説明

真空処理装置および真空処理方法

【課題】位置ずれの量を抑制してダウンタイムを低減できる真空処理装置または真空処理方法を提供する。
【解決手段】内側が減圧される処理室及びこの処理室内に配置された試料台を有する真空容器と、この真空容器と連結されて前記ウエハを2つのアームの何れかに載せて搬入または搬出するロボットと、このロボットが前記ウエハを搬入または搬出する際にこのウエハの所定の位置のズレの量を検出する手段と、この検出されたズレの量に基づいて前記ロボットの動作を調節する調節器とを備え、前記調節器は、予めティーチングを行った結果に基づいて前記ロボットの動作を調節するものであって、前記ロボットが予めティーチングを行った後にウエハを所定のパターンで搬送した際に検出されたウエハの位置ズレの量の情報に基づいて再度のティーチングを行った後にウエハの処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧された搬送用の容器の内部を半導体ウエハ等の基板状の試料を搬送して真空容器内の処理室に配置された試料台上に載せて処理室内で形成したプラズマを用いて処理する真空処理装置または真空処理方法に係り、特に、試料の処理中における異常の発生を抑制できる真空処理装置または真空処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造の工程において、半導体ウエハ等の基板状の試料の搬送に際しては、低発塵かつ異常発生の少ないことが望ましい。このような試料の搬送において、試料を処理室内で処理する前に塵埃が発生した場合は塵埃が試料に付着してしまい、処理後に得られる加工形状が所期のものから損なわれたり、製造される半導体デバイスの回路のパターンに欠陥(配線ショート等)が生じたりして、半導体デバイスの製造の歩留まりを低下させてしまう。
【0003】
また、試料の搬送中に重大な搬送の異常が発生した場合は、故障と認知して搬送を中止した後処理室の大気解放を行って修理やメンテナンスを行うことが行われている。このような場合、修理やメンテナンスを行った後の処理室の真空排気に長い時間がかかり、このため、処理を行っていない時間いわゆるダウンタイムが大きくなり、処理装置による全体的な処理の効率が損なわれてしまう。
【0004】
このような問題に関して、ウエハ搬送中におけるウエハ位置ずれ等の搬送異常を検出し、この異常がウエハの落下、脱落、装置異常等の、より重大な異常に至る前に修正を施し、あるいは異常を報知して、重大な異常の発生を抑制する技術が検討されている。例えば、特開2007−123556号公報(特許文献1)では、処理室に搬送する直前においてウエハを保持しているロボットアームのハンド上におけるウエハ中心位置の基準位置からのずれ量を検出し、この検出結果に基づいてウエハの位置ずれを調節した後、処理チャンバ内の所定位置に載置する技術が開示されている。
【0005】
また、特開2007−149960号公報(特許文献2)には、静電力によってウエハを保持する電極において、徐電後の位置ずれ量を検出して、位置ずれ量がある所定値以上の場合に徐電異常と判断し、電極をクリーニングして電極表面の反応生成物を除去することで、搬送異常の発生を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−123556号公報
【特許文献2】特開2007−149960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術は、次の点について考慮が不十分であり、問題が生じていた。
【0008】
すなわち、これらの従来技術は試料の搬送中に位置ズレを検出する技術であって、位置ズレが生じないようにする技術について、考慮が不十分であった。例えば、特許文献1,2では、搬送の途中において搬送中の位置ずれ発生要因を特定してずれ量を小さくする技術については、検討されていない。
【0009】
これら従来技術では、試料を搬送するロボットの動作は、予め装置内部での原点となる基準の位置に対するそのロボットまたはアーム毎の装置内の実際の位置とロボットを動作させる駆動部内でセンサ等により検知される信号とを対応させるティーチングという作業を行った後、量産用の試料の処理が行われる。ティーチング後はロボットの制御装置では、ロボットに搭載されたセンサから発信されて受診した位置信号を用いて装置内部での実際の位置が算出できるので、ティーチングを毎回の搬送毎に行う必要が無い。
【0010】
また、検出器により搬送毎の位置ズレ量が検出されてその補正が行われる構成を有していても、搬送中に異常の判定がされて通常の処理が停止されてメンテナンスの動作が生じることは完全には無くすことはできないばかりか、このような位置ズレを検出、補正する手段を備えた複数の真空処理装置において、搬送の異常の判定がなされる割合にはばらつきがあり、異常の発生を低減するためには装置毎に対応を行わなければならず、ダウンタイムの短縮を阻害していた。
