説明

発泡樹脂成形品の成形方法及び成形装置

【課題】実質的にソリッドな加圧取付部を発泡樹脂成形品の発泡本体部から一体的に突出するように成形するに際して、相手部材への取付時の加圧力によって、発泡本体部の加圧取付部に連続する部分が発泡本体部側へ沈み込むことを防止する。
【解決手段】成形型21,25内に充填された発泡性樹脂によりワーク10の発泡本体部11を発泡成形すると共に、加圧されることにより相手部材に取り付けられるソリッドな加圧取付部13を前記発泡本体部から一体的に突出するように成形するに際して、前記成形型内に充填された発泡性樹脂内へ、該発泡性樹脂が固化する前に、前記加圧力を受けるソリッドな受圧部12を埋入することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂から成形されてなる発泡樹脂成形品の成形方法及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車用部品などの種々の工業用部品の分野においては、軽量性や断熱性などに優れた発泡樹脂成形品が幅広く採用されている。かかる発泡樹脂成形品は、使用される目的及び用途などに応じて、好適な使用材料を選定し、また、成形品内部の気泡の形態や発泡倍率などの諸条件を好適に設定して製作されている。
【0003】
このような発泡樹脂成形品の成形方法として、樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を成形型の成形キャビティ内に注入した後に、キャビティの容積を拡大させるように成形型のコア部を移動させることにより、発泡性樹脂の発泡を促進させるようにした成形方法(所謂コアバック法)は公知である。このコアバック法を用いることにより、発泡セル径のバラツキが小さい発泡樹脂成形品を得ることができることが知られている。
【0004】
例えば特許文献1には、発泡剤が含有される繊維含有溶融熱可塑性樹脂を材料に用い、この材料樹脂を金型のキャビティ内に射出した後に、金型キャビティの容積が拡大する方向に可動型を後退させることにより、繊維含有溶融熱可塑性樹脂を膨張させて成形した繊維強化軽量樹脂成形品およびその製造方法が開示されている。
【0005】
また、例えば特許文献2には、全体としては発泡体の特性を維持しながら強度が必要な特定箇所のみをソリッド化させることを企図して、発泡性樹脂を成形型のキャビティ内に注入して発泡性樹脂を発泡させた後に、キャビティの特定部分についてはその容積を縮小または消失させるように成形型のコア部を移動させることにより、強度が必要な特定箇所のみを部分的にソリッド化させるようにした成形方法が開示されている。
【0006】
ところで、発泡樹脂成形品を他の部品もしくは部材(以下、相手部材という)に取り付けて使用する場合、その取付構造として、発泡樹脂成形品にその表面から突出する所定高さの突起状の取付部(加圧取付部)を一体成形しておき、この加圧取付部を相手部材に当接させ加圧して取り付ける構造は一般に良く知られている。
【0007】
例えば、自動車等の車両用の空調装置に付設する空調ダクトには、軽量性や断熱性などに優れた発泡樹脂成形品が多用されているが、この空調ダクトを車室前端に位置するインストルメントパネルの背面を通して配設する場合、発泡樹脂成形品の空調ダクトの取付座面に該取付座面から突出する所定高さの突起状の加圧取付部を一体成形しておき、該加圧取付部をインストルメントパネルの背面に加圧当接させ、振動溶着法を適用して、当接部に加圧状態で振動を加えることにより、空調ダクトをインストルメントパネルの背面に取り付ける(溶着する)ことが考えられる。
【0008】
このようにして突起状の加圧取付部で発泡樹脂成形品を相手部材に取り付ける場合、強度が必要とされる加圧取付部自体は、一般に、発泡樹脂成形品の成形過程で成形型に接触することよる冷却効果で発泡が抑制され、非発泡状態(つまりソリッド状態)又は発泡倍率が非常に低く実質的にソリッドな状態に維持されるように、諸条件が設定される。
図7及び図8は、従来例に係る突起状の加圧取付部およびその周辺の発泡成形を模式的に示す説明図で、図7は成形キャビティ内に発泡樹脂を充填した状態を、図8は成形キャビティの容積を拡大させて材料樹脂を発泡させた状態を、それぞれ示している。
【0009】
固定型121と可動型125とで形成された成形キャビティ129内に発泡性樹脂131を充填し(図7参照)、その後、可動型125を後退させて所謂コアバックを行うことにより、成形キャビティ129が拡大されて材料樹脂131が発泡し、成形品110の本体部分111(発泡本体部)が発泡成形されるのであるが(図8参照)、この場合、突起状の加圧取付部113については、固定型121内に突出している関係上、固定型121との接触面積が非常に大きく、本来、固定型121による冷却効果が非常に高い。従って、その全体について、発泡を抑制して非発泡状態に維持するように条件設定することは比較的容易である。尚、成形型121,125に接触する発泡本体部111の表面およびその近傍部分についても、成形型121,125に熱を奪われることにより発泡が抑制され、通常、非発泡状態または発泡倍率が極めて低い状態に維持される。
【特許文献1】特開平11−156881号公報
【特許文献2】特開2002−067111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このようにして成形された発泡樹脂成形品110では、加圧取付部113自体は、前述のように発泡が抑制されて非発泡状態に維持されることで高い強度及び/又は剛性を有しているのであるが、発泡本体部111の前記加圧取付部113を支える部分112(つまり加圧取付部113に連続する部分)は発泡状態で成形されているので、加圧取付部113に比して強度及び/又は剛性がかなり低くなっている。
【0011】
