説明

発光装置

【課題】放熱性に優れ、光出力の向上を図れる発光装置を提供する。
【解決手段】酸化亜鉛基板1aの一表面側に形成されp型窒化物半導体層11およびn型窒化物半導体層13を有するLED薄膜部1bを備えた半導体発光素子1と、該半導体発光素子1の酸化亜鉛基板1aにおける他表面側が光取り出し面となるように金属バンプ3,4を介して半導体発光素子1を実装する実装基板2と、を有する発光装置20であって、半導体発光素子1は、平面視において酸化亜鉛基板1aの前記一表面側における外周部1dが露出するように酸化亜鉛基板1aよりも小さいLED薄膜部1bを備えてなり、金属バンプ3,4が、酸化亜鉛基板1aの外周部1dにLED薄膜部1bを囲むように設けられる複数個の第一の金属バンプ3と、LED薄膜部1bにおける酸化亜鉛基板1aと対向する表面側に設けられる複数個の第二の金属バンプ4を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体を用いた半導体発光素子を実装基板に実装した発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、窒化物半導体材料(GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaNなど)を用いた半導体発光素子の研究が各所で行われている。この種の半導体発光素子を実装基板に実装した発光装置は、たとえば、半導体発光素子と、該半導体発光素子から放射された青色の光によって励起され半導体発光素子からの青色の光よりも長波長の黄色の光を放射する蛍光体が含有された波長変換部材と、を組み合わせて半導体発光素子の発光色とは異なる色合いの混色光(たとえば、白色の光)を出すことに利用できる。このような半導体発光素子を用いた白色の光が発光可能な発光装置は、電球等と比較して低消費電力、高輝度且つ長寿命に発光することが可能なことから、各種の照明光源を代替するものの一つとして注目され、より高効率化および高出力化のために研究開発がされている。
【0003】
この種の発光装置の基礎構成として、基板の一表面側にn型窒化物半導体層と該n型窒化物半導体層上のp型窒化物半導体層とが積層されたLED薄膜部を備えた半導体発光素子と、該半導体発光素子の前記基板における他表面側が光取り出し面となるように金属バンプを介して前記半導体発光素子を実装する実装基板と、を有する発光装置が知られている。この発光装置では、前記半導体発光素子の前記LED薄膜部から放出する光が、前記半導体発光素子の光取り出し面側となる前記基板の前記他表面側から前記金属バンプなどで遮られることなく取り出すことができ、光出力を高めることができる。
【0004】
このような発光装置に用いることができる半導体発光素子として、前記LED薄膜部の外形が前記基板の前記一表面側における外形と同一の矩形形状で形成された半導体発光素子を図7に例示する。半導体発光素子1’は、平面視において中央部にLED薄膜部1b’のp型窒化物半導体層11’からエッチングによりLED薄膜部1b’のn型窒化物半導体層13’の表面が露出するまでp型窒化物半導体層11’の一部を除去している。円形形状に露出したn型窒化物半導体層13’の表面側には、金属バンプ4’が形成されている。また、p型窒化物半導体層11’の表面には、LED薄膜部1b’の中央部に形成された1個の金属バンプ4’を囲むように4個の金属バンプ3’が設けられた半導体発光素子1’が提案されている(たとえば、特許文献1。)。
【0005】
なお、半導体発光素子1’は、LED薄膜部1b’の中央部から矩形形状のLED薄膜部1b’の対角方向にもエッチングすることで、p型窒化物半導体層11’の一部を中央部から対角線状に除去されている。また、金属バンプ4’の下地となるn型電極23は、エッチングにより露出したn型窒化物半導体層13’の表面上に中央部から放射状に半導体発光素子1’の対角方向に延伸させた延伸部位26を備えていることで、p型窒化物半導体層11’への電流の拡散性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2006−66868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の半導体発光素子1’を実装基板に実装した発光装置を照明光源として一般照明にまで利用しようとする場合、半導体発光素子1’には、たとえば、1A以上の大電流を印加し、発光装置から大きな光出力を取り出すことが要求されている。そのため、半導体発光素子1’は、大電流が流れることにより半導体発光素子1’のLED薄膜部1b’で生ずる発熱量も大きくなる。この場合、半導体発光素子1’のLED薄膜部1b’で発生した熱を、それぞれ金属バンプ3’と金属バンプ4’を介して前記実装基板側に効率よく放熱できなければ、半導体発光素子1’の発光効率が低下し、光出力が低下する。さらに、半導体発光素子1’のLED薄膜部1b’で生じた熱が金属バンプ3’,4’を介して前記実装基板側に効率よく放熱できなければ、半導体発光素子1’のLED薄膜部1b’における熱分布が不均一となってLED薄膜部1b’の面内における輝度むらが生ずることも考えられる。
【0008】
ここで、半導体発光素子1’は、放熱性を向上させるためにLED薄膜部1b’に設けられた金属バンプ4’やn型電極23およびn型電極23の延伸部位26を大きくさせようとすると、p型窒化物半導体層11’をエッチングする領域が増えLED薄膜部1b’の発光領域が減少することになる。また、半導体発光素子1’におけるLED薄膜部1b’の形状が、LED薄膜部1b’の平面視におけるp型窒化物半導体層11’の中央部でエッチングされた領域によって、いびつになり、半導体発光素子1のLED薄膜部1b’から均一な出力を得ることが難しい傾向にある。また、半導体発光素子1’のLED薄膜部1b’におけるp型窒化物半導体層11’側のエッチングする領域を減らして発光領域を増加させようとすると、半導体発光素子1’から金属バンプ3’,4’を介して前記実装基板へ放熱する放熱経路の断面積が小さくなる。そのため、半導体発光素子1’からの熱を効率よく金属バンプ3’,4’を介して実装基板側に放熱することが難しくなる。
【0009】
そのため、照明用途に用いられる場合のような光出力のより高い発光装置が求められる現在においては、上記構成では十分ではなく、さらなる特性向上が求められている。
