説明

監視制御システム

【課題】信頼性の低下を招くことなく、運用コストを低減することが可能な監視制御システムを提供する。
【解決手段】第1サーバ群を備えた第1監視制御局10と、前記第1サーバ群と同等構成の第2サーバ群を備え且つ前記第1監視制御局10とネットワークを介して接続された第2監視制御局20と、を備えた監視制御システムにおいて、前記第1監視制御局10は、空港の運用開始時刻及び運用終了時刻を規定した運用時間スケジュールを管理するスケジュール管理部と、前記スケジュール管理部により運用開始時刻であると判断された場合に前記第2監視制御局20を起動し、前記スケジュール管理部により運用終了時刻であると判断された場合に前記第2監視制御局20を停止する起動・停止処理部と、を備えたことを特徴とする監視制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、監視制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空港内に設置された各種監視制御対象設備、例えば、灯火設備、受変電設備、発電設備、無停電電源設備、空調設備等を監視制御する監視制御システムが導入されている。このような監視制御システムについては、障害対策として、同じ構成の装置を予め2系統用意しておき、冗長化されることが望ましい。
【0003】
監視制御システムの冗長化方式としては、ホットスタンバイ方式及びコールドスタンバイ方式が知られている。ホットスタンバイ方式は、一方の系(稼動系)を作動させ、他方の系(待機系)は稼動系と同じ動作を行いながら待機状態としておき、稼動系に障害が発生すると即座に待機系に処理を引き継ぐ方式である。コールドスタンバイ方式は、一方の系(稼動系)を作動させ、他方の系(待機系)は電源を停止しておき、稼動系に障害が発生してから、待機系を起動して処理を引き継ぐ方式である。
【0004】
ホットスタンバイ方式の場合、稼動系に加えて待機系の電力を常に消費するために、これらの稼動系及び待機系がそれぞれ複数のサーバ群で構成される大規模システムになる程、消費電力が増大し、運用コストの増大を招くといった課題がある。コールドスタンバイ方式の場合、稼動系に障害が発生した場合に、稼動系で蓄積したデータを速やかに待機系に引き継ぐことができず、待機系の起動に際して長い起動時間を要するため、監視制御機能の停止時間が長く、信頼性の低下を招くといった課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−60808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態の目的は、信頼性の低下を招くことなく、運用コストを低減することが可能な監視制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態によれば、
第1サーバ群を備えた第1監視制御局と、前記第1サーバ群と同等構成の第2サーバ群を備え且つ前記第1監視制御局とネットワークを介して接続された第2監視制御局と、を備えた監視制御システムにおいて、前記第1監視制御局は、空港の運用開始時刻及び運用終了時刻を規定した運用時間スケジュールを管理するスケジュール管理部と、前記スケジュール管理部により運用開始時刻であると判断された場合に前記第2監視制御局を起動し、前記スケジュール管理部により運用終了時刻であると判断された場合に前記第2監視制御局を停止する起動・停止処理部と、を備えたことを特徴とする監視制御システムが提供される。
【0008】
本実施形態によれば、
第1サーバ群を備えた第1監視制御局と、前記第1サーバ群と同等構成の第2サーバ群を備え且つ前記第1監視制御局とネットワークを介して接続された第2監視制御局と、を備えた監視制御システムにおいて、前記第1監視制御局は、監視制御システムの状態を監視するのに必要な監視信号を収集するシステム状態監視部と、前記システム状態監視部によって収集された監視信号に基づいて前記第1監視制御局のダウンの予兆の有無を判断するダウン予兆判断部と、運用時間内に前記第2監視制御局を起動し、運用時間外に前記第2監視制御局を停止するとともに、運用時間外において、前記ダウン予兆判断部によりダウンの予兆があると判断されたのに基づいて停止中の前記第2監視制御局を起動する起動・停止処理部と、を備えたことを特徴とする監視制御システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本実施形態における監視制御システムの構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した代表処理サーバの処理部の構成を概略的に示す図である。