この発泡樹脂成形品110を、図9に模式的に示すように、加圧取付部113の先端を樹脂製の相手部材116の表面に当接させ、振動溶着法にて相手部材116に取り付ける場合、図10に示すように、振動溶着時の加圧力によって発泡本体部111の加圧取付部113に連続する部分112が発泡本体部111側に沈み込んで取付座面(加圧取付部113を支持する支持面)も変形し、加圧取付部113が発泡本体部111内にめり込む。このため、加圧取付部113の先端と相手部材116の表面との間で必要な摩擦力が得られなくなり、溶着不良を招くという問題が生じる。尚、このような不具合を伴わない場合には、図11に示すように、発泡本体部111の加圧取付部113に連続する部分112に変形が生じることはなく、加圧取付部113の先端が相手部材116の表面に支障なく溶着される。
【0012】
この発明は、前記技術的課題に鑑みてなされたもので、実質的にソリッドな加圧取付部を発泡樹脂成形品の発泡本体部から一体的に突出するように成形するに際して、相手部材への取付時の加圧力によって、発泡本体部の加圧取付部に連続する部分が発泡本体部側へ沈み込むことを防止できるようにすることを、基本的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このため、本願の請求項1に係る発明(第1の発明)は、成形型内に充填された発泡性樹脂により発泡樹脂成形品の発泡本体部を発泡成形すると共に、加圧されることにより相手部材に取り付けられるソリッドな加圧取付部を前記発泡本体部から一体的に突出するように成形する、発泡樹脂成形品の成形方法であって、前記成形型内に充填された発泡性樹脂内へ、該発泡性樹脂が固化する前に、前記加圧力を受けるソリッドな受圧部材を埋入する、ことを特徴としたものである。
【0014】
また、本願の請求項2に係る発明(第2の発明)は、前記第1の発明において、前記受圧部材の埋入方向は前記加圧取付部への加圧力の入力方向に略沿っている、ことを特徴としたものである。
【0015】
更に、本願の請求項3に係る発明(第3の発明)は、前記第1又は第2の発明において、前記受圧部材は、前記発泡性樹脂が発泡前に固化することにより形成されたものである、ことを特徴としたものである。
【0016】
また更に、本願の請求項4に係る発明(第4の発明)は、前記第1から第3の発明の何れか一において、前記受圧部材を埋入させた状態で、当該受圧部材の先端部を前記発泡本体部から突出させる、ことを特徴としたものである。
【0017】
また更に、本願の請求項5に係る発明(第5の発明)は、前記第1から第4の発明の何れか一において、成形型の前記発泡本体部に対応する成形型部をコアバックさせることにより、発泡本体部を成形する、ことを特徴としたものである。
【0018】
また更に、本願の請求項6に係る発明(第6の発明)は、前記第5の発明において、前記発泡性樹脂は物理発泡剤を含有していることを特徴としたものである。
【0019】
また更に、本願の請求項7に係る発明(第7の発明)は、前記第6の発明において、前記物理発泡剤が超臨界状態の流体であることを特徴としたものである。
【0020】
また更に、本願の請求項8に係る発明(第8の発明)は、互いに組み合わされて成形キャビティを形成する固定型と可動型とを有する成形型と、樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を前記成形キャビティ内に注入する注入手段と、前記可動型を前記成形キャビティの容積を拡大させるように前記固定型に対して移動させる可動型駆動手段と、を備え、前記発泡性樹脂を前記成形キャビティ内に注入し、前記可動型を前記成形キャビティの容積を拡大させるように移動させることにより、成形キャビティ内に充填された発泡性樹脂によって発泡樹脂成形品の発泡本体部を発泡成形すると共に、加圧されることにより相手部材に取り付けられるソリッドな加圧取付部を前記発泡本体部から一体的に突出するように成形する、発泡樹脂成形品の成形装置であって、前記成形型内に充填された発泡性樹脂内へ、該発泡性樹脂が固化する前に、前記加圧力を受けるソリッドな受圧部材を埋入する埋入手段を更に備えている、ことを特徴としたものである。
【0021】
また更に、本願の請求項9に係る発明(第9の発明)は、前記第8の発明において、前記埋入手段は、前記加圧取付部への加圧力の入力方向に略沿って、前記受圧部材を埋入する、ことを特徴としたものである。
【0022】
また更に、本願の請求項10に係る発明(第10の発明)は、前記第8又は第9の発明において、前記受圧部材は、前記発泡性樹脂が発泡前に固化することにより形成されたものである、ことを特徴としたものである。
【0023】
また更に、本願の請求項11に係る発明(第11の発明)は、前記第8から第10の発明の何れか一において、前記受圧部材を埋入させた状態で、当該受圧部材の先端部を前記発泡本体部から突出させる突出手段を更に備えている、ことを特徴としたものである。
【0024】
また更に、本願の請求項12に係る発明(第12の発明)は、前記第8から第11の発明の何れか一において、成形型の前記発泡本体部に対応する成形型部をコアバックさせることにより、発泡本体部を成形する、ことを特徴としたものである。
【0025】
また更に、本願の請求項13に係る発明(第13の発明)は、前記第第12の発明において、前記注入手段は物理発泡剤を含有する発泡性樹脂を注入することを特徴としたものである。
【0026】
また更に、本願の請求項14に係る発明(第14の発明)は、前記第13の発明において、前記注入手段は、前記物理発泡剤として超臨界状態の流体を含有する発泡性樹脂を注入する、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0027】
本願の第1の発明によれば、成形型内に充填された発泡性樹脂内へ、該発泡性樹脂が固化する前に、前記加圧力を受けるソリッドな受圧部材を埋入するようにしたことにより、相手部材への取付時に加圧取付部に作用する加圧力を、前記ソリッドな受圧部材によって受けさせることができる。これにより、相手部材への取付時の加圧力に起因して、発泡本体部の加圧取付部に連続する部分が発泡本体部側へ沈み込むことを抑制し、取付不良を招くことを防止できる。
