説明

硬化性オルガノポリシロキサン組成物、光半導体素子封止剤および光半導体装置

【課題】屈折率、光透過率および基材に対する接着耐久性が高い硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物、光半導体素子封止剤および信頼性が優れる光半導体装置を提供する。
【解決手段】(A)2個以上のアルケニル基を有し全シロキサン単位の70モル%以上がメチルフェニルシロキサン単位であるジオルガノポリシロキサン(ただし、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの合計含有量が5重量%以下)、(B)2個以上のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合有機基のうち15モル%以上がフェニル基であるオルガノポリシロキサンおよび(C)ヒドロシリル化反応用触媒から少なくともなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物、光半導体素子封止剤および筐体内の光半導体素子が上記組成物の硬化物により封止されている光半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物、光半導体素子封止剤、および、光半導体装置に関し、詳しくは、屈折率、光透過率および基材に対する接着耐久性が高い硬化物を形成するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物および光半導体素子封止剤、ならびに、光半導体素子が上記光半導体素子封止剤の硬化物により封止されている光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロシリル化反応により硬化する硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、フォトカプラー、発光ダイオード、固体撮像素子等の光半導体装置における光半導体素子の保護コーティング、封止剤などとして使用されている。このような光半導体素子の保護コーティング、封止剤は、光半導体素子が発光あるいは受光するため、光を吸収したり、散乱したりしないことが要求されている。
【0003】
そのためフェニル基含有量が大きいオルガノポリシロキサンを使用することにより屈折率と光透過率が高い硬化物を形成するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物が特許文献1〜特許文献5に提案されている。
【0004】
しかし、これらの硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化物の光透過率が必ずしも高くなく、あるいは硬化途上で接触している半導体素子あるいは光半導体素子、リードフレーム、パッケージに対する接着耐久性が乏しく、剥離しやすいという問題点があることに本発明者らは気付いた。また、これらの硬化性オルガノポリシロキサン組成物で被覆ないし封止された半導体素子を具備する半導体装置あるいは光半導体素子を具備する光半導体装置は、接着耐久性が乏しく、信頼性が十分でないという問題点があることに本発明者らは気付いた。
【0005】
これらの問題を解決する硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、特許文献6に開示されているが、ラジカル共重合体系の接着促進剤を必須成分としているので、その硬化物で被覆ないし封止された光半導体素子が高温下で長時間使用されると、その硬化物が黄変し光透過性が低下するという問題点があることに本発明者らは気付いた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−128922号公報
【特許文献2】特開2004−292807号公報
【特許文献3】特開2005−105217号公報
【特許文献4】特開2007−103494号公報
【特許文献5】特開2008−1828号公報
【特許文献6】特開2006−063092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、屈折率、光透過率が高く、硬化途上で接触していた半導体素子、リードフレーム、パッケージなど各種基材に対する接着耐久性が高い硬化物を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供すること;屈折率、光透過率が高く、硬化途上で接触していた光半導体素子、リードフレーム、パッケージなどに対する接着耐久性が高い硬化物を形成する光半導体素子封止剤を提供すること;および光半導体素子、リードフレーム、パッケージなどに対する接着耐久性が高い光半導体素子封止剤で封止され、信頼性が優れる光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、
「[1] (A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し全シロキサン単位の70モル%以上がメチルフェニルシロキサン単位であるジオルガノポリシロキサン(ただし、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの含有量の合計が5重量%以下である)、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合有機基のうち15モル%以上がフェニル基であるオルガノポリシロキサン{(A)成分中の総アルケニル基のモル数に対して、(B)成分のケイ素原子結合水素原子のモル数が10〜500%となる量}、
および
(C)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物を硬化させるのに十分な量)
から少なくともなることを特徴とする、硬化性オルガノポリシロキサン組成物
[2] (A)成分が、平均構造式(1):
【化1】


(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基であり、R1はアルケニル基、メチル基およびフェニル基であり、一分子中のR1の少なくとも2個はアルケニル基であり、nとmの合計は平均5〜1,000の数であり、m/nが0.2以下である)で表されるジオルガノポリシロキサンであり、(B)成分が、平均構造式(2):
【化2】


(式中、R2は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、一分子中のR2の少なくとも2個は水素原子であり、水素原子以外のR2の15モル%以上がフェニル基である。pは平均0〜1,000の数である)で示される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、および、平均シロキサン単位式(3):R3abSiO(4-a-b)/2
(式中、R3はメチル基およびフェニル基であり、その15モル%以上がフェニル基であり、aは平均0.5≦a<2.0の数であり、bは平均0.5≦b<2.0の数であり、a+bは平均1.0≦a+b<2.0の数である)で示される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンから選択されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする、[1]に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[3] さらに、(A)成分と(B)成分の合計量に対して50重量%以下の、平均単位式(4): R4cSiO(4-c)/2 (式中、R4はアルケニル基、メチル基およびフェニル基であり、その20モル%以上がフェニル基であり、cは 平均0.5〜1.7の正数である。)で示されるメチルフェニルアルケニルポリシロキサンを含有することを特徴とする、[1]または[2]に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[4] 可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.5以上であり、光透過率(25℃)が80%以上である硬化物を形成することを特徴とする、[1]、[2]または[3]に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。」により達成される。
【0009】
さらには、
「[5] (A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し全シロキサン単位の70モル%以上がメチルフェニルシロキサン単位であるジオルガノポリシロキサン(ただし、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの含有量の合計が5重量%以下である)、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合有機基のうち15モル%以上がフェニル基であるオルガノポリシロキサン{(A)成分中の総アルケニル基のモル数に対して、(B)成分のケイ素原子結合水素原子のモル数が10〜500%となる量}、
および
(C)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物を硬化させるのに十分な量)
から少なくともなり、可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.5以上であり、光透過率(25℃)が80%以上である硬化物を形成することを特徴とする、光半導体素子封止剤。
[6] (A)成分が、平均構造式(1):
【化3】


