発光装置、その駆動方法および駆動回路、ならびに電子機器
【課題】 各発光素子の輝度を高精度に制御する。
【解決手段】 複数の発光素子12の各々は発光電圧Vbの印加によって発光する。電流供給部33は、各発光素子12に対して定電流I0を供給する。特定回路35は、定電流I0が供給されているときの各発光素子12の陽極の電圧Vaに応じた測定電圧を特定する。選択回路313およびバッファ314は、特定回路35が特定した測定電圧に応じた発光電圧Vbを出力する。タイミング制御回路311およびスイッチ315は、バッファ314から出力された発光電圧Vbを、発光素子12に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子12に印加する。
【解決手段】 複数の発光素子12の各々は発光電圧Vbの印加によって発光する。電流供給部33は、各発光素子12に対して定電流I0を供給する。特定回路35は、定電流I0が供給されているときの各発光素子12の陽極の電圧Vaに応じた測定電圧を特定する。選択回路313およびバッファ314は、特定回路35が特定した測定電圧に応じた発光電圧Vbを出力する。タイミング制御回路311およびスイッチ315は、バッファ314から出力された発光電圧Vbを、発光素子12に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子12に印加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(以下「OLED(Organic Light Emitting Diode)」という)素子などの発光素子を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
OLED素子などの発光素子を面状ないし線状に配列した発光装置が各種の電子機器の表示装置や露光装置として従来から提案されている。この種の発光装置においては、製造上の誤差や特性の経時的な変化によって各発光素子の特性にバラツキが発生する場合がある。特許文献1には、このようなバラツキを補償して階調のムラを抑制するパッシブマトリクス方式の発光装置が開示されている。この発光装置においては、所定の電流を供給したときの各発光素子の陽極の電圧が事前に測定され、実際の使用に際して各発光素子に供給される定電流がこの測定の結果に基づいて補正されるようになっている。
【特許文献1】特開2002−229513号公報(段落0075から段落0078・図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、OLED素子などの発光素子やこれに導通する配線には容量成分が付随する。したがって、特許文献1のように各発光素子の輝度が電流によって指定される方式(以下「電流駆動方式」という)の発光装置においては、補正後の定電流を各発光素子に供給しようとしても、実際に各発光素子に供給される電流はその容量成分に起因した時定数に応じて徐々に増加するに過ぎない。例えば、図8の破線Aで示される波形の電流を発光素子に供給しようとしても、実際に各発光素子に供給される電流の波形は同図に実線Bで示されるように容量成分に起因して鈍化するといった具合である。したがって、せっかく各発光素子の特性のバラツキが補償されるように電流を補正しているにも拘わらず、各発光素子の輝度を高い精度で所期値に制御することは依然として困難であるという問題がある。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、各発光素子の輝度を高精度に制御するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、本発明に係る発光装置の駆動方法は、第1電極および第2電極と両電極間への発光電圧の印加によって発光する発光層とを各々が含む複数の発光素子を備え、前記第1電極が発光素子ごとに形成された発光装置の駆動方法であって、各発光素子に対して電流(例えば各実施形態における定電流I0)を供給するとともに、その供給中における各発光素子の第1電極の電圧(例えば各実施形態における調整用アノード電圧Va)を特定し、各発光素子について特定した電圧に応じた発光電圧を、当該発光素子に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子に印加する。なお、本発明における発光電圧とは発光素子を発光させる電圧(すなわち発光素子の閾値電圧を上回る電圧)であるが、この発光電圧を印加したときの発光素子の輝度は任意である。
この方法によれば、階調に応じた時間密度で発光電圧が発光素子に印加されるから、発光素子に流れる電流を所期値に到達させるのに要する時間は電流駆動方式よりも短縮される。したがって、各発光素子の輝度を高い精度で制御することが可能となる。しかも、発光電圧は、電流の供給中における各発光素子の第1電極の電圧に応じた電圧とされる。すなわち、各発光素子の特性(特に電圧と電流との関係)が補償されるように発光電圧を可変的に選定することができるから、各発光素子の特性に起因した輝度の誤差(各発光素子間の輝度のバラツキやひとつの発光素子の輝度の誤差)を低減することができる。
【0005】
なお、例えばOLED素子など順方向と逆方向とが規定される発光素子を採用した発光装置において、第1電極および第2電極が陽極および陰極の何れに該当するのかは任意である。すなわち、後述する各実施形態のように第1電極が陽極であり第2電極が陰極であってもよいし、これとは逆に第1電極が陰極であり第2電極が陽極であってもよい。また、第2電極の態様は任意である。例えば、発光素子ごとに個別に第2電極が形成された構成としてもよいし、複数の発光素子にわたって連続に分布するように第2電極(共通電極)が形成された構成としてもよい。
【0006】
また、本発明に係る駆動回路は、各々が発光電圧の印加によって発光する複数の発光素子を備えた発光装置の駆動回路であって、発光素子に対応して設けられて各々が発光電圧を可変に出力する複数の電圧調整手段(例えば図1の選択回路313およびバッファ314)と、各電圧調整手段が出力した発光電圧を、当該電圧調整手段に対応する発光素子に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子に印加する階調制御手段(例えば図1のタイミング制御回路311とスイッチ315)とを具備する。例えば、階調制御手段は、各発光素子に対し、所定の期間のうち当該発光素子に指定された階調に応じた時間長の期間にて発光電圧を印加する一方、その残余の期間にて非発光電圧(すなわち発光素子の閾値電圧を下回る電圧)を印加する。
この構成によれば、階調に応じた時間密度で発光素子が発光素子に印加されるから、各発光素子に流れる電流を迅速に所期値に到達させて各々の輝度を高い精度で制御することができる。しかも、各電圧調整手段が出力する発光電圧は独立に可変であるから、各発光素子の特性(特に電圧と電流との関係)が補償されるように発光電圧を選定することによって各々の輝度の誤差を低減することができる。
【0007】
本発明に係る駆動回路の望ましい態様において、各電圧調整手段は、各々の電圧値が相違する複数の基準電圧の何れかを選択する選択手段(例えば図1の選択回路313)を含み、選択手段が選択した基準電圧に応じた発光電圧を出力する。この態様によれば、複数の基準電圧の何れかを選択するという簡易な構成によって発光電圧を生成することができる。
【0008】
さらに望ましい態様は、各発光素子に対して電流を供給する電流供給手段(例えば、図1の電流供給部33や、図3の電流源332および各スイッチSW1)と、電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の第1電極の電圧に応じた測定電圧を特定する特定手段(例えば図1や図3の特定回路35)とを含み、各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について特定手段が特定した測定電圧に応じた発光電圧を出力する。この態様によれば、各発光素子の実際の特性(すなわち電流供給手段が電流を供給したときの第1電極の電圧)に応じて各発光電圧を調整することができるから、各発光素子の特性(電圧−電流特性)の誤差を確実に補償することが可能となる。
例えば、特定手段は、電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の第1電極の電圧と各々の電圧値が相違する複数の基準電圧とを比較し、この比較の結果に基づいて複数の基準電圧の何れかを測定電圧に選定する。この態様によれば、複数の基準電圧の何れかを選択するという簡易な構成によって測定電圧を特定することができる。
【0009】
本発明の他の態様は、各々の電圧値が相違する複数の基準電圧を生成する基準電圧生成手段を含み、電圧調整手段は、基準電圧生成手段が生成した複数の基準電圧の何れかを、特定手段が特定した測定電圧に基づいて選択する選択手段を含み、選択手段が選択した基準電圧に応じた発光電圧を出力し、特定手段は、電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の第1電極の電圧と基準電圧生成手段が生成した複数の基準電圧とを比較し、この比較の結果に基づいて複数の基準電圧の何れかを測定電圧に選定する。この態様によれば、基準電圧生成手段が生成した複数の基準電圧を電圧調整手段と特定手段とが共用するから、電圧調整手段が利用する基準電圧と特定手段が利用する基準電圧とを別個に生成する構成と比較して構成の簡素化や回路規模の削減が図られる。
【0010】
本発明の望ましい態様において、電流供給手段は、複数の発光素子の各々に対して時分割で電流を供給し、特定手段は、各発光素子に電流が供給されているときの当該発光素子の第1電極の電圧を順次に特定する。この態様によれば、各電圧調整手段による発光電圧の調整のために電流供給手段と特定手段とが共用されるから、電流供給手段や特定手段が電圧調整手段ごとに設けられた構成と比較して回路規模の削減が図られる。また、電流供給手段が電圧調整手段ごとに設けられた構成(例えば図1に図示された第1実施形態)においては各電流供給手段から出力される電流にバラツキが発生する可能性があるが、本態様のように電流供給手段が共用される構成によれば、電流供給手段から各発光素子に供給される電流のバラツキは原理的に発生し得ない。したがって、本態様によれば、発光電圧を所期の電圧値に高い精度で調整することができる。なお、この態様の具体例は第2実施形態(図3)として後述される。
【0011】
さらに他の態様は、電圧を指定する電圧指定データを発光素子ごとに記憶する記憶手段(例えば図1や図3のメモリ312)を含み、各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について記憶手段に記憶された電圧指定データによって指定される発光電圧を出力する。この態様によれば、記憶手段に記憶された電圧指定データに応じて発光電圧を容易に調整することが可能となる。
また、より望ましい態様は、電圧を指定する電圧指定データを発光素子ごとに記憶する記憶手段と、各発光素子に対して電流を供給する電流供給手段と、電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の第1電極の電圧に応じた電圧指定データを記憶手段に記憶させる特定手段とを含み、各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について記憶手段に記憶された電圧指定データによって指定される発光電圧を出力する。
【0012】
本発明は、以上に例示した各態様に係る駆動回路を具備する発光装置としても実施される。この発光装置は、各々が発光電圧の印加によって発光する複数の発光素子と、発光素子に対応して設けられて各々が発光電圧を可変に出力する複数の電圧調整手段と、各電圧調整手段が出力した発光電圧を、当該電圧調整手段に対応する発光素子に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子に印加する階調制御手段とを具備する。この構成によっても、本発明の駆動回路と同様の作用および効果が奏される。
【0013】
