説明

破裂型多重粒子中の味マスキング薬物

薬物、マトリクス材料、および膨潤剤を含有する多重粒子を含む医薬組成物。一つの局面で、この多重粒子は、薬物を含有するコア、およびこのコアを囲む被覆を含む。この被覆は、(i)水透過性で実質的に薬物は不透過性の被覆、および(ii)抗腸溶性の被覆から成る群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多重粒子(multiparticulates)は、広範囲の適用のために用いられる、良く知られた薬物投与剤形である。経口的に摂取する場合は、多重粒子は一般に胃腸(GI)管内で自由に拡散し、吸収を最大化にし、そして副作用を最小化する。例えば、Multiparticulate Oral Drug Delivery (Marcel Dekker, 1994) および、Pharmaceutical Pelletization Technology (Marcel Dekker, 1989) を参照。
【背景技術】
【0002】
多重粒子の一つの適用は薬物の送達のためのものであるため、迅速な作用発現のために薬物の迅速な送達が望まれる。そうした剤形は、薬物を迅速に胃腸管内に放出しなければならない。多重粒子は、例えば、この投与剤形を口腔中に置いた場合に薬物を迅速に放出するような迅速溶解性または迅速崩壊性の投与剤形(FDDFs)に組み込むことができる。
【0003】
そうした剤形においては、薬物が不快な味を有する場合に、患者のコンプライアンスを向上させるために、この多重粒子が口腔を通過し抜け出るまでこの薬物の放出を遅らせることが多くの場合望ましい。味マスキングを提供するために、この多重粒子を形成させるため用いる材料は、二つの競合する制約を充たさなければならない。一方では、この材料は口腔中で、元のままの形を保ちそして味マスキングを提供するために十分に丈夫でなければならない。他方では、味マスキングを提供するために使用するこの材料は、いったん多重粒子が口腔から通過し抜け出たら、速やかに薬物を放出できなければならない。もし味マスキングを提供する材料があまりに堅固すぎれば、それによりこの材料は胃腸管内での薬物の放出を望ましくない程度まで阻害しまたは遅らせるだろう。
【0004】
他の問題は、顆粒および多重粒子がしばしば患者の口腔中でざらざらした感覚を与えることである。投与剤形は口腔中で好ましい感覚を与えることが望ましい。
【0005】
他の問題は、そうしたシステムが難水溶性の薬物とともに用いられる場合に、この薬物の難溶解性のために、この多重粒子からの薬物の放出速度がしばしば低いことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当該技術分野では、前述の制限の1つまたはそれ以上に対処する、多重粒子投与剤形を提供する必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の局面で、本発明は多重粒子の医薬組成物を提供し、この多重粒子は薬物を含有するコアを含んでいる。このコアは被覆により囲まれている。このコアは少なくとも30質量%のマトリクス材料、および水膨潤性の膨潤剤を含んでいる。
【0008】
この組成物は、コア中の水膨潤性の膨潤剤と被覆とを組合せた多重粒子を与えることによって、薬物を胃腸管内に速やかに放出できる堅固な味マスキング組成物を提供するという必要性を充たしている。一つの局面において、被覆は、経口投与の後に短時間で崩壊する水透過性で実質的に薬物は不透過性の材料からできている。この多重粒子が患者の口腔に入った時に、この被覆は薬物の味マスキングを提供する。しかしながら、一旦患者の口腔に入ると、被覆を通して水がコアの中に拡散し始める。膨潤剤が水を吸収し、コアを膨潤させる。続いて被覆は、コアを膨潤させることにより被覆上に作用するストレスが被覆の引張強度を超えるまで拡張し、その時に被覆は薬物を放出するように破裂する。被覆と膨潤剤の適切な選択により、被覆を破壊するまでの時間が、患者の口腔中で破壊するのを避けるために十分長く、しかし患者の胃で薬物の速やかな放出を与えるためには十分短くなる。
【0009】
他の局面では、この被覆は口腔のpHでは不溶性であるが、胃の中のpHでは可溶性である。この被覆は、この多重粒子が患者の口腔内に入った時に、薬物の味マスキングを提供する。しかしながら、一旦多重粒子が胃の胃内環境の低いpHに入った場合は、被覆は分解し、そして膨潤剤が水を吸収して、コアの膨潤を引き起こす。最終的に、コアは多数の小さい破片まで崩壊し、それにより薬物は速やかに放出される。
【0010】
別の局面では、本発明は多重粒子の医薬組成物を提供し、この多重粒子は薬物を含有するコアを含んでいる。このコアは被覆により囲まれている。このコアは水膨潤性の膨潤剤を含んでいる。組成物の被覆されていないコアは、150μm未満の体積加重平均直径を有している。
【0011】
この発明の局面は小さい多重粒子を利用する利点を有している。そうした小さい多重粒子は、より大きな多重粒子より強固であることがわかっている。そうした多重粒子上のいかなる被覆も、そうした多重粒子を圧縮したまたは咀嚼できる錠剤へ組み込んだ場合、損傷を受ける可能性はより少ない。さらに、そうした小さい多重粒子は、より大きい多重粒子または被覆した薬物結晶に比べて、口腔内でよりざらついた感覚が少ない。
【0012】
さらに他の局面では、本発明はそうした多重粒子を製造する方法を提供し、以下の工程を含む:
(a)マトリクス材料、膨潤剤、薬物および場合によって溶解促進剤を含む、融解した混合物を生成する;
(b)工程(a)の混合物を霧化して小滴を生成する;
(c)工程(b)の小滴を凝固させて固形コアを生成する;そして
(d)工程(c)のコアを被覆して該多重粒子を生成する。
【0013】
工程(a)は各種の方法により実施することができ、それには融解によるもの、押出し成形によるもの、および連続粉末化によるものが含まれる。工程(b)および(c)は、通常同時に行われ、そしてこれもまた各種の方法で実施することができ、それには、単流体、二つの流体、超音波または機械的振盪ノズルを使用した噴霧凝結、および回転ディスク噴霧器によるものを含んでいる。工程(d)は、慣用法により行われ、各種の噴霧被覆法が含まれる。
【0014】
本発明の前述および他の目的、様相および利点は、以下の本発明の詳細な説明を考慮してより容易に理解できるだろう。
【0015】
図面を参照して、図1には本発明の一つの実施態様の多重粒子1の断面図が示され、被覆20で囲まれたコア10が含まれている。コアは、膨潤剤16を含有するマトリクス材料14中に、実質的に均一に分布した少なくとも1つの薬物12を含んでいる。この多重粒子は被覆20を通して水を吸収することにより、薬物を送達する。コアはまた、マトリクス材料14の全体に孔またはチャネルとして分布した任意の溶解促進剤18を含むことができる。図2に図示するように、口腔や胃内環境のような水性液体含有環境中に置かれた場合に、多重粒子は水性液体が被覆20を通してコア10まで通過できるようになる。吸収された水性液体30は膨潤剤16と接触するようになり、それを膨潤させて、最終的に被覆20の破裂を生じさせ、実質的に薬物12を完全に放出させる。被覆とコア構成成分は、この被覆が患者の口腔より胃で破壊するように、破壊が十分遅延するように選択される。多重粒子の破壊時間は、約1〜約10分で変動し、与えられた投与量の多重粒子の実質的に全てが1時間以内に破壊される。この様式で、実質的に全ての薬物は多重粒子が口腔を通過した充分後で放出される。
【0016】
他の実施態様において(示していない)、被覆は抗腸溶性被覆(anti-enteric coating)である。口腔中のようにpHが約6より大きい水性液体含有環境へ置かれたとき、この抗腸溶性被覆は不溶性であり、口腔中への薬物の放出を妨げており、したがって味マスキングを与えている。多重粒子が、胃液のような低いpHの環境に置かれたとき、この抗腸溶性被覆は可溶性で溶解し、コアを胃内環境に晒し、水性液体がコアに入り込めるようにする。吸収した水性液体は膨潤剤と接触し、それを膨潤させそして最終的にコアを多数の小破片まで崩壊させる。そして薬物は崩壊したコア破片から放出される。コアの小破片の大きな表面積が薬物の迅速な放出をもたらす。この様式で、実質的に全ての薬物が、この多重粒子が口腔を通過した充分後で放出される。
【0017】
さらに他の実施態様において、多重粒子コアは、膨潤剤を含有するマトリクス材料中に実質的に均一に分布している少なくとも1つの難溶性薬物を含んでいる。この多重粒子コアはまた、マトリクス材料全体に孔またはチャネルとして分布している任意の溶解促進剤を含んでもいい。口腔や胃内環境のような水性液体含有環境に置かれたとき、水性液体は多重粒子中に進入する。吸収した水性液体は膨潤剤と接触するようになり、同一物を膨潤させ、そして最終的に多重粒子コアを多数のより小さい断片に崩壊させ、難溶性薬物の放出のための大きな表面積をもたらす。
【0018】
コア中の材料、コアの製造方法、および効果的に薬物を味マスキングするために充分に遅延させ、そしてなお胃腸管内で薬物を充分に迅速に放出させるために充分な速い薬物の放出速度を達成する被覆についての詳細は、さらに以下に記載している。
【0019】
薬物の放出速度
一つの実施態様において、本発明の多重粒子は、放出における短時間の遅延、次いで、使用環境へ導いて1時間以内に実質的に薬物を完全に放出するように設計される。そうした放出特性は、動物の口腔内での不快な味の薬物の放出を妨げ、なお胃腸管内での実質的に即時の放出をもたらす。本願で使用した「使用環境」という表現は、例えば、動物(例えば、哺乳類動物、特にヒト)の口腔内空隙もしくは胃腸管内に存在するインビボの液体;または、試験溶液のインビトロの環境(例えば、模擬口腔緩衝液(MB)もしくは模擬胃緩衝液(GB))の試験溶液のいずれかを意味する。適切な模擬MB試験溶液は、10M KOH でpH 7.3に調整した0.05M KH2PO4 緩衝液である。適切な模擬GB試験溶液は、0.01N HCl および0.1N HClを含む。使用環境への「投与」は、インビボの使用環境が口腔または胃腸管の場合は、摂取または多重粒子を送達する他の手段を意味する。使用環境がインビトロである場合は、「投与」は多重粒子を含有する組成物または投与剤形のインビトロ試験媒体への配置または送達を意味する。
【0020】
一つの実施態様において、使用環境における被覆多重粒子からの望ましい放出速度は以下のようである。通常、結晶型薬物単独から成る対照組成物と比較して、多重粒子は薬物の放出を遅らせる。非常に低い味の閾値を有する薬物はより長い遅延を必要とするために放出の遅延の長さは、不快な味の薬物の特性に依存する。一般に、多重粒子は好ましくは薬物の約20質量%未満を、より好ましくは薬物の約10質量%未満を使用環境へ投与の後最初の1分以内に放出し、そして好ましくは薬物の約25質量%未満を、より好ましくは薬物の約10質量%未満を使用環境へ投与の後最初の3分以内に放出する。しかしながら、多重粒子はまた、胃腸管内で実質的に即時の薬物の放出を提供する。したがって、少なくとも約70質量%、好ましくは少なくとも約80質量%、より好ましくは少なくとも約90質量%の薬物を、使用環境への投与後1時間以内に放出する。多重粒子は、上記の放出基準に適合するかどうか決定するために、10M KOH でpH 7.3に調整した0.05M KH2PO4
緩衝液である模擬MB試験溶液中で試験することができる。
【0021】
他の実施態様では、被覆していない多重粒子コアが難溶性の薬物を水性使用環境に速やかに放出する。したがって、被覆していない多重粒子コアは、少なくとも約50質量%で、好ましくは少なくとも約60質量%で、より好ましくは少なくとも約70質量%で、さらにより好ましくは少なくとも約80質量%で、そして最も好ましくは少なくとも約90質量%で、難溶性薬物を使用環境への投与後1時間以内に放出し、この使用環境は約5未満のpH(例えば、胃内使用環境)を有する。多重粒子コアは、0.01 M HCl、pH 2.0で、場合によって0.7質量% NaCl、および場合によって0.5質量% ポリソルベート80(ツイーンTM80として、ICIから市販されている)の模擬胃緩衝液(GB)試験溶液中で、37℃で試験することができる。多重粒子コアはまたMB中からGB中への移行試験で評価することもでき、そこでは多重粒子は最初にMB試験溶液(上述)に投与して、次いでGB試験溶液に投与される。そうした試験において、多重粒子コアは難溶性薬物を、上記の速度でGB試験溶液に投与後1時間以内に放出する。
