説明

発光装置およびその製造方法

【課題】 電極の断線等を抑制するとともに、発光部の上面からの電極の引き出し方向の制約を低減することができる発光装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る発光装置1は、基板3と、基板3の上に複数の半導体層を積層して形成されており、Gaを含む燐化物半導体からなるコンタクト層15が最上層に設けられている発光部5と、コンタクト層15の上面に接続されている電極7と、を備えている。そして、コンタクト層15は、上面と底面とを結ぶ側面がコンタクト層15の上面から底面に向かうにつれて広がるように全周に亘って傾斜している。この電極7は、コンタクト層15の上面から側面の上を介して基板3の上に引き出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の上に複数の半導体層を積層し、pn接合領域を有する発光部を形成した発光装置が種々提案されている。例えば、特許文献1に記載された発光装置は、基板の上に複数の半導体層を積層して形成された発光部の上面に、電極を接続して構成されている。この発光装置の発光部は、平面視略矩形状であり、順メサ形状の側面と、逆メサ形状の側面とを備えている。この発光部の上面に接続された電極は、順メサ形状の側面の上を介して基板の上に引き出されている。これは、例えば、逆メサ形状の側面の上に蒸着などによって電極を形成しようとした場合、この逆メサ形状の側面の上に電極材料が堆積し難く、電極の厚さが薄くなったり、断線が生じたりし易いためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−242507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発光装置では、上記のように電極の断線等の問題を回避しているが、一方で、発光部の上面から電極を引き出す方向の制約が大きいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、電極の断線などを低減するとともに、発光部の上面からの電極の引き出し方向の制約を低減することができる発光装置、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置は、基板と、該基板の上に複数の半導体層を積層して形成されており、少なくともGaを含む燐化物半導体からなるコンタクト層が最上層に設けられている発光部と、前記コンタクト層の上面に接続される電極と、を備えており、前記コンタクト層は、上面と底面とを結ぶ側面が当該上面から当該底面に向かうにつれて広がるように全周に亘って傾斜しており、前記電極は、前記コンタクト層の前記上面から前記側面の上を介して前記基板の上に引き出されている。
【0007】
また、本発明に係る発光装置の製造方法は、基板と、該基板上に複数の半導体層を積層して形成されている、コンタクト層が最上層に設けられている発光部と、前記コンタクト層の上面に接続される電極と、を備えている発光装置の製造方法であって、前記基板の上に、複数の半導体層を積層するとともに、少なくともGaを含む燐化物半導体層を最上層に形成する工程と、前記燐化物半導体層の上にレジストマスクを形成した後に、当該燐化物半導体層を、HFおよびHを含むエッチャントによってエッチングして、前記コンタクト層を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電極の断線などが生じるのを低減するとともに、発光部の上面からの電極の引き出し方向の制約を低減することができる発光装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る発光装置の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示した発光装置のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1に示した発光装置のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図1に示した発光装置の製造工程を示す要部断面図である。
【図5】図5に示した発光装置の製造工程の続きを示す要部断面図である。
【図6】本発明に係る発光装置の他の実施形態を示す平面図である。
【図7】図6に示した発光装置のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図6に示した発光装置のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】図6に示した発光装置の製造工程を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る発光装置の一実施形態としてLEDアレイを例示し、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
図1に示したように、本実施形態に係るLEDアレイ1は、基板3と、基板3の上に列をなして設けられている複数の発光部5と、各発光部5に接続されている表面電極7と、を備えている。