本発明に係る発光装置の望ましい態様は、各発光素子に対して電流を供給する電流供給手段と、電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の第1電極の電圧に応じた測定電圧を特定する特定手段とをさらに含み、各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について特定手段が特定した測定電圧に応じた発光電圧を出力する。この態様によれば、電流供給手段と特定手段とが発光装置に設置されるから、例えば発光装置の出荷後の任意の時機においても、各発光素子の実際の特性に応じて発光電圧を調整することが可能となる。
【0014】
なお、発光素子の特性(発光素子の両端間の電圧と両端間に流れる電流と発光素子の輝度との関係)は、発光素子の温度によって変化する場合がある。そこで、本発明の望ましい態様は、各発光素子またはその周囲の温度を検出する温度センサと、特定手段が特定した測定電圧を、温度センサが検出した温度に応じて補正する補正手段(例えば図3の補正回路317)とをさらに含み、電圧調整手段は、補正手段による補正後の測定電圧に応じた発光電圧を出力する。この態様によれば、温度の変化に起因した発光素子の特性の誤差を補償することが可能である。
また、発光素子の特性は時間の経過とともに変化する場合がある。そこで、本発明の他の態様は、発光装置が使用された時間長を特定する計時手段と、特定手段が特定した測定電圧を、計時手段が特定した時間長に応じて補正する補正手段とを含み、電圧調整手段は、補正手段による補正後の測定電圧に応じた発光電圧を出力する。この態様によれば、発光素子の特性の経時的な変化を補償することが可能である。なお、以上のように測定電圧を補正する態様の具体例は第3実施形態として後述される。
【0015】
本発明に係る発光装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、発光装置を表示装置として利用した機器である。この種の電子機器としては、パーソナルコンピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)としても本発明の発光装置を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の発光装置Dは、感光体ドラムなどの感光体の露光によって潜像を形成する方式の画像形成装置(印刷装置)において感光体を露光するための露光ヘッドとして利用される。図1に示されるように、発光装置Dは、n個(nは自然数)の発光素子12が主走査方向に沿って線状に配列された発光部10と、各発光素子12を駆動する駆動回路20と、駆動回路20の動作を制御するための制御回路40とを含む。
【0017】
各発光素子12は、これに流れる電流に応じた輝度に発光する電流駆動型の素子であり、例えば有機EL(Electro Luminescent)材料からなる発光層を陽極と陰極との間隙に介在させたOLED素子である。陽極は各発光素子12ごとに個別に形成された電極である。一方、陰極は総ての発光素子12にわたって連続に分布する電極であって接地される。各陽極の電圧を発光素子12ごとに個別に制御して複数の発光素子12の各々を選択的に発光させることによって、用紙などの記録材に形成されるべき画像(顕像)に対応した潜像が感光体の表面に形成される。なお、ここでは各発光素子12ごとに個別に形成された電極(個別電極)を陽極とし、これに対向する電極(すなわち総ての発光素子12に共通する共通電極)を陰極とした場合を例示するが、これとは逆に、個別電極を陰極とし共通電極を陽極とした構成も採用される。
【0018】
制御回路40は、クロック信号など各種の信号(例えば後述するや制御信号CTL)の供給によって駆動回路20の動作を制御するとともに、各発光素子12の階調を指定する階調データGを駆動回路20に出力する。本実施形態における階調データGは、階調「0」から階調「15」までの合計16階調の何れかを発光素子12ごとに指定する4ビットのデジタルデータである。
【0019】
一方、駆動回路20は、階調データGを記憶するラインメモリ21と、各々が別個の発光素子12に対応する複数(発光素子12の総数に相当するn個)の処理ユニットU(U1,U2,……,Un)と、ひとつの基準電圧生成回路23とを含む。ラインメモリ21は、n個の発光素子12の各々に対応した階調データG(G1,G2,……,Gn)を制御回路40から受信して順次に記憶する。ラインメモリ21に記憶されたn個の階調データGは、制御回路40が指定するタイミングで同時に読み出されて各処理ユニットU1ないしUnに供給される。第i段目(iは1≦i≦nを満たす整数)の発光素子12の階調を指定する階調データGiは、図1の左方から数えて第i段目の処理ユニットUiに供給される。
【0020】
基準電圧生成回路23は、各々の電圧値が相違する複数(本実施形態では5種類)の電圧VR(VR1,VR2,……,VR5)を生成する手段である。これらの電圧(以下「基準電圧」という)VR1ないしVR5は、各々が発光素子12の陽極に印加されたときに当該発光素子12に電流が流れて発光するように(すなわち発光素子12の閾値電圧を上回るように)電圧値が選定されている。基準電圧VR1ないしVR5はn個の処理ユニットU1ないしUnに対して共通に供給される。
【0021】
図1に示されるように、各処理ユニットUはデータ出力部31を含む。各処理ユニットUのデータ出力部31は、その処理ユニットUに対応した発光素子12の陽極にデータ信号Vd(Vd[1],Vd[2],……,Vd[n])を出力する手段である。データ信号Vd[i]は、第i段目の発光素子12を、所定の期間(以下「単位期間」という)のうち階調データGiに応じた時間長の期間にて発光させるとともにその残余の期間にて消灯させるための電圧信号である。
【0022】
ひとつのデータ出力部31は、以下に説明するように、タイミング制御回路311と、メモリ312と、選択回路313と、バッファ314と、スイッチ315とを含む。なお、n個のデータ出力部31の各々は同じ構成であるから、以下では処理ユニットUiのデータ出力部31の構成を代表的に説明して他のデータ出力部31の説明を兼ねるものとする。
【0023】
タイミング制御回路311は、階調データGiに応じたパルス幅のパルス信号SPを生成する。図2は、階調データGiによって指定される階調とタイミング制御回路311が生成するパルス信号SPの波形との関係を示すタイミングチャートである。同図に示されるように、パルス信号SPは、階調データGiによって指定される数値(階調)が大きいほど、単位期間Pのうちハイレベルを維持する時間長(すなわちパルス幅)が長くなるように生成される。ただし、最低の階調「0」に対応するパルス信号SPは、単位期間Pの全区間にわたってローレベルを維持する信号となる。また、本実施形態において、最高の階調「15」に対応するパルス信号SPは、単位期間Pのうちブランキング期間Pbを除く総ての区間にわたってハイレベルを維持する。
【0024】
図1に示されるメモリ312は、基準電圧VR1ないしVR5の何れかを指定するデータ(以下「電圧指定データ」という)Dvを不揮発的に記憶する回路(例えばEEPROM)である。一方、選択回路313は、基準電圧生成回路23から出力される基準電圧VR1ないしVR5のうちメモリ312の電圧指定データDvによって指定される基準電圧を選択して出力する。バッファ314は、選択回路313から出力される電圧に応じた電圧(以下「発光電圧」という)Vbを出力するボルテージフォロアのオペアンプである。発光電圧Vbは、これが発光素子12の陽極に印加されたときに当該発光素子12が発光する電圧値(すなわち発光素子12の閾値電圧を上回る電圧値)に設定される。
【0025】
スイッチ315は、発光素子12の陽極とバッファ314の出力端との間に介挿され、両者の導通および非導通をパルス信号SPに応じて切り替える。さらに詳述すると、パルス信号SPがハイレベルであれば、スイッチ315がオン状態となって発光素子12の陽極がバッファ314の出力端に接続される。したがって、このときのデータ信号Vd[i]は発光電圧Vbとなる。一方、パルス信号SPがローレベルであれば、スイッチ315がオフ状態となって発光素子12の陽極とバッファ314の出力端との接続が解除される。
【0026】
以上の構成によって、データ出力部31から発光素子12の陽極に供給されるデータ信号Vd[i]は、階調データGiに応じた時間密度で発光電圧Vbとなる。発光電圧Vbは発光素子12の閾値電圧を上回るから、データ信号Vd[i]が供給された発光素子12は、単位期間Pのうち階調データGiに応じた時間長の期間にて点灯するとともにその残余の期間にて消灯する(すなわち階調データGiに対応する時間密度で発光する)。このように発光の時間長を制御することによって、各発光素子12が階調データGiに応じた階調に制御される(パルス幅変調による階調制御)。
【0027】
以上のように、本実施形態においては、発光電圧Vbの印加によって各発光素子12を駆動する方式(以下「電圧駆動方式」という)が採用される。この電圧駆動方式によれば、発光素子12の陽極の電圧を迅速に所期値に設定することができるから、発光素子12に流れる電流を所期値に到達させるのに要する時間は電流駆動方式よりも短縮される。したがって、各発光素子12の輝度を高い精度で制御することが可能となる。
【0028】
ところで、発光素子12の陽極−陰極間の電圧と発光素子12に流れる電流との関係(電圧−電流特性)は、製造上の誤差など種々の要因によって発光素子12ごとに相違する場合がある。また、たとえ製造時に各発光素子12の特性が均質であったとしても、各発光素子12の電圧−電流特性が経時的に変化する場合もある。このように各発光素子12の電圧−電流特性に誤差があるにも拘わらず、各発光素子12に印加される発光電圧Vbを同電圧に設定するとすれば、各発光素子12に流れる電流にバラツキが発生し、この結果として各発光素子12の輝度が相違するという問題が生じ得る。本実施形態における処理ユニットU1ないしUnの各々は、各発光素子12の電圧−電流特性を補償して各発光素子12の輝度を均一化するために、データ出力部31に加えて電流供給部33および特定回路35を含む。第i段目の処理ユニットUiの電流供給部33および特定回路35は、データ信号Vd[i]の発光電圧Vbを第i段目の発光素子12の特性に応じて調整するための手段である。
【0029】
図1に示されるように、電流供給部33は、スイッチ331と電流源332とを含む。電流源332は電源線(電源電圧Vdd)と発光素子12の陽極との間に介挿されて定電流I0を生成する。一方、スイッチ331は、電流源332と発光素子12の陽極との間に介挿されて両者の導通および非導通を切り替える手段である。処理ユニットU1ないしUnのスイッチ331は、制御回路40から供給される制御信号CTLによって一括的に制御される。制御回路40は、発光電圧Vbの調整が実施される期間においては制御信号CTLをハイレベル(各スイッチ331をオン状態とするレベル)に遷移させ、その期間の経過後には制御信号CTLをローレベル(各スイッチ331をオフ状態とするレベル)に維持する。本実施形態においては、発光装置Dの電源が投入されるたびに、階調データGに応じた発光素子12の制御に先立って発光電圧Vbの調整が実行される場合を想定する。したがって、制御信号CTLは、発光素子12の電源の投入時から所定の時間長が経過するまでの期間にてハイレベルを維持し、その経過後にはローレベルを維持する。
【0030】
制御信号CTLがハイレベルに遷移してスイッチ331がオン状態になると、図1に破線の矢印で示されるように、電流源332によって生成された定電流I0がスイッチ331を経由して発光素子12に供給される。この定電流I0の供給によって発光素子12は発光する。また、この定電流I0が供給されているときに、発光素子12の陽極は、定電流I0と発光素子12の電圧−電流特性とに応じた電圧(以下「調整用アノード電圧」という)Vaとなる。
【0031】
特定回路35は、制御信号CTLがハイレベルとなって定電流I0が発光素子12に供給されているときの調整用アノード電圧Vaを特定するための手段である。さらに詳述すると、特定回路35は、調整用アノード電圧Vaと基準電圧生成回路23が生成した基準電圧VR1ないしVR5の各々とを比較することにより、基準電圧VR1ないしVR5のうち調整用アノード電圧Vaに最も近い電圧(以下「測定電圧」という)を特定する。そして、特定回路35は、ここで特定した測定電圧を識別するためのデータ(以下「電圧指定データ」という)Dvを生成し、この電圧指定データDvをメモリ312に書き込む。すなわち、発光素子12の電圧−電流特性を反映する調整用アノード電圧Vaに応じた電圧指定データDvがメモリ312に書き込まれる。
