説明

発泡充填部材

【課題】 2つの空間に、発泡基材を効率よく配置することのできる、発泡充填部材を提供すること。
【解決手段】 中板金41によって仕切られる第1空間S1および第2空間S2を充填するために、第1支持部5、第2支持部6およびクリップ部7を一体的に備えるホルダ部材4を用意し、第1支持部5の支持板8に第1発泡基材2を支持させた後、第1支持部5を第1空間S1に配置し、中板金41にクリップ部7を固定するとともに、中板金41の貫通孔42を介して第2支持部6を第2空間S2に配置して、その後、第2支持部6に第2発泡基材3を支持させて、第1発泡基材2および第2発泡基材3を、加熱により発泡させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切り部材によって仕切られる2つ空間を充填するための発泡充填部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のピラーなどの中空構造物に、発泡体を充填するための発泡充填部材が知られている。
このような発泡充填部材として、例えば、外部加熱によって発泡する材料よりなる発泡性基材と、発泡性基材の一側面を支持する支持板を有する支持部材とを備え、発泡性基材が、支持板に対応する大きさで略環状に形成され、支持板の一側面に、発泡性基材の内周面を支持する環状のせき壁が突設されている発泡充填具が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この発泡充填具では、ピラーなどの中空室に配置して外部から加熱すると、支持板によって、発泡性基材の発泡が、中空室の長手方向へは抑制され、長手方向に略直交する中空室の内周壁面に向かう方向へは促進されて、発泡体となる。また、支持板の環状のせき壁によって、発泡性基材が、その開口孔の中心部に向けて発泡することを防止できる。そのため、極めて少ない量の発泡性基材の加熱発泡に基づく発泡体によって中空室が効率よく良好に遮断される。
【0004】
また、自動車のピラーなどの中空構造物の中には、2つの内部空間(例えば、サイドフレームアウターとセンターピラーレインフォースとの間の空間、および、センターピラーレインフォースとセンターピラーインナーとの間の空間)を有するものがあり、そのような2つの内部空間を有する場合には、2つの内部空間をそれぞれ発泡体で充填するようにしている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−146243号公報
【特許文献2】特開平11−99960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、2つの内部空間を発泡体でそれぞれ充填する場合には、各内部空間に、発泡充填部材をそれぞれ設置する必要があり、各内部空間に対して、各発泡充填部材をそれぞれ位置固定して配置するための作業が煩雑となる。
本発明の目的は、2つの空間に、発泡基材を効率よく配置することのできる、発泡充填部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の発泡充填部材は、仕切り部材によって仕切られる2つの空間を充填するための発泡充填部材であって、一方の空間に配置され、発泡材料からなる第1発泡基材と、他方の空間に配置され、発泡材料からなる第2発泡基材と、一方の空間に配置され前記第1発泡基材を支持する第1支持部、および、他方の空間に配置され前記第2発泡基材を支持する第2支持部を備え、非発泡部材からなるホルダ部材とを備えていることを特徴としている。
【0007】
この発泡充填部材では、ホルダ部材の第1支持部において、第1発泡基材を、一方の空間で支持するとともに、ホルダ部材の第2支持部において、第2発泡基材を、他方の空間で支持することができるので、これら第1発泡基材および第2発泡基材を、1つのホルダ部材で、一方の空間および他方の空間に、それぞれ効率よく位置固定して配置することができる。
【0008】
また、本発明の発泡充填部材において、前記第2支持部は、前記一方の空間に配置される前記第1支持部から突出し、前記仕切り部材に形成される貫通孔を介して、他方の空間に配置されるように、前記第1支持部と一体的に形成されていることが好適である。
これによって、組立作業時に、第1支持部で第1発泡基材を支持した後、第2支持部を、一方の空間から、仕切り部材に形成される貫通孔に挿通して他方の空間に配置し、その後、第2支持部で第2発泡基材を支持することができるので、第1発泡基材および第2発泡基材を、より一層効率よく、一方の空間および他方の空間に位置固定して配置することができる。
