説明

真空ポンプ

【課題】 構成が簡単な回転電機を備えた真空ポンプを提供すること。
【解決手段】 真空ポンプは回転電機を備えている。この回転電機はステータコア38にコイル45を巻装してなるステータ57と、ステータ57の内周部に挿入された回転軸83に固定されたロータコア84と、ロータコア84に固定された永久磁石86とを有するものであり、ロータコア84の内部にはマグネット孔85が形成されており、永久磁石86はマグネット孔85内に挿入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機を備えた真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
上記回転電機の従来構成を図12に基づいて説明する。ステータ1はステータコア2にコイル3を巻装してなるものであり、ステータ1の表面にはモールド層4が形成されている。このモールド層4は成形型内にステータ1をインサートして溶融樹脂を注入することに基づいて形成されたものであり(射出成形)、モールド層4の外周面には筒状のフレーム5が装着されている。このフレーム5はモールド層4の成形後にモールド層4の外周面に嵌合されたものであり、フレーム5の一端面には底板6が接合されている。
【0003】
フレーム5の他端面には円環状のフランジ7が接合されている。このフランジ7は半導体製造装置の真空ポンプ8に組付けられたものであり、ステータ1の内周部には真空ポンプ8の駆動軸9が挿入されている。この駆動軸9の外周面にはロータ10が固定されており、コイル3の通電時には駆動軸9がロータ10と一体的に回転することに基づいて真空ポンプ8を駆動する。
【0004】
底板6およびフランジ7には円筒状のシール部11が形成されている。これら各シール部11とモールド層4との間にはOリング12が介在されており、Oリング12は半導体製造装置で使用される腐食性ガスが真空ポンプ8の内部からステータ1の内周部に侵入し、モールド層4と底板6との接合面からフレーム5と底板6との接合面を通して外部に漏れたり、モールド層4とフランジ7との接合面からフレーム5とフランジ7との接合面を通して外部に漏れることを防止している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、構成が簡単な回転電機を備えた真空ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の真空ポンプは、ステータコアにコイルを巻装してなるステータと、前記ステータの内周部に挿入された回転軸に固定されたロータコアと、前記ロータコアに固定された永久磁石とを有する回転電機を備えたものにおいて、前記ロータコアの内部にマグネット孔を形成し、前記永久磁石を前記マグネット孔内に挿入したところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
ロータコアの内部にマグネット孔を形成し、永久磁石をマグネット孔内に挿入したので、構成が簡単な回転電機を備えた真空ポンプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施例を図1ないし図11に基づいて説明する。まず、図1の(a)において、真空ポンプのポンプケース21には開口部22が形成されており、開口部22の周縁部には環状のフランジ23が装着されている。このフランジ23はアルミニウムをダイカスト成形したものであり、フランジ23を通してポンプケース21に複数のねじ24を絞込むことに基づいて固定されている。このフランジ23の内周部には円環状の突部25が一体形成されており、フランジ23は突部25をポンプケース21の凹部26内に嵌合することに基づいて位置決めされている。尚、真空ポンプは負荷に相当するものである。
【0009】
フランジ23には、図3の(a)に示すように、フレーム27が一体形成されており、フランジ23の表面およびフレーム27の表面には防食用の陽極酸化被膜(図示せず)が形成されている。このフレーム27は円筒状をなすものであり、フレーム27にはフランジ23の反対側の端部に位置して底板28が一体形成され、底板28の中央部には、図3の(b)に示すように、円形状の開口部29が形成されている。
【0010】
