説明

皮膚化粧品及び治療用途を有する水溶性でかつ活性化可能なフェノール誘導体、及び該誘導体の調製方法

本発明は、ピロカテコール又はその誘導体の内から選択されるフェノール類とスクロースのグルコース部分との酵素縮合によるフェノール誘導体の調製に関する。前記のフェノール誘導体の生産は、グルコシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.5)を用いて達成される。これら選択されたフェノール類のO−α−グルコシドは新しく、これらの親のポリフェノールよりも高い水溶性を有しており、また抗酸化、抗ウイルス、抗菌、免疫刺激、抗アレルギー、抗高血圧、抗虚血、抗不整脈、抗血栓、コレステロール低下、抗脂質過酸化、肝保護、抗炎症、抗発癌、抗変異原性、抗新生物、抗血栓、及び血管拡張性製剤などの化粧品及び医薬組成物における又は他の任意の応用分野における有用な用途を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール誘導体の調製、このようなフェノール誘導体を含む医薬及び化粧品組成物、ならびに皮膚の美容のため及び疾患を処置するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール化合物及びそれらの特性
フェノール化合物(別名フェノール類)、又はポリフェノールは、植物界において最も多く、そして広範に分布する物質群の1つを構成し、現在8,000超のフェノール構造が知られる。ポリフェノールは植物の二次代謝産物である。「フェノール化合物」という表現は、1又は複数のヒドロキシル置換基を持つ芳香環を有するかなり広範囲の物質を包含する。基本骨格の炭素原子数に従って、主要なクラスの植物ポリフェノールの大半を表1に列挙する。天然ポリフェノールの構造は、フェノール酸などの単純分子から縮合型タンニンなどの高分子化合物まで様々である(HARBORNE JB (1980) Plant phenolics. In: BELL EA, CHARLWOOD BV (eds.) Encyclopedia of Plant Physiology, volume 8 Secondary Plant Products, Springer-Verlag, Berlin Heidelberg New York. Pp: 329-395)。
【0003】
ヒトにとって重要な3つの群は、フェノール酸(C−C、C−C、及びC−C)、フラボン誘導体(C−C−C)、及び高分子量ポリフェノール(30超の炭素原子)である。実際、フェノール、特にポリフェノールは、哺乳類において、抗ウイルス、抗菌、免疫刺激、抗アレルギー、抗高血圧、抗虚血、抗不整脈、抗血栓、コレステロール低下、抗脂質過酸、肝保護、抗炎症、抗発癌、抗変異原性、抗腫瘍、抗血栓、及び血管拡張性の作用を含む、多種多様な有益な生物学的活性を示す。それらはインビトロの強力な抗酸化物質である。
【0004】
【表1】

【0005】
フェノール酸の内、最も重要な構成炭素骨格は、ヒドロキシ安息香酸(C−C)及びヒドロキシ桂皮酸(C−C)構造である。食用植物のヒドロキシ安息香酸含量は一般的に非常に低いが、特定の赤色果実、ブラック・ラディッシュ、及び玉ねぎは例外であり、これらは新鮮重1キログラム当たり数十ミリグラムの濃度を持ちうる。ヒドロキシ安息香酸は加水分解型タンニン(マンゴーのガロタンニン、ならびにイチゴ、ラズベリー、及びクロイチゴなどの赤色果実のエラジタンニン)などの複雑な構造の成分である。ヒドロキシ桂皮酸はヒドロキシ安息香酸よりも一般的で、主にp−クマリン酸、カフェー酸、フェルラ酸、及びシナピン酸からなる。これらの酸は、凍結、滅菌、又は発酵を受けた加工食品を除き、遊離型で見出されることはほとんどない。結合型は、キナ酸、シキミ酸、及び酒石酸のグリコシル化誘導体又はエステルである。カフェー酸とキナ酸は結合してクロロゲン酸を形成し、これは多くの種類の果実において見出され、コーヒーにおいて高濃度に見いだされる。カフェー酸は、遊離型及びエステル型ともに、一般的に最も豊富なフェノール酸であり、ほとんどの果実の総ヒドロキシ桂皮酸の75〜100%の間を表わす(MANACH C, SCALBERT A, MOFRAND C, REMESY C, JIMENEZ L (2004) Polyphenols: food sources and bioavailability. Am J Clin Nutr 79: 727-747)。
【0006】
フラボノイドは、大きな群の低分子量ポリフェノール物質、化学構造において多様なベンゾ−γ−ピロン誘導体から成る;それらは最も一般的で、広範に分布する群の植物フェノール類を表わす。フラボノイドの一般的な構造はジフェニルプロパン構造(C−C−C)である;それは、酸化ヘテロ環(C環)を通常形成する3つの炭素を介して連結された2つの芳香環(A環及びB環)からなる。図1に、フラボノイド核の炭素のナンバリングに使用した基本的な構造及び系を示す。環内の構造変化によりフラボノイドはいくつかのファミリー:フラボノール、フラボン、フラバノール、イソフラボン、アントシアニジンなどに分類される。これらのフラボノイドはグリコシドとして存在することが多く、グリコシル化により分子の水溶性が高まり、フリーラジカルへの反応性が低下する。グリコシド形成に最も一般的に関与する糖はグルコースであるが、ガラクトース、ラムノース、キシロース、及びアラビノース、ならびにルチノースなどの二糖類も生じる。フラボノイド変異体は一般的な生合成経路によりすべて関連しており、シキミ酸と酢酸−マロン酸経路のいずれからの前駆体も取り込む(CROZIER A, BURNS J, AZIZ AA, STEWART AJ, RABIASZ HS, JENKINS GI, EDWARDS CA, LEAN MEJ (2000) Antioxidant flavonols from fruits, vegetables and beverages: measurements and bioavailability. Biol Res 33: 79-88)。さらなる修飾が様々な段階で生じ、水酸化、メチル化、イソプレニル化、二量体化、及びグリコシル化(O−又はC−グリコシドを産生する)の範囲において変化をもたらす。フェノール化合物は抗酸化物質として作用し、機序にはフリーラジカル捕捉及び金属キレート化のいずれも関与する。実際、人体における過剰濃度の鉄、亜鉛、及び銅の金属陽イオンによりフリーラジカルの産生が促進され、そして細胞膜及び細胞性DNAの酸化損傷に寄与しうる;これらの反応性金属イオンと複合体を形成することにより、それらはその吸収性及び反応性を低下できる。大半のフラボノイド・キレートFe2+においてキレート活性に大きな差があることを強調する必要がある。特に、ジヒドロフラボノール・タクシフォリン・キレートは、対応するフラボノール・ケルセチンよりも効率的にFe2+をキレート化する(VAN ACKER SABE, VAN DEN BERG DJ, TROMP MNJL, GRIFFIOEN DHG, VAN BENNEKOM, VAN DER VIJGH WJF, BAST A (1996) Structural aspects of antioxidant activity of flavonoids. Free Radic Biol Med 20: 331-342)。
【0007】
フラボノイドは、フリーラジカル捕捉活性に理想的な構造化学を有する(いくつかの研究において、フラボノイドが水素原子の迅速な供与により、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、及び脂質ペルオキシラジカルのスカベンジャーとして作用することが示された)。フラボノイドの構造特性とその抗ラジカル活性との間の関係に関する研究からの1つの重要な知見は、B環上のカテコール部分(3’,4’−ジヒドロキシフェノール)が良好な捕捉活性に必要になることである。最近、この記述は、改変を伴うものの、確認された:29のフラボノイドの構造特性とそれらの抗ラジカル活性との間の関係に関する研究において、B環中のカテコール構造が、高いフリーラジカル捕捉活性を得る際に常に必須条件ではないこと、及び高活性フラボノイドが3’,4’−ジヒドロキシB環及び/又は3−OH基を有することが実際に観察された(AMIC D, DAVIDOVIC-AMIC D, BESLO D, TRINAJSTIC N (2003) Structure-radical scavenging activity relationships of flavonoids. Croatica Chem Acta 76: 55-61)。フラボノイドは、モルベースで、ビタミンE及びCよりもインビトロで有効な抗酸化物質であることが示された(RICE-EVANS CA, MILLER NJ, PAGANGA G (1997) Antioxidant properties of phenolic compounds. Trends in Plant Science 2: 152-159)。オキシゲナーゼなどの酵素活性を阻止するフラボノイドに関する報告もある。
【0008】
ポリフェノールの疎水性は、ビタミンCの疎水性(高親水性)とビタミンEの疎水性(高疎水性)の中間であることを強調する必要がある;ポリフェノールはこのように水−脂質界面において作用することが予想され、ビタミンC及びEによる酸化再生経路に関与しうる。
【0009】
フェノール誘導体及びそれらの調製
その低い水溶性及び/又は酸化への高い感受性のため、医薬品又は化粧品におけるフェノール類の使用には適合させた特定の製剤が必要になる。これらの製剤はそれらの最終用途に関連する制約を満たす必要もあるため、認容性、濃度、及び安定性の妥協に達することは困難なことが多い。
【0010】
より高い水溶性、及び/又は酸化耐性の形態のフェノール類、例えばグリコシドなどは、自然において常に入手可能なわけではなく、それらが存在する場合、植物材料からの抽出及び精製という複雑な手順が必要となりうる。化学的及び生化学的(酵素的)アプローチが、水溶性及び/又は安定性を増加させるために試みられてきた。フェノール化合物はいくつかの遊離型ヒドロキシ基を有するため、フェノール化合物の化学修飾の試みは、非選択的な反応をもたらし、異なる分子パネルが作成される。所望の産物を回収するために、次にさらなる精製段階が必要とされる。
【0011】
生化学的アプローチに関する限り、フェノールグリコシド、及び、基礎的には、フラボノイド・グリコシドを得るために今日までに3つの方法が研究されてきた。
【0012】
第一の方法は、糖ヌクレオチドの糖部分をアクセプターに転移できるグリコシルトランスフェラーゼに依存する(UDP−グルコース:グルコシルトランスフェラーゼ(UGT)の場合、グルコースはウリジン5’−ジホスホグルコースから転移される)。これらの酵素は、植物における二次代謝の合成において寄与し、広いアクセプター基質の特異性を有する(LIM EK, HIGGINS GS, BOWLES DJ (2003) Regioselectivity of glucosylation of caffeic acid by UDP-glucose:glucosyltransferase is maintained in planta. Biochem J 373: 987-92; LIM EK, ASHFORD DA, HOU B, JACKSON RG, BOWLES DJ (2004) Arabidopsis glycosyltransferases as biocatalysts in fermentation for regioselective synthesis of diverse quercetin glucosides. Biotechnol. Bioeng. 87(5): 623-31)。それにもかかわらず、このアプローチは糖ヌクレオチドの非常に高いコストにより損なわれ、糖ヌクレオチド基質の再生は、基質コストを減少させる方法であるが、大規模で使いこなすことは困難である。
【0013】
第二の方法は、α−グルコシルサッカライドからグルコースを転移できるサッカライド転移酵素に依存する。上記の酵素は、加水分解酵素であるα−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)及びα−アミラーゼ(EC 3.2.1.1)から、及びトランスフェラーゼであるシクロデキストリン-グルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19)より選択される。それらの基質は、アミロース、デキストリン、シクロデキストリン、マルトオリゴ糖、及びデンプンの部分加水分解物であり、それらのすべてにα1→4オシジック(osidic)結合を介して互いに連結されたグルコシル残基が主に又は専ら含まれる。このアプローチにより、米国特許第5,565,435号にはα−グルコシルケルセチンが得られると記載されている。デンプン分解酵素がα−オシジック結合を介してグルコシル残基をフラボノイドに連結するのに対し、LIMらにより研究されたUDP−グルコース:グルコシルトランスフェラーゼは、β−オシジック結合を介してグルコシル残基をフラボノイドに連結することを強調する必要がある。米国特許第5,565,435号に記載の条件において、pHを8.5に調整し、反応媒質を60℃に維持することにより、ケルセチン分子を可溶化できうることも強調する必要がある。アルカリ媒体中でのフェノール類の可溶化は、フェノラートの形成に起因する;これらのpH及び温度条件において、基質の安定性は無気条件下での作業により達成された。このように、この様式の調製は制御及び管理が非常に困難であり、簡単な様式の調製が貴重であると思われる。
【0014】
第三の方法には、グルコシル供与体としてスクロース(β−D−フルクトフラノシル−α−D−グルコピラノシド)を使用したグルコシルトランスフェラーゼが関与し、グルカンを産生させ、フルクトースを遊離させた。フェノールグリコシドを得るためのいくつかの試みが、このクラスの酵素を用いて達成された。最初に、Streptococcus sobrinus(著者は6715株、血清型gとして参照する)からのグルコシルトランスフェラーゼが、厳密な水性媒体(2%スクロースを含む100mMリン酸バッファー(pH6.0)中1g/Lカテキン)中で4’−O−α−D−グルコピラノシル−(+)−カテニンの合成を触媒することが証明された(NAKAHARA K, KONTANI M, ONO H, KOMADA T, TANAKA T, OOSHIMA T, HAMADA S (1995) Glucosyltransferase from Streptococcus sobrinus catalyzes glucosylation of catechin. Appl. Environ. Microbiol. 61(7): 2768-70)。同様の酵素であるStreptococcus mutans GS-5からのグルコシルトランスフェラーゼ−Dの位置選択性が低いことが証明されており、それはこれが4’−O−α−D−グルコピラノシル−(+)−カテキンの合成のみならず、7−O−α−D−グルコピラノシル−(+)−カテキン及びジグルコシル化誘導体である4’,7−O−α−D−ジグルコピラノシル−(+)−カテキンの合成も触媒できるためである(MEULENBELD GH, ZUILHOF H, VAN VELDHUIZEN A1 VAN DEN HEUVEL RHH, HARTMANS S (1999). Enhanced (+)-catechin transglucosylating activity of Streptococcus mutans GS-5 glucosyltransferase-D due to fructose removal. Appl Environ Microbiol 65(9): 4141-7)。Streptococcus mutans GS-5のグルコシルトランスフェラーゼのアクセプター特異性に関するいくつかの研究では、芳香族アクセプターが2つの隣接する芳香族ヒドロキシル基を必要とすると思われることを著者に推察させているが(MEULENBELD GH, HARTMANS S (2000) Transglycosylation by Streptococcus mutans GS-5 glucosyltransferase-D: acceptor specificity and engineering reaction conditions. Biotechnol Bioeng 70(4): 363-9)、この記載は、カテキンの7位のグルコシル化の同定(MEULENBELD et al., 1999)及び非ピロカテコール誘導体の合成により是正された。実際、ピノシルビン及びレスベラトロルはそれぞれ3,5−ジヒドロキシ−トランス−スチルベン及び3,4’,5−トリヒドロキシ−トランス−スチルベンであり、Streptococcus mutansにより産生されるグルコシルトランスフェラーゼの粗調製物によりグルコシル化されて、それぞれ3−O−α−D−グルコピラノシル−(E)−ピノシルビン及び3−O−α−D−グルコピラノシル−(E)−レスベラトロルを形成する(SHIM H, HONG W, AHN Y (2003) Enzymatic preparation of phenolic glucosides by Streptococcus mutans. Bull Korean Chem Soc 24(11): 1680-2)。最近、フラボノールであるケルセチン及びミリセチンならびにフラボンであるルテオリンが、特別なグルカンスクラーゼ(glucansucrases)、すなわち、Leuconostoc mesenteroides NRRL B-512F デキストランスクラーゼ(スクロース:1,6−α−D−グルカン6−α−D−グルコシルトランスフェラーゼ、EC2.4.1.5)及びLeuconostoc mesenteroides NRRL B-23192 アルテルナンスクラーゼ(alternansucrase)(スクロース:1,6(1,3)−α−D−グルカン6(3)−α−D−グルコシルトランスフェラーゼ、EC2.4.1.140)により、グルコシル化できることが主張された(BERTRAND A, MOREL S, LEFOULON F, ROLLAND Y, MONSAN P, REMAUD-SIMEON M (2006) Leuconostoc mesenteroides glucansucrase synthesis of flavonoid glucosides by acceptor reactions in aqueous-organic solvents. Carbohydr Res 341: 855-63)。従来、スクロースの存在下では、前者は、グルコシド結合の95%がα−(1→6)(多糖体の骨格)及び5%がα−(1→3)(分岐点)であるグルカン(デキストラン)を産生し、後者は、グルコシド結合が代わりにα−(1→6)及びα−(1→3)であるグルカン(アルテルナン(alternan))を産生する。得られたフラボノイド誘導体は:ルテオリン−3’−O−α−D−グルコピラノシド、ルテオリン−4’−O−α−D−グルコピラノシド、ケルセチン−3’−O−α−D−グルコピラノシド、ケルセチン−4’−O−α−D−グルコピラノシド、ケルセチン−3’−4’−O−α−D−ジグルコピラノシド、ミリセチン−3’−O−α−D−グルコピラノシド、及びミリセチン−4’−O−α−D−グルコピラノシドであった。この研究は、グリコシド誘導体合成での収率が、酵素自体のみではなく(ルテオリン−O−グリコシドの合成は、デキストランスクラーゼとアルテルナンスクラーゼの間で44%から8%に下落する)、2つのアクセプター間のわずかな化学的相違にも依存する(変換はジオスメチン及びジオスミンに対するデキストランスクラーゼでは観察されなかった)ことを示す。
【0015】
フラボノイドの主な従来の欠点(生理学的条件での低い水溶性、特にpH5〜7の範囲及び30℃、ならびにこれらの生物学的条件での自己酸化に対する高感受性)を克服するために、一般的なポリフェノールのグルコシル化誘導体(及び、特にフラボノイド)を得るための実験方法に関する上の重要な(しかし、包括的でない)技術から、厳密なガイドラインを推定して、特定のフェノールグリコシドの酵素的産生を準備することができないことは明らかと思われる。それどころか、当業者がいずれのフラボノイドをいずれの酵素、及びいずれの条件でグルコシル化できるかを予測し、高濃度のグルコシドを得るための方法が存在しないことを示す(表2のまとめ参照)。実際、フェノール構造と、グリコシルトランスフェラーゼによるグリコシルアクセプターとしてのそれらの使用の可能性との間の関係を確立するための試みがなされてきたが、グリコシル化フェノールを得ることは、フェノール性物質の性質及び縮合反応で使用する酵素に強く依存すると依然として思われる。これは、特に、従来はスクロース(EC 2.4.1.5)からα−D−グルカンを合成するグルコシルトランスフェラーゼに当てはまり、これについては、ごく少数のポリフェノール構造について成功裏に報告されているだけである。さらに、研究された主なグルコシルトランスフェラーゼ、すなわち、S. mutans GS-5グルコシルトランスフェラーゼD及びL. mesenteroides NRRL B-512Fデキストランスクラーゼの場合、前者が、プライマー刺激的に及び依存的に水溶性α−グルカンを合成するのに対し(HAMADA N, KURAMITSU HK (1989) Isolation and characterization of the Streptococcus mutans gtfD gene, coding for primer-dependant soluble glucan synthesis. Infect lmmun 56: 1999-2005)、後者が合成しない(ROBYT JF, WALSETH TF (1978) The mechanism of acceptor reactions of Leuconostoc mesenteroides NRRL B 512F. Carbohydr Res 61 : 433-45)ことは言及する必要がある。これらのグルコシルトランスフェラーゼは、異なる作用機序を有し、その結果として、酵素のアクセプターである分子が、必ずしも、他のものに対するアクセプターではなく;換言すると、先に引用した研究において示した通り、S. mutans GS-5グルコシルトランスフェラーゼDの場合にグルコシルアクセプターとして作用する物質が、L. mesenteroides NRRL B-512Fデキストランスクラーゼの場合にもグルコシルアクセプターとして作用し、逆の場合も同様であると考えることは正当ではない。
【0016】
さらには、先行技術の情報は、フェノール類への興味やその数の多さにもかかわらず、フェノールグリコシドは酵素反応によりほとんど得られていないことを示す。
【0017】
【表2】