【0010】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、放熱性に優れ、より光出力の向上を図れる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、導電性基板と該導電性基板の一表面側に形成されp型窒化物半導体層およびn型窒化物半導体層を有するLED薄膜部とを備えた半導体発光素子と、該半導体発光素子の前記導電性基板における他表面側が光取り出し面となるように金属バンプを介して前記半導体発光素子を実装する実装基板と、を有する発光装置であって、前記半導体発光素子は、平面視において前記導電性基板の前記一表面側における外周部が露出するように前記導電性基板よりも小さい前記LED薄膜部を備えてなり、前記金属バンプが、前記導電性基板の前記外周部に前記LED薄膜部を囲むように設けられる複数個の第一の金属バンプと、前記LED薄膜部における前記導電性基板と対向する表面側に設けられる複数個の第二の金属バンプであることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、半導体発光素子が平面視において導電性基板の一表面側における外周部が露出するように前記導電性基板よりも小さいLED薄膜部を備えてなり、前記導電性基板の前記外周部に前記LED薄膜部を囲むように設けられる複数個の第一の金属バンプと、前記LED薄膜部における前記導電性基板と対向する表面側に設けられる複数個の第二の金属バンプと、を用いて前記半導体発光素子を実装基板に実装させるという比較的簡単な構成で、放熱性に優れ、より光出力の向上を図れる発光装置とすることができる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記半導体発光素子の前記導電性基板が酸化亜鉛基板であるとともに、前記LED薄膜部における前記p型窒化物半導体層を前記n型窒化物半導体層よりも前記導電性基板の前記一表面側に備えてなることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、n型窒化物半導体層と比較して、一般に抵抗が高いとされるp型窒化物半導体層を前記酸化亜鉛基板の前記一表面側に備えてなることで、前記酸化亜鉛基板は、該酸化亜鉛基板の前記一表面側における前記外周部に前記LED薄膜部を囲むように設けられた複数の第1の金属パッドからの電流を前記p型窒化物半導体層に面状に拡散させることができる。また、前記LED薄膜部で生じた熱は、前記LED薄膜部の前記p型窒化物半導体層から面状に前記酸化亜鉛基板に熱伝達され、前記酸化亜鉛基板の前記一表面側における前記外周部に前記LED薄膜部を囲むように設けられた複数の第1の金属パッドから拡散して前記実装基板側へ効率よく放出させることができる。そのため、前記半導体発光素子の前記LED薄膜部における熱分布を均一にして輝度むらを抑制して光出力の向上を図ることが可能な発光装置とすることができる。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記半導体発光素子の前記導電性基板が窒化物半導体基板であるとともに、前記LED薄膜部における前記n型窒化物半導体層を前記p型窒化物半導体層よりも前記導電性基板の前記一表面側に備えてなることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、p型窒化物半導体層は、前記LED薄膜部で生じた熱を前記p型窒化物半導体層側に設けられた複数の第二の金属パッドを介して前記実装基板側に放熱させることができる。また、前記LED薄膜部で生じた熱は、n型窒化物半導体層から前記窒化物半導体基板に面状に拡散し、前記窒化物半導体基板の前記一表面側における前記外周部に前記LED薄膜部を囲むように設けられた複数の第一の金属パッドを介して放出させることができる。そのため、より大きな電流を流し、より光出力の向上を図ることが可能な発光装置とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明は、半導体発光素子が、平面視において導電性基板の一表面側における外周部が露出するように前記導電性基板よりも小さい前記LED薄膜部を備え、前記導電性基板の前記外周部に前記LED薄膜部を囲むように設けられる複数個の第一の金属バンプと、前記LED薄膜部における前記導電性基板と対向する表面側に設けられる複数個の第二の金属バンプによって実装基板に実装することにより、放熱性に優れ、より光出力の向上を図れる発光装置にできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1の発光装置を示し、(a)は概略断面図、(b)は概略平面図である。
【図2】同上の半導体発光素子における概略平面図である。
【図3】同上の実装基板における概略平面図である。
【図4】実施形態2の発光装置を示し、(a)は概略断面図、(b)は概略平面図である。
【図5】同上の半導体発光素子における概略平面図を示す。
【図6】同上の実装基板における概略平面図を示す。
【図7】従来の半導体発光素子における概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
以下、本実施形態の発光装置について、図1ないし図3を用いて説明する。
【0020】
本実施形態の発光装置20は、図1に示すように、導電性基板たる酸化亜鉛基板1aと該酸化亜鉛基板1aの一表面側に形成されp型窒化物半導体層11およびn型窒化物半導体層13を有するLED薄膜部1bとを備えた半導体発光素子1と、該半導体発光素子1の酸化亜鉛基板1aにおける他表面側が光取り出し面となるように各金属バンプ3,4を介して半導体発光素子1を実装する実装基板2と、を有する。
【0021】
特に、発光装置20に用いられる半導体発光素子1は、図2に示す平面視において酸化亜鉛基板1aの前記一表面側における外周部1dが露出するように酸化亜鉛基板1aよりも小さいLED薄膜部1bを備えている。また、発光装置20に用いられる各金属バンプ3,4は、酸化亜鉛基板1aの外周部1dにLED薄膜部1bを囲むように設けられた複数個のp型電極パッド5と、LED薄膜部1bにおける酸化亜鉛基板1aと対向する表面側に設けられた複数個のn型電極パッド6とを接続している。より具体的には、複数個のp型電極パッド5は、それぞれ一対一に接合する複数個の第一の金属バンプ3を介して実装基板2側に接続している。また、複数個のn型電極パッド6は、それぞれ一対一に接合する複数個の第二の金属バンプ4を介して実装基板2側に接続している。
