説明

皮膚外用剤

【課題】薬効の持続性に優れるだけでなく、肌自身にうるおいを与え、皮膚刺激性が低く、肌荒れ改善効果に優れ、しかも使用感の良好な皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】次の成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
(A)1種または2種以上のバイオサーファクタントであって、例えばMELが例示される
(B)ベンダザック、インドメタシン、ブフェキサマック、ウフェナマート、イブプロフェンピコノール、スプロフェン、フルフェナム酸ブチル、ビタミンA油、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペンジル、ジフェニルイミダゾール、硫酸クレミゾール、クロタミトン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン、グアイアズレン、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ザルトプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェンブフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、アンピロキシカム、リシプフェン、テノキシカム、フェルビナク及びオルセノンから選ばれる1種又は2種以上

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚外用剤、更に詳しくは、薬効の持続性と保湿効果に優れ、低刺激で肌荒れ改善効果が高く、しかも使用感の良好な皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肌にうるおいを与え、肌を柔軟にするには、角質層の水分が重要であることが知られている。そして、当該水分の保持は、角質層に含まれている水溶性成分、すなわち遊離アミノ酸、有機酸、尿素又は無機イオンによるものであるとされ、これらの物質は単独であるいは組み合わせて薬用皮膚外用剤あるいは化粧料に配合して、肌あれの改善又は予防の目的で使用されている。
【0003】
また、これとは別に水と親和性が高い多くの保湿性物質が開発され、同様の目的で使用されている。
【0004】
更に、近年では、角質細胞間に存在する脂質が高い保湿能を有することが見出され、当該角質細胞間脂質成分の類似構造物質で構成される人工細胞間脂質によって、肌にうるおいを与え、柔軟化させることが行われ、比較的高い効果が得られている。
【0005】
ところで、近年、様々な分野で両親媒性物質が利用されている。両親媒性物質とは親水性と親油性との二つの異なる性質を併せ持つ物質のことであって、このような性質を有する物質は界面活性物質と呼ばれている。例えば、糖脂質は、糖の性質に由来する親水性と脂質の性質に由来する親油性との二つの性質を併せ持ったものであり、界面活性物質の一例である。
【0006】
石油化学工業の発展によって合成界面活性剤が開発され、生体成分由来の界面活性物質に比べて合成界面活性剤の生産量は飛躍的に増加し、今や日常生活には無くてはならない物質となった。
【0007】
しかしながら、合成界面活性剤は生分解性が低いので、合成界面活性剤の使用量の拡大に伴って環境汚染が深刻な問題になりつつある。そこで、環境に対する負荷を低減するために、安全性が高いとともに生分解性が高いバイオサーファクタントが再び見直されており、様々な種類のバイオサーファクタントの開発が望まれるようになった。
【0008】
上記バイオサーファクタントとしては、糖脂質系、アシルペプタイド系、リン脂質系、脂肪酸系および高分子化合物系の5種類のバイオサーファクタントを挙げることができる。
【0009】
上記バイオサーファクタントのうち、リン脂質系バイオサーファクタントであるレシチンは、古くから乳化剤として用いられているばかりでなく、水に懸濁させると、当該リン脂質が会合して二重膜を形成し、水相を閉じこめたベシクルを形成することが知られている。このベシクルはリポソームとも呼ばれ、生体膜のモデルまたは化粧品や薬物の担体として利用されている。なお、リン脂質系以外のバイオサーファクタントにおいてベシクルを形成するものは、ほとんど知られていないのが現状である。
【0010】
一方、糖脂質系のバイオサーファクタントとしては、細菌または酵母によって生産される、多くの種類のバイオサーファクタントが報告されている。糖脂質系のバイオサーファクタントは、生分解性が高く、低毒性であって環境に優しいばかりでなく、優れた生理機能を有している。例えば、糖脂質系のバイオサーファクタントは、それ自体が保湿効果が高いことが知られており、化粧品等の成分として用いることが期待されている。
【0011】
代表的な糖脂質系バイオサーファクタントの一つにマンノシルエリスリトールリピッド(以下「MEL」と示すことがある)がある。MELは、Ustilago nuda(ウスチラゴ・ヌーダ)とShizonella melanogramma(シゾネラ・メラノグラマ)から発見された物質である(非特許文献1及び2参照)。その後、イタコン酸生産の変異株であるCandida属酵母(特許文献2及び非特許文献3参照)、Candida antarctica(キャンデダ・アンタークチカ)(現在はPseudozyma antarctica(シュードザイマ・アンタークチカ))(非特許文献4及び5参照)、Kurtzmanomyces(クルツマノマイセス)属(非特許文献6参照)等の酵母らによっても生産されることが報告されている。現在では、長時間の連続培養・生産を行うことで100g/L以上の生産が可能となっている。
【0012】
MELには糖骨格のエリスリトールの光学異性体として、以下の一般式(1)に示されるような4−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造と1−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造(下記一般式(2))が存在する。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
この1−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造を有するMELの1種を合成し、これとの比較によって従来のMELの糖骨格が上記一般式(1)の構造であることが証明されている(非特許文献7)。ごく最近、従来の4−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造を有するMELに対して、その光学異性体である上記一般式(2)の1−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造を有するMELをシュードザイマ・ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)等の微生物を用いて生産することによって、量産できることが判明した(特許文献3)。
【0016】
従来の4−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造を有するMELについては、抗菌性、抗腫瘍性、糖タンパク結合能をはじめ、様々な生理活性を有することが報告されている(非特許文献8)。また、この従来のMELは極めて特異な自己集合特性を示し、分子構造の僅かな違いが自己集合体の形成に多大な影響を与えるばかりでなく、それを活用したベシクル形成について、希薄溶液(6.3×10-2wt%以下)においてのみ報告されている(非特許文献9)。さらに、従来のMELの両連続スポンジ構造を用いた液晶乳化技術(特許文献4)についても報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許3095420号明細書
【特許文献2】特公昭57−145896号公報
【特許文献3】WO2008/018448
【特許文献4】特開2007−181789号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】アール.エイチ.ハスキンス(R. H. Haskins),ジェイ.エー.トーン(J. A. Thorn),B. Boothroyd,「カナデアン ジャーナル オブ ケミストリー(Can. J. Microbiol.)」,1巻,p749−756(1955).