【0028】
また、本願の第2の発明によれば、前記受圧部材の埋入方向は加圧取付部への加圧力の入力方向に略沿っているので、相手部材への取付時に加圧取付部に作用する加圧力は前記受圧部材によって確実に受けられ、前記第1の発明の作用効果をより確実に得ることができる。
【0029】
更に、本願の第3の発明によれば、前記受圧部材は発泡性樹脂が発泡前に固化することにより形成されたものであるので、受圧部材を別途に用意して発泡性樹脂内へ埋入させる必要はなく、より簡単な構成で前記第1又は第2の発明の作用効果を得ることができる。
【0030】
また更に、本願の第4の発明によれば、基本的には前記第1から第3の発明の何れかと同様の作用効果を奏することができる。特に、受圧部材を埋入させた状態で当該受圧部材の先端部を前記発泡本体部から突出させることにより、受圧部材の突出した先端部で加圧取付部を構成することができ、より一層簡単な構成で前記第1から第3の発明の何れかの作用効果を得ることができる。
【0031】
また更に、本願の第5の発明によれば、基本的には前記第1から第4の発明の何れかと同様の作用効果を奏することができる。特に、成形型の発泡本体部に対応する成形型部をコアバックさせて前記発泡本体部を成形することにより、発泡セル径のバラツキが小さい発泡本体部の成形を行うことができる。
【0032】
また更に、本願の第6の発明によれば、前記発泡性樹脂に物理発泡剤が含有されていることにより、前記第5の発明の作用効果をより確実に奏することができる。
【0033】
また更に、本願の第7の発明によれば、前記物理発泡剤が超臨界状態の流体であることにより、前記6の発明の作用効果を更に助長することができる。物理発泡剤として超臨界状態の流体を用いることで、より微細な発泡セルを有する発泡樹脂成形品を成形することができ、発泡樹脂成形品の全体的な物性をさらに向上させることができる。
【0034】
また更に、本願の第8の発明によれば、成形型内に充填された発泡性樹脂内へ、該発泡性樹脂が固化する前に、前記加圧力を受けるソリッドな受圧部材を埋入することができ、相手部材への取付時に加圧取付部に作用する加圧力を、前記ソリッドな受圧部材によって受けさせることができる。これにより、相手部材への取付時の加圧力に起因して、発泡本体部の加圧取付部に連続する部分が発泡本体部側へ沈み込むことを抑制し、取付不良を招くことを防止できる。
【0035】
また、本願の第9の発明によれば、前記受圧部材の埋入方向は加圧取付部への加圧力の入力方向に略沿っているので、相手部材への取付時に加圧取付部に作用する加圧力は前記受圧部材によって確実に受けられ、前記第1の発明の作用効果をより確実に得ることができる。
【0036】
更に、本願の第10の発明によれば、前記受圧部材は発泡性樹脂が発泡前に固化することにより形成されたものであるので、受圧部材を別途に用意して発泡性樹脂内へ埋入させる必要はなく、より簡単な構成で前記第8又は第9の発明の作用効果を得ることができる。
【0037】
また更に、本願の第11の発明によれば、基本的には前記第8から第10の発明の何れかと同様の作用効果を奏することができる。特に、受圧部材を埋入させた状態で当該受圧部材の先端部を前記発泡本体部から突出させることにより、受圧部材の突出した先端部で加圧取付部を構成することができ、より一層簡単な構成で前記第1から第3の発明の何れかの作用効果を得ることができる。
【0038】
また更に、本願の第12の発明によれば、基本的には前記第8から第11の発明の何れかと同様の作用効果を奏することができる。特に、発泡本体部に対応する可動型をコアバックさせて前記発泡本体部を成形することにより、発泡セル径のバラツキが小さい発泡本体部の成形を行うことができる。
【0039】
また更に、本願の第13の発明によれば、注入手段で物理発泡剤が含有されている発泡性樹脂を注入することにより、前記第12の発明の作用効果をより確実に奏することができる。
【0040】
また更に、本願の第14の発明によれば、注入手段で物理発泡剤として超臨界状態の流体を含有する発泡性樹脂を注入することにより、前記13の発明の作用効果を助長することができる。物理発泡剤として超臨界状態の流体を用いることで、より微細な発泡セルを有する発泡樹脂成形品を成形することができ、発泡樹脂成形品の全体的な物性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。本実施形態は、例えば、自動車等の車両用の空調装置に付設する空調ダクトを発泡樹脂成形品で形成し、この空調ダクトを車室前端に位置するインストルメントパネルの背面に取り付けることを想定した場合についてのものである。
【0042】
図1は、本実施形態に係る発泡樹脂成形品としての前記空調ダクトの断面構造を示す断面説明図である。
この図に示すように、前記空調ダクト1は、所定厚さを有する略半円状の断面を備えたダクト本体部2と、該ダクト本体部2の上下の端末部に形成された所定厚さの取付フランジ部3とを備え、各取付フランジ部3には、所定高さの突起状の取付部4(加圧取付部)が一体的に設けられている。
【0043】
本実施形態では、この空調ダクト全体が、一体の発泡樹脂成形品1として成形されており、取付フランジ部3に一体成形された加圧取付部4をインストルメントパネル6の背面に加圧当接させ、振動溶着法を適用して、その当接部に加圧状態で振動を加えることにより、空調ダクト1がインストルメントパネル6の背面に溶着され、両者1,6間に通風路9が形成されるようになっている。このように空調ダクト1を発泡樹脂成形品としたことにより、軽量で断熱性に優れた空調ダクト1が得られる。
【0044】
