説明

真空バルブ用電気接点

【課題】
本発明は、二層以上からなる電気接点において、焼結時あるいは通電時における反り変形を抑え、優れた熱・電気伝導性を有する電気接点の適切な構造を提供することにある。
【解決手段】
本発明の電気接点は、円盤形状を有し、厚さ方向に接点層と高導電層との2つの層からなり、接点層は、CrとCuとTeから、高導電層は、Cuが主成分であり、前記高導電層は、接点面と反対側の面に、電気接点と同心円の溝を1本または複数本有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空遮断器,真空スイッチギヤ等に用いられる新規な真空バルブ用電気接点に関する。
【背景技術】
【0002】
真空遮断器等の真空を媒体とした電流開閉機器は、環境への影響が小さいことからガス遮断器等への代替えが進められ、大容量化が求められている。大電流遮断のための電気接点部材は、通電容量を大きくし、良好な熱伝導を保つため、高密度であることが必要である。そのため、一般の真空開閉機器に用いられるCr−Cu系の電気接点は、高密度化が可能な溶浸法や焼結法により製造されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、Cr−Cu低密度成形体にCuを溶融含浸して電気接点を製造している。また、特許文献2では、Cr−Cu系の高密度成形体を不活性雰囲気中で焼結することにより、高密度の電気接点を得ている。さらに、特許文献3では、偏平形状のCr粉末を特定方向に配向させて焼結するため、Cr含有量を少なくでき、高密度焼結が可能である。
【0004】
【特許文献1】特許第2874522号公報
【特許文献2】特開2005−135778号公報
【特許文献3】特許第3825275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶浸法により製造される従来のCr−Cu系電気接点は、接点層におけるCuマトリクスへのCr固溶により、導電率が低下するとともに硬さが大きい。このため、電気接点同士を接触させて通電するとき、実際の接触面積が小さくなり、発生するジュール熱が大きく、接点部分の温度上昇を招き、電気接点同士が溶着する場合がある。
【0006】
通電抵抗を小さくし、ジュール熱を抑制する手段として、接点面と反対の側にCuを主成分とする層を設けることがあるが、これは溶浸法により接点層と一体で形成されるため、Crの固溶により導電率が低下し、ジュール熱抑制の顕著な効果が得られない。
【0007】
一方、焼結法により製造される電気接点は、その製造過程でCuの溶融がないため、Cuマトリクス中へのCrの固溶はない。
【0008】
しかしながら、焼結法の生産性を活かすために全体がCr−Cu系の接点層成分で構成され、また、溶浸法に比べると緻密性に劣るため、通電による発生ジュール熱の抑制効果が小さい。
【0009】
したがって、焼結法で製造される電気接点において、接点面と反対の側にCuからなる層を設けることで、ジュール熱の発生量を抑えることが可能となるが、接点層とCu層では焼結収縮率が異なるため、焼結後に反り変形が発生することが危惧される。
【0010】
また、機械加工などにより反り部分を削除して電気接点に用いても、通電時の温度上昇により、通電中に反りが生じて電気接点同士の接触面積が低下し、接触抵抗増大によるジュール熱溶着が生ずる恐れがある。
【0011】
本発明の目的は、二層以上からなる電気接点において、焼結時あるいは通電時における反り変形を抑え、優れた熱・電気伝導性を有する電気接点の適切な構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電気接点は、円盤形状を有し、厚さ方向に2つの層からなるもので、接点層はCrとCuとTeからなり、導体に接続する側の高導電層はCuが主成分であり、接点層の厚さをt1、高導電層の厚さをt2、電気接点の直径をDとしたとき、それぞれが式(1)および式(2)を満たす範囲にあり、高導電層は接点面と反対側の面に、電気接点と同心円の溝を1本または複数本有するものである。
0.15t2≦t1≦1.27t2 ・・・(1)
2.94(t1+t2)≦D≦5.55(t1+t2) ・・・(2)
また、本発明の電気接点は、円盤形状を有し、厚さ方向に複数の層からなるもので、接点層はCrとCuとTeからなり、導体に接続する側の高導電層はCuが主成分であり、接点層と高導電層の間にそれらの中間的な組成からなる中間層を有し、接点層の厚さをt1、高導電層と中間層の厚さの和をt3、電気接点の直径をDとしたとき、それぞれが式(3)および式(4)を満たすものである。
0.15t3≦t1≦0.80t3 ・・・(3)
2.94(t1+t3)≦D≦8.10(t1+t3) ・・・(4)
さらに、本発明の電気接点は、高導電層とそれに連なる中間層において、接点面と反対側の面に電気接点と同心円の溝を1本または複数本有するものである。
【0013】
本発明の電気接点において、接点面と反対側の面に設けられる同心円溝は、幅をw1、深さをd1、直径をD1、高導電層と中間層の厚さの和をt3、電気接点の直径をDとしたとき、それぞれが式(5)〜(7)の範囲にあるものである。
0.015D≦w1≦0.045D ・・・(5)
0.08t3≦d1≦0.95t3 ・・・(6)
