監視システム及び監視方法
【課題】複数の監視エリアに被写体追尾機能を備えた監視カメラを設置し、被写体の撮像担当を引き継ぐ方式の監視システムにおいて、より簡単で正確な引き継ぎ制御を実現する。
【解決手段】カメラ1aの撮像部の光軸の回動角度(チルト及びパン方向)がカメラ1cとの関係での引き継ぎ条件内になると、カメラ1aは引き継ぎ先をカメラ1cとして引き継ぎ指示(撮像部の回動角度情報を含む)をカメラ1cへ、監視端末へ引き継ぎ通知を送信する(S51〜S57)。カメラ1cは受信した回動角度情報に基づいて自機の引き継ぎ角度を求めて撮像部の光軸をその方向へ回動制御し、また監視端末に対して準備完了通知を行う(S58〜S63)。監視端末はカメラ1cへ画像伝送要求を行い、カメラ1cから追尾監視画像データを受信して表示・記録する(S64〜S66)。
【解決手段】カメラ1aの撮像部の光軸の回動角度(チルト及びパン方向)がカメラ1cとの関係での引き継ぎ条件内になると、カメラ1aは引き継ぎ先をカメラ1cとして引き継ぎ指示(撮像部の回動角度情報を含む)をカメラ1cへ、監視端末へ引き継ぎ通知を送信する(S51〜S57)。カメラ1cは受信した回動角度情報に基づいて自機の引き継ぎ角度を求めて撮像部の光軸をその方向へ回動制御し、また監視端末に対して準備完了通知を行う(S58〜S63)。監視端末はカメラ1cへ画像伝送要求を行い、カメラ1cから追尾監視画像データを受信して表示・記録する(S64〜S66)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は監視システム及び監視方法に係り、監視エリア毎に被写体追尾機能を備えた監視カメラを設置し、被写体が隣接監視エリア間を移動する際に監視カメラ相互間で撮像担当の引き継ぎを行うことにより被写体を追跡する監視技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラの撮像データを処理・解析して被写体の動き検出を行うことにより、雲台の回動角度を制御して被写体を撮像画面のほぼ中央に捕捉する方式の被写体追尾機能が知られている。また、そのような機能を備えた監視カメラを複数台設置して広い範囲を監視する監視システムも実施されている。その監視システムでは、各監視カメラが個別に監視エリアを担当し、侵入者が隣接した監視エリア間を移動してゆく場合に、各監視カメラの撮像担当を順次引き継がせることによりながら侵入者の動向を追跡してゆくようになっている。
【0003】
そして、前記監視カメラの引き継ぎに際しては、引き継ぎ元の監視カメラが自機のパン方向とチルト方向の角度、及びズーム倍率から被写体(侵入者)の3次元座標を演算し、その演算結果を引き継ぎ先の監視カメラへ送信し、引き継ぎ先の監視カメラが受信した3次元座標に基づいて自機のパン方向とチルト方向の角度、及びズーム倍率を演算することにより雲台の回動機構とズームレンズを制御するようにしている。
【0004】
一方、前記のような制御方法では監視カメラ間での複雑な変換処理が必要であるため、下記特許文献1等においては、演算を行うことなく、引き継ぎ元のカメラにおける追尾処理で既に得られているテンプレート情報を引き継ぎ先のカメラへ送る方法が提案されている。ここで、「テンプレート情報」とはパターンマッチングに用いられる被写体の形状情報であり、引き継ぎ先のカメラでは自機の撮像画像からテンプレート情報に対応する形状情報を検出して被写体の位置を確認する。
【特許文献1】特開2002−290962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図10に示されるように、複数の監視カメラ51a,51bが被写体52に対してほぼ同一の方向から撮像を行っている場合には、各監視カメラ51a,51bで撮像する被写体の画像はほぼ同一になるために前記特許文献1の方法は有効である。しかし、図11のように、天井60にパン方向及びチルト方向に回動自在な雲台を介して取り付けたカメラを透明ドームで覆ったドーム型監視カメラ61a,61bを用いた場合には、各監視カメラ61a,61bで撮像した被写体(侵入者)62の画像は大きく異なっていることが多いため、引き継ぎが正常に行われずに追尾不能状態に陥る可能性が高くなる。
【0006】
そこで、本発明は、被写体追尾機能を備えた監視カメラを各監視エリアに配備し、各監視カメラによる被写体の撮像担当の引き継ぎが簡単な情報の伝送だけで正確に行えるようにした監視システム及び監視方法を提供することを目的として創作された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の監視エリアに被写体追尾機能を備えた監視カメラがそれぞれ1台ずつ設置されると共に、前記各監視カメラと監視端末とが通信ネットワークに接続されており、被写体が隣接監視エリア間を移動する際にそれら各監視エリアに設置された前記各監視カメラ相互間で前記被写体の撮像担当の引き継ぎを行い、撮像担当中の前記監視カメラから前記通信ネットワークを介して伝送される監視画像データを前記監視端末で記録及び/又は表示する監視システムにおいて、前記各監視カメラが、前記撮像担当を引き継がせる際の自機の撮像光軸の回動角度範囲を隣接監視エリア毎に記憶している記憶手段と、自機の撮像光軸の回動角度が前記記憶手段の回動角度範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって自機の撮像光軸の回動角度が前記記憶手段の回動角度範囲内にあると判断された場合に、前記通信ネットワークを介してその回動角度範囲に対応する隣接監視エリアの監視カメラへ自機の撮像光軸の回動角度情報を含む引き継ぎ指示信号を送信する指示手段と、前記通信ネットワークを介して隣接監視エリアの監視カメラから引き継ぎ指示信号を受信した場合に、その引き継ぎ指示信号に含まれている回動角度情報に基づいて撮像担当を引き継ぐ際の自機の撮像光軸の回動角度を求める演算手段と、前記演算手段が求めた回動角度に自機の撮像光軸を駆動制御する駆動制御手段とを具備したことを特徴とする監視システムに係る。
【0008】
