説明

発光装置

【課題】蛍光体間の再吸収を抑制し優れた発光効率を実現する発光装置を提供する。
【解決手段】実施の形態によれば、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子と、発光素子上に形成され、赤色蛍光体を含有し、断続的に配置される複数の赤色蛍光体層と、発光素子上に形成され、緑色蛍光体を含有し、発光素子から離れた位置に配置される緑色蛍光体層を備え、発光素子と赤色蛍光体層との距離よりも発光素子と緑色蛍光体層との距離が大きい発光装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青色の発光ダイオード(LED)にYAG:Ceなどの黄色蛍光体を組合せ、単一のチップで白色光を発する、いわゆる白色LEDに注目が集まっている。従来、LEDは赤色、緑色、青色と単色で発光するものであり、白色または中間色を発するためには、単色の波長を発する複数のLEDを用いてそれぞれ駆動しなければならなかった。しかし、現在では、発光ダイオードと、蛍光体とを組合せることにより、上述の煩わしさを排し、簡便な構造によって白色光を得ることができるようになっている。
【0003】
発光ダイオードを用いたLEDランプは、携帯機器、PC周辺機器、OA機器、各種スイッチ、バックライト用光源、および表示板などの各種表示装置に用いられている。これらLEDランプは高効率化が強く望まれており、加えて一般照明用途には高演色化、バックライト用途には高色域化の要請がある。高効率化には、蛍光体の高効率化が必要であり、高演色化あるいは高色域化には、青色の励起光と青色で励起され緑色の発光を示す蛍光体および青色で励起され赤色の発光を示す蛍光体を組み合わせた白色光源が望ましい。
【0004】
もっとも、複数の蛍光体を用いる場合、蛍光体間の再吸収により発光効率が低下するという問題がある。特に、一つのLEDチップ上に、複数の蛍光体を組み合わせることで白色光を得ようとする場合、蛍光体間の距離が近接することでこの問題が顕在化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−186777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、蛍光体間の再吸収を抑制し優れた発光効率を実現する発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態の発光装置は、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子と、発光素子上に形成され、赤色蛍光体を含有し、断続的に配置される複数の赤色蛍光体層と、発光素子上に形成され、緑色蛍光体を含有し、発光素子から離れた位置に配置される緑色蛍光体層を備える。そして、発光素子と赤色蛍光体層との距離よりも発光素子と緑色蛍光体層との距離が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図2】第1の実施の形態の発光装置の上部の拡大模式断面図である。
【図3】第1の実施の形態の発光装置の上部の拡大模式断面図である。
【図4】第1の実施の形態の発光装置の製造方法を示す断面工程図である。
【図5】第1の実施の形態の発光装置の製造方法を示す断面工程図である。
【図6】第1の実施の形態の発光装置の製造方法を示す断面工程図である。
【図7】第2の実施の形態の発光装置の上部の拡大模式断面図である。
【図8】第3の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図9】第4の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて実施の形態を説明する。なお、図面中、同一または類似の箇所には、同一または類似の符号を付している。
【0010】
なお、本明細書中、「赤色蛍光体」とは、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、橙色から赤色にわたる領域の発光、すなわち波長595nm〜700nm(以下、総称して赤色とも記載)の間にピークを有する発光を示す蛍光体を意味する。
【0011】
また、本明細書中、「緑色蛍光体」とは、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、青緑色から黄緑色(以下、総称して緑色とも記載)にわたる領域の発光、すなわち波長490nm〜580nmの間にピークを有する発光を示す蛍光体を意味する。