【0011】
本発明の目的は、位置ずれの量を抑制してダウンタイムを低減できる真空処理装置または真空処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、内側が減圧されて処理対象のウエハが処理される処理室及びこの処理室内に配置され前記ウエハがその上面に載せられ静電吸着されて保持される試料台を有する真空容器と、この真空容器と連結され内部に前記ウエハを2つのアームの何れかに載せて前記処理室内の前記試料台に対して搬入または搬出するロボットと、このロボットが前記ウエハを搬入または搬送する際に当該ウエハを載せるアームの所定の位置からの前記ウエハの所定の位置のズレの量を検出する手段と、この検出されたズレの量に基づいて前記ロボットの動作を調節する調節器とを備え、前記調節器は、予め前記アームの位置を検出するセンサからの情報と実際の前記アームの位置とを対応させるティーチングを行った結果に基づいて前記ロボットの動作を調節するものであって、前記ロボットが予めティーチングを行った後にウエハを所定のパターンで搬送した際に検出されたウエハの位置ズレの量の情報に基づいて再度のティーチングを行った後にウエハの処理を行うことにより達成される。
【0013】
または、真空容器に連結された搬送室内をこの搬送室内に配置されたロボットの2つのアームの何れかに載せて前記真空容器内部の処理室内の試料台に対して搬入し、前記試料台上に載せられた前記ウエハを吸着、保持し、前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを処理した後、前記ロボットのアームを前記処理室内の前記試料台に対して搬入して前記ウエハを載せて前記処理室から取り出して前記真空搬送室内を搬送する真空処理方法であって、前記真空搬送室内において前記アームに載せられた状態での基準となる位置からの前記ウエハの位置のズレの量を検出する手段と、この検出されたズレの量に基づいて前記ロボットの動作を調節する調節器とを備え、予め前記アームの位置を検出するセンサからの情報と実際の前記アームの位置とを対応させるティーチングを行った後、前記任意のウエハを所定のパターンで搬送した際に検出されたウエハの位置ズレの量の情報に基づいて再度のティーチングを行った後に、この再度のティーチングの結果に基づいて前記調節器により前記ロボットの動作を調節して前記ウエハを搬送して処理を行うことにより達成される。
【0014】
さらに、前記再度のティーチングにおいて、前記2つのアームのうちの一方のアームによる搬送の際に検出されたズレの量を他方のアームによる搬送の際に検出されたズレの量に対して一致させるように前記一方のアームの基準の位置を設定することにより達成される。
【0015】
さらにまた、前記再度のティーチングにおいて、前記一方のアームによる少なくとも一枚以上のウエハの搬送の際に検出されたズレの量の平均の値を前記他方のアームによる搬送の際に検出されたズレの量の平均の値に合致させることにより達成される。
【0016】
さらにまた、前記2つのアームの組合せによる前記ウエハの搬入及び搬出の複数のパターンを行って検出された位置ズレの量の情報に基づいて、前記複数のパターンのうち前記位置ズレの量が許容される所定の範囲外であるパターンの前記位置ズレの量を前記許容される所定の範囲内にパターンの前記位置ズレの量に合致するように前記再度のティーチングがなされることにより達成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る真空処理装置の構成の概略を示す上面図である。
【図2】図1に示す実施例に係るバッファ室内のセンサ取り付け位置を示す拡大図である。
【図3】図1に示す実施例に係る処理室及びバッファ室の構成を模式的に示す縦断面図である。
【図4】図1に示す実施例に係る真空処理装置において検出された真空ロボットのティーチング位置からのウエハの位置ずれ量の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例について、以下、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
〔実施例〕
本発明の実施例を図1乃至図4を用いて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施例に係る真空処理装置100の全体の構成の概略を示している。本図において、真空処理装置100は、複数(4個)の処理室101,102,103,104と、複数(3個)のカセット載置台105との間でウエハを移送することができる。処理室101,102,103,104は、プラズマエッチング、層の堆積、および/またはスパッタリングを実行するための処理室であっても良い。
