相対角度検出装置、電動パワーステアリング装置および電線保持具
【課題】ハウジング外において電線に力が作用したとしても、ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ばないようにする技術を提供する。
【解決手段】内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度センサと、相対角度センサから出力される電気信号をハウジング外に配置される電子制御ユニットに伝送する電線310と、ハウジングの連通孔に嵌合されるとともに、電線310を保持するグロメット320と、ハウジングの連通孔におけるグロメット320よりも外側の部位に挿入されるとともに、ハウジングに形成された連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込むフックを有するソケット330と、を備える。
【解決手段】内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度センサと、相対角度センサから出力される電気信号をハウジング外に配置される電子制御ユニットに伝送する電線310と、ハウジングの連通孔に嵌合されるとともに、電線310を保持するグロメット320と、ハウジングの連通孔におけるグロメット320よりも外側の部位に挿入されるとともに、ハウジングに形成された連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込むフックを有するソケット330と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対角度検出装置、電動パワーステアリング装置および電線保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する装置が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の装置は、トーションバーにより同軸的に連結された第1の回転体及び第2の回転体が有する磁気回路形成部材の外周りに軸線方向へ離隔して配置され、該磁気回路形成部材が発生した磁束を集める2つの集磁環と、各集磁環が集めた磁束の密度に基づいて第1の回転体に加わったトルクを検出する検出部と、集磁環及び検出部を保持し、且つ外周部にハウジングに取着される取着部を有する保持環と、検出部に接続された導線とを備えている。そして、検出部は集磁環の凸片間に発生する磁束密度の変化に応じて検出信号が変わるように構成されており、その検出信号は導線を介してマイクロプロセッサを用いてなる制御部に与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−187589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハウジング内に収納されるセンサ(検出部)と、センサからの検出信号が与えられるとともにハウジング外に配置される装置とが電線(導線)にて接続される構成である場合、ハウジング外において電線に力が作用したとしても、ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ぶおそれがある。そして、例えば電線の端部がコネクタに連結され、コネクタが接続端子に差し込まれている場合、ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ぶと、コネクタから電線が脱落したり、コネクタが差し込まれた接続端子が折れたりしてしまうおそれがある。
【0005】
これに対して、例えば板金で形成されたプレートをハウジングの外側に配置することで、ハウジングに形成された貫通孔に挿入されたグロメットの抜け止めと、電線の支持とを行うことも考えられる。しかしながら、かかる構成において、ハウジングがアルミニウム製である場合には、プレートとハウジングとの間に電気化学的腐蝕が生じることに起因してグロメットが脱落するおそれがある。また、プレートをハウジングの外側に配置する分の組立て工数が増加してしまう。
本発明は、ハウジング外において電線に力が作用したとしてもハウジング内の電線の端部に大きな力が及ばないようにすることを簡易な構成で実現する装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に挿入されるとともに、当該ハウジングに形成された当該連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有する外側部材と、を備えることを特徴とする相対角度検出装置である。
【0007】
ここで、前記電線保持部材は、前記電線との間に塗布された接着剤による接着力にて当該電線を保持することが好適である。
また、前記外側部材の前記凸部は、前記ハウジングの前記連通孔への当該外側部材の挿入方向に対して傾斜する傾斜面を有して、当該挿入方向に対して垂直な方向に変位可能に設けられ、前記外側部材は、前記連通孔に挿入される際に、前記凸部の前記傾斜面が前記連通孔の周囲の壁に押されることで当該凸部が前記挿入方向に対して垂直な方向に変位し、当該傾斜面が前記ハウジングの前記凹部まで到達したら当該凸部は当該垂直な方向の変位が復帰して当該凹部に嵌り込むことが好適である。
【0008】
また、前記外側部材の前記凸部は、前記傾斜面の終端から前記挿入方向に垂直に内側に向かうとともに、前記ハウジングの前記凹部に当該挿入方向とは垂直に形成された凹部側垂直面と対向する凸部側垂直面を有することが好適である。
また、前記外側部材の前記凸部は、前記ハウジングの外部から操作されることにより、前記凸部側垂直面が前記凹部側垂直面と接触しなくなる位置まで変位可能に構成されていることが好適である。
【0009】
他の観点から捉えると、本発明は、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、前記センサを収納するとともに、内外を連通する連通孔と当該連通孔の表面から凹んだ凹部とが形成されたハウジングと、前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に挿入されるとともに、当該ハウジングに形成された当該連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有する外側部材と、を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0010】
また、他の観点から捉えると、本発明は、内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサからの電気信号を当該ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に挿入されるとともに、当該ハウジングに形成された当該連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有する外側部材と、を備えることを特徴とする電線保持具である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ハウジング外において電線に力が作用したとしても、ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ばないようにすることを、簡易な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る検出装置を適用した電動パワーステアリング装置の断面図である。
【図2】実施の形態に係る検出装置の斜視図である。
【図3】薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。
【図4】図3の状態で、磁界強度を変化させた場合の、磁界強度と薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
【図5】薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。
【図6】磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
【図7】(a)は、規定磁界強度以上の磁界強度で磁界の方向を検出する原理を利用するMRセンサの一例を示す図である。(b)は、(a)に示すMRセンサの構成を等価回路で示した図である。
【図8】磁石が直線運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
【図9】MRセンサの他の例を示す図である。
【図10】磁石の運動方向を検知するのに用いる出力の組み合わせの一例を示す図である。
【図11】MRセンサの配置の例を示す図である。
【図12】MRセンサの他の例を示す図である。
【図13】本実施の形態に係るハーネスコンプの外観図である。
【図14】グロメット、ソケットおよびキャップの概略構成図である。
【図15】(a)は、第2ハウジングの概略構成図である。(b)は、(a)におけるB−B断面図である。(c)は、ハーネスコンプが第2ハウジングに装着された状態を示す図である。
【図16】ハウジングの他の形態を示す図である。
【図17】他の形態に係るハーネスコンプのグロメットおよびソケットを示す図である。
【図18】(a)は、他の形態に係るハーネスコンプがハウジングに装着された状態を示す図であり、(b)は、他の形態に係るハーネスコンプが他の形態に係るハウジングに装着された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る検出装置10を適用した電動パワーステアリング装置100の断面図である。図2は、実施の形態に係る検出装置10の斜視図である。なお、図2においては、構成を分かり易くするために後述するベース50およびフラットケーブルカバー60の一部は省略して示している。
【0014】
電動パワーステアリング装置100は、同軸的に回転する第1の回転軸110と第2の回転軸120とを備えている。第1の回転軸110は、例えばステアリングホイールが連結される回転軸であり、第2の回転軸120は、トーションバー130を介して第1の回転軸110に同軸的に結合されている。そして、第2の回転軸120に形成されたピニオン121が、車輪に連結されるラック軸(不図示)のラック(不図示)と噛み合っており、第2の回転軸120の回転運動がピニオン121,ラックを介してラック軸の直線運動に変換され、車輪が操舵される。
【0015】
また、電動パワーステアリング装置100は、第1の回転軸110および第2の回転軸120を回転可能に支持するハウジング140を備えている。ハウジング140は、例えば自動車などの乗り物の本体フレーム(以下、「車体」と称する場合もある。)に固定される部材であり、第1ハウジング150、第2ハウジング160および第3ハウジング170から構成される。
第1ハウジング150は、第2の回転軸120を回転可能に支持する軸受け151を、第2の回転軸120の回転軸方向(以下、単に「軸方向」と称する場合もある。)の一方の端部側(図1においては下側)に有し、軸方向の他方の端部側(図1においては上側)が開口した部材である。
【0016】
第2ハウジング160は、軸方向の両端部が開口した部材であり、その軸方向の一方の端部側の開口部が第1ハウジング150における軸方向の他方の端部側の開口部と対向するように配置される。そして、第2ハウジング160は、例えばボルトなどにより第1ハウジング150に固定される。第2ハウジング160の側面には、内外を連通する連通孔161が形成されている。連通孔161は、後述するハーネスコンプ300のグロメット320が嵌合される略楕円柱状の内側連通孔161aと、ハーネスコンプ300のソケット330が嵌合される略楕円柱状の外側連通孔161bと、を含んで構成されている。外側連通孔161bは、内側連通孔161aに対して、楕円の短辺方向は同じであるが長辺方向には大きく形成されている。また、第2ハウジング160には、連通孔161における楕円柱の柱方向(連通孔方向)の途中に、連通孔161の外側連通孔161bを形成する面から凹んだ凹部162(図15参照)が楕円における長辺方向の両側に形成されている。凹部162は、半月柱状であり、柱方向に垂直な面である2つの垂直面162aを有する。
第3ハウジング170は、第1の回転軸110を回転可能に支持する軸受け171を、軸方向の他方の端部側(図1においては上側)に有し、軸方向の一方の端部側(図1においては下側)が開口した部材である。そして、軸方向の一方の端部側の開口部が第2ハウジング160における軸方向の他方の端部側の開口部と対向するように配置されるとともに、例えばボルト(不図示)などにより第2ハウジング160に固定される。
【0017】
また、電動パワーステアリング装置100は、例えば圧入などにより第2の回転軸120に固定されたウォームホイール180と、このウォームホイール180と噛み合うウォームギヤ191が出力軸に連結されるとともに第1ハウジング150に固定される電動モータ190とを備えている。
また、電動パワーステアリング装置100は、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力する検出装置10と、この検出装置10からの出力値に基づいて電動モータ190の駆動を制御する電子制御ユニット(ECU)200とを備えている。
【0018】
ECU200は、各種演算処理を行うCPUと、CPUにて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROMと、CPUの作業用メモリ等として用いられるRAMと、を用いて、検出装置10からの出力値を基に第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度を演算する相対角度演算部210を備えている。
検出装置10については、後で詳述する。
【0019】
以上のように構成された電動パワーステアリング装置100においては、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクが第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度として現れることに鑑み、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に基づいて操舵トルクを把握する。つまり、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度を検出装置10にて検出し、検出装置10からの出力値に基づいてECU200が操舵トルクを把握し、把握した操舵トルクに基づいて電動モータ190の駆動を制御する。そして、電動モータ190の発生トルクをウォームギヤ191、ウォームホイール180を介して第2の回転軸120に伝達する。これにより、電動モータ190の発生トルクが、ステアリングホイールに加える運転者の操舵力をアシストする。
