説明

硬化性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム及びプリント配線板

【課題】ハロゲンフリーの着色剤及び難燃剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、低反りで銅回路の酸化による変色に起因する外観不良の隠蔽性に優れたソルダーレジスト層を形成可能な硬性樹脂組成物、そのドライフィルム、並びにこれらによりソルダーレジスト等の難燃性の硬化皮膜が形成されてなるプリント配線板を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)酸化チタン及び(C)水酸化アルミニウムを含有する。前記各成分の他にさらに(D)分子中に2つ以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分を含有することにより、熱硬化性樹脂組成物とすることができ、さらに(F)光重合開始剤及び(G)光重合性モノマーを含有することにより、光硬化性熱硬化性樹脂組成物とすることができる。好適には、さらに(E)リン含有化合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、特に低反りで難燃性と着色性、隠蔽性に優れたソルダーレジストを形成できる硬化性樹脂組成物に関する。本発明はまた、かかる硬化性樹脂組成物を用いたドライフィルム及び難燃性のプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板及びフレキシブル配線板(以下、FPCと略称する)は、電子機器に搭載されるため難燃性が要望されており、これらの一部であるソルダーレジストにも難燃性が要求されている。この中でも、FPCは、通常、ポリイミド基板からなるため、ガラスエポキシ基板のプリント配線板とは異なり薄膜である。しかしながら、塗布されるべきソルダーレジストは、プリント配線板もFPCも同じ膜厚であるため、薄膜のFPCの場合、相対的にソルダーレジストへの難燃化の負担が大きくなる。
【0003】
そのため、従来からソルダーレジストの難燃化について種々の提案がなされている。例えば、特開2007−10794号公報(特許文献1)には、(a)バインダポリマー、(b)ブロモフェニル基等のハロゲン化芳香環と、(メタ)アクリロイル基等の重合可能なエチレン性不飽和結合とを分子中に有する光重合性化合物、(c)光重合開始剤、(d)ブロックイソシアネート化合物、及び(e)分子中にリン原子を有するリン含有化合物を含有するFPC用の難燃性の感光性樹脂組成物が提案されている。しかしながら、ハロゲン化芳香環と重合可能な不飽和二重結合を有する化合物のような、ハロゲン化合物の使用は環境負荷の観点から好ましくない。
【0004】
さらに、FPCに代表される薄膜のプリント基板は、ソルダーレジストの光硬化もしくは熱硬化の際に、硬化収縮による反りの発生が問題となっている。
【0005】
一方、ソルダーレジストは、銅回路の保護にために形成されるが、その役割の一つとしては、銅回路の熱や湿気、電気的な変色や銅回路上の傷、汚れなども見えなくするという側面(隠蔽性)もある。この点に関して、ソルダーレジストに対しては着色剤の添加が通常行われており、その濃度を濃くすることで外観的な不良を見え難くしている。
【0006】
最近のソルダーレジストは、環境負荷低減の観点から、従来の緑色の着色剤である塩素化フタロシアニングリーンに替えて、ハロゲン原子を有さないフタロシアニンブルーと黄色着色剤を用いたソルダーレジストが普及している(例えば、特許文献2を参照)。また、外観上から明確にハロゲンフリーであることを主張するため、フタロシアニンブルーを用い、青色のままのソルダーレジストとしても使用されている。しかしながら、フタロシアニングリーンによる緑色と比べて、青色のソルダーレジストインキや、青色着色剤と黄色着色剤による緑色ソルダーレジストインキでは、隠蔽性が弱く、外観的な不良を見え難くするという着色剤としての機能を充分に果たし得ない場合のあることが、以下に説明するようにわかってきた。
【0007】
すなわち、現在のソルダーレジストは光硬化で画像形成され、最終的に熱硬化処理が施される。このときの温度は150℃で約30〜60分が適切であるが、実際は基板メーカーによって温度や時間が一定ではなく、多少異なる。特に、温度が高く、処理時間が長いときには、隠蔽性が悪い青色のソルダーレジストインキを用いた基板は、銅回路の酸化による変色をレジストが隠蔽出来ず、基板の見た目が悪くなるという問題がある。この問題は、上記のハロゲンフリーの青色着色剤と黄色着色剤を用いた緑色ソルダーレジストインキにおいても同様に生じ得、フタロシアニングリーンに比し隠蔽性が弱いことが本発明者等により確認されている。また、基板上にマーキングインキを施す場合には、ソルダーレジストの硬化後、さらにマーキングを印刷し熱硬化させるため、銅回路の変色は加速され、外観上の問題はさらに深刻となる。さらには、ソルダーレジストの熱硬化の際に生じる基板の反りを補整するため、圧力と熱をかける場合があり、同様に回路の変色が問題視されている。
【0008】
これら銅回路の変色で最もよくない現象は、同じ銅回路上であっても回路のエッジ(レジストが薄くなっているところ)のみ変色している状態である。このような状態のときは、基板の検査や実装の際に検査データとの不整合により不良とされてしまう。一方、変色は認められるが、それが銅回路上で他の部分と均一であるように認識できる場合には、そのような不具合とはならない。これらの不具合は、以前より報告されていたものであるが、特にフタロシアニングリーンに代えて、ハロゲン原子を有しないフタロシアニンブルー等の着色剤を用いた場合(着色剤のハロゲンフリー化)に顕著なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−10794号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2000−7974号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記したような従来技術の問題を解決すべくなされたものであり、その主たる目的は、ハロゲンフリーの着色剤及び難燃剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、低反りで銅回路の酸化による変色に起因する外観不良の隠蔽性に優れたソルダーレジスト層を形成可能な硬化性樹脂組成物を提供することにある。
