説明

着色および/または効果を付与する多層コーティングの製造方法

1の着色および/または効果を付与するベースコーティング(A)および1の透明なトップコーティング(B)を有する、着色および/または効果を付与する多層コーティングを、ウェット・オン・ウェット法により、着色および/または効果を付与する被覆剤(A)および透明な被覆剤(B)を使用して製造する方法であって、被覆剤(A)を、ラジカル重合により硬化可能な水性の、構造粘性の、揮発性有機化合物を含有していない粉末分散液(A1)であって、分散相として、光子相関分光分析により測定して80〜750nmの平均粒径z平均を有し、−70〜+50℃のガラス転移温度を有し、2〜10当量/kgのオレフィン不飽和二重結合を有し、かつ0.05〜15当量/kgの酸基の含有率を有する、ラジカル架橋可能な結合剤(A111)を含有する、固体の、および/または高粘性の、貯蔵および適用条件下で寸法安定性の粒子(A11)を、(A)に対して50〜100質量%の量で含有する粉末分散液(A1)を別に製造し、該粉末分散液を、被覆剤(A)の残りの成分(A2)と混合し、かつ得られる混合物(A)を均質化することにより製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色および/または効果を付与する多層コーティングの新規の製造方法に関する。
【0002】
従来技術
ラジカル重合により硬化することができる、着色および/または効果を付与するベースコートおよびクリアコートを使用した、着色および/または効果を付与する多層コーティングの製造方法は、ドイツ特許出願DE19736083A1から公知である。
【0003】
ラジカル重合は公知のとおり、オレフィン不飽和二重結合を有する化合物を用いて実施される。ラジカル重合は、熱および化学線により開始され、かつ維持される。
【0004】
ここで、および以下では、化学線とは、電磁線、たとえば近赤外線(NIR)、可視光、UV線、X線、またはガンマ線、特にUV線、または粒子線、たとえば電子線、プロトン線、ベータ線、アルファ線、または中性子線、特に電子線であると理解される。
【0005】
公知の方法によれば、そのベースコーティングおよびクリアコーティングが相互に強固に結合している結露水安定性の着色および/または効果を付与する多層コーティングが得られる。
【0006】
しかし、着色および/または効果を付与する多層コーティングに対して常に高まる市場の要求、特に自動車製造業者およびその顧客の要求の高まりにより、着色および/または効果を付与する多層コーティングの適用特性、特にレベリング、光沢、画像の鮮明さ、着色箇所の安定性、顔料の配向、特にフレーク状効果顔料の場合の顔料の配向、支持体上での付着性、中間相の付着、ストーンチップ安定性、耐摩耗性、対引掻性、耐候性、エッチ抵抗性、耐薬品性、樹脂抵抗性、結露水安定性、トリのフンに対する抵抗性および上塗り性に関する特性をさらに発展させることが強いられている。
【0007】
しかしこれらの要求の高まりによりまた、着色および/または効果を付与する多層コーティングの製造方法の絶え間ない開発も強いられ、このことによって適用技術的な特性は極めて適切に改善され、かつ市場の要求に最適に適合することができる。このために特に方法を幅広く変更し、かつそれにもかかわらず既存の被覆装置中で実施することができることが必要とされる。
【0008】
課題
本発明の課題は、少なくとも1の着色および/または効果を付与するベースコーティング(A)および少なくとも1の透明なトップコーティング(B)を含む、着色および/または効果を付与する多層コーティングの製造方法であって、
(1)少なくとも1の着色および/または効果を付与する被覆剤(A)を、被覆されていない、または被覆されている支持体上に施与し、
(2)得られる着色および/または効果を付与する層(A)を、完全に硬化させることなく乾燥させ、
(3)少なくとも1の透明な被覆剤(B)を、乾燥させた、着色および/または効果を付与する層(A)上に施与し、かつ
(4)少なくとも生じる透明な層(B)を、着色および/または効果を付与する層(A)と一緒に硬化させ、このことにより着色および/または効果を付与するベースコーティング(A)および透明なトップコーティング(B)が得られる、
着色および/または効果を付与する多層コーティングの新規の製造方法であって、従来技術の欠点をもはや有しておらず、硬化法に関して幅広い変法が可能であり、かつそれにもかかわらず既存の装置で実施することができ、かつレベリング、光沢、画像の鮮明さ、着色箇所の安定性、顔料の配向、特にフレーク状効果顔料の場合の顔料の配向、支持体上での付着性、中間相の付着、ストーンチップ安定性、耐摩耗性、対引掻性、耐候性、エッチ抵抗性、耐薬品性、樹脂抵抗性、結露水安定性、トリのフンに対する抵抗性および上塗り性に関する特性、特にレベリングおよび画像の鮮明さに関して著しく改善されている、着色および/または効果を付与する多層コーティングが得られる製造方法を提供することである。
【0009】
解決手段
これに応じて、少なくとも1の着色および/または効果を付与するベースコーティング(A)および少なくとも1の透明なトップコーティング(B)を含む、着色および/または効果を付与する多層コーティングの製造方法であって、
(1)少なくとも1の着色および/または効果を付与する被覆剤(A)を、被覆されていない、または被覆されている支持体上に施与し、
(2)得られる着色および/または効果を付与する層(A)を、完全に硬化させることなく乾燥させ、
(3)少なくとも1の透明な被覆剤(B)を、乾燥させた、着色および/または効果を付与する層(A)上に施与し、かつ
(4)少なくとも生じる透明な層(B)を、着色および/または効果を付与する層(A)と一緒に硬化させ、このことにより着色および/または効果を付与するベースコーティング(A)および透明なトップコーティング(B)が得られる、
着色および/または効果を付与する多層コーティングの製造方法において、着色および/または効果を付与する被覆剤(A)または着色および/または効果を付与する被覆剤の少なくとも1を、
(5)少なくとも1の、ラジカル重合により硬化可能な水性の、構造粘性の、揮発性有機化合物を全く含有していないか、もしくはほぼ含有していない粉末分散液(A1)であって、分散相として、光子相関分光分析により測定して80〜750nmの平均粒径z平均を有し、−70〜+50℃のガラス転移温度を有し、2〜10当量/kgのオレフィン不飽和二重結合を有し、かつ0.05〜15当量/kgの酸基の含有率を有する、少なくとも1のラジカル架橋可能な結合剤(A111)を含有する、固体の、および/または高粘性の、貯蔵および適用条件下で寸法安定性の粒子(A11)を、(A)に対して50〜100質量%の量で含有する粉末分散液(A1)を別に製造し、
(6)該粉末分散液を、着色および/または効果を付与する被覆剤(A)の残りの成分(A2)と混合し、かつ
(7)得られる混合物を均質化する
ことにより製造することを特徴とする、着色および/または効果を付与する多層コーティングの新規の製造方法が判明した。
【0010】
以下では、少なくとも1の着色および/または効果を付与するベースコーティング(A)および少なくとも1の透明なトップコーティング(B)を含む、着色および/または効果を付与する多層コーティングの新規の製造方法を、「本発明による方法」とよぶ。
【0011】
利点
従来技術を鑑みると、本発明の根底に存在していた課題を、本発明による方法によって解決することができたことは意想外であり、当業者が予測できるものではなかった。
【0012】
特に意外であったことは、本発明による方法は、従来技術の欠点をもはや有しておらず、硬化法に関して、幅広く変更可能であり、かつそれにもかかわらず既存の装置で実施することができたことであり、その際、著しく再現性のある結果が得られた。
【0013】
さらに本発明による方法により、レベリング、光沢、画像の鮮明さ、着色箇所の安定性、顔料の配向、特にフレーク状効果顔料の場合の顔料の配向、支持体上での付着性、中間相の付着、ストーンチップ安定性、耐摩耗性、対引掻性、耐候性、エッチ抵抗性、耐薬品性、樹脂抵抗性、結露水安定性、トリのフンに対する抵抗性および上塗り性に関する特性、特にレベリングおよび画像の鮮明さに関して著しく改善されている着色および/または効果を付与する多層コーティングが得られた。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明による方法は、少なくとも1の着色および/または効果を付与するベースコーティング(A)および少なくとも1のトップコーティング(B)を含む、着色および/または効果を付与する多層コーティングを製造するために用いられる。さらに該多層コーティングは、少なくとも1の、別の慣用かつ公知のコーティング、たとえば単層もしくは多層のプライマーコーティング、電着コーティング、腐食防止層、ストーンチップガードプライマーおよび/またはサーフェイサーコーティング、特に電着コーティングおよびストーンチップガードプライマーまたはサーフェイサーコーティングを有していてよい。