【0020】
以下に、検出装置10について詳述する。
検出装置10は、第1の回転軸110に取り付けられる磁石20と、この磁石20の磁場(磁石20から発生される磁界)に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度センサ30と、この相対角度センサ30を実装するプリント基板40と、を備えている。また、検出装置10は、第2の回転軸120に取り付けられるとともにプリント基板40を支持するベース50と、後述するフラットケーブル70を収納する有底円筒状のフラットケーブルカバー60と、を備えている。また、検出装置10は、一方の端部がプリント基板40に設けられた端子に接続されるとともに、他方の端部がフラットケーブルカバー60に固定された端子に接続されるフラットケーブル70と、フラットケーブルカバー60に固定された端子とECU200とを接続するハーネスコンプ300と、を備えている。
【0021】
磁石20は、円筒(ドーナツ)状であり、その内側に第1の回転軸110が嵌合され、この第1の回転軸110と共に回転する。そして、第1の回転軸110の円周方向にN極とS極とが交互に配置されるとともに円周方向に着磁されている。
相対角度センサ30は、第1の回転軸110の回転半径方向には磁石20の外周面の外側であり、第1の回転軸110の軸方向には磁石20が設けられた領域内となるように配置されている。本実施の形態に係る相対角度センサ30は、磁界によって抵抗値が変化することを利用した磁気センサであるMRセンサ(磁気抵抗素子)である。そして、この相対角度センサ30が、磁石20の磁場(磁石20から発生される磁界)に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力することで、同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する。この相対角度センサ30および相対回転角度の検出手法については後で詳述する。
【0022】
プリント基板40は、第1の回転軸110の回転半径方向には磁石20の外周面の外側に配置されるように、例えばボルトなどによりベース50に固定される。
ベース50は、円盤状の部材であり、第2の回転軸120に嵌合され、この第2の回転軸120と共に回転する。
フラットケーブルカバー60は、有底円筒状の部材であり、ハウジング140に固定される。フラットケーブルカバー60をハウジング140に固定する態様としては、以下の態様を例示することができる。すなわち、フラットケーブルカバー60の外周面に、円周方向に等間隔に複数個(本実施の形態においては90度間隔に4個)の凸部61を、外側に延出するように形成する。一方、ハウジング140の第1ハウジング150に、凸部61が嵌合される凹部151を、凸部61と同数個形成する。そして、フラットケーブルカバー60の凸部61を第1ハウジング150に形成した凹部151に嵌合することで、第2の回転軸120の回転方向の位置決めを行う。そして、第2ハウジング160でフラットケーブルカバー60の上面を押さえることで軸方向の位置決めを行う。あるいは、フラットケーブルカバー60を、例えばボルトなどにより第1ハウジング150または第2ハウジング160に固定してもよい。
【0023】
フラットケーブル70は、一方の端部がプリント基板40の端子41に接続されるとともに他方の端部がフラットケーブルカバー60の内側に設けられた接続端子62に接続されて、ベース50における軸方向の一方の端面とフラットケーブルカバー60の内側とで形成される空間内に、渦状に巻かれた状態で収納される。そして、フラットケーブル70は、軸方向の他方の端部側から見た場合に、図2に示すように、右方向に巻かれており、ステアリングホイール、言い換えれば第1の回転軸110および第2の回転軸120が右方向に回転された場合には、一方の端部が第2の回転軸120の回転に従って右方向に回転するので、ステアリングホイールが回転されていない中立状態よりも巻き数が増加する。他方、ステアリングホイールが左方向に回転された場合には、ステアリングホイールが回転されていない中立状態よりも巻き数が減少する。
ハーネスコンプ300は、相対角度センサ30からの出力信号をECU200に伝送する機能を有する。このハーネスコンプ300については後で詳述する。
【0024】
以下に、本実施の形態に係る相対角度センサ30について説明する。
本実施の形態に係る相対角度センサ30は、磁場(磁界)によって抵抗値が変化することを利用したMRセンサ(磁気抵抗素子)である。
【0025】
先ず、MRセンサの動作原理について説明する。
MRセンサは、Si若しくはガラス基板と、その上に形成されたNi−Feなどの強磁性金属を主成分とする合金の薄膜で構成されており、その薄膜強磁性金属の抵抗値は、特定方向の磁界の強度に応じて抵抗値が変化する。
【0026】
図3は、薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。図4は、図3の状態で、磁界強度を変化させた場合の、磁界強度と薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図3に示すように、基板の上に矩形状に形成した薄膜強磁性金属に、矩形の長手方向、つまり図中Y方向に電流を流す。一方、磁界Hを、電流方向(Y方向)に対して垂直方向(図中X方向)に印加し、その状態で、磁界の強さを変更する。このときに、薄膜強磁性金属の抵抗値がどのように変化するかを示したのが図4である。
【0027】
図4に示すように、磁界の強さを変化させたとしても、無磁界(磁界強度ゼロ)時からの抵抗値変化は最大で約3%となる。
以下では、抵抗値変化量(ΔR)が、近似的に「ΔR∝H2」の式で表すことができる領域外を「飽和感度領域」と称す。そして、飽和感度領域においては、ある磁界強度(以下、「規定磁界強度」と称す。)以上になると3%の抵抗値変化は変わらない。
【0028】
図5は、薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。図6は、磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図5のように、矩形状に形成した薄膜強磁性金属の矩形の長手方向、つまり図中Y方向に電流を流し、磁界の方向として電流方向に対して角度変化θを与える。このとき、磁界の向きに起因する薄膜強磁性金属の抵抗値の変化を知るために、印加する磁界強度は、磁界強度に起因しては抵抗値が変化しない上述した規定磁界強度以上とする。
【0029】
図6(a)に示すように、抵抗変化量は、電流方向と磁界の方向が垂直(θ=90度、270度)の時に最大となり、電流方向と磁界の方向が平行(θ=0度、180度)の時に最小となる。かかる場合の抵抗値の最大の変化量をΔRとすると、薄膜強磁性金属の抵抗値Rは、電流方向と磁界方向の角度成分として変化し、式(1)のように示され、図6(b)に示すようになる。
R=R0−ΔRsin2θ・・・(1)
ここで、R0は、規定磁界強度以上の磁界を電流方向と平行(θ=0度あるいは180度)に印加した場合の抵抗値である。
式(1)により、規定磁界強度以上の磁界の方向は、薄膜強磁性金属の抵抗値を把握することで検出することができる。
【0030】
次に、MRセンサの検出原理について説明する。
図7(a)は、規定磁界強度以上の磁界強度で磁界の方向を検出する原理を利用するMRセンサの一例を示す図である。図7(b)は、図7(a)に示すMRセンサの構成を等価回路で示した図である。
図7(a)に示すMRセンサの薄膜強磁性金属は、縦方向が長くなるように形成された第1のエレメントE1と横方向が長くなるように形成された第2のエレメントE2とが直列に配置されている。
【0031】
かかる形状の薄膜強磁性金属においては、第1のエレメントE1に対して最も大きな抵抗値変化を促す垂直方向の磁界は、第2のエレメントE2に対し最小の抵抗値変化の磁界方向となる。そして、第1のエレメントE1の抵抗値R1は式(2)、第2のエレメントE2の抵抗値R2は式(3)で与えられる。
R1=R0−ΔRsin2θ・・・(2)
R2=R0−ΔRcos2θ・・・(3)
【0032】
図7(a)に示すようなエレメント構成のMRセンサの等価回路は図7(b)に示すようになる。
図7に示すように、第1のエレメントE1の、第2のエレメントE2と接続されていない方の端部をグランド(Gnd)とし、第2のエレメントE2の、第1のエレメントE1と接続されていない方の端部の出力電圧をVccとした場合に、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との接続部の出力電圧Voutは式(4)で与えられる。
Vout=(R1/(R1+R2))×Vcc…(4)
【0033】
式(4)に、式(2)、(3)を代入し整理すると、式(5)の通りとなる。
Vout=Vcc/2+α×cos2θ…(5)
ここで、αは、α=(ΔR/(2(2×R0−ΔR)))×Vccである。
式(5)により、磁界の方向は、Voutを検出することで把握することができる。
【0034】
図8は、磁石が直線運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
図8(a)に示すように、N極とS極が交互に配列された磁石に対して、図7に示したMRセンサを、規定磁界強度以上の磁界強度が印加されるギャップ(磁石とMRセンサとの距離)Lで、かつ磁界の方向変化がMRセンサのセンサ面に寄与するように配置する。
【0035】
そして、磁石を、図8(c)に示した、N極中心からS極中心までの距離(以下、「着磁ピッチ」と称する場合もある。)λ分、図8(a)に示すように左方向に移動させる。かかる場合、MRセンサには、磁石の位置に応じて図8(c)に示した矢印の向きの磁界が印加されることとなり、磁石が着磁ピッチλを移動したとき、センサ面では磁界の方向が1/2回転する。ゆえに、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との接続部の出力電圧Voutの波形は、式(5)に示した「Vout=Vcc/2+α×cos2θ」より、図8(d)に示すように1周期の波形となる。
【0036】
図9は、MRセンサの他の例を示す図である。
図7に示したエレメント構成の代わりに図9(a)に示すようなエレメント構成にすれば、図9(b)に示すように、一般的に知られているホイートストン・ブリッジ(フルブリッジ)の構成にすることができる。ゆえに、図9(a)に示すエレメント構成のMRセンサを用いることにより検出精度を高めることが可能となる。
【0037】
磁石の運動の方向を検出する手法について説明する。
図6に示した磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係および式(1)「R=R0−ΔRsin2θ」からすると、図5で見た場合に、磁界の向きを電流の方向に対して時計回転方向に回転させても反時計回転方向に回転させても薄膜強磁性金属の抵抗値は同じである。ゆえに、薄膜強磁性金属の抵抗値を把握できても磁石の運動の方向は把握できない。
【0038】
図10は、磁石の運動方向を検知するのに用いる出力の組み合わせの一例を示す図である。図10のように1/4周期の位相差を持った2つの出力を組み合わせることで磁石の運動方向の検知が可能となる。これらの出力を得る為には、図8で示す(i)と(ii)又は(i)と(iv)の位相関係となるように、二つのMRセンサを配置すればよい。
図11は、MRセンサの配置の例を示す図である。図11に示すように2つのMRセンサを重ね、一方のセンサを他方のセンサに対して45度傾けて配置することも好適である。
【0039】
図12は、MRセンサの他の例を示す図である。図12(a)に示すように、2組のフルブリッジ構成のエレメントを互いに45度傾けて一つの基板上に形成し、図12(b)に示すような等価回路となるエレメント構成にすることも好適である。これにより、一つのMRセンサで、図12(c)に示すように、正確な正弦波、余弦波の出力が可能となる。それゆえ、図12に示すエレメント構成のMRセンサの出力値により、MRセンサに対する磁石の運動方向及び運動量を把握することができる。
【0040】
上述したMRセンサの特性に鑑み、本実施の形態に係る検出装置10においては、相対角度センサ30として、図12に示すエレメント構成のMRセンサを用いる。相対角度センサ30は、上述したように、磁石20の外周面に対して垂直に配置され、第2の回転軸120の軸方向の位置は、磁石20の領域内である。それゆえ、かかる場合には、第1の回転軸110と共に回転する磁石20の磁場により、相対角度センサ30では、磁石20の位置に応じて、図8(c)に示すような磁場方向の変化となる。
【0041】
その結果、磁石20が着磁ピッチλを移動(回転)したとき、相対角度センサ30の感磁面では磁場の方向が1/2回転すると共に、相対角度センサ30からの出力値VoutA,VoutBは、それぞれ図12(c)に示すような1/4周期の位相差となる余弦曲線(余弦波)および正弦曲線(正弦波)となる。
すなわち、運転者がステアリングホイールを回転すると、これに伴って第1の回転軸110が回転し、トーションバー130が捩れる。そして、第2の回転軸120が第1の回転軸110より少し遅れて回転する。この遅れは、トーションバー130に連結された第1の回転軸110と第2の回転軸120との回転角度の差となって現れる。検出装置10は、この回転角度の差に応じた、1/4周期の位相差の、余弦曲線および正弦曲線となるVoutA,VoutBを出力する。
なお、相対角度センサ30の感磁面とは、相対角度センサ30において磁場を検出することができる面のことである。
【0042】
ECU200の相対角度演算部210は、相対角度センサ30の出力値VoutAおよびVoutBを基に、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度θtを以下の式(6)を用いて演算する。
θt=arctan(VoutB/VoutA)…(6)
このようにして、相対角度演算部210は、相対角度センサ30からの出力値に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度及び捩れ方向、つまりはステアリングホイールに加わるトルクの大きさ及び向きを把握することが可能となる。
【0043】
また、上述のように構成された検出装置10を組み付ける際には、フラットケーブルカバー60と、プリント基板40を取り付けたベース50と、フラットケーブルカバー60とベース50との間に収容するフラットケーブル70と、を予めユニット化しておく。そして、そのユニットを、第2の回転軸120が組み付けられた第1ハウジング150に、フラットケーブルカバー60の凸部61が第1ハウジング150の凹部151に嵌るように取り付ける。その際、ベース50を、第2の回転軸120に取り付ける。
このように、検出装置10を予めユニット化が可能な構造とすることで組み付け性を向上させることができる。
【0044】