【0022】
これにより、半導体発光素子1のLED薄膜部1bで発生した熱は、LED薄膜部1bのp型窒化物半導体層11から面状に酸化亜鉛基板1aに熱伝達する。熱伝達された酸化亜鉛基板1aの熱は、酸化亜鉛基板1aの前記一表面における外周部1dにLED薄膜部1bを囲むように設けられたp型電極パッド5およびp型電極パッド5に接続された第一の金属バンプ3を介して実装基板2側に放熱させることができる。同様に、半導体発光素子1のLED薄膜部1bで発生した熱は、LED薄膜部1bにおけるn型窒化物半導体層13からもn型電極パッド6およびn型電極パッド6に接続された第二の金属バンプ4を介して実装基板2側に放熱させることができる。
【0023】
以下、本実施形態の発光装置20に用いられる各構成について説明する。まず、最初に半導体発光素子1について詳述する。
【0024】
半導体発光素子1は、導電性基板たる酸化亜鉛基板1aの一表面にp型窒化物半導体層11およびn型窒化物半導体層13を有するLED薄膜部1bを備え、酸化亜鉛基板1aの前記一表面とは対向する他表面側を光取り出し面としている。
【0025】
そのため、半導体発光素子1の前記導電性基板は、半導体発光素子1のLED薄膜部1bから放射される光の波長に対して透光性を有し、LED薄膜部1bに電力を供給することが可能な導電性を有している。このような前記導電性基板の材料としては、n型ZnO材料からなる酸化亜鉛基板1aなどが挙げられる。
【0026】
本実施形態では、半導体発光素子1の導電性基板として、酸化亜鉛基板1aを用いており、酸化亜鉛基板1aの外形形状は、LED薄膜部1bを底面に備えた六角錐形状としている。このような酸化亜鉛基板1aの六角錐形状の外形形状は、たとえば、酸化亜鉛基板1aの前記他表面側を塩酸に浸しエッチング速度の結晶方位依存性を利用した結晶異方性エッチングを利用することにより形成することができる。エッチング時間を調整して、酸化亜鉛基板1aの外形形状を六角錐台形状に形成することもできる。このように半導体発光素子1の光取り出し面となる酸化亜鉛基板1aの前記他表面側を六角錐形状ないし六角錐台形状にすることで、半導体発光素子1からの光取り出し効率をより向上させることができる。なお、酸化亜鉛基板1aの外形形状は、六角錐形状あるいは六角錐台形状に限られず、立方体形状や直方体形状としてもよい。
【0027】
半導体発光素子1のLED薄膜部1bは、酸化亜鉛基板1aの前記一表面に形成されたp型窒化物半導体層11と該p型窒化物半導体層11上のn型窒化物半導体層13を備えた積層構造により青色の光を放射することが可能に構成している。また、半導体発光素子1のLED薄膜部1bは、図2に示す平面視において酸化亜鉛基板1aの前記一表面側における外周部1dが露出するように、酸化亜鉛基板1aの前記一表面の六角形状における中央部に酸化亜鉛基板1aと相似形で、より小さい六角形状に形成している。
【0028】
また、本実施形態の半導体発光素子1は、酸化亜鉛基板1aの前記一表面における外周部1dにおいて、p型電極パッド5が、酸化亜鉛基板1aに対してオーミック接触となるように形成している。これにより半導体発光素子1のLED薄膜部1bにおけるp型窒化物半導体層11は、p型電極パッド5から酸化亜鉛基板1aを介して電気的に接続することができる。また、半導体発光素子1は、LED薄膜部1bのn型窒化物半導体層13に対してオーミック接触となるようにn型窒化物半導体層13の表面にn型電極パッド6が形成されている。これにより半導体発光素子1のLED薄膜部1bにおけるn型窒化物半導体層13は、n型電極パッド6と電気的に接続している。ここで、n型窒化物半導体層13の表面には、19個のn型電極パッド1cがn型窒化物半導体層13の中心から放射状に略等間隔となるように配置されている。また、酸化亜鉛基板1aの外周部1dには、六角形の一辺を除いて、11個のp型電極パッド5が略等間隔でLED薄膜部1bを囲むように配置してある。
【0029】
ここで、p型電極パッド5およびn型電極パッド6は、それぞれ第一の金属バンプ3および第二の金属バンプ4との密着性を向上させるために好適に設けている。なお、p型電極パッド5と酸化亜鉛基板1aとは、直接接合させてもよいし、p型電極を介して接続させても良い。同様に、n型電極パッド6とn型窒化物半導体層13とは、直接接合させても良いし、n型電極を介して接続させてもよい。p型電極やn型電極の大きさを、それぞれp型電極パッド5やn型電極パッド6よりも大きくすることで、電流の拡散性や放熱性をより向上させることができる。たとえば、p型電極は、酸化亜鉛基板1aの外周部1dに沿ってリング形状に形成すればよい。また、n型電極は、n型窒化物半導体層13の全面に形成すればよい(図示していない。)。
【0030】
本実施形態の半導体発光素子1に用いられるLED薄膜部1bのより詳細な構成としては、発光層12をn型窒化物半導体層13とp型窒化物半導体層11とにより挟んで積層構造に形成している。
【0031】
LED薄膜部1bのn型窒化物半導体層13は、発光層12に対してクラッド層として機能するとともにコンタクト層としても機能するn型GaN層により構成している。なお、n型窒化物半導体層13は、単層構造に限らず、たとえば、コンタクト層として機能するn型GaN層と、クラッド層として機能するn型InGaN層に機能分離させた多層構造としてもよい。
【0032】
さらに、クラッド層やコンタクト層として機能させるためには、それぞれ単層構造で形成させる場合に限らず、多層構造で形成してもよい。たとえば、LED薄膜部1bに生ずる内部応力を低減して結晶性を向上させるなどのために、前記クラッド層や前記コンタクト層を厚膜の単層構造で形成させるだけでなく、異なる組成の窒化物半導体層を数Åから数百Åの膜厚の薄膜で交互に積層させた量子効果を奏するとされる超格子多層膜で形成することもできる。このような、超格子多層膜としては、たとえば、InGaN層とGaN層を薄膜で交互に積層した積層膜や、AlGaN層とGaN層を薄膜で交互に積層した積層膜などが挙げられる。前記超格子多層膜は、その組成、膜厚や積層数を調整することで、LED薄膜部1bに生ずる内部応力の低減などを図りつつ単層構造のものとは異なる電気特性や光学特性を持たせることができる。