また、本発明は、複数の監視エリアに被写体追尾機能を備えた監視カメラがそれぞれ1台ずつ設置されると共に、前記各監視カメラと監視端末とが通信ネットワークに接続されており、被写体が隣接監視エリア間を移動する際にそれら各監視エリアに設置された前記各監視カメラ相互間で前記被写体の撮像担当の引き継ぎを行い、撮像担当中の前記監視カメラから前記通信ネットワークを介して伝送される監視画像データを前記監視端末で記録及び/又は表示する監視方法において、前記監視カメラは、前記撮像担当を引き継がせる際の自機の撮像光軸の回動角度範囲を隣接監視エリア毎に記憶しており、前記撮像担当の引き継ぎ元になる場合には、自機の撮像光軸の回動角度が前記回動角度範囲内にあるか否かを判定する第1のステップと、前記第1のステップで自機の撮像光軸の回動角度が前記回動角度範囲内にあると判断された場合に、前記通信ネットワークを介してその回動角度範囲に対応する隣接監視エリアの監視カメラへ自機の撮像光軸の回動角度情報を含む引き継ぎ指示信号を送信する第2のステップとを実行し、前記撮像担当の引き継ぎ先になる場合には、前記通信ネットワークを介して隣接監視エリアの監視カメラから引き継ぎ指示信号を受信したときに、その引き継ぎ指示信号に含まれている回動角度情報に基づいて撮像担当を引き継ぐ際の自機の撮像光軸の回動角度を求める第3のステップと、前記第3のステップで求められた回動角度に自機の撮像光軸を駆動制御する第4のステップとを実行することを特徴とする監視方法に係る。
【0009】
本発明では、被写体を追尾中の監視カメラの撮像光軸の回動制御角度が隣接監視エリアの監視カメラへ撮像担当の引き継ぎを行うべき回動角度範囲内になった場合に、通信ネットワークを介して隣接監視エリアの監視カメラへ自機の撮像光軸の回動制御角度情報を伴った引き継ぎ指示を行う。そして、隣接監視エリアの監視カメラは、引き継ぎ指示と共に受信した回動制御角度情報に基づいて引き継ぎ時の自機の撮像光軸の回動角度を求め、その回動角度へ引き継ぎのための迎え駆動制御を行う。尚、本発明における「回動角度」は、パン方向とチルト方向について、それぞれの基準方向に対してなす角度として与えられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、複数の監視エリアに対して1台ずつ配備した監視カメラにより、各監視エリア内では個々の被写体追尾機能によって追尾を行い、被写体が隣接監視エリアへ移動する際にはその移動先の監視エリアの監視カメラに撮像担当の引き継ぎを行う方式の監視システム及び監視方法において、引き継ぎ元の監視カメラが通信ネットワークを介して簡単な指示と自機の撮像光軸の回動角度情報を引き継ぎ先の監視カメラへ伝送し、引き継ぎ先の監視カメラで簡単な演算による回動角度制御を行うだけで、撮像担当の円滑且つ正確な引き継ぎを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の監視システム及び監視方法の実施形態を図1から図9に基づいて詳細に説明する。先ず、図1は監視システムの構成図であり、上記ドーム型の各監視カメラ1a,1b,1cがインターネット25を介して相互に接続されていると共に、監視端末30とも接続されている。ここで、各監視カメラ1a,1b,1cは、光学系と撮像素子とからなる撮像部11と、撮像部11をパン方向とチルト方向へそれぞれ回動自在に支持している雲台12と、雲台12の基準方向からのパン方向角度を検出するセンサ13と、雲台12の水平方向からのチルト方向角度を検出するセンサ14と、雲台12をパン方向に回動させるモータ15と、雲台12をチルト方向に回動させるモータ16と、撮像部11から得られる撮像信号を処理する信号処理部17と、処理後の信号をデジタル信号に変換するA/D変換器18と、デジタル化された撮像信号をJPEG方式での符号化データに圧縮する符号化圧縮部19と、インターネット25を介して他の監視カメラ1a,1b,1c及び監視端末30とのパケット通信を行うと共に圧縮した撮像データをパケットに組み立てて監視端末30へ伝送するネットワークI/F20と、監視カメラ1a,1b,1cのシステム全体を制御する制御部21と、制御部21が実行する制御プログラム及や固定データを格納すると共にワークエリアとしても利用されるメモリ22とからなる。
【0012】
そして、ドーム型の各監視カメラ1a,1b,1cは、図2に示すような態様で、ある部屋の天井41に適当な距離を隔てて取り付けられており、それぞれの監視カメラ1a,1b,1cが床状に想定される監視エリア42a,42b,42cをカバーするようになっている。従って、同図において、侵入者43が入り口44から机45の位置まで直線的に移動した場合には、監視エリア42a,42cを通過することになり、監視カメラ1aで追尾しながら撮像がなされた後、各監視エリア42a,42cの重複領域で監視カメラ1aから監視カメラ1cへ撮像担当の引き継ぎがなされ、その引き継ぎの後に監視カメラ1cでの追尾・撮像が行われる。
【0013】
各監視エリア42a,42b,42c内で侵入者43が移動している状態での各監視カメラ1a,1b,1cによる追尾制御は画像の動き検出によって実行される。即ち、図3の(A),(B)に示すように撮像画像を例えば15(縦)×20(横)のブロックに分割して動きブロックが有るか否かを判別し、動きブロックが有る場合には雲台12のモータ15,16を駆動して動きブロック群の中心を画面の中心に位置させるように撮像部11を回動制御する。
【0014】
具体的な追尾制御手順は図4のフローチャートに示される。但し、ここでは監視カメラ1aについて説明するが、他の監視カメラ1b,1cについても同様である。先ず、制御部21はセンサ13,14の検出信号から撮像部11のパン方向及びチルト方向の回動角度を検出し、前回の動き検出時の回動角度と比較して回動が有ったか否かを確認する(S1,S2)。そして、回動が有った場合には、その角度が所定角度以上であるか否かを確認する(S2,S3)。ここでは、回動角度の大きさについての閾値は前記分割ブロックの1個分とされ、撮像部11の画角は、縦:30°、横:45°としてチルト方向に2°(=30°/15)、パン方向に2.25°(=45°/20)とされる。
【0015】