【0009】
また、本発明の発泡充填部材において、前記ホルダ部は、前記第1支持部を前記仕切り部材に固定するための固定部を備えていることが好適である。
固定部によって、第1支持部を仕切り部材に固定することができるので、第1発泡基材および第2発泡基材を、より正確に位置決めして、一方の空間および他方の空間に位置固定して配置することができる。
【0010】
また、本発明の発泡充填部材において、前記固定部は、前記第1支持部から突出し、前記仕切り部材に固定されるように、前記第1支持部と一体的に形成されていることが好適である。
これによって、組立作業時に、固定部を仕切り部材に固定することができるので、固定部と一体的に形成されている第1支持部に支持される第1発泡基材を、より正確に位置決めして、配置することができる。
【0011】
また、本発明の発泡充填部材においては、前記固定部に、前記第2支持部が設けられていることが好適である。
これによって、第2発泡基材を、より正確に位置決めして、他方の空間に位置固定して配置することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発泡充填部材によれば、第1発泡基材および第2発泡基材を、1つのホルダ部材で、一方の空間および他方の空間に、それぞれ効率よく位置固定して配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の発泡充填部材の一実施形態(中板金に固定されている状態)を示す正面図、図2は、図1に示す発泡充填部材の右側面図、図3は、図1に示す発泡充填部材の左側面図、図4は、図1に示す発泡充填部材の平面図、図5は、図1に示す発泡充填部材の底面図、図6は、図1に示す発泡充填部材の背面図、図7は、図1に示す発泡充填部材の斜視図である。
【0014】
図1において、この発泡充填部材1は、自動車のピラーなどの中空構造物の内部空間に発泡体を充填するために用いられ、より具体的には、仕切り部材としての中板金41によって仕切られる第1空間S1および第2空間S2を、第1発泡体F1および第2発泡体F2(図8(d)参照)によってそれぞれ充填するために用いられる。
なお、中板金41の長手方向一端部には、略直角方向に屈曲する側板金46が、連続して一体的に形成されている。
【0015】
この発泡充填部材1は、第1空間S1に配置される発泡材料からなる第1発泡基材2と、第2空間S2に配置される発泡材料からなる第2発泡基材3と、第1発泡基材2および第2発泡基材3を支持するための非発泡部材からなるホルダ部材4とを備えている。
ホルダ部材4を形成する材料は、後述する加熱発泡時(例えば、120〜210℃前後)に、第1発泡基材2および第2発泡基材3を支持できれば、特に制限されないが、例えば、ナイロン、ポリエステルなどの樹脂、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属などが用いられる。
【0016】
このホルダ部材4は、第1空間S1に配置され、第1発泡基材2を支持するための第1支持部5と、第2空間S2に配置され、第2発泡基材3を支持するための第2支持部6と、第1支持部5を中板金41に固定するための固定部としてのクリップ部7とを一体的に備えている。
第1支持部5は、支持板8および環状壁9を一体的に備えている。
【0017】
支持板8は、充填すべき第1空間S1に対して、やや小さな相似形状であって、例えば、平面視略矩形の平板形状に形成されている。
環状壁9は、支持板8の外形と略相似形状である平面視略矩形の環状をなし、支持板8の一方側表面において、その一方側表面が延びる方向と直交する方向に立設されている。この環状壁9は、支持板8の外周縁と、第1発泡基材2が配置される一定幅を隔てて、支持板8の一方側表面に周状に設けられている。この環状壁9の高さ(すなわち、支持板8の一方側表面から環状壁9の遊端部までの長さ)は、図3および図5に示すように、第1発泡基材2の厚みよりも大きく設定されている。
【0018】
なお、環状壁9の形成により、図1に示すように、支持板8における環状壁9によって囲まれる内側部分が、内側閉塞部10とされ、支持板8における環状壁9の外側部分、つまり、支持板8の外周縁と環状壁9との間の外周部分が、外側支持部11とされている。
第2支持部6は、支持板8の外周縁の正面視直線に形成される一辺から、その一辺が延びる方向と直交する方向に突出するように、複数(2つ)形成されている。