【0033】
本実施形態のLED薄膜部1bにおける発光層12は、GaN層からなる障壁層によりInGaN層からなる井戸層が挟まれた多重量子井戸構造を有している。発光層12は、放出される光の発光ピークが460nmとなるようにInGaN層のIn組成比を設定しているが、発光ピークを特に限定するものではない。なお、半導体発光素子1の発光層12は、多重量子井戸構造に限らず単一量子井戸構造でもよい。また、発光層12は、ホモ構造、ヘテロ構造やダブルヘテロ構造で形成してもよい。発光層12の材料は、窒化物半導体材料であればよく、たとえば、AlGaInN、AlInN、AlGaNのほか、SiとZnとが含有されたGaNなどでもよい。
【0034】
LED薄膜部1bのp型窒化物半導体層11は、発光層12に対してクラッド層として機能するp型AlGaN層からなる第1のp型窒化物半導体層と、コンタクト層として機能するp型GaN層からなる第2のp型窒化物半導体層とに機能分離して構成している。p型窒化物半導体層11は、量産性や求める電気特性や光学特性に応じて、多層構造でも良いしp型GaN層やp型AlGaN層だけの単層構造としても良い。また、p型窒化物半導体層11の前記クラッド層や前記コンタクト層は、n型窒化物半導体層13の場合と同様に、それぞれ厚膜の単層構造で成膜させるだけでなく、異なる組成の窒化物半導体層を数Åから数百Åの膜厚で交互に積層させた量子効果を奏するとされる超格子多層膜で形成してもよい。
【0035】
なお、LED薄膜部1bは、後述するようにLED薄膜部1bを酸化亜鉛基板1aの基礎となるn型ZnOウェハと接合する前に、主表面が(0001)面であるサファイアウェハの主表面側に低温成長バッファ層(たとえば、GaN層、AlN層やAlGaN層など)を介してn型窒化物半導体層13、発光層12、p型窒化物半導体層11の順に有機金属気相成長法(MOVPE法)のようなエピタキシャル成長技術を利用して成膜することができる。ここで、LED薄膜部1bのエピタキシャル成長方法は、MOVPE法に限定するものではなく、たとえば、ハイドライド気相成長法(HVPE法)や、分子線エピタキシー法(MBE法)などを用いて成膜してもよい。
【0036】
ところで、窒化物半導体材料および酸化亜鉛材料は、ともにウルツ鉱型の結晶構造でc軸方向に極性を有する有極性半導体である。そのため、LED薄膜部1bは、n型窒化物半導体層13における前記n型GaN層の発光層12側とは反対側の表面がN極性面である(000−1)面により構成され、p型窒化物半導体層11における前記p型GaN層の発光層12側とは反対側の表面がGa極性面である(0001)面により構成されている。また、酸化亜鉛基板1aは、LED薄膜部1bを備える前記一表面側がZn極性面である(0001)面により構成され、酸化亜鉛基板1aの前記他表面側がO極性面である(000−1)面により構成されている。
【0037】
すなわち、LED薄膜部1bと酸化亜鉛基板1aとは、酸化亜鉛基板1aのZn極性面とp型窒化物半導体層11のGa極性面とが接合されている。
【0038】
酸化亜鉛基板1aは、不純物をドーピングすることなく酸素空孔もしくは亜鉛の格子間原子欠陥によりn型の導電性を示すノンドープZnO基板を用いてもよいが、不純物のドーピングによって導電型や導電率を制御したものでもよい。不純物のドーピングによって導電型や導電率を制御した酸化亜鉛基板1aとしては、たとえば、GaドープZnO基板(GZO基板)や、AlドープZnO基板(AZO基板)が挙げられる。不純物のドーピングによって導電型や導電率を制御した酸化亜鉛基板1aは、不純物をドープしていない酸化亜鉛基板1aと比較して、酸化亜鉛基板1aと接触させるp型電極パッド5などとのオーミック接触の接触抵抗を低減することが可能なため、より好ましい。
【0039】
次に、半導体発光素子1の酸化亜鉛基板1aの外周部1dにLED薄膜部1bを囲む設けられるp型電極パッド5およびLED薄膜部1bにおけるn型窒化物半導体層13の表面に設けられるn型電極パッド6は、それぞれTi膜とAl膜とAu膜との積層膜により構成している。p型電極パッド5およびn型電極パッド6は、いずれも最表面側がAu膜で構成してある。ここで、p型電極パッド5およびn型電極パッド6は、たとえば、Ti膜の膜厚を10nm、Al膜の膜厚を50nm、Au膜の膜厚を500nmとすることができるが、これらの数値は一例であって特に限定するものではない。また、必要に応じて、p型電極パッド5と酸化亜鉛基板1aとの間、n型電極パッド6とn型窒化物半導体層13との間には、電流拡散や熱拡散等のために別途電極を形成させてもよい。
【0040】
いずれにしろ、本実施形態の半導体発光素子1は、p型電極パッド5およびn型電極パッド6が同一の金属材料により形成され、同一の電極構造を有している。p型電極パッド5およびn型電極パッド6は、それぞれを構成する前記積層膜において厚み方向で重なる膜同士の密着性を高めることができるとともに、それぞれ接続される酸化亜鉛基板1aおよびn型窒化物半導体層13に対する密着性を高めることもできる。また、p型電極パッド5およびn型電極パッド6は、前記積層膜の構造により、量産性よく同時形成することができる。ここで、p型電極パッド5およびn型電極パッド6は、電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)により同時に成膜しているが、これに限られるものではなく、スパッタ法や他の蒸着法(たとえば、抵抗加熱蒸着法や誘導加熱蒸着法)などを用いて形成してもよい。
【0041】
本実施形態の半導体発光素子1では、p型電極パッド5およびn型電極パッド6として、Ti膜とAl膜とAu膜との積層膜を採用することにより、酸化亜鉛基板1aの外周部1d、n型窒化物半導体層13の表面に対してそれぞれ良好なオーミック接触(低オーミック抵抗のオーミック接触)を得ることができる。なお、p型電極パッド5およびn型電極パッド6は、前記積層膜に限らず、Ti膜とAu膜との積層膜やAl膜とAu膜との積層膜、Ti膜とAl膜とNi膜とAu膜との積層膜の群から選択される1つの積層膜により形成してもよい。いずれの構成でも、p型電極パッド5およびn型電極パッド6の最表面側がAu膜とすることで、p型電極パッド5およびn型電極パッド6の表面の酸化を防ぐことができる。このような、半導体発光素子1に設けられたp型電極パッド5およびn型電極パッド6は、それぞれ第一の金属バンプ(たとえば、Auバンプ)3および第二の金属バンプ(たとえば、Auバンプ)4と一対一に接合し、実装基板2の配線パターン8,9に設けられた配線パッド21,22上に実装することができる。