【0012】
また、本明細書中、「台形」とは長方形も含む概念である。
【0013】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子と、発光素子上に形成され、赤色蛍光体を含有し、断続的に配置される複数の赤色蛍光体層と、発光素子上に形成され、緑色蛍光体を含有し、発光素子から離れた位置に配置される緑色蛍光体層を備える。そして、発光素子と赤色蛍光体層との距離よりも発光素子と緑色蛍光体層との距離が大きい。
【0014】
本実施の形態の発光装置は、上記構成を備えることにより、緑色蛍光体層から赤色蛍光体層を見込む立体角を小さくし、赤色蛍光体層による緑色光の再吸収を抑制する。したがって、優れた発光効率を実現する発光装置を実現することが可能となる。
【0015】
図1は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。本実施の形態の発光装置が実装基板上に実装された状態を示している。
【0016】
本実施の形態の発光装置10は、励起光源用の発光素子12として、青色光を発する青色LEDチップを備えている。青色LEDチップは、例えば、一辺300〜600μm程度の矩形、例えば正方形の上面を有している。
【0017】
発光素子12の上面には、表面に凹凸を有する透明媒質層14が形成されている。透明媒質層14は、例えば、発光素子12の形成時に用いられるサファイア基板である。
【0018】
青色LEDは、例えば、図1の上側からみてサファイア基板に接して形成される、バッファ層12a、n型GaN層12b、n型AlGaN層12c、InGaN系の活性層12d、p型AlGaN層12e、およびp型GaN層12fが、この順序で積層された積層構造を有している。そして、p型GaN層12fに接してp側電極12gが設けられている。
【0019】
また、p型GaN層12f、p型AlGaN層12e、InGaN系の活性層12d、およびn型AlGaN層12c、n型GaN層12bの積層構造の一部をエッチングにより除去した領域の、n型GaN層12bに接してn側電極12iが設けられる構成となっている。
【0020】
この青色LEDチップは、p側電極12gおよびn側電極12iを、例えばAu(金)からなるバンプ16を介して、表面に金属からなる配線層18a、18bが形成されたメタライズ実装基板19上に載置したフリップチップ型の構成を有している。
【0021】
サファイアの透明媒質層14の凹部に、赤色蛍光体を含有する赤色蛍光体層22が形成されている。赤色蛍光体層22は、例えば、赤色蛍光体粒子が、例えば、シリコーン樹脂のような透明樹脂層中に分散されて形成されている。凹部に赤色蛍光体層22が形成されることで、結果的に複数の赤色蛍光体層22が、発光素子12上に断続的に形成されることになる。
【0022】
透明媒質層14の凸部には、緑色蛍光体を含有する緑色蛍光体層24が形成されている。緑色蛍光体層24は、例えば、緑色蛍光体粒子が、例えば、シリコーン樹脂のような透明樹脂層中に分散されて形成されている。また、透明媒質層14の凸部の間の赤色蛍光体層22が設けられていない領域は、例えば、空気である。
【0023】
本実施の形態では、赤色蛍光体および緑色蛍光体として、いわゆるサイアロン系の蛍光体を適用する。サイアロン系の蛍光体は、高温での発光効率の低下、いわゆる温度消光が小さいため、色ずれも少なく、高密度実装や高出力の発光装置の実現に適している。
【0024】
本実施の形態の赤色蛍光体は、例えば、下記(式4)の組成を有する。
(M1−x1Eux1SiAlO ・・・(式4)
(上記(式4)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、a、b、c、dは、次の関係を満たす。
0<x1≦1、
0.60<a<0.95、
2.0<b<3.9、
0.04≦c≦0.6、
4<d<5.7)
【0025】
MはSr(ストロンチウム)であることが望ましい。しかしながら、赤色蛍光体はこれに限定されるものではない。
【0026】
本実施の形態の緑色蛍光体は、例えば、下記式(5)の組成を有する。
(M’1−x2Eux23−ySi13−zAl3+z2+u21−w ・・・(式5)
(上記式(式5)中、M’はIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x2、y、z、u、wは、次の関係を満たす。
0<x2≦1、
−0.1≦y≦0.15、
−1≦z≦1、
−1<u−w≦1.5)
【0027】