【0012】
基板3は、砒化ガリウム(GaAs)からなっており、n型の導電性を有している。この基板3には、例えばn型の不純物であるシリコン(Si)が1×1017〜1×1019〔atoms/cm〕の範囲の濃度でドーピングされている。このn型の不純物としては、Siの他に、例えばゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、テルル(Te)などのIV族、VI族の元素が挙げられる。また、基板3は、厚さが例えば100〜350〔μm〕の範囲とされる。
【0013】
各発光部5は、図2、3に示したように、基板3の上に設けられている第1の積層領域S1と、第1の積層領域S1の上に設けられている第2の積層領域S2と、を備えている。この第1の積層領域S1は、n型クラッド層9と、活性層11とが順次積層されている。この第2の積層領域S2は、p型クラッド層13と、コンタクト層15とが順次積層されている。
【0014】
基板3の上面の上に設けられている第1の積層領域S1は、図1に示したように、平面視において略矩形状に設けられている。この第1の積層領域S1は、図2、3に示したように、幅が上面(つまり、活性層11の上面)で最も小さく、底面(つまり、n型クラッド層9の底面)で最も大きくなっているメサ形状をしている。そして、この第1の積層領域S1の上面と底面とを結ぶ側面は、全周に亘って、第1の積層領域S1の上面から底面に向かうにつれて広がる傾斜面となっている。
【0015】
第1の積層領域S1を構成するn型クラッド層9は、基板3の上面に設けられている。このn型クラッド層9は、燐化アルミニウムインジウム(AlInP)からなっており、n型の導電性を有している。このn型クラッド層9は、例えばn型の不純物であるSiが1×1017〜1×1019〔atoms/cm〕の範囲の濃度でドーピングされている。このn型の不純物としては、Siの他に、例えばGe、Sn、Se、TeなどのIV族、VI族の元素が挙げられる。また、n型クラッド層9は、厚さが例えば0.4〜1〔μm〕の範囲とされる。
【0016】
活性層11は、n型クラッド層9の上面の上に設けられている。この活性層11は、燐化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInP)からなっている。この活性層11には、不純物がドーピングされていない。この活性層11は、厚さが例えば0.3〜1〔μm〕とされる。
【0017】
第1の積層領域S1の上に形成された第2の積層領域S2は、図1に示したように、平面視において略矩形状に設けられている。この第2の積層領域S2は、図2、3に示したように、幅が上面で最も小さく、底面で最も大きくなったメサ形状をしている。そして、第2の積層領域S2の上面と底面とを結ぶ側面は、全周に亘って、第2の積層領域S2の上面から底面に向かうにつれて広がる傾斜面となっている。第2の積層領域S2の下面は、第1の積層領域S1の上面の面積に比べて狭くなっている。
【0018】
第2の積層領域S2を構成するp型クラッド層13は、AlInPからなっており、p型の導電性を有している。このp型クラッド層13は、例えばp型の不純物である亜鉛(Zn)が、1×1017〜1×1019〔atoms/cm〕の範囲の濃度でドーピングされている。このp型の不純物としては、Znの他に、例えばベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、炭素(Canion)などの元素が挙げられる。また、p型クラッド層13は、厚さが例えば0.4〜1〔μm〕の範囲とされる。
【0019】
コンタクト層15は、燐化ガリウム(GaP)からなっており、p型の導電性を有している。このコンタクト層15には、例えばp型の不純物であるZnが、1×1017〜1×1019〔atoms/cm〕の範囲の濃度でドーピングされている。このp型の不純物としては、Znの他に、例えばBe、Mg、Ca、Canionなどの元素が挙げられる。また、コンタクト層15は、厚さが例えば0.1〜5〔μm〕の範囲とされる。このコンタクト層15は、発光部5の最上層に形成されており、後述する表面電極7が接続されている。
【0020】
図2、3に示したように、発光部5が積層された基板3の上面側は、絶縁膜17によって全体的に被覆されている。この絶縁膜17は、電気絶縁性および透光性を有するSiNなどからなる。なお、絶縁膜17は、コンタクト層15の上面に貫通孔17aが設けられている。この貫通孔17aは、後述する表面電極7のリード部7bがコンタクト層15の上面に接続されるのに寄与している。なお、図1では、説明の便宜上、絶縁膜17を図示していない。
【0021】