(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基であり、R1はアルケニル基、メチル基およびフェニル基であり、一分子中のR1の少なくとも2個はアルケニル基であり、nとmの合計は平均5〜1,000の数であり、m/nが0.2以下である)で表されるジオルガノポリシロキサンであり、(B)成分が、平均構造式(2):
【化4】


(式中、R2は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、一分子中のR2の少なくとも2個は水素原子であり、水素原子以外のR2の15モル%以上がフェニル基である。pは平均0〜1,000の数である)で示される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、および、平均シロキサン単位式(3):R3abSiO(4-a-b)/2
(式中、R3はメチル基およびフェニル基であり、その15モル%以上がフェニル基であり、aは平均0.5≦a<2.0の数であり、bは平均0.5≦b<2.0の数であり、a+bは平均1.0≦a+b<2.0の数である)で示される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンから選択されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする、[5]に記載の光半導体素子封止剤。
[7] さらに、(A)成分と(B)成分の合計量に対して50重量%以下の、平均単位式(4): R4cSiO(4-c)/2 (式中、R4はアルケニル基、メチル基およびフェニル基であり、その20モル%以上がフェニル基であり、cは 平均0.5〜1.7の正数である。)で示されるメチルフェニルアルケニルポリシロキサンを含有することを特徴とする、[6]に記載の光半導体素子封止剤
【0010】
さらには、
[8] 光半導体素子が、発光半導体素子であることを特徴とする、[5]、[6]または[7]に記載の光半導体素子封止剤。
[9] 発光半導体素子が発光ダイオード素子であることを特徴とする、[8]に記載の光半導体素子封止剤。
[10] 光半導体素子が[5]、[6]または[7]に記載の光半導体素子封止剤の硬化物で封止されていることを特徴とする、光半導体素子を具備する光半導体装置。
[11] 光半導体装置は、筐体内に光半導体素子を具備しており、該光半導体素子は筐体内壁とともに[5]、[6]または[7]に記載の光半導体素子封止剤の硬化物で封止されていることを特徴とする、[10]に記載の光半導体装置。」により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、屈折率、光透過率が高く、硬化途上で接触していた各種基材に対する接着耐久性が高い硬化物を形成するという特徴がある。
本発明の光半導体素子封止剤は、屈折率、光透過率が高く、硬化途上で接触していた光半導体素子、リードフレーム、パッケージなどに対する接着耐久性が高い硬化物を形成するという特徴がある。特には、封止した半導体素子、リードフレーム、パッケージなどに冷熱サイクルをかけたときに、接着耐久性が高い硬化物を形成するという特徴がある。
本発明の光半導体装置は、光半導体素子、リードフレーム、パッケージなどが上記光半導体素子封止剤の硬化物により封止されているので、接着耐久性が高く、信頼性が優れるという特徴がある。特には、封止した光半導体装置に冷熱サイクルをかけたときに、接着耐久性が高いという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光半導体装置の一実施例である表面実装型発光ダイオード(LED)装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物および光半導体素子封止剤は、
少なくとも、(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し全シロキサン単位の70モル%以上がメチルフェニルシロキサン単位であるジオルガノポリシロキサン(ただし、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの含有量の合計が5重量%以下である)、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合有機基のうち15モル%以上がフェニル基であるオルガノポリシロキサン{(A)成分中の総アルケニル基のモル数に対して、(B)成分のケイ素原子結合水素原子のモル数が10〜500%となる量}、
および
(C)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物を硬化させるのに十分な量)
から少なくともなることを特徴とする。
【0014】
上記組成物および光半導体素子封止剤は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のケイ素原子結合水素原子とが、(C)成分の触媒作用によりヒドロシリル化反応することにより架橋して硬化する。そのため、(A)成分1分子中に2個以上のアルケニル基が必要である。アルケニル基は分子鎖末端、分子鎖途中、分子鎖末端と分子鎖途中のいずれに位置してもよい。
【0015】
(A)成分中のアルケニル基として、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示されるが、(A)成分の合成容易性とヒドロシリル化反応性の点で、ビニル基が好ましい。また、(A)成分は、全シロキサン単位の70モル%以上がメチルフェニルシロキサン単位であるので、ケイ素原子結合有機基はアルケニル基、メチル基およびフェニル基が必須であるが、これら以外にアルキル基(メチル基を除く)などを含有してもよい。このようなアルキル基として、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基が例示される。(A)成分のジオルガノポリシロキサンは直鎖状または環状体を表しているが、その性質を損なわない範囲で部分的に分岐構造を有しても構わない。
【0016】
(A)成分と(B)成分の架橋硬化物において、光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さいことから、(A)成分は全シロキサン単位の70モル%以上がメチルフェニルシロキサン単位である。メチルフェニルシロキサン単位以外のシロキサン単位としてジメチルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位、フェニルビニルシロキサン単位、メチルアルキル(メチル基を除く)シロキサン単位、ジメチルビニルシロキサン単位、トリメチルシロキサン単位、メチルフェニルビニルシロキサン単位が例示される。同様の理由から(A)成分中のケイ素原子結合全有機基は、35モル%以上がケイ素原子結合フェニル基であることが好ましい。
【0017】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物および光半導体素子封止剤の取扱作業性、成形作業性の点で、(A)成分は、常温で液状であることが好ましい。その25℃における粘度は10〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、100〜50,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。これは、(A)成分の粘度が上記範囲の下限未満であると、得られる硬化物の機械的強度が低下する傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の取扱作業性が低下する傾向があるからである。
【0018】
このような(A)成分の代表例として、平均構造式(1):
【化5】


で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサンがある。上式中、Meはメチル基、Phはフェニル基であり、R1はアルケニル基、メチル基およびフェニル基であり、一分子中のR1の少なくとも2個はアルケニル基であり、nとmの合計は平均5〜1,000の数であり、好ましくは、このジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・sの範囲内となるような数であり、特には、100〜50,000mPa・sの範囲内となるような数であり、m/nは0.2以下である。
【0019】
上記平均構造式において、R1のアルケニル基として、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示されるが、(A)成分の合成容易性とヒドロシリル化反応性の点で、ビニル基が好ましい。2個のR1を有するシロキサン単位は、メチルフェニルシロキサン単位以外の単位であり、ジメチルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位、およびフェニルビニルシロキサン単位から選ばれ、3個のR1を有するシロキサン単位は、トリメチルシロキサン単位、ジメチルビニルシロキサン単位、ジメチルフェニルシロキサン単位、およびメチルフェニルビニルシロキサン単位から選ばれる。
【0020】
(A)成分は、これを含有する組成物および光半導体素子封止剤が硬化途上で接触していた基材への接着耐久性、特には冷熱サイクルを受けたとき接着耐久性の点で、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの含有量の合計が5重量%以下であり、好ましくは3重量%以下であり、さらに好ましくは皆無である。
【0021】