さらに本発明の目的は、かかる硬化性樹脂組成物を用いることによって、低反りで難燃性と着色性、隠蔽性に優れたドライフィルム及びこのような優れた特性の難燃性皮膜を有するプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明によれば、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)酸化チタン及び(C)水酸化アルミニウムを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物が提供される。
一つの態様においては、前記各成分の他にさらに(D)分子中に2つ以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分を含有することにより、熱硬化性樹脂組成物とすることができる。別の好適な態様においては、さらに(E)リン含有化合物を含有する。別の態様においては、さらに(F)光重合開始剤及び(G)光重合性モノマーを含有することにより、光硬化性熱硬化性樹脂組成物とすることができる。別の好適な態様においては、前記酸化チタン(B)以外の着色剤(H)を含有する。より好適な態様においては、上記カルボキシル基含有樹脂(A)はウレタン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂であり、あるいはビフェニルノボラック構造とエチレン性不飽和基有するカルボキシル基含有樹脂であり、また、上記分子中に2つ以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分(D)はビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂である。このような硬化性樹脂組成物は、プリント配線板のソルダーレジスト形成に好適に用いることができる。
【0012】
また、本発明によれば、前記硬化性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルム、あるいはさらに前記硬化性樹脂組成物又はこの硬化性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布・乾燥させて得られるドライフィルムを、熱硬化及び/又は光硬化して得られる硬化物が提供される。さらに本発明によれば、前記硬化物を有するプリント配線板も提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂と共に、(B)酸化チタン及び(C)水酸化アルミニウムを含有し、好ましくはさらに(E)リン含有化合物を含有することにより、ノンハロゲン組成で環境負荷が少なく、難燃性で低反り、着色性、隠蔽性に優れた皮膜を形成することができる。従って、本発明の硬化性樹脂組成物を用いることによって、低反りで難燃性と着色性、隠蔽性に優れたドライフィルム及びこのような優れた特性の難燃性のソルダーレジスト皮膜を有するプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、前記した課題を達成すべく鋭意研究した結果、本発明の硬化性樹脂組成物の成分であるカルボキシル基含有樹脂(A)及び水酸化アルミニウム(C)と共に含有する酸化チタン(B)は、ハロゲンフリーの着色剤を使用した場合であっても回路の変色を隠蔽する効果があると同時に、硬化した皮膜の反りを低減する効果があることを見出した。これは、従来全く考えられない驚くべき効果であった。また、酸化チタン(B)と共に水酸化アルミニウム(C)を併用した場合、水酸化アルミニウムは難熱剤として作用するだけでなく、感光性樹脂組成物に組成した時に、感光性樹脂と親和性、屈折率が近く、光硬化を効率的に行うことができ、酸化チタン添加に伴う感度や解像性の低下を大幅に抑制できることを見出した。さらに、カルボキシル基含有樹脂(A)としてカルボキシル基含有ウレタン樹脂を用いた場合、低弾性、低反りに効果があり、硬化した皮膜の反りをさらに低減する効果があり、さらにリン含有化合物(E)を含有することにより、難燃性をさらに向上させることができる。
以下、本発明の硬化性樹脂組成物の各構成成分について詳しく説明する。
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)としては、分子中にカルボキシル基を含有している公知慣用の樹脂化合物が使用できる。さらにアルカリ現像性の樹脂組成物とする場合には、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有樹脂(A’)が、光硬化性や耐現像性の面からより好ましい。そして、その不飽和基はアクリル酸もしくはメタアクリル酸誘導体由来のものが好ましい。尚、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、組成物を光硬化性とするためには、後述する分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマー(G)を併用する必要がある。
カルボキシル基含有樹脂(A)の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)を好適に使用できる。
【0016】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0017】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物及びポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0018】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0019】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物及びジオール化合物の重付加反応による感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0020】
