説明

睫毛強化用組成物及びその方法

クレアチンと、低濃度のビオチン化ペプチドとを含有する化粧料組成物の発明が、睫毛の外観を向上させるために当該組成物を使用する方法と同様に、開示されている。これらの組成物は、睫毛の健康に関与する多くの生化学的なパスウェイで、相乗的な調節活性を有すると考えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレアチンと低濃度ビオチン化トリペプチドからなる睫毛(まつ毛、eyelash)の局所適用のための組成物と、睫毛に特定の効能を提供するための組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者は、絶えず自分の睫毛の外観を良くしようと努力している。心配事は、薄く疎らな睫毛、望んだ限りのものではない睫毛、そうでなければ、健康で十分な外観を欠く睫毛を含んでいる。したがって、このような欠陥を修正するためのアイ関連製品の必要性は依然として残っている。
【0003】
睫毛は、皮膚の中に存在する毛根(毛包)部分と、皮膚の外に見える毛幹又は毛髪繊維部分の2つの異なる構造を有する。毛根(毛包)は、睫毛の生きている部分で、睫毛の生長を調節するケラチノサイトやメラノサイト等の複数のタイプの細胞群を含んでいる。睫毛毛根は、毛髪生長サイクルや、睫毛生長サイクルとして知られているように、生長と休止を反復的に繰り返し行い、頭髪の毛根とは異なるものとなっている。Stenn KS et al. Physiol Rev. 2001 Jan;81(1):449−494. この生長サイクルと睫毛全体の健全性は、睫毛の質に影響し得る様な、UV照射、熱刺激、化学物質の暴露等の外的ストレスと同様に、ホルモン、サイトカイン、ケモカイン、酵素等の内的要因によっても、変調を来し得る。
【0004】
一般に睫毛は、頭髪に比べればあまり研究されていない。睫毛の生長サイクルは、約30〜60日の生長期又は生長フェーズと、約15日の退行期又は中間フェーズと、約3ヶ月の休止期又は休止フェーズとを含む、約5〜6ヶ月と推定されている。これに対して、頭髪や硬毛は、2〜6年の生長期と、数週間の中間期と、数ヶ月の休止期とを有している。生長期に比べて、より長い休止期を有する点で、睫毛は、頭髪とかなり異なる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Stenn KS et al. Physiol Rev. 2001 Jan;81(1):449−494.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
睫毛の生長サイクルに関与する1つ以上の生物活性成分を使用して、睫毛を増強するための様々なアプローチが、試みられてきた。セフォラカーゴ(Sephora CARGO)の商品LashActivator(商標)は、例えば、ビオチン化トリペプチドであるN−biotinyl−gly−his−lysと、アピゲニンとを組み合わせて使用している。このトリペプチドは、頭髪での使用を模倣して比較的高濃度で使用され、他方アピゲニンの方は、毛根への微少循環系の改善のために必要と考えられている。それにも関わらず、アピゲニンの潜在的な血管への影響は、いくつかの適用の場合には不向きであり、さらに、ペプチド・ビオチン複合体の量をより少なくするのが望ましいとされている。その上、カーゴのLashActivator(商標)を含む多くの睫毛用製品は、ケラチンという、睫毛繊維の主要な構成要素の1つをターゲットとすることを見落としている。特に、ケラチン5は、睫毛毛根(毛包)の本質的部分である外側毛根鞘にロカライズされることが、見出されている。
【0007】
したがって、アピゲニンの様な望まれない成分は含まず、活性成分を低濃度で使用し、追加の手段を介して睫毛の健康に対処するような、睫毛増強用化粧品組成物の必要性は、依然として存在する。それ故、本発明の目的は、そのような組成物と、睫毛の外観と健康性を改善する方法とを、提供することにある。本発明のさらなる目的は、従来の方法では見過ごされていた、睫毛に特定のユニークな効能を提供することにある。
【0008】
前述の議論は、ただ単に、技術が直面する問題の性質をより良く理解するために提示されたものであり、先行技術として自認していると、いかなる方法でも解釈されるべきではなく、また、ここで任意の参照を引用しているからといって、そのような参照が、本出願の従来技術を構成することを自認していると、解釈されるべきでもない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的および他に従って、驚くべきことに、クレアチンと少量のN−biotinyl−gly−his−lysとを含む組成物は、相乗的に、可視的な睫毛数を増加させ得ることができ、同様に、睫毛の輝き(つや)、ボリュームや長さを改善することができ、したがって、睫毛の外観を向上させるために有益であることが、見いだされた。更に驚くべきことに、クレアチンは、ケラチン5の産生を刺激し、それによって睫毛の毛根鞘の厚さと足場性を増加させること、および、これらの効果が、ビオチン化ペプチドと相乗的に働いて、睫毛に栄養を与え、全体的な睫毛の健康を向上させることができることが見いだされた。
【0010】
本発明の一態様は、クレアチン、低濃度のN−biotinyl−gly−his−lys、および任意に1つ以上の他の活性成分を有する、睫毛への局所適用のための組成物に関するものである。好ましい実施態様においては、この組成物中のN−biotinyl−gly−his−lysの濃度は、5×10−4重量%以下、より好ましくは、4×10−4重量%以下、さらにより好ましくは、3×10−4重量%以下である。いくつかの実施例に存在する任意の活性成分は、例えば、小麦タンパク、海藻抽出物、トコフェロール、及び/又は、キシメニン酸を含む。いくつかの実施例では、組成物は、キシメニン酸を含まないか又はその機能的な量を含まない。また、いくつかの実施例では、組成物はアピゲニンを含まない。当該組成物は、好ましくは、美容液(serum)、マスカラ、又はアイライナー等のような様々なアイ製品の形態として化粧品的に許容されるビヒクルで、提供することができる。
【0011】
本発明の別の態様は、睫毛の外観及び/又は健康の改善のための本明細書に記載の組成物の化粧品の使用に関する。そのような改善は、以下の事項を含む。
(a)睫毛の毛根鞘の厚さの改善
(b)睫毛の足場性の改善
(c)睫毛の損失の減少
(d)睫毛の損傷の減少
(e)睫毛の強度の増強
(f)睫毛の生長率の改善
(g)睫毛の輝き(つや)の改善
(h)可視的な睫毛数の改善
(i)睫毛の長さの改善
及び/又は
(j)睫毛のボリュームの改善
【0012】
本組成物は、睫毛に適用可能で、睫毛繊維に沿って、及び/又は、睫毛の毛根に接触するように睫毛の根元に、適用することができる。いくつかの実施形態では、効果的な量の、クレアチン、N−biotyinyl−gly−his−lys、および任意の1つ以上の他の活性成分が、化粧品として許容可能なビヒクルで提供され、望ましい効果を提供するに十分な時間、睫毛毛根に局所的に適用される。睫毛への効能は、適用後直ちにか、又は、十分な適用期間後に、認識され得る。いくつかの好ましい実施態様においては、本発明の組成物は、少なくとも1日2回、及び/又は、少なくとも8週間又は少なくとも12週間の間、睫毛の毛根に適用される。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、それぞれが本発明の組成物を含む、2つ又はそれ以上の異なる製品形態を含むキットに関する。このようなキットは、一般的に、説明書を含み、この説明書には、睫毛の健康及び/又は睫毛の外観に有意な改善を達成するための重要な用量を提供する形で、製品の適用を指示することが含まれる。
【0014】
本発明のこれらの又は他の側面は、以下の発明の詳細な説明を参照することで、より理解されるであろう。
【0015】
驚くべきことに、クレアチンと低濃度N−biotinyl−gly−his−lysとの組合せは、睫毛の量、輝き、厚さ、長さを、相乗的に増加させることが可能であることが判明した。更に驚くべきことに、クレアチンは、ケラチン5の産生を刺激して、睫毛の毛根の厚さと足場性を増加させること、および、組合わせるビオチン化ペプチドが低濃度であっても、これらの効果が相乗的に働いて、全体的な睫毛の健康と外観を向上させることができることが、判明した。
【0016】
これらの所見その他の観点から、クレアチンと低濃度N−biotinyl−gly−his−lysを含む局所用組成物は、睫毛の外観を改善するための使用に供せられ、より具体的には、目に見える睫毛数の増加と毛根鞘の厚みの増加のために提供される。さらには、本組成物の特定の適用スケジュールは、有意で相乗的な結果を生み出すために必要とされることが、期待されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
睫毛の外観向上のための組成物
本発明の一態様は、睫毛の外観及び/又は睫毛の健康を改善するように相乗的に作用する活性成分の組合せを含む組成物に関する。組合せは、クレアチン、N−biotinyl−gly−his−lys、および、例えば、小麦タンパク、藻類抽出物、キシメニン酸及び/又はトコフェロールなどの、1つ又はそれ以上の活性成分を任意に含んでいる。
【0018】
クレアチンは、細胞のエネルギー代謝に役割を果たすことが知られている天然に存在するアミノ酸誘導体である。クレアチンは、例えば、クレアチニン、及び/又はその誘導体、及び/又はそれらの塩、を含む任意の適切な形で、本明細書に記載の組成物として使用される可能性がある。例えば、参考として本明細書に援用される、米国特許出願公開第2007/0277332号明細書の内容を参照されたい。クレアチンは、例えば、Cosmocair(登録商標)C100(INCI名、hydrocreatine)、又は、TEGO(登録商標)Cosmo C100として、エボニックインダストリーズから、市販されている。TEGO(登録商標)Cosmo C100は、例えば、肌や髪の配合物用添加剤として販売され、0.5〜1.4重量%の濃度での使用が提案されている。
【0019】
N−biotinyl−gly−his−lysは、例えば、参考として本明細書に援用される、国際公開第00/58347号に記載されているように、トリペプチドgly−his−lysのビオチン複合体である。本明細書中で使用されているように、N−biotinyl−gly−his−lysは、ビオチン化トリペプチド、ビオチン化ペプチド、ペプチド−ビオチン複合体、トリペプチドその他と同義語として扱っている。これはまた、Sedermaから、商品名Procapil(商標)として市販されている。Procapil(商標)は、頭髪の抜け毛の減少、特に老化による男性の頭皮の抜け毛の減少のために、3重量%の濃度で使用するように、販売されている。
【0020】
