説明

瞳孔検出装置および虹彩認証装置

【課題】高速にかつ精度よく瞳孔位置の検出が可能な瞳孔検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】目画像の中から瞳孔候補の位置を検出する瞳孔候補検出部110と、瞳孔候補の中心座標を中心とし所定の半径を持つ円の円周上における目画像の画像データの最大値と最小値との差を求める輝度差算出部120とを備え、輝度差算出部120の出力が所定の閾値よりも大きい場合には対応する瞳孔候補は瞳孔でないと判定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人認証等に用いられる虹彩認証装置に関し、特に目画像(目を含む画像)の中から瞳孔の位置を検出する瞳孔検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より目画像の中から瞳孔の位置を検出する様々な方法が提案されており、たとえば、目画像の画像データ(以下、「目画像データ」と略記する)を2値化し、低輝度領域の中の円形の領域を検出する方法や、半径がrであり、中心座標が(x0、y0)である円の弧に対して画像強度I(x、y)の周回積分を計算し、半径rが増加するにしたがってrに関するこの量の部分的な導関数を計算する方法(たとえば特許文献1参照)等が知られている。また、まつげや外光反射の影響をなくして検出精度を上げる方法についてもいくつか提案されている(たとえば特許文献2参照)。
【特許文献1】特表平8−504979号公報
【特許文献2】特開2002−119477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの方法を用いて精度よく瞳孔を検出するためには膨大な画像データを高速に処理する必要があり、処理能力の高い大きなCPUや大容量メモリを用いても、現状では目画像の画像データをリアルタイムで処理することは難しい。また、画像データをリアルタイムで処理できる程度にCPUの処理量を減らすと検出精度が低下する等の課題があり実用的ではなかった。
【0004】
本発明は、これらの課題に鑑みなされたものであり、高速にかつ精度よく瞳孔位置の検出が可能な瞳孔検出装置および虹彩認証装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の瞳孔検出装置は、目画像の中から瞳孔の候補となりうる瞳孔候補の位置を検出する瞳孔候補検出部と、瞳孔候補の中心座標を中心とし所定の半径を持つ円の円周上における目画像の画像データの輝度の最大値と最小値との差を求める輝度差算出部とを備え、輝度差算出部で求められた輝度の差が所定の閾値よりも大きい場合には対応する瞳孔候補は瞳孔でないと判定することを特徴とする。この構成により、高速にかつ精度よく瞳孔位置の検出が可能な瞳孔検出装置を提供することができる。
【0006】
また、本発明の瞳孔検出装置は、所定の半径が瞳孔候補の半径より大きいことが望ましい。この構成によって、たとえばメガネフレームの一部を瞳孔と誤って検出する等の誤検出を防ぐことができる。
【0007】
また、本発明の瞳孔検出装置は、同心円状の複数の円をそれぞれ積分円として目画像上に設定し積分円の円周上に位置する目画像の画像データを抽出する画像データ抽出部と、画像データ抽出部が抽出した画像データを積分円のそれぞれの円周に沿って積分する周回積分部と、周回積分部の積分値が積分円の半径に対してステップ状に変化したことを検出する瞳孔半径検出部と、瞳孔半径検出部がステップ状の変化を検出した場合にその積分円の中心座標を瞳孔位置座標として検出する瞳孔位置検出部と、積分円のそれぞれの円周に沿って画像データ抽出部が抽出した画像データの最大値と最小値との差を求める輝度差算出部とを備え、積分円のそれぞれに対して輝度差算出部の出力が所定の閾値より大きい場合には対応する積分円の積分値を無効とすることを特徴とする。この構成によって、比較的小規模な回路を用いて、撮像部で撮像された画像データに対してリアルタイムで瞳孔検出することができる。