フレーム27および底板28には幅広な切欠部30が形成され、底板28には幅狭な切欠部31が形成されている。これら切欠部30および31はフレーム27の底板28内で連通するものであり、幅広な切欠部30の内面には、図3の(a)に示すように、円形状のピン穴32が形成され、ピン穴32の上方には突部33が形成されている。また、フレーム27の底板28には、図3の(b)に示すように、円形状をなす6個の補助開口部34が形成されている。これら補助開口部34は共通の円形軌跡上に位置するものであり、周方向に等ピッチで配列されている。
【0011】
フレーム27の底板28には6個の補助開口部34の内周側に位置して3個の基板座35が周方向に等ピッチで一体形成され、6個の補助開口部34の外周側に位置して3個のカバー座36が周方向に等ピッチで一体形成されている。これら各基板座35および各カバー座36は、図3の(a)に示すように、底板28からフレーム27の外部へ突出するものであり、各基板座35および各カバー座36には、図3の(b)に示すように、タップ穴37が形成されている。尚、各タップ穴37はダイカスト成形後に機械加工されたものである。また、基板座35はねじ止め部に相当するものである。
【0012】
フレーム27の内周面には、図1の(a)に示すように、円筒状のステータコア38が固定されている。このステータコア38はヘリカル鉄心と称されるものであり、帯状をなす複数のケイ素鋼板を積層することに基づいて帯状コアを形成した後、帯状コアを折曲げることに基づいて円筒化されている。このステータコア38は、図8の(a)に示すように、円筒状のヨーク39と6本のティース40とを有するものであり、各ティース40の先端部には磁極片41が一体形成され、各磁極片41は周方向に隣接するティース40相互間に半閉スロットを形成している。
【0013】
ステータコア38には、図8の(b)に示すように、6個のスプール42が装着されており、各スプール42は、図8の(a)および(b)に示すように、ヨーク39の軸方向両端面および内周面,ティース40の軸方向両端面および周方向両側面,磁極片41の軸方向両端面を覆っている。これら各スプール42はティース40に軸方向両側から合成樹脂製のカバー43を被せることに基づいて構成されたものであり、周方向に隣接するスプール42相互間には、図8の(b)に示すように、ヨーク39の軸方向両端面に位置して隙間44が形成され、各スプール42の内周面は、図8の(c)に示すように、ステータコア38の磁極片41の内周面と同一面上に配置されている。尚、スプール42は絶縁層に相当するものである。
【0014】
ステータコア38の6本のティース40には、図8の(b)に示すように、スプール42の上からU,V,W相のコイル45が巻装されており、各相のコイル45には、図8の(a)に示すように、リード線46の一端部が電気的に接続され、各リード線46の他端部は、図1の(a)に示すように、共通の電源コネクタ47に電気的に接続されている。この電源コネクタ47はインバータ装置(図示せず)に電気的に接続されるものであり、3相のコイル45にはインバータ装置から電源コネクタ47およびリード線46を通して駆動電源が印加される。
【0015】
フレーム27の幅広な切欠部30内には、図3の(c)に示すように、合成樹脂製(例えばガラスフィラーを含有するPBT製)の第1のハウジング48が嵌合されている。このハウジング48は切欠部30の周方向両側面をガイドとして底板28側から切欠部30内に挿入されたものであり、ハウジング48には、図4の(b)に示すように、貫通状をなす2個のピン孔49と半円形状をなす3個の挟持面50(図4のc参照)と突部51(図4のa参照)とが形成され、突部51は、図4の(b)に示すように、フレーム27の内周面に接触している。また、ハウジング48には、図4の(a)に示すように、スプリングピン52が固定されており、スプリングピン52は、図1の(a)に示すように、フレーム27のピン穴32内に嵌合されている。
【0016】
フレーム27の幅広な切欠部30内には、図3の(c)に示すように、合成樹脂製(例えばガラスフィラーを含有するPBT製)の第2のハウジング53が挿入されており、ハウジング53には、図5の(c)に示すように、2本のスプリングピン54が固定されている。このハウジング53は切欠部30の周方向両側面をガイドとして底板28側から切欠部30内に挿入されたものであり、各スプリングピン54が第1のハウジング48のピン孔49内に嵌合されることに基づいて第1のハウジング48に位置決め状態で連結されている。尚、第1のハウジング48および第2のハウジング53は挟持部材に相当するものであり、図1の(a)の符号55は第1のハウジング48および第2のハウジング53から構成されるハウジングを示している。