【非特許文献2】ジー.デム(G. Deml),ティ.アンケ(T. Anke),エフ.オーバーウインカー(F. Oberwinkler),ビー.エム.ジアネッティー(B. M. Giannetti),ダブリュ.ステグリッチ(W. Steglich),「フィトケミストリー(Phytochemistry)」,19巻,p83−87(1980).
【非特許文献3】ティ.ナカハラ(T. Nakahara),エイチ.カワサキ(H. Kawasaki),ティ.スギサワ(T. Sugisawa),ワイ.タカモリ(Y. Takamori),ティ.タブチ(T. Tabuchi),「ジャーナル オブ ファーメンテーション テクノロジー(J. Ferment.Technol.)」,(日本),日本発酵工学会,61巻,p19−23(1983).
【非特許文献4】ディ.キタモト(D. Kitamoto),エス.アキバ(S. Akiba),シー.ヒオキ(C. Hioki),ティ.タブチ(T. Tabuchi)「アグリカリチュラル アンド バイオロジカル ケミストリー(Agric. Biol. Chem.)」,(日本),日本農芸化学会,54巻.p31−36(1990).
【非特許文献5】エイチ.エス.キム(H.-S. Kim),ビー.ディ.ユーン(B.-D. Yoon),ディ.エイチ.チョン(D.-H. Choung),エイチ.エム.オー(H.-M. Oh),ティ.カツラギ(T. Katsuragi),ワイ.タニ(Y. Tani)「アプライド マイクロバイオロジー アンド バイオテクノロジー(Appl. Microbiol. Biotechnol.)」,(ドイツ),スプリンガー−バーラグ(Springer-Verlag),52巻,p713−721(1999).
【非特許文献6】角川(K. kakukawa),玉井(M. Tamai),今村(K. Imamura),宮本(K. Miyamoto),三好(S. Miyoshi),森永(Y. Morinaga),鈴木(O. Suzuki),宮川(T. Miyakawa)「バイオサイエンス,バイオテクノロジー アンド バイオケミストリー(Biosci. Biotechnol. Biochem.)」,(日本),日本農芸化学会,66巻,p188−191(2002).
【非特許文献7】ディ.クリッチ(D. Crich),エム.エー.モーラ(M. A. Mora),アール.クルツ(R. Cruz)「テトラヘドロン(Tetrahedron)」,(オランダ),エルゼビア(Elsevier),58巻,p35−44(2002).
【非特許文献8】北本 大「オレオサイエンス」,(日本),日本油化学会,3巻,p663−672(2003).
【非特許文献9】ティ.イムラ(T. Imura),エヌ.オオタ(N. Ohta),ケー.イノウエ(K. Inoue),エヌ.ヤギ(N. Yagi),エイチ.ネギシ(H. Negishi),エイチ.ヤナギシタ(H. Yanagishita),ディ.キタモト(D. Kitamoto)「ケミストリー ア ヨーロピアン ジャーナル(Chem. Eur. J)」,(米国),ワイリー(Wiley),12巻,p2434−2440(2006).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、角質層内に存在する水溶性成分等の保湿性物質を皮膚に適用した場合、その作用は、皮膚角質上にあって水分を角質に供給するというもので、しかもその効果は一時的であり、根本的に角質層の水分保持能力を改善し、肌あれを本質的に予防あるいは治癒させるというものではなかった。
【0020】
また、人工細胞間脂質を皮膚に適用した場合には、角質層の水分保持能を根本的に改善し、肌あれの予防あるいは治癒させる効果をある程度得ることはできるが、完全に生体と等しいレベルまでには至ってはおらず、未だ満足し得るものではなかった。
【0021】
従って、角質層の水分保持能力を根本的に改善し、荒れた角質層を生体健常と同等のレベルまでに機能回復させることができ、肌にうるおい感と柔軟性とを付与する皮膚外用剤の開発が望まれていた。本発明の目的は、保湿効果、肌荒れの予防・改善効果、シワ形成の予防・改善効果等の皮膚老化防止効果に優れた皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
斯かる実情において、本発明者らは上記問題点を解決すべく角質細胞間脂質分子同士の相互作用に注目して鋭意研究を行ったところ、バイオサーファクタント、例えば上述のMELと後記に列挙するような化合物とを組み合わせて含有させた皮膚外用剤が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
【0023】
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
(1)次の成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
(A)1種または2種以上のバイオサーファクタント
(B)ベンダザック、インドメタシン、ブフェキサマック、ウフェナマート、イブプロフェンピコノール、スプロフェン、フルフェナム酸ブチル、ビタミンA油、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペンジル、ジフェニルイミダゾール、硫酸クレミゾール、クロタミトン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン、グアイアズレン、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ザルトプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェンブフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、アンピロキシカム、リシプフェン、テノキシカム、フェルビナク及びオルセノンから選ばれる1種又は2種以上
(2)バイオサーファクタントが、マンノース骨格を有することを特徴とする(1)の皮膚外用剤。
(3)バイオサーファクタントが、マンノース骨格の1位の水酸基に糖アルコールがグリコシド結合していることを特徴とする(2)の皮膚外用剤。
(4)マンノース骨格を有するバイオサーファクタントがマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)、マンノシルマンニトールリピッド(MML)、マンノシルソルビトールリピッド(MSL)、マンノシルアラビトールリピッド(MAraL)及びマンノシルリビトールリピッド(MRL)からなる群より選ばれた1種以上の化合物であることを特徴とする(2)または(3)の皮膚外用剤。