本発明の化粧品組成物は、ある量の、クレアチン、N−biotinyl−gly−his−lyと同様に、任意の活性成分を含み、制限無く、睫毛の毛根鞘の厚みを改善し、及び/又は睫毛の毛根の足場性を改善するというような、睫毛に効能を提供する効果がある。組成物中のクレアチン量は、好ましい実施態様では、組成物の全重量に対して、約0.01〜約2重量%、好ましくは、約0.1〜約1.5重量%、より好ましくは、約0.25〜約1.4重量%、又は、約0.4〜約1.25重量%である。いくつかの実施形態では、クレアチンは、1.4重量%以下、より好ましくは、1.25重量%以下の割合で、含有される。
【0021】
特定の好ましい実施形態では、本化粧用組成物中に、N−biotinyl−gly−his−lysは、組成物の全重量に対して、約1×10−7〜約5×10−4重量%、より好ましくは、約2×10−7〜約4×10−4重量%、さらにより好ましくは、約1×10−6〜約3×10−4重量%、約2×10−6〜約2.5×10−4重量%、約1×10−5〜約2.5×10−4重量%、又は、約2×10−5〜約2×10−4重量%の量で含有される。また、ある好ましい実施形態では、N−biotinyl−gly−his−lysは、組成物の全重量に対して、約5×10−4重量%以下、約4×10−4重量%以下、又は、約3×10−4重量%以下の量で含まれる。幾つかの好ましい実施形態では、化粧用組成物は、少なくとも、約1×10−5重量%、少なくとも約2×10−5重量%、又は、少なくとも約1×10−4重量%の、N−biotinyl−gly−his−lysを含有する。これらの量については、クレアチンと、ビオチン化トリペプチドの「有効量」を参照。用語「有効量」は、クレアチン、トリペプチド、又は、他の任意の活性成分の量を指し、希釈剤、溶媒、担体、充填剤等は含まない。本明細書では、他の任意の活性物質に関して参照される量もまた、それぞれの活性物質の有効量を参照されたい。
【0022】
さらに、ある好ましい実施例では、クレアチンとトリペプチド成分は、互いに効果的な比率で化粧用組成物に存在する。効果的比率とは、化粧用組成物において、特定の成分と組み合わされる1つまたは複数の他の成分の量に対する、特定の成分の有効量を指す。用語「有効量」(effective amount)と「量が効果的」(amount effective)は、前述したように、「効果的比率」の概念に含まれる。いくつかの特に好ましい態様において、化粧品組成物は、例えば、総重量に対して、約0.5重量%のクレアチンと、約2×10−5重量%のN−biotinyl−gly−his−lys、あるいは、約1重量%のクレアチンと、約2×10−4重量%のN−biotinyl−gly−his−lys、を含む。
【0023】
驚くべきことに、ビオチン化ペプチドをクレアチンと組合せると、従来の方法に比べて、はるかに低い量でトリペプチドが有効であることが見出された。そのような有効量はまた、N−biotyinyl−gly−his−lysに関する文献によって示唆された値よりも驚くほど低いものである。さらに、驚くべきことに、この組合せであれば、クレアチン成分の有効量もまた、従前に比較してより低い値でよいことが見い出されている。
【0024】
本発明の組成物はさらに、クレアチン成分とビオチン化ペプチド成分との組み合わせに、1つまたは複数の任意の活性成分を含むことができる。追加の任意の活性成分はまた、一般的に、有効な量で存在し、及び/又は、クレアチン、トリペプチド、及び/又は化粧品組成物の他の成分に対して、相対的に効果的な比率で存在することになる。さらに、1つ又はそれ以上の任意の活性成分の有効量もまた、クレアチンとビオチン化ペプチド成分による相乗効果により、低減させることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、化粧品組成物はさらに、小麦タンパク質を含む。小麦タンパク質は、小麦から抽出された1つまたは複数のポリペプチドを指し、小麦ポリペプチドと小麦オリゴ糖の混合物をも含み得る。ある好ましい実施形態では、小麦タンパク質成分は、例えば、Croda社(Columbus,NJ)から市販されている、「Cropeptide W」(INCI名が「加水分解小麦タンパク(と)加水分解小麦でんぷん」)として知られているタンパク質/デンプン混合物を含む。Cropeptide Wは、加水分解小麦タンパクと、少なくとも部分的に加水分解小麦オリゴ糖で構成されている。このオリゴ糖はCropeptide W混合物中で可溶化されている。本発明のいくつかの実施形態で使用される小麦タンパク質は、Cropeptide W、又は、実質的に類似した組成を有する他のポリペプチド/オリゴ糖混合物を含むことができる。いくつかの好ましい態様において、本発明の化粧料組成物は、組成物の総重量に基づいて、約0.0025〜約1重量%の小麦タンパク質を含み、好ましくは約0.025〜約0.75重量%、より好ましくは約0.125〜約0.625重量%、または約0.25〜約0.5重量%、である。
【0026】
いくつかの実施形態では、化粧品組成物は、さらに藻類の抽出物を含む。本明細書中で使用されるような藻類抽出物は、海藻の抽出物を指す。好ましい海藻類は、例えば、Pelvetia canaliculata(褐海藻)、及び/又はLaminara digitata(褐海藻)が含まれる。類似した海藻抽出物等は、上述したセフォラ(Sephora)の睫毛製品のように、他の化粧品のアプリケーションで使用されているが、それらは通常、相対的により高濃度で使用されている。したがって、今回、クレアチンとトリペプチドとの組み合わせによって、藻抽出成分が、従来使用されているレベルに比べて、非常に低い濃度で有効となることが見出されたことは、驚くべき知見である。例えば、藻類抽出物の推奨使用濃度は、組成物の総重量に対して、一般に約0.35重量%であるが、本発明の組み合わせでは、0.0015重量%程度とごく微量である。ある好ましい態様において、本発明の化粧料組成物は、組成物の総重量に対して、約1×10−4重量%〜約0.3重量%、好ましくは約1×10−3重量%〜約0.2重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約0.1重量%、または、約0.0014〜約0.007重量%の量の藻類抽出物を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、この化粧品組成物は、さらにキシメニン酸を含む。キシメニン酸は、サンタルビン酸(santalbic acid)としても知られ、様々なXimenia(キシメニア属)やOlax(オラックス属)の種子や根の油性抽出物中に識別される共役不飽和脂肪酸である。それは、主要な構造特性が三重結合と二重結合の両方を有する、11−オクタデセン−9−イン酸(11−octadecen−9−ynoic acid)である。キシメニン酸は、例えば、オーストラリア先住民(アボリジニ)によって、伝統的な調剤物として使用され、局所的に適用された場合、皮膚への血液供給を増加させることが示されている。キシメニン酸は、例えば、酸そのもの、その半合成エステル誘導体、あるいは、キシメニン酸エチルエステルを含む任意の適切な態様で、本明細書に記載の組成物に使用され得る。ある好ましい態様では、本発明の化粧用組成物は、組成物の総重量に対して、約0.001重量%〜約1重量%、好ましくは約0.05重量%〜約0.5重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約0.1重量%の量のキシメニン酸を含む。いくつかの好ましい実施形態では、化粧用組成物は、キシメニン酸を含まないか、あるいは、局所的に血液供給を増加させるほどの有効量のキシメニン酸を含んでいない。まだ幾つかの他の好ましい実施形態では、化粧品組成物は、局所的に血液供給を増加させるように、少なくとも約0.0075重量%、より好ましくは少なくとも約0.01重量%、または、少なくとも約0.05重量%の、キシメニン酸の有効量を含んでいる。
【0028】
いくつかの実施形態では、化粧用組成物は、さらにトコフェロールを含む。トコフェロール、又はビタミンEは、皮膚を損傷する可能性のあるフリーラジカルを捕捉する、抗酸化剤として作用することが知られている。このビタミンは、その活性的態様、すなわちα−トコフェロール、及び/又は、エステル、酢酸トコフェロール、及び/又は、トコフェロールリノール酸のような、1つ又はそれ以上のより安定した誘導体の態様で使用することができる。トコフェロール及びその誘導体は、広く市販されており、例えば、トコフェロールリノール酸は、NJのバーネットプロダクツ(株)から入手可能である。ある好ましい実施形態では、化粧用組成物は、酢酸トコフェロールを、組成物の全重量に対して、約0.0001重量%〜約1重量%、好ましくは約0.0005重量%〜約0.1重量%、より好ましくは約0.001重量%〜約0.05重量%、または約0.02重量%含んでいる。
【0029】
上記成分の追加の有効量、及び/又は、その効果的な割合の決定は、本明細書で提供される教示に照らして、当業者の能力の範囲内のことである。たとえば、ここで開示される量、特に化粧用組成物として提供される量は、体表的な実施例を提供する。本明細書で提供される教示に従い、当該分野で公知の技術を使用する当業者であれば、睫毛の外観及び/又は健康に相乗的な改善を与えるために、一緒に使用される成分の他の有効量及び/又は効果的な比率を決定することができる。本明細書で開示されたコンポーネントの量は、当業者が、開示された技術に沿って、その量か他の有効量を、及び/又は、関連するコンポーネントの比率を、選択することができるようにガイダンスを提供している。
【0030】
いくつかの実施形態では、化粧用組成物は、アピゲニンを含まない。アピゲニンは、柑橘類由来フラボノイドで、局所的に適用されたとき微小循環系を促進すると考えられ、適切な睫毛の生長のために必要と考えられている。しかし、驚くべきことに、本発明の化粧用組成物は、アピゲニンの非存在下又は有効量に満たない存在下で、睫毛の健康と外観の相乗的な改善を提供するものである。幾つかの実施形態では、化粧用組成物は、アピゲニン・フリーか、又は、実質的にフリーであって、実質的にフリーとは、組成物の他の材料に、内在的に存在するアピゲニンのために、微量で存在するかもしれないが、本組成物に意図的に添加されるものではないことを意味する。
【0031】
本発明の別の側面は、本明細書に記載の化粧用組成物の製造方法に関する。本発明のクレアチン/低濃度トリペプチドの組み合わせは、好ましくは任意の順序で成分を混合し、配合することにより、任意の従来の方法で調製することができる。いくつかの好ましい実施形態では、本成分は、例えば、睫毛を改善し、その特性を向上させるために、目や睫毛の局所へ適用するための他の化粧用配合物に、直接混合される。いくつかのその様な実施形態では、伝統的な化粧品配合物に、クレアチン、N−biotinyl−gly−his−lys、および1つまたは複数の任意の活性成分を追加することで、pHの上昇、及び/又は粘度の減少という影響がある。当業者が認識しているように、pH及び/又は粘度は、選択されたpH調整剤及び/又は粘度調整剤を添加することにより、化粧品の使用に適したレベルに戻すことができる。
