説明

発光装置、画像表示装置及び照明装置

【課題】Tb錯体蛍光体を用いた高い輝度を有する発光装置を提供する。
【解決手段】発光ダイオード等の半導体発光素子である第1の発光体3と、第1の発光体3からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体4とを備える発光装置1において、第2の発光体4に、Tbを含有する錯体蛍光体と無機蛍光体とを含有させる。このうち錯体蛍光体は510〜560nmの波長範囲に発光ピークを有するものとし、無機蛍光体は570〜700nmまたは420〜480nmの波長範囲に発光ピークを有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、並びに、それを用いた画像表示装置及び照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、蛍光体を用いた発光装置が開発され、それに伴い、蛍光体についての研究、開発が盛んになされている。このような状況の中、Tbを含む蛍光体として、Tb錯体蛍光体が非特許文献1及び2において報告されている。これらの文献では、メタノール溶液中における発光特性について調べられており、Tb錯体蛍光体が波長380nmの光による励起で波長545nmの光を発光することが記載されている。
【0003】
【非特許文献1】「希土類 RARE EARTHS」日本希土類学会、2005.5、No.46、p.106−107
【非特許文献2】第18回配位化合物の光化学討論会講演要旨集、p.61−62
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1,2記載のTb錯体蛍光体をはじめ、Tbを含む蛍光体を用いて発光装置を製造しようとする場合、従来の技術では、実用化に十分な輝度が得られなかった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、Tb錯体蛍光体を用いた高い輝度を有する発光装置、並びに、その発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、発光装置を作製するに当たり、Tb錯体蛍光体と無機蛍光体とを組み合わせて発光装置を構成することにより、高輝度な発光装置を得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明の要旨は、第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備える発光装置であって、該第2の発光体が、Tbを含有する錯体蛍光体と無機蛍光体とを含有することを特徴とする、発光装置に存する(請求項1)。
【0007】
このとき、該第2の発光体が、該無機蛍光体を2種以上含有することが好ましい(請求項2)。
また、該錯体蛍光体が510nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、該無機蛍光体の少なくとも1種が570nm以上700nm以下の波長範囲又は420nm以上480nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい(請求項3)。
【0008】
さらに、該錯体蛍光体が、下記式(I)で表わされることが好ましい(請求項4)。
a(Ln)bc (I)
{式(I)において、Lは式(II)で表わされる配位子を表わし、
【化1】

(式(II)において、R1〜R5は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表わし、Y1は−OHを表わし、Y2は=Oを表わす。)
Lnは、それぞれ独立に、希土類イオンを表わし、且つ、Lnの少なくとも1つはテルビウムイオンを表わし、Xは陰イオンを表わし、a、b及びcは、1≦a/b≦4、1<c/b≦4を満たす整数を表わす。また、Y1及びY2は、同一の又は異なるLnに配位している。}
【0009】
本発明の別の要旨は、前記の発光装置を光源として備えることを特徴とする、画像表示装置に存する(請求項5)。
本発明の更に別の要旨は、前記の発光装置を光源として備えることを特徴とする、照明装置に存する(請求項6)。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、Tb錯体蛍光体を用いた高輝度な発光装置、並びに、その発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について、実施形態や例示物を示して詳しく説明するが、本発明は以下の実施形態や例示物に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
また、以下の説明では蛍光体について説明を行う部分があるが、その説明部分では、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。例えば、「Y2SiO5:Ce3+」、「Y2SiO5:Tb3+」及び「Y2SiO5:Ce3+,Tb3+」を「Y2SiO5:Ce3+,Tb3+」と、「La22S:Eu」、「Y22S:Eu」及び「(La,Y)22S:Eu」を「(La,Y)22S:Eu」とまとめて示している。この場合、()内の元素の合計は1モルである。また、省略箇所はカンマ(,)で区切って示している。
【0012】
本発明の発光装置は、励起光源としての第1の発光体と、第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを、少なくとも備えて構成される。
【0013】
[1.第1の発光体]
本発明の発光装置における第1の発光体は、後述する第2の発光体を励起する光を発光するものである。第1の発光体の発光波長は、後述する第2の発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができるが、通常は、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用される。具体的数値としては、通常200nm以上、好ましくは300nm以上、より好ましくは360nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下の発光ピーク波長を有する発光体が使用される。この第1の発光体としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光ダイオード(light emitting diode。以下、適宜「LED」と略称する。)や半導体レーザーダイオード(semiconductor laser diode。以下、適宜「LD」と略称する。)等が使用できる。
【0014】
中でも、第1の発光体としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系のLEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系のLEDやLDは、この領域の光を発するSiC系のLED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系のLEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系のLEDやLDにおいては、AlXGaYN発光層、GaN発光層、又はInXGaYN発光層を有しているものが好ましい。GaN系のLEDにおいては、それらの中でInXGaYN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましく、GaN系のLEDにおいては、InXGaYN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0015】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0016】
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlXGaYN層、GaN層、又はInXGaYN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0017】
[2.第2の発光体]
本発明の発光装置における第2の発光体は、上述した第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する発光体であり、Tbを含有する錯体蛍光体(以下適宜、「Tb錯体蛍光体」という)と、無機蛍光体とを含有する。
【0018】
[2−1.Tb錯体蛍光体]
Tb錯体蛍光体は、Tbを含有する錯体蛍光体であれば他に制限は無く、任意のものを使用できるが、中でも、下記式(I)で表わされるTb錯体蛍光体(以下適宜、「特定Tb蛍光体」という)が好ましい。この特定Tb蛍光体は、複数の核となる希土類イオンに対して光増感機能を有する配位子分子(増感剤)を配位させた発光性希土類多核錯体である。
a(Ln)bc (I)
【0019】