0.35D≦D1≦0.85D ・・・(7)
また、本発明の電気接点において、高導電層あるいはそれに連なる中間層は、その側面外周に溝を有し、側面溝の幅をw2、深さをd2、接点面と反対側の面から溝までの距離をh、高導電層と中間層の厚さの和をt3、電気接点の直径をDとしたとき、それぞれが式(8)〜(10)の範囲にあるものである。
0.025t3≦w2≦0.5t3 ・・・(8)
0.003D≦d2≦0.085D ・・・(9)
0.1t3≦h≦0.9t3 ・・・(10)
なお、本発明の電気接点における高導電層は、接点面の反対側の面において電気接点の外周部へ向かって厚さが薄くなるようなテーパ形状を有するもので、そのテーパの傾斜は1/2〜1/30である。
【0014】
本発明の電気接点における接点層は、Crを15〜30重量%、Teを0.01〜0.2重量%含み、残部がCuからなるもので、さらにMo,W,Nbのいずれか1種をCrとの合計で30重量%以下含むことができる。
【0015】
本発明の電気接点の形状は、円盤形状の円中心に形成された中心孔と、この中心孔に対して非接触で円中心から外周部に向かって形成された複数本の貫通したスリット溝とを有し、このスリット溝によって分離された羽根型の平面形状である。
【0016】
本発明の電気接点における高導電層は、それをなすCu中のCr固溶量が10ppm以下である。
【0017】
本発明の電気接点の製造方法は、接点層をなす成分の粉末を所望の組成に配合した混合粉末と、中間層をなす成分の粉末を所望の組成に配合した混合粉末と、高導電層をなすCu粉末とを層状に一体に加圧成形した後、Cuの融点以下で加熱焼結するもので、この焼結は還元雰囲気中あるいは不活性雰囲気中で行うものである。
【0018】
本発明の電気接点を用いた電極は、円盤状の電気接点の高導電層の面に一体に接合された電極棒を有するものである。
【0019】
本発明に関わる真空バルブは、真空容器内に一対の固定側電極および可動側電極とを備え、固定側電極と可動側電極の少なくとも一方が前記の電極からなるものである。
【0020】
本発明に関わる真空遮断器は、真空容器内に一対の固定側電極および可動側電極を備えた前記の真空バルブと、真空バルブ内の固定側電極および可動側電極の各々に真空バルブ外へ接続された導体端子と、可動側電極を駆動する開閉手段とを備えたものである。
【0021】
本発明に関わる真空開閉機器は、真空容器内に一対の固定側電極および可動側電極を備えた前記の真空バルブを導体によって直列に複数接続し、可動側電極を駆動する開閉手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によって、二層以上からなる電気接点においては、焼結時あるいは通電時における反り変形を抑え、優れた熱・電気伝導性を有する電気接点の適切な構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本形態の電気接点は、円盤形状を有し、厚さ方向に2つの層からなる。このうち、接点層はCrとCuとTeからなり、導体に接続する側の高導電層はCuが主成分である。接点層をCr−Cu系の合金とすることで、優れた遮断性能,耐電圧性能を有し、電気接点として必要な性能を満足することができる。
【0024】
一方、接点面と反対側にCuからなる高導電層を設けることによって、電気接点全体の熱および電気の伝導性を向上させ、通電時のジュール熱の発生を抑制し、耐溶着性に優れた電気接点とすることができる。
【0025】
また、接点層の厚さをt1、高導電層の厚さをt2、電気接点の直径をDとしたとき、それぞれが式(1)および式(2)を満たす範囲にあることが望ましい。
【0026】
これにより、反りや層間剥離などの不具合のない健全な接点形状を有し、ジュール熱発生を抑制するのに十分な熱的・電気的特性を有する電気接点を得ることができる。
【0027】
さらに、高導電層は接点面と反対側の面に、電気接点と同心円の溝を1本または複数本有することで、通電時のジュール熱による高導電層の伸びを抑制し、反りや剥離を防止することができる。
0.15t2≦t1≦1.27t2 ・・・(1)
2.94(t1+t2)≦D≦5.55(t1+t2) ・・・(2)
本形態の電気接点は、接点層と高導電層の間にそれらの中間的な組成からなる中間層を有し、厚さ方向に複数の層からなるものでもよい。
【0028】
この中間層を設けることで、製造過程における接点層と高導電層の収縮差から生ずる応力を緩和し、反りや層間剥離などの不具合の発生を防止できるとともに、通電時における熱膨張差を緩和し、反りによる接触抵抗増加を抑えることができる。
【0029】
また、接点層の厚さをt1、高導電層と中間層の厚さの和をt3、電気接点の直径をDとしたとき、それぞれが式(3)および式(4)を満たすことが望ましく、これにより反り変形を防止できる。
【0030】
さらに、高導電層とそれに連なる中間層は、接点面と反対側の面に電気接点と同心円の溝を1本または複数本有することで、通電時のジュール熱による高導電層の伸びを抑制し、反りや剥離を防止できる。
0.15t3≦t1≦0.80t3 ・・・(3)
2.94(t1+t3)≦D≦8.10(t1+t3) ・・・(4)