次に、前記空調ダクトの成形に用いた発泡樹脂成形法について説明する。この説明では、発泡樹脂成形品として、所定厚さの略板状の本体部に加圧取付部が一体成形されたワークが、簡略化されたモデルとして用いられている。すなわち、このワークは、所定厚さを有する略板状の本体部(発泡本体部)と、該発泡本体部から突出する所定高さの突起状の取付部(加圧取付部)とを一体成形して構成されている。
【0045】
図2は、前記発泡樹脂成形品(ワーク)を発泡樹脂成形するための成形装置を模式的に示す断面図である。この図に示すように、成形装置Mは、開閉可能な成形型20と、成形型20内の成形キャビティ29に発泡性樹脂を注入する注入手段としての射出装置30とを備えている。尚、具体的には図示しなかったが、成形装置Mには、成形型20を冷却するための冷却装置も付設されている。
【0046】
前記成形型20は、常時静止状態に維持される固定型21と、該固定型21に対して成形型の開閉方向に移動可能に設けられた可動型25とで構成され、両者21,25を互いに組み合わせることで、ワーク形状に対応した成形キャビティ29が形成されている。前記可動型25は、図示しない可動型駆動機構に連結されており、該可動型駆動機構によって成形型20の開閉方向(図2の矢印Ya,Yb方向)に移動することができるようになっている。
【0047】
固定型21の型合わせ面の中央部分には所定高さの柱状の凸状部22が形成される一方、可動型25の型合わせ面の中央部分には、固定型21の凸状部22と組み合わされる凹状部26が形成されている。固定型21と可動型25とを組み合わせることにより、固定型21の凸状部22の外周面22sの外側に、可動型25の凹状部26の内周面26sが成形型20の開閉方向(図2の矢印Ya,Yb方向)へ摺動可能に嵌合している。この嵌合状態で、固定型21の凸状部22の型面22fと、可動型25の凹状部26の型面26f及び内側面26sとで、成形キャビティ29が形成されている。また、ワーク(発泡樹脂成形品)の加圧取付部に対応する部位には、固定型21の凸状部22には、型面22fから掘られた一対の溝部22gが設けられている。
【0048】
固定型21の凸状部22の外周面22sと可動型25の凹状部26の内周面26sとの隙間(クリアランス)は、可動型25が固定型21に対して前記開閉方向(図2の矢印Ya,Yb方向)へスムースに摺動でき、且つ、成形キャビティ29を形成した状態で、キャビティ29の内部に充填された発泡性樹脂が外部に漏洩することがないようにシール性を維持できる範囲内に設定されている。
【0049】
また、固定型21と可動型25とで成形キャビティ29を形成した状態で、前記可動型駆動機構(不図示)によって、可動型25を成形型20の型開き方向(図2,図3の矢印Ya方向)へ所定量だけ移動させることにより、成形キャビティ29の容積を拡大させることができる。成形キャビティ29内に発泡性樹脂を注入した後に可動型25を型開き方向へ所定量だけ移動させて成形キャビティ29の容積を拡大させることにより、キャビティ29内の発泡性樹脂の発泡を促進する、所謂、コアバックを行うことができる。このコアバックでの可動型25の移動量は、可動型25の凹状部26の内周面26sが固定型21の凸状部22の外周面22sから離脱しない範囲で設定される。尚、かかるコアバック法は、従来公知の手法と基本的には同じものである。
【0050】
本実施形態では、固定型21の型面22fから掘られた一対の溝部22gに対応する箇所に、後述するスライドピンP1をそれぞれ挿通させる一対のガイド孔23が設けられている。該ガイド孔23の一端は前記溝部22gの先端に連通し、他端は固定型21の背面に開口している。各ガイド孔23は、溝部22gの堀り込み方向(つまり、加圧取付部のワーク本体部からの突出方向)に実質的に沿った方向に伸長している。
【0051】
前記スライドピンP1は、より好ましくは、溝部22gの幅と略同一か若しくは若干小さい断面寸法を有しており、固定型21の背面側からガイド孔23内に挿入され、該ガイド孔23の中心線に沿ってスライド可能(図2における往復矢印ab参照)にガイド孔23内に保持されている。このスライドピンP1は、溝部22gの成形キャビティ29に沿った伸長方向(図2の紙面方向)に沿って複数箇所に設けられている。
【0052】
尚、具体的には図示しなかったが、固定型21には、該固定型21を冷却して前記型面22f等の所要部分を所要温度に保つために、冷却水通路が設けられている。また、可動型25にも、該可動型25を冷却して前記型面26f等の所要部分を所要温度に保つために、冷却水通路が設けられている。これら冷却水通路の構成および作用は、従来公知のものと同様のものである。
【0053】
前記射出装置30は、樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を成形型20の成形キャビティ29内に注入するもので、例えば樹脂ペレットとして供給される材料樹脂32を混錬溶融させるシリンダ33を備えている。該シリンダ33の内部には、回転スクリュー34が配設され、このスクリュー34の後端には、具体的には図示しなかったが、スクリュー34を回転駆動する回転駆動機構、及びスクリュー34を前進動させて溶融樹脂を成形キャビティ29に向けて射出する射出機構が連結されている。射出装置30では、シリンダ33内に投入された材料樹脂32が、シリンダ33の周囲に設けられた加熱ヒータ(不図示)によって順次加熱されると共に、スクリュー34によって混錬される。
【0054】
前記射出装置30には、二酸化炭素又は窒素等の不活性ガスを貯留したボンベ35,前記不活性ガスを超臨界状態にする超臨界流体発生装置36、及び超臨界状態にされた不活性ガスをシリンダ33内に注入する超臨界流体注入装置37が付設されている。そして、ボンベ35から供給され超臨界流体発生装置36によって超臨界状態にされた不活性ガスが、超臨界流体注入装置37によって、シリンダ33内で混錬溶融された樹脂32に注入され、樹脂32に発泡剤を含有させた発泡性樹脂31が形成されるようになっている。
【0055】