【0018】
フェノールグリコシドの酵素合成において考えるべき別のキーポイントは、円滑な条件における加水分解反応により最初のフェノール類を回収可能にするフェノール誘導体を作製する可能性である。
【0019】
実際、所与のポリフェノールでは、現在公知の有利な特性が、特定の構造に対応しており、そのため、増加した水溶性及び安定性の特性を伴う貴重な誘導体を、一方ではサッカリド部分に、及び、他方ではアグリコン部分に変換できることを実証する必要がある。グリコレーション(glycolation)に起因する抗酸化活性の減少の1例が、MISHRAらにより与えられる(MISHRA B, PRIYADARSINI KI, KUMAR MS, UNNIKRISHNAN MK, MOHAN H (2003) Effect of O-glycosylation on the antioxidant activity and free radical reactions of a plant flavonoid, chrysoeriol. Bioorg Med Chem 11 : 2677-85)。クリソエリオール(chrysoeriol)及びそのグリコシド(クリソエリオール−6−OG−アセチル−4’−β−D−グルコシド)は、熱帯植物カラクサナズナ(Coronopus didymus)から抽出された2つのフラボノイドである;クリソエリオールは、γ線照射、Fe(III)、及びFe(II)により誘導される脂質過酸化反応を阻止するそれらの能力について試験した場合、グリコシドよりも良好な保護効果を示す。今日まで、この可逆性は、インビトロでデンプン分解酵素により得られたα−グルコシルケルセチンについてのみ公知である(米国特許第5,565,435号)。そのために、グリコシド誘導体としてのフェノール類の官能化が、(i)アグリコンよりも高い水溶性に起因する、化粧品、医薬品、又は他の任意の人工調製物における製剤化を促進するための方法、及び(ii)前記の製剤中におけるこれらのフェノール類の安定性を増加させるための方法である場合、これらのいずれもグルコシル化型のポリフェノール類の普遍的な特性であるが、これらのグリコシド誘導体は生物学的条件において加水分解可能でなければならない。
【0020】
そのために以下を創作する必要がある:
−(同じ物理化学的条件(pH、塩度、温度・・・)における)増加した水溶性及び安定性を有する有用なフェノール化合物の新しい誘導体;及び/又は、
−有用なフェノール化合物の新しい誘導体であって、市販製剤中でその生物学的活性を発揮する必要があり、保存の間には発揮する必要がない場合、その前駆体、すなわち、グルコース及びフェノール性物質に容易に変換できるもの;及び/又は、
−有用なフェノール化合物の新しい誘導体であって、それらは、再現可能な方法で、市場の需要に応じたスケールで、合成段階及び精製段階を実施できる工程を通じて得ることができるもの。
【0021】
ピロカテコール構造(2つの隣接ヒドロキシル基の存在)が、特にポリフェノールの捕捉活性に重要であると認識されるという事実のため、特に効率的と思われるフェノール化合物は、カテコール構造を含むものである;特に目的となるフェノール化合物の内、以下の化合物がある:
−プロトカテク酸(3,4−ジヒドロキシ安息香酸、図2)及びそのエステル誘導体;及び/又は、
−カフェー酸(3,4−ジヒドロキシ桂皮酸、図3)及びそのエステル誘導体、特にロスマリン酸(3,4−ジヒドロキシ桂皮酸(R)−1−カルボキシ−2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)エチルエステル)、クロロゲン酸(3−O−(3,4−ジヒドロキシシンナモイル)−D−キナ酸)、チコリ酸、エキナコシド(echinacoside)、ベルバスコシド(verbascoside) 及びカフェー酸フェネチルエステル、ならびにその還元型ヒドロカフェー酸及びそのエステル誘導体;及び/又は、
−プロトカテク酸又はカフェー酸と密接な関係がなく、ピロカテコール環を含む、特別な構造:3,4−ジヒドロキシマンデル酸(図4)及びその関連物質であるC−C骨格を有する3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸及び3,4−ジヒドロキシフェニルグリコール、ならびにC−C骨格を伴有するエスクレチン(6,7−ジヒドロキシクマリン、図5);及び/又は、
−フラバノンタクシフォリン(3,5,7,3’,4’−ペンタヒドロキシフラバノン、図6)、フスチン(3,7,3’,4’−テトラヒドロキシフラバノン)、エリオジクチオール(5,7,3’,4’−テトラヒドロキシフラバノン);及び/又は、
−フラボノールフィセチン(flavonols fisetine)(3,7,3’,4’−テトラヒドロキシフラボン)及びラムネチン(3,5,3’,4’−テトラヒドロキシ−7−メトキシフラボン);及び/又は、
−フラボンシルシリオール(flavones cirsiliol)及び3’,4’,7−トリヒドロキシフラボン及びイソフラボン3’−ヒドロキシダイゼイン。
【0022】
目的のこれらのフェノール類に関するより詳細な情報を以下に挙げる。
プロトカテク酸(別名3,4−ジヒドロキシ安息香酸、又は(3,4−ジヒドロキシ安息香酸))は、多くの食用植物及び薬用植物において見いだされるが、ほとんどの場合、桂皮酸の誘導体よりも低濃度である。カフェー酸よりも作用は若干弱いが、プロトカテク酸はT47Dヒト乳癌細胞の増殖に対して時間依存的及び用量依存的な阻止効果を示した。プロトカテク酸及びカフェー酸が、アリール炭化水素受容体と直接的に相互作用し、一酸化窒素シンターゼを阻止し、プロアポトーシス効果を有することも実証された(KAMPA M, ALEXAKI Vl, NOTAS G, NIFLI AP, NISTIKAKI A, HATZOGLOU A, BAKOGEORGOU E, KOUIMTZOGLOU E, BLEKAS G, BOSKOU D, GRAVANIS A, CASTANAS E (2004) Antiproliferative and apoptotic effects of selective phenolic acids on T47D human breast cancer cells: potential mechanisms of action. Breast Cancer Res 6: R63-R74)。LIUら(LIU KS, TSAO SM, YIN MC (2005) In vitro antibacterial activity of roselle calyx and protocatechuic acid. Phytother Res 19(11): 942-5)は、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、及びAcinetobacter baumanniiの増殖に及ぼすプロトカテク酸のインビトロでの阻止効果を実証した。阻止帯及び最小発育阻止濃度(MIC)値からのデータでは、プロトカテク酸が試験されたすべての病原菌の増殖を有効に阻止することが示された。最近の研究では、プロトカテク酸が心臓血管疾患及び新生物に対する保護剤として使用可能であることが示された(SZUMILO J. (2005), Postepy Hig Med Dosw (Online) 59: 608-15)。その作用機序は、フリーラジカルの発生の阻止及び捕捉、ならびにそれらの中和に関与する酵素の上方制御を含む、抗酸化活性に主に関連する。
【0023】
プロトカテク酸が、ラットにおけるアゾキシメタン(AOM)誘発性結腸癌発生により誘発された中間バイオマーカーの発現の抑制を介した、結腸癌発生に対する可能な化学予防剤であることも実証された(TANAKA T, KOJIMA T, SUZUI M, MORI H. (1993) Chemoprevention of colon carcinogenesis by the natural product of a simple phenolic compound protocatechuic acid: suppressing effects on tumor development and biomarkers expression of colon tumorigenesis. Cancer Res. Sep 1; 53(17): 3908-13)。そのために、プロトカテク酸は有用な活性化フェノール化合物でもあるが、その生物学的利用率は、より水溶性の高い誘導体を得るための官能化により増加させる必要がある。
【0024】
カフェー酸(別名3,4−ジヒドロキシ桂皮酸)、すなわち、トランス桂皮酸の誘導体(トランス−3−フェニルアクリル酸)には、安息香酸におけるカルボキシレート基よりも高いH供与能及びその後のラジカル安定化を保証する−CH=CH−COOH基が含まれる(RICE-EVANS CA, MILLER NJ, PAGANDA G (1996) Structure-antioxidant activity relationships of flavonoids and phenolic acids. Free Radic Biol Med 20(7): 933-56)。ヒトの健康に及ぼすその可能な薬効(カフェー酸及び3−メトキシカフェー酸又はフェルラ酸が、インビトロで亜硝酸と反応し、インビボでニトロソアミン形成を阻止する;それらは過酸化亜硝酸により媒介されるチロシンニトロ化も抑制する)に加えて、カフェー酸がUVB誘発性紅斑からヒトの皮膚を保護する際に有効であることが最近証明された(SVOBODOVA A, PSOTOVA J, WALTEROVA D (2003) Natural phenolics in the prevention of UV-induced skin damage. A review. Biomed Papers 147: 137-145)。カフェー酸は高頻度に誘導体の形で遭遇され、1−カルボキシ−2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−エタノールではロスマリン酸を形成し、キナ酸ではクロロゲン酸を形成し、及び、フェニルエタノールではカフェー酸フェネチルエステルを形成する。
【0025】
ロスマリン酸(別名3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−[3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパ−2−エノイルオキシ]プロパン酸)は、シソ科属の植物において見いだされ、それには、バジル、セージ、ミント、ローズマリー、及びエゴマ葉が挙げられる(AL SEREITI MR, ABU- KAMER KM, SEN P (1999) Pharmacology of rosemary and its therapeutic potentials. Indian J. Exp Biol 37(2): 124-30)。エゴマ葉又はロスマリン酸抽出物の経口補充により、マウスにおいて、及び、最近ではヒトにおいて、アレルギー反応が抑制されることが示された(MAKINO T, FURUTA A, FUJII H, NAKAGAWA T, WAKUSHIMA H, SAITO K, KANO Y (2001) Biol Pharm Bull 24(10): 1206-9 - TAKAKANO H, OSAKABE N, SANBONGI C, YANAGASIWA R, INOUE KI, YASUDA A, NATSUME M, BABA S, ICHIISHI EI, YOSHIKAWA T (2004) Extract of Perilla frutescens enriched for rosmarinic acid inhibits seasonal allergic rhinoconjunctivitis in humans. Exp Biol Med 229(3): 247-54)。ロスマリン酸は、免疫応答細胞の活性化を妨げることにより、及びすでに活性化された免疫応答細胞においてアポトーシス又は細胞の自殺を誘発することによりアレルギー症状を和らげる(HUR YG, YUN Y, WON J (2004) Rosmarinic acid induces p561ck-dependent apoptosis in jurkat and peripheral T cells via mitochondrial pathway independent from fas/fas ligand interaction. J Immunol 172(1): 79-87)。ロスマリン酸が、静止期のT細胞又は好中球に影響を及ぼすことなく、アレルギー反応の間にアレルギー活性化T細胞及び好中球を殺すことも示された(SANBONGI C, TAKANO H, OSAKABE N (2003) Rosmarinic acid inhibits lung injury induced by diesel exhaust particles. Free Radic Biol Med 34(8): 1060-9)。
【0026】
ロスマリン酸は、マウス耳-受動皮膚アナフィラキシー反応を使用して、マウスにおいてアレルギー反応を低下させることが最初に示された(MAKINO T, FURATA Y, WAKUSHIMA H, FUJII H, SAITO K, KANO Y (2003) Anti-allergic effect of Perilla frutescens and its active constituents. Phytother Res 17(3): 240-3)。1例の研究では、ロスマリン酸が、植物抽出物の大規模スクリーニングにおいてT細胞のIL−2プロモーター活性化を阻止することが示された(WON J, HUR YG, HUR EM, PARK SH, KANG MA, CHOI Y, PARK C, LEE KH, YUN Y (2003), Rosmarinic acid inhibits TCR-induced T cell activation and proliferation in a Lck-dependent manner. Eur J Immunol 33(4): 870-9)。別の研究では、ロスマリン酸が、抗拒絶剤であるラパマイシンとの併用で、T細胞の活性化及び増殖のいずれも阻止することにより強力な免疫抑制効果を有することが示された(YUN SY, HUR YG, KANG MA, LEE J, AHN C, WON J (2003) Synergistic immunosuppressive effects of rosmarinic acid and rapamycin in vitro and in vivo. Transplantation 75(10): 1758-60)。
【0027】
クロロゲン酸(別名1,3,4,5−テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸3−(3,4−ジヒドロキシ桂皮酸))は、ジャガイモ、トマト、及びナスなどのSolenaceousの種における主要な溶解性フェノール類である。それは、リンゴ、西洋ナシ、プラム、及びコーヒーでも相当な濃度で蓄積する。SAWAら(SAWA T, NAKAO M, AKAIKE T, ONO K, MAEDA H (1999) Alkylperoxyl radical-scavenging activity of various flavonoids and other phenolic compounds: implications for the anti-tumor prompted effect of vegetables. J Agric Food Chem 47: 397-402)は、それが、アルキルペルオキシル・ラジカルを捕捉することにより特に有毒な反応種を除去し、それらが起こすDNA損傷を低下させることにより発癌を予防しうることを観察した。
【0028】
カフェー酸フェネチルエステル(CAPE)は、ミツバチ・プロポリスの主成分の1つであり、生きた植物の蕾からミツバチにより集められ、蜜蝋及び唾液分泌物と混合される樹脂状の黒色物質である。CAPEは、転写制御因子NF−κBファミリーのメンバーの活性化に対する強力で特異的なインヒビターであり、そしてこれはその多数の免疫調節及び抗炎症活性に分子基盤を提供しうる(NATARAJAN K, SINGH S, BURKE TR, GRUNBERGER D, AGGARWAL BB (1996) Caffeic acid phenethyl ester is a potent and specific inhibitor of activation of nuclear transcription factor NF-κB. Proc Natl Acad Sci USA 93: 9090-5)。最近では、悪性細胞の転移能及び浸潤能を顕著に阻止できる強力な抗転移剤としてのCAPEの役割に関する証拠が得られた(HWANG HJ, PARK HJ, CHUNG HJ, MIN HY, PARK EJ, HONG JY, LEE SK (2006) Inhibitory effects of caffeic acid phenethyl ester on cancer cell metastasis mediated by the down-regulation of matrix metalloproteinase expression in human HT1080 fibrosarcoma cells. J Nutri Biochem 17: 356-62)。
【0029】
エスクレチン(esculetin又はエスクレチンaesculetin、別名6,7−ジヒドロキシクマリン)は、C−Cフェノールのファミリー類のメンバーであり、クマリン構造を有し、オルト水酸化(記憶のために、カフェー酸は3,4−ジヒドロキシ桂皮酸である)、側鎖二重結合のトランス−シス異性化及びラクトン化を介してトランス肉桂酸から誘導される。トランス型は安定であり、環化できないのに対し、シス型は非常に不安定であり、そのため環化しやすい。グルコースはシス−トランス変換を助ける良好な脱離基である。シロバナシナガワハギ (Melilotus alba)(マメ科)において見いだされる特定の酵素は、シス-グルコシドを特異的に加水分解する(β−グルコシダーゼ)。その特性の一部は、ラットにおけるRas媒介性細胞増殖の阻止及び血管形成術後の血管再狭窄の減弱(PAN SL, HUANG YW, GUH JH, CHANG YL, PENG CY, TENG CM (2003) Esculetin inhibits Ras-mediated cell proliferation and attenuates vascular restenosis following angioplasty in rats. Biochem Pharmacol 65: 1897-1905)及びマッシュルーム・チロシナーゼの阻止(MASAMOTO Y, ANDO H, MURATA Y, SHOMOISHI Y, TADA M, TAKAHATA K (2003) Mushroom tyrosinase inhibitory activity of esculetin isolated from seeds of Euphorbia iathyris L. Biosci Biotechnol Biochem 67(3): 631-4)である。エスクレチンが、6位のβ−グルコシド結合により、グルコシド、すなわち、エスクリン(エスクレチン−6−β−D−グルコピラノシド)として頻繁に遭遇することに言及する必要がある。C−Cフェノール類のメンバーは、基本的にカテコ−ルアミン代謝において見いだされ、3,4−ジヒドロフェニル関連物質は興味深い特性を有しうる(EISENHOFER G, KOPIN IJ, GOLDSTEIN DS (2004) Catecholamine metabolism: a contemporary view with implications for physiology and medicine. Parmacol Rev 56(3): 331-49)。
【0030】
タクシフォリン(又はジヒドロケルセチン、又は3,5,7,3’,4’−ペンタヒドロキシフラバノン、又は(2R,3S)−2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3,5,7−トリヒドロキシ−クロマン−4−ワン)は、様々な樹皮(Larix sibirica Lebed, Pinus pinaster ssp atlantica)やSilybum marinumの種子(シリマリン複合体の調製に使用する)中に存在し、タクシフォリンへのコニフェリルアルコールの酸化的付加により遺伝子工学的に形成されるシリマリンフラボノリグナンを含む。それはB環と他の2つの環との間にキラル結合を有する。ビタミンPP群に関して、それは広範囲の生物学的活性を有する(MIDDLETON E, KANDASWAMI C, THEOHARIDES TC (2000) The effects of plant flavonoids on mammalian cells: implications for inflammation, heart disease and cancer. Pharmacol Rev 52(4): 673-752)。それは、毛細管保護作用、抗炎症作用、及び胃保護作用を示し、腸の平滑筋の痙縮を減少させ、肝臓の機能を増加させ、抗放射能保護活性を有する。タクシフォリンは、皮膚の炎症を低下させる際の潜在的な用途を有することも示された(BITO T, ROY S, SEN CK, SHIRAKAWA T, GOTOH A, UEDA M, ICHIHASHI M, PACKER L (2002) Flavonoids differentially regulate IFN-gamma-induced ICAM-1 expression in human keratinocytes: molecular mechanisms of action. FEBS Lett. 520(1-3): 145-52)。しかし、タクシフォリンは水溶液中での溶解度が低く(約1g/L)、このために、一部の化粧品や治療での用途におけるその使用が妨げられる。
【0031】
グリコシル化は、植物細胞において、及び、インビトロでポリフェノール類の水溶性を高め、フリーラジカルへの反応性を低下させるため、特に目的となるこれらのフェノール類のグルコシドが存在する場合、それらは増加した水溶性及び安定性を有し、これにより増加した付加価値を有するポリフェノール誘導体を表わしてもよい。
【0032】
これらのフェノール類から、それらの最終の使用の間に、代謝可能な最初のフェノール類構造において変換できる誘導体を得ることも有用になりうる。この目的は、本発明の手段により達成できる。
【発明の概要】
【0033】
本発明は、フェノール化合物O−α−グルコシドを生産するための方法であって、スクロースと、Leuconostocの種からの、好ましくはLeuconostoc mesenteroides NRRL B-512Fからのグルカンスクラーゼとを、好ましくは酵素活性に都合の良いpHの緩衝化水中(当業者には周知)又は酵素活性−共溶媒混合物に都合の良いpHの緩衝化水中において、以下の化学式を有するフェノール化合物と共にインキュベートすることを含む方法に関する:
【化1】


〔式中、
R2はH又はOHであり;及び、
R1は、
【化2】


(式中、R3及びR4の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R3及びR4は独立にH又はOHである);及び、
【化3】


(式中、R7及びR8の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R7はH、−OH、又は−OCORからなる群より選択され、R8はH又はOHである);
【化4】


(式中、R5はOH又はOCHであり;R5及びR6がいずれもOHである場合にR10及びR11のいずれもHであることができず、またR10がC11である場合にR11がHであるという条件で、R6はH又はOHであり、R9はH又はOHであり、R10はH、OCH、又はC11であり、R11はH、OH、又はC11である);
‐−(CH−COOR又は−(CH−CONHR(nは0〜2の整数である);
‐−(CR12=CH)−COOR又は−(CR12=CH)−CONHR(R12は、H、又はC−C直鎖、分岐、もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシルもしくはフェニル、より好ましくはメチルもしくはフェニルである);
‐−(CH−OR又は−(CH−NHR(nは0〜2の整数である);
‐−(CH−COR又は−(CH=CH)−COR(nは0〜2の整数である);
‐H;
【化5】


及び、
‐化学式(I)で表わされた環と共に、R1のオルト炭素と一緒になって縮合環(二環式又は三環式)を形成するC−C10炭化水素基(前記の環は場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されている);
からなる群より選択され、
ここで、Rは、H、又は直鎖、分岐、もしくは環状の芳香族もしくは非芳香族の飽和もしくは不飽和C−C10炭化水素基であり、場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されており、ここで、前記の炭化水素基はアルキル、アルケニル、又はアルキニル、好ましくはアルキル又はアルケニルを包含し、これは以下からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換され得る:(C−C)アリール、(C−C)ヘテロ環、(C−C)アルコキシ、(C−C)アシル、(C−C)アルコール、カルボキシル基(−COOH)、(C−C)エステル、(C−C)アミン、アミノ基(−NH)、アミド(−CONH)、(C−C)イミン、ニトリル、ヒドロキシル(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ハロゲン、(C−C)ハロゲノアルキル、チオール(−SH)、(C−C)チオアルキル、(C−C)スルホン、(C−C)スルホキシド、及びこれらの組み合わせ〕。
【0034】
好ましくは、共溶媒なしで、又は共溶媒との混合物中のいずれかで使用する酵素活性に都合の良いpHの緩衝化水は、20〜500mMの範囲の濃度の酢酸ナトリウム又はカリウム緩衝水溶液からなるが、酵素活性に対する負の効果のない任意の他の緩衝物質を使用できる。好ましくは、酵素活性−共溶媒混合物に都合の良いpHの緩衝化水は、水、好ましくは上記の緩衝化水と、ジメチルスルホキシド(DMSO)との混合物から成り、DMSOの割合(容積/容積)は35%未満、好ましくは15〜25%、より好ましくは約15%である。
【0035】
第一の実施態様において、フェノール化合物のR1は
【化6】


であり、式中、R3及びR4の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R3及びR4は独立にH又はOHである。特にフェノール化合物は、タクシフォリン、エリオジクチオール、ジヒドロロビネチン、及びフスチンからなる群より選択できる。
【0036】
第二の実施態様において、フェノール化合物のR1は
【化7】


であり、式中、R7及びR8の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R7はH、−OH、又は−OCORからなる群より選択され、R8はH又はOHである。特にフェノール化合物は、カテキン、エピカテキン、没食子酸カテキン、没食子酸エピガロカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、没食子酸ガロカテキン、及び没食子酸エピガロカテキンからなる群より選択できる。
【0037】
第三の実施態様において、フェノール化合物のR1は
【化8】