【0042】
なお、本実施形態の半導体発光素子1は、LED薄膜部1bにおける酸化亜鉛基板1a側とは反対側のn型窒化物半導体層13の表面に微細凹凸構造をしてもよい。微細凹凸構造は、LED薄膜部1bから放射された光を散乱させ半導体発光素子1の光取り出し効率を向上させることができる。また、n型窒化物半導体層13の表面においてn型電極パッド6の形成部位に微細凹凸構造を形成させると、n型窒化物半導体層13の表面とn型電極パッド6との密着性を向上させることができる。なお、前記微細凹凸構造の周期および高低差は、数μm以下で適宜設定すればよい。
【0043】
また、本実施形態においては、半導体発光素子1のLED薄膜部1bにおけるp型窒化物半導体層11から酸化亜鉛基板1a側に放出された光は、窒化物半導体材料と酸化亜鉛材料との屈折率差が一般的な青色LED素子などに用いられている窒化物半導体材料とサファイアとの屈折率差よりも小さいため、半導体発光素子1のLED薄膜部1bから酸化亜鉛基板1a側に効率よく光を取り出すことができる。
【0044】
また、酸化亜鉛基板1aにおける前記一表面側の外周部1dは、p型電極パッド5との密着性を向上させるために凹凸構造とすることもできる。このような、外周部1dの前記凹凸構造は、所望の周期や高低差など適宜設計することができる。
【0045】
以下、本実施形態の発光装置20に用いられる半導体発光素子1の製造方法について説明する。
【0046】
半導体発光素子1は、サファイアウェハのC面である主表面側に低温成長バッファ層となるAlGaN層を介してLED薄膜部1bとなるn型窒化物半導体層13と発光層12とp型窒化物半導体層11との積層構造膜をMOVPE法などの結晶成長法により順に成膜する。他方、水熱合成法などにより形成させたn型ZnOウェハを半導体発光素子1の酸化亜鉛基板1aの基礎として用いる。次に、LED薄膜部1bを酸化亜鉛基板1a上に形成させるため、前記サファイアウェハの前記主面側の前記積層構造膜と、前記n型ZnOウェハとの接合面を洗浄した後、窒素雰囲気中において600℃に加熱し、2MPaの圧力をかけて熱接合する。その後、前記サファイアウェハとn型ZnOウェハが熱接合されたウェハから前記サファイアウェハを剥離して、前記n型ZnOウェハ上にLED薄膜部1bとなる前記積層構造膜が熱接合されたウェハを形成させることができる。
【0047】
ここでサファイアウェハの剥離方法としては、たとえば、前記サファイアウェハと前記積層構造膜との界面付近にレーザ光を照射しレーザ加工工程により前記低温成長バッファ層が形成されたサファイアウェハごと前記積層構造膜を剥離する方法がある。また、別のサファイアウェハの剥離方法としては、前記積層構造膜を前記サファイアウェハ上に選択成長法により結晶成長をさせ前記n型ZnOウェハとの熱接合後、前記積層構造膜と前記サファイアウェハとの界面近傍において選択成長時に形成したボイドを利用して熱応力により前記サファイアウェハ側を剥離する方法などが挙げられる。
【0048】
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて前記積層構造膜が酸化亜鉛基板1aの前記一表面における外周部1dが露出するように前記n型ZnOウェハ上でパターニングを行い、六角柱形状のLED薄膜部1bを形成する。
【0049】
その後、酸化亜鉛基板1aの前記一表面側に電子ビーム蒸着法による成膜、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、酸化亜鉛基板1aの外周部1dに相当する前記n型ZnOウェハ上にTi膜、Al膜および最表面がAu膜となるp型電極パッド5を形成する。同時に、LED薄膜部1bにおけるn型窒化物半導体層13のコンタクト層として機能するn型GaN層上にTi膜、Al膜および最表面がAu膜となるn型電極パッド6を形成する。
【0050】
続いて、前記n型ZnOウェハにおける複数のLED薄膜部1bが形成された前記一表面とは反対側の他表面に各LED薄膜部1bに対応してパターニングされたマスク層を形成するマスク層形成工程を行う。その後、塩酸系のエッチング液(たとえば、塩酸水溶液など)を用いてエッチング速度の結晶方位依存性を利用した結晶異方性エッチングを行った後、前記マスク層を除去する。これにより、エッチング面が平滑面であり、LED薄膜部1bを備えた底面から頂点までの高さが約500μmとなる六角錐状の酸化亜鉛基板1aを有する半導体発光素子1を形成することができる。
【0051】
次に、本実施形態の発光装置20に用いられる実装基板2について説明する。実装基板2は、図1で示すように略直方体形状の電気絶縁性を有するAlN材料からなるベース部7と、該ベース部7の表面上に配置され半導体発光素子1に電流を供給することが可能なAu膜からなる一対の配線パターン8,9が形成されている。
【0052】
一方の配線パターン9は、図3で示すように平面視において、ベース部7における矩形状の前記表面の中央部に六角形状部15を備えている。また、配線パターン9は、六角形状部15の一辺における中央の一端からベース部7の前記表面における前記矩形状の一隅部に向かって配線が延在し、該配線の他端に略円形のランドを形成している。該ランド上には、発光装置20の外部と電気的に接続させるためカソード電極となるAu膜からなるパッド電極17を形成している。また、他方の配線パターン8は、一方の配線パターン9における六角形状部15の外周に沿って離間して囲むリング形状部14を備えている。リング形状部14の一部は、一方の配線パターン9の配線と短絡しないように切り欠いている。
【0053】