【0015】
着色および/または効果を付与するベースコーティング(A)は、着色、および/または物理的および/または化学的効果の調整、たとえば光学的効果、たとえばメタリック効果、干渉効果、フロップ効果または蛍光、腐食防止、導電性および電磁シールドの効果の調整に役立つが、しかし該コーティングは特に着色、および/またはメタリック効果、干渉効果およびフロップ効果の調整に役立つ。
【0016】
透明なトップコーティング(B)は、透明であり、かつ光沢があっても、つや消しであってもよい。その際、該コーティングは、着色されていても、無色であってもよい。有利に該コーティングは無色であり、透明で、かつ光沢のあるクリアコーティング(B)である。
【0017】
本発明による方法により製造される着色および/または効果を付与する多層コーティングは、種々の支持体上に存在することができる。
【0018】
有利には該支持体は、金属、プラスチック、木材、セラミック、石、テキスタイル、繊維束、皮革、ガラス、ガラス繊維、グラスウールおよび石綿、鉱物質の、および樹脂結合した建材、たとえば石膏板およびセメント板、または屋根瓦、ならびにこれらの材料の複合材である。
【0019】
有利には支持体は、
筋力、熱風または風力により運転される陸、水または空中における前進手段、たとえば自転車、鉄道トロリー、手漕ぎボート、セイルボート、熱気球、気球またはグライダー、ならびにこれらの部材、
エンジンにより運転される陸、水または空中における前進手段、たとえばオートバイ、運送用車両または自動車、特に乗用車、水上船もしくは水中船、または航空機、ならびにこれらの部材、
静的な浮遊体、たとえばブイ、または港設備の部材、
屋内および屋外領域での建材、
ドア、窓および家具、および
ガラス中空体、
工業用の小部材、たとえばナット、ボルト、ホールキャップまたはホイールリム、
容器、たとえばコイル、コンテナまたは包装材料、
電子工学部材、たとえば電子巻成体、たとえばコイル、
光学部材、
機械的な部材、および
ホワイトウェア、たとえば家庭用機器、ボイラーおよびラジエーター
であってよい。
【0020】
支持体は特に乗用車の車体およびその部材である。
【0021】
本発明による方法は、
(1)少なくとも1の着色および/または効果を付与する被覆剤(A)を、被覆されていない、または被覆されている支持体上に施与し、
(2)得られる着色および/または効果を付与する層(A)を、完全に硬化させることなく乾燥させ、
(3)少なくとも1の透明な被覆剤(B)を、乾燥させた、着色および/または効果を付与する層(A)上に施与し、かつ
(4)少なくとも生じる透明な層(B)を、着色および/または効果を付与する層(A)と一緒に硬化させ、このことにより着色および/または効果を付与するベースコーティング(A)および透明なトップコーティング(B)が得られる
いわゆるウェット・オン・ウェット法である。
【0022】
その際、方法工程(4)において、場合によりあらかじめ施与されている層、たとえば電着塗料層またはサーフェイサー層を一緒に硬化させることができる。
【0023】
このような方法は公知である(たとえばドイツ特許出願DE10027292A1、第13頁、段落[0109]〜第14頁、段落[0118]を参照のこと)。
【0024】
有利にはこの方法で、慣用かつ公知の噴霧塗布法を使用する。
【0025】
本発明による方法にとって重要なことは、着色および/または効果を付与する被覆剤(A)または着色および/または効果を付与する被覆剤(A)の少なくとも1が、
(5)少なくとも1の、特に1の、ラジカル重合により硬化可能な水性の、構造粘性の、揮発性有機化合物を全く含有していないか、もしくはほぼ含有していない粉末分散液であって、分散相として、光子相関分光分析により測定して80〜750nmの平均粒径z平均を有し、−70〜+50℃のガラス転移温度を有し、2〜10当量/kgのオレフィン不飽和二重結合を有し、かつ0.05〜15当量/kgの酸基の含有率を有する、少なくとも1のラジカル架橋可能な結合剤(A111)を含有する、固体の、および/または高粘性の、貯蔵および適用条件下で寸法安定性の粒子(A11)を、(A)に対して50〜100質量%の量で含有する粉末分散液(A1)を別に製造し、
(6)該粉末分散液を、着色および/または効果を付与する被覆剤(A)の残りの成分(A2)と混合し、かつ
(7)得られる混合物を均質化する
ことにより製造されることである。
【0026】
粉末分散液(A1)は、有機溶剤を全く含有していないか、またはほぼ含有していない。
【0027】
「ほぼ含有していない」とは、当該粉末分散液(A1)が、10質量%未満、有利にはそのつど5質量%未満、および特に2質量%未満の溶剤含有率を有していることを意味する。
【0028】
「全く含有していない」とは、溶剤含有率がそのつど、有機溶剤に関する慣用かつ公知の検出限界を下回っていることを意味する。
【0029】
粉末分散液(A1)は構造粘性である。
【0030】
「構造粘性」として記載される粘度特性は、一方では適用の要求を、および他方では粉末分散液(A1)の貯蔵安定性および沈殿安定性に関して、そのままで顧慮される状態を記載している。つまり動いている状態では、たとえば被覆装置のリング形導管中で粉末分散液(A1)がポンプ循環の際に、および適用の際に動いている状態では、粉末分散液(A1)はそのままで良好な加工性を保障する低粘性の状態である。これに対して剪断負荷がない場合、粘度は上昇する。比較的高い粘度によって、動いていない状態、たとえば貯蔵の際に、粉末分散液(A1)の固体粒子(A11)の沈殿が大部分防止されるか、または貯蔵の間に再度攪拌することによってほとんど沈殿しないか、かつ/または凝集した粉末分散液(A1)が保障される。
【0031】
有利には構造粘性の特性は、適切な増粘剤(A112)により、特に非イオン性およびイオン性の増粘剤(A112)により調整され、増粘剤は有利には粉末分散液(A1)の水相(A12)中に存在する。
【0032】
有利には構造粘性の特性に関して、1000s-1の剪断速度で50〜1500mPasの粘度範囲が調整され、かつ10s-1の剪断速度で150〜8000mPasの、ならびに1s-1の剪断速度で180〜12000mPasの剪断速度が調整される。
【0033】
粉末分散液(A1)は、分散相として、固体および/または高粘性の寸法安定性粒子(A11)を含有する。
【0034】
「寸法安定性」とは、粒子(A11)が、構造粘性の水性粉末分散液の慣用かつ公知の貯蔵および適用の条件下で、全く凝集しないか、凝集するとしてもわずかに凝集するのみであるか、および/または剪断力の影響下でも比較的小さい粒子に分解する代わりに、その本来の形状を完全に、またはほぼ維持することを意味している。
【0035】
粒子(A11)は、光子相関分光分析により測定して80〜750nm、有利には80〜600nmおよび特に80〜400nmの平均粒径z平均を有する。
【0036】
光子相関分光分析法は、1μm未満の粒径を有する分散粒子の慣用かつ公知の測定法である。たとえばこの測定は、Malvern(登録商標)Zetasizer1000を用いて実施することができる。
【0037】
粒径分布は任意の方法で調整することができる。有利には粒径分布は、適切な湿潤剤(A112)の使用に基づいて生じる。
【0038】
粉末分散液(A1)における粒子(A11)の含有率は、極めて広い範囲で変化することができ、かつ個別事例の要求に合わせて適合させる。
【0039】
有利にはその含有率は、粉末分散液(A1)に対して、5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、特に有利には15〜50質量%およびとりわけ15〜40質量%である。
【0040】
粒子(A11)は、
−70〜+50℃、有利には−60〜+20℃、および特に−60℃〜+10℃のガラス転移温度、
結合剤(A111)の2〜10当量/kg、有利には2〜8当量/kg、好ましくは2.1〜6当量/kg、特に有利には2.2〜6当量/kg、とりわけ有利には2.3〜5当量/kgおよび殊に2.5〜5当量/kgのオレフィン不飽和二重結合の含有率および
結合剤(A111)の0.05〜15当量/kg、有利には0.08〜10当量/kg、好ましくは0.1〜8当量/kg、特に有利には0.15〜5当量/kg、殊に有利には0.18〜3当量/kgおよびとりわけ0.2〜2当量/kgの酸基の含有率
を有する、少なくとも1の、特に1のラジカル架橋可能な結合剤(A111)を含有する。
【0041】
有利には酸基の含有率は、DIN EN ISO 3682により、その酸価によって測定される。
【0042】