前記回動角度が閾値角度(チルト方向:2°,パン方向:2.25°)を超えていない場合、即ち、比較的小さい回動角度で追尾制御がなされていた場合には、各分割ブロックに係る動き検出へ移行する(S3,S4)。ここでは、図4と共に図3を参照して説明することとし、図3の(A)は前画像を、(B)は今回の画像を、(C)は前画像の要部拡大図を示す。この動き検出手順では、今回の画像中から先ず1つの対象ブロックP(i,j)[i=1〜15,j=1〜20]を選択し、前回の手順でメモリ22に格納させてある前画像における同一位置のブロックP'(i,j)と当該対象ブロックP(i,j)との差分の絶対値:Bd(=|P'(i,j)−P(i,j)|)を算出する(S4〜S5)。更に、その値:Bdが所定閾値:K以上であれば、前画像の同一位置のブロックP'(i,j)とそれに隣接した各ブロック[P'(i-1,j+1),P'(i-1,j),P'(i-1,j-1),P'(i,j-1),P'(i+1,j-1),P'(i+1,j),P'(i+1,j+1),P'(i,j+1)]との差分の絶対値の最大値:Dmaxを算出し、前記差分の絶対値:Bdと比較する(S6〜S8)。そして、Bd≧Dmaxであった場合には対象ブロックP(i,j)に“動き有り”と判定し、メモリ22に設けられているブロックP(i,j)の対応フラグをONに設定する(S8,S9)。一方、Bd<K又はBd<Dmaxであった場合には対象ブロックP(i,j)に“動き無し”と判定し、ブロックP(i,j)の対応フラグをOFFに設定する(S6,S8→S10)。以降、対象ブロックP(i,j)を[i=1〜15,j=1〜20]の条件で順次選択して、計300個のブロックP(i,j)について前記ステップS4〜S10を実行する(S11→S4〜S11)。
【0016】
ところで、前記ステップS2において撮像部11の回動が無かった場合にも各分割ブロックに係る動き検出を行うが、この場合には、前記動き検出手順におけるステップS4〜S6と同様の手順だけを実行し、Bdが所定閾値:K以上であるか否かの結果に基づいて対象ブロックP(i,j)の“動き有り”/“動き無し”を判定して対応フラグのON/OFFを設定する(S21〜S25)。前記と同様に全ブロック300個についてそれぞれ動き検出とフラグ設定を実行する(S26→S21〜S26)。尚、前記ステップS3で撮像部11の回動が有った場合において、その回動角度が閾値角度(チルト方向:2°,パン方向:2.25°)以上であったときには回動速度が大きすぎて動き検出が不能であると判定し、全てのブロックP(i,j)について「動きブロック無し」とみなして次の回動角度の検出を待つ(S3→S1)。
【0017】
前記のステップS4〜S11又はステップS21〜S26により全てのブロックP(i,j)に係るメモリ22の対応フラグがON/OFFに設定される。そこで、制御部21は、対応フラグにONのものが存在しているか否かを確認し、存在している場合には“動き有り”とされたブロック群の中心の座標(Xm,Ym)を算出する(S31,S32)。そして、その座標(Xm,Ym)と画面の中心座標(Xc,Yc)とのずれ量:ΔX(=Xm−Xc),ΔY(=Ym−Yc)を求めて撮像部11のパン方向及びチルト方向の制御量と制御速度を算出する(S33)。ここで、撮像部11の回動制御速度:Vは、図5に示すように、ずれ量:ΔL=√(ΔX2+ΔY2)に比例する設定値とされるが、最大値:Vmaxが定められておりそれ以上の速度にはならない。尚、この回動制御速度:Vはパン方向及びチルト方向について別々に求めてもよい。
【0018】
以上のようにして制御量と制御速度が求まると、制御部21は雲台12のモータ15,16に対して制御値に対応した駆動電流を通電し、動きブロック群の中心を画面の中心に位置させるように撮像部11を回動させる(S34)。また、撮像部11が回動制御された後の画像データはメモリ22の前回の画像データを上書きして書き込まれる。そして、図4に示す追尾制御手順は所定の周期(例えば、150msec毎)に繰り返して実行され、監視カメラ1aが監視エリア42a内の侵入者43を追尾しながら撮像する。尚、監視エリア42b,42cの撮像を担当している監視カメラ1b,1cも同様の機能を有していることは上述したとおりである。
【0019】
ところで、図2における各監視エリア42a,42cの重複領域では監視カメラ1aから監視カメラ1cへ撮像担当の引き継ぎが行われるが、図6はその引き継ぎの際の各監視カメラ1a,1cと監視端末30の通信シーケンスを示したものである。先ず、監視カメラ1aは図4で示した追尾制御手順によって侵入者(被写体)43の撮像データをインターネット25を介して監視端末30へ伝送し、監視端末30ではその撮像データを監視画像としてモニタに表示させると共にハードディスク装置等に記録している(S51,S52)。
【0020】
そして、侵入者43が机45の方向へ移動して監視エリア42a,42cの重複領域に入ると、監視カメラ1aでは、制御部21がセンサ13,14の検出信号によって追尾中の撮像部11の撮像光軸がその重複領域を撮像する回動角度状態にあること(引き継ぎ条件内となったこと)を確認し、引き継ぎ先の監視カメラ1cを決定する(S53,S54)。また、その決定に基づいて監視カメラ1cと監視端末30のIPアドレスをセットし、ネットワークI/F20からインターネット25を介してそれぞれに引き継ぎ指示(撮像部11の撮像光軸の回動角度情報も含む)と引き継ぎ通知を送信する(S55〜S57)。尚、各監視カメラ1a,1b,1cと監視端末30には図9に示すようなIPアドレステーブルが予め登録されており、必要に応じて相手方のIPアドレスを読み出してインターネット25を介した通信が行えるようになっている。
【0021】
ここで、撮像部11の撮像光軸の角度が引き継ぎ範囲になったかどうかは、制御部21がメモリ22に格納させてある引き継ぎ領域テーブルを参照して判定する。即ち、監視カメラ1aのメモリ22には、撮像部11が自己の監視エリア42aと他の監視カメラ1b,1cの監視エリア42b,42cとの重複領域を撮像する場合の撮像光軸の回動角度範囲を引き継ぎ領域テーブルとして格納されており、制御部21はセンサ13,14の検出信号から得られる撮像光軸のチルト方向角度:θtとパン方向角度:θpとが引き継ぎ領域テーブルの回動角度範囲になるか否かを常時監視して判定を行う。例えば、監視エリア42cとの関係での引き継ぎ領域テーブルは図7に示すようなデータ構成となり、θtとθpがこの回動角度範囲になれば直ちに引き継ぎ先が監視カメラ1cであると決定する。
【0022】
引き継ぎ先となった監視カメラ1cは、引き継ぎ指示を確認すると共に監視カメラ1aの撮像部11の撮像光軸の回動角度情報を受信するが、監視カメラ1cの制御部21はネットワークI/F20から得られた前記回動角度情報をメモリ22にセーブし、自機の撮像部11の撮像光軸の引き継ぎ角度を算出する(S58,S59)。具体的には、受信した回動角度情報で示されるチルト方向角度がθtaで、パン方向角度がθpaであった場合に、図8に示すように、各監視カメラ1a,1cにおける撮像部11の角度を計測する上での基準方向と床との交点をPoとし、監視カメラ1a側から見て前記角度θta,θpaで示される方向と床との交点をPmとすると、Pmは監視カメラ1c側から見てチルト方向角度:θtc、パン方向角度:θpcとして与えられ、それらの角度θtc,θpcは受信した角度情報:θta,θpaから求めることができる。