【0017】
第2のハウジング53には、図5の(c)に示すように、半円形状をなす3個の挟持面50が形成されている。これら各挟持面50は、図3の(c)に示すように、第1のハウジング48の挟持面50と協働して円形孔状のリード線保持部56を形成するものであり、各リード線46は第1のハウジング43の挟持面50と第2のハウジング53の挟持面50との間で挟持されることに基づいてずれ止めされている。
【0018】
尚、図1の(a)の符号57はステータコア38,6個のスプール42,6個のコイル45,3本のリード線46,電源コネクタ47を有するステータ組立を示すものであり、ステータ組立57はステータに相当するものである。
【0019】
フレーム27内には、図11の(a)に示すように、モールド層58が形成されている。このモールド層58は下記(1)〜(8)の手順で成形されたものであり、ステータコア38の磁極片41の内周面を覆う薄肉部59(具体的には肉厚1mm)とステータコア38の軸方向一端部を覆う厚肉なエンド部60とステータコア38の軸方向他端部を覆う厚肉なエンド部61とフレーム27の底板28を外部から覆う薄肉な被覆部62と被覆部62に位置する円筒部63とを有している。以下、モールド層58の成形手順について説明する。
<モールド層58の成形手順について>
(1)ステータ組立57を治具(図示せず)にセットする。この治具には複数のステータピンおよび複数のフレームピンが固定されており、ステータ組立57はスプール42相互間の複数の隙間44内にステータピンを嵌合することに基づいて治具に対して位置決めされる。
(2)フレーム27を加熱することに基づいて膨脹させ、ステータコア38の外周面に圧入する。このとき、フレーム27の複数の取付孔64(ねじ24の挿入孔)内に治具のフレームピンを嵌合し、フレーム27を治具のステータ組立57に対して位置決めする。この圧入方法は焼ばめと称されるものであり、フレーム27の降温時にはフレーム27が収縮し、フレーム27の内周面がステータコア38の外周面に密着する。
(3)フレーム27を治具から取外し、フレーム27の幅広な切欠部30内に第1のハウジング48を挿入する。すると、ハウジング48のスプリングピン52がフレーム27のピン穴32内に嵌合され、しかも、ハウジング48の突部51がフレーム27の内周面に接触し、ハウジング48がフレーム27に位置決め状態で保持される。
(4)フレーム27の幅広な切欠部30内に第2のハウジング53を挿入する。すると、ハウジング53の両スプリングピン54が第1のハウジング48の両ピン孔49内に嵌合され、第2のハウジング53が第1のハウジング48に位置決め状態で連結される。このとき、各リード線46を幅広な切欠部30を通してフレーム27の外部に取出しておき、第1のハウジング48の挟持面50と第2のハウジング53の挟持面50との間で挟持する。
(5)フレーム27を、図8の(a)に示すように、圧縮成形機の下型65内にセットする。この圧縮成形機は雌状の下型65および雄状の上型66(図10参照)を有するものであり、下型65は床面に対して固定され、上型66はアクチュエータの駆動に基づいて上死点および下死点間で移動する。これら下型65および上型66はヒータ(図示せず)を内蔵しており、ヒータの発熱に基づいて予め設定された型温に加熱されている。尚、下型65は金型に相当するものである。
(6)紙粘土状に予熱された熱硬化性の樹脂材67を、図9に示すように、フレーム27内にセットする。この樹脂材67はガラスフィラーを含有する不飽和ポリエステルからなるものであり、ステータ組立57の内周部,ステータ組立57の軸方向一端部,ステータ組立57の軸方向他端部に3分割して収納される。
(7)圧縮成形機のアクチュエータを作動させることに基づいて図10の上型66を下降させ、ステータ組立57の内周部に挿入する。すると、樹脂材67が加圧・加温されることに基づいてフレーム27内を流動し、フレーム27内に充填される(薄肉部59,エンド部60,エンド部61の成形)。このとき、樹脂材67の一部が底板28の開口部29および複数の補助開口部34から流出し、底板28と下型65との間に充填される(被膜部62,円筒部63の成形)。これと共に、下型65とフレーム27の突部33との間で第1のハウジング48および第2のハウジング53が押えられる。そして、突部33が第1のハウジング48内にめり込むことに基づいてリード線46の外径寸法のばらつきが吸収され、リード線46が第1のハウジング48の挟持面50および第2のハウジング53の挟持面50に密着する。