式(I)において、a、b及びcは、1≦a/b≦4、1<c/b≦4を満たす整数を表わす。a、b及びcの好適な範囲をいうと、aは、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、また、通常40以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下の整数を表わす。また、bは、通常2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、また、通常20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下の整数を表わす。さらに、cは、通常1以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、また、通常40以下、好ましくは30以下、より好ましくは19以下の整数を表わす。
【0020】
式(I)において、Lnは希土類イオンを表わす。このLnは、多核錯体である特定Tb錯体の核を形成するものと推察される。ただし、Lnの少なくとも1つはテルビウムイオンを表わす。なお、この際、テルビウムイオンは、通常は3価の陽イオンである。
Lnとして好適なものの例を挙げると、ユーロピウムの2価陽イオン(Eu2+)、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等のランタノイドの3価陽イオン(La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Pm3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+、Lu3+)、セリウムの4価陽イオン(Ce4+)などの陽イオンが挙げられる。
【0021】
なお、Lnは、これらの希土類イオンのうちの一種類のみから成ってもよいし、2種類以上の希土類イオンを本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意の組み合わせ及び比率で併用されていても良い。希土類イオンLnの種類によって発光特性などが異なるので、目的に応じて選択することが好ましい。
【0022】
式(I)において、Xは陰イオンを表わす。Xの例を挙げると、O2-、OH-、S2-、SH-、Se2-、Te2-等の希土類イオンLn同士を連結させるイオン;NO3-、Cl-、Br-、OH-、B(C654-、PF6-、ClO4-等の組成の一部となるカウンターイオンなどが挙げられる。なお、Xは、1種を用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0023】
式(I)において、Lは式(II)で表わされる配位子を表わす。この配位子は、照射された光のエネルギーを希土類イオンLnに移譲する光増感剤として機能すると推察される。
【化2】

【0024】
式(II)において、R1〜R5は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表わす。R1〜R5となりうる1価の置換基の例を挙げると、水酸基;置換もしくは非置換のアミノ基;ニトロ基;クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基などが挙げられる。また、R1〜R5となりうる1価の置換基としては、例えば、チエニル基、ピリジル基等のヘテロ原子を含む芳香族基;ベンジル基;イソプロピル基、2−エチル−ヘキシル基等の分岐鎖構造を有するアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;シアノ基;−Rで示されるアルキル基もしくはシクロアルキル基;−ORで示されるアルコキシ基;−C(=O)Rで示されるアシル基;−C(=O)NHRで示されるアミド基などの有機基も挙げられる。
【0025】
ここにおいて、R1〜R5がアルキル基である場合、その例としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基などが挙げられる。また、R1〜R5がアリール基である場合、その例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。
【0026】
また、前記のR1〜R5のうち、置換されていても良いものに置換する置換基は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、例えば、アルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アシル基などが挙げられる。なお、これらのR1〜R5に置換する置換基は、1種のみでも良く、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0027】
また、前記のR1〜R5の炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、また、通常20以下、好ましくは18以下、より好ましくは15以下である。炭素数が少なすぎても、多すぎても、輝度が低下する可能性がある。
【0028】
式(II)においてY1は−OHを表わし、Y2は=Oを表わす。また、配位子LにおいてはY1及びY2は希土類イオンLnに配位していて、これにより、配位子Lと希土類イオンLnとが配位するようになっている。なお、その配位形態は、Y1とY2の両方が同一の希土類イオンLnに配位していてもよいし、Y1とY2とが異なる希土類イオンLnに配位していてもよい。
【0029】
配位子Lは、以下のような構造を有することが好ましい。
式(II)において、R1及び/又はR3が、水素であることが好ましく、R1及びR3が共に水素であることが特に好ましい。即ち、Y1に対して、オルト位に存在するR1及びY1に対して、パラ位に存在するR3は、置換されていないことが好ましい。
5は、−Rで示されるアルキル基もしくはシクロアルキル基、−ORで示されるアルコキシ基、−C(=O)Rで示されるアシル基、又は−C(=O)NHRで示されるアミド基であることが好ましく、−Rで示されるアルキル基もしくはシクロアルキル基、又は−ORで示されるアルコキシ基であることが更に好ましい。ここで、Rは、置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基又はシクロアルキル基である。前記のRの炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、また、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。上記Rの置換基としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましい具体例としては、ヒドロキシル基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、アミノ基(−NH2)等の電子供与性基が挙げられる。
配位子Lが上記のような構造を有すると、錯体中、一対のLのベンゼン環同士がππ stacking(パイパイスタッキング)を起こし、錯体が安定した構造をとりやすくなる。その結果、発光強度が向上するものと考えられる。
【0030】
これらの配位子Lのうちでも、高い発光強度を得ることができ、且つ、合成が容易である点から、下記式(III)で表わされるサリチル酸ヘキシルを用いることが好ましい。
【化3】

【0031】
サリチル酸ヘキシルから構成される上述のTb蛍光体は、吸収スペクトルが390nm付近であるという特徴を有するため、市販されている安価なLEDなどの光によって効率よく励起を行うことができる。さらに、従来用いられてきた希土類錯体の配位子よりも合成がはるかに容易であり、且つ価格が低廉であるという利点を備えている。
また、上記と同様の理由により、配位子Lとしてサリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸プロピル、サリチル酸ブチル、サリチル酸ペンチル、サリチル酸ヒドロキシエチル、サリチル酸エチルヘキシル等を使用することも可能である。
【0032】
上述した特定Tb蛍光体は、他の蛍光体に比べて発光強度が飛躍的に高いという利点を有する。また、この特定Tb蛍光体は、市販の安価なLEDを用いて効率よく励起を行うことができる。また、特定Tb蛍光体は熱耐久性も高い。しかも、合成原料が安価であるという利点がある。また、発光性希土類多核錯体自体は無色透明であるため、他の物質や材料と一体化させることも容易である。
【0033】
また、上述した特定Tb蛍光体中でも、特に、錯体構造がL16(Ln)9cで表される、九核の希土類多核錯体(以下適宜、「九核希土類錯体」という)とすることが好ましい。この場合の九核希土類錯体の分子構造の模式的な概念図を、図4に示す。なお、図4に記載のエネルギー移動とは、配位子Lが捕捉した光エネルギーが、希土類イオンLn(核)に移動することを表わす。この場合、9個の希土類イオンLn(核)のうち、外側の8個に配位子Lが配位する。このとき、希土類イオンLnとしては、全てをテルビウムの3価陽イオンとするか、若しくは、少なくとも1つのテルビウムの3価陽イオンと、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、及びイッテルビウムの3価陽イオンとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0034】