(5)上記(2)又は(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0021】
(6)上記(2)又は(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0022】
(7)後述するような多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。
【0023】
(8)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。
【0024】
(9)後述するような2官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0025】
(10)上記(1)〜(9)の樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなる感光性カルボキシル基含有樹脂。
【0026】
これらのカルボキシル基含有樹脂の中でも好ましいものは、(X)カルボキル基含有ポリウレタン樹脂、特にそのウレタン樹脂のイソシアネート基を有する成分(ジイソシアネートも含む)のイソシアネート基が直接ベンゼン環に結合していないもの、及び(Y)前記樹脂の合成に用いられる多官能エポキシ樹脂がビスフェノールA構造、ビスフェノールF構造、ビフェノール構造、ビフェニルノボラック構造、ビスキシレノール構造、特にビフェニルノボラック構造、を有する化合物及びその水添化合物の場合、低反り、折り曲げ耐性の点で好ましい。また、この中でも好ましいものは、前記の共重合樹脂や、上記イソシアネート基を有する化合物(ジイソシアネートも含む)のイソシアネート基が直接ベンゼン環に結合していないジイソシアネートからなるカルボキシル基含有ウレタン樹脂が、低反り化に特に好ましく、さらに黄変がなく、隠蔽性に有効で、かつ紫外線吸収が少ないため、アルカリ現像性組成物とした際に解像性に優れる特徴がある。
尚、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0027】
前記のようなカルボキシル基含有樹脂(A)は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有するため、熱硬化の際の架橋点となる。また、感光性組成物とした際はアルカリ水溶液による現像が可能になる。
また、前記カルボキシル基含有樹脂(A)の酸価は、10〜200mgKOH/gの範囲、好ましくは30〜200mgKOH/gの範囲、より好ましくは40〜200mgKOH/g、特に好ましくは45〜120mgKOH/gの範囲にあることが望ましい。アルカリ現像性の観点からは、カルボキシル基含有樹脂の酸価が30mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
【0028】
また、前記カルボキシル基含有樹脂(A)の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000、さらには5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000未満の場合、耐熱性が不十分である。一方、重量平均分子量が150,000を超えると貯蔵安定性が劣ることがある。
【0029】
前記したようなカルボキシル基含有樹脂(A)の配合量は、全組成物中に、5〜60質量%、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜60質量%特に好ましくは30〜50質量%である。上記範囲より少ない場合、塗膜強度が低下したりするので好ましくない。一方、上記範囲より多い場合、組成物の粘性が高くなったり、塗布性等が低下するので好ましくない。
【0030】
本発明の硬化性樹脂組成物で用いられる酸化チタン(B)としては、硫酸法、塩素法により製造されるものや、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、あるいは含水金属酸化物による表面処理、有機化合物による表面処理を施した酸化チタンを用いることができる。これらの酸化チタン(B)の中でも、ルチル型酸化チタンが好ましい。アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型と比較して白色度が高いためによく使用される。しかしながら、アナターゼ型酸化チタンは、光触媒活性を有するために、光硬化性熱硬化性樹脂組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対し、ルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型と比較して若干劣るものの、光活性を殆ど有さないために、安定したソルダーレジスト膜を得ることができる。ルチル型酸化チタンとしては、公知のルチル型のものを使用することができる。具体的には、富士チタン工業(株)製TR−600、TR−700、TR−750、TR−840、石原産業(株)製R−550、R−580、R−630、R−820、CR−50、CR−60、CR−90、CR−97、チタン工業(株)製KR−270、KR−310、KR−380等を使用することができる。これらのルチル型酸化チタンの中でも、表面が含水アルミナ又は水酸化アルミニウムで処理された酸化チタンを用いることが、組成物中での分散性、保存安定性、難燃性の観点から特に好ましい。
【0031】
これら酸化チタン(B)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜200質量部の範囲が望ましく、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは3〜80質量部である。酸化チタン(B)の配合量が0.1質量部未満の場合、良好な隠蔽性、さらには低反り性の性能が得られない。一方、200質量部を超える過剰な添加は、酸化チタンが紫外線領域において光を反射する性質を持っており、かつ屈折率も2.71と感光性樹脂と比較して非常に高い値であることから、ソルダーレジストとして十分な硬化深度が得られず、解像性が劣ってしまう。なお、本発明に従って水酸化アルミニウム(C)をさらに加えない場合には、より顕著に解像性の低下が認められる。