(8)圧縮成形機のアクチュエータを作動させることに基づいて上型66を上昇させ、ステータ組立57の内周部から抜取る。この上型66の上昇動作は予め設定された硬化時間の経過後に自動的に実行されるものであり、上型66の上昇時には、図11に示すように、樹脂材67が硬化することに基づいてモールド層58が形成されている。
【0020】
モールド層58には、図1の(a)に示すように、フランジ23側の端面に位置して円環状のシール溝68が形成されている。このシール溝68はモールド層58の成形後にモールド層58に機械加工を施すことに基づいて形成されたものであり、シール溝68内にはOリング69が嵌合されている。このOリング69はシール溝68の内面とポンプケース21との間で弾性的に押し潰されることに基づいて両者に密着し、両者の間を気密状態に塞いでいる。
【0021】
フレーム27の底板28にはプリント配線基板からなるセンサ基板70が装着されている。このセンサ基板70はモールド層58の成形後に各基板座35のタップ穴37内に雌ねじ部を形成し、図2に示すように、センサ基板70を通して各雌ねじ部内にねじ71を締込むことに基づいて基板座35に固定されたものであり、センサ基板70には磁気センサに相当する3個のホールIC(図示せず)が搭載されている。
【0022】
センサ基板70にはガスセンサ(図示せず)が搭載されている。このガスセンサは半導体製造装置で使用される腐食性ガスを検出する半導体ガスセンサからなるものであり、底板28の開口部29内のモールド層58にクラックが生じ、フレーム27内からクラックを通して腐食性ガスが漏れたときにはガスセンサが腐食性ガスを検出し、リーク信号を出力する。
【0023】
モールド層58の円筒部63には、図1の(a)に示すように、アルミニウム製の基板カバー72が位置決め状態で嵌合されており、センサ基板70は基板カバー72により覆われている。この基板カバー72は有底円筒状をなすものであり、モールド層58の成形後に各カバー座36のタップ穴37内に雌ねじ部を形成し、図2に示すように、基板カバー72を通して各雌ねじ部内にねじ73を締込むことに基づいてカバー座36に固定されている。
【0024】
センサカバー72には合成樹脂製のブッシュ74が固定されており、ブッシュ74には複数のリード線75が保持されている。これらリード線75の一端部は、図1の(a)に示すように、センサ基板70に電気的に接続され、リード線75の他端部にはセンサコネクタ76が電気的に接続されている。
【0025】
ステータ組立57の内周部にはシャフト77が挿入されている。このシャフト77は真空ポンプの送風機を回転駆動するものであり、シャフト77の一端部はポンプケース21内で軸受(図示)を介して回転可能に支持されている。このシャフト77の他端部には、図7に示すように、テーパ部78と径小部79と雄ねじ部80とが形成されており、テーパ部78の外周部には平坦な締結面81が形成され、雄ねじ部80内には雌ねじ部82が形成されている。
【0026】
テーパ部78の外周面および径小部79の外周面には、図1の(a)に示すように、円筒状のスリーブ83が挿入されている。このスリーブ83はステンレスを材料に形成されたものであり、スリーブ83の外周面には、図6に示すように、筒状のロータコア84が嵌合されている。このロータコア84は複数のケイ素鋼板を積層することに基づいて形成されたものであり、ロータコア84には平板状をなす複数のマグネット孔85が周方向に等ピッチで形成され、各マグネット孔85内には平板状の永久磁石86が挿入されている。尚、ロータコア84には防食用のエポキシ樹脂コーティングが施されている。
【0027】
スリーブ83の両端部にはステンレス製の押え板87が固定されており、各押え板87には複数本のねじ88が挿入されている。これら各ねじ88はロータコア84の軸方向端面に絞込まれており、ロータコア84は両押え板87を介してスリーブ83に回転不能に連結され、各永久磁石86は両押え板87によりロータコア84から抜止めされている。また、シャフト77の雄ねじ部80には、図1の(a)に示すように、ナット89が螺合されており、ロータコア84はナット89とシャフト77の締結面81との間で締結されることに基づいてシャフト77に回転不能に連結されている。
【0028】
一方の押え板87には、図6に示すように、複数のピン90(1本のみ図示する)が周方向に等ピッチで固定されており、各ピン90の外周面にはステンレス製のセンサホルダ91のピン孔が挿入されている。このセンサホルダ91は有底円筒状をなすものであり、一方の押え板87に複数のピン90を介して位置決めされている。