さらに、上記の九核希土類錯体の核となる希土類イオンLnとしては、テルビウムイオンのみを用いることが特に好ましい。また、この際、配位子Lとしてサリチル酸ヘキシルを用いることが好ましい。このように、希土類イオンとしてテルビウムイオンのみを用い、且つ、配位子としてサリチル酸ヘキシルを用いることにより、九核希土類錯体は、熱耐久性を備えることができると共に、発光強度の高い緑色発光を実現することができる。また、希土類イオンLnとしてテルビウムイオンとユーロピウムイオンを組み合わせれば、黄色発光を実現することもできる。このように、各種の希土類イオンを適切に組み合わせることによって、所望の色の発光を得ることができる。
【0035】
なお、Tb錯体蛍光体は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0036】
[Tb錯体蛍光体の発光ピーク]
Tb錯体蛍光体の発光ピークの波長範囲に制限は無いが、通常は可視光領域である。その発光ピークの具体的な波長範囲を示すと、通常510nm以上、好ましくは520nm以上、また、通常700nm以下、好ましくは690nm以下である。中でも、Tb錯体蛍光体として緑色に発光するものを用いる場合は、その発光ピークの波長範囲は、通常510nm以上、好ましくは520nm以上、また、通常560nm以下、好ましくは550nm以下である。なお、上記の特定Tb蛍光体は、この波長範囲に発光ピークを有する緑色蛍光体である。
【0037】
[Tb錯体蛍光体の重量メジアン径]
Tb錯体蛍光体の重量メジアン径は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1μm以上、中でも2μm以上、特に5μm以上、また、通常30μm以下、中でも20μm以下、特に10μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径が小さすぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
【0038】
[Tb錯体蛍光体の含有率]
第2の発光体におけるTb錯体蛍光体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。Tb錯体蛍光体は、少なすぎると励起光の漏れが生じ、輝度が低下する可能性があり、多すぎると塗布性が悪化する可能性や、装置内で光が散乱してしまうため光の取り出し効率が低下して輝度が低下する可能性がある。
【0039】
[2−2.無機蛍光体]
無機蛍光体に制限は無く、発光装置の用途等に応じて任意の無機蛍光体を用いることができる。例えば、Tb錯体蛍光体と同色の蛍光を発する蛍光体(同色併用蛍光体)を用いても良く、また、Tb錯体蛍光体とは異なる色の蛍光を発する蛍光体を用いても良い。ただし、通常は、無機蛍光体は、第2の発光体の発光の色調を調節するために使用されるため、Tb錯体蛍光体とは異なる色の蛍光を発する蛍光体を使用することが多い。したがって、通常は、無機蛍光体としてTb錯体蛍光体とは発光波長が異なる蛍光体を用いることが多い。
【0040】
無機蛍光体は、1種のみを用いるようにしてもよいが、2種以上を用いることが好ましい。また、2種以上の無機蛍光体を用いる場合、その組み合わせ及び比率は任意であるが、発光の色が異なる無機蛍光体を組み合わせて用いることが好ましい。本発明の発光装置が発する光の色成分を増加させ、発光装置を照明用途に用いた場合に光をより自然な光としたり、発光装置を画像表示装置用途に用いた場合に色再現性を向上させたりするためである。
【0041】
無機蛍光体の中でも、結晶母体であるY23、Zn2SiO4等に代表される金属酸化物、Sr2Si58等に代表される金属窒化物、Ca5(PO43Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが好ましい。
【0042】
結晶母体の好ましい具体例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa24、SrS、CaS、ZnS等の硫化物、Y22S等の酸硫化物、(Y,Gd)3Al512、YAlO3、BaMgAl1017、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al1017、BaAl1219、CeMgAl1119、(Ba,Sr,Mg)O・Al23、BaAl2Si28、SrAl24、Sr4Al1425、Y3Al512等のアルミン酸塩、Y2SiO5、Zn2SiO4等の珪酸塩、SnO2、Y23等の酸化物、GdMgB510、(Y,Gd)BO3等の硼酸塩、Ca10(PO46(F,Cl)2、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2等のハロリン酸塩、Sr227、(La,Ce)PO4等のリン酸塩、(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si58、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN3等の金属窒化物等を挙げることができる。
【0043】
ただし、上記の結晶母体及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
【0044】
具体的には、蛍光体として以下に挙げる赤色無機蛍光体、緑色無機蛍光体、青色無機蛍光体、黄色無機蛍光体などを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。
【0045】
[赤色無機蛍光体]
無機蛍光体のうち、赤色光を発する赤色無機蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si58:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)22S:Euで表わされるユウロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
【0046】
さらに、例えば、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本実施形態において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0047】
また、そのほか、赤色無機蛍光体としては、例えば、(La,Y)22S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O4:Eu、Y23:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu,Mn、(Ba,Mg)2SiO4:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW28:Eu、LiW28:Eu,Sm、Eu229、Eu229:Nb、Eu229:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO3:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、LiY9(SiO462:Eu、Ca28(SiO462:Eu、(Sr,Ba,Ca)3SiO5:Eu、Sr2BaSiO5:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)3Al512:Ce、(Tb,Gd)3Al512:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Ca,Sr,Ba)2Si58:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)SiN2:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu等のEu付活窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Ce等のCe付活窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、(Ba3Mg)Si28:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)3(Zn,Mg)Si28:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)23:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)22S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO4:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY24:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa24:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP27:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)227:Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)2WO6:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)xSiyz:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO46(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1-xScxCey2(Ca,Mg)1-r(Mg,Zn)2+rSiz-qGeq12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Mg)3(PO42:Sn2+のSn付活リン酸塩蛍光体などを用いることも可能である。