粒子(A11)は、結合剤(A111)を、そのつど(A11)に対して、50〜100質量%の量で、有利には55〜100質量%、好ましくは60〜99質量%、特に有利には70〜99質量%およびとりわけ80〜99質量%の量で含有する。
【0043】
従って粒子(A11)は、結合剤(A111)からなっていてもよい。有利には粒子(A11)は、さらに少なくとも1の、以下に記載する添加剤(A112)を含有する。
【0044】
有利には結合剤(A111)のオレフィン不飽和二重結合は、(メタ)アクリレート基、エタクリレート基、クロトネート基、シンナメート基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、ジシクロペンタジエニル基、ノルボルネニル基、イソプレニル基、イソプロペニル基、アリル基、またはブテニル基;ジシクロペンタジエニルエーテル基、ノルボルネニルエーテル基、イソプレニルエーテル基、イソプロペニルエーテル基、アリルエーテル基、またはブテニルエーテル基、またはジシクロペンタジエニルエステル基、ノルボルネニルエステル基、イソプレニルエステル基、イソプロペニルエステル基、アリルエステル基、またはブテニルエステル基からなる群から選択される基、有利には(メタ)アクリレート基の中に存在している。オレフィン不飽和二重結合は特にアクリレート基の中に存在している。
【0045】
結合剤(A111)は、オリゴマーまたはポリマーである。
【0046】
「オリゴマー」とは、当該結合剤(A111)が、3〜12のモノマー構造単位から構成されていることを意味する。構造単位は同じであっても、相互に異なっていてもよい。
【0047】
「ポリマー」とは、当該結合剤(A111)が、8より多くのモノマー構造単位から構成されていることを意味する。ここでもまた、構造単位は同じであっても、相互に異なっていてもよい。
【0048】
8〜12のモノマー構造単位から構成されている結合剤(A111)が、オリゴマーであるか、ポリマーであるかは、第一にその数平均分子量による。
【0049】
結合剤(A111)の数平均分子量は、極めて広い範囲で変化してよく、かつ個別事例の要求に合わせて、特に結合剤(A111)の加工および使用にとって有利な粘度に応じて適合させる。たとえば結合剤(A111)の粘度は通常、粉末分散液(A1)の適用後に、そのままで、および得られた湿潤層の乾燥の後で、問題なく、かつ容易に粒子(A11)の皮膜形成が達成されるように調整される。
【0050】
有利には数平均分子量は、1000〜50000ダルトンであり、好ましくは1500〜40000ダルトン、および特に2000〜20000ダルトンである。
【0051】
この場合、分子量の不均一性は、同様に広い範囲で変化してもよく、かつ有利には1〜10、特に1.5〜8である。
【0052】
結合剤(A111)として、前記の特性プロファイルを有する全てのオリゴマーおよびポリマーが考えられる。
【0053】
有利には結合剤(A111)は、オリゴマーおよびポリマーのエポキシド(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートおよびカーボネート(メタ)アクリレートからなる群から選択される。特にウレタン(メタ)アクリレートを使用する。
【0054】
ウレタン(メタ)アクリレート(A111)は、有利には、
(a1)脂肪族、芳香族または脂環式のジイソシアネートおよびポリイソシアネートからなる群から選択される、少なくとも2のイソシアネート基を有する化合物少なくとも1種、
(a2)有利にヒドロキシル基、チオール基、および第一級および第二級アミノ基からなる群から選択される、少なくとも1の、特に1のイソシアネート反応性の官能基、特にヒドロキシル基、および少なくとも1の、特に1の、前記のラジカル重合可能なオレフィン不飽和二重結合を有する基、有利には(メタ)アクリレート基、特にアクリレート基を有する化合物少なくとも1種、
(a3)少なくとも1の、特に1のイソシアネート反応性の官能基、および少なくとも1の、特に1の酸基、有利にカルボン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基およびスルフィン酸基からなる群から選択される酸基、有利にはカルボン酸基およびスルホン酸基、特にカルボン酸基を有する化合物少なくとも1種、ならびに
(a4)場合により、少なくとも2の、特に2のイソシアネート反応性の官能基を有する化合物少なくとも1種
の反応により製造することができる。
【0055】
適切な化合物(a1)の例は、統計学的な平均で2〜6、有利には2〜5および特に2〜4のイソシアネート官能基を有する慣用かつ公知のジイソシアネートおよびポリイソシアネートである。
【0056】
「脂肪族」とは、当該イソシアネート基が脂肪族炭素原子と結合していることを意味する。
【0057】
「脂環式」とは、当該イソシアネート基が、脂環式炭素原子と結合していることを意味する。
【0058】
「芳香族」とは、当該イソシアネート基が、芳香族炭素原子と結合していることを意味する。
【0059】
適切な脂肪族ジイソシアネート(a1)の例は、脂肪族ジイソシアネート、たとえばテトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネートの誘導体、テトラメチルキシリデンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートまたは1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンである。
【0060】
適切な脂環式ジイソシアネート(a1)の例は、1,4−、1,3−もしくは1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、テトラメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(4′−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、(4′−イソシアナトシクロヘキシル)−(2′−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、2,2−(4′−イソシアナトシクロヘキシル)−(2′−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、2,4−もしくは2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサンまたは二量体脂肪酸から誘導されるジイソシアネート、たとえば商品名DDI 1410でHenkel社から市販されているもの、および特許文献WO97/49745およびWO97/49747に記載されているもの、たとえば2−ヘプチル−3,4−ビス(9−イソシアナトノニル)−1−ペンチル−シクロヘキサンである。
【0061】
適切な芳香族ジイソシアネート(a1)の例は、2,4−もしくは2,6−トルイリデンジイソシアネートまたはこれらの異性体混合物、m−キシリレンジイソシアネートまたはp−キシリレンジイソシアネート、2,4′−もしくは4,4′−ジイソシアナトジフェニルメタンまたはこれらの異性体混合物、1,3−もしくは1,4−フェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジイソシアナト−3,3′−ジメチルジフェニル、3−メチル−ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトベンゼンまたは4,4′−ジイソシアナトジフェニルエーテルである。
【0062】
有利には脂肪族および脂環式ジイソシアネート(a1)を、特にヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネートおよび/またはジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタンを使用する。
【0063】
適切なポリイソシアネート(a1)の例は、トリイソシアネート、たとえばノナントリイソシアネート(NTI)、ならびに前記のジイソシアネートをベースとするポリイソシアネート(a1)、およびトリイソシアネート(a1)、特にイソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレタン基、カルボジイミド基、尿素基、ウレトンイミン基、および/またはウレトジオン基を有するオリゴマーである。この種の適切なポリイソシアネート(a1)の例ならびにその製造方法は、たとえば特許文献および特許出願CA2,163,591A1、US4,419,513A、US4,454,317、EP0646608A1、US4,801,675A、EP0183976A1、DE4015155A1、EP0303150A1、EP0496208A1、EP0524500A1、EP0566037A1、US5,258,482A、US5,290,902A、EP0649806A1、DE4229183A1またはEP0531820A1から公知である。