【0021】
これら処理室101,102,103,104は、所定の圧力(真空圧)に減圧される内部の空間にウエハ等試料が載置される試料台を有した真空処理容器から構成され、その内部の空間に処理用のガスを供給しつつ図示しない電界または磁界の供給手段から電界または磁界を印加して処理室のウエハ上方の空間にプラズマを形成し、試料の表面を処理する処理容器となっている。
【0022】
真空処理装置である半導体処理装置100のバッファ室110は、内部が前記処理室101等の内部と同等の圧力に調節可能な真空容器から構成され、バッファ室110には、ウエハを真空側に導入するために実装された複数のロードロック室106,107がその前面側(図上下方側)に接続されている。バッファ室110は、その上にウエハを載せて保持するハンド112−1,112−2を備えた真空ロボット111が設置されて、減圧された内部をウエハをアーム上に保持して搬送する真空搬送容器内の搬送用室である。
【0023】
なお、処理室101,102,103,104、バッファ室110、ロードロック室106,107は、減圧された条件で試料を搬送、処理を行う真空側ブロックを構成している。複数のロードロック室106,107は、大気ロボット108が内部の空間に配置された大気搬送室109に接続され、この大気搬送室109は、ウエハが収納されるカセットがその上面に載置されるカセット載置台105を前面側に備えている。ロードロック室106,107は、カセットが連結される大気搬送室109と真空側ブロックとの間でのウエハの取り出しや受渡しのための開閉機構であるとともに、可変圧インタフェースとして機能する。
【0024】
大気ロボット108は、戴置されるカセット戴置台105に戴置されたカセットからウエハを取り出して、大気搬送室109に運び、大気搬送室109内でウエハのセンタリング及びノッチの中心に対する方向合わせを行った後、再び、ロードロック室106または107に搬入する。
【0025】
ロードロック室106または107に搬入されたウエハは、その内側に配置された試料台上に載置される。内部が減圧された後、試料台内に配置されたステージに持ち上げられた状態で真空ロボット111のアーム先端部のハンド112−1または112−2がウエハ下方に移動してそのハンド上へウエハの受渡しが行われる。ウエハの受渡しが完了すると真空ロボット111のアームが縮み、ハンド112−1または112−2に載せられたウエハがバッファ室110内に運び込まれる。
【0026】
バッファ室110内で、真空ロボット111の回転動作により、処理室101,102,103,104の方向に向きが変更され、真空ロボット111のアームの伸張動作により、ウエハが、処理室101,102,103,104に移送されて、処理室内で、プラズマエッチング、層の堆積、および/またはスパッタリングなどの処理が実行される。これらの処理は密封された処理室101,102,103,104内で行われる。
【0027】
例えば、処理室101の内側に搬送されたウエハは、図示しない試料台上に載置される。この際、ロードロック室106または107内側の構成と同様に、試料台内部に配置された上下に移動してウエハを上下に昇降させる複数のプッシャピンを備えている。
【0028】
これらのプッシャピンが上方に移動した状態で、その上方に位置する真空ロボット111のアーム先端側のハンド上に載せられたウエハがアームの下降に伴ってプッシャピン上に載せられた後、アームがバッファ室110内に移動してウエハの試料台への受渡しが行われる。アームの移動後に、プッシャピンは下方に移動され試料台内に格納されて、ウエハが試料台上の上面の誘電体製膜に被覆されたウエハ載置面上に載せられる。
【0029】
その後、処理室101内に処理用ガスが導入されると共に、処理室101内は図示しない真空ポンプの動作により排気されて所定の圧力(真空圧)に調節される。また、誘電体製膜内に配置された静電吸着用の電極に電力が印加されることで生起されるウエハと誘電体製膜との間の静電吸着力により、試料台上のウエハ載置面上にウエハが吸着、保持される。
【0030】
さらに、ウエハ載置面の表面とウエハ裏面との間には、He等の熱伝達用のガスが導入されて、ウエハと試料台との間の熱伝達が調節されてウエハの表面の温度が所望の範囲に調節される。この状態で、処理室101内のウエハ上方の空間に電界または磁界が供給されて処理用ガスがプラズマ化され、このプラズマを用いてウエハ表面が処理される。
【0031】
この処理の終了後に、静電吸着電極に印加された電力が除かれて静電吸着力が低減された後、プッシャピンを上昇させてウエハがウエハ載置面から上方に持ち上げられる。処理室101の密封しているゲートバルブが開放された後、真空ロボット111のアームが伸張されて先端側のハンドがウエハの下方に位置するように移動される。プッシャピンの下方の移動によって、ウエハがハンド上の保持面上に載せられてアームに受渡される。プッシャピンはその後、再び試料台内部に格納される。