本形態の電気接点において、接点面と反対側の面に設けられる同心円溝は、幅をw1、深さをd1、直径をD1、高導電層と中間層の厚さの和をt3、電気接点の直径をDとしたとき、それぞれが式(5)〜(7)の範囲にあることが反りや剥離を防止する上で望ましい。
【0031】
幅w1および深さd1が(5)式あるいは(6)式の範囲より小さいと、高導電層の伸び抑制に効果が見られず、(5)式あるいは(6)式の範囲より大きいと、電気接点の強度が低下し、開閉動作時に電気接点の破損が生じやすくなる。
【0032】
また、直径D1が(7)式の範囲より小さいと、通電部材である電極棒との接合部に近い位置に同心円溝が設けられることになり、開閉動作時の衝撃による変形を招きやすく、(7)式の範囲より大きいと、外周付近に同心円溝が設けられることになり、高導電層の伸びを抑制する効果が不足する。
0.015D≦w1≦0.045D ・・・(5)
0.08t3≦d1≦0.95t3 ・・・(6)
0.35D≦D1≦0.85D ・・・(7)
本形態の電気接点において、高導電層とそれに連なる中間層の側面外周に溝を設けることによって、通電ジュール熱で接点層と高導電層の熱膨張差から生ずる内部応力を緩和することができ、これが反りや剥離の抑制につながる。
【0033】
側面溝は幅をw2、深さをd2、接点面と反対側の面から溝までの距離をh、高導電層と中間層の厚さの和をt3、電気接点の直径をDとしたとき、それぞれが式(8)〜(10)の範囲にあることが望ましい。
【0034】
幅w2および深さd2が(8)式あるいは(9)式の範囲より小さいと応力緩和の効果が得られず、(8)式あるいは(9)式の範囲より大きいと電気接点の強度低下を招く。
【0035】
また、接点面と反対側の面から溝までの距離hが(10)式の範囲より小さいと、応力緩和に効果を示さず、(10)式の範囲より大きいと接点層と高導電層の剥離を誘発する。
0.025t3≦w2≦0.5t3 ・・・(8)
0.003D≦d2≦0.085D ・・・(9)
0.1t3≦h≦0.9t3 ・・・(10)
本形態の電気接点における高導電層は、接点面の反対側の面において電気接点の外周部へ向かって厚さが薄くなるようなテーパ形状を有することが望ましい。
【0036】
これによって、高導電層の伸びが減少し、通電時における電気接点の反りを抑制することができる。このテーパの傾斜は、反り変形抑制の効果や生産性を考慮して1/2〜1/30の範囲が適切である。
【0037】
本形態の電気接点における接点層は、Crを15〜30重量%、Teを0.01〜0.2重量%含み、残部がCuからなり、さらにMo,W,Nbのいずれか1種をCrとの合計で30重量%以下含むことができる。
【0038】
この組成により、優れた遮断性能,耐電圧性能および通電性能を維持することができ、Cr量がこれより多いと通電性能が著しく低下する。
【0039】
また、Teを0.01〜0.2重量%含むことにより材料強度が低下し、溶着時の開離を容易にすることができる。Te量がこれより少ないと溶着開離に対する効果が不足し、これより多いとTeの揮散により耐電圧性能が低下する。
【0040】
さらに、接点層に20重量%以下のMo,W,Nbのいずれか1種を含むことにより、接点層中に硬質粒子が微細に分散することになり、溶着の発生を抑制するとともに、溶着した際の開離を容易にすることができる。
【0041】
本形態の電気接点の形状は、円盤形状の円中心に中心孔を形成し、また、この中心孔に非接触で円中心から外周部に向かって複数本の貫通したスリット溝を形成することにより、スリット溝で分離された羽根型の平面形状とすることが望ましい。
【0042】
この中心孔は、電流遮断時に発生するアークが電気接点の中心に点弧するのを防ぎ、アークの停滞による遮断不能を回避するためのものである。また、スリット溝は、電磁力によってアークを外周側へ駆動し、電流遮断を促進する効果をもつ。
【0043】
本形態の電気接点における高導電層をなすCuは、含まれるCrの固溶量が10ppm以下であることが望ましい。これにより、高導電層の熱および電気の伝導度を高く維持することができ、通電時のジュール熱の発生を低減する効果を発揮する。
【0044】
以上の効果を有する電気接点は、以下に示す焼結法により製造することができる。
【0045】
すなわち、接点層をなす成分の粉末を所望の組成に配合した混合粉末と、中間層をなす成分の粉末を所望の組成に配合した混合粉末と、高導電層をなすCu粉末とを層状に一体に加圧成形した後、Cuの融点以下で加熱焼結する。それぞれの層を構成する原料粉末を層状に一体で成形することにより、焼結時の層間剥離を防止できる。
【0046】
また、焼結法で製造することにより、接点層の硬さは比較的低く、また、CuマトリクスにCrの固溶がなく高導電性を有するため、相手側接点との接触抵抗を低減し、ジュール熱の発生を抑制することができる。
【0047】
さらに、Cuからなる高導電層へのCrの固溶がないため、Cr量を10ppmに抑えることができ、前記の効果を得ることができる。
【0048】
この焼結は、還元雰囲気中あるいは不活性雰囲気中で行うことにより、Cuマトリクスの緻密化を促進し、健全な焼結組織と優れた熱的・電気的特性を有する電気接点が得られる。
【0049】
なお、本形態の電気接点は、上記混合粉末の低密度成形体にCuを溶融含浸する方法によっても製造可能であるが、焼結法では最終形状の金型成形によって前記羽根型に成形できるため、より安価に製造が可能である。