【0008】
本発明の虹彩認証装置は、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の瞳孔検出装置を備えたことを特徴とする。この構成によって、精度よくかつ高速に瞳孔位置の検出が可能な瞳孔検出装置を搭載した虹彩認証装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高速にかつ精度よく瞳孔位置の検出が可能な瞳孔検出装置および虹彩認証装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態における瞳孔検出装置を用いた虹彩認証装置について、図面を用いて説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態における瞳孔検出装置100を用いた虹彩認証装置10の回路ブロック図である。図1には、瞳孔検出装置100に加えて虹彩認証装置10を構成するために必要な撮像部20、照明部30、認証処理部40も示している。
【0012】
第1の実施の形態における虹彩認証装置10は、使用者の目画像を撮像する撮像部20、目画像の中から瞳孔位置とその半径を検出する瞳孔検出装置100、目画像から得られた虹彩コードを登録されている虹彩コードと比較して個人認証を行う認証処理部40、目画像取得に適した光量の近赤外線を照射し使用者の目とその周辺部分を照明する照明部30を備えている。
【0013】
撮像部20は、誘導ミラー21、可視光カットフィルタ22、レンズ23、撮像素子24および前処理部25を有する。本実施の形態においては、レンズ23として固定焦点レンズを用いることにより光学系の小型、軽量化と低コスト化を実現している。誘導ミラー21は使用者が自らの目を映すことにより目を正しい撮像位置へ誘導する。そして、使用者の目は可視光カットフィルタ22およびレンズ23を通して撮像素子24で撮像される。前処理部25は、撮像素子24の出力信号から画像データ成分を取り出し、ゲイン調整等画像データとして必要な処理を行った上で、使用者の目画像データとして出力する。
【0014】
瞳孔検出装置100は瞳孔候補検出部110と輝度差算出部120とを備える。瞳孔候補検出部110は、前処理部25から出力された目画像データを2値化し、その中から輝度の暗い領域を選び出す。そして選び出された1つあるいは複数の領域それぞれに対して内接する最大の円を求め、内接円の中心座標を瞳孔と推定される瞳孔候補の位置座標、内接円の半径を瞳孔候補の瞳孔半径として輝度差算出部120へ出力する。
【0015】
輝度差算出部120は、瞳孔候補のそれぞれに対して、瞳孔候補の中心座標を中心とし、瞳孔候補の半径よりわずかに大きい半径(たとえば瞳孔候補の半径の1.2倍〜1.5倍)を持つ円の円周上の画像データ(すなわち輝度データ)の最大値と最小値とを求めその差を計算する。そしてその差が所定の閾値(以下、「輝度差閾値」と記する)以下であれば、対応する瞳孔候補は正しい瞳孔であるものとみなし、瞳孔中心座標とその半径を認証処理部40へ出力する。このときの輝度差閾値としては、円周上の輝度データの予想されるばらつきよりわずかに大きく設定することが望ましい。経験的には、虹彩の平均輝度と瞳孔の平均輝度との差よりも大きく、肌の平均輝度と瞳孔の平均輝度との差よりも小さく設定するとよい。たとえば、256階調の画像信号の場合、瞳孔の平均輝度が40階調程度、虹彩の平均輝度が100階調程度、肌の平均輝度が200階調程度となるため、輝度差閾値としては60〜160の間で設定するとよい。
【0016】
認証処理部40は、輝度差算出部120が正しいと判定した瞳孔の中心座標にもとづき、目画像データの中から虹彩画像を切り出す。そして、虹彩画像を虹彩の模様を示す固有の虹彩コードに変換し、登録されている虹彩コードと比較することによって認証動作を実行する。
【0017】
図2は本発明の第1の実施の形態における瞳孔検出装置100を用いた虹彩認証装置10の動作を示すフローチャートである。
【0018】
