説明

研磨パッド梱包物及びその製造方法

【課題】 保管中に研磨パッドが黄変したり、膨張又は収縮することのない研磨パッド梱包物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 研磨パッドが酸素透過率2cc/m・day以下、かつ水蒸気透過率2g/m・day以下のガスバリア性フィルムで梱包されている研磨パッド梱包物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ、反射ミラー等の光学材料やシリコンウエハ、ハードディスク用のガラス基板、アルミ基板、及び一般的な金属研磨加工等の高度の表面平坦性を要求される材料の平坦化加工を安定、かつ高い研磨効率で行うことが可能な研磨パッドをフィルムで梱包した研磨パッド梱包物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高度の表面平坦性を要求される材料の代表的なものとしては、半導体集積回路(IC、LSI)を製造するシリコンウエハと呼ばれる単結晶シリコンの円盤があげられる。シリコンウエハは、IC、LSI等の製造工程において、回路形成に使用する各種薄膜の信頼できる半導体接合を形成するために、酸化物層や金属層を積層・形成する各工程において、表面を高精度に平坦に仕上げることが要求される。このような研磨仕上げ工程においては、一般的に研磨パッドはプラテンと呼ばれる回転可能な支持円盤に固着され、半導体ウエハ等の加工物は研磨ヘッドに固着される。そして双方の運動により、プラテンと研磨ヘッドとの間に相対速度を発生させ、さらに砥粒を含む研磨スラリーを研磨パッド上に連続供給することにより、研磨操作が実行される。
【0003】
前記研磨パッドは、ゴミ等の異物が付着することを防止するため、通常使用前は樹脂製の袋で梱包されている。しかしながら、このような梱包された研磨パッドは、保管中に物性変化が起こり、使用時にウエハ表面にスクラッチ(引っ掻き傷)を生じさせるなどの問題があった。
【0004】
保管中の物性変化によるスクラッチの発生及び研磨速度の低下を防止するために、300〜380nmの波長域全域における光透過率が50%以下である材料により研磨層表面を覆う方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
上記問題以外にも、保管中に研磨パッドが黄変することにより、表層と内部で物性が異なってくるという問題を有していた。また、保管中に研磨パッドが膨張又は収縮することにより、研磨パッドをプラテンに固着する際に浮きが発生したり、パッドの厚さが不均一になるという問題も有していた。
【0006】
【特許文献1】特開2004−259728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、保管中に研磨パッドが黄変したり、膨張又は収縮することのない研磨パッド梱包物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す研磨パッド梱包物により上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、研磨パッドが酸素透過率2cc/m・day以下、かつ水蒸気透過率2g/m・day以下のガスバリア性フィルムで梱包されている研磨パッド梱包物、に関する。
【0010】
上記特性を有するガスバリア性フィルムで研磨パッドを梱包することにより、長期保存した場合であっても研磨パッドが黄変したり、膨張又は収縮することを効果的に防止することができる。
【0011】
ガスバリア性フィルムの酸素透過率は2cc/m・day以下であることが必要であり、好ましくは1cc/m・day以下である。酸素透過率が2cc/m・dayを超える場合には、酸素との反応によってパッド材料が変質しやすくなるため研磨パッドの黄変を防止することができない。
【0012】
また、ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率は2g/m・day以下であることが必要であり、好ましくは1g/m・day以下である。水蒸気透過率が2g/m・dayを超える場合には、水蒸気の入出量が多くなるため研磨パッドが膨張又は収縮しやすくなる。
【0013】
前記ガスバリア性フィルムは、波長400〜700nmにおける可視光線の平均光透過率が85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。可視光線の平均光透過率が85%未満の場合には、研磨パッドの保存状態の確認に支障が生じる傾向にある。
【0014】
前記ガスバリア性フィルムは、波長200〜300nmにおける紫外線の最大光透過率が50%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下である。波長200〜300nmの紫外線はパッド材料の分解を引き起こしやすく、該紫外線の最大光透過率が50%を超える場合には、研磨パッドの黄変が顕著になる傾向にある。
【0015】
前記ガスバリア性フィルムは、基材フィルムの表面に無機材料をコーティングしたものであることが好ましい。無機材料で基材フィルム表面をコーティングすることにより、紫外線の透過を効果的に遮断することができ、またガスバリア性も向上させることができる。
【0016】
上記ガスバリア性フィルムは、研磨パッドの研磨層がポリウレタン樹脂発泡体で形成されている場合に使用すると、特に効果的に研磨層の黄変、膨張又は収縮を防止することができる。
【0017】
また本発明は、相対湿度40〜60%の環境下において、酸素透過率2cc/m・day以下、かつ水蒸気透過率2g/m・day以下のガスバリア性フィルムで研磨パッドを梱包する工程を含む研磨パッド梱包物の製造方法、及び該方法により製造される研磨パッド梱包物、に関する。
【0018】