【0050】
本形態の電気接点を用いた電極は、円盤形状を有する電気接点の高導電層の面に、通電部材である電極棒が一体に接合されることにより、良好な通電性能を有するとともに、接点部で発生したジュール熱を速やかに真空バルブ外へ導くことができる。
【0051】
なお、円盤状の電気接点は、その円中心に中央孔を設け、さらに曲線形状をもつスパイラル型のスリット溝によって羽根型に分離された形状を有することが望ましい。
【0052】
中央孔を設けることにより、電流遮断時に発生するアークが接点面の中央で発生し、停滞するのを防ぐことができる。
【0053】
また、スリット溝を設けることにより、発生したアークを電気接点の外周側へ移動させ、速やかに電流を遮断することができる。
【0054】
なお、本形態の電気接点を用いた電極は、円盤状の電気接点の高導電層側に、Cuからなるカップ形状をなすコイル電極を一体に接合し、そのコイル電極の底部に電極棒を一体に接合した構造でもよい。
【0055】
これにより、電流遮断時に発生する磁界を利用してアークを消滅させ、優れた遮断性能を得ることができる。
【0056】
本形態に関わる真空バルブは、真空容器内に一対の固定側電極および可動側電極とを備え、固定側電極と可動側電極の少なくとも一方が本発明の電気接点を用いた電極からなるものである。
【0057】
また、本形態に関わる真空遮断器は、少なくとも一方に本発明の電気接点を用いた一対の固定側電極および可動側電極を真空容器内に備えた真空バルブと、この真空バルブ内の固定側電極および可動側電極の各々に真空バルブ外へ接続された導体端子と、可動側電極を駆動する開閉手段とを備えたものである。
【0058】
さらに、本形態に関わる真空開閉機器は、少なくとも一方に本発明の電気接点を用いた一対の固定側電極および可動側電極を真空容器内に備えた真空バルブを、導体によって直列に複数接続し、可動側電極を駆動する開閉手段を備えたものである。
【0059】
これにより、通電時に接点部で発生するジュール熱を抑え、電気接点同士の溶着が発生しにくく、通電性能および耐溶着性能に優れた真空遮断器、さらには各種真空開閉機器が得られる。
【0060】
以下、発明を実施するための最良の形態を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
表1および表2に示す組成を有する電気接点を作製し、これを用いて電極を作製した。
【0064】
図1(a),(b),図2(a),(b),図3(a)は、上記電気接点を用いた電極の構造を示す図である。
【0065】
図1(a),(b),図2(a),(b),図3(a)において、1は電気接点、2はアークに駆動力を与えるためのスリット溝、3は電流遮断時に溶融した電気接点1の成分がスリット溝2を通って裏面を汚損するのを防ぐためのステンレス製の汚損防止板、4は電極棒、5はろう材、44は中央孔、45は接点層、46は高導電層、47は同心円溝、48は中間層、49は側面溝、50は高導電層の外周部に設けたテーパである。
【0066】
表1および表2に示す組成を有する電気接点1の作製方法は、次の通りである。
【0067】
まず、粒径75μm以下のCr粉末とCu粉末、60μm以下のTe粉末あるいはNb粉末とを、表1および表2に示す接点層の組成となるような配合比でV型混合器により混合し、接点層の原料とした。
【0068】
また、中間層の原料についても、同様の方法で混合した。
【0069】
このとき、Nb以外にMoあるいはWを含む場合にも、同様にMo粉末あるいはW粉末を混合することによって、接点層の原料粉末とすることができる。
【0070】
次に、円盤状の金型に接点層,中間層の順でそれぞれの原料粉を層状に充填し、さらに高導電層の原料となる上記Cu粉末を充填し、油圧プレスにより400MPaの圧力で一体で加圧成形した。
【0071】
この際、各層の厚さが表1に示す値となるように、原料粉の充填量を調整した。
【0072】
なお、比較のため、一部の電気接点1については、それぞれの層ごとに別個に金型に充填し、成形した。
【0073】
以上の方法で得られた成形体の相対密度は、およそ68〜73%であった。
【0074】
これらを真空中で、1060℃×2時間加熱して焼結し、電気接点1の素材となる焼結体を作製した。
【0075】
この際、層ごとに別個に成形した成形体については、接点層,中間層,高導電層の順で積層載置し、同様に焼結した。
【0076】
この結果、相対密度が93〜97%の焼結体が得られたが、層ごとに成形し、それらを積層して焼結した場合(表1のNo.10)には、層間で剥離が生じたことから、それぞれの層を別個に成形する方法は適正でなく、一体で成形する必要があることが確認された。
【0077】
また、図1(a)において接点層の厚さをt1、高導電層の厚さをt2、電気接点の直径をDとしたとき、前記のこれらの関係式(1)および(2)の範囲外にあるNo.5およびNo.6の場合には、層間の収縮差から生ずる熱応力により、焼結体の外周部において層間の剥離が発生した。
【0078】
また、同様に関係式(1)および(2)の範囲外にあるNo.3の場合は、焼結後の反り寸法が著しく大きい。このことから、t1,t2およびDの関係は式(1)および(2)の範囲内にあることが必要であることが確認された。