【0032】
選択回路313は、以上の手順で生成された電圧指定データDvに基づいて基準電圧VR1ないしVR5の何れかを選択するから、処理ユニットUiのバッファ314から出力される発光電圧Vbは、第i段目の発光素子12の電圧−電流特性に応じた電圧値となる。例えば、第i段目の発光素子12の調整用アノード電圧Vaが基準電圧VR1ないしVR5の何れかに等しいとすれば、データ信号Vd[i]の発光電圧Vbは調整用アノード電圧Vaと等しい電圧値となる。そして、この発光電圧Vbを発光素子12の陽極に印加することによって、各発光素子12の電圧−電流特性に拘わらず、電流源332が生成する定電流I0に近い(理想的には一致する)電流が各発光素子12に供給されることになる。すなわち、本実施形態によれば、各発光素子12の電圧−電流特性を補償して各々の輝度のムラを低減することができる。
【0033】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態においては、n個の処理ユニットU1ないしUnの各々に電流供給部33と特定回路35とが含まれる構成を例示した。これに対し、本実施形態においては、ひとつの電流源332とひとつの特定回路35とがn個の処理ユニットU1ないしUnによって共用される構成となっている。なお、本実施形態のうち第1実施形態と同様の要素については共通の符号を付してその説明を適宜に省略する。
【0034】
図3は、本実施形態に係る発光装置Dの構成を示すブロック図である。同図に示されるように、本実施形態の発光装置Dは、ひとつの電流源332とひとつの特定回路35とを備える。また、n個の処理ユニットU1ないしUnの各々は、第1実施形態と同様の構成のデータ出力部31に加えて、スイッチSW1およびスイッチSW2を含む切換部37を備える。電流源332の出力端は、各処理ユニットUにおけるスイッチSW1の一端に対して共通に接続される。また、特定回路35は、各処理ユニットUにおけるスイッチSW2の一端に対して共通に接続される。処理ユニットUiにおけるスイッチSW1の他端とスイッチSW2の他端とは、第i段目の発光素子12の陽極に対して共通に接続される。
【0035】
制御回路40は、各処理ユニットUについて制御信号CTL(CTL1,CTL2,……,CTLn)を生成して各々の切換部37におけるスイッチSW1およびスイッチSW2に出力する。制御信号CTL1ないしCTLnの各々は順番にハイレベル(スイッチSW1およびスイッチSW2をオン状態とするレベル)に遷移する。この制御信号CTL1ないしCTLnに応じて各処理ユニットUのスイッチSW1およびスイッチSW2が順次にオン状態とされることによって、各発光素子12に対する定電流I0の供給とその供給時の調整用アノード電圧Vaの特定および電圧指定データの生成とが処理ユニットUごとに時分割で実行される。
【0036】
例えば、制御信号CTLiがハイレベルに遷移すると、処理ユニットUiにおける切換部37のスイッチSW1およびスイッチSW2がともにオン状態となる。したがって、電流源332が生成した定電流I0は、処理ユニットUiのスイッチSW1を経由して第i段目の発光素子12に供給される。さらに、このときの第i段目の発光素子12の調整用アノード電圧Vaは処理ユニットUiのスイッチSW2を介して特定回路35に供給される。この特定回路35は、第1実施形態と同様に、基準電圧VR1ないしVR5のうち第i段目の発光素子12の調整用アノード電圧Vaに最も近い基準電圧を測定電圧として選定し、この測定電圧を指定する電圧指定データDvを生成する。そして、特定回路35は、その時点で選択の対象となっている処理ユニットUiのメモリ312に対して電圧指定データDvを書き込む。
【0037】
以上の動作が処理ユニットU1ないしUnの各々について時分割で実行されることによって、各処理ユニットUのメモリ312には、その処理ユニットUに対応した発光素子12の電圧−電流特性に応じた電圧指定データDvが書き込まれることになる。したがって、本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が奏される。加えて、本実施形態によれば、電流源332と特定回路35とが複数の処理ユニットU1ないしUnによって共用されるから、処理ユニットUごとに電流供給部33と特定回路35とが配置された第1実施形態と比較して構成の簡素化や回路規模の縮小が図られる。また、第1実施形態のように処理ユニットUごとに電流供給部33が設置された構成においては、発光素子12に供給される定電流I0が電流供給部33ごとにバラつく可能性がある。これに対し、ひとつの電流供給部33によって生成された定電流I0が各発光素子12に分配される本実施形態によれば、調整用アノード電圧Vaの測定に際して各発光素子12に供給される定電流I0は確実に一致するから、各発光素子12の電圧−電流特性のバラツキを高い精度で補償することができるという利点がある。
【0038】
<C:第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
以上の各実施形態においては、各発光素子12の調整用アノード電圧Vaに応じてデータ信号Vd[i]の発光電圧Vbが制御される構成を例示した。しかしながら、各発光素子12の特性は、各発光素子12や各々の周辺の温度(以下「素子温度」という)によっても変化する。例えば、発光素子12に同じ発光電圧Vbが印加された場合であっても、その発光素子12の温度が変化すれば、各場合における発光素子12の輝度は相違するといった具合である。そこで、本実施形態においては、調整用アノード電圧Vaに応じた測定電圧が素子温度に応じて補正される構成となっている。なお、本実施形態のうち第1実施形態と同様の要素については共通の符号を付してその説明を適宜に省略する。
【0039】
図4は、本実施形態に係る発光装置Dの構成を示すブロック図である。同図に示されるように、本実施形態の発光装置Dは温度センサ50を具備する。この温度センサ50は、素子温度を検出するための手段(例えばサーミスタ)である。
【0040】
また、各処理ユニットUのメモリ312と選択回路313との間には補正回路317が介挿される。各処理ユニットUの補正回路317には温度センサ50によって検出された素子温度が出力される。補正回路317は、その前段のメモリ312から読み出された電圧指定データDvを温度センサ50から供給される素子温度に基づいて補正し(すなわち測定電圧を素子温度に基づいて補正し)、この補正後の電圧指定データDv(以下では特に「補正電圧指定データDv1」という)を選択回路313に出力する手段である。
【0041】
より具体的には、補正回路317は、温度センサ50によって検出される温度ごとにテーブルを備える。各テーブルにおいては、メモリ312に格納される電圧指定データDvと補正回路317から出力される補正電圧指定データDv1とが対応付けられる。各テーブルの補正電圧指定データDv1によって指定される電圧は、この補正電圧指定データDv1に応じた発光電圧Vbを印加した発光素子12が、素子温度に拘わらず電圧指定データDvに応じた輝度に発光するように予め実験的または統計的に選定されている。
【0042】
以上の構成において、補正回路317は、第1に、これらのテーブルのうち温度センサ50から通知される素子温度に対応したテーブルを選定し、第2に、この選定したテーブルのなかから、メモリ312が出力する電圧指定データDvに対応する補正電圧指定データDv1を検索して出力する。一方、選択回路313は、この補正電圧指定データDv1に応じて基準電圧VR1ないしVR5の何れかを選択する。したがって、バッファ314から出力される発光電圧Vbは素子温度に応じた電圧値となる。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態によれば、調整用アノード電圧Vaと素子温度とに応じた発光電圧Vbが各発光素子12に印加されるから、第1実施形態の効果に加えて、素子温度に拘わらず各発光素子12を所期の輝度に制御することができるという効果が奏される。
【0044】
なお、ここでは発光電圧Vbが素子温度に応じて制御される構成を例示したが、各発光素子12における電圧と輝度との関係は、発光装置Dが実際に使用された時間長(以下「使用時間」という)など素子温度以外の様々な要因によっても変化し得る。従って、本実施形態の構成に代えて、またはこの構成とともに、素子温度以外の要因に基づいて発光電圧Vbが補正される構成としてもよい。例えば、使用時間を計測するタイマ(計時手段)を設けたうえで、電圧指定データDvと補正電圧指定データDv1とを対応付けるテーブルを使用時間ごと(あるいは使用時間を区分した各範囲ごと)に作成して補正回路317に設置する。そして、補正回路317は、タイマが計測した使用時間に対応するテーブルを選択し、このテーブルのなかから本実施形態と同様の手順によって補正電圧指定データDv1を検索する。この構成によれば、使用時間に拘わらず各発光素子12を所期の輝度に制御することができる。
【0045】
また、以上の説明においてはテーブルの参照によって補正電圧指定データDv1が特定される構成を例示したが、その特定のための方法は任意である。例えば、温度センサ50が検出した素子温度(あるいはタイマが計測した使用時間)とメモリ312から読み出された電圧指定データDvとを引数とする所定の演算を補正回路317が実行し、この演算値が補正電圧指定データDv1として選択回路313に出力される構成としてもよい。
【0046】
<D:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0047】
(1)変形例1
図1に示した各部の具体的な構成は適宜に変更される。例えば、各実施形態においては基準電圧VR1ないしVR5の何れかを調整用アノード電圧Vaに応じて選択することによって電圧指定データDvが生成される構成を例示したが、調整用アノード電圧Vaに応じた電圧指定データDvを生成するための方法はこれに限定されない。例えば、調整用アノード電圧Vaの電圧値を表すデジタルデータを生成するA/D変換器を特定回路35として利用し、このデジタルデータが電圧指定データDvとしてメモリ312に格納される構成としてもよい。すなわち、調整用アノード電圧Vaに応じて複数の基準電圧の何れかを選択するという要素は本発明において必ずしも必要ではなく、調整用アノード電圧Vaに応じた測定電圧を特定する手段(各実施形態における特定回路35)を備えていれば足りる。
【0048】
また、各実施形態においては基準電圧VR1ないしVR5のうち電圧指定データDvに応じて選択される構成を例示したが、電圧指定データDvに応じた発光電圧Vbを生成するための方法はこれに限定されない。例えば、電圧指定データDvが指定する電圧を生成する電圧出力型のD/A変換器をデータ出力部31に設置し、このD/A変換器が生成した電圧に基づいて発光電圧Vbを生成する構成としてもよい。すなわち、本発明において発光電圧Vbの生成のために複数の基準電圧の何れかを選択するという要素は必ずしも必要ではなく、調整用アノード電圧Va(あるいは電圧指定データDv)に応じた発光電圧Vbを可変的に出力する手段(各実施形態における選択回路313およびバッファ314)を備えていれば足りる。
【0049】
さらに、各実施形態においては基準電圧生成回路23が生成した基準電圧VR1ないしVR5が各処理ユニットUの特定回路35と選択回路313とによって共用される構成を例示したが、各処理ユニットUの特定回路35が使用する基準電圧と各処理ユニットUの選択回路313が使用する基準電圧とが別個の回路によって生成される構成としてもよい。また、特定回路35や選択回路313による選択の対象となる基準電圧の総数(各実施形態では「5」)は任意に変更される。
【0050】
(2)変形例2
各実施形態においては複数の発光素子12が線状に配列された発光装置Dを例示したが、複数の発光素子12がマトリクス状(面状)に配列された発光装置Dにも本発明は同様に適用される。この構成においては、複数の走査線の各々と複数のデータ線の各々とが相互に対向する各領域に発光素子12が形成される。そして、各発光素子12が行単位で走査線駆動回路によって順次に選択される一方、この選択行の各発光素子12に対して駆動回路20(ここではデータ線駆動回路)によって各実施形態と同様の動作が実行される。
