説明

発泡性断熱体の型枠部材と改良されたセパレータを用いた鉄筋コンクリート構造物の施工方法

【課題】
工事期間の短縮とコストの削減を可能とする、発泡性断熱体の型枠部材及びその部材を用いた鉄筋コンクリート構造物の施工方法を提供する。
【解決手段】
鉄筋コンクリート型枠内面部を形成し、そのまま残すこともできる発泡性断熱体72と、せき板75を、一定の間隔を保つように向い合って配置し、セパレータ73で緊結した後、型枠内にコンクリートを打つ鉄筋コンクリート構造物の施工方法において、該発泡性断熱体はセパレータ73の取り付け手段を有し、該セパレータ73は取り付け部74を有し、発泡性断熱体に設けられた取り付け手段に固定でき、さらにセパレータ73の他端はフォームタイ76との係合部を有することを特徴とする施工方法である。そして発泡性断熱体72は、セパレータ73を取り付けるためのジョイナーが埋めこまれているかあるいはジョイナーが差し込める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の鉄筋コンクリート基礎や鉄筋コンクリート壁等のコンクリートが固まった後にそれらと一体のものとして残すことのできる発泡性断熱体の型枠部材、及びそれを用いた鉄筋コンクリート構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の基礎や建物の壁等の鉄筋コンクリート構造物を形成するための型枠は、木材、金属、プラスチック等の種々の材料のせき板を、通常は外側から固定して、場合によってはコンクリートが満たされる型枠の内側を連結して固定して形成される。
【0003】
特に鉄筋コンクリート製建物の壁の場合には、型枠の支持は鉄パイプ等を用いて強固なものが組み立てられ、その重量は相当大きなものとなる。
近年、住宅を高断熱化、高気密化して住宅の規格を上げるために、また、施工を容易にして住宅建築価格の大幅なコストダウンや工期の短縮を図る目的で、ツーバイフォー等の木造住宅の布基礎の施工方法や、鉄筋コンクリート構造物を形成する為の合成樹脂成形体組合せ式コンクリート型枠を用いた施工方法が注目され、その普及が大いに期待されている。
そして最近は、コンクリート基礎等の型枠として、取り外さずにそのまま断熱材としても用いることのできる合成樹脂発泡体を使用することが行われている。
【0004】
例えば特許文献1には、コンクリートの壁面を形成する合板からなるコンクリート打ち込み型枠の内側に、合成樹脂発泡体を釘止めし、次いで、コンクリート壁厚を保持するためのセパレータと、コンクリート打設時におけるコンクリート打込み型枠の膨出を抑えるための縦横方向の端太材とを止め金具にて固定し、この状態でコンクリートを打設するコンクリート基礎の施工方法が記載されている。
【0005】
さらに、このような合成樹脂成形体の組合せ式コンクリート型枠には、特許文献2に記載されるように、縁に接合端として凹凸構造を有し、接合端から中心に向かってのびるT型断面の溝を有している発泡ポリスチレン等の合成樹脂製のサイドパネル部材と、向かい合うサイドパネル部材同士の間隔を固定する為に、そのサイドパネルの中に差込まれるセパレータ又はスペーサ部材(このようなスペーサ部材は、機能的には引張り力を受けるので引張り材である)とを組立てて型枠を形成するものがある。
【0006】
あるいは、特許文献3に記載されるように、向かい合ったパネル部材の間を橋渡しする橋渡し部材がパネル部材に鋳込まれて一体の建築物構成要素をなしているものを積み重ねて形成するものがある。
【0007】
このような合成樹脂製の発泡体は、成形が自由にできて軽量であり、取り扱い易いものを作ることができると共に、ある程度の剛性があり、施行期間の短縮により大幅な経費削減が期待できるので、型枠材料として非常に適している。そして単なる型枠としての機能にとどまらず、合成樹脂製の発泡体は断熱性が良好であることから、型枠内のコンクリートが固まった後に、そのまま断熱材として残すほうが有利である。
【0008】
そして、これまでの施工方法で鉄筋コンクリート製建物の外壁側を発泡体で形成する場合は、有機化合物である発泡体自体の経年劣化や、火災等を防ぐために、発泡体表面にガラスメッシュやラス網を貼ってからモルタルを塗り付け、さらに吹き付けやタイル張り等により仕上げを行っている。