(5)MELが、マンノシルエリスリトールリピッドA(MEL−A)、マンノシルエリスリトールリピッドB(MEL−B)、マンノシルエリスリトールリピッドC(MEL−C)、マンノシルエリスリトールリピッドD(MEL−D)、MEL−Aのトリアシル体、MEL−Bのトリアシル体、MEL−Cのトリアシル体及びMEL−Dのトリアシル体からなる群より選ばれた1種以上の化合物であることを特徴とする(4)の皮膚外用剤。
(6)バイオサーファクタントが、飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸を含有していることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの皮膚外用剤。
(7)更に、(C)ステロール類を含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0024】
本発明の皮膚外用剤は、成分(A)と成分(B)とを含有するものことにより、薬効成分と特定のアミド誘導体を組み合わせることにより、薬効成分の薬効の持続性に優れ、高い保湿効果を有し、しかも低刺激で肌荒れを改善し、使用感に優れるものであり、皮膚疾患の改善に高い効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の皮膚外用剤は、バイオサーファクタント、特にMELを含むものである。それ故、本発明の皮膚外用剤は、優れた特性を示すという効果を奏する。
【0026】
(バイオサーファクタント)
成分(A)のバイオサーファクタントとは、生物によって生み出される界面活性能力や乳化能力を有する物質の総称であり、優れた界面活性や、高い生分解性を示すばかりでなく、様々な生理作用を有していることから合成界面活性剤とは異なる挙動・機能を発現する可能性がある。
【0027】
成分(A)のバイオサーファクタントとしては、マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)、MEL以外のマンノシルアルジトールリピッド(MAL)としては、マンノシルマンニトールリピッド(MML)、マンノシルソルビトールリピッド(MSL)、マンノシルアラビトールリピッド(MAraL)、マンノシルリビトールリピッド(MRL)などが挙げられ、なかでも、ラメラ構造又は/及びベシクルを形成するバイオサーファクタントを利用するのが好ましく、MELが特に好ましい。
【0028】
(MEL)
MELの構造を一般式(3)に示す。一般式(3)中、置換基R1は、同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基である。MELは、マンノースの4位及び6位のアセチル基の有無に基づいて、MEL−A、MEL−B、MEL−C及びMEL−Dの4種類に分類される。
【0029】
【化3】

【0030】
具体的には、MEL−Aは、一般式(3)中、置換基R2およびR3がともにアセチル基である。MEL−Bは、一般式(3)中、置換基R2はアセチル基であり、置換基R3は水素である。MEL−Cは、一般式(3)中、置換基R2が水素であり、置換基R3はアセチル基である。MEL−Dは、一般式(3)中、置換基R2及びR3がともに水素である。
【0031】
上記MEL−A〜MEL−Dにおける置換基R1の炭素数は、MEL生産培地に含有させる油脂類であるトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数、および、使用するMEL生産菌の脂肪酸の資化の程度によって変化する。また、上記、トリグリセリドが不飽和脂肪酸残基を有する場合、MEL生産菌が上記不飽和脂肪酸の二重結合部分まで資化しなければ、置換基R1として不飽和脂肪酸残基を含ませることも可能である。以上の説明から明らかなように、得られるMELは、通常、置換基R1の脂肪酸残基部分が異なる化合物の混合物の形態である。
【0032】
本発明の組成物には一般式(4)または一般式(5)に示されている構造を有するマンノシルエリスリトールリピッドが含まれている。尚、一般式(4)中、置換基R1は同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基であり、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基であり、置換基R3は水素または炭素数2〜24の脂肪族アシル基である。また、一般式(5)中、置換基R1は同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基であり、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基であり、置換基R3は水素または炭素数2〜24の脂肪族アシル基である。
【0033】
一般式(4)及び一般式(5)における置換基R1は、同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基である。置換基R1の炭素数は上記範囲内であれば特に限定されないが、8個〜14個であることがさらに好ましい。
【0034】
また、上記一般式(4)及び一般式(5)中の置換基R1は、飽和脂肪族アシル基であっても不飽和脂肪族アシル基であってもよく、特に限定されるものではない。不飽和結合を有している場合、例えば、複数の二重結合を有していても良い。炭素鎖は直鎖であっても分岐鎖状であってもよい。また、酸素原子含有炭化水素基の場合、含まれる酸素原子の数及び位置は特に限定されない。
【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
MEL以外のMAL(マンノシルアルジトールリピッド)の構造は一般式(6)に示す(式中、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基である)。エリスリトール以外の糖アルコール(アルジトール)としては、マンニトール、アラビトール、リビトール、ソルビトールが付加している(n=4:マンニトール、ソルビトール、n=2:アラビトール、リビトール)。一般式(6)に対応させれば、MALはマンノースの2位、3位に炭素数2〜20、好ましくは炭素数4〜18、より好ましくは炭素数6〜14の飽和又は不飽和の直鎖又は分枝を有するアルカノイル基を有する(式中、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基である)
【0038】
【化6】

【0039】
(式中、置換基R1は同一でも異なっていてもよい炭素数2〜20、好ましくは炭素数4〜18、より好ましくは炭素数6〜14の飽和又は不飽和の直鎖又は分枝を有するアルカノイル基を有し、式中、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基である。好ましくは、式中、置換基R2のどちらもアセチル基である化合物である。)