図1に示した表面電極7は、基板3を被覆する絶縁膜17(図1において不図示)の上に設けられており、パッド部7aと、リード部7bとを有している。このパッド部7aは、複数設けられており、千鳥状に配置されている。このリード部7bは、発光部5とパッド部7aとを接続している。図2に示したように、リード部7bは、絶縁膜17に形成された貫通孔17aを介して、発光部5のコンタクト層15の上面に接続されている。このリード部7bは、コンタクト層15の上面から発光部5の側面の上を介して基板3の上に引き出されている。より詳細には、このリード部7bは、コンタクト層15の上面から、該コンタクト層15およびp型クラッド層13からなる第2の積層領域S2の側面の上を介して第1の積層領域S1の上面の上に引き出されている。さらに、この第1の積層領域S1の上面の上に引き出されたリード部7bは、活性層11およびn型クラッド層9からなる第1の積層領域S1の上面および側面の上を介して基板3の上面の上に引き出されている。この基板3の上面の上に引き出されたリード部7bは、パッド部7aに接続されている。このパッド部7aおよびリード部7bによって構成される表面電極7は、例えば厚さが250〔Å〕程度のCr層と、厚さが1〔μm〕程度のAu層と、の積層体で形成することができる。
【0022】
図2、3に示したように、基板3は、発光部5が形成されている上面と反対側の底面の上に、当該底面の全体に亘って裏面電極19が形成されている。この裏面電極19は、例えば厚さが250〔Å〕程度のCr層と、厚さが500〜1000〔Å〕程度のAuおよびGeの合金層と、厚さが250〔Å〕程度のCr層と、厚さが1〔μm〕程度のAu層と、の積層体で形成することができる。
【0023】
上述のように構成されたLEDアレイ1は、表面電極7と裏面電極19との間に順方向電圧を印加することで、発光部5に電流が供給され、活性層11が発光する。
【0024】
次に、LEDアレイ1の製造方法の一実施形態について、図4、5を参照しつつ説明する。なお、ここでは、図1のLEDアレイ1のII−II線に沿った断面を参照して、LEDアレイ1の製造工程を説明する。
【0025】
まず、図4(a)に示したように、基板3の上に、例えば有機金属化学気相成長法(MOCVD法)等を用いて、n型クラッド層9、活性層11、p型クラッド層13、およびコンタクト層15となる各半導体層9X、11X、13X、15Xを順次積層する。
【0026】
そして、図4(b)に示したように、フォトリソグラフィー技術などを用いてコンタクト層15となる半導体層15Xの上に第1のレジストマスクM1を形成する。次に、図4(c)に示したようにコンタクト層15となる半導体層15X、およびp型クラッド層13となる半導体層13Xをエッチングする。このエッチングの際に、フッ酸(HF)、および過酸化水素(H)を含むエッチャントが用いられる。このエッチャントを用いることで、GaPからなるコンタクト層15と、AlInPからなるp型クラッド層13と、で構成される第2の積層領域S2を幅が上面で最も小さく、かつ底面で最も大きくなっているメサ形状になし、第2の積層領域S2の上面と底面とを結ぶ側面を全周に亘って、第2の積層領域S2の上面から底面に向かうにつれて広がる傾斜面にすることができる。このエッチャントは、コンタクト層15となる半導体層15X、およびp型クラッド層13となる半導体層13Xのそれぞれに対し、厚さ方向に比べて当該厚さ方向に直交する直交方向のエッチングレートが高い。このため、このエッチャントは、図4(c)に示したように、第1のレジストマスクM1の下面側に回り込み、コンタクト層15となる半導体層15X、およびp型クラッド層13となる半導体層13Xのそれぞれをメサ形状にエッチングする。また、このエッチャントは、AlGaInPからなる活性層11に対するエッチングレートが非常に低いので、コンタクト層15となる半導体層15Xおよびp型クラッド層13となる半導体層13Xを選択的にエッチングすることができる。
【0027】
なお、このエッチャントにおけるHFとHとの配合比(体積比)は、特に限定されず、所望のエッチングレートが得られるように適宜設定すればよい。表1は、エッチャントを構成する溶剤の配合比および温度を各条件A〜Hに設定して、GaPからなるコンタクト層15となる半導体層15Xをエッチングしたときのエッチングレート、および第1のレジストマスクM1の剥離の有無を示している。条件A〜Cの結果から、常温(23℃)では、Hの配合量が増すにつれて、エッチングレートが大きくなっていることがわかる。但し、条件E、Fの結果から、Hの配合量がある程度増すと、Hの配合量とエッチングレートとの相関性がなくなることが推測される。
【0028】
また、表1の実験で使用したエッチャントには、HFおよびHに加えて、フッ化アンモニウム(NHF)が配合されている。このNHFは、第1のレジストマスクM1のエッチャントに対する耐性を向上させて、コンタクト層15となる半導体層15Xからの剥離を低減する働きがある。条件A〜Fの結果から、HFとNHFとの配合比(体積比)を、HF:NHF=x:7(0<x≦3)とすることで、第1のレジストマスクM1のコンタクト層15となる半導体層15Xからの剥離が生じるのを低減できることがわかる。したがって、本実施形態では、条件A〜Dのいずれかの条件で、コンタクト層15となる半導体層15X、およびp型クラッド層13となる半導体層13Xをエッチングする。なお、本実施形態における第1のレジストマスクM1は、ノボラック樹脂と、ナフトキノンジアジドとを含有するポジ型レジスト材料である、富士フィルムオーリン株式会社製:HPR−206を使用している。