【0032】
本発明の組成物は、以下に、より詳細に説明するように、総合的な睫毛の健康と外観を改善させることができる、睫毛、及び/又は、睫毛毛根への局所適用のための化粧用配合物での使用を見出している。
【0033】
本発明の別の態様は、クレアチンと低濃度のN−biotinyl−gly−his−lys.を含む組成物の化粧品の使用に関する。化粧品組成物は、驚くべきことに、目に見える睫毛数の増加と同様に、睫毛のボリューム、長さや輝きを高めるために相乗的に作用することから、したがって、睫毛の外観及び/又は健康を改善するためのアイ関連製品に使用されることが見い出されている。
【0034】
「睫毛の外観及び/又は睫毛の健康の改善」との表現、並びにその他の表現は、少なくとも睫毛に1つの効能を提供することを指し、その効能は、本明細書で述べているように適用後すぐに、あるいは、一定期間使用後に生じる。いくつかの態様においては、睫毛に少なくとも1つの効能を提供する方法であって、当該方法は、化粧料として許容できるビヒクル中の、ここで述べた少なくとも1つの組成物を、局所的に睫毛に適用することを含む。「睫毛への適用」は、睫毛の毛根、例えば、睫毛の根元、及び/又は、皮膚の上の睫毛繊維の長さに沿って等、睫毛のいかなる部分への組成物の適用も指している。ある好ましい態様において、組成物は、上睫毛、及び/又は、下睫毛の根元に直接適用され、それによって、睫毛毛根へ接触することができる。例えば、美容液(serum)、またはアイライナーを使用して、上睫毛、及び/又は、下睫毛の根元に沿って、細い線を引くことができ、乾燥させることができる。
【0035】
本組成物は、本明細書に記載されたように、クレアチンとN−biotinyl−gly−his−lysと、1つかそれ以上の任意の他の活性成分の有効量を含む。睫毛に特別な効能を提供する「効果的な量」または「有効量」とは、十分な時間適用した場合に、睫毛の特定の症状で臨床的に測定可能な改善を提供するために十分な、クレアチンの活性量と、それと組み合わせた、N−biotinyl−gly−his−lysの活性量とに関連する。その様な効能は、制限無く、以下の事項を含む。
(a)睫毛の毛根鞘の厚さの改善
(b)睫毛の足場性の改善
(c)睫毛の損失の減少
(d)睫毛の損傷の減少
(e)睫毛の強度の増強
(f)睫毛の生長率の改善
(g)睫毛の輝き(つや)の改善
(h)可視的な睫毛数の改善
(i)睫毛の長さの改善
及び/又は
(j)睫毛のボリュームの改善
【0036】
本発明の組成物は、前述の属性の如何なる損傷や損失に病んでいる睫毛や、例えば、本明細書に記載したような、組成物による睫毛強化効果の恩恵を受けるような、治療の必要がある睫毛に、適用することができる。例えば、クレアチン/低濃度N−biotinyl−gly−his−lysの組み合わせは、化粧品的に許容可能なビヒクルに提供することができ、局所的に睫毛の根元及び/又は睫毛の長さのために適用され、睫毛の美的外観及び/又は睫毛の健康を改善するために、効果的な量でその領域に残ることを許容され得る。
【0037】
本発明の組成物の効能は、一時的に、二段階で発生することが期待されている。効能は、即座に生じる可能性があり、それは、本明細書に記載の組成物を適用後すぐに、可視的な目に見える強化が、睫毛に起こり得ることを意味している。典型的には、例えば、本発明の組成物を含有するマスカラ製品の適用では、睫毛の外観に即時または即座の改善が示される。本発明による、マスカラ配合物の例としては、例えば、実施例1を参照されたい。即座の睫毛への効能は、例えば、睫毛の、可視的な長さ及び/又は体積(厚さ)の改善を含むことができる。下記の例3、表1を参照。
【0038】
睫毛への効能はまた、長期間にわたるものも含み、それは、本明細書記載の組成物の使用、好ましくは繰り返しの使用によって得られる、ある期間にわたって進展する効能を意味している。このような長期的な効能によって、マスカラを使用しなくても、アイメイクをしなくても、睫毛の外観に改善がもたらされるのである。典型的には、例えば、本発明の組成物を含有する美容液(serum product)の適用によって、睫毛の外観に、長期的な改善が示されるだろう。例えば、本発明による美容液の例を提供する、実施例2を参照されたい。睫毛への長期の効能は、例えば、睫毛毛根鞘の厚さや、睫毛足場性の改善、睫毛損失の減少、睫毛破損の減少、睫毛強度の増加、睫毛生長率の改善、睫毛の長さの改善、睫毛のボリュームの改善、睫毛の輝きの改善、及び/又は、可視的な睫毛数の改善をもたらすことができる。下記の例3、表2を参照のこと。
【0039】
毛根鞘の厚さの改善は、特定の個人の毛包内の睫毛の、個々の又は平均の厚さ(直径)の増加に、関連している。睫毛の毛根鞘の厚さの増加は、睫毛が継続して皮膚の上方へ毛包の外へと生長していくように、通常、睫毛の厚さの増加に至るだろう。毛根鞘の厚さは、従来技術、及び/又は本明細書中に記載の公知の任意の手段によって測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された組成物の使用は、本組成物を使用しない場合と比べて、少なくとも約20%まで、少なくとも約50%まで、少なくとも約80%まで、少なくとも約100%まで、少なくとも約130%まで、あるいは、少なくとも約150%まで、睫毛毛根鞘の厚さを増加させる。いくつかの好ましい実施形態では、睫毛毛根鞘の厚さの改善は、以下に述べるように、睫毛足場性の改善へと至る。
【0040】
本明細書中で使用される「睫毛足場性」とは、睫毛が、その毛包内に確保されている安定性を、指しており、及び/又は、機械的、生理的な化学物質、及び/又は他のストレスに直面しても瞼(まぶた)にアタッチしたままでいる可能性を、指している。「睫毛足場性」は、ここでは、用語「睫毛根付き性(lash rootedness)」と、同義的に使用され、通常、睫毛の損失率と逆相関するものである。一般的に睫毛は、最大長に達するまでに生長した後、生長が止まり、そして、抜け落ちる。睫毛根付き性(lash rootedness)の増加は、この抜け落ちを遅延させ、妨げ、若しくは防止し、睫毛損失の全体的な比率を減少させるように作用する。そして、睫毛足場性/睫毛根付き性の改善、又は睫毛損失の減少の改善は、睫毛が毛包内に確保され留保される安定性の増加を意味し、及び/又は、損失よりもむしろ、1つ又はそれ以上のストレスに晒された場合でも、睫毛が瞼にアタッチした状態を保っている可能性の増加を意味する。睫毛足場性及び/又は睫毛損失性は、従来技術、及び/又は本明細書中に記載の公知の任意の手段によって測定することができる。睫毛足場性は、人種、年齢、健康全般、睫毛の位置等の、多くの数の要因に基づいて変化しうる。例えば、上睫毛は、下睫毛より、一般的に深く埋まっているようである。睫毛足場性は、例えば、生長期(anagen phase)に最も強力で、休止期(telogen phase)に近づけば、最も弱くなるように、睫毛生長サイクルのステージによってもまた異なる。
【0041】
理論に束縛されることを望まないが、本発明のクレアチンとトリペプチドとの組成物は、睫毛毛根鞘の厚さの改善、睫毛足場性の改善、及び/又は、睫毛損失の減少に影響をもたらすように、相乗的に作用すると考えられている。前述したように、睫毛繊維の主な成分はケラチンである。例えば、ケラチンの産生の欠乏は、髪のもろさに繋がることが知られている。特に、ケラチン5は、睫毛毛包の本質的部分である外側の毛根鞘に局在することが示されている。さらに、細胞外マトリックス成分(EMC)は、睫毛生長サイクルの間に繰り返し行われる、より下側の毛包構造の再編成のために、重要であることが知られている。特に、コラーゲンIV、フィブロネクチンは、睫毛毛包の基底膜の主要な構成成分であることが既に示されている。理論によって束縛されることを望まないが、クレアチンは、ケラチンの産生、特に、それによって、睫毛毛根鞘の厚さを増加させ、瞼への睫毛固定性を優れたものするべく作用する、ケラチン5の産生を、増加させると考えられている。以下の例4を参照されたい。同時に、N−biotinyl−gly−his−lysは、健康的な睫毛毛包と睫毛足場性の相乗的な改善を促進するような、フィブロネクチン、コラーゲンIV、エラスチンの線維芽細胞での産生を増加させるように働く。以下の例5を参照されたい。睫毛毛包での、ケラチン5、フィブロネクチン、コラーゲンIV、およびエラスチンの各増加のコンビネーションの効果は、驚くべきことに、睫毛毛根鞘の厚さ、及び/又は睫毛毛根足場性の相乗的な改善を生起し、その結果として、睫毛損失の相乗的な減少を生み出すことになる。
【0042】
さらに、N−biotinyl−gly−his−lysはまた、分解から細胞外マトリックス成分(EMC)を維持するように作用することができる。細胞外マトリックス成分の分解は、主にマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)によってもたらされる。MMPは、細胞外マトリックス成分を分解する細胞から分泌される亜鉛メタロ−ペプチダーゼのファミリーであって、睫毛毛包やその周辺組織の再構成を強力に制御することが知られている。理論によって束縛されることを望まないが、N−biotinyl−gly−his−lysは、MMP−3活性を低下させるように作用し、それによって睫毛毛包の細胞外マトリックス成分を保護すると考えられている。下記実施例6を参照されたい。本トリペプチド組成物の保護作用は、EMC保持作用と共に、更に、クレアチンのケラチン5産生促進活性に相乗的に作用して、睫毛の外観及び/又は睫毛の健康に、相乗的な効能をもたらす可能性がある。
【0043】
したがって、いくつかの特に好ましい実施形態では、睫毛毛包に局所適用するための組成物は、ケラチン5産生を増加させるに十分な量のクレアチンと、MMP−3活性を低下させ、及び/又は、フィブロネクチン、コラーゲンIV、及び/又は、エラスチンを増加させるに十分な量の、N−biotinyl−gly−his−lysとの組合せで、提供される。いくつかの好ましい態様においては、ケラチン5、コラーゲンIV、フィブロネクチン及び/又はエラスチンの産生は、本発明の組成物の非存在下でのタンパク質の産生と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約100%、少なくとも約130%、または少なくとも約150%、増加する。いくつかの好ましい実施形態では、MMP−3活性は、本発明の組成物の非存在下での酵素活性と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、または少なくとも約80%、減少する。さらに、上述したように、必要なトリペプチドの量は、クレアチンの存在によってその相補的な作用を受ければ、有意に、実質的に、及び/又は指数関数的に、減少させることができる。必要なクレアチンの量もまた、トリペプチド構成要素の相補的、相乗的作用によって、減少させることができる可能性がある。