【0032】
このように、処理室101,102,103,104内での処理の実行後、処理済のウエハが真空ロボット111に受渡され、真空ロボット111のアームの収縮動作、真空ロボット111の回転動作、真空ロボット111のアームの伸張動作の組合せにより、ウエハが処理室同士または処理室とロードロック室との間を移送される。
【0033】
上記真空ロボット111または大気ロボット108の動作は、図示しない各々用の制御装置により調節される。このような制御装置は、真空処理装置100全体の動作を制御する制御装置と指令を授受可能に接続されるか、またはこれと一体となっていても良い。
【0034】
このような真空ロボット111によるウエハの受渡しまたは搬送の際には、例え動作が制御された真空ロボット111あるいはそのアーム上に載せられたウエハは、所期の位置から距離が離れてズレた位置に保持される場合が有り、このため、搬送先の目的の位置に精密に位置決めして載置できなくなる虞が有る。
【0035】
すなわち、ウエハの受渡しの際に、ウエハとアームまたはこの先端側のハンド上の所定の位置との間にズレが生じたり、搬送中にウエハがアームまたはハンド上で位置が移動したりする問題が生じる。例えば、ウエハがプッシャピンにより持ち上げられて真空ロボット111のアームがその動作を制御されてウエハ下方の所定の位置にアーム先端側のハンドが配置されたとしても、ウエハがプッシャピンで持ち上げられたその位置がアームまたはハンドにウエハを載せる際の基準となる位置と異なっている場合には、上記ズレが生じてしまう。これは、ウエハを持ち上げる際に静電吸着力が特定の大きさ以上残っていたり、プッシャピンの配置や形状、位置の不均等があると生起しやすい。また、ウエハのウエハ載置面上に載置された状態でその載置の基準となる位置からズレている場合にも、受渡しでの基準位置からのズレが生じてしまう。
【0036】
このようなウエハの位置の変動があると、処理室内の試料台等の目的箇所でのウエハ載置面へのウエハの位置決めが不安定となり、ウエハを保持する吸着力のウエハ面上で不均一や処理の不均一を生起して処理の歩留まりを低下させてしまう。また、ウエハの受渡しの際に安定してアームまたはハンド上に載置できず搬送中にウエハが落下したり装置内部の表面と接触したりして事故や汚染が生起するという問題が生じていた。このため、ウエハをアームまたはハンドの上面や試料台上の載置面の目的の位置に精度良く載置すること、または受渡しすることが求められている。
【0037】
さらに、ウエハを搬送する際の真空ロボット111の動作により、アームの上面でウエハがその位置を移動してしまう場合がある。これを抑制しようとして、ウエハの外形や径に合わせてその外終縁と接してウエハを保持するピンをアーム上に配置して、ウエハの位置を固定することが考えられる。しかし、この場合、アームの位置を高精度に制御しなければウエハ外周縁を複数ピンで接触または支持できないため、適正な支持ができずウエハが落下したり傾いて搬送されたりして目的箇所に適正に載置できないという事故が増大して却って処理の効率を低下させてしまう。或いは、真空ロボット111のコストが増大して装置全体の製造コストが増大するという問題が生起する。或いはまた、ピンとウエハ外周端縁との接触により塵埃が生起して異物となってウエハや処理室等の装置内を汚染して処理の歩留まりが低下したり、クリーニングの頻度を増大させて処理効率が低下してしまう。
【0038】
このため、本実施例では、ウエハの裏面をアーム先端側のハンド上の面または複数の点で支持するとともにウエハ外周縁の周囲に隙間をあけてこれを保持する技術が採用される。
【0039】
本実施例のこのような構成では、真空ロボット111の停止や移動によって、ウエハの搬送中のウエハの位置の移動が生じる虞が有る。このため、生じたウエハの位置の移動(ズレ)を検出し、これに対応して真空処理装置の搬送や処理の動作を調節することが必要となる。
【0040】
図2は、半導体処理装置100の真空搬送装置200(バッファ室110)内のセンサ取り付け位置を示している。真空搬送装置200には、これを構成する真空容器の側面に複数個の処理室101,102,103,104と複数個のロードロック室106,107が連結され、これら内部を連通する通路を介してこれら処理室とロードロック室との間でウエハの移送が可能となっている。
【0041】
本実施例では、真空ロボット111は、バッファ室110の中央近傍にその中心203が配置され、この中心203を軸として所定の角度θの回転が可能となっている。この中心203を中心軸とした真空ロボット111またはそのアームの回転動作をθ軸の動作またはθ軸(周り)の回転という。
【0042】