【0032】
水酸化アルミニウム(C)は、難燃性の添加剤として知られているが、感光性樹脂と親和性、屈折率が近く、光硬化を効率的に行うために添加する。前記酸化チタンは白色度、隠蔽性に優れるが、屈折率(2.71)が高く、紫外線に対しても反射が強いため、多量に使用するとソルダーレジストのごとき厚膜(約10〜50μm)で解像性が要求される感光性組成物では感度及び解像性の低下が問題になる。そこで、酸化チタンと共に水酸化アルミニウムを用い、感光性樹脂の深さ方向に対して光を充分に透過させるために使用する。この手法により、隠蔽性を保持したままアルカリ現像型感光性組成物の解像性を向上することができた。また、ソルダーレジストに求められる難燃性も確保することができた。
【0033】
水酸化アルミニウム(C)としては、汎用公知のものが使用でき、例えば昭和電工社製ハイジライトシリーズ、HW、H21、H31、H32、H42M、H43Mなどが使用できる。尚、水酸化アルミニウムの粒径が細かい方が耐折れ性に効果的であるので、予め溶剤や樹脂と一緒にビーズミル等で一次粒経まで分散加工し、フィルタリング等で3μm以上、より好ましくは1μm以上のものをろ過選別して使用したほうが、得られる硬化皮膜の難燃性、折り曲げ性の観点から好ましい。
【0034】
これら水酸化アルミニウム(C)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、1〜200質量部の範囲が望ましく、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは10〜80質量部である。水酸化アルミニウム(C)の配合量が1質量部よりも少ないと解像性向上の効果がなく、難燃性も十分でない。一方、200質量部よりも多い場合には、難燃性は良好であるが、可撓性が劣り、はんだ耐熱性も悪くなる。
【0035】
本発明の組成物を熱硬化性樹脂組成物に組成して耐熱性、絶縁信頼性等の特性を向上させる目的で用いられる熱硬化性成分(D)としては、カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基と反応しうる分子中に2つ以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略称する)を有する従来公知の化合物は全て用いることができるが、中でも2官能性以上のエポキシ樹脂、特にビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。ビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば、日本化薬(株)製のNC−3000L、NC−3000、NC−3000H、NC−3100等が挙げられる。
【0036】
その他、本発明の熱硬化性樹脂組成物に熱硬化性成分として用いることができる分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4又は5員環の環状エーテル基又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を2つ以上有する化合物であり、例えば、分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物(D−1)、分子中に2つ以上のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物(D−2)、分子中に2つ以上のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂(D−3)などが挙げられる。
【0037】
前記多官能エポキシ化合物(D−1)としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のJER828、JER834、JER1001、JER1004、大日本インキ化学工業社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のJER YL903、大日本インキ化学工業社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のJER152、JER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン社製JER807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のJER604、東都化成社製のエポトートYH−434、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY−350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、大日本インキ化学工業社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のJER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のJERYL−931、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学社製ESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB−3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR−102、YR−450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はそれらの混合物が好ましい。
【0038】
前記多官能オキセタン化合物(D−2)としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0039】
