発泡樹脂成形用金型、発泡樹脂成形品の製造方法及び発泡樹脂成形品
【課題】部分的なコアバックによって発泡樹脂成形を行うに当たり、
外観や部品精度が低下することを抑制し、またコアバックしない部分を型から取り出した際に膨れが生じることを抑制することが可能となる発泡樹脂成形用金型等を提供する。
【解決手段】型内での発泡を促進するコアバック成形に用いる発泡樹脂成形用金型であって、
前記発泡樹脂成形用金型が、少なくとも、コアが移動しない不動コアとコアバック作動する可動コアとで構成され、
前記不動コアと前記可動コアとの境界に、該不動コア側から該可動コア側へ向かって前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域による容積変化形状部が形成されている。
外観や部品精度が低下することを抑制し、またコアバックしない部分を型から取り出した際に膨れが生じることを抑制することが可能となる発泡樹脂成形用金型等を提供する。
【解決手段】型内での発泡を促進するコアバック成形に用いる発泡樹脂成形用金型であって、
前記発泡樹脂成形用金型が、少なくとも、コアが移動しない不動コアとコアバック作動する可動コアとで構成され、
前記不動コアと前記可動コアとの境界に、該不動コア側から該可動コア側へ向かって前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域による容積変化形状部が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂成形用金型、発泡樹脂成形品の製造方法及び発泡樹脂成形品に関し、特にコアバックによる発泡樹脂成形用金型、発泡樹脂成形品の製造方法及び発泡樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡性樹脂を製造する際、ブタンガス、メタンガス、水、窒素、炭酸ガスなどの発泡剤を樹脂中に浸透もしくは機械的に溶融混漣又は化学反応を誘発することによってこれらを製造している。
そして、発泡樹脂成形品を製造する際には、製造された発泡性樹脂を、射出成形機や押し出し成形機などで金型内に射出もしくは押し出し成形によって、所望の形状と発泡倍率を持つ発泡樹脂成形品が製造される。
また、近年では、発泡樹脂成形品の製造方法として、樹脂材料中に高圧高温度下で超臨界状態の窒素又は炭酸ガスを浸透させ、圧力と温度を調整し、ミクロンサイズの小さな発泡径を多数内蔵する発泡成形品を得る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、発泡樹脂成形品の製造方法として、コアバックと呼ばれる発泡成形方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
このコアバックによる方法では、型内に発泡性樹脂を注入後、この発泡性樹脂が未固化状態で型内の容積を拡大し、該未固化状態の樹脂に付与されている圧力を低下させる。そして、該未固化状態の樹脂に含有されていたガスを気泡化して、発泡倍率を大きくする手法が採られる。
また、このようなコアバックによる発泡成形方法として、全体をコアバックする方法に加え、部分的にコアバックを行なう成形方法が知られている(例えば、特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4473665号明細書
【特許文献2】特公昭39−22213号公報
【特許文献3】特開2003−170762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の発泡成形においては、梱包剤に使用されている発泡スチロールなど発泡倍率を高めるために発泡径を大きくした場合、発泡気泡間の隔壁が薄くなり成形品の強度が著しく低下するという点に問題があった。
また、上記した特許文献1の超臨界状態の不活性ガスを用いた発泡成形方法では、気泡径がミクロンサイズであることから成形品強度の低下はわずかである。
しかしながら、発泡倍率を上げることが困難であり、発泡による軽量化が10%程度に留まり、材料削減等の経済効果が薄いという点に問題があった。
【0005】
これに対して、上記した特許文献2、3のコアバックによる発泡成形方法では、剛性等の強度を落とさずに、発泡倍率を上げて軽量化を図ることは可能である。
しかしながら、コアバックによる発泡成形方法では、特に部分的にコアバックを行なう場合において、型容積を拡大する部分としない部分、または拡大率の部分的な差異が発生する箇所においては、境界付近の発泡倍率の差により収縮率が異なることになる。
そのため、段差やひけに類似した変形が生じ、外観や部品精度が低下するという点に問題があった。
更に、コアバックした後に、コアバックしない部分が型から取り出した際に膨れを生じるという問題があった。
このような膨れは、コアバックで発泡率を上げるために、発泡する力を大きくする必要から生じるものである。
すなわち、このような膨れは、コアバックする箇所は発泡倍率を大きくするためにコアバックすることによる減圧で力が解放されるが、コアバックしない箇所では減圧されることなく発泡しようとする力がそのまま残存してしまうことによって生じる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、部分的なコアバックによって発泡樹脂成形を行うに当たり、
外観や部品精度が低下することを抑制し、またコアバックしない部分を型から取り出した際に膨れが生じることを抑制することが可能となる発泡樹脂成形用金型、発泡樹脂成形品の製造方法及び発泡樹脂成形品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発泡樹脂成形用金型は、型内に発泡剤を含む発泡性樹脂を溶融状態で注入した後、該発泡性樹脂が未固化状態で型内での容積を拡大し、該未固化状態の発泡性樹脂に付与されている圧力を低下させ、型内での発泡を促進するコアバック成形に用いる発泡樹脂成形用金型であって、
前記発泡樹脂成形用金型が、少なくとも、コアが移動しない不動コアとコアバック作動する可動コアとで構成され、
前記不動コアと前記可動コアとの境界に、該不動コア側から該可動コア側へ向かって前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域による容積変化形状部が形成されていることを特徴とする。
また、本発明の発泡樹脂成形品の製造方法は、金型の型内に発泡剤を含む発泡性樹脂を注入した後、型内での容積を拡大して発泡を促進するコアバック成形による発泡樹脂成形品の製造方法であって、
前記金型として、コアが移動しない不動コアとコアバック作動する可動コアとを備え、
前記不動コアと前記可動コアとの境界に、該不動コア側から該可動コア側へ向かって前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域による容積変化形状部を有する発泡樹脂成形用金型を用意する工程と、
前記可動コアを予め最終成形品の体積よりも小さくなる位置に設定した後、発泡剤を含む発泡性樹脂を溶融状態で型内に注入する工程と、
前記溶融状態の発泡性樹脂を、所定の樹脂量を注入して保圧をかけた後、該発泡性樹脂が未固化状態で可動コアを最終容積となる位置まで移動させ、
前記保圧がかけられていた圧力を低下させて型内での発泡を促進させ、発泡樹脂成形品を得る工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明の発泡樹脂成形品は、上記した発泡樹脂成形用金型によりコアバック成形された発泡樹脂成形品であって、
肉厚が小さく気泡密度が小さい領域と、肉厚が大きく気泡密度が大きい領域と、を有し、
前記肉厚が小さく気泡密度が小さい領域と、前記肉厚が大きく気泡密度が大きい領域の間に、
前記肉厚が小さく気泡密度が小さい領域から前記肉厚が大きく気泡密度が大きい領域に向かって、徐々に肉厚が大きく気泡密度が大きくなる領域を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部分的なコアバックによって発泡樹脂成形を行うに当たり、 外観や部品精度が低下することを抑制し、またコアバックしない部分を型から取り出した際に膨れが生じることを抑制することが可能となる発泡樹脂成形用金型、発泡樹脂成形品の製造方法及び発泡樹脂成形品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例における発泡樹脂成形用金型の基本構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例における発泡樹脂成形用金型により成形された発泡樹脂成形品の断面図。
【図3】本発明の実施例における発泡樹脂成形用金型により成形された発泡樹脂成形品の全体図。