これら環状物の含有量は、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより、内部標準としてn−ウンデカンを用いて定量分析して求めることができる。すなわち、n−ウンデカンに対する1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの相対強度を、標準サンプルを用いて予め測定しておき、ガスクロマトグラフのピーク強度と試料へのn−ウンデカンの添加量から、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンを定量する(以下、同様である)。
【0022】
このような(A)成分は、環状メチルフェニルシロキサンオリゴマーを分子鎖末端封鎖剤(例えば、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジフェニルジメチルジシロキサン)と重合触媒(例えば、水酸化カリウム、カリウムジメチルシロキサノレート、水酸化テトラメチルアンモニウムまたはテトラメチルアンモニウムジメチルシロキサレート)存在下で加熱して平衡化重合し、重合触媒を中和または熱分解し、次いで、加熱減圧下で1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンを除去することにより製造することができる。
【0023】
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合有機基のうち15モル%以上がフェニル基であるオルガノポリシロキサンは、(A)成分の架橋剤である。そのケイ素原子結合水素原子が、(C)成分の触媒作用により(A)成分中のアルケニル基に付加反応(ヒドロシリル化反応)することにより(A)成分は架橋して硬化する。
【0024】
(B)成分が(A)成分とヒドロシリル化反応して硬化するためには、ケイ素原子結合水素原子は、1分子中に2個以上存在することが必要であり、好ましくは3個以上存在する。(B)成分の分子構造が直鎖状である場合は、両末端のみ、両末端と側鎖の両方、または、側鎖のみに存在する。(B)成分の分子構造が環状である場合は、ケイ素原子結合水素原子は側鎖のみに存在する。(B)成分の分子構造が分岐状である場合は、ケイ素原子結合水素原子は、末端のみ、側鎖のみ、分岐点、末端と側鎖の両方などに存在する。水素原子は通常同一珪素原子に1個結合しているが、2個結合していてもよい。
【0025】
(A)成分と(B)成分の架橋硬化物において、光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さいことから、(B)成分はケイ素原子結合全有機基の15モル%以上がケイ素原子結合フェニル基であるが、25モル%以上、特には40モル%以上がケイ素原子結合フェニル基であることが好ましい。
もっとも、フェニル基含有量が多すぎると組成物の濁りにより透明性が低下するので80モル%以下好ましい。
【0026】
ケイ素原子結合フェニル基以外のケイ素原子結合有機基は、アルキル基、アラルキル基、フルオロアルキル基が例示されるが、(A)成分との相溶性の点で、アルキル基が好ましい。アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基が例示されるが、(B)成分の合成容易性と、(A)成分との相溶性の点で、メチル基が特に好ましい。
(B)成分は、少量のケイ素原子結合水酸基またはアルコキシ基を含んでもよい。
【0027】
このような(B)成分の分子構造として、直鎖状、分岐した直鎖状、分岐状、環状、籠状、これらの併存構造が例示される。
【0028】
このような(B)成分は、(A)成分との相溶性の点で、常温で液状であることが好ましい。その粘度は限定されないが、25℃において1〜10,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、2〜5,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。これは、(B)成分の粘度が上記範囲の下限未満であると、揮発しやすく、得られる組成物の組成が安定しない恐れがあるからであり、一方、上記範囲の上限を超えるオルガノポリシロキサンは合成が容易でないからである。
【0029】
このような(B)成分の代表例として、平均構造式(2):
【化6】


(式中、R2は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、一分子中のR2の少なくとも2個は水素原子であり、水素原子以外のR2の15モル%以上がフェニル基である。pは平均0〜1,000の数である)で示される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、および、平均シロキサン単位式(3):R3abSiO(4-a-b)/2
(式中、R3はメチル基およびフェニル基であり、その15モル%以上がフェニル基であり、aは平均0.5≦a<2.0の数であり、bは平均0.5≦b<2.0の数であり、a+bは平均1.0≦a+b<2.0の数である)で示される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンがある。ここで、a+bが2.0から1.0に近づくに従って分岐度合いが増加し、1.7位になると分岐がかなり顕著になる。
【0030】
平均構造式(2)で示される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子中のR2の50モル%以上がメチル基およびフェニル基であることが好ましく、該メチル基およびフェニル基の15モル%以上がフェニル基である。もっとも、分子中のR2のうち少なくとも2個、好ましくは3個はケイ素原子結合水素原子であるので、分子中のR2の100モル%がメチル基およびフェニル基ということはあり得ない。該メチル基およびフェニル基の15モル%以上がフェニル基であるが、(A)成分との相溶性の点で、フェニル基は80モル%以下であることが好ましい。なお、pは0〜1000の数であるので、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、オリゴマー状のものを含む。
【0031】
平均構造式(2)で示される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの好ましい例は、2個または3個以上の水素原子を有するメチルフェニルジシロキサン、および、主鎖が直鎖状メチルフェニルポリシロキサン、直鎖状ジフェニルポリシロキサン、直鎖状メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、または、直鎖状メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサンコポリマーであり;両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基、メチルフェニルハイドロジェンシロキシ基、トリメチルシロキシ基、または、ジメチルフェニルシロキシ基である、直鎖状メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサンである。
【0032】
平均単位式(3)で示される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの最も好ましい例は、平均シロキサン単位式: (C6H5SiO3/2)x(MeSiO3/2)y(HMe2SiO1/2)z
(式中、C6H5はフェニル基であり、Meはメチル基であり、xは0.3〜0.7であり、yは0〜0.3であり、zは0.25〜0.7であり、x+y+z=1.0である)で示される分岐状メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサンである。
【0033】
(B)成分として下記の具体例がある。
式(HMePhSi)2O、(HMe2SiO)2SiPh2、(HMePhSiO)2SiPh2、(HMe2SiO)2SiMePh、HMe2SiO(Ph2SiO)2SiMe2H、HMe2SiO(MePhSiO)2SiMe2H、HMe2SiO(Ph2SiO)4SiMe2H、HMe2SiO(MePhSiO)4SiMe2H、HMe2SiO(MePhSiO)20SiMe2H、HMePhSiO(MePhSiO)20SiMePhH、HMePhSiO(MePhSiO)17(MeHSiO)3SiMePhH、Me2PhSiO(MePhSiO)17(MeHSiO)3SiMe2Ph、(HMe2SiO)3SiPh、(HMePhSiO)3SiPhまたは(HMePhSiO)3SiMeで示されるメチルフェニルハイドロジェンシロキサンオリゴマーもしくは直鎖状メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン;(PhSiO3/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなる分岐状メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン、(PhSiO3/2),(Me2SiO2/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなる分岐状メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン、(PhSiO3/2),(MePhSiO2/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなる分岐状メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン、(PhSiO3/2),(MeSiO3/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなる分岐状メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン、(PhSiO3/2)および(MeHSiO2/2)の各単位からなる分岐状メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン、(Me2HSiO1/2),(MePh2SiO1/2)および(SiO4/2)の各単位からなる分岐状メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン。ここでの分岐状は、網状、籠状、3次元状を含むものであり、いずれも常温で液状であるものが好ましい。
