大きさを600μmとし、第2方向Yの大きさを300μmとし、厚み方向Zの大きさを100μmとした。一導電型半導体層3は、n型のGaAsによって形成し、逆導電型半導体層4は、p型のGaAsによって形成した。発光部分5の接合面15の大きさは、発光ダイオードチップ80aでは、一辺が100μmの正方形となるように形成し、発光ダイオードチップ80bでは、一辺が60μmの正方形となるように形成したまた接続配線9の第2方向Yの幅W1は、5μmとなるように形成した。また第1方向Xに隣接する逆導電型半導体層4の間隔T1と、第2方向Yに隣接する逆導電型半導体層4の間隔T2とは、発光ダイオードチップ80aでは、20μmとなるように形成し、発光ダイオードチップ80bでは、20μmとなるように形成した。
【0071】
またモールド部81は、第1方向Xが400μmとなり、第2方向Yが300μmとなり、厚み方向Zが100μmとなるように形成した。
【0072】
(比較例)
また比較例として、発光素子を1つだけ備える従来の技術の発光ダイオードチップ110を形成した。図21は、発光ダイオードチップ110の平面図である。発光ダイオードチップ110では、小型基板111にLED素子112をダイボンドして、LED素子の表面と、小型基板111に形成される接続部とをボンディングワイヤ113によって接続した。小型基板111の平面視における寸法は、1000μm×600μmとした。LED素子112を構成する半導体層の層厚および物性は、発光部6に含まれる一導電型半導体層と逆導電型半導体層との層厚および物性と等しくなるように形成されている。またLED素子112は、直方体形状に形成され、厚み方向に垂直な方向における寸法は、一辺が100μmの正方形となるように形成した。ボンディングワイヤ113は、20μm〜30μmのものを用い、LED素子112との接触部分の直径が80μm程度となるように形成した。また小型基板111は、比較例のモールド部と同様の物性の樹脂によって、小型基板111の一表面の全面を覆って、外径が直方体形状となるようにモールドした。
【0073】
図22は、実施例1および2の発光ダイオードチップ80a,80bと、比較例の発光ダイオードチップ110とにおける、電流電圧特性を示すグラフである。図22のグラフの横軸は電圧(単位:V)を表し、グラフの縦軸は電流(単位:mA)を表す。図22を見ると分かるように、本実施例の発光ダイオードチップ80a,80bでは、比較例の発光ダイオードチップ110と比較して、定電圧で大電流を流すことができる。したがって、駆動電流を増加させるときに駆動電圧の増加が抑制されることが判る。
【0074】
図23は、実施例1および2の発光ダイオードチップ80a,80bと、比較例の発光ダイオードチップ110とにおける、駆動電流と発光する光の波長との関係を示すグラフである。図23のグラフの横軸は駆動電流(単位:mA)を表し、グラフの縦軸は波長(単位:nm)を表す。図23を見ると判るように、本実施例の発光ダイオードチップ80a,80bでは、比較例の発光ダイオードチップ110と比較して、駆動電流を増加したときの波長の変化が小さい。したがって、駆動電流の増減に対して、安定した波長の光を放射させることができ、本実施例の発光ダイオードチップ80a,80bは、光源として信頼性が高いことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の一形態の発光ダイオードチップ1の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1の切断面線A−Aから見た断面図である。
【図3】発光ダイオードチップ1の平面図である。
【図4】発光ダイオードチップ1の製造工程を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の他の形態における発光ダイオードチップ30の一部を示す平面図である。
【図6】本発明の実施のさらに他の形態における発光ダイオードチップ40の一部を示す平面図である。
【図7】本発明の実施のさらに他の形態における発光ダイオードチップ50の一部を示す平面図である。
【図8】本発明の実施のさらに他の形態における発光ダイオードチップ60の一部を示す断面図である。
【図9】本発明の実施のさらに他の発光ダイオードチップ70の構成を模式的に示す斜視図である。
【図10】図9の切断面線B−Bから見た断面図である。
【図11】発光ダイオードチップ70の製造工程の一部を示す断面図である。
【図12】本発明の実施のさらに他の発光ダイオードチップ80の構成を模式的に示す斜視図である。
【図13】図11の切断面線C−Cから見た断面図である。
【図14】発光ダイオードチップ80の平面図である。
【図15】発光ダイオードチップ80の製造工程の一部を示す断面図である。
【図16】本発明の実施のさらに他の発光ダイオードチップ90の構成を模式的に示す斜視図である。
【図17】図16の切断面線D−Dから見た断面図である。
【図18】発光ダイオードチップ70を複数備える発光装置100の斜視図である。
【図19】実施例における発光ダイオードチップ80aの平面図である。
【図20】実施例における発光ダイオードチップ80aの平面図である。
【0076】
【図21】比較例の発光ダイオードチップ110の平面図である。
【図22】実施例1および2の発光ダイオードチップ80a,80bと、比較例の発光ダイオードチップ110とにおける、電流電圧特性を示すグラフである。
【図23】実施例1および2の発光ダイオードチップ80a,80bと、比較例の発光ダイオードチップ110とにおける、駆動電流と発光する光の波長との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0077】
1,30,40,50,60,70,80,90 発光ダイオードチップ
2 半導体基板
3 一導電型半導体層
4 逆導電型半導体層
5 接合部分
6 発光部
7 第1共通電極
8 第2共通電極
9 接続配線
31 第1部分
32 第2部分
41 配線部分
51 連結部分
71,81,91 モールド部
82,92 反射面
74,83,95 側面
100 発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
該半導体基板上に形成される一導電型半導体層と、該一導電型半導体層に積層される逆導電型半導体層との接合部分をそれぞれが含み、前記接合部分が離間して設けられる複数の発光部と、
前記半導体基板上に設けられ、前記各発光部に含まれる前記一導電型半導体層と電気的に接続される第1共通電極と、
前記半導体基板上に設けられ、前記各発光部に含まれる前記逆導電型半導体層と電気的に接続される第2共通電極と、を含むことを特徴とする発光ダイオードチップ。
【請求項2】
前記半導体基板は、シリコンによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオードチップ。
【請求項3】
前記各発光部の前記一導電型半導体層は、相互に連なって形成され、
前記第1共通電極は、前記一導電型半導体層に積層して形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光ダイオードチップ。
【請求項4】
前記各発光部は、複数の列に並んで配列され、
前記列の方向に並ぶ複数の発光部に含まれる前記逆導電型半導体層は、前記列の方向に沿って延びる接続配線によって、前記第2電極と電気的に接続されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の発光ダイオードチップ。
【請求項5】
前記接続配線は、前記各発光部の前記配列方向の両端部を覆って設けられることを特徴とする請求項4記載の発光ダイオードチップ。
【請求項6】
前記接続配線は、前記逆導電型半導体層の厚み方向および前記配列方向に相互に垂直な方向で、逆導電型半導体層の端部に積層して設けられることを特徴とする請求項4または5に記載の発光ダイオードチップ。
【請求項7】
半導体基板を準備する工程と、
前記半導体基板上に、一導電型半導体層と、逆導電型半導体層とを順次形成する工程と、
前記逆導電型半導体層の一部を除去することによって、それぞれ離間した複数の逆導電型半導体層を形成する工程と、
前記一導電型半導体層と電気的に接続される第1共通電極と、前記複数の逆導電型半導体層と電気的に並列に接続される第2共通電極とを形成する工程と、を含むことを特徴とする発光ダイオードチップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図22】
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【図23】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−238963(P2009−238963A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82242(P2008−82242)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】