【0044】
特定の特に好ましい実施形態では、睫毛毛根鞘の厚さ及び/又は睫毛足場性の増加は、さらに睫毛破損の減少、睫毛強度の増加、睫毛生長の改善率、睫毛長さの改善、睫毛量の改善、睫毛輝きの改善、及び/又は可視的な睫毛数の改善は、1つまたは複数の追加の睫毛の効能につながる。さらに、毛根鞘と足場性の効能とともに、これらの効能は、以下により詳細に説明する本発明の組成物に1つまたは複数の任意の活性を追加することで、例えば、相乗的に、さらに強化される場合もある。
【0045】
睫毛損傷の減少とは、毛根は毛包内に安全なまま存在するが、睫毛繊維部分が抜け落ちる頻度の任意の減少を意味する。その様な睫毛損傷の減少は、睫毛毛包の引張強度が強ければ強いほど、睫毛が損傷しにくいように、睫毛強度の増加と相関している。睫毛の引張強度は、当該技術分野、及び/又は本明細書中に記載の公知の技術によって、測定することができる。理論によって束縛されることを望まないが、これらの効能は、ケラチン5、コラーゲンIV、フィブロネクチン、及び/又は、エラスチンの産生の増加と、及び/又は、前述のEMCの分解の減少による、睫毛の厚さの相乗的な改善に起因することもあり得る。
【0046】
睫毛生長率の改善とは、目に見える睫毛繊維の、個々の又は平均の、毛包の上に伸長した率の増加を意味する。ある研究では、睫毛の生長率は、約140μm/dayで、1本の睫毛が、その典型的な最大長に到達するには約2ヶ月かかるようであるとの知見を得ている。睫毛生長率は、当該技術分野、及び/又は本明細書中に記載の公知の技術によって測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で述べたある組成物の使用によって、睫毛生長率は、組成物の非存在下でのそれと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、または少なくとも約100%増加する。
【0047】
好ましい実施形態では、睫毛は、特に、一定の期間、本明細書に記載の組成物を使用した場合、その輝きや、及び/又は、目に見える睫毛の数が、改善されている。「睫毛の輝き(つや)」は睫毛の表面から反射される光の量を意味し、健康的な外観を作り出す効果を有している。睫毛の輝きの改善は、任意のマスカラや他のアイ製品を施していない裸の睫毛の表面からの反射光の量の、個々の又は平均の量の、増加を意味している。睫毛の輝きは、例えば、以下の実施例3のように、当該技術分野、及び/又は本明細書中に記載の公知の技術によって測定することができる。幾つかの態様では、本明細書で述べた組成物の使用は、組成物使用前の特定の個人の睫毛の輝きに比べ、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、若しくは、少なくとも約30%、睫毛の輝きを増加させている。以下の例3,表2を参照されたい。一般的に、結果は、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約8週間、少なくとも約12週間、若しくはそれ以上経過後に、見られている。
【0048】
可視的な睫毛数の改善は、個々の与えられた瞼に対して、与えられたポイントで、睫毛毛包の上に突き出ている個々の睫毛繊維の、肉眼で観察できる量的な増加を意味する。この改善は、伝統的に他の睫毛トリートメントでは見られないユニークな効能を表している。用語「可視的な睫毛数」、「睫毛の可視的な数」、「睫毛の量」、および、「可視的な睫毛の量」は、本明細書において同義的に使用されている。瞼の上の可視的な睫毛の最大可能な数は、瞼の上の睫毛毛包の総数と関連している。平均では、上瞼の上の睫毛毛包数の合計は、約150〜約200、一方、下瞼の睫毛毛包数はより少ないようにみえる。如何なる時でも、目に見える睫毛繊維を支える毛包の総数が多ければ多いほど、目に見える睫毛の数は多くなる。目に見える睫毛の量は、例えば、以下の実施例3でのように、当該技術分野、及び/又は本明細書中に記載の公知の技術によって測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書中で述べた組成物の使用は、本組成物使用前の個々人のある特定の瞼上の目に見える睫毛の数と比べて、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、または少なくとも約70%、見える睫毛の数を増加させる。以下の例3,表2を参照されたい。幾つかの実施形態では、改善は、上瞼の睫毛、すなわち、「上睫毛(top lashes)」で見られた。いくつかの実施形態では、改善は、下瞼の睫毛、すなわち、「下睫毛(bottom lashes)」で見られた。いくつかの好ましい実施形態では、上睫毛、下睫毛の双方で改善が見られた。一般的に、以下で詳細に説明するように、本組成物を、睫毛毛包に少なくとも1日2回、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約8週間、少なくとも約12週間またはそれ以上適用後に、その結果が得られる。
【0049】
理論に束縛されるものではないが、クレアチンとN−biotinyl−gly−his−lysとの組合せによる効果は、睫毛の輝き及び/又は可視的な睫毛の量に、相乗的な改善をもたらすと思われる。具体的には、睫毛毛包でのケラチン5、フィブロネクチン、コラーゲンIV、およびエラスチンの各々が増加することによる複合効果は、睫毛毛根鞘の厚さや毛根足場性に相乗的な改善と、結果としての、睫毛損失の相乗的な減少をもたらし、同様に、睫毛強度の相乗的な改善と、結果としての睫毛損傷の相乗的な減少をもたらして、睫毛全体の健康の実質的な改善をもたらす。このような睫毛の健康上の効能は、驚くべきことに、特定の特に好ましい実施形態では、睫毛の輝きを相乗的に増加させ、及び/又は、可視的な睫毛の量を相乗的に増加させる。
【0050】
さらに特に好ましい実施形態では、本明細書に記載された組成物を使用した結果、睫毛の長さやボリュームに改善が見られる。まつげの長さ及び/又はボリュームは、例えば、睫毛繊維にマスカラ製品を適用すれば、どちらも、本組成物の適用後すぐに改善し、及び/又は、例えば、睫毛毛包に美容液製品(serum product)を繰り返し適用するように、本組成物を一定期間使用すれば、すぐに改善しよう。本明細書中では、「睫毛長さ」は、「可視的な(目に見える)睫毛長さ」という用語と同義的に使用され、「睫毛ボリューム」は、「可視的な(目に見える)睫毛ボリューム」、「睫毛の厚さ」や「可視的な(目に見える)睫毛の厚さ」との用語と、同義的に使用される。
【0051】
睫毛の長さの改善は、特定の時点での、ある個人の瞼の特定の部分の睫毛毛包の上に見える、睫毛繊維の個々の又は平均的な長さの増加を、意味する。上眼瞼上の睫毛の平均の長さは、例えば、約7.0〜約7.2mmである。睫毛の長さは、例えば、民族性、全体的な健康状態、瞼上の位置、その他を含む多くの要因に基づいて変異する。例えば、白人(コーカシアン)では、最長の睫毛は、瞼の中央部に発生した睫毛で、両端の睫毛はより短めであるが、他方、アジア人では、通常、最長の睫毛は、目の外側の部分の方で発生する。睫毛の長さは、例えば、以下の実施例3のように、従来技術及び/又は本明細書中に記載の公知の技術によって測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物の使用は、本組成物の非存在下での、特定の個々の眼の与えられた部分での睫毛の長さと比較すると、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、又は、少なくとも約100%まで、睫毛の長さを増加させている。以下の実施例3、表1を参照されたい。いくつかの実施形態では、改善は上眼瞼の睫毛、すなわち、「トップ睫毛」(top lashes)で見られ、また、いくつかの実施形態では、改善は下眼瞼の睫毛、すなわち、「ボトム睫毛」(bottom lashes)で見られる。そして、幾つかの好ましい実施形態では、改善は上部と下部の両方の睫毛で見られる。
【0052】
睫毛ボリュームの改善は、特定の時点の、個々に与えられた瞼の上の可視可能な睫毛繊維の、個々の又は平均的な厚さの、増加(幅または直径)に関連する。睫毛長さと同様に、睫毛ボリュームは、例えば、民族性、全体的な健康状態、瞼上の位置、その他を含む多くの要因に基づいて変異する。例えば、上側の睫毛は、一般的に下側の睫毛より厚みがあり、アジア人でのその平均的な厚さ(約71μm)は、白人でのそれ(約61μm)より、値が大きい傾向にある。睫毛ボリュームは、例えば、以下の実施例3のように、従来技術及び/又は本明細書中に記載の公知の技術によって測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物の使用は、本組成物の非存在下での、特定の個々の眼の与えられた部分での睫毛のボリュームと比較すると、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約100%、少なくとも約130%、又は、少なくとも約150%まで、睫毛のボリュームを増加させる。以下の実施例3、表1を参照されたい。いくつかの実施形態では、改善は上眼瞼の睫毛、すなわち、「トップ睫毛」で見られ、また、いくつかの実施形態では、改善は下眼瞼の睫毛、すなわち、「ボトム睫毛」で見られ、そして、幾つかの好ましい実施形態では、改善は上部と下部の両方の睫毛で見られる。
【0053】
特定の好ましい実施形態では、本明細書に記載の化粧品組成物は、睫毛の外観及び/又は睫毛の健康を高めるために作用する、1つまたは複数の追加の任意の活性成分を、更に含む。特定の特に好ましい実施形態では、追加の活性成分は、以下により詳細に説明するように、睫毛への追加の効能を引き出すように、クレアチンやペプチド成分と、相乗的に作用する。
【0054】
いくつかの実施形態では、化粧品組成物はさらに、上述したような小麦タンパク質を含む。小麦タンパク質は睫毛繊維に浸透し、睫毛繊維の内部と表面の両方にとって保湿バランス性のある吸湿剤として、作用すると考えられる。理論によって束縛されることを望まないが、さらに、小麦タンパク質成分の浸透性と吸湿性の作用は、睫毛を濃く(厚く)し、機械的損傷に対してより抵抗性があるように作用するかもしれない。睫毛の厚みがより増加すれば、睫毛損失の減少と同様に、睫毛毛根鞘の厚みや、及び/又は、睫毛毛根の根付き性(rootedness)を、一層、より好ましくは相乗的に、向上させることができる。機械的損傷へのより大きな抵抗性は、睫毛の強度の向上、睫毛損傷の減少、及び/又は、睫毛生長率の改善を、一層、好ましくは相乗的に、増加させることができる。上記で詳細に述べたように、このような効果は、睫毛長さ、睫毛ボリューム、睫毛の輝き、及び/又は可視的な睫毛数の、一層の、好ましくは相乗的な、改善へと至る。
【0055】