通常、研磨パッドは相対湿度40〜60%のクリーンルーム内で保存されており、同様の環境下で研磨パッドを上記ガスバリア性フィルムで梱包することにより、梱包内部を相対湿度40〜60%に維持することができ、研磨パッドの膨張又は収縮を防止することができる。その結果、製造後から使用前までの研磨パッドの寸法変化を抑制することができ、研磨パッドを精度良くプラテンに固着することができる。
【0019】
上記製造方法においては、さらに、0.3μm以上の微粒子が35000個/m以下の環境下で梱包することが好ましい。梱包工程が、0.3μm以上の微粒子が35000個/mを上回るような環境で行われると、研磨パッドに付着する異物の量が多くなり、該異物によるスクラッチが発生しやすくなる傾向にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の研磨パッド梱包物は、研磨パッドが酸素透過率2cc/m・day以下、かつ水蒸気透過率2g/m・day以下のガスバリア性フィルムで梱包されているものである。
【0021】
ガスバリア性フィルムは、上記特性を有するものであれば他は特に制限されないが、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリイミド、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、PVA、フェノール樹脂、ABS樹脂、天然ゴム、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、及びフッ素ゴム等の各種ゴムが挙げられる。これらは一種単独で用いてもよく、二種以上をブレンドしてもよい。これらのうち、可視光線の高透過性、紫外線の高遮断性、ガスバリア性等の観点からポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、又はPVAを用いることが好ましい。
【0022】
ガスバリア性フィルムは、上記樹脂からなる基材フィルムの表面に無機材料をコーティングしたものであることが好ましい。無機材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、及び酸化チタンなどの金属酸化物が挙げられる。コーティング方法としては、ゾルゲル法、真空蒸着法、スパッタリング法、及びイオンコーティング法などが挙げられる。
【0023】
ガスバリア性フィルムは、上記樹脂からなる基材フィルムの表面に導電性材料をコーティングしたものであってもよい。ガスバリア性フィルムに導電性を付与することにより、フィルムが帯電することを防止でき、異物の吸着を抑制することができる。導電性材料としては、導電性高分子材料を用いることが好ましく、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどが挙げられる。
【0024】
酸素透過率2cc/m・day以下、かつ水蒸気透過率2g/m・day以下のガスバリア性フィルムを得る方法としては、基材フィルムの表面にアルミナ又はシリカの真空蒸着膜を形成する方法や、アルミナ及びシリカの2元蒸着膜を形成する方法が挙げられる。
【0025】
基材フィルムの厚さは、耐久性、ガスバリア性、可視光線の透過性、紫外線の遮断性、フレキシブル性等の観点から10〜250μmであることが好ましく、より好ましくは20〜100μmである。
【0026】
蒸着膜の厚さは、ガスバリア性、可視光線の透過性、紫外線の遮断性、フレキシブル性等の観点から50〜5000Åであることが好ましく、より好ましくは100〜1000Åである。
【0027】
梱包する研磨パッドは公知のものを特に限定なく使用可能であるが、上記ガスバリア性フィルムは、研磨パッドの研磨層がポリウレタン樹脂発泡体で形成されている場合に使用すると、効果的に研磨層の黄変、膨張又は収縮を防止することができる。なお、研磨パッドは研磨層よりも柔らかいクッション層を有していても良い。
【0028】
前記ポリウレタン樹脂は、イソシアネート成分、ポリオール成分(高分子量ポリオール成分、低分子量ポリオール成分)、及び鎖延長剤からなるものである。
【0029】
イソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。イソシアネート成分としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。これらのうち、トルエンジイソシアネートと4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネートを併用することが好ましい。
【0030】
高分子量ポリオール成分としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールに代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いで得られた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、及びポリヒドキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いることが好ましい。
【0031】
ポリオール成分として上述した高分子量ポリオール成分の他に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の低分子量ポリオール成分を併用することが好ましい。エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミン成分を用いてもよい。低分子量ポリオール成分や低分子量ポリアミン成分の(数平均)分子量は500未満であり、好ましくは250以下である。これらのうち、ジエチレングリコールを用いることが好ましい。
【0032】