であり、式中、R5はOH又はOCHであり;R5及びR6がいずれもOHである場合にR10及びR11のいずれもHであることができず、またR10がC11である場合にR11がHであるという条件で、R6はH又はOHであり、R9はH又はOHであり、R10はH、OCH、又はC11であり、R11はH、OH、又はC11である。特にフェノール化合物は、ラムネチン、フィゼチン、ロビネチン(robinetin)、ゴシペチン、オリエンチン(orientin)、ホモオリエンチン(homoorientin)、及びシルシリオール(cirsiliol)からなる群より選択できる。
【0038】
第四の実施態様において、フェノール化合物のR1は、−(CH−COOR又は−(CH−CONHRであり、nは0〜2の整数である。特にフェノール化合物は、ホモプロトカテク酸、ジヒドロカフェー酸、プロトカテク酸エチルエステル、没食子酸プロピル、没食子酸、ハマメリタンニン(hamamelitannin)(2’,5−ジ−O−ガロイル−ハマメローズ)、及びプロトカテク酸からなる群より選択できる。
【0039】
第五の実施態様において、フェノール化合物のR1は、−(CR12=CH)−COOR又は−(CR12=CH)−CONHRであり、R12は、H、又はC−C直鎖もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、シクロヘキシル、もしくはフェニルである。特にフェノール化合物は、カフェー酸、ロスマリン酸、エスクレチン、4−メチルエスクレチン、ノルダルベルギン(nordalbergin)(6,7−ジヒドロキシフェニルクマリン)、クロロゲン酸、カフェー酸フェネチルエステル、チコリ酸(ジカフェオイル酒石酸)、エキナコシド(2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)エチルO−6−デオキシ−アルファ−L−マンノピラノシル−(1→3)−O−(ベータ−D−グルコピラノシル−(1→6))−、4−(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノアート)、ベータ−D−グルコピラノシド)、及びベルバスコシドからなる群より選択できる。
【0040】
第六の実施態様において、フェノール化合物のR1は、−(CH−OR又は−(CH−NHRであり、nが0〜2の整数であり、例えば、フェノール化合物はヒドロキシチロソール(hydroxytyrosol)である。
【0041】
第七の実施態様において、フェノール化合物のR1は、−(CH−COR又は−(CH=CH)−CORであり、nは0〜2の整数である。特にフェノール化合物は、マクルリン(maclurine)、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ブテイン(butein)(2’,3,4,4’−テトラヒドロキシカルコン)、3,4−ジヒドロキシアセトフェノン、マレイン(marein)(2’,3,3’,4,4’−ペンタヒドロキシ−4’−グルコシルカルコン)、及びエリオジクチオールカルコン(2’,4’,6’,3,4−ペンタヒドロキシカルコン)からなる群より選択できる。
【0042】
第八の実施態様において、フェノール化合物のR1は、
【化9】


からなる群より選択される。
【0043】
特にフェノール化合物は、それぞれピロカテコール、ノルジヒドログアイアレチン酸、3−ヒドロキシダイゼイン、オレウロペイン、及びマリチメイン(maritimein)(3’,4’,6,7−テトラヒドロキシ−6−O−グルコシルオーロン(glucosylaurone))からなる群より選択できる。
【0044】
第九の実施態様において、フェノール化合物のR1は、式(I)で表わされた環と共に、R1のオルト炭素と一緒になって縮合環(二環式又は三環式)を形成するC−C10炭化水素基であり、前記の環は場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されている。
【0045】
特にフェノール化合物は、
【化10】


からなる群より選択できる。
【0046】
好ましくは、フェノール化合物は、アントラロビン及びサルソリノール(salsolinol)(1−メチル−6,7−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン)からなる群より選択できる。
【0047】
本発明は、本発明の方法により得ることができるフェノール化合物O−α−グルコシドに関するものでもある。
【0048】
したがって、本発明は、以下の化学式を有するフェノール化合物O−α−グルコシドに関する:
【化11】


〔式中、A及びBの少なくとも1つが−α−グルコシル残基であるという条件で、A及びBは、同一又は異なって、H又は−α−グルコシル残基であり;
R2はH又はOHであり;
R1は、
【化12】


(式中、R3及びR4の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R3及びR4は独立にH又はOHである);及び、
【化13】


(式中、R2がHであり、R7及びR8のいずれもOHではなく、R7及びR8の内の少なくとも1つがOHであるという条件で、R7はH、−OH、又は−OCORからなる群より選択され、及びR8はH又はOHである);
【化14】


(式中、R5はOH又はOCHであり;
R5及びR6がいずれもOHである場合にR10及びR11のいずれもHであることができず、またR10がC11である場合にR11がHであるという条件で、R6はH又はOHであり、R9はH又はOHであり、R10はH、OCH、又はC11であり、R11はH、OH、又はC11である);
‐−(CH−COOR又は−(CH−CONHR(nは0〜2の整数である);
‐−(CR12=CH)−COOR又は−(CR12=CH)−CONHR(R12は、H、又はC−C直鎖、分岐、もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシルもしくはフェニル、より好ましくはメチルもしくはフェニルであり;
‐−(CH−OR又は−(CH−NHR(nは0〜2の整数である);
‐−(CH−COR又は−(CH=CH)−COR(nは0〜2の整数である);
‐H;
【化15】


及び、
‐化学式(I)で表わされた環と共に、R1のオルト炭素と一緒になって縮合環(二環式又は三環式)を形成するC−C10炭化水素基(前記の環は場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されている);
からなる群より選択される
ここで、Rは、H、又は直鎖、分岐、もしくは環状の芳香族もしくは非芳香族の飽和もしくは不飽和C−C10炭化水素基であり、場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されており、ここで、前記の炭化水素基はアルキル、アルケニル、又はアルキニル、好ましくはアルキル又はアルケニルを包含し、これらは以下からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換され得る:(C−C)アリール、(C−C)ヘテロ環、(C−C)アルコキシ、(C−C)アシル、(C−C)アルコール、カルボキシル基(−COOH)、(C−C)エステル、(C−C)アミン、アミノ基(−NH)、アミド(−CONH)、(C−C)イミン、ニトリル、ヒドロキシル(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ハロゲン、(C−C)ハロゲノアルキル、チオール(−SH)、(C−C)チオアルキル、(C−C)スルホン、(C−C)スルホキシド、及びこれらの組み合わせ〕。
【0049】
化学式(II)の第一の好ましいフェノール化合物O−α−グルコシドは、
【化16】


であるR1を有し、好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、タクシフォリンO−α−グルコシド、エリオジクチオールO−α−グルコシド、ジヒドロロビネチンO−α−グルコシド、及びフスチンO−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0050】
化学式(II)の第二の好ましいフェノール化合物O−α−グルコシドは、
【化17】


であるR1を有し、好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、没食子酸カテキンO−α−グルコシド、没食子酸エピカテキンO−α−グルコシド、ガロカテキンO−α−グルコシド、エピガロカテキンO−α−グルコシド、没食子酸ガロカテキンO−α−グルコシド、及び没食子酸エピガロカテキンO−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0051】
化学式(II)の第三の好ましいフェノール化合物O−α−グルコシドは、
【化18】


であるR1を有し、好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、ラムネチンO−α−グルコシド、フィゼチンO−α−グルコシド、ロビネチンO−α−グルコシド、ゴシペチンO−α−グルコシド、オリエンチンO−α−グルコシド、ホモオリエンチンO−α−グルコシド、及びシルシリオールO−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0052】
化学式(II)の第四の好ましいフェノール化合物O−α−グルコシドは、−(CH−COOR又は−(CH−CONHRであるR1を有し、nは0〜2の整数であり、好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、ホモプロトカテク酸O−α−グルコシド、ジヒドロカフェー酸O−α−グルコシド、プロトカテク酸エチルエステルO−α−グルコシド、没食子酸プロピルO−α−グルコシド、没食子酸O−α−グルコシド、ハマメリタンニンO−α−グルコシド、及びプロトカテク酸O−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0053】
化学式(II)の第五の好ましいフェノール化合物O−α−グルコシドは、−(CR12=CH)−COOR又は−(CR12=CH)−CONHRであるR1を有し、R12は、H、又はC−C直鎖もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシルもしくはフェニルであり、好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、カフェー酸O−α−グルコシド、ロスマリン酸O−α−グルコシド、エスクレチンO−α−グルコシド、4−メチルエスクレチンO−α−グルコシド、ノルダルベルギン(6,7−ジヒドロキシフェニルクマリン)O−α−グルコシド、クロロゲン酸O−α−グルコシド、カフェー酸フェネチルエステルO−α−グルコシド、チコリ酸(ジカフェオイル酒石酸)O−α−グルコシド、エキナコシド(2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)エチルO−6−デオキシ−アルファ−L−マンノピラノシル−(1→3)−O−(ベータ−D−グルコピラノシル−(1→6))−、4−(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノアート)O−α−グルコシド、ベータ−D−グルコピラノシドO−α−グルコシド、及びベルバスコシドO−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0054】
化学式(II)の第六の好ましいフェノール化合物O−α−グルコシドは、−(CH−OR又は−(CH−NHRであるR1を有し、nは0〜2の整数であり、好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、ヒドロキシチロソールO−α−グルコシドである。
【0055】
化学式(II)の第七の好ましいフェノール化合物O−α−グルコシドは、−(CH−COR又は−(CH=CH)−CORであるR1を有し、nは0〜2の整数であり、好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、マクルリンO−α−グルコシド、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドO−α−グルコシド、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンO−α−グルコシド、ブテイン(2’,3,4,4’−テトラヒドロキシカルコン)O−α−グルコシド、3,4−ジヒドロキシアセトフェノンO−α−グルコシド、マレイン(2’,3,3’,4,4’−ペンタヒドロキシ−4’−グルコシルカルコン)O−α−グルコシド、及びエリオジクチオールカルコン(2’,4’,6’,3,4−ペンタヒドロキシカルコン)O−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0056】
化学式(II)の第八の好ましいフェノール化合物O−α−グルコシドは、
【化19】


からなる群より選択されるR1を有する。
【0057】
フェノール化合物O−α−グルコシドは、好ましくは、ピロカテコールO−α−グルコシド、ノルジヒドログアイアレチン酸O−α−グルコシド、3−ヒドロキシダイゼインO−α−グルコシド、オレウロペインO−α−グルコシド、及びマリチメイン(3’,4’,6,7−テトラヒドロキシ−6−O−グルコシルオーロン)O−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0058】
化学式(II)の第九の好ましいフェノール化合物O−α−グルコシドのR1は、化学式(I)で表わされた環と共に、R1のオルト炭素と一緒になって縮合環(二環式又は三環式)を形成するC−C10炭化水素基であり、前記の環は場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されている。好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、アントラロビンO−α−グルコシド及びサルソリノール(1−メチル−6,7−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン)O−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0059】
好ましい実施態様において、本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドは、グルコース単量体、二量体、三量体、又は四量体、好ましくはモノグルコシドである−α−グルコシル残基を有する。
【0060】
好ましくは、本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドは、同じ生理学的条件において対応するアグリコンよりも20倍高い溶解度を有する。
【0061】
本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドは、酵素により切断されて、対応するアグリコンを放出できる。前記の酵素はO−α−グルコシダーゼである。好ましくは、前記の酵素は、ヒトに関連する微生物、特に皮膚、口腔、腸管、上気道、又は女性生殖器に関連するヒトの微生物、さらに好ましくは皮膚に関連する微生物から得られる。
【0062】
本発明はさらに、医薬としての本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドに関するものである。
【0063】
本発明は、本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドを含む医薬又は化粧品組成物に関する。
【0064】
本発明は、局所、経口、直腸、経鼻、又は経膣投与される医薬又は化粧品組成物を調製するための本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドの使用に関するものでもあり、ここで皮膚、口腔、腸管、上部呼吸器系、又は女性生殖器に関連する微生物から得られる酵素は、対応するアグリコンを放出する。
【0065】
本発明は、癌、心臓血管疾患、細菌感染、UVB誘発性紅斑、アレルギー、炎症性障害又は免疫障害を治療又は予防するための医薬又は化粧品組成物を調製するための本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドの使用に関するものでもある。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】フラボノイド:炭素原子の基本構造及び番号。
【図2】プロトカテク酸。
【図3】カフェー酸(3,4−ジヒドロキシ桂皮酸)。
【図4】3,4−ジヒドロキシマンデル酸。
【図5】エスクレチン(6,7−ジヒドロキシクマリン)。
【図6】タクシフォリン。
【図7】カフェー酸誘導体のグルコシド。
【図8】3,4−ジヒドロキシ安息香酸及び他のフェノール酸のグルコシド。
【図9】フラバノールのグルコシド。
【図10】フラボノール、イソフラボン、フラボン、及びジヒドロフラボノールのグルコシド。
【図11】中性ポリフェノールのグルコシド。
【図12】グルコシド・アクセプターとしてタクシフォリンを含む反応媒質のHPLCクロマトグラム(289nm)。インキュベーション持続時間:0。
【図13】グルコシド・アクセプターとしてタクシフォリンを含む反応媒質のHPLCクロマトグラム(289nm)。インキュベーション持続時間:22時間。
【図14】約8.13分に溶出された物質の質量スペクトル。インキュベーション持続時間:22時間。
【図15】約8.13分に溶出された物質のUVスペクトル。インキュベーション持続時間:22時間。
【図16】約6.15分に溶出された物質の質量スペクトル。インキュベーション持続時間:22時間。
【図17】約6.15分に溶出された物質のUVスペクトル。インキュベーション持続時間:22時間。
【図18】タクシフォリン及びタクシフォリン・グルコシド(289nm)の水溶液のHPLCクロマトグラム。(最初のメタノール濃度が10%での溶出−方法1)。
【図19】高純度タクシフォリングルコシド調製物のHPLCクロマトグラム(289nm;方法2)。
【図20】タクシフォリングルコシドの存在下又は非存在下での微生物増殖(ヒトの皮膚微生物叢)。
【図21】ヒトの皮膚微生物叢の存在下におけるタクシフォリングルコシドの発生及びタクシフォリン濃度。
【0067】
図7−11に示す構造を図解として与える。本発明においてグルコシドの他の異性体も検討する。
【0068】
発明の詳細な説明
定義
フェノール化合物、すなわちフェノール類:1又は複数のヒドロキシル置換基を持つ芳香環を有する化合物。
【0069】
フラボノイド:15個の炭素原子を有するポリフェノール化合物で、2つのベンゼン環が直鎖の3炭素鎖により連結され、C−C−C系をもたらす。第一のベンゼン環(A環)は、酸素原子と、2つのベンゼン環とを連結する3炭素原子と一緒になって、クロマン骨格を形成する(A環及びC環)。クロマン骨格は、2位、3位、又は4位に第二の芳香環Bを持つ。数例において、六員ヘテロC環は異性体の開状態で存在するか、又は五員環に置き換えられる。ヘテロC環の酸化状態及びB環の位置のいずれもフラボノイドの分類に重要である:
‐アントシアニン:C環は、2において置換された3−ヒドロキシクロメン骨格に関与するピランであり、
‐カテキン物質(フラバノール):C環は、2において置換された3−ヒドロキシ又は3,4−ジヒドロキシクロマン骨格に関与する水素化テトラヒドロピランであり(縮合可能なタンニンを形成するカテキン、エピカテキン、ガロカテキン、及びエピガロカテキン)、
‐フラボン:C環は、2において置換されたピロンであり、
‐フラボノール:C環は、3において水素化され、2において置換されたピロンであり、
‐フラバノン:C環は、2において置換されたジヒドロピロンであり、
‐ジヒドロフラボノール:C環は、3において水素化され、2において置換されたジヒドロピロンであり、
‐イソフラボン:2の代わりに3において置換を伴うフラボン、
‐カルコン及びジヒドロカルコン:C環は開環しており、C2C3二重結合を伴う(カルコン)、又は伴わず(ジヒドロカルコン)、
‐オーロン:C環は五員環である。
【0070】
酵素:他の分子(指定産物)を得るために、分子(指定基質)上で化学反応を触媒するタンパク分子。推奨名、反応の種類及び酵素委員会(EC)コード番号を強調する系統名を各酵素に割り当てる。これらのコード番号には、ECにより事前に決定され、点で切り離された4つの要素が含まれる。最初の番号は、酵素が属する6つの主な区分(クラス)を示す:オキシドレダクターゼ(EC1)、トランスフェラーゼ(EC2)、ヒドロラーゼ(EC3)、リアーゼ(EC4)、イソメラーゼ(EC5)及びリガーゼ(EC6)。2番目の番号はサブクラスを、3番目はサブ‐サブクラスを示し、そして4番目はそのサブ‐サブクラスにおける酵素のシリアル番号である。
【0071】
生物学的利用率:分子又は他の物質が、投与又は適用後に、生理活性部位で吸収される又は利用可能になる程度又は率。
【0072】
グルカンスクラーゼ:EC番号2.4.1.5を伴うグルコシルトランスフェラーゼの一般名(以下を参照;KRALJ S, VAN GEEL-SCHUTTEN GH, DONDORFF MMG, KIRSANOVS S, VAN DER MAAREL MJEC, DIJKHUIZEN L (2004) Glucan synthesis in the genus Lactobacillus: isolation and characterization of glucansucrase genes, enzymes and glucan products from six different strains. Microbiology 150: 3681-90)。
【0073】
グリコシルトランスフェラーゼ:1つの化合物(前記の供与体)から別の化合物(前記のアクセプター)へのグルコシル基の転移を触媒する酵素。グリコシルトランスフェラーゼはトランスフェラーゼとして分類され、EC番号はEC2.4である。六炭糖(1分子当たり6つの炭素原子を有する炭水化物分子)を転移させるトランスフェラーゼは、サブ‐サブクラスEC2.4.1に含まれる。アクセプターにスクロースのグルコース部分を転移させるトランスフェラーゼは、EC2.4.1.4(スクロース:1,4−α−D−グルカン4−α−D−グルコシルトランスフェラーゼ;推奨名:アミロスクラーゼ)、EC2.4.1.5(スクロース:1,6α−D−グルカン6α−D−グルコシルトランスフェラーゼ;推奨名:デキストランスクラーゼ)、EC2.4.1.7(スクロース:オルトリン酸α−D−グルコシルトランスフェラーゼ;推奨名:スクロースホスホリラーゼ)である。
【0074】
グリコン:炭水化物ファミリーに属するグリコシド誘導体の化学部分。グリコン基がグルコースである場合、分子はグルコシドである;それがフルクトースである場合、分子はフルクトシドである;それがグルクロン酸である場合、分子はグルクロニドである。
【0075】
グリコシド結合:グリコンと他のグリコン又はアグリコンとの間の化学結合。ヘイワース投影式を考慮した場合、グリコシド結合が環状炭水化物分子の平面の「下に」又は「上に」位置するかに応じて、グリコシドはα−グリコシド又はβ−グリコシドとして分類される。
【0076】
アグリコン:グリコン誘導体ではないグリコシド誘導体の化学部分。
【0077】
「含む」を使用する場合、これは好ましくは、「本質的に成る」、より好ましくは「成る」で置き換えることができる。
【0078】
本発明との関連で、「アルキル」という用語は、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘネイコシル基、ドコシル基、及びこれらの他の異性体などの基を意味する。(C−C)アルキルは、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びこれらの他の異性体を意味する。(C−C)アルキルは、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、又はイソプロピル基を意味する。
【0079】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの不飽和エチレン結合を有する上で定義したアルキル基を指し、及び「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの不飽和アセチレン結合を有する上で定義したアルキル基を指す。(C−C)アルケニルとしては、エテニル、プロペニル(1−プロペニル又は2−プロペニル)が挙げられる。
【0080】
「アリール」基は、5から9つの炭素原子を有する単環式、二環式、又は三環式芳香族炭水化物である。例としては、特にフェニルが挙げられる。
【0081】
「ヘテロ環」基は、1又は複数のヘテロ原子、好ましくは1から5つの環内ヘテロ原子を含む1〜3つの環を含む基である。それらは、単環式、二環式、又は三環式でありうる。それらは、芳香族であってもよいし、又は芳香族でなくともよい。芳香族ヘテロ環の例としては、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、及びトリアジン基が挙げられる。二環式の例としては、特にキノリン、イソキノリン及びキナゾリン基(2つの六員環)、及びインドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、及びインダゾール(六員環及び五員環)が挙げられる。非芳香族ヘテロ環には、特にピペラジン、ピペリジンなどが含まれる。
【0082】
(C−C)アルコキシとしては、メトオキシ、エトオキシ、プロピルオキシ、及びイソプロピルオキシが挙げられる。
(C−C)アシルとしては、アセチル、プロピルアシル、及びイソプロピルアシル(isopropylacyl)が挙げられる。
(C−C)アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールが挙げられる。
(C−C)エステルとしては、メチルエステル及びエチルエステルが挙げられる。
(C−C)アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、及びプロピルアミンが挙げられる。
(C−C)イミンとしては、メチルイミン、エチルイミン、及びプロピルイミンが挙げられる。
ハロゲンは、Cl、Br、I、又はFでありうる。
(C−C)ハロゲノアルキルとしては、ハロゲノメチル、ハロゲノエチル、及びハロゲノプロピルが挙げられる。
(C−C)チオアルキルとしては、チオメチル、チオエチル、及びチオプロピルが挙げられる。
(C−C)スルホンとしては、メチルスルホン、エチルスルホン、及びプロピルスルホンが挙げられる。
(C−C)スルホキシドとしては、メチルスルホキシド、エチルスルホキシド、プロピルスルホキシド、及びイソプロピルスルホキシドが挙げられる。
「ヘテロ原子」は、N、S、又はOを示す。
【0083】
本発明は、カテコール構造を含む、フェノール化合物、例えば、プロトカテク酸及びそのエステル誘導体、カフェー酸及びそのエステル誘導体、特にロスマリン酸、クロロゲン酸及びカフェー酸フェネチルエステル及びヒドロカフェー酸又は3,4−ジヒドロキシヒドロ桂皮酸、3,4−ジヒドロキシフェニルグリコール、エスクレチン、タクシフォリン、フスチン、エリオジクチオール、フィゼチン、及びラムネチンの内より選択されるフェノール化合物のO−α−グルコシドを調製する方法にも関する。特にカテコール構造を含むフェノール化合物は、没食子酸エピカテキン、エリオジクチオール、エスクレチン、エピカテキン、フィゼチン、フスチン、ホモプロトカテク酸、プロトカテク酸、プロトカテク酸エチルエステル、ヒドロキシチロソール、マクルリン、ノルジヒドログアイアレチン酸、オレウロペイン、ピロカテコール、ラムネチン、ロスマリン酸、タクシフォリン、3−ヒドロキシダイゼイン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、カフェー酸、ジヒドロカフェー酸、カフェー酸フェネチルエステル、カテキン、シルシリオール、クロロゲン酸、ゴシペチン、オリエンチン、ホモオリエンチン、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、ブテイン、3,4−ジヒドロキシアセトフェノン、マレイン、マリチメイン、エリオジクチオールカルコン、4−メチルエスクレチン、ノルダルベルギン、サルソリノール、チコリ酸、エキナコシド、ベルバスコシド、アントラロビン、エピガロカテキン、ジヒドロロビネチン、ガロカテキン、没食子酸、没食子酸プロピル、没食子酸エピガロカテキン、ハマメリタンニン、及びロビネチンからなる群より選択できる。カテコール構造を含むフェノール化合物のO−α−グルコシドを調製するための方法は、シルシリオール、3’,4’,7−トリヒドロキシフラボン及び3’−ヒドロキシダイゼイン(フラボン及びイソフラボン)でも実施できる。
【0084】
この目的のために、酵素反応は、食品及び飼料分野において使用される、大量にあり、かなり安価な物質であるスクロースを使用して達成される。この反応は、グルコシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1)によるカテコール環のヒドロキシ基へのスクロースのグルコース部分の転移に存するか、又は第一のグルコシル残基がカテコール環のヒドロキシル基に結合した場合、酵素の特異性に依存したこのヒドロキシル基の位置である固定グルコースのヒドロキシル基へのスクロースのグルコース部位の転移に存する。上で引用した各フェノール化合物は前記の環状上に2つのヒドロキシル基を持つため、この酵素反応により2つの誘導体を得ることができる。グリコシド誘導体の集団が合成反応に由来する場合(集団により、カテコール環が、そのヒドロキシル基の1つを、又は、そのヒドロキシル基の両方を1つのグリコシル残基又はオリゴ糖により置換されている化合物と理解される)、集団全体が前記の産物であり、本発明に対応する。
【0085】
本発明は、フェノール化合物O−α−グルコシドを生産するための方法に関するものであって、スクロースと、Leuconostoc種からの、好ましくはLeuconostoc mesenteroides NRRL B-512Fからのグルカンスクラーゼとを、酵素活性に都合の良いpHの緩衝化水中(当業者には周知)又は酵素活性-共溶媒混合物に都合の良いpHの緩衝化水中において、以下の化学式を有するフェノール化合物と共にインキュベートすることを含む:
【化20】