また、他方の配線パターン8は、六角形状部15の前記一辺と対向する他辺側のリング形状部14の一端からベース部7の前記表面における前記一隅部と対向する隅部側に向かって配線が延在し、該配線の他端に略円形のランドを形成している。該ランド上には、発光装置20の外部と電気的に接続させるためアノード電極となるAu膜からなるパッド電極16を形成している。また、配線パターン8,9と電気的に分離して、前記ベース部7の前記一表面を覆い半導体発光素子1からの光を反射する光反射膜18を形成させてある。
【0054】
さらに、実装基板2の配線パターン8におけるリング形状部14上には、半導体発光素子1を実装させるための第一の金属バンプ3と一対一に接続される11個の第一の配線パッド21を形成している。同様に、実装基板2の配線パターン9における六角形状部15上には、半導体発光素子1を実装させるための第二の金属バンプ4と一対一に接続される19個の第二の配線パッド22を形成している。ここで、半導体発光素子1は、酸化亜鉛基板1aのLED薄膜部1bが備えられた一表面側と対向する他表面側を光取り出し面側として、実装基板2の配線パターン8,9上に第一の金属バンプ3および第二の金属バンプ4を介して実装することになる。
【0055】
実装基板2のベース部7は、半導体発光素子1のLED薄膜部1bからの熱が各金属バンプ3,4を介して効率よく実装基板2側に放熱できるように熱伝導率が高い材料が好ましい。ベース部7の具体的材料としては、たとえば、アルミナ、窒化アルミニウムや金属Cuなどが挙げられる。なお、ベース部7が金属Cuなど導電性を有する場合は、ベース部7の表面と配線パターン8,9との間にベース部7への熱伝導性を妨げないように絶縁膜(たとえば、結晶化ガラスや金属酸化物など)を別途に形成しておけばよい。なお、配線パターン8,9は、たとえば、Au膜により形成することができる。
【0056】
本実施形態では、実装基板2の配線パターン8,9上には、第一の金属バンプ3と接続可能な第一の配線パッド21と、第二の金属バンプ4と接続可能な第二の配線パッド22と、が形成されている。ここで、配線パターン8の第一の配線パッド21は、半導体発光素子1における酸化亜鉛基板1aの前記一表面に設けられたp型電極パッド5と第一の金属バンプ3を介して電気的に接続させてある。また、配線パターン9の第二の配線パッド22は、半導体発光素子1におけるLED薄膜部1bのn型窒化物半導体層13に設けられたn型電極パッド6と第二の金属バンプ4を介して電気的に接続させてある。
【0057】
本実施形態の実装基板2の光反射膜18は、半導体発光素子1のLED薄膜部1bから放射される光を光取り出し面側に反射させるものであり、半導体発光素子1から放出される光に対して反射率の高い金属膜で形成すればよい。したがって、半導体発光素子1から放出される光の波長にもよるが、光反射膜18の材料として、たとえばAgやAlなどの金属材料を用いることができる。これにより、半導体発光素子1のLED薄膜部1bから実装基板2側に放射される光が実装基板2に吸収されてしまうことを抑制し、発光装置20の光出力低下を防止することができる。
【0058】
ここで、光反射膜18は、Ag膜の単層膜に限らず、たとえば、Ag膜およびAu膜の多層膜でもよい。光反射膜18は、たとえば、電解メッキ法、スパッタ法や電子ビーム蒸着法などにより形成すればよい。
【0059】
次に、本実施形態の発光装置20に用いられる各金属バンプ3,4は、半導体発光素子1を実装基板2に実装固定するものであって、Au膜により形成させている。なお、各金属バンプ3,4の材料としては、Auに限られず、AuSnやSnAgCuなどを用いても良い。また、各金属バンプ3,4は、それぞれ複数個で形成することができ、その数は限定されない。しかしながら、第一の金属バンプ3は、LED薄膜部1bを囲んで形成するために、少なくとも3個以上としている。
【0060】
各金属バンプ3,4は、半導体発光素子1を実装基板2に実装させるに先立って、半導体発光素子1のp型電極パッド5やn型電極パッド6上に予め形成させてもよいし、実装基板2の第一の配線パッド21や第二の配線パッド22上に予め形成させてもよい。また、各金属バンプ3,4は、p型電極パッド5やn型電極パッド6を厚膜で形成させて、各金属バンプ3,4と、p型電極パッド5やn型電極パッド6と、を兼用しても良い。同様に、各金属バンプ3,4は、第一の配線パッド21や第二の配線パッド22を厚膜で形成させて、各金属バンプ3,4と、第一の配線パッド21や第二の配線パッド22とを兼用させることもできる。
【0061】
このような各金属バンプ3,4を形成するためには、電解メッキ法、スタッドバンプ法、印刷法や蒸着法などを用いればよい。各金属バンプ3,4は、量産性の向上のためにp型電極パッド5と接続させる第一の金属バンプ3と、n型電極パッド6と接続させる第二の金属バンプ4とを同じ材料を用いて同時に形成してもよい。また、各金属バンプ3,4は、LED薄膜部1bの厚み分だけ酸化亜鉛基板1aの外周部1dと接続させる第一の金属バンプ3をn型窒化物半導体層13と接続させる第二の金属バンプ4よりも厚くさせた別の構成や別の材料で形成させてもよい。
【0062】
具体的には、予め、実装基板2の表面側において、第一の配線パッド21および第二の配線パッド22上が開口する開口部位を備えたレジスト膜をフォトリソグラフィ技術を用いて形成する。次に、前記開口部位に電解メッキ法でAu膜を成長させた後、レジスト膜を除去して金属バンプの材料となるAu膜を形成する。続いて、前記Au膜を除いて実装基板2の前記表面側にフォトリソグラフィ技術を用いて保護マスクを形成し、実装基板2にリフローを施すことで前記Au膜が溶融して球状の各金属バンプ3,4を配線パッド21,22上にそれぞれ形成させることができる。最後に前記保護マスクを除去することで各金属バンプ3,4を備えた実装基板2を形成させることができる。
【0063】
なお、各金属バンプ3,4は、半導体発光素子1や実装基板2に対して同じ接合面積で接合したとしても、第一の金属バンプ3および第二の金属バンプ4をそれぞれ1個づつ大きく形成させるより、第一の金属バンプ3および第二の金属バンプ4をそれぞれ複数個づつに分けて小さく形成させる方が、半導体発光素子1への電流分布や半導体発光素子1からの熱分布を調整しやすい。また、各金属バンプ3,4を介して半導体発光素子1を実装基板2へ実装する場合、第一の金属バンプ3および第二の金属バンプ4をそれぞれ複数個づつ分けて形成させたものを用いて実装させた方が、第一の金属バンプ3および第二の金属バンプ4をそれぞれ1個づつ用いて実装させたものと比較して、実装精度を高め強固に実装させやすい。