【0009】
しかしながらこの施工方法によれば、外側を仕上げ加工したことによる総重量が発泡体に大きな荷重としてかかるため、モルタル側からコンクリート躯体にアンカーで固定して荷重に耐え得るような構造としなければならず、かえってこのような構造としたことで経年劣化により、外壁と発泡体との接着面、あるいは発泡体とコンクリート躯体との接着面において剥離し易くなるという問題を生じている。
【0010】
さらに外部から型枠の壁を支持する従来の型枠は、数多くのパイプを用いるために、型枠材料の運搬、組立、及び取り外しに、多大の労力を要する。
これに代わる合成樹脂発泡体を、例えば分割セパレータ等で支持する型枠は、簡単に組立てられることから作業時間を短縮し、軽量であることから型枠運搬の負担を大幅に少なくし、さらにそのまま断熱材として残せば型枠形成後の分解の労力もなくすることが出来る。
【0011】
しかし、コンクリートを打つときの圧力に耐える為には、やはり所定の連結構造と入念な組立を要するので、型枠組立作業が容易であるというメリットがなかなか生かされなかったり、あるいは発泡体間の間隔を維持する際に配筋がじゃまをしたり、隣接する発泡体の辺と辺とを繋ぎ合わせる場合に連結力が不足する等の問題があって、これまで前記のメリットを十分に生かせる構造のものはなかった。
【特許文献1】特開平6−41981号公報
【特許文献2】特開平6−129099号公報
【特許文献3】特開平6−346536号公報
【0012】
さらに具体的に、従来の施工方法について説明すると、一般に、図1に示すような型枠と緊結手段を用いた施工方法が行われてきた。
【0013】
この施工方法は、例えば建物外側から順に、予めパネルの補強材としてのバタ板(11)、せき板(12)(例えば、ベニヤ製パネル)、発泡性断熱体(13)製の断熱材により、コンクリート打設のための外側の型枠を設け、他方、建物内側には順にせき板(14)(ベニヤ製パネル)、バタ材(15)、で内装壁体型枠を形成し、この外側の型枠と内側の内装壁体型枠を共にセパレータ(16)とフォームタイ(17)等を用いて所定の間隔に維持し枠組み部材を固定した後、コンクリートを打設する方法である。
【0014】
その具体的な緊結手順としては、
1.耐圧板(コンクリート床面)面上の地墨に合わせて建物の外側部分のせき板を建て込み、発泡性断熱体をせき板に座金付きの釘で仮止めする。さらに発泡性断熱体をせき板に合わせてカットする。
2.縦横のバタ材の割付けに合わせて、せき板に取りつけた発泡性断熱体に縦横正確に墨出しをして割付け、ドリルで穴をあけて発泡性断熱体用のセパレータ及びフォームタイの仮止めをする。
3.片側のパネル取り付け後、鉄筋工事にとりかかり、セパレータに接触しないように決められたピッチで配筋の組み込みを行う。この際には、発泡性断熱体を損傷しないように十分注意する必要がある。
4.鉄筋工事の後に、他方側のせき板を建て込む。
5.縦横のバタ材を指示された間隔に配置し、セパレータ及びフォームタイで両側のせき板をしっかりと緊結する。
6.コンクリートが固まった後、両側の支保工とせき板の取り外しを行う。さらに取り外した後は、セパレータや釘がコンクリート面及び発泡性断熱体の表面から出ているので、その後処理を行う。
すなわち、コンクリート打設後は、フォームタイやボルト及びせき板を取り外し、表面を整えると共に内装壁体部材の内面に化粧板を取りつけていた。
【0015】
しかしながらこの施工方法には、以下のような問題があった。
1.発泡性断熱体をせき板に座金付きの釘で仮止めする事前の作業が必要になる。
2.発泡性断熱体をせき板に合わせてカットするため、発泡性断熱体のロスが多く発生し、材料費が大きくなる。
3.型枠の加工や、型枠の組み立ては熟練工を必要とし、近年、熟練工の老齢化が進み、その確保が難しくなっている。
4.コンクリート打設後に型枠となるせき板を取り外さなければならず、このためにボルトの取り外し作業が必要となる。
5.せき板を取り外した後に、釘穴やバリの補修作業が発生する。
6.発泡性断熱体の表面に施工される外壁は、発泡性断熱体とコンクリートの接着強度に依存して維持されることとなり、経年変化において安定性が問題となる。