〔式中、
R2はH又はOHあり;及び、
R1は、
【化21】


(式中、R3及びR4の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R3及びR4は独立にH又はOHである);及び、
【化22】


(式中、R7及びR8の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R7はH、−OH、又は−OCORからなる群より選択され、R8がH又はOHである);
【化23】


(式中、R5はOH又はOCHであり;
R5及びR6がいずれもOHである場合にR10及びR11のいずれもHであることができず、またR10がC11である場合にR11がHであるという条件で、R6はH又はOHであり、R9はH又はOHであり、R10はH、OCH、又はC11であり、R11はH、OH、又はC11である);
‐−(CH−COOR又は−(CH−CONHR(nは0〜2の整数である);
‐−(CR12=CH)−COOR又は−(CR12=CH)−CONHR(R12は、H、又はC−C直鎖、分岐、もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシルもしくはフェニル、より好ましくはメチルもしくはフェニルである);
‐−(CH−OR又は−(CH−NHR(nは0〜2の整数である);
‐−(CH−COR又は−(CH=CH)−COR(nは0〜2の整数である);
‐H;
【化24】


及び、
‐化学式(I)で表わされた環と共に、R1のオルト炭素と一緒になって縮合芳香族環(二環式又は三環式)を形成するC−C10炭化水素基;
からなる群より選択され、
ここで、Rは、H、又は直鎖、分岐、もしくは環状の芳香族もしくは非芳香族の飽和もしくは不飽和C−C10炭化水素基であり、場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されており、ここで、前記の炭化水素基はアルキル、アルケニル、又はアルキニル、好ましくはアルキル又はアルケニルを包含し、これは以下からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換され得る:(C−C)アリール、(C−C)ヘテロ環、(C−C)アルコキシ、(C−C)アシル、(C−C)アルコール、カルボキシル基(−COOH)、(C−C)エステル、(C−C)アミン、アミノ基(−NH)、アミド(−CONH)、(C−C)イミン、ニトリル、ヒドロキシル(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ハロゲン、(C−C)ハロゲノアルキル、チオール(−SH)、(C−C)チオアルキル、(C−C)スルホン、(C−C)スルホキシド、及びこれらの組み合わせ〕。
【0086】
第一の実施態様において、R2はHである。この実施態様において、フェノール化合物は、例えば、没食子酸エピカテキン、エリオジクチオール、エスクレチン、エピカテキン、フィゼチン、フスチン、ホモプロトカテク酸、プロトカテク酸、プロトカテク酸エチルエステル、ヒドロキシチロソール、マクルリン、ノルジヒドログアイアレチン酸、オレウロペイン、ピロカテコール、ラムネチン、ロスマリン酸、タクシフォリン、3−ヒドロキシダイゼイン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、カフェー酸、ジヒドロカフェー酸、カフェー酸フェネチルエステル、カテキン、シルシリオール、クロロゲン酸、ゴシペチン、オリエンチン、ホモオリエンチン、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、ブテイン、3,4−ジヒドロキシアセトフェノン、マレイン、マリチメイン、エリオジクチオールカルコン、4−メチルエスクレチン、ノルダルベルギン、サルソリノール、チコリ酸、エキナコシド、ベルバスコシド、及びアントラロビンでありうる。
【0087】
代わりの実施態様において、R2はOHである。この実施態様において、フェノール化合物は、例えば、エピガロカテキン、ジヒドロロビネチン、ガロカテキン、没食子酸、没食子酸プロピル、没食子酸エピガロカテキン、ハマメリタンニン、及びロビネチンでありうる。
【0088】
本発明に従った方法の特定の実施態様において、フェノール化合物は以下の化学式を有し:
【化25】


式中、
R2はH又はOHであり;及び、
R1は、
【化26】


であり、
式中、R3及びR4の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R3及びR4は独立にH又はOHである。
【0089】
好ましい実施態様において、R3及びR4はOHである。別の好ましい実施態様において、R3はHであり、及び、R4はOHである。さらなる好ましい実施態様において、R3はOHであり、R4はHである。好ましい特定の実施態様において、R2はHであり、及び、R3/R4は以下の組み合わせより選択される:OH/OH;H/OH;OH/H。別の好ましい実施態様において、R2はOHであり、及び、R3/R4は以下の組み合わせより選択される:OH/OH;H/OH;OH/H。好ましくは、フェノール化合物は、タクシフォリン、エリオジクチオール、ジヒドロロビネチン、及びフスチンからなる群より選択される。
【0090】
本発明に従った方法の特定の別の実施態様において、フェノール化合物は以下の化学式を有し:
【化27】


式中、R2はH又はOHであり;及び、
R1は、
【化28】


であり、
式中、R7及びR8の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R7はH、−OH、又は−OCORからなる群より選択され、R8はH又はOHである。好ましい実施態様において、R8はOHであり、及び、R7はOH又はOCORである。より好ましい実施態様において、R7及びR8はいずれもOHである。別の好ましい実施態様において、R7は−OCORであり、R8はOHである。好ましい特定の実施態様において、R2はHであり、及び、R3/R4は以下の組み合わせより選択される:H/OH、OH/H、OH/OH、及びOCOR/OH。好ましい特定の別の実施態様において、R2はOHであり、及び、R3/R4は以下の組み合わせより選択される:H/OH、OH/H、OH/OH、及びOCOR/OH。より好ましくは、Rは
【化29】


である。
【0091】
好ましくは、フェノール化合物は、カテキン、エピカテキン、没食子酸カテキン、没食子酸エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、没食子酸ガロカテキン、及び没食子酸エピガロカテキンからなる群より選択される。
【0092】
本発明に従った方法のさらなる特定の実施態様において、フェノール化合物は以下の化学式を有し:
【化30】


式中、
R2はH又はOHあり;及び、
R1は
【化31】


であり、
式中、R5はOH又はOCHであり;
R5及びR6がいずれもOHである場合にR10及びR11のいずれもHであることができず、またR10がC11である場合にR11がHであるという条件で、R6はH又はOHであり、R9はH又はOHであり、R10はH、OCH、又はC11であり、R11はH、OH、又はC11である。特にR6、R5、及びR11は、以下の組み合わせから選択でき:
a) R6がOHであり、及び、R5がOCHであり、及び、R11がHである;
b) R6がOHであり、及び、R5がOHであり、及び、R11がOHである;
c) R6がOHであり、及び、R5がOHであり、及び、R11がC11である;及び、
d) R6HがHであり、及び、R5がOHであり、及び、R11がHである;
ならびに、
R10がC11である場合、R11がHであるという条件で、R9はH又はOHであり、及び、R10はH又はOCH又はC11である。
【0093】
好ましい実施態様において、R9はOHであり、R10はHであり、及び、R11はHであるのに対し、R6はOHであり、及び、R5はOCHであるか、又は、R6はHであり、及び、R5はOHである。好ましくは、R2はHである。あるいは、R2はOHである。
【0094】
別の好ましい実施態様において、R9はHであり、及び、R10はOCH又はC11である。この実施態様の特定の局面において、R9及びR11はHであり、R10及びR5はOCHであり、及び、R6はOHである。
【0095】
好ましい追加の実施態様において、R10がC11である場合にR11がHであるという条件で、R5及びR6のいずれもOHであり、R9はH又はOHであり、R10はOH又はC11であり、及び、R11はH、OH、又はC11である。別の好ましい実施態様において、R5及びR6のいずれもOHであり、R9はH又はOHであり、R10はHであり、及び、R11はOH又はC11である。
【0096】
別の好ましい実施態様において、R9はHであり、及び、R10はHである。さらなる好ましい実施態様において、R9はHであり、R10及びR5はOCHであり、及び、R6はOHである。
【0097】
特定の実施態様において、R2、R5、R6、R9、R10、及びR11は、上で言及した組み合わせから選択できる。
【0098】
【表3】

【0099】
好ましくは、フェノール化合物は、ラムネチン、フィゼチン、ロビネチン、ゴシペチン、オリエンチン、ホモオリエンチン、及びシルシリオールからなる群より選択される。
【0100】
本発明に従った方法のさらなる特定の実施態様において、フェノール化合物は以下の化学式を有し:
【化32】


式中、R2はH又はOHあり;及び、R1は−(CH−COOR又は−(CH−CONHRであり、nは0〜2の整数である。好ましい実施態様において、R2はHである。あるいは、R2はOHである。好ましくは、Rは、H、C−Cアルキル、好ましくはメチル基、エチル又はプロピル基、及び
【化33】


からなる群より選択される。
【0101】
第一のより好ましい実施態様において、nは0であり、及び、Rは好ましくはHである。第二のより好ましい実施態様において、nは1であり、及び、Rは好ましくはHである。第三のより好ましい実施態様において、nは2であり、及び、Rは好ましくはHである。別の好ましい実施態様において、nは0であり、及び、RはC−Cアルキルであり、好ましくはメチル、エチルもしくはプロピル、又は
【化34】


である。
【0102】
好ましい実施態様において、R1は−(CH−COORである。好ましい実施態様において、RはHである。
【0103】
好ましくは、フェノール化合物は、ホモプロトカテク酸、ジヒドロカフェー酸、プロトカテク酸エチルエステル、没食子酸プロピル、没食子酸、ハマメリタンニン(2’,5−ジ−O−ガロイル−ハマメローズ))、及びプロトカテク酸からなる群より選択できる。
【0104】
本発明に従った方法の追加の特定の実施態様において、フェノール化合物は以下の化学式を有し:
【化35】


式中、
R2はH又はOHであり;及び、R1は−(CR12=CH)−COOR又は−(CR12=CH)−CONHRであり、R12は、H、又はC−C直鎖もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、シクロヘキシルもしくはフェニル、より好ましくはメチルもしくはフェニルである。好ましくは、R1は−(CH=CH)−COOR又は−(CH=CH)−CONHRである。好ましい実施態様において、R2はHである。あるいは、R2はOHである。好ましい実施態様において、R1は−(CH=CH)−COORである。好ましい実施態様において、Rは、H;
【化36】


及びR1のオルトの炭素で化学式(I)のフェニル基に結合した結合からなる群より選択される。
【0105】
RがR1のオルトの炭素で化学式(I)のフェニル基に結合した結合である場合、R12は特にH;メチル及びフェニルからなる群より選択できる。次に、フェノール化合物は以下の化学式を有することができる:
【化37】


(R12はH又はC−C直鎖もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシル又はフェニル、より好ましくはメチルもしくはフェニルである。
好ましくは、フェノール化合物は、カフェー酸、ロスマリン酸、エスクレチン、4−メチルエスクレチン、ノルダルベルギン(6,7−ジヒドロキシフェニルクマリン)、クロロゲン酸、カフェー酸フェネチルエステル、チコリ酸(ジカフェオイル酒石酸)、エキナコシド(2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)エチルO−6−デオキシ−アルファ−L−マンノピラノシル−(1→3)−O−(ベータ−D−グルコピラノシル−(1→6))−、4−(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノアート)、ベータ−D−グルコピラノシド)、及びベルバスコシドからなる群より選択される。
【0106】
本発明に従った方法の追加の特定の実施態様において、フェノール化合物は以下の化学式を有し:
【化38】


式中、
R2はH又はOHであり;及び、R1は−(CH−ORであり、nは0〜2の整数である。好ましい実施態様において、nは2である。好ましくは、フェノール化合物はヒドロキシチロソールである。
【0107】
本発明に従った方法の追加の特定の実施態様において、フェノール化合物は以下の化学式を有し:
【化39】


式中、R2はH又はOHであり;及び、R1は−(CH−COR又は−(CH=CH)−CORであり、nは0〜2の整数である。
【0108】
好ましい実施態様において、nは0又は1であり、及び、Rは、H;C−Cアルキル、好ましくはメチル、エチル又はプロピル、より好ましくはメチル;
【化40】


からなる群より選択される。
【0109】
好ましくは、nは0である。あるいは、nは1である。
【0110】
好ましくは、フェノール化合物は、マクルリン、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ブテイン(2’,3,4,4’−テトラヒドロキシカルコン)、3,4−ジヒドロキシアセトフェノン、マレイン(2’,3,3’,4,4’−ペンタヒドロキシ−4’−グルコシルカルコン)、及びエリオジクチオールカルコン(2’,4’,6’,3,4−ペンタヒドロキシカルコン)からなる群より選択される。
【0111】
本発明に従った方法の追加の特定の実施態様において、フェノール化合物は以下の化学式を有し:
【化41】


式中、
R2はH又はOHであり;及び、R1は
【化42】


からなる群より選択される。
【0112】
好ましくは、フェノール化合物は、ピロカテコール、ノルジヒドログアイアレチン酸、3−ヒドロキシダイゼイン、オレウロペイン、及びマリチメイン(3’,4’,6,7−テトラヒドロキシ−6−O−グルコシルオーロン)からなる群より選択される。
【0113】
この実施態様において、フェノール化合物のR1は、化学式(I)で表わされた環と共に、R1のオルト炭素と一緒になって縮合芳香族環(二環式又は三環式)を形成するC−C10炭化水素基である。特にフェノール化合物は
【化43】


からなる群より選択でき、前記の縮合環は、場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断され、かつ(C−C)アルコキシ、(C−C)アシル、(C−C)アルコール、カルボキシル基(−COOH)、(C−C)エステル、(C−C)アミン、アミノ基(−NH)、アミド(−CONH)、(C−C)イミン、ニトリル、ヒドロキシル(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ハロゲン、(C−C)ハロゲノアルキル、チオール(−SH)、(C−C)チオアルキル、(C−C)スルホン、(C−C)スルホキシド、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される1又は複数の置換基により置換され得る。特定の好ましい実施態様において、フェノール化合物は
【化44】