【0051】
また、各実施形態においては発光電圧Vbが発光素子12ごとに可変である構成を例示したが、発光電圧Vbが調整される単位となる範囲は任意である。例えば、発光部10のn個の発光素子12が所定数を単位としてグループに区分された構成においては、グループごとに発光電圧Vbが独立して可変に生成され、ひとつのグループに属する各発光素子12の発光のために当該グループの発光電圧Vbが共用される構成としてもよい。また、例えば、複数の発光素子12がマトリクス状に配列された構成においては、走査線またはデータ線に沿った複数の発光素子12の配列を単位として発光電圧Vbが調整される構成(すなわち同行または同列に属する複数の発光素子12に対して共通の発光電圧Vbが印加される構成)としてもよい。
【0052】
(3)変形例3
各実施形態においては、発光装置Dの電源の投入時に各発光素子12に対する定電流I0の供給と調整用アノード電圧Vaの特定および保持が実行される構成を例示したが、これらの動作が実行されるタイミングや契機は任意である。例えば、利用者によって指示が入力されるたびに実行されてもよいし、発光装置Dの動作を休止するモードに遷移したときに実行されてもよい。
【0053】
また、各実施形態においては、電流供給部33と特定回路35とが発光装置Dに設置された構成を例示した。この構成によれば、発光装置Dの出荷後であっても随時に発光電圧Vbが調整されるから、例えば発光素子12の電圧−電流特性が経時的に変化した場合であっても、その変化後の特性に応じた発光電圧Vbを生成することができる。ただし、発光装置Dが電流供給部33や特定回路35を備えていることは必ずしも必要ではない。
【0054】
例えば、各実施形態と同様の電流供給部33および特定回路35を備えた調整装置を発光装置Dとは別個に作成および使用してもよい。この構成においては、発光装置Dに装着された調整装置の電流供給部33が各発光素子12に定電流I0を供給し、この調整装置の特定回路35が、各発光素子12の調整用アノード電圧Vaを特定する。そして、調整用アノード電圧Vaの特定の結果に応じた電圧指定データDvが特定回路35によって各メモリ312に書き込まれると、調整装置が発光装置Dから取り外される。発光装置Dの使用時の動作は各実施形態と同様である。この構成によっても、各発光素子12の調整用アノード電圧Vaに応じた発光電圧Vbが生成されるから、各発光素子12の特性(電圧−電流特性)の相違を補償して各発光素子12の輝度を高精度に制御するという効果は奏される。以上のように、各発光素子に定電流を供給する手段やその供給中における各発光素子の陽極の電圧に応じた測定電圧を特定する手段は、本発明の発光装置やその駆動回路にとって任意の要素である。
【0055】
(4)変形例4
以上の説明においてはOLED素子を利用した発光装置Dを例示したが、これ以外の発光素子を利用した発光装置にも本発明は適用される。例えば、無機EL素子を利用した表示装置、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、表面導電型電子放出ディスプレイ(SED:Surface-conduction Electron-emitter Display)、弾道電子放出ディスプレイ(BSD:Ballistic electron Surface emitting Display)、発光ダイオードを利用した表示装置など各種の発光装置に本発明は適用される。
【0056】
<E:応用例>
各実施形態においては、画像形成装置の露光装置として利用される発光装置を例示したが、本発明に係る発光装置の用途は露光に限定されない。例えば、複数の発光素子12がマトリクス状に配列された発光装置は各種の画像を表示する装置として利用される。本発明に係る発光装置を利用した電子機器を例示すると以下の通りである。
【0057】
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図5は、以上に説明した何れかの形態に係る発光装置Dを表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての発光装置Dと本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この発光装置Dは発光素子12にOLED素子を使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0058】
図6に、実施形態に係る発光装置Dを適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての発光装置Dを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置Dに表示される画面がスクロールされる。
【0059】
図7に、実施形態に係る発光装置Dを適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての発光装置Dを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が発光装置Dに表示される。
【0060】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図5から図7に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図2】階調データとパルス信号の波形との関係を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図8】従来の技術の問題点を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0062】
D……発光装置、12……発光素子、20……駆動回路、U……処理ユニット、23……基準電圧生成回路、31……データ出力部、311……タイミング制御回路、312……メモリ、313……選択回路、314……バッファ、317……補正回路、33……電流供給部、35……特定回路、37……切換部、50……温度センサ、I0……定電流、Va……調整用アノード電圧、Vb……発光電圧、Vd[i]……データ信号、Dv……電圧指定データ、G(G1,G2,……,Gn)……階調データ、CTL……制御信号。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(以下「OLED(Organic Light Emitting Diode)」という)素子などの発光素子を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
OLED素子などの発光素子を面状ないし線状に配列した発光装置が各種の電子機器の表示装置や露光装置として従来から提案されている。この種の発光装置においては、製造上の誤差や特性の経時的な変化によって各発光素子の特性にバラツキが発生する場合がある。特許文献1には、このようなバラツキを補償して階調のムラを抑制するパッシブマトリクス方式の発光装置が開示されている。この発光装置においては、所定の電流を供給したときの各発光素子の陽極の電圧が事前に測定され、実際の使用に際して各発光素子に供給される定電流がこの測定の結果に基づいて補正されるようになっている。
【特許文献1】特開2002−229513号公報(段落0075から段落0078・図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、OLED素子などの発光素子やこれに導通する配線には容量成分が付随する。したがって、特許文献1のように各発光素子の輝度が電流によって指定される方式(以下「電流駆動方式」という)の発光装置においては、補正後の定電流を各発光素子に供給しようとしても、実際に各発光素子に供給される電流はその容量成分に起因した時定数に応じて徐々に増加するに過ぎない。例えば、図8の破線Aで示される波形の電流を発光素子に供給しようとしても、実際に各発光素子に供給される電流の波形は同図に実線Bで示されるように容量成分に起因して鈍化するといった具合である。したがって、せっかく各発光素子の特性のバラツキが補償されるように電流を補正しているにも拘わらず、各発光素子の輝度を高い精度で所期値に制御することは依然として困難であるという問題がある。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、各発光素子の輝度を高精度に制御するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、本発明に係る発光装置の駆動方法は、第1電極および第2電極と両電極間への発光電圧の印加によって発光する発光層とを各々が含む複数の発光素子を備え、前記第1電極が発光素子ごとに形成された発光装置の駆動方法であって、各発光素子に対して電流(例えば各実施形態における定電流I0)を供給するとともに、その供給中における各発光素子の第1電極の電圧(例えば各実施形態における調整用アノード電圧Va)を特定し、各発光素子について特定した電圧に応じた発光電圧を、当該発光素子に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子に印加する。なお、本発明における発光電圧とは発光素子を発光させる電圧(すなわち発光素子の閾値電圧を上回る電圧)であるが、この発光電圧を印加したときの発光素子の輝度は任意である。
この方法によれば、階調に応じた時間密度で発光電圧が発光素子に印加されるから、発光素子に流れる電流を所期値に到達させるのに要する時間は電流駆動方式よりも短縮される。したがって、各発光素子の輝度を高い精度で制御することが可能となる。しかも、発光電圧は、電流の供給中における各発光素子の第1電極の電圧に応じた電圧とされる。すなわち、各発光素子の特性(特に電圧と電流との関係)が補償されるように発光電圧を可変的に選定することができるから、各発光素子の特性に起因した輝度の誤差(各発光素子間の輝度のバラツキやひとつの発光素子の輝度の誤差)を低減することができる。
【0005】
なお、例えばOLED素子など順方向と逆方向とが規定される発光素子を採用した発光装置において、第1電極および第2電極が陽極および陰極の何れに該当するのかは任意である。すなわち、後述する各実施形態のように第1電極が陽極であり第2電極が陰極であってもよいし、これとは逆に第1電極が陰極であり第2電極が陽極であってもよい。また、第2電極の態様は任意である。例えば、発光素子ごとに個別に第2電極が形成された構成としてもよいし、複数の発光素子にわたって連続に分布するように第2電極(共通電極)が形成された構成としてもよい。
【0006】
また、本発明に係る駆動回路は、各々が発光電圧の印加によって発光する複数の発光素子を備えた発光装置の駆動回路であって、発光素子に対応して設けられて各々が発光電圧を可変に出力する複数の電圧調整手段(例えば図1の選択回路313およびバッファ314)と、各電圧調整手段が出力した発光電圧を、当該電圧調整手段に対応する発光素子に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子に印加する階調制御手段(例えば図1のタイミング制御回路311とスイッチ315)とを具備する。例えば、階調制御手段は、各発光素子に対し、所定の期間のうち当該発光素子に指定された階調に応じた時間長の期間にて発光電圧を印加する一方、その残余の期間にて非発光電圧(すなわち発光素子の閾値電圧を下回る電圧)を印加する。
この構成によれば、階調に応じた時間密度で発光素子が発光素子に印加されるから、各発光素子に流れる電流を迅速に所期値に到達させて各々の輝度を高い精度で制御することができる。しかも、各電圧調整手段が出力する発光電圧は独立に可変であるから、各発光素子の特性(特に電圧と電流との関係)が補償されるように発光電圧を選定することによって各々の輝度の誤差を低減することができる。
【0007】
本発明に係る駆動回路の望ましい態様において、各電圧調整手段は、各々の電圧値が相違する複数の基準電圧の何れかを選択する選択手段(例えば図1の選択回路313)を含み、選択手段が選択した基準電圧に応じた発光電圧を出力する。この態様によれば、複数の基準電圧の何れかを選択するという簡易な構成によって発光電圧を生成することができる。
【0008】