【0023】
このようにして監視カメラ1cで引き継ぎ角度θtc,θpcが求まると、監視カメラ1cの制御部21はそれらの角度θtc,θpcに基づいてモータ15,16の制御情報を作成し、前記Pmをターゲットとする引き継ぎ角度へ撮像光軸が設定されるように撮像部11を駆動制御する(S60)。そして、監視カメラ1cの制御部21は監視端末30のIPアドレスをネットワークI/F20にセットし、引き継ぎ準備完了通知をインターネット25を介して監視端末30へ送信する(S61,S63)。一方、監視端末30側では監視カメラ1aから引き継ぎ通知を受信した段階(S57)で引き継ぎ先が監視カメラ1cであることを確認してそのIPアドレスをセットしており(S62)、前記引き継ぎ準備完了通知を受信することにより、インターネット25を介して監視カメラ1cへ画像伝送要求を送信する(S64)。
【0024】
この段階で、監視カメラ1cは既に侵入者43の撮像担当に係る引き継ぎを完了させて追尾・撮像状態にある(S64)。従って、監視カメラ1cは、監視端末30から画像伝送要求を受信すると直ちにその時点での監視画像データを監視端末30へ送信し、監視端末30はその監視画像データを監視画像としてモニタに表示させると共にハードディスク装置等に記録する(S65,S66)。即ち、図2のように、侵入者43が監視エリア42aから監視エリア42cへ移動した場合に、撮像の担当が監視カメラ1aから監視カメラ1cへ引き継がれる。尚、監視エリア42aから監視エリア42cへの移動に限らず、侵入者43が各監視エリア42a,42b,42c間を如何なる方向へ移動しても前記と同様の手順で撮像担当の引き継ぎがなされることは当然である。また、この実施形態では各監視カメラ1a,1b,1cと監視端末30とがインターネット25を介して接続されている構成としているが、LAN(Local Area Network)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、複数の監視エリアにそれぞれ被写体追尾機能を備えた監視カメラを設置しておき、各監視エリアの監視カメラが被写体の撮像担当を引き継ぐ方式の監視システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る監視システムの構成図(監視カメラはブロック図)である。
【図2】監視カメラの設置位置と監視エリア等を示すと共に侵入者の撮像状態を表した説明図である。
【図3】(A),(B)はそれぞれブロック分割線を含んで前画像と今回の画像を示す図であり、(C)は前画像の要部拡大図である。
【図4】監視カメラにおける追尾制御手順を示すフローチャートである。
【図5】“動き有り”とされたブロック群の中心座標と画面の中心座標とのずれ量と撮像部の回動制御速度との関係を示すグラフである。
【図6】各監視カメラと監視端末との間での通信シーケンス図である。
【図7】引き継ぎ領域テーブルのデータ構成を示す図である。
【図8】監視カメラ相互間で撮像担当の引き継ぎを行う際における各撮像部の撮像光軸のチルト方向角度及びパン方向角度の関係を示す図である。
【図9】各監視カメラと監視端末のIPアドレスの関係を示すテーブルである。
【図10】複数のカメラが被写体をほぼ同一の方向から撮像しながら追尾してゆく方式の概略図である。
【図11】天井に取り付けた複数のドーム型カメラで被写体を撮像しながら追尾してゆく方式の概略図である。
【符号の説明】
【0027】
1a,1b,1c…監視カメラ、11…撮像部、12…雲台、13,14…センサ、15,16…モータ、17…信号処理部、18…A/D変換器、19…符号化圧縮部、20…ネットワークI/F、21…制御部、22…メモリ、25…インターネット、30…監視端末、41,60…天井、42a,42b,42c…監視エリア、43…侵入者(被写体)、44…入り口、45…机、51a,51b,61a,61b…カメラ、52,62…被写体。
【技術分野】
【0001】
本発明は監視システム及び監視方法に係り、監視エリア毎に被写体追尾機能を備えた監視カメラを設置し、被写体が隣接監視エリア間を移動する際に監視カメラ相互間で撮像担当の引き継ぎを行うことにより被写体を追跡する監視技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラの撮像データを処理・解析して被写体の動き検出を行うことにより、雲台の回動角度を制御して被写体を撮像画面のほぼ中央に捕捉する方式の被写体追尾機能が知られている。また、そのような機能を備えた監視カメラを複数台設置して広い範囲を監視する監視システムも実施されている。その監視システムでは、各監視カメラが個別に監視エリアを担当し、侵入者が隣接した監視エリア間を移動してゆく場合に、各監視カメラの撮像担当を順次引き継がせることによりながら侵入者の動向を追跡してゆくようになっている。
【0003】
そして、前記監視カメラの引き継ぎに際しては、引き継ぎ元の監視カメラが自機のパン方向とチルト方向の角度、及びズーム倍率から被写体(侵入者)の3次元座標を演算し、その演算結果を引き継ぎ先の監視カメラへ送信し、引き継ぎ先の監視カメラが受信した3次元座標に基づいて自機のパン方向とチルト方向の角度、及びズーム倍率を演算することにより雲台の回動機構とズームレンズを制御するようにしている。
【0004】
一方、前記のような制御方法では監視カメラ間での複雑な変換処理が必要であるため、下記特許文献1等においては、演算を行うことなく、引き継ぎ元のカメラにおける追尾処理で既に得られているテンプレート情報を引き継ぎ先のカメラへ送る方法が提案されている。ここで、「テンプレート情報」とはパターンマッチングに用いられる被写体の形状情報であり、引き継ぎ先のカメラでは自機の撮像画像からテンプレート情報に対応する形状情報を検出して被写体の位置を確認する。
【特許文献1】特開2002−290962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図10に示されるように、複数の監視カメラ51a,51bが被写体52に対してほぼ同一の方向から撮像を行っている場合には、各監視カメラ51a,51bで撮像する被写体の画像はほぼ同一になるために前記特許文献1の方法は有効である。しかし、図11のように、天井60にパン方向及びチルト方向に回動自在な雲台を介して取り付けたカメラを透明ドームで覆ったドーム型監視カメラ61a,61bを用いた場合には、各監視カメラ61a,61bで撮像した被写体(侵入者)62の画像は大きく異なっていることが多いため、引き継ぎが正常に行われずに追尾不能状態に陥る可能性が高くなる。