である。
【0114】
酵素の性質及び原料
この縮合反応に使用できる酵素は、グリコシルトランスフェラーゼ、より好ましくはへキソシルトランスフェラーゼ(EC2.4.1)、好ましい様式ではグルカンスクラーゼ(EC2.4.1.5)である。
【0115】
好ましい実施態様において、これらのフェノール化合物とグルコースとの所望の縮合に使用する酵素は、細菌種、より正確にはLeuconostocの種、より好ましくはLeuconostoc mesenteroides NRRL B- 512Fからのグルカンスクラーゼである。
【0116】
酵素の代替原料は、Leuconostoc mesenteroides NRRL B-742、Leuconostoc mesenteroides NRRL B-1299、Leuconostoc mesenteroides NRRL B-1355、又はLeuconostoc mesenteroides NRRL B-23192からのグルカンスクラーゼでよい。
【0117】
このような酵素は、産生株の自然発酵、及びそれに続く細胞処置ならびに酵素回収及び精製により得ることができる。グルカンスクラーゼは、主として培養ブロス中に溶けているか又は細胞に結合している細胞外の大きな酵素であるため、酵素の回収に使用できる技術としては、限定はされないが、遠心及び旋回型限外ろ過が挙げられ、及びそれが細胞結合性の酵素である場合、細胞破壊を目的とする技術として、限定はされないが、フレンチプレス・ホモジナイゼーション、ガラスビーズ、超音波処理、又は任意の同等の方法が挙げられる。酵素濃縮を目的とする技術としては、限定はされないが、分子量カットオフ値が10〜300kDaの範囲の限界ろ過が挙げられ、及び、酵素精製に使用可能な技術としては、限定はされないが、ポリエチレングリコール、ゲル浸透クロマトグラフィーによる相分配が挙げられる。代替案は、E. coli、S. cerevisiae、Baculovirus、Y. lipolytics、Bacillus sp.、Pseudomonas sp.、H. polymorpha、又は哺乳動物細胞などの周知の発現における前記の酵素の組み換え発現にあり("Production of Recombinant Proteins: Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems" Wiley 2004 - Gerd Gellissen Ed.)、場合により当業者には周知の方法を使用した精製段階が続く。
【0118】
酵素は、当業者には周知のランダム変異導入法、定方向突然変異誘発、又は指向進化法により得ることもできる(MIYAZAKI K, ARNOLD FH, (2004), In vitro DNA recombination. In Phage Display: A practical approach, Clarkson T and Lowman H, editors. New York: Oxford University Press Inc., 43-60)。これらの技術により、高い比活性度、低い生産物阻止、狭域、化学及び立体選択性、より良好な安定性、又はこれらの任意の組み合わせを伴う酵素を得ることが可能になりうる。
【0119】
本発明の方法は、このように、全細胞又は天然酵素もしくは組み換えの粗酵素もしくは精製酵素のいずれかにより実施できる。酵素は、その「遊離」型で、又は固定化触媒として使用できる。このような固定化手順としては、限定はされないが、ゲルカプセル化(アルギン酸カルシウム・・・)、樹脂吸着、グルタルアルデヒドレチキュレーション、不溶性酵素を得るための最終的に適切な補助剤の存在下での噴霧乾燥、メンブレンリアクター、又はこれらの組み合わせが挙げられ、それらは当業者には周知である。1つの固定化アプローチの選択は、その経済的コスト、及び、前記の固定化酵素を含む工程での最終収率に依存する。
【0120】
酵素調製物の酵素活性の量は、スクロースの加水分解、及び、比色法(例えば3,5−ジニトロ−サリチル酸を含む比色法;SUMNER JB, HOWELL SF (1935) A method for determination of invertase activity. J Biol Chem 108: 51-4)による放出された還元糖(フルクトース)の測定を使用して評価できる。この酵素活性は単位(U)で表わされ、1単位は、30℃、pH5.2で1分間当たり1μmolのフルクトースを遊離させる酵素量に相当する(スクロース:100g/L;酢酸ナトリウムバッファー:50mM;塩化カルシウム二水和物:10mg/L)。
【0121】
反応条件
反応は、緩衝化水又は緩衝化水/共溶媒の混合物中で達成できる。実際、発明者は、驚くべきことに、共溶媒の非存在下で酵素によりグルコシル化できることを観察した。
【0122】
好ましくは、共溶媒なしで、又は酵素活性に対する負の効果のない任意の他の任意の緩衝物質を除く水中で20〜500mMの濃度の範囲の酢酸ナトリウム又は酢酸カリウム緩衝液からなる共溶媒との混合物中のいずれかで使用する酵素活性に都合の良いpHの緩衝化水を使用できる。好ましくは、酵素活性−共溶媒の混合物に都合の良いpHの緩衝化水は、水、好ましくは上記の緩衝化水とジメチルスルホキシド(DMSO)との混合物中にあり、DMSOの割合は35%(容積/容積)未満、好ましくは15〜25%、より好ましくは約15%である。
【0123】
反応は、酵素の適切な活性、ならびにフェノール化合物及びグルコース供給体、すなわちスクロースの良好な溶解度のいずれも可能にする水/共溶媒の混合物中で達成できる。このような共溶媒は、異なる重量/容積比で使用する、以下の水混和性有機溶媒でありうる:ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセロール、1,2−プロパンジオール、スルホラン、テトラメチル尿素、乳酸エチル、ジエチレングリコールのジエチルエーテル、トリエチレングリコールのジメチルエーテル。これらの単純有機溶媒に加えて、イオン液体(イミダゾリウム、ピリジニウム、ホスホニウム、及びアンモニウム塩)を想定することもできる。共溶媒は、以下の水非混和性有機溶媒でもありうる:酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチル−2ブタノール−2、及び水混和性有機溶媒と水非混和性有機溶媒の組み合わせ。好ましい実施態様において、混合物は水及びジメチルスルホキシド(DMSO)から作られ、DMSO濃度は5〜70%(容積/容積)の範囲である。好ましい実施態様において、DMSO濃度は5〜50%(容積/容積)である。最も好ましい実施態様において、DMSO濃度は10〜35%(容積/容積)である。実際、発明者は、驚くべきことに、反応が、40%より低いDMSOの割合で進行した場合、より高効率であることを見出した。より高い割合の産物を15%の割合で記録した。そのために、本発明に従った方法の好ましい割合は、15〜25%、好ましくは約15%(+/−3%)に含まれる。
【0124】
各フェノール化合物を、スクロース及び酵素を伴うこの反応混合物中で、酵素を活性にし、可能な最大限の所望のグルコシドを合成できるpH及び温度条件でインキュベートさせる。好ましくは、反応媒質には塩化カルシウムの形態(又は、カルシウムの任意の水溶性塩の形態)のカルシウム陽イオンが追加で含まれ、酵素の安定性が改善される。縮合反応は、反応媒質中に少量の酢酸バッファーを導入することにより、4〜8、好ましくは5〜7の範囲のpHで実施できる。合成媒質の温度は10〜40セ氏温度、好ましくは約25〜33セ氏温度の範囲の値に維持する。
【0125】
Leuconostoc mesenteroides NRRL B-512Fからのグルカンスクラーゼを用いる典型的な反応条件は、10〜100mMの酢酸バッファー、10〜35%(容積/容積)のDMSO、100〜900mMのスクロース及び2〜200mMのフェノール化合物、0.5mg〜1g/Lのカルシウム塩及び最終濃度0.5〜5U/mLの酵素の混合物からなる。この反応物を30℃で数時間(例、10〜48時間)インキュベートし、フェノール化合物誘導体の合成、ならびに前記のフェノール化合物の定時での消失をHPLC分析により追跡する。生産物のより良好な特性付けは、質量分析計に連結された光ダイオードアレイ検出器に連結された高速クロマトグラフィーにより達成でき、フェノール化合物に結合したグルコース部分の数を直接的に評価し、これにより合成された誘導体の良好な分析評価を行う。
【0126】
本発明の一実施態様において、合成された誘導体の分析評価を可能にするこのような条件は、以下の通りでありうる:
【0127】
合成媒質はクロマトグラフィーが光ダイオードアレイ検出器(PDA Waters(登録商標)996)及び質量分析計(Micromass ZQ 2000, Waters(登録商標))に連結させた高速液体クロマトグラフィーにより分析できる。
i)クロマトグラフィーの操作条件:
−カラム:KROMASIL C18 5μ, 250 mm x 4.6 mm (参考文献:K2185; A. I. T. Chromato; 117 rue de Stalingrad; 78800 Houilles)
溶出(方法1):
−溶媒A:1%(v/v)酢酸を含む脱イオン水
−溶媒B:1%(v/v)酢酸を含むHPLCグレードのメタノール
−0〜10分:90%〜80%A(直線的);10〜20%B(直線的);1mL/分
−10〜25分:80%〜50%A(直線的);20〜50%B(直線的);1mL/分
−25〜30分:50%A;50%B;1mL/分
−30〜35分:50%〜90%A(直線的);50%〜10%B(直線的);1mL/分
−45分:次の注入
−カラム温度:30℃
−注入容積:10μL
ii)光ダイオードアレイ検出器
−開始波長:210nm
−終了波長:400nm
−分解能:1.2nm
−サンプリング速度:1スペクトラム/秒
iii)LC質量分析計(単一四極子)
−電離(lonisation): 負モードのエレクトロスプレイ
−散布電圧量:3.0キロボルト
−供給源温度:150℃
−コーン電圧:20又は40V
−抽出器:3.0V
−脱溶媒温度:300℃
−コーンガス流:30L/時間
−脱溶媒ガス流:600L/時
−フルスキャン質量スペクトル:100〜2000のm/z
【0128】
精製
合成後、フェノール化合物O−α−グルコシドは、直接使用するか、又は精製して未変換フェノール化合物、糖、酵素、及び共溶媒の残留物に関して所望の純度に達することができる。
【0129】
例えば、フェノール化合物O−α−グルコシドは、物質の吸着能の差を利用することにより、合成マクロ多孔質吸着樹脂上に吸着できる。間隙容積における残留物質の存在により、酵素、糖及び多糖類、及び共溶媒を完全に洗い流すために、吸着されたフェノール物質を伴う樹脂を水で洗浄する。次に、樹脂は適切な溶媒での溶出段階を受けて、合成産物を回収できる。適当な溶媒は、純粋なメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、又はそれらの混合物、あるいは20%容積/容積以下の水でのそれらの水との混合物である。合成した生産物を含む溶液は、中程度の温度(50℃以下)での真空下の蒸発によるか、又はさらなる精製のための適用可能なメンブレン装置により濃縮することができ、あるいはさらなる精製のために直接使用できる。液/液抽出、分取HPLC又は他の一連の樹脂精製などのさらなる精製段階を使用して、最終用途に必要なレベルの純度に達することができる。液−液抽出に使用できる有機溶媒は、フェノール化合物とフェノール化合物グルコシドとの溶解度の差に応じて、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトンである。
【0130】
最後に、所望の物質を含むシロップを、中程度の温度(50℃以下)の真空下での蒸発によるか又は適用可能なメンブレン装置を用いて溶媒(水又は有機溶媒)を除去し、得られた溶液を濃縮して規定濃度をもたらすことにより得ることができる。このシロップを乾燥させて(凍結乾燥、噴霧乾燥、又は分子の完全性を保持する任意の他の乾燥方法)、粉末を得ることができる。
【0131】
合成マクロ多孔質吸着樹脂を、タンク(樹脂の粒度分布に応じた、便利なメッシュを有する篩を使用して樹脂を回収する)又はポンプ供給カラム中に位置付けて使用できる。合成マクロ多孔質吸着樹脂により、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、フェノールホルムアルデヒドポリマー、アクリルポリマー及びメタクリル酸ポリマーを含む樹脂など、比較的大きな表面積を有する非イオン性の多孔質合成樹脂として理解される。このような樹脂の例は、XADタイプのAmberlite(Rohm and Haas Company, USA)、HPファミリーのDiaion(Mitsubishi Chemical Industries, Japan)である。
【0132】
本発明は、例えば、プロトカテク酸及びそのエステル誘導体、カフェー酸及びそのエステル誘導体、特にロスマリン酸、クロロゲン酸及びカフェー酸フェネチルエステル及びヒドロカフェー酸、又は3,4−ジヒドロキシヒドロ桂皮酸、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸及び3,4−ジヒドロキシフェニルグリコール、エスクレチン、タクシフォリン、フスチン、エリオジクチオール、フィゼチン、及びラムネチンの内より選択されるカテコール構造を含むフェノール化合物のO−α−グルコシドにも関する。特に、本発明は、没食子酸エピカテキン、エリオジクチオール、エスクレチン、フィゼチンO−α−グルコシド、フスチン、ホモプロトカテク酸、プロトカテク酸、プロトカテク酸エチルエステル、ヒドロキシチロソール、マクルリン、ノルジヒドログアイアレチン酸、オレウロペイン、ピロカテコール、ラムネチン、ロスマリン酸、タクシフォリン、3−ヒドロキシダイゼイン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、カフェー酸、ジヒドロカフェー酸、カフェー酸フェネチルエステル、シルシリオール、クロロゲン酸コシド、アントラロビン、エピガロカテキン、ジヒドロロビネチン、ガロカテキン、没食子酸、没食子酸プロピル、及びロビネチンからなる群より選択できるカテコール構造を含むフェノール化合物のO−α−グルコシドに関する。これらの新しいフェノール化合物誘導体は、改良された水溶性により、及び/又は、ヒトの天然微生物、より具体的にはヒトの皮膚の微生物によるかもしくは酵母Saccharomyces cerevisiaeにより産生されるα−グルコシダーゼなどの選択されたα−グルコシダーゼよる加水分解を通じた使用の間でのグリコンのインサイチューでの放出により、良好な生物学的利用率を有する。
【0133】
特に、本発明は、以下の化学式を有するフェノール化合物O−α−グルコシドに関するものである:
【化45】


〔式中、
A及びBの少なくとも1つが−α−グルコシル残基であるという条件で、A及びBは、同一又は異なるかにかかわらず、H又は−α−グルコシル残基であり;
R2はH又はOHであり;及び、
R1は、
【化46】


(式中、R3及びR4の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R3及びR4は独立にH又はOHである);
【化47】


(式中、R2がHである場合にR7及びR8のいずれもOHではなく、かつR7及びR8の内の少なくとも1つがOHであるという条件で、R7はH、−OH、又は−OCORからなる群より選択され、R8はH又はOHである);
【化48】


(式中、R5はOH又はOCHであり;R5及びR6がいずれもOHである場合にR10及びR11のいずれもHであることができず、かつR10がC11である場合にR11がHであるという条件で、R6はH又はOHであり、R9はH又はOHであり、R10はH、OCH、又はC11であり、R11はH、OH、又はC11である);
‐−(CH−COOR又は−(CH−CONHR(nは0〜2の整数である);
‐−(CR12=CH)−COOR又は−(CR12=CH)−CONHR(R12は、H、又はC−C直鎖、分岐、もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシルもしくはフェニル、より好ましくはメチルもしくはフェニルである);
‐−(CH−OR又は−(CH−NHR(nは0〜2の整数である);
‐−(CH−COR又は−(CH=CH)−COR(nは0〜2の整数である);
‐H;
【化49】


及び、
‐化学式(I)で表わされた環と共に、R1のオルト炭素と一緒になって縮合環(二環式又は三環式)を形成するC−C10炭化水素基(前記の環は場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されている);
からなる群より選択され、
ここで、Rは、H、又は直鎖、分岐、もしくは環状の芳香族もしくは非芳香族の飽和もしくは不飽和C−C10炭化水素基であり、場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されており、ここで、前記の炭化水素基はアルキル、アルケニル、又はアルキニル、好ましくはアルキル又はアルケニルを包含し、これは以下からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換され得る:(C−C)アリール、(C−C)ヘテロ環、(C−C)アルコキシ、(C−C)アシル、(C−C)アルコール、カルボキシル基(−COOH)、(C−C)エステル、(C−C)アミン、アミノ基(−NH)、アミド(−CONH)、(C−C)イミン、ニトリル、ヒドロキシル(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ハロゲン、(C−C)ハロゲノアルキル、チオール(−SH)、(C−C)チオアルキル、(C−C)スルホン、(C−C)スルホキシド、及びこれらの組み合わせ〕。
【0134】
第一の実施態様において、R2はHである。この実施態様において、フェノール化合物O−α−グルコシドは、例えば、没食子酸エピカテキンO−α−グルコシド、エリオジクチオールO−α−グルコシド、エスクレチンO−α−グルコシド、フィゼチンO−α−グルコシド、フスチンO−α−グルコシド、ホモプロトカテク酸O−α−グルコシド、プロトカテク酸O−α−グルコシド、プロトカテク酸エチルエステルO−α−グルコシド、ヒドロキシチロソールO−α−グルコシド、マクルリンO−α−グルコシド、ノルジヒドログアイアレチン酸O−α−グルコシド、オレウロペインO−α−グルコシド、ピロカテコールO−α−グルコシド、ラムネチンO−α−グルコシド、ロスマリン酸O−α−グルコシド、タクシフォリンO−α−グルコシド、3−ヒドロキシダイゼインO−α−グルコシド、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンO−α−グルコシド、カフェー酸O−α−グルコシド、ジヒドロカフェー酸O−α−グルコシド、カフェー酸フェネチルエステルO−α−グルコシド、シルシリオールO−α−グルコシド、クロロゲン酸O−α−グルコシド及びアントラロビンO−α−グルコシドでありうる。
【0135】
代わりの実施態様において、R2はOHである。この実施態様において、フェノール化合物O−α−グルコシドは、例えば、エピガロカテキンO−α−グルコシド、ジヒドロロビネチンO−α−グルコシド、ガロカテキンO−α−グルコシド、没食子酸O−α−グルコシド、没食子酸プロピルO−α−グルコシド、及びロビネチンO−α−グルコシドでありうる。
【0136】
本発明の特定の実施態様において、フェノール化合物O−α−グルコシドは、以下の化学式を有し:
【化50】


式中、
A及びBの少なくとも1つが−α−グルコシル残基であるという条件で、A及びBは、同一又は異なるかにかかわらず、H又は−α−グルコシル残基であり;
R2はH又はOHあり;及び、
R1は
【化51】


であり、式中、R3及びR4の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R3及びR4は独立にH又はOHである。
【0137】
特定の実施態様において、R2はHである。別の実施態様において、R2はOHである。
【0138】
好ましい実施態様において、R3及びR4はOHである。別の好ましい実施態様において、R3はHであり、及び、R4はOHである。さらなる好ましい実施態様において、R3はOHであり、及び、R4はHである。好ましい特定の実施態様において、R2はHであり、及び、R3/R4は以下の組み合わせより選択される:OH/OH;H/OH;OH/H。別の好ましい実施態様において、R2はOHであり、及び、R3/R4は以下の組み合わせより選択される:OH/OH;H/OH;OH/H。
【0139】
特に、R2はHであり、R3はHであり、及び、R4はOHである(エリオジクチオールO−α−グルコシドをもたらす)。あるいは、R2はHであり、R3はOHであり、及び、R4はHである(フスチンO−α−グルコシドをもたらす)。好ましい実施態様において、R2はHであり、R3及びR4のいずれもOHである(タクシフォリンO−α−グルコシドをもたらす)。
【0140】
好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、タクシフォリンO−α−グルコシド、エリオジクチオールO−α−グルコシド、ジヒドロロビネチンO−α−グルコシド、及びフスチンO−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0141】
本発明に従った方法の別の特定の実施態様において、フェノール化合物O−α−グルコシドは以下の化学式を有し:
【化52】


式中、
A及びBの少なくとも1つが−α−グルコシル残基であるという条件で、A及びBは、同一又は異なるかにかかわらず、H又は−α−グルコシル残基であり;
R2はH又はOHであり;及び、
R1は
【化53】


であり、
式中、R2がHである場合にR7及びR8のいずれもOHではなく、ならびにR7及びR8の内の少なくとも1つがOHを表すという条件で、R7はH、−OH、又は−OCORからなる群より選択され、及び、R8はH又はOHである。
【0142】
特定の実施態様において、R2はHである。別の実施態様において、R2はOHである。
【0143】
好ましい実施態様において、R2はOHであり、R8はOHであり、及び、R7はOH又はOCORである。より好ましい実施態様において、R7及びR8のいずれもOHである。別の好ましい実施態様において、R2はHであり、R8はOHであり、及び、R7はOCORである。さらなる好ましい実施態様において、R2はH又はOHであり、R7は−OCORであり、及び、R8はOHである。より好ましくは、Rは
【化54】


である。
【0144】
好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコースは、エピガロカテキンO−α−グルコース、ガロカテキンO−α−グルコース、及び没食子酸エピカテキンO−α−グルコースからなる群より選択される。
【0145】
本発明のさらなる特定の実施態様において、フェノール化合物O−α−グルコースは以下の化学式を有し:
【化55】


式中、
A及びBの少なくとも1つが−α−グルコシル残基であるという条件で、A及びBは、同一又は異なるかにかかわらず、H又は−α−グルコシル残基であり;R2はH又はOHであり;及び、R1は
【化56】


であり、
式中、R5はOH又はOCHであり;R5及びR6がいずれもOHである場合にR10及びR11のいずれもHであることができず、かつR10がC11である場合にR11がHであるという条件で、R6はH又はOHであり、R9はH又はOHであり、R10はH、OCH、又はC11であり、及び、R11はH、OH、又はC11である。特に、R6、R5、及びR11は、以下の組み合わせから選択でき:
a) R6がOHであり、及び、R5がOCHであり、及び、R11がHである;
b) R6がOHであり、及び、R5がOHであり、及び、R11がOHである;
c) R6がOHであり、及び、R5がOHであり、及び、R11がC11である;及び、
d) R6がHであり、及び、R5がOHであり、及び、R11がHである;
ならびにR10がC11の場合にR11がHであるという条件で、R9はH又はOHであり、及び、R10はH又はOCH又はC11である。
【0146】
特定の実施態様において、R2はHである。別の実施態様において、R2はOHである。
【0147】
好ましい実施態様において、R9はOHであり、R10はHであり、及び、R11はHであるのに対し、R6はOHであり、及び、R5はOCHであるか、又は、R6はHであり、及び、R5はOHである。好ましくは、R2はHである。あるいは、R2はOHである。
【0148】
別の好ましい実施態様において、R9はHであり、及び、R10はOCH又はC11である。この実施態様の特定の局面において、R9及びR11はHであり、R10及びR5はOCHであり、及び、R6はOHである。
【0149】
追加の好ましい実施態様において、R10がC11である場合にR11がHであるという条件で、R5及びR6はいずれもOHであり、R9はH又はOHであり、R10はOH又はC11であり、及び、R11はH、OH、又はC11である。別の好ましい実施態様において、R5及びR6はいずれもOHであり、R9はH又はOHであり、R10はHであり、及び、R11はOH又はC11である。
【0150】
別の好ましい実施態様において、R9はHであり、及び、R10はHである。さらなる好ましい実施態様において、R9はHであり、R10及びR5はOCHであり、及び、R6はOHである。
【0151】
特定の実施態様において、R2、R5、R6、R9、R10、及びR11は、上で言及した組み合わせから選択できる。
【0152】
【表4】

【0153】
特定の実施態様において、R2はHであり、及び、R1は
【化57】


であり、
式中、R6はOHであり、及び、R5はOCHであるか(ラムネチンO−α−グルコシドをもたらす)、又は、R6はHであり、及び、R5はOHである(フィゼチンO−α−グルコシドをもたらす)。
【0154】
好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコースは、ラムネチンO−α−グルコース、フィゼチンO−α−グルコース、ロビネチンO−α−グルコース、ゴシペチンO−α−グルコース、オリエンチンO−α−グルコース、ホモオリエンチンO−α−グルコース、及びシルシリオールO−α−グルコースからなる群より選択される。
【0155】
本発明のさらなる特定の実施態様において、フェノール化合物O−α−グルコースは以下の化学式を有し:
【化58】


式中、
A及びBの少なくとも1つがα−グルコシル残基であるという条件で、A及びBは、同一又は異なるかにかかわらず、H又はα−グルコシル残基であり;
R2はH又はOHであり;及び、
R1は−(CH−COOR又は−(CH−CONHRであり、nは0〜2の整数である。
【0156】
特定の実施態様において、R2はHである。別の実施態様において、R2はOHである。
【0157】
好ましくは、Rは、H、C−Cアルキル、好ましくはメチル、エチル又はプロピル、及び
【化59】


からなる群より選択される。
【0158】
第一のより好ましい実施態様において、nは0であり、及び、Rは好ましくはHである。第二のより好ましい実施態様において、nは1であり、及び、Rは好ましくはHである。第三のより好ましい実施態様において、nは2であり、及び、Rは好ましくはHである。別の好ましい実施態様において、nは0であり、及び、RはC−Cアルキル、好ましくはメチル、エチルもしくはプロピル、又は
【化60】


である。
【0159】
好ましい実施態様において、R1は−(CH−COORである。好ましい実施態様において、RはHである。好ましくは、フェノール化合物は、ホモプロトカテク酸、ジヒドロカフェー酸、プロトカテク酸エチルエステル、没食子酸プロピル、没食子酸、ハマメリタンニン(2’,5−ジ−O−ガロイル−ハマメローズ))、及びプロトカテク酸からなる群より選択される。
【0160】
特定の実施態様において、R2はHであり、及び、R1は−COOHである(プロトカテク酸O−α−グルコシドをもたらす)。別の特定の実施態様において、R2はHであり、及び、R1は−(CH−COOHである(ヒドロカフェー酸O−α−グルコシドをもたらす)。
本発明では、そのエステル及び医薬的に許容可能なその塩を意図する。
【0161】
好ましくは、フェノール化合物は、ホモプロトカテク酸O−α−グルコシド、ジヒドロカフェー酸O−α−グルコシド、プロトカテク酸エチルエステルO−α−グルコシド、没食子酸プロピルO−α−グルコシド、没食子酸O−α−グルコシド、ハマメリタンニン(2’,5−ジ−O−ガロイル−ハマメローズ)O−α−グルコシド、及びプロトカテク酸O−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0162】
本発明の追加の特定の実施態様において、フェノール化合物O−α−グルコースは、以下の化学式を有し:
【化61】


式中、
A及びBの少なくとも1つがα−グルコシル残基であるという条件で、A及びBは、同一又は異なるかにかかわらず、H又はα−グルコシル残基であり;
R2はH又はOHあり;及び、
R1は−(CR12=CH)−COOR又は−(CR12=CH)−CONHRであり、R12は、H、又はC−C直鎖もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシルもしくはフェニル、より好ましくはメチルもしくはフェニルである。好ましくは、R1は−(CH=CH)−COOR又は−(CH=CH)−CONHRである。好ましい実施態様において、R2はHである。あるいは、R2はOHである。好ましい実施態様において、R1は−(CH=CH)−COORである。好ましい実施態様において、Rは、H;
【化62】


