説明

皮膚外用剤

【課題】オクチルメトキシシンナメートを含有する皮膚外用剤、特に日焼け止め化粧料の皮膚刺激を緩和すること。
【解決手段】オクチルメトキシシンナメートと6−アミノヘキサノン酸とを含有する皮膚外用剤及び日焼け止め化粧料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は刺激緩和効果を有する皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、オクチルメトキシシンナメートを含有する皮膚外用剤に、6−アミノヘキサノン酸を配合して、オクチルメトキシシンナメートの皮膚刺激を緩和した皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線吸収剤は日焼け止め化粧料を始めとする皮膚外用剤に配合されている。紫外線吸収剤にはオクチルメトキシシンナメートが配合されることが多い(特許文献1)。
【0003】
一方、日焼け止め化粧料中のオクチルメトキシシンナメートは敏感肌の使用者が刺激を感じる場合がある。
そのため、その刺激を緩和する方法が強く求められていた(特許文献2〜5)。例えば特許文献2にはポリエチレングリコールの配合により、特許文献3にはポリプロピレングリコールやポリブチレングリコールの配合により、特許文献4にはポリプロピレングリコールジメチルエーテルの配合により、特許文献5にはポリオキシエチレンメチルグルコシドやポリプロピレンメチルグルコシドの配合により、オクチルメトキシシンナメートの皮膚刺激を緩和する皮膚外用剤が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−267842号公報
【特許文献2】特開2002−212024号公報
【特許文献3】特開2002−284622号公報
【特許文献4】特開2003−206214号公報
【特許文献5】特開2004−123543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は上述の観点から低刺激性の日焼け止め化粧料を得るべく、紫外線吸収剤として有用なオクチルメトキシシンナメートの刺激緩和方法について鋭意研究を続けた結果、6−アミノヘキサノン酸がオクチルメトキシシンナメートの有効な刺激緩和剤として機能することを見出し本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、オクチルメトキシシンナメートと6−アミノヘキサノン酸とを含有する皮膚外用剤を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、前記皮膚外用剤が日焼け止め化粧料である上記の皮膚外用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オクチルメトキシシンナメートの皮膚刺激を緩和する皮膚外用剤を提供できる。一定量のオクチルメトキシシンナメートを配合する日焼け止め化粧料にとって特に有用な技術となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳述する。
【0010】
本発明の皮膚外用剤には紫外線吸収剤としてオクチルメトキシシンナメートが配合される。オクチルメトキシシンナメートは多くの市販品があり、それらの市販品を利用できる。例えば、パルソールMCXの商品名(ジボタン社)で市販されている。
【0011】
オクチルメトキシシンナメートの配合量は、皮膚外用剤の製品設計において目的とするSPF値に応じ適宜決定される。通常、1.0〜15質量%程度が配合され、好ましくは
2.0〜10.0質量%、さらに好ましくは3.0〜8.0質量%である。
【0012】
本発明に用いる6−アミノヘキサノン酸は下記構造式で示される公知の化合物である。本発明の皮膚外用剤においては、6−アミノヘキサノン酸はオクチルメトキシシンナメートの皮膚刺激緩和剤として配合される。
【化1】

【0013】
6−アミノヘキサノン酸の配合量は、オクチルメトキシシンナメートの配合量に応じて適宜決定されるが、通常、1.0〜10質量%程度が配合され、好ましくは3.0〜5.0質量%である。
【0014】
本発明の皮膚外用剤には上記必須成分の他に酸化チタン及び/又は酸化亜鉛の粉末を含有することが好ましい。これらは紫外線散乱剤として機能するため、特に日焼け止め化粧料にオクチルメトキシシンナメートとともに配合されることが多く、これらの粉末はオクチルメトキシシンナメートの刺激を増強させる作用があると考えられるので、本発明の有用性が増大する。
【0015】