【0064】
有利にはヘキサメチレンジイソシアネートのオリゴマー(a1)およびイソホロンジイソシアネートのオリゴマー(a1)を使用する。
【0065】
適切な化合物(a2)の例は、
(a21)分子中に有利には2〜20個の炭素原子を有し、かつ少なくとも2個のヒドロキシル基を有するジオールおよびポリオール、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,1−ジメチル−1,2−エタンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、ジペンタエリトリット、ジトリメチロールプロパン、エリトリット、ソルビット、平均分子量162〜2000を有するポリテトラヒドロフラン、平均分子量134〜400を有するポリ−1,3−プロパンジオールまたは分子量150〜500を有するポリエチレングリコール、特にエチレングリコールと、
(a22)α,β−不飽和カルボン酸、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドグリコール酸、メタクリルアミドグリコール酸、特にアクリル酸
とのモノエステルである。
【0066】
適切な化合物(a2)の別の例は、前記のジオールおよびポリオール(a21)のモノビニルエーテルである。
【0067】
適切な化合物(a2)の別の例は、前記のα,β−不飽和カルボン酸(a22)と、
(a23)アミノアルコール、たとえば2−アミノエタノール、2−(メチルアミノ)エタノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノールまたは2−(2−アミノエトキシ)エタノール、
(a24)チオアルコール、たとえば2−メルカプトエタノールまたは
(a25)ポリアミン、たとえばエチレンジアミンまたはジエチレントリアミン
とのモノエステルまたはモノアミドである。
【0068】
特に2−ヒドロキシエチルアクリレートを使用する。
【0069】
適切な化合物(a3)の例は、
(a31)ヒドロキシカルボン酸、たとえばヒドロキシ酢酸(グリコール酸)、2−もしくは3−ヒドロキシプロピオン酸、3−もしくは4−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバル酸、6−ヒドロキシカプロン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、2,3−ジヒドロキシプロピオン酸(グリセリン酸)、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、トリメチロール酢酸、サリチル酸、3−もしくは4−ヒドロキシ安息香酸または2−、3−もしくは4−ヒドロキシケイ皮酸、
(a32)アミノ酸、たとえば6−アミノカプロン酸、アミノ酢酸(グリシン)、2−アミノプロピオン酸(アラニン)、3−アミノプロピオン酸(β−アラニン)または別の必須アミノ酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−グリシン、N−[ビス(ヒドロキシメチル)−メチル]−グリシンまたはイミド二酢酸、
(a33)糖酸、たとえばグルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、ガラクトウロン酸または粘液酸(ガラクタル酸)、
(a34)チオールカルボン酸、たとえばメルカプト酢酸、または
(a35)スルホン酸、たとえば2−アミノエタンスルホン酸(タウリン)、アミノメタンスルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、
2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−エタンスルホン酸、
3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジニル]−プロパンスルホン酸、
N−[トリス(ヒドロキシメチル)−メチル]−2−アミノエタンスルホン酸、
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル−2−アミノエタンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、
8−ヒドロキシキノリン−5−スルホン酸、フェノール−4−スルホン酸またはスルファニル酸
である。
【0070】
特にヒドロキシ酢酸(グリコール酸)(a31)を使用する。
【0071】
酸基はイオン化されていてもよい。
【0072】
適切な対イオンは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、またはアンモニウムイオン、ならびに慣用かつ公知の有機アミンから誘導される第一級、第二級、第三級もしくは第四級アンモニウムイオンである。
【0073】
適切な化合物(a4)の例は、前記の化合物であるジオールおよびポリオール(a21)、アミノアルコール(a23)、チオアルコール(a24)またはポリアミン(a25)である。
【0074】
有利にはウレタン(メタ)アクリレート(A111)を製造するために、化合物(a1)、(a2)および(a3)ならびに場合により(a4)を、相互に、化合物(a1)からのイソシアネート基3当量に対して、
化合物(a2)からのイソシアネート反応性の官能基0.5〜3、有利には0.8〜2.5、特に有利には1.0〜2.2、およびとりわけ1.4〜1.8当量、および
化合物(a3)からのイソシアネート反応性の官能基0.001〜1.5、有利には0.005〜1.0、特に有利には0.01〜0.8、および特に0.1〜0.5当量、ならびに場合により
化合物(a4)からのイソシアネート反応性の官能基0〜2、有利には0.1〜1.8、特に有利には0.5〜1.5、およびとりわけ0.8〜1.3当量
のモル比で反応させる。
【0075】
あるいはまた、少なくとも1のオレフィン不飽和カルボン酸と、不飽和カルボン酸の少なくとも1のグリシジルエステルとから製造することができる、0.2質量%未満のエポキシ基含有率(M=42ダルトンとして計算)およびKOH10mg/g未満、有利には6mg/g未満、および特に4mg/g未満の酸価を有する少なくとも1の反応生成物からの、ならびに少なくとも1のポリイソシアネートから製造されるウレタン(メタ)アクリレート(A111)を使用することもできる。
【0076】
特に好適な反応生成物の1例は、アクリル酸とグリシジルメタクリレートとの反応生成物である。この種のとりわけ好適な反応生成物は、そのつど該生成物のそれぞれの全量に対して、少なくとも60質量%、有利には少なくとも70質量%、および特に少なくとも80質量%の、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレートおよび2−アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシ−プロピルメタクリレートからなる混合物を含有している。
【0077】
ウレタン(メタ)アクリレート(A111)ならびにその製造方法は、ドイツ特許出願DE10357712A1、第3頁、段落[0008]、第3頁、段落[0011]〜第5頁、段落[0022]、ならびに第9頁、実施例、段落[0050]〜第13頁、段落[0061]、第14頁、段落[0067]および第15頁、段落[0070]〜第16頁、段落[0075]に記載されている。
【0078】
方法論的に見れば、ウレタン(メタ)アクリレート(A111)の製造には特別なところはなく、ポリイソシアネートの反応の慣用かつ公知の条件下で、水の排除下に5〜100℃の温度で行われる。オレフィン不飽和二重結合の重合を防止するために、有利には酸素含有ガス下に、有利には空気または空気と窒素との混合物中で作業する。
【0079】
粉末分散液(A1)は、少なくとも1の分散相(A11)および連続的な水相(A12)とからなる。最も簡単な場合には、該分散相(A11)は結合剤(A111)からなり、かつ連続相(A12)は水からなる。しかし有利には粉末分散液(A1)はさらに少なくとも1の慣用かつ公知の添加剤(A112)を慣用かつ公知の量で含有している。
【0080】
その物理化学的特性に応じて、添加剤(A112)は、分散相(A11)、つまり寸法安定性の粒子(A11)中に存在していてよい。しかしまた、添加剤、たとえば顔料は別の分散相(A13)を形成してもよい。さらに添加剤、たとえば水溶性の塩は、水相(A12)中にのみ、または湿潤剤は、水相(A12)と分散相(A11)との界面に集約して存在していてもよい。特に添加剤(A112)、たとえば分子分散性に溶解した有機着色剤は、分散相(A11)および水相(A12)との間に存在していてもよい。従って当業者であれば、添加剤(A112)が粉末分散液(A1)中でどのように振る舞うかを容易に予測することができる。