シリンダ33内の発泡性樹脂31は、スクリュー34が前記回転駆動機構によって回転されるとともに前記射出機構によって前進動させられることにより、成形型20の成形キャビティ29内に注入される。成形型20には、具体的には固定型21には、発泡性樹脂31を成形キャビティ29に向かって注入するための樹脂通路24が設けられている。
【0056】
前記材料樹脂32としては、例えば、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。また、本実施形態では、前記発泡性樹脂31に含有される発泡剤に、物理発泡剤として超臨界状態にある流体を用いているが、その他の物理発泡剤を用いてもよい。或いは、化学発泡剤を使用することもできる。
【0057】
尚、物理発泡剤を樹脂に含有させた場合には、化学発泡剤を用いた場合に比して、一般に、発泡圧が高くなり発泡し易くなることが知られている。また、物理発泡剤として超臨界状態の流体を用いることで、より微細な発泡セルを有する発泡樹脂成形品を成形することができ、発泡樹脂成形品の全体的な物性をさらに向上させることができる。
【0058】
また、具体的には図示しなかったが、成形装置Mは、該成形装置Mを総合的に制御する制御ユニットを備えている。該制御ユニットは、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成されており、成形型20の作動制御,射出装置30の作動制御,冷却装置(不図示)の作動制御等の各種制御を行う。
【0059】
次に、成形装置Mを用いた発泡樹脂成形品(ワーク)の成形について説明する。
図3(a)〜図3(c)は、図2の要部を拡大して示す拡大断面図で、前記ワークの発泡樹脂成形工程を説明するための一連の工程説明図である。図3(a)は発泡性樹脂の充填状態を示し、図3(b)はコアバックによる発泡状態を示し、また、図3(c)はコアバック後におけるスライドピンの作動を示している。
前述のように、発泡樹脂成形品10(ワーク)は、所定厚さを有する略板状の本体部11(発泡本体部)と、該発泡本体部11から突出する所定高さH2(図3(c)参照)の突起状の取付部13(加圧取付部)とを一体成形して構成されている。
【0060】
先ず、可動型25が固定型22と組み合わされ、固定型21の凸状部22の外側部分に可動型25の凹状部26の外側部分にほぼ当接した状態で、成形キャビティ29内に、樹脂32に発泡剤として超臨界状態の流体を含有させた発泡性樹脂31が射出装置30から注入される。
【0061】
本実施形態では、前記固定型21の突状部22に設けられた溝部22gの深さは、最終完成状態におけるワーク10の加圧取付部13の高さH2(図3(c)参照)に相当する深さよりも所定量T(最終完成状態の発泡本体部11の厚さ)だけ深く設定されている。従って、図3(a)に示す発泡性樹脂の充填状態では、溝部22gにより成形される突出部14の高さH1は、最終完成状態の加圧取付部13の高さH2よりも、最終完成状態の発泡本体部11の厚さTだけ長くなっている。
【0062】
この場合、突出部14については、固定型21の凸状部22内に突出しているので、固定型21との接触面積が非常に大きい。従って、固定型21の対応する型部22aによる冷却効果が高く、後続する工程でコアバックを行っても、発泡が抑制されて非発泡状態(ソリッド状態)または発泡倍率が極めて低く実質的にソリッドな状態に保たれ、突出部14の強度及び/又は剛性が高められる。
尚、コアバック工程に先立って成形装置Mの冷却装置(不図示)を作動させて固定型21を効果的に冷却することにより、前記突出部14をより確実にソリッド化することができる。
【0063】
その後、図3(b)に示されるように、可動型25を所定量だけ後退させてコアバックを行うことにより、成形キャビティ29が拡大されて発泡樹脂31が発泡し、ワーク10の本体部分11(発泡本体部)が発泡成形される。この結果、本体部分11は、板厚Tに成形される。
このように発泡本体部11の成形にコアバック法を適用したことにより、発泡セル径のバラツキが小さい発泡本体部11の成形を行うことができる。
【0064】
また、本実施例では、化学発泡剤を用いた場合に比して、一般に、発泡圧が高くなり発泡し易くなる物理発泡剤を樹脂に含有させたが、かかる物理発泡剤を適用した場合でも、突出部14について、効果的に発泡を抑制することができた。しかも、比較的に簡単な手段によって突出部14の成形をより確実に行うことができ、特に、物理発泡剤として超臨界状態の流体を用いたことで、より微細な発泡セルを有する発泡樹脂成形品10(ワーク)を成形し、ワーク10の全体的な物性をさらに向上させることができた。
【0065】
前記コアバック工程を終えた後、成形キャビティ29内に充填され発泡本体部11を構成する発泡性樹脂31が固化する前に、図3(c)に示されるように、スライドピンP1をワーク10側へ(図3(c)における矢印a方向へ)スライド駆動し、ソリッドな突出部14の端末(発泡本体部11側の端部)が可動型25の型面26fに当て止められるまで前進させる。
【0066】
これにより、ソリッドな突出部14の一部(長さTの部分12)が発泡本体部11内に埋入され、突出部14の残存した部分(高さH2の部分)が加圧取付部13を構成する。突出部14の発泡本体部11内に埋入された部分12は、発泡本体部11を構成する発泡性樹脂31が十分に固化すると、ワーク10を相手部材に取り付ける際に、加圧取付部13に作用する加圧力を受け止めることができる。すなわち、相手部材への取付時に加圧取付部13に作用する加圧力を受けるソリッドな受圧部12を構成する。この受圧部12の埋入方向(図3(c)における矢印a方向)は、加圧取付部13への加圧力の入力方向に略沿っている。
【0067】
