説明

皮膚外用剤

【課題】
美白効果や抗老化作用を有するプエラリア・ミリフィカ,CoQ10および/またはリポ酸を複合的に配合することにより、外的要因によって引き起こされる皮膚障害等を抑制し、シミ、皮膚色素沈着等を相乗的に改善することで若々しい皮膚を保つ皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】
プエラリア・ミリフィカ(Pueraria mirifica)の根茎の抽出物、コエンザイムQ10および/またはリポ酸を含有する皮膚外用剤を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プエラリア・ミリフィカ(Pueraria mirifica)の根茎の抽出物、コエンザイムQ10および/またはリポ酸を有効成分とし、皮膚に対する優れた美白効果および老化防止、シワ改善効果を有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
マメ科の植物であるプエラリア・ミリフィカ(Pueraria mirifica)はタイやミャンマーで若返りの民間伝承薬として古来より用いられている。
【0003】
この植物の有効成分としては、ダイジン(daidzin),ダイゼイン(daidzein),ゲニスチン(genistin),ゲニステイン(genistein),プエラリン(puerarin),ミロエステロール(miroesterol),デオキシミロエステロール(deoxymiroesterol)等、数十種のイソフラボン化合物が発見されている。(非特許文献1)
【0004】
【非特許文献1】Bounds and Pope,1960;Ingham et al.,1986a;Ingham et al.,1986b;Ingham et al.,1988
【0005】
これらイソフラボン類は一般の植物に広汎に含有されている化合物であって、特に大豆、クズ等のマメ科植物に多量に含まれている。これらのイソフラボン類をフィトエストロゲンと称するが、このような名称は、これらの化合物が生体内のエストロゲンと類似の構造を有しており、その生理的作用がエストロゲンと同等の効果をもたらすためである。そのため、女性ホルモン様作用を示すイソフラボンが豊富に含有されているプエラリア・ミリフィカが、美白効果、豊胸促進効果等を有することが知られている。(特許文献1)
【0006】
【特許文献1】特開2000−302667号公報
【0007】
また、フィトエストロゲンを応用し得る一例として、フィトエストロゲンを皮膚に塗布する時に現われる生理的作用を挙げることができる。皮膚の老化が早く進行する更年期女性の皮膚にエストロゲンを塗布した時、皮膚の老化が抑制される現象が現われるのを観察した研究がある。同文献によれば、エストロゲンを塗布した時、皮膚の弾力が目立って増加し、皺の深さが60%以上減少したが、これはエストロゲンにより皮膚コラーゲン繊維の数が増加することに起因すると報告されている。(非特許文献2)
【0008】
【非特許文献2】Schmidt JB., Binder M., Int J. Dermatol,1996,35(9),669〜674
【0009】
コエンザイムQ10(以下CoQ10)は、一般的にはユビデカレノン、ユビキノン、ユビキノール−10、補酵素Q10とも呼ばれている生理活性成分である。その作用は細胞内のミトコンドリアにおけるエネルギー供給や呼吸の維持回復などのほか、細胞膜の損傷・異常の抑制作用等が知られている。また、強力な抗酸化物質であり、身体を最も望ましい状態で機能させるために細胞に与えるとよい栄養素の一つである。このCoQ10は、体内の細胞でも合成されるが、加齢とともに体内生産能力が低下することが知られている。
【0010】
化粧品の分野において、CoQ10は、紫外線などで生じた肌荒れ、シワ、しみ等を目立たなくし、美白の効果が得られているスキンケア用途で用いられてきた成分である。(特許文献2)
【0011】
【特許文献2】特開昭58−180410号公報
【0012】
また、CoQ10を含有する老年性皮膚乾燥症処置用の組成物も提供されている。同文献によれば、CoQ10を配合した組成物の使用により、特に紫外線などの影響による皮膚の老化現象に対する防御のみならず、損傷した皮膚に対する修復効果も持つことが示されている。(特許文献3)
【0013】
【特許文献3】特表平9−510725号公報
【0014】