まず、使用者が虹彩認証装置の前に立つ等により認証動作を開始させる(S1)。すると撮像部20が使用者の目画像を撮像する(S2)。前処理部25は取得した目画像のフォーカス、輝度、コントラスト等の画質が適切であるかを判定し、適切でない場合には照明制御や使用者に対する指示等必要な処理を行い、再度目画像を取り込む(S3)。
【0019】
取得した目画像が適切な場合は瞳孔検出装置100が瞳孔位置とその大きさを検出する。具体的には、まず取り込んだ目画像データを瞳孔候補検出部110が2値化する。そして2値化した目画像の中から暗部領域を選択する。このとき予想される瞳孔の大きさに比べて大きすぎる領域あるいは小さすぎる領域は最初から除外しておいてもよい(S4)。次に、選択した暗部領域に内接する最大の円を求め、瞳孔候補としてその中心座標と半径を出力する(S5)。輝度差算出部120は瞳孔候補の中心座標を中心とし、その半径より大きい半径を持つ円の円周上の輝度データの最大値と最小値とを求めその差を計算する(S6)。そして差が輝度差閾値以下であれば、選択した瞳孔候補は正しい瞳孔であるものとみなし、瞳孔の中心座標とその半径を認証処理部40へ出力する。差が輝度差閾値より大きい場合には選択した瞳孔候補は瞳孔ではないと判定して次の瞳孔候補を選択しステップS6に戻る(S7)。
【0020】
正しく瞳孔が検出されると、認証処理部40は瞳孔の中心座標にもとづき目画像データの中から虹彩画像を切り出す。そして、虹彩画像を虹彩の模様を示す固有の虹彩コードに変換し、登録されている虹彩コードと比較することによって認証動作を実行する(S8)。
【0021】
図3は、本発明の第1の実施の形態における輝度差算出部120の動作を説明するための図である。瞳孔候補が真の瞳孔501である場合は、図3(a)に示すように、輝度差算出部120は瞳孔501の中心座標を中心とし瞳孔501の半径よりわずかに大きい半径を持つ円502の円周上に位置する目画像の輝度データを求め、その最大値と最小値の差を計算する。このとき上述の円周は虹彩部分に位置するため、輝度の最大値、最小値ともに限られた輝度の範囲に入り、その差は輝度差閾値以下となる。しかし、瞳孔候補が真の瞳孔でない場合、たとえば図3(b)に示すように瞳孔候補検出部110が黒いメガネフレーム503の一部を瞳孔候補として検出した場合は、円周521上の輝度はメガネフレーム503上では低く皮膚の部分では高くなるため、輝度の最大値と最小値との差は大きくなる。このように、瞳孔候補の中心座標を中心とする円502の円周上の輝度の最大値と最小値との差を計算することにより、瞳孔候補が真の瞳孔であるか否かを判定することができる。
【0022】
本実施の形態における瞳孔検出装置100は、瞳孔候補検出部110で検出した瞳孔の候補が真の瞳孔であるか否かを判定する輝度差算出部120が設けられているため、瞳孔候補の中に真の瞳孔が含まれてさえいれば瞳孔候補自体の検出精度はあまり高くなくてもよい。したがって、比較的廉価なCPUで処理できる程度に瞳孔候補の検出精度を下げ、輝度差算出部120を用いて瞳孔候補の中から真の瞳孔を見つけ出すことにより、精度よく高速に瞳孔位置を検出することが可能となる。
【0023】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態における瞳孔検出装置の瞳孔検出方法を説明するための図である。瞳孔を含む画像は図4(a)に示すように、瞳孔を示す円盤状の低輝度領域とその外側に虹彩を示す円環状の中輝度領域とが存在する。したがって、瞳孔中心の位置座標(Xo、Yo)を中心として半径Rを順次異ならせ、それぞれにおける積分円Cの円周に沿って画像データを周回積分すると図4(b)に示すように積分値Iは瞳孔半径Roのところでステップ状に変化することになる。そこで、積分値Iを半径Rで微分した値dI/dRが差分閾値ΔIthを超えるときの積分円の半径を求めることにより瞳孔半径Roを知ることができる。
【0024】