【0006】
そこで、本発明は、被写体追尾機能を備えた監視カメラを各監視エリアに配備し、各監視カメラによる被写体の撮像担当の引き継ぎが簡単な情報の伝送だけで正確に行えるようにした監視システム及び監視方法を提供することを目的として創作された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の監視エリアに被写体追尾機能を備えた監視カメラがそれぞれ1台ずつ設置されると共に、前記各監視カメラと監視端末とが通信ネットワークに接続されており、被写体が隣接監視エリア間を移動する際にそれら各監視エリアに設置された前記各監視カメラ相互間で前記被写体の撮像担当の引き継ぎを行い、撮像担当中の前記監視カメラから前記通信ネットワークを介して伝送される監視画像データを前記監視端末で記録及び/又は表示する監視システムにおいて、前記各監視カメラが、前記撮像担当を引き継がせる際の自機の撮像光軸の回動角度範囲を隣接監視エリア毎に記憶している記憶手段と、自機の撮像光軸の回動角度が前記記憶手段の回動角度範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって自機の撮像光軸の回動角度が前記記憶手段の回動角度範囲内にあると判断された場合に、前記通信ネットワークを介してその回動角度範囲に対応する隣接監視エリアの監視カメラへ自機の撮像光軸の回動角度情報を含む引き継ぎ指示信号を送信する指示手段と、前記通信ネットワークを介して隣接監視エリアの監視カメラから引き継ぎ指示信号を受信した場合に、その引き継ぎ指示信号に含まれている回動角度情報に基づいて撮像担当を引き継ぐ際の自機の撮像光軸の回動角度を求める演算手段と、前記演算手段が求めた回動角度に自機の撮像光軸を駆動制御する駆動制御手段とを具備したことを特徴とする監視システムに係る。
【0008】
また、本発明は、複数の監視エリアに被写体追尾機能を備えた監視カメラがそれぞれ1台ずつ設置されると共に、前記各監視カメラと監視端末とが通信ネットワークに接続されており、被写体が隣接監視エリア間を移動する際にそれら各監視エリアに設置された前記各監視カメラ相互間で前記被写体の撮像担当の引き継ぎを行い、撮像担当中の前記監視カメラから前記通信ネットワークを介して伝送される監視画像データを前記監視端末で記録及び/又は表示する監視方法において、前記監視カメラは、前記撮像担当を引き継がせる際の自機の撮像光軸の回動角度範囲を隣接監視エリア毎に記憶しており、前記撮像担当の引き継ぎ元になる場合には、自機の撮像光軸の回動角度が前記回動角度範囲内にあるか否かを判定する第1のステップと、前記第1のステップで自機の撮像光軸の回動角度が前記回動角度範囲内にあると判断された場合に、前記通信ネットワークを介してその回動角度範囲に対応する隣接監視エリアの監視カメラへ自機の撮像光軸の回動角度情報を含む引き継ぎ指示信号を送信する第2のステップとを実行し、前記撮像担当の引き継ぎ先になる場合には、前記通信ネットワークを介して隣接監視エリアの監視カメラから引き継ぎ指示信号を受信したときに、その引き継ぎ指示信号に含まれている回動角度情報に基づいて撮像担当を引き継ぐ際の自機の撮像光軸の回動角度を求める第3のステップと、前記第3のステップで求められた回動角度に自機の撮像光軸を駆動制御する第4のステップとを実行することを特徴とする監視方法に係る。
【0009】
本発明では、被写体を追尾中の監視カメラの撮像光軸の回動制御角度が隣接監視エリアの監視カメラへ撮像担当の引き継ぎを行うべき回動角度範囲内になった場合に、通信ネットワークを介して隣接監視エリアの監視カメラへ自機の撮像光軸の回動制御角度情報を伴った引き継ぎ指示を行う。そして、隣接監視エリアの監視カメラは、引き継ぎ指示と共に受信した回動制御角度情報に基づいて引き継ぎ時の自機の撮像光軸の回動角度を求め、その回動角度へ引き継ぎのための迎え駆動制御を行う。尚、本発明における「回動角度」は、パン方向とチルト方向について、それぞれの基準方向に対してなす角度として与えられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、複数の監視エリアに対して1台ずつ配備した監視カメラにより、各監視エリア内では個々の被写体追尾機能によって追尾を行い、被写体が隣接監視エリアへ移動する際にはその移動先の監視エリアの監視カメラに撮像担当の引き継ぎを行う方式の監視システム及び監視方法において、引き継ぎ元の監視カメラが通信ネットワークを介して簡単な指示と自機の撮像光軸の回動角度情報を引き継ぎ先の監視カメラへ伝送し、引き継ぎ先の監視カメラで簡単な演算による回動角度制御を行うだけで、撮像担当の円滑且つ正確な引き継ぎを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の監視システム及び監視方法の実施形態を図1から図9に基づいて詳細に説明する。先ず、図1は監視システムの構成図であり、上記ドーム型の各監視カメラ1a,1b,1cがインターネット25を介して相互に接続されていると共に、監視端末30とも接続されている。ここで、各監視カメラ1a,1b,1cは、光学系と撮像素子とからなる撮像部11と、撮像部11をパン方向とチルト方向へそれぞれ回動自在に支持している雲台12と、雲台12の基準方向からのパン方向角度を検出するセンサ13と、雲台12の水平方向からのチルト方向角度を検出するセンサ14と、雲台12をパン方向に回動させるモータ15と、雲台12をチルト方向に回動させるモータ16と、撮像部11から得られる撮像信号を処理する信号処理部17と、処理後の信号をデジタル信号に変換するA/D変換器18と、デジタル化された撮像信号をJPEG方式での符号化データに圧縮する符号化圧縮部19と、インターネット25を介して他の監視カメラ1a,1b,1c及び監視端末30とのパケット通信を行うと共に圧縮した撮像データをパケットに組み立てて監視端末30へ伝送するネットワークI/F20と、監視カメラ1a,1b,1cのシステム全体を制御する制御部21と、制御部21が実行する制御プログラム及や固定データを格納すると共にワークエリアとしても利用されるメモリ22とからなる。
【0012】