そして、成形キャビティ29内に充填され発泡本体部11を構成する発泡性樹脂31が固化した後、可動型25が更に型開き方向(図2の矢印Ya方向)へ移動させられて型開きが行われ、発泡樹脂成形されたワーク10が取り出される。このとき、スライドピンP1をワーク10側へ(図3(c)における矢印a方向へ)スライド駆動して前進させることにより、固定型21側に保持された最終完成状態のワーク10をエジェクトすることができる。つまり、前記スライドピンP1をワーク10の取り出しのためのエジェクタピンとして、兼用させることもできる。以上で1サイクルの成形工程が終了する。
【0068】
以上、説明したように、本実施形態によれば、成形キャビティ29内に充填され発泡本体部11を構成する発泡性樹脂31が固化する前に、加圧取付部13への加圧力を受けるソリッドな受圧部12を埋入するようにしたことにより、相手部材への取付時に加圧取付部13に作用する加圧力を、前記ソリッドな受圧部12によって受けさせることができる。これにより、相手部材への取付時の加圧力に起因して、発泡本体部11の加圧取付部13に連続する部分が発泡本体部11側へ沈み込むことを抑制し、取付不良を招くことを有効に防止できるのである。
【0069】
この場合において、受圧部12の埋入方向は(図3(c)における矢印a方向)加圧取付部13への加圧力の入力方向に略沿っているので、相手部材への取付時に加圧取付部13に作用する加圧力は前記受圧部12によって確実に受けられ、前記の作用効果をより確実に得ることができる。
【0070】
更に、前記受圧部12は発泡性樹脂31が発泡前に固化することにより形成されたものであるので、受圧部材を別途に用意して発泡性樹脂31内へ埋入させる必要はなく、より簡単な構成で前記の作用効果を得ることができる。
【0071】
特に、この場合、受圧部12は、前記突出部14の一部として加圧取付部13と一体に成形されているので、前述の作用効果をより一層確実に得ることができる。
しかも、受圧部12を埋入させた状態で当該受圧部12を含む突出部14の先端部を前記発泡本体部11から突出させることにより、この突出した先端部で加圧取付部13を構成することができ、より一層簡単な構成で前述の作用効果を得ることができる。この場合には、受圧部12と加圧取付部13とを一体成形して成る前記突出部14が、本願請求項に記載した「受圧部材」に相当することになる。
【0072】
このように成形されたワーク10は、振動溶着法を適用して合成樹脂製の所定の相手部材に取り付けられる。
図6は、このワーク10の相手部材への振動溶着工程を模式的に示す断面図である。この図に示されるように、振動溶着装置70は、接離可能に設けられた一対の金型(例えば、上型71,下型75)を備えており、下型71に合成樹脂製の相手部材16が保持される。一方、上型71には、ワークホルダ72(保持具)を介して、前記ワーク10が加圧取付部13を下方に向けて保持される。
【0073】
下型75は、付設された駆動装置(不図示)により上型71に対して進退動可能で、上型71側に前進することで、ワーク10の加圧取付部13と相手部材16とを当接させ、加圧状態に維持することができる。上型71は、付設された加振装置(不図示)例えば上下左右および斜め方向に所定の振幅および振動数で加振することができる。
そして、図6に示したようにワーク10と相手部材16をそれぞれ上型71と下型75にセットした状態で、下型75を前進させて、ワーク10の加圧取付部13と相手部材16とを当接させ加圧状態とし、その状態で上型71を加振することにより、ワーク10が加圧取付部13で相手部材16に溶着される。
【0074】
本実施形態では、例えば、次の条件で振動溶着を行った。
・加圧力:1〜4MPa
・振動数:100〜250Hz
・振幅 :0.5〜3.0mm
・加振方向:上下,左右,斜め
・加振時間:数秒間
【0075】
以上の条件で振動溶着を行った結果、加圧取付部13の先端面の沈み量は、1〜2mmであり、前記図11に模式的に示すように、発泡本体部11の加圧取付部13に連続する部分に変形が生じることはなく、加圧取付部13の先端を相手部材16の表面に支障なく溶着させることができた。
【0076】
次に、本発明の他の実施形態について、図4(a)〜図4(c)及び図5(a)〜図5(e)を参照しながら説明する。図4(a)〜図4(c)は、本発明の他の実施形態に係るワークの発泡樹脂成形工程を説明するための一連の工程説明図であり、前述の実施形態における図3(a)〜図3(c)に対応する図である。また、図5(a)〜図5(e)は、本発明の他の実施形態に係るスライドピンの種々の形状を示す説明図である。
尚、以下の説明において、前述の図2及び図3で示した実施形態における場合と、実質的に同様の構成を備え実質的に同様の作用をなすものについては、同一の符号を付し、それ以上の説明は省略する。
【0077】
前述の図2及び図3で示した実施形態では、受圧部12は突出部14の一部として加圧取付部13と一体に成形され、固定型21に設けたスライドピンP1を用いて突出部14を発泡本体部11側に移動させることにより、受圧部12を発泡性樹脂31内に埋入するようにしていたが、他の実施形態では、図4(a)〜図4(c)に示すように、受圧部はワーク40の発泡本体部41を挟んで加圧本体部43と対向する部位に成形され、可動型55に設けたスライドピンP2を用いて受圧部42を発泡性樹脂31内に埋入するようにしている。
【0078】
固定型51には、ワーク40の加圧取付部43に対応して、型面52fから所定深さH2の溝部52gが設けられている。一方、可動型55には、成形キャビティ59を挟んで前記溝部52gに対向する部位に、受圧部42に対応して、型面56fから所定深さH3の背面溝部56gが設けられている。この背面溝部56gの深さH3は、発泡成形時の発泡本体部41の板厚Tに等しい寸法に設定されている(H3=T)。
【0079】
前記スライドピンP2は、可動型55に設けたガイド孔58内でその中心線に沿ってスライド可能に保持されており、該ガイド孔58の一端は前記背面溝部56gの先端に連通し、他端は可動型55の背面に開口している。各ガイド孔58は、溝部52g及び背面溝部56gの堀り込み方向(つまり、加圧取付部43のワーク本体部41からの突出方向)に実質的に沿った方向に伸長している。尚、前記スライドピンP2は、背面溝部56gの成形キャビティ59に沿った伸長方向(図4(a)〜図4(c)の紙面方向)に沿って複数箇所に設けられている。