【0048】
また、赤色無機蛍光体のうち、ピーク波長が580nm以上、好ましくは590nm以上、また、620nm以下、好ましくは610nm以下の範囲内にあるものは、橙色無機蛍光体として好適に用いることができる。このような橙色無機蛍光体の例としては、(Sr,Ba)3SiO5:Eu、(Sr,Mg)3(PO42:Sn2+等が挙げられる。
【0049】
これらの赤色無機蛍光体の中でも、Tb錯体蛍光体と組み合わせて用いるのに特に好適な赤色無機蛍光体としては、(La,Y)22S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba)2Si58:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu等のEu付活窒化物蛍光体、(Sr,Ba)3SiO5:Eu等のEu付活ケイ酸塩蛍光体が挙げられる。
【0050】
[緑色無機蛍光体]
無機蛍光体のうち、緑色光を発する緑色無機蛍光体としては、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si222:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が挙げられる。
【0051】
また、そのほか、緑色無機蛍光体としては、例えば、Sr4Al1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al24:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)Al2Si28:Eu、(Ba,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si27:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)9(Sc,Y,Lu,Gd)2(Si,Ge)624:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Y2SiO5:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr227−Sr225:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si38−2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、Zn2SiO4:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、Y3Al512:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca28(SiO462:Tb、La3Ga5SiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga24:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y3(Al,Ga)512:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)3(Al,Ga)512:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、Ca3Sc2Si312:Ce、Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si312:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc24:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、SrSi222:Eu、(Sr,Ba,Ca)Si222:Eu、Eu付活βサイアロン、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl24:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)22S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO4:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO3:Ce,Tb、Na2Gd227:Ce,Tb、(Ba,Sr)2(Ca,Mg,Zn)B26:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、Ca8Mg(SiO44Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In)24:Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)8(Mg,Zn)(SiO44Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0052】
これらの緑色無機蛍光体の中でも、Tb錯体蛍光体と組み合わせて用いるのに特に好適な緑色無機蛍光体としては、(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)Al24:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al等の硫化物蛍光体、CaSc24:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、Ca3Sc2Si312:Ce、Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si312:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体が挙げられる。
【0053】
[青色無機蛍光体]
無機蛍光体のうち、青色光を発する青色無機蛍光体としては、例えば、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なうBaMgAl1017:Euで表わされるユウロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)5(PO43Cl:Euで表わされるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)259Cl:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al24:Eu又は(Sr,Ca,Ba)4Al1425:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0054】
また、そのほか、青色無機蛍光体としては、例えば、Sr227:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、Sr4Al1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaAl813:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa24:Ce、CaGa24:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu、(Ba,Sr,Ca)5(PO43(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAl2Si28:Eu、(Sr,Ba)3MgSi28:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr227:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、Y2SiO5:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO4等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO5:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO46・nB23:Eu、2SrO・0.84P25・0.16B23:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si38・2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0055】