さらに、真空ロボット111は、所定のθ軸の回転角度位置で、そのアームを中心203側とバッファ室110の外周側(処理室側)とを結ぶ方向に伸張及び収縮可能としてその先端部のウエハ載置用のハンド112−1または112−2の位置をバッファ室110内と処理室内とを往き、戻りの移動をさせることが可能となっている。この伸縮の動作をR軸(方向)の動作という。
【0043】
本発明では、半導体処理装置100の真空搬送装置200(バッファ室110)内に、真空ロボット111の動作方向であるθ軸及びR軸のそれぞれに、θ軸センサ201、R軸センサ202を設けている(ロードロック室2室、処理室4室の装置構成の場合は、θ軸用が6ケ、R軸用が6ケとなる。)。
【0044】
θ軸センサ201は、真空ロボット111の中心203を中心とした同一半径の円弧上に、複数個(少なくとも処理室およびロードロック室の個数)配置され、本実施例では、バッファ室110の上下各々に配置された1対を1個とする指向性の高い光センサであって上下の一方から他方へ向かう光の量を検出するセンサであり、上下のセンサの取り付け位置でのセンサ対の間のウエハの有無あるいはその通過がウエハの遮光によって検出されるものである。このような対のセンサを真空ロボット111の回転動作時にウエハがその間を通過する半径位置に配置することで、真空ロボット111の回転時のθ軸センサ201の出力を用いて、真空ロボット中心からウエハ中心までの距離を算出することができる。
【0045】
また、R軸センサ202は、真空ロボット111のアームの伸縮方向、即ち、各処理室あるいはロードロック室と中心203とを結ぶ方向に沿った線上に配置され、本実施例ではθ軸センサ201と同様に指向性の高い光センサであって、ウエハが載せられたアームの伸張動作の際のウエハの遮光によってそのセンサの取り付け位置での通過あるいはウエハの有無が検出される。
【0046】
本実施例ではθ軸センサ201と同様に指向性の高い光センサであって、ウエハが載せられたアームの伸張動作の際のウエハの遮光によってそのセンサの取り付け位置での通過あるいはウエハの有無が検出される。アームの伸縮時のR軸センサ202の出力を用いて、真空ロボット111のハンド中心とウエハ中心との距離を算出することができる。
【0047】
上記θ軸センサ201、R軸センサ202は、ハンド112−1,112−2が収縮してウエハが処理室から完全に取り出されて真空ロボット111の回転中心の軸に最も接近した状態の退避位置、あるいは待機位置にある場合に、ウエハがこれらの対の間に位置して有無が検出されない位置に配置されている。すなわち、本実施例では上記θ軸センサ201、R軸センサ202はウエハの通過とその時刻を検出するためのものであり、ウエハの有無を検出するものではない。
【0048】
これらのθ軸センサ201、R軸センサ202から求められる変位量を計算し、所定の規格値以上の変位量がある場合に限り位置の補正を行う。尚、この変位量の求め方は、ティーチング時の値を絶対値とし、それからの差分にて変位量を求めるものである。
【0049】
ティーチングは、大気ロボット108側と真空ロボット111側とでそれぞれ行われる。真空ロボット111側で行うのは、真空ロボット111の動作原点から各処理室までの回転角度と、搬入前の退避位置から各処理室間までの距離のあわせ込みである。真空処理装置100による量産の運転、任意のロットの処理の運転の開始前に真空ロボット111の制御装置に当該真空ロボット111の基準となる位置とこの真空ロボット111の制御装置でセンサ等の信号を用いて検出される位置の情報とを対応させて記憶させる。この作業後には真空ロボット111の制御装置は、真空ロボット111の駆動中にセンサ等から出力され受診した信号を用いて真空ロボット111の真空処理装置100内での絶対位置が検出できる。つまり、アームまたはハンド112−1または112−2の位置を可動の範囲内で自由に調節可能な真空ロボット111あるいはその制御装置に対して、その動作の基準となる位置をその上に載せられるウエハの特定の位置または処理室101内部の試料台等の装置内の目的箇所の特定の位置に対する相対的な位置の情報として記憶させ、設定するものである。
【0050】
例えば、アームのハンド上の特定の位置に載せられたウエハの特定位置と処理室101の試料台上の特定位置とが所定の距離に配置されるアームの位置を基準となる位置の情報として設定する。このような基準の位置の情報に基づいて真空ロボット111のθ軸方向の回転やR軸方向の伸縮の動作によるアームの位置が調節される。尚、これら調整は、ハンド中心と各処理室の中心が合致するように治具を用いて行う。
【0051】
