説明

発振器用基板

【課題】VCXOとPXOとに共有可能な印刷抵抗を使用した発振器用基板を提供する。
【解決手段】水晶振動子Y1と水晶発振回路11とから構成されるPXO、または圧電発
振回路と周波数電圧制御回路12とから構成されるVCXOに使用可能な発振器用基板で
あって、VCXOを構成する抵抗部品のうち、短絡部品に交換することによりVCXOを
PXOに変更できる抵抗R2以外を印刷抵抗により形成した。これにより1つの発振器用
基板21をVCXOとPXOにおいて共有して使用することができるため、発振器の低コ
スト化を実現することができる。また、VCXOをPXOに変更するための抵抗R2以外
を印刷抵抗により形成しているため圧電発振器を小型化することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電発振器または電圧制御型圧電発振器に使用可能な発振器用基板に関するも
のである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等を始めとした各種電子機器においては圧電素子を利用した水晶発振器
(PXO)や、電圧制御型水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscilla
tor)が広く用いられている。
特許文献1には発振回路に接続された圧電振動子と可変容量ダイオードと、インダクタ
ンスと容量を並列に接続した回路網とを直列に配置し電圧に対する周波数可変範囲を拡大
するようにした可変周波数発振回路が開示されている。
【特許文献1】特開2001−16039公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記したような水晶発振器(以下、PXOという)や電圧制御型水晶発振器
(以下、VCXOという)においては、より一層小型化、低コスト化が求められており、
今後主流となるパッケージサイズが7[mm]×5[mm]以下の超小型サイズの発振器
を実現するには回路を構成する部品をさらに小型化する必要がある。
水晶発振器を小型化する1つの手段としては、発振回路の抵抗を実装基板上に印刷抵抗
により形成することが考えられる。一方、水晶発振器の低コスト化を実現する手段として
は、例えばVCXO用の基板をPXOにおいても共有して使用することで、量産枚数の増
加によるコストダウンを図ることが考えられる。即ち、抵抗を印刷抵抗により形成し、し
かもVCXOとPXOとの両方において使用できる実装基板を作製できれば、PXOやV
CXOの小型化、低コスト化を図ることができることになる。
しかしながら、小型化を図るために抵抗を全て印刷抵抗により形成した場合は、回路構
成上、PXOとVCXOとにおいて共有可能な発振器用基板を作製することができないと
いう欠点があった。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、VCXOとPXOとに共有可能
な印刷抵抗を使用した発振器用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明は、圧電振動子と発振回路とから構成される圧電発振
器、または圧電発振回路と周波数電圧制御回路とから構成される電圧制御型圧電発振器に
使用可能な発振器用基板であって、電圧制御型圧電発振回路を構成する抵抗部品のうち、
短絡部品に交換することにより電圧制御型圧電発振器を圧電発振器に変更できる抵抗部品
以外を印刷抵抗により形成した。このように構成すれば1つの発振器用基板をVCXOと
PXOにおいて共有して使用することができるため、圧電発振器の低コスト化を実現する
ことができる。また、VCXOをPXOに変更するための抵抗部品以外を印刷抵抗により
形成しているため圧電発振器を小型化することができる。
また本発明は、発振回路の発振出力をデジタル出力に変換して出力するECL回路を構
成したICを実装可能な構成とした。このように構成すると、1枚の発振器用基板デジタ
ル出力が可能なVCXOとPXOを構成することができる。また、印刷抵抗の上にICチ
ップを実装することができるので、デジタル出力可能な水晶発振器の小型化、低コスト化
を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下、本発明の発振器用基板の実施形態を説明する。なお、本実施形態では圧電素子と
して水晶振動子を用いた場合を例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態の発振器用基板により構成される電圧制御型圧電発振器(VCXO
)の回路構成を示した図である。
この図1に示すVCXOは、コルピッツ型の水晶発振回路11と周波数電圧制御回路1
2とにより構成される。水晶発振回路11はトランジスタQ1のベースに水晶振動子Y1
の一端が接続されていると共に、抵抗R4、R5から成るベースバイアス回路が接続され
、更にベースと接地との間に負荷容量の一部を担うコンデンサC1、C2との直列回路が
接続されている。そして、この直列回路の接続中点がトランジスタQ1のエミッタと抵抗
R7との接続点に接続される。またトランジスタQ1のコレクタがコレクタ抵抗R6を介
して電源Vccに接続されている。なおコンデンサC10、C11はノイズ除去用のバイ
パスコンデンサである。
【0006】
水晶振動子Y1の他端には、周波数電圧制御回路12が接続されている。周波数電圧制
御回路12は、コンデンサC5とコンデンサC6との並列回路、抵抗R3とインダクタL
1との並列回路、及び抵抗R2とを直列にした直列回路から成り、コンデンサC5とコン
デンサC6との並列回路の一端を水晶振動子Y1の他端に接続し、抵抗R2の一端を接地
するようにしている。更に抵抗R3と抵抗R2との接続点と接地との間には、コンデンサ
C4と可変容量ダイオードD2とを並列に接続した第1の並列回路と、コンデンサC3と
可変容量ダイオードD1とを並列に接続した第2の並列回路とを直列に接続した直列回路
が接続されている。
また可変容量ダイオードD1、D2のカソード接続点が交流阻止用の抵抗R1を介して
制御電圧端子Vcontに接続されている。これにより制御電圧端子Vcontからの制御電圧に