【0019】
各第2支持部6は、互いに間隔を隔てて設けられており、挿通部12および頭部13を一体的に備えている。
挿通部12は、杆状をなし、中板金41の貫通孔42に挿通され、支持板8の外周縁の端面から立設されている。
頭部13は、挿通部12の遊端部に設けられ、挿通部12の長手方向と直交する方向に膨出する平面視略三角形状に形成されている。
【0020】
クリップ部7は、各第2支持部6が設けられ、支持板8の外周縁の正面視直線に形成される一辺から、各第2支持部6が延びる方向と同方向に突出するように、形成されている。
このクリップ部7は、図8(a)が参照されるように、基部14と、内側係止部15と、突出部16と、外側係止部17とを一体的に備えている。
【0021】
基部14は、支持板8の外周縁の端面において、互いに間隔を隔てて設けられる各第2支持部6の間に設けられ、その端面から外側に膨出するように形成されている。
内側係止部15は、可撓性の片からなり、基部14の幅方向(支持板4の外周縁に沿う方向)両端部から、幅方向外方(互いに離間する方向)に向かって、平面視略ハの字状に傾斜するように、それぞれ突出形成されている。
【0022】
突出部16は、平面視略矩形状をなし、基部14の中央部から各第2支持部6が延びる方向と同方向に突出形成されている。この突出部16の突出長さは、第2支持部6の突出方向において、突出部16の遊端部と各第2支持部6の頭部13の基端部との間で、後述する第2発泡基材3を、各第2支持部6の長手方向と直交する方向において挟持できる間隔に設定されている(図1参照)。
【0023】
外側係止部17は、可撓性の片からなり、突出部16の遊端部において、突出部16の幅方向両端部から、基部14に向かって、平面視略ハの字状に傾斜するように、それぞれ突出形成されている。
これによって、各外側係止部17の遊端部が、各内側係止部15の途中と、間隔を隔てて対向配置される。
【0024】
そして、このようなホルダ部材4は、例えば、上記した樹脂から形成する場合には、射出成形などによって、第1支持部5、第2支持部6およびクリップ部7とを一体成形することによって、得ることができる。
第1発泡基材2および第2発泡基材3は、加熱(例えば、120〜210℃前後)により発泡する発泡材料から形成されている。
【0025】
発泡材料としては、特に制限されず、公知の発泡性ポリマーが用いられる。発泡性ポリマーとしては、特に制限されないが、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリケトンなどの樹脂、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)などのゴムなどが挙げられる。好ましくは、エチレン・酢酸ビニル共重合体が用いられる。エチレン・酢酸ビニル共重合体を用いることにより、発泡倍率を高くすることができる。これら発泡性ポリマーは、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0026】
また、発泡材料には、発泡性ポリマーを発泡および硬化させるために、さらに、例えば、架橋剤、発泡剤、必要により発泡助剤などが適宜配合される。
架橋剤としては、特に制限されないが、例えば、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生して分子間または分子内に架橋結合を形成させる公知のラジカル発生剤が用いられる。より具体的には、例えば、ジクミルパーオキサイド、1,1−ジターシャリブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリブチルパーオキシヘキシン、1,3−ビス(t−ブチルパ−オキシイソプロピル)ベンゼン、ターシャリブチルパーオキシケトン、ターシャリブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物などが挙げられる。
【0027】
また、発泡性ポリマーが加硫可能である場合には、架橋剤として公知の加硫剤を用いることができる。そのような加硫剤としては、特に制限されないが、例えば、硫黄、硫黄化合物類、セレン、酸化マグネシウム、一酸化鉛、酸化亜鉛、ポリアミン類、オキシム類、ニトロソ化合物類、樹脂類、アンモニウム塩類などが挙げられる。
これら架橋剤は、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。また、架橋剤の配合割合は、特に制限されないが、例えば、発泡性ポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは、0.5〜7重量部である。