【図3】図3は、本実施形態における監視制御システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図4は、監視制御システムの第2構成例において、第1監視制御局を構成する代表処理サーバの処理部の構成を概略的に示す図である。
【図5】図5は、監視制御システムの第2構成例における動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本実施形態における監視制御システムの第1構成例を概略的に示す図である。
【0012】
すなわち、本監視制御システムは、空港内に設置された灯火設備、受変電設備、発電設備、無停電電源設備、空調設備等の各種監視制御対象設備Xを監視制御するものである。このような監視制御システムは、第1監視制御局10、及び、第2監視制御局20を備えている。これらの第1監視制御局10及び第2監視制御局20は、ネットワークを介して接続されている。また、これらの第1監視制御局10及び第2監視制御局20には、ネットワークを介して、監視制御子局30…、端末装置40…などが接続されている。
【0013】
監視制御子局30は、監視制御対象設備Xとの間で監視制御信号を授受する。このような監視制御子局30は、監視制御対象設備Xの個数に応じて1個以上設置されている。監視制御子局30と監視制御対象設備Xとの間での監視制御信号の授受には、例えば、監視制御子局30が監視制御対象設備Xにおける電流、電圧、温度などの各種計測データを受信することや、監視制御子局30が監視制御対象設備Xにおける故障などの状態変化を検出することなどが含まれる。
【0014】
例えば、監視制御対象設備Xの状態変化の検出は、以下のようにして行われる。監視制御対象設備Xは、監視制御項目に応じた個数の接点を有している。これらの接点のそれぞれは、監視制御子局30の入力基板に電気的に接続されている。監視制御対象設備Xにおいて、故障などの状態変化が生じた場合には、対応する接点が閉じ、電気的な閉回路が形成される。この例では、閉回路を流れる電気が上記の監視制御信号に相当する。監視制御子局30では、閉回路に電気が流れた際に、監視制御対象設備Xにおいて状態変化が発生した監視制御項目が判断される。
【0015】
また、この監視制御子局30は、第1監視制御局10との間で監視制御信号を授受する。第1監視制御局10と監視制御子局30との間での監視制御信号の授受には、例えば、第1監視制御局10が監視制御子局30から監視制御対象設備Xの各種計測データや監視制御対象設備Xの状態変化の履歴を受信することなどが含まれる。なお、監視制御子局30は、第1監視制御局10及び第2監視制御局20との双方の間で監視制御信号を授受しても良い。第1監視制御局10に障害が発生した場合等には、監視制御子局30は、第2監視制御局20との間で監視制御信号を授受する。
【0016】
端末装置40は、監視員に情報提供を行ったり、監視員による操作入力を受け付けたりするものである。この端末装置40は、第1監視制御局10との間で各種情報を授受する。第1監視制御局10と端末装置40との間での情報の授受には、例えば、端末装置40が第1監視制御局10から監視制御対象設備Xの各種計測データや監視制御対象設備Xの状態変化の履歴を受信すること、第1監視制御局10が端末装置40から入力された情報を受信することなどが含まれる。なお、端末装置40は、第1監視制御局10及び第2監視制御局20との双方の間で監視制御信号を授受しても良い。第1監視制御局10に障害が発生した場合等には、端末装置40は、第2監視制御局20との間で各種情報を授受する。
【0017】
このような端末装置40は、1個以上設置されている。端末装置40は、処理部41、記録部42、入力部43、表示部44、通信部45などを備えて構成されている。処理部41は、各種演算処理を行うものである。記録部42は、各種データを蓄積するものである。入力部43は、監視員による操作入力、具体的には、後述する空港の運用開始時刻及び運用終了時刻を規定する運用時間スケジュール(基本運用時間スケジュール及び運用時間延長スケジュールを含む)の入力、緊急便の離着陸に対応するための緊急便対応モードの設定操作及び解除操作、第1監視制御局10から第2監視制御局20へのデータの等値化処理を行う等値化スケジュールの入力、後述する第2構成例においてダウンの予兆の有無を判断するのに必要な閾値の設定などを受け付ける。表示部44は、入力部43を介して入力された情報、第1監視制御局10や第2監視制御局20から受信した情報(監視制御対象設備Xの計測データや状態変化の履歴などを含む)などを表示する。通信部45は、ネットワーク経由で第1監視制御局10や第2監視制御局20などと情報を授受する。
【0018】