【図4】本発明の実施例における発泡樹脂成形用金型の動作を説明する図。
【図5】本発明の実施例における発泡樹脂成形用金型により成形された発泡樹脂成形品の内部構造を示す断面図。
【図6】本発明の実施例における不動コアと作動コアとをつなぐなだらかな容積変化部を作るための形状の例を示す図。
【図7】本発明の実施例における傾斜コア部を有する発泡樹脂成形品の全体図。
【図8】本発明の実施例における容積変化形状部の構成を適用して形成された傾斜コアを備えた金型のコア側を示す図。
【図9】本発明の実施例における傾斜コアの動作を説明する図。
【図10】従来例のコアバック成形用金型及び動作を説明するための断面図。
【図11】従来例のコアバック成形用金型でボスの部分を不動コアで形成した例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の発泡樹脂成形用金型では、部分的なコアバックによって発泡樹脂成形を行うため、発泡樹脂成形用金型内にコアが移動しない不動コアと、コアが移動してコアバック作動する可動コアとが設けられる。
そして、上記金型における不動コアと可動コアとの境界に、該不動コア側から該可動コア側へ向かって上記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域による容積変化形状部が形成される。
また、上記金型において、可動コアは予め最終成形品の体積よりも小さくなる位置に設定される。この金型内に超臨界状態の窒素又は炭酸ガスを浸透した溶融樹脂を、所定の樹脂量を注入した後、可動コアを最終容積となる位置まで作動させ所望の形状の発泡樹脂成形品を得ることができるように構成される。
その際、この作動コアの移動タイミングは、樹脂の種類や部品形状によって上記金型に樹脂注入後における所定の時間経過後に行い、所望の形状の発泡樹脂成形品を得るように設定される。
本実施形態の上記容積変化形状部の構成は、樹脂注入時及び可動コア作動時は不動状態で、部品取り出し時に作動する傾斜コアやスライドなどについても適用することができる。
すなわち、このような傾斜コア等においても、不動コアと可動コアとの境界において容積が可動コア側へ向かってなだらかに変化する容積変化形状部を形成することができる。
また、可動コアの作動制御については、樹脂の種類、所望の発泡倍率、要求される強度や表面性の観点から決めることができ、作動タイミングとスピードを多段階で制御することが可能に構成することができる。
また、不動コアと作動コアとの上記境界における上記容積変化形状部は、材料の種類、不動コア部の肉厚、コアバックストローク、容積変化長さ、容積変化率(角度)、等により決定することができる。
【0011】
一般的に、超臨界状態の窒素又は炭酸ガスを浸透した発泡性樹脂を、上記不動コアと上記可動コアを有する金型内へ注入した際、不動コア部では注入時に形成される発泡構造がそのまま維持される。
しかし、可動コア部では、作動時の急激な減圧による発泡膨張により、より多くの2次発泡気泡形成と、1次発泡気泡の成長が発生する。
したがって、不動部分と可動部分では単位体積あたりの気泡数や平均気泡径など、発泡構造が異なることになるのである。
このような発泡構造の差異は、型内で冷却固化する際の収縮率差異を起こすことになる。
このことは、非発泡成形でひけが発生する部分が、発泡成形ではひけが発生しない事実としても知られている。
このような収縮差異が起きることにより、不動コア部と可動コア部との境界付近には通常微小な段差もしくはひけに類似した変形が発生し、光沢面を持つ外観部品や平面度を要求される部品などでは品質的に問題が生じていた。
【0012】
これに対して、本実施形態の発泡樹脂成形用金型では可動コアが作動しコアバックを行なう際に、上記したように不動コアと可動コアとの境界に、不動コア側から可動コア側へ向かってなだらかに容積が変化している容積変化形状部が形成される。
これにより、不動コア部の発泡構造と可動コア部の発泡構造との違いによる収縮差を連続的に変化させることができる。
すなわち、不動コア部と可動コア部との収縮差異が連続的に変化することになり、局所的な段差を防止することが可能となる。
さらに、本実施形態では、不動コア部の発泡しようとする力を可動コア部へ連続的に緩和させることが可能となる。
つまり、本実施形態のなだらかな体積変化形状により、不動コア部の発泡しようとする圧力が可動コアの作動時に、可動コア側へ体積変化に伴い徐々にその力が軽減される効果により、上記した従来の型から取り出し後の膨れの発生を抑制することが可能となる。
このようなコアバック成形による発泡樹脂成形用金型によれば、
肉厚が小さく気泡密度が小さい領域と、肉厚が大きく気泡密度が大きい領域と、を有し、前記肉厚が小さく気泡密度が小さい領域と、前記肉厚が大きく気泡密度が大きい領域の間に、
前記肉厚が小さく気泡密度が小さい領域から前記肉厚が大きく気泡密度が大きい領域に向かって、徐々に肉厚が大きく気泡密度が大きくなる領域を有する発泡樹脂成形品を形成することが可能となる。
【0013】
本実施形態の発泡樹脂成形用金型によるこのような効果は、特にはPCやプリンター、テレビなど、光沢面を特徴とする外装部品において、段差による面のゆがみがほとんど目立たない状態にまで改善することが実験により確認されている。
同様に、アンダーカット部を処理するための傾斜コアやスライド部に於いても、本発明の不動コアと可動コアとの境界に上記した容積変化形状部を設けることで、発泡構造差による収縮差の局所的段差を防止できることが実験により確認されている。
以上のように、本実施形態の容積変化形状部を設けた構成によれば、光沢面を持つ外装部品や、平面度を要求される部品に対し、発泡性樹脂材料とカウンタープレッシャー成形法を用いて、剛性低下を抑え発泡倍率を上げた発泡成形品を展開することが可能となる。
【実施例】
【0014】
以下に、本発明の実施例における発泡樹脂成形用金型について、図を用いて説明する。
図1は、本実施例における発泡樹脂成形用金型の基本構成を示す断面図である。図1において、1が金型内においてコアが移動しない不動コア、2はコアが移動してコアバック作動する可動コアである。
また、3はこの発泡樹脂成形用金型で成形される発泡樹脂成形品、4がキャビ駒、5が不動コア1と可動コア2を内蔵するコア駒である。
図2は、本実施例の発泡樹脂成形用金型により成形された発泡樹脂成形品の断面図である。
6は発泡樹脂成形用金型における不動コアと可動コアとの境界に、不動コア側から可動コア側へ向かってなだらかに容積が変化している容積変化形状部である。図3は本実施例の発泡樹脂成形用金型により成形された発泡樹脂成形品であり、7はセルフタップを行なうボス、8は不動コアにより形成される薄肉部である。
【0015】
次に、図4を使い本実施例における発泡樹脂成形用金型による発泡樹脂成形品の製造方法について説明する。
本実施例における発泡樹脂成形用金型によるコアバック成形では、発泡性樹脂を溶融状態で注入した後、該発泡性樹脂が未固化状態で型内での容積を拡大し、該未固化状態の発泡性樹脂に付与されている圧力を低下させ、型内での発泡を促進させる。
図4(a)はコアバック前の状態を示しており、(b)はコアバック後の状態を示している。
図4において、コアバック成形に際し、まず、コアが移動しない不動コアとコアバック作動する可動コアとを備えた発泡樹脂成形用金型を用意する。
そして、可動コア2は予め設定された容積もしくは肉厚の位置で静止させ、その後発泡性樹脂を型内へ射出充填する。
樹脂が充填された後、可動コア2が決められた位置まで作動し、コアバックによる発泡が行なわれる。
このとき、本実施例の不動コアと可動コアとの境界に設けられた容積変化形状部によってなだらかに容積を変化させた部分が、不動コアと可動コアとの間の成形体部分を連続的に変化させる。
図5は、本実施例の発泡樹脂成形用金型により成形された発泡樹脂成形品の内部構造を示す断面図である。
図5において、なだらかに容積が変化している部分6が、本実施例の不動コアと可動コアとの境界に設けられた容積変化形状部によって連続的に構造変化させられ連結された部分である。
以上のように、本実施例の発泡樹脂成形用金型による容積変化形状部を設けることによって、不動コア部と、可動コア部との発泡構造と残存発泡力との差をなだらかに連結することが可能となる。
すなわち、発泡倍率が低く、気泡数も少なく、発泡力が残存している不動コア部と、発泡率が高く、気泡数が多く、内部発泡力がほとんどコアバックで消化された可動コア部との、発泡構造と残存発泡力との差をなだらかに連結することが可能となる。
これにより、気泡密度が小さい領域から気泡密度が大きい領域に向かって、徐々に気泡密度が大きく連続的に変化している発泡構造を有する発泡樹脂成形品を製造することが可能となる。
【0016】
つぎに、本実施例における容積変化形状部の例について説明する。
図6に、本実施例における本発明の特徴的構成を適用した不動コアと作動コアとをつなぐなだらかな容積変化部を作るための形状についての例を示す。