【0029】
センサホルダ91の底板にはセンサマグネット92が固定されており、センサマグネット92およびセンサホルダ91は、図1の(a)に示すように、両者を通してシャフト77の雌ねじ部82内にねじ93を絞込むことに基づいてシャフト77に回転不能に固定されている。このセンサマグネット92はエポキシ樹脂でコーティングされたプラスチックマグネットからなるものであり、センサ基板70の各ホールICはセンサマグネット92の着磁部分を検出することに基づいて位置信号を出力する。
【0030】
尚、図1の(a)の符号94はシャフト77,スリーブ83,ロータコア84,複数の永久磁石86,2枚の押え板87,センサホルダ91,センサマグネット92を有するロータ組立を示すものであり、ロータ組立94はロータに相当する。
【0031】
センサコネクタ76はインバータ装置に電気的に接続されており、インバータ装置はセンサ基板70のホールICからリード線75およびセンサコネクタ76を通して出力される位置信号に基づいてPWM制御されたドライブ信号を生成する。そして、3相のコイル45をドライブ信号に基づいてスイッチング制御することに伴い回転磁界を生起し、ロータ組立94を回転操作する。また、インバータ装置には表示器(図示せず)が電気的に接続されており、インバータ装置はガスセンサからのリーク信号を検出すると、表示器に異常表示信号を出力することに基づいてガス漏れを表示する。
【0032】
上記実施例によれば、フレーム27にフランジ23および底板28を一体形成したので、フレーム27とフランジ23との間,フレーム27と底板28との間に接合面が存在しなくなる。このため、フレーム27内にOリングを装着して気密性を高める必要がなくなるので、部品点数が減り、構成が簡単になる。
【0033】
また、フレーム27内で樹脂材67を圧縮成形することに基づいてモールド層58を形成したので、モールド層58とフランジ23との密着度,モールド層58と底板28との密着度が高まる。このため、この点からもフレーム27内にOリングを装着して気密性を高める必要がなくなるので、部品点数が減り、構成が簡単になる。しかも、ステータコア38の内周面と成形型の芯金との幅狭な隙間内に外部から樹脂を押込む射出成形に比べて幅狭な隙間内に樹脂が回り易くなる。このため、モールド層58のうちステータコア38の内周面を覆う薄肉部59に巣等が生じ難くなるので、薄肉部59でのクラックの発生が抑えられる。
【0034】
尚、モールド層58を射出成形またはトランスファ成形する場合にはモールド層58のうちステータコア38の内周部を削ることに基づいて薄肉化することになるので、モールド層58が圧縮成形によって形成されたものか、射出成形によって形成されたものかはモールド層58の切削の有無に基づいて判別できる。
【0035】
特にガラスフィラー入りの樹脂を射出する場合にはガラスフィラーが射出圧で軸方向に揃うので、モールド層58の径方向への熱収縮率とステータコア38の径方向への熱収縮率との差が大きくなり、薄肉部59にクラックが発生し易くなる。しかしながら、モールド層58を圧縮成形する場合にはガラスフィラーの指向性がランダムに保たれるので、モールド層58の径方向への熱収縮率とステータコア38の径方向への熱収縮率との差が縮まり、薄肉部59にクラックが発生し難くなる。
【0036】
また、ガラスフィラー入りの樹脂を射出する場合にはガラスフィラーがスクリュで切断されるので、モールド層58の機械的な強度にガラスフィラーを使用した効果が発揮され難い。しかしながら、モールド層58を圧縮成形する場合にはガラスフィラーが長繊維状態に保たれるので、モールド層58の機械的な強度にガラスフィラーを使用した効果が存分に発揮され、薄肉部59にクラックが発生し難くなる。
【0037】
また、樹脂材67をステータコア38の内周部に収納して圧縮成形した。このため、例えばステータコア38の軸方向端部に樹脂材67を収納する場合とは異なり、ステータコア38と上型66との間の幅狭な隙間に樹脂材67を流し込む必要がなくなるので、モールド層58の薄肉部59に巣等が一層生じ難くなり、薄肉部59でクラックが一層発生し難くなる。
【0038】