【0079】
本実施例では、比較のために従来技術である溶浸製法によっても電気接点1を作製した。
【0080】
原料には上記のCr,CuおよびNb粉末を用い、Cr粉末を55重量%、Cu粉末を40.5重量%、Nb粉末を4.5重量%の割合でV型混合器により混合し、これを円盤状の金型に充填し、油圧プレスにより145MPaの圧力で加圧成形してスケルトン(低密度成形体)を作製した。
【0081】
このスケルトンを黒鉛るつぼに入れ、その上にCuインゴットを載置し、真空中において1200℃×2時間加熱し、スケルトンにCuを溶融含浸させることによって、表1のNo.1の接点層組成を有し、高導電層と一体化した溶浸体を作製した。
【0082】
以上で得られた焼結体および溶浸体を機械加工し、表1および表2に示す寸法を有する図1(a),(b),図2(a),(b),図3(a)の形状をなす電気接点1を作製した。
【0083】
この際、遮断性能に及ぼす反りの影響などを検証(実施例2および3)するため、接点面は加工せず、反り形状をそのまま残した。
【0084】
なお、スリット溝2を有する最終形状を形作ることのできる金型に原料粉末を充填し、焼結する方法によっても電気接点1を得ることができ、この方法では機械加工などの後加工が不要であるため、容易に製作が可能である。
【0085】
次に、電極を作製した。電極の作製方法は次の通りである。電極棒4を無酸素銅で、また、汚損防止板3をステンレス鋼(SUS304)であらかじめ機械加工により作製しておき、前記で得られた電気接点1,汚損防止板3,電極棒4それぞれの間にろう材5を載置し、これを8.2×10-4Pa以下の真空中で970℃×10分間加熱し、図1に示す電極を作製した。
【0086】
この電極は定格電圧24kV,定格電流1250A,定格遮断電流25kA用の真空バルブに用いられる電極である。
【0087】
なお、汚損防止板3は、開閉動作による電気接点1の過度な変形を防ぐための補強板の役目もするが、電気接点1の強度が十分であれば汚損防止板3は省いてもよい。
【0088】
続いて、仕様が定格電圧24kV,定格電流1250A,定格遮断電流25kAの真空バルブを作製した。
【0089】
図4は、本実施例に関わる真空バルブの構造を示す図である。
【0090】
図4において、1a,1bはそれぞれ固定側電気接点,可動側電気接点、3a,3bは汚損防止板、4a,4bはそれぞれ固定側電極棒,可動側電極棒で、これらをもってそれぞれ固定側電極6a,可動側電極6bを構成する。
【0091】
なお、本実施例では、固定側と可動側の電気接点の溝が接触面において一致するように設置した。可動側電極6bは、遮断時の金属蒸気等の飛散を防ぐ可動側シールド8を介して可動側ホルダー12にろう付け接合される。
【0092】
これらは、固定側端板9a,可動側端板9b、及び絶縁筒13によって高真空にろう付け封止され、固定側電極6a及び可動側ホルダー12のネジ部をもって外部導体と接続される。
【0093】
絶縁筒13の内面には、遮断時の金属蒸気等の飛散を防ぐシールド7が設けられ、また、可動側端板9bと可動側ホルダー12の間には摺動部分を支えるためのガイド11が設けられる。
【0094】
可動側シールド8と可動側端板9bの間にはべローズ10が設けられ、真空バルブ内を真空に保ったまま可動側ホルダー12を上下させ、固定側電極6aと可動側電極6bを開閉させることができる。
【0095】
さらに、上記の真空バルブを搭載した真空遮断器を作製した。
【0096】
図5は、本発明に関わる真空バルブ14とその操作機構を示す真空遮断器の構成図である。
【0097】
真空遮断器は、操作機構部を前面に配置し、背面に真空バルブ14を支持する3相一括型の3組のエポキシ筒15を配置した構造である。真空バルブ14は、絶縁操作ロッド16を介して、操作機構によって開閉される。
【0098】
遮断器が閉路状態の場合、電流は上部端子17,電気接点1,集電子18,下部端子19を流れる。電極間の接触力は、絶縁操作ロッド16に装着された接触バネ20によって保たれている。電極間の接触力および短絡電流による電磁力は、支えレバー21およびプロップ22で保持されている。
【0099】
投入コイル30を励磁すると開路状態からプランジャ23がノッキングロッド24を介してローラ25を押し上げ、主レバー26を回して電極間を閉じたあと、支えレバー21で保持している。
【0100】
遮断器が引き外し自由状態では、引き外しコイル27が励磁され、引き外しレバー28がプロップ22の係合を外し、主レバー26が回って電極間が開かれる。
【0101】
遮断器が開路状態では、電極間が開かれたあと、リセットバネ29によってリンクが復帰し、同時にプロップ22が係合する。この状態で投入コイル30を励磁すると閉路状態になる。なお、31は排気筒である。
【0102】
以上のように、本実施例に関わる電気接点1を用いて真空バルブ14を作製し、それを搭載した定格電圧24kV,定格電流1250A,定格遮断電流25kA仕様の真空遮断器を作製した。
【実施例2】
【0103】
表1に示す電気接点に関し、実施例1で作製した真空遮断器を用いて遮断試験を行い、電流25kAの遮断、並びに25kA通電後の電極引離し(開離)の可否を評価した。
【0104】
表1は、電気接点の組成,各層の寸法,成形方法等および遮断試験の結果を示すもので、No.1〜No.10が比較品、No.11〜No.21が本発明品である。