及びR1のオルトの炭素で化学式(I)のフェニル基に結合した結合からなる群において選択される。
【0163】
特定の実施態様において、R2はHであり、及び、R1は−(CH=CH)−COOHである(カフェー酸O−α−グルコシドをもたらす)。本発明では、そのエステル及び医薬的に許容可能なその塩を意図する。特に、R1が−(CH=CH)−COORである場合、Rは、3位に結合した1,3,4,5−テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸(クロロゲン酸O−α−グルコシドをもたらす)、(R)−1−カルボキシ−2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)エチル(ロスマリン酸O−α−グルコシドをもたらす)及びフェネチル(カフェー酸フェネチルエステルO−α−グルコシドをもたらす)より選択される。特に、R1が−(CR12=CH)−COORである場合、Rは、OBのメタの炭素により化学式(II)のフェニル基に結合した結合であり、以下の化学式を与える:
【化63】


(すなわち、R12がHの場合にはエスクレチンO−α−グルコシド、R12がメチルの場合には4−メチルエスクレチンO−α−グルコシド、及び、R12がフェニルの場合にはノルダルベルギンO−α−グルコシド)。特定の実施態様において、R12はHである。
【0164】
好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、カフェー酸O−α−グルコシド、ロスマリン酸O−α−グルコシド、エスクレチンO−α−グルコシド、4−メチルエスクレチンO−α−グルコシド、ノルダルベルギン(6,7−ジヒドロキシフェニルクマリン)O−α−グルコシド、クロロゲン酸O−α−グルコシド、カフェー酸フェネチルエステルO−α−グルコシド、チコリ酸(ジカフェオイル酒石酸)O−α−グルコシド、エキナコシド(2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)エチルO−6−デオキシ−アルファ−L−マンノピラノシル−(1→3)−O−(ベータ−D−グルコピラノシル−(1→6))−、4−(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノアート)O−α−グルコシド、ベータ−D−グルコピラノシドO−α−グルコシド、及びベルバスコシドO−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0165】
本発明の追加の特定の実施態様において、フェノール化合物O−α−グルコースは以下の化学式を有し:
【化64】


式中、A及びBの少なくとも1つがα−グルコシル残基であるという条件で、A及びBは、同一又は異なるかにかかわらず、H又はα−グルコシル残基であり;
R2はH又はOHであり;及び、
R1は−(CH−ORであり、nは0〜2の整数である。
【0166】
特定の実施態様において、R2はHである。別の実施態様において、R2はOHである。
【0167】
好ましい実施態様において、nは2である。好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、ヒドロキシチロソールO−α−グルコシドである。
【0168】
本発明の追加の特定の実施態様において、フェノール化合物O−α−グルコシドは以下の化学式を有し:
【化65】


式中、
A及びBの少なくとも1つがα−グルコシル残基であるという条件で、A及びBは、同一又は異なるかにかかわらず、H又はα−グルコシル残基であり;
R2はH又はOHであり;及び、
R1は−(CH−COR又は−(CH=CH)−CORであり、nは0〜2の整数である。
【0169】
特定の実施態様において、R2はHである。別の実施態様において、R2はOHである。
【0170】
好ましい実施態様において、nは0又は1であり、及び、RはH;C−Cアルキル、好ましくはメチル、エチル又はプロピル、より好ましくはメチル;
【化66】


からなる群より選択される。
【0171】
好ましくは、nは0である。あるいは、nは1である。
【0172】
好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、マクルリンO−α−グルコシド、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドO−α−グルコシド、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンO−α−グルコシド、ブテイン(2’,3,4,4’−テトラヒドロキシカルコン)O−α−グルコシド、3,4−ジヒドロキシアセトフェノンO−α−グルコシド、マレイン(2’,3,3’,4,4’−ペンタヒドロキシ−4’−グルコシルカルコン)O−α−グルコシド、及びエリオジクチオールカルコン(2’,4’,6’,3,4−ペンタヒドロキシカルコン)O−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0173】
本発明の追加の特定の実施態様において、フェノール化合物O−α−グルコシドは以下の化学式を有し:
【化67】


式中、
A及びBの少なくとも1つがα−グルコシル残基であるという条件で、A及びBは、同一又は異なるかにかかわらず、H又はα−グルコシル残基であり;
R2はH又はOHであり;及び、
R1は
【化68】


からなる群より選択される。
【0174】
好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、オレウロペインO−α−グルコシド、ノルジヒドログアイアレチン酸O−α−グルコシド、ピロカテコールO−α−グルコシド、3−ヒドロキシダイゼインO−α−グルコシド、及びマリチメイン(3’,4’,6,7−テトラヒドロキシ−6−O−グルコシルオーロン)O−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0175】
本発明の追加の特定の実施態様において、フェノール化合物O−α−グルコシドは以下の化学式を有し:
【化69】


式中、
A及びBの少なくとも1つがα−グルコシル残基であるという条件で、A及びBは、同一又は異なるかにかかわらず、H又はα−グルコシル残基であり;
R2はH又はOHであり;及び、
R1は、化学式(I)で表わされた環と共に、R1のオルト炭素と一緒になって、縮合芳香族環(二環式又は三環式)を形成するC−C10炭化水素基である。特に、フェノール化合物O−α−グルコシドは、
【化70】


からなる群より選択でき、前記の縮合環は、場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されており、以下からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換され得:(C−C)アルコキシ、(C−C)アシル、(C−C)アルコール、カルボキシル基(−COOH)、(C−C)エステル、(C−C)アミン、アミノ基(−NH)、アミド(−CONH)、(C−C)イミン、ニトリル、ヒドロキシル(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ハロゲン、(C−C)ハロゲノアルキル、チオール(−SH)、(C−C)アルキルチオール、(C−C)スルホン、(C−C)スルホキシド、及びこれらの組み合わせ。特定の好ましい実施態様において、フェノール化合物O−α−グルコシドは、
【化71】


である。
【0176】
O−α−グルコシル残基は、本明細書において、グルコース単量体、二量体、三量体、四量体、五量体又はそれ以上を指す。好ましくは、O−α−グルコシル残基は、グルコース単量体、二量体、又は三量体、すなわち、グルコシル、ジグルコシル、又はトリグルコシルである。さらに好ましくは、O−α−グルコシル残基はグルコース単量体である。特定の実施態様において、O−α−グルコシル残基は、1位の炭素によりフェノール化合物に結合する。好ましい実施態様において、OAはOHであり、及び、OBはO−α−グルコシル残基である。他の好ましい実施態様において、OBはOHであり、及び、OAはO−α−グルコシル残基である。
【0177】
特定の実施態様において、Rは単糖でありうる。他の特定の実施態様において、Rは(C−C)アルキル又は(C−C)アルキルである。
【0178】
このような塩としては、医薬的に許容可能な酸付加塩、医薬的に許容可能な塩基付加塩、医薬的に許容可能な金属塩、アンモニウム及びアルキル化アンモニウム塩が挙げられる。酸付加塩としては、無機酸及び有機酸の塩が挙げられる。適当な無機酸の代表例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫黄、過塩素酸などが挙げられる。適当な有機酸の代表例としては、酢酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、桂皮酸、クエン酸、フマル酸などが挙げられる。医薬的に許容可能な無機又は有機酸付加塩のさらなる例としては、J. Pharm. Sci.1977, 66, 2, and in Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use edited by P. Heinrich Stahl and Camille G. Wermuth 2002.において列挙される医薬的に許容可能な塩が挙げられる。金属塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム塩などが挙げられる。アンモニウム及びアルキル化アンモニウム塩の例としては、アンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ヒドロキシエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基の例としては、リシン、アルギニン、グアニジン、ジエタノールアミネオリン(diethanolamineoline)などが挙げられる。
【0179】
アグリコンのインサイチュー放出
驚くべきことに、発明者は、本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドがα−グルコシダーゼにより切断されて、インサイチューでフェノール化合物の放出をもたらすことを見出した。
【0180】
本発明のすべてのフェノール化合物O−α−グルコシドは、少なくとも1つのO−α−グルコシド結合を有する。この結合は、α−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)などの酵素により特異的に加水分解されて、グルコシル残基及びアグリコン部分を放出できる。インサイチューで達成される場合、この遊離にはいくつかの利点がある:
‐溶解型のグリコシドの投与/注入/適用後に、溶解度の低いアグリコン(これはグリコシド誘導体よりも活性が高くなりうる)を放出することが可能になる、及び/又は
‐インサイチュー放出は時間依存的であり(微生物により発現させた酵素により達成する場合、放出酵素量は微生物の数と相関関係がある:細菌集団の密度が高いほど、より多くのアグリコンの放出が生じる)、及び/又は
‐インサイチューでの放出は、α−グルコシダーゼ又はこの酵素活性を発現する微生物のインサイチューでの投与/注入/適用により制御できる。
【0181】
これらの利点は、化粧品又は皮膚化粧品の調製物のフェノール類の製剤化において重要になる。本発明の好ましい実施態様において、前記のフェノール化合物O−α−グルコシドを、ヒトに関連する微生物、好ましくはヒトの皮膚に関連する微生物により発現される酵素によりインサイチューで活性化できる。このようなヒトの共生又は非共生微生物の公知の例としては、限定はされないが、Streptococcusの種、Staphylococcusの種、Enterococcusの種、Escherichia coli、Bacilli、Corynebacteriumの種、Propionibacteriumの種が挙げられる。皮膚に適用した場合、本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドは、皮膚に関連する微生物によりアグリコン部分及びグルコシル残基に変換される。このような細菌は、ヒトにおいて、口腔、腸管、生殖管、及び上気道において見出すことができる。
【0182】
本発明の別の好ましい実施態様において、前記のフェノール化合物O−α−グルコシドは、Saccharomyces cerevisiaeからのα−グルコシダーゼなどのα−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)によりインサイチューで活性化できる。
【0183】
このように、分子の活性部分(アグリコン)をインサイチューで放出できるため、本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドはプロドラッグ状態を有する。
【0184】
そのために、本発明は、本発明のフェノール化合物O−α−グルコシド又は医薬的に許容可能なその塩を含む医薬又は化粧品組成物に関するものである。本発明は、医薬としての本発明のフェノール化合物O−α−グルコシド又は医薬的に許容可能なその塩に関するものでもある。医薬は治療用又は予防用でありうる。本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドは、抗ウイルス、抗菌、免疫刺激、抗アレルギー、抗高血圧、抗虚血、抗不整脈、抗血栓、コレステロール低下、抗脂質過酸化、肝保護、抗炎症、抗発癌、抗変異原性、抗新生物、抗血栓、及び血管拡張性の作用の内のいくつかの活性を有する。
【0185】
特定の実施態様において、組成物には、O−α−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)又はO−α−グルコシダーゼ活性を発現する微生物をさらに含ませることができる。好ましくは、O−α−グルコシダーゼはSaccharomyces cerevisiaeからである。特にO−α−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)又はO−α−グルコシダーゼ活性を発現する微生物は、不活性型で組成物中に存在し、O−α−グルコシダーゼは投与した途端に活性化される。例えば、組成物は乾燥型で製剤化でき、水の非存在はO−α−グルコシダーゼの不活化をもたらし;水の添加後、酵素は活性になり、次にグルコシド結合を加水分解できる。酵素及びフェノール化合物O−α−グルコシドは、ちょうど投与時に混合される2つの異なる液体製剤中に入れることができる。酵素及びフェノール化合物O−α−グルコシドを同じ溶液中に入れた場合、投与後に希釈される酵素可逆的インヒビターを使用して、これにより酵素がフェノール化合物O−α−グルコシドを加水分解する能力を回復できる。本発明のフェノール化合物O−α−グルコシド及びO−α−グルコシダーゼ又はO−α−グルコシダーゼ活性を発現する微生物を物理的に分離することもできる(例、マイクロカプセル)。
【0186】
本発明は、癌、心臓血管系疾患、細菌感染、UVB誘発性紅斑、アレルギー、炎症性障害又は免疫障害を治療又は予防するための医薬又は化粧品組成物を調製するための本発明のフェノール化合物O−α−グルコシド又は医薬的に許容可能なその塩の使用に関するものである。特に、癌は固形腫瘍、例えば乳癌又は大腸癌である。特に、アレルギーはアレルギー性鼻結膜炎でありうる。そのために、本発明は、本発明のフェノール化合物O−α−グルコシド又は医薬的に許容可能なその塩を投与することを含む、癌、心臓血管系疾患、細菌感染、UVB誘発性紅斑、アレルギー、炎症性障害又は免疫障害を治療又は予防するための方法に関するものでもある。加えて、方法には、O−α−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)又はO−α−グルコシダーゼ活性を発現する微生物を連続的又は同時に投与する段階をさらに含めることができる。好ましくは、O−α−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)又はO−α−グルコシダーゼ活性を発現する微生物を同じ経路で投与する。
【0187】
特定の実施態様において、本発明は、局所に(すなわち、皮膚に)投与するための医薬又は化粧品組成物を調製するための本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドの使用に関するものであり、ここで皮膚に関連する微生物から出される酵素が対応するアグリコンを放出させる。加えて、本発明は、経口投与するための医薬又は化粧品組成物を調製するための本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドの使用に関するものであり、ここで口腔及び腸管に関連する微生物から出される酵素が対応するアグリコンを放出させる。本発明は、直腸投与するための医薬又は化粧品組成物を調製するための本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドの使用に関するものでもあり、ここで直腸に関連する微生物から出される酵素が対応するアグリコンを放出させる。本発明はさらに、経鼻投与するための医薬又は化粧品組成物を調製するための本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドの使用に関するものであり、ここで上部呼吸器系に関連する微生物から出される酵素が対応するアグリコンを放出させる。本発明はさらに、経膣投与するための医薬又は化粧品組成物を調製するための本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドの使用に関するものであり、ここで女性生殖管に関連する微生物から出される酵素が対応するアグリコンを放出させる。
【0188】
本発明は、本発明のフェノール化合物O−α−グルコシド又は医薬的に許容可能なその塩と、連続的又は同時に投与のためのO−α−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)又はO−α−グルコシダーゼ活性を発現する微生物との組み合わせに関するものでもある。同時投与を実施する場合、本発明のフェノール化合物O−α−グルコシド又は医薬的に許容可能なその塩と、O−α−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)又はO−α−グルコシダーゼ活性を発現する微生物とを同一又は異なる組成物中で投与できる。
【0189】
このような組成物には、医薬的に許容可能な担体、安定化剤、又は賦形剤を含めることができる。
【0190】
他の誘導体の開発のための重要な中間体としてのフェノール化合物の使用
本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドは、化粧品として、活性物質として、あるいは、単独で、又は相乗活性もしくは相補活性を伴う他の活性分子などの他の製品又は安定化剤もしくは賦形剤との併用で、活性物質として直接的に使用できる。二次誘導体を産生するために、これらのフェノール化合物の誘導体を追加の化学的、物理的、又は酵素的修飾のための出発物質として使用もできる。本発明において使用する酵素反応は、フェノール化合物のカテコール環上の特定のヒドロキシルの位置に関するものであるため、他のヒドロキシル基を、例えば、化学反応に使用して、エステル結合、アシル結合、硫酸結合、又はリン酸結合を作製できる。このような修飾により、本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドの既存の特性を改善できるか、又は、特定の用途のための新しい特性(高い治療効果、低い細胞毒性、微生物によるグリコン部分の放出後の高い安定性・・・)を付与できる。
【0191】
化粧又は治療での用途のための前記の誘導体の製剤化
本発明の組成物は、経口、非経口、吸入噴霧、局所、直腸、経鼻、口腔、経膣、又は埋め込み貯蔵部(reservoir)により投与できる。本明細書で使用する「非経口」という用語には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内注入又は注入技術が挙げられる。好ましくは、本発明の組成物は、経口、吸入噴霧、局所、直腸、経鼻、口腔、又は経膣投与される。好ましい実施態様において、医薬又は化粧品組成物は局所投与される。
【0192】
新しいタイプの化粧品が常に開発されており、新しい原材料がパーソナルケア用成分の化粧品化学者による選択に加えられる。本発明に記載のフェノール化合物O−α−グルコシドは、化粧品の大パネルに容易に組み入れることができる。このような調製物は当業者に周知である:それはクリーム、スティック、シャンプー、シャワーゲル、ローション、石けん、乳剤、ゲルでありうる。これらの製剤としては、限定はされないが、脱イオン水、マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、キサンタンガム、ナイロン−12、PCAナトリウム、プロピレングリコール、赤色酸化鉄、タルク、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、二酸化チタン、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸、DEA−セチルリン酸塩、メチルパラベン、ブチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ネオペンタン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、エチレン/プロピレン/スチレンコポリマー、ブチレン/エチレン/スチレンコポリマー、パルミチン酸イソプロヒル、フェノキシエタノール酢酸トコフェロール、グリセリン、トリエタノールアミン、ステアリン酸、ステアリン酸プロピレングリコール、鉱物油、ブチレン/エチレン/スチレンコポリマー、ジアゾリジニル尿素、水素化ポリイソブテン、パルミチン酸オクチル、ネオペンタン酸トリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソプロピルパラベン、イソブチルパラベン、ネオペンタン酸オクチルドデシル、酢酸トコフェロール、香料、オクチルメトキシシンナメート、ベンゾフェノン、オクチルサリチル酸、イソステアリン酸イソプロピル、プロピレングリコールイソセテス−3酢酸、又はこれらの組み合わせなどの他の成分を挙げることができる。
【0193】
治療での用途におけるそれらの使用のために、本発明のフェノール化合物O−α−グルコシドは、例えば充填、標準化、配合/均一化、無菌及び非無菌微粉化、造粒/成形、ふるい、又はこれらの組み合わせを使用して、丸剤、錠剤、シロップ、クリーム、ローション、ゲルなどの様々な調剤調製物中に組み入れることができる。前記フェノール化合物O−α−グルコシドの調製物には、限定はされないが、以下の列挙のいくつかの賦形剤を含めることができる:タルク、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、グリセロールモノステアレート、コロイド状二酸化ケイ素、沈降二酸化ケイ素、架橋ポリビニルピロリドン、二塩基リン酸カルシウム二水和物、微小結晶セルロース、コーンスターチ、ポピドン、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリソルベート80、乳酸、カルボマー、セチルアルコール、ミリスチン酸イソプロヒル、パルミチン酸イソプロヒル、グルコース、デキストロース、トリエタノールアミン、グリセリン、フルクトース、スクロース、ポリマー、ナノ構造物。
【0194】
本発明の組成物は、限定はされないが、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤、又は液剤などの経口で許容可能な任意の剤形で経口投与できる。経口使用のための錠剤の場合、一般に使用される担体としてはラクトース及びコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も典型的に添加される。カプセル状での経口投与においては、有用な賦形剤としてラクトース及び乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁剤が経口使用に必要な場合、活性成分を乳化剤及び懸濁化剤と混ぜ合わせることができる。必要に応じて、ある種の甘味剤、香味剤、又は着色剤を添加することもできる。
【0195】
あるいは、本発明の組成物は、直腸投与のために坐剤の形で投与できる。これらは、室温では固体であるが、直腸温で液体であり、そのために直腸において溶けて薬物を放出する適当な非刺激性賦形剤と薬剤とを混合させることにより調製できる。このような物質としては、カカオ脂、蜜蝋、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0196】
本発明の組成物は、特に処置の標的に、眼、皮膚、又は下部腸管の疾患を含む、局所適用により容易に接近できる部位又は器官が含まれる場合、局所投与することもできる。適当な局所製剤は、これらの部位又は器官のそれぞれについて容易に調製される。
【0197】
局所適用のために、組成物を、1又は複数の担体に懸濁させた又は溶解させた活性成分を含む適当な軟膏剤中に製剤化できる。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、限定はされないが、鉱物油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、及び水が挙げられる。あるいは、組成物を、1又は複数の医薬的に許容可能な担体に懸濁させた又は溶解させた活性成分を含む適当なローション又はクリーム中に製剤化できる。適当な担体としては、限定はされないが、鉱物油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水が挙げられる。
【0198】
眼科使用のために、組成物は、等張のpH調整された滅菌生理食塩水中の微粉懸濁剤として又は好ましくは等張のpH調整された滅菌生理食塩水中の液剤として、塩化ベンジルアルコニウムなどの保存剤の有無にかかわらず製剤化できる。あるいは、眼科使用には、組成物を、ワセリン剤のような軟膏剤中で製剤化できる。
【0199】
本発明の組成物は、鼻エアロゾル又は吸入により投与することもできる。このような組成物は、医薬品製剤の技術分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコール又は他の適当な保存剤、生物学的利用能を増強させるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は他の従来の可溶化剤又は分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製できる。
【0200】
本発明の無菌注射剤型の組成物は、水性又は油性懸濁剤でよい。これらの懸濁剤は、適当な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、当技術分野において公知の技術に従って製剤化できる。無菌注射用製剤は、毒性のない非経口の許容可能な希釈剤又は溶媒、例えば、1,3−ブタネジオール中の溶液としての無菌注射剤又は懸濁剤でもよい。用いることのできる許容可能な賦形剤及び溶媒としては、水、リンガー溶液、及び等張の塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌固定油は、従来、溶媒又は懸濁媒体として用いられる。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む無菌性の固定油を用いることができる。オレイン酸やそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、注入剤の調製において有用であり、オリーブ油又はヒマシ油、特にそれらのポリオキシエチル化型などの天然の医薬的に許容可能な油も同様である。これらの油剤又は懸濁剤には、カルボキシメチルセルロースなどの長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、又は乳剤及び懸濁剤を含む医薬的に許容可能な剤形の製剤化において一般に使用される同様の分散剤が含まれてもよい。Tweens、Spans、及び他の乳化剤などの一般に使用される他の界面活性剤、又は医薬的に許容可能な固形、液体、又は他の剤形の製造において一般に使用される生物学的利用率のエンハンサーは、製剤化の目的でも使用できる。
【0201】
本発明の利点
既存の方法を越える本発明の方法の利点は、先の記載及び実施態様から明らかである。本発明の他の利点の列挙を、限定はされないが、以下に記載する。
【0202】
本発明では、
‐プロトカテク酸及びそのエステル誘導体、
‐カフェー酸及びそのエステル誘導体、特にロスマリン酸、クロロゲン酸及びカフェー酸フェネチルエステル及びヒドロカフェー酸又は3,4−ジヒドロキシヒドロ桂皮酸、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸及び3,4−ジヒドロキシフェニルグリコール、
‐エスクレチン、
‐タクシフォリン、
‐フスチン、
‐エリオジクチオール、
‐フィゼチン、及び
‐ラムネチン
の新しい最初のフェノール化合物O−α−グルコシドについて記載する。
【0203】
好ましくは、本発明の新しい最初のフェノール化合物O−α−グルコシドは、没食子酸エピカテキンO−α−グルコシド、エリオジクチオールO−α−グルコシド、エスクレチンO−α−グルコシド、フィゼチンO−α−グルコシド、フスチンO−α−グルコシド、ホモプロトカテク酸O−α−グルコシド、プロトカテク酸O−α−グルコシド、プロトカテク酸エチルエステルO−α−グルコシド、ヒドロキシチロソールO−α−グルコシド、マクルリンO−α−グルコシド、ノルジヒドログアイアレチン酸O−α−グルコシド、オレウロペインO−α−グルコシド、ピロカテコールO−α−グルコシド、ラムネチンO−α−グルコシド、ロスマリン酸O−α−グルコシド、タクシフォリンO−α−グルコシド、3−ヒドロキシダイゼインO−α−グルコシド、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンO−α−グルコシド、カフェー酸O−α−グルコシド、ジヒドロカフェー酸O−α−グルコシド、カフェー酸フェネチルエステルO−α−グルコシド、シルシリオールO−α−グルコシド、クロロゲン酸O−α−グルコシド、アントラロビンO−α−グルコシド、エピガロカテキンO−α−グルコシド、ジヒドロロビネチンO−α−グルコシド、ガロカテキンO−α−グルコシド、没食子酸O−α−グルコシド、没食子酸プロピルO−α−グルコシド、及びロビネチンO−α−グルコシドからなる群より選択される。
【0204】
化粧品及び治療の分野においてとても興味深いこれらのフェノール化合物O−α−グルコシドは、改善された水溶性を示す。実際、少なくとも20倍、30倍、又は50倍の溶解度の増加が、同じ生理学的条件における対応するアグリコンとの比較で観察される。
【0205】
これらのフェノール化合物O−α−グルコシドは増加した生物学的利用能を有する。これらのフェノール化合物O−α−グルコシドは、ヒトの共生微生物による最初のフェノール構造へのそれらの加水分解を通じて「インサイチューで活性化される」ことができ、化粧品及び治療のいずれのための用途においてもとても興味深い「プロドラッグ」状態をもたらす。それらは、酵母Saccharomyces cerevisiaeにより産生されるα−グルコシダーゼなどのα−グルコシダーゼによっても活性化できる。
【0206】
これらの新規のフェノール化合物O−α−グルコシドは、証明済みの信頼できる低コストな「環境に優しい化学」の酵素工程を通じて得ることができ、これによりこれらの産物の高品質が保証される(使用する酵素の特異性及び選択性に起因する)。
【0207】
実施例
本発明の他の実施態様及び利点は、以下の実施例から現れ、それらは本発明の実施態様の例証であり、請求項により包含される本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0208】
実施例1:グルコシル化タクシフォリンの合成;高度精製グルコシル化タクシフォリンの水溶性及び4〜45℃の温度範囲でのグルコシル化誘導体分子の安定性
【0209】
グルコシル化タクシフォリンの合成を実施するための条件は以下の通りである(反応媒質1リットル当たりの量):
【0210】
【表5】