【0029】
また、表1の条件DおよびGの結果から、エッチャントの温度を50〔℃〕にすると、エッチングレートが大きくなるが、第1のレジストマスクM1の剥離が生じることがわかる。また、条件Hの結果から、エッチャントの温度が50〔℃〕のときは、NHFの配合比を高くしても、第1のレジストマスクM1の剥離が生じることがわかる。したがって、エッチャントの温度は、第1のレジストマスクM1の剥離が生じない範囲で、適宜設定することが好ましい。
【0030】
【表1】

【0031】
上記のようにコンタクト層15となる半導体層15X、およびp型クラッド層13となる半導体層13Xからなる第2の積層領域S2のエッチングが終了した後に、第1のレジストマスクM1を除去する。
【0032】
次に、図4(d)に示したように、フォトリソグラフィー技術などを用いて、活性層11となる半導体層11Xの上に第2の積層領域S2を覆うように第2のレジストマスクM2を形成する。次に、図4(e)に示したように、AlInPからなるn型クラッド層9となる半導体層9Xと、AlGaInPからなる活性層11となる半導体層11Xとで構成される第1の積層領域S1をエッチングする。このとき、例えば、塩酸(HCl)および酢酸(CHCOOH)を含むエッチャントを用いることで、AlInPおよびAlGaInPからなる第1の積層領域S1を、幅が上面で最も小さく、かつ底面で最も大きくなったメサ形状になし、第1の積層領域S1の上面と底面とを結ぶ側面を、全周に亘って、第1の積層領域S1の上面から底面に向かうにつれて広がる傾斜面にすることができる。このエッチング終了後に、図5(f)に示したように、第2のレジストマスクM2を除去する。こうして、n型クラッド層9、活性層11、p型クラッド層13、およびコンタクト層15を有する発光部5が形成される。
【0033】
続いて、図5(g)に示したように、発光部5が形成された基板3の上に化学蒸着法(CVD法)などを用いて絶縁膜17を形成する。次に、この絶縁膜17の上に、フォトリソグラフィー法などを用いて、貫通孔17aを形成すべき領域に開口部M3aを有する第3のレジストマスクM3を形成する。
【0034】
そして、図5(h)に示したように、反応性イオンエッチング(RIE)などを用いて絶縁膜17をエッチングして貫通孔17aを形成する。この貫通孔17aの形成後に、第3のレジストマスクM3を除去する。
【0035】
次いで、図示していないが、絶縁膜17の上にレジスト膜を塗布して、フォトリソグラフィー法によって、所望のパターンを露光、現像した後に、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法などを用いて、表面電極7を形成するための金属膜を形成する。そして、リフトオフ法によって、レジスト膜を除去して、図5(i)に示したように表面電極7を所定の形状に形成する。
【0036】
そして、図5(j)に示したように、基板3の発光部5が形成されている上面と反対側の底面に、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法などを用いて裏面電極19を形成する。
【0037】
上述の工程によって、図1に示したLEDアレイ1が形成される。
【0038】
本実施形態に係るLEDアレイ1の製造方法によれば、図4(c)に示したように、GaPからなるコンタクト層15を、HFおよびHを含むエッチャントによってエッチングしている。本願発明者は、このHFおよびHを含むエッチャントを用いてGaPからなるコンタクト層15をエッチングすることによって、コンタクト層15の形状を、幅が上面で最も小さく、且つ底面で最も大きくなったメサ形状となし、コンタクト層15の上面と底面とを結ぶ側面を、全周に亘って、コンタクト層15の上面から底面に向かうにつれて広がる傾斜面とすることができることを新たに見出した。
【0039】
そして、本実施形態に係るLEDアレイ1によれば、コンタクト層15の形状を上記のような傾斜面を有するメサ形状となし、コンタクト層15の上面に接続された表面電極7を、この傾斜面を形成する側面の上を介して基板3の上に引き出している。そのため、コンタクト層15の側面の上に蒸着などによって表面電極7を形成する際に、表面電極7の厚さが薄くなったり、表面電極7が断線するなどの問題が生じたりするのを低減することができる。また、コンタクト層15の側面の全周に亘って、このような傾斜面が形成されているので、コンタクト層15の上面からの表面電極7の引き出し方向の制約を低減することができる。
【0040】
また、本実施形態では、図2に示したように、コンタクト層15を含む第2の積層領域S2の下面の大きさが第1の積層領域S1の上面の大きさに比べて小さくなっているとともに、第2の積層領域S2の側面、および第1の積層領域S1の側面が共に、傾斜面を形成している。そして、コンタクト層15の上面に接続された表面電極7は、第2の積層領域S2における傾斜面を形成する側面、並びに、第1の積層領域S1における上面および傾斜面を形成する側面の上を介して基板3の上に引き出されている。そのため、表面電極7を形成する際の表面電極7の断線などの問題が生じるのを低減することができる。