図3は、図1に示す処理室及びバッファ室の詳細を説明する横断面図である。θ軸センサ201、R軸センサ202の出力を受けた制御ユニット303からの信号を全体の動きを統括する制御装置302に送信し、ティーチング位置からのずれ量を制御装置302内の演算器で算出する。このずれ量に関する情報は、真空ロボット111を制御する制御装置304に伝達され、この制御装置304は受信した位置ずれ量に関する情報に基づいて位置ずれ量を所望の位置に調節する。
【0052】
処理室内の試料台305は、載置されたウエハ301を静電力によって吸着して保持することが可能に構成されている。ウエハ301を試料台305上に吸着保持した状態で所定のエッチング処理等が終了すると、静電気による吸着を解除(以下、「徐電」)し、試料台305内に配置された押し上げ機構(図示なし)が備える複数の押し上げピンを動作させて、ウエハ301を試料台305に押し上げる。この際、静電吸着力が特定の大きさ以上残っていると、ウエハ301の受渡し時に位置ずれが生じるため、押し上げピンの動作タイミング等、試料台305には、徐電時の最適なパラメータが設定されている。
【0053】
その後、真空ロボット111を動作させ、前記押し上げられたウエハ301の下にハンド112−1または112−2を進入させる。次に、前記押し上げ機構の押し上げピンを下方に移動させ、ウエハ301をハンド112−1または112−2上に載置する。その後も前記押し上げピンの下降を続けると押し上げピンを試料台305内に収納することができる。これにより、押し上げピンからハンド112−1または112−2の受渡しが行われる。
【0054】
このようにして、真空ロボット111は、そのハンド112−1または112−2によりウエハ301を受け取り、受け取ったウエハ301を処理室からバッファ室110に搬出する。その後、ウエハ301は他の処理室または、ロードロック室106または107に搬送される。この際、ウエハ301は再度、θ軸センサ201及びR軸センサ202の各々の位置の上方または水平方向について各々位置で上下に配置されたセンサの対の間を通過する。この際にウエハの位置を検出し、これらセンサからの出力を受信した制御装置302がウエハ301搬出時の位置ずれ量を検出する。
【0055】
図4は、処理室から搬出されるウエハ301の位置ずれ量を検出した結果である。本実施例ではウエハ301の位置ずれ量がR軸方向、θ軸方向の各々に予め設定された閾値以上となると、真空処理装置100に備えられた位置ずれ発生を警告する報知装置がこれを報知する。
【0056】
本図に示すように、2つの方向の軸の座標平面で閾値を示す線401の内側の許容範囲内の領域に位置ズレの量が収まっているものと、閾値を超えて許容範囲外になった検出例とが存在しており、各々例は位置ズレの量が特定の値に近似した集合を構成していることが判る。尚、位置ずれ量の閾値は、真空ロボット111の動作停止精度、θ軸センサ201及びR軸センサ202の読み取り精度等で決定される。
【0057】
前述のように、静電力によって吸着保持する試料台305において、徐電時の残留吸着力が特定以上の大きさ存在すると、試料台305内に配置された上述のピンによるウエハ301の押し上げの際に位置ずれが生じる虞がある。試料台305は、一般的にウエハ301を静電吸着させるため、試料台305の上面の載置面上にこれを覆って配置された誘電体製の絶縁膜を有し、その内部には異なる極性の直流電力が印加される膜状の複数の電極が配置されている。絶縁膜はその厚さや面積、絶縁体を構成する材質の固有抵抗等を所定の値に調節させて製造されている。
【0058】
しかし、長時間にわたりエッチング等の処理を続けると、処理室内には、エッチング処理に伴って発生する反応生成物が堆積し、この反応生成物は試料台305にも同じように堆積する。これにより、静電吸着膜の性質、例えば、表面粗さ、あるいは静電吸着膜の固有抵抗値が変化し、静電吸着膜内で特性の分布にばらつきが生じ、その結果、徐電が不安定となり、押し上げピンでウエハ301を押し上げた際に、ウエハ301に位置ずれが生じる。
【0059】
発明者らは、試料台305の残留吸着力によるウエハ301の位置ずれを検証するため、試料台305内の押し上げピンによるウエハ301の受渡しのみを行う試験を所定の回数繰り返して各搬送の回毎に位置ずれ量を検出した。その結果、ウエハ301の位置ずれ量が閾値以上となり、前記と同様の位置ずれ警告が発生した。
【0060】
発明者らは、試料台305内の押し上げピンによるウエハ301の受渡しのみであってもウエハ301の位置ずれが検出されたことから、ウエハ301を搬送するハンド112−1及び112−2とウエハ301の位置ずれ量とに相関があると推測し位置ズレの値を検討した。その結果、搬送を行う複数のハンドの各々に応じて、2つの方向についての量を有する各回の位置ズレの量の分布が2軸の座標の平面上で4つの集合に分けられることが判った。前述したように、ウエハ301の位置ずれ量は各処理室101,102,103,104及びロードロック室106,107それぞれのティーチング位置からの位置ずれ量である。発明者らは、検討の結果、4つの集合はハンド112−1,112−2による搬送のパターンに対応しており、これらのハンドのティーチング作業の際に決定される位置に差があり、これらの差によりハンド112−1,112−2のティーチング位置の誤差が各搬送のパターンでのウエハ301の位置ずれ量として制御ユニット303が認識したとの知見を得、本発明を想起したものである。