【0211】
様々な溶液を表に報告した順番で混合することにより、酵素なしの反応媒質を最初に得た。所望の温度である30℃(プラスマイナス0.2℃)を得るために十分な時間の間、混合物を30℃でインキュベートさせた。次に、酵素調製物を導入することにより反応を開始させた。反応媒質を適度に撹拌できる。
【0212】
以下の通りに酵素調製物を得た:酵素を含む液体から微生物細胞を完全に分離するために、4〜6U/mLの範囲で酵素活性を滴定するLeuconostoc mesenteroides NRRL B512-Fの培養ブロスを遠心分離機にかける。遠心上精を次に旋回型限外ろ過により4〜10倍濃縮させた(分子量カットオフ値100kDa)。次に、酵素を含む細胞培養液の低分子量の残留成分を広範囲に除去するために、10mg/Lの塩化カルシウム二水和物を含む20mM酢酸バッファー(pH5.2)で濃縮液を4倍に希釈し、次に4倍に濃縮した。精製させた酵素調製物を次に活性の喪失なく、最長数ヶ月間、凍結状態(−20℃)又は凍結乾燥で保存させた。一般的な手順として、酵素調製物の容積が合成反応媒質の最終容積の20%より高くならないようにするために、濃縮液の濃度を増加させることにより酵素調製物の活性を調整する。
【0213】
反応媒質を22時間の間、30℃(プラスマイナス0.2℃)でインキュベートした。反応媒質から一定分量の反応媒質を取り、40/60の割合でメタノール及び水を含む溶液で50倍に希釈した。メタノール溶液を次にHPLCにより分析した。
【0214】
分析条件は、メタノール濃度プロファイルが以下の通りであることを除き、先の述べた条件であった(方法2):
‐溶媒A:1%(v/v)酢酸を含む脱イオン水
‐溶媒B:1%(v/v)酢酸を含むHPLCグレードのメタノール
‐0〜10分:60%A;40%B;1mL/分
‐10〜12分:60〜20%A(直線的);40〜80%B(直線的);1mL/分
‐12〜14分:20%A;80%B;1mL/分
‐14〜16分:20%〜60%A(直線的);80〜40%B(直線的);1mL/分
‐16〜25分:60%A;40%B;1mL/分
‐25分:次の注入
【0215】
図7は、インキュベーションのちょうど開始時のグルコシド・アクセプターとしてタクシフォリン(289nm)を含む反応媒質のHPLCクロマトグラムを示す。8.15分の主な画像はタクシフォリンに対応する。
【0216】
図8は、22時間のインキュベーション後のグルコシド・アクセプターとしてタクシフォリン(289nm)を含む反応媒質のHPLCクロマトグラムを示す。保持時間6.15分で画像が観察される。
【0217】
図9は質量スペクトルを、図10は約8.15分に溶出された画像のUVスペクトルを示す:物質は分子量304であるタクシフォリン(m/z [M-H] : 302,96及びm/z [M-H-H2O] : 284.96)である。
【0218】
図11は質量スペクトルを、図12は約6.15分に溶出された画像のUVスペクトルを示す:対応する物質はタクシフォリングルコシド(m/z [M-H] : 464.98)であり、その分子量が466であるためである。
【0219】
9.33及び12.75分に溶出された物質は、タクシフォリン調製物において見出されるポリフェノール物質である。
【0220】
図13は、酵素、デキストラン、フルクトース及びDMSO及び残留タクシフォリン分画を除去するために精製を実施した後でのタクシフォリン及びタクシフォリングルコシドを含む水溶液のHPLCクロマトグラムを示す。溶出条件は先の記載した条件であり、ここで最初のメタノール含量は10%である(方法1)。タクシフォリンは24.01分に、タクシフォリングルコシドは22.33分に溶出される。
【0221】
タクシフォリングルコシドを広範囲に精製し、タクシフォリン濃度を可能な限り低下させた。93mM超のタクシフォリングルコシドを、2mM未満のタクシフォリン残留濃度で滴定する溶液を最終的に得た(図14;8.95分に溶出されたタクシフォリン、及び、6.55分に溶出されたタクシフォリングルコシド)。
【0222】
タクシフォリングルコシドの濃度を以下の通りに決定した:タクシフォリンのモル濃度と正確に特性付けしたタクシフォリン調製物(SIGMA)を伴う画像領域との関係を確立した後、タクシフォリングルコシドの濃度を、領域とタクシフォリングルコシドの濃度との関係を適用することで決定したが、それは、タクシフォリンとタクシフォリングルコシドが同じUVスペクトラムを有するためである。次に、モル濃度にタクシフォリングルコシドの分子量の値(466)を乗ずることで濃度(g/L)を得た。25℃の水中でのタクシフォリンの溶解度が1.19g/L(3.91mM)と測定されたが、25℃の水中でのタクシフォリングルコシドの溶解度は43.5g/L(93.2mM)よりも高い。
【0223】
このように、記載の方法に従って、新物質である、分子量が466、約25℃での水溶性が93mMより高いタクシフォリングルコシドを合成することが可能であり、これはタクシフォリン残基に関する水溶性の23より高い増加に対応する。タクシフォリングルコシドは先に言及した技術に従って精製できる(樹脂吸着、溶出、濃縮、液液抽出、溶媒除去及び濃縮、及び最終的な乾燥)。
【0224】
タクシフォリングルコシド溶液は、グルコシド結合が喪失されず、酸化に対する十分な耐性を伴ったままで長期間の間保存できる。
【0225】
加速品質保持試験を、4ヶ月間、4℃、22℃、37℃、及び45℃の温度チェンバーを使用して実施した。タクシフォリングルコシド含量を頻繁に測定し、色と臭気を大雑把に制御した。タクシフォリングルコシド含量を、先に記載の通りに、HPLCにより決定した(一定分量の溶液の500倍希釈及び方法2を使用した分析;検出:210〜400nm)。
【0226】
以下の表では、様々な保存温度での、タクシフォリングルコシドの観察された量に対する保存時間について記載する。
【0227】
【表6】

【0228】
保存温度にかかわらず、色や臭気の変化は観察されなかった。
【0229】
そのために、タクシフォリンとグルコース部分との間のグルコシド結合は、上の試験条件において安定である。37℃及び45℃で、恐らくは酸化に起因するタクシフォリングルコシドのわずかな分解が認められた:実際、グルコシド結合の加水分解を示しうるタクシフォリン濃度の増加は、対応する溶液において観察されなかった。上で言及した条件では、タクシフォリングルコシドの半減期は、37℃で1.6年間、45℃で0.67年間と推定される。
【0230】
この実施例では、タクシフォリングルコシドが厳しい保存条件においてでさえ高い化学安定性を有することを実証する。
【0231】
実施例2:タクシフォリングルコシド合成の効率に及ぼすDMSO濃度の影響
タクシフォリングルコシドの酵素合成は、以下を例外として、実施例1に記載の通りに実施した:
‐酵素濃度は1U/mLであった。
‐DMSO濃度は35%、25%、15%、又は5%であった。
【0232】
22時間のインキュベーション後、4つの反応媒質中での相対的なタクシフォリングルコシド濃度を以下の表において報告する。
【0233】
【表7】

【0234】
タクシフォリングルコシドの合成における最適なDMSO濃度は、30%よりも有意に低い値で、15%近辺であると思われる。
【0235】
実施例3:ヒトの皮膚微生物叢によるタクシフォリングルコシドの活性化
皮膚微生物叢を5人の供与体から別々に採取した。各供与体の前腕及び前頭部を、NaCl溶液(v=5mL、8g/L)をしみ込ませた脱脂綿スワブで擦り取った。各擦り取り後に、スワブを残りのNaCl溶液中に分割し、絞り、サンプル材料を与えた。両腕及び前頭部の3カ所における2サイクルの擦り取り/絞り後、得られた罹患調製物をろ過して(40μm)、鱗片を除去し、最後に遠心分離機にかけた(4℃、5,000g、15分間)。微生物沈殿物をNaCl溶液(v=1mL、8g/L)中に再浮遊させて、OD600nmで特性付けした。
【0236】
5つの微生物サンプルを混合させて、試験で使用する最終的な微生物懸濁液を形成させた。Hickey−Tresner培養液(1.0g/L酵母エキス、1.0g/L肉エキス、2.0g/Lカゼインペプトン、10.0g/Lデンプン、20mg/L塩化コバルト六水和物;pH=6)を使用して微生物細胞を培養した。微生物増殖を、連続撹拌(100rpm)下で37℃の100mL三角フラスコ中で実施した。無菌培養ブロス(20mL)に0.1mLの懸濁液を接種した。微生物増殖は、OD600nmを測定することにより制御した。
【0237】
実施例1に記載の通りにタクシフォリングルコシドを得た(図14において報告したHPLCクロマトグラムに対応する高度精製調製物)。タクシフォリングルコシドを0日目に添加した、又は添加しなかった(V=0.5mLの0.20μm滅菌溶液)。タクシフォリングルコシドを含まない最終微生物懸濁液を増殖することにより制御した。
【0238】
一定分量の細胞培養液を遠心分離後、メタノールと水を40/60の割合で含む溶液で上精を4倍希釈した。上精中のタクシフォリングルコシド及びタクシフォリンの濃度をHPLCで決定した(方法2)。
【0239】
図15は、1週間の間でのHickey-Tresner培地中での見掛け上の細菌増殖を示す。3〜7日目、見掛け上のバイオマス産生は、タクシフォリングルコシドの非存在下よりも存在下の方が高かった。このことは、細菌加水分解下でのタクシフォリングルコシドからのグルコースの遊離に起因するより高濃度の炭素及びエネルギー源により説明されうる。
【0240】
図16では、タクシフォリングルコシドの加水分解は、最初の3日間の間には検出することができない。3日間のインキュベーション後、恐らく炭素及びエネルギー源が制限されたとき、タクシフォリングルコシドの濃度は大幅に減少し、アグリコン・フラボノイドであるタクシフォリンが同時に現われる。ヒトの皮膚微生物叢に由来する細菌集団が受ける栄養ストレスは、分泌酵素の作用を通じてグルコシル残基の遊離を促進させうる。
【0241】
この実施例では、ヒトの皮膚微生物叢が、フラボノイド・グルコシド結合を認識して、高い生産量で加水分解し、活性成分の送達のための新しい経路を提供する。
【0242】
実施例4:α−グルコシダーゼ調製物によるタクシフォリングルコシドの活性化
タクシフォリングルコシドをα−グルコシダーゼの存在下において以下の条件でインキュベートさせた。
‐実施例1に記載の通りに得られたタクシフォリングルコシド(図14において報告されるHPLCクロマトグラムに対応する高度精製調製物):0.25mL;
‐α−グルコシダーゼ(Saccharomyces cerevisiaeから;FLUKA 70797;ロット0641337/1;活性:5.8 U/mg):リン酸カリウムバッファー(0.1M、pH7.3)5mL中50.1mg;コントロール反応媒質中には酵素はない;
‐温度:30℃;
‐中程度の撹拌
【0243】
反応媒質は、一定分量をメタノールで2倍希釈後にHPLC(方法2)により分析した。
【0244】
18時間のインキュベーション後、タクシフォリングルコシド分子は、α−グルコシダーゼ酵素を含まない媒質中において未変化のままであったのに対し、タクシフォリングルコシド分子はα−グルコシダーゼ酵素の存在下においてタクシフォリンに完全に変換された。
【0245】
これらの結果は、α−グルコシド結合の加水分解に特異的な単離酵素が、タクシフォリングルコシド分子を加水分解できることを示す:このことは、タクシフォリングルコシド分子にタクシフォリン及びグルコースが含まれており、グルコースがα−グルコシド結合を介してタクシフォリンのヒドロキシ基に連結することを示す。このため、合成された新しいグルコシド誘導体は、O−α−D−グルコシド誘導体であると主張される。
【0246】
実施例5:ピロカテコール、プロトカテク酸、及びプロトカテク酸エチルエステルのO−α−D−グリコシドの酵素合成
反応媒質を実施例1に記載の通りに調製し、タクシフォリンは、ピロカテコール(SIGMA、レファレンスC 9510)、又はプロトカテク酸(ALDRICH、レファレンスD10,980-0)、又はプロトカテク酸エチルエステル(ALDRICH、レファレンスE2,485-9)に置き換えた。
【0247】
21時間のインキュベーション後、各反応媒質のサンプルを40/60の割合でメタノール及び水を含む溶液で5倍希釈し、次にHPLCで分析した(方法1)。結果を以下の表に報告する。
【0248】
【表8】

【0249】
このように、記載の方法に従って、ピロカテコール、プロトカテク酸、及びプロトカテク酸エチルエステルの新しいグルコシル化誘導体を合成することができ:得られた産物は、少なくともモノグルコシル化誘導体、ジグルコシル化誘導体、トリグルコシル化誘導体、及びテトラグルコシル化誘導体を含む物質のファミリーである。
【0250】
実施例6:カフェー酸、3,4−ジヒドロキシヒドロ桂皮酸(ヒドロカフェー酸)、及びロスマリン酸のO−α−D−グリコシドの酵素合成
反応媒質を実施例1に記載の通りに調製し、タクシフォリンは、カフェー酸(SIGMA、レファレンスC 0625)、又は3,4−ジヒドロキシヒドロ桂皮酸(ALDRICH、レファレンスD10,980−0)、又はロスマリン酸(FLUKA、レファレンス44699;反応媒質中のロスマリン酸の濃度は1g/Lであった)に置き換えた。
【0251】
21時間のインキュベーション後、各反応媒質のサンプルを40/60の割合でメタノール及び水を含む溶液で5倍希釈し、次にHPLCで分析した(方法1)。
【0252】
結果を以下の表に報告する。
【0253】
【表9】

【0254】
このように、記載の方法に従って、カフェー酸、ヒドロカフェー酸、及びロスマリン酸の新しいグルコシル化誘導体を合成することができ:得られた産物は、少なくともモノグルコシル化誘導体、ジグルコシル化誘導体、トリグルコシル化誘導体、及びテトラグルコシル化誘導体を含む物質のファミリーである。ヒドロカフェー酸に関する限り、両方のヒドロキシ基が置換されていることは明らかであり:実際、少なくとも2つの一連の誘導体には、いずれも少なくともモノグルコシル化誘導体(344)、ジグルコシル化誘導体(506)、トリグルコシル化誘導体(668)、テトラグルコシル化誘導体(830)、及びペンタグルコシル化(992)誘導体が含まれることが分かる。このことは、当業者が予測できないいくつかのケースにおいて、両方のヒドロキシル化基がグルコース部分を受け入れられることを示す。
【0255】
実施例7:3,4−ジヒドロキシマンデル酸、エスクレチン、及びエスクリンのO−α−D−グリコシドの酵素合成
反応媒質を実施例1に記載の通りに調製し、タクシフォリンは、3,4−ジヒドロキシマンデル酸(ALDRICH、レファレンス151610)、又はエスクレチン(ALDRICH、レファレンス24,657-3)、又はエスクリン(SIGMA、レファレンスE 8250)に置き換えた。
【0256】
21時間のインキュベーション後、各反応媒質のサンプルを40/60の割合でメタノール及び水を含む溶液で5倍希釈し、次にHPLCで分析した(方法1)。
【0257】
結果を以下の表に報告する。
【0258】
【表10】

【0259】
3,4−ジヒドロキシマンデル酸には、タクシフォリン、ピロカテコール、プロトカテク酸、カフェー酸としてピロカテコール構造が含まれる:それにもかかわらず、3,4−ジヒドロキシマンデル酸のグルコシル化誘導体はこの条件では合成されなかった。
【0260】
予想外の様式では、6,7−ジヒドロキシクマリン骨格は、一連のグルコシル化エスクレチンをもたらすグルコシド・アクセプターでもある。合成エスクレチンモノグルコシドが15.65分の保持時間を有するのに対し、天然グルコシル化エスクレチン(エスクリン又はエスクレチン6−O−β−D−グルコピラノシド)が13.69分の保持時間を有することを強調する必要がある:このことは、天然分子の場合でのオシジック(osidic)結合がα−タイプであるのに対し、エスクリンのオシジック(osidic)結合がβ−タイプであることに起因するにちがいない。
【0261】
予想外の様式では、エスクリンは、恐らくはそのグルコース部分によるグルコシド・アクセプターである。
【0262】
実施例8:没食子酸、没食子酸プロピル、及び没食子酸エピガロカテキンのO−α−D−グリコシドの酵素合成
反応媒質を実施例1に記載の通りに調製し、タクシフォリンは、没食子酸(FLUKA、レファレンス48630)、又は没食子酸プロピル(SIGMA、レファレンスP3130)、又は没食子酸エピガロカテキン(SIGMA、レファレンス44699)に置き換え、DMSO濃度は15%(v/v)に低下させた。
【0263】
6時間のインキュベーション後、各反応媒質のサンプルを40/60の割合でメタノール及び水を含む溶液で5倍希釈し、次に、溶離液A(1%(v/v)酢酸を含む脱イオン水)と溶離液B(1%(v/v)酢酸を含むHPLCグレードのメタノール)の併用により、先に記載したHPLC機器を使用して、以下に報告した通り分析した。
【0264】
結果を以下の表に報告する。
【0265】
【表11】