ポリウレタン樹脂発泡体をプレポリマー法により製造する場合において、プレポリマーの硬化には鎖延長剤を使用する。鎖延長剤は、少なくとも2個以上の活性水素基を有する有機化合物であり、活性水素基としては、水酸基、第1級もしくは第2級アミノ基、チオール基(SH)等が例示できる。具体的には、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン類、あるいは、上述した低分子量ポリオール成分や低分子量ポリアミン成分を挙げることができる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。これらのうち、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミンを用いることが好ましい。
【0033】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造は、プレポリマー法、ワンショット法のどちらでも可能であるが、事前にイソシアネート成分とポリオール成分からイソシアネート末端プレポリマーを合成しておき、これに鎖延長剤を反応させるプレポリマー法が、得られるポリウレタン樹脂の物理的特性が優れており好適である。
【0034】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造方法としては、中空ビーズを添加させる方法、機械的発泡法、化学的発泡法などが挙げられる。
【0035】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の平均気泡径は、30〜80μmであることが好ましく、より好ましくは30〜60μmである。
【0036】
研磨パッド(研磨層)の被研磨材と接触する研磨表面は、スラリーを保持・更新するための凹凸構造を有していてもよい。
【0037】
研磨層の厚みは特に限定されるものではないが、通常0.8〜4mm程度であり、1.0〜2.5mmであることが好ましい。前記厚みの研磨層を作製する方法としては、前記発泡体のブロックをバンドソー方式やカンナ方式のスライサーを用いて所定厚みにする方法、所定厚みのキャビティーを持った金型に樹脂を流し込み硬化させる方法、及びコーティング技術やシート成形技術を用いた方法などが挙げられる。
【0038】
研磨パッドは、研磨層とクッションシートとを貼り合わせたものであってもよい。クッションシートとしては、例えば、ポリエステル不織布、ナイロン不織布、アクリル不織布などの繊維不織布やポリウレタンを含浸したポリエステル不織布のような樹脂含浸不織布、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどの高分子樹脂発泡体、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム性樹脂、感光性樹脂などが挙げられる。
【0039】
本発明の研磨パッド梱包物の製造方法は、相対湿度40〜60%の環境下において、前記ガスバリア性フィルムで前記研磨パッドを梱包する工程を含むことを特徴とする。また、上記製造方法においては、さらに、0.3μm以上の微粒子が35000個/m以下の環境下で梱包することが好ましい。
【0040】
上記環境を達成する手段としては、例えば、HEPAフィルターを備えたクリーンルーム又はクリーンブースを使用する方法が挙げられる。
【0041】
前記ガスバリア性フィルムは、研磨パッドを容易に梱包できることから袋状であることが好ましい。また、研磨パッドをガスバリア性フィルムで梱包した後に、密封することが好ましい。密封することにより、研磨パッドへの異物の付着を防止することができるだけでなく、研磨パッドの吸湿又は乾燥による膨張又は収縮を防止することができる。密封の方法は特に制限されないが、例えばヒートシールする方法が挙げられる。
【0042】
また、酸素の非存在下で密封してもよい。それにより酸素による黄変をより効果的に防止することができる。酸素の非存在下で密封する方法としては、例えばフィルム内部を真空にする方法、フィルム内部を窒素やアルゴンなどの不活性ガスで置換する方法が挙げられる。なお、ガスバリア性フィルムのみでは、強度が弱く傷がついたり、穴が開いたりして真空が保てなくなる場合がある。そのような場合には、より厚い樹脂フィルム等でさらに梱包してもよい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例を上げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0044】
(酸素透過率の測定)
酸素透過度測定装置(Modern Controls社製、OX−TRAN10/50A)の測定室内にサンプルをセットし、測定室内を湿度0%、温度25度の条件で2日間酸素置換した。その後、サンプルの酸素透過率(cc/m・day)を測定した。
【0045】
(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過度測定装置(Modern Controls社製、PERMATRAN)の測定室内にサンプルをセットし、測定室内を湿度90%、温度40度の条件で2日間水蒸気置換した。その後、サンプルの水蒸気透過率(g/m・day)を測定した。
【0046】
(光透過率の測定)
分光光度計(日立製作所製、U−3210 Spectro Photometer)を用いて、測定波長域200〜700nmにおけるサンプルの光透過率(%)を測定した。そして、該測定値から波長400〜700nmにおける可視光線の平均光透過率を算出した。また、波長200〜300nmにおける紫外線の最大光透過率を求めた。
【0047】
実施例1
〔研磨パッドの作製〕
容器にトルエンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)1229重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート272重量部、数平均分子量1018のポリテトラメチレンエーテルグリコール1901重量部、ジエチレングリコール198重量部を入れ、70℃で4時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーを得た。