第2の実施の形態における瞳孔検出装置は、以上の考え方にもとづき、瞳孔の位置座標(Xo、Yo)と瞳孔半径Roを検出する。まず、図4(d)に示すように中心座標が等しく半径の異なるn個の積分円C〜Cを目画像上に設定し、各々の積分円C(i=1〜n)に対してその円周上に位置する画像データを積分する。現実的には各々の積分円Cの円周上に位置する画素の画像データの平均値を計算するか、円周上に位置する画素の中から一定数(m個)の画素を選んでその画像データを加算する。第2の実施の形態においては同心円状の積分円の数nを20とし、各積分円Cの円周上に位置する画素の中からm=8画素を選んでその画像データを加算し周回積分の積分値Iとした。このとき、積分円C〜Cの中心が瞳孔中心と一致している場合には、上述したように、各積分円Cに対する積分値Iがステップ状に変化するので、積分値Iの半径Rに対する差分値ΔIを求めると瞳孔半径Roに等しいところで大きな極大値を示すことになる。ただし、積分円C〜Cの中心が瞳孔中心に一致しない場合は、積分値Iは緩やかに変化するので、その差分値ΔIは大きな値を示さない。したがって、差分値ΔIが差分閾値ΔIthよりも大きな値を示す積分円Cを求めることで、瞳孔の位置とその半径を求めることができる。
【0025】
しかしながら、画像によっては偶発的に差分値ΔIが大きな値を示す可能性がある。特に、積分円の数nや各積分円上で選択する画素の数mを小さくすると計算量を減らすことができ高速な瞳孔検出が可能となるが、反面、偶発的に差分値ΔIが大きな値を示す可能性が高くなり瞳孔検出精度が低下する。そのために第2の実施の形態においては輝度差算出部120を設け、積分円Cの各々に対して、円周上における輝度の最大値と最小値の差Bを求め、その差Bが輝度差閾値Bthより小さい場合に限り積分値I、あるいはその差分値ΔIが有効であるとすることで瞳孔検出精度の低下を防いでいる。
【0026】
そして、目画像上の各位置に積分円C〜Cを移動させて上述の動作を繰り返す。こうして差分値ΔIが大きな値を示すときの積分円Cの中心座標(X、Y)とそのときの半径Rを求めることにより、瞳孔の位置座標(Xo、Yo)と瞳孔半径Roを求めることができる。
【0027】
なお、256階調の画像信号の場合、瞳孔の平均輝度が40階調程度、虹彩の平均輝度が100階調程度、肌の平均輝度が200階調程度となるため、輝度差閾値Bthとしては、第1の実施の形態と同様に60〜160の間で設定するとよい。また、差分閾値ΔIthとしては、経験的には、積分円が虹彩上にある場合の積分値と積分円が瞳孔上にある場合の積分値との差の1/4倍〜1倍の範囲に設定するとよい。第2の実施の形態においては、積分円が瞳孔上にある場合の積分値Iはおよそ40×8=320であり、積分円が虹彩上にある場合の積分値Iはおよそ100×8=800であるので、差分閾値ΔIthとしては、その差480の半分程度、すなわち240に設定した。
【0028】
図5は、本発明の第2の実施の形態における瞳孔検出装置200の回路ブロック図である。図示していないが、第1の実施の形態と同様に瞳孔検出装置200に撮像部、照明部、認証処理部を加えることにより虹彩認証装置を構成することができる。
【0029】
図5に示すように瞳孔検出装置200は、目画像上に積分円C〜Cを設定し各積分円Cの円周上の画像データを抽出する画像データ抽出部220、抽出された画像データを積分円C毎に周回積分する周回積分部230、各積分円毎に画像データの最大値と最小値との差Bを求める輝度差算出部240、積分値Iの半径Rに対する差分値ΔIを求め、差分値の最大値ΔIが差分閾値ΔIthより大きいとき瞳孔を検出したものとみなしそのときの積分円の半径Rを瞳孔半径Roとして出力する瞳孔半径検出部250、積分円C〜Cの中心座標(X、Y)を示すポインタ部260、瞳孔半径検出部250が瞳孔を検出したときのポインタ部260の出力を瞳孔のX座標Xo、Y座標Yoとして出力する瞳孔位置検出部280を備えている。
【0030】