これらの青色無機蛍光体の中でも、Tb錯体蛍光体と組み合わせて用いるのに特に好適な青色無機蛍光体としては、BaMgAl1017:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体が挙げられる。
【0056】
[黄色無機蛍光体]
無機蛍光体のうち、黄色光を発する黄色無機蛍光体としては、例えば、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
特に、RE3512:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)やM23324312:Ce(ここで、M2は2価の金属元素、M3は3価の金属元素、M4は4価の金属元素を表す。)等で表されるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE254:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、M5は、Si及び/又はGeを表す。)等で表されるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN3:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)等のCaAlSiN3構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
【0057】
また、そのほか、黄色無機蛍光体としては、例えば、CaGa24:Eu、(Ca,Sr)Ga24:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al)24:Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体を用いることも可能である。
【0058】
[無機蛍光体の発光ピーク]
無機蛍光体の発光ピークの波長範囲に制限は無いが、通常は可視光領域である。具体的な発光ピークの波長に制限は無いが、例えば、赤色無機蛍光体、緑色無機蛍光体、青色無機蛍光体、及び黄色無機蛍光体の発光ピークの好ましい波長範囲を示すと、以下の通りである。
赤色無機蛍光体の発光ピークの波長範囲は、通常570nm以上、好ましくは575nm以上、より好ましくは580nm以上、また、通常700nm以下、好ましくは690nm以下、より好ましくは680nm以下である。
緑色無機蛍光体の発光ピークの波長範囲は、通常500nm以上、好ましくは510nm以上、より好ましくは520nm以上、また、通常570nm以下、好ましくは560nm以下、より好ましくは550nm以下である。
青色無機蛍光体の発光ピークの波長範囲は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下である。
黄色無機蛍光体の発光ピークの波長範囲は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下である。
【0059】
中でも、発光ピーク波長に関して言えば、無機蛍光体としては、570nm以上700nm以下の波長範囲又は420nm以上480nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを少なくとも1種使用することが好ましい。また、特に、この波長範囲に発光ピーク波長を有する無機蛍光体は、510nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピークを有するTb錯体蛍光体と組み合わせて用いると、特に好ましい。輝度の高い白色光が得られるためである。なお、前記の波長範囲に発光ピークを有する無機蛍光体の他に、それ以外の無機蛍光体を1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0060】
[無機蛍光体の重量メジアン径]
無機蛍光体の重量メジアン径は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10μm以上、中でも15μm以上、また、通常30μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。
【0061】
[無機蛍光体の含有率]
第2の発光体における無機蛍光体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。無機蛍光体は、少なすぎると励起光の漏れを生じ、輝度が低下する可能性があり、多すぎると輝度が低下したり、塗布性が悪化したりする可能性がある。
【0062】
[好ましい組み合わせ]
Tb錯体蛍光体と組み合わせて用いる無機蛍光体の具体的種類、及び、Tb錯体蛍光体に対する無機蛍光体の比率などは、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、発光装置の用途などに応じて任意に設定すればよい。
【0063】
したがって、本発明の発光装置において、上述した赤色無機蛍光体、青色無機蛍光体、緑色無機蛍光体及び黄色無機蛍光体の種類は、発光装置の用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合には、所望の白色光が得られるように、Tb錯体蛍光体と、無機蛍光体とを適切に組み合わせればよい。具体例を挙げると、第1の発光体として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、Tb錯体蛍光体として特定Tb蛍光体を使用し、無機蛍光体として赤色無機蛍光体及び青色無機蛍光体を併用すれば、白色発光の発光装置を得られる。このように特定Tb蛍光体と組み合わせて白色発光の発光装置を構成する場合に使用する無機蛍光体として好適な無機蛍光体の組み合わせの例を挙げると、赤色無機蛍光体として(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Euを、青色発光の無機蛍光体としてBaMgAl1017:Euを組み合わせて用いることが好ましい。この場合の各蛍光体の混合比率としては、Tb錯体蛍光体、青色蛍光体及び赤色蛍光体の合計量を100としたときに、Tb錯体蛍光体:青色蛍光体:赤色蛍光体=10〜80:10〜80:1〜20(重量比)とすることが好ましい。
【0064】
[2−3.封止樹脂]
第2の発光体は、上記のTb錯体蛍光体及び無機蛍光体のみにより構成することも可能であるが、例えば、封止樹脂を用いることもできる。その場合、通常は、Tb錯体蛍光体及び無機蛍光体が封止樹脂内に分散されて第2の発光体が構成される。
【0065】
封止樹脂に特に制限は無く、第1の発光体及びTb錯体蛍光体及び無機蛍光体が発する光を透過させうるものであれば、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用できる。封止樹脂の例を挙げると、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;付加反応型シリコーン樹脂、縮合反応型シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等のシリコーン樹脂などが挙げられる。また、無機系材料、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液又はこれらの組み合わせを固化(硬化)した無機系材料、例えばシロキサン結合を有する無機系材料も封止樹脂として用いることができる。
なお、封止樹脂は、1種を用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0066】
第2の発光体中の封止樹脂の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、封止樹脂の種類や発光装置の種類によっても異なるが、蛍光体(Tb錯体蛍光体及び無機蛍光体等)に対する重量比で、通常0.1倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上、また、通常30倍以下、好ましくは15倍以下の範囲である。封止樹脂が少なすぎると輝度が低下する可能性があり、多すぎると輝度が低下したり、塗布性が悪化したりする可能性がある。
【0067】
[2−4.その他の成分]
第2の発光体は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述したTb錯体蛍光体、無機蛍光体及び封止樹脂以外の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、有機蛍光体、無機粒子(光の分散剤)などが挙げられる。