M’はSr(ストロンチウム)であることが望ましい。しかしながら、緑色蛍光体はこれに限定されるものではない。
【0028】
図2は、本実施の形態の発光装置の上部の拡大模式断面図である。図2に示すように、緑色蛍光体層24は、透明媒質層14の凸部に形成されることで、発光素子12と赤色蛍光体層22との距離dよりも、発光素子12から離れた距離dに位置することになる。なお、発光素子12と蛍光体層との距離は、発光素子12と透明樹脂層14との界面からそれぞれの蛍光体層下面の距離で代表させる。
【0029】
発光装置10では、青色LEDチップの活性層12dから発せられる青色光を励起光として、赤色蛍光体層22からは赤色光が、緑色蛍光体層24からは緑色光が発せられる。これらの青色光、赤色光、緑色光が混合されることで発光装置10から白色光が発せられる。
【0030】
もっとも、緑色蛍光体層24から発せられる緑色光のうちの一部は、赤色蛍光体層22に照射され、赤色蛍光体層22で再吸収される。このためエネルギーロスが生じ、発光装置の発光効率が低下することになる。
【0031】
本実施の形態では、赤色蛍光体層22での緑色光の再吸収を低減する。例えば、緑色蛍光体層24の一点Aからは、全方位に向けて緑色光が発せられる。この緑色光のうち、図中の矢印の間で示される方向に発せられる光は、赤色蛍光体層22に照射されることで一部再吸収が生ずる。
【0032】
発光装置10においては、図中の矢印の間の角度、すなわち、緑色蛍光体層24からみた赤色蛍光体層22を見込む立体角βを小さくする。これにより、例えば、赤色蛍光体層と緑色蛍光体層が隣接するような配置と比較して、赤色蛍光体層22に照射される緑色光の割合を少なくする。したがって、赤色蛍光体層22で再吸収が抑制され、発光装置の発光効率を向上させることが可能となる。
【0033】
また、発光装置10は、青色LEDチップが形成されるサファイア基板に設けられた凹凸に、赤色蛍光体層22、緑色蛍光体層24をそれぞれ形成する。したがって、赤色蛍光体層と緑色蛍光体層を異なる青色LEDチップ上に設けて、白色発光モジュールを形成するような場合に比較して、白色発光装置の小型化が実現できる。
【0034】
図3は、本実施の形態の発光装置の上部の拡大模式断面図である。本実施の形態において、透明媒質層14の凸部の赤色蛍光体層22上面より上部の断面は長方形である。ここで、この長方形の、発光素子12と透明媒質層14の界面に平行な辺(底辺)の長さをa、発光素子12と透明媒質層14の界面に垂直な辺(高さ)の長さをc、2つの長方形間の間隔(赤色蛍光体層22の幅)をbとする。また、空気の屈折率を1、透明媒質層14の屈折率をnとする。透明媒質層14がサファイアである場合には、nは約1.7となる。
【0035】
この場合に、下記(式3)を充足することが望ましい。
【数1】

【0036】
上記(式3)を充足することで、図3中、例えば、緑色蛍光体層24の点Bから発せられ、隣の赤色蛍光体層22の遠い方の上面端部へ向かう光Lは、透明媒質層14と空気との界面で全反射される。したがって、赤色蛍光体層22に照射されることがなく、再吸収されることはない。
【0037】
上記(式3)が充足されれば、図中の点Bと点Cの間、すなわち、緑色蛍光体層24かから透明媒質層14を通って、隣の赤色蛍光体層22に向かう方向の光は、すべて、透明媒質層14と空気との界面で全反射される。よって、赤色蛍光体層22による再吸収が抑制され、発光装置の発光効率を一層向上させることが可能となる。
【0038】
図4〜6は、本実施の形態の発光装置の製造方法を示す断面工程図である。
【0039】
発光素子12をサファイア基板14に形成後、サファイア基板14の発光素子12と反対側の表面に、例えば、幅が60μm、深さが130μmの凹凸をエッチングにより形成する(図4)。
【0040】
次に、赤色蛍光体用の第1のメタルマスク32を、サファイア基板14にかぶせ、第1のメタルマスク32の上から赤色蛍光体を分散させた樹脂を塗布する。この時、第1のメタルマスク32の開口部サイズを、例えば、40μmとし、かつ、樹脂の粘性を調整することにより、サファイア基板14凹部の側壁に樹脂を付着することを防止する。このようにして、サファイア基板14の凹部の最下部に、例えば、厚さ50μmの赤色蛍光体層22が形成される(図5)。
【0041】
次に、第1のメタルマスク32にかえて緑色蛍光体用の第2のメタルマスク34を、サファイア基板14にかぶせ、第2のメタルマスク34の上から緑色蛍光体を分散させた樹脂を塗布する。これにより、サファイア基板14の凸部に、例えば、厚さ50μmの緑色蛍光体層24が形成される(図6)。