次に、ハーネスコンプ300について説明する。
図13は、本実施の形態に係るハーネスコンプ300の外観図である。
ハーネスコンプ300は、複数の電線310と、これら複数の電線310を保持する電線保持部材の一例としてのグロメット320と、グロメット320の移動を抑制する外側部材の一例としてのソケット330と、ソケット330に嵌め合わされるキャップ340と、を備えている。また、ハーネスコンプ300は、複数の電線310の一方の端部に連結される第1のコネクタ350と、複数の電線310の他方の端部に連結される第2のコネクタ360と、を備えている。また、ハーネスコンプ300は、グロメット320と第1のコネクタ350との間において複数の電線310を束ねる第1のカバー370と、グロメット320と第2のコネクタ360との間において複数の電線310を束ねる第2のカバー380と、を備えている。
【0045】
そして、本実施の形態に係るハーネスコンプ300においては、4本の電線310を有しており、これら4本の電線310の一方の端部が、第1のコネクタ350、接続端子62などを介してプリント基板40(図2参照)に、4本の電線310の他方の端部が、第2のコネクタ360などを介してECU200に接続されている。そして、4本の電線310が、ECU200から相対角度センサ30への電源供給や、相対角度センサ30からECU200への出力値の伝送に用いられる。
【0046】
電線310は、線状に引き伸ばされた金属などの導体が絶縁体で覆われたものであり、電気を伝導する。本実施の形態に係るハーネスコンプ300においては、4本の電線310を有しており、これら4本の電線310の一方の端部が第1のコネクタ350に接続され、他方の端部が第2のコネクタ360に接続されるとともに、絶縁体の第1のカバー370および第2のカバー380にて束ねられている。
【0047】
図14は、グロメット320、ソケット330およびキャップ340の概略構成図である。(a)は、第2のコネクタ360側から見た斜視図であり、(b)は、第1のコネクタ350側から見た斜視図である。(c)は、(a)におけるA−A断面図である。
図15(a)は、第2ハウジング160の概略構成図である。図15(b)は、(a)におけるB−B断面図である。図15(c)は、ハーネスコンプ300が第2ハウジング160に装着された状態を示す図である。
グロメット320は、略楕円柱状の楕円柱部321と、円筒状の円筒部322とを備えている。そして、楕円柱部321には、電線310を通すために柱方向に形成された電線孔323が電線310の数と同数(本実施の形態においては4つ)形成されている。また、楕円柱部321の外周面には、周方向の全周に亘って外周面から外側に突出する突起324が、柱方向(電線孔方向)に複数(本実施の形態においては3つ)設けられている。楕円柱部321の外周面は、第2ハウジング160の連通孔161の内側連通孔161aを形成する周囲の壁163の内周面の大きさと同じであり、第2ハウジング160に嵌合された状態では、その外周面から外側に突出する突起324が周囲の壁163に押されることにより全体的に内側に弾性変形する。これにより、グロメット320は、電線孔323の周囲部分にて電線孔323に挿入された電線310を押圧し、電線310の移動を抑制する。なお、このグロメット320は、ゴムなどの弾性材料を加硫成形することで上記所定形状に成形されている。
【0048】
ソケット330は、基本的には略楕円柱状であり、その中央部には、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を、柱方向の一方の端部から他方の端部へ通すための貫通孔331が形成されている。楕円柱状の外周面の大きさは、第2ハウジング160の連通孔161の外側連通孔161bを形成する周囲の壁163の内周面の大きさと同じかやや小さい。また、ソケット330は、柱方向の一方の端面側に、この端面から柱方向の外側に三日月柱状に突出した三日月柱部332を楕円の長辺方向の両側に2つ備えるとともに、中央部にこの端面から円柱状に凹んだ円柱部333が形成されている。また、ソケット330の楕円の短辺方向の一方の端面(図13、図14においては上側)には、その中央部に、この端面から貫通孔331まで通じ、キャップ340が嵌め合わされる嵌合孔334が形成されている。なお、このソケット330は、樹脂をインジェクション成形することで上記所定形状に成形されている。
【0049】
キャップ340は、四角柱状の第1の四角柱部341と、横方向には第1の四角柱部341の大きさよりも小さい四角形で縦方向には第1の四角柱部341の長さよりも長い四角柱状の第2の四角柱部342と、を備えている。第2の四角柱部342の先端は、基本的には楕円柱状のソケット330の柱方向(貫通孔331の方向)に波形となるように形成されている。また、第1の四角柱部341の4つの側面には、この側面から外側に突出する突出部341aが設けられている。なお、このキャップ340は、樹脂をインジェクション成形することで上記所定形状に成形されている。
【0050】
ソケット330の貫通孔331および嵌合孔334は、キャップ340の形状に対応するように以下のように形成されている。
すなわち、嵌合孔334は、キャップ340の第1の四角柱部341の形状に沿う第1の四角柱孔334aと、第2の四角柱部342の形状に沿う第2の四角柱孔334bとから構成され、ソケット330の第1の四角柱孔334aの終端には、キャップ340の第1の四角柱部341の移動を規制するための規制面335が設けられている。また、第1の四角柱孔334aの、楕円柱状のソケット330の短辺方向(図14においては上下方向)の長さは、キャップ340の第1の四角柱部341の長さよりも大きく形成されており、キャップ340の第1の四角柱部341が規制面335に接触するまで押し込まれた場合には、第1の四角柱部341が第1の四角柱孔334a内に収まるように形成されている。言い換えれば、キャップ340の外面がソケット330の外面から突出しないように形成されている。また、キャップ340の第2の四角柱部342の、楕円柱状のソケット330の短辺方向(図14においては上下方向)の長さは、ソケット330の第2の四角柱孔334bの長さよりも大きく設定されており、キャップ340がソケット330に嵌合された状態で、第2の四角柱部342が貫通孔331内に突出するようになっている。
また、貫通孔331は、基本的には円柱状であるが、柱方向(貫通孔331の方向)の中央部に、キャップ340の第2の四角柱部342の先端の波形に対応するように、柱方向が波形となるように凹んだ波形凹部331aが形成されている。そして、キャップ340がソケット330に嵌合された状態では、キャップ340の第2の四角柱部342の先端と、ソケット330の波形凹部331aとで第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を挟み込み、波形に屈曲させる。
【0051】
また、ソケット330は、楕円の長辺方向の両端部に、長辺方向に弾性変形するフック390を備えている。フック390は、楕円柱状のソケット330の本体から、柱方向(貫通孔方向)に伸びるように設けられており、その外側の面がソケット330の外周面に沿うように形成されている。そして、フック390は、ソケット330の楕円柱状の外周面から外側に突出するように柱方向(貫通孔方向)に対して傾斜した傾斜面391と、傾斜面391の終端から長辺方向の内側に長辺方向と平行に向かう面、言い換えれば柱方向(貫通孔方向)に垂直な面である凸部側垂直面の一例としての垂直面392とを、柱方向(貫通孔方向)の途中に備えている。そして、傾斜面391の始端とソケット330の本体との間には、傾斜面391および垂直面392が長辺方向に弾性変形し易くなるように長孔393が形成されている。
そして、ソケット330の本体には、フック390の周囲に、フック390が所望量弾性変形してもソケット330の本体に干渉しないようにするのに十分に凹んだフック用凹部336が形成されている。
【0052】
以上のように構成されたハーネスコンプ300は、以下のようにして組み立てられる。
すなわち、先ず、グロメット320に形成された複数の電線孔323それぞれに電線310を挿入する。その後、グロメット320の円筒部322の内側に接着剤を塗布し、グロメット320に対して複数の電線310が動かないように位置決めを行う。また、複数の電線310を、第1のカバー370および第2のカバー380で束ねる。
そして、グロメット320の円筒部322側に配置された第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を、ソケット330の貫通孔331に通し、グロメット320の楕円柱部321の端面がソケット330の三日月柱部332の端面と接触するようにソケット330を組み付ける。その後、ソケット330の嵌合孔334に、キャップ340を嵌合し、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を波形に屈曲させる。また、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の先端を第2のコネクタ360に接続する。なお、グロメット320の円筒部322の内側に接着剤が塗布されているので、キャップ340をソケット330に嵌合する際に複数の電線310を押さえたとしても電線310がずれることが抑制される。
他方、グロメット320の円筒部322が配置された側とは反対に配置された第1のカバー370で束ねられた複数の電線310の先端を第1のコネクタ350に接続する。
【0053】
また、このハーネスコンプ300は、以下のようにして電動パワーステアリング装置100に組み付けられる。
すなわち、第1ハウジング150および第2ハウジング160に、第1の回転軸110、第2の回転軸120、フラットケーブルカバー60などを組み付け、第3ハウジング170を組み付ける前の状態で、第1のコネクタ350側から第2ハウジング160に形成された連通孔161に通す。そして、グロメット320の突起324が連通孔161の周囲の壁163の内周面に接触するように嵌合するとともに、ソケット330のフック390が、第2ハウジング160に形成された凹部162に嵌るまで、グロメット320およびソケット330を押し込んでいく。
ソケット330を連通孔161に差し込むと、フック390の傾斜面391が第2ハウジング160における連通孔161の周りの壁に接触して弾性変形し、その後さらに深く差し込まれて傾斜面391が第2ハウジング160の凹部162に嵌り込むことで変形状態から復帰する。このとき、ソケット330のフック390の垂直面392は、第2ハウジング160の凹部162におけるソケット330の挿入方向とは垂直に形成された凹部側垂直面と対向する。グロメット320は、その楕円柱部321における円筒部322が配置された側の面がソケット330の三日月柱部332に押されることにより、連通孔161の周囲の壁163との間に生じる摩擦力に抗して内側へ移動する。このようにして、グロメット320およびソケット330を第2ハウジング160に装着する。そして、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の接続端子62に差し込む。また、第2のコネクタ360をECU200の端子に差し込む。
【0054】
他方、ハーネスコンプ300を取り外す場合には、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の端子から取り外した後、第2ハウジング160の外側からソケット330のフック390を内側に弾性変形させながら手前に引くことで、グロメット320およびソケット330を第2ハウジング160の連通孔161から取り外せばよい。そして、その後、第1のコネクタ350を第2ハウジング160の連通孔161から引き抜き、ハーネスコンプ300を取り外す。
【0055】
以上のように構成され、第2ハウジング160に装着されるハーネスコンプ300においては、グロメット320が第2ハウジング160に嵌合されると、主にグロメット320の突起324にてハウジング140内を密封する。また、グロメット320の突起324が第2ハウジング160の連通孔161の周囲の壁163に押されることで電線孔323の径が小さくなるように弾性変形し、複数の電線310をより強く保持する。また、複数の電線310は、グロメット320の円筒部322の内側に塗布された接着剤にて接着されている。また、ソケット330にキャップ340が嵌合されて、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310が波形に屈曲された状態で保持されている。これらにより、組み付けられた後、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても電線310がグロメット320に対して移動することが抑制される。なお、グロメット320の円筒部322の半径方向の大きさは、ソケット330の三日月柱部332および円柱部333の内面との間に隙間が空くように設定されており、また、円筒部322の電線孔方向にはソケット330の円柱部333があることから、グロメット320の電線孔323の径が小さくなり、電線孔方向に大きくなるように弾性変形することが許容される。
また、ソケット330のフック390の垂直面392が第2ハウジング160の凹部162の垂直面162aと接触することでソケット330およびグロメット320が第2ハウジング160から脱落することが抑制される。したがって、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても、グロメット320は連通孔161から脱落し難くなるので、第1のコネクタ350から電線310が脱落したり、第1のコネクタ350が差し込まれた接続端子62が折れたりすることが抑制される。
【0056】
また、ハーネスコンプ300単体で持ち運びされるとしても、電線310がグロメット320に対して移動し難いように構成されているので、このハーネスコンプ300を電動パワーステアリング装置100に組み付ける作業者は、グロメット320から第1のコネクタ350までの電線310の長さに注意を払うことなく容易に組み付けることができる。
また、例えば板金で形成されたプレートをハウジング140の外側に配置することで、ハウジング140に形成された連通孔161に挿入されたグロメット320の抜け止めと、電線310の支持とを行う構成と比較すると、ハウジング140がアルミニウム製であるとしても、ハウジング140との間で電気化学的腐蝕が生じる部品がないことから耐食性を向上させることができる。また、組立性も向上させることができる。
【0057】
図16は、ハウジング140の他の形態を示す図である。