第1監視制御局10及び第2監視制御局20は、監視制御子局30との間で授受される監視制御信号を処理・蓄積し各種演算処理を行う。また、これらの第1監視制御局10及び第2監視制御局20は、端末装置40との間で授受される各種情報を処理・蓄積し各種演算処理を行う。
【0019】
第1監視制御局10は、第1サーバ群を備えている。この第1サーバ群は、各種処理を行うための複数のサーバ群、すなわち、第1処理サーバ10−1、…第n処理サーバ10−nと、それらを統括する代表処理サーバ100とで構成されている(但し、nは正の整数である)。これらの第1処理サーバ10−1乃至第n処理サーバ10−nは、例えば、アプリケーションサーバ、データベースサーバ、WEBサーバなどである。
第2監視制御局20は、第1サーバ群と同等構成の第2サーバ群(第1処理サーバ20−1、…第n処理サーバ20−n、及び、代表処理サーバ200)を備えている。
【0020】
このような構成の第1監視制御局10及び第2監視制御局20は、監視制御子局30に対して、「親局」と称される場合がある。本実施形態における監視制御システムは、これらの2つの親局により冗長化されている。なお、ここに示す例に限らず、親局は、3つ以上設置されても良い。
【0021】
第1監視制御局10の代表処理サーバ100と、第2監視制御局20の代表処理サーバ200とは、同一構成であり、同一機能を有している。ここでは、代表処理サーバ100の構成について説明し、代表処理サーバ200の説明は省略する。代表処理サーバ100は、処理部1、記録部2、通信部3などを備えて構成されている。処理部1は、各種演算処理を行うものであり、その詳細については後述する。記録部2は、各種データを蓄積するものである。通信部3は、ネットワーク経由で監視制御子局30や端末装置40などと情報を授受する。この代表処理サーバ100は、第1処理サーバ10−1乃至第n処理サーバ10−nとの間でも情報の授受を行う。
【0022】
第1監視制御局10の第1処理サーバ10−1乃至第n処理サーバ10−nと、第2監視制御局20の第1処理サーバ20−1乃至第n処理サーバ20−nとは、同一構成である。ここでは、第1処理サーバ10−1の構成について説明し、他の処理サーバの説明は省略する。第1処理サーバ10−1は、処理部11、記録部12、通信部13などを備えて構成されている。処理部11は、各種演算処理を行うものである。記録部12は、各種データを蓄積するものである。通信部13は、ネットワーク経由で監視制御子局30や端末装置40などと情報を授受する。
【0023】
図2は、図1に示した代表処理サーバの処理部の構成を概略的に示す図である。なお、ここでは、代表処理サーバ100の処理部1の構成について説明するが、代表処理サーバ200の処理部1についても同一構成であり、その説明を省略する。
【0024】
処理部1は、スケジュール管理部1Aと、緊急便対応管理部1Bと、起動・停止処理部1Cと、等値化処理部1Dとによって構成されている。これらのスケジュール管理部1A、緊急便対応管理部1B、起動・停止処理部1C、及び、等値化処理部1Dの間では、各種情報の授受が行われる。
【0025】
スケジュール管理部1Aは、空港の運用開始時刻及び運用終了時刻を規定した運用時間スケジュールを管理する。より具体的には、スケジュール管理部1Aは、端末装置40から送信された基本運用時間スケジュール及び運用時間延長スケジュールに基づいて、運用時間スケジュールを管理する。このようなスケジュール管理部1Aは、例えば、内部時計を備えており、現在時刻が運用開始時刻になったか否か、あるいは、現在時刻が運用終了時刻になったか否かなどを判断する。
【0026】
基本運用時間スケジュールは、通常時に空港を運用状態とする運用時間、つまり、運用開始時刻及び運用終了時刻を規定したものである。このような基本運用時間スケジュールは、端末装置40の入力部43などを介して監視員によって入力され、例えば、記録部2に保存されている。
【0027】
運用時間延長スケジュールは、遅延便発生などにより、基本運用時間スケジュールの運用終了時刻が予定よりも延長される場合に、延長後の運用終了時刻を規定したものである。このような運用時間延長スケジュールは、端末装置40の入力部43などを介して監視員によって入力され、例えば、記録部2に保存されている(場合によっては、運用開始時刻を前倒しする場合もあり、その場合には、運用時間延長スケジュールは、前倒し後の運用開始時刻を規定したものとなる)。
【0028】
緊急便対応管理部1Bは、空港の運用時間外に緊急便の離着陸に対応するための緊急便対応モードの設定及び解除を管理する。より具体的には、緊急便対応管理部1Bは、空港が非運用状態である場合に、端末装置40から送信された緊急便対応モードの設定指示を受け付け、緊急便対応モードに設定される。また、この緊急便対応管理部1Bは、緊急便対応モードに設定された状態において、端末装置40から送信された緊急便対応モードの解除指示を受け付け、緊急便対応モードから解除される。