より水晶発振回路11の発振出力を可変制御可能に構成されている。
【0007】
本実施形態では図1に示したVCXOの小型化を図るために、可変容量ダイオードD1
、D2を発振器用基板上にベアチップにより構成すると共に、VCXOの抵抗を発振器用
基板上に印刷抵抗により形成するようにした。この際に、抵抗R2だけを印刷抵抗により
構成しないようにした点に特徴がある。
即ち、本実施形態ではVCXOを構成する抵抗のうち、0Ω抵抗などの短絡部品に交換
することによりVCXOをPXOに変更可能な抵抗R2以外を印刷抵抗により形成し、抵
抗R2はチップ部品であるチップ抵抗により構成できるよう発振器基板上に部品電極を設
けるようにした。これにより、本実施形態の発振器用基板を図1に示したVCXOだけで
なく、図2に示すような水晶発振器(PXO)の発振器用基板としても使用できるように
した。
【0008】
例えば本実施形態の発振器用基板によりPXOを構成する場合は、可変容量ダイオード
D1、D2を載置しないで、コンデンサC5、インダクタL1、及び抵抗R2の部品電極
に、例えば0Ω抵抗等の短絡部品を実装して短絡すれば、水晶振動子Y1の他端を接地し
たPXOを構成することができる。
従って、本実施形態の発振器用基板によれば、同一パッケージサイズのVCXOとPX
Oの両方において使用することができるので発振器用基板を低コストで実現することがで
きる。また、VCXOをPXOに変更するための抵抗R2以外を印刷抵抗により形成でき
るため発振器を小型化することができる。
【0009】
次に、本実施形態の発振器用基板を用いてデジタル出力が可能なECL(Emitter Coup
led Logic)回路を備えた水晶発振器を構成する場合を説明する。
図3は、本実施形態の発振器用基板を用いて構成されるECL回路を備えたVCXOの
構成を示した図であり、図3(a)はECL回路を備えたVCXOの回路構成を示した図
、図3(b)は、図3(a)に示したVCXOに使用する発振器用基板の外観図、図3(
c)は発振器用基板に部品を実装した状態を示した図である。なお、図1と同一回路部品
には同一符号を付して説明は省略する。
【0010】
図3に示すVCXOは、発振回路の出力を結合コンデンサC8と抵抗R8の直列回路を
介してECL回路13に入力し、ECL回路13によりデジタル出力に変換して出力する
ようにしている。
ECL回路13は、ICにより構成される差動増幅回路V1の各端子とレベル調整用の
抵抗R9及びバイパスコンデンサC9を図示するように接続して構成される。
このようなECL回路を備えたVCXOでは、図3(b)に示すように、発振器用基板
21上には抵抗R1、R3、R4、R5、R6、R7が印刷抵抗により形成されている。
従って、図3(c)に示すように、発振器用基板21上に形成した印刷抵抗の上に可変容
量ダイオードD1、D2及び差動増幅回路V1を1チップ化したICチップ22やインダ
クタL1のチップ部品23を実装することができ、回路の小型化を図ることができる。
【0011】
図4は、本実施形態の発振器用基板を用いて構成されるECL回路を備えたPXOの構
成を示した図であり、図4(a)はECL回路を備えたPXOの回路構成を示した図、図
4(b)は発振器用基板に部品を実装した状態を示した図である。なお、図3と同一部品
には同一符号を付して説明は省略する。
図4(a)に示すECL回路を備えたPXOを構成する場合は、上記図3(b)に示し
た発振器用基板21に対して図4(b)に示すように部品を実装する。即ち、図3(c)
に示したVCXOにおいて実装されているコンデンサC5のチップ部品24を取り外すと
共に、インダクタL1のチップ部品23及びコンデンサC6のチップ部品25の代わりに
短絡用のチップ部品26、27を夫々実装するようにしている。このように構成すれば、
1枚の発振器用基板21でデジタル出力が可能なVCXOとPXOを構成することができ
る。また、印刷抵抗の上にICチップ22を実装することができるので、デジタル出力可
能な水晶発振器の小型化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の発振器用基板により構成されるVCXOの回路構成を示した図。
【図2】本実施形態の発振器用基板により構成されるPXOの回路構成を示した図。
【図3】本実施形態の発振器用基板を用いて構成されるECL回路を備えたVCXOの構成を示した図。
【図4】本実施形態の発振器用基板を用いて構成されるECL回路を備えたPXOの構成を示した図。
【符号の説明】
【0013】
L1…インダクタ、Q1…トランジスタ、D1、D2…可変容量ダイオード、V1…差
動増幅回路、R1…抵抗、Y1…水晶振動子、C1〜C11…コンデンサC、D1、D2
…可変容量ダイオード、R1、R3、R4、R5、R6、R7…印刷抵抗、R2…チップ
抵抗、11…水晶発振回路、12…周波数電圧制御回路、13…ECL回路、21…発振
器用基板、22…ICチップ、23〜27…チップ部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と発振回路とから構成される圧電発振器、または前記圧電発振回路と周波数
電圧制御回路とから構成される電圧制御型圧電発振器に使用可能な発振器用基板であって

前記電圧制御型圧電発振器を構成する抵抗部品のうち、短絡部品に交換することにより
前記電圧制御型圧電発振器を前記圧電発振器に変更できる抵抗部品以外を印刷抵抗により
形成したことを特徴とする発振器用基板。
【請求項2】
請求項1に記載の発振器用基板において、
前記発振回路の発振出力をデジタル出力に変換して出力するECL回路を構成したIC
チップを実装可能であることを特徴とする発振器用基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−189284(P2007−189284A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3274(P2006−3274)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】