図6において、破線がコアバック前の可動コアの位置を示しており、9及至12が本実施例におけるなだらかに容積を変化している部分である。
図6(a)は、不動コアと可動コアとの境界に、不動コア側から可動コア側へ向かってなだらかに容積が変化している容積変化形状部を形成した例である。
図6(b)は、上記不可動コアと可動コアとの境界に、0.5mmから1.0mm程度の微小な平面部を不動コアに持たせ、可動コアとの摺動に対する耐久性を上げるようにした例である。
図6(c)はなだらかな容積変化部の一部を可動コア側にも形成した例である。図6(d)は、なだらかな容積変化部の一部を可動コア側にも形成し、かつ摺動による耐久性を上げる為微小な平面部を設けた例である。
言うまでも無く、なだらかに容積を変化させる形状については、図6に示したものに限られるものではない。
【0017】
つぎに、樹脂注入時及び可動コア作動時は不動状態で、部品取り出し時に作動する傾斜コアに、上記した容積変化形状部の構成を適用した構成例について説明する。
図7において、13は上記した容積変化形状部の構成を適用して形成した傾斜コア部を有する発泡樹脂成形品である。
図8は、容積変化形状部の構成を適用して形成された傾斜コアを備えた金型のコア側を示す図である。
図8において、18は不可動コア、16は可動コアであり、15は不可動コアに内蔵された傾斜コアである。また、17はコア駒である。
図8に示されるように、傾斜コア15を内蔵した不動コア側から可動コア側へ向かってなだらかに容積が変化している容積変化形状部が形成されている。
図9を用いて、上記傾斜コアの動作を説明する。
図9において、18は傾斜コアを内蔵する不動コアであり、16はコアバックを行なう可動コアである。
図9において(a)はコアバック前の状態を示しており、可動コア16は予め設定された容積もしくは肉厚の位置で静止しており、その後発泡性樹脂が型内へ射出充填される。
樹脂が充填された後、可動コア16が決められた位置まで作動し、コアバックによる発泡が行なわれる。
このとき、本実施例のなだらかに容積を変化させた部分14が不動コアと可動コアとの間の成形品部分を連続的に変化させる。
図9(b)において19はコアバックにより形成される部分を示している。
【0018】
以上のように、本実施例の容積変化形状部を有する発泡樹脂成形用金型によれば、不動コア部と、可動コア部との発泡構造と残存発泡力との差をなだらかに連結することが可能となり、局部的な段差やひけのような変形の発生を抑制することができる。
【0019】
以上のような不動コア部と可動コア部境界の発泡構造がなだらかに連続して変化している容積変化形状部が形成されていない従来例のコアバック成形用金型では、段差やひけに似た変形が生じてしまう。
以下に、これらについて更に説明すると、図10は従来例のコアバック成形用金型及び動作を説明するための断面図である。
図10において20はキャビ駒、21はコアをかかえるコア枠、22はコアバックを行なう可動コア、23はコアバックにより形成される発泡部分を示している。
図10に示すような金型で成形した場合には、コア側全体がコアバックするために、図10に示したボスやリブ及び端面の位置精度が悪くなるという問題がある。
図11は、従来例のコアバック成形用金型でボスの部分を不動コアで形成した例を示す図である。
図11において、24は不動コアにより形成されている発泡構造を示しており、25はコアバックにより形成された発泡構造を示している。
26が不動コア部とコアバック部との境界であり、図11に示すように発泡構造の違いにより、境界部26では段差やひけに似た変形が生じてしまう。
つまり、従来の型構造でコアバックをおこなった場合、部分的に精度を必要とする場合や、孔など部分的に不動コアを必要とする場合にはその境界に於いて発泡構造の違いにより段差やひけのような変形が生じてしまうのである。
これに対して、本実施例の発泡樹脂成形用金型によれば、図4、図5に示すように、不動コア部と可動コア部境界の発泡構造がなだらかに連続して変化している容積変化形状部を形成したことにより、局部的な段差やひけのような変形が生じなくすることができる。
【0020】
[実験例]
以下に、本発明の発泡樹脂成形用金型を用いて成形した結果を確認するために行われた実験例について説明する。
なお、以下の実験例において、本発明の発泡樹脂成形用金型(以下、金型と記す。)の容積変化形状部において、
金型における不動コアと可動コアとの境界に、不動コア側から可動コア側へ向かって型内の容積がなだらかに連続して変化している領域を容積徐変域と記す。また、なだらかに容積が変化している容積徐変域における勾配の角度を勾配角度と記す。
【0021】
[実験例1]
実験例1として、本発明の容積変化形状部を有する金型を用いて、以下の成形条件で成形した。
樹脂材料:PC+ABS 帝人化成(株)製によるTN7500
発泡剤:超臨界窒素ガス
成形機:JSW 350Ton
金型:不動コアと可動コア境界との容積徐変域5.0mm、勾配角度16.7度
成形樹脂温度:250℃
金型温度:60℃
充填時間:1.5秒
保圧時間:0.5秒
冷却時間:14秒
コアバック開始:保圧完了後
コアバック量:1.5mm コアバック前肉厚1.5mm
コアバック時間:0.5秒
実験例1では、上記金型を使用し、上記成形条件で成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差は0.01mm以下であり、目視による光沢表面のゆがみはみられなかった。
【0022】
[実験例2]
実験例2では、実験例1の成形条件の中で、保圧時間を0.5秒から1.5秒に増加し成形した。
実験例2では、不動コアと可動コア境界での段差は最大0.03mmであり、実験例1に対し段差がわずかながら増加したが、目視による光沢表面のゆがみは僅かであり、問題のないレベルであった。
【0023】
[実験例3]
実験例3では、実験例1の成形条件の中で、可動コアの作動時間を0.5秒から2.0秒に増加し成形した。
作動ストロークは1.5mmと同じのため、作動スピードが1/4に遅くなったことになる。
実験例3では、成形品の不動コアと可動コア境界での段差は0.03mm〜0.05mmであり、実験例1に対し段差が増加した。
これは、不動コア部及びスキン層の固化が進んだためであり、そのため不動コア部と可動コア部との差が大きくなったものである。
なお、目視による光沢表面のゆがみはわずかに認識できるレベルであるが、製品要求外観レベル及び平面度要求値0.05以下を満足できた。
【0024】
[実験例4]
実験例4では、本発明の容積変化形状部を有しない金型を用いて、従来例の金型(図10参照)を用い、その他は実験例1と同じ成形条件で成形した。
実験例4では、成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差は0.06mm〜0.10mmであり、明らかに目視で表面の段差が確認できるレベルであり、平面度要求値0.05以下を満足することができなかった。
【0025】
[実験例5]
実験例5として、本発明の容積変化形状部を有する金型を用いて、以下の成形条件で成形した。
樹脂材料:ABS 旭化成ケミカルズ(株)製によるVN30
発泡剤:超臨界窒素ガス
成形機:JSW 350Ton
金型:不動コアと可動コア境界との容積徐変域5.0mm、勾配角度16.7度
成形樹脂温度:210℃
金型温度:50℃
充填時間:1.5秒
保圧時間:0.5秒
冷却時間:12秒
コアバック開始:保圧完了後
コアバック量:1.5mm コアバック前肉厚1.5mm
コアバック時間:0.5秒
実験例5では、樹脂材料をPC+ABSからABSに変更し、上記容積徐変域を設けた金型を使用し成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差は0.01mm以下であり、目視による光沢表面のゆがみはみられなかった。
【0026】
[実験例6]
実験例6では、実験例5の条件の中で、可動コアの作動時間を0.5秒から1.5秒に増加し成形した。
実験例6では、不動コアと可動コア境界での段差は0.01mm以下であり、目視による光沢表面のゆがみはみられず、平面度要求値0.05以下を満足した。
【0027】
[実験例7]
実験例7として、本発明の容積変化形状部を有する金型を用いて、以下の成形条件で成形した。
樹脂材料:PPE+PS SABIC Innovative Plastics ZM3640
発泡剤:超臨界窒素ガス
成形機:JSW 350Ton
金型:不動コアと可動コア境界との容積徐変域5.0mm、勾配角度16.7度
成形樹脂温度:290℃
金型温度:70℃
充填時間:1.5秒
保圧時間:0.5秒
冷却時間:12秒
コアバック開始:保圧完了後
コアバック量:1.5mm コアバック前肉厚1.5mm