なお、その他の成分は、1種を用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0068】
[2−5.第2の発光体の作製方法]
第2の発光体の作製方法に制限は無いが、例えば第2の発光体を封止樹脂を用いて構成する場合には、まず蛍光体含有組成物を用意し、この蛍光体含有組成物を硬化させて作製することができる。
【0069】
蛍光体含有組成物とは、少なくともTb錯体蛍光体及び無機蛍光体を液状媒体に分散させたもので、この液状媒体は、硬化させることにより封止樹脂として機能することになる。換言すれば、硬化させることにより封止樹脂として機能する液状物質を液状媒体として使用する。
【0070】
液状媒体としては、所望の使用条件下において液状の性質を示し、Tb錯体蛍光体及び無機蛍光体を好適に分散させると共に、好ましくない反応等を生じないものであれば、任意のものを目的等に応じて選択することが可能である。液状媒体の例としては、硬化前の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが挙げられ、例えば、封止樹脂として例示したものと同様のものが挙げられる。ただし、液状媒体として使用する際には、これらは硬化前の液状態にて用いる。さらに、封止樹脂を溶媒に溶解させた溶液を液状媒体として使用することもできる。なお、これらの液状媒体は一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0071】
液状媒体の使用量は用途等に応じて適宜調整すればよいが、一般的には、蛍光体(Tb錯体蛍光体及び無機蛍光体等)に対する液状媒体の重量比で、通常3倍以上、好ましくは5倍以上、また、通常30倍以下、好ましくは15倍以下の範囲である。液状媒体が少なすぎると輝度が低下する可能性があり、多すぎると輝度が低下したり、塗布性が悪化したりする可能性がある。
【0072】
また、蛍光体含有組成物は、Tb錯体蛍光体及び無機蛍光体及び液状媒体に加え、その用途等に応じて、その他の任意の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、拡散剤、増粘剤、増量剤、干渉剤等が挙げられる。具体例としては、アエロジル等のシリカ系微粉、アルミナ等が挙げられる。これらのその他の成分は、通常、第2の発光体においてもその他の成分として含有させることになる。なお、これらその他の成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0073】
この蛍光体含有組成物を調製する際には、Tb錯体蛍光体及び無機蛍光体と液状媒体とを混合することになるが、この際、Tb錯体蛍光体と無機蛍光体とは、いずれを先に液状媒体と混合しても良い。また、Tb錯体蛍光体及び無機蛍光体を予め混合して蛍光体混合物を用意し、この蛍光体混合物を液状媒体と混合するようにしてもよい。また、Tb錯体蛍光体及び無機蛍光体の一部を蛍光体混合物とし、その他の部分を先に液状媒体に混合するようにしても良い。なお、蛍光体混合物を用意する際、Tb錯体蛍光体及び無機蛍光体の比率は任意であるが、通常は、作製しようとする第2の発光体に含有させるTb錯体蛍光体及び無機蛍光体の比率に一致させるようにする。また、ここでいう混合とは、必ずしも蛍光体同士が混ざり合っている必要は無く、異種の蛍光体が組み合わされていることを意味する。
【0074】
蛍光体含有組成物を用意したら、それを所望の形状に成形し、硬化させて、第2の発光体を作製する。
成形の方法は任意であるが、例えば、第2の発光体を膜状に形成する場合には、基板等の塗布対象に蛍光体含有組成物を塗布し塗布膜を形成すればよい。また、例えば、第2の発光体を後述する実施形態のようにカップ状のフレーム内に形成する場合は、そのフレームの凹部に蛍光体含有組成物を充填すればよい。
【0075】
また、硬化させる方法は、液状媒体の種類に応じて選択すればよく、例えば、加熱処理、光照射処理、冷却処理等を行なえばよい。また、封止樹脂を溶媒に溶かしてなる液状媒体を使用している場合には、当該溶媒を乾燥・除去することにより硬化させればよい。
このようにして、第2の発光体を作製することができる。
なお、上記の蛍光体含有組成物及び蛍光体混合物は、例えば蛍光インク等の、第2の発光体を作製する以外の用途においても広く使用可能である。
【0076】
[3.発光装置の全体構成]
本発明の発光装置は、上述の第1の発光体及び第2の発光体を備えていれば、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の第1の発光体及び第2の発光体を配置してなる。この際、第1の発光体の発光によって第2の発光体が励起されて(即ち、Tb錯体蛍光体及び無機蛍光体が励起されて)発光を生じ、且つ、この第1の発光体の発光及び/又は第2の発光体の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。この場合、Tb錯体蛍光体及び無機蛍光体は第2の発光部内に均一に分散していてもよいが、均一でなくても良い。
【0077】
また、本発明の発光装置では、上述の第1の発光体、第2の発光体及びフレーム以外の部材を用いてもよい。その例としては、接着部が挙げられる。具体例を挙げると、接着部は、発光装置において、第1の発光体、第2の発光体及びフレーム間を接着する目的で用いることができる。なお、接着部としては、例えば、第2の発光体の構成材料として例示した封止樹脂と同様の材料により形成することができる。
【0078】
[4.発光装置の実施形態]
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0079】
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す図である。本実施形態の発光装置1は、フレーム2と、光源である近紫外LED(第1の発光体)3と、近紫外LED3から発せられる光の一部を吸収し、それとは異なる波長を有する光を発する蛍光体含有部(第2の発光体)4からなる。
【0080】
フレーム2は、近紫外LED3、蛍光体含有部4を保持するための金属製の基部である。フレーム2の上面には、図1中上側に開口した断面台形状の凹部(窪み)2Aが形成されている。これにより、フレーム2はカップ形状となっているため、発光装置1から放出される光に指向性をもたせることができ、放出する光を有効に利用できるようになっている。更に、フレーム2の凹部2A内面は、銀などの金属メッキにより、可視光域全般の光の反射率を高められており、これにより、フレーム2の凹部2A内面に当たった光も、発光装置1から所定方向に向けて放出できるようになっている。
【0081】
フレーム2の凹部2Aの底部には、第1の発光体として近紫外LED3が設置されている。近紫外LED3は、電力を供給されることにより近紫外の光を発するLEDである。この近紫外LED3から発せられた近紫外光は、蛍光体含有部4内の蛍光体(Tb錯体蛍光体及び無機蛍光体)に励起光として吸収されるようになっている。
【0082】
また、近紫外LED3は前記のようにフレーム2の凹部2Aの底部に設置されているが、ここではフレーム2と近紫外LED3との間は銀ペースト(接着剤に銀粒子を混合したもの)5によって接着され、これにより、近紫外LED3はフレーム2に設置されている。更に、この銀ペースト5は、近紫外LED3で発生した熱をフレーム2に効率よく放熱する役割も果たしている。
【0083】
更に、フレーム2には、近紫外LED3に電力を供給するための金製のワイヤ6が取り付けられている。つまり、近紫外LED3の上面に設けられた電極(図示省略)とは、ワイヤ6を用いてワイヤボンディングによって結線されていて、このワイヤ6を通電することによって近紫外LED3に電力が供給され、近紫外LED3が近紫外光を発するようになっている。なお、ワイヤ6は近紫外LED3の構造にあわせて1本又は複数本が取り付けられる。
【0084】
更に、フレーム2の凹部2Aには、近紫外LED3から発せられる光の一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光体含有部4が設けられている。蛍光体含有部4は、蛍光体と透明樹脂とで形成されている。本実施形態においては、蛍光体として、Tb錯体蛍光体と無機蛍光体とを用いる。Tb錯体蛍光体及び無機蛍光体の具体的な種類及び比率は蛍光体発光部4の発する光の総和が所望の色になるように選べばよい。色は白色だけでなく、黄色、オレンジ、ピンク、紫、青緑等であっても良い。また、これらの色と白色との間の中間的な色であっても良い。ここでは、蛍光体として、緑色発光するTb錯体蛍光体と、赤色発光する無機蛍光体(赤色無機蛍光体)と、青色発光する無機蛍光体(青色無機蛍光体)とを用い、発光装置から白色光が発せられるようになっているものとする。
また、透明樹脂は蛍光体含有部4の封止樹脂であり、ここでは、上述の封止樹脂を用いている。
【0085】