さらに望ましい態様は、各発光素子に対して電流を供給する電流供給手段(例えば、図1の電流供給部33や、図3の電流源332および各スイッチSW1)と、電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の第1電極の電圧に応じた測定電圧を特定する特定手段(例えば図1や図3の特定回路35)とを含み、各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について特定手段が特定した測定電圧に応じた発光電圧を出力する。この態様によれば、各発光素子の実際の特性(すなわち電流供給手段が電流を供給したときの第1電極の電圧)に応じて各発光電圧を調整することができるから、各発光素子の特性(電圧−電流特性)の誤差を確実に補償することが可能となる。
例えば、特定手段は、電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の第1電極の電圧と各々の電圧値が相違する複数の基準電圧とを比較し、この比較の結果に基づいて複数の基準電圧の何れかを測定電圧に選定する。この態様によれば、複数の基準電圧の何れかを選択するという簡易な構成によって測定電圧を特定することができる。
【0009】
本発明の他の態様は、各々の電圧値が相違する複数の基準電圧を生成する基準電圧生成手段を含み、電圧調整手段は、基準電圧生成手段が生成した複数の基準電圧の何れかを、特定手段が特定した測定電圧に基づいて選択する選択手段を含み、選択手段が選択した基準電圧に応じた発光電圧を出力し、特定手段は、電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の第1電極の電圧と基準電圧生成手段が生成した複数の基準電圧とを比較し、この比較の結果に基づいて複数の基準電圧の何れかを測定電圧に選定する。この態様によれば、基準電圧生成手段が生成した複数の基準電圧を電圧調整手段と特定手段とが共用するから、電圧調整手段が利用する基準電圧と特定手段が利用する基準電圧とを別個に生成する構成と比較して構成の簡素化や回路規模の削減が図られる。
【0010】
本発明の望ましい態様において、電流供給手段は、複数の発光素子の各々に対して時分割で電流を供給し、特定手段は、各発光素子に電流が供給されているときの当該発光素子の第1電極の電圧を順次に特定する。この態様によれば、各電圧調整手段による発光電圧の調整のために電流供給手段と特定手段とが共用されるから、電流供給手段や特定手段が電圧調整手段ごとに設けられた構成と比較して回路規模の削減が図られる。また、電流供給手段が電圧調整手段ごとに設けられた構成(例えば図1に図示された第1実施形態)においては各電流供給手段から出力される電流にバラツキが発生する可能性があるが、本態様のように電流供給手段が共用される構成によれば、電流供給手段から各発光素子に供給される電流のバラツキは原理的に発生し得ない。したがって、本態様によれば、発光電圧を所期の電圧値に高い精度で調整することができる。なお、この態様の具体例は第2実施形態(図3)として後述される。
【0011】
さらに他の態様は、電圧を指定する電圧指定データを発光素子ごとに記憶する記憶手段(例えば図1や図3のメモリ312)を含み、各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について記憶手段に記憶された電圧指定データによって指定される発光電圧を出力する。この態様によれば、記憶手段に記憶された電圧指定データに応じて発光電圧を容易に調整することが可能となる。
また、より望ましい態様は、電圧を指定する電圧指定データを発光素子ごとに記憶する記憶手段と、各発光素子に対して電流を供給する電流供給手段と、電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の第1電極の電圧に応じた電圧指定データを記憶手段に記憶させる特定手段とを含み、各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について記憶手段に記憶された電圧指定データによって指定される発光電圧を出力する。
【0012】
本発明は、以上に例示した各態様に係る駆動回路を具備する発光装置としても実施される。この発光装置は、各々が発光電圧の印加によって発光する複数の発光素子と、発光素子に対応して設けられて各々が発光電圧を可変に出力する複数の電圧調整手段と、各電圧調整手段が出力した発光電圧を、当該電圧調整手段に対応する発光素子に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子に印加する階調制御手段とを具備する。この構成によっても、本発明の駆動回路と同様の作用および効果が奏される。
【0013】
本発明に係る発光装置の望ましい態様は、各発光素子に対して電流を供給する電流供給手段と、電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の第1電極の電圧に応じた測定電圧を特定する特定手段とをさらに含み、各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について特定手段が特定した測定電圧に応じた発光電圧を出力する。この態様によれば、電流供給手段と特定手段とが発光装置に設置されるから、例えば発光装置の出荷後の任意の時機においても、各発光素子の実際の特性に応じて発光電圧を調整することが可能となる。
【0014】
なお、発光素子の特性(発光素子の両端間の電圧と両端間に流れる電流と発光素子の輝度との関係)は、発光素子の温度によって変化する場合がある。そこで、本発明の望ましい態様は、各発光素子またはその周囲の温度を検出する温度センサと、特定手段が特定した測定電圧を、温度センサが検出した温度に応じて補正する補正手段(例えば図3の補正回路317)とをさらに含み、電圧調整手段は、補正手段による補正後の測定電圧に応じた発光電圧を出力する。この態様によれば、温度の変化に起因した発光素子の特性の誤差を補償することが可能である。
また、発光素子の特性は時間の経過とともに変化する場合がある。そこで、本発明の他の態様は、発光装置が使用された時間長を特定する計時手段と、特定手段が特定した測定電圧を、計時手段が特定した時間長に応じて補正する補正手段とを含み、電圧調整手段は、補正手段による補正後の測定電圧に応じた発光電圧を出力する。この態様によれば、発光素子の特性の経時的な変化を補償することが可能である。なお、以上のように測定電圧を補正する態様の具体例は第3実施形態として後述される。
【0015】
本発明に係る発光装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、発光装置を表示装置として利用した機器である。この種の電子機器としては、パーソナルコンピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)としても本発明の発光装置を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の発光装置Dは、感光体ドラムなどの感光体の露光によって潜像を形成する方式の画像形成装置(印刷装置)において感光体を露光するための露光ヘッドとして利用される。図1に示されるように、発光装置Dは、n個(nは自然数)の発光素子12が主走査方向に沿って線状に配列された発光部10と、各発光素子12を駆動する駆動回路20と、駆動回路20の動作を制御するための制御回路40とを含む。
【0017】
各発光素子12は、これに流れる電流に応じた輝度に発光する電流駆動型の素子であり、例えば有機EL(Electro Luminescent)材料からなる発光層を陽極と陰極との間隙に介在させたOLED素子である。陽極は各発光素子12ごとに個別に形成された電極である。一方、陰極は総ての発光素子12にわたって連続に分布する電極であって接地される。各陽極の電圧を発光素子12ごとに個別に制御して複数の発光素子12の各々を選択的に発光させることによって、用紙などの記録材に形成されるべき画像(顕像)に対応した潜像が感光体の表面に形成される。なお、ここでは各発光素子12ごとに個別に形成された電極(個別電極)を陽極とし、これに対向する電極(すなわち総ての発光素子12に共通する共通電極)を陰極とした場合を例示するが、これとは逆に、個別電極を陰極とし共通電極を陽極とした構成も採用される。
【0018】
制御回路40は、クロック信号など各種の信号(例えば後述するや制御信号CTL)の供給によって駆動回路20の動作を制御するとともに、各発光素子12の階調を指定する階調データGを駆動回路20に出力する。本実施形態における階調データGは、階調「0」から階調「15」までの合計16階調の何れかを発光素子12ごとに指定する4ビットのデジタルデータである。
【0019】
一方、駆動回路20は、階調データGを記憶するラインメモリ21と、各々が別個の発光素子12に対応する複数(発光素子12の総数に相当するn個)の処理ユニットU(U1,U2,……,Un)と、ひとつの基準電圧生成回路23とを含む。ラインメモリ21は、n個の発光素子12の各々に対応した階調データG(G1,G2,……,Gn)を制御回路40から受信して順次に記憶する。ラインメモリ21に記憶されたn個の階調データGは、制御回路40が指定するタイミングで同時に読み出されて各処理ユニットU1ないしUnに供給される。第i段目(iは1≦i≦nを満たす整数)の発光素子12の階調を指定する階調データGiは、図1の左方から数えて第i段目の処理ユニットUiに供給される。
【0020】
基準電圧生成回路23は、各々の電圧値が相違する複数(本実施形態では5種類)の電圧VR(VR1,VR2,……,VR5)を生成する手段である。これらの電圧(以下「基準電圧」という)VR1ないしVR5は、各々が発光素子12の陽極に印加されたときに当該発光素子12に電流が流れて発光するように(すなわち発光素子12の閾値電圧を上回るように)電圧値が選定されている。基準電圧VR1ないしVR5はn個の処理ユニットU1ないしUnに対して共通に供給される。
【0021】
図1に示されるように、各処理ユニットUはデータ出力部31を含む。各処理ユニットUのデータ出力部31は、その処理ユニットUに対応した発光素子12の陽極にデータ信号Vd(Vd[1],Vd[2],……,Vd[n])を出力する手段である。データ信号Vd[i]は、第i段目の発光素子12を、所定の期間(以下「単位期間」という)のうち階調データGiに応じた時間長の期間にて発光させるとともにその残余の期間にて消灯させるための電圧信号である。
【0022】
ひとつのデータ出力部31は、以下に説明するように、タイミング制御回路311と、メモリ312と、選択回路313と、バッファ314と、スイッチ315とを含む。なお、n個のデータ出力部31の各々は同じ構成であるから、以下では処理ユニットUiのデータ出力部31の構成を代表的に説明して他のデータ出力部31の説明を兼ねるものとする。
【0023】
タイミング制御回路311は、階調データGiに応じたパルス幅のパルス信号SPを生成する。図2は、階調データGiによって指定される階調とタイミング制御回路311が生成するパルス信号SPの波形との関係を示すタイミングチャートである。同図に示されるように、パルス信号SPは、階調データGiによって指定される数値(階調)が大きいほど、単位期間Pのうちハイレベルを維持する時間長(すなわちパルス幅)が長くなるように生成される。ただし、最低の階調「0」に対応するパルス信号SPは、単位期間Pの全区間にわたってローレベルを維持する信号となる。また、本実施形態において、最高の階調「15」に対応するパルス信号SPは、単位期間Pのうちブランキング期間Pbを除く総ての区間にわたってハイレベルを維持する。
【0024】
図1に示されるメモリ312は、基準電圧VR1ないしVR5の何れかを指定するデータ(以下「電圧指定データ」という)Dvを不揮発的に記憶する回路(例えばEEPROM)である。一方、選択回路313は、基準電圧生成回路23から出力される基準電圧VR1ないしVR5のうちメモリ312の電圧指定データDvによって指定される基準電圧を選択して出力する。バッファ314は、選択回路313から出力される電圧に応じた電圧(以下「発光電圧」という)Vbを出力するボルテージフォロアのオペアンプである。発光電圧Vbは、これが発光素子12の陽極に印加されたときに当該発光素子12が発光する電圧値(すなわち発光素子12の閾値電圧を上回る電圧値)に設定される。