図15を用いて説明した外側連通孔161bの一部あるいは全部を、図16に示すように、第2ハウジング160と第3ハウジング170とで形成してもよい。言い換えれば、第3ハウジング170がボルト(不図示)などにより第2ハウジング160に固定されることで、第2ハウジング160と第3ハウジング170とが協働して外側連通孔161bを形成するようにしてもよい。つまり、図16(a)に示すように、第2ハウジング160における外側連通孔161bの、軸方向の他方の端部側(図1においては上側)の壁面をなくして、外側連通孔161bを開放する。一方で、第3ハウジング170に、第2ハウジング160との締結面から外側に電線孔方向に延出する延出部172を設ける。
【0058】
ハーネスコンプ300を電動パワーステアリング装置100に組み付ける際には、上述した実施の形態と同様にグロメット320およびソケット330を第2ハウジング160に装着し、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の端子に差し込んだ後に、第3ハウジング170を第2ハウジング160に取り付ける。これにより、図16(b)に示すように、ソケット330の上面が第3ハウジング170の延出部172により覆われることとなる。
ハーネスコンプ300を取り外す際には、第3ハウジング170を第2ハウジング160から外せば、ソケット330の上面が開放される。したがって、ソケット330およびグロメット320を容易に第2ハウジング160から取り外すことが可能となる。
【0059】
なお、上述した実施の形態に係るハーネスコンプ300においては、グロメット320を第2ハウジング160の連通孔161から脱落させ難くするために、ソケット330およびキャップ340を備えているが、特にかかる態様に限定されない。ハーネスコンプ300は、ソケット330およびキャップ340の代わりに、以下に説明するソケット430を備えてもよい。
【0060】
図17は、他の形態に係るハーネスコンプ300のグロメット320およびソケット430を示す図である。図18(a)は、他の形態に係るハーネスコンプ300がハウジング140に装着された状態を示す図であり、図18(b)は、他の形態に係るハーネスコンプ300が他の形態に係るハウジング140に装着された状態を示す図である。他の形態に係るハーネスコンプ300は、上述した実施の形態に係るハーネスコンプ300に対して、ソケット330およびキャップ340がソケット430に置き換わった点が異なり、その他は同じであるので、その説明は省略する。
【0061】
ソケット430は、楕円柱状の第1の楕円柱部431と、この第1の楕円柱部431の楕円の大きさよりも小さい大きさの楕円の楕円柱状の第2の楕円柱部432と、を有している。これら第1の楕円柱部431および第2の楕円柱部432は、第2のコネクタ360側から順に楕円の中心が同じになるように柱方向(連通孔方向)に並んでいる。第1の楕円柱部431の楕円形は、第2ハウジング160の連通孔161の大きさよりも大きく、第1の楕円柱部431で連通孔161の開口部を覆う。第2の楕円柱部432は、第2ハウジング160の連通孔161の大きさよりも小さく、連通孔161の中に挿入される。第1の楕円柱部431および第2の楕円柱部432の中央部には、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を、柱方向の一方の端部から他方の端部へ通すための貫通孔433が形成されている。
【0062】
第1の楕円柱部431は、楕円の長辺方向の両端部であって第2の楕円柱部432の外側に、長辺方向に弾性変形するフック490を備えている。フック490は、第1の楕円柱部431における第1のコネクタ350側の端面から、柱方向に伸びるように設けられている。そして、フック490は、ソケット430の柱方向に対して傾斜した傾斜面491と、傾斜面491の終端から長辺方向の内側に長辺方向と平行に向かう面、言い換えれば柱方向に垂直な面である垂直面492と、を備えている。そして、傾斜面491の終端と第1の楕円柱部431の本体との間には、傾斜面491および垂直面492が長辺方向に弾性変形し易くなるように直方体状に形成されている。また、第1の楕円柱部431の本体における楕円の長辺方向の両端部であって垂直面492に対向する部位には、この本体を貫通する長孔434が形成されている。
第2の楕円柱部432は、第1のコネクタ350側の端面に、この端面から柱方向の外側に半月柱状に突出した半月柱部435を楕円の長辺方向の両側それぞれに備える。
なお、このソケット430は、樹脂をインジェクション成形することで上記所定形状に成形されている。
【0063】
以上のように構成された他の形態に係るハーネスコンプ300は、以下のようにして組み立てられる。
すなわち、先ず、グロメット320に形成された複数の電線孔323それぞれに電線310を挿入する。その後、グロメット320の円筒部322の内側に接着剤を塗布し、グロメット320に対して複数の電線310が動かないように位置決めを行う。また、複数の電線310を、第1のカバー370および第2のカバー380で束ねる。
そして、グロメット320の円筒部322側に配置された第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を、ソケット430の貫通孔433に通し、グロメット320の楕円柱部321の端面がソケット430の半月柱部435の端面と接触するようにソケット430を組み付ける。その後、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の先端を第2のコネクタ360に接続する。他方、グロメット320の円筒部322が配置された側とは反対に配置された第1のカバー370で束ねられた複数の電線310の先端を第1のコネクタ350に接続する。
【0064】
また、この他の形態に係るハーネスコンプ300は、以下のようにして電動パワーステアリング装置100に組み付けられる。
すなわち、第1ハウジング150および第2ハウジング160に、第1の回転軸110、第2の回転軸120、フラットケーブルカバー60などを組み付け、第3ハウジング170を組み付ける前の状態で、第1のコネクタ350側から第2ハウジング160に形成された連通孔161に通す。そして、グロメット320の突起324が連通孔161の周囲の壁163の内周面に接触するように嵌合するとともに、ソケット430のフック490が、第2ハウジング160に形成された凹部162に嵌るまで、グロメット320およびソケット430を押し込んでいく。
ソケット430を連通孔161に差し込むと、フック490の傾斜面491が第2ハウジング160における連通孔161の外側連通孔161bの周りの壁に接触して弾性変形し、その後さらに深く差し込まれて傾斜面491が第2ハウジング160の凹部162に嵌り込むことで変形状態から復帰する。グロメット320は、その楕円柱部321における円筒部322が配置された側の面がソケット430の半月柱部435に押されることにより、連通孔161の周囲の壁163との間に生じる摩擦力に抗して内側へ移動する。このようにして、グロメット320およびソケット430を第2ハウジング160に装着する。そして、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の接続端子62に差し込む。また、第2のコネクタ360をECU200の端子に差し込む。
【0065】
他方、他の形態にかかるハーネスコンプ300を取り外す場合には、ソケット430の第1の楕円柱部431の長孔434に、例えばマイナスドライバなどの治具を差し込み、フック490を内側に弾性変形させながら手前に引くことで、グロメット320およびソケット430を第2ハウジング160の連通孔161から取り外せばよい。そして、その後、第1のコネクタ350を第2ハウジング160の連通孔161から引き抜き、ハーネスコンプ300を取り外す。
【0066】
以上のように構成され、第2ハウジング160に装着される他の形態に係るハーネスコンプ300においては、グロメット320が第2ハウジング160に嵌合されると、主にグロメット320の突起324にてハウジング140内を密封する。また、グロメット320の突起324が第2ハウジング160の連通孔161の周囲の壁163に押されることで電線孔323の径が小さくなるように弾性変形し、複数の電線310をより強く保持する。また、複数の電線310は、グロメット320の円筒部322の内側に塗布された接着剤にて接着されている。これらにより、組み付けられた後、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても電線310がグロメット320に対して移動することが抑制される。なお、グロメット320の円筒部322の半径方向の大きさは、貫通孔433の内面との間に隙間が空くように設定されており、また、円筒部322の電線孔方向にはソケット430の貫通孔433があることから、グロメット320の電線孔323の径が小さくなり、電線孔方向に大きくなるように弾性変形することが許容される。
また、ソケット430のフック490の垂直面492が第2ハウジング160の凹部162の垂直面162aと接触することでソケット430およびグロメット320が第2ハウジング160から脱落することが抑制される。したがって、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても、グロメット320は連通孔161から脱落し難いので、第1のコネクタ350から電線310が脱落したり、第1のコネクタ350が差し込まれた接続端子62が折れたりすることが抑制される。
【0067】
また、他の形態に係るハーネスコンプ300単体で持ち運びされるとしても、電線310がグロメット320に対して移動し難いように構成されているので、このハーネスコンプ300を電動パワーステアリング装置100に組み付ける作業者は、グロメット320から第1のコネクタ350までの電線310の長さに注意を払うことなく容易に組み付けることができる。
また、例えば板金で形成されたプレートをハウジング140の外側に配置することで、ハウジング140に形成された連通孔161に挿入されたグロメット320の抜け止めと、電線310の支持とを行う構成と比較すると、ハウジング140がアルミニウム製であるとしても、ハウジング140との間で電気化学的腐蝕が生じる部品がないことから耐食性を向上させることができる。また、組立性も向上させることができる。
【0068】
また、他の形態に係るハーネスコンプ300を電動パワーステアリング装置100に組み付ける際には、上述した実施の形態と同様にグロメット320およびソケット430を第2ハウジング160に装着し、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の端子に差し込んだ後に、第3ハウジング170を第2ハウジング160に取り付ける。これにより、図18(b)に示すように、ソケット430の上面が第3ハウジング170の延出部172により覆われることとなる。ハーネスコンプ300を取り外す際には、第3ハウジング170を第2ハウジング160から外せば、ソケット430の上面が開放される。したがって、ソケット430およびグロメット320を容易に第2ハウジング160から取り外すことが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
10…検出装置、20…磁石、30…相対角度センサ、40…プリント基板、50…ベース、60…フラットケーブルカバー、70…フラットケーブル、100…電動パワーステアリング装置、110…第1の回転軸、120…第2の回転軸、130…トーションバー、140…ハウジング、180…ウォームホイール、190…電動モータ、200…電子制御ユニット(ECU)、210…相対角度演算部、300…ハーネスコンプ、310…電線、320…グロメット、330,430…ソケット、340…キャップ、350…第1のコネクタ、360…第2のコネクタ、370…第1のカバー、380…第2のカバー、390…フック
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対角度検出装置、電動パワーステアリング装置および電線保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する装置が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の装置は、トーションバーにより同軸的に連結された第1の回転体及び第2の回転体が有する磁気回路形成部材の外周りに軸線方向へ離隔して配置され、該磁気回路形成部材が発生した磁束を集める2つの集磁環と、各集磁環が集めた磁束の密度に基づいて第1の回転体に加わったトルクを検出する検出部と、集磁環及び検出部を保持し、且つ外周部にハウジングに取着される取着部を有する保持環と、検出部に接続された導線とを備えている。そして、検出部は集磁環の凸片間に発生する磁束密度の変化に応じて検出信号が変わるように構成されており、その検出信号は導線を介してマイクロプロセッサを用いてなる制御部に与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−187589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハウジング内に収納されるセンサ(検出部)と、センサからの検出信号が与えられるとともにハウジング外に配置される装置とが電線(導線)にて接続される構成である場合、ハウジング外において電線に力が作用したとしても、ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ぶおそれがある。そして、例えば電線の端部がコネクタに連結され、コネクタが接続端子に差し込まれている場合、ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ぶと、コネクタから電線が脱落したり、コネクタが差し込まれた接続端子が折れたりしてしまうおそれがある。
【0005】
これに対して、例えば板金で形成されたプレートをハウジングの外側に配置することで、ハウジングに形成された貫通孔に挿入されたグロメットの抜け止めと、電線の支持とを行うことも考えられる。しかしながら、かかる構成において、ハウジングがアルミニウム製である場合には、プレートとハウジングとの間に電気化学的腐蝕が生じることに起因してグロメットが脱落するおそれがある。また、プレートをハウジングの外側に配置する分の組立て工数が増加してしまう。
本発明は、ハウジング外において電線に力が作用したとしてもハウジング内の電線の端部に大きな力が及ばないようにすることを簡易な構成で実現する装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に挿入されるとともに、当該ハウジングに形成された当該連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有する外側部材と、を備えることを特徴とする相対角度検出装置である。
【0007】
ここで、前記電線保持部材は、前記電線との間に塗布された接着剤による接着力にて当該電線を保持することが好適である。