【0064】
次に、半導体発光素子1を第一の金属バンプ3および第二の金属バンプ4を介して実装基板2に実装させて本実施形態の発光装置20を製造する。
【0065】
半導体発光素子1は、酸化亜鉛基板1aのLED薄膜部1bが設けられた前記一表面側と対向する他表面側を光取り出し面側として、実装基板2に実装する。
【0066】
ここで、半導体発光素子1のp型電極パッド5およびn型電極パッド6と、実装基板2における配線パターン8上に形成している第一の金属バンプ3および配線パターン9上に形成している第二の金属バンプ4とをそれぞれ位置合わせを行い熱圧着接合により実装する。こうして形成された発光装置20の実装基板2における配線パターン8に設けたパッド電極16と配線パターン9に設けたパッド電極17との間に外部から電流を供給すると、発光装置20は、青色の光を発光することができる。
【0067】
ここで、半導体発光素子1の酸化亜鉛基板1aに用いられる酸化亜鉛材料の熱伝導率は、約0.6W/cmKであり、一般的に知られている窒化物半導体を用いた青色LED素子などの基板材料であるサファイア(Al)の熱伝導率の約0.3W/cmKと比較して、約2倍も熱伝導性に優れている。そのため、本実施形態の発光装置20では、半導体発光素子1のLED薄膜部1bの熱をLED薄膜部1bにおけるp型窒化物半導体層11から面状に半導体発光素子1の酸化亜鉛基板1aに熱伝導することができる。熱伝導された酸化亜鉛基板1aの熱は、酸化亜鉛基板1aの前記一表面における外周部1dからLED薄膜部1bを囲む第一の金属バンプ3を介して実装基板2側に放熱させることができる。同様に、半導体発光素子1のLED薄膜部1bの熱は、LED薄膜部1bのn型窒化物半導体層21から第二の金属バンプ4を介して実装基板2に放熱させることができる。これにより、放熱性に優れ、より光出力の向上を図れる発光装置20とすることができる。
【0068】
なお、本実施形態では、半導体発光素子1から放射される光が青色の光となるように発光層12を設計してあるが、半導体発光素子1から放射される光は、青色の光に限らず、たとえば、紫外線、緑色の光や黄色の光などであってもよい。
【0069】
また、発光装置20は、実装基板2上に該半導体発光素子1からの光を吸収して波長変換する蛍光体が含有された波長変換部材のカバーを設けることで、白色などの混色光を放出させることもできる。さらに、発光装置20は、所望に応じて実装基板2に複数個の半導体発光素子1をそれぞれ実装させることができ、各半導体発光素子1を実装基板2上に設けた配線パターン8,9を用いて電気的に直列接続、並列接続や直並列接続させてもよい。
【0070】
(実施形態2)
本実施形態の発光装置20の基本構成は、実施形態1と略同一であり、半導体発光素子1のLED薄膜部1bにおけるp型窒化物半導体層11が酸化亜鉛基板1aの一表面側に設けられるかわりに、図4に示すように半導体発光素子1のLED薄膜部1bにおけるn型窒化物半導体層13をn型GaN材料からなる窒化物半導体基板1cの一表面側に備えた点が異なる。なお、実施形態1と同様の構成要素には、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0071】
本実施形態の発光装置20は、半導体発光素子1を半導体発光素子1の窒化物半導体基板1cにおけるLED薄膜部1bが備えられた前記一表面側と対向する他表面側を光取り出し面として、第一の金属バンプ3および第二の金属バンプ4を介して実装基板2側に実装している。
【0072】
本実施形態の半導体発光素子1は、導電性基板たる窒化物半導体基板1cの一表面と接してLED薄膜部1bが形成されている。本実施形態の半導体発光素子1におけるLED薄膜部1bは、実施形態1におけるLED薄膜部1bの積層構造と略同一であるが、LED薄膜部1bにおけるn型窒化物半導体層13をp型窒化物半導体層11よりも導電性基板たる窒化物半導体基板1cの前記一表面側に備えている。ここで、半導体発光素子1のLED薄膜部1bは、図5に示す平面視において窒化物半導体基板1cの前記一表面側における外周部1dが露出するように、窒化物半導体基板1cの前記一表面の矩形形状における中央部に窒化物半導体基板1cと略相似形でより小さい略矩形形状に形成している。LED薄膜部1bの略矩形形状は、四隅を切り欠いて形成している。また、LED薄膜部1bにおけるp型窒化物半導体層11の全面には、p型窒化物半導体層11と相似形で、より小さい略矩形形状のp型電極19を形成させている。ここで、p型電極19は、Pt膜とAg膜とNi膜とAu膜との積層構造物としている。p型電極19は、最表面側をAu膜としている。
【0073】
また、半導体発光素子1は、窒化物半導体基板1cの前記一表面側における外周部1dの四隅において、LED薄膜部1bを囲むようにn型電極パッド6を4個形成している。n型電極パッド6は、Ti膜とAl膜とAu膜との積層構造物としている。n型電極パッド6は、最表面側をAu膜としている。
【0074】
また、本実施形態の実装基板2は、ベース部7に半導体発光素子1の前記一表面側におけるn型電極パッド6やp型電極19などの配置形状を考慮して一対の配線パターン8,9を形成している。一方の配線パターン8は、図6に示す平面視において、ベース部7における矩形状の前記表面の中央部にベース部7の矩形とは略45度傾斜した矩形形状部24を備えている。また、配線パターン8は、矩形形状部24の一辺における中央の一端からベース部7の前記表面における前記矩形状の一隅部に向かって配線が延在し、該配線の他端に略円形のランドを形成している。該ランド上には、発光装置20の外部と電気的に接続させるためアノード電極となるAu膜からなるパッド電極16を形成している。また、他方の配線パターン9は、一方の配線パターン8における矩形形状部24の外周に沿い離間して囲むリング形状部25を備えている。
【0075】
また、他方の配線パターン9は、矩形形状部24の前記一辺と対向する他辺側のリング形状部25の一端からベース部7の前記一表面における前記一隅部と対向する隅部側に向かって配線が延在し、該配線の他端に略円形のランドを形成している。該ランド上には、発光装置20の外部と電気的に接続させるためカソード電極となるAu膜からなるパッド電極17を形成している。
【0076】