7.発泡性断熱体の、特に建物の外側部分の内装壁体部材にボルトが貫通されることから断熱性低下の問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記の課題を解決すると共に、工事期間の短縮とコストの削減を可能とする発泡性断熱体の型枠部材、及びこれを用いた鉄筋コンクリート構造物の施工方法を提供する。なお、ここで鉄筋コンクリート構造物とは、建物の鉄筋コンクリート基礎及び/又は鉄筋コンクリート壁等の広い概念をさすものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一般に、型枠は、コンクリートが凝結、硬化するまでの間、一定の形状と寸法を保持し、その硬化に必要な水分を保持し、気温の影響を保護し、且つ有害な振動、課中、衝撃をコンクリートに与えない強度を持った構造としなければならないが、本発明は次のような構成をとることよりに、これらの課題を解決するものである。
【0018】
本発明は、基本的に、一方の面に発泡性断熱体を他方の面にせき板を配置し、これを本発明のセパレータで緊結して鉄筋コンクリート構造物を形成するための型枠とする。本発明の施工方法の概要を図2に示す。
【0019】
すなわち本発明は、連結されたときに鉄筋コンクリート構造物の型枠内面部を形成して型枠内に流し込まれたコンクリートが固まった後には構造物の一部としてそのまま残すこともできる発泡性断熱体(21)と、せき板(22)を、一定の間隔を保つように向い合って配置し、セパレータ(23)で緊結した後、型枠内にコンクリートを打って固化することからなる鉄筋コンクリート構造物の施工方法において、該発泡性断熱体はセパレ−タの取り付け手段を有し、該セパレータの一端は繋留部を有し、発泡性断熱体に設けられた取り付け手段に固定できるようになっており、さらにセパレータの他端はフォームタイ(25)との係合部を有することを特徴とする施工方法である。
【0020】
そして本発明において、発泡性断熱体は、セパレータを取り付けるための取り付け手段であるジョイナー(24)が埋めこまれているか、あるいはジョイナーが差し込めるようになっている。
【0021】
また、セパレータは、一端が係合できるように加工された繋留部が設けられ、発泡性断熱体に設けられた取り付け手段に挿入固定できるようになっており、セパレータの他端はフォームタイ部材と係合するためのネジ部を有し、さらに取り付け手段に挿入された際に
回転等することなく確実に固定する為に、少なくともセパレータの端面の断面形状が角部を有している施工方法である。
【0022】
本発明は、断熱性の要求される建物の外側部分に発泡性断熱体を用いることにより、発泡性断熱体を施工後、直ちにその外面の工事を可能とし、また建物の内側部分をフォームタイ等とせき板で形成することにより、建物内側においては費用の軽減と様々な装飾を可能とし、さらにこれらを施工上の自由度を増大するセパレータで緊結するものである。すなわち、型枠の一方に発泡性断熱体を使用し、他方に施工後取り外すことの容易なせき板を用いる工法とすることから、それぞれ両方の効果を合わせ持つ施工が可能となる。
【0023】
以下に本発明の施工方法に用いる各部材についてさらに詳しく説明する。
「発泡性断熱体」
本発明に用いる発泡性断熱体の具体例を図3に示す。
発泡性断熱体の材質は、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡フェノール樹脂、発泡ポリウレタン等が好ましい。大鋸屑等を固めた木質系の成形品を用いることも出来る。また、型枠の片側を発泡性断熱体とし、型枠の反対側をコンクリート成形体とすることもできる。例えば、壁の外側がコンクリート、内側を断熱材とする際にはそのような型枠が適している場合がある。
【0024】
発泡性断熱体は、縦あるいは横に繋ぎ合わせ、所定のコンクリート構造物を製造するための型枠を形成するが、それらの繋ぎ目は、コンクリートがもれないものでなければならない。従って、一般には、図3に示すように、発泡性断熱体(31)は一方の辺の端面に連続した谷状の凹部(32)を、その反対側の辺の端面に連続した峰状の凸部(33)を、相補的な形状で有しており、一般に、繋ぎ目の結合力を増す為に、連続した峰状の凸部は峰上の所々に多角柱形又は円柱形の一段高い凸部(34)を有し、それに対応して連続した谷状の凹部も谷上の所々に多角柱形又は円柱形の一段窪んだ凹部を有するのが好ましい。