【0022】
多重粒子
本発明の多重粒子は小さく、約1mmまでの被覆後の平均直径を有している。直径および体積の頻度を考慮したそのサイズの有用な指標は、体積加重平均直径である。体積加重平均は、ガウスのサイズ分布を仮定しており、約85%の粒子体積が報告したサイズの約30%以内に存在している。本願の被覆後の多重粒子は、好ましくは300ミクロン未満、より好ましくは250ミクロン未満の体積加重平均直径を有している。
【0023】
好ましい実施態様において、多重粒子は非常に小さい。本発明者は、被覆多重粒子を用いた圧縮型の咀嚼錠を形成するにあたっての一つの問題は、錠剤形成中にこの被覆が壊れる可能性であることを発見した。そうした投与剤形はしばしば硬質結晶性材料、例えば、微結晶性セルロース、スクロースもしくはキシリトールのような糖類、またはマンニトールもしくはソルビトールのようなポリオール類を含んでいる。そうした硬質結晶性材料を多重粒子へと圧縮することが、被覆の破壊または崩壊をもたらし、被覆により与えられた味マスキングを損なうと信じられている。さらに、大きな多重粒子の被覆は噛む間に破壊または崩壊する可能性がある。しかしながら、本発明者は、小さい多重粒子は圧縮または噛む間の被覆の破壊が比較的少ないことを発見した。好ましくは、そうした多重粒子は被覆後、200ミクロン未満、より好ましくは約150ミクロン未満の体積加重平均直径を有する。そうした多重粒子の被覆していないコアは、150ミクロン未満、より好ましくは約125ミクロン未満、さらにより好ましくは100ミクロン未満の体積加重平均直径を有する。そうした小さい多重粒子はまた、もし多少なりともなお感じられるとしても、口腔内でざらざらした感覚というよりは滑らかであるため、より患者に喜ばれる。
【0024】
薬物
コアは、非被覆コアの総量を基にして約65質量%までの、好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%、なおさらに好ましくは10〜25質量%、そして最も好ましくは15〜25質量%の量の薬物を含んでいる。薬物は結晶型または非晶型のいずれかであっていい。本発明は結晶性薬物であるために特に有用であることを見出しており、何故ならこの多重粒子を形成するために用いる方法は、工程を通して薬物の結晶特性を維持することが可能であるためである。結晶性薬物のために、多重粒子中の薬物は好ましくは「実質的に結晶性」であり、これは少なくとも70質量%の薬物が結晶性状態にあることを意味している。より好ましくは、薬物は、少なくとも80質量%が、最も好ましくは少なくとも90質量%が結晶性である。
【0025】
本発明の多重粒子で用いられる不快な味の薬物の例としては、これらに限定されないが、末梢神経、アドレナリン作用性受容体、コリン作用性受容体、神経系、骨格筋、心血管系平滑筋、血液循環系、シナプス部位、神経作用物質接合部位、内分泌およびホルモン系、免疫系、生殖器官系、オータコイド系、消化器および排泄系、オータコイドおよびヒスタミン系の阻害物質、に作用する無機または有機化合物を含んでいる。好ましい薬物のクラスは、これらに限定されないが、制酸剤、鎮痛剤、抗アルツハイマー病剤、抗狭心症剤、抗不安症剤、抗不整脈剤、抗動脈硬化症剤、抗細菌剤、抗生物質、抗凝固剤、抗けいれん剤、抗下痢剤、抗うつ剤、抗てんかん剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、抗高血圧剤、抗インポテンツ剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、抗肥満剤、抗精神病剤、抗咳剤、抗ウイルス剤、自己免疫疾患治療剤、ベータ遮断剤、血糖降下剤、心臓薬、コレステロール降下剤、コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤、トリグリセリド降下剤、認識促進剤、避妊薬、鎮咳剤、細胞毒物、充血除去剤、利尿剤、生殖泌尿器系疾患の薬物、パーキンソン病および関連する疾患の薬物、リューマチ性疾患で使用する薬物、催眠剤、グリコーゲン・ホスホリラーゼ阻害剤、ミネラル類、ビタミン類、脂質降下剤、ならびに性ホルモン類が含まれる。獣医用薬物もまた本発明による使用に適している。
【0026】
それぞれの指定された薬物は、その薬物の中立的な形態およびその製薬上受容できる形態を含むものと理解されるべきである。その「製薬上受容できる形態」は、全ての製薬上受容できる誘導体または変種、例えば、立体異性体、立体異性体混合物、鏡像異性体、溶媒和物、水和物、同形体(isomorphs)、多形体、仮晶体(pseudomorphs)、塩形態およびプロドラッグを意味している。薬物の特定の例は、アセトアミノフェン、アルブテロール、アミノグアニジン、アミノフィリン、アミトリプチリン、アモキシシリン、アンピシリン、アミオジピン、アスピリン、アジスロマイシン、バルビツール酸塩、ベルベリン、セチリジンを含むベンズヒドリルピペラジン類、カフェイン、パントテン酸塩、セファロスポリン類、クロラムフェニコール、クロルジアゼポキシド、クロロキン、クロフェニラミン、クロロプロマジン、シメチジン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、コデイン、デメロール、デキストロメトルファン、ジギトキシン、ジゴキシン、ジルチアゼム、ジフェンヒドラミン、ジフェニルヒダントイン、ドキサゾシン、ドキシルアミン、エレトリプタン、エノキサシン、エピネフリン、エリスロマイシン、エチレフリン、エチニジン、ファモチジン、フルコナゾール、グリピジド、グアイフェネシン、イブプロフェン、インデロキサジン、リドカイン、ロモチル、ロラタジン、ルピチジン、メクリジン、メタコリン、モルフィン、ネオスチグミン、ニフェンチジン、ニペロチジン、ニザチジン、オフロキサシン、パラセタモル、ペフロキサシン、ペニシリン、フェノバルビタール、フェノチアジン、フェニルブタゾン、フェニルプロパノールアミン、ピペミド酸、塩酸ピルブテロール、ピロキシカム、プレドニゾロン、プロプラノロール、プソイドエフェドリン、ピリドンカルボン酸抗菌剤類、ラニチジン、ロキサチジン、サリチル酸、セルトラリン、シルデナフィル、スピロノラクトン、スルバクタム・ナトリウム、スルフォンアミド類、スルフォチジン、スルピリン、スルタミシリン、テニダップ、テルフェナジン、テオフィリン、トリメトプリム、ツバチジン、バルデコキシブ、ザルチジン、およびゾニサミドを含んでいる。本発明による使用のために好ましい薬物は、セチリジンのようなベンズヒドリルピペラジン類、アジスロマイシン、エレトリプタン、バルデコキシブおよびカフェインを含んでいる。
【0027】
一つの実施態様において、薬物は難溶性薬物である。「難溶性薬物」の表現は、この薬物が生理的に関連するpH(すなわち、pH1〜8)で、約1mg/mLまたはそれ未満の、最小の水溶性を有することを意味している。この薬物は、約0.5mg/mL未満、約0.1mg/mL未満、およびさらに約0.05mg/mL未満のようにさらに水に難溶性であってもいい。一般に、この薬物は用量対水溶性比が10mLより大きく、そしてより典型的には100mLより大きく、ここで水溶性(mg/mL)は、アメリカ薬局方(USP)の模擬胃および腸緩衝液を含む、あらゆる生理的に関連する水溶液(すなわち、pH1〜8の溶液)で、mg単位の用量で観察される最小値である。したがって、用量対水溶性比は、用量(mg単位で)を水溶性(mg/mL単位で)で割ることで計算できる。代わりに、この薬物は6.5〜7.5のpH範囲の間で、約1mg/mL未満、より好ましくは約0.5mg/mL未満、およびさらにより好ましくは約0.1mg/mL未満の最小水溶性を有している。
【0028】
本発明の使用のために適切な難溶性薬物の特定の例は、アムロジピン、アジスロマイシン、セレコキシブ、ジギトキシン、ジゴキシン、ファモチジン、フルコナゾール、グリピジド、リドカイン、フェノバルビタール、プレドニゾロン、セルトラリン、クエン酸シルデナフィル、スピロノラクトンおよびバルデコキシブを含んでいる。
【0029】
膨潤剤
コアは、水性液体と接触したときに膨張する、水膨潤性の膨潤剤も含む。膨潤剤は典型的には、マトリクス材料および薬物とは別の相として存在する。膨潤剤は好ましくは、非被覆コアの質量を基にして、1〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%、より好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜30質量%、そして最も好ましくは10〜20質量%、存在している。
【0030】
膨潤剤の最初の要件は高度に膨張することである。一つの実施態様において、多重粒子は被覆を通して水を吸収するので、膨潤剤は被覆を破壊するために充分な量まで膨張しなければならない。膨潤剤は、この被覆が被覆の降伏点を越えて伸張しそして崩壊する、多重粒子の体積の十分な膨張を引き起こさなければならない。他の実施態様では、膨潤剤はコアを多数の小破片に分解するために充分な程度まで膨張する。好ましくは、膨潤剤は、胃内使用環境中で、体積で少なくとも約2のファクターで、より好ましくは少なくとも約3.5のファクターで、そしてさらに好ましくは少なくとも約5のファクターで膨張する。以下の試験は水膨潤性材料の膨潤比を決定するために用いることができる。膨潤剤は、13/32インチ金型を用いて圧縮物に圧縮され、錠剤は3〜16Kp/cm2の範囲の強度を有する。この圧縮材料は次に錠剤とほぼ同じ内径のガラスシリンダーに設置され、そして錠剤の体積が測定される。次いで、このガラスシリンダーを、脱イオン水中0.01M HClおよび0.12M NaClから成る模擬胃緩衝液で充たす。このグラスシリンダーおよび試験媒体は全て37℃の一定温度で平衡化する。錠剤の体積はいくつかの時間間隔で測定される。一定の高さに達した後の錠剤の体積と乾燥錠剤の体積との比が、材料の膨張比、または膨張ファクターである。
【0031】
さらに、膨潤剤は迅速に膨張しなければならない。一つの実施態様で、迅速な膨張は二つの理由で望ましい。最初に、多重粒子は薬物を速やかに患者の胃へ放出されなければならない。そのために、膨張は上記の放出速度以内に被覆が壊れるために充分な速さでなければならない。第二に、迅速な膨張は被覆を破壊するために必要である。膨潤剤があまりに遅く膨張すれば、被覆もまたゆっくり膨張し、壊れるより拡張するだろう。他の実施態様では、迅速な膨張は、上記の速度で薬物の放出を可能にしながらコアを多数の小断片に確実に速やかに崩壊させるために望ましい。上記の試験を用いて、膨張が起こる速度が測定されるだろう。好ましくは、膨張材料は、胃内使用環境で1時間以内に、より好ましくは約30分以内に、および最も好ましくは約15分以内に、少なくとも約2のファクターで、体積膨張する。
【0032】
最後に、膨潤剤はまた融解したマトリクス材料(下記)と混合して流動性を有する懸濁液を生成できなければならない。膨潤剤は、コアが水を吸収したときに、膨潤剤が膨張しそして被覆を破壊するかまたはコアを崩壊するように、コア中で別の相で存在しなければならない。好ましくは、膨潤剤はコア中には溶解しない。したがって、多重粒子を融解方法により形成されたときに、膨潤剤は融解したマトリクス中で懸濁した固形物にとどまっている。もし膨潤剤が溶解した場合は、コアが凝結したときに比較的純粋な膨潤剤の大きなドメインへ相分離しなければならない。
【0033】
高度に膨張しそして迅速に膨潤する膨潤剤の例には、スターチ・グリコール酸ナトリウム(Edward Mendell Co.からEXPLOTABとして購入可能)、クロスカルメロースナトリウム(FMCコーポレーション、フィラデルフィア、ペンシルバニア、からAC-DI-SOLとして購入可能)、およびクロスポビドンのような重合体を含む。これらの重合体もまた融解したマトリクス中で分離した固形相にとどまることができる。