【0025】
スイッチ315は、発光素子12の陽極とバッファ314の出力端との間に介挿され、両者の導通および非導通をパルス信号SPに応じて切り替える。さらに詳述すると、パルス信号SPがハイレベルであれば、スイッチ315がオン状態となって発光素子12の陽極がバッファ314の出力端に接続される。したがって、このときのデータ信号Vd[i]は発光電圧Vbとなる。一方、パルス信号SPがローレベルであれば、スイッチ315がオフ状態となって発光素子12の陽極とバッファ314の出力端との接続が解除される。
【0026】
以上の構成によって、データ出力部31から発光素子12の陽極に供給されるデータ信号Vd[i]は、階調データGiに応じた時間密度で発光電圧Vbとなる。発光電圧Vbは発光素子12の閾値電圧を上回るから、データ信号Vd[i]が供給された発光素子12は、単位期間Pのうち階調データGiに応じた時間長の期間にて点灯するとともにその残余の期間にて消灯する(すなわち階調データGiに対応する時間密度で発光する)。このように発光の時間長を制御することによって、各発光素子12が階調データGiに応じた階調に制御される(パルス幅変調による階調制御)。
【0027】
以上のように、本実施形態においては、発光電圧Vbの印加によって各発光素子12を駆動する方式(以下「電圧駆動方式」という)が採用される。この電圧駆動方式によれば、発光素子12の陽極の電圧を迅速に所期値に設定することができるから、発光素子12に流れる電流を所期値に到達させるのに要する時間は電流駆動方式よりも短縮される。したがって、各発光素子12の輝度を高い精度で制御することが可能となる。
【0028】
ところで、発光素子12の陽極−陰極間の電圧と発光素子12に流れる電流との関係(電圧−電流特性)は、製造上の誤差など種々の要因によって発光素子12ごとに相違する場合がある。また、たとえ製造時に各発光素子12の特性が均質であったとしても、各発光素子12の電圧−電流特性が経時的に変化する場合もある。このように各発光素子12の電圧−電流特性に誤差があるにも拘わらず、各発光素子12に印加される発光電圧Vbを同電圧に設定するとすれば、各発光素子12に流れる電流にバラツキが発生し、この結果として各発光素子12の輝度が相違するという問題が生じ得る。本実施形態における処理ユニットU1ないしUnの各々は、各発光素子12の電圧−電流特性を補償して各発光素子12の輝度を均一化するために、データ出力部31に加えて電流供給部33および特定回路35を含む。第i段目の処理ユニットUiの電流供給部33および特定回路35は、データ信号Vd[i]の発光電圧Vbを第i段目の発光素子12の特性に応じて調整するための手段である。
【0029】
図1に示されるように、電流供給部33は、スイッチ331と電流源332とを含む。電流源332は電源線(電源電圧Vdd)と発光素子12の陽極との間に介挿されて定電流I0を生成する。一方、スイッチ331は、電流源332と発光素子12の陽極との間に介挿されて両者の導通および非導通を切り替える手段である。処理ユニットU1ないしUnのスイッチ331は、制御回路40から供給される制御信号CTLによって一括的に制御される。制御回路40は、発光電圧Vbの調整が実施される期間においては制御信号CTLをハイレベル(各スイッチ331をオン状態とするレベル)に遷移させ、その期間の経過後には制御信号CTLをローレベル(各スイッチ331をオフ状態とするレベル)に維持する。本実施形態においては、発光装置Dの電源が投入されるたびに、階調データGに応じた発光素子12の制御に先立って発光電圧Vbの調整が実行される場合を想定する。したがって、制御信号CTLは、発光素子12の電源の投入時から所定の時間長が経過するまでの期間にてハイレベルを維持し、その経過後にはローレベルを維持する。
【0030】
制御信号CTLがハイレベルに遷移してスイッチ331がオン状態になると、図1に破線の矢印で示されるように、電流源332によって生成された定電流I0がスイッチ331を経由して発光素子12に供給される。この定電流I0の供給によって発光素子12は発光する。また、この定電流I0が供給されているときに、発光素子12の陽極は、定電流I0と発光素子12の電圧−電流特性とに応じた電圧(以下「調整用アノード電圧」という)Vaとなる。
【0031】
特定回路35は、制御信号CTLがハイレベルとなって定電流I0が発光素子12に供給されているときの調整用アノード電圧Vaを特定するための手段である。さらに詳述すると、特定回路35は、調整用アノード電圧Vaと基準電圧生成回路23が生成した基準電圧VR1ないしVR5の各々とを比較することにより、基準電圧VR1ないしVR5のうち調整用アノード電圧Vaに最も近い電圧(以下「測定電圧」という)を特定する。そして、特定回路35は、ここで特定した測定電圧を識別するためのデータ(以下「電圧指定データ」という)Dvを生成し、この電圧指定データDvをメモリ312に書き込む。すなわち、発光素子12の電圧−電流特性を反映する調整用アノード電圧Vaに応じた電圧指定データDvがメモリ312に書き込まれる。
【0032】
選択回路313は、以上の手順で生成された電圧指定データDvに基づいて基準電圧VR1ないしVR5の何れかを選択するから、処理ユニットUiのバッファ314から出力される発光電圧Vbは、第i段目の発光素子12の電圧−電流特性に応じた電圧値となる。例えば、第i段目の発光素子12の調整用アノード電圧Vaが基準電圧VR1ないしVR5の何れかに等しいとすれば、データ信号Vd[i]の発光電圧Vbは調整用アノード電圧Vaと等しい電圧値となる。そして、この発光電圧Vbを発光素子12の陽極に印加することによって、各発光素子12の電圧−電流特性に拘わらず、電流源332が生成する定電流I0に近い(理想的には一致する)電流が各発光素子12に供給されることになる。すなわち、本実施形態によれば、各発光素子12の電圧−電流特性を補償して各々の輝度のムラを低減することができる。
【0033】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態においては、n個の処理ユニットU1ないしUnの各々に電流供給部33と特定回路35とが含まれる構成を例示した。これに対し、本実施形態においては、ひとつの電流源332とひとつの特定回路35とがn個の処理ユニットU1ないしUnによって共用される構成となっている。なお、本実施形態のうち第1実施形態と同様の要素については共通の符号を付してその説明を適宜に省略する。
【0034】
図3は、本実施形態に係る発光装置Dの構成を示すブロック図である。同図に示されるように、本実施形態の発光装置Dは、ひとつの電流源332とひとつの特定回路35とを備える。また、n個の処理ユニットU1ないしUnの各々は、第1実施形態と同様の構成のデータ出力部31に加えて、スイッチSW1およびスイッチSW2を含む切換部37を備える。電流源332の出力端は、各処理ユニットUにおけるスイッチSW1の一端に対して共通に接続される。また、特定回路35は、各処理ユニットUにおけるスイッチSW2の一端に対して共通に接続される。処理ユニットUiにおけるスイッチSW1の他端とスイッチSW2の他端とは、第i段目の発光素子12の陽極に対して共通に接続される。
【0035】
制御回路40は、各処理ユニットUについて制御信号CTL(CTL1,CTL2,……,CTLn)を生成して各々の切換部37におけるスイッチSW1およびスイッチSW2に出力する。制御信号CTL1ないしCTLnの各々は順番にハイレベル(スイッチSW1およびスイッチSW2をオン状態とするレベル)に遷移する。この制御信号CTL1ないしCTLnに応じて各処理ユニットUのスイッチSW1およびスイッチSW2が順次にオン状態とされることによって、各発光素子12に対する定電流I0の供給とその供給時の調整用アノード電圧Vaの特定および電圧指定データの生成とが処理ユニットUごとに時分割で実行される。
【0036】
例えば、制御信号CTLiがハイレベルに遷移すると、処理ユニットUiにおける切換部37のスイッチSW1およびスイッチSW2がともにオン状態となる。したがって、電流源332が生成した定電流I0は、処理ユニットUiのスイッチSW1を経由して第i段目の発光素子12に供給される。さらに、このときの第i段目の発光素子12の調整用アノード電圧Vaは処理ユニットUiのスイッチSW2を介して特定回路35に供給される。この特定回路35は、第1実施形態と同様に、基準電圧VR1ないしVR5のうち第i段目の発光素子12の調整用アノード電圧Vaに最も近い基準電圧を測定電圧として選定し、この測定電圧を指定する電圧指定データDvを生成する。そして、特定回路35は、その時点で選択の対象となっている処理ユニットUiのメモリ312に対して電圧指定データDvを書き込む。
【0037】
以上の動作が処理ユニットU1ないしUnの各々について時分割で実行されることによって、各処理ユニットUのメモリ312には、その処理ユニットUに対応した発光素子12の電圧−電流特性に応じた電圧指定データDvが書き込まれることになる。したがって、本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が奏される。加えて、本実施形態によれば、電流源332と特定回路35とが複数の処理ユニットU1ないしUnによって共用されるから、処理ユニットUごとに電流供給部33と特定回路35とが配置された第1実施形態と比較して構成の簡素化や回路規模の縮小が図られる。また、第1実施形態のように処理ユニットUごとに電流供給部33が設置された構成においては、発光素子12に供給される定電流I0が電流供給部33ごとにバラつく可能性がある。これに対し、ひとつの電流供給部33によって生成された定電流I0が各発光素子12に分配される本実施形態によれば、調整用アノード電圧Vaの測定に際して各発光素子12に供給される定電流I0は確実に一致するから、各発光素子12の電圧−電流特性のバラツキを高い精度で補償することができるという利点がある。
【0038】
<C:第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
以上の各実施形態においては、各発光素子12の調整用アノード電圧Vaに応じてデータ信号Vd[i]の発光電圧Vbが制御される構成を例示した。しかしながら、各発光素子12の特性は、各発光素子12や各々の周辺の温度(以下「素子温度」という)によっても変化する。例えば、発光素子12に同じ発光電圧Vbが印加された場合であっても、その発光素子12の温度が変化すれば、各場合における発光素子12の輝度は相違するといった具合である。そこで、本実施形態においては、調整用アノード電圧Vaに応じた測定電圧が素子温度に応じて補正される構成となっている。なお、本実施形態のうち第1実施形態と同様の要素については共通の符号を付してその説明を適宜に省略する。
【0039】
図4は、本実施形態に係る発光装置Dの構成を示すブロック図である。同図に示されるように、本実施形態の発光装置Dは温度センサ50を具備する。この温度センサ50は、素子温度を検出するための手段(例えばサーミスタ)である。
【0040】
また、各処理ユニットUのメモリ312と選択回路313との間には補正回路317が介挿される。各処理ユニットUの補正回路317には温度センサ50によって検出された素子温度が出力される。補正回路317は、その前段のメモリ312から読み出された電圧指定データDvを温度センサ50から供給される素子温度に基づいて補正し(すなわち測定電圧を素子温度に基づいて補正し)、この補正後の電圧指定データDv(以下では特に「補正電圧指定データDv1」という)を選択回路313に出力する手段である。
【0041】
より具体的には、補正回路317は、温度センサ50によって検出される温度ごとにテーブルを備える。各テーブルにおいては、メモリ312に格納される電圧指定データDvと補正回路317から出力される補正電圧指定データDv1とが対応付けられる。各テーブルの補正電圧指定データDv1によって指定される電圧は、この補正電圧指定データDv1に応じた発光電圧Vbを印加した発光素子12が、素子温度に拘わらず電圧指定データDvに応じた輝度に発光するように予め実験的または統計的に選定されている。
【0042】