また、前記外側部材の前記凸部は、前記ハウジングの前記連通孔への当該外側部材の挿入方向に対して傾斜する傾斜面を有して、当該挿入方向に対して垂直な方向に変位可能に設けられ、前記外側部材は、前記連通孔に挿入される際に、前記凸部の前記傾斜面が前記連通孔の周囲の壁に押されることで当該凸部が前記挿入方向に対して垂直な方向に変位し、当該傾斜面が前記ハウジングの前記凹部まで到達したら当該凸部は当該垂直な方向の変位が復帰して当該凹部に嵌り込むことが好適である。
【0008】
また、前記外側部材の前記凸部は、前記傾斜面の終端から前記挿入方向に垂直に内側に向かうとともに、前記ハウジングの前記凹部に当該挿入方向とは垂直に形成された凹部側垂直面と対向する凸部側垂直面を有することが好適である。
また、前記外側部材の前記凸部は、前記ハウジングの外部から操作されることにより、前記凸部側垂直面が前記凹部側垂直面と接触しなくなる位置まで変位可能に構成されていることが好適である。
【0009】
他の観点から捉えると、本発明は、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、前記センサを収納するとともに、内外を連通する連通孔と当該連通孔の表面から凹んだ凹部とが形成されたハウジングと、前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に挿入されるとともに、当該ハウジングに形成された当該連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有する外側部材と、を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0010】
また、他の観点から捉えると、本発明は、内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサからの電気信号を当該ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に挿入されるとともに、当該ハウジングに形成された当該連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有する外側部材と、を備えることを特徴とする電線保持具である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ハウジング外において電線に力が作用したとしても、ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ばないようにすることを、簡易な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る検出装置を適用した電動パワーステアリング装置の断面図である。
【図2】実施の形態に係る検出装置の斜視図である。
【図3】薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。
【図4】図3の状態で、磁界強度を変化させた場合の、磁界強度と薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
【図5】薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。
【図6】磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
【図7】(a)は、規定磁界強度以上の磁界強度で磁界の方向を検出する原理を利用するMRセンサの一例を示す図である。(b)は、(a)に示すMRセンサの構成を等価回路で示した図である。
【図8】磁石が直線運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
【図9】MRセンサの他の例を示す図である。
【図10】磁石の運動方向を検知するのに用いる出力の組み合わせの一例を示す図である。
【図11】MRセンサの配置の例を示す図である。
【図12】MRセンサの他の例を示す図である。
【図13】本実施の形態に係るハーネスコンプの外観図である。
【図14】グロメット、ソケットおよびキャップの概略構成図である。
【図15】(a)は、第2ハウジングの概略構成図である。(b)は、(a)におけるB−B断面図である。(c)は、ハーネスコンプが第2ハウジングに装着された状態を示す図である。
【図16】ハウジングの他の形態を示す図である。
【図17】他の形態に係るハーネスコンプのグロメットおよびソケットを示す図である。
【図18】(a)は、他の形態に係るハーネスコンプがハウジングに装着された状態を示す図であり、(b)は、他の形態に係るハーネスコンプが他の形態に係るハウジングに装着された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る検出装置10を適用した電動パワーステアリング装置100の断面図である。図2は、実施の形態に係る検出装置10の斜視図である。なお、図2においては、構成を分かり易くするために後述するベース50およびフラットケーブルカバー60の一部は省略して示している。
【0014】
電動パワーステアリング装置100は、同軸的に回転する第1の回転軸110と第2の回転軸120とを備えている。第1の回転軸110は、例えばステアリングホイールが連結される回転軸であり、第2の回転軸120は、トーションバー130を介して第1の回転軸110に同軸的に結合されている。そして、第2の回転軸120に形成されたピニオン121が、車輪に連結されるラック軸(不図示)のラック(不図示)と噛み合っており、第2の回転軸120の回転運動がピニオン121,ラックを介してラック軸の直線運動に変換され、車輪が操舵される。
【0015】
また、電動パワーステアリング装置100は、第1の回転軸110および第2の回転軸120を回転可能に支持するハウジング140を備えている。ハウジング140は、例えば自動車などの乗り物の本体フレーム(以下、「車体」と称する場合もある。)に固定される部材であり、第1ハウジング150、第2ハウジング160および第3ハウジング170から構成される。
第1ハウジング150は、第2の回転軸120を回転可能に支持する軸受け151を、第2の回転軸120の回転軸方向(以下、単に「軸方向」と称する場合もある。)の一方の端部側(図1においては下側)に有し、軸方向の他方の端部側(図1においては上側)が開口した部材である。
【0016】
第2ハウジング160は、軸方向の両端部が開口した部材であり、その軸方向の一方の端部側の開口部が第1ハウジング150における軸方向の他方の端部側の開口部と対向するように配置される。そして、第2ハウジング160は、例えばボルトなどにより第1ハウジング150に固定される。第2ハウジング160の側面には、内外を連通する連通孔161が形成されている。連通孔161は、後述するハーネスコンプ300のグロメット320が嵌合される略楕円柱状の内側連通孔161aと、ハーネスコンプ300のソケット330が嵌合される略楕円柱状の外側連通孔161bと、を含んで構成されている。外側連通孔161bは、内側連通孔161aに対して、楕円の短辺方向は同じであるが長辺方向には大きく形成されている。また、第2ハウジング160には、連通孔161における楕円柱の柱方向(連通孔方向)の途中に、連通孔161の外側連通孔161bを形成する面から凹んだ凹部162(図15参照)が楕円における長辺方向の両側に形成されている。凹部162は、半月柱状であり、柱方向に垂直な面である2つの垂直面162aを有する。
第3ハウジング170は、第1の回転軸110を回転可能に支持する軸受け171を、軸方向の他方の端部側(図1においては上側)に有し、軸方向の一方の端部側(図1においては下側)が開口した部材である。そして、軸方向の一方の端部側の開口部が第2ハウジング160における軸方向の他方の端部側の開口部と対向するように配置されるとともに、例えばボルト(不図示)などにより第2ハウジング160に固定される。
【0017】
また、電動パワーステアリング装置100は、例えば圧入などにより第2の回転軸120に固定されたウォームホイール180と、このウォームホイール180と噛み合うウォームギヤ191が出力軸に連結されるとともに第1ハウジング150に固定される電動モータ190とを備えている。
また、電動パワーステアリング装置100は、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力する検出装置10と、この検出装置10からの出力値に基づいて電動モータ190の駆動を制御する電子制御ユニット(ECU)200とを備えている。
【0018】
ECU200は、各種演算処理を行うCPUと、CPUにて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROMと、CPUの作業用メモリ等として用いられるRAMと、を用いて、検出装置10からの出力値を基に第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度を演算する相対角度演算部210を備えている。
検出装置10については、後で詳述する。
【0019】
以上のように構成された電動パワーステアリング装置100においては、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクが第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度として現れることに鑑み、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に基づいて操舵トルクを把握する。つまり、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度を検出装置10にて検出し、検出装置10からの出力値に基づいてECU200が操舵トルクを把握し、把握した操舵トルクに基づいて電動モータ190の駆動を制御する。そして、電動モータ190の発生トルクをウォームギヤ191、ウォームホイール180を介して第2の回転軸120に伝達する。これにより、電動モータ190の発生トルクが、ステアリングホイールに加える運転者の操舵力をアシストする。
【0020】
以下に、検出装置10について詳述する。
検出装置10は、第1の回転軸110に取り付けられる磁石20と、この磁石20の磁場(磁石20から発生される磁界)に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度センサ30と、この相対角度センサ30を実装するプリント基板40と、を備えている。また、検出装置10は、第2の回転軸120に取り付けられるとともにプリント基板40を支持するベース50と、後述するフラットケーブル70を収納する有底円筒状のフラットケーブルカバー60と、を備えている。また、検出装置10は、一方の端部がプリント基板40に設けられた端子に接続されるとともに、他方の端部がフラットケーブルカバー60に固定された端子に接続されるフラットケーブル70と、フラットケーブルカバー60に固定された端子とECU200とを接続するハーネスコンプ300と、を備えている。
【0021】
磁石20は、円筒(ドーナツ)状であり、その内側に第1の回転軸110が嵌合され、この第1の回転軸110と共に回転する。そして、第1の回転軸110の円周方向にN極とS極とが交互に配置されるとともに円周方向に着磁されている。
相対角度センサ30は、第1の回転軸110の回転半径方向には磁石20の外周面の外側であり、第1の回転軸110の軸方向には磁石20が設けられた領域内となるように配置されている。本実施の形態に係る相対角度センサ30は、磁界によって抵抗値が変化することを利用した磁気センサであるMRセンサ(磁気抵抗素子)である。そして、この相対角度センサ30が、磁石20の磁場(磁石20から発生される磁界)に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力することで、同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する。この相対角度センサ30および相対回転角度の検出手法については後で詳述する。
【0022】
プリント基板40は、第1の回転軸110の回転半径方向には磁石20の外周面の外側に配置されるように、例えばボルトなどによりベース50に固定される。
ベース50は、円盤状の部材であり、第2の回転軸120に嵌合され、この第2の回転軸120と共に回転する。
フラットケーブルカバー60は、有底円筒状の部材であり、ハウジング140に固定される。フラットケーブルカバー60をハウジング140に固定する態様としては、以下の態様を例示することができる。すなわち、フラットケーブルカバー60の外周面に、円周方向に等間隔に複数個(本実施の形態においては90度間隔に4個)の凸部61を、外側に延出するように形成する。一方、ハウジング140の第1ハウジング150に、凸部61が嵌合される凹部151を、凸部61と同数個形成する。そして、フラットケーブルカバー60の凸部61を第1ハウジング150に形成した凹部151に嵌合することで、第2の回転軸120の回転方向の位置決めを行う。そして、第2ハウジング160でフラットケーブルカバー60の上面を押さえることで軸方向の位置決めを行う。あるいは、フラットケーブルカバー60を、例えばボルトなどにより第1ハウジング150または第2ハウジング160に固定してもよい。
【0023】
フラットケーブル70は、一方の端部がプリント基板40の端子41に接続されるとともに他方の端部がフラットケーブルカバー60の内側に設けられた接続端子62に接続されて、ベース50における軸方向の一方の端面とフラットケーブルカバー60の内側とで形成される空間内に、渦状に巻かれた状態で収納される。そして、フラットケーブル70は、軸方向の他方の端部側から見た場合に、図2に示すように、右方向に巻かれており、ステアリングホイール、言い換えれば第1の回転軸110および第2の回転軸120が右方向に回転された場合には、一方の端部が第2の回転軸120の回転に従って右方向に回転するので、ステアリングホイールが回転されていない中立状態よりも巻き数が増加する。他方、ステアリングホイールが左方向に回転された場合には、ステアリングホイールが回転されていない中立状態よりも巻き数が減少する。
ハーネスコンプ300は、相対角度センサ30からの出力信号をECU200に伝送する機能を有する。このハーネスコンプ300については後で詳述する。
【0024】
以下に、本実施の形態に係る相対角度センサ30について説明する。
本実施の形態に係る相対角度センサ30は、磁場(磁界)によって抵抗値が変化することを利用したMRセンサ(磁気抵抗素子)である。
【0025】
先ず、MRセンサの動作原理について説明する。
MRセンサは、Si若しくはガラス基板と、その上に形成されたNi−Feなどの強磁性金属を主成分とする合金の薄膜で構成されており、その薄膜強磁性金属の抵抗値は、特定方向の磁界の強度に応じて抵抗値が変化する。