【0040】
(トリアシル体)
本発明に用いられるバイオサーファクタントは、MELのトリアシル体及びMEL以外のMALのトリアシル体でもよい。トリアシル体のバイオサーファクタントは、MELやMEL以外のMALよりもさらに高い疎水性を有するバイオサーファクタントである。例えば、MEL生産菌の培養液にも存在するし、大量に得る時は、酵素を用いてMELを種々の植物油と反応することによって製造することもできる。
【0041】
MELのトリアシル体、すなわちトリアシルマンノシルエリスリトールリピッド(トリアシルMELと称することがある)は、一般式(4)または一般式(5)中、置換基R1およびR3がいずれも脂肪族アシル基であればトリアシルMELとなり、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基である。トリアシルMELもMELと同様、マンノースの4位及び6位のアセチル基の有無に基づいて、トリアシルMEL−A、トリアシルMEL−B、トリアシルMEL−C及びトリアシルMEL−Dの4種類に分類される。
【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

【0044】
トリアシルMELは、ジアシルMELとは異なった性質を示す。具体的には、高い疎水性を有することからエモリエント剤として従来のMELと比べても種々のオイル成分と馴染みやすい点で優れている。
【0045】
本発明に好ましく用いられるバイオサーファクタントは、一般式(7)または一般式(8)にて示される構造を有するMEL−Bである。
【0046】
【化9】

【0047】
【化10】

【0048】
(一般式(11)及び一般式(12)中、置換基R1は同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基である)
【0049】
なお、上記バイオサーファクタントは、単独で使用してもよいが、2種以上のバイオサーファクタントを併用することもできる。
【0050】
(バイオサーファクタントの製造方法)
バイオサーファクタントの製造方法は特に制限されるものはないが、微生物を用いた発酵方法を任意に選択して行えば良い。例えばMEL (MEL−A、MEL−B、MEL−C)の培養生産は常法に従って、Pseudozyma antarctica(NBRC 1073)により生産することができ、微生物としてはPseudozyma antarctica、Pseudozyma sp.等を用いることができる。いずれの微生物でも容易にMEL混合物が得られることは周知の事実である。MEL混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、MEL−A、MEL−B及びMEL−Cを単離することが出来る。また、MEL−Bを生産する菌としては、Pseudozyma antarctica 、及びPseudozyma tsukubaensisが知られており、その菌を用いてもよい。MEL−Cを生産する菌としては、Pseudozyma hubeiensis、Pseudozyma graminicola等が知られており、その菌を用いてもよい。MELを生産する能力を有する微生物としては特に限定するものではなく、目的に応じて適宜使用することができる。
【0051】
バイオサーファクタントを生産するときの発酵培地は、酵母エキス、ペプトン等のN源、グルコース、グリセロール、フルクトース等のC源、及び硝酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム7水塩等の無機塩類からなる一般的な組成の培地を用いることができ、これにオリーブ油、ダイズ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、キャノーラ油、ココナッツ油等の油脂類、並びに、流動パラフィン、テトラデカン等の炭化水素等の非水溶性基質の単独或いは2種以上を添加したものを使用することができる。
【0052】
pHや温度等の発酵条件や培養時間等は任意に設定でき、発酵後の培養液をそのまま本発明のバイオサーファクタントとして使用することが可能である。また、発酵後の培養液を必要に応じて濾過、遠心分離、抽出、精製、滅菌等の任意の操作を適宜加えることも可能であり、得られたエキスを希釈、濃縮、乾燥することもできる。
【0053】
原料とする油脂類としては植物油脂が好ましい。植物油脂は特に限定されず、目的に応じて適宜選定することができる。例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油などが挙げられ、これらの中でも、大豆油、オリーブ油がバイオサーファクタント(特にMEL)の生産効率(生産量、生産速度、及び収率)を向上させることができる点で特に好ましい。これらは、1種を単独で、または2種以上を併用しても構わない。
【0054】
無機窒素源としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、硝酸アンモニウム、尿素、硝酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫安等が挙げられる。
【0055】
バイオサーファクタントの回収、精製方法には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、培養液を遠心分離して油分を回収し、酢酸エチル等の有機溶媒で抽出濃縮することにより回収することができる。
【0056】
抽出溶媒としては、水、アルコール類(例えば、メタノール、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコール、またはプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール)、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルなどのエステル類、キシレン、ベンゼン、クロロホルムなどの有機溶媒を、単独であるいは2種類以上の混液を任意に組み合わせて使用することができ、また、各々の溶媒抽出物が組み合わされたものでも使用することができる。
【0057】
抽出方法は特に制限されるものはないが、通常、常温から常圧下での溶媒の沸点の範囲であればよく、抽出後は濾過またはイオン交換樹脂を用い、吸着・脱色・精製して溶液状、ペースト状、ゲル状、粉末状とすればよい。多くの場合は、そのままの状態で利用できるが、必要であれば、その効力に影響のない範囲でさらに脱臭、脱色などの精製処理を加えてもよい。脱臭・脱色等の精製処理手段としては、活性炭カラムなどを用いればよく、抽出物質により一般的に適用される通常の手段を任意に選択して行えばよい。必要に応じて、シリカゲルカラムを用いて精製することにより、純度の高いバイオサーファクタントを得ることができる。