【0029】
起動・停止処理部1Cは、スケジュール管理部1Aにより現在時刻が運用開始時刻(基本運用時間スケジュールで規定された時刻、または、運用時間延長スケジュールで規定された前倒し後の時刻)であると判断された場合に第2監視制御局20を起動し、また、スケジュール管理部1Aにより現在時刻が運用終了時刻(基本運用時間スケジュールで規定された時刻、または、運用時間延長スケジュールで規定された延長後の時刻)であると判断された場合に第2監視制御局20を停止する。
【0030】
また、この起動・停止処理部1Cは、緊急便対応管理部1Bにより緊急便対応モードに設定された場合に第2監視制御局20を起動し、また、緊急便対応管理部1Bにより緊急便対応モードが解除された場合に第2監視制御局20を停止する。
【0031】
等値化処理部1Dは、第1監視制御局10から第2監視制御局20へのデータの等値化処理を運用時間内に少なくとも1回行う。より具体的には、等値化処理部1Dは、例えば、内部時計を備えており、端末装置40から送信された等値化スケジュールに基づいて、現在時刻が等値化時刻になった場合に、等値化処理を行う。この等値化処理は、第1監視制御局10で蓄積されたファイリングデータ(例えば、監視制御対象設備Xの故障日時、稼動日時などの動作履歴や、監視制御対象設備Xの各種計測データなど)や、各種設定値データ(例えば、空調設備の設定温度などの監視制御対象設備Xを監視制御するための各種パラメータなど)を第2監視制御局20にコピー(等値化)する処理である。
【0032】
本実施形態では、第1監視制御局10は、システムを立ち上げてからほぼ常時稼動する「稼動系」に対応し、第2監視制御局20は、空港の運用状況により要求されるシステム信頼性のレベルに応じて起動・停止する「待機系」に対応する。すなわち、空港が運用状態である場合(つまり、要求されるシステムの信頼性が高レベルである場合)には、第1監視制御局10に加えて、第2監視制御局20も起動させて待機状態とし、第1監視制御局10に障害等が発生した場合に即座に第2監視制御局20にて自動的に処理が引き継がれる。つまり、運用時は、ホットスタンバイ状態となっている。一方で、空港が非運用状態である場合(つまり、要求されるシステムの信頼性が低レベルである場合)には、第1監視制御局10が稼動している一方で、第2監視制御局20は停止している。つまり、非運用時は、コールドスタンバイ状態となっている。
【0033】
以下に、本実施形態における監視制御システムの動作についてより具体的に説明する。
【0034】
図3は、本実施形態における監視制御システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【0035】
まず、第1監視制御局10において、スケジュール管理部1Aにより、現在時刻が基本運用時間スケジュール(例えば、7:30〜20:30)内の時刻であるか否かが判断される(ステップST1)。すなわち、スケジュール管理部1Aは、記録部2に保存されている空港の基本運用時間スケジュールを参照し、内部時計の現在時刻と対比する。ここでは、運用開始時刻が例えば7:30であり、運用終了時刻が例えば20:30である場合について説明する。
【0036】
スケジュール管理部1Aにより、現在時刻が基本運用時間スケジュール外の時刻であると判断された場合には(ステップST1、No)、現在時刻が運用時間延長スケジュール内の時刻であるか否かが判断される(ステップST2)。すなわち、スケジュール管理部1Aは、記録部2に運用時間延長スケジュールが保存されているか否かを判断するとともに、運用時間延長スケジュールが保存されている場合にはその運用時間延長スケジュールを参照し、内部時計の現在時刻と対比する。
【0037】
スケジュール管理部1Aにより、現在時刻が運用時間延長スケジュール外の時刻であると判断された場合(運用時間延長スケジュールが保存されていない場合も含む)には(ステップST2、No)、緊急便対応管理部1Bにより、緊急便対応モードが設定されているか否かが判断される(ステップST3)。すなわち、現在時刻が基本運用時間スケジュール外であり且つ運用時間延長スケジュール外である場合には、空港は非運用状態にある。このような状態において、緊急便対応管理部1Bは、緊急便対応モードに設定されているか否かを判断する。
【0038】
スケジュール管理部1Aにより、現在時刻が基本運用時間スケジュール内の時刻であると判断された場合(ステップST1、Yes)、あるいは、現在時刻が運用時間延長スケジュール内の時刻であると判断された場合(ステップST2、Yes)、あるいは、緊急便対応管理部1Bにより、緊急便対応モードが設定されていると判断された場合には(ステップST3、Yes)、空港が運用状態にある場合に相当し、起動・停止処理部1Cにより、第2監視制御局(待機系)20が起動中であるか否かが判断される(ステップST4)。