【0080】
ワーク40を発泡成形する際には、先ず、図4(a)に示されるように、可動型55が固定型52と組み合わせて形成された成形キャビティ59内に、発泡性樹脂31が射出装置30から注入される。
この場合、加圧取付部43,受圧部42については、固定型51,可動型55との接触面積が非常に大きく、これら金型51,55による冷却効果が高いので、後続する工程でコアバックを行っても、発泡が抑制されて非発泡状態(ソリッド状態)または発泡倍率が極めて低く実質的にソリッドな状態に保たれ、加圧取付部43,受圧部42の強度及び/又は剛性がそれぞれ高められる。
【0081】
その後、図4(b)に示されるように、可動型55を所定量だけ後退させてコアバックを行うことにより、成形キャビティ59が拡大されて発泡樹脂31が発泡し、ワーク40の本体部分41(発泡本体部)が発泡成形される。この結果、本体部分41は、板厚Tに成形される。
【0082】
前記コアバック工程を終えた後、成形キャビティ59内に充填され発泡本体部41を構成する発泡性樹脂31が固化する前に、図4(c)に示されるように、スライドピンP2をワーク40側へ(図4(c)における矢印b方向へ)スライド駆動し、ソリッドな受圧部42の端末(発泡本体部41側の端部)が加圧取付部43に当て止められるまで前進させる。
【0083】
これにより、ソリッドな受圧部42が発泡本体部41内に埋入される。この受圧部42は、発泡本体部41を構成する発泡性樹脂31が十分に固化すると、ワーク40を相手部材に取り付ける際に、加圧取付部43に作用する加圧力を受け止めることができる。この受圧部42の埋入方向(図4(c)における矢印b方向)は、加圧取付部43への加圧力の入力方向に略沿っている。
【0084】
そして、成形キャビティ59内に充填され発泡本体部41を構成する発泡性樹脂31が固化した後、可動型55が更に型開き方向へ移動させられて型開きが行われ、発泡樹脂成形されたワーク40が取り出される。以上で1サイクルの成形工程が終了する。
【0085】
以上、説明したように、この他の実施形態においても、成形キャビティ59内に充填され発泡本体部41を構成する発泡性樹脂31が固化する前に、加圧取付部43への加圧力を受けるソリッドな受圧部42を埋入するようにしたことにより、相手部材への取付時に加圧取付部43に作用する加圧力を、前記ソリッドな受圧部42によって受けさせることができる。これにより、相手部材への取付時の加圧力に起因して、発泡本体部41の加圧取付部43に連続する部分が発泡本体部41側へ沈み込むことを抑制し、取付不良を招くことを有効に防止できるのである。
【0086】
前記受圧部42の断面または端面形状としては種々の形態が適用可能である。図5(a)〜図5(e)は、本発明の他の実施形態に係る受圧部の種々の形態を示す説明図で、図4(b)のY5−Y5線に沿った受圧部の端面図である。
例えば、図5(a)に端面形状を示す受圧部42Aのように、加圧取付部43の幅Dと実質的に同一寸法の直径を有する円形であっても良いし、或いは、図5(b)に示す受圧部42Bのように、短辺の長さが加圧取付部43の幅Dと実質的に同一寸法で、長辺が加圧取付部43に沿った矩形であっても良い。
【0087】
更には、図5(c)に示す受圧部42Cのように、加圧取付部43の幅Dよりも大きい直径を有する円形であっても良いし、図5(d)に示す受圧部42Dのように、加圧取付部43の幅Dよりも大きい直径を有する円形の端面と、それよりも大径部分とで二段に構成されても良い。また更に、図5(e)に示す受圧部42Eのように、長辺が加圧取付部43に直交する矩形であっても良い。
加圧取付部43の幅Dよりも大きい端面サイズを有する受圧部42C,42D,42Eを埋め込むことにより、相手部材への取付時に加圧取付部43に作用する加圧力を受ける受圧部として、より大きな加圧力を受けることができる。
【0088】
以上の実施形態は、車両用の空調ダクト及びこれを簡略化したモデルの成形を例にとったものであったが、本発明は、成形型内に充填された発泡性樹脂により発泡樹脂成形品の発泡本体部を発泡成形すると共に、加圧されることにより相手部材に取り付けられる発泡抑制樹脂部から成る加圧取付部を前記発泡本体部から一体的に突出するように成形する、種々の他の発泡樹脂成形品を成形する場合にも適用することができる。
このように、本発明は、例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂から成形されてなる発泡樹脂成形品の成形方法及び成形装置に関し、例えば、車両用の空調ダクトなど、軽量性や断熱性などに優れた発泡樹脂成形品を成形する場合に、好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施形態に係る発泡樹脂成形品としての空調ダクトの断面構造を示す断面説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るワークを発泡樹脂成形するための成形装置を模式的に示す断面図である。
【図3】図3(a)〜図3(c)は、図2の要部を拡大して示す拡大断面図で、前記ワークの発泡樹脂成形工程を説明するための一連の工程説明図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、本発明の他の実施形態に係るワークの発泡樹脂成形工程を説明するための一連の工程説明図である。
【図5】図5(a)〜図5(e)は、本発明の他の実施形態に係る受圧部の種々の形状を示す説明図で、図4(b)のY5−Y5線に沿った受圧部の端面図である。
【図6】前記ワークの相手部材への振動溶着工程を模式的に示す断面図である。