【0058】
(トリアシル体製造方法)
バイオサーファクタントのトリアシル体を得る方法を、MELのトリアシル体を製造する方法を例として説明するが、本発明に用いられるバイオサーファクタントのトリアシル体はトリアシルMELに限定されない。
【0059】
例えば、トリアシルMELを得るためには、上記のようにして微生物を発酵して製造した培養液からトリアシルMEL画分を精製して得ることができる。また、大量に得るためには、MELを有機溶媒に溶かし、植物油などの脂肪酸誘導体を添加、加水分解酵素の存在下でエステル化反応またはエステル交換反応を行う。
【0060】
MELのエリスリトール部に導入される脂肪酸は長鎖炭化水素の1価のカルボン酸であればよい。また、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよい。不飽和脂肪酸の場合、複数の二重結合を有していてもよい。炭素鎖は直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。さらに、脂肪酸の誘導体である脂肪酸誘導体を本発明に使用してもよいし、脂肪酸と脂肪酸誘導体の混合物を本発明に使用してもよい。MELのエリスリトール部に導入される脂肪酸または脂肪酸誘導体は、油類、高級脂肪酸、合成エステル由来であることが好ましい。
【0061】
「油類」としては、植物油、動物油、鉱物油及びその硬化油であればよい。具体的には、アボカド油、オリーブ油、ゴマ油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアンナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、キリ油、ホホバ油、カカオ脂、ヤシ油、馬油、パーム油、パーム核油、牛脂、羊脂、豚脂、ラノリン、鯨ロウ、ミツロウ、カルナウバロウ、モクロウ、キャンデリラロウ、スクワラン等の動植物油及びその硬化油。流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油、トリパルミチン酸グリセリン等の合成トリグリセリンが挙げられる。好ましくはアボカド油、オリーブ油、ゴマ油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアンナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、より好ましくはオリーブ油、大豆油である。
【0062】
「高級脂肪酸」としては、例えばカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、ウンデシン酸、トール酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが挙げられる。好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、ウンデシレン酸、より好ましくはオレイン酸、リノール酸、ウンデシレン酸である。
【0063】
「合成エステル」としては、例えば、カプロン酸メチル、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸メチル、ステアリン酸メチル、ウンデシン酸メチル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、カプリン酸エチル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸エチル、パルミチン酸エチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノレン酸エチル、ステアリン酸エチル、ウンデシン酸エチル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、オレイン酸ビニル、リノール酸ビニル、リノレン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ウンデシン酸ビニル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレンイ酸デシル、ジメチルオクタン酸、乳酸セチル、乳酸ミリスチル等が挙げられる。好ましくはラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸メチル、ステアリン酸メチル、ウンデシレン酸メチル、より好ましくはオレイン酸メチル、リノール酸メチル、ウンデシレン酸メチルである。
【0064】
トリアシルMELは、上述のようにMELを有機溶媒に溶解して反応させることにより生産することができる。有機溶媒としては、MELを可溶化できるものであれば限定されない。全部を可溶化できなくても一部を可溶化できるものであればよい。また、有機溶媒は複数の有機溶媒の混合物でもよい。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、プロパノン、ブタノン、ペンタン−2−オン、1,2−エタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジオキサン、アセトニトリル、2−メチル−ブタン−2−オール、第3級ブタノール、2−メチルプロパノール、4−ヒドロキシ−2−メチルペンタノン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、DMF、DMSO、ピリジン、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。好ましくはアセトン、テトラヒドロフラン、第3級ブタノール、アセトニトリル、ジオキサン、より好ましくはアセトンである。
【0065】
加水分解酵素としては、リパーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼが挙げられる。これらの中から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、複数の加水分解酵素を用いてもよい。好ましくはリパーゼ、エステラーゼ、より好ましくはリパーゼである。
【0066】
具体的には、例えば、MEL生産微生物の培養液から精製したMELを有機溶媒(例えば、アセトン)に溶解し、これに市販のリパーゼ(例えば、ノボザイム435(ノボザイムズ社製)など)及び植物油脂を添加する。
【0067】