図6は、画像データ抽出部220の回路図である。あわせて図6には1つの積分円Cに対応する加算器230および輝度差算出器240をも示している。画像データ抽出部220は部分フレームメモリ210とそこから画像データを引出すための引出し線Lから構成されている。部分フレームメモリ210はファーストイン−ファーストアウト型(FIFO型)のラインメモリ215を複数個直列に接続したものである。そして、引出し線Lによって画像上で積分円Cに対応するm個の画素から画像データを引出している。なお、図を見やすくするため図6には1つの積分円Cとその円周上にある4個の画素データを引出す引出し線Lのみを示したが、第2の実施の形態においては20個の積分円C〜C20から各々8個ずつデータの引出し線が引出されている。
【0031】
そして、部分フレームメモリ210に1画素ずつ画像データを入力する毎に部分フレームメモリ210に保持されている画像全体が1画素ずつシフトするので、引出し線Lから引出される画像データも1画素ずつシフトすることになる。すなわち、部分フレームメモリ210に画像データを1画素分入力すると目画像上では積分円C〜Cが右に1画素分移動し、1ライン分の画像データを入力すると目画像上では積分円C〜Cが1ライン分下へ移動する。こうして、1フレーム分の画像データが部分フレームメモリ210に入力する間に、目画像上では積分円C〜Cが目画像全体を走査することになる。このときの積分円の中心座標(X、Y)はXカウンタ262およびYカウンタ264の出力によって示される。
【0032】
周回積分部230は積分円C〜Cの各々に対して独立な加算器230〜230を備え、各積分円Cの円周上に位置するm個の画像データを加算し、各々の加算結果を積分値Iとして瞳孔半径検出部250へ出力する。
【0033】
輝度差算出部240は積分円C〜Cの各々に対して独立な輝度差算出器240〜240を備え、各々の輝度差算出器240は積分円Cの円周上に位置するm個の画素データの最大値を検出する最大値検出器241、最小値を検出する最小値検出器242、最大値と最小値の差Bを計算する減算器243、差Bと輝度差閾値Bthとを比較するコンパレータ244を備えている。そしてn個の比較結果を瞳孔半径検出部250へ出力する。
【0034】
瞳孔半径検出部250は、n−1個の減算器252〜252n−1、セレクタ253、コンパレータ254、255、レジスタ256を備えている。減算器252〜252n−1は各積分円Cに対する積分値Iの半径Rに対する差分を求める。すなわち、積分円C〜Cのうち、半径の1つ違う円CとCi−1とに対する積分値IとIi−1との差分値ΔIを求める。ただし、積分円Cに対する輝度差算出器240の出力、すなわち画像データの最大値と最小値との差Bが輝度差閾値Bthよりも大きい場合には差分値ΔIを強制的に0に設定する。そしてセレクタ253によって最大の差分値ΔIとそのときの積分円の半径Rとを選択する。コンパレータ254は最大の差分値ΔIと差分閾値ΔIthとを比較し、差分値ΔIが差分閾値ΔIthよりも大きい場合にはコンパレータ255に差分値ΔIを出力する。
【0035】
コンパレータ255は、レジスタ259に保持されている古い差分値ΔIoldとコンパレータ254から新しく入力した差分値ΔInewとを比較する。そして差分値ΔInewが古い差分値ΔIoldよりも大きい場合には、レジスタ259のデータを新しく入力した差分値ΔInewに書換える。同時にレジスタ256のデータをセレクタ253から送られた新しい半径Rnewに書換える。差分値ΔInewが古い差分値ΔIold以下の場合には、これらの書換えは行わない。したがって、1フレーム分の上記動作の後、レジスタ256には差分閾値ΔIthよりも大きくかつ差分値ΔIを最も大きくする積分円の半径が瞳孔半径Roとして保持される。
【0036】
上述したように、本発明の第2の実施の形態においては、積分円Cに対する画像データの最大値と最小値との差Bが輝度差閾値Bthよりも大きい場合には差分値ΔIを強制的に0に設定する。このため、差Bが輝度差閾値Bthよりも大きい場合には半径Rが瞳孔位置検出部280に出力されることはない。第1の実施の形態において図3を用いて説明したように、積分円C〜Cの中心が瞳孔の中心と一致している場合には、画素データの最大値と最小値との差Bはある限られた値以下となる。しかし、瞳孔の中心と一致していない場合には差Bは大きくなる。したがって、差Bが輝度差閾値Bthよりも大きい場合の情報を除くことにより誤検出の可能性を減らすことができ、瞳孔検出精度を上げることができる。