【0041】
<第2の実施形態>
図6〜8に示した本発明の第2の実施形態に係るLEDアレイ1Aは、発光部5に替えて、発光部5Aを有している点において、LEDアレイ1の構成と異なっている。
【0042】
発光部5Aは、発光部5と側面の傾斜角度が異なっている。より具体的には、この発光部5Aは、隣り合う発光部5Aと対向している一対の側面に比べて、表面電極7のリード部7bが上に設けられている側面の傾斜が緩やかになっている。なお、この表面電極7のリード部7bが上に設けられている側面と対になっている他の側面は、隣り合う発光部5Aと対向している一対の側面、およびリード部7bが上に設けられている側面に比べて、側面の傾斜が急峻であっても、緩やかであっても、同程度であってもよい。
【0043】
LEDアレイ1Aでは、表面電極7のリード部7bが上に設けられている発光部5Aの側面の傾斜を緩やかにすることによって、表面電極7に断線が生じるのを低減することができる。また、LEDアレイ1Aでは、隣り合う発光部5Aと対向している一対の側面を、表面電極7のリード部7bが上に設けられている側面に比べて急峻とすることによって、隣り合う発光部5Aの間の離間距離を短くすることができ、発光部5Aの密度を高めることができる。
【0044】
次に、このような構成のLEDアレイ1Aの製造方法の一実施形態について説明する。
【0045】
このLEDアレイ1Aの製造方法では、LEDアレイ1の製造方法における、エッチングマスクM2を設ける工程、およびAlInPからなるn型クラッド層9となる半導体層9Xと、AlGaInPからなる活性層11となる半導体層11Xとで構成される第1の積層領域S1をエッチングする工程、が異なっている。
【0046】
このLEDアレイ1Aの製造方法としては、例えば隣り合う発光部5Aと対向する一対の側面と、リード部7bが上に設けられる側面および該側面と対となる他の側面と、を異なるエッチェントを用いて別々に形成する方法が挙げられる。具体的には、隣り合う発光部5Aと対向する一対の側面を形成する際に用いるエッチャントとして、厚さ方向に比べて当該厚さ方向に直交する直交方向のエッチングレートが、リード部7bが上に設けられる側面および該側面と対となる他の側面を形成する際に用いるエッチャントに比べて高いものを採用することで形成する。このようなエッチャントの組み合わせとしては、例えば隣り合う発光部5Aと対向する一対の側面をエッチングするエッチャントとしてHClおよびCHCOOHを含むものを採用し、リード部7bが上に設けられる側面および該側面と対となる他の側面をエッチングするエッチャントとしてHFおよびHを含むものを採用する組み合わせが挙げられる。
【0047】
また、各側面を異なるエッチェントを用いて別々に形成するには、各側面を形成する際に、レジストマスクM2に替えて別々の異なるレジストマスクを設ければよい。具体的には、まず、図9(a)に示したように、複数の発光部5Aが配列される領域を覆うように第1のサブレジストマスクM2を設ける。次に、この第1のサブレジストマスクM2から露出している領域をHFおよびHを含むエッチャントを用いてエッチングして、図9(b)に示したように、リード部7bが上に設けられる側面および該側面と対となる他の側面を形成する。次に、図9(c)に示したように、発光部5Aとなる領域を覆うとともに、隣接する発光部5Aの間の表面となる領域を露出させるようにして第2のサブレジストマスクM2を設ける。次に、この第2のサブレジストマスクM2から露出している領域をHClおよびCHCOOHを含むエッチャントを用いてエッチングして、図9(d)に示したように、隣り合う発光部5Aと対向する一対の側面を形成する。
【0048】
なお、隣り合う発光部5Aと対向する一対の側面の形成と、リード部7bが上に設けられる側面および該側面と対となる他の側面の形成とは、いずれを先に形成してもよい。この際に、厚さ方向に比べて当該厚さ方向に直交する直交方向のエッチングレートが相対的に大きいエッチャントを用いる隣り合う発光部5Aと対向する一対の側面の形成を先に行うことで、隣接する発光部5Aの離間距離をより短くすることができる。
【0049】
上述のような工程を経て、LEDアレイ1Aを製造することができる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、GaPからなるコンタクト層15を例示しているが、これに限定されるものではない。本発明に係る発光装置の製造方法は、GaInP、AlGaP、およびAlGaInPなどの少なくともGaを含む燐化物半導体からなるコンタクト層に対しても適用可能である。GaPからなるコンタクト層15と同様、上記のような傾斜面を有するメサ形状に形成することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、発光部5における第1の積層領域S1、およびコンタクト層15を含む第2の積層領域S2を平面視略矩形状に形成しているが、これに限定されるものではなく、その他の多角形状、円形状に形成してもよい。