酸化チタン及び/又は酸化亜鉛粉末は化粧料に通常配合される市販品の粉末が使用できる。上記粉末は、通常、針状、紡錘状、球状、粒状の粉末が使用される。また、粒子径が0.1μm以下の微粒子粉末が好ましい。また、メチルハイドロジェンポリシロキサンやシランカップリング剤などのシリコーン処理;金属石鹸処理;パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩やパーフルオロアルキルシラン等のフッ素処理、デキストリン脂肪酸エステル処理等により、疎水化処理した上記粉末も好ましい。
【0016】
上記粉末の配合量は特に限定されない。皮膚外用剤全量に対して、通常1.0〜40質量%の範囲で適宜決定される。日焼け止め化粧料においては、目的とするSPF値、使用性及び安定性の観点から、化粧料全量に対して3.0〜25質量%が好ましい。
【0017】
本発明の皮膚外用剤は、上記成分を、皮膚外用剤の製剤成分(例えば、油分、水、エタノール、保湿剤、界面活性剤、増粘剤、金属封鎖剤、薬剤、色素、香料)に配合し、目的の剤型に応じて、常法により製造される。
【0018】
本発明の皮膚外用剤の剤型は限定されない。例えば、液状、乳液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状がある。本発明の皮膚外用剤は日焼け止め化粧料として好ましく使用されるが、その製品形態は制限されない。日焼け止め化粧料とは紫外線から皮膚を保護する化粧料を意味する。
【実施例】
【0019】
実施例により本発明を具体的に説明する。配合量は質量%である。皮膚刺激は下記の試験により評価した。
【0020】
「連続皮膚刺激試験」
試験方法:
1.被験液0.05mlをモルモットの背部2×2cmに塗布(1回目塗布)する。
2.24時間後に2回目の塗布を行う。
3.さらに24時間後に3回目の塗布を行う。
評価方法:
2回目及び3回目の塗布前及び3回目塗布後24時間後に、紅斑,浮腫等の皮膚反応を肉眼で観察する。評価は以下の基準で行い、3回の評点の平均値を皮膚刺激スコアとする。
【0021】
皮膚反応の評価基準
皮膚反応の程度 評点
紅斑が全く認められないもの 0
わずかな紅斑が認められるもの 1
明らかな紅斑がみとめられるもの 2
強紅斑あるいはわずかな浮腫,痂皮がみとめられるもの 3
明らかな浮腫,痂皮が認められるもの 4
【0022】
「表1」に示す成分を混合し皮膚外用剤(サンスクリーン)を調製した。この皮膚外用剤を試験液として上記試験を行って刺激性を評価した。なお、オクチルメトキシシンナメートの配合量は、7.5質量%である。なお、比較例1は実施例1にて6−アミノヘキサノン酸を配合しない処方、比較例2〜4は6−アミノヘキサノン酸に代えて、代表的な抗炎症剤を配合した処方である。
【0023】
[表1]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1 比較例1 比較例2 比較例3 比較例4
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
6−アミノヘキサノン酸 3.0 − − − −
インドメタシン − − 1.0 − −
イブプロフェンピコナール − − − 5.0 −
ピロキシカム − − − − 0.5
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<共通処方>
オクチルメトキシシンナメート 7.5
二酸化チタン 5.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 30.0
有機変性モンモリロナイト 0.8
1,3−ブチレングリコール 5.0
精製水 残 余
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(製法)各成分を攪拌混合し、サンスクリーンを得る。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0024】
結果を図1に示す。この結果より、オクチルメトキシシンナメートの皮膚刺激は代表的な抗炎症剤を配合しても緩和されなかったが(比較例2〜4)、6−アミノヘキサノン酸を配合すると顕著に皮膚刺激緩和効果が認められた。図1の連続皮膚刺激スコアは、実施例1が0.7、比較例1が1.1、比較例2及び3が1.2、比較例4が1.0である。
【0025】
以下に、本発明のその他の実施例を挙げる。いずれも刺激緩和効果を有し、使用感に優れた皮膚外用剤である。
【0026】
実施例2 サンスクリーン
オクチルメトキシシンナメート 7.5
6−アミノヘキサノン酸 3.0
ポリプロピレングリコール1000 2.0
t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン 0.1
二酸化チタン 5.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 30.0