以上の構成において、補正回路317は、第1に、これらのテーブルのうち温度センサ50から通知される素子温度に対応したテーブルを選定し、第2に、この選定したテーブルのなかから、メモリ312が出力する電圧指定データDvに対応する補正電圧指定データDv1を検索して出力する。一方、選択回路313は、この補正電圧指定データDv1に応じて基準電圧VR1ないしVR5の何れかを選択する。したがって、バッファ314から出力される発光電圧Vbは素子温度に応じた電圧値となる。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態によれば、調整用アノード電圧Vaと素子温度とに応じた発光電圧Vbが各発光素子12に印加されるから、第1実施形態の効果に加えて、素子温度に拘わらず各発光素子12を所期の輝度に制御することができるという効果が奏される。
【0044】
なお、ここでは発光電圧Vbが素子温度に応じて制御される構成を例示したが、各発光素子12における電圧と輝度との関係は、発光装置Dが実際に使用された時間長(以下「使用時間」という)など素子温度以外の様々な要因によっても変化し得る。従って、本実施形態の構成に代えて、またはこの構成とともに、素子温度以外の要因に基づいて発光電圧Vbが補正される構成としてもよい。例えば、使用時間を計測するタイマ(計時手段)を設けたうえで、電圧指定データDvと補正電圧指定データDv1とを対応付けるテーブルを使用時間ごと(あるいは使用時間を区分した各範囲ごと)に作成して補正回路317に設置する。そして、補正回路317は、タイマが計測した使用時間に対応するテーブルを選択し、このテーブルのなかから本実施形態と同様の手順によって補正電圧指定データDv1を検索する。この構成によれば、使用時間に拘わらず各発光素子12を所期の輝度に制御することができる。
【0045】
また、以上の説明においてはテーブルの参照によって補正電圧指定データDv1が特定される構成を例示したが、その特定のための方法は任意である。例えば、温度センサ50が検出した素子温度(あるいはタイマが計測した使用時間)とメモリ312から読み出された電圧指定データDvとを引数とする所定の演算を補正回路317が実行し、この演算値が補正電圧指定データDv1として選択回路313に出力される構成としてもよい。
【0046】
<D:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0047】
(1)変形例1
図1に示した各部の具体的な構成は適宜に変更される。例えば、各実施形態においては基準電圧VR1ないしVR5の何れかを調整用アノード電圧Vaに応じて選択することによって電圧指定データDvが生成される構成を例示したが、調整用アノード電圧Vaに応じた電圧指定データDvを生成するための方法はこれに限定されない。例えば、調整用アノード電圧Vaの電圧値を表すデジタルデータを生成するA/D変換器を特定回路35として利用し、このデジタルデータが電圧指定データDvとしてメモリ312に格納される構成としてもよい。すなわち、調整用アノード電圧Vaに応じて複数の基準電圧の何れかを選択するという要素は本発明において必ずしも必要ではなく、調整用アノード電圧Vaに応じた測定電圧を特定する手段(各実施形態における特定回路35)を備えていれば足りる。
【0048】
また、各実施形態においては基準電圧VR1ないしVR5のうち電圧指定データDvに応じて選択される構成を例示したが、電圧指定データDvに応じた発光電圧Vbを生成するための方法はこれに限定されない。例えば、電圧指定データDvが指定する電圧を生成する電圧出力型のD/A変換器をデータ出力部31に設置し、このD/A変換器が生成した電圧に基づいて発光電圧Vbを生成する構成としてもよい。すなわち、本発明において発光電圧Vbの生成のために複数の基準電圧の何れかを選択するという要素は必ずしも必要ではなく、調整用アノード電圧Va(あるいは電圧指定データDv)に応じた発光電圧Vbを可変的に出力する手段(各実施形態における選択回路313およびバッファ314)を備えていれば足りる。
【0049】
さらに、各実施形態においては基準電圧生成回路23が生成した基準電圧VR1ないしVR5が各処理ユニットUの特定回路35と選択回路313とによって共用される構成を例示したが、各処理ユニットUの特定回路35が使用する基準電圧と各処理ユニットUの選択回路313が使用する基準電圧とが別個の回路によって生成される構成としてもよい。また、特定回路35や選択回路313による選択の対象となる基準電圧の総数(各実施形態では「5」)は任意に変更される。
【0050】
(2)変形例2
各実施形態においては複数の発光素子12が線状に配列された発光装置Dを例示したが、複数の発光素子12がマトリクス状(面状)に配列された発光装置Dにも本発明は同様に適用される。この構成においては、複数の走査線の各々と複数のデータ線の各々とが相互に対向する各領域に発光素子12が形成される。そして、各発光素子12が行単位で走査線駆動回路によって順次に選択される一方、この選択行の各発光素子12に対して駆動回路20(ここではデータ線駆動回路)によって各実施形態と同様の動作が実行される。
【0051】
また、各実施形態においては発光電圧Vbが発光素子12ごとに可変である構成を例示したが、発光電圧Vbが調整される単位となる範囲は任意である。例えば、発光部10のn個の発光素子12が所定数を単位としてグループに区分された構成においては、グループごとに発光電圧Vbが独立して可変に生成され、ひとつのグループに属する各発光素子12の発光のために当該グループの発光電圧Vbが共用される構成としてもよい。また、例えば、複数の発光素子12がマトリクス状に配列された構成においては、走査線またはデータ線に沿った複数の発光素子12の配列を単位として発光電圧Vbが調整される構成(すなわち同行または同列に属する複数の発光素子12に対して共通の発光電圧Vbが印加される構成)としてもよい。
【0052】
(3)変形例3
各実施形態においては、発光装置Dの電源の投入時に各発光素子12に対する定電流I0の供給と調整用アノード電圧Vaの特定および保持が実行される構成を例示したが、これらの動作が実行されるタイミングや契機は任意である。例えば、利用者によって指示が入力されるたびに実行されてもよいし、発光装置Dの動作を休止するモードに遷移したときに実行されてもよい。
【0053】
また、各実施形態においては、電流供給部33と特定回路35とが発光装置Dに設置された構成を例示した。この構成によれば、発光装置Dの出荷後であっても随時に発光電圧Vbが調整されるから、例えば発光素子12の電圧−電流特性が経時的に変化した場合であっても、その変化後の特性に応じた発光電圧Vbを生成することができる。ただし、発光装置Dが電流供給部33や特定回路35を備えていることは必ずしも必要ではない。
【0054】
例えば、各実施形態と同様の電流供給部33および特定回路35を備えた調整装置を発光装置Dとは別個に作成および使用してもよい。この構成においては、発光装置Dに装着された調整装置の電流供給部33が各発光素子12に定電流I0を供給し、この調整装置の特定回路35が、各発光素子12の調整用アノード電圧Vaを特定する。そして、調整用アノード電圧Vaの特定の結果に応じた電圧指定データDvが特定回路35によって各メモリ312に書き込まれると、調整装置が発光装置Dから取り外される。発光装置Dの使用時の動作は各実施形態と同様である。この構成によっても、各発光素子12の調整用アノード電圧Vaに応じた発光電圧Vbが生成されるから、各発光素子12の特性(電圧−電流特性)の相違を補償して各発光素子12の輝度を高精度に制御するという効果は奏される。以上のように、各発光素子に定電流を供給する手段やその供給中における各発光素子の陽極の電圧に応じた測定電圧を特定する手段は、本発明の発光装置やその駆動回路にとって任意の要素である。
【0055】
(4)変形例4
以上の説明においてはOLED素子を利用した発光装置Dを例示したが、これ以外の発光素子を利用した発光装置にも本発明は適用される。例えば、無機EL素子を利用した表示装置、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、表面導電型電子放出ディスプレイ(SED:Surface-conduction Electron-emitter Display)、弾道電子放出ディスプレイ(BSD:Ballistic electron Surface emitting Display)、発光ダイオードを利用した表示装置など各種の発光装置に本発明は適用される。
【0056】
<E:応用例>
各実施形態においては、画像形成装置の露光装置として利用される発光装置を例示したが、本発明に係る発光装置の用途は露光に限定されない。例えば、複数の発光素子12がマトリクス状に配列された発光装置は各種の画像を表示する装置として利用される。本発明に係る発光装置を利用した電子機器を例示すると以下の通りである。
【0057】
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図5は、以上に説明した何れかの形態に係る発光装置Dを表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての発光装置Dと本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この発光装置Dは発光素子12にOLED素子を使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0058】
図6に、実施形態に係る発光装置Dを適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての発光装置Dを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置Dに表示される画面がスクロールされる。
【0059】
図7に、実施形態に係る発光装置Dを適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての発光装置Dを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が発光装置Dに表示される。
【0060】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図5から図7に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図2】階調データとパルス信号の波形との関係を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図8】従来の技術の問題点を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0062】
D……発光装置、12……発光素子、20……駆動回路、U……処理ユニット、23……基準電圧生成回路、31……データ出力部、311……タイミング制御回路、312……メモリ、313……選択回路、314……バッファ、317……補正回路、33……電流供給部、35……特定回路、37……切換部、50……温度センサ、I0……定電流、Va……調整用アノード電圧、Vb……発光電圧、Vd[i]……データ信号、Dv……電圧指定データ、G(G1,G2,……,Gn)……階調データ、CTL……制御信号。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極および第2電極と両電極間への発光電圧の印加によって発光する発光層とを各々が含む複数の発光素子を備え、前記第1電極が発光素子ごとに形成された発光装置の駆動方法であって、
前記各発光素子に対して電流を供給するとともに、その供給中における前記各発光素子の前記第1電極の電圧を特定し、
前記各発光素子について特定した電圧に応じた発光電圧を、当該発光素子に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子に印加する
発光装置の駆動方法。
【請求項2】
各々が発光電圧の印加によって発光する複数の発光素子を備えた発光装置の駆動回路であって、
前記発光素子に対応して設けられて各々が発光電圧を可変に出力する複数の電圧調整手段と、
前記各電圧調整手段が出力した発光電圧を、当該電圧調整手段に対応する発光素子に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子に印加する階調制御手段と