そして、ドーム型の各監視カメラ1a,1b,1cは、図2に示すような態様で、ある部屋の天井41に適当な距離を隔てて取り付けられており、それぞれの監視カメラ1a,1b,1cが床状に想定される監視エリア42a,42b,42cをカバーするようになっている。従って、同図において、侵入者43が入り口44から机45の位置まで直線的に移動した場合には、監視エリア42a,42cを通過することになり、監視カメラ1aで追尾しながら撮像がなされた後、各監視エリア42a,42cの重複領域で監視カメラ1aから監視カメラ1cへ撮像担当の引き継ぎがなされ、その引き継ぎの後に監視カメラ1cでの追尾・撮像が行われる。
【0013】
各監視エリア42a,42b,42c内で侵入者43が移動している状態での各監視カメラ1a,1b,1cによる追尾制御は画像の動き検出によって実行される。即ち、図3の(A),(B)に示すように撮像画像を例えば15(縦)×20(横)のブロックに分割して動きブロックが有るか否かを判別し、動きブロックが有る場合には雲台12のモータ15,16を駆動して動きブロック群の中心を画面の中心に位置させるように撮像部11を回動制御する。
【0014】
具体的な追尾制御手順は図4のフローチャートに示される。但し、ここでは監視カメラ1aについて説明するが、他の監視カメラ1b,1cについても同様である。先ず、制御部21はセンサ13,14の検出信号から撮像部11のパン方向及びチルト方向の回動角度を検出し、前回の動き検出時の回動角度と比較して回動が有ったか否かを確認する(S1,S2)。そして、回動が有った場合には、その角度が所定角度以上であるか否かを確認する(S2,S3)。ここでは、回動角度の大きさについての閾値は前記分割ブロックの1個分とされ、撮像部11の画角は、縦:30°、横:45°としてチルト方向に2°(=30°/15)、パン方向に2.25°(=45°/20)とされる。
【0015】
前記回動角度が閾値角度(チルト方向:2°,パン方向:2.25°)を超えていない場合、即ち、比較的小さい回動角度で追尾制御がなされていた場合には、各分割ブロックに係る動き検出へ移行する(S3,S4)。ここでは、図4と共に図3を参照して説明することとし、図3の(A)は前画像を、(B)は今回の画像を、(C)は前画像の要部拡大図を示す。この動き検出手順では、今回の画像中から先ず1つの対象ブロックP(i,j)[i=1〜15,j=1〜20]を選択し、前回の手順でメモリ22に格納させてある前画像における同一位置のブロックP'(i,j)と当該対象ブロックP(i,j)との差分の絶対値:Bd(=|P'(i,j)−P(i,j)|)を算出する(S4〜S5)。更に、その値:Bdが所定閾値:K以上であれば、前画像の同一位置のブロックP'(i,j)とそれに隣接した各ブロック[P'(i-1,j+1),P'(i-1,j),P'(i-1,j-1),P'(i,j-1),P'(i+1,j-1),P'(i+1,j),P'(i+1,j+1),P'(i,j+1)]との差分の絶対値の最大値:Dmaxを算出し、前記差分の絶対値:Bdと比較する(S6〜S8)。そして、Bd≧Dmaxであった場合には対象ブロックP(i,j)に“動き有り”と判定し、メモリ22に設けられているブロックP(i,j)の対応フラグをONに設定する(S8,S9)。一方、Bd<K又はBd<Dmaxであった場合には対象ブロックP(i,j)に“動き無し”と判定し、ブロックP(i,j)の対応フラグをOFFに設定する(S6,S8→S10)。以降、対象ブロックP(i,j)を[i=1〜15,j=1〜20]の条件で順次選択して、計300個のブロックP(i,j)について前記ステップS4〜S10を実行する(S11→S4〜S11)。
【0016】
ところで、前記ステップS2において撮像部11の回動が無かった場合にも各分割ブロックに係る動き検出を行うが、この場合には、前記動き検出手順におけるステップS4〜S6と同様の手順だけを実行し、Bdが所定閾値:K以上であるか否かの結果に基づいて対象ブロックP(i,j)の“動き有り”/“動き無し”を判定して対応フラグのON/OFFを設定する(S21〜S25)。前記と同様に全ブロック300個についてそれぞれ動き検出とフラグ設定を実行する(S26→S21〜S26)。尚、前記ステップS3で撮像部11の回動が有った場合において、その回動角度が閾値角度(チルト方向:2°,パン方向:2.25°)以上であったときには回動速度が大きすぎて動き検出が不能であると判定し、全てのブロックP(i,j)について「動きブロック無し」とみなして次の回動角度の検出を待つ(S3→S1)。
【0017】
前記のステップS4〜S11又はステップS21〜S26により全てのブロックP(i,j)に係るメモリ22の対応フラグがON/OFFに設定される。そこで、制御部21は、対応フラグにONのものが存在しているか否かを確認し、存在している場合には“動き有り”とされたブロック群の中心の座標(Xm,Ym)を算出する(S31,S32)。そして、その座標(Xm,Ym)と画面の中心座標(Xc,Yc)とのずれ量:ΔX(=Xm−Xc),ΔY(=Ym−Yc)を求めて撮像部11のパン方向及びチルト方向の制御量と制御速度を算出する(S33)。ここで、撮像部11の回動制御速度:Vは、図5に示すように、ずれ量:ΔL=√(ΔX2+ΔY2)に比例する設定値とされるが、最大値:Vmaxが定められておりそれ以上の速度にはならない。尚、この回動制御速度:Vはパン方向及びチルト方向について別々に求めてもよい。
【0018】
以上のようにして制御量と制御速度が求まると、制御部21は雲台12のモータ15,16に対して制御値に対応した駆動電流を通電し、動きブロック群の中心を画面の中心に位置させるように撮像部11を回動させる(S34)。また、撮像部11が回動制御された後の画像データはメモリ22の前回の画像データを上書きして書き込まれる。そして、図4に示す追尾制御手順は所定の周期(例えば、150msec毎)に繰り返して実行され、監視カメラ1aが監視エリア42a内の侵入者43を追尾しながら撮像する。尚、監視エリア42b,42cの撮像を担当している監視カメラ1b,1cも同様の機能を有していることは上述したとおりである。
【0019】
ところで、図2における各監視エリア42a,42cの重複領域では監視カメラ1aから監視カメラ1cへ撮像担当の引き継ぎが行われるが、図6はその引き継ぎの際の各監視カメラ1a,1cと監視端末30の通信シーケンスを示したものである。先ず、監視カメラ1aは図4で示した追尾制御手順によって侵入者(被写体)43の撮像データをインターネット25を介して監視端末30へ伝送し、監視端末30ではその撮像データを監視画像としてモニタに表示させると共にハードディスク装置等に記録している(S51,S52)。
【0020】