前記分子中に2つ以上の環状チオエーテル基を有するエピスルフィド樹脂(D−3)としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂YL7000などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0040】
前記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分(D)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、好ましくは0.6〜2.5当量、より好ましくは、0.8〜2.0当量となる範囲にある。分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分(D)の配合量が0.6未満である場合、ソルダーレジスト膜にカルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下するので、好ましくない。一方、2.5当量を超える場合、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することにより、塗膜の強度などが低下するので、好ましくない。
【0041】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化塗膜の更なる耐熱性、絶縁信頼性の向上を目的として、前記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分(D)の他に、1分子中に2個以上のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物、メラミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン樹脂などのアミン樹脂、シクロカーボネート化合物、ビスマレイミド、オキサジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド樹脂などの公知慣用の熱硬化性樹脂を配合することができる。
【0042】
前記1分子中に2個以上のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物、すなわちポリイソシアネート化合物、又は1分子中に2個以上のブロック化イソシアネート基を有する化合物、すなわちブロックイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0043】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが用いられる。芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート及び2,4−トリレンダイマーが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びイソホロンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートの具体例としてはビシクロヘプタントリイソシアネートが挙げられる。並びに先に挙げられたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体が挙げられる。
【0044】
前記ブロックイソシアネート化合物に含まれるブロック化イソシアネート基は、イソシアネート基がブロック剤との反応により保護されて一時的に不活性化された基である。所定温度に加熱されたときにそのブロック剤が解離してイソシアネート基が生成する。
【0045】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。ブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等が挙げられる。このイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが用いられる。芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、先に例示したような化合物が挙げられる。
【0046】
イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール及びエチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、δ−パレロラクタム、γ−ブチロラクタム及びβ−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル及び乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド及びマレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;キシリジン、アニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミン及びプロピレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0047】
ブロックイソシアネート化合物は市販のものであってもよく、例えば、スミジュールBL−3175、BL−4165、BL−1100、BL−1265、デスモジュールTPLS−2957、TPLS−2062、TPLS−2078、TPLS−2117、デスモサーム2170、デスモサーム2265(以上、住友バイエルウレタン社製、商品名)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(以上、日本ポリウレタン工業社製、商品名)、B−830、B−815、B−846、B−870、B−874、B−882(三井武田ケミカル社製、商品名)、TPA−B80E、17B−60PX、E402−B80T(旭化成ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。なお、スミジュールBL−3175、BL−4265はブロック剤としてメチルエチルオキシムを用いて得られるものである。