この製造方法の場合、反応温度は10〜100℃、好ましくは20〜50℃、より好ましくは25〜40℃で、1日〜7日間攪拌すればよい。また、反応液にモレキュラーシーブスを添加してもよい。この製造方法により、材料として添加したMELがほぼ定量的にトリアシル体となる。
【0068】
トリアシルMELの精製は、上述のMELの精製に準じて行うことができる。
【0069】
(飽和脂肪酸側鎖有するMELの製造方法)
飽和側鎖有するMELの製造は、上述のバイオサーファクタントの製造方法に準じて行うことができる。その際、原料とする油脂類としては、オリーブ油、飽和脂肪酸あるいはそのエステル体、流動パラフィン、テトラデカン等の炭化水素等の非水溶性基質の単独あるいは2種以上を添加することにより行う。
飽和側鎖有するMELの精製は、上述のMELの精製に準じて行うことができる。
【0070】
(MML等のMALの製造方法)
MML等のエリスリトール以外のアルジトールを有するMALの製造は、上述のバイオサーファクタントの製造方法に準じて行うことができる。その際、原料としては、マンニトール、アラビトール、リビトール、ソルビトール等のアルジトールの単独あるいは2種以上を添加することにより行う。
MML等のエリスリトール以外のアルジトールを有するMALの精製は、上述のMELの精製に準じて行うことができる。
【0071】
成分(A)のバイオサーファクタントは、上述のバイオサーファクタントを1種または2種以上を併用してもよく、またその含有量は、皮膚外用剤中の0.001〜20重量%が好ましく、更には0.15〜5重量%、特に0.2〜3重量%が好ましい。
【0072】
本発明で用いられる成分(B)は、ベンダザック、インドメタシン、ブフェキサマック、ウフェナマート、イブプロフェンピコノール、スプロフェン、フルフェナム酸ブチル、ビタミンA油、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペンジル、ジフェニルイミダゾール、硫酸クレミゾール、クロタミトン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン、グアイアズレン、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ザルトプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェンブフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、アンピロキシカム、リシプフェン、テノキシカム、フェルビナク及びオルセノンから選ばれる1種又は2種以上である。成分(A)の配合量は特に制限されないが、全組成中0.01〜20重量%、特に0.1〜10重量%、更に0.3〜3重量%配合すると十分な薬効が得られ好ましい。
【0073】
本発明の皮膚外用剤は、上記必須成分に加え、(C)ステロール類を配合すると、成分(A)及び(B)の皮膚中への浸透が強化され、より高い改善効果が得られ好ましい。かかるステロール類としては、コレステロール又はその誘導体が挙げられ、コレステロール誘導体としては、アルケニルコハク酸コレステリル、コレスタノール、炭素数12〜36、好ましくは炭素数14〜28の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有するコレステリルエステル、デヒドロコレステロール等が例示される。これらのうちアルケニルコハク酸コレステリルとしては、特開平5−294989号公報に記載の製造法により合成されるもの、例えばn−ヘキサデセニルコハク酸コレステリルモノエステル、n−オクタデセニルコハク酸コレステリルモノエステル等が挙げられる。また、コレステリルエステルとしては、例えばイソステアリン酸コレステリル、1,2−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ラノリン脂肪酸コレステリル、リシノール酸コレステリル等が挙げられる。これらのうち、成分(C)としては、アルケニルコハク酸コレステリル、コレステロール、イソステアリン酸コレステリルを用いるのが好ましい。
【0074】
成分(C)のステロール類は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、配合量は特に制限されないが、全組成中0.01〜50重量%配合するのが好ましく、特に0.01〜40重量%、更に0.01〜20重量%配合するのがより好ましい。
【0075】
本発明の皮膚外用剤は、その使用形態において、薬用皮膚外用剤と化粧料に大別される。
【0076】
薬用皮膚外用剤としては、例えば薬効成分を含有する各種軟膏剤を挙げることができる。軟膏剤としては、油性基剤をベースとするもの、油/水、水/油型の乳化系基剤をベースとするもののいずれであってもよい。油性基剤としては、特に制限はなく、例えば植物油、動物油、合成油、脂肪酸及び天然又は合成のグリセライド等が挙げられる。また薬効成分としては、特に制限はなく、例えば鎮痛消炎剤、鎮痒剤、殺菌消毒剤、収斂剤、皮膚軟化剤、ホルモン剤等を必要に応じて適宜使用することができる。
【0077】
本発明の皮膚外用剤においては、前記必須成分の他、通常化粧料に用いられる塩、油剤、乳化剤、粉体、紫外線散乱剤、pH調整剤、増粘剤、色素、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料、キレート剤、収れん剤、殺菌剤、賦活剤等の薬効剤、エタノール、グリセリン等の水溶性溶剤を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。更に本発明皮膚外用剤は常法により製造することができ、その剤型には、乳化型、分散型、二層型、可溶化型等どのような剤型のものをも含まれる。
【0078】
化粧料としては、種々の形態、例えば水/油、油/水型乳化化粧料、クリーム、化粧乳液、化粧水、油性化粧料、口紅、ファウンデーション、皮膚洗浄剤、ヘアートニック、整髪剤、養毛剤、育毛剤等の皮膚外用剤とすることができる。
【0079】
本発明皮膚外用剤における、成分(A)と成分(B)の混合物の作用機構の詳細は完全には解明されていないが、これが角質細胞間で水とともに脂質2重層を構築して、角質層の水分保持機能を発揮するものと考えられる。
【0080】
以下、本発明を実施例に基づき、より詳細に説明する。なお、本発明は、特に実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0081】
(MEL−A及びトリアシルMEL−Aの製造)