【0037】
瞳孔位置検出部280は2個のレジスタ286、287を備えXカウンタ262およびYカウンタ264の値をレジスタ286、287に保持する。そして、瞳孔半径検出部250のレジスタ256のデータが書換えられる毎に、レジスタ286、287の内容も書換えられる。したがって、1フレーム分の上記動作の後、レジスタ286、287には差分閾値ΔIthよりも大きくかつ差分値ΔIを最も大きくする積分円の中心座標が瞳孔位置座標(Xo、Yo)として保持される。
【0038】
次に、瞳孔検出装置200の動作について説明する。以下の説明では、目画像データが順次走査データであり、1フレームが、たとえば480ライン×640ピクセルのデジタルデータで構成されているものとする。図7は、本発明の第2の実施の形態における瞳孔検出装置200の目画像1フレーム分の動作を示すフローチャートである。
【0039】
まず瞳孔検出装置200は1画素分の画像データを取り込む(S51)。取り込んだ画像データが1フレームの先頭のデータであれば(S52)、Yカウンタ264をリセットするとともに、瞳孔位置検出部280の各レジスタ286、287をリセットする(S53)。取り込んだデータが1ラインの先頭のデータであれば(S54)、Xカウンタ262をリセットし、Yカウンタ264をインクリメントする(S55)。そして、Xカウンタ262をインクリメントする(S56)。
【0040】
次に、取り込んだ画像データを部分フレームメモリ210に取り込む。すると目画像上でn個の積分円C〜Cに対応する画素のうち各々の積分円Cからm個ずつ、n×m個の画像データが引出される。そして各積分円Cに対応する加算器230はそれぞれ画像データの積分値Iを算出し、輝度差算出器240は画像データの最大値と最小値との差Bを算出する。瞳孔半径検出部250の減算器252はそれぞれの積分値Iの差分値ΔIを計算する。ただしこのとき、差Bが輝度差閾値Bthよりも大きい場合には差分値ΔIを強制的に0とする。そしてセレクタ253およびコンパレータ254は、差分値ΔIのうち最大でかつ差分閾値ΔIthより大きい差分値ΔInewとそれに対応する積分円の半径Rnewをそれぞれレジスタ259、256へ出力する(S57)。コンパレータ255は新しく入力された差分値ΔInewとレジスタ259に保持されている古い差分値ΔIoldとを比較する(S58)。そして、差分値ΔInewがΔIoldより大きい場合にはレジスタ259の内容を新しい差分値ΔInewに書換え、同時にレジスタ256および瞳孔位置検出部280のレジスタ287、286の内容もそれぞれ新しい半径Rnewおよび新しい座標値Xnew、Ynewに書換える(S59)。そして、取り込んだデータが1フレームの末尾のデータであるか否かを判定し(S60)、末尾でなければステップS51に戻る。
【0041】
入力される画像データが1フレームの最後の画素にいたったときには、レジスタ256、286、287に保持されているデータを出力する。このとき瞳孔が検出された場合にはレジスタ256、286、287に保持されているデータはそれぞれ瞳孔半径Ro、瞳孔のX座標Xo、Y座標Yoを示し、瞳孔が検出されなかった場合にはレジスタ256、286、287はステップS53でリセットされたままであるので保持されているデータはすべて0となる(S61)。
【0042】
以上のフローのうち、ステップS51からステップS60までの一連の動作は部分フレームメモリ210に画像データを1画素分入力する毎に実行される。たとえばフレーム周波数が30Hz、目画像が640×480画素で構成されている場合、1/(30×640×480)秒以下の時間で上記の一連の動作が実行される。そして、部分フレームメモリ210に1画素入力されると積分円は画像上で1画素分移動するので、1フレームの画像を入力する間に積分円が画像上を1回走査することになる。このようにして、比較的小規模な回路を用いて、撮像部で撮像された画像データに対してリアルタイムで瞳孔検出することができる。