また、樹脂材67をステータコア38の内周部に加えて軸方向両端部に収納して圧縮成形したので、フレーム27内の樹脂材67の流れが円滑になり(具体的には液面が水平状態を保持しながら高くなるように樹脂材67が流れる)、流動速度が異なる樹脂材67が衝突することがなくなる。このため、ウェルドラインの発生が抑えられるので、モールド層58の機械的強度が高まる。しかも、樹脂材67が底板28の開口部29および補助開口部34を通してフレーム27の外部に流れ易くなるので、被覆部62および円筒部63の成形性が高まる。
【0039】
また、フレーム27の底板28に基板座35を設け、センサ基板70をモールド層58の成形後に基板座35にねじ止めしたので、センサ基板70がモールド層58の成形圧で位置ずれすることが防止される。このため、センサマグネット92とホールICとの位置関係が正確化されるので、センサ基板70によるロータ組立94の位置検出精度が高まる。
【0040】
また、センサ基板70にガスセンサを搭載した。このため、底板28の開口部29内のモールド層58にクラックが生じたときにはガスセンサからリーク信号が出力されるので、リーク信号に基づいてガス漏れを検出し、ポンプモータを交換する等の異常処置を行うことができる。
【0041】
また、底板28の外面に被覆部62を形成しないときには樹脂材67が底板28の開口部29を通して漏れ、樹脂ばりが生じるので、樹脂ばりの除去作業を行う必要がある。しかしながら、底板28の外面に被覆部62を形成したので、樹脂ばりの除去作業を行う必要がなくなり、製造作業性が高まる。
【0042】
また、底板28に補助開口部34を形成したので、フレーム27内から開口部29および補助開口部34の双方を通してフレーム27の外部に樹脂材67を流通させることができる。このため、樹脂材67の流通経路が増え、樹脂材67の流れが円滑になるので、被覆部62および円筒部63の成形性が高まる。
【0043】
また、モールド層58のうちフランジ23側の端面にOリング69が装着されるシール溝68を形成したので、フランジ23とポンプケース21との間がフランジ23の内周側でシールされる。このため、ポンプケース21内の腐食性ガスがフランジ23とポンプケース21との接合面から漏れるのは勿論のこと、フレーム27の内周面とモールド層58との間に侵入することも防止される。
【0044】
また、モールド層58の成形後にモールド層58に機械加工を施すことに基づいてシール溝68を形成したので、シール溝68の内面の面粗度および寸法精度が向上する。このため、Oリング69とシール溝68との間の気密度が高まるので、耐リーク性が向上する。
【0045】
また、スプール42の内周面とステータコア38の内周面とを同一面上に配置したので、ステータコア38の内周面の金属エッジがスプール42により覆われる。このため、熱収縮時の応力がモールド層58の一部に集中することがなくなるので、クラックの発生が抑えられる。
【0046】
また、モールド層58の成形時に下型65とフレーム27の突部33との間で第1のハウジング48および第2のハウジング53を押えたので、突部33が第1のハウジング48内にめり込むことに基づいてリード線46の外径寸法のばらつきが吸収され、リード線46が第1のハウジング48の挟持面50および第2のハウジング53の挟持面50に密着する。このため、リード線46と両挟持面50との間から樹脂材67が漏れることが防止されるので、樹脂ばりの発生が抑えられる。
【0047】
また、突部33をアルミニウム製のフレーム27に一体形成した。このため、鋼鉄製の下型65に突部33を形成する場合に比べて突部33が柔らかくなるので、第1のハウジング48および第2のハウジング53が突部33の押圧力で破損することが防止される。
【0048】
また、フレーム27に切欠部30を設けた。このため、第1のハウジング48を切欠部30内に嵌合した状態で切欠部30からリード線46を引出し、切欠部30内に第2のハウジング53を嵌合するだけで、第1のハウジング48および第2のハウジング53間でリード線46を挟持できるので、リード線46の保持作業が簡単になる。しかも、第1のハウジング48および第2のハウジング53を切欠部30の周方向両側面をガイドとして切欠部30内に挿入できるので、第1のハウジング48および第2のハウジング53の装着作業が簡単になり、総じて、製造作業性が高まる。
【0049】
尚、上記実施例においては、フランジ23,フレーム27,底板28をダイカスト成形することに基づいて一体化したが、これに限定されるものではなく、例えばプレス成形することに基づいて一体化しても良い。
【0050】