【0028】
また、加硫剤を用いる場合には、加硫促進剤を併用することができる。加硫促進剤としては、例えば、ジチオカルバミン酸類、チアゾール類、グアニジン類、スルフェンアミド類、チウラム類、キサントゲン酸類、アルデヒドアンモニア類、アルデヒドアミン類、チオウレア類などの公知の加硫促進剤が挙げられる。このような加硫促進剤は、1種または2種以上を適宜選択して用いることができ、その配合割合は、発泡性ポリマー100重量部に対して、0.1〜5重量部である。
【0029】
また、加硫促進剤とは反対に、成形性の調節などを目的として、例えば、有機酸やアミン類などの公知の加硫遅延剤などを適宜配合することもできる。
また、発泡剤としては、特に制限されないが、例えば、公知の無機系発泡剤や有機系発泡剤が用いられる。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類などが挙げられる。
【0030】
また、有機系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸アミドなどのアゾ系化合物、例えば、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、トリニトロトリメチルトリアミンなどのニトロソ系化合物、例えば、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジド系化合物、例えば、p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系化合物、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンなどのフッ化アルカン、例えば、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物などが挙げられる。
【0031】
また、これら発泡剤のなかでも、発泡性ポリマーの軟化温度以上で分解してガスを発生し、かつ、後述する発泡体の形成時において、ほとんど発泡しないものが、組成に応じて適宜選択される。好ましくは、120〜210℃前後で発泡するものが用いられる。
これら発泡剤は、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。また、発泡剤の配合割合は、特に制限されないが、例えば、発泡性ポリマー100重量部に対して、5〜50重量部、好ましくは、10〜30重量部である。
【0032】
なお、発泡剤の配合量は、第1発泡基材2および第2発泡基材3の発泡時において、その発泡倍率が5〜25倍程度、好ましくは、10〜20倍程度で、実質的に独立気泡を生じさせる範囲であることが好適である。発泡剤の配合量が少なすぎると、第1発泡基材2および第2発泡基材3が十分に発泡せず、一方、発泡剤の配合量が多すぎると、発泡により得られる発泡体の樹脂だれによる空隙を生じ、いずれも充填性が抵下する。
【0033】
発泡助剤としては、特に制限されないが、例えば、発泡剤の種類に応じて適宜公知の発泡助剤を選択することができ、より具体的には、例えば、尿素を主成分とする尿素系化合物、例えば、酸化亜鉛、酸化鉛などの金属酸化物、例えば、サリチル酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸またはその金属塩などが挙げられる。好ましくは、高級脂肪酸金属塩が用いられる。
【0034】
これら発泡助剤は、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。また、発泡助剤の配合割合は、特に制限されないが、例えば、発泡性ポリマー100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは、5〜10重量部である。
さらに、発泡材料には、その目的および用途によって、例えば、安定剤、補強材、充填剤、軟化剤や、さらには必要に応じて、例えば、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、防カビ剤、難燃剤などの公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0035】