モールド部7は、近紫外LED3、蛍光体含有部4、ワイヤ6などを外部から保護するとともに、配光特性を制御するためのレンズとしての機能を持つ。モールド部7には主にエポキシ樹脂を用いることができる。また、蛍光体含有部4は、蛍光体を真空に封止する手段を講じていても良い。
【0086】
本実施形態の発光装置は以上のように構成されているので、近紫外LED3が発光すると、蛍光体発光部4内のTb錯体蛍光体、赤色無機蛍光体及び青色無機蛍光体が励起されて、それぞれ緑色、赤色及び青色で発光する。これにより、発光装置からは、緑色、赤色及び青色の光からなる合成光として白色の光が発せられることになるのである。
【0087】
また、本発明の発光装置は、上記の実施形態のものに限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
例えば、第1の発光体として面発光型のものを使用し、第2の発光体として膜状のものを用いることができる。この場合、第1の発光体の発光面に、直接膜状の第2の発光体を接触させた形状とすることが好ましい。なお、ここでいう接触とは、第1の発光体と第2の発光体とが空気や気体を介さないでぴたりと接している状態をつくることを言う。その結果、第1の発光体からの光が第2の発光体の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
【0088】
図2は、このように、第1の発光体として面発光型のものを用い、第2の発光体として膜状のものを適用した発光装置の一例を示す模式的な斜視図である。図2に示す発光装置8では、基板9上に第1の発光体としての面発光型GaN系LD10が設けられ、面発光型GaN系LD10の上に膜状の第2の発光体11が形成されている。ここで、相互に接触した状態をつくるためには、第1の発光体であるLD10と第2の発光体11とそれぞれ別個に用意して、それらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させても良いし、LD10の発光面上に第2の発光体11を成膜(成型)させても良い。これらの結果、LD11と第2の発光体11とを接触した状態とすることができる。
このような構成の発光装置8によれば、上記実施形態と同様の利点に加え、光量損失を避けて発光効率を向上させることが可能である。
【0089】
[5.本発明の発光装置の利点]
本発明の発光装置は、Tbを含む錯体蛍光体を用いているにもかかわらず、高輝度な特定Tb錯体蛍光体を無機蛍光体と共に用いることにより、全光束が大きい発光装置を提供することができる。具体的な範囲を挙げると、通常0.01ルーメン以上、好ましくは0.05ルーメン以上、より好ましくは0.1ルーメン以上である。なお、上限に制限は無いが、通常10ルーメン以下である。なお、全光束は、例えばファイバマルチチャンネル分光器(オーシャンオプティクス社製USB2000)により測定できる。
【0090】
このように、Tb錯体蛍光体と無機蛍光体とを組み合わせて用いた場合に、Tb錯体と有機錯体蛍光体とを組み合わせて用いた場合よりも高い輝度が得られる理由は定かではないが、次のように推察される。即ち、Tb錯体蛍光体と有機錯体蛍光体とを組み合わせて発光装置を作製した場合、Tb錯体蛍光体は封止樹脂の硬化時に一部溶解するものと考えられる。そのため、Tb錯体蛍光体を有機錯体蛍光体と混合するとTb錯体蛍光体が有機錯体蛍光体と配位子交換を生じ、Tb錯体蛍光体のクラスター構造が崩れ、当該発光装置の輝度が大幅に低下していたものと推察される。一方、Tb錯体蛍光体を無機蛍光体と混合した場合は、前記の配位子交換は起こらないため、Tb錯体蛍光体のクラスター構造が崩れることなく、高輝度な発光を維持できるものと考えられる。
【0091】
[6.発光装置の用途]
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能である。中でも、カラーフィルターと共に用いると、色再現性範囲が広くなることから、本発明の発光装置は、画像表示装置及び照明装置の光源としてとりわけ好適に用いられる。なお、本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、カラーフィルターとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
【0092】
発光装置1を組み込んだ面発光照明装置12の一例を図3に模式的に示す。この面発光照明装置12では、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース13の底面に、多数の発光装置1を、その外側に発光装置1の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置してある。また、発光の均一化のために、保持ケース13の蓋部に相当する箇所には、乳白色としたアクリル板等の拡散板14が固定されている。
【0093】
この面発光照明装置12の使用時には、発光装置1を発光させる。この光が拡散板14を透過して、図面上方に出射され、保持ケース13の拡散板14面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【実施例】
【0094】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
[蛍光体の測定・評価等]
後述の各実施例及び各比較例において、蛍光体粒子の各種の評価は、以下の手法で行なった。
【0096】
[発光色の評価方法]
実施例及び比較例で作製した半導体発光デバイスを発光させ、発せられた光を、ファイバマルチチャンネル分光器(オーシャンオプティクス社製USB2000)により測定し、発せられた光のxyz系色度座標求めた。
【0097】
[全光束の測定方法]
実施例及び比較例で作製した半導体発光デバイスを発光させ、発せられた光を、ファイバマルチチャンネル分光器(オーシャンオプティクス社製USB2000)により測定し、発せられた光の全光束(ルーメン)を求めた。
【0098】
[放射束の測定方法]
実施例及び比較例で作製した半導体発光デバイスを発光させ、発せられた光を、ファイバマルチチャンネル分光器(オーシャンオプティクス社製USB2000)により測定し、発せられた光の放射束(マイクロワット)を求めた。
【0099】
[発光スペクトルの測定方法]
実施例及び比較例で作製した半導体発光デバイスを発光させ、発せられた光の発光スペクトルを、ファイバマルチチャンネル分光器(オーシャンオプティクス社製USB2000)により測定した。
【0100】
[実施例1]
赤色蛍光体である(Sr,Ca)AlSiN3:Euと、緑色蛍光体であるサリチル酸ヘキシル−Tb(III)九核錯体(Tb錯体蛍光体)と、青色蛍光体であるBaAlMn1017:Euとを3:66:31の重量割合で混合し、蛍光体混合物を調製した。なお、原料として使用した蛍光体は何れも粉末状のものである。
【0101】
得られた蛍光体混合物125mgと無機系材料(製法については後述する。)500mgとを混合し、遠心脱泡機「あわとり錬太郎AR100」にて脱泡処理を1分間、混合処理を3分間行い、蛍光体含有組成物を調製した。
【0102】
図5に示すように、ポリフタルアミドカップ[101]の底部[102]にGaN系半導体発光素子(Cree社製、395MB)[103]を設置した発光デバイス(発光ピーク波長395nm)[100]のカップ[101]の凹部[104]中に、得られた蛍光体含有組成物を、マイクロピペットで2回に分けて合計3.5μlを滴下し、120℃で1時間加熱して第一の乾燥を行った。次いで、150℃で3時間加熱し第二の乾燥を行ったところ、上記の蛍光体[105]が均一に分散された、欠陥の無い蛍光体層[106]を形成させることができた。なお、発光デバイス[100]ではカップ[101]に設けられた図示しない電極と発光素子[103]とがワイヤ[107]により接続され、このワイヤ[107]を通じて電力が供給されることにより発光素子[103]が発光するようになっている。なお、実施例の説明において、カッコ「[]」内の数値は図5の対応部位を指す符号である。
【0103】
こうして得られた半導体発光デバイスを、20mAで駆動し、その発光色、輝度、発光強度、及び発光スペクトルを上述した方法で測定した。発光色、輝度および発光強度の結果を、Tb−1として表1に示す。また、図6に、発光スペクトルを示す。
また、同様の操作により、更に4回、半導体発光デバイスを作製して、その全光束、放射束、及び色度座標を上述した方法で測定した。これらの測定結果を、Tb−2〜Tb−5として、表1に示す。
【0104】
なお、上述した無機系材料は、以下のようにして合成したものである。GE東芝シリコーン製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を1400gと、フェニルトリメトキシシランを140gと、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を3.08g用意し、これを攪拌翼とコンデンサを取り付けた三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分間触媒が十分溶解するまで攪拌した。この後、反応液を120℃まで昇温し、120℃全還流下で30分間攪拌しつつ初期加水分解を行った。