【0025】
発泡性断熱体は、セパレータを取り付けるためのセパレータの取り付け手段を有する。そしてセパレータの取り付け手段は、該発泡性断熱体に形成された溝等に挿入して取り付け又は埋め込みされるジョイナーにより形成されるが、そのため発泡性断熱体には、断面T字形等の溝からなる取付け部が設けられている。ジョイナーを取り付けるための溝の形状は、T字形の他、台形等ジョイナーを固定できる様々な形状のものが適用できる。
【0026】
セパレータの取り付け手段として、発泡性断熱体に形成された溝等に挿入して取り付けられ又は埋め込まれたジョイナーが設置された発泡性断熱体の具体例を図4−1、図4−2、図4−3に示す。
【0027】
なお、これらの発泡性断熱体として、本出願人が既に出願している特開平10−37357号公報記載のものも使用することができる。
【0028】
「ジョイナー」
本発明に用いるジョイナーの具体例を図5に示す。
ジョイナーはセパレータの連結受け部として機能するが、強固に連結するために発泡性断熱体の型枠内面側に露出するように該断熱体内に取り付け又は埋め込みされる部材であって、該断熱体内部に位置するプレート部(51)と、該断熱体表面に露出するプレート部(52)と、これらのプレート部の中点を結んでいるウェッブ部(53)と、該断熱体表面に露出するプレート部の該ウェッブ部とは反対側の表面に設けられ、中心軸が垂直方向の複数の貫通穴(54)を有する部材の1以上の水準位置に設けられる突出部(55)とを含んでいる部材である。
【0029】
ジョイナーを用い、例えば、スペーサをその貫通穴(54)に差込むことによる連結、間隔維持方法によって、簡便で作業時間の短縮が可能となるのみならず、次のような利点が得られる。まず、鉄筋を型枠内に配筋するために、型枠内側から型枠を固定する場合に、しばしばセパレータ又はスペーサと鉄筋とがぶつかって鉄筋が邪魔になる場合が生じるが、2以上、好ましくは3以上の垂直の貫通穴(54)を有する複数段の突出部(55)を有するジョイナーは、この鉄筋とのぶつかりを解決する。
【0030】
突出部が3つの垂直の貫通穴を有するなら、例えば一端が曲げられているセパレータをそれらの3つの穴のどれにでも差込むことが可能である。また、複数段の突出部があることによって、鉄筋とぶつからない高さを選択することも可能である。セパレータの一端を固定保持して取り付けるためのジョイナーの貫通穴は、セパレータの断面形状に合致する形状、あるいは確実に固定できる形状となっている。
【0031】
なお、これらのジョイナーとして、本出願人が既に出願している特開平11−229540号公報記載のものも使用することができる。
【0032】
「セパレータ」
本発明に用いるセパレータの具体例を図6−1に、セパレータと取り付け部材の係合状態を示す具体例を図6−2に示す。
セパレータの材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、その他のプラスチック、又は金属などの剛性のある材質の材料である。そしてセパレータは、一端が係合できるように加工された繋留部が設けられ、発泡性断熱体に設けられた、例えば溝からなる取り付け手段に固定できるようになっている。
【0033】
そして挿入後、セパレータが回転等することなく確実に挿入固定される為に、セパレータの少なくとも端面の断面形状は、角部を有するものであって、例えば図6−2に示すように、丸形のほか三角、四角、五角、八角、星型形状等にすることもできる。さらにセパレータの繋留部を、例えばボルトの様な形状として、取り付け部材の係合部に係合する形式で固定することもできる。
【0034】
セパレータの断面形状は、端面のみが上記の形状であってもよく、あるいはセパレータ全体の断面形状が上記の形状であってもよい。すなわち機能的にセパレータをしっかりと固定できる形式のものであるならば全てのものを使用することができる。
【0035】
またセパレータの他端はフォームタイ部材と係合するためのネジ部を有する。
そして、発泡性断熱体に対するセパレータ部材の一端の取り付けは、ジョイナーの溝穴へ、セパレータの端部を挿入固定することによってなされる。