【0043】
なお、本実施の形態においては同心円状の積分円の数を20、1つの積分円から引出す画像データの数を8個としたが、これらの数は検出精度、処理時間、回路規模等との兼ね合いで決定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、高速にかつ精度よく瞳孔位置の検出が可能な瞳孔検出装置を提供することができるので、個人認証等に用いられる虹彩認証装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施の形態における瞳孔検出装置を用いた虹彩認証装置の回路ブロック図
【図2】本発明の第1の実施の形態における瞳孔検出装置を用いた虹彩認証装置の動作を示すフローチャート
【図3】本発明の第1の実施の形態における輝度差算出部の動作を説明するための図
【図4】本発明の第2の実施の形態における瞳孔検出装置の瞳孔検出方法を説明するための図
【図5】本発明の第2の実施の形態における瞳孔検出装置の回路ブロック図
【図6】本発明の第2の実施の形態における瞳孔検出装置の画像データ抽出部の回路図
【図7】本発明の第2の実施の形態における瞳孔検出装置の目画像1フレーム分の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0046】
10 虹彩認証装置
20 撮像部
30 照明部
40 認証処理部
100,200 瞳孔検出装置
110 瞳孔候補検出部
120 輝度差算出部
220 画像データ抽出部
230 周回積分部
240 輝度差算出部
250 瞳孔半径検出部
260 ポインタ部
280 瞳孔位置検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目画像の中から瞳孔の候補となりうる瞳孔候補の位置を検出する瞳孔候補検出部と、
前記瞳孔候補の中心座標を中心とし所定の半径を持つ円の円周上における前記目画像の画像データの輝度の最大値と最小値との差を求める輝度差算出部とを備え、
前記輝度差算出部で求められた輝度の差が所定の閾値よりも大きい場合には対応する瞳孔候補は瞳孔でないと判定することを特徴とする瞳孔検出装置。
【請求項2】
前記所定の半径は前記瞳孔候補の半径より大きいことを特徴とする請求項1に記載の瞳孔検出装置。
【請求項3】
同心円状の複数の円をそれぞれ積分円として目画像上に設定し、前記積分円の円周上に位置する目画像の画像データを抽出する画像データ抽出部と、
前記画像データ抽出部が抽出した画像データを積分円のそれぞれの円周に沿って積分する周回積分部と、
前記周回積分部の積分値が積分円の半径に対してステップ状に変化したことを検出する瞳孔半径検出部と、
前記瞳孔半径検出部が前記ステップ状の変化を検出した場合に、その積分円の中心座標を瞳孔位置座標として検出する瞳孔位置検出部と、
前記積分円のそれぞれの円周に沿って前記画像データ抽出部が抽出した画像データの最大値と最小値との差を求める輝度差算出部とを備え、
前記積分円のそれぞれに対して前記輝度差算出部の出力が所定の閾値より大きい場合には対応する積分円の積分値を無効とすることを特徴とする瞳孔検出装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の瞳孔検出装置を備えたことを特徴とする虹彩認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−25968(P2006−25968A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206931(P2004−206931)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】