【0042】
その後、第2のメタルマスク34を外し、例えば、150℃の環境に30分間置くことにより、赤色蛍光体層22と緑色蛍光体層24の樹脂を硬化させる。上記工程により、図1、2に示す本実施の形態の発光装置が簡易な工程で製造可能である。
【0043】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、第1の実施の形態の発光装置においては、透明媒質層の凸部の赤色蛍光体層上面より上部の断面が長方形であったのに対し、長方形以外の台形である点で異なる。以下、第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0044】
図7は、本実施の形態の発光装置の上部の拡大模式断面図である。図7に示すように、本実施の形態の発光装置20は、透明媒質層14の凸部の赤色蛍光体層22上面より上部の断面が台形形状である。
【0045】
発光装置20においても、第1の実施の形態同様、緑色蛍光体層24からみた赤色蛍光体層22を見込む立体角が小さくなる。これにより、赤色蛍光体層22に照射される緑色光の割合を少なくする。したがって、赤色蛍光体層22での再吸収が抑制され、発光装置の発光効率を向上させることが可能となる。
【0046】
そして、この台形は、発光素子12側を下底とし、下底の長さがa、高さがc、下底の端部の角の角度がそれぞれθ、φである。また、赤色蛍光体層22の上面の幅に相当する隣り合う2つの台形の間隔がbである。
【0047】
そして、本実施の形態の発光装置20において、透明媒質層の屈折率がn、台形形状の上底および下底以外の2辺が接する物質の屈折率がnである場合に、下記(式1)および(式2)を充足することが望ましい。
【数2】

(ただし、α=c/(a+b)である。)
【0048】
上記、(式1)、(式2)を充足することにより、図中の点B’と点C’の間、すなわち、緑色蛍光体層24かから透明媒質層14を通って、隣の赤色蛍光体層22に向かう方向の光は、すべて、透明媒質層14と、台形の上底および下底以外の2辺が接する物質との界面で全反射される。よって、赤色蛍光体層22による再吸収が抑制され、発光装置の発光効率を一層向上させることが可能となる。
【0049】
なお、第1の実施の形態の(式3)は、(式1)(式2)において、θおよびφがともに90度であり、n=1、n=nの場合と等価である。
【0050】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、緑色蛍光体層が連続的に形成される点で、第1の実施の形態と異なっている。以下、第1の実施の形態と重複する内容については、記載を省略する。
【0051】
図8は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。本実施の形態の発光装置が実装基板上に実装された状態を示している。
【0052】
本実施の形態の発光装置30は、透明媒質層14の凸部に形成される緑色蛍光体層24が連続的に形成されている点で、図1に示す発光装置10と相違する。また、透明媒質層14の凸部の間の赤色蛍光体層22が設けられていない領域は、空気または透明な媒質、例えば、シリコーン系の透明樹脂で形成される。
【0053】
発光装置30においても、第1の実施の形態同様、緑色蛍光体層24からみた赤色蛍光体層22を見込む立体角が小さくなる。これにより、赤色蛍光体層22に照射される緑色光の割合を少なくする。したがって、赤色蛍光体層22での再吸収が抑制され、発光装置の発光効率を向上させることが可能となる。
【0054】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、発光素子が近紫外光を発する近紫外LEDチップである点、青色蛍光体層を有する点で、第1の実施の形態と異なっている。以下、第1の実施の形態と重複する内容については、記載を省略する。
【0055】
図9は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。本実施の形態の発光装置が実装基板上に実装された状態を示している。
【0056】
本実施の形態の発光装置40は、励起光源用の発光素子12として、近紫外光を発する近紫外LEDチップを備えている。
【0057】
発光素子12の上面には、表面に凹凸を有する透明媒質層14が形成されている。透明媒質層14は凹部、第1の凸部、第2の凸部によって形成される階段状の凹凸を表面に有している。透明媒質層14は、例えば、発光素子12の形成時に用いられるサファイア基板である。