コアバック時間:0.5秒
実験例7では、樹脂材料をPC+ABSからPPE+PSに変更し、上記容積徐変域を設けた金型を使用して成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差は0.01mm以下であり、目視による光沢表面のゆがみはみられなかった。
【0028】
[実験例8]
実験例8では、実験例7の条件の中で、可動コアの作動時間を0.5秒から1.5秒に増加し成形した。
実験例8では、不動コアと可動コア境界での段差は0.01mm以下であり、目視による光沢表面のゆがみはみられず、平面度要求値0.05以下を満足した。以上実施例1〜8の結果より、本発明の容積変化形状部を有する金型による実験例1〜3、実験例5〜8の発泡成形においては、材料及び可動コアの作動スピードを変化しても、良好な平面が得られることが明らかとなった。
また、本発明の容積変化形状部を有しない金型による従来例の実験例4の発泡成形においては、不動コアと可動コアの境界において0.05mm以上の目視観察可能な段差が発生することが明らかとなった。
以下に、上記実験例1〜8をまとめた結果を表1に示す。
[表1]
【0029】
[実験例9]
実験例9では、実験例1の容積徐変域における勾配角度を16.7度から30度に変えて実験を行った。
なお、容積変化形状部を有しない従来例のものでは90度がこの勾配角度に相当するものとなる。
実験例9では、勾配角度を30度として成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差は0.01mm以下であり、目視による光沢表面のゆがみはみられなかった。
【0030】
[実験例10]
実験例10では、実験例1の容積徐変域における勾配角度を16.7度から45度に変えて実験を行った。
実験例10では、徐変角度を45度として成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差は0.02mm以下であり、平面度及び目視による光沢表面のゆがみは問題ないレベルであった。
【0031】
[実験例11]
実験例11では、実験例1の容積徐変域における勾配角度を16.7度から60度に変えて実験を行った。
実験例11では、徐変角度を60度として成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差で最大0.07mmとなり、表面のゆがみが目視で確認できるレベルであり、また、平面度規格0.05mm以下を満足できなかった。
【0032】
[実験例12]
実験例12では、実験例10の容積徐変域を5mmから10mmに広げ成形した。
実験例12での成形品は、境界での段差が0.01mm以下であり、平面度及び目視による光沢表面のゆがみは問題ないレベルであった。
【0033】
[実験例13]
実験例13では、実験例12の容積徐変域の勾配角度を16.7度から60度に変え実験を行った。
実験例13での成形品は、境界での段差が0.03mm以下であり、平面度及び目視による光沢表面のゆがみは問題ないレベルであった。
【0034】
[実験例14]
実験例14では、実験例5の容積徐変域の勾配角度を16.7度から45度に変え実験を行った。
実験例14では、成形品は、境界での段差が0.01mm以下であり、平面度及び目視による光沢表面のゆがみは問題ないレベルであった。
【0035】
[実験例15]
実験例15では、実験例14の容積徐変域の勾配角度を45度から60度に変え実験を行った。
実験例15では、勾配角度を60度として成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差で最大0.08mmとなり、表面のゆがみが目視で確認できるレベルであり、また、平面度規格0.05mm以下を満足できなかった。
【0036】
以上、実験例9〜15の結果により、本発明において、容積徐変域の勾配角度が60度未満の傾斜面あれば、良好な表面性が得られる事が判明した。
また、本発明の容積徐変域については、容積徐変域の範囲(容積徐変域の長さ)や勾配角度及び材料によりその効果に差が出ることが判明した。
そして、実験の結果、容積徐変域の範囲(容積徐変域の長さ)とコアバック量(コアバックス)との関係において、つぎの式を満たすことが望ましいことを見出した。
(コアバックのストローク)÷(容積徐変域の長さ)<1.73
但し、コアバックのストローク<不動コアの肉厚
なお、実験例で示した材料及び容積徐変域等の設定以外においても、本発明が従来の手法に対して有効であることから、本発明は実験例に示した成形条件の範囲に留まる物ではない。
【0037】
[表2]
【符号の説明】
【0038】
1:不動コア
2:可動コア
3:発泡樹脂成形品
4:キャビ駒
5:不動コアと可動コアを内蔵するコア駒
6:容積変化形状部
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂成形用金型、発泡樹脂成形品の製造方法及び発泡樹脂成形品に関し、特にコアバックによる発泡樹脂成形用金型、発泡樹脂成形品の製造方法及び発泡樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡性樹脂を製造する際、ブタンガス、メタンガス、水、窒素、炭酸ガスなどの発泡剤を樹脂中に浸透もしくは機械的に溶融混漣又は化学反応を誘発することによってこれらを製造している。
そして、発泡樹脂成形品を製造する際には、製造された発泡性樹脂を、射出成形機や押し出し成形機などで金型内に射出もしくは押し出し成形によって、所望の形状と発泡倍率を持つ発泡樹脂成形品が製造される。
また、近年では、発泡樹脂成形品の製造方法として、樹脂材料中に高圧高温度下で超臨界状態の窒素又は炭酸ガスを浸透させ、圧力と温度を調整し、ミクロンサイズの小さな発泡径を多数内蔵する発泡成形品を得る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、発泡樹脂成形品の製造方法として、コアバックと呼ばれる発泡成形方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
このコアバックによる方法では、型内に発泡性樹脂を注入後、この発泡性樹脂が未固化状態で型内の容積を拡大し、該未固化状態の樹脂に付与されている圧力を低下させる。そして、該未固化状態の樹脂に含有されていたガスを気泡化して、発泡倍率を大きくする手法が採られる。
また、このようなコアバックによる発泡成形方法として、全体をコアバックする方法に加え、部分的にコアバックを行なう成形方法が知られている(例えば、特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4473665号明細書
【特許文献2】特公昭39−22213号公報
【特許文献3】特開2003−170762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の発泡成形においては、梱包剤に使用されている発泡スチロールなど発泡倍率を高めるために発泡径を大きくした場合、発泡気泡間の隔壁が薄くなり成形品の強度が著しく低下するという点に問題があった。
また、上記した特許文献1の超臨界状態の不活性ガスを用いた発泡成形方法では、気泡径がミクロンサイズであることから成形品強度の低下はわずかである。
しかしながら、発泡倍率を上げることが困難であり、発泡による軽量化が10%程度に留まり、材料削減等の経済効果が薄いという点に問題があった。
【0005】
これに対して、上記した特許文献2、3のコアバックによる発泡成形方法では、剛性等の強度を落とさずに、発泡倍率を上げて軽量化を図ることは可能である。
しかしながら、コアバックによる発泡成形方法では、特に部分的にコアバックを行なう場合において、型容積を拡大する部分としない部分、または拡大率の部分的な差異が発生する箇所においては、境界付近の発泡倍率の差により収縮率が異なることになる。
そのため、段差やひけに類似した変形が生じ、外観や部品精度が低下するという点に問題があった。
更に、コアバックした後に、コアバックしない部分が型から取り出した際に膨れを生じるという問題があった。
このような膨れは、コアバックで発泡率を上げるために、発泡する力を大きくする必要から生じるものである。
すなわち、このような膨れは、コアバックする箇所は発泡倍率を大きくするためにコアバックすることによる減圧で力が解放されるが、コアバックしない箇所では減圧されることなく発泡しようとする力がそのまま残存してしまうことによって生じる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、部分的なコアバックによって発泡樹脂成形を行うに当たり、