種菌培養はPseudozyma antarctica NBRC 10736のコロニーを種培地(20ml/500ml坂口フラスコ)に1 loop植菌して実施した。30℃にて一晩培養した。得られた培養液を種菌とした。種培地組成は4% Glucose、0.3% NaNO3、0.02% MgSO4・7H2O、0.02% KH2PO4、0.1% yeast extractであった。培養は上記種菌75mlを生産培地1.5L(5L−jar)に植菌し、30℃、300rpm(攪拌回転)、0.5L/min(Air)の条件で5L−jarを用いて培養した。生産培地組成は、3% ダイズ油、0.02% MgSO4・7H2O、0.02% KH2PO4、0.1% yeast extractであった。培養液250mlを遠心(6500rpm、30min)し、上清を取り除き、沈殿(菌体)を回収した。沈殿に、50mlの酢酸エチルを加え、十分攪拌後、遠心(8500rpm、30min)し、沈殿と上清に分け、上清をエバポーレーターで濃縮した。シリカゲルを用いて、クロロホルム:アセトン=1:0、クロロホルム:アセトン=9:1、クロロホルム:アセトン1:1、クロロホルム:アセトン=3:7、クロロホルム:アセトン=0:1で溶出しMEL−A及びトリアシルMEL−A画分を得た。
【実施例2】
【0082】
(MEL−B及びトリアシルMEL−Bの製造)
0.2mlのPseudozyma tsukubaensisフローズンストックを20mlのYM培地/500ml容坂口フラスコに植菌し、26℃、180rpm、1晩培養させ、種種菌とした。0.2mlの種種菌を再度、20mlのYM種培地/500ml容坂口フラスコに植菌し、26℃、180rpm、1晩培養させ、種菌とした。20mlの種菌を2LのYM培地/5L Jarに植菌し、26℃ 300rpm(1/4VVM、0.5L air/min)で8日間培養した。培養液を7,900rpm 60min 4℃で遠心し、菌体(MEL−Bを含む)と上清に分離した。菌体画分にそれぞれ80mlの酢酸エチルを加え、菌体が十分懸濁するように上下に攪拌した後、7,900rpm 30min 4℃で遠心した。得られた上清に等量の飽和食塩水を加え攪拌し酢酸エチル層を得た。酢酸エチル層に無水硫酸Naを適量加え、30分間精置させた後、エバポレートしMEL−B粗精製品を得た。得られたMEL−B粗精製品を、シリカゲルカラムを用いて、ヘキサン:アセトン=5:1、ヘキサン:アセトン=1:1で溶出しMEL−B及びトリアシルMEL−B画分精製品を得た。
【実施例3】
【0083】
(MEL−C及びトリアシルMEL−Cの製造)
0.2mlのPseudozyma hubeiensisフローズンストックを20mlのYM種培地/500ml容坂口フラスコに植菌し、26℃、180rpm、1晩培養させ、種種菌とした。0.2mlの種種菌を再度、20mlのYM種培地/500ml容坂口フラスコに植菌し、26℃、180rpm、1晩培養させ、種菌とした。20mlの種菌を2LのYM培地/5L Jarに植菌し、26℃ 300rpm(1/4VVM、0.5L air /min)で8日間培養した。培養液を7,900rpm 60min 4℃で遠心し、菌体(MEL−Cを含む)と上清に分離した。菌体画分にそれぞれ80mlの酢酸エチルを加え、菌体が十分懸濁するように上下に攪拌した後、7,900rpm 30min 4℃で遠心した。得られた上清に等量の飽和食塩水を加え攪拌し酢酸エチル層を得た。酢酸エチル層に無水硫酸Naを適量加え、30分間精置させた後、エバポレートしMEL−B粗精製品を得た。得られたMEL−C粗精製品を、シリカゲルカラムを用いて、ヘプタン:酢酸エチル=1:1、ヘプタン:酢酸エチル=1:2、ヘプタン:酢酸エチル=1:3で溶出しMEL−C及びトリアシルMEL−C画分精製品を得た。
【実施例4】
【0084】
(オリーブ油を用いたMELの製造)
実施例1におけるMELの製造では、生産原料にダイズ油を用いたが、その代わりにオリーブ油を用いて実施例1と同様の方法で培養しMEL−A、MEL−B、MEL−Cを単離精製する。この時得られるMEL画分を、実施例1のMELと区別するためMEL−A(OL)、MEL−B(OL)、MEL−C(OL)と呼ぶ。
【実施例5】
【0085】
(マンノシルマンニトールリピッド(MML)の製造)
シュードザイマ・パラアンタクティカ(Pseudozyma parantarctica)JCM 11752株の培養を行った。すなわち、保存培地(麦芽エキス3g/L、酵母エキス3g/L、ペプトン5g/L、グルコース10g/L、寒天30g/L)に保存しておいたシュードザイマ・パラアンタクティカ(Pseudozyma parantarctica)JCM 11752株を、グルコース20g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム3g/L、リン酸2水素カリウム 0.3g/L、及び硫酸マグネシウム0.3g/Lの組成の液体培地2mLが入った試験管に1白金耳接種し、30℃で1日間振とう培養を行った。続いて、得られた菌体培養液を、植物油脂としてオリーブ油50g/L、糖アルコールとしてマンニトール100g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム3 g/L、リン酸2水素カリウム0.3g/L、及び硫酸マグネシウム0.3g/Lの組成の液体培地30mLの入った坂口フラスコに接種して、34℃で7日間培養を行った。上記の培養液を採取し、培養液中のマンノシルアルジトールリピッドを酢酸エチルで抽出し、シリカゲルクロマトで精製後、13C−NMRと1H−NMRで生産物の構造解析を行い、構造を確認した。
【実施例6】
【0086】
(マンノシルアラビトールリピッド(MAraL)の製造)
実施例5の培養を糖アルコールとしてアラビトール100g/Lを含む培地で行う以外は、実施例5と同様に培養しMAraLを製造した。
【実施例7】
【0087】
(マンノシルソルビトールリピッド(MSL)の製造)
実施例5の培養を糖アルコールとしてソルビトール100g/Lを含む培地で行う以外は、実施例5と同様に培養しMSLを製造した。
【実施例8】
【0088】
(マンノシルリビトールリピッド(MRL)の製造)
実施例5の培養を糖アルコールとしてリビトール100g/Lを含む培地で行う以外は、実施例5と同様に培養しMRLを製造した。
【実施例9】
【0089】
(皮膚外用剤の調製)
表1および表2に示す組成の皮膚外用剤を下記製法により調製し、得られたそれぞれの皮膚外用剤について、薬効持続性を評価した。
【0090】
(製法)
油相成分(イ)および(ハ)〜(ヘ)を80℃で加熱溶解したものに攪拌しながら、80℃に加熱した水相成分(ロ)及び(チ)〜(ヲ)を加えて乳化した後、60℃まで攪拌冷却し、ついで成分(ト)を加え、更に攪拌しながら室温まで冷却し、皮膚外用剤を調製した。
【0091】
(薬効持続性)
冬場の乾燥時、手足、背中等にかゆみを自覚する被験者群から5名ずつ、4つ(試験皮膚外用剤数×2)のグループを作成する。