【0034】
(B)成分は、置換基、構成シロキサン単位、重合度、粘度などの異なる2種以上を併用してもよい。
【0035】
(B)成分は、定法である共加水分解縮合反応や、平衡化重合反応により製造される。
(B)成分は、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの合計含有量は5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、皆無であることが最も好ましい。
【0036】
(B)成分の配合量は、本発明組成物および光半導体素子封止剤中の(A)成分の総アルケニル基のモル数に対して、(B)成分のケイ素原子結合水素原子のモル数が10〜500%となる量であり、好ましくは、50〜200%となる量である。本発明組成物が後述する(D)成分を含有する場合は、(A)成分のアルケニル基と(D)成分のアルケニル基の合計モル数に対して、(B)成分のケイ素原子結合水素原子のモル数が10〜500%となる量であり、好ましくは50〜300%となる量であり、さらに好ましくは80〜200%となる量である。
これは、(B)成分の配合量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に硬化しなくなる傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる硬化物の耐熱性が低下する傾向があるからである。
【0037】
(C)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のケイ素原子結合水素原子のヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。このような(C)成分は、白金族元素触媒、白金族元素化合物触媒が好ましく、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示される。(A)成分と(B)成分のヒドロシリル化反応、ひいては本発明組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。
【0038】
この白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とジオレフィンの錯体、白金−オレフィン錯体、白金ビス(アセトアセテート),白金ビス(アセチルアセトネート)などの白金−カルボニル錯体、塩化白金酸・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、塩化白金酸・テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体などの塩化白金酸・アルケニルシロキサン錯体、白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体, 白金・テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体などの白金・アルケニルシロキサン錯体、塩化白金酸とアセチレンアルコール類との錯体が例示されるが、ヒドロシリル化反応性能の点で、白金−アルケニルシロキサン錯体が特に好ましい。
【0039】
そのためのアルケニルシロキサンとして、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサンオリゴマー、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンオリゴマーが例示される。特に、生成する白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。
【0040】
また、これらの白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させるため、これらの白金−アルケニルシロキサン錯体は、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンオリゴマーやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーに溶解していることが好ましく、特にアルケニルシロキサンオリゴマーに溶解していることが好ましい。
【0041】
(C)成分の配合量は、本発明組成物および光半導体素子封止剤の硬化を促進する量であれば限定されず、具体的には、本発明組成物に対して、本成分中の白金族金属原子、特には白金原子が重量単位で0.01〜500ppmの範囲内となる量であることが好ましく、さらには、0.01〜100ppmの範囲内となる量であることが好ましく、特には、0.1〜50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、本発明組成物が十分に硬化しなくなる傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる硬化物に着色等の問題を生じるおそれがあるからである。
【0042】
本発明組成物および光半導体素子封止剤には、その硬化物の強度向上や、弾性率向上のために、(D)分岐状アルケニル基含有メチルフェニルポリシロキサンを配合してもよい。
そのような分岐状アルケニル基含有メチルフェニルポリシロキサンは、平均単位式(4): R4cSiO(4-c)/2 (式中、R4はアルケニル基、メチル基およびフェニル基であり、その20モル%以上がフェニル基であり、cは 平均0.5〜1.7の正数である。)で示すことができる。
上記平均単位式(4)中のcが平均0.5〜1.7であるので、その分子構造は分岐状、網状、籠状および3次元状のいずれか、または、これらの共存する分子構造である。
平均単位式(3)で示されるオルガノポリシロキサンレジンを構成するシロキサン単位として、トリオルガノシロキサン単位(略称M単位)、ジオルガノシロキサン単位(略称D単位)、モノオルガノシロキサン単位(略称T単位)およびSiO4/2単位(略称Q単位)がある。
【0043】
モノオルガノシロキサン単位としてRSiO3/2単位があり、MeSiO3/2単位、PhSiO3/2単位、Vi SiO3/2単位が例示される。
ジオルガノシロキサン単位としてR2SiO2/2単位があり、MePhSiO2/2単位、Me2SiO2/2単位、MeViSiO2/2単位、Ph2SiO2/2単位が例示される。
トリオルガノシロキサン単位としてR3SiO1/2単位があり、Me3SiO1/2単位、Me2PhSiO1/2単位、MeViPhSiO1/2単位、MeVi2SiO1/2単位が例示される。ここでMeはメチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を意味する。
さらには、上記シロキサン単位中のR基の一つがOH基に置換されたシロキサン単位、例えば、R(HO)SiO2/2単位、R2(HO)SiO1/2単位、(HO)SiO3/2単位がありえる。
【0044】
(D)成分の好ましい例として、平均シロキサン単位式:
(C6H5SiO3/2)x(MeSiO3/2)y(ViMe2SiO1/2)z
(式中、C6H5はフェニル基であり、Viはビニル基であり、Meはメチル基であり、xは0.3〜0.7であり、yは0〜0.3であり、zは0.25〜0.7であり、x+y+z=1.0である)で示される分岐状メチルフェニルビニルポリシロキサン、平均シロキサン単位式:(ViMeC6H5SiO1/2)x(SiO4/2)y (式中、C6H5はフェニル基であり、Viはビニル基であり、Meはメチル基であり、x/y=0.75〜4である)で示される分岐状メチルフェニルビニルポリシロキサンがある。
【0045】
本発明組成物および光半導体素子封止剤において、(D)成分を配合する場合には、(D)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計量に対して50重量%以下となる量であることが好ましく、40重量%以下となる量であることがより好ましい。これは、(D)成分の配合量が上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の硬化性が低下したり、また、硬化して得られる硬化物の基材に対する接着性が低下する傾向があるからである。
【0046】
本発明組成物および光半導体素子封止剤には、常温での可使時間を延長し、保存安定性を向上させるため、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケニルシロキサンオリゴマー;ジメチルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、メチルビニルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン等のアルキンオキシシラン;ベンゾトリアゾール等のヒドロシリル化反応抑制剤を配合することが好ましい。
【0047】