【図7】従来例に係る加圧取付部およびその周辺の発泡成形を説明するために、成形キャビティ内に発泡樹脂を充填した状態を模式的に示す説明図である。
【図8】従来例に係る加圧取付部およびその周辺の発泡成形を説明するために、成形キャビティの容積を拡大させて材料樹脂を発泡させた状態を模式的に示す説明図である。
【図9】従来例に係る加圧取付部を備えた発泡樹脂成形品と相手部材とを模式的に示す説明図である。
【図10】従来例に係る加圧取付部を備えた発泡樹脂成形品と相手部材との振動溶着を説明するための模式的な説明図である。
【図11】加圧取付部を備えた発泡樹脂成形品と相手部材との良好な振動溶着を説明するための模式的な説明図である。
【符号の説明】
【0091】
1 空調ダクト
2 ダクト本体部
3 取付フランジ部
4,13 加圧取付部
6 インストルメントパネル
10,40 ワーク
11,41 発泡本体部
12,42,42A〜42E 受圧部
13,43 加圧取付部
14 突出部
16 相手部材
20 成形型
21,51 固定型
22 凸状部
22g,52g (固定型の)溝部
25,55 可動型
29,59 成形キャビティ
30 射出装置
31 発泡性樹脂
32 (材料)樹脂
35 ボンベ
36 超臨界流体発生装置
37 超臨界流体注入装置
56g (可動型の)背面溝部
D 加圧取付部の幅
M 成形装置
P1,P2 スライドピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型内に充填された発泡性樹脂により発泡樹脂成形品の発泡本体部を発泡成形すると共に、加圧されることにより相手部材に取り付けられるソリッドな加圧取付部を前記発泡本体部から一体的に突出するように成形する、発泡樹脂成形品の成形方法であって、
前記成形型内に充填された発泡性樹脂内へ、該発泡性樹脂が固化する前に、前記加圧力を受けるソリッドな受圧部材を埋入する、ことを特徴とする発泡樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記受圧部材の埋入方向は前記加圧取付部への加圧力の入力方向に略沿っている、ことを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
前記受圧部材は、前記発泡性樹脂が発泡前に固化することにより形成されたものである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
前記受圧部材を埋入させた状態で、当該受圧部材の先端部を前記発泡本体部から突出させる、ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の発泡樹脂成形品の成形方法。
【請求項5】
前記成形型の前記発泡本体部に対応する成形型部をコアバックさせることにより、前記発泡本体部を成形する、ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の発泡樹脂成形品の成形方法。
【請求項6】
前記発泡性樹脂は物理発泡剤を含有している、ことを特徴とする請求項5に記載の発泡樹脂成形品の成形方法。
【請求項7】
前記物理発泡剤が超臨界状態の流体である、ことを特徴とする請求項6に記載の発泡樹脂成形品の成形方法。
【請求項8】
互いに組み合わされて成形キャビティを形成する固定型と可動型とを有する成形型と、樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を前記成形キャビティ内に注入する注入手段と、前記可動型を前記成形キャビティの容積を拡大させるように前記固定型に対して移動させる可動型駆動手段と、を備え、
前記発泡性樹脂を前記成形キャビティ内に注入し、前記可動型を前記成形キャビティの容積を拡大させるように移動させることにより、成形キャビティ内に充填された発泡性樹脂によって発泡樹脂成形品の発泡本体部を発泡成形すると共に、加圧されることにより相手部材に取り付けられるソリッドな加圧取付部を前記発泡本体部から一体的に突出するように成形する、発泡樹脂成形品の成形装置であって、
前記成形型内に充填された発泡性樹脂内へ、該発泡性樹脂が固化する前に、前記加圧力を受けるソリッドな受圧部材を埋入する埋入手段を更に備えている、ことを特徴とする発泡樹脂成形品の成形装置。
【請求項9】
前記埋入手段は、前記加圧取付部への加圧力の入力方向に略沿って、前記受圧部材を埋入する、ことを特徴とする請求項8に記載の発泡樹脂成形品の成形装置。
【請求項10】
前記受圧部材は、前記発泡性樹脂が発泡前に固化することにより形成されたものである、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の発泡樹脂成形品の成形装置。
【請求項11】
前記受圧部材を埋入させた状態で、当該受圧部材の先端部を前記発泡本体部から突出させる突出手段を更に備えている、ことを特徴とする請求項8から10の何れかに記載の発泡樹脂成形品の成形装置。
【請求項12】
前記可動型駆動手段で前記発泡本体部に対応する可動型をコアバックさせることにより、前記発泡本体部を成形する、ことを特徴とする請求項8から11の何れかに記載の発泡樹脂成形品の成形装置。
【請求項13】
前記注入手段は物理発泡剤を含有する発泡性樹脂を注入する、ことを特徴とする請求項12に記載の発泡樹脂成形品の成形装置。
【請求項14】
前記注入手段は、前記物理発泡剤として超臨界状態の流体を含有する発泡性樹脂を注入する、ことを特徴とする請求項13に記載の発泡樹脂成形品の成形装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−166314(P2009−166314A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5619(P2008−5619)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】