外観や部品精度が低下することを抑制し、またコアバックしない部分を型から取り出した際に膨れが生じることを抑制することが可能となる発泡樹脂成形用金型、発泡樹脂成形品の製造方法及び発泡樹脂成形品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発泡樹脂成形用金型は、型内に発泡剤を含む発泡性樹脂を溶融状態で注入した後、該発泡性樹脂が未固化状態で型内での容積を拡大し、該未固化状態の発泡性樹脂に付与されている圧力を低下させ、型内での発泡を促進するコアバック成形に用いる発泡樹脂成形用金型であって、
前記発泡樹脂成形用金型が、少なくとも、コアが移動しない不動コアとコアバック作動する可動コアとで構成され、
前記不動コアと前記可動コアとの境界に、該不動コア側から該可動コア側へ向かって前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域による容積変化形状部が形成されていることを特徴とする。
また、本発明の発泡樹脂成形品の製造方法は、金型の型内に発泡剤を含む発泡性樹脂を注入した後、型内での容積を拡大して発泡を促進するコアバック成形による発泡樹脂成形品の製造方法であって、
前記金型として、コアが移動しない不動コアとコアバック作動する可動コアとを備え、
前記不動コアと前記可動コアとの境界に、該不動コア側から該可動コア側へ向かって前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域による容積変化形状部を有する発泡樹脂成形用金型を用意する工程と、
前記可動コアを予め最終成形品の体積よりも小さくなる位置に設定した後、発泡剤を含む発泡性樹脂を溶融状態で型内に注入する工程と、
前記溶融状態の発泡性樹脂を、所定の樹脂量を注入して保圧をかけた後、該発泡性樹脂が未固化状態で可動コアを最終容積となる位置まで移動させ、
前記保圧がかけられていた圧力を低下させて型内での発泡を促進させ、発泡樹脂成形品を得る工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明の発泡樹脂成形品は、上記した発泡樹脂成形用金型によりコアバック成形された発泡樹脂成形品であって、
肉厚が小さく気泡密度が小さい領域と、肉厚が大きく気泡密度が大きい領域と、を有し、
前記肉厚が小さく気泡密度が小さい領域と、前記肉厚が大きく気泡密度が大きい領域の間に、
前記肉厚が小さく気泡密度が小さい領域から前記肉厚が大きく気泡密度が大きい領域に向かって、徐々に肉厚が大きく気泡密度が大きくなる領域を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部分的なコアバックによって発泡樹脂成形を行うに当たり、 外観や部品精度が低下することを抑制し、またコアバックしない部分を型から取り出した際に膨れが生じることを抑制することが可能となる発泡樹脂成形用金型、発泡樹脂成形品の製造方法及び発泡樹脂成形品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例における発泡樹脂成形用金型の基本構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例における発泡樹脂成形用金型により成形された発泡樹脂成形品の断面図。
【図3】本発明の実施例における発泡樹脂成形用金型により成形された発泡樹脂成形品の全体図。
【図4】本発明の実施例における発泡樹脂成形用金型の動作を説明する図。
【図5】本発明の実施例における発泡樹脂成形用金型により成形された発泡樹脂成形品の内部構造を示す断面図。
【図6】本発明の実施例における不動コアと作動コアとをつなぐなだらかな容積変化部を作るための形状の例を示す図。
【図7】本発明の実施例における傾斜コア部を有する発泡樹脂成形品の全体図。
【図8】本発明の実施例における容積変化形状部の構成を適用して形成された傾斜コアを備えた金型のコア側を示す図。
【図9】本発明の実施例における傾斜コアの動作を説明する図。
【図10】従来例のコアバック成形用金型及び動作を説明するための断面図。
【図11】従来例のコアバック成形用金型でボスの部分を不動コアで形成した例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の発泡樹脂成形用金型では、部分的なコアバックによって発泡樹脂成形を行うため、発泡樹脂成形用金型内にコアが移動しない不動コアと、コアが移動してコアバック作動する可動コアとが設けられる。
そして、上記金型における不動コアと可動コアとの境界に、該不動コア側から該可動コア側へ向かって上記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域による容積変化形状部が形成される。
また、上記金型において、可動コアは予め最終成形品の体積よりも小さくなる位置に設定される。この金型内に超臨界状態の窒素又は炭酸ガスを浸透した溶融樹脂を、所定の樹脂量を注入した後、可動コアを最終容積となる位置まで作動させ所望の形状の発泡樹脂成形品を得ることができるように構成される。
その際、この作動コアの移動タイミングは、樹脂の種類や部品形状によって上記金型に樹脂注入後における所定の時間経過後に行い、所望の形状の発泡樹脂成形品を得るように設定される。
本実施形態の上記容積変化形状部の構成は、樹脂注入時及び可動コア作動時は不動状態で、部品取り出し時に作動する傾斜コアやスライドなどについても適用することができる。
すなわち、このような傾斜コア等においても、不動コアと可動コアとの境界において容積が可動コア側へ向かってなだらかに変化する容積変化形状部を形成することができる。
また、可動コアの作動制御については、樹脂の種類、所望の発泡倍率、要求される強度や表面性の観点から決めることができ、作動タイミングとスピードを多段階で制御することが可能に構成することができる。
また、不動コアと作動コアとの上記境界における上記容積変化形状部は、材料の種類、不動コア部の肉厚、コアバックストローク、容積変化長さ、容積変化率(角度)、等により決定することができる。
【0011】
一般的に、超臨界状態の窒素又は炭酸ガスを浸透した発泡性樹脂を、上記不動コアと上記可動コアを有する金型内へ注入した際、不動コア部では注入時に形成される発泡構造がそのまま維持される。
しかし、可動コア部では、作動時の急激な減圧による発泡膨張により、より多くの2次発泡気泡形成と、1次発泡気泡の成長が発生する。
したがって、不動部分と可動部分では単位体積あたりの気泡数や平均気泡径など、発泡構造が異なることになるのである。
このような発泡構造の差異は、型内で冷却固化する際の収縮率差異を起こすことになる。
このことは、非発泡成形でひけが発生する部分が、発泡成形ではひけが発生しない事実としても知られている。
このような収縮差異が起きることにより、不動コア部と可動コア部との境界付近には通常微小な段差もしくはひけに類似した変形が発生し、光沢面を持つ外観部品や平面度を要求される部品などでは品質的に問題が生じていた。
【0012】
これに対して、本実施形態の発泡樹脂成形用金型では可動コアが作動しコアバックを行なう際に、上記したように不動コアと可動コアとの境界に、不動コア側から可動コア側へ向かってなだらかに容積が変化している容積変化形状部が形成される。
これにより、不動コア部の発泡構造と可動コア部の発泡構造との違いによる収縮差を連続的に変化させることができる。
すなわち、不動コア部と可動コア部との収縮差異が連続的に変化することになり、局所的な段差を防止することが可能となる。
さらに、本実施形態では、不動コア部の発泡しようとする力を可動コア部へ連続的に緩和させることが可能となる。
つまり、本実施形態のなだらかな体積変化形状により、不動コア部の発泡しようとする圧力が可動コアの作動時に、可動コア側へ体積変化に伴い徐々にその力が軽減される効果により、上記した従来の型から取り出し後の膨れの発生を抑制することが可能となる。
このようなコアバック成形による発泡樹脂成形用金型によれば、
肉厚が小さく気泡密度が小さい領域と、肉厚が大きく気泡密度が大きい領域と、を有し、前記肉厚が小さく気泡密度が小さい領域と、前記肉厚が大きく気泡密度が大きい領域の間に、
前記肉厚が小さく気泡密度が小さい領域から前記肉厚が大きく気泡密度が大きい領域に向かって、徐々に肉厚が大きく気泡密度が大きくなる領域を有する発泡樹脂成形品を形成することが可能となる。
【0013】
本実施形態の発泡樹脂成形用金型によるこのような効果は、特にはPCやプリンター、テレビなど、光沢面を特徴とする外装部品において、段差による面のゆがみがほとんど目立たない状態にまで改善することが実験により確認されている。
同様に、アンダーカット部を処理するための傾斜コアやスライド部に於いても、本発明の不動コアと可動コアとの境界に上記した容積変化形状部を設けることで、発泡構造差による収縮差の局所的段差を防止できることが実験により確認されている。