このヒドロシリル化反応抑制剤の配合量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分の混合時にゲル化ないし硬化を抑制するのに十分な量であり、さらには長期間保存可能とするのに十分な量である。(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0.0001〜5重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜3重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0048】
また、本発明組成物および光半導体素子封止剤には、硬化途上で接触していた基材への接着性を更に向上させるため接着性付与剤ないし接着促進剤(以下、「接着促進剤」という)を配合することができる。この接着促進剤は、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物用に公知な有機珪素化合物系の接着促進剤が好ましい。
【0049】
代表例として、トリアルコキシシロキシ基(例えば、トリメトキシシロキシ基、トリエトキシシロキシ基)もしくはトリアルコキシシリルアルキル基(例えば、トリメトキシシリルエチル基、トリエトキシシリルエチル基)と「ヒドロシリル基、ケイ素原子に結合したアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)、ケイ素原子に結合したメタクリロキシアルキル基(例えば、3−メタクリロキシプロピル基)、ケイ素原子に結合したエポキシ基結合アルキル基(例えば、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基)」からなる群から選択される官能基を有する、オルガノシランまたはケイ素原子数4〜20程度の直鎖状構造、分岐状構造又は環状構造のオルガノシロキサンオリゴマー;アミノアルキルトリアルコキシシランとエポキシ基結合アルキルトリアルコキシシランの反応物、エポキシ基含有エチルポリシリケートがある。
【0050】
具体例として、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランと3−アミノプロピルトリエトキシシランの反応物、シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの縮合反応物、シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーと3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランの縮合反応物、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートがある。
【0051】
これら接着促進剤は、硬化物が加熱下で長時間使用されたときの耐黄変性と光透過性低下防止の観点より、アミノ基などの活性窒素原子を含有しないものが好ましい。これら接着促進剤は、低粘度の液状であることが好ましく、25℃において1〜500mPa・sの範囲内であることが好ましい。
上記組成物および光半導体素子封止剤における、これら接着促進剤の配合量は、硬化特性と硬化物の特性を阻害しなければ限定されないが、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜5重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0052】
本発明組成物および光半導体素子封止剤には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、シリカ、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛等の無機質充填剤;シリコーンゴム粉末;シリコーン樹脂、ポリメタクリレート樹脂等の樹脂粉末;耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤、溶剤等を配合してもよい。
【0053】
本発明組成物および光半導体素子封止剤は、成形性の点で、常温で液状であることが好ましく、25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・sの範囲内であり、特には、100〜50,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0054】
本発明組成物は、前記(A)成分と(B)成分を主剤とするので、その硬化物は必然的に可視光(589nm)における屈折率(25℃)が大きく、光透過率が高い。その硬化物の可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.5以上であることが好ましい。本発明組成物の硬化物の光透過率(25℃)は80%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
本発明の光半導体素子封止剤は、その硬化物の可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.5以上であり、硬化物の光透過率(25℃)は80%以上である。
これは、硬化物の屈折率が1.5未満であったり、光透過率が80%未満であるような硬化物により封止された光半導体素子を有する光半導体装置、特には発光ダイオード素子を有する発光ダイオード装置に十分な信頼性を付与することができなくなるおそれがあるからである。
【0055】
なお、この屈折率は、例えば、アッベ式屈折率計により測定することができる。この際、アッベ式屈折率計における光源の波長を変えることにより任意の波長における屈折率を測定することができる。また、この光透過率は、例えば、硬化物について光路長0.2cmで波長450nmにおける光透過率(25℃)分光光度計により測定することにより求めることができる。
【0056】
本発明組成物および光半導体素子封止剤は、室温放置や、加熱により硬化が進行するが、迅速に硬化させるためには加熱することが好ましい。この加熱温度は、50〜200℃の範囲内であることが好ましい。
【0057】
このような本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物および光半導体素子封止剤は、接着促進剤を含有しなくてもスチール、ステンレススチール、アルミニウム、銅、銀、チタン、チタン合金等の金属;シリコン半導体、ガリウムリン系半導体、ガリウム砒素系半導体、ガリウムナイトライド系半導体などの半導体素子;セラミック、ガラス、熱硬化性樹脂、極性基を有する熱可塑性樹脂などに対する初期接着性、接着耐久性、特には冷熱サイクルを受けたとき接着耐久性が優れている。本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤などとして有用である。特に、屈折率と光透過率が高いことから、光半導体素子、光半導体装置の封止剤(ポッティング剤、エンキャプシュラント、保護コーティング剤、アンダーフィル剤を含む)、接着剤(ダイボンディング剤を含む)などとして好適である。
【0058】
次に、本発明の光半導体装置について詳細に説明する。
本発明の光半導体装置は、光半導体素子、特には筺体内の光半導体素子が上記の光半導体素子封止剤の硬化物により封止されていることを特徴とする。この光半導体素子としては、具体的には、発光ダイオード(LED)素子、半導体レーザ素子、有機EL、フォトダイオード素子、フォトトランジスタ素子、固体撮像素子、フォトカプラー用発光素子と受光素子が例示される。
上記の光半導体素子封止剤の硬化物の屈折率と光透過率が高いことから、光半導体素子は好ましくは発光ダイオード(LED)素子である。
【0059】
そのための筐体は、本発明の光半導体素子封止剤が接着容易である金属、セラミック、熱硬化性樹脂、極性基を有する熱可塑性樹脂などの材料製であることが好ましく、形状や構造は限定されない。
金属としてステンレススチール、アルミニウム、デュラルミンが例示され、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂が例示され、極性基を有する熱可塑性樹脂としてポリフタルアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ABS樹脂、液晶性ポリマーが例示される。
【0060】
本発明の光半導体素子封止剤は、筺体内の光半導体素子と該筐体内壁の両方に接する状態で硬化していることが好ましい。
該光半導体素子封止剤の硬化物の可視光(589nm)における屈折率(25℃)、光透過率(25℃)は、前記したとおりである。
【0061】
本発明の光半導体装置としては、発光ダイオード(LED)装置、フォトカプラー、CCD、半導体レーザ装置、光検波器、光導波管、光導波形変調器、光集積回路が例示される。
特に、屈折率と光透過率が高いことから、好ましくは、発光ダイオード(LED)装置である。
【0062】
本発明の光半導体装置の代表例である単体の表面実装型発光ダイオード(LED)装置Aの断面図を図1に示した。図1で示される発光ダイオード(LED)装置Aは、ポリフタルアミド(PPA)樹脂製筐体1内のダイパッド6上に発光ダイオード(LED)チップ2がダイボンディングされ、この発光ダイオード(LED)チップ2とインナーリード3とがボンディングワイヤ4によりワイヤボンディングされている。この発光ダイオード(LED)チップ2は本発明の光半導体素子封止剤の硬化物5により該筐体内壁とともに封止されている。
【0063】
図1で示される表面実装型発光ダイオード(LED)装置Aを製造するには、ポリフタルアミド(PPA)樹脂製筐体1内の発光ダイオード(LED)チップ2をダイパッド6上にダイボンディングし、この発光ダイオード(LED)チップ2とインナーリード3とを金製のボンディングワイヤ4によりワイヤボンドする。次いで、該筐体1内に本発明の光半導体素子封止剤を注入した後、望ましくは脱泡後に50〜200℃に加熱することにより硬化させる。