【0026】
図3は、薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。図4は、図3の状態で、磁界強度を変化させた場合の、磁界強度と薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図3に示すように、基板の上に矩形状に形成した薄膜強磁性金属に、矩形の長手方向、つまり図中Y方向に電流を流す。一方、磁界Hを、電流方向(Y方向)に対して垂直方向(図中X方向)に印加し、その状態で、磁界の強さを変更する。このときに、薄膜強磁性金属の抵抗値がどのように変化するかを示したのが図4である。
【0027】
図4に示すように、磁界の強さを変化させたとしても、無磁界(磁界強度ゼロ)時からの抵抗値変化は最大で約3%となる。
以下では、抵抗値変化量(ΔR)が、近似的に「ΔR∝H2」の式で表すことができる領域外を「飽和感度領域」と称す。そして、飽和感度領域においては、ある磁界強度(以下、「規定磁界強度」と称す。)以上になると3%の抵抗値変化は変わらない。
【0028】
図5は、薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。図6は、磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図5のように、矩形状に形成した薄膜強磁性金属の矩形の長手方向、つまり図中Y方向に電流を流し、磁界の方向として電流方向に対して角度変化θを与える。このとき、磁界の向きに起因する薄膜強磁性金属の抵抗値の変化を知るために、印加する磁界強度は、磁界強度に起因しては抵抗値が変化しない上述した規定磁界強度以上とする。
【0029】
図6(a)に示すように、抵抗変化量は、電流方向と磁界の方向が垂直(θ=90度、270度)の時に最大となり、電流方向と磁界の方向が平行(θ=0度、180度)の時に最小となる。かかる場合の抵抗値の最大の変化量をΔRとすると、薄膜強磁性金属の抵抗値Rは、電流方向と磁界方向の角度成分として変化し、式(1)のように示され、図6(b)に示すようになる。
R=R0−ΔRsin2θ・・・(1)
ここで、R0は、規定磁界強度以上の磁界を電流方向と平行(θ=0度あるいは180度)に印加した場合の抵抗値である。
式(1)により、規定磁界強度以上の磁界の方向は、薄膜強磁性金属の抵抗値を把握することで検出することができる。
【0030】
次に、MRセンサの検出原理について説明する。
図7(a)は、規定磁界強度以上の磁界強度で磁界の方向を検出する原理を利用するMRセンサの一例を示す図である。図7(b)は、図7(a)に示すMRセンサの構成を等価回路で示した図である。
図7(a)に示すMRセンサの薄膜強磁性金属は、縦方向が長くなるように形成された第1のエレメントE1と横方向が長くなるように形成された第2のエレメントE2とが直列に配置されている。
【0031】
かかる形状の薄膜強磁性金属においては、第1のエレメントE1に対して最も大きな抵抗値変化を促す垂直方向の磁界は、第2のエレメントE2に対し最小の抵抗値変化の磁界方向となる。そして、第1のエレメントE1の抵抗値R1は式(2)、第2のエレメントE2の抵抗値R2は式(3)で与えられる。
R1=R0−ΔRsin2θ・・・(2)
R2=R0−ΔRcos2θ・・・(3)
【0032】
図7(a)に示すようなエレメント構成のMRセンサの等価回路は図7(b)に示すようになる。
図7に示すように、第1のエレメントE1の、第2のエレメントE2と接続されていない方の端部をグランド(Gnd)とし、第2のエレメントE2の、第1のエレメントE1と接続されていない方の端部の出力電圧をVccとした場合に、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との接続部の出力電圧Voutは式(4)で与えられる。
Vout=(R1/(R1+R2))×Vcc…(4)
【0033】
式(4)に、式(2)、(3)を代入し整理すると、式(5)の通りとなる。
Vout=Vcc/2+α×cos2θ…(5)
ここで、αは、α=(ΔR/(2(2×R0−ΔR)))×Vccである。
式(5)により、磁界の方向は、Voutを検出することで把握することができる。
【0034】
図8は、磁石が直線運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
図8(a)に示すように、N極とS極が交互に配列された磁石に対して、図7に示したMRセンサを、規定磁界強度以上の磁界強度が印加されるギャップ(磁石とMRセンサとの距離)Lで、かつ磁界の方向変化がMRセンサのセンサ面に寄与するように配置する。
【0035】
そして、磁石を、図8(c)に示した、N極中心からS極中心までの距離(以下、「着磁ピッチ」と称する場合もある。)λ分、図8(a)に示すように左方向に移動させる。かかる場合、MRセンサには、磁石の位置に応じて図8(c)に示した矢印の向きの磁界が印加されることとなり、磁石が着磁ピッチλを移動したとき、センサ面では磁界の方向が1/2回転する。ゆえに、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との接続部の出力電圧Voutの波形は、式(5)に示した「Vout=Vcc/2+α×cos2θ」より、図8(d)に示すように1周期の波形となる。
【0036】
図9は、MRセンサの他の例を示す図である。
図7に示したエレメント構成の代わりに図9(a)に示すようなエレメント構成にすれば、図9(b)に示すように、一般的に知られているホイートストン・ブリッジ(フルブリッジ)の構成にすることができる。ゆえに、図9(a)に示すエレメント構成のMRセンサを用いることにより検出精度を高めることが可能となる。
【0037】
磁石の運動の方向を検出する手法について説明する。
図6に示した磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係および式(1)「R=R0−ΔRsin2θ」からすると、図5で見た場合に、磁界の向きを電流の方向に対して時計回転方向に回転させても反時計回転方向に回転させても薄膜強磁性金属の抵抗値は同じである。ゆえに、薄膜強磁性金属の抵抗値を把握できても磁石の運動の方向は把握できない。
【0038】
図10は、磁石の運動方向を検知するのに用いる出力の組み合わせの一例を示す図である。図10のように1/4周期の位相差を持った2つの出力を組み合わせることで磁石の運動方向の検知が可能となる。これらの出力を得る為には、図8で示す(i)と(ii)又は(i)と(iv)の位相関係となるように、二つのMRセンサを配置すればよい。
図11は、MRセンサの配置の例を示す図である。図11に示すように2つのMRセンサを重ね、一方のセンサを他方のセンサに対して45度傾けて配置することも好適である。
【0039】
図12は、MRセンサの他の例を示す図である。図12(a)に示すように、2組のフルブリッジ構成のエレメントを互いに45度傾けて一つの基板上に形成し、図12(b)に示すような等価回路となるエレメント構成にすることも好適である。これにより、一つのMRセンサで、図12(c)に示すように、正確な正弦波、余弦波の出力が可能となる。それゆえ、図12に示すエレメント構成のMRセンサの出力値により、MRセンサに対する磁石の運動方向及び運動量を把握することができる。
【0040】
上述したMRセンサの特性に鑑み、本実施の形態に係る検出装置10においては、相対角度センサ30として、図12に示すエレメント構成のMRセンサを用いる。相対角度センサ30は、上述したように、磁石20の外周面に対して垂直に配置され、第2の回転軸120の軸方向の位置は、磁石20の領域内である。それゆえ、かかる場合には、第1の回転軸110と共に回転する磁石20の磁場により、相対角度センサ30では、磁石20の位置に応じて、図8(c)に示すような磁場方向の変化となる。
【0041】
その結果、磁石20が着磁ピッチλを移動(回転)したとき、相対角度センサ30の感磁面では磁場の方向が1/2回転すると共に、相対角度センサ30からの出力値VoutA,VoutBは、それぞれ図12(c)に示すような1/4周期の位相差となる余弦曲線(余弦波)および正弦曲線(正弦波)となる。
すなわち、運転者がステアリングホイールを回転すると、これに伴って第1の回転軸110が回転し、トーションバー130が捩れる。そして、第2の回転軸120が第1の回転軸110より少し遅れて回転する。この遅れは、トーションバー130に連結された第1の回転軸110と第2の回転軸120との回転角度の差となって現れる。検出装置10は、この回転角度の差に応じた、1/4周期の位相差の、余弦曲線および正弦曲線となるVoutA,VoutBを出力する。
なお、相対角度センサ30の感磁面とは、相対角度センサ30において磁場を検出することができる面のことである。
【0042】
ECU200の相対角度演算部210は、相対角度センサ30の出力値VoutAおよびVoutBを基に、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度θtを以下の式(6)を用いて演算する。
θt=arctan(VoutB/VoutA)…(6)
このようにして、相対角度演算部210は、相対角度センサ30からの出力値に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度及び捩れ方向、つまりはステアリングホイールに加わるトルクの大きさ及び向きを把握することが可能となる。
【0043】
また、上述のように構成された検出装置10を組み付ける際には、フラットケーブルカバー60と、プリント基板40を取り付けたベース50と、フラットケーブルカバー60とベース50との間に収容するフラットケーブル70と、を予めユニット化しておく。そして、そのユニットを、第2の回転軸120が組み付けられた第1ハウジング150に、フラットケーブルカバー60の凸部61が第1ハウジング150の凹部151に嵌るように取り付ける。その際、ベース50を、第2の回転軸120に取り付ける。
このように、検出装置10を予めユニット化が可能な構造とすることで組み付け性を向上させることができる。
【0044】
次に、ハーネスコンプ300について説明する。
図13は、本実施の形態に係るハーネスコンプ300の外観図である。
ハーネスコンプ300は、複数の電線310と、これら複数の電線310を保持する電線保持部材の一例としてのグロメット320と、グロメット320の移動を抑制する外側部材の一例としてのソケット330と、ソケット330に嵌め合わされるキャップ340と、を備えている。また、ハーネスコンプ300は、複数の電線310の一方の端部に連結される第1のコネクタ350と、複数の電線310の他方の端部に連結される第2のコネクタ360と、を備えている。また、ハーネスコンプ300は、グロメット320と第1のコネクタ350との間において複数の電線310を束ねる第1のカバー370と、グロメット320と第2のコネクタ360との間において複数の電線310を束ねる第2のカバー380と、を備えている。
【0045】
そして、本実施の形態に係るハーネスコンプ300においては、4本の電線310を有しており、これら4本の電線310の一方の端部が、第1のコネクタ350、接続端子62などを介してプリント基板40(図2参照)に、4本の電線310の他方の端部が、第2のコネクタ360などを介してECU200に接続されている。そして、4本の電線310が、ECU200から相対角度センサ30への電源供給や、相対角度センサ30からECU200への出力値の伝送に用いられる。
【0046】
電線310は、線状に引き伸ばされた金属などの導体が絶縁体で覆われたものであり、電気を伝導する。本実施の形態に係るハーネスコンプ300においては、4本の電線310を有しており、これら4本の電線310の一方の端部が第1のコネクタ350に接続され、他方の端部が第2のコネクタ360に接続されるとともに、絶縁体の第1のカバー370および第2のカバー380にて束ねられている。
【0047】
図14は、グロメット320、ソケット330およびキャップ340の概略構成図である。(a)は、第2のコネクタ360側から見た斜視図であり、(b)は、第1のコネクタ350側から見た斜視図である。(c)は、(a)におけるA−A断面図である。
図15(a)は、第2ハウジング160の概略構成図である。図15(b)は、(a)におけるB−B断面図である。図15(c)は、ハーネスコンプ300が第2ハウジング160に装着された状態を示す図である。
グロメット320は、略楕円柱状の楕円柱部321と、円筒状の円筒部322とを備えている。そして、楕円柱部321には、電線310を通すために柱方向に形成された電線孔323が電線310の数と同数(本実施の形態においては4つ)形成されている。また、楕円柱部321の外周面には、周方向の全周に亘って外周面から外側に突出する突起324が、柱方向(電線孔方向)に複数(本実施の形態においては3つ)設けられている。楕円柱部321の外周面は、第2ハウジング160の連通孔161の内側連通孔161aを形成する周囲の壁163の内周面の大きさと同じであり、第2ハウジング160に嵌合された状態では、その外周面から外側に突出する突起324が周囲の壁163に押されることにより全体的に内側に弾性変形する。これにより、グロメット320は、電線孔323の周囲部分にて電線孔323に挿入された電線310を押圧し、電線310の移動を抑制する。なお、このグロメット320は、ゴムなどの弾性材料を加硫成形することで上記所定形状に成形されている。
【0048】
ソケット330は、基本的には略楕円柱状であり、その中央部には、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を、柱方向の一方の端部から他方の端部へ通すための貫通孔331が形成されている。楕円柱状の外周面の大きさは、第2ハウジング160の連通孔161の外側連通孔161bを形成する周囲の壁163の内周面の大きさと同じかやや小さい。また、ソケット330は、柱方向の一方の端面側に、この端面から柱方向の外側に三日月柱状に突出した三日月柱部332を楕円の長辺方向の両側に2つ備えるとともに、中央部にこの端面から円柱状に凹んだ円柱部333が形成されている。また、ソケット330の楕円の短辺方向の一方の端面(図13、図14においては上側)には、その中央部に、この端面から貫通孔331まで通じ、キャップ340が嵌め合わされる嵌合孔334が形成されている。なお、このソケット330は、樹脂をインジェクション成形することで上記所定形状に成形されている。
【0049】
キャップ340は、四角柱状の第1の四角柱部341と、横方向には第1の四角柱部341の大きさよりも小さい四角形で縦方向には第1の四角柱部341の長さよりも長い四角柱状の第2の四角柱部342と、を備えている。第2の四角柱部342の先端は、基本的には楕円柱状のソケット330の柱方向(貫通孔331の方向)に波形となるように形成されている。また、第1の四角柱部341の4つの側面には、この側面から外側に突出する突出部341aが設けられている。なお、このキャップ340は、樹脂をインジェクション成形することで上記所定形状に成形されている。