を具備する発光装置の駆動回路。
【請求項3】
前記各電圧調整手段は、各々の電圧値が相違する複数の基準電圧の何れかを選択する選択手段を含み、前記選択手段が選択した基準電圧に応じた発光電圧を出力する
請求項2に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項4】
前記各発光素子は、第1電極および第2電極と両電極間への発光電圧の印加によって発光する発光層とを各々が含み、前記第1電極は発光素子ごとに形成され、
前記各発光素子に対して電流を供給する電流供給手段と、
前記電流供給手段が電流を供給しているときの前記各発光素子の前記第1電極の電圧に応じた測定電圧を特定する特定手段と
を具備し、前記各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について前記特定手段が特定した測定電圧に応じた発光電圧を出力する
請求項2に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項5】
前記特定手段は、前記電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の前記第1電極の電圧と各々の電圧値が相違する複数の基準電圧とを比較し、この比較の結果に基づいて前記複数の基準電圧の何れかを測定電圧に選定する
請求項4に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項6】
各々の電圧値が相違する複数の基準電圧を生成する基準電圧生成手段を含み、
前記電圧調整手段は、前記基準電圧生成手段が生成した複数の基準電圧の何れかを、前記特定手段が特定した測定電圧に基づいて選択する選択手段を含み、前記選択手段が選択した基準電圧に応じた発光電圧を出力し、
前記特定手段は、前記電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の前記第1電極の電圧と前記基準電圧生成手段が生成した複数の基準電圧とを比較し、この比較の結果に基づいて前記複数の基準電圧の何れかを測定電圧に選定する
請求項4に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項7】
前記電流供給手段は、前記複数の発光素子の各々に対して時分割で電流を供給し、
前記特定手段は、前記各発光素子に電流が供給されているときの当該発光素子の前記第1電極の電圧に応じた測定電圧を順次に特定する
請求項4に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項8】
電圧を指定する電圧指定データを発光素子ごとに記憶する記憶手段を具備し、
前記各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について前記記憶手段に記憶された電圧指定データによって指定される発光電圧を出力する
請求項2に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項9】
電圧を指定する電圧指定データを発光素子ごとに記憶する記憶手段と、
前記各発光素子に対して電流を供給する電流供給手段と、
前記電流供給手段が電流を供給しているときの前記各発光素子の前記第1電極の電圧に応じた電圧指定データを前記記憶手段に記憶させる特定手段と
を具備し、前記各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について前記記憶手段に記憶された電圧指定データによって指定される発光電圧を出力する
請求項2に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項10】
各々が発光電圧の印加によって発光する複数の発光素子と、
前記発光素子に対応して設けられて各々が発光電圧を可変に出力する複数の電圧調整手段と、
前記各電圧調整手段が出力した発光電圧を、当該電圧調整手段に対応する発光素子に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子に印加する階調制御手段と
を具備する発光装置。
【請求項11】
前記各発光素子に対して電流を供給する電流供給手段と、
前記電流供給手段が電流を供給しているときの前記各発光素子の前記第1電極の電圧に応じた測定電圧を特定する特定手段と
を具備し、前記各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について前記特定手段が特定した測定電圧に応じた発光電圧を出力する
請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記各発光素子またはその周囲の温度を検出する温度センサと、
前記特定手段が特定した測定電圧を、前記温度センサが検出した温度に応じて補正する補正手段と
を具備し、前記電圧調整手段は、前記補正手段による補正後の測定電圧に応じた発光電圧を出力する
請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
発光装置が使用された時間長を特定する計時手段と、
前記特定手段が特定した測定電圧を、前記計時手段が特定した時間長に応じて補正する補正手段と
を具備し、前記電圧調整手段は、前記補正手段による補正後の測定電圧に応じた発光電圧を出力する
請求項11に記載の発光装置。
【請求項14】
請求項10から請求項13の何れかに記載の発光装置を具備する電子機器。
【請求項1】
第1電極および第2電極と両電極間への発光電圧の印加によって発光する発光層とを各々が含む複数の発光素子を備え、前記第1電極が発光素子ごとに形成された発光装置の駆動方法であって、
前記各発光素子に対して電流を供給するとともに、その供給中における前記各発光素子の前記第1電極の電圧を特定し、
前記各発光素子について特定した電圧に応じた発光電圧を、当該発光素子に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子に印加する
発光装置の駆動方法。
【請求項2】
各々が発光電圧の印加によって発光する複数の発光素子を備えた発光装置の駆動回路であって、
前記発光素子に対応して設けられて各々が発光電圧を可変に出力する複数の電圧調整手段と、
前記各電圧調整手段が出力した発光電圧を、当該電圧調整手段に対応する発光素子に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子に印加する階調制御手段と
を具備する発光装置の駆動回路。
【請求項3】
前記各電圧調整手段は、各々の電圧値が相違する複数の基準電圧の何れかを選択する選択手段を含み、前記選択手段が選択した基準電圧に応じた発光電圧を出力する
請求項2に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項4】
前記各発光素子は、第1電極および第2電極と両電極間への発光電圧の印加によって発光する発光層とを各々が含み、前記第1電極は発光素子ごとに形成され、
前記各発光素子に対して電流を供給する電流供給手段と、
前記電流供給手段が電流を供給しているときの前記各発光素子の前記第1電極の電圧に応じた測定電圧を特定する特定手段と
を具備し、前記各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について前記特定手段が特定した測定電圧に応じた発光電圧を出力する
請求項2に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項5】
前記特定手段は、前記電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の前記第1電極の電圧と各々の電圧値が相違する複数の基準電圧とを比較し、この比較の結果に基づいて前記複数の基準電圧の何れかを測定電圧に選定する
請求項4に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項6】
各々の電圧値が相違する複数の基準電圧を生成する基準電圧生成手段を含み、
前記電圧調整手段は、前記基準電圧生成手段が生成した複数の基準電圧の何れかを、前記特定手段が特定した測定電圧に基づいて選択する選択手段を含み、前記選択手段が選択した基準電圧に応じた発光電圧を出力し、
前記特定手段は、前記電流供給手段が電流を供給しているときの各発光素子の前記第1電極の電圧と前記基準電圧生成手段が生成した複数の基準電圧とを比較し、この比較の結果に基づいて前記複数の基準電圧の何れかを測定電圧に選定する
請求項4に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項7】
前記電流供給手段は、前記複数の発光素子の各々に対して時分割で電流を供給し、
前記特定手段は、前記各発光素子に電流が供給されているときの当該発光素子の前記第1電極の電圧に応じた測定電圧を順次に特定する
請求項4に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項8】
電圧を指定する電圧指定データを発光素子ごとに記憶する記憶手段を具備し、
前記各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について前記記憶手段に記憶された電圧指定データによって指定される発光電圧を出力する
請求項2に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項9】
電圧を指定する電圧指定データを発光素子ごとに記憶する記憶手段と、
前記各発光素子に対して電流を供給する電流供給手段と、
前記電流供給手段が電流を供給しているときの前記各発光素子の前記第1電極の電圧に応じた電圧指定データを前記記憶手段に記憶させる特定手段と
を具備し、前記各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について前記記憶手段に記憶された電圧指定データによって指定される発光電圧を出力する
請求項2に記載の発光装置の駆動回路。
【請求項10】
各々が発光電圧の印加によって発光する複数の発光素子と、
前記発光素子に対応して設けられて各々が発光電圧を可変に出力する複数の電圧調整手段と、
前記各電圧調整手段が出力した発光電圧を、当該電圧調整手段に対応する発光素子に指定された階調に応じた時間密度で当該発光素子に印加する階調制御手段と
を具備する発光装置。
【請求項11】
前記各発光素子に対して電流を供給する電流供給手段と、
前記電流供給手段が電流を供給しているときの前記各発光素子の前記第1電極の電圧に応じた測定電圧を特定する特定手段と
を具備し、前記各電圧調整手段は、当該電圧調整手段に対応する発光素子について前記特定手段が特定した測定電圧に応じた発光電圧を出力する
請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記各発光素子またはその周囲の温度を検出する温度センサと、
前記特定手段が特定した測定電圧を、前記温度センサが検出した温度に応じて補正する補正手段と
を具備し、前記電圧調整手段は、前記補正手段による補正後の測定電圧に応じた発光電圧を出力する
請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
発光装置が使用された時間長を特定する計時手段と、
前記特定手段が特定した測定電圧を、前記計時手段が特定した時間長に応じて補正する補正手段と
を具備し、前記電圧調整手段は、前記補正手段による補正後の測定電圧に応じた発光電圧を出力する
請求項11に記載の発光装置。
【請求項14】
請求項10から請求項13の何れかに記載の発光装置を具備する電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2007−17479(P2007−17479A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195817(P2005−195817)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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