現在までに、紫外線や内在性酸素に起因する酸化ストレスの皮膚に及ぼす悪影響が明らかになるにつれ、抗酸化作用を有する物質の皮膚外用剤への応用が検討されてきた。これら抗酸化性物質としては、ビタミンE類,ビタミンC類といった抗酸化性ビタミン類が代表的なものとして挙げられる。
【0015】
ビタミン様物質であるリポ酸(1,2−ジチアシクロペンタン−3−吉草酸)も生体内で還元されることにより、過酸化物消去作用を発揮する。このリポ酸を皮膚外用剤に応用する技術も開示されている。(特許文献4)
【0016】
【特許文献4】特開昭62−175415
【0017】
また、リポ酸には炎症及び老化による皮膚のダメージを治療又は予防する効果を有し、リポ酸またはその誘導体を含む組成物を皮膚のダメージを受けた部分に適用することを特徴とする方法も提供されている。(特許文献5)
【0018】
【特許文献5】国際公開第WO−A−97/10808号
【0019】
これら先行技術により、プエラリア・ミリフィカ、CoQ10、リポ酸の美白剤・老化防止・抗酸化剤を目的とした各皮膚外用剤としてのスキンケア効果は実証されている。
【0020】
しかしながら、スキンケア効果はあるものの、単独でプエラリア・ミリフィカ、CoQ10、リポ酸を用いた場合であっても、必ずしも満足する効果が得られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
美白効果や抗老化作用を有するプエラリア・ミリフィカ,CoQ10および/またはリポ酸を複合的に配合することにより、外的要因によって引き起こされる皮膚障害等を抑制し、シミ、皮膚色素沈着等を相乗的に改善することで若々しい皮膚を保つ皮膚外用剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明で用いられるプエラリア・ミリフィカの根茎の抽出物の調製方法は特に限定されないが、生又は乾燥したプエラリア・ミリフィカの根茎を種々の溶媒を用い、低温から加温下において抽出する方法があげられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のプエラリア・ミリフィカ、CoQ10および/またはリポ酸を配合した皮膚外用剤は、皮膚美白効果およびシワ改善効果が著しく改良された、優れた品質を有する皮膚外用剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
具体的に抽出溶媒としては、水、メタノール、エタノール等の低級一価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール、酢酸エチル等の低級アルキルエステルが例示され、これらの一種又は二種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0025】
本発明で使用する抽出物は、そのまま用いてもよいが、必要に応じてろ過、濃縮してもよい。また、抽出物をカラムクロマト法、向流分配法等により、分画、精製して用いることもできる。
【0026】
更に、上記のものを減圧乾燥又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製し、適宜製剤化して用いることもできる。
【0027】
抽出物の配合量は、特に限定はないが、一般に皮膚外用剤全量に対して、乾燥固形物に換算して0.001〜10.0重量%、好ましくは0.001〜5.0重量%、特に好ましくは0.01〜3.0重量%である。配合量が0.001重量%未満では皮膚外用剤の効果が乏しくなる傾向にあり、逆に10.0重量%を越えて配合しても効果の増加は実質上望めないし、皮膚外用剤への配合も難しくなる傾向にある。
【0028】
本発明に用いられるCoQ10の配合量としては、皮膚外用剤全量に対して通常0.001〜0.03重量%、好ましくは0.01〜0.03重量%である。
【0029】
さらに、本発明に用いられるリポ酸の配合量としては、その効果や添加した際の臭い、色調の点から考え、0.001〜3.0重量%の濃度範囲とすることが望ましい。
【0030】
本発明で使用するリポ酸及びその誘導体並びにそれらの塩としては、特に限定されないが、例えばリポ酸、リポ酸のナトリウム塩、カリウム塩、アルキルエステル、アルケニルエステル、アミド類、及び還元体のジヒドロリポ酸、ジヒドロリポアミド等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
次に実施例をあげて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例において重量単位は,単に%とする.