グループ(a)−Aは、実施例1の皮膚外用剤の一定量を、普段かゆみを自覚する同じ部位に、12時間ごとに塗布する。
グループ(b)−Aは、実施例1の皮膚外用剤の一定量を、普段かゆみを自覚する同じ部位に、8時間ごとに塗布する。
グループ(a)−Bは、比較例1の皮膚外用剤の一定量を、普段かゆみを自覚する同じ部位に、12時間ごとに塗布する。
グループ(b)−Bは、比較例1の皮膚外用剤の一定量を、普段かゆみを自覚する同じ部位に、8時間ごとに塗布する。
【0092】
一週間の試験期間中、その部位のかゆみが押さえられたかどうか、下記の評価基準によって各人の評点を求め、下記計算式から薬効持続指数I及びIIを算出した。薬効持続指数は、値が大きいほど薬効持続効果が良好であることを示す。
【0093】
(評価基準)
3:かゆみは認められない
2:ほとんどかゆみは認められない
1:ややかゆみを認める
0:かゆみを認める
【0094】
【数1】

【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
表1および表2の結果から明らかなように、本発明皮膚外用剤は、比較品に比べ、高い薬効持続効果を持つものであった。
【実施例10】
【0098】
表3に示す組成の皮膚外用剤を実施例1と同様に調製した。得られたそれぞれの皮膚外用剤について、下記方法により肌荒れスコアを評価した。
【0099】
(肌荒れスコア)
冬季に頬部に肌荒れを起こしている20〜50才の女性10名を被験者とし、左右の頬に異なるサンプルを毎日1回2週間塗布する。2週間の塗布が終了した翌日、温水にて洗顔後、温度20℃、湿度40%の部屋で20分間安静にした後、肌荒れを肉眼で観察し、下記基準により判定した。スコアは平均値±標準偏差で示した。
【0100】
判定基準
0:肌荒れを認めない
1:わずかに肌荒れをみとめる
2:肌荒れを認める
3:ややひどい肌荒れを認める
4:ひどい肌荒れを認める
【0101】
【表3】

【0102】
表3の結果から明らかなように、本発明皮膚外用剤は、比較品に比べ、皮膚刺激性が低く肌荒れ改善効果が高いものであった。
【0103】
表4に示す組成の皮膚外用剤を実施例9と同様に調製した。得られたそれぞれの皮膚外用剤について、下記方法により保湿効果を評価した。
【0104】
(保湿効果:皮膚コンダクタンス)
皮膚外用剤の一定量をパネリストの前腕内側部に塗布し、3時間安静にした後、湯洗し、温度20℃、湿度40%の恒温恒湿室に入り、30分後に角質層中の水分含有量を比較するため皮膚コンダクタンスメーター(IBS社製)で皮膚コンダクタンスを測定した。皮膚コンダクタンスの値が大きいほど良好な保湿効果を示す。
【0105】
【表4】

【0106】
表4の結果から明らかなように、本発明皮膚外用剤は、保湿剤としてグリセリンを添加した比較品に比べても、十分な保湿効果を示すものであった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の皮膚外用剤は、薬効の持続性に優れるだけでなく、肌自身にうるおいを与え、皮膚刺激性が低く、肌荒れ改善効果に優れ、しかも使用感の良好なものであることから、特に医薬品や化粧品に関する産業界において、大きく寄与することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
(A)1種または2種以上のバイオサーファクタント
(B)ベンダザック、インドメタシン、ブフェキサマック、ウフェナマート、イブプロフェンピコノール、スプロフェン、フルフェナム酸ブチル、ビタミンA油、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペンジル、ジフェニルイミダゾール、硫酸クレミゾール、クロタミトン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン、グアイアズレン、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ザルトプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェンブフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、アンピロキシカム、リシプフェン、テノキシカム、フェルビナク及びオルセノンから選ばれる1種又は2種以上
【請求項2】
バイオサーファクタントが、マンノース骨格を有することを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
バイオサーファクタントが、マンノース骨格の1位の水酸基に糖アルコールがグリコシド結合していることを特徴とする請求項2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
マンノース骨格を有するバイオサーファクタントがマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)、マンノシルマンニトールリピッド(MML)、マンノシルソルビトールリピッド(MSL)、マンノシルアラビトールリピッド(MAraL)及びマンノシルリビトールリピッド(MRL)からなる群より選ばれた1種以上の化合物であることを特徴とする請求項2または3に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
MELが、マンノシルエリスリトールリピッドA(MEL−A)、マンノシルエリスリトールリピッドB(MEL−B)、マンノシルエリスリトールリピッドC(MEL−C)、マンノシルエリスリトールリピッドD(MEL−D)、MEL−Aのトリアシル体、MEL−Bのトリアシル体、MEL−Cのトリアシル体及びMEL−Dのトリアシル体からなる群より選ばれた1種以上の化合物であることを特徴とする請求項4に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
バイオサーファクタントが、飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸を含有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
更に、(C)ステロール類を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2011−132134(P2011−132134A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290527(P2009−290527)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】