以上のように、本実施形態の容積変化形状部を設けた構成によれば、光沢面を持つ外装部品や、平面度を要求される部品に対し、発泡性樹脂材料とカウンタープレッシャー成形法を用いて、剛性低下を抑え発泡倍率を上げた発泡成形品を展開することが可能となる。
【実施例】
【0014】
以下に、本発明の実施例における発泡樹脂成形用金型について、図を用いて説明する。
図1は、本実施例における発泡樹脂成形用金型の基本構成を示す断面図である。図1において、1が金型内においてコアが移動しない不動コア、2はコアが移動してコアバック作動する可動コアである。
また、3はこの発泡樹脂成形用金型で成形される発泡樹脂成形品、4がキャビ駒、5が不動コア1と可動コア2を内蔵するコア駒である。
図2は、本実施例の発泡樹脂成形用金型により成形された発泡樹脂成形品の断面図である。
6は発泡樹脂成形用金型における不動コアと可動コアとの境界に、不動コア側から可動コア側へ向かってなだらかに容積が変化している容積変化形状部である。図3は本実施例の発泡樹脂成形用金型により成形された発泡樹脂成形品であり、7はセルフタップを行なうボス、8は不動コアにより形成される薄肉部である。
【0015】
次に、図4を使い本実施例における発泡樹脂成形用金型による発泡樹脂成形品の製造方法について説明する。
本実施例における発泡樹脂成形用金型によるコアバック成形では、発泡性樹脂を溶融状態で注入した後、該発泡性樹脂が未固化状態で型内での容積を拡大し、該未固化状態の発泡性樹脂に付与されている圧力を低下させ、型内での発泡を促進させる。
図4(a)はコアバック前の状態を示しており、(b)はコアバック後の状態を示している。
図4において、コアバック成形に際し、まず、コアが移動しない不動コアとコアバック作動する可動コアとを備えた発泡樹脂成形用金型を用意する。
そして、可動コア2は予め設定された容積もしくは肉厚の位置で静止させ、その後発泡性樹脂を型内へ射出充填する。
樹脂が充填された後、可動コア2が決められた位置まで作動し、コアバックによる発泡が行なわれる。
このとき、本実施例の不動コアと可動コアとの境界に設けられた容積変化形状部によってなだらかに容積を変化させた部分が、不動コアと可動コアとの間の成形体部分を連続的に変化させる。
図5は、本実施例の発泡樹脂成形用金型により成形された発泡樹脂成形品の内部構造を示す断面図である。
図5において、なだらかに容積が変化している部分6が、本実施例の不動コアと可動コアとの境界に設けられた容積変化形状部によって連続的に構造変化させられ連結された部分である。
以上のように、本実施例の発泡樹脂成形用金型による容積変化形状部を設けることによって、不動コア部と、可動コア部との発泡構造と残存発泡力との差をなだらかに連結することが可能となる。
すなわち、発泡倍率が低く、気泡数も少なく、発泡力が残存している不動コア部と、発泡率が高く、気泡数が多く、内部発泡力がほとんどコアバックで消化された可動コア部との、発泡構造と残存発泡力との差をなだらかに連結することが可能となる。
これにより、気泡密度が小さい領域から気泡密度が大きい領域に向かって、徐々に気泡密度が大きく連続的に変化している発泡構造を有する発泡樹脂成形品を製造することが可能となる。
【0016】
つぎに、本実施例における容積変化形状部の例について説明する。
図6に、本実施例における本発明の特徴的構成を適用した不動コアと作動コアとをつなぐなだらかな容積変化部を作るための形状についての例を示す。
図6において、破線がコアバック前の可動コアの位置を示しており、9及至12が本実施例におけるなだらかに容積を変化している部分である。
図6(a)は、不動コアと可動コアとの境界に、不動コア側から可動コア側へ向かってなだらかに容積が変化している容積変化形状部を形成した例である。
図6(b)は、上記不可動コアと可動コアとの境界に、0.5mmから1.0mm程度の微小な平面部を不動コアに持たせ、可動コアとの摺動に対する耐久性を上げるようにした例である。
図6(c)はなだらかな容積変化部の一部を可動コア側にも形成した例である。図6(d)は、なだらかな容積変化部の一部を可動コア側にも形成し、かつ摺動による耐久性を上げる為微小な平面部を設けた例である。
言うまでも無く、なだらかに容積を変化させる形状については、図6に示したものに限られるものではない。
【0017】
つぎに、樹脂注入時及び可動コア作動時は不動状態で、部品取り出し時に作動する傾斜コアに、上記した容積変化形状部の構成を適用した構成例について説明する。
図7において、13は上記した容積変化形状部の構成を適用して形成した傾斜コア部を有する発泡樹脂成形品である。
図8は、容積変化形状部の構成を適用して形成された傾斜コアを備えた金型のコア側を示す図である。
図8において、18は不可動コア、16は可動コアであり、15は不可動コアに内蔵された傾斜コアである。また、17はコア駒である。
図8に示されるように、傾斜コア15を内蔵した不動コア側から可動コア側へ向かってなだらかに容積が変化している容積変化形状部が形成されている。
図9を用いて、上記傾斜コアの動作を説明する。
図9において、18は傾斜コアを内蔵する不動コアであり、16はコアバックを行なう可動コアである。
図9において(a)はコアバック前の状態を示しており、可動コア16は予め設定された容積もしくは肉厚の位置で静止しており、その後発泡性樹脂が型内へ射出充填される。
樹脂が充填された後、可動コア16が決められた位置まで作動し、コアバックによる発泡が行なわれる。
このとき、本実施例のなだらかに容積を変化させた部分14が不動コアと可動コアとの間の成形品部分を連続的に変化させる。
図9(b)において19はコアバックにより形成される部分を示している。
【0018】
以上のように、本実施例の容積変化形状部を有する発泡樹脂成形用金型によれば、不動コア部と、可動コア部との発泡構造と残存発泡力との差をなだらかに連結することが可能となり、局部的な段差やひけのような変形の発生を抑制することができる。
【0019】
以上のような不動コア部と可動コア部境界の発泡構造がなだらかに連続して変化している容積変化形状部が形成されていない従来例のコアバック成形用金型では、段差やひけに似た変形が生じてしまう。
以下に、これらについて更に説明すると、図10は従来例のコアバック成形用金型及び動作を説明するための断面図である。
図10において20はキャビ駒、21はコアをかかえるコア枠、22はコアバックを行なう可動コア、23はコアバックにより形成される発泡部分を示している。
図10に示すような金型で成形した場合には、コア側全体がコアバックするために、図10に示したボスやリブ及び端面の位置精度が悪くなるという問題がある。
図11は、従来例のコアバック成形用金型でボスの部分を不動コアで形成した例を示す図である。
図11において、24は不動コアにより形成されている発泡構造を示しており、25はコアバックにより形成された発泡構造を示している。
26が不動コア部とコアバック部との境界であり、図11に示すように発泡構造の違いにより、境界部26では段差やひけに似た変形が生じてしまう。
つまり、従来の型構造でコアバックをおこなった場合、部分的に精度を必要とする場合や、孔など部分的に不動コアを必要とする場合にはその境界に於いて発泡構造の違いにより段差やひけのような変形が生じてしまうのである。
これに対して、本実施例の発泡樹脂成形用金型によれば、図4、図5に示すように、不動コア部と可動コア部境界の発泡構造がなだらかに連続して変化している容積変化形状部を形成したことにより、局部的な段差やひけのような変形が生じなくすることができる。
【0020】
[実験例]
以下に、本発明の発泡樹脂成形用金型を用いて成形した結果を確認するために行われた実験例について説明する。
なお、以下の実験例において、本発明の発泡樹脂成形用金型(以下、金型と記す。)の容積変化形状部において、
金型における不動コアと可動コアとの境界に、不動コア側から可動コア側へ向かって型内の容積がなだらかに連続して変化している領域を容積徐変域と記す。また、なだらかに容積が変化している容積徐変域における勾配の角度を勾配角度と記す。
【0021】
[実験例1]
実験例1として、本発明の容積変化形状部を有する金型を用いて、以下の成形条件で成形した。
樹脂材料:PC+ABS 帝人化成(株)製によるTN7500
発泡剤:超臨界窒素ガス
成形機:JSW 350Ton
金型:不動コアと可動コア境界との容積徐変域5.0mm、勾配角度16.7度
成形樹脂温度:250℃
金型温度:60℃
充填時間:1.5秒
保圧時間:0.5秒
冷却時間:14秒
コアバック開始:保圧完了後
コアバック量:1.5mm コアバック前肉厚1.5mm
コアバック時間:0.5秒
実験例1では、上記金型を使用し、上記成形条件で成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差は0.01mm以下であり、目視による光沢表面のゆがみはみられなかった。