【0081】
有利には、添加剤(A112)は、残留物を残さず、もしくはほぼ残留物を残さずに熱により分解可能な塩、結合剤(A111)とは異なる、物理的に、熱により、および/または化学線により硬化可能な結合剤、熱により硬化可能な架橋剤、中和剤、熱により硬化可能な反応性希釈剤、化学線により硬化可能な反応性希釈剤、不透明な、および透明な、着色および/または効果を付与する顔料、特に有機および無機金属効果顔料、干渉顔料、蛍光顔料、導電性顔料、磁気遮蔽顔料および腐食防止顔料、分子分散性に可溶性の着色剤、不透明な、および透明な、有機および無機充填剤、有機および無機ナノ粒子、光安定剤、酸化防止剤、脱気剤、湿潤剤、乳化剤、スリップ助剤、重合防止剤、ラジカル重合開始剤、特に光開始剤、熱に不安定なラジカル開始剤、カップリング剤、レベリング剤、塗膜形成助剤、レオロジー助剤、たとえば増粘剤および構造粘性のサグ調節剤、SCA、難燃剤、腐食防止剤、流動化助剤、ワックス、乾燥剤、殺生物剤およびつや消し剤からなる群から選択される。
【0082】
有利には粉末分散液(A1)は、残留物を残さず、もしくはほぼ残留物を残さずに熱により分解可能な塩、光安定剤、湿潤剤、乳化剤、レベリング剤、光開始剤または熱に不安定なラジカル開始剤およびレオロジー助剤を添加剤(A112)として含有する。
【0083】
適切な添加剤(A112)の例は、ドイツ特許出願
DE10126649A1、第16頁、段落[0145]〜第18頁、段落[0189]、
DE10027270A1、第11頁、段落[0106]および[0107]または
DE10135997A1、第3頁、[0022]〜第4頁、段落[0033]、および第4頁、段落[0039]および[0040]、第10頁、段落[0092]〜[0101]
から公知である。
【0084】
粉末分散液(A1)が、熱により硬化可能な成分(A112)を含有している場合、該成分は、寸法安定性の粒子(A11)中に、有利には40質量%未満、好ましくは30質量%未満の量で、および特に20質量%未満の量で含有されている。
【0085】
粉末分散液(A1)は、有利にはドイツ特許出願DE19908013A1、ドイツ特許DE19841842C2、またはドイツ特許出願DE10055464A1から公知の二次分散法により製造される。
【0086】
この方法では、結合剤(A111)ならびに場合により添加剤(A112)は、有機溶剤、特に易揮発性の、水と混和可能な溶剤中に溶解する。得られる溶液は、中和剤(A112)によって水(A12)中に分散される。その後、水(A12)によって撹拌下に希釈される。まず油中水型エマルションが形成され、該エマルションを更に希釈して水中油型エマルションに変える。この点は一般に、エマルションに対して50質量%未満の固体含有率で達成され、かつ外部からは希釈中の著しい粘度低下によって認識することができる。
【0087】
水中油型エマルションは、直接に結合剤(A111)ならびに場合により添加剤(A112)を水(A12)中で溶融乳化することによって製造することができる。
【0088】
その際、湿潤剤(A112)を有機溶液および/または水(A12)に、乳化の前または後で添加することが有利である。有利には湿潤剤を有機溶液に添加する。
【0089】
こうして得られた、なお溶剤を含有するエマルションから引き続き、共沸蒸留によって溶剤を除去する。
【0090】
本発明によれば、除去すべき溶剤は、70℃を下回る、有利には50℃を下回る、および特に40℃を下回る蒸留温度で留去する場合に有利である。場合により蒸留圧力はこの場合、沸点がより高い溶剤においてこの温度範囲が維持されるように選択される。
【0091】
最も簡単な事例では、共沸蒸留は、エマルションを室温で、開放されている容器中で、数日間攪拌することによって行うことができる。有利な事例では、溶剤を含有するエマルションから、真空蒸留によって溶剤を除去する。
【0092】
蒸発により除去する、もしくは留去する水および溶剤の量は、高い粘度を回避するために、水(A12)によって置換される。水(A12)の添加は、蒸留による除去もしくは留去の前に、その後に、またはその間に、少量ずつ添加することによって行うことができる。
【0093】
溶剤の損失後に、分散されている寸法安定性粒子(A11)のガラス転移温度は上昇し、かつそれまでの溶剤を含有するエマルションに代わって構造粘性の水性粉末分散液(A1)が形成される。
【0094】
場合により寸法安定性粒子(A11)は、湿った状態で機械的に粉砕するが、これは湿式粉砕とも呼ばれる。有利にはこの場合、粉砕物の温度は70℃を、有利には60℃を、および特に50℃を超えないように適用される。有利には粉砕工程における比エネルギー入力は、10〜1000、有利には15〜750および特に20〜500Wh/gである。
【0095】
湿式粉砕のために、高い、もしくは低い剪断領域を発生させる種々の装置を適用することができる。
【0096】
低い剪断領域を発生させる適切な装置の例は、慣用かつ公知の攪拌容器、ギャップホモジナイザー、マイクロ流動化装置、または溶解機である。
【0097】
高い剪断領域を発生させる適切な装置の例は、慣用かつ公知の攪拌ミル、またはインライン溶解機である。
【0098】
特に有利には、高い剪断領域を発生させる装置を適用する。これらの中でも攪拌ミルは本発明によれば特に有利であり、従って特に有利に使用される。
【0099】
一般に、湿式粉砕の際に、粉末分散液(A1)は、適切な装置、たとえばポンプ、特に歯車式ポンプを用いて前記の装置に供給し、かつ該ポンプを介して所望の粒径が達成されるまで循環運転する。
【0100】
有利には粉末分散液(A1)は、その使用前に濾過される。このために慣用かつ公知の濾過装置およびフィルターを使用する。フィルターのメッシュ幅は、広い範囲で変化することができ、第一に粒子の粒径および粒径分布に合わせて調整される。従って当業者は適切なフィルターを、この物理的パラメーターに基づいて容易に確認することができる。適切なフィルターの例は、モノフィラメントの平面状フィルターまたはバッグ型フィルターである。これらは商品名Pong(登録商標)またはCuno(登録商標)で市販されている。
【0101】
前記の粉末分散液(A1)は、本発明による方法の範囲内で、方法工程(6)において、着色および/または効果を付与する被覆剤(A)の残りの成分(A2)と混合し、その後、得られる混合物(A)を方法工程(7)において均質化する。
【0102】
その際、本発明による方法の範囲内で使用される粉末分散液(A1)の量は、広い範囲で変化することができ、かつこうして個別の事例の要求に適切に適応することができる。有利には、着色および/または効果を付与する被覆剤(A)は、その全量に対して、1〜20質量%、有利には2〜17.5質量%、および特に5〜15質量%の結合剤(A111)を含有するような量で、粉末分散液(A1)を使用する。
【0103】
着色および/または効果を付与する被覆剤(A)を製造するために有利に使用することができる適切な成分(A2)の例は、国際特許出願WO92/15405、第2頁、第35行目〜第12頁、第14行目、ドイツ特許出願
DE4437535A1、第2頁、第24行目〜第6頁、第59行目、
DE1991498A1、第4欄、第23行目〜第15欄、第63行目、
DE19948004A1、第3頁、第14行目〜第17頁、第5行目、および
ドイツ特許DE10043405C1、第5欄、段落[0030]〜[0033]および第9欄、段落[0062]〜第11欄、段落[0070]から公知である。有利にはこれらは慣用かつ公知の有効量で使用される。
【0104】
方法工程(1)で得られる着色および/または効果を付与する層(A)は、方法工程(2)で乾燥されるが、その際、完全には硬化しない。
【0105】
乾燥は、気体状、液体状および/または固体状の、熱い媒体、たとえば熱風、加熱された油、または加熱されたローラーを使用して、またはマイクロ波照射、赤外光および/または近赤外光(NIR)を使用して促進することができる。有利には湿潤層は、換気炉中23〜150℃で、有利には30〜120℃で、および特に50〜100℃で乾燥させる。
【0106】
本発明によれば、着色および/または効果を付与する層(A)は、方法工程(3)の前に、化学線、特にUV線によって照射することは有利である。その際、以下に記載される、慣用かつ公知の方法および装置を使用することができる。照射の際に、存在するラジカル重合可能なオレフィン不飽和二重結合の完全なラジカル重合のために十分である線量を適用することができる。有利には、存在するラジカル重合可能なオレフィン不飽和二重結合の全てがラジカル重合することがないような線量を使用する。