この場合も、第1の積層領域S1および第2の積層領域S2を上記のような傾斜面を有するメサ形状に形成することができる。また、上記実施形態では、第1の積層領域S1および第2の積層領域S2の側面が、図2、図3に示したように平面的な傾斜面となっているが、曲面的な傾斜面に形成してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、第2の積層領域S2の下面の大きさが第1の積層領域S1の上面の大きさに比べて小さく形成されており、第1の積層領域S1の上面が露出しているが、第2の積層領域S2の下面の大きさと第1の積層領域S1の上面の大きさとを同じにして、第1の積層領域S1の上面が露出しないようにしてもよい。この場合も、表面電極7を形成する際の表面電極7の断線等の問題を抑制することができる。
【0053】
また、コンタクト層15を除く発光部5の層構成についても、発光可能なpn接合領域を形成することができる限り、上記の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0054】
1、1A・・・LEDアレイ
3、2A・・・基板
5、5A・・・発光部
7・・・表面電極
7a・・・パッド部
7b・・・リード部
9、9A・・・n型クラッド層
11、11A・・・活性層
13、13A・・・p型クラッド層
15、15A・・・コンタクト層
17・・・絶縁膜
17a・・・貫通孔
19・・・裏面電極
S1・・・第1の積層領域
S2・・・第2の積層領域
M1・・・第1のレジストマスク
M2・・・第2のレジストマスク
M2・・・第1のサブレジストマスク
M2・・・第2のサブレジストマスク
M3・・・第3のレジストマスク
M4・・・第4のレジストマスク
9X、11X、13X、15X・・・半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の上に複数の半導体層を積層して形成されており、少なくともGaを含む燐化物半導体からなるコンタクト層が最上層に設けられている発光部と、前記コンタクト層の上面に接続される電極と、を備えており、
前記コンタクト層は、上面と底面とを結ぶ側面が当該上面から当該底面に向かうにつれて広がるように全周に亘って傾斜しており、
前記電極は、前記コンタクト層の前記上面から前記側面の上を介して前記基板の上に引き出されている、発光装置。
【請求項2】
前記コンタクト層は、HFおよびHを含むエッチャントによってエッチングされている、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記発光部は、前記コンタクト層を含まない1層以上の前記半導体層からなる第1の積層領域と、該第1の積層領域の上に形成されている、前記コンタクト層を含む1層以上の前記半導体層からなる第2の積層領域とを有しており、
前記第1の積層領域および前記第2の積層領域のそれぞれは、上面と底面とを結ぶ側面が、当該上面から当該底面に向かうにつれて広がるように全周に亘って傾斜しており、
前記第2の積層領域の底面は、前記第1の積層領域の上面に比べて狭くなっており、
前記電極は、前記コンタクト層の前記上面から、前記第2の積層領域の前記側面の上、および前記第1の積層領域の前記側面の上を介して前記基板の上に引き出されている、請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光部は、前記基板の上に複数が配列して設けられており、隣接している他の発光部と対向している側面に比べて、前記電極が上に設けられている側面の傾斜が緩やかになっている、請求項1から3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
基板と、該基板上に複数の半導体層を積層して形成されている、コンタクト層が最上層に設けられている発光部と、前記コンタクト層の上面に接続される電極と、を備えている発光装置の製造方法であって、
前記基板の上に、複数の半導体層を積層するとともに、少なくともGaを含む燐化物半導体層を最上層に形成する工程と、
前記燐化物半導体層の上にレジストマスクを形成した後に、当該燐化物半導体層を、HFおよびHを含むエッチャントによってエッチングして、前記コンタクト層を形成する工程と、を備える、発光装置の製造方法。
【請求項6】
NHFをさらに含むエッチャントによって前記燐化物半導体層をエッチングする、請求項5に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記HFと前記NHFとの配合比がHF:NHF=x:7(0<x≦3)であるエッチャントによって前記燐化物半導体層をエッチングする、請求項6に記載の発光装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−226085(P2010−226085A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249350(P2009−249350)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】