【0034】
マトリクス材料
コアはマトリクス材料も含んでいる。マトリクス材料は二つの機能を果たす。最初に、マトリクス材料は水膨潤性の膨潤剤および結晶性薬物を共に結合する。第二に、マトリクスは非被覆コアを、被覆しやすい比較的平滑で、丸い球体へと成形させることができる。マトリクス材料は以下の物理的性質を有する:マトリクスは好ましくは薬物より低い温度で溶解する;薬物を実質的に溶解させない;下に詳述するように、融解状態でミクロスフェアを形成するために十分な低粘度を有する;そしてその融点以下に冷却したとき速やかに凝固して固体になる。
【0035】
本発明の方法により製造される多重粒子コアは25℃で固体であるが、マトリクス材料の連続的相内でカプセル化された、本質的に、薬物粒子、膨潤剤粒子、および場合によって他の賦形剤である。このために、不規則な形状のものより慣用の被覆方法でより簡単に被覆される、平滑で球状の多重粒子を形成する薬物と膨潤剤をカプセル化するために、十分量のマトリクス材料が存在しなければならない。マトリクスは好ましくは、非被覆コアの質量を基にして約30〜95質量%、より好ましくは50〜60質量%存在している。
【0036】
マトリクス材料または材料の混合物は25℃で固体であるが、薬物の融点より低い融点を持たなければならない。「融解する」という用語は一般に結晶性材料の、融点で生じる結晶性から液体状態への転移を意味し、そして「融解した」という用語は一般に液体状態にあるそうした結晶性材料を意味し、本願で用いられている、これらの表現はより広く用いられている。「融解する」の場合は、この用語はあらゆる材料または材料の混合物を、液体状態の結晶性材料に類似した様式で汲み上げたり霧状にしたりできるという意味で、液体になるように十分に加熱することを意味している。同様に「融解した」はそうした液体状態にあるあらゆる材料または材料の混合物を意味している。薬物の融点より低い融点を有するマトリクス材料を選択することによって、融解した混合物が薬物の融点以下の温度で製造できる。このことにより、薬物はミクロスフェアへと形成されている間に実質的に結晶のままで残ることができる。好ましくは、マトリクス材料は、薬物の融点より10℃低い、より好ましくは薬物の融点より20℃低い、およびさらにより好ましくは薬物の融点より30℃低い温度で融解される。
【0037】
さらに、薬物は融解したマトリクス材料中で低い溶解性を有するべきである。薬物を溶解することは、最終のミクロスフェア中で薬物の結晶度を減少でき、そしてその化学的および物理的安定性を折衷させる。薬物は融解したマトリクス材料中で、約30質量%未満、より好ましくは約20質量%未満、およびさらにより好ましくは約10質量%未満の溶解性をもたなければならない。
【0038】
マトリクス材料または材料の混合物はまた、その融解温度より低くまで冷却したとき、速やかに固体材料を形成できなければならない。融解した混合物を下記のように霧化するとき、融解混合物の小滴は、噴霧器と回収器具の間を飛行する間に、冷却しそして固化しなければならない。この時間的間隔は約0.1〜60秒であっていい。したがって、マトリクス材料は、小滴の冷却と固化の速度がこの時間間隔以内に固化が生じるために十分大きいように選択されなければならない。非晶性のマトリクス材料に関して、マトリクス材料は、融解したマトリクス材料が霧化の間に冷却する温度より高いガラス転移温度を有するべきである。融解材料は室温で冷却し保存できるので、マトリクス材料は好ましくは少なくとも40℃の、より好ましくは少なくとも50℃の、そしてさらにより好ましくは少なくとも60℃のガラス転移温度を有する。これにより、融解マトリクス材料は、霧化の間に冷却されるときに、流体可能なものから硬くガラス状への変化を生じる。結晶化できるマトリクス材料について、望ましい特性は、霧化の間にその融点より低くまで冷却されるときに、速やかに固体に結晶化するマトリクス材料に関するものである。
【0039】
例示的なマトリクス材料は、高度に精製した形態の蝋類、例えば、カルナバ蝋、白色および黄色蜜蝋、微結晶性蝋、およびパラフィン蝋;長鎖アルコール類、例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、およびポリエチレングリコール;ポロキサマー類;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;長鎖脂肪酸エステル類(脂肪としても知られている)、例えば、モノオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン、ポリエトキシル化カスター油誘導体、モノ−、ジ−、およびトリアルキルグリセリド(モノ−、ジ−、およびトリベヘネートグリセリンの混合物を含む)、トリステアリン酸グリセリン、トリパリミチン酸グリセリン、および水素化植物油(水素化綿実油を含む);グリコール化脂肪酸エステル類、例えば、ステアリン酸ポリエチレングリコールおよびジステアリン酸ポリエチレングリコール;短〜中鎖脂肪酸エステル類、例えば、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、クエン酸トリエチル、レシチン、トリアセチン、およびセバシン酸ジブチル;ポリソルベート類;カルボン酸類、例えば、ステアリン酸、安息香酸、クエン酸、フマル酸、乳酸、およびマレイン酸;ならびにそれらの混合物を含んでいる。特に好ましいマトリクス材料は、アルキル含有グリセロール、例えば、モノ−、ジ−、およびトリベヘン酸グリセリンの混合物(Gattefoseコーポレーション、ウエストウッド、ニュージャージー、からCOMPRITOL 888として市販されている);ならびに、水素化綿実油(Edward Mendell Co.、パターソン、ニューヨーク、からLUBRITABとして市販されている)である。マトリクス材料は上記のいずれの混合物のような、材料の混合物をも含むことができる。
【0040】
賦形剤
コアはまた、非被覆コアの質量を基にして0〜40質量%の量でコア中に存在する各種の賦形剤を含むことができる。
好ましい賦形剤は、溶解促進剤であって、コアによる水の取り込みおよび膨潤剤の膨張の速度を亢進させるために使用することができる。この溶解促進剤はマトリクス材料と分離した相または単一相で存在できる。好ましくは、溶解促進剤の少なくとも一部はマトリクス材料から相分離している。図1に示すように、溶解促進剤18はマトリクス材料14内に分離相として存在し、マトリクス材料の全体に孔またはチャネルを形成している。図2に示すように、水がコア12に入り込むとき、溶解促進剤は溶解し、チャネルを拡張しそして水をより速やかにコア中に浸入させ、膨潤剤16を膨張させる。
【0041】
一般に、溶解促進剤は両親媒性化合物であり、通常マトリクス材料より親水性が大きい。溶解促進剤の例は、アルコール類、例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、およびポリエチレングリコール;ポリオキサマー類;ドキュセート塩類;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンアルキルエステル類;ポリオキシエチレンカスター油誘導体;ポリソルベート類;ラウリル硫酸ナトリウム;ソルビタンモノエステル類;モノ−、ジ−およびトリ−アルキルグリセリドの混合物、および、ポリエチレングリコールの一および二脂肪酸エステル類;糖類、例えば、グルコース、キシリトールおよびマルチトール;塩類、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウムおよびリン酸カリウム;アミノ酸類、例えば、アラニンおよびグリシン;ならびにそれらの混合物を含んでいる。好ましい界面活性剤型の溶解促進剤はポロキサマー(BASF Corp.からLUTROL またはPLURONICシリーズとして市販されている)である。
【0042】
コアは他の選択的賦形剤、例えば、多重粒子からの薬物の放出を抑制または遅延させる薬剤を含むことができる。そうした溶解阻害剤は一般に疎水性であり、そしてフタル酸ジアルキル、例えば、フタル酸ジブチル、ならびに炭水化物蝋、例えば、微結晶蝋およびパラフィン蝋を含んでいる。
【0043】
賦形剤の他の有用なクラスは、多重粒子を形成するために用いる融解した仕込み(feed)の粘度を調節するために使用できる材料を含む。そうした粘度調節用賦形剤は通常、非被覆多重粒子の総量を基にして多重粒子の0〜25質量%を占めるだろう。融解した仕込みの粘度は、狭い粒子径分布の多重粒子を得るための重要な変数である。例えば、スピニング−ディスク噴霧器を用いた時、融解混合物の粘度は少なくとも約1cpおよび約10,000cp未満、より好ましくは少なくとも約50cpおよび約1000cp未満であることが好ましい。融解混合物がこの好ましい範囲を外れている場合は、粘度調節剤を好ましい粘度範囲以内の融解混合物を得るために加えることができる。粘度低下用の賦形剤の例は、ステアリルアルコール、セチルアルコール、低分子量ポリエチレングリコール(すなわち、約1000ダルトン未満)、イソプロピルアルコール及び水等である。粘度増加用賦形剤の例は、微結晶蝋、パラフィン蝋、合成蝋、高分子量ポリエチレングリコール(すなわち、約5000ダルトンより大きい)、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、二酸化ケイ素、微結晶セルロース、ケイ酸マグネシウム、糖類および塩類が含まれる。
【0044】
他の賦形剤は多重粒子の放出特性を調節するため、または工程を改良するために加えることができ、典型的には非被覆多重粒子の総量を基にして多重粒子の0〜50質量%を占めるだろう。例えば、水性使用環境内で薬物の放出される速度を修正するために、酸または塩基を組成物の中に加えることができる。組成物に含めることができる酸または塩基の例は、クエン酸、アジピン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、二および三塩基リン酸ナトリウム、二および三塩基リン酸カルシウム、モノ、ジ、およびトリエタノールアミン、重炭酸ナトリウム、およびクエン酸ナトリウム二水和物が含まれる。さらに他の賦形剤を多重粒子の静電荷を減じるために加えることができる。そうした静電防止剤の例は、タルクおよび二酸化ケイ素を含む。矯味矯臭剤、発色剤、および他の賦形剤もまたそれらの通常の目的のために通常の量で加えることができる。
【0045】
好ましい実施態様において、非被覆コアの構成成分は好ましくは、コアの総量を基にして以下の量で存在している:
(i) 薬物は65質量%まで、より好ましくは5〜50質量%、さらにより好ましくは10〜40質量%、なお好ましくは10〜25質量%、そして最も好ましくは15〜25質量%;
(ii)膨潤剤は1〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%、さらにより好ましくは5〜30質量%、なお好ましくは10〜30質量%、そして最も好ましくは10〜20質量%;
(iii)マトリクス材料は30〜95質量%、より好ましくは30〜85質量%、さらに好ましくは40〜70質量%;および
(iv)場合によって溶解促進剤は0〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%。
【0046】
コアの形成
コアを形成するために用いられる方法は、(a)薬物および他のコア構成成分を含む融解混合物を形成する、(b)工程(a)の融解混合物を霧化して小滴を形成する、そして(c)工程(b)からの小滴を凝固させてコアを形成する、各工程を含んでいる。
【0047】
マトリクス材料、薬物、膨潤剤および他の任意のコア構成成分を組み合わせて、薬物と膨潤剤が懸濁している融解混合物を形成する。先に述べたように「融解混合物」は、混合物が十分に流動性を有するようになり、混合物が小滴に形成でき、または霧化できる点まで、熱、圧力または剪断力によって処理される混合物を意味する。一般に、混合物は、それが圧力、剪断力および遠心力(例えば、遠心機またはスピニング−ディスク噴霧器で発生するもの)に付したときに流動するだろうという意味で、融解している。したがって、混合物が全体で霧化できる充分に流動的であるときに、混合物が「融解した」と考えていい。