【0050】
ソケット330の貫通孔331および嵌合孔334は、キャップ340の形状に対応するように以下のように形成されている。
すなわち、嵌合孔334は、キャップ340の第1の四角柱部341の形状に沿う第1の四角柱孔334aと、第2の四角柱部342の形状に沿う第2の四角柱孔334bとから構成され、ソケット330の第1の四角柱孔334aの終端には、キャップ340の第1の四角柱部341の移動を規制するための規制面335が設けられている。また、第1の四角柱孔334aの、楕円柱状のソケット330の短辺方向(図14においては上下方向)の長さは、キャップ340の第1の四角柱部341の長さよりも大きく形成されており、キャップ340の第1の四角柱部341が規制面335に接触するまで押し込まれた場合には、第1の四角柱部341が第1の四角柱孔334a内に収まるように形成されている。言い換えれば、キャップ340の外面がソケット330の外面から突出しないように形成されている。また、キャップ340の第2の四角柱部342の、楕円柱状のソケット330の短辺方向(図14においては上下方向)の長さは、ソケット330の第2の四角柱孔334bの長さよりも大きく設定されており、キャップ340がソケット330に嵌合された状態で、第2の四角柱部342が貫通孔331内に突出するようになっている。
また、貫通孔331は、基本的には円柱状であるが、柱方向(貫通孔331の方向)の中央部に、キャップ340の第2の四角柱部342の先端の波形に対応するように、柱方向が波形となるように凹んだ波形凹部331aが形成されている。そして、キャップ340がソケット330に嵌合された状態では、キャップ340の第2の四角柱部342の先端と、ソケット330の波形凹部331aとで第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を挟み込み、波形に屈曲させる。
【0051】
また、ソケット330は、楕円の長辺方向の両端部に、長辺方向に弾性変形するフック390を備えている。フック390は、楕円柱状のソケット330の本体から、柱方向(貫通孔方向)に伸びるように設けられており、その外側の面がソケット330の外周面に沿うように形成されている。そして、フック390は、ソケット330の楕円柱状の外周面から外側に突出するように柱方向(貫通孔方向)に対して傾斜した傾斜面391と、傾斜面391の終端から長辺方向の内側に長辺方向と平行に向かう面、言い換えれば柱方向(貫通孔方向)に垂直な面である凸部側垂直面の一例としての垂直面392とを、柱方向(貫通孔方向)の途中に備えている。そして、傾斜面391の始端とソケット330の本体との間には、傾斜面391および垂直面392が長辺方向に弾性変形し易くなるように長孔393が形成されている。
そして、ソケット330の本体には、フック390の周囲に、フック390が所望量弾性変形してもソケット330の本体に干渉しないようにするのに十分に凹んだフック用凹部336が形成されている。
【0052】
以上のように構成されたハーネスコンプ300は、以下のようにして組み立てられる。
すなわち、先ず、グロメット320に形成された複数の電線孔323それぞれに電線310を挿入する。その後、グロメット320の円筒部322の内側に接着剤を塗布し、グロメット320に対して複数の電線310が動かないように位置決めを行う。また、複数の電線310を、第1のカバー370および第2のカバー380で束ねる。
そして、グロメット320の円筒部322側に配置された第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を、ソケット330の貫通孔331に通し、グロメット320の楕円柱部321の端面がソケット330の三日月柱部332の端面と接触するようにソケット330を組み付ける。その後、ソケット330の嵌合孔334に、キャップ340を嵌合し、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を波形に屈曲させる。また、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の先端を第2のコネクタ360に接続する。なお、グロメット320の円筒部322の内側に接着剤が塗布されているので、キャップ340をソケット330に嵌合する際に複数の電線310を押さえたとしても電線310がずれることが抑制される。
他方、グロメット320の円筒部322が配置された側とは反対に配置された第1のカバー370で束ねられた複数の電線310の先端を第1のコネクタ350に接続する。
【0053】
また、このハーネスコンプ300は、以下のようにして電動パワーステアリング装置100に組み付けられる。
すなわち、第1ハウジング150および第2ハウジング160に、第1の回転軸110、第2の回転軸120、フラットケーブルカバー60などを組み付け、第3ハウジング170を組み付ける前の状態で、第1のコネクタ350側から第2ハウジング160に形成された連通孔161に通す。そして、グロメット320の突起324が連通孔161の周囲の壁163の内周面に接触するように嵌合するとともに、ソケット330のフック390が、第2ハウジング160に形成された凹部162に嵌るまで、グロメット320およびソケット330を押し込んでいく。
ソケット330を連通孔161に差し込むと、フック390の傾斜面391が第2ハウジング160における連通孔161の周りの壁に接触して弾性変形し、その後さらに深く差し込まれて傾斜面391が第2ハウジング160の凹部162に嵌り込むことで変形状態から復帰する。このとき、ソケット330のフック390の垂直面392は、第2ハウジング160の凹部162におけるソケット330の挿入方向とは垂直に形成された凹部側垂直面と対向する。グロメット320は、その楕円柱部321における円筒部322が配置された側の面がソケット330の三日月柱部332に押されることにより、連通孔161の周囲の壁163との間に生じる摩擦力に抗して内側へ移動する。このようにして、グロメット320およびソケット330を第2ハウジング160に装着する。そして、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の接続端子62に差し込む。また、第2のコネクタ360をECU200の端子に差し込む。
【0054】
他方、ハーネスコンプ300を取り外す場合には、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の端子から取り外した後、第2ハウジング160の外側からソケット330のフック390を内側に弾性変形させながら手前に引くことで、グロメット320およびソケット330を第2ハウジング160の連通孔161から取り外せばよい。そして、その後、第1のコネクタ350を第2ハウジング160の連通孔161から引き抜き、ハーネスコンプ300を取り外す。
【0055】
以上のように構成され、第2ハウジング160に装着されるハーネスコンプ300においては、グロメット320が第2ハウジング160に嵌合されると、主にグロメット320の突起324にてハウジング140内を密封する。また、グロメット320の突起324が第2ハウジング160の連通孔161の周囲の壁163に押されることで電線孔323の径が小さくなるように弾性変形し、複数の電線310をより強く保持する。また、複数の電線310は、グロメット320の円筒部322の内側に塗布された接着剤にて接着されている。また、ソケット330にキャップ340が嵌合されて、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310が波形に屈曲された状態で保持されている。これらにより、組み付けられた後、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても電線310がグロメット320に対して移動することが抑制される。なお、グロメット320の円筒部322の半径方向の大きさは、ソケット330の三日月柱部332および円柱部333の内面との間に隙間が空くように設定されており、また、円筒部322の電線孔方向にはソケット330の円柱部333があることから、グロメット320の電線孔323の径が小さくなり、電線孔方向に大きくなるように弾性変形することが許容される。
また、ソケット330のフック390の垂直面392が第2ハウジング160の凹部162の垂直面162aと接触することでソケット330およびグロメット320が第2ハウジング160から脱落することが抑制される。したがって、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても、グロメット320は連通孔161から脱落し難くなるので、第1のコネクタ350から電線310が脱落したり、第1のコネクタ350が差し込まれた接続端子62が折れたりすることが抑制される。
【0056】
また、ハーネスコンプ300単体で持ち運びされるとしても、電線310がグロメット320に対して移動し難いように構成されているので、このハーネスコンプ300を電動パワーステアリング装置100に組み付ける作業者は、グロメット320から第1のコネクタ350までの電線310の長さに注意を払うことなく容易に組み付けることができる。
また、例えば板金で形成されたプレートをハウジング140の外側に配置することで、ハウジング140に形成された連通孔161に挿入されたグロメット320の抜け止めと、電線310の支持とを行う構成と比較すると、ハウジング140がアルミニウム製であるとしても、ハウジング140との間で電気化学的腐蝕が生じる部品がないことから耐食性を向上させることができる。また、組立性も向上させることができる。
【0057】
図16は、ハウジング140の他の形態を示す図である。
図15を用いて説明した外側連通孔161bの一部あるいは全部を、図16に示すように、第2ハウジング160と第3ハウジング170とで形成してもよい。言い換えれば、第3ハウジング170がボルト(不図示)などにより第2ハウジング160に固定されることで、第2ハウジング160と第3ハウジング170とが協働して外側連通孔161bを形成するようにしてもよい。つまり、図16(a)に示すように、第2ハウジング160における外側連通孔161bの、軸方向の他方の端部側(図1においては上側)の壁面をなくして、外側連通孔161bを開放する。一方で、第3ハウジング170に、第2ハウジング160との締結面から外側に電線孔方向に延出する延出部172を設ける。
【0058】
ハーネスコンプ300を電動パワーステアリング装置100に組み付ける際には、上述した実施の形態と同様にグロメット320およびソケット330を第2ハウジング160に装着し、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の端子に差し込んだ後に、第3ハウジング170を第2ハウジング160に取り付ける。これにより、図16(b)に示すように、ソケット330の上面が第3ハウジング170の延出部172により覆われることとなる。
ハーネスコンプ300を取り外す際には、第3ハウジング170を第2ハウジング160から外せば、ソケット330の上面が開放される。したがって、ソケット330およびグロメット320を容易に第2ハウジング160から取り外すことが可能となる。
【0059】
なお、上述した実施の形態に係るハーネスコンプ300においては、グロメット320を第2ハウジング160の連通孔161から脱落させ難くするために、ソケット330およびキャップ340を備えているが、特にかかる態様に限定されない。ハーネスコンプ300は、ソケット330およびキャップ340の代わりに、以下に説明するソケット430を備えてもよい。
【0060】
図17は、他の形態に係るハーネスコンプ300のグロメット320およびソケット430を示す図である。図18(a)は、他の形態に係るハーネスコンプ300がハウジング140に装着された状態を示す図であり、図18(b)は、他の形態に係るハーネスコンプ300が他の形態に係るハウジング140に装着された状態を示す図である。他の形態に係るハーネスコンプ300は、上述した実施の形態に係るハーネスコンプ300に対して、ソケット330およびキャップ340がソケット430に置き換わった点が異なり、その他は同じであるので、その説明は省略する。
【0061】
ソケット430は、楕円柱状の第1の楕円柱部431と、この第1の楕円柱部431の楕円の大きさよりも小さい大きさの楕円の楕円柱状の第2の楕円柱部432と、を有している。これら第1の楕円柱部431および第2の楕円柱部432は、第2のコネクタ360側から順に楕円の中心が同じになるように柱方向(連通孔方向)に並んでいる。第1の楕円柱部431の楕円形は、第2ハウジング160の連通孔161の大きさよりも大きく、第1の楕円柱部431で連通孔161の開口部を覆う。第2の楕円柱部432は、第2ハウジング160の連通孔161の大きさよりも小さく、連通孔161の中に挿入される。第1の楕円柱部431および第2の楕円柱部432の中央部には、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310を、柱方向の一方の端部から他方の端部へ通すための貫通孔433が形成されている。
【0062】
第1の楕円柱部431は、楕円の長辺方向の両端部であって第2の楕円柱部432の外側に、長辺方向に弾性変形するフック490を備えている。フック490は、第1の楕円柱部431における第1のコネクタ350側の端面から、柱方向に伸びるように設けられている。そして、フック490は、ソケット430の柱方向に対して傾斜した傾斜面491と、傾斜面491の終端から長辺方向の内側に長辺方向と平行に向かう面、言い換えれば柱方向に垂直な面である垂直面492と、を備えている。そして、傾斜面491の終端と第1の楕円柱部431の本体との間には、傾斜面491および垂直面492が長辺方向に弾性変形し易くなるように直方体状に形成されている。また、第1の楕円柱部431の本体における楕円の長辺方向の両端部であって垂直面492に対向する部位には、この本体を貫通する長孔434が形成されている。
第2の楕円柱部432は、第1のコネクタ350側の端面に、この端面から柱方向の外側に半月柱状に突出した半月柱部435を楕円の長辺方向の両側それぞれに備える。
なお、このソケット430は、樹脂をインジェクション成形することで上記所定形状に成形されている。
【0063】
以上のように構成された他の形態に係るハーネスコンプ300は、以下のようにして組み立てられる。
すなわち、先ず、グロメット320に形成された複数の電線孔323それぞれに電線310を挿入する。その後、グロメット320の円筒部322の内側に接着剤を塗布し、グロメット320に対して複数の電線310が動かないように位置決めを行う。また、複数の電線310を、第1のカバー370および第2のカバー380で束ねる。