そして、第1発泡基材2および第2発泡基材3は、例えば、まず、上記した各成分を上記した配合割合において配合した後、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダーなどを用いて混練して、発泡材料を調製する。次いで、発泡材料を、プレスやカレンダーロールなどを用いてシート状に連続成形するか、あるいは、押出成形機を用いてシート状に連続成形する。
【0036】
その後、第1発泡基材2は、図1に示すように、支持板8の外側支持部11に対応する平面視略矩形の環状(枠状)に打ち抜くことにより、得ることができる。
また、第2発泡基材3は、所定幅および長さ(各第2支持部6が設けられ、支持板8の外周縁の正面視直線に形成される一辺とほぼ同じ長さ)の帯状に裁断し、各第2支持部6が挿通される複数(2つ)の挿通孔18(図4および図7参照)を、長手方向に間隔を隔てて穿孔することにより、得ることができる。なお、各挿通孔18は、各第2支持部6の間隔に対応する間隔を隔てて穿孔される。
【0037】
このように、第1発泡基材2および第2発泡基材3をシート状に形成することにより第1発泡基材2および第2発泡基材3を、連続成形によって、生産効率よく、低コストで生産することができる。
また、このようにして得られる第1発泡基材2および第2発泡基材3は、厚みが、0.5〜6.0mm、好ましくは、1.5〜3.5mmに設定される。また、第1発泡基材2および第2発泡基材3は、曲げ弾性率が、20〜150MPa、好ましくは、60〜100MPaに設定される。このように設定されることによって、第1発泡基材2および第2発泡基材3には、適度の弾性および形状保持性が付与される。
【0038】
次に、発泡充填部材1における第1発泡基材2、第2発泡基材3およびホルダ部4の組立と、第1発泡基材2および第2発泡基材3を、中板金41によって仕切られる第1空間S1および第2空間S2にそれぞれ配置する方法とについて、説明する。
この発泡充填部材1が配置される中空構造物40は、図8(d)に示すように、アウタ板金43と、インナ板金44と、中板金41および側板金46とを備えており、内部空間が、第1空間S1および第2空間S2に区画されている。
【0039】
すなわち、アウタ板金43は、中板金41に対して一方側に設けられ、閉断面の第1空間S1が形成されるように、中板金41の長手方向一端部から側板金46の他端部まで連続して、形成されている。
また、インナ板金44は、中板金41に対して他方側に設けられ、閉断面の第2空間S2が形成されるように、中板金41の長手方向一端部から他端部まで連続して、形成されている。なお、第2空間S2は、第1空間S1よりも、断面積が狭くなるように形成されている。
【0040】
中板金41には、図8(b)に示すように、各第2支持部6の間隔に対応する間隔を隔てて穿孔される貫通孔42と、各第2支持部6の間であって、突出部16に対応する位置に穿孔される固定孔45とが形成されている。
そして、このような中空構造物40に、発泡充填部材1を配置するには、まず、第1発泡基材2を第1支持部5に支持させたものと、第2発泡基材3とを別々で用意する。
【0041】
第1発泡基材2を第1支持部5に支持させるには、図8(a)に示すように、第1発泡基材2を、第1支持部5の支持板8の外側支持部11に配置して、第1発泡基材2の内周面を、環状壁9の外周面に弾性的に圧接させる。これによって、第1発泡基材2が、支持板8の外側支持部11において支持される。
そして、図8(b)に示すように、第1発泡基材2が第1支持部5に支持されたホルダ部材4を、第1空間S1に配置して、各第2支持部6を、中板金41の各貫通孔42に挿通することにより、第2空間S2に配置するとともに、クリップ部7の突出部16および外側係止部17を、中板金41の固定孔45に挿通して、外側係止部17および内側係止部15により、クリップ部7を中板金41に固定する。
【0042】
各第2支持部6を、中板金41の各貫通孔42に挿通するには、まず、各第2支持部6の頭部13を、弾性変形させながら各貫通孔42に挿通した後、次いで、挿通部12を、各貫通孔42に挿通する。
また、クリップ部7を中板金41に固定するには、外側係止部17をその弾性力に抗して突出部16に近接するように撓ませながら、固定孔45に挿通する。そして、突出部16とともに外側係止部17が、第2空間S2に配置されると、外側係止部17は、その弾性力により、突出部16から離間するように復元して、第2空間S2側から中板金41に弾性的に当接する。一方、内側係止部15は、突出部16が固定孔45に挿通された状態では、第1空間S1側から中板金41に弾性的に当接する。つまり、これによって、中板金41は、固定孔45の近傍において、内側係止部15と外側係止部17とで挟持され、クリップ部7が中板金41に固定される。クリップ部7が中板金41に固定されると、第1支持部5が第1空間S1に位置固定して配置される。また、第1支持部5と一体的に形成されている第2支持部6も、第2空間S2に位置固定して配置される。その結果、ホルダ部4が中板金41に固定される。