いくつかの実施形態では、化粧品組成物はさらに、上述したような藻類抽出物を含む。藻類抽出物は、睫毛毛包の細胞外マトリックス成分を保護するために、さらに作用することができると考えられている。上述したように、N−biotinyl−gly−his−lysは、MMP−3を阻害するといわれており、MMP−3は、亜鉛メタロ−ペプチダーゼで、MMPファミリーの1メンバーであり、細胞外マトリックス成分を分解して、睫毛の毛包の中や周辺組織のリモデリングに大きく関わる因子である。睫毛毛包に関して重要な役割を果たす2つの追加的なMMPは、MMP−2およびMMP−9を含む。理論に束縛されるものではないが、藻類抽出物は、MMP−1、MMP−3活性と同様に、MMP−2やMM−9活性を低下させる作用があると考えられており、それによって、睫毛毛包の細胞外マトリックス成分を崩壊から保護することができる。以下の実施例7を参照のこと。
【0056】
したがって、いくつかの好ましい実施形態において、組成物は、MMP−1、−2、−3活性、及び/又はMMP−9活性を低下させるのに十分な藻類抽出物の量で構成されている。いくつかの好ましい実施形態では、MMP−1、−2、−3活性、及び/又はMMP−9活性は、本発明の組成物の非存在下での酵素活性と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、又は、少なくとも約90%まで、低下する。この作用は、ケラチン5産生を増加させるクレアチン構成成分の作用と、及び/又は、いくつかの細胞外マトリックス成分の産生を増加させ、MMP−3活性を減少させる本発明のトリペプチドの作用と、相乗的に組み合わされていると考えられる。この組合わされた作用は、睫毛損失の減少と同様に、睫毛毛根鞘及び/又は睫毛根付き性(rootedness)を、さらに改善し、また、好ましくは、相乗的に改善する可能性がある。それらはまた、睫毛損傷を一層減少させ、及び/又は、睫毛生長率を一層改善させるのと同様に、睫毛強度をさらに改善し、また、好ましくは、相乗的に改善する可能性がある。上記に詳述したように、この様な効果は、また、睫毛長さ、睫毛ボリューム、睫毛の輝き、及び/又は可視可能な睫毛数を、一層向上させ、好ましくは相乗的な向上へと至る。
【0057】
加えて、藻類抽出物はまた、「ヒートショックタンパク質(HSPs)」を刺激することによって、睫毛タンパク質の健全な構造と機能を維持するために働くと思われる。ヒートショックタンパク質(HSPs)は、また、「ストレスタンパク」として知られ、全ての生物で、高度に保存されたファミリータンパクである。HSPsは、温度上昇、酸素欠乏、pH変化、化学的曝露、紫外線等のような、多種多様のストレスによって誘導される。これらのストレスは、タンパク質の折りたたみ構造を変化させてしまう。不適切に折り畳まれたタンパク質は、機能を損失し、潜在的に細胞死につながる。HSPsは、タンパク質の構造と機能を、維持、及び/又は、引き戻すために、ストレス時に、タンパク質に結合する。睫毛の生長サイクルにおいて、HSPsは、睫毛毛包のリモデリング中には増加するが、睫毛毛球でのケラチノサイトの回帰(regression)時には減少することが知られており、特に、アイソフォームであるHSP27とHSP70は、睫毛毛包内で発見されている。理論に束縛されるものではない、藻類抽出物は、遺伝子レベルでHSP70とHSP27の活性を増加させ、特にストレスの期間中は、特に、それによって、睫毛タンパクを一層保護すると考えられている。以下の実施例8を参照されたい。睫毛でのストレスとしては、例えば、睫毛をカールする時に罹るストレス、熱によるストレス、及び/又は、アイメイクを除去する時に罹るストレスを含んでいる。
【0058】
したがって、いくつかの好ましい実施形態において、組成物は、HSP27活性及び/又はHSP70活性を増加させるのに十分な量の藻類抽出物を含む。いくつかの好ましい実施形態では、HSP27活性及び/又はHSP70活性は、本発明組成物の非存在下での酵素活性に比べて、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約100%、又は、少なくとも約120%まで、増加している。この作用は、さらに、クレアチンとトリペプチド成分の作用と、相乗的に組み合わされていると考えられている。これら組み合わされた作用は、さらに、睫毛毛根鞘の厚さ及び/又は睫毛根付き性(rootedness)の相乗的な改善をもたらし、さらに、睫毛損失の減少も相乗的に改善する。それらは、また、睫毛の強度の増加だけでなく、さらに睫毛破損の減少及び/又は睫毛生長率のさらなる改善を、さらに向上、好ましくは相乗的に、向上させることができよう。上記に詳述したように、この様な効果も、睫毛長さ、睫毛ボリューム、睫毛の輝き、及び/又は可視可能な睫毛数を、一層向上させ、好ましくは相乗的な向上へと至る。
【0059】
いくつかの実施形態では、化粧用組成物はさらに、上記したトコフェロールを含む。トコフェロールは、例えば、フリーラジカルによるダメージから睫毛を保護することによって、睫毛の健康を養う様に作用することができると考えられている。紫外線や炎症等により生じた活性酸素種は、DNAやタンパク質の損傷や細胞死を引き起こすことが示されている。このようなダメージはまた、睫毛の生長サイクル、睫毛の健康、色素沈着にさえ、負の影響を与えると考えられている。トコフェロールは、抗酸化性で、フリーラジカルを捕捉し、ケラチノサイトやメラノサイトでの紫外線による損傷を低減するように作用することが示されている。Werninghaus K. et al. Photodermatol.Photoimmunol.Photomed.1991.Dec;8(6):236−42.後に、インビトロ実験によって、ケラチノサイトにおけるUVB誘発性のピリミジンダイマー形成の防止や、メラノサイトにおけるUV誘発性のアポトーシス頻度の減少、および、酸化ストレス経路の活性化に関与する、UV誘発性のIL−8産生の減少、の各々において、トコフェロールの果たす役割が実証されている。Malka H. et al. Biomed.Pharmacother.2006.Jun:60(5):233−7; Larson P. et al. Br.J.Dermatol.2006.Aug;155(2):292−300; 及び Wu S. et al. Mol.Immunol.2008.Apr;45(8):2288−96.フリーラジカル保護のもう一つの尺度は、細胞での脂質の過酸化で、その程度が高いほど、より優れた保護が提供されていることになる。理論によって束縛されることを望まないが、トコフェロールは、ケラチノサイトでの脂質の過酸化を増加させるように作用し、それによってフリーラジカルによるダメージから睫毛を保護し、睫毛毛包細胞を包囲し、さらに、全体的な睫毛の健康に貢献することができると考えられている。以下の実施例9を参照されたい。
【0060】
したがって、いくつかの好ましい実施形態において、組成物は、トコフェロール(例えば、酢酸トコフェロールなど)は、脂質の過酸化を増加させるのに十分な量で構成されている。いくつかの好ましい実施形態では、脂質過酸化反応は、本発明の非存在下での当該反応に比べ少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約100%、又は少なくとも約120%は、増加している。この作用は、さらに、クレアチンとトリペプチド成分の作用と、相乗的に組み合わされていると考えられている。これら組み合わされた作用は、さらに、睫毛毛根鞘の厚さ及び/又は睫毛根付き性(rootedness)の相乗的な改善をもたらし、さらに、睫毛損失の減少も相乗的に改善する。それらは、また、睫毛の強度の増加だけでなく、さらに睫毛破損の減少及び/又は睫毛生長率のさらなる改善を、さらに向上、好ましくは相乗的に、向上させることができ得る。上記に詳述したように、この様な効果も、睫毛長さ、睫毛ボリューム、睫毛の輝き、及び/又は可視可能な睫毛数を、一層向上させ、好ましくは相乗的な向上へと至る。
【0061】
本発明は、クレアチンと少量のN−biotinyl−gly−his−lysとを含む組成物を、本明細書に記載した1つ又は複数の効能を生み出すに十分な期間、局所的に適用することによって、睫毛の外観、及び/又は、睫毛の健康を改善するための方法を提供する。上述したように、効能は、即座に、あるいは、長期的に発生する可能性がある。即座の効能は、通常は、マスカラ製品を、睫毛繊維へ局所適用することによって実現される。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物を含有するマスカラを、睫毛に適用することができる。好ましくは、マスカラは、睫毛毛根と連絡するように、睫毛基底部に触れながら、睫毛繊維の長さに沿って適用される。マスカラは、マスカラワンド(棒)で、例えば、少なくとも約5ストローク、少なくとも約10ストローク、少なくとも約15ストローク、又は、少なくとも約20ストローク、塗ることで、上部及び/又は下部の睫毛に適用することができる。最初の塗り(コート)は乾燥させ、次の塗り、その後の塗りと、例えば、最初の塗りと同じか同様のやり方で、重ねていくことができる。マスカラは、着用中に、必要であればタッチアップすることができる。以下の例3を参照されたい。いくつかの特に好ましい実施形態では、マスカラは、以下のように、美容液(serum)製品の適用と組み合わせて使用される。
【0062】
一般に、長期的な効能は、睫毛毛包への局所適用のための美容液製品(serum product)を使用することで実現される。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載された組成物を含む美容液は、上部及び/又は下部の睫毛ラインの基底部に、適用することができる。美容液は、通常、透明または無色であり、睫毛ラインの基底部に沿って細い線として適用することができ、例えば、マスカラを適用する前に、乾燥させることができる。美容液は、本明細書に記載の睫毛の滋養化やボリュームアップ効果のような、望ましい結果を得るに必要なだけの期間、毎日1、2、3回又はそれ以上、適用を繰り返すことができる。美容液は、例えば、朝マスカラを塗布する前に1回、夜マスカラを除去した後に1回というように、少なくとも1日に2回以上、適用されるのが好ましい。より好ましい実施形態では、日常的に使用されるマスカラもまた、本明細書に記載の組成物を含むことで、さらに毎日の適用量を増加させることができる。驚くべきことに、本発明のいくつかの実施形態の使用方法に関して、特に、用量の重要性があることが発見された。例えば、ある特定の組成物の実施形態を、1日1回の適用にすると、睫毛の輝き及び/又は可視可能な睫毛数には、何ら改善が見られないが、少なくとも1日2回以上の適用にすると、有意な改善が見られた。以下の例3、表2を参照のこと。そのようなレジメン(改善計画)は、例えば、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約8週間、少なくとも約12週間、又はそれ以上、継続することができる。いくつかの特に好ましい態様において、レジメンは、少なくとも12週間継続して、毎日1回の本発明の組成物を含有するマスカラの使用と同様、毎日2回の本発明の組成物を含有する美容液の使用を含んでいる。以下の例3を再度参照されたい。