そして、侵入者43が机45の方向へ移動して監視エリア42a,42cの重複領域に入ると、監視カメラ1aでは、制御部21がセンサ13,14の検出信号によって追尾中の撮像部11の撮像光軸がその重複領域を撮像する回動角度状態にあること(引き継ぎ条件内となったこと)を確認し、引き継ぎ先の監視カメラ1cを決定する(S53,S54)。また、その決定に基づいて監視カメラ1cと監視端末30のIPアドレスをセットし、ネットワークI/F20からインターネット25を介してそれぞれに引き継ぎ指示(撮像部11の撮像光軸の回動角度情報も含む)と引き継ぎ通知を送信する(S55〜S57)。尚、各監視カメラ1a,1b,1cと監視端末30には図9に示すようなIPアドレステーブルが予め登録されており、必要に応じて相手方のIPアドレスを読み出してインターネット25を介した通信が行えるようになっている。
【0021】
ここで、撮像部11の撮像光軸の角度が引き継ぎ範囲になったかどうかは、制御部21がメモリ22に格納させてある引き継ぎ領域テーブルを参照して判定する。即ち、監視カメラ1aのメモリ22には、撮像部11が自己の監視エリア42aと他の監視カメラ1b,1cの監視エリア42b,42cとの重複領域を撮像する場合の撮像光軸の回動角度範囲を引き継ぎ領域テーブルとして格納されており、制御部21はセンサ13,14の検出信号から得られる撮像光軸のチルト方向角度:θtとパン方向角度:θpとが引き継ぎ領域テーブルの回動角度範囲になるか否かを常時監視して判定を行う。例えば、監視エリア42cとの関係での引き継ぎ領域テーブルは図7に示すようなデータ構成となり、θtとθpがこの回動角度範囲になれば直ちに引き継ぎ先が監視カメラ1cであると決定する。
【0022】
引き継ぎ先となった監視カメラ1cは、引き継ぎ指示を確認すると共に監視カメラ1aの撮像部11の撮像光軸の回動角度情報を受信するが、監視カメラ1cの制御部21はネットワークI/F20から得られた前記回動角度情報をメモリ22にセーブし、自機の撮像部11の撮像光軸の引き継ぎ角度を算出する(S58,S59)。具体的には、受信した回動角度情報で示されるチルト方向角度がθtaで、パン方向角度がθpaであった場合に、図8に示すように、各監視カメラ1a,1cにおける撮像部11の角度を計測する上での基準方向と床との交点をPoとし、監視カメラ1a側から見て前記角度θta,θpaで示される方向と床との交点をPmとすると、Pmは監視カメラ1c側から見てチルト方向角度:θtc、パン方向角度:θpcとして与えられ、それらの角度θtc,θpcは受信した角度情報:θta,θpaから求めることができる。
【0023】
このようにして監視カメラ1cで引き継ぎ角度θtc,θpcが求まると、監視カメラ1cの制御部21はそれらの角度θtc,θpcに基づいてモータ15,16の制御情報を作成し、前記Pmをターゲットとする引き継ぎ角度へ撮像光軸が設定されるように撮像部11を駆動制御する(S60)。そして、監視カメラ1cの制御部21は監視端末30のIPアドレスをネットワークI/F20にセットし、引き継ぎ準備完了通知をインターネット25を介して監視端末30へ送信する(S61,S63)。一方、監視端末30側では監視カメラ1aから引き継ぎ通知を受信した段階(S57)で引き継ぎ先が監視カメラ1cであることを確認してそのIPアドレスをセットしており(S62)、前記引き継ぎ準備完了通知を受信することにより、インターネット25を介して監視カメラ1cへ画像伝送要求を送信する(S64)。
【0024】
この段階で、監視カメラ1cは既に侵入者43の撮像担当に係る引き継ぎを完了させて追尾・撮像状態にある(S64)。従って、監視カメラ1cは、監視端末30から画像伝送要求を受信すると直ちにその時点での監視画像データを監視端末30へ送信し、監視端末30はその監視画像データを監視画像としてモニタに表示させると共にハードディスク装置等に記録する(S65,S66)。即ち、図2のように、侵入者43が監視エリア42aから監視エリア42cへ移動した場合に、撮像の担当が監視カメラ1aから監視カメラ1cへ引き継がれる。尚、監視エリア42aから監視エリア42cへの移動に限らず、侵入者43が各監視エリア42a,42b,42c間を如何なる方向へ移動しても前記と同様の手順で撮像担当の引き継ぎがなされることは当然である。また、この実施形態では各監視カメラ1a,1b,1cと監視端末30とがインターネット25を介して接続されている構成としているが、LAN(Local Area Network)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、複数の監視エリアにそれぞれ被写体追尾機能を備えた監視カメラを設置しておき、各監視エリアの監視カメラが被写体の撮像担当を引き継ぐ方式の監視システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る監視システムの構成図(監視カメラはブロック図)である。
【図2】監視カメラの設置位置と監視エリア等を示すと共に侵入者の撮像状態を表した説明図である。
【図3】(A),(B)はそれぞれブロック分割線を含んで前画像と今回の画像を示す図であり、(C)は前画像の要部拡大図である。
【図4】監視カメラにおける追尾制御手順を示すフローチャートである。
【図5】“動き有り”とされたブロック群の中心座標と画面の中心座標とのずれ量と撮像部の回動制御速度との関係を示すグラフである。
【図6】各監視カメラと監視端末との間での通信シーケンス図である。
【図7】引き継ぎ領域テーブルのデータ構成を示す図である。
【図8】監視カメラ相互間で撮像担当の引き継ぎを行う際における各撮像部の撮像光軸のチルト方向角度及びパン方向角度の関係を示す図である。
【図9】各監視カメラと監視端末のIPアドレスの関係を示すテーブルである。
【図10】複数のカメラが被写体をほぼ同一の方向から撮像しながら追尾してゆく方式の概略図である。
【図11】天井に取り付けた複数のドーム型カメラで被写体を撮像しながら追尾してゆく方式の概略図である。
【符号の説明】
【0027】
1a,1b,1c…監視カメラ、11…撮像部、12…雲台、13,14…センサ、15,16…モータ、17…信号処理部、18…A/D変換器、19…符号化圧縮部、20…ネットワークI/F、21…制御部、22…メモリ、25…インターネット、30…監視端末、41,60…天井、42a,42b,42c…監視エリア、43…侵入者(被写体)、44…入り口、45…机、51a,51b,61a,61b…カメラ、52,62…被写体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の監視エリアに被写体追尾機能を備えた監視カメラがそれぞれ1台ずつ設置されると共に、前記各監視カメラと監視端末とが通信ネットワークに接続されており、被写体が隣接監視エリア間を移動する際にそれら各監視エリアに設置された前記各監視カメラ相互間で前記被写体の撮像担当の引き継ぎを行い、撮像担当中の前記監視カメラから前記通信ネットワークを介して伝送される監視画像データを前記監視端末で記録及び/又は表示する監視システムにおいて、