【0105】
なお、表1における反り寸法は、平板上に高導電層の面を下に置いた際の外周部と中央部との高さの差で表わした。電気接点のうち、No.5,No.6,No.10については実施例1で示したように層間の剥離が生じ、遮断試験には供しなかった。
【0106】
溶浸製法で作製したNo.1の電気接点は、反りや剥離などの不具合はなく、緻密体であるために25kAの電流遮断性能を満足するが、通電後の開離は不可能であった。
【0107】
これは、溶浸工程において高導電層のCu中に接点層成分であるCrが固溶し、高導電層の熱および電気伝導性が低下し、ジュール熱の発生を抑制するという高導電層の効果が不足するためと思われる。
【0108】
No.2は、接点層成分のみの単層で電気接点を構成する電極である。この場合、高導電層がないために電気接点全体の導電率が比較的低く、遮断性能が不足し、ジュール熱による温度上昇によって接点同士が溶着し、開離ができなかった。
【0109】
No.3およびNo.4は、高導電層を有するが、前記の電気接点の径Dと厚さt1+t2との関係式(2)の範囲から外れた場合である。No.3は、焼結後の反りが大きく、試験には供しなかった。No.4は反りは許容範囲内であるが、接点層の厚さが大きく、導電率が低くなり、溶着が生じ、開離できなかった。
【0110】
また、No.7は、層間剥離が生じたNo.5およびNo.6と同様に、接点層の厚さt1と高導電層の厚さt2が前記の関係式(1)の範囲外にある場合である。この場合、焼結後の反りは許容範囲内であるが、接点層の厚さが大きいために導電率が低くなり、溶着が生じた。
【0111】
これらに対し、電気接点の径Dと各層の厚さ(t1,t2)の関係が式(1)および式(2)の範囲にあるNo.11〜No.16では、いずれも電流遮断および通電後の開離の性能を満足し、本発明に関わる電気接点が、優れた遮断性能と耐溶着性を有する電気接点として有効であることが確認された。
【0112】
このように、焼結後の反りを許容範囲内に抑えるとともに、通電時の反り変形を抑制し、接触抵抗ジュール熱による溶着を回避して、電極の性能を満足する電気接点を得るには、径と各層の厚さとの関係が式(1)および(2)の範囲にあることが望ましいことが確認された。
【0113】
ただし、No.19およびNo.20のように、中間層を設ける場合にはこの限りではなく、必要な性能を満足することができる。すなわち、中間層を設ける場合には、電気接点の径Dと各層の厚さ(t1,t3)の関係を、前記の関係式(3)および(4)の範囲とすることによって、表1に示すように反り変形を抑えて溶着を回避し、十分な電極性能を有する電気接点を得ることができる。
【0114】
一方、No.8およびNo.9は、接点層のCr量が15〜30重量%の範囲外にある場合である。No.8では耐弧性金属であるCrが少ないために耐電圧性が不足し、遮断性能を満足できなかった。No.9ではCrが多いために接点層の導電率が低下し、ジュール熱による温度上昇が大きく、また、反りが大きいことも影響し、溶着が生じて開離に支障を来した。
【0115】
これらに対し、接点層のCr量が上記範囲にあるNo.17およびNo.18では、いずれも必要な性能を満足した。
【0116】
なお、溶浸製法のNo.1と同様にNbを3重量%含む接点層を有するNo.21では、焼結法で作製されたため、高導電層であるCuへのCr固溶量が小さく、高導電性を有するため、通電時に発生するジュール熱を抑えることができ、必要な性能を満足することができる。
【0117】
以上のように、本形態に関わる電気接点によって、優れた遮断性能と耐溶着性能を有する真空バルブおよび真空遮断器を得ることができる。
【実施例3】
【0118】
表2に示す電気接点に関し、実施例1で作製した真空遮断器を用いて通電試験を行い、通電時における反り変形を評価した。
【0119】
本実施例では、表1のNo.14およびNo.15の電気接点を用いて、実施例1で示した図1(a),図2(b)および図3(a)に示す電極を作製し、電気接点に同心円溝47や側面溝49,テーパ50を設けたときの通電時における反り変形抑制効果を検証した。
【0120】
これらの溝やテーパは、機械加工により形成した。なお、通電時における反り変形量を実測することは困難なので、2000Aの電流を10時間通電した後の真空バルブ端部の温度上昇値を測定することにより、反り変形を評価した。温度上昇値の測定は24℃の室温で行い、表2にその結果を併せて示す。
【0121】
表2において、No.14とNo.15は表1で示した電気接点であり、No.22とNo.25は高導電層の外周部にテーパ50を設けた図3(a)の形状の電極、No.23とNo.26は高導電層に同心円溝47を設けた図1(a)の形状の電極、No.24とNo.27は側面溝49を設けた図2(b)の形状の電極で、いずれも電気接点には中間層を有さないものである。
【0122】
表2に示すように、テーパ50,同心円溝47,側面溝49いずれを設けた場合にも、それらを設けない場合に比べて真空バルブ端部の温度上昇値は小さいことから、これらの電気接点形状によって通電時における反り変形が抑制されたと推測される。
【0123】