【実施例】
【0064】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物、光半導体素子封止剤および光半導体装置を、実施例と比較例により詳細に説明する。なお、実施例と比較例中の粘度は25℃において測定した値である。また、実施例と比較例中のMe、PhおよびViはそれぞれ、メチル基、フェニル基およびビニル基を表している。硬化性オルガノポリシロキサン組成物、光半導体素子封止剤およびその硬化物の諸特性を次のようにして測定し、結果を表1に示した。また、光半導体素子封止剤を使用して表面実装型の発光ダイオード(LED)装置を作製し、硬化物の剥離率を次のようにして評価し、表2に示した。なお、硬化性オルガノポリシロキサン組成物は光半導体素子封止剤を意味することがあるが、単に「硬化性オルガノポリシロキサン組成物」と表示した。
【0065】
[1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの含有量]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの含有量は、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより、内部標準としてn−ウンデカンを用いて定量分析して求めた。すなわち、予め、n−ウンデカンに対する1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの相対強度を、標準サンプルを用いて測定しておき、ガスクロマトグラフのピーク強度と試料へのn−ウンデカンの添加量から、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンを定量した。
【0066】
定量は、サンプルを専用の20mlバイアル瓶に約2g秤量し、密封後、アジレントテクノロジー社製のヘッドスペースサンプラーG1888にて150℃×3時間加熱後、アジレントテクノロジー社製のキャピラリーガスクロマトグラフ(使用カラム:J&W サイエンティフィック社製DB−5、カラム長30m、カラム内径0.25mm、液相厚0.25μm)により行った。カラム温度は40℃で5分間保持後に毎分10℃にて250℃まで昇温後、5分間保持した。検出器には水素炎イオン化式検出器(FID)を採用した。
【0067】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物の屈折率]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物の屈折率を、アッベ式屈折率計を用いて25℃で測定した。なお、光源として、可視光(589nm)を用いた。
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物の光透過率]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を2枚のガラス板間に入れ150℃で1時間保持して硬化させた。硬化物(光路長0.2cm)の光透過率を、可視光(波長400nm〜700nm)の範囲において任意の波長で測定できる自記分光光度計を用いて25℃で測定した。ガラス板込みの光透過率とガラス板のみの光透過率を測定して、その差を硬化物の光透過率とした。なお、表1には波長450nmにおける光透過率を記載した。
【0068】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物の硬さ]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を150℃で1時間プレス成形することによりシート状硬化物を作製した。このシート状硬化物の硬さをJIS K6253に規定されるタイプAデュロメータにより測定した。
【0069】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物のポリフタルアミド(PPA)樹脂板への接着力]
2枚のポリフタルアミド(PPA)樹脂板(幅25mm、長さ50mm、厚さ1mm)間にポリテトラフルオロエチレン樹脂製スペーサ(幅10mm、長さ20mm、厚さ1mm)を挟み込み、その隙間に硬化性オルガノポリシロキサン組成物を充填し、クリップで留め、150℃の熱風循環式オーブン中に1時間保持して硬化させた。室温に冷却後、クリップとスペーサを外して引張試験機により該ポリフタルアミド(PPA)樹脂板を水平反対方向に引張って、硬化物の破壊時の応力を測定した。
【0070】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物のアルミニウム板への接着力]
2枚のアルミニウム板(幅25mm、長さ75mm、厚さ1mm)間にポリテトラフルオロエチレン樹脂製スペーサ(幅10mm、長さ20mm、厚さ1mm)を挟み込み、その隙間に硬化性オルガノポリシロキサン組成物を充填し、クリップで留め、150℃の熱風循環式オーブン中に1時間保持して硬化させた。室温に冷却後、クリップとスペーサを外して引張試験機により該アルミニウム板を水平反対方向に引張って、硬化物の破壊時の応力を測定した。
【0071】
[表面実装型発光ダイオード(LED)装置の作製]
底部が塞がった円筒状のポリフタルアミド(PPA)樹脂製筐体1(内径2.0mm、深さ1.0mm)の内底部の中心部に向かってインナーリード3が側壁から延出しており、ダイパッド6上に発光ダイオード(LED)チップ2がダイボディングされており、発光ダイオード(LED)チップ2とインナーリード3はボンディングワイヤ4により電気的に接続している発光ダイオード(LED)装置前駆体の、該筐体1内に、各実施例または各比較例の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を脱泡しディスペンサーを用いて注入し、加熱オーブン中、100℃で30分間、続いて150℃で1時間加熱して、該組成物を硬化させることにより、各々16個の図1に示す表面実装型発光ダイオード(LED)装置Aを作製した。
【0072】
[硬化物の初期剥離率]
上記表面実装型発光ダイオード(LED)装置A16個について、該筐体1の内壁と該組成物の硬化物間の剥離状態を光学顕微鏡で観察し、剥離した個数/16個を剥離率とした。
【0073】
[恒温恒湿保持後の剥離率]
上記表面実装型発光ダイオード(LED)装置A16個を30℃/70RH%の空気中に72時間保持した後、室温(25℃)下に戻して、該筐体1の内壁、発光ダイオード(LED)チップ2の表面、インナーリード3の表面、ボンディングワイヤ4の表面と該組成物の硬化物間の剥離状態を光学顕微鏡で観察し、剥離した個数/16個を剥離率とした。
【0074】
[280℃/30秒間保持後の剥離率]
上記恒温恒湿保持後の表面実装型発光ダイオード(LED)装置A16個を280℃のオーブン内に30秒間置いた後、室温(25℃)に戻して、該筐体1の内壁、発光ダイオード(LED)チップ2の表面、インナーリード3の表面、ボンディングワイヤ4の表面と該組成物の加熱硬化物間の剥離状態を光学顕微鏡で観察し、剥離した個数/16個を剥離率とした。
【0075】
[熱衝撃サイクル後の剥離率]
上記280℃/30秒間保持後の表面実装型発光ダイオード(LED)装置A16個を、−40℃に30分間保持した後、+100℃に30分間保持し、この温度サイクル(−40℃〜+100℃)を合計5回繰り返した後、室温(25℃)に戻して、該筐体1の内壁、発光ダイオード(LED)チップ2の表面、インナーリード3の表面、ボンディングワイヤ4の表面と該組成物の硬化物間の剥離状態を光学顕微鏡で観察し、剥離した個数/16個を剥離率とした。
【0076】
[実施例1]
直鎖状の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(粘度=3,500mPa・s、ケイ素原子結合ビニル基の含有量=1.48重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=44.7モル%、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの合計含有量=2.7重量%)86.7重量部、
平均単位式:
(PhSiO3/2)0.4(HMe2SiO1/20.6
で表される分岐状のメチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン(粘度=700mPa・s、ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.65重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=25モル%)3.0重量部、
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン(粘度=115mPa・s、ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.32重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=55.6モル%)10.3重量部、