【0107】
有利には着色および/または効果を付与する被覆剤(A)を方法工程(1)において、着色および/または効果を付与する層(A)が完全に硬化した後に方法工程(4)において5〜25μm、有利には5〜20μm、および特に5〜15μmの層厚さが得られるような湿潤膜厚で適用される。
【0108】
方法工程(3)では、着色および/または効果を付与する層(A)は、少なくとも1の透明な被覆剤(B)によって被覆される。
【0109】
透明な被覆剤(B)は、透明な層(B)が方法工程(4)において完全に硬化した後で、清澄で光沢があるか、艶消しの、着色されているか、または無色の透明なトップコーティング(B)が得られるような組成を有していてよい。有利には透明なトップコーティング(B)は、無色透明で、光沢のあるクリアコーティングである。
【0110】
従って透明な被覆剤(B)として、有利には慣用かつ公知の、熱により、化学線により、または熱および化学線により(デュアル・キュア)硬化可能なクリアコートを使用する。適切なクリアコートの例は、ドイツ特許DE10043405C1、第8欄、段落[0054]またはドイツ特許出願DE19948004A1、第18頁、第7〜30行目から公知である。
【0111】
透明な被覆剤(B)は、方法工程(3)において、その完全な硬化後に方法工程(4)において、有利には10〜100μm、好ましくは20〜80μmおよび特に25〜70μmの層厚さが生じるような湿潤層厚さで適用される。
【0112】
方法工程(4)において、少なくとも前記の層(A)および(B)は一緒に硬化される。
【0113】
硬化はデュアル・キュア硬化によってのみでなく、必要な場合には、純粋に熱的に行うこともできることは、本発明による方法の大きな利点である。これは特に、立体的で複雑な形状の支持体、たとえば自動車の車体の影領域も完全に硬化すべき場合に特に重要である。
【0114】
方法論的に見れば、熱硬化には特別な点はなく、前記の装置および方法を使用して実施することができる。
【0115】
方法論的に見れば、化学線を用いた硬化もまた、特別なところはなく、慣用かつ公知の装置および方法によって、たとえばドイツ特許出願DE19818735A1、第10欄、第31〜61行目、ドイツ特許出願DE10202565A1、第9欄、段落[0092]〜第10頁、段落[0106]、ドイツ特許出願DE10316890A1、第17頁、段落[0128]〜[0130]、国際特許出願WO94/11123、第2頁、第35行目〜第3頁、第6行目、第3頁、第10〜15行目、および第8頁、第1〜14行目、または米国特許US6,743,466B2、第6欄、第53行目〜第7欄、第14行目に記載されているように実施することができる。
【0116】
本発明による方法で製造された、着色および/または効果を付与する多層コーティングは、自動車塗装において課される全ての要求(欧州特許EP0352298B1、第15頁、第42行目〜第17頁、第40行目を参照のこと)を満足することができ、かつその外観において全ての範囲でクラスAの表面に相応する。
【0117】
実施例および比較試験
製造例1
UV線により開始されるラジカル重合によって硬化可能な粉末分散液(A1−1)の製造
粉末分散液(A1−1)を製造するためにまず結合剤(A111−1)を以下の方法で製造した。
【0118】
イソプロペニリデンジシクロヘキサノールを、ヒドロキシエチルアクリレート中、60℃で撹拌下におおまかに分散させた。この懸濁液に、ポリイソシアネート、ペンタエリトリット−トリ/テトラ−アクリレート、ヒドロキノンモノメチルエーテル、1,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールおよびメチルエチルケトンを添加した。ジブチルスズジラウレートの添加後、反応混合物は加熱された。遊離イソシアネート基の含有率が一定になるまで75℃で数時間撹拌した。引き続きグリコール酸およびメタノールを添加し、かつ遊離イソシアネート基がもはや検出されなくなるまで撹拌した。
【0119】
ヒドロキシル基を有する化合物およびポリイソシアネートを、以下に記載される当量比が生じる量で使用した:
イソプロペニリデンジシクロヘキサノール OH33.7当量
2−ヒドロキシエチルアクリレート OH24.7当量
ペンタエリトリット−トリ/テトラ−アクリレート(平均OH価:100〜111mgKOH/g) OH24.7当量
BASF社のBasonat(登録商標)HI 100 NCO56.25当量
国際特許出願WO00/39183に記載のヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとからなるアロファネート NCO18.75当量
Bayer社のDesmodur(登録商標)W NCO25当量
ヒドロキノンモノメチルエーテル 固体に対して0.05質量%
1,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール 固体に対して0.1質量%、
ジブチルスズジラウレート 固体に対して0.02質量%中の、
メチルエチルケトン 70質量%の固体に相応
グリコール酸 OH6.8当量
メタノール OH 10.1当量
ウレタン(メタ)アクリレート(A111−1)は、固体含有率70質量%、ガラス転移温度2.5℃、オレフィン不飽和二重結合の含有率2.93当量/kgおよび酸価KOH18.85mg/gを有していた。
【0120】
さらにウレタン(メタ)アクリレート(A111−2)は、前記の方法で製造されたが、ただしDesmodur(登録商標)Wは、国際特許出願WO00/39183に記載のヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとからなる当量のアロファネートに代えた。ウレタン(メタ)アクリレート(A111−2)は、固体含有率71質量%、ガラス転移温度12.3℃、オレフィン不飽和二重結合の含有率3当量/kgおよび酸価KOH15.8mg/gを有していた。
【0121】
粉末分散液(A1−1)を、二次分散法により以下の成分を記載されている順序で混合し、有機溶剤を留去し、除去した有機溶剤を水に代え、かつ得られた混合物を均質化することによって製造した:
ウレタン(メタ)アクリレート(A111−1) 751.123質量部
ウレタン(メタ)アクリレート(A111−2) 493.696質量部
メチルエチルケトン 26.289質量部
Lutensol(登録商標)AT50(BASF社の市販の湿潤剤) 12.137質量部
トリエチルアミン 20.861質量部
Irgacure(登録商標)184(Ciba Specialty Chemicals社の市販の光開始剤)およびLucirin(登録商標)TPO(BASF社の市販の光開始剤)質量比5:1で合計35.052質量部
脱イオン水 1660.842質量部
Acrysol(登録商標)RM−8W(Rohm and Haas社の市販の会合性増粘剤) 24質量部および
脱イオン水 24質量部。
【0122】
製造例2
熱により開始されるラジカル重合によって硬化可能な粉末分散液(A1−2)の製造
粉末分散液(A1−2)を、二次分散法を用いて、以下の成分を記載されている順序で混合し、有機溶剤を留去し、除去した有機溶剤を水に代え、かつ得られた混合物を均質化することによって製造した:
ウレタン(メタ)アクリレート(A111−1) 755.198質量部
ウレタン(メタ)アクリレート(A111−2) 496.374質量部
メチルエチルケトン 52.864質量部
Lutensol(登録商標)AT50(BASF社の市販の湿潤剤) 12.203質量部
トリエチルアミン 20.974質量部
開始剤BK(Bayer Distribution Service社のトリエチルホスフェート/トルエン中のオリゴマーベンズピナコールシリルエーテル)13.745質量部
Byk Chemie社の市販のレベリング助剤Byk(登録商標)N 13.216質量部
脱イオン水 1635.428質量部
Acrysol(登録商標)RM−8W(Rohm and Haas社の市販の会合性増粘剤) 24質量部
脱イオン水 24質量部。
【0123】
製造例3
熱により開始される重合によって硬化可能な粉末分散液(A1−3)の製造
粉末分散液(A1−3)を製造するためにまずウレタン(メタ)アクリレート(A111−3)を以下の規定によって製造した。
【0124】