POE・メチルポリシロキサン共重合体 3.0
有機変性モンモリロナイト 0.8
1,3−ブチレングリコール 5.0
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残余
(製法)各成分を攪拌混合し、サンスクリーンを得る。
【0027】
実施例3 化粧水
A オクチルメトキシシンナメート 1.0
テトラオクタン酸ペンタエリスリチル 1.0
ポリオキシエチレン(20)オレイルアルコールエーテル
0.5
エタノール 60.0
香料 適量
防腐剤 適量
B ソルビット 2.0
ジプロピレングリコール 6.0
6−アミノヘキサノン酸 1.0
乳酸 0.1
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.05
ヒドロキシメトキシベンゾフェノン
スルホン酸ナトリウム 適量
エデト酸三ナトリウム 適量
精製水 残余
(製法)Bを混合して調整する。別にエタノールにAのほかの成分を溶解してAを調整し、これをBに加えて可溶化し、ろ過して化粧水を得る。
【0028】
実施例4 日焼け止め乳化ファンデーション
A 精製水 52.0
6−アミノヘキサノン酸 5.0
エタノール 7.0
B タルク 7.0
二酸化チタン 10.0
酸化亜鉛 2.0
無水ケイ酸 2.0
ナイロンパウダー 4.0
着色顔料 2.0
C オクチルメトキシシンナメート 15.0
テトラオクタン酸ペンタエリスリチル 4.0
オクタメチルシクロテトラシロキサン 10.0
ロジンペンタエリスリットエステル 1.5
ジイソオクタン酸ネオペンチルグリコール 5.0
トリイソオクタン酸グリセリン 2.0
ポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサン
1.5
トリメチルシロキシケイ酸樹脂 5.0
(製法)Aを攪拌後、十分に混合粉砕されたBを添加し、ホモミキサー処理する。Cを溶解後これに加えホモミキサー処理し、日焼け止め乳化ファンデーションを得る。
【0029】
実施例5 乳液
A ステアリン酸 2.0
セチルアルコール 0.5
流動パラフィン 10.0
ポリオキシエチレン(10)オレイン酸エステル
1.0
ソルビタントリオレート 1.0
オクチルメトキシシンナメート 3.0
6−アミノヘキサノン酸 0.5
テトラオクタン酸ペンタエリスリチル 1.5
ミリスチン酸イソプロピル 2.0
シリカ 3.0
防腐剤 適量
香料 適量
B ジプレングリコール 5.0
DMPPG2000 5.0
トリエタノールアミン 1.0
ヘクトライト 1.0
クエン酸 0.2
エタノール 55.0
精製水 残余
(製法)Bを調整し、70℃に保つ。Aの成分を混合し、加熱融解して70℃に保つ。BにAを加えてホモミキサーで均一に乳化、攪拌しながら急冷し、乳液を得る。
【0030】
実施例6 日焼け止めヘアージェル
A カーボポール940 0.6
B 精製水 68.0
C トリエタノールアミン 0.1
D エタノール 14.0
オクチルメトキシシンナメート 7.5
6−アミノヘキサノン酸 2.5
アクリル酸メトキシエチル/アクリル酸ヒドロキシ
エチル/アクリル酸ブチル共重合体 1.0
ポリエチレングリコール 1.0
ジメチコーン共重合体 4.0
メチルパラベン 0.25
プロピルパラベン 0.05
香料 適量
(製法)AをBに攪拌溶解し、Cを加えた後、分散機にて分散する。これにDを加え、攪拌し、目的のヘアージェルを得る。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の皮膚外用剤は、オクチルメトキシシンナメートの皮膚刺激緩和効果に優れており、優れた使用感と日焼け止め効果とを有するものである。特に日焼け止め化粧料において有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】連続皮膚刺激試験結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オクチルメトキシシンナメートと6−アミノヘキサノン酸とを含有する皮膚外用剤。
【請求項2】
前記皮膚外用剤が日焼け止め化粧料である請求項1記載の皮膚外用剤。

【図1】
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【公開番号】特開2007−230872(P2007−230872A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50784(P2006−50784)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】