【0058】
近紫外LEDチップは、例えば、サファイア基板14に接して形成される。近紫外LEDチップは、例えばAu(金)からなるバンプ16を介して、表面に金属からなる配線層18a、18bが形成されたメタライズ実装基板19上に載置したフリップチップ型の構成を有している。
【0059】
サファイアの透明媒質層14の凹部に、赤色蛍光体を含有する赤色蛍光体層22が形成されている。赤色蛍光体層22は、例えば、赤色蛍光体粒子が、例えば、シリコーン樹脂のような透明樹脂層中に分散されて形成されている。凹部に赤色蛍光体層22が形成されることで、結果的に複数の赤色蛍光体層22が、発光素子12上に断続的に形成されることになる。
【0060】
透明媒質層14の第1の凸部には、緑色蛍光体を含有する緑色蛍光体層24が形成されている。緑色蛍光体層24は、例えば、緑色蛍光体粒子が、例えば、シリコーン樹脂のような透明樹脂層中に分散されて形成されている。
【0061】
透明媒質層14の第2の凸部には、青色蛍光体を含有する青色蛍光体層26が形成されている。青色蛍光体層26は、例えば、青色蛍光体粒子が、例えば、シリコーン樹脂のような透明樹脂層中に分散されて形成されている。青色蛍光体としては、BaMgAl1017:Euを用いることが望ましい。しかしながらこれに限定されるものではない。
【0062】
また、透明媒質層14の凸部の間の赤色蛍光体層22、緑色蛍光体層24が設けられていない領域は、例えば、空気である。この領域が、シリコーン樹脂等の透明樹脂で形成されていてもかまわない。
【0063】
発光装置40では、近紫外LEDチップから発せられる近紫外光を励起光として、赤色蛍光体層22からは赤色光が、緑色蛍光体層24からは緑色光が、青色蛍光体層26からは青色光が発せられる。これらの赤色光、緑色光、青色光が混合されることで発光装置40から白色光が発せられる。
【0064】
発光装置40においては、緑色蛍光体層24からみた赤色蛍光体層22を見込む立体角が小さくなる。これにより、赤色蛍光体層22に照射される緑色光の割合を少なくする。したがって、赤色蛍光体層22で緑色光の再吸収が抑制される。
【0065】
また、発光装置40においては、青色蛍光体層26からみた緑色蛍光体層24や赤色蛍光体層22を見込む立体角が小さくなる。これにより、緑色蛍光体層24や赤色蛍光体層22に照射される青色光の割合を少なくする。したがって、緑色蛍光体層24や赤色蛍光体層22での青色光の再吸収が抑制される。よって、発光装置の発光効率を向上させることが可能となる。
【0066】
また、発光装置40は、近紫外LEDチップが形成されるサファイア基板14に設けられた凹凸に、赤色蛍光体層22、緑色蛍光体層24、青色蛍光体層26をそれぞれ形成する。したがって、赤色蛍光体層、緑色蛍光体層、青色蛍光体層を異なる近紫外LEDチップ上に設けて、白色発光モジュールを形成するような場合に比較して、白色発光装置の小型化が実現できる。
【0067】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、各実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
【0068】
また、実施の形態においては、赤色蛍光体および緑色蛍光体にサイアロン系蛍光体を適用する場合を例に説明した。温度消光を抑制する観点からはサイアロン系蛍光体、特に上記(式4)、(式5)で表される蛍光体を適用することが望ましいが、その他の蛍光体を適用してもかまわない。
【0069】
また、青色蛍光体にBaMgAl1017:Euを適用する場合を例に説明した。効率向上の観点からはこれを適用することが望ましいが、その他の蛍光体を適用してもかまわない。
【0070】
また、透明媒質層として、サファイアを例に説明したが、透明媒質層の材料については、発光素子(励起素子)のピーク波長近傍およびこれよりも長波長の可視領域で実質的に透明であれば、無機材料、樹脂等その種類を問わず用いることができる。
【0071】
また、蛍光体層に用いられる樹脂や凹部間を埋める樹脂については、発光素子(励起素子)のピーク波長近傍およびこれよりも長波長の可視領域で実質的に透明であれば、その種類を問わず用いることができる。一般的なものとしては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、またはエポキシ基を有するポリジメチルシロキサン誘導体、またはオキセタン樹脂、またはアクリル樹脂、またはシクロオレフィン樹脂、またはユリア樹脂、またはフッ素樹脂、またはポリイミド樹脂などが考えられる。