【0063】
本発明の組成物は、睫毛や眉毛を含むケラチン繊維に、直接適用することができる。一実施形態では、眉毛を構成するケラチン繊維の保持を促進するために提供され、眉毛に直接本発明の組成物の有効量を適用することを含む方法を提供している。
【0064】
いくつかの実施形態においては、本発明の組成物は、頭皮や、頭皮の毛髪への使用や適用を、回避するものである。
【0065】
本明細書で提供される教示に基づいて、当業者は、本明細書に記載の組成物のための、他の化粧品及び/又はパーソナルケアへのアプリケーションを認識するであろうし、このようなアプリケーションもまた、本発明の範囲内であると考えられる。例えば、本明細書に記載の組成物はまた、瞼や睫毛毛包を含むエリアに局所的に適用されるであろう、昼や夜に使用するためのアイクリームやフェイスクリーム中での使用を、見出されるかもしれない。本明細書に記載の化粧用組成物は、より詳細に以下に記載されているように、化粧品的に許容されるビヒクルで、美容液、マスカラ、アイライナーなど、睫毛や睫毛毛包への局所的適用ために処方される、さまざまなアイ製品での使用が、一般的に見出される。
【0066】
睫毛外観強化のための組成物の、化粧用配合(formulations)
本明細書に記載の組成物は、睫毛への局所適用のための様々なアイ製品として策定することができる。本組成物は、例えば、ローション、クリーム、美容液(serum)、スプレー、エアゾール、ケーキ、軟膏、エッセンス、ゲル、ペースト、パッチ、パッド、睫毛ストリップ、ペンシル、ポマード、溶液、ウェットティッシュ(towelette)、マスク、スティック、フォーム、エリキシル、ムース、パウダー、発泡洗剤、濃縮物、またはその他の液体、半固体、または固体形態のように、睫毛への適用の適した様々な製品形態で、策定することができる。好ましくは、本組成物は、例えば、睫毛基底部を含む睫毛への局所的な適用のために、美容液、マスカラ又はアイライナーとして、処方される。上記した様に、以下の例1で提供されている、マスカラのための例示的な配合物は、ボリューム化するマスカラとしての使用を見出している。以下の実施例2で提供されている、美容液のための例示的な配合物は、睫毛強化美容液としての使用を見出している。マスカラ、美容液、又はアイライナーいずれかの追加の例示的な配合物は、以下の実施例10で提供されている。
【0067】
本組成物は、クレアチン、N−biotinyl−gly−his−lysおよび他の任意の活性成分の有効量を含み、それによって、睫毛を滋養化し強化するような、1つ又は複数の望ましい特性や調整活性を、配合製品に与えるに十分な量であることを意味している。
【0068】
本組成物は、化粧品に許容されるビヒクルを含めることができる。化粧品に許容されるビヒクルは、人間の瞼や睫毛を含む、ヒト組織及び/又は人間の毛髪との、直接的な接触においても、使用上安全な、化粧品、医薬品または薬剤のための、任意のビヒクルを指し、例えば、任意の希釈剤、溶剤、担体、充填剤等が挙げられる。そのようなビヒクルは、皮膚及び/又は毛髪への応用に適した当技術分野で公知の任意の形態をとることができ、炭化水素、グリセリン、C1−4アルコール、脂肪アルコール、脂肪エーテル、脂肪酸エステル、ポリオール、グリコール、植物油、鉱物油、リポソーム、ラミナ脂質材料(laminar lipid materials)、シリコーンオイル、及びそれらの任意の組み合わせを、制限なく、含めることができる。
【0069】
ビヒクルは、水相、油相、アルコール相、シリコーン相を個別に、またはそれらの混合物として含むことができる。化粧品用として許容されるビヒクルには、エマルジョン(乳剤)を含むことができる。適切なエマルジョンの非限定的な例としては、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、水中シリコーン型エマルジョン、シリコーン中水型エマルジョン、水中ワックス型エマルジョン、水/油/水型トリプルエマルジョンその他、例えば、クリーム、ゲルまたはマイクロエマルジョンの外観を有するようなものが挙げられる。エマルジョンは、ノニオン(非イオン)性、アニオン(陰イオン)性又は両性界面活性剤などの乳化剤を含むことができる。
【0070】
エマルジョンの水相は、水と同様に、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールを含む1つまたは複数の追加の溶剤を含むことができる。揮発性溶媒はまた、化粧品に許容される、酢酸ブチル又は酢酸エチルの様なエステルや、アセトン又はエチルメチルケトンのようなケトン類、その他、でもありうる。
【0071】
エマルジョンの油相は、好ましくは、1つまたは複数の有機化合物を有し、当該有機化合物には、皮膚軟化剤、保湿剤(例えば、ブチレングリコール、プロピレングリコール、Methyl gluceth−20、グリセリンなど)、ビーガム(veegum)又はヒドロキシアルキルセルロースのような増粘剤を含む、他の水分散性又は水溶性の成分、高分子ポリアクリル酸、即ちCARBOPOL934のようなゲル化剤、そしてそれらの混合物が含まれる。エマルジョンは、組成物中に存在するさまざまなコンポーネントを乳化することができる1種以上の乳化剤を有することができる。
【0072】
油相は、例えば、米ぬかワックス、カルナバワックス、オーリカリー(ouricurry)ワックス、カンデリラワックス、モンタンワックス、サトウキビワックス、オゾケライト、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、蜜蝋、植物系ワックス、微結晶ワックス、シリコーンワックス、フッ素化ワックス、およびこれらの任意の組合せを含め、1つ以上のワックスを含み得る。油相は、1つまたは複数の揮発性及び/又は非揮発性シリコーン油を含むことができる。
【0073】
本明細書の教示に基づいて、当業者は、これらのビヒクルのいずれかを、又は、本明細書に記載の他の材料を、及び/又は、そのための量や割合を、選択可能であるし、その結果、本発明の組成物の、睫毛健全化特性、及び/又は、睫毛強化特性を、保持することができる。
【0074】
本組成物は、1つまたは複数の着色剤を含むことができる。顔料、湖、染料を含む適切な着色剤は、当技術分野でよく知られており、国際化粧品成分辞典・ハンドブック、第11版、2006年(「INCI」)に開示されており、その内容は本明細書中で参考として援用される。有機顔料は、例えば、FD&C染料、D&C染料を含み、D&C赤色No.2、5、6、7、10、11、12、13、30、34、D&C黄色5号、青色1号や、バイオレット2号を、含めることができる。例示的な無機顔料としては、これに限定するものではないが、金属酸化物および金属水酸化物を含み、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化鉄(α−Fe、β−Fe、Fe、FeO)、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒酸化鉄、鉄水酸化物、二酸化チタン、酸化のより低いチタン酸化物、ジルコニウム酸化物、クロム酸化物、水酸化クロム、マンガン酸化物、コバルト酸化物、セリウム酸化物、ニッケル酸化物、亜鉛酸化物、及び、チタン酸鉄、チタン酸コバルト、アルミン酸コバルトなどの様な、複合酸化物、及び、複合水酸化物を含む。他の適切な着色剤は、群青(すなわち、硫黄含有ナトリウムアルミニウムケイ酸塩)、プルシアンブルー、マンガンバイオレット、オキシ塩化ビスマス、滑石(talc)、マイカ・雲母(mica)、絹雲母(sericite)、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、シリカ、チタン酸塩マイカ、鉄酸化物チタン酸塩マイカ、オキシ塩化ビスマスなどを含む。さらに、1つまたは複数のクロマ・メチコン(chroma−methicone)着色剤、例えば、クロマ・ライト(chroma−lite)の黄色メトコン(methocone)、クロマ・ライトの赤色メチコン、クロマ・ライトの黒色メチコン等を使用することができる。美容液製品は、一般的に無色透明であるのに対し、マスカラ製品は、一般的に着色され、特にブラック、ブラウン、ブラウンブラック、ネイビーの色合いは、本明細書に記載の組成物を含有するマスカラで使用するために期待される。
【0075】
本発明の組成物は、必要に応じて防腐剤が含まれる。防腐剤を含有する場合、防腐剤は、通常、全組成物の、約0.01〜5約重量%、約0.05〜約4重量%、好ましくは、約0.1〜約3重量%程度含む。
【0076】
いくつかの好ましい態様において、本発明の組成物は、粘度調整剤及び/又はpH調整剤を含む。上述したように、クレアチン、N−biotinyl−gly−his−lys、および任意の活性成分のような、本発明の組成物の特定の活性成分を伝統的な化粧用配合組成に、追加することで、pHの上昇、及び/又は、粘度の減少が生じる可能性がある。当業者であれば、選択されたpH調整剤及び/又は粘度調整剤を添加することにより、pH及び/又は粘度を、化粧品の使用に適したレベルに戻すことができることを認識するであろう。
【0077】
本発明の組成物は、一般的に化粧品やパーソナルケア用アイ製品に関連付けられている、他の活性および非活性成分を、必要に応じて含有するが、これら成分には、以下に限定されないが、賦形剤、充填剤、乳化剤、酸化防止剤、界面活性剤、追加のフィルム形成剤、キレート剤、ゲル化剤、増粘剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、保湿剤、ビタミン、アスコルビル/コレステリル−リン酸ナトリウム、ミネラル、粘度調整剤、及び/又はレオロジー改質剤、日焼け止め剤、角質溶解剤、レチノイド(VA)、ホルモン剤、α−ヒドロキシ酸、トリオキサウンデカン二酸(trioxaundecanedioic acid)、α−ケト酸、抗マイコバクテリア剤、抗真菌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、脂質化合物、抗アレルギー剤、H1又はH2抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗刺激性、抗腫瘍剤、免疫活性剤、免疫抑制剤、麻酔薬、防腐剤、皮膚冷却剤、皮膚保護剤、皮膚浸透増強剤、剥離剤(exfollients)、潤滑剤、香料、追加の着色剤、染色剤、防腐剤、安定剤、薬剤、光安定剤、光拡散剤、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、コンディショナー等、及びそれらの混合物が、含まれる。本明細書の教示に基づいて、当業者であれば、これらの活性成分や非活性成分、あるいは、ここに記載されている他の材料のいずれかを選択し、及び/又は、量、及び/又は、割合を、選択することができ、その結果、本発明の化粧用組成物の望ましい特性を保持することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、2つ以上の異なる製品形態が、例えば、キットとして、一緒に提供されてもよい。特定の特に好ましい態様において、キットは、睫毛毛包(毛根)に局所的に適用する美容液(serum)と、(例えば、睫毛繊維や毛包を含めて)睫毛に局所的に適用するマスカラとを組み合わせて提供され、そこでは、美容液もマスカラも、化粧品として受容可能なビヒクル中に、本発明の組成物をそれぞれ含んでいる。いくつかの実施態様において、キットはさらに、化粧品的に許容可能なビヒクル中に本明細書に記載の組成物を含有するアイライナーで構成されている。いくつかの他の実施形態では、アイライナーは、キットの美容液又はマスカラ製品と置き換えることができる。このようなキットは、一般的には、本明細書で教示された、使用説明書を含んでいる。以下の例3を参照されたい。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