【0266】
分析条件:
G1:流速1mL/分;0〜10分:Bは10〜20%で直線的に増加する;10〜25分:Bは20〜50%で直線的に増加する;25〜30分:Bは50%で安定である;30〜35分:Bは50〜10%で直線的に減少する。
【0267】
G6:流速1mL/分;0〜20分:Bは2.5〜25%で直線的に増加する;20〜25分:Bは25%で安定である;25〜28分:Bは25〜2.5%で直線的に減少する。
【0268】
このように、記載の方法に従って、没食子酸、没食子酸プロピル、及び没食子酸エピガロカテキンの新しいグルコシル化誘導体を合成することができ:得られた産物は、少なくともモノグルコシル化誘導体を含む物質のファミリーである。
【0269】
実施例9:カフェー酸フェネチルエステル、クロロゲン酸、及び3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンのO−α−D−グリコシドの酵素合成
反応媒質を実施例1に記載の通りに調製し、タクシフォリンは、カフェー酸フェネチルエステル(SIGMA、レファレンスC8221)、又はクロロゲン酸(SIGMA、レファレンスC3878)、又は3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(ALDRICH、レファレンス579815)に置き換え、DMSO濃度は15%及び25%(v/v)であった。
【0270】
6時間のインキュベーション後、各反応媒質のサンプルを40/60の割合でメタノール及び水を含む溶液で5倍希釈し、次に、溶離液A(1%(v/v)酢酸を含む脱イオン水)と溶離液B(1%(v/v)酢酸を含むHPLCグレードのメタノール)の併用により、先に記載したHPLC機器を使用して、以下に報告した通り分析した。
【0271】
結果を以下の表に報告する。
【0272】
【表12】

【0273】
分析条件:
G1:実施例8を参照。G2:流速1mL/分;0〜20分:Bは40〜80%で直線的に増加する;20〜22分:Bは80%で安定である;22〜27分:Bは80〜40%で直線的に減少する。
【0274】
このように、記載の方法に従って、カフェー酸フェネチルエステル、クロロゲン酸、及び3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンの新しいグルコシル化誘導体を合成することができ:得られた産物は、少なくともモノグルコシル化誘導体を含む物質のファミリーである。
【0275】
実施例10:カテキン、エリオジクチオール、フィゼチン、オレウロペイン、及びノルジヒドログアイアレチン酸のO−α−D−グリコシドの酵素合成
反応媒質を実施例1に記載の通りに調製し、タクシフォリンは、カテキン(FLUKA、レファレンス22110)、又はエリオジクチオール(EXTRASYNTHESE、レファレンス0056)、又はフィゼチン(SIGMA、レファレンスF4043)、又はオレウロペイン(EXTRASYNTHESE、レファレンス0204)、又はノルジヒドログアイアレチン酸(EXTRASYNTHESE、レファレンス6135)に置き換え、DMSO濃度は15%及び25%(v/v)であった。
【0276】
6時間のインキュベーション後、各反応媒質のサンプルを40/60の割合でメタノール及び水を含む溶液で5倍希釈し、次に、溶離液A(1%(v/v)酢酸を含む脱イオン水)と溶離液B(1%(v/v)酢酸を含むHPLCグレードのメタノール)の併用により、先に記載したHPLC機器を使用して、以下に報告した通り分析した。
【0277】
結果を以下の表に報告する。
【0278】
【表13】

【0279】
分析条件:
G1:実施例8を参照。
G2:実施例9を参照。
【0280】
このように、記載の方法に従って、カテキン、エリオジクチオール、フィゼチン、オレウロペイン、及びノルジヒドログアイアレチン酸の新しいグルコシル化誘導体を合成することができ:得られた産物は、少なくともモノグルコシル化誘導体を含む物質のファミリーである。
【0281】
実施例11:厳密な水性媒体中でのカテキン、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、ロスマリン酸、カフェー酸、及びクロロゲン酸のO−α−D−グリコシドの酵素合成
反応媒質を実施例1に記載の通りに調製し、タクシフォリンは、濃度7.5g/Lのカテキン(FLUKA、レファレンス22110)、又は濃度9.0g/Lの3,4−ジヒドロキシ安息香酸(ALDRICH、レファレンスD10, 980-0)、又は濃度9.0g/Lの没食子酸(FLUKA、レファレンス48630)、又は濃度7.5g/Lのロスマリン酸(FLUKA、レファレンス44699)、又は濃度9.0g/Lのカフェー酸(SIGMA、レファレンスC0625)、又は濃度7.5g/Lのクロロゲン酸(SIGMA、レファレンスC3878)に置き換えた。DMSOは省いたが、酢酸ナトリウムバッファー濃度を100mMに上昇させ、酵素活性を1.0U/mLに低下させた。
【0282】
6時間のインキュベーション後、各反応媒質のサンプルを40/60の割合でメタノール及び水を含む溶液で5倍希釈し、次に、溶離液A(1%(v/v)酢酸を含む脱イオン水)と溶離液B(1%(v/v)酢酸を含むHPLCグレードのメタノール)の併用により、先に記載したHPLC機器を使用して、以下に報告した通り分析した。
【0283】
結果を以下の表に報告する。
【0284】
【表14】

【0285】
分析条件:
G1:実施例8を参照。
【0286】
このように、記載の方法に従って、有機溶媒の非存在下で、カテキン、没食子酸、カフェー酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、ロスマリン酸、及びクロロゲン酸の新しいグルコシル化誘導体を合成することができ:得られた産物は、少なくともモノグルコシル化誘導体を含む物質のファミリーである。
【0287】
実施例12:エラグ酸、アリザリン、エピネフリン、ルチン、及びバイカレインのO−α−D−グリコシドの酵素合成の試み
反応媒質を実施例1に記載の通りに調製し、タクシフォリンは、エラグ酸(FLUKA、レファレンス45140)、又はルチン(SIGMA、レファレンスR5143)、又はアリザリン(EXTRASYNTHESE、レファレンス0411)、又はエピネフリン(SIGMA、レファレンスE4250)、又はバイカレイン(FLUKA、レファレンス11712)に置き換えた。ジメチルスルホキシド濃度は25%(v/v)であった。
【0288】
6時間及び21時間のインキュベーション後、各反応媒質のサンプルを40/60の割合でメタノール及び水を含む溶液で5倍希釈し、次に、溶離液A(1%(v/v)酢酸を含む脱イオン水)と溶離液B(1%(v/v)酢酸を含むHPLCグレードのメタノール)の併用により、先に記載したHPLC機器を使用して、以下に報告した通り分析した。
【0289】
結果を以下の表に報告する。
【0290】
【表15】

【0291】
分析条件:
G1:実施例8を参照。
G2:実施例9を参照。
G6:実施例8を参照。
G4:流速1mL/分;0〜10分:Bは40〜80%で直線的に増加する;10〜15分:Bは80%で安定である;15〜20分:Bは80〜40%で直線的に減少する。
【0292】
被験物質にはピロカテコール構造が含まれるが、環の置換基によりそれらの酵素認識が可能になることはない。ルチンの場合、ケルセチンが3’位及び/又は4’位でグルコシル化されるのに対して(BERTRAND et al.)、ルチンはされないため、ケルセチン3−O−ルチノシドのサッカリド部分は酵素認識において非常に重要であると思われる。
【化72】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール化合物O−α−グルコシドを生産するための方法であって、スクロースと、Leuconostocの種からの、好ましくはLeuconostoc mesenteroides NRRL B-512Fからのグルカンスクラーゼとを、以下の化学式を有するフェノール化合物と共にインキュベートすることを含み:
【化73】


〔式中、R2がH又はOHであり;及び、R1が
【化74】


(式中、R3及びR4の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R3及びR4は独立にH又はOHである);
【化75】


(式中、R7及びR8の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R7はH、−OH、又は−OCORからなる群より選択され、及び、R8はH又はOHである);
【化76】


(式中、R5はOH又はOCHであり;R5及びR6がいずれもOHである場合にR10及びR11のいずれもHであることができず、及び、R10がC11である場合にR11がHであるという条件で、R6はH又はOHであり、R9はH又はOHであり、R10はH、OCH、又はC11であり、及び、R11はH、OH、又はC11である);
‐−(CH−COOR又は−(CH−CONHR(nは0〜2の整数である);
‐−(CR12=CH)−COOR又は−(CR12=CH)−CONHR(R12は、H、又はC−C直鎖もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシルもしくはフェニルである);
‐−(CH−OR又は−(CH−NHR(nは0〜2の整数である);
‐−(CH−COR又は−(CH=CH)−COR(nは0〜2の整数である);
‐−H;
【化77】


及び、
‐化学式(I)で表わされた環と共に、R1のオルト炭素と一緒になって縮合環(二環式又は三環式)を形成するC−C10炭化水素基(前記の環は場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されている);
からなる群より選択され、
ここで、Rは、H、又は直鎖、分岐、もしくは環状の芳香族もしくは非芳香族の飽和もしくは不飽和C−C10炭化水素基であり、場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されており、ここで、前記の炭化水素基はアルキル、アルケニル、又はアルキニル、好ましくはアルキル又はアルケニルを包含し、これは以下からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換され得る:(C−C)アリール、(C−C)ヘテロ環、(C−C)アルコキシ、(C−C)アシル、(C−C)アルコール、カルボキシル基(−COOH)、(C−C)エステル、(C−C)アミン、アミノ基(−NH)、アミド(−CONH)、(C−C)イミン、ニトリル、ヒドロキシル(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ハロゲン、(C−C)ハロゲノアルキル、チオール(−SH)、(C−C)チオアルキル、(C−C)スルホン、(C−C)スルホキシド、及びこれらの組み合わせ〕。
【請求項2】
フェノール化合物のR1が
【化78】


であり、式中、R3及びR4の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R3及びR4が独立にH又はOHである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
フェノール化合物が、タクシフォリン、エリオジクチオール、ジヒドロロビネチン、及びフスチンからなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
フェノール化合物のR1が
【化79】


であり、式中、R7及びR8の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R7がH、−OH、又は−OCORからなる群より選択され、及び、R8がH又はOHである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
フェノール化合物が、カテキン、エピカテキン、没食子酸カテキン、没食子酸エピガロカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、没食子酸ガロカテキン、及び没食子酸エピガロカテキンからなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
フェノール化合物のR1が
【化80】


であり、式中、R5がOH又はOCHであり;R5及びR6がいずれもOHである場合にR10及びR11のいずれもHであることができず、またR10がC11である場合にR11がHであるという条件で、R6がH又はOHであり、R9がH又はOHであり、R10がH、OCH、又はC11であり、及び、R11がH、OH、又はC11である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
フェノール化合物が、ラムネチン、フィゼチン、ロビネチン、ゴシペチン、オリエンチン、ホモオリエンチン、及びシルシリオールからなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
フェノール化合物のR1が、−(CH−COOR又は−(CH−CONHRであり、nが0〜2の整数である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
フェノール化合物が、ホモプロトカテク酸、ジヒドロカフェー酸、プロトカテク酸エチルエステル、没食子酸プロピル、没食子酸、ハマメリタンニン(2’,5−ジ−O−ガロイル−ハマメローズ)、及びプロトカテク酸からなる群より選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
フェノール化合物のR1が、−(CR12=CH)−COOR又は−(CR12=CH)−CONHRであり、R12がH、又はC−C直鎖、分岐、もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシルもしくはフェニル、より好ましくはメチルもしくはフェニルである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
フェノール化合物が、カフェー酸、ロスマリン酸、エスクレチン、4−メチルエスクレチン、ノルダルベルギン(6,7−ジヒドロキシフェニルクマリン)、クロロゲン酸、カフェー酸フェネチルエステル、チコリ酸(ジカフェオイル酒石酸)、エキナコシド(2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)エチルO−6−デオキシ−アルファ−L−マンノピラノシル−(1→3)−O−(ベータ−D−グルコピラノシル−(1→6))−、4−(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノアート)、ベータ−D−グルコピラノシド)、及びベルバスコシドからなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
フェノール化合物のR1が、−(CH−OR又は−(CH−NHRであり、nが0〜2の整数であり、例えば、フェノール化合物がヒドロキシチロソールである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
フェノール化合物のR1が、−(CH−COR又は−(CH=CH)−CORであり、nが0〜2の整数である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
フェノール化合物が、マクルリン、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ブテイン(2’,3,4,4’−テトラヒドロキシカルコン)、3,4−ジヒドロキシアセトフェノン、マレイン(2’,3,3’,4,4’−ペンタヒドロキシ−4’−グルコシルカルコン)、及びエリオジクチオールカルコン(2’,4’,6’,3,4−ペンタヒドロキシカルコン)からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
フェノール化合物のR1がHである、例えば、フェノール化合物がピロカテコールである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
フェノール化合物のR1が
【化81】


ある、例えば、フェノール化合物がノルジヒドログアイアレチン酸である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
フェノール化合物のR1が
【化82】


ある、例えば、フェノール化合物が3−ヒドロキシダイゼインである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
フェノール化合物のR1が
【化83】


である、例えば、フェノール化合物がオレウロペインである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
フェノール化合物のR1が
【化84】


である、例えば、フェノール化合物がマリチメイン(3’,4’,6,7−テトラヒドロキシ−6−O−グルコシルオーロン)である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
フェノール化合物のR1が、化学式(I)で表わされた環と共に、R1のオルト炭素と一緒になって縮合環(二環式又は三環式)を形成するC−C10炭化水素基であり、前記の環が場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されている、請求項1記載の方法。
【請求項21】
フェノール化合物が
【化85】


からなる群より選択され;好ましくは、フェノール化合物がアントラロビン又はサルソリノール(1−メチル−6,7−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン)である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
以下の化学式を有するフェノール化合物O−α−グルコシド:
【化86】


〔式中、
A及びBの少なくとも1つがα−グルコシル残基であるという条件で、A及びBは、同一又は異なるかにかかわらず、H又はα−グルコシル残基であり;
R2はH又はOHであり;及び、
R1は
【化87】


(式中、R3及びR4の内の少なくとも1つがOHを表わすという条件で、R3及びR4は独立にH又はOHである);
【化88】


(式中、R2がHの場合にR7及びR8のいずれもOHではなく、またR7及びR8の内の少なくとも1つがOHであるという条件で、R7はH、−OH、又は−OCORからなる群より選択され、及び、R8はH又はOHである);
【化89】


(式中、R5はOH又はOCHであり;R5及びR6がいずれもOHである場合にR10及びR11のいずれもHであることができず、かつR10がC11である場合にR11がHであるという条件で、R6はH又はOHであり、R9はH又はOHであり、R10はH、OCH、又はC11であり、及び、R11はH、OH、又はC11である);
‐−(CH−COOR又は−(CH−CONHR(nは0〜2の整数である);
‐−(CR12=CH)−COOR又は−(CR12=CH)−CONHR(R12は、H、又はC−C直鎖、分岐、もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシルもしくはフェニル、より好ましくはメチルもしくはフェニルであり;
‐−(CH−OR又は−(CH−NHR(nは0〜2の整数である);
‐−(CH−COR又は−(CH=CH)−COR(nは0〜2の整数である);
‐H;
【化90】


‐化学式(I)で表わされた環と共に、R1のオルト炭素と一緒になって縮合環(二環式又は三環式)を形成するC−C10炭化水素基(前記の環は場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されている);
からなる群より選択され、
ここで、Rは、H、又は直鎖、分岐、もしくは環状の芳香族もしくは非芳香族の飽和もしくは不飽和C−C10炭化水素基であり、場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されており、ここで、前記の炭化水素基はアルキル、アルケニル、又はアルキニル、好ましくはアルキル又はアルケニルを包含し、これは以下からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されうる:(C−C)アリール、(C−C)ヘテロ環、(C−C)アルコキシ、(C−C)アシル、(C−C)アルコール、カルボキシル基(−COOH)、(C−C)エステル、(C−C)アミン、アミノ基(−NH)、アミド(−CONH)、(C−C)イミン、ニトリル、ヒドロキシル(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ハロゲン、(C−C)ハロゲノアルキル、チオール(−SH)、(C−C)チオアルキルル、(C−C)スルホン、(C−C)スルホキシド、及びこれらの組み合わせ〕。
【請求項23】
R1が
【化91】


であり、好ましくはフェノール化合物O−α−グルコシドが、タクシフォリンO−α−グルコシド、エリオジクチオールO−α−グルコシド、ジヒドロロビネチンO−α−グルコシド、及びフスチンO−α−グルコシドからなる群より選択される、請求項22記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項24】
R1が
【化92】


であり、好ましくはフェノール化合物O−α−グルコシドが、没食子酸カテキンO−α−グルコシド、没食子酸エピカテキンO−α−グルコシド、ガロカテキンO−α−グルコシド、エピガロカテキンO−α−グルコシド、没食子酸ガロカテキンO−α−グルコシド、及び没食子酸エピガロカテキンO−α−グルコシドからなる群より選択される、請求項22記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項25】
R1が
【化93】


であり、好ましくはフェノール化合物O−α−グルコシドが、ラムネチンO−α−グルコシド、フィゼチンO−α−グルコシド、ロビネチンO−α−グルコシド、ゴシペチンO−α−グルコシド、オリエンチンO−α−グルコシド、ホモオリエンチンO−α−グルコシド、及びシルシリオールO−α−グルコシドからなる群より選択される、請求項22記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項26】
R1が−(CH−COOR又は−(CH−CONHRであり、nが0〜2の整数であり、好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドが、ホモプロトカテク酸O−α−グルコシド、ジヒドロカフェー酸O−α−グルコシド、プロトカテク酸エチルエステルO−α−グルコシド、没食子酸プロピルO−α−グルコシド、没食子酸O−α−グルコシド、ハマメリタンニンO−α−グルコシド、及びプロトカテク酸O−α−グルコシドからなる群より選択される、請求項22記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項27】
R1が−(CR12=CH)−COOR又は−(CR12=CH)−CONHRであり、R12がH又はC−C直鎖もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシルもしくはフェニルであり、好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドが、カフェー酸O−α−グルコシド、ロスマリン酸O−α−グルコシド、エスクレチンO−α−グルコシド、4−メチルエスクレチンO−α−グルコシド、ノルダルベルギン(6,7−ジヒドロキシフェニルクマリン)O−α−グルコシド、クロロゲン酸O−α−グルコシド、カフェー酸フェネチルエステルO−α−グルコシド、チコリ酸(ジカフェオイル酒石酸)O−α−グルコシド、エキナコシド(2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)エチルO−6−デオキシ−アルファ−L−マンノピラノシル−(1→3)−O−(ベータ−D−グルコピラノシル−(1→6))−、4−(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロペノアート)O−α−グルコシド、ベータ−D−グルコピラノシドO−α−グルコシド、及びベルバスコシドO−α−グルコシドからなる群より選択される、請求項22記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項28】
R1が−(CH−OR又は−(CH−NHRであり、nが0〜2の整数であり、好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドがヒドロキシチロソールO−α−グルコシドである、請求項22記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項29】
R1が−(CH−COR又は−(CH=CH)−CORであり、nが0〜2の整数であり、好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドが、マクルリンO−α−グルコシド、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドO−α−グルコシド、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンO−α−グルコシド、ブテイン(2’,3,4,4’−テトラヒドロキシカルコン)O−α−グルコシド、3,4−ジヒドロキシアセトフェノンO−α−グルコシド、マレイン(2’,3,3’,4,4’−ペンタヒドロキシ−4’−グルコシルカルコン)O−α−グルコシド、及びエリオジクチオールカルコン(2’,4’,6’,3,4−ペンタヒドロキシカルコン)O−α−グルコシドからなる群より選択される、請求項22記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項30】
R1が
【化94】


からなる群より選択され、好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドが、ピロカテコールO−α−グルコシド、ノルジヒドログアイアレチン酸O−α−グルコシド、3−ヒドロキシダイゼインO−α−グルコシド、オレウロペインO−α−グルコシド、及びマリチメイン(3’,4’,6,7−テトラヒドロキシ−6−O−グルコシルオーロン)O−α−グルコシドからなる群より選択される、請求項22記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項31】
R1が、化学式(I)で表わされた環と共に、R1のオルト炭素と一緒になって縮合環(二環式又は三環式)を形成するC−C10炭化水素基であり、前記の環は場合により少なくとも1つのヘテロ原子により中断されており、好ましくは、フェノール化合物O−α−グルコシドは、アントラロビンO−α−グルコシド及びサルソリノール(1−メチル−6,7−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン)O−α−グルコシドからなる群より選択される、請求項22記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項32】
O−α−グルコシル残基がグルコース単量体である、請求項22〜31のいずれか一項記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項33】
同じ生理学的条件において対応するアグリコンよりも20倍高い溶解度を有する、請求項22〜32のいずれか一項記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項34】
フェノール化合物O−α−グルコシドが酵素により切断されて、対応するアグリコンを放出できる、請求項22〜33のいずれか一項記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項35】
酵素が、ヒトに関連する微生物、特にヒトの皮膚に関連する微生物から出される、請求項34記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項36】
医薬としての請求項22〜35のいずれか一項記載のフェノール化合物O−α−グルコシド。
【請求項37】
請求項22〜35のいずれか一項記載のフェノール化合物O−α−グルコシドを含む医薬又は化粧品組成物。
【請求項38】
皮膚、口腔、腸管、上部呼吸器系、又は女性生殖器に関連する微生物から出される酵素が対応するアグリコンを放出する、局所、経口、直腸、経鼻、又は経膣投与される医薬又は化粧品組成物を調製するための請求項22〜35のいずれか一項記載のフェノール化合物O−α−グルコシドの使用。
【請求項39】
癌、心臓血管疾患、細菌感染、UVB誘発性紅斑、アレルギー、炎症性障害又は免疫障害を治療又は予防するための医薬又は化粧品組成物を調製するための、請求項22〜35のいずれか一項記載のフェノール化合物O−α−グルコシドの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−540800(P2009−540800A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514791(P2009−514791)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055815
【国際公開番号】WO2007/144368
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(508366994)
【氏名又は名称原語表記】LIBRAGEN
【Fターム(参考)】