【0039】
起動・停止処理部1Cにより、第2監視制御局(待機系)20が起動中ではないと判断された場合には(ステップST4、No)、第2監視制御局20を起動する(ステップST5)。これにより、空港が運用状態にある場合には、第1監視制御局10に加えて第2監視制御局20が起動し、ホットスタンバイ状態となる。
【0040】
そして、第2監視制御局20を起動(ステップST5)した後、あるいは、起動・停止処理部1Cにより、第2監視制御局(待機系)20が起動中であると判断された場合には(ステップST4、Yes)、等値化処理部1Dにより、現在時刻が等値化の設定時刻であるか否かが判断される(ステップST6)。すなわち、等値化処理部1Dは、等値化スケジュールを参照し、内部時計の現在時刻と対比する。
【0041】
等値化処理部1Dにより、現在時刻が等値化の設定時刻であると判断された場合に(ステップST6、Yes)、等値化処理を行い(ステップST7)、再びステップST1に戻る。また、等値化処理部1Dにより、現在時刻が等値化の設定時刻ではないと判断された場合にも(ステップST6、No)、同様に、再びステップST1に戻る。
【0042】
一方、緊急便対応管理部1Bにより、緊急便対応モードが設定されていないあるいは緊急便対応モードが解除されたと判断された場合には(ステップST3、No)、起動・停止処理部1Cにより、第2監視制御局(待機系)20が起動中であるか否かが判断される(ステップST8)。
【0043】
起動・停止処理部1Cにより、第2監視制御局(待機系)20が起動中ではないと判断された場合には(ステップST8、No)、再びステップST1に戻る。また、起動・停止処理部1Cにより、第2監視制御局(待機系)20が起動中であると判断された場合には(ステップST8、Yes)、第2監視制御局20を停止する(ST9)。これにより、空港が非運用状態にある場合には、第1監視制御局10のみが稼動し、コールドスタンバイ状態となる。
【0044】
本実施形態によれば、基本運用時間スケジュール、運用時間延長スケジュール、及び、緊急便対応モードの設定の有無により、空港が運用状態にあるか非運用状態にあるかを判断し、運用状態にあるときには第1監視制御局(稼動系)10のみならず第2監視制御局(待機系)20を起動しておくことにより、稼動系故障時の速やかな処理引継ぎが可能となる。これにより、システムの信頼性の低下を防止することができる。また、非運用状態にあるときには、第2監視制御局20を停止しておくことにより、消費電力の低減が可能となる。これにより、システムの運用コストを低減することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、運用状態にあるときに、第1監視制御局10から第2監視制御局20に定期的にデータの等値化処理を行うことにより、待機系である第2監視制御局20に処理が引き継がれた際に、稼動系である第1監視制御局10と同等の運用が可能となる。
【0046】
次に、本実施形態における監視制御システムの第2構成例について説明する。なお、以下に説明する監視制御システムの第2構成例は、図1に示した第1構成例と基本的な構成は同一である。
【0047】
図4は、監視制御システムの第2構成例において、第1監視制御局10を構成する代表処理サーバ100の処理部1の構成を概略的に示す図である。
【0048】
処理部1は、第1構成例で説明した起動・停止処理部1C及び等値化処理部1Dに加えて、システム状態監視部1Eと、ダウン予兆判断部1Fと、を備えている。なお、ここでは図示していないが、処理部1は、さらに、第1構成例で説明したスケジュール管理部1A及び緊急便対応管理部1Bを備えていても良く、この場合には、第1構成例で説明した動作を組み合わせることが可能である。
【0049】
システム状態監視部1Eは、監視制御システムの状態、つまり、第1監視制御局10が備える第1サーバ群、第2監視制御局20が備える第2サーバ群、監視制御局30、端末装置40などの状態を監視するのに必要な監視信号を収集する。システム状態監視部1Eが収集する監視信号とは、例えば、処理サーバの処理部が備えているCPUの温度(処理部が複数のCPUを備えている場合にはそれぞれのCPUの温度)、CPUの演算スピード(CPUが複数のコアを有する場合にはそれぞれのコアの演算スピード)、処理サーバの記録部が備えている揮発性メモリへの書込の可否(記録部が複数の揮発性メモリを備えている場合にはそれぞれの揮発性メモリへの書込の可否)、揮発性メモリの使用率(記録部が複数の揮発性メモリを備えている場合にはそれぞれの揮発性メモリの使用率)、処理サーバが備えている不揮発性メモリへの書込の可否(記録部が複数の不揮発性メモリを備えている場合にはそれぞれの不揮発性メモリへの書込の可否)、不揮発性メモリの空き容量(記録部が複数の不揮発性メモリを備えている場合にはそれぞれの不揮発性メモリの空き容量)、処理サーバの通信部が備えているポートでの通信障害の有無(通信部が複数のポートを備えている場合にはそれぞれのポートでの通信障害の有無)などに関する信号が含まれる。システム状態監視部1Eでは、ほぼ常時、監視信号を収集している。