【0022】
[実験例2]
実験例2では、実験例1の成形条件の中で、保圧時間を0.5秒から1.5秒に増加し成形した。
実験例2では、不動コアと可動コア境界での段差は最大0.03mmであり、実験例1に対し段差がわずかながら増加したが、目視による光沢表面のゆがみは僅かであり、問題のないレベルであった。
【0023】
[実験例3]
実験例3では、実験例1の成形条件の中で、可動コアの作動時間を0.5秒から2.0秒に増加し成形した。
作動ストロークは1.5mmと同じのため、作動スピードが1/4に遅くなったことになる。
実験例3では、成形品の不動コアと可動コア境界での段差は0.03mm〜0.05mmであり、実験例1に対し段差が増加した。
これは、不動コア部及びスキン層の固化が進んだためであり、そのため不動コア部と可動コア部との差が大きくなったものである。
なお、目視による光沢表面のゆがみはわずかに認識できるレベルであるが、製品要求外観レベル及び平面度要求値0.05以下を満足できた。
【0024】
[実験例4]
実験例4では、本発明の容積変化形状部を有しない金型を用いて、従来例の金型(図10参照)を用い、その他は実験例1と同じ成形条件で成形した。
実験例4では、成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差は0.06mm〜0.10mmであり、明らかに目視で表面の段差が確認できるレベルであり、平面度要求値0.05以下を満足することができなかった。
【0025】
[実験例5]
実験例5として、本発明の容積変化形状部を有する金型を用いて、以下の成形条件で成形した。
樹脂材料:ABS 旭化成ケミカルズ(株)製によるVN30
発泡剤:超臨界窒素ガス
成形機:JSW 350Ton
金型:不動コアと可動コア境界との容積徐変域5.0mm、勾配角度16.7度
成形樹脂温度:210℃
金型温度:50℃
充填時間:1.5秒
保圧時間:0.5秒
冷却時間:12秒
コアバック開始:保圧完了後
コアバック量:1.5mm コアバック前肉厚1.5mm
コアバック時間:0.5秒
実験例5では、樹脂材料をPC+ABSからABSに変更し、上記容積徐変域を設けた金型を使用し成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差は0.01mm以下であり、目視による光沢表面のゆがみはみられなかった。
【0026】
[実験例6]
実験例6では、実験例5の条件の中で、可動コアの作動時間を0.5秒から1.5秒に増加し成形した。
実験例6では、不動コアと可動コア境界での段差は0.01mm以下であり、目視による光沢表面のゆがみはみられず、平面度要求値0.05以下を満足した。
【0027】
[実験例7]
実験例7として、本発明の容積変化形状部を有する金型を用いて、以下の成形条件で成形した。
樹脂材料:PPE+PS SABIC Innovative Plastics ZM3640
発泡剤:超臨界窒素ガス
成形機:JSW 350Ton
金型:不動コアと可動コア境界との容積徐変域5.0mm、勾配角度16.7度
成形樹脂温度:290℃
金型温度:70℃
充填時間:1.5秒
保圧時間:0.5秒
冷却時間:12秒
コアバック開始:保圧完了後
コアバック量:1.5mm コアバック前肉厚1.5mm
コアバック時間:0.5秒
実験例7では、樹脂材料をPC+ABSからPPE+PSに変更し、上記容積徐変域を設けた金型を使用して成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差は0.01mm以下であり、目視による光沢表面のゆがみはみられなかった。
【0028】
[実験例8]
実験例8では、実験例7の条件の中で、可動コアの作動時間を0.5秒から1.5秒に増加し成形した。
実験例8では、不動コアと可動コア境界での段差は0.01mm以下であり、目視による光沢表面のゆがみはみられず、平面度要求値0.05以下を満足した。以上実施例1〜8の結果より、本発明の容積変化形状部を有する金型による実験例1〜3、実験例5〜8の発泡成形においては、材料及び可動コアの作動スピードを変化しても、良好な平面が得られることが明らかとなった。
また、本発明の容積変化形状部を有しない金型による従来例の実験例4の発泡成形においては、不動コアと可動コアの境界において0.05mm以上の目視観察可能な段差が発生することが明らかとなった。
以下に、上記実験例1〜8をまとめた結果を表1に示す。
[表1]
【0029】
[実験例9]
実験例9では、実験例1の容積徐変域における勾配角度を16.7度から30度に変えて実験を行った。
なお、容積変化形状部を有しない従来例のものでは90度がこの勾配角度に相当するものとなる。
実験例9では、勾配角度を30度として成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差は0.01mm以下であり、目視による光沢表面のゆがみはみられなかった。
【0030】
[実験例10]
実験例10では、実験例1の容積徐変域における勾配角度を16.7度から45度に変えて実験を行った。
実験例10では、徐変角度を45度として成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差は0.02mm以下であり、平面度及び目視による光沢表面のゆがみは問題ないレベルであった。
【0031】
[実験例11]
実験例11では、実験例1の容積徐変域における勾配角度を16.7度から60度に変えて実験を行った。
実験例11では、徐変角度を60度として成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差で最大0.07mmとなり、表面のゆがみが目視で確認できるレベルであり、また、平面度規格0.05mm以下を満足できなかった。
【0032】
[実験例12]
実験例12では、実験例10の容積徐変域を5mmから10mmに広げ成形した。
実験例12での成形品は、境界での段差が0.01mm以下であり、平面度及び目視による光沢表面のゆがみは問題ないレベルであった。
【0033】
[実験例13]
実験例13では、実験例12の容積徐変域の勾配角度を16.7度から60度に変え実験を行った。
実験例13での成形品は、境界での段差が0.03mm以下であり、平面度及び目視による光沢表面のゆがみは問題ないレベルであった。
【0034】
[実験例14]
実験例14では、実験例5の容積徐変域の勾配角度を16.7度から45度に変え実験を行った。
実験例14では、成形品は、境界での段差が0.01mm以下であり、平面度及び目視による光沢表面のゆがみは問題ないレベルであった。
【0035】
[実験例15]
実験例15では、実験例14の容積徐変域の勾配角度を45度から60度に変え実験を行った。
実験例15では、勾配角度を60度として成形した結果、不動コアと可動コア境界での段差で最大0.08mmとなり、表面のゆがみが目視で確認できるレベルであり、また、平面度規格0.05mm以下を満足できなかった。
【0036】
以上、実験例9〜15の結果により、本発明において、容積徐変域の勾配角度が60度未満の傾斜面あれば、良好な表面性が得られる事が判明した。
また、本発明の容積徐変域については、容積徐変域の範囲(容積徐変域の長さ)や勾配角度及び材料によりその効果に差が出ることが判明した。
そして、実験の結果、容積徐変域の範囲(容積徐変域の長さ)とコアバック量(コアバックス)との関係において、つぎの式を満たすことが望ましいことを見出した。
(コアバックのストローク)÷(容積徐変域の長さ)<1.73
但し、コアバックのストローク<不動コアの肉厚
なお、実験例で示した材料及び容積徐変域等の設定以外においても、本発明が従来の手法に対して有効であることから、本発明は実験例に示した成形条件の範囲に留まる物ではない。
【0037】
[表2]
【符号の説明】
【0038】
1:不動コア
2:可動コア
3:発泡樹脂成形品
4:キャビ駒
5:不動コアと可動コアを内蔵するコア駒
6:容積変化形状部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型内に発泡剤を含む発泡性樹脂を溶融状態で注入した後、該発泡性樹脂が未固化状態で型内での容積を拡大し、該未固化状態の発泡性樹脂に付与されている圧力を低下させ、型内での発泡を促進するコアバック成形に用いる発泡樹脂成形用金型であって、
前記発泡樹脂成形用金型が、少なくとも、コアが移動しない不動コアとコアバック作動する可動コアとで構成され、
前記不動コアと前記可動コアとの境界に、該不動コア側から該可動コア側へ向かって前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域による容積変化形状部が形成されていることを特徴とする発泡樹脂成形用金型。