睫毛外観を向上させるマスカラ配合物
睫毛への局所適用のための、クレアチンと低濃度のN−biotinyl−gly−his−lysを含む、例示的な化粧品組成物を以下に示す。本組成物は、滋養化とボリューム化のために睫毛に適用されるエマルジョンマスカラの態様で、提供される。量は重量%で表示される。
ビオチノイルトリペプチド−1/オレアノール酸/
PEG−40水添ひまし油/PPG−26ブテス−26/
ブチレングリコール/水(*1) 0.100
クレアチン 0.500
蛋白質/オリゴ糖ブレンド・小麦(*2) 1.000
藻類抽出物(Pelvetia canaliculataと
Laminaria digitata(*3) 0.020
キシメニン酸 0.010
酢酸トコフェロール 0.001
ビヒクル 適量

*1 供給されるビオチノイルトリペプチドは、0.02重量%の活性で存在する。
*2 供給される小麦タンパクは、23重量%の活性で存在する。
*3 供給される藻類抽出物は、7重量%の活性で存在する。この抽出物は、プロピレングリコールと水の混合物にあり、メチル及びプロピルパラベンで保存されている。
【0080】
(実施例2)
睫毛外観を向上させる美容液配合物(Serum Formulation)
睫毛への局所適用のための、クレアチンと低濃度のN−biotinyl−gly−his−lysを含む、別の例示的な化粧品組成物を以下に示す。本組成物は、滋養化とボリューム化のために睫毛基底部に適用される美容液の態様で、提供される。量は重量%で表示される。
ビオチノイルトリペプチド−1/オレアノール酸/
PEG−40水添ひまし油/PPG−26ブテス−26/
ブチレングリコール/水(実施例1と同量の活性) 0.100
クレアチン 0.500
蛋白質/オリゴ糖ブレンド・小麦(実施例1と同量の活性) 1.000
藻類抽出物(実施例1と同量の活性と同じ配合) 0.020
キシメニン酸 0.010
酢酸トコフェロール 0.001
ビヒクル 適量
【0081】
(実施例3)
臨床効率に関する研究
臨床試験の効率試験は、それぞれ実施例1および2に従って、アイマスカラと美容液(serum)配合物の効果を評価するために実施された。試験は、22人の健康な成人女性被験者集団に関して、デジタル画像解析技術を使用して、睫毛のボリューム、長さ、数、輝き(つや)への、効果を決定するように意図された、センタースタディで行った。
【0082】
18〜50歳の年齢の22人の女性は、この12週間の、ベースラインコントロールされたマスカラの有効性試験を完了した。研究のための資格を得るために、被験者は、まず、目や瞼の上又はその周辺に、目に見える徴候や切り傷、擦り傷、過度の乾燥、又は紅斑の無いことを、要求された。さらに、被験者は、個々にインフォームドコンセントを提供された。包含/除外基準を満たした各被験者は、試験開始前、睫毛製品の使用を二日間控えるように言われた。さらに、試験開始の朝、被験者は、如何なるアイメイク(例えば、マスカラ、アイシャドウ、アイライナー)もせずに、来訪させられた。まつげの長さとボリュームは、美容液とマスカラ製品の適用前後で、計測した。睫毛の数と輝き(つや)は、ベースライン(初日、適用なし)、4週目、8週目、12週目の訪問時に製品を適用しない状態で評価した。以下の分析のために、画像が取り込まれた。
【0083】
試験の開始時、試験配合物の適用前に、各被験者は、彼女らの上下の睫毛を各試験施設で提供される睫毛ブラシで、14回手入れをした。それに続いて、被験者は、カメラの前面に配置され、両眼(被験者が、カメラを見上げたり、まっすぐ見たりした時の、左右、上下の睫毛)のデジタル画像が、外部ハードドライブにキャプチャされ、保存された。加えて、被験者が目を閉じた時の、目の写真が撮影された。この時点で撮影されたすべての写真は、ベースラインの写真を構成するものであった。
【0084】
上睫毛(top lashes)のベースラインの長さと幅は、画像解析ソフト(Image Pro, Media Cybernetics社,Silver Spring,MD,USA)を使用して、デジタル写真から決定した。上睫毛のベースラインの長さと幅を決定するために、被験者は、カメラを見上げ、その後目をそらすように指示された。下睫毛(bottom lashes)のベースラインの長さと幅を決定するために、被験者は、カメラをまっすぐ見るように指示された。付加的に、(上下の)睫毛のボリュームは、(睫毛の形状が、円錐形(cone)に密接に近似しているとの仮定の下で)円錐の式(the formula for a cone)を用いて算出した。すなわち、ボリューム=1/3πr2Lであり、ここで、r=円錐(睫毛)基部の円の半径、r=幅の1/2、L=円錐の長さである。最後に、睫毛の輝き(つや)の測定は、被験者の閉じた目を撮影した写真から生成された輝度ヒストグラムから決定した。目を閉じた時の睫毛の強度は、グレーレベル(0−65,535)で測定した。平均輝度値が記録された。これは、より輝きのある睫毛は、睫毛の表面からより多くの光を反射して、より高いグレーレベルをもたらすはずであるという、仮定に基づいている。上記各種パラメータに加えて、上下の睫毛の総数をカウントした。
【0085】
ベースラインの写真撮影後、被験者は、美容液(serum)製品とマスカラ製品の両方を提供され、それらを両方の目に、以下のように、適用するように指示された:(1)上睫毛の付け根に睫毛用美容液を適用し、(2)その後、マスカラ製品を、マスカラ棒により、上睫毛に14ストローク、下睫毛に14ストローク、上下睫毛への適用の間にマスカラ製品にマスカラ棒を浸しながら適用し、(3)上記最初のコートをしてから約3分後に、最初のコートと同じ(マスカラ棒により、上睫毛に14ストローク、下睫毛に14ストローク、上下の睫毛のストローク間に、マスカラ製品に棒を浸漬)ように、上下睫毛に14ストロークを適用する。それ故、上睫毛及び下睫毛へのマスカラ製品の適用合計数は、各々28ストロークであった。
【0086】
製品適用後、目の追加の写真が撮影され、これらのイメージはすぐに写真を構成した。上部と下部の睫毛の平均的な長さ、幅、及び量は、ベースラインの写真と適用後即時の写真のデジタル画像解析を用いて、測定された。すべての画像は、外付けハードドライブに保存された。
【0087】
即時の写真撮影に続いて、各被験者は美容液製品とマスカラ製品を与えられ、次の12週間は、自宅で毎日朝晩に、ここで適用したのと同じ方法で、美容液とマスカラ製品を適用し続けるように指示された。被験者は、以下の指示を与えられた:(1)上睫毛の付け根に、毎日二回(朝と夕方)、美容液を適用し、(2)美容液の適用後に、朝は、睫毛に厚く重いカバレッジを提供するために、上下の睫毛にマスカラ製品を適用し、午後に、マスカラ修正する。さらに、日記フォームが、アプリケーションの時間を記録するために、そして、あらゆる製品の性能及び/又は安全関連のコメントを記録するために、各被験者に与えられた。被験者は、追加の写真を撮るために、4週、8週および12週間後に、試験施設に戻るように指示された。美容液とマスカラ製品を使用して、4週、8週および12週間後に戻って来た被験者達は、ベースライン撮影時と同じように、彼女らの目を撮影した。
【0088】
統計:データが切り捨て方式を用いて、独立した統計学者により分析された。平均値の変化の有意性は、対応のあるt−検定を用いて決定した。統計的有意性は、p−値0.05で設定されている。すべての計算は、統計解析システム(SAS)を用いて行った。「最大」のデータは85パーセンタイルで算出した。
【0089】
結果:以下の表1は、マスカラ配合物の即時使用後の、睫毛の目に見える長さとボリュームの「即時の」測定結果を示している。表において、「A」は、ベースラインからの平均の改善%を表し、「B」は、ベースラインからの最大改善%を表し、一方、「C」は、ベースライン測定値からの改善を示した被験者の%を表している。
【表1】

【0090】
表1に示すように、マスカラ製品を塗布した後、直ちに、上下睫毛の可視的な長さとボリュームが大幅に増加した。これらの結果は、クレアチンと低濃度のN−biotinyl−gly−his−lysという本発明の組合せを含むマスカラ配合製品の使用が、睫毛の可視的な長さとボリュームに、即座の改善をもたらすことができることを示唆している。
【0091】
以下の表2は、美容液(serum)製品とマスカラ配合製品の使用後の、「長期的」な測定結果を示している。表において、「A」は、ベースラインからの平均の改善%を表し、「B」は、ベースラインからの最大改善%を表し、一方、「C」は、ベースライン測定値からの改善を示した被験者の%を表している。「NS」は「有意性なし」を意味し、「NA」は「適用なし」を意味している。
【表2】

【0092】
表2に示されているように、本開示によれば、美容液とマスカラ配合製品の1日2回の使用は8および12週間後に、上睫毛の輝き(つや)と可視的な睫毛数を有意に改善させた。1日1回のみの適用の場合では、下睫毛が、睫毛の輝きにも可視的な睫毛数にも、特に有意な変化を示さなかったことは、適用量に驚くべき重要性があることを示している。これらの結果は、本発明の、クレアチンと低濃度のN−biotinyl−gly−his−lysとの組合せを含む、美容液、マスカラ、或いは他の配合製品は、1日1回以上のアプリケーションを行えば、睫毛の輝きや可視数の長期的な改善を得ることができることを示唆している。
【0093】
(実施例4)
クレアチンによるケラチン5産生の増加
ケラチン5のインビトロアッセイは、クレアチンが0.01%の濃度で、ケラチノサイトでのケラチン5産生を高めることができることを示している。
【0094】
この結果は、クレアチンを含む組成物は、局所的に睫毛毛包に適用すれば、睫毛を強化し、睫毛の健康及び/又は外観を高めることができることを示唆している。
【0095】
(実施例5)