【0050】
ダウン予兆判断部1Fは、システム状態監視部1Eによって収集された監視信号に基づいて第1監視制御局10のダウン(障害発生)の予兆の有無を判断する。また、このダウン予兆判断部1Fは、システム状態監視部1Eによって収集された監視信号と、端末装置40の入力部43などにより設定された閾値とを比較して、ダウンの予兆の有無を判断する場合もある。ここでのダウンの予兆とは、第1監視制御局10が直ちにダウンする異常ではないが、いずれダウンに至る可能性が極めて高い状態に相当する。
【0051】
この第2構成例では、第1監視制御局10の第1サーバ群を構成する各処理サーバは、冗長化されている。例えば、第1処理サーバ10−1は、処理部11が複数のCPUを備え、記録部12が複数の揮発性メモリ及び複数の不揮発性メモリを備え、通信部13が複数のポートを備えており、他の処理サーバについても同様である。このため、各処理サーバにおいて、例え一つの機器(例えば、2つのCPUのうちの一方のCPU)に異常が発生したとしても、同等の機能を有する他の機器(例えば、2つのCPUのうちの他方のCPU)がバックアップするため、直ちにダウンすることはない。しかしながら、このような機器の異常が発生した状態は、いずれ第1監視制御局10のダウンに至る可能性が極めて高い状態である。
【0052】
このような第2構成例において、ダウン予兆判断部1Fは、CPUの温度が設定された閾値を超えた場合、CPUの一つのコアの演算スピードが設定された閾値よりも低下した場合、複数の揮発性メモリのうちの一つの揮発性メモリへの書込が不可となった場合、複数の揮発性メモリのうちの一つの揮発性メモリの使用率が設定された閾値を超えた場合、複数の不揮発性メモリのうちの一つの不揮発性メモリへの書込が不可となった場合、複数の不揮発性メモリのうちの一つの不揮発性メモリの空き容量が設定された閾値よりも低下した場合、複数のポートのうちの一つのポートで通信障害が発生した場合などに、第1監視制御局10のダウンの予兆が有るものと判断する。
【0053】
起動・停止処理部1Cは、上記の第1構成例と同様に、運用時間内に第2監視制御局20を起動し、運用時間外に第2監視制御局20を停止する。また、この起動・停止処理部1Cは、運用時間外において、ダウン予兆判断部1Fによりダウンの予兆があると判断されたのに基づいて、停止中の第2監視制御局20を起動する。なお、起動・停止処理部1Cは、運用時間内においては第2監視制御局20を起動しており、ダウン予兆判断部1Fによりダウンの予兆があると判断された場合には、第2監視制御局20を起動した状態を維持する。
【0054】
等値化処理部1Dは、第1監視制御局10から第2監視制御局20へのデータの等値化処理を行う。より具体的には、等値化処理部1Dは、例えば、内部時計を備えており、端末装置40から送信された等値化スケジュールに基づいて、現在時刻が等値化時刻になった場合に、等値化処理を行う。具体的な等値化処理については、上記の第1構成例と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
このような本実施形態の第2構成例においても、第1監視制御局10は、システムを立ち上げてからほぼ常時稼動する「稼動系」に対応し、第2監視制御局20は、運用時間内に起動して待機状態とし、運用時間外に停止している「待機系」に対応する。
【0056】
以下に、本実施形態における監視制御システムの動作についてより具体的に説明する。
【0057】
図5は、本実施形態における監視制御システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【0058】
まず、第1監視制御局(稼動系)10において、等値化処理部1Dは、現在時刻が等値化の設定時刻であるか否かを判断する(ステップST11)。すなわち、等値化処理部1Dは、等値化スケジュールを参照し、内部時計の現在時刻と対比する。等値化処理部1Dにより、現在時刻が等値化の設定時刻であると判断された場合に(ステップST11、Yes)、起動・停止処理部1Cは、第2監視制御局(待機系)20が停止中であるか否かを判断する(ステップST12)。
【0059】