【0072】
また、実施の形態においては、透明媒質層表面の凹凸に赤色蛍光体層と緑色蛍光体層を形成する場合を例に説明した。製造の容易さ、全反射を利用した再吸収抑制の観点からはこの構成が望ましい。しかし、例えば、凹凸のないサファイア基板表面に断続的に赤色蛍光体層を形成し、例えば、透明樹脂層を介して緑色蛍光体層を設けるような構成であってもかまわない。
【0073】
そして、実施の形態の説明においては、発光装置等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる発光装置に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0074】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての発光装置は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0075】
10 発光装置
12 発光素子
14 透明媒質層(サファイア基板)
16 バンプ
18a、b 配線層
19 メタライズ実装基板
20 発光装置
22 赤色蛍光体層
24 緑色蛍光体層
26 青色蛍光体層
30 発光装置
32 第1のメタルマスク
34 第2のメタルマスク
40 発光装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子と、
前記発光素子上に形成され、赤色蛍光体を含有し、断続的に配置される複数の赤色蛍光体層と、
前記発光素子上に形成され、緑色蛍光体を含有し、前記発光素子から離れた位置に配置される緑色蛍光体層を備え、
前記発光素子と前記赤色蛍光体層との距離よりも前記発光素子と前記緑色蛍光体層との距離が大きいことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記発光素子上に形成され、表面に凹凸を有する透明媒質層を有し、
前記赤色蛍光体層は前記透明媒質層表面の凹部に形成され、
前記緑色蛍光体層は前記透明媒質層表面の凸部に形成されることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記凸部の、前記赤色蛍光体層上面より上部の断面が、前記発光素子側を下底とし、下底の長さがa、高さがc、下底の端部の角の角度がそれぞれθ、φであり、底部の間隔bで隣り合う台形形状を有し、
前記透明媒質層の屈折率がn、前記台形形状の上底および下底以外の2辺が接する物質の屈折率がnである場合に、下記(式1)および(式2)を充足することを特徴とする請求項2記載の発光装置。
【数3】

(ただし、α=c/(a+b)である。)
【請求項4】
前記θおよび前記φがともに90度であり、前記n=1、前記n=nの場合に、下記(式3)を充足することを特徴とする請求項3記載の発光装置。
【数4】

【請求項5】
前記赤色蛍光体が、下記(式4)の組成を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の発光装置。
(M1−x1Eux1SiAlO ・・・(式4)
(上記(式4)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、a、b、c、dは、次の関係を満たす。
0<x1≦1、
0.60<a<0.95、
2.0<b<3.9、
0.04≦c≦0.6、
4<d<5.7)
【請求項6】
前記緑色蛍光体が、下記(式5)の組成を有することを特徴とする請求項5記載の発光装置。
(M’1−x2Eux23−ySi13−zAl3+z2+u21−w ・・・(式5)
(上記式(式5)中、M’はIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x2、y、z、u、wは、次の関係を満たす。
0<x2≦1、
−0.1≦y≦0.15、
−1≦z≦1、
−1<u−w≦1.5)
【請求項7】
前記透明媒質層がサファイアであることを特徴とする請求項2ないし請求項6いずれか一項記載の発光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−59824(P2012−59824A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199984(P2010−199984)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】