また、No.25〜No.27は、No.22〜No.24に比べてテーパ50,同心円溝47,側面溝49を設けたことによる温度低減効果が大きいことから、これらの電気接点形状は、電気接点の全体厚さに対する接点層厚さが大きい場合に、反り変形の抑制効果が大きいと見られる。
【0124】
以上のように、本形態に関わる電気接点の形状によって、通電時における反り変形を抑制し、ジュール熱による温度上昇を抑え、優れた耐溶着性能を有する真空バルブおよび真空遮断器を得ることができる。
【実施例4】
【0125】
実施例1で作製した真空バルブを、真空遮断器以外の真空開閉装置に搭載した。図6は、実施例1で作製した真空バルブ14を搭載した、路肩設置変圧器用の負荷開閉器である。
【0126】
この負荷開閉器は、主回路開閉部に相当する真空バルブ14が、真空封止された外側真空容器32内に複数対収納されたものである。外側真空容器32は、上部板材33と下部板材34及び側部板材35を備え、各板材の周囲(縁)が互いに溶接によって接合されているとともに、設備本体とともに設置されている。
【0127】
上部板材33には、上部貫通孔36が形成されており、各上部貫通孔36の縁には環状の絶縁性上部ベース37が各上部貫通孔36を覆うように固定されている。そして、各上部ベース37の中央に形成された円形空間部には、円柱状の可動側電極棒4bが往復動(上下動)自在に挿入されている。
【0128】
すなわち、各上部貫通孔36は上部ベース37と可動側電極棒4bによって閉塞されている。
【0129】
可動側電極棒4bの軸方向端部(上部側)は、外側真空容器32の外部に設置される操作器(電磁操作器)に連結されるようになっている。また、上部板材33の下部側には、各上部貫通孔36の縁に沿って外側ベローズ38が往復動(上下動)自在に配置されており、各外側ベローズ38は、軸方向の一端側が上部板材33の下部側に固定され、軸方向の他端側が各可動側電極棒4bの外周面に装着されている。
【0130】
すなわち、外側真空容器32を密閉構造とするために、各上部貫通孔36の縁には各可動側電極棒4bの軸方向に沿って外側ベローズ38が配置されている。また、上部板材33には排気管(図示省略)が連結され、この排気管を介して外側真空容器32内が真空排気されるようになっている。
【0131】
一方、下部板材34には下部貫通孔39が形成されており、各下部貫通孔39の縁には絶縁性ブッシング40が各下部貫通孔39を覆うように固定されている。各絶縁性ブッシング40の底部には、環状の絶縁性下部ベース41が固定されている。そして、各下部ベース41の中央の円形空間部には、円柱状の固定側電極棒4aが挿入されている。
【0132】
すなわち、下部板材34に形成された下部貫通孔39は、それぞれ絶縁性ブッシング40,下部ベース41、及び固定側電極棒4aによって閉塞されている。そして、固定側電極棒4aの軸方向の一端側(下部側)は、外側真空容器32の外部に配置されたケーブル(配電線)に連結されるようになっている。
【0133】
外側真空容器32の内部には、負荷開閉器の主回路開閉部に相当する真空バルブ14が収納されており、各可動側電極棒4bは、2つの湾曲部を有するフレキシブル導体(可撓性導体)42を介して互いに連結されている。このフレキシブル導体42は、軸方向において2つの湾曲部を有する導電性板材としての銅板とステンレス板を交互に複数枚積層して構成されている。フレキシブル導体42にはフレキシブル導体貫通孔43が形成されており、各フレキシブル導体貫通孔43に各可動側電極棒4bを挿入して互いに連結される。
【0134】
以上のように、実施例1で作製した本発明に関わる真空バルブは、路肩設置変圧器用の負荷開閉器にも適用可能であり、これ以外の真空絶縁スイッチギヤなどの各種真空開閉装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の新規な真空バルブ用電気接点は、真空遮断器,真空スイッチギヤ等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の第1実施例に関わる電気接点および電極の構造を示す図。
【図2】本発明の第1実施例に関わる電気接点および電極の構造を示す図。
【図3】本発明の第1実施例に関わる電気接点および電極の構造を示す図。
【図4】本発明の第1実施例に関わる真空バルブの構造を示す図。
【図5】本発明の第1実施例に関わる真空遮断器の構造を表す図。
【図6】本発明の第4実施例に関わる路肩設置変圧器用負荷開閉器の構造を表す図。
【符号の説明】
【0137】
1 電気接点
1a 固定側電気接点
1b 可動側電気接点
2 スリット溝
3,3a,3b 汚損防止板
4,4a,4b 電極棒
5 ろう材
6a 固定側電極
6b 可動側電極
7 シールド
8 可動側シールド
9a 固定側端板
9b 可動側端板
10 ベローズ
11 ガイド
12 可動側ホルダー
13 絶縁筒
14 真空バルブ
15 エポキシ筒
16 絶縁操作ロッド
17 上部端子
18 集電子
19 下部端子
20 接触バネ
21 支えレバー
22 プロップ
23 プランジャ
24 ノッキングロッド
25 ローラ
26 主レバー
27 引き外しコイル
28 引き外しレバー
29 リセットバネ
30 投入コイル
31 排気筒
32 外側真空容器
33 上部板材
34 下部板材
35 側部板材
36 上部貫通孔