【0061】
ハンド112−1,112−2にティーチングの誤差が存在すると、それをウエハの位置ずれと認識するため、実際には、搬送異常が無い場合にも、装置が搬送異常と認識する、或いは、搬送異常が有る場合でも、装置が搬送異常と認識せず、重大な故障を起こし、装置が停止して、製造歩留まりが低下する。このため、本実施例では、真空ロボット111のティーチング後にウエハの位置ずれを検出して、ハンド112−1と112−2のティーチングの誤差を検出してこれを真空ロボット111に対して再度ティーチングすることで調節し、搬送中の異常の発生を低減する。
【0062】
本実施例では、真空ロボット111の初期のティーチング後、所定のパターン、例えば図4に示す搬送パターン402の各々のパターンで処理室101,102,103,104に対してウエハを1回ずつ搬送する。この場合、処理室101〜104では処理は実施せずに、試料台305での吸着保持はしない。そして、これらの各処理室に対する搬送の全てのパターンにおけるウエハの位置ずれ量を検出する。
【0063】
本実施例における搬送パターン402のパターンは、ハンド112−1によりウエハを搬入し同じハンドによりウエハを搬出する搬送パターン1、ハンド112−2によりウエハを搬入し同じハンドによりウエハを搬出する搬送パターン2、一方のハンド112−1によりウエハを搬入し他方のハンド112−2によりウエハを搬出する搬送パターン3、他方のハンド112−2によりウエハを搬入し一方のハンド112−1によりウエハを搬出する搬送パターン4の4つである。
【0064】
検出した結果から、位置ズレの量が許容範囲内となっている処理室から同一ハンドでウエハ301の搬入出を行う搬送パターン1または搬送パターン2の座標系を基準として、他の搬送パターンの位置ずれ量の差分を制御装置302で演算する。制御装置302は演算した差分だけティーチング位置を変更するよう、真空ロボット111を制御する制御装置304に指令信号を発信する。指令を受信した制御装置304が真空ロボット111に対してティーチングによる位置情報を修正することで搬送パターン402の全ての搬送パターンの位置ずれの量のティーチングによる基準位置を一致させ各パターンの搬送における位置ズレの量が許容の範囲内になる。
【0065】
この後、再度各パターンでのウエハを搬送を行って位置ズレの量を検出し、何れの搬送でも位置ズレの量が許容範囲内にあることを確認した後、真空処理装置100での製品を量産するためのウエハの搬送を行って量産の処理が開始される、或いはロットの処理が開始される。
【0066】
なお、ティーチングは、ハンド112−1及び112−2の座標系の情報に基づいて手動で行っても良い。また、搬送パターン402の各々で所定の回数だけウエハを搬送しても良い。
【0067】
また、エッチングを実施し、試料台305で吸着保持した場合は、全搬送パターンを10回以上繰り返し、それぞれの搬送パターンの座標系の平均値を制御装置302で演算し、搬送パターン1または搬送パターン2との差分だけティーチング位置を変更するよう制御装置304に伝達して、全搬送パターンの分布のばらつきを一致させる。
【0068】
以上、本実施例によれば、位置ずれ量を検出する装置において、複数のハンドを備える真空ロボットのティーチング位置を位置ずれセンサにより検出して、ティーチング位置を再調節することで、搬送中の位置ずれ量を抑制し、高歩留真空処理装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
100 真空処理装置
101,102,103,104 処理室
105 カセット載置台
106,107 ロードロック室
108 大気ロボット
109 大気搬送室
110 バッファ室
111 真空ロボット
112 ハンド
201 θ軸センサ
202 R軸センサ
203 中心
301 ウエハ
302,304 制御装置
303 制御ユニット
305 試料台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側が減圧されて処理対象のウエハが処理される処理室及びこの処理室内に配置され前記ウエハがその上面に載せられ静電吸着されて保持される試料台を有する真空容器と、この真空容器と連結され内部に前記ウエハを2つのアームの何れかに載せて前記処理室内の前記試料台に対して搬入または搬出するロボットと、このロボットが前記ウエハを搬入または搬送する際に当該ウエハを載せるアームの所定の位置からの前記ウエハの所定の位置のズレの量を検出する手段と、この検出されたズレの量に基づいて前記ロボットの動作を調節する調節器とを備え、