例えば、セパレータの端部がT字形の断面のときは、ジョイナーには接合端面からみてT字形の溝穴(T字の足の部分が成形体の内側表面に溝を形成する)が形成されており、そこにセパレータのT字形端部が挿入される。そしてコンクリートを流し込むときにはコンクリート型枠をなす成形体には非常に大きな圧力がかかるので、これに耐える程度のものを形成しておくことが好ましい。
【0036】
「せき板」
コンクリートに直接接触し、形状を決めるせき板は、所定の強度と、正確さを有するものならば様々なものが使用できる。例えば、加工しやすくコンクリートに対しても適度の保湿性と吸水性を有する木製せき板、取り付けが簡単で反復使用が可能な木製パネル(定尺パネル)、磨耗性や衝撃性に優れる合板せき板、鋼製せき板、プラスチック製型枠等を必要に応じて適宜使用する。
【発明の効果】
【0037】
型枠工事は、建物の完成時には全く残らない仮設物として軽視されがちであるが、建築工事全費用の15%程度、躯体工事の40%程度を占める重要なものである。さらに型枠工事の中で労務費が占める割合は70%程度である。したがってこれの合理化を図ることは、期間と費用の両方を同時に改善するための重要な要件である。このような基本的な観点の下で鋭意研究開発された本発明は、次のような作用効果を生じるものである。
【0038】
1.発泡性断熱体をせき板に仮止めする事前の作業が不要である。
2.発泡性断熱体をせき板に合わせてカットする必要がなく、発泡性断熱体のロスが発生しないので材料費が節約できる。
3.発泡性断熱体に簡単な取り付け部があることから、セパレータを取り付け部の穴に通すだけで簡単に施工が可能で、熟練工を必要としない。
4.一方の壁面においてせき板を用いずに発泡性断熱体を取り付けていることから、発泡性断熱体を取り付け作業後、直ちに発泡性断熱体外側の化粧工事が可能で、工期の半減、コスト半減が可能となる。さらに、コンクリート打設後に型枠となるせき板を取り外し作業が片面で済む。
5.せき板を取り外した後は、片面のみの釘穴やバリの補修作業でよい。
6.発泡性断熱体の表面に施工される外壁は、発泡性断熱体の取り付け部に固定され、さらに埋め殺されるセパレータにより強固に接着された、発泡性断熱体とコンクリートの接着強度に依存し維持されることから経年変化においても安定である。
7.発泡性断熱体の内装壁体部材にボルトが貫通されないことから特に建物の外側部分において断熱性低下の問題がない。
8.本発明のセパレータと、発泡性断熱体に設けられた取り付け手段としての複数の穴を有するジョイナーを用いることから、施工上の自由度が増して柔軟な対応が可能となり、様々な種類の材料や様々なタイプのせき板との組合せが容易になる。
9.軽量な発泡性断熱体を用い、簡単に取り付けられることから、施工性が向上する。
10.工事現場においてパイプやせき板の保持スペースが半減する。
11.一方に発泡性断熱体を使用し、他方に施工後取り外すことの容易なせき板を用いることから、両方の効果を合わせ持つ施工が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
〔実施例1〕 発泡性断熱体の型枠側より建て込む場合(図7参照)
1.耐圧板(コンクリート床面)面上の地墨に合わせて、発泡性断熱体の型枠を固定するためのライナー(71)(例えばコの字型)を、コンクリート釘でコンクリート面に打ちこみライナーを固定する。
2.発泡性断熱体(72)の型枠をライナーに差し込み固定する。その際に、適宜、風などにより倒れないようサポートを配することも可能である。
3.セパレータ(73)を発泡性断熱体の型枠の取り付け部(74)に差し込む。取り付け部のピッチは、設置される建造物から算出した側圧により設定する。
4.発泡性断熱体の型枠を取り付けた後、鉄筋工事にとりかかり、セパレータに接触しないように決められたピッチで配筋の組み込みを行う。
5.鉄筋工事の後に、他方側のせき板(75)に、セパレータの取り付け位置に合わせて墨出しをして割付け、ドリルで穴をあけ、せき板の穴にセパレータを通し、せき板を固定する。
6.縦横のバタ材(図示せず)を指示された間隔に配置し、セパレータをフォームタイ(76)で他方側よりしっかりと緊結する。