該プレポリマー100重量部及びシリコン系ノニオン界面活性剤(東レ・ダウシリコーン社製、SH−192)3重量部を重合容器内に加えて混合し、80℃に調整して減圧脱泡した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように激しく約4分間撹拌を行った。そこへ予め70℃に温度調整したエタキュア300(アルベマール社製、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミンと3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミンとの混合物)21重量部を添加した。該混合液を約1分間撹拌した後、パン型のオープンモールド(注型容器)へ流し込んだ。この混合液の流動性がなくなった時点でオーブン内に入れ、100℃で16時間ポストキュアを行い、ポリウレタン樹脂発泡体ブロックを得た。
約80℃に加熱した前記ポリウレタン樹脂発泡体ブロックをスライサー(アミテック社製、VGW−125)を使用してスライスし、ポリウレタン樹脂発泡体シートを得た。次に、バフ機(アミテック社製)を使用して、厚さ1.27mmになるまで該シートの表面バフ処理をし、厚み精度を整えたシートとした。このバフ処理をしたシートを直径61cmの大きさで打ち抜き、溝加工機(テクノ社製)を用いて表面に溝幅0.25mm、溝ピッチ1.50mm、溝深さ0.40mmの同心円状の溝加工を行い研磨シートを得た。この研磨シートの溝加工面と反対側の面にラミ機を使用して、両面テープ(積水化学工業社製、ダブルタックテープ)を貼りつけた。更に、コロナ処理をしたクッションシート(東レ社製、ポリエチレンフォーム、トーレペフ、厚み0.8mm)の表面をバフ処理し、それをラミ機を使用して前記両面テープに貼り合わせた。さらに、クッションシートの他面にラミ機を使用して両面テープを貼り合わせて研磨パッドを作製した。
【0048】
〔研磨パッド梱包物の作製〕
HEPAフィルターを装着したクリーンブース内(相対湿度50%、0.3μm以上の微粒子が20500個/m)で、ヒートシール性を有するポリエステル(厚さ:50μm)の片面にアルミナとシリカを真空蒸着(厚さ:150Å)させたガスバリア性フィルム(エコシアール、東洋紡績社製)を用いて作製した研磨パッドを梱包して研磨パッド梱包物を作製した。使用したガスバリア性フィルムの酸素透過率は1.8cc/m・day、水蒸気透過率は1.5g/m・day、波長400〜700nmにおける可視光線の平均光透過率は90%、及び波長200〜300nmの紫外線の最大光透過率は20%であった。梱包は、ガスバリア性フィルムの3辺をヒートシールして袋状にし、その中に研磨パッドを入れて真空になるように吸引しながら開口部をヒートシールすることにより行った。
【0049】
比較例1
酸素透過率が1500cc/m・day、水蒸気透過率が50g/m・day、波長400〜700nmにおける可視光線の平均光透過率が90%、及び波長200〜300nmの紫外線の最大光透過率が50%のポリエチレン製フィルムを用いた以外は実施例1と同様の方法で研磨パッド梱包物を作製した。
【0050】
実施例及び比較例にて得られた研磨パッド梱包物を温度25℃、相対湿度60%の室内環境下で1年間保存した。その後、研磨パッドを取り出し、黄変や膨張しているか否かを評価した。
(黄変評価)
保存前及び保存後の研磨パッドの表面の色を多光源分光測色計(C光源、2度視野、サンプル面積30mmφ)にて測定し、測定値から色差ΔEを求めた。
(膨張評価)
保存前の研磨パッドを正確に測定したところ、長さは50mm、幅は10mmであった。保存後に再度研磨パッドの長さを正確に測定し、下記式により膨張率を求めた。
膨張率(%)=〔(保存後の長さ−保存前の長さ)/保存前の長さ〕×100
【0051】
【表1】

【0052】
表1から、本発明の研磨パッド梱包物は、保管中に研磨パッドがほとんど黄変や膨張しないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドが酸素透過率2cc/m・day以下、かつ水蒸気透過率2g/m・day以下のガスバリア性フィルムで梱包されている研磨パッド梱包物。
【請求項2】
前記ガスバリア性フィルムは、波長400〜700nmにおける可視光線の平均光透過率が85%以上である請求項1記載の研磨パッド梱包物。
【請求項3】
前記ガスバリア性フィルムは、波長200〜300nmにおける紫外線の最大光透過率が50%以下である請求項1又は2記載の研磨パッド梱包物。
【請求項4】
前記ガスバリア性フィルムは、基材フィルムの表面に無機材料をコーティングしたものである請求項1〜3のいずれかに記載の研磨パッド梱包物。
【請求項5】
前記研磨パッドの研磨層は、ポリウレタン樹脂発泡体からなる請求項1〜4のいずれかに記載の研磨パッド梱包物。
【請求項6】
相対湿度40〜60%の環境下において、酸素透過率2cc/m・day以下、かつ水蒸気透過率2g/m・day以下のガスバリア性フィルムで研磨パッドを梱包する工程を含む研磨パッド梱包物の製造方法。
【請求項7】
さらに、0.3μm以上の微粒子が35000個/m以下の環境下で梱包する請求項6記載の研磨パッド梱包物の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載の方法により製造される研磨パッド梱包物。

【公開番号】特開2007−39096(P2007−39096A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226534(P2005−226534)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】