続いて窒素をSV20で吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成分を留去しつつ120℃で攪拌し、さらに6時間重合反応を進めた。なお、ここで「SV」とは「Space Velocity」の略称であり、単位時間当たりの吹き込み体積量を指す。よって、SV20とは、1時間に反応液の20倍の体積のN2を吹き込むことをいう。
窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1KPaで20分間微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留去し、無溶剤の無機系材料を得た。
【0105】
[比較例1]
赤色蛍光体であるEu(Hexafluoroacetylacetonate)3(Triphenylphosphineoxide)3と、緑色蛍光体であるサリチル酸ヘキシル−Tb(III)九核錯体と、青色蛍光体であるBaAlMn1017:Euとを2:65:33の重量割合で混合し、蛍光体混合物を調製した。なお、原料として使用した蛍光体は何れも粉末状のものである。
【0106】
この蛍光体混合物を用いて、実施例1と同様にして、蛍光体含有組成物を調製し、発酵デバイス[100]に蛍光体層[106]を形成した。
こうして得られた半導体発光デバイスを、20mAで駆動し、その発光色、輝度、発光強度、及び発光スペクトルを上述した方法で測定した。発光色、輝度および発光強度の結果を、Tb−Eu硬化後−1として表1に示す。また、図7に、発光スペクトルを示す。
また、同様の操作により、更に3回、半導体発光デバイスを作製して、その全光束、放射束、及び色度座標を上述した方法で測定した。これらの測定結果を、Tb−Eu硬化後−2〜Tb−Eu硬化後−4として、表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
[まとめ1]
実施例1、比較例1とも、各操作毎に異なる結果が出ているが、これらはそれぞれ誤差の範囲内であるものと考えられる。
実施例1と比較例1とから、Tb錯体蛍光体と有機蛍光体とを組み合わせて製造した発光装置よりも、Tb錯体蛍光体と無機蛍光体とを組み合わせて製造した本発明の発光装置の方が、高い輝度で発光することが確認された。
【0109】
[実施例2]
サリチル酸ヒドロキシエチル(0.492g、2.70mmol)のメタノール溶液50mlに等モル量のトリエチルアミン(0.270g、2.70mmol)を加え、室温で所定時間撹拌した後、Tb(NO33・6H2O(0.690g、1.52mmol)のメタノール溶液10mlを滴下して加え、40℃で2時間撹拌した。得られた透明溶液をろ過した後、放置し白色結晶を得、該結晶を冷メタノールで数回洗浄後、ろ過し、風乾することでサリチル酸ヒドロキシエチル−Tb九核錯体を得た。用いる九核錯体の種類を変更した以外は実施例1と同様にして、発光装置を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0110】
[実施例3]
サリチル酸エチルヘキシル(0.676g、2.70mmol)のメタノール溶液50mlに等モル量のトリエチルアミン(0.270g、2.70mmol)を加え、室温で所定時間撹拌した後、Tb(NO33・6H2O(0.690g、1.52mmol)のメタノール溶液10mlを滴下して加え、40℃で2時間撹拌した。得られた透明溶液をろ過した後、放置し白色結晶を得、該結晶を冷メタノールで数回洗浄後、ろ過し、風乾することでサリチル酸エチルヘキシル−Tb九核錯体を得た。用いる九核錯体の種類を変更した以外は実施例1と同様にして、発光装置を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0111】
[実施例4]
サリチル酸メチル(0.411g、2.70mmol)のメタノール溶液50mlに等モル量のトリエチルアミン(0.270g、2.70mmol)を加え、室温で所定時間撹拌した後、Tb(NO33・6H2O(0.690g、1.52mmol)のメタノール溶液10mlを滴下して加え、40℃で2時間撹拌した。得られた白色結晶を冷メタノールで数回洗浄後、ろ過し、風乾することでサリチル酸メチル−Tb九核錯体を得た。用いる九核錯体の種類を変更した以外は実施例1と同様にして、発光装置を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0112】
【表2】

【0113】
[まとめ2]
実施例2〜4のいずれにおいても、各操作毎に異なる結果が出ているが、これらはそれぞれ誤差の範囲内であるものと考えられる。
実施例1〜4から、Tb錯体蛍光体が有する配位子Lの種類に関わらず、高い輝度で発光することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は光を用いる任意の分野において用いることができ、例えば屋内及び屋外用の照明などのほか、携帯電話、家庭用電化製品、屋外設置用ディスプレイ等の各種電子機器の画像表示装置などに用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態について示すもので、第1の発光体として面発光型のものを用い、第2の発光体として膜状のものを適用した発光装置の一例を示す模式的な斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態について示すもので、発光装置を組み込んだ面発光照明装置の一例を模式的に示す図である。
【図4】好ましい特定Tb蛍光体の一例について説明するための図であって、特定Tb蛍光体が九核の希土類多核錯体である場合のその分子構造の模式的な概念図である。
【図5】本発明の実施例及び比較例で作製した発光デバイスを模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施例1で測定した発光スペクトルを表わす図である。
【図7】比較例1で測定した発光スペクトルを表わす図である。
【符号の説明】
【0116】
1 発光装置
2 フレーム
2A フレームの凹部
3 近紫外LED(第1の発光体)
4 蛍光体含有部(第2の発光体)
5 銀ペースト
6 ワイヤ
7 モールド部
8 発光装置
9 基板
10 面発光型GaN系LD(第1の発光体)
11 第2の発光体
12 面発光照明装置
13 保持ケース
14 拡散板
100 発光デバイス
101 ポリフタルアミドカップ
102 底部
103 GaN系半導体発光素子
104 凹部
105 蛍光体
106 蛍光体層
107 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備える発光装置であって、
該第2の発光体が、Tbを含有する錯体蛍光体と無機蛍光体とを含有する
ことを特徴とする、発光装置。
【請求項2】
該第2の発光体が、該無機蛍光体を2種以上含有する
ことを特徴とする、請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
該錯体蛍光体が510nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、
該無機蛍光体の少なくとも1種が570nm以上700nm以下の波長範囲又は420nm以上480nm以下の波長範囲に発光ピークを有する
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
該錯体蛍光体が、下記式(I)で表わされる
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光装置。
a(Ln)bc (I)
{式(I)において、
Lは式(II)で表わされる配位子を表わし、
【化1】

(式(II)において、R1〜R5は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表わし、Y1は−OHを表わし、Y2は=Oを表わす。)
Lnは、それぞれ独立に、希土類イオンを表わし、且つ、Lnの少なくとも1つはテルビウムイオンを表わし、
Xは陰イオンを表わし、
a、b及びcは、1≦a/b≦4、1<c/b≦4を満たす整数を表わす。
また、Y1及びY2は、同一の又は異なるLnに配位している。}
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光装置を光源として備える
ことを特徴とする、画像表示装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光装置を光源として備える
ことを特徴とする、照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−75080(P2008−75080A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215919(P2007−215919)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】