白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が重量単位で2.5ppmとなる量)、および2−フェニル−3−ブチン−2−オール0.05重量部を均一に混合して、粘度1,500mPa・sである無色透明な硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0077】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物およびその硬化物の特性を測定した。これらの結果を表1に示した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて表面実装型発光ダイオード(LED)装置Aを作製し、信頼性評価を行った。これらの結果を表2に示した。
【0078】
[実施例2]
直鎖状の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(粘度=3,500mPa・s、ケイ素原子結合ビニル基の含有量=1.48重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=44.7モル%、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの合計含有量=2.7重量%)85.9重量部、
平均単位式:
(PhSiO3/2)0.6(HMe2SiO1/20.4
で表される分岐状のメチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン(粘度=2,400mPa・s、ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.38重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=42.9モル%)14.1重量部、
白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が重量単位で2.5ppmとなる量)、および2−フェニル−3−ブチン−2−オール0.05重量部を均一に混合して、粘度2,130mPa・sである無色透明な硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0079】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物およびその硬化物の特性を測定した。これらの結果を表1に示した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて表面実装型発光ダイオード(LED)装置Aを作製し、信頼性評価を行った。これらの結果を表2に示した。
【0080】
[実施例3]
直鎖状の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(粘度=3,500mPa・s、ケイ素原子結合ビニル基の含有量=1.48重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=44.7モル%、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの合計含有量=2.7重量%)55.8重量部、
平均単位式:
(PhSiO3/2)0.75(ViMe2SiO1/2)0.25
で表される分岐状のメチルビニルフェニルポリシロキサン{性状=固体状(25℃)、ケイ素原子結合ビニル基の含有量=5.62重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=50モル%}20.0重量部、
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン(粘度=115mPa・s、ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.32重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=55.6モル%)24.2重量部、
白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が重量単位で2.5ppmとなる量)、および2−フェニル−3−ブチン−2−オール0.05重量部を均一に混合して、粘度2,160mPa・sである無色透明な硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0081】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物およびその硬化物の特性を測定した。これらの結果を表1に示した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて表面実装型発光ダイオード(LED)装置Aを作製し、信頼性評価を行った。これらの結果を表2に示した。
【0082】
[比較例1]
直鎖状の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(粘度=3,200mPa・s、ケイ素原子結合ビニル基の含有量=1.37重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=44.9モル%、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの合計含有量=10.0重量%)88.1重量部、
平均単位式:
(PhSiO3/2)0.4(HMe2SiO1/20.6
で表される分岐状のメチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン(粘度=700mPa・s、ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.65重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=25モル%)3.6重量部、
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン(粘度=115mPa・s、ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.32重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=55.6モル%)8.3重量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が重量単位で2.5ppmとなる量)、および2−フェニル−3−ブチン−2−オール0.05重量部を均一に混合して、粘度1,280mPa・sである無色透明な硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0083】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物およびその硬化物の特性を測定した。これらの結果を表1に示した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて表面実装型発光ダイオード(LED)装置Aを作製し、信頼性評価を行った。これらの結果を表2に示した。
【0084】
[比較例2]
直鎖状の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(粘度=3,050mPa・s、ケイ素原子結合ビニル基の含有量=1.23重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=45.3モル%、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの合計含有量=19.4重量%)86.0重量部、
平均単位式:
(PhSiO3/2)0.6(HMe2SiO1/20.4
で表される分岐状のメチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン(粘度=2,400mPa・s、ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.38重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=42.9モル%)14.0重量部、
白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が重量単位で2.5ppmとなる量)、および2−フェニル−3−ブチン−2−オール0.05重量部を均一に混合して、粘度1,650mPa・sである無色透明な硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0085】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物およびその硬化物の特性を測定した。これらの結果を表1に示した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて表面実装型発光ダイオード(LED)装置Aを作製し、信頼性評価を行った。これらの結果を表2に示した。
【0086】
[比較例3]
直鎖状の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(粘度=3,170mPa・s、ケイ素原子結合ビニル基の含有量=0.20重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=49モル%、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの合計含有量=6重量%)56.8重量部、
平均単位式:
(PhSiO3/2)0.75(ViMe2SiO1/20.25
で表される分岐状のメチルフェニルビニルポリシロキサン{性状=固体状(25℃)、ケイ素原子結合ビニル基の含有量=5.62重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=50モル%}20.0重量部、