グリシジルメタクリレート9290g、トリフェニルホスフィン70gおよび2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール14gを、適切な撹拌容器中に装入した。空気5l/hを混合物に通過させ、かつ10l/hを混合物上に案内した。該混合物を撹拌下で70℃に加熱した。この温度で5時間以内に、アクリル酸4710gを計量供給した。温度は開始時に81℃に上昇した。発熱反応がおさまった後で、反応混合物を65〜70℃に維持した。添加の終了後に温度は90℃に上昇した。90℃で6時間後に、取り出した試料でKOH9.4mg/gの酸価が測定された。引き続きトリフェニルホスフィン14gを添加した。90℃でさらに6時間後、取り出された試料でKOH1.8mg/gの酸価が確認された。反応混合物を90℃でさらに24時間攪拌し、かつ引き続きそのエポキシド含有率を測定した。これは0.1質量%であった。
【0125】
攪拌機および気体導入管を備えた、ポリイソシアネートの反応のために適切な反応容器中に、空気0.3l/hを導入しながら、ヘキサメチレンジイソシアネートをベースとするポリイソシアネート(Bayer社のDesmodur(登録商標)XP2410)1724.22g、ブチルアクリレート1155g、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール4.09gおよびスズ含有触媒(Bayer社のDesmorapid(登録商標)Z)2.04gを装入し、かつ撹拌下で60℃に加熱した。この温度で撹拌下に前記の反応生成物2304.65gを、2時間で受け器に計量供給した。得られた反応混合物をさらに、0.1質量%未満のイソシアネート含有率が達成されるまで60℃で10時間攪拌した。得られたウレタン(メタ)アクリレート(A111−3)は、固体含有率76.6質量%、ガラス転移温度2℃、酸価KOH20mg/gおよびオレフィン不飽和二重結合の含有率3.89当量/kgを有していた。
【0126】
粉末分散液(A1−3)を、二次分散法を用いて以下の成分(メチルエチルケトン中に溶解)を記載の順序で混合し、有機溶剤を留去し、除去された有機溶剤を水に代え、かつ得られた混合物を均質化することによって製造した:
ウレタン(メタ)アクリレート(A111−3) 1021.995質量部
Lutensol(登録商標)AT50(BASF社の市販の湿潤剤) 9.866質量部
トリエチルアミン 20.974質量部
開始剤BK(Bayer Distribution Service社のトリエチルホスフェート/トルエン中のオリゴマーベンズピナコールシリルエーテル) 11.13質量部、
Byk Chemie社の市販のレベリング助剤Byk(登録商標)N 10.4質量部
脱イオン水 1327.372質量部
Acrysol(登録商標)RM−8W(Rohm and Haas社の市販の会合性増粘剤)19.2質量部および
脱イオン水 19.2質量部。
【0127】
例1〜3および比較例V1
着色を付与する多層コーティング1〜3(例1〜3)および着色を付与する多層コーティングV1(比較試験V1)の製造
例1〜3の着色を付与する多層コーティング1〜3を製造するために、まずベースコート1〜3を製造した。
ベースコート1:
合成ナトリウム−マグネシウム−層状ケイ酸塩(Laporte社のLaponite(登録商標)の3質量%の水溶液8.1質量部、脱イオン水10質量部およびトリメチルアミン0.14質量部を装入した。ここに、脱イオン水6.5質量部およびViscalex(登録商標)HV30(Ciba Specialty Chemicals社のメタクリレートコポリマーをベースとする市販の会合性増粘剤)からなる混合物を添加し、その後、得られた混合物を均質化した。引き続き、Nopco(登録商標)DSX 1550(Cognis Deutschland社の疎水性ポリウレタンをベースとする市販の会合性増粘剤)0.4質量部および脱イオン水7.8質量部からなる混合物を添加し、その後、得られた混合物を均質化した。
【0128】
この装入物に、製造例1の粉末分散液(A1−1)33.9質量部、テトラメチルデシンジオール(ブチルグリコール中50%)0.3質量部、カーボンブラックペースト(これは
ドイツ特許出願DE4437535A1に記載されているアクリル化ポリウレタン分散液 57質量部、
ポリプロピレングリコール 2質量部、
脱イオン水 25質量部、
カーボンブラックMonarch 1400 10質量部および
中和溶液(ジメチルエタノールアミン、水中10%) 6質量部
から製造)9.45質量部、ブチルグリコール2.6質量部、1−プロポキシ−2−プロパノール2.4質量部、Solventnaphtha(登録商標)1.2質量部およびShellsol(登録商標)T2.4質量部からなる混合物を計量供給し、その後、得られた混合物を均質化した。
【0129】
該混合物に、1−プロポキシ−2−プロパノール2.4質量部中のPripol(登録商標)2033(Uniqema社の市販の脂肪ジオール)1質量部の溶液を計量供給し、その後、得られた混合物を改めて均質化した。
【0130】
引き続き、タルクペースト(これは
ドイツ特許出願DE4437535A1に記載のアクリル化ポリウレタン分散液 48.2質量部、
ポリプロピレングリコール 3質量部、
タルク 28質量部、
脱イオン水 19質量部、
Byk Chemie社の市販の分散剤Disperbyk(登録商標)184 1.4質量部、および
中和溶液(ジメチルエタノールアミン、水中10%)、pH値8に相応
から製造)3.3質量部、トリブチルホスフェート2質量部および脱イオン水0.66質量部からなる混合物を添加し、その後、得られたベースコート1を均質化した。該ベースコート1は、多層コーティング1を製造するために用いた。
ベースコート2:
ベースコート2は、ベースコート1と同様に製造したが、ただし製造例1の粉末分散液(A1−1)の代わりに、製造例2の粉末分散液(A1−2)を使用した。ベースコート2は、多層コーティング2を製造するために用いた。
ベースコート3:
ベースコート3は、ベースコート1と同様に製造したが、ただし製造例1の粉末分散液(A1−1)の代わりに、製造例3の粉末分散液(A1−3)を使用した。ベースコート3は、多層コーティング3を製造するために用いた。
【0131】
比較試験V1のために、ベースコートV1を、ベースコート1の製造規定と同様に製造したが、ただし、粉末分散液(A1−1)の代わりに、水性ポリウレタン樹脂分散液33.9質量部を使用した。ベースコートV1は、多層コーティングV1を製造するために用いた。
【0132】
着色を付与する多層コーティング1〜3、およびV1の2つの系列を製造した。
【0133】
第一の系列のための試験板として、慣用かつ公知の、カソード析出され、かつ焼き付けた、平滑な電着コーティングにより被覆された平滑な鋼板を使用した。
【0134】
第二の系列のための試験板として、慣用かつ公知の、カソード析出され、かつ焼き付けられた、粗い電着コーティングにより被覆された粗い表面を有する鋼板を使用した。
【0135】
電着コーティング上に、両方の系列においてそのつど、ベースコート2、3およびV1からなる層を塗布した。その適用後に、ベースコート層2、3およびV1をそのつど、80℃で10分間、前乾燥させた。
【0136】
さらに、両方の系列において、そのつど、市販の水性サーフェイサー(BASF Coatings社のColorpro(登録商標)I)を塗布し、かつ80℃で10分間、前乾燥させた。この層上に、そのつど、ベースコート1からなる層を塗布した。得られるベースコート層1を同様に、80℃で10分間、乾燥させ、かつ空気中、1.5J/m2(IST社の鉄でドープされた水銀ランプ、線量の測定は、Light Bug Cによる)の線量のUV線で照射した。
【0137】
引き続き、乾燥させたベースコート層2、3およびV1、および乾燥させ、かつUV線で照射したベースコート層1上で、そのつど、市販のクリアコート(BASF Coatings社のProGloss(登録商標))からなる層を塗布した。得られたクリアコート層を、ベースコート層1〜3およびV1と一緒に、140℃で20分間硬化させた。
【0138】
多層コーティング1は、以下の構成であった:
電着コーティング 20±2μm、
機能層もしくはサーフェイサー 15±2μm、
ベースコーティング 12±2μmおよび
クリアコーティング 35±5μm。
【0139】
多層コーティング2および3およびV1は、以下の構成であった:
電着コーティング 20±2μm、
ベースコーティング 18±2μmおよび
クリアコーティング 35±5μm。
【0140】
多層コーティング1〜3およびV1のベースコーティング1〜3およびV1は、20μm以上の高いポッピング限界値(Kochergrenze)を有していた。これらの中間層付着性は、耐候性試験装置中、240時間の湿分による負荷の前および後で優れていた(クロスカット試験:GT0)。ストーンチップガード性もまた極めて良好であった(VDA:評点2〜2。5)。
【0141】
多層コーティング1〜3のレベリングおよび画像の鮮明さ(DOI)を、多層コーティングV1のレベリングおよび画像の鮮明さ(DOI)と比較した。結果は表にまとめられており、その際、多層コーティングV1(=標準)の値に対する値の変化のみを記載した。