N−biotinyl−gly−his−lysによるEMC産生の増加
インビトロアッセイは、N−biotinyl−gly−his−lysは2×10−5%、2×10−6%の濃度で、線維芽細胞での、コラーゲンIV、フィブロネクチンや、エラスチン・細胞外マトリックス成分の産生を高めることができることを示している。
【0096】
結果は、ビオチン化ペプチドを含む本組成物は、局所的に塗布された場合、睫毛毛包の細胞外マトリックス成分を改善し、睫毛の健康及び/又は外観を強化するために使用できることを示唆している。
【0097】
(実施例6)
N−biotinyl−gly−his−lysによるMMP−3活性の阻害
インビトロアッセイでは、N−biotinyl−gly−his−lysは、2×10−7%の濃度でMMP−3の酵素活性を減少させることができることを示している。
【0098】
この結果は、ビオチン化ペプチドを含む組成物は、局所的に適用した場合、睫毛毛包の細胞外マトリックス成分を保護し、睫毛の健康及び/又は外観を向上させるために使用できることを示唆している。
【0099】
(実施例7)
藻類抽出物によるMMP−1/2,3,9活性の阻害
インビトロアッセイでは、藻類抽出物が、7×10−4%や、7×10−5%の濃度で、MMP−1/2、3、9の酵素活性を阻害することができることを示している。
【0100】
この結果は、藻類の抽出物を含む組成物は、局所的に適用した場合、睫毛毛包の細胞外マトリックス成分を保護し、睫毛の健康及び/又は外観を向上させるために使用することができることを示唆している。
【0101】
(実施例8)
藻類抽出物によるHSP27とHSP70の産生の増加
胚性腎細胞でレポーターアッセイを用いたインビトロアッセイでは、藻類抽出物は0.007%、1.4×10−3%の濃度で、HSP27、HSP70の産生を増加させることができることを示している。
【0102】
この結果は、藻類の抽出物を含む組成物は、局所的に適用した場合、睫毛を保護し、健全な状態でそれらを維持するために使用することができることを示唆している。
【0103】
(実施例9)
酢酸トコフェロールによる脂質過酸化の抑制
インビトロアッセイでは、酢酸トコフェロールが、0.001%の濃度で、ケラチノサイトにおける脂質過酸化を抑制することができることを示している。
【0104】
その結果は、酢酸トコフェロールを含有する組成物は、局所的に適用した場合、酸化ダメージから睫毛を保護し、睫毛の健康及び/又は外観を向上させるために使用することができることを示唆している。
【0105】
(実施例10)
睫毛改変配合製品(Lash Transforming Formulation)
睫毛への局所適用のための、クレアチンと低濃度のN−biotinyl−gly−his−lysを含む、例示的な化粧品組成物を以下に示す。本組成物は、滋養化とボリューム化のために睫毛に適用されるマスカラ、クリーム、美容液、アイライナーの態様で、提供される。量は重量%で表示される。
ビオチノイルトリペプチド−1/オレアノール酸/
PEG−40水添ひまし油/PPG−26ブテス−26/
ブチレングリコール/水(実施例1と同様の活性量) 0.100
クレアチン 0.500
ビヒクル 適量
【0106】
(実施例11)
睫毛改変美容液配合物(Lash Transforming Serum Formulation)
睫毛への局所適用のための、クレアチンと低濃度のN−biotinyl−gly−his−lysを含む、例示的な化粧品組成物を以下に示す。本組成物は、滋養化とボリューム化のために睫毛の根本に適用される美容液の態様で、提供される。量は重量%で表示される。
ビオチノイルトリペプチド −1/オレアノール酸/
PEG−40水添ひまし油/ PPG−26ブテス−26/
ブチレングリコール/水(実施例1と同様の活性量) 1.0
クレアチン 1.0
蛋白質/オリゴ糖ブレンド・小麦(実施例1と同様の活性量) 2.0
藻類抽出物(実施例1と同様の活性量及び同様の配合) 0.01
キシメニン酸 0.02
酢酸トコフェロール 0.02
ビヒクル 適量
【0107】
本明細書中で使用される用語は、特に指定のない限り、当該技術分野で普通に用いられる慣用的な意味を有する。本明細書で言及するすべての重量パーセンテージは、全組成の、「重量での%」(% by weight)、又は、「重量%」(weight %)で与えられ、特に断らない限りは、睫毛への適用前の、キャリア、溶剤、軟化剤、又は、その他のコンポーネントの添加後の、全配合物の重量パーセントを意味する。
【0108】
個々の刊行物、特許、特許出願が、具体的かつ個別に全ての目的のためにその全体が参照により組み込まれることが示された様に、本明細書で参照した特許出願明細書、刊行物を含む全ての参照は、全ての目的のために同程度にその全体が参照により、本明細書に組み込まれている。本発明の種々の改変及びバリエーションは、当業者には明らかであるとして、その技術思想および範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載した具体的な実施形態は、例示として提供され、本発明は、記載されたクレームと同等の範囲に沿って、特許請求の範囲の文言によって限定される。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレアチンと、5×10−4重量%未満のN−biotinyl−gly−his−lysとを含む組成物を、睫毛、及び/又は、睫毛毛根に局所的に付与することを特徴とする、睫毛外観を改善するための方法。
【請求項2】
前記組成物に含まれる前記N−biotinyl−gly−his−lysが、4×10−4重量%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、睫毛毛根に、少なくとも1日2回付与されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、さらに、小麦タンパク質を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、さらに、海藻抽出物、酢酸トコフェロール、及び、少なくとも0.01重量%のキシメニン酸のうちの、少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、アピゲニンを含有しないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記改善が、
(a)睫毛毛根鞘の厚さの改善、
(b)睫毛足場性の改善、
(c)睫毛損失の減少、
(d)睫毛損傷の低減、
(e)睫毛強度の増加、
(f)睫毛生長率の改善、
(g)睫毛の輝きの改善、
(h)可視的な睫毛数の改善、
(i)睫毛長の改善、及び、
(j)睫毛ボリュームの改善、からなる群から選択される少なくとも1つの兆候を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記改善が、可視的な睫毛数の改善であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1日2回、12週間の前記睫毛毛根への前記組成物の局所的な適用後に、前記可視的な睫毛数が50%まで増加することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記改善が、睫毛ボリュームの改善を含み、前記睫毛ボリュームは、前記睫毛への前記組成物の局所的な適用後、100%まで増加することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
化粧品として許容可能なビヒクル中に、1.4重量%以下のクレアチンと、2.5×10−4重量%以下のN−biotinyl−gly−his−lysとを含む局所適用組成物を、少なくとも1日に2回適用し、可視的な睫毛数が50%まで増加するまで、瞼上の睫毛毛根に、前記適用を繰り返し行うことを特徴とする、瞼上の可視的な睫毛数を改善するための方法。
【請求項12】
美容液、マスカラ、又はアイライナーの態様で、化粧品として許容可能なビヒクル中に、1.4重量%以下のクレアチンと、4×10−4重量%以下のN−biotinyl−gly−his−lysとを含むことを特徴とする、局所適用組成物。
【請求項13】
前記N−biotinyl−gly−his−lysが、3×10−4重量%以下であることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記N−biotinyl−gly−his−lysが、2.5×10−4重量%以下であることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、さらに、小麦タンパク質を含むことを特徴とする、請求項12、13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、さらに、海藻抽出物、酢酸トコフェロール、及び、少なくとも0.01重量%のキシメニン酸のうちの、少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、アピゲニンを含有しないことを特徴とする、請求項12、13又は14に記載の組成物。
【請求項18】
睫毛毛根への局所適用のための美容液であって、化粧品として許容可能なビヒクル中に1.25重量%以下のクレアチンと、3×10−4重量%以下のN−biotinyl−gly−his−lysとを含有する前記美容液と、
睫毛への局所適用のためのマスカラであって、化粧品として許容可能なビヒクル中に0.5重量%以下のクレアチンと、2.5×10−4重量%以下のN−biotinyl−gly−his−lysとを含有する前記マスカラと、
を含むことを特徴とする、キット。
【請求項19】
前記美容液は、少なくとも1日2回、及び、前記マスカラは、少なくとも1日1回、適用するように、指示を記載した説明書をさらに含むことを特徴とする、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
睫毛の外観を改善するための方法であって、化粧品として許容可能なビヒクル中に、クレアチン、N−biotinyl−gly−his−lysを含み、かつ、アピゲニンを含まない、組成物を、睫毛及び/又は睫毛毛根に局所的に適用することを特徴とする、方法。




【公表番号】特表2013−510147(P2013−510147A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537885(P2012−537885)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/051063
【国際公開番号】WO2011/056330
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(399130393)エイボン プロダクツ インコーポレーテッド (75)
【Fターム(参考)】