【0043】
次いで、図8(c)に示すように、第2空間S2に配置される各第2支持部6に、第2発泡基材3を支持させる。各第2支持部6に第2発泡基材3を支持させるには、各第2支持部6の頭部13に、第2発泡基材3の各挿通孔18を挿通させて、各頭部13に挿通された第2発泡基材3を、各頭部13の間に配置される突出部16の遊端部に当接させる。
これによって、第2発泡基材3は、突出部16の遊端部と各第2支持部6の頭部13の基端部との間で、各第2支持部6の長手方向と直交する方向において挟持され、支持される。
【0044】
このように、この発泡充填部材1では、ホルダ部材4の第1支持部5において、第1発泡基材2を、第1空間S1で支持するとともに、ホルダ部材4の第2支持部6において、第2発泡基材3を、第2空間S2で支持することができるので、これら第1発泡基材2および第2発泡基材3を、1つのホルダ部材4で、第1空間S1および第2空間S2に、それぞれ効率よく位置固定して配置することができる。
【0045】
すなわち、この発泡充填部材1では、組立作業時には、第1支持部5の支持板8で第1発泡基材2を支持させた後、これを第1空間S1に配置し、その後、各第2支持部6を、第1空間S1から中板金41の貫通孔42に挿通して第2空間S2に配置して、各第2支持部6で第2発泡基材3を支持することができるので、第1発泡基材2および第2発泡基材3を、効率よく、第1空間S1および第2空間S2に位置固定して配置することができる。
【0046】
さらに、この発泡充填部材1では、クリップ部7によって、ホルダ部材4を中板金41に固定することができるので、第1発泡基材2および第2発泡基材3を、より正確に位置決めして、第1空間S1および第2空間S2に位置固定して配置することができる。
すなわち、この発泡充填部材1では、組立作業時に、クリップ部7を中板金41に固定すれば、クリップ部7と一体的に形成されている第1支持部5および第2支持部6に支持される第1発泡基材2および第2発泡基材3を、より正確に位置決めして、第1空間S1および第2空間S2に位置固定して配置することができる。
【0047】
そして、上記したように、第1空間S1および第2空間S2に、第1発泡基材2および第2発泡基材3がそれぞれ配置された後、アウタ部材43およびインナ部材44を、中板金41および側板金46に装着し、発泡温度(例えば、120〜210℃前後)に加熱して、これら第1発泡基材2および第2発泡基材3を発泡、架橋および硬化させると、図8(d)に示すように、第1空間S1が、第1発泡基材2の発泡により形成される第1発泡体F1により充填され、かつ、第2空間S2が、第2発泡基材3の発泡により形成される第2発泡体F2により充填される。なお、第1空間S1は、支持板8の内側閉塞部10によって、その中央空間を閉塞しつつ、支持板8の外周空間を、第1発泡体F1によって充填するので、少量の発泡材料で、第1空間S1を効率よく充填することができる。
【0048】
なお、第1発泡体F1および第2発泡体F2は、その密度(発泡体の重量(g)/発泡体の体積(cm3))が、例えば、0.04〜0.2g/cm3、さらには、0.05〜0.1g/cm3であり、また、発泡時の発泡倍率が、5〜25倍、さらには、10〜20倍であることが好適である。
そして、このような発泡充填部材1は、特に制限されることなく、制振、防音、防塵、断熱、緩衝、水密などを目的として、仕切り部材(上記した中板金41など)によって仕切られる2つの空間(上記した第1空間S1および第2空間S2など)を充填する、例えば、防振材、防音材、防塵材、断熱材、緩衝材、止水材などとして、各種の産業製品で用いることができる。
【0049】
より具体的には、この発泡充填部材1は、例えば、中板金41および側板金46がセンターピラーレインフォースであり、アウタ部材43がサイドフレームアウターであり、インナ部材44がセンターピラーインナーである、自動車のピラーなどの二重空間構造物の内部空間の充填に、好適に用いられる。自動車のピラーなどの内部空間を発泡により充填すれば、エンジンの振動や騒音、あるいは、風きり音などが車室内に伝達されることを、有効に防止することができる。