そして、グロメット320の円筒部322側に配置された第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を、ソケット430の貫通孔433に通し、グロメット320の楕円柱部321の端面がソケット430の半月柱部435の端面と接触するようにソケット430を組み付ける。その後、第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310の先端を第2のコネクタ360に接続する。他方、グロメット320の円筒部322が配置された側とは反対に配置された第1のカバー370で束ねられた複数の電線310の先端を第1のコネクタ350に接続する。
【0064】
また、この他の形態に係るハーネスコンプ300は、以下のようにして電動パワーステアリング装置100に組み付けられる。
すなわち、第1ハウジング150および第2ハウジング160に、第1の回転軸110、第2の回転軸120、フラットケーブルカバー60などを組み付け、第3ハウジング170を組み付ける前の状態で、第1のコネクタ350側から第2ハウジング160に形成された連通孔161に通す。そして、グロメット320の突起324が連通孔161の周囲の壁163の内周面に接触するように嵌合するとともに、ソケット430のフック490が、第2ハウジング160に形成された凹部162に嵌るまで、グロメット320およびソケット430を押し込んでいく。
ソケット430を連通孔161に差し込むと、フック490の傾斜面491が第2ハウジング160における連通孔161の外側連通孔161bの周りの壁に接触して弾性変形し、その後さらに深く差し込まれて傾斜面491が第2ハウジング160の凹部162に嵌り込むことで変形状態から復帰する。グロメット320は、その楕円柱部321における円筒部322が配置された側の面がソケット430の半月柱部435に押されることにより、連通孔161の周囲の壁163との間に生じる摩擦力に抗して内側へ移動する。このようにして、グロメット320およびソケット430を第2ハウジング160に装着する。そして、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の接続端子62に差し込む。また、第2のコネクタ360をECU200の端子に差し込む。
【0065】
他方、他の形態にかかるハーネスコンプ300を取り外す場合には、ソケット430の第1の楕円柱部431の長孔434に、例えばマイナスドライバなどの治具を差し込み、フック490を内側に弾性変形させながら手前に引くことで、グロメット320およびソケット430を第2ハウジング160の連通孔161から取り外せばよい。そして、その後、第1のコネクタ350を第2ハウジング160の連通孔161から引き抜き、ハーネスコンプ300を取り外す。
【0066】
以上のように構成され、第2ハウジング160に装着される他の形態に係るハーネスコンプ300においては、グロメット320が第2ハウジング160に嵌合されると、主にグロメット320の突起324にてハウジング140内を密封する。また、グロメット320の突起324が第2ハウジング160の連通孔161の周囲の壁163に押されることで電線孔323の径が小さくなるように弾性変形し、複数の電線310をより強く保持する。また、複数の電線310は、グロメット320の円筒部322の内側に塗布された接着剤にて接着されている。これらにより、組み付けられた後、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても電線310がグロメット320に対して移動することが抑制される。なお、グロメット320の円筒部322の半径方向の大きさは、貫通孔433の内面との間に隙間が空くように設定されており、また、円筒部322の電線孔方向にはソケット430の貫通孔433があることから、グロメット320の電線孔323の径が小さくなり、電線孔方向に大きくなるように弾性変形することが許容される。
また、ソケット430のフック490の垂直面492が第2ハウジング160の凹部162の垂直面162aと接触することでソケット430およびグロメット320が第2ハウジング160から脱落することが抑制される。したがって、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても、グロメット320は連通孔161から脱落し難いので、第1のコネクタ350から電線310が脱落したり、第1のコネクタ350が差し込まれた接続端子62が折れたりすることが抑制される。
【0067】
また、他の形態に係るハーネスコンプ300単体で持ち運びされるとしても、電線310がグロメット320に対して移動し難いように構成されているので、このハーネスコンプ300を電動パワーステアリング装置100に組み付ける作業者は、グロメット320から第1のコネクタ350までの電線310の長さに注意を払うことなく容易に組み付けることができる。
また、例えば板金で形成されたプレートをハウジング140の外側に配置することで、ハウジング140に形成された連通孔161に挿入されたグロメット320の抜け止めと、電線310の支持とを行う構成と比較すると、ハウジング140がアルミニウム製であるとしても、ハウジング140との間で電気化学的腐蝕が生じる部品がないことから耐食性を向上させることができる。また、組立性も向上させることができる。
【0068】
また、他の形態に係るハーネスコンプ300を電動パワーステアリング装置100に組み付ける際には、上述した実施の形態と同様にグロメット320およびソケット430を第2ハウジング160に装着し、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の端子に差し込んだ後に、第3ハウジング170を第2ハウジング160に取り付ける。これにより、図18(b)に示すように、ソケット430の上面が第3ハウジング170の延出部172により覆われることとなる。ハーネスコンプ300を取り外す際には、第3ハウジング170を第2ハウジング160から外せば、ソケット430の上面が開放される。したがって、ソケット430およびグロメット320を容易に第2ハウジング160から取り外すことが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
10…検出装置、20…磁石、30…相対角度センサ、40…プリント基板、50…ベース、60…フラットケーブルカバー、70…フラットケーブル、100…電動パワーステアリング装置、110…第1の回転軸、120…第2の回転軸、130…トーションバー、140…ハウジング、180…ウォームホイール、190…電動モータ、200…電子制御ユニット(ECU)、210…相対角度演算部、300…ハーネスコンプ、310…電線、320…グロメット、330,430…ソケット、340…キャップ、350…第1のコネクタ、360…第2のコネクタ、370…第1のカバー、380…第2のカバー、390…フック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、
前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、
前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、
前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に挿入されるとともに、当該ハウジングに形成された当該連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有する外側部材と、
を備えることを特徴とする相対角度検出装置。
【請求項2】
前記電線保持部材は、前記電線との間に塗布された接着剤による接着力にて当該電線を保持することを特徴とする請求項1に記載の相対角度検出装置。
【請求項3】
前記外側部材の前記凸部は、前記ハウジングの前記連通孔への当該外側部材の挿入方向に対して傾斜する傾斜面を有して、当該挿入方向に対して垂直な方向に変位可能に設けられ、
前記外側部材は、前記連通孔に挿入される際に、前記凸部の前記傾斜面が前記連通孔の周囲の壁に押されることで当該凸部が前記挿入方向に対して垂直な方向に変位し、当該傾斜面が前記ハウジングの前記凹部まで到達したら当該凸部は当該垂直な方向の変位が復帰して当該凹部に嵌り込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の相対角度検出装置。
【請求項4】
前記外側部材の前記凸部は、前記傾斜面の終端から前記挿入方向に垂直に内側に向かうとともに、前記ハウジングの前記凹部に当該挿入方向とは垂直に形成された凹部側垂直面と対向する凸部側垂直面を有することを特徴とする請求項3に記載の相対角度検出装置。
【請求項5】
前記外側部材の前記凸部は、前記ハウジングの外部から操作されることにより、前記凸部側垂直面が前記凹部側垂直面と接触しなくなる位置まで変位可能に構成されていることを特徴とする請求項4に記載の相対角度検出装置。
【請求項6】
互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、
前記センサを収納するとともに、内外を連通する連通孔と当該連通孔の表面から凹んだ凹部とが形成されたハウジングと、
前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、
前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、
前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に挿入されるとともに、当該ハウジングに形成された当該連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有する外側部材と、
を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサからの電気信号を当該ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、
前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、
前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に挿入されるとともに、当該ハウジングに形成された当該連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有する外側部材と、
を備えることを特徴とする電線保持具。
【請求項1】
内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、
前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、
前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、
前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に挿入されるとともに、当該ハウジングに形成された当該連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有する外側部材と、
を備えることを特徴とする相対角度検出装置。
【請求項2】
前記電線保持部材は、前記電線との間に塗布された接着剤による接着力にて当該電線を保持することを特徴とする請求項1に記載の相対角度検出装置。
【請求項3】
前記外側部材の前記凸部は、前記ハウジングの前記連通孔への当該外側部材の挿入方向に対して傾斜する傾斜面を有して、当該挿入方向に対して垂直な方向に変位可能に設けられ、
前記外側部材は、前記連通孔に挿入される際に、前記凸部の前記傾斜面が前記連通孔の周囲の壁に押されることで当該凸部が前記挿入方向に対して垂直な方向に変位し、当該傾斜面が前記ハウジングの前記凹部まで到達したら当該凸部は当該垂直な方向の変位が復帰して当該凹部に嵌り込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の相対角度検出装置。
【請求項4】
前記外側部材の前記凸部は、前記傾斜面の終端から前記挿入方向に垂直に内側に向かうとともに、前記ハウジングの前記凹部に当該挿入方向とは垂直に形成された凹部側垂直面と対向する凸部側垂直面を有することを特徴とする請求項3に記載の相対角度検出装置。
【請求項5】
前記外側部材の前記凸部は、前記ハウジングの外部から操作されることにより、前記凸部側垂直面が前記凹部側垂直面と接触しなくなる位置まで変位可能に構成されていることを特徴とする請求項4に記載の相対角度検出装置。
【請求項6】
互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、
前記センサを収納するとともに、内外を連通する連通孔と当該連通孔の表面から凹んだ凹部とが形成されたハウジングと、
前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、
前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、
前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に挿入されるとともに、当該ハウジングに形成された当該連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有する外側部材と、
を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサからの電気信号を当該ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、
前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されるとともに、前記電線を保持する電線保持部材と、
前記ハウジングの前記連通孔における前記電線保持部材よりも外側の部位に挿入されるとともに、当該ハウジングに形成された当該連通孔の表面から凹んだ凹部に嵌り込む凸部を有する外側部材と、
を備えることを特徴とする電線保持具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−233756(P2012−233756A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101648(P2011−101648)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】
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