【請求項2】
前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域が、前記不動コア側から前記可動コア側へ向かって60度未満の勾配角度を有する傾斜面で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形用金型。
【請求項3】
前記容積変化形状部は、前記不動コア側から前記可動コア側へ向かって型内の容積がなだらかに連続して変化している領域を容積徐変域とするとき、以下の式を満足させることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形用金型。
(コアバックのストローク)÷(容積徐変域の長さ)<1.73
但し、コアバックのストローク<不動コアの肉厚
【請求項4】
前記不動コアが前記型内に発泡性樹脂を注入する時及び前記可動コアの作動時は不動状態で、成形品の取り出し時に作動する傾斜コアを備え、
前記傾斜コアを含む不動コアと前記可動コアとの境界に形成された前記容積変化形状部における前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域が、
前記不動コア側から前記可動コア側へ向かって60度未満の勾配角度を有する傾斜面で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形用金型。
【請求項5】
前記不動コアが前記型内に発泡性樹脂を注入する時及び前記可動コアの作動時は不動状態で、成形品の取り出し時に作動するスライドを備え、
前記スライドを含む不動コアと前記可動コアとの境界に形成された前記容積変化形状部における前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域が、
前記不動コア側から前記可動コア側へ向かって60度未満の勾配角度を有する傾斜面で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形用金型。
【請求項6】
金型の型内に発泡剤を含む発泡性樹脂を注入した後、型内での容積を拡大して発泡を促進するコアバック成形による発泡樹脂成形品の製造方法であって、
前記金型として、コアが移動しない不動コアとコアバック作動する可動コアとを備え、
前記不動コアと前記可動コアとの境界に、該不動コア側から該可動コア側へ向かって前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域による容積変化形状部を有する発泡樹脂成形用金型を用意する工程と、
前記可動コアを予め最終成形品の体積よりも小さくなる位置に設定した後、発泡剤を含む発泡性樹脂を溶融状態で型内に注入する工程と、
前記溶融状態の発泡性樹脂を、所定の樹脂量を注入して保圧をかけた後、該発泡性樹脂が未固化状態で可動コアを最終容積となる位置まで移動させ、前記保圧がかけられていた圧力を低下させて型内での発泡を促進させ、発泡樹脂成形品を得る工程と、
を有することを特徴とするコアバック成形による発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形用金型によりコアバック成形された発泡樹脂成形品であって、
肉厚が小さく気泡密度が小さい領域と、肉厚が大きく気泡密度が大きい領域と、を有し、
前記肉厚が小さく気泡密度が小さい領域と、前記肉厚が大きく気泡密度が大きい領域の間に、
前記肉厚が小さく気泡密度が小さい領域から前記肉厚が大きく気泡密度が大きい領域に向かって、徐々に肉厚が大きく気泡密度が大きくなる領域を有することを特徴とする発泡樹脂成形品。
【請求項8】
前記徐々に肉厚が大きく気泡密度が大きくなる領域は、発泡構造が連続的に変化していることを特徴とする請求項7に記載の発泡樹脂成形品。
【請求項1】
型内に発泡剤を含む発泡性樹脂を溶融状態で注入した後、該発泡性樹脂が未固化状態で型内での容積を拡大し、該未固化状態の発泡性樹脂に付与されている圧力を低下させ、型内での発泡を促進するコアバック成形に用いる発泡樹脂成形用金型であって、
前記発泡樹脂成形用金型が、少なくとも、コアが移動しない不動コアとコアバック作動する可動コアとで構成され、
前記不動コアと前記可動コアとの境界に、該不動コア側から該可動コア側へ向かって前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域による容積変化形状部が形成されていることを特徴とする発泡樹脂成形用金型。
【請求項2】
前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域が、前記不動コア側から前記可動コア側へ向かって60度未満の勾配角度を有する傾斜面で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形用金型。
【請求項3】
前記容積変化形状部は、前記不動コア側から前記可動コア側へ向かって型内の容積がなだらかに連続して変化している領域を容積徐変域とするとき、以下の式を満足させることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形用金型。
(コアバックのストローク)÷(容積徐変域の長さ)<1.73
但し、コアバックのストローク<不動コアの肉厚
【請求項4】
前記不動コアが前記型内に発泡性樹脂を注入する時及び前記可動コアの作動時は不動状態で、成形品の取り出し時に作動する傾斜コアを備え、
前記傾斜コアを含む不動コアと前記可動コアとの境界に形成された前記容積変化形状部における前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域が、
前記不動コア側から前記可動コア側へ向かって60度未満の勾配角度を有する傾斜面で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形用金型。
【請求項5】
前記不動コアが前記型内に発泡性樹脂を注入する時及び前記可動コアの作動時は不動状態で、成形品の取り出し時に作動するスライドを備え、
前記スライドを含む不動コアと前記可動コアとの境界に形成された前記容積変化形状部における前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域が、
前記不動コア側から前記可動コア側へ向かって60度未満の勾配角度を有する傾斜面で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂成形用金型。
【請求項6】
金型の型内に発泡剤を含む発泡性樹脂を注入した後、型内での容積を拡大して発泡を促進するコアバック成形による発泡樹脂成形品の製造方法であって、
前記金型として、コアが移動しない不動コアとコアバック作動する可動コアとを備え、
前記不動コアと前記可動コアとの境界に、該不動コア側から該可動コア側へ向かって前記型内の容積をなだらかに連続して変化させる領域による容積変化形状部を有する発泡樹脂成形用金型を用意する工程と、
前記可動コアを予め最終成形品の体積よりも小さくなる位置に設定した後、発泡剤を含む発泡性樹脂を溶融状態で型内に注入する工程と、
前記溶融状態の発泡性樹脂を、所定の樹脂量を注入して保圧をかけた後、該発泡性樹脂が未固化状態で可動コアを最終容積となる位置まで移動させ、前記保圧がかけられていた圧力を低下させて型内での発泡を促進させ、発泡樹脂成形品を得る工程と、
を有することを特徴とするコアバック成形による発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形用金型によりコアバック成形された発泡樹脂成形品であって、
肉厚が小さく気泡密度が小さい領域と、肉厚が大きく気泡密度が大きい領域と、を有し、
前記肉厚が小さく気泡密度が小さい領域と、前記肉厚が大きく気泡密度が大きい領域の間に、
前記肉厚が小さく気泡密度が小さい領域から前記肉厚が大きく気泡密度が大きい領域に向かって、徐々に肉厚が大きく気泡密度が大きくなる領域を有することを特徴とする発泡樹脂成形品。
【請求項8】
前記徐々に肉厚が大きく気泡密度が大きくなる領域は、発泡構造が連続的に変化していることを特徴とする請求項7に記載の発泡樹脂成形品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−111118(P2012−111118A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261623(P2010−261623)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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