起動・停止処理部1Cにより、第2監視制御局(待機系)20が停止中であると判断された場合には(ステップST12、Yes)、起動・停止処理部1Cは、第2監視制御局(待機系)20を起動する(ステップST13)。起動・停止処理部1Cにより第2監視制御局(待機系)20が停止中ではない(つまり、起動中である)と判断された場合(ステップST12、No)、あるいは、ステップST13において起動・停止処理部1Cにより第2監視制御局(待機系)20が起動された後に、等値化処理部1Dは、等値化処理を行う(ステップST14)。
【0060】
等値化処理部1Dにより、現在時刻が等値化の設定時刻ではないと判断された場合(ステップST11、No)、あるいは、ステップST14において等値化処理部1Dにより等値化処理が行われた後に、ダウン予兆判断部1Fは、システム状態監視部1Eによって収集された監視信号に基づいて、監視制御システムにおける異常の有無を判断する(ステップST15)。
【0061】
ダウン予兆判断部1Fにより、監視制御システムにおいて異常が発生したと判断された場合には(ステップST15、Yes)、ダウン予兆判断部1Fは、その異常が第1監視制御局(稼動系)10のダウンの予兆であるか否かを判断する(ステップST16)。ダウン予兆判断部1Fにより、ダウンの予兆であると判断された場合には(ステップST16、Yes)、起動・停止処理部1Cは、第2監視制御局(待機系)20が停止中であるか否かを判断する(ステップST17)。
【0062】
起動・停止処理部1Cにより、第2監視制御局(待機系)20が停止中であると判断された場合には(ステップST17、Yes)、起動・停止処理部1Cは、第2監視制御局(待機系)20を起動する(ステップST18)。起動・停止処理部1Cにより第2監視制御局(待機系)20が停止中ではない(つまり、起動中である)と判断された場合(ステップST17、No)、再びステップST11に戻る。これにより、第1監視制御局10に加えて第2監視制御局20が起動し、ホットスタンバイ状態となる。
【0063】
一方、ダウン予兆判断部1Fにより、監視制御システムに異常が発生したと判断されたものの第1監視制御局(稼動系)10のダウンの予兆ではないと判断された場合(例えば、処理サーバのファンの故障、監視制御子局の故障などの異常が発生した場合)には(ステップST16、No)、起動・停止処理部1Cは、第2監視制御局(待機系)20が起動中であるか否かを判断する(ステップST19)。
【0064】
起動・停止処理部1Cにより、第2監視制御局(待機系)20が起動中であると判断された場合には(ステップST19、Yes)、起動・停止処理部1Cは、第2監視制御局(待機系)20を停止する(ステップST20)。起動・停止処理部1Cにより第2監視制御局(待機系)20が起動中ではない(つまり、停止中である)と判断された場合(ステップST19、No)、再びステップST11に戻る。これにより、第1監視制御局10のみが稼動し、コールドスタンバイ状態となる。
【0065】
このような第2構成例によれば、運用時間内においては、第1監視制御局(稼動系)10のみならず第2監視制御局(待機系)20を起動しておくことにより、第1監視制御局10の障害発生時に、第1監視制御局10から第2監視制御局20へと速やかに処理を引継ぐことが可能となる。また、運用時間外においては、第1監視制御局10が起動している一方で、第2監視制御局20は停止しているが、第1監視制御局10にダウンの予兆が有ると判断した場合には第2監視制御局20を起動しておくことにより、例え第1監視制御局10に障害が発生したとしても、第1監視制御局10から第2監視制御局20へと速やかに処理を引継ぐことが可能となる。したがって、待機系の消費電力の低減が可能となるとともに、システムの信頼性を向上することが可能となる。
【0066】
また、第1監視制御局10から第2監視制御局20に定期的にデータの等値化処理を行うことにより、第2監視制御局20に処理が引き継がれた際に、第1監視制御局10と同等の運用が可能となる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、信頼性の低下を招くことなく、運用コストを低減することが可能な監視制御システムを提供することが可能となる。
【0068】
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0069】
上述した本実施形態において、第1監視制御局10及び第2監視制御局20は、同一地域に設置されても良いし、遠隔地に設置されても良い。
【0070】
また、第1監視制御局10と第2監視制御局20との間で運用時間内に等値化処理を行うタイミングや頻度については、特に問わない。等値化処理の頻度が高いほど、第1監視制御局10に障害が発生した際に第2監視制御局20に引き継がれるデータ量は多くなり(つまり、失われるデータ量が少なくなり)、第2監視制御局20において、より第1監視制御局10と同等の処理が可能となる。