本実施形態では、半導体発光素子1の窒化物半導体基板1cの前記一表面における外周部1dに略矩形形状のLED薄膜部1bを囲むように四隅にそれぞれ形成したn型電極パッド6が、実装基板2の配線パターン9と第一の金属バンプ3を介して電気的に接続することになる。同様に、LED薄膜部1bの表面に形成させたp型電極19上に形成された複数のp型電極パッド5は、実装基板2の配線パターン8と第二の金属バンプ4を介して電気的に接続することになる。なお、p型電極19上には、n型電極パッド6と同一構成、同一材料のp型電極パッド5を第二の金属バンプ4と一対一に接続させるために複数個形成している。
【0077】
したがって、半導体発光素子1は、窒化物半導体基板1cのLED薄膜部1bが備えられた前記一表面側と対向する前記他表面側を光取り出し面側として、実装基板2の配線パターン8,9上に第一の金属バンプ3および第二の金属バンプ4を介して実装することになる。
【0078】
ここで、半導体発光素子1の窒化物半導体基板1cに用いられるGaNの熱伝導率は、約1.3W/cmKであり、サファイアの熱伝導率の約0.3W/cmKと比較して約4倍も大きい。そのため、本実施形態の発光装置20は、半導体発光素子1のLED薄膜部1bの熱をLED薄膜部1bにおけるn型窒化物半導体層13から面状に半導体発光素子1の窒化物半導体基板1cに熱伝導することができる。窒化物半導体基板1cに熱伝導された熱は、窒化物半導体基板1cの一表面における外周部1dに略矩形形状のLED薄膜部1bを囲むように四隅にそれぞれ形成したn型電極パッド6から第一の金属バンプ3を介して実装基板2側に放熱することができる。同様に、半導体発光素子1のLED薄膜部1bの熱は、LED薄膜部1bにおけるp型窒化物半導体層11からp型電極19、p型電極パッド5を経て第二の金属バンプ4を介して実装基板2側に放熱することができる。これにより、放熱性に優れ、より光出力の向上を図れる発光装置20とすることができる。
【0079】
本実施形態の半導体発光素子1は、窒化物半導体材料からなるウェハ上にLED薄膜部1bとなる窒化物半導体層の積層構造膜をMOVPE法などの結晶成長法により順次成膜させる。その後、LED薄膜部1bとなる前記窒化物半導体層の前記積層構造膜を、窒化物半導体基板1cの前記一表面側における外周部1dにn型電極パッド6などを設けることができるように、窒化物半導体基板1cとなる表面が露出するまでRIE(Reactive Ion Etching)法によりエッチングする。続いて、n型電極パッド6、p型電極19およびp型電極パッド5をそれぞれ電子ビーム蒸着法による成膜、フォトグラフィ技術およびエッチング技術を用いて形成した後、窒化物半導体材料からなるウェハをダイシングすることにより、半導体発光素子1を形成することができる。
【0080】
なお、本実施形態の半導体発光素子1は、前記窒化物半導体層の前記積層構造膜をエッチングして露出した前記積層構造膜の結晶成長面上にn型電極パッド6などを接合させるものと比較して、前記窒化物半導体層の前記積層構造膜をエッチングして窒化物半導体基板1cの外周部1dにn型電極パッド6などを接合させる方が、エッチングに伴う前記積層構造膜の内部応力を低減させることができる。そのため、各金属バンプ3,4を介して、半導体発光素子1から実装基板2側へ熱伝導する熱量が大きい場合でも、半導体発光素子1の長寿命化を図ることが可能となる。
【0081】
また、本実施形態の半導体発光素子1の別の形成方法として、サファイアウェハに低温成長バッファ層を介してLED薄膜部1bを形成させた後、別途に形成させた窒化物半導体材料からなるウェハにLED薄膜部1bを熱圧着などにより接合する。その後、サファイアウェハを剥離することで窒化物半導体材料からなるウェハ上にLED薄膜部1bとなる窒化物半導体層の積層構造膜が形成されたウェハを得る。前記窒化物半導体層の前記積層構造膜が形成されたウェハを用いて、半導体発光素子1を形成することもできる。この場合、窒化物半導体基板1cの一表面と接するLED薄膜部1bは、実施形態1と同様にp型窒化物半導体層11となる。
【符号の説明】
【0082】
1 半導体発光素子
1a 酸化亜鉛基板(導電性基板)
1b LED薄膜部
1c 窒化物半導体基板(導電性基板)
1d 外周部
2 実装基板
3 第一の金属バンプ
4 第二の金属バンプ
11 p型窒化物半導体層
13 n型窒化物半導体層
20 発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板と該導電性基板の一表面側に形成されp型窒化物半導体層およびn型窒化物半導体層を有するLED薄膜部とを備えた半導体発光素子と、該半導体発光素子の前記導電性基板における他表面側が光取り出し面となるように金属バンプを介して前記半導体発光素子を実装する実装基板と、を有する発光装置であって、
前記半導体発光素子は、平面視において前記導電性基板の前記一表面側における外周部が露出するように前記導電性基板よりも小さい前記LED薄膜部を備えてなり、前記金属バンプが、前記導電性基板の前記外周部に前記LED薄膜部を囲むように設けられる複数個の第一の金属バンプと、前記LED薄膜部における前記導電性基板と対向する表面側に設けられる複数個の第二の金属バンプであることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記半導体発光素子の前記導電性基板が酸化亜鉛基板であるとともに、前記LED薄膜部における前記p型窒化物半導体層を前記n型窒化物半導体層よりも前記導電性基板の前記一表面側に備えてなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記半導体発光素子の前記導電性基板が窒化物半導体基板であるとともに、前記LED薄膜部における前記n型窒化物半導体層を前記p型窒化物半導体層よりも前記導電性基板の前記一表面側に備えてなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−251481(P2010−251481A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98385(P2009−98385)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】