また、上記実施例においては、樹脂材67をステータコア38の内周部,軸方向一端部,軸方向他端部の3か所に収納したが、これに限定されるものではなく、例えばステータコア38の内周部だけに収納したり、ステータコア38の内周部および軸方向一端部に収納しても良い。
【0051】
また、上記実施例においては、センサ基板70をモールド層58の成形後に基板座35にねじ止めしたが、これに限定されるものではなく、例えばセンサ基板70を基板座35にねじ止めした状態でモールド層58を成形しても良い。
【0052】
また、上記実施例においては、本発明を真空ポンプのモータに適用したが、これに限定されるものではなく、要は負荷を駆動するモータ全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例を示す図(aはポンプモータの全体構成を示す図2のXa線に沿う断面図、図1のbはXb線に沿う断面図)
【図2】図1のX2視図
【図3】フレームを示す図(aはXa線に沿う断面図、bはXb視図、cはXc視図)
【図4】第1のハウジングを示す図(aはXa視図、bはXb視図、cはXc視図)
【図5】第2のハウジングを示す図(aはXa視図、bはXb視図、cはXc視図)
【図6】ロータ組立を示す図
【図7】シャフトを示す図
【図8】モールド層の成形手順を示す図(aはフレームが圧縮成形型にセットされた様子を示す断面図、bはXb視図、cはXc部を拡大して示す図)
【図9】モールド層の成形手順を示す図(aはフレーム内に樹脂材がセットされた様子を示す断面図、bはXb視図)
【図10】モールド層の成形手順を示す図(フレーム内にの脂材が圧縮される直前の様子を示す断面図)
【図11】モールド層の成形手順を示す図(aはフレーム内の樹脂材が硬化した様子を示す断面図、bはXb視図)
【図12】従来例を示す図
【符号の説明】
【0054】
23はフランジ、27はフレーム、28は底板、29は開口部、30は切欠部、33は突部、34は補助開口部、35は基板座(ねじ止め部)、38はステータコア、42はスプール(絶縁層)、45はコイル、46はリード線、48は第1のハウジング(挟持部材)、53は第2のハウジング(挟持部材)、57はステータ組立(ステータ)、58はモールド層、62は被覆部、65は下型(金型)、67は樹脂材、68はシール溝、69はOリング、70はセンサ基板、94はロータ組立(ロータ)を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアにコイルを巻装してなるステータと、前記ステータの内周部に挿入された回転軸に固定されたロータコアと、前記ロータコアに固定された永久磁石とを有する回転電機を備えた真空ポンプにおいて、
前記ロータコアの内部にマグネット孔を形成し、
前記永久磁石を前記マグネット孔内に挿入したことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
前記永久磁石は、押え板により抜止めされていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記ロータコアには、防食用のエポキシ樹脂コーティングが施されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記マグネット孔は、平板状をなし、
前記マグネット孔内には、前記永久磁石として平板状のものが挿入されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記マグネット孔は、前記ロータコアの外周面から径方向に内側に位置して形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項6】
半導体製造装置に使用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の真空ポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−14594(P2006−14594A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200034(P2005−200034)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【分割の表示】特願2000−268527(P2000−268527)の分割
【原出願日】平成12年9月5日(2000.9.5)
【出願人】(500414800)東芝産業機器製造株式会社 (137)
【Fターム(参考)】