【0071】
但し、第1監視制御局10と第2監視制御局20とが遠隔地に設置された場合、等値化処理の際にネットワークに多大な負荷がかかるおそれがある。このため、等値化処理を行うタイミングや頻度については、ネットワークの負荷を考慮して適宜設定されることが望ましい。
【符号の説明】
【0072】
10…第1監視制御局
100…代表処理サーバ
1…処理部
1A…スケジュール管理部
1B…緊急便対応管理部
1C…起動・停止処理部
1D…等値化処理部
1E…システム状態監視部
1F…ダウン予兆判断部
2…記録部
3…通信部
10−1〜10−n…処理サーバ
20…第2監視制御局
30…監視制御子局
40…端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1サーバ群を備えた第1監視制御局と、前記第1サーバ群と同等構成の第2サーバ群を備え且つ前記第1監視制御局とネットワークを介して接続された第2監視制御局と、を備えた監視制御システムにおいて、
前記第1監視制御局は、
空港の運用開始時刻及び運用終了時刻を規定した運用時間スケジュールを管理するスケジュール管理部と、
前記スケジュール管理部により運用開始時刻であると判断された場合に前記第2監視制御局を起動し、前記スケジュール管理部により運用終了時刻であると判断された場合に前記第2監視制御局を停止する起動・停止処理部と、
を備えたことを特徴とする監視制御システム。
【請求項2】
前記スケジュール管理部は、基本運用時間スケジュール、及び、前記基本運用時間スケジュールから延長された運用時間延長スケジュールに基づいて、前記運用時間スケジュールを管理することを特徴とする請求項1に記載の監視制御システム。
【請求項3】
前記第1監視制御局は、さらに、緊急便の離着陸に対応するための緊急便対応モードの設定及び解除を管理する緊急便対応管理部を備え、
前記起動・停止処理部は、前記緊急便対応管理部により緊急便対応モードに設定された場合に前記第2監視制御局を起動し、前記緊急便対応管理部により緊急便対応モードが解除された場合に前記第2監視制御局を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の監視制御システム。
【請求項4】
前記第1監視制御局は、さらに、前記第1監視制御局から前記第2監視制御局へのデータの等値化処理を運用時間内に少なくとも1回行う等値化処理部を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の監視制御システム。
【請求項5】
前記第1監視制御局は、さらに、監視制御システムの状態を監視するのに必要な監視信号を収集するシステム状態監視部と、前記システム状態監視部によって収集された監視信号に基づいて前記第1監視制御局のダウンの予兆の有無を判断するダウン予兆判断部と、を備え、
前記起動・停止処理部は、前記ダウン予兆判断部によりダウンの予兆があると判断されたのに基づいて、停止中の前記第2監視制御局を起動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の監視制御システム。
【請求項6】
第1サーバ群を備えた第1監視制御局と、前記第1サーバ群と同等構成の第2サーバ群を備え且つ前記第1監視制御局とネットワークを介して接続された第2監視制御局と、を備えた監視制御システムにおいて、
前記第1監視制御局は、
監視制御システムの状態を監視するのに必要な監視信号を収集するシステム状態監視部と、
前記システム状態監視部によって収集された監視信号に基づいて前記第1監視制御局のダウンの予兆の有無を判断するダウン予兆判断部と、
運用時間内に前記第2監視制御局を起動し、運用時間外に前記第2監視制御局を停止するとともに、運用時間外において、前記ダウン予兆判断部によりダウンの予兆があると判断されたのに基づいて停止中の前記第2監視制御局を起動する起動・停止処理部と、
を備えたことを特徴とする監視制御システム。
【請求項7】
さらに、前記ダウン予兆判断部によりダウンの予兆の有無を判断するのに必要な閾値の設定を受け付ける入力部を備え、
前記ダウン予兆判断部は、前記入力部により設定された閾値と前記システム状態監視部によって収集された監視信号とを比較して、ダウンの予兆の有無を判断することを特徴とする請求項5または6に記載の監視制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−79292(P2012−79292A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171171(P2011−171171)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】