7.コンクリートを流し込む。その際に必要ならば、適宜、発泡性断熱体面の加工など工事を開始する。
8.コンクリートが固まった後、他方側の支保工とせき板の取り外しを行う。
【0040】
〔実施例2〕 せき板側より建て込む場合(図8参照)
1.耐圧板(コンクリート床面)面上の地墨に合わせて、せき板を建て込み、下端の桟木(81)をコンクリート釘でコンクリート面に打ちこみ固定する。
2.縦横のバタ材の割付に合わせて、せき板(82)に、縦横に発泡性断熱体のセパ掛け位置に合わせて墨出し割付けし、ドリルで穴をあけて発泡性断熱体用のセパレータ(83)及びフォームタイ(84)の仮止めをする。
3.片側のせき板取り付け後、鉄筋工事にとりかかり、セパレータに接触しないように決められたピッチで配筋の組み込みを行う。
4.鉄筋工事の後に、他方側の発泡性断熱体(85)に取り付けてある取り付け部(86)に、セパレータの一方を差し込み固定し、次の発泡性断熱体を積み重ねて、次の取り付け部に差込段積みをして建物の高さの発泡性断熱体を建て込み形成する。
5. 縦横のバタ材(図示せず)を指示された間隔に配置し、セパレータフォームタイで他方側よりしっかりと緊結する。
6. コンクリートを流し込む。その際に必要ならば、適宜、発泡性断熱体面の加工など工事を開始する。
7.コンクリートが固まった後、他方側の支保工とせき板の取り外しを行う。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来の型枠と緊結手段を用いた施工方法を示す具体例の側面図
【図2】本願発明の発泡性断熱体の型枠とセパレータ緊結手段を用いた施工方法の概念を示す具体例の側面図
【図3】相互の接続のための凹凸を有する発泡性断熱体の具体例の斜視図
【図4−1】ジョイナーが設置された発泡性断熱体の具体例の平面図
【図4−2】ジョイナーが設置された発泡性断熱体の具体例の立面図
【図4−3】ジョイナーが設置された発泡性断熱体の具体例の側面図
【図5】ジョイナーの透視図
【図6−1】セパレータの具体例の平面図
【図6−2】セパレータと取り付け部材の係合状態を示す具体例斜視図
【図7】発泡性断熱体の型枠側より建て込む場合の施工具体例の側面図
【図8】せき板側より建て込む場合の施工具体例の側面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結したときに鉄筋コンクリート型枠内面部を形成し型枠内に流し込まれたコンクリートが固まった後には鉄筋コンクリート構造物の一部としてそのまま残すこともできる発泡性断熱体と、せき板を、一定の間隔を保つように向い合って配置し、セパレータで緊結した後、型枠内にコンクリートを打って固化することからなる、鉄筋コンクリート構造物の施工方法において、
発泡性断熱体はセパレータの取り付け手段を有し、
セパレータは一端に繋留部を有し発泡性断熱体に設けられた取り付け手段に固定できるようになっており、さらにセパレータの他端はフォームタイ部材との係合部を有することを特徴とする上記の施工方法。
【請求項2】
鉄筋コンクリート構造物が、建物の鉄筋コンクリート基礎、鉄筋コンクリート壁であることを特徴とする請求項1記載の施工方法。
【請求項3】
発泡性断熱体は、セパレータを取り付けるための取り付け手段であるジョイナーが埋めこまれているか、あるいはジョイナーが差し込めるようになっていることを特徴とする請求項1記載の施工方法。
【請求項4】
セパレータは、一端に繋留部を有し発泡性断熱体に設けられた取り付け手段に固定できるようになっており、他端はフォームタイ部材と係合するためのネジ部を有し、さらに該取り付け手段に確実に固定する為に少なくともセパレータの端部断面形状は角部を有していることを特徴とする請求項1記載の施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−283433(P2006−283433A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105857(P2005−105857)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(505121028)
【Fターム(参考)】