【0048】
融解混合物の温度は、薬物の融点よりは低いが融解混合物を形成するためには充分高い温度に維持する。さらに、融解マトリクスの温度はマトリクス材料中での薬物の溶解度が30質量%未満になるように充分低くなければならない。
【0049】
実質的には、いかなる方法も融解混合物を形成するために使用することができる。一つの方法はタンク中のマトリクス材料を流動体になるまで加熱し、そして薬物と膨潤剤を加えることを含んでいる。一般に、マトリクス材料は流動体になる温度の約10℃またはそれ以上の温度まで加熱される。代わりに、薬物とマトリクス材料の両方をタンクに加え、そして融解混合物が流動体になるまで加熱することもできる。
【0050】
融解混合物を製造する代わりの方法は二つのタンクを用いることであり、最初のマトリクス材料を一つのタンクで次いで第二のものを他で融解する。薬物はそれらのタンクの一つに加えられ、そして上記のように混合される。この二つは融解し次にインラインの静的混合機または押出し機を通して汲み上げられ、下記の霧化工程に進める単一の融解混合物を与える。
【0051】
いったん融解混合物が流動体になり薬物が加えられたら、薬物がその中で実質的に均一に分布していることを確実にするために混合物を混合する。混合は通常機械的手段、例えば、オーバーヘッド混合機、磁力駆動型混合機および回転棒、惑星型混合機、ならびにホモジナイザーを用いて行われる。場合によっては、タンクの内容物はインラインの静的混合機または押出し機を通してタンクから汲み上げられ、そしてタンクに戻すことができる。融解混合物を混合するために用いる剪断量は、薬物が融解混合物中で実質的に均一な分布をすることを確実にするため充分高くなければならない。しかしながら、剪断は薬物の形態が変化する、すなわち結晶性薬物の一部を非晶性にしたり、または薬物の新しい結晶形態に変化させたりするほどには高くないこと、が好ましい。一般に、混合時間を、結晶性薬物が実質的に融解混合物中全体に均一になるように懸濁するために必要な最小量の近辺に制限することが好ましい。
【0052】
融解混合物を製造するために用いることのできる他の方法は、連続的に攪拌するタンク系を使用することである。この系において、融解混合物を連続的にタンクから取り出しながら、薬物およびマトリクス材料を連続攪拌する手段を備えた加熱タンクへ連続的に加える。薬物は典型的にはまた固体形態で加えることができ、そしてタンクへ加える前に予備加熱することができる。マトリクス材料はまた、連続的攪拌タンク系に加える前に、予備加熱され、または予備融解することができる。多くの種類の混合方法をそうした系、例えば前記の系で使用できる。
【0053】
融解混合物はまた連続ミル、例えばダイノ(R)ミル、を用いて形成することができ、固形薬物および担体を、粉砕媒体、例えば直径が0.25〜5mmのビーズ、を含むミルの粉砕チャンバに供給する。粉砕チャンバは典型的には、加熱または冷却流体をチャンバの周囲に循環させるジャケットで覆われ、チャンバの温度を制御する。融解混合物は粉砕チャンバ中で形成され、そして分離器を通してチャンバから排出し、粉砕媒体を融解混合物から除去する。
【0054】
融解混合物を形成する特に好ましい方法は、押出機(extruder)によるものである。「押出機」という用語は、加熱および/または剪断力により融解した押出物(extrudate)を製造するか、および/または固体および/または流体(例えば、融解した)仕込み(feed)から均一に混合した押出物を製造する機器または機器の集合を意味する。そうした機器には、これらに限定されないが、単一スクリュー型押出機;ツインスクリュー型押出機、例えば共回転型、反対回転型(counter-rotating)、互いにかみ合う型(intermeshing)、および、互いにかみ合わない型(non-intermeshing)の押出機;多スクリュー型押出機;加熱したシリンダと融解した仕込みを押出すピストンから成るラム型押出機(ram extruders);融解仕込みを同時に加熱し汲み上げている、通常対向回転している(counter-rotating)加熱したギアポンプから成るギアポンプ型押出機;ならびに、コンベア型押出機が含まれる。コンベア型押出機は、固形および/または粉末化仕込みを輸送するコンベア手段(例えばスクリューコンベアまたはニューマッチコンベア)、ならびにポンプを含んでいる。コンベア手段の少なくとも一部分は、融解混合物を製造するために十分な高い温度まで加熱されている。融解混合物は場合によっては、融解混合物を噴霧器に送るポンプへ進む前に蓄積タンクに送ってもいい。場合によっては、ポンプの前または後で、融解混合物が実質的に均一であることを確実にするためにインラインの混合機を用いることができる。それらの各押出機において、融解混合物は均一な混合押出物を形成するために混合される。そうした混合は、各種の機械的および加工手段、例えば混合エレメント、混練エレメント、および逆流による剪断混合、により実施できる。したがって、そうした機器において、組成物は、噴霧器に送ることができる融解混合物を製造する押出機に供給される。
【0055】
一つの実施態様において、組成物は固形粉末の形態で押出機に供給される。粉末化されたフィード物は、当該分野で周知の、高い内容物の均一性を有する粉末化混合物を得るための方法により製造できる。Remington's Pharmaceutical Sciences (16th ed. 1980) を参照する。一般に、均一な混合物を得るために、薬物と担体の粒子径は類似していることが望ましい。しかしながら、このことは本発明を成功裏に実施するためには必須ではない。
【0056】
いったん融解混合物が形成されたら、それは、融解混合物、またはフィード物、を小滴まで破壊する噴霧器に送られる。実質的に、融解混合物を噴霧器に送達するためのあらゆる方法、例えば、ポンプ、および、加圧容器またはピストンポットのような各種の圧空機器(pneumatic devices)が使用できる。融解混合物を製造するために押出機を用いたときに、押出機それ自体、融解混合物を噴霧器に送るために使用することができる。典型的には、融合混合物の固化を防止し、融解混合物の流動性を保つために、この混合物を噴霧器に送達している間は、融解混合物を高められた温度で維持する。
【0057】
霧化は多くの方法で行うことができ、それには(1)「加圧」もしくは単一流体ノズルによるもの;(2)二流体ノズル(two-fluid nozzle)によるもの;(3)超音波ノズルによるもの;(4)機械的振動型ノズルによるもの;または(5)遠心型もしくはスピニング−ディスク噴霧器によるもの、が含まれる。霧化方法の詳細な説明は、Lefebvre, Atomization and Sprays (1989) および Perry's Chemical Engineers' Handbook (7th Ed. 1997) において見出すことができ、その開示は参照により本願に組み入れられる。
【0058】
通常、融解混合物を高圧でオリフィスへ送る加圧ノズルには多くの型とデザインがある。融解混合物は、フィラメント、またはフィラメントへと分解するシートとして開口部から出て、続いて小滴に分解する。加圧ノズルを横切る操作圧降下は1barg〜70bargの範囲であり、融解フィード物の粘度、オリフィスのサイズ、および多重粒子の所望のサイズに依存している。
【0059】
二流体ノズルにおいて、融解混合物を霧化するために十分な速度で流れている、ガス流(典型的には、空気または窒素)と融解混合物とを接触させる。内部混合型構成では、融解混合物およびガスは、ノズルのオリフィスから放出される前に、ノズルの内側で混合する。外部混合型構成では、ノズルの外部の高速ガスが融解混合物と接触する。そうした二流体ノズルを横切るガスの圧降下は0.5barg〜10bargの範囲である。
【0060】
超音波ノズルでは、超音波周波数で振動する変換機およびホーン(horn)を通してまたはその上に供給され、融解混合物を小滴まで霧化する。機械的振動ノズルでは、融解混合物は、制御された周波数で振動しているニードルを通して供給され、融解混合物を小滴まで霧化する。両方の場合に、製造された粒子径は、流体の流速、超音波または振動の周波数、およびオリフィスの直径により決定される。
【0061】
霧化の好ましい方法は遠心型噴霧器によるもので、これは回転型噴霧器またはスピニング−ディスク噴霧器としても知られ、それにより融解混合物が回転する表面上に供給され、そこで遠心力により散開する。回転する表面は各種の形態をとることができ、その例には平面ディスク、カップ、羽根付ディスク、および溝付ホイール(slotted wheel)が含まれる。ディスクの表面はまた多重粒子の形成を促進するために加熱することができる。霧化のいくつかの機構が平面ディスクおよびカップ遠心型噴霧器で観察され、ディスクへの融解混合物の流れ、ディスクの回転速度、ディスクの直径、フィード物の粘度、ならびにフィード物の表面張力および密度に依存している。低い流速では、融解混合物はディスクの表面全体に展開し、ディスクの端に到達したとき、分離した小滴を形成し、次いでディスクから飛散する。ディスクへの融解混合物の流れが増加すれば、混合物は、分離した小滴というよりはフィラメントとして、ディスクから離れる傾向がある。フィラメントは続いてほとんど均一なサイズの小滴に分解していく。高い流速であっても、融解混合物はディスク縁から薄い連続シートとして離れていき、続いて不規則なサイズのフィラメントおよび小滴に崩壊していく。回転する表面の直径は、通常、2cmから50cmの範囲であり、そして回転速度は500rpmから100,000rpmまたはそれ以上であり、多重粒子の所望のサイズに依存する。
【0062】
いったん融解混合物が霧化すれば、通常、小滴の固化温度未満の温度でガスまたは液体と接触することにより、小滴が凝固する。典型的には、小滴は約60秒未満、好ましくは約10秒未満、さらに好ましくは約1秒未満で凝固することが望ましい。凝固工程はしばしば閉鎖空間中で行われ、多重粒子の回収を容易にする。そうした場合、凝固媒体(ガスまたは液体のいずれか)の温度は、小滴が閉鎖空間に導入されるにしたがって時間をかけて上昇するだろう。したがって、冷却ガスまたは液体はしばしば閉鎖空間を通して循環し、一定の凝固温度に維持する。
【0063】
多重粒子のコアは好ましくは融解−凝固方法により作成され、この方法には、マトリクス材料を融解しその中に薬物、膨潤剤および場合によって溶解促進剤を分散させる工程、ならびに、そうして形成した融解物を霧化装置に送る工程を含み、この霧化装置は好ましくは回転ディスク噴霧器であり、1500から8000rpm、好ましくは2500から6500rpmで運転し、それにより融解物の小滴が形成され、そして遠心力により冷却チャンバの中に放射状に分散され、そこで速やかに熱を失い、そして小さい、通常は球形の粒子に凝結していく。
【0064】
被覆
一つの実施態様では、被覆20は、水透過性で実質的に薬物は不透過性の、口腔または胃内使用環境において、水を基にした流体の吸収を可能にできる重合体を含んでいる。被覆は、被覆が壊れていないときに口腔または頬内の使用環境への薬物の放出が最小になるような、低い薬物透過性を有している。被覆は、通常、非被覆コアの質量の10〜60質量%、好ましくは15〜50質量%、そしてさらに好ましくは20〜40質量%の量で存在している。被覆の重要な特性は、単にコアと共に拡張するのではなく、コアが膨張したときに壊れるという、十分に低い展性(ductility)と引張強度を有していることである。そしゃく錠のような圧縮型投与剤形で用いるときの被覆のさらなる特性は、圧縮の間に損傷に耐える十分な強度と展性があることである。
【0065】