前記調節器は、予め前記アームの位置を検出するセンサからの情報と実際の前記アームの位置とを対応させるティーチングを行った結果に基づいて前記ロボットの動作を調節するものであって、
前記ロボットが予めティーチングを行った後にウエハを所定のパターンで搬送した際に検出されたウエハの位置ズレの量の情報に基づいて再度のティーチングを行った後にウエハの処理を行う真空処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空処理装置であって、
前記再度のティーチングにおいて、前記2つのアームのうちの一方のアームによる搬送の際に検出されたズレの量を他方のアームによる搬送の際に検出されたズレの量に対して一致させるように前記一方のアームの基準の位置を設定する真空処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の真空処理装置であって、
前記再度のティーチングにおいて、前記一方のアームによる少なくとも一枚以上のウエハの搬送の際に検出されたズレの量の平均の値を前記他方のアームによる搬送の際に検出されたズレの量の平均の値に合致させる真空処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の真空処理装置であって、
前記2つのアームの組合せによる前記ウエハの搬入及び搬出の複数のパターンを行って検出された位置ズレの量の情報に基づいて、前記複数のパターンのうち前記位置ズレの量が許容される所定の範囲外であるパターンの前記位置ズレの量を前記許容される所定の範囲内にパターンの前記位置ズレの量に合致するように前記再度のティーチングがなされる真空処理装置。
【請求項5】
真空容器に連結された搬送室内をこの搬送室内に配置されたロボットの2つのアームの何れかに載せて前記真空容器内部の処理室内の試料台に対して搬入し、前記試料台上に載せられた前記ウエハを吸着、保持し、前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを処理した後、前記ロボットのアームを前記処理室内の前記試料台に対して搬入して前記ウエハを載せて前記処理室から取り出して前記真空搬送室内を搬送する真空処理方法であって、
前記真空搬送室内において前記アームに載せられた状態での基準となる位置からの前記ウエハの位置のズレの量を検出する手段と、この検出されたズレの量に基づいて前記ロボットの動作を調節する調節器とを備え、
予め前記アームの位置を検出するセンサからの情報と実際の前記アームの位置とを対応させるティーチングを行った後、前記任意のウエハを所定のパターンで搬送した際に検出されたウエハの位置ズレの量の情報に基づいて再度のティーチングを行った後に、この再度のティーチングの結果に基づいて前記調節器により前記ロボットの動作を調節して前記ウエハを搬送して処理を行う真空処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の真空処理方法であって、
前記再度のティーチングにおいて、前記2つのアームのうちの一方のアームによる搬送の際に検出されたズレの量を他方のアームによる搬送の際に検出されたズレの量に対して一致させるように前記一方のアームの基準の位置を設定する真空処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の真空処理方法であって、
前記再度のティーチングにおいて、前記一方のアームによる少なくとも一枚以上のウエハの搬送の際に検出されたズレの量の平均の値を前記他方のアームによる搬送の際に検出されたズレの量の平均の値に合致させる真空処理方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載の真空処理方法であって、
前記2つのアームの組合せによる前記ウエハの搬入及び搬出の複数のパターンを行って検出された位置ズレの量の情報に基づいて、前記複数のパターンのうち前記位置ズレの量が許容される所定の範囲外であるパターンの前記位置ズレの量を前記許容される所定の範囲内にパターンの前記位置ズレの量に合致するように前記再度のティーチングがなされる真空処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−45817(P2013−45817A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181113(P2011−181113)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】