【0050】
この発泡充填部材1を、自動車のピラーの内部空間の充填に用いる場合には、ピラーの内周面に、防錆処理した後の焼付塗装時の乾燥ライン工程での加熱(例えば、110〜190℃)によって、第1発泡基材2および第2発泡基材3を発泡させることができる。
図9は、本発明の発泡充填部材の他の実施形態を示す正面図である。なお、図9において、上記と同様の部材には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
図9において、この発泡充填部材1では、クリップ部7の突出部16の遊端部から、さらに、第2支持部6が突出形成されている。この第2支持部6は、突出部16の長手方向に延び、他の第2支持部6と同様に、挿通部12および頭部13が一体的に形成されている。
そして、図9に示す発泡充填部材1では、第2発泡基材3が、突出部16の遊端部と、その突出部16に形成される第2支持部6の頭部13の基端部との間でも挟持されるので、第2発泡基材3を、より正確に位置決めして、第2空間S2に位置固定して配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の発泡充填部材の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示す発泡充填部材の右側面図である。
【図3】図1に示す発泡充填部材の左側面図である。
【図4】図1に示す発泡充填部材の平面図である。
【図5】図1に示す発泡充填部材の底面図である。
【図6】図1に示す発泡充填部材の背面図である。
【図7】図1に示す発泡充填部材の斜視図である。
【図8】図1に示す発泡充填部材の組立を説明するための説明図であって、(a)は、第1発泡基材を第1支持部に支持させる工程、(b)は、第1発泡基材が第1支持部に支持されたホルダ部材を、第1空間に配置する工程、(c)は、第2空間に配置される各第2支持部に、第2発泡基材を支持させる工程、(d)は、第1空間および第2空間が、第1発泡基材および第2発泡基材の発泡により形成される第1発泡体および第2発泡体によりそれぞれ充填される工程を示す。
【図9】本発明の発泡充填部材の他の実施形態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 発泡充填部材
2 第1発泡基材
3 第3発泡基材
4 ホルダ部材
5 第1支持部
6 第2支持部
7 クリップ部
41 中板金
42 貫通孔
S1 第1空間
S2 第2空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切り部材によって仕切られる2つの空間を充填するための発泡充填部材であって、
一方の空間に配置され、発泡材料からなる第1発泡基材と、
他方の空間に配置され、発泡材料からなる第2発泡基材と、
一方の空間に配置され前記第1発泡基材を支持する第1支持部、および、他方の空間に配置され前記第2発泡基材を支持する第2支持部を備え、非発泡部材からなるホルダ部材と
を備えていることを特徴とする、発泡充填部材。
【請求項2】
前記第2支持部は、前記一方の空間に配置される前記第1支持部から突出し、前記仕切り部材に形成される貫通孔を介して、他方の空間に配置されるように、前記第1支持部と一体的に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の発泡充填部材。
【請求項3】
前記ホルダ部は、前記第1支持部を前記仕切り部材に固定するための固定部を備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載の発泡充填部材。
【請求項4】
前記固定部は、前記第1支持部から突出し、前記仕切り部材に固定されるように、前記第1支持部と一体的に形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の発泡充填部材。
【請求項5】
前記固定部に、前記第2支持部が設けられていることを特徴とする、請求項3または4に記載の発泡充填部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−182303(P2006−182303A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380954(P2004−380954)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】