味マスキングを提供するために、被覆材料は、実質的に水不溶性であるか(周囲温度で、0.1mg/ml未満の水への溶解性を意味する)または、被覆のかなりの部分が溶解する前に被覆が壊れるように、十分に遅い水への溶解度を有するかのいずれかでなければならない。好ましい水不溶性の被覆は、エチルセルロースのようなセルロースエーテル類、ポリメタクリレート類、ポリアルケン類、ポリエーテル類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリスチレン類、ポリビニルエーテル類、ポリビニルハロゲン化物類、パラフィン蝋、微結晶蝋、および合成蝋を含んでいる。特に好ましいセルロースエーテルはエチルセルロース(コロルコン社、ウエストポイント、ペンシルバニア、からSURELEASEとして市販されている)である。特に好ましいポリメタクリレートはアクリル酸エチルとメタクリル酸メチルの2:1共重合体(ローム・ファーマ、ダルムシュタット、ドイツ、からEUDRAGIT NEとして市販されている)である。Eudragit NE30D を用いた例示的な被覆溶液は12.5%のポリ(アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル)、10%タルク、および77.5%の水を含む。最終的な乾燥被覆(水を除去した)の組成物は55%のポリ(アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル)、および45%タルクである。
【0066】
他の実施態様では、被覆は抗腸溶性被覆である。「抗腸溶性」被覆は、約6より大きいpHの水溶液中で10mg/mL未満の溶解性を有し、そして約5より小さいpHの水溶液中で10mg/mLを超える溶解性を有する製薬的に受容できる重合体を含む被覆を意味する。適切な抗腸溶性重合体には、例えばメタクリル酸アミノアルキルの共重合体、例えばメタクリル酸ブチル/メタクリル酸(2−ジメチルアミノエチル)/メタクリル酸メチル共重合体(例えば、ローム・ファーマ、ダルムシュタット、ドイツ、で製造されたEudragit(R)E)およびジエチルアミノ酢酸ポリビニルアセタール(例えば、三共、東京、日本で製造されたAEATM)が含まれる。Eudragit(R)Eを用いた例示的な被覆溶液は、8質量%のEUDRAGIT(R) E PO、55質量%のイソプロピルアルコール、および37質量%のアセトンを含んでいる。
【0067】
被覆溶液はまた、孔形成剤、非溶媒、または可塑剤を、被覆溶液を形成するために用いる条件で重合体が実質的に可溶性のままであるかぎり、および、最終的な被覆が水透過性のままでそしてコアが膨張した結果壊れるかぎり、あらゆる量で含むことができる。孔形成剤および被覆を加工する際のそれらの使用は米国特許第5,612,059号および第5,698,220号に記載されており、それに関連する開示は本願に組み込まれる。本願で用いる「孔形成剤」という用語は、被覆溶液に加える材料であって、溶媒に比べて揮発性が低いか全くなく、被覆工程に続いて被覆の一部分のままで残るが、水性の使用環境において十分に水膨潤性または水溶性であって、水が充填したまたは水で膨潤したチャネルまたは「孔」を形成して水の透過を可能にし、それにより被覆の水透過性を亢進するような材料を意味する。適切な孔形成剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、PVP、PEO、HEC、HPMCおよび他の水溶性のセルロース誘導体(cellulosics)、水溶性アクリル酸またはメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ならびにそれらの水可溶性または水膨潤性重合体の各種の共重合体および混合物を含んでいる。このクラスの重合体には、酢酸フタル酸セルロース(CAP)およびHPMCASのような腸溶性重合体が含まれる。
【0068】
被覆溶液はまた被覆の空隙率を増加させる非溶媒(non-solvent)を含むことができる。「非溶媒」という用語は、被覆溶液に加えて、被覆溶液中に実質的に溶解し、溶媒中の被覆重合体(単独または複数の)の溶解性を減少させるような、あらゆる材料を意味する。有孔被覆は有孔でない同重量の同一組成物からなる被覆よりも大きい水透過性を有しており、そしてこの有孔性は、非溶媒が揮発性であるとき典型的であるように孔がガスで充満されているとき、被覆の密度(質量/体積)の減少により示される。孔形成のいかなる特定の機構にも拘束されることを望まないが、非溶媒の追加は、溶媒が揮発する間に、被覆溶液が固化の前に液相−液相分離を起こさせることによって、被覆に有孔性を与えると通常信じられている。適切な非溶媒は、溶媒中で適切な溶解性を有し、溶媒中での被覆重合体の溶解性を低下させる、あらゆる材料である。好ましい非溶媒は選択された溶媒および被覆重合体に依存する。揮発性の極性被覆溶媒、例えばアセトンまたはメチルエチルケトンを用いた場合に、適切な非溶媒には、水、グリセロール、エチレングリコールおよびその低分子量オリゴマー(例えば、約1,000ダルトン未満)、プロピレングリコールおよびその低分子量オリゴマー(例えば、約1,000ダルトン未満)、C1〜C4アルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)、酢酸エチル、アセトニトリル等が含まれる。
【0069】
被覆溶液は、慣用の可塑剤、例えば、フタル酸ジブチル;セバシン酸ジブチル;フタル酸ジエチル;フタル酸ジメチル;クエン酸トリエチル;安息香酸ベンジル;脂肪酸のブチルおよびグリコールエステル;鉱油;オレイン酸;ステアリン酸;セチルアルコール;ステアリルアルコール;ヒマシ油;コーンオイル;ココナッツオイル;および樟脳油;ならびに他の賦形剤、例えば抗粘着剤(anti-tack agents)、滑択剤、等を含むことができる。可塑剤としては、クエン酸トリエチル、ココナッツオイルおよびセバシン酸ジブチルが特に好ましい。
【0070】
被覆は、溶媒を基礎とする方法および熱融解被覆方法を用いて形成することができる。溶媒を基礎とする方法では、被覆は、溶媒、被覆材料および場合によって被覆添加物を含む、溶液または懸濁液を最初に生成することにより製造される。被覆材料は、完全に被覆溶媒に溶解してもよく、または、乳液または懸濁液またはそれらの混合物のように、溶媒中に分散するだけでもいい。ラテックス分散液は、溶媒を基礎とする被覆方法で使用可能な乳液または懸濁液の例である。一つの局面で、溶媒は室温で液体である。好ましくは、溶媒は揮発性溶媒であり、これは溶媒が周囲圧で約150℃未満の沸点を有することを意味するが、より高い沸点を有する少量の溶媒を揮発性溶媒と混合することもでき、それによっても受容できる結果が得られる。被覆への適用で使用するために適切な溶媒の例は、アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノールの異性体およびブタノールの異性体;ケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトン;炭化水素類、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、およびオクタン;エーテル類、例えばメチルt−ブチルエーテル、エチルエーテル、およびエチレングリコールモノエチルエーテル;炭化塩素類、例えばクロロホルム、二塩化メチレン、および二塩化エチレン;テトラヒドロフラン;ジメチルスルホキシド;N−メチルピロリジノン;アセトニトリル;水;ならびに、それらの混合物を含んでいる。
【0071】
被覆は慣用方法、例えば、パン型被覆機、回転造粒機および流動床被覆機、例えばトップ噴霧、タンジェンシャル噴霧、またはボトム−噴霧(ビュルスター(Wuerster)被覆)により行うことができるが、最も好ましいのは後者である。
【0072】
被覆を形成するための好ましい溶媒を基礎とした方法において、ビュルスター流動床系が用いられる。この系では、円筒形の仕切り(ビュルスターカラム)が、装置中の円錐形生成物収納容器の内側に設置される。空気が、生成物収納容器の底に置かれた分配プレートを介して通過し、多重粒子を流動化させ、大部分の上方に移動する空気はビュルスターカラムを介して通過する。多重粒子はビュルスターカラム中に引き込まれ、そこには被覆溶液を上方に噴霧する霧化ノズルが備えられている。多重粒子はビュルスターカラムを介して通過するときに被覆され、被覆溶媒は多重粒子がカラムを出るときに除去される。本発明の多重粒子コアは、普通は、他の方法で作成した多重粒子より小さいので、より凝集しやすく、そして静電荷の集結が起こりやすい。均一な被覆を成功裏に適用するために、そうした静電荷を減少させるためには、流動ガスの湿潤化が助けになる。他の工程変数、例えば流動ガスの流速、空気分配プレートのデザイン、およびビュルスターカラムの高さは、全て、流動化の質を最適化しそして凝集を最小限にするために調節できる。被覆直後またはそれらがまだ被覆装置の中にある間に、タルクのような滑択剤を多重粒子上へ乾燥混合することは、被覆中の凝集を防止する他の方法である。
【0073】
トップ噴霧方法もまた被覆を適用するために用いることができる。この方法では、被覆溶液は流動化コア上に吹き付けられる。溶媒は被覆コアから蒸発し、そして被覆コアは装置中で再度流動化される。被覆は所望の被覆厚さに達するまで続けられる。
【0074】
被覆は熱融解技術を用いて適用することもできる。この方法では、被覆賦形剤および添加物は最初に融解され、次にコア上に噴霧される。典型的には、熱融解被覆は、トップ噴霧配列を備えた流動床で適用される。
【0075】
コアに熱融解被覆を適用する他の方法は、修正した融解凝結方法を用いることである。この方法では、コアは融解した被覆用賦形剤に懸濁させ、このコアの融点は被覆賦形剤の融点より高い。この懸濁液は次に、被覆賦形剤で囲まれたコアを含む小滴へと形成される。小滴は、典型的には例えばロータリーまたはスピニング−ディスク噴霧器のような噴霧器によって形成される。小滴は次に冷却され、被覆を凝結し、被覆多重粒子を形成する。
【0076】
投与剤形
多重粒子は、経口的に摂取されるあらゆる公知の投与剤形、例えば;粉剤または顆粒剤;錠剤;咀嚼錠;カプセル剤;時には当該分野で「サッシェ剤」または「構成用経口粉剤」(OPC)と呼ばれる単位用量小包;シロップ剤;および懸濁剤、を用いて投与できる。投与剤形が、患者への投与時に多重粒子が液体中で懸濁しているOPC、シロップ剤、懸濁剤等であるときは、多重粒子が投与剤形中または患者の口腔中で破裂も崩壊もしないように、投与剤形は患者に速やかに投与される。
【0077】
当該分野で周知である賦形剤を含む、慣用の製剤用賦形剤が本発明の組成物で使用できる。一般に、充填剤、崩壊剤、色素、結合剤、滑沢剤、潤滑剤、矯味矯臭剤等のような賦形剤を慣用方法のために、組成物に有害な影響を及ぼさない典型的な量で使用される。組成物を、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、懸濁用粉剤等に製剤化するために、多重粒子組成物が形成された後にこれらの賦形剤を使用することができる。
【0078】
追加の味マスキング剤の例には、アスパルタム、圧縮可能な砂糖、デキストレート、乳糖、マンニトール、麦芽糖、サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびキシリトールのような甘味剤、ならびに、バナナ、サクランボ、ユーカリ油、メントール、オレンジ、ハッカ油、ラズベリー、イチゴ、スイカおよびセイヨウミザクラ(wild cherry)のような矯味矯臭剤が含まれる。
【0079】
投与剤形の賦形剤、充填剤または希釈剤の例には、乳糖、マンニトール、キシリトール、デキストロース、蔗糖、ソルビトール、圧縮可能な砂糖、微結晶セルロース、粉末化セルロース、デンプン、アルファ化デンプン、デキストレート、デキストラン、デキストリン、デキストロース、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、二塩基リン酸カルシウム、三塩基リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ポリエチレンのようなポロキサマー、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0080】