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン(粘度=115mPa・s、ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.32重量%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=55.6モル%)23.2重量部、
白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(本組成物において、本錯体中の白金金属が重量単位で2.5ppmとなる量)、および2−フェニル−3−ブチン−2−オール0.05重量部を均一に混合して、粘度1,770mPa・sである無色透明な硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0087】
この硬化性オルガノポリシロキサン組成物およびその硬化物の特性を測定した。これらの結果を表1に示した。また、この硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて表面実装型発光ダイオード(LED)装置Aを作製し、信頼性評価を行った。これらの結果を表2に示した。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤などとして有用であり、光透過率が高いことから、特に、光半導体素子、光半導体装置の封止剤(ポッティング剤、エンキャプシュラント、保護コーティング剤、アンダーフィル剤を含む)、接着剤(ダイボンディングを含む)などとして有用である。本発明の光半導体素子封止剤は、光半導体素子の封止剤(ポッティング剤、エンキャプシュラント、保護コーティング剤、アンダーフィル剤を含む)として有用である。また、本発明の光半導体装置は、光学装置、光学機器、照明機器、照明装置などの光半導体装置として有用である。
【符号の説明】
【0091】
A 表面実装型発光ダイオード(LED)装置
1 ポリフタルアミド(PPA)樹脂製筐体
2 発光ダイオード(LED)チップ
3 インナーリード
4 ボンディングワイヤ
5 光半導体素子封止剤の硬化物
6 ダイパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し,全シロキサン単位の70モル%以上がメチルフェニルシロキサン単位であるジオルガノポリシロキサン(ただし、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの含有量の合計が5重量%以下である)、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合有機基のうち15モル%以上がフェニル基であるオルガノポリシロキサン{(A)成分中の総アルケニル基のモル数に対して、(B)成分のケイ素原子結合水素原子のモル数が10〜500%となる量}、
および
(C)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物を硬化させるのに十分な量)
から少なくともなることを特徴とする、硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(A)成分が、平均構造式(1):
【化1】


(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基であり、R1はアルケニル基、メチル基およびフェニル基であり、一分子中のR1の少なくとも2個はアルケニル基であり、nとmの合計は平均5〜1,000の数であり、m/nが0.2以下である)で表されるジオルガノポリシロキサンであり、(B)成分が、平均構造式(2):
【化2】


(式中、R2は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、一分子中のR2の少なくとも2個は水素原子であり、水素原子以外のR2の15モル%以上がフェニル基である。pは平均0〜1,000の数である)で示される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、および、平均シロキサン単位式(3):R3abSiO(4-a-b)/2
(式中、R3はメチル基およびフェニル基であり、その15モル%以上がフェニル基であり、aは平均0.5≦a<2.0の数であり、bは平均0.5≦b<2.0の数であり、a+bは平均1.0≦a+b<2.0の数である)で示される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンから選択されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
さらに、(A)成分と(B)成分の合計量に対して50重量%以下の、平均単位式(4):
4cSiO(4-c)/2 (式中、R4はアルケニル基、メチル基およびフェニル基であり、その20モル%以上がフェニル基であり、cは平均0.5〜1.7の正数である。)で示されるメチルフェニルアルケニルポリシロキサンを含有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.5以上であり、光透過率(25℃)が80%以上である硬化物を形成することを特徴とする、請求項1、請求項2または請求項3に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し,全シロキサン単位の70モル%以上がメチルフェニルシロキサン単位であるジオルガノポリシロキサン(ただし、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサンの含有量の合計が5重量%以下である)、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合有機基のうち15モル%以上がフェニル基であるオルガノポリシロキサン{(A)成分中の総アルケニル基のモル数に対して、(B)成分のケイ素原子結合水素原子のモル数が10〜500%となる量}、
および
(C)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物を硬化させるのに十分な量)
から少なくともなり、可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.5以上であり、光透過率(25℃)が80%以上である硬化物を形成することを特徴とする、光半導体素子封止剤。
【請求項6】
(A)成分が、平均構造式(1):
【化3】


(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基であり、R1はアルケニル基、メチル基およびフェニル基であり、一分子中のR1の少なくとも2個はアルケニル基であり、nとmの合計は平均5〜1,000の数であり、m/nが0.2以下である)で表されるジオルガノポリシロキサンであり、(B)成分が、平均構造式(2):
【化4】


(式中、R2は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、一分子中のR2の少なくとも2個は水素原子であり、水素原子以外のR2の15モル%以上がフェニル基である。pは平均0〜1,000の数である)で示される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、および、平均シロキサン単位式(3):R3abSiO(4-a-b)/2
(式中、R3はメチル基およびフェニル基であり、その15モル%以上がフェニル基であり、aは平均0.5≦a<2.0の数であり、bは平均0.5≦b<2.0の数であり、a+bは平均1.0≦a+b<2.0の数である)で示される分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンから選択されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする、請求項5に記載の光半導体素子封止剤。
【請求項7】
さらに、(A)成分と(B)成分の合計量に対して50重量%以下の、平均単位式(4):
4cSiO(4-c)/2 (式中、R4はアルケニル基、メチル基およびフェニル基であり、その20モル%以上がフェニル基であり、cは 平均0.5〜1.7の正数である。)で示されるメチルフェニルアルケニルポリシロキサンを含有することを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の光半導体素子封止剤。
【請求項8】
光半導体素子が、発光半導体素子であることを特徴とする、請求項5、請求項6または請求項7記載の光半導体素子封止剤。
【請求項9】
発光半導体素子が発光ダイオード素子であることを特徴とする、請求項8に記載の光半導体素子封止剤。
【請求項10】
光半導体素子が請求項5、請求項6または請求項7に記載の光半導体素子封止剤の硬化物で封止されていることを特徴とする、光半導体素子を具備する光半導体装置。
【請求項11】
光半導体装置は、筐体内に光半導体素子を具備しており、該光半導体素子は筐体内壁とともに請求項5、請求項6または請求項7に記載の光半導体素子封止剤の硬化物で封止されていることを特徴とする、請求項10に記載の光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−84118(P2010−84118A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25254(P2009−25254)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】