37 上部ベース
38 外側ベローズ
39 下部貫通孔
40 絶縁性ブッシング
41 下部ベース
42 フレキシブル導体
43 フレキシブル導体貫通孔
44 中央孔
45 接点層
46 高導電層
47 同心円溝
48 中間層
49 側面溝
50 テーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤形状を有し、厚さ方向に接点層と高導電層との2つの層からなる電気接点において、
前記接点層は、CrとCuとTeからなり、
前記高導電層は、Cuが主成分であり、
前記接点層の厚さをt1、前記高導電層の厚さをt2、電気接点の直径をDとしたとき、それぞれが式(1)および式(2)を満たす範囲にあり、
前記高導電層は、接点面と反対側の面に、電気接点と同心円の溝を1本または複数本有することを特徴とする電気接点。
0.15t2≦t1≦1.27t2 ・・・(1)
2.94(t1+t2)≦D≦5.55(t1+t2) ・・・(2)
【請求項2】
円盤形状を有し、厚さ方向に接点層と高導電層とを有する複数の層からなる電気接点において、
前記接点層は、CrとCuとTeからなり、
前記高導電層は、Cuが主成分であり、
前記接点層と前記高導電層との間にそれらの中間的な組成からなる中間層を有し、
前記接点層の厚さをt1、前記高導電層と中間層との厚さの和をt3、電気接点の直径をDとしたとき、それぞれが式(3)および式(4)を満たす範囲にあることを特徴とする電気接点。
0.15t3≦t1≦0.80t3 ・・・(3)
2.94(t1+t3)≦D≦8.10(t1+t3) ・・・(4)
【請求項3】
前記高導電層と前記中間層とは、接点面と反対側の面に、電気接点と同心円の溝を1本または複数本有することを特徴とする請求項2に記載の電気接点。
【請求項4】
接点面と反対側の面に設けられる前記同心円溝は、幅をw1、深さをd1、直径をD1、前記高導電層と前記中間層の厚さの和をt3、電気接点の直径をDとしたとき、それぞれが式(5)〜(7)の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3に記載の電気接点。
0.015D≦w1≦0.045D ・・・(5)
0.08t3≦d1≦0.95t3 ・・・(6)
0.35D≦D1≦0.85D ・・・(7)
【請求項5】
前記高導電層又は前記中間層は、その側面外周に側面溝を有し、前記側面溝の幅をw2、深さをd2、接点面と反対側の面から側面溝までの距離をh、前記高導電層と前記中間層の厚さの和をt3、電気接点の直径をDとしたとき、それぞれが式(8)〜(10)の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3に記載の電気接点。
0.025t3≦w2≦0.5t3 ・・・(8)
0.003D≦d2≦0.085D ・・・(9)
0.1t3≦h≦0.9t3 ・・・(10)
【請求項6】
前記高導電層は、接点面の反対側の面において、電気接点の外周部へ向かって厚さが薄くなるテーパ形状を有し、前記テーパ形状の傾斜は1/2〜1/30であることを特徴とする請求項1〜3に記載の電気接点。
【請求項7】
前記接点層は、Crを15〜30重量%、Teを0.01〜0.2重量%含み、残部がCuからなることを特徴とする請求項1〜6に記載の電気接点。
【請求項8】
前記接点層は、Mo,W,Nbのいずれか1種をCrとの合計で30重量%以下含むことを特徴とする請求項1〜7に記載の電気接点。
【請求項9】
円盤形状の円中心に形成された中心孔と、前記中心孔に対して非接触で円中心から外周部に向かって形成された複数本の貫通したスリット溝とを有し、前記スリット溝によって分離された羽根型の平面形状をなすことを特徴とする請求項1〜8に記載の電気接点。
【請求項10】
前記高導電層をなすCu中のCr固溶量は、10ppm以下であることを特徴とする請求項1〜9に記載の電気接点。
【請求項11】
円盤状部材と、前記円盤状部材の前記高導電層の面に一体に接合された電極棒とを有し、前記円盤状部材が請求項1〜10に記載の電気接点からなる電極。
【請求項12】
真空容器内に一対の固定側電極および可動側電極とを備えた真空バルブにおいて、
前記固定側電極及び可動側電極の少なくとも一方が、請求項11に記載の電極からなる真空バルブ。
【請求項13】
真空容器内に一対の固定側電極および可動側電極を備えた真空バルブと、前記真空バルブ内の前記固定側電極および可動側電極の各々に前記真空バルブ外へ接続された導体端子と、前記可動側電極を駆動する開閉手段とを備え、前記真空バルブが請求項12に記載の真空バルブからなる真空遮断器。
【請求項14】
真空容器内に一対の固定側電極および可動側電極を備えた真空バルブを導体によって直列に複数接続し、前記可動側電極を駆動する開閉手段を備え、前記真空バルブが請求項12に記載の真空バルブからなる真空開閉機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−170372(P2009−170372A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9969(P2008−9969)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】