界面活性剤の例には、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート80を含む。
【0081】
崩壊剤の例には、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(ポリビニルポリピロリドン)、メチルセルロース、微結晶セルロース、粉末化セルロース、デンプン、アルファ化デンプン、およびアルギン酸ナトリウムを含む。
【0082】
錠剤結合剤の例には、アカシア、アルギン酸、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアールガム、水素化植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、液体グルコース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ポビドン、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、蔗糖、トラガカント、およびゼインを含む。
【0083】
潤滑剤の例には、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、パルミトステアリン酸グリセロール、水素化植物油、軽鉱質油、ステアリン酸マグネシウム、鉱質油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルクおよびステアリン酸亜鉛が含まれる。
【0084】
滑沢剤の例には二酸化シリコン、タルクおよびトウモロコシデンプンが含まれる。
【0085】
経口投与のためのそしゃく錠は好ましい投与剤形である。そうした投与剤形は、多重粒子を圧縮可能な砂糖、微結晶セルロースのような充填剤、崩壊剤および矯味矯臭剤と組み合わせて製造することができる。これらの成分は一緒に混合でき、続いてステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤を加え、続いてさらに混合してもよい。錠剤混合物は圧縮されてもよく、硬度が1〜9kPの錠剤が得られる。
【0086】
さらなる努力なしに、上記の記述を用いて、本発明をその最も完全な程度まで当業者は、利用できると信じられる。したがって、以下の特異的な実施態様は単に例示のためであって、本発明の範囲を制限するものではない。当業者は、以下の実施例の条件および方法の変更が使用できることを理解するであろう。
【0087】
実施例1
苦味のある抗ヒスタミン剤のセチリジンを20質量%、マトリクス材料としてのモノ−、ジ−およびトリ−ベヘン酸グリセロール(COMPRITOL 888)を60質量%、膨潤剤のクロスカルメロースナトリウム(AC-DI-SOL)を15質量%、ならびに溶解促進剤のポロキサマー407(PLURONIC F127)を5質量%含む多重粒子コアは以下の方法を用いて製造された。(特に記載が別になければ、実施例で用いられている、コア中に存在する材料の質量%は、非被覆の多重粒子コアの質量%を意味する)最初に、COMPRITOLを750gおよびPLURONICを62.5g、密閉しジャケットを備えたステンレス鋼のタンクに加えた。90℃で加熱した液体をタンクのジャケットを通して循環させた。約40分後に、混合物は融解し、温度は約90℃であった。混合物は次に75rpmで5分間混合した。次いでセチリジンを250gおよびAC-DI-SOLを187.5g融解物中に加え、手で混合し、次にオーバーヘッド型ホモジナイザーで5分間ホモジナイズし、その結果、融解組成物中にセチリジンとAC-DI-SOLの懸濁液が仕込みを形成した。
【0088】
このようにして形成された仕込みを次に、5500rpmで回転している、表面が90℃に加熱された直径4インチのスピニング−ディスク噴霧器の中央に向けて、15psiの窒素を用いてタンクの上部空間(headspace)に加圧することにより、145g/分の速度で分散させた。スピニング−ディスク噴霧器により形成された粒子は周囲空気で凝結し、そして総量で1100gの多重粒子が回収された。
【0089】
多重粒子コアのサンプルを以下の重合体で被覆した。噴霧用溶液は、水性のエチルセルロース分散液、Surelease(R) E-7-7050(25質量%の固体を含む水性乳濁液としてコロルコンより、入手できる)を水中で15質量%の固形物を含むように希釈して作成した。多重粒子は、ビュルスターカラムを備えたGlatt GPCG1流動床コーターで、15mmに設定して流動化した。流動化ガス(空気)は床を通して、注入口温度が58〜68℃および床温度が44〜47℃で、1000〜1150L/分の速度で循環した。噴霧用溶液は床へ、二流体ノズルを通して、2.2barの噴霧圧の空気を用いて、3.8〜7.4g/分の速度で導入した。多重粒子は約150分間被覆され、平均被覆質量が29質量%の多重粒子が得られた(特に記載が別になければ、実施例中で、被覆質量は、非被覆の多重粒子の質量%を意味する)。
【0090】
このようにして形成された多重粒子からのセトリジンの放出速度は以下の方法で測定した。多重粒子の検体65-mgを、テフロンで被覆され50rpmで回転するパドルを備えた、米国薬局方2型ジスセット(dissoette)フラスコ中に入れた。このフラスコには上記の口腔模擬緩衝液900mLが含まれており、37.0±0.5℃に維持されていた。4mLの検体をジスセットフラスコから10μmのフィルターを付けたシリンジで採取した。カニューレをシリンジから外し、0.45-μmのフィルターを取り付け、2mLの検体を溶解用フラスコに戻し、そして1mLの検体を濾過して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)バイアルに入れた。全ての多重粒子がフィルターから取り除けるように、シリンジ中の残りの溶液をフィルターから抜き出し、そしてフラスコに戻した。多重粒子をフラスコに加えてから1、2、3、5、10、20、30、および60分後の検体を回収した。検体は、Hewlett Packard 1100 Mac Mod Analytical Zorbax Stablebond CN (SB-CN) カラム(5μm粒子、15cm×4.6mm内径(i.d.);移動相は、1g/Lのオクタンスルホン酸ナトリウムを含んだ100mM KH2PO4, pH 6.5/MeOH (50/50) を、流速1.0mL/分で流す)によるHPLCを用いて分析した。吸光度は、ダイオードアレイ分光光度計で214nmで測定した。
【0091】
放出された薬物の量は、製剤の力価アッセイに基づいて計算した。多重粒子の力価を測定するために、約60mg(溶液中で薬物濃度を約0.1mg/mLとするために十分な)を秤量し、100mLの容量フラスコに加えた。 次いで、10mLのアセトニトリルを加え、そしてこの溶液を10分間超音波処理した。フラスコを上記のHPLC移動相で満たし、再び10分間超音波処理した。溶液を濾過し、製剤中の薬物の総量を測定した。 製剤の力価アッセイを各溶解試験で加えられた薬物量を計算するために用いた。それぞれの検体中の薬物の量を試験に加えた薬物の総量で割って、結果をアッセイの%として報告した。それらの溶解試験の結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
被覆した多重粒子は、5分以内にはわずか6%の薬物を放出し、続いて1時間以内に迅速で実質的に完全な放出という、所望の放出特性が示された。
【0094】
5名のヒトの志願者が、こうして製造された多重粒子の「口腔感」および味マスキングの効果の両方を試験するために選択された。各被験者はこの多重粒子を65mgの投与量(それぞれおおよそ活性セチリジンの10mgに等しい)で与えられた。一つの投与量はそのままで摂取され苦い味が感じられるまで口腔中に保持した。他の投与量は一飲みの水と共に摂取し、苦い味が感じられるまで口腔中で振り動かした。5名の被験者はまた、口腔中および舌の上でのざらつき感の程度により投与の「口腔感」を評価することを求められた。水なしで摂取された多重粒子で苦味を感じ始めるまでの時間は2〜3分であり、一方、水と共に摂取された多重粒子では約30秒と報告された。全てのざらつき感の評価は非常に低かった。
【0095】
実施例2
融解仕込みが噴霧器中に120g/分で供給されそして回転速度は6000rpmである以外は、実質的に、実施例1を繰り返した。得られた多重粒子の顕微鏡写真を図3に示す。この顕微鏡写真はこの方法が小さく球形で平坦な多重粒子コアを作成したことを示している。
【0096】
実施例3〜5
この実施例は本発明のさまざまな薬物への適用性を実証している。被覆した多重粒子は、薬物のセチリジン(実施例3)、アジスロマイシン(実施例4)およびカフェイン(実施例5)について、実質的に実施例1と同様な方法で(ただし被覆はセチリジン−およびカフェイン−含有コアではそれぞれ23質量%および28質量%を含む)製造した。多重粒子は以下のように形成した:900gのCOMPRITOL および 75gのPLURONICをホモジナイズし、反対回転パドルおよびホモジナーザーを備えたタンク中で加熱し、そして300gの薬物および225gのAC-DI-SOLを加えて融解仕込みを形成し、ギヤーポンプで140g/分で噴霧器へとくみ上げた。実施例3(セチリジン)の薬物放出速度は、実施例1と同様に測定した。
【0097】
実施例4(アジスロマイシン)については、10mLの溶解媒体(0.01 N HCl を含む、pH 2.0)で65mgの多重粒子を予備湿潤化し、次にこの多重粒子を、37℃±0.5℃に保持された溶解媒体を900mL含む、テフロン(R)で被覆され50rpmで回転するパドルを備えた、米国薬局方2型ジスセット(dissoette)フラスコ中に入れて、薬物放出速度を測定した。次に、フラスコ中の液体の検体3mLを、多重粒子をフラスコに加えてから1、2、3、5、10、15、30、および60分後に採取した。この検体を先に0.45-μmシリンジフィルターを用いて濾過してから、HPLC(Hewlett Packard 1100, Waters Symmetry C8 column, 45:30:25アセトニトチル:メタノール:25mM KH2PO4 緩衝液、流速1.0mL/分、吸光度は210nmで、ダイオードアレイ分光光度計で測定した)で分析した。放出された薬物の量は実施例1と同様に測定した。
【0098】
実施例5の多重粒子からのカフェインの放出速度は、HPLCをPhenomenex Luna C18 カラム、5μm粒子、15cm×4.6mm内径;移動相、水/MeOH/酢酸(69/28/3)、流速1.5mL/分、を用いて行った以外は、実施例1のように測定した。吸光度は、ダイオードアレイ分光光度計で275nmで測定した。放出された薬物の量は実施例1と同様に測定した。
【0099】
上記の溶解試験の結果を表2で報告し、図4でグラフを用いて示す。
【表2】

【0100】
実施例6
この実施例は多重粒子が小さな平均直径を有することを実証する。セチリジン含有被覆多重粒子は、実施例3と同様に製造したが、以下の点が相違する:薬物は15質量%含まれる;COMPRITOLは55質量%;LUTROLは15質量%;膨潤剤はデンプングリコール酸ナトリウム(EXPLOTAB)を15質量%;およびディスク速度は10,000rpm。被覆は49質量%存在し、非被覆多重粒子の体積加重平均直径は、Malvern Mastersizer 2000を用いたレーザー光散乱による平均直径測定(乾燥粉末仕込み方法を用い、3.45barの分散空気圧で検体を採取し、振動送達速度が最大値の50〜70%で、7秒の遅延時間でアリコット当たり3点の測定の割合でおこなう)で80μmと算出された。体積加重平均直径はガウス・サイズ分布を示し、約85%の粒子体積が、報告されたサイズの約30%以内に存在していると仮定して計算した。このようにして製造された多重粒子の薬物放出速度は実施例1のように測定され、結果を表3に報告する。
【0101】
【表3】

【0102】
実施例7