前記各監視カメラが、
前記撮像担当を引き継がせる際の自機の撮像光軸の回動角度範囲を隣接監視エリア毎に記憶している記憶手段と、
自機の撮像光軸の回動角度が前記記憶手段の回動角度範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって自機の撮像光軸の回動角度が前記記憶手段の回動角度範囲内にあると判断された場合に、前記通信ネットワークを介してその回動角度範囲に対応する隣接監視エリアの監視カメラへ自機の撮像光軸の回動角度情報を含む引き継ぎ指示信号を送信する指示手段と、
前記通信ネットワークを介して隣接監視エリアの監視カメラから引き継ぎ指示信号を受信した場合に、その引き継ぎ指示信号に含まれている回動角度情報に基づいて撮像担当を引き継ぐ際の自機の撮像光軸の回動角度を求める演算手段と、
前記演算手段が求めた回動角度に自機の撮像光軸を駆動制御する駆動制御手段と
を具備したことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
複数の監視エリアに被写体追尾機能を備えた監視カメラがそれぞれ1台ずつ設置されると共に、前記各監視カメラと監視端末とが通信ネットワークに接続されており、被写体が隣接監視エリア間を移動する際にそれら各監視エリアに設置された前記各監視カメラ相互間で前記被写体の撮像担当の引き継ぎを行い、撮像担当中の前記監視カメラから前記通信ネットワークを介して伝送される監視画像データを前記監視端末で記録及び/又は表示する監視方法において、
前記監視カメラは、
前記撮像担当を引き継がせる際の自機の撮像光軸の回動角度範囲を隣接監視エリア毎に記憶しており、
前記撮像担当の引き継ぎ元になる場合には、自機の撮像光軸の回動角度が前記回動角度範囲内にあるか否かを判定する第1のステップと、前記第1のステップで自機の撮像光軸の回動角度が前記回動角度範囲内にあると判断された場合に、前記通信ネットワークを介してその回動角度範囲に対応する隣接監視エリアの監視カメラへ自機の撮像光軸の回動角度情報を含む引き継ぎ指示信号を送信する第2のステップとを実行し、
前記撮像担当の引き継ぎ先になる場合には、前記通信ネットワークを介して隣接監視エリアの監視カメラから引き継ぎ指示信号を受信したときに、その引き継ぎ指示信号に含まれている回動角度情報に基づいて撮像担当を引き継ぐ際の自機の撮像光軸の回動角度を求める第3のステップと、前記第3のステップで求められた回動角度に自機の撮像光軸を駆動制御する第4のステップとを実行する
ことを特徴とする監視方法。
【請求項1】
複数の監視エリアに被写体追尾機能を備えた監視カメラがそれぞれ1台ずつ設置されると共に、前記各監視カメラと監視端末とが通信ネットワークに接続されており、被写体が隣接監視エリア間を移動する際にそれら各監視エリアに設置された前記各監視カメラ相互間で前記被写体の撮像担当の引き継ぎを行い、撮像担当中の前記監視カメラから前記通信ネットワークを介して伝送される監視画像データを前記監視端末で記録及び/又は表示する監視システムにおいて、
前記各監視カメラが、
前記撮像担当を引き継がせる際の自機の撮像光軸の回動角度範囲を隣接監視エリア毎に記憶している記憶手段と、
自機の撮像光軸の回動角度が前記記憶手段の回動角度範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって自機の撮像光軸の回動角度が前記記憶手段の回動角度範囲内にあると判断された場合に、前記通信ネットワークを介してその回動角度範囲に対応する隣接監視エリアの監視カメラへ自機の撮像光軸の回動角度情報を含む引き継ぎ指示信号を送信する指示手段と、
前記通信ネットワークを介して隣接監視エリアの監視カメラから引き継ぎ指示信号を受信した場合に、その引き継ぎ指示信号に含まれている回動角度情報に基づいて撮像担当を引き継ぐ際の自機の撮像光軸の回動角度を求める演算手段と、
前記演算手段が求めた回動角度に自機の撮像光軸を駆動制御する駆動制御手段と
を具備したことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
複数の監視エリアに被写体追尾機能を備えた監視カメラがそれぞれ1台ずつ設置されると共に、前記各監視カメラと監視端末とが通信ネットワークに接続されており、被写体が隣接監視エリア間を移動する際にそれら各監視エリアに設置された前記各監視カメラ相互間で前記被写体の撮像担当の引き継ぎを行い、撮像担当中の前記監視カメラから前記通信ネットワークを介して伝送される監視画像データを前記監視端末で記録及び/又は表示する監視方法において、
前記監視カメラは、
前記撮像担当を引き継がせる際の自機の撮像光軸の回動角度範囲を隣接監視エリア毎に記憶しており、
前記撮像担当の引き継ぎ元になる場合には、自機の撮像光軸の回動角度が前記回動角度範囲内にあるか否かを判定する第1のステップと、前記第1のステップで自機の撮像光軸の回動角度が前記回動角度範囲内にあると判断された場合に、前記通信ネットワークを介してその回動角度範囲に対応する隣接監視エリアの監視カメラへ自機の撮像光軸の回動角度情報を含む引き継ぎ指示信号を送信する第2のステップとを実行し、
前記撮像担当の引き継ぎ先になる場合には、前記通信ネットワークを介して隣接監視エリアの監視カメラから引き継ぎ指示信号を受信したときに、その引き継ぎ指示信号に含まれている回動角度情報に基づいて撮像担当を引き継ぐ際の自機の撮像光軸の回動角度を求める第3のステップと、前記第3のステップで求められた回動角度に自機の撮像光軸を駆動制御する第4のステップとを実行する
ことを特徴とする監視方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−310901(P2006−310901A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127289(P2005−127289)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]