【0032】
(製造例1)
プエラリア・ミリフィカの根茎粉砕物100gに30vol%エタノール溶液1000gを加え、50℃にて6時間抽出する。これをろ過し、ろ液を減圧下、濃縮乾固する。乾固物を50%1,3−ブチレングリコール300gに溶解した後、ろ過してプエラリア・ミリフィカ抽出物を製する。蒸発残留物は、3.81%であった。
【0033】
本発明の皮膚外用剤は、上記抽出物に加えて、さらに必要により、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧品、医薬部外品、医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば界面活性剤、油分、保湿剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防御剤、アルコール類、粉末成分、色剤、香料、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0034】
さらに、金属イオン封鎖剤、防腐抗菌剤、細胞賦活剤、皮脂分泌調整剤、消炎剤、収斂剤、美白剤、活性酸素抑制剤、抗アレルギー剤、老化防止剤等、さらに生理活性作用を有する植物抽出物及びこれらの抽出分画、精製物等も適宜配合することができる。
【0035】
本発明の皮膚外用剤は、一般皮膚化粧料に限定されるものではなく、医薬品、医薬部外品、薬用化粧料等を包含するものである。本発明の皮膚外用剤の剤型は、可溶化系、乳化系、粉末分散系等何れでもよく、用途も、化粧水、乳液、クリーム、パック等の基礎化粧料、ファンデーション等のメークアップ化粧料、シャンプー、リンス、石けん、ボディーシャンプーなどのトイレタリー製品、浴用剤等を問わない。
【0036】
(試験例1)美白効果試験
20〜40歳の健常な男女各15名を被験者とし、左右上腕内側部皮膚を対象として各皮膚外用剤を、太陽光に晒された日の5日後より、朝夕1回ずつ4週間にわたって適量塗布してもらった。
【0037】
(製法1)
1〜4(必要に応じて14または17を添加する)、別途5〜13(必要に応じて16を添加する)80℃に加温溶解し、それぞれA液、B液とする。A液にB液を添加して乳化する。40℃まで冷却した後必要に応じて15、18、19を添加し、さらに冷却後クリームを得た。
【0038】
(判定基準1)
有効 :コントロールに比較して明らかな淡色化効果が認められた
やや有効:コントロールに比較して淡色化効果が認められた
効果なし:コントロールとほぼ同程度であった
なお、コントロールは薬剤無添加の場合とし、比較例として美白効果の認められているアルブチンを使用した。
【0039】
上記皮膚外用剤の処方および結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1から明らかなように、比較例(A)に比べてプエラリア・ミリフィカ、CoQ10および/またはリポ酸(実施例B〜E)を配合した皮膚外用剤は、優れた皮膚美白効果を有することが認められた。
【0042】
(試験例2)シワ改善効果試験
20〜40歳の健常な男女各15名を被験者とし、各皮膚外用剤を朝夕1回ずつ12週間にわたって適量を顔面に塗布してもらった。
【0043】
(製法2)
1〜4(必要に応じて17を添加する)、別途5〜13(必要に応じて14、16を添加する)を80℃に加温溶解し、それぞれA液、B液とする。A液にB液を添加して乳化する。40℃まで冷却した後必要に応じて15、18、19を添加し、さらに冷却後クリームを得た。
【0044】
(判定基準2)
有効 :肌のシワが目立たなくなった。
やや有効:肌のシワがあまり目立たなくなった。
効果なし:コントロールとほぼ同程度であった
なお、コントロールは薬剤無添加の場合とし、比較例としてシワ改善効果の認められているパルミチン酸レチノ−ルを使用した。皮膚外用剤の処方および結果を表3に示す。
【0045】
上記皮膚外用剤の処方および結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2から明らかなように、比較例(F)に比べてプエラリア・ミリフィカ、CoQ10および/またはリポ酸(実施例G〜J)を配合した皮膚外用剤は、優れたシワ改善効果を有することが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)および/または(C):(A)プエラリア・ミリフィカの根茎の抽出物0.001〜5.0重量%、(B)コエンザイムQ100.001〜0.03重量%、(C)リポ酸0.001〜3.0重量%を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
美白剤および/または抗老化剤として配合することを特徴とした、請求項1に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2007−126395(P2007−126395A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320353(P2005−320353)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(399091120)株式会社ピカソ美化学研究所 (29)
【Fターム(参考)】