この実施例は多重粒子が小さな平均直径を有することを実証する。被覆が46質量%で存在することを除いては、実質的に実施例6を繰り返した。非被覆および被覆コアの体積加重平均直径は実施例6のように測定され、それぞれ85および135ミクロンと決定された。これらの多重粒子の直径、対、%体積頻度のプロットを図5に示す。
【0103】
実施例8〜10
この実施例は各種の被覆の使用を証明する。セチリジン含有被覆多重粒子を、以下のように被覆を変えそして様々な可塑剤を含ませた以外は、実施例1のように製造した:
実施例8−−ココナッツ油を可塑剤として含むエチルセルロース被覆(Surelease(R) E-7-19010、コロルコン、ウエストポイント、PA、から入手でき、25質量%の固形物を含む水性乳濁液を脱イオン水で15質量%まで希釈したもの)(被覆は28質量%);
実施例9−−セバシン酸ジブチルを可塑剤として含むエチルセルロース被覆(Surelease(R) E-7-7050、コロルコン、ウエストポイント、PA、から入手でき、25質量%の固形物を含む水性乳濁液を脱イオン水で15質量%まで希釈したもの)(被覆は26質量%);
実施例10−−クエン酸トリエチルを含むEUDRAGIT RS(被覆溶液は、8質量%のEudragit(R) RS(これは、ローム・アメリカ、ピスカタウエイ、NJ、から入手できる)、0.8質量%のクエン酸トリエチル、45.6質量%のアセトン、5.0質量%のタルク、および45.6質量%のIPAから成っている)(被覆は23質量%)。薬物放出速度は実施例1のように測定し、結果を表4に報告し、そしてグラフとして図6に示した。
【0104】
対照例1は、被覆がポリエチレングリコールを含む酢酸セルロースであること以外は実施例1と同様に製造した(被覆溶液は、9.75質量%酢酸セルロースCA 398-10(イーストマンから入手できる)、0.25質量%のPEG 3350、6.0質量%の水および84.0質量%のアセトンから成る)(被覆は28質量%)。
【0105】
【表4】

【0106】
表4に示した結果は、被覆が膨潤剤で壊れるように相対的に弱くなければならないことを示している。対照例1は、それらのコアを被覆する28質量%の酢酸セルロースが強固すぎて、破裂が十分早く行われないことを示しており、これはおそらくは他の被覆に比べてより強い引張り強度によるものである。反対に、エチルセルロースおよびポリメタクリレートEUDRAGIT RS被覆は、短時間の遅れとそれに続く1時間以内の実質的に完全な放出
を与えた。
【0107】
実施例11〜12
この実施例は、被覆質量が所望の放出速度を達成するために選択されなければならないことを示している。セチリジン含有被覆多重粒子は実施例1と同様に製造されたが、被覆の量は、以下のように変えた:実施例11−−30質量%;実施例12−−40質量%。薬物放出速度は実施例1のように測定され、そして結果を表5に報告し、図7にグラフで示した。
【0108】
対照例2および3
対照例2および3は、実施例11と同様に製造したが、対照例2では被覆を11質量%、そして対照例3では被覆を50質量%に変えた。
【0109】
【表5】

【0110】
データが示すように、実施例11および12は最初に遅延放出、続いて1時間以内に実質的に完全な放出を示した。しかしながら、薄い被覆を有する対照例2では放出は早すぎ、他方、厚い被覆を有する対照例3では、十分速やかな放出が行われなかった。
【0111】
実施例13および14
この実施例は形成された多重粒子が小さなサイズを有していることを示している。セチリジン含有被覆多重粒子は実施例6と同様に製造したが、以下の点が違っている:含有する薬物は15質量%;マトリクス材料は水素化綿実油(LUBRITAB)が60質量%存在する;および膨潤剤はデンプングリコール酸ナトリウム(EXPLOTAB)が25質量%存在する。非被覆コアの平均直径は実施例6で記載したように測定し、76ミクロンと決定された。被覆は、55質量%のEUDRAGIT NE30Dおよび45質量%のタルクであった。被覆は、実施例13については27.8質量%、および実施例14については38.5質量%の量で存在していた。このようにして製造された多重粒子の薬物放出速度は実施例1でのように測定し、結果は表6に報告する。
【0112】
【表6】

【0113】
この結果は、使用環境への投与後60分以内に薬物の80質量%より多く放出する前に、小さい多重粒子が、短い遅延が与えられることを示している。
【0114】
実施例15および16
この実施例は多重粒子のそしゃく錠への取り込みを実証している。実施例11および12のセチリジン含有被覆多重粒子をそしゃく錠へと取り込ませて実施例15および16を形成した。実施例15のそしゃく錠は、実施例11の多重粒子を8.1質量%、粉砂糖を91.4質量%、およびステアリン酸マグネシウムを0.5質量%含んでいた。実施例16の錠剤は、実施例12の多重粒子を8.7質量%、粉砂糖を90.8質量%、およびステアリン酸マグネシウムを0.5質量%含んでいた。錠剤を形成するために、多重粒子および砂糖を配合し、タービュラ(Turbula)混合機で20分間混合した。次いで、ステアリン酸マグネシウムを加えて、4分間混合した。混合物は次に秤量して800mgの検体とし、1/2”の平面で斜角を付けた(beveled (FB))器具を用いたF-プレス上で錠剤に成形した。圧縮力は、硬度が5キロポンド(kP)(実施例15)または2kP(実施例16)で錠剤に送達できるように設定した。
【0115】
5名のヒトの志願者が、こうして製造されたそしゃく錠の味マスキングの有効性を試験するために選択された。各被験者はこの多重粒子を65mg(おおよそ活性セチリジンの10mg含有)含む錠剤を与えられた。錠剤を一飲みの水と共に摂取し、苦い味が感じられるまで口腔中で振り動かした。報告された苦味を最初に感じるまでの遅延時間は約30〜45秒であった。
【0116】
実施例17
この実施例は他のそしゃく錠を実証する。実施例14のセチリジン含有被覆多重粒子をそしゃく錠へと取り込ませて実施例17を形成した。このそしゃく錠は、実施例14の多重粒子を14.9質量%、二つの等級の微結晶セルロース(Avicel PH200およびAvicel CE15、それぞれ FMCコーポレーション、フィラデルフィア、ペンシルバニア、から入手)を15.0質量%および10.0質量%、加工した蔗糖(Domino SugarからDiPacとして市販されている)を58.4質量%、クロスカルメロースナトリウム(FMCコーポレーションからAcDiSolとして市販されている)を1.3質量%、ならびにステアリン酸マグネシウムを0.5質量%含んでいた。錠剤を成形するために、ステアリン酸マグネシウム以外の全ての成分を配合し、タービュラ混合機で混合し、次いでステアリン酸マグネシウムを加えて混合した。混合物は次に、1/2”の平面で斜角を付けた器具を用いたF-プレス上で錠剤に成形した。圧縮力は、硬度が5キロポンド(kP)で錠剤に送達できるように設定した。
【0117】
4名のヒトの志願者が、こうして製造されたそしゃく錠の味マスキングの有効性を試験するために選択された。各被験者はおおよそ活性セチリジンを10mg含む錠剤を与えられた。錠剤は噛まれて口腔中に約2分間保持された。この材料が口腔から取り除かれたとき、1.5〜2分間は、苦味はほとんどないか全くないことが、4名の被験者の全てから報告された。
【0118】
実施例18
バルデコキシブを5質量%、COMPRITOL 888を55質量%、クロスカルメロースナトリウム(AC-DI-SOL)を35.0質量%、および、グリセロールの脂肪酸エステルおよびポリエチレングリコールの混合物(Gattefosse コーポレーションからGELUCIRE 50/13として市販されている)を5質量%含む多重粒子コアを以下の方法で製造した。AC-DI-SOLはボールミルで粒子径を減少させた。COMPRITOL 888およびGELUCIRE 50/13を、機械的混合パドルを備えた密閉ジャケット付ステンレス鋼の1Lタンクに加えた。加熱した液体をタンクのジャケットを通して循環させた。約120分後、混合物は融解し、温度は約93℃であった。AC-DI-SOLおよびバルデコキシブをこの融解物の中に加え、そして5分間5000rpmでホモジナイズし、融解仕込みを得た。この融解仕込みを、ギアポンプ(Zenith Pump, Parker Hannifin Corp, Model C-9000, 2.4 cc/回転)を用いて110g/分の流速で、4インチ径のスピニングディスク噴霧器の中心へと汲み上げた。スピニングディスク噴霧器の表面は90℃に維持され、ディスクは多重粒子が形成されている間10,000rpmで回転させた。スピニングディスク噴霧器で形成された粒子は周囲空気で凝結し、そして回収された。表7に工程の変数をまとめた。
【0119】
【表7】

【0120】
実施例18の多重粒子コアからのインビトロでのバルデコキシブの放出速度を以下の方法により測定した。実施例18の多重粒子を約28mg、テフロンで被覆され100rpmで回転するパドルを備えた、米国薬局方2型ジスセットフラスコ中に入れた。このフラスコには、37.0±0.5℃の模擬口腔緩衝液(ポリソルベート80(TweenTM 80としてICIから市販されている)を0.5質量%含むKH2PO4 緩衝液、pH 7.3)900mLを含んでいた。検体を、70μmフィルターを備えたカニューレに取り付けたシリンジを用いて採取した。フラスコ中の液体の検体をシリンジの中に吸い取り、カニューレを取り除き、そして0.45-μmのフィルターをシリンジに取り付けた。1mLの検体を、濾過して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のバイアルに入れた。検体は、フラスコに多重粒子を加えてから0、1、2、3、5、10、20、30、および60分後に採取した。この検体をHPLC(Zorbax SB-C8 column、3.5μm粒子、7.5cm×4.6mm 内径;55/45 5mM トリエタノールアミン、pH 7.0/アセトニトリル、流速1.5mL/分;吸光度は256nmにてダイオードアレイ分光光度計で測定した)を用いて分析した。
【0121】
薬物の放出量は、製剤の力価アッセイを基にして計算した。実施例18の多重粒子の力価を測定するために、約80mgの多重粒子を秤量し、25mL容量フラスコに加えた。次いで、約10mLのアセトニトリル/メタノール(80/20vol/vol)を加えて、この溶液を15分間超音波処理した。フラスコを室温まで冷却し、アセトニトリル/メタノール(80/20 vol/vol)で容量まで満たした。次に、溶液のアリコットを5分間13,000rpmで遠心分離し、そして製剤中の薬物の総量を測定した。この製剤の力価を各溶解試験のために加えた薬物の量を計算するために用いた。各検体の薬物の量を試験に加えた薬物の総量で割り、そして結果をアッセイの%として報告する。それらの溶解試験の結果を表8に示す。
【0122】
【表8】

【0123】
表8の結果はバルデコキシブの多重粒子からの迅速で完全な放出を示している。
【0124】
実施例19〜21
実施例19の多重粒子コアは、10質量%のバルデコキシブ、50質量%のCOMPRITOL 888、35.0質量%のAC-DI-SOL、および5質量%のGELUCIRE 50/13を含んで製造される。AC-DI-SOLはボールミルで粒子径を減少させた。最初にCOMPRITOL 888およびGELUCIRE 50/13をビーカーに入れてオーブンで加熱し、約90℃で融解物を形成した。次に、AC-DI-SOLおよびバルデコキシブをこの融解物の中に加え、そして5分間700rpmで攪拌し、融解仕込みを得た。
【0125】
この融解仕込みを次に、線形駆動装置で制御されたジャケット付シリンジを用いて、4インチ径のスピニング−ディスク噴霧器の中心へと汲み上げ、その表面を86℃まで加熱した。ディスクは10,000rpmで回転させた。スピニング−ディスク噴霧器で形成された粒子は周囲空気で凝結し、そして回収された。表7に工程変数をまとめた。
【0126】
実施例20〜21の多重粒子コアは、表7で与えられた組成物および方法を用いて同様な様式で作成されたが、ただし実施例21ではAC-DI-SOLが粒子径を平均約10ミクロンまで減少させるために粉砕された。
【0127】