【0142】
【表1】

【0143】
表の結果は、多層コーティング1〜3は、多層コーティングV1よりも、著しく改善されたレベリングおよび著しく高い画像の鮮明さ(DOI)を有しており、従って、たとえば鋼の品質が劣っているために、または電着コーティングのレベリングが劣っているために生じた支持体の不均一性は、はるかに良好に均質になっていることを証明している。このことは、当該クリアコーティングのレベリングの改善および画像の鮮明さ(DOI)の改善がはるかに優れているという結果につながった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の着色および/または効果を付与するベースコーティング(A)および少なくとも1の透明なトップコーティング(B)を含む、着色および/または効果を付与する多層コーティングの製造方法であって、
(1)少なくとも1の着色および/または効果を付与する被覆剤(A)を、被覆されていない、または被覆されている支持体上に施与し、
(2)得られる着色および/または効果を付与する層(A)を、完全に硬化させることなく乾燥させ、
(3)少なくとも1の透明な被覆剤(B)を、乾燥させた、着色および/または効果を付与する層(A)上に施与し、かつ
(4)少なくとも生じる透明な層(B)を、着色および/または効果を付与する層(A)と一緒に硬化させ、このことにより着色および/または効果を付与するベースコーティング(A)および透明なトップコーティング(B)が得られる、
着色および/または効果を付与する多層コーティングの製造方法において、着色および/または効果を付与する被覆剤(A)または着色および/または効果を付与する被覆剤(A)の少なくとも1を、
(5)少なくとも1の、ラジカル重合により硬化可能な水性の、構造粘性の、揮発性有機化合物を全く含有していないか、もしくはほぼ含有していない粉末分散液(A1)であって、分散相として、光子相関分光分析により測定して80〜750nmの平均粒径z平均を有し、−70〜+50℃のガラス転移温度を有し、2〜10当量/kgのオレフィン不飽和二重結合を有し、かつ0.05〜15当量/kgの酸基の含有率を有する、少なくとも1のラジカル架橋可能な結合剤(A111)を含有する、固体の、および/または高粘性の、貯蔵および適用条件下で寸法安定性の粒子(A11)を、(A)に対して50〜100質量%の量で含有する粉末分散液(A1)を別に製造し、
(6)該粉末分散液を、着色および/または効果を付与する被覆剤(A)の残りの成分(A2)と混合し、かつ
(7)得られる混合物(A)を均質化する
ことにより製造することを特徴とする、着色および/または効果を付与する多層コーティングの製造方法。
【請求項2】
粉末分散液(A1)の寸法安定性粒子(A11)の結合剤(A111)が、1000〜50000ダルトンの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
粉末分散液(A1)の寸法安定性粒子(A11)の結合剤(A111)のオレフィン不飽和二重結合が、(メタ)アクリレート基、エタクリレート基、クロトネート基、シンナメート基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、ジシクロペンタジエニル基、ノルボルネニル基、イソプレニル基、イソプロペニル基、アリル基、またはブテニル基;ジシクロペンタジエニルエーテル基、ノルボルネニルエーテル基、イソプレニルエーテル基、イソプロペニルエーテル基、アリルエーテル基、またはブテニルエーテル基、またはジシクロペンタジエニルエステル基、ノルボルネニルエステル基、イソプレニルエステル基、イソプロペニルエステル基、アリルエステル基、またはブテニルエステル基からなる群から選択される基の中に存在することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
粉末分散液(A1)の寸法安定性粒子(A11)の結合剤(A111)のオレフィン不飽和二重結合が、(メタ)アクリレート基の中に存在することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
粉末分散液(A1)の寸法安定性粒子(A11)の結合剤(A111)が、オリゴマーおよびポリマーのエポキシド(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートおよびカーボネート(メタ)アクリレートからなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
粉末分散液(A1)の寸法安定性粒子(A11)の結合剤(A111)が、オリゴマーまたはポリマーのウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
粉末分散液(A1)の寸法安定性粒子(A11)が、80〜400nmの光子相関分光分析により測定した平均粒径z平均を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
粉末分散液(A1)がさらに、残留物を残さず、もしくはほぼ残留物を残さずに熱により分解可能な塩、結合剤(A111)とは異なる、物理的に、熱により、および/または化学線により硬化可能な結合剤、中和剤、熱により硬化可能な架橋剤、熱により硬化可能な反応性希釈剤、化学線により硬化可能な反応性希釈剤、不透明な、および透明な、着色および/または効果を付与する顔料、分子分散性に可溶性の着色剤、不透明な、および透明な充填剤、ナノ粒子、光安定剤、酸化防止剤、脱気剤、湿潤剤、乳化剤、スリップ助剤、重合防止剤、ラジカル重合開始剤、特に光開始剤、熱に不安定なラジカル開始剤、カップリング剤、レベリング剤、塗膜形成助剤、レオロジー助剤、たとえば増粘剤および構造粘性のサグ調節剤、SCA、難燃剤、腐食防止剤、流動化助剤、ワックス、乾燥剤、殺生物剤およびつや消し剤からなる群から選択される、少なくとも1の添加剤(A112)を含有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
粒子(A11)を、水性媒体(A12)中に分散させることにより、粉末分散液(A1)を製造することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
粒子(A11)を、二次分散法により水性媒体(A12)中に分散させ、その際、
イオンにより安定化可能な結合剤(A111)ならびに場合により添加剤(A112)を、有機溶剤中に溶解し、
得られる溶液を、中和剤(A112)を用いて水(A12)中に分散させ、
得られる分散液を水(A12)で希釈し、これによりまず油中水型エマルションを形成し、該エマルションをさらに希釈して、水中油型エマルションに変え、かつ
有機溶剤を該水中油型エマルションから除去する
ことと特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
着色および/または効果を付与する多層コーティングが、単層もしくは多層のプライマーコーティング、電着コーティング、腐食防止剤層、ストーンチップガードプライマーおよび/またはサーフェイサーコーティングを有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
乾燥させた、着色および/または効果を付与する層(A)を、工程(2)の後であり、かつ工程(3)の前に、化学線により照射することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
乾燥させた、着色および/または効果を付与する層(A)および透明な層(B)を、工程(4)で一緒に熱により硬化させることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
乾燥させた、着色および/または効果を付与する層(A)および透明な層(B)を、工程(4)で一緒に熱および化学線により硬化させることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
化学線として、UV線を使用することを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2009−541044(P2009−541044A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517009(P2009−517009)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005792
【国際公開番号】WO2008/000509
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】