実施例19〜21の多重粒子コアからのインビトロでのバルデコキシブの放出速度を上記の方法により測定した。結果を表9に示した。
【0128】
【表9】

【0129】
表9の結果は、バルデコキシブ、COMPRITOL、AC-DI-SOLおよびGELUCIRE 50/13を種々の比率で含む多重粒子から放出されたバルデコキシブを示している。
【0130】
実施例22
実施例19の多重粒子コアを以下のように抗腸溶性重合体で被覆した。被覆溶液は、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよび中性メタクリレートを基にしたカチオン性共重合体(EUDRAGIT(R) EPO、ローム・アメリカ・インク、ピスカタウエイ、ニュージャージー)を42.4g(8質量%)、イソプロピルアルコールを291.3g(55質量%)およびアセトンを196.0g(37質量%)を含んでいた。溶液を、ビュルスターカラム付のミニ−グラット(Mini-Glatt)流動床被覆器中で、融解凝結コアの80g上に噴霧した。噴霧溶液を、2.7g/分の流速で流動床被覆器へと汲み込んだ。入り口の温度は33℃、霧化空気圧は2.2barg、および流動化ガス流速は22 ft3/分であった。33質量%の被覆を添加した後(被覆/コア)、噴霧溶液流を中断し、そして被覆多重粒子を流動化ガスを用いて5分間乾燥させた。
【0131】
実施例22の多重粒子コアからのインビトロでのバルデコキシブの放出速度を以下の方法により測定した。多重粒子を約244mg、テフロンで被覆され100rpmで回転するパドルを備えた、米国薬局方2型ジスセットフラスコ中に入れた。このフラスコには、37.0±0.5℃の模擬胃緩衝液(0.01 M HCl、pH 2.0、NaClを0.7質量%、ポリソルベート80(TweenTM 80としてICIから市販されている)を0.5質量%含む)が最初に300mL入っていた。30分後、0.5質量% TweenTM 80を含む50mM KH2PO4 緩衝液、pH 7.3の600mLをジスセットフラスコ中に加えた。試験溶液の最終pHは約7.2であった。検体を、70μmフィルターを備えたカニューレに取り付けたシリンジを用いて採取した。フラスコ中の液体の検体をシリンジの中に吸い取り、カニューレを取り除き、そして0.45-μmのフィルターをシリンジに取り付けた。1mLの検体を、濾過して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のバイアルに入れた。検体を表2で示した時間に採取した。この検体をHPLC(Zorbax SB-C8 column、3.5μm粒子、7.5cm×4.6mm 内径;55/45 5mM トリエタノールアミン、pH 7.0/アセトニトリル、流速1.5mL/分; 吸光度は256nmにてダイオードアレイ分光光度計で測定した)を用いて分析した。
【0132】
薬物の放出速度は、製剤の力価アッセイを基にして計算した。これらの溶解試験の結果は表10に記載され、そして実質的に全ての薬物が多重粒子から放出されたことが示される。
【0133】
【表10】

【0134】
実施例23
実施例21の多重粒子コアを、被覆量が59質量%(被覆/コア)であること以外は実施例22で記載されたように、抗腸溶性重合体で被覆した。
バルデコキシブの放出速度をインビトロで、胃緩衝液または模擬口腔緩衝液を入れた別々のフラスコ中での薬物放出を測定することで決定し、そして口腔緩衝液/胃液移行試験(5分後の口腔緩衝液からの移行)を近似的に求めるためにグラフを組み合わせた。表11にまとめたこの試験の結果は、最初の遅延時間の後、多重粒子が速やかにバルデコキシブを放出したことを示している。
【0135】
【表11】

【0136】
上記の明細書で用いられている用語および表現は、本願中では説明の用語として用いられており限定ではなく、そして、示されそして記載された様相またはその部分の均等物を排除した用語および表現の使用は意図されておらず、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ定義されそして限定されるものと認められる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】水性環境中に置かれた本発明の一つの実施態様の例示的多重粒子の断面図である。
【図2】水性環境から水を吸収し、そして破壊の過程にある、図1と同じ多重粒子の断面図である。
【図3】本発明により製造された多重粒子の顕微鏡写真である。
【図4】本発明の多重粒子からの各種活性薬剤の放出速度を示すグラフである。
【図5】本発明の例示的な多重粒子の粒子径分布を示すグラフである。
【図6】各種の被覆法を使用した本発明の多重粒子からの薬物セチリジンの放出速度を示すグラフである。
【図7】各種の被覆厚さを用いた、本発明の多重粒子からの薬物セチリジンの放出速度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の多重粒子を含む医薬組成物であり、該多重粒子のそれぞれは、
(a)薬物を含むコア、該コアは被覆で囲まれ、該被覆は(i)水透過性で実質的に薬物は不透過性の被覆、および(ii)抗腸溶性の被覆から成る群から選択され、
(b)該コアは少なくとも30質量%の量で該コア中に存在するマトリクス材料を含み、該マトリクス材料は該薬物の融点より低い融点を有しており、そして
(c)該コアはさらに水膨潤性の膨潤剤を含み、該水膨潤性の膨潤剤は液体を吸収することができ、そして該被覆を破裂させまたは該コアを崩壊させるように膨潤し、それにより該薬物を放出する、
ことを含む上記組成物。
【請求項2】
複数個の多重粒子を含む医薬組成物であり、該多重粒子のそれぞれは、
(a)薬物を含むコア、該コアは被覆で囲まれ、該被覆は(i)水透過性で実質的に薬物は不透過性の被覆、および(ii)抗腸溶性の被覆から成る群から選択され;そして
(b)該コアはマトリクス材料を含み;
(c)該多重粒子は体積加重平均直径が被覆後に150μm未満であり;そして
(d)該コアは該コアの5質量%〜30質量%の量で該コア中に存在する水膨潤性の膨潤剤を含み、ここで該水膨潤性の膨潤剤は液体を吸収でき、そして該被覆を破裂させまたは該コアを崩壊させるように膨潤し、それにより該薬物を放出する、
ことを含む組成物。
【請求項3】
水膨潤性の膨潤剤は、脱イオン水中に0.01M HClおよび0.12M NaClから成るインビトロの模擬胃内使用環境中で、1時間以内に、少なくとも2のファクターによって体積増加できる、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
膨潤剤は、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウムおよびクロスポビドンから成る群から選択される、請求項1または2記載の組成物。
【請求項5】
被覆は、水透過性で実質的に薬物は不透過性であり、そして、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロースエーテル類、ポリメタクリレート類、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−ポリプロピレングリコール共重合体、ポリビニルピロリドン、デンプン、デキストラン、デキストリン、ポリデキストロース、ポリアルケン類、ポリエーテル類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリスチレン類、ポリビニルアルコール、ポリビニルハロゲン化物、ポリビニルエーテル類、パラフィン蝋、微結晶性蝋および合成蝋から成る群から選択される材料を含む、請求項1または2記載の組成物。
【請求項6】
被覆は、エチルセルロースおよびポリメタクリレートから成る群から選択される重合体を含む、請求項1または2記載の組成物。
【請求項7】
被覆は、抗腸溶性被覆でありそしてメタクリル酸ブチル/メタクリル酸(2−ジメチルアミノエチル)/メタクリル酸メチル共重合体およびジエチルアミノ酢酸ポリビニルアセタールから成る群から選択される材料を含む、請求項1または2記載の組成物。
【請求項8】
被覆は、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸(2−ジメチルアミノエチル)/メタクリル酸メチル共重合体を含む、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
薬物および該膨潤剤は、該マトリクスの中にカプセルで包まれている、請求項1または2記載の組成物。
【請求項10】
マトリクス材料が、25℃で固体であり、そして、蝋類、長鎖アルコール類、ポロキサマー類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、短−、中−および長鎖脂肪酸エステル類、グリコール化脂肪酸エステル類、ポリソルベート類、カルボン酸類ならびにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1または2記載の組成物。
【請求項11】
マトリクス材料が、合成蝋、微結晶性蝋、パラフィン蝋、カルナバ蝋、白色および黄色蜜蝋、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ポリエチレングリコール、モノオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン、水素化植物油、モノ−、ジ−、およびトリアルキルグリセリド、モノベヘン酸グリセリン、ジベヘン酸グリセリン、トリベヘン酸グリセリン、トリステアリン酸グリセリン、トリパルミチン酸グリセリン、ならびにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
コアは、さらに溶解促進剤を含む、請求項1または2記載の組成物。
【請求項13】
多重粒子は、150μm未満の体積加重平均直径を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
圧縮型投与剤形へ組み込まれた、請求項1または2記載の組成物。
【請求項15】
薬物は、セチリジン、アジスロマイシン、エレトリプタン、バルデコキシブおよびカフェインから成る群から選択される、請求項1または2記載の組成物。
【請求項16】
薬物は、難溶性薬物である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項17】
多重粒子の医薬組成物を製造する方法であって、
(a)不快な味を有する薬物、膨潤剤および該薬物より低い融点を有する少なくとも30質量%のマトリクス材料を含む、融解した混合物を生成する;
(b)工程(a)の該融解した混合物を霧化して小滴を生成する;
(c)工程(b)の該小滴を凝固させて固形コアを生成する;そして
(d)工程(c)の該コアを被覆により被覆し、該被覆は(i)水透過性で実質的に薬物は不透過性の被覆、および(ii)抗腸溶性の被覆から成る群から選択される、
各工程を含む上記方法。
【請求項18】
薬物は、工程(a)の間、少なくとも70質量%が結晶性である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
工程(b)および(c)が150μm未満の体積加重平均直径を有するコアを形成するために行われる、請求項16記載の方法。
【請求項20】
さらに多重粒子を圧縮型投与剤形に組み込む工程を含む、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−532623(P2007−532623A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507861(P2007−507861)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000917
【国際公開番号】WO2005/097064
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】