【0048】
上記の1分子中に2個以上のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような1分子中に2個以上のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、1〜100質量部、より好ましくは2〜70質量部の割合が適当である。前記配合量が、1質量部未満の場合、十分な塗膜の強靭性が得られず、好ましくない。一方、100質量部を超えた場合、組成物の保存安定性が低下するので好ましくない。
【0049】
さらに、他の熱硬化性成分としては、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体などが挙げられる。例えばメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物及びメチロール尿素化合物などがある。さらに、アルコキシメチル化メラミン化合物、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン化合物、アルコキシメチル化グリコールウリル化合物及びアルコキシメチル化尿素化合物は、それぞれのメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物及びメチロール尿素化合物のメチロール基をアルコキシメチル基に変換することにより得られる。このアルコキシメチル基の種類については特に限定されるものではなく、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等とすることができる。特に人体や環境に優しいホルマリン濃度が0.2%以下のメラミン誘導体が好ましい。
【0050】
これらの市販品としては、例えばサイメル300、同301、同303、同370、同325、同327、同701、同266、同267、同238、同1141、同272、同202、同1156、同1158、同1123、同1170、同1174、同UFR65、同300(以上、三井サイアナミッド(株)製)、ニカラックMx−750、同Mx−032、同Mx−270、同Mx−280、同Mx−290、同Mx−706、同Mx−708、同Mx−40、同Mx−31、同Ms−11、同Mw−30、同Mw−30HM、同Mw−390、同Mw−100LM、同Mw−750LM(以上、三和ケミカル(株)製)等を挙げることができる。上記熱硬化性成分は単独で又は2種以上を併用することができる。
【0051】
前記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分(D)を使用する場合、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物など、また市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT(登録商標)3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0052】
これら熱硬化触媒の配合量は、通常の量的割合で充分であり、例えば前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物は、リン含有化合物(E)を含むことが好ましい。リン含有化合物としては有機リン系難燃剤として慣用公知のものが良く、リン酸エステル及び縮合リン酸エステル、環状フォスファゼン化合物、フォスファゼンオリゴマーもしくは下記一般式(I)で表される化合物がある。
【化1】

式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子以外の置換基を示す。
上記一般式(I)で表される化合物の市販品としては、HCA、SANKO−220、M−ESTER、HCA−HQ(いずれも三光(株)の商品名)等がある
【0054】
本発明において用いられる特に好ましいリン含有化合物(E)としては、反応性基として(1)アクリレート基を有するものや、(2)フェノール性水酸基を有するもの、(3)オリゴマーもしくはポリマー及び(4)フォスファゼンオリゴマーが挙げられる。
【0055】
(1)アクリレート基を有するリン含有化合物
リン元素含有アクリレートは、リン元素を有しており分子中に2つ以上の(メタ)アクリレートを含む化合物が良く、具体的には、前記一般式(1)におけるRとRが水素原子であり、Rがアクリレート誘導体である化合物が挙げられ、一般に9,10−ジヒドロー9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイドと公知慣用の多官能アクリレートモノマーとのマイケル付加反応により合成することができる。
【0056】
上記公知慣用のアクリレートモノマーとしては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物もしくはカプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;及び上記ポリアルコール類のウレタンアクリレート類、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
【0057】
(2)フェノール水酸基を有するリン含有化合物
このフェノール性水酸基を有するリン含有化合物は、疎水性、耐熱性が高く、加水分解による電気特性の低下が無く、はんだ耐熱性が高い。また、好適な組み合わせとして、(D)成分としてビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂やその他のエポキシ樹脂を使用することによって、エポキシ樹脂と反応し、ネットワークに取り込まれるので、硬化後にブリードアウトすることが無いという利点が得られる。市販品としては、三光(株)製HCA−HQなどがある。
【0058】
(3)オリゴマーもしくはポリマー
オリゴマーもしくはポリマーであるリン含有化合物は、アルキル鎖の影響により折り曲げ性の低下が少なく、また分子量が大きいため硬化後のブリードアウトが無いという利点が得られる。市販品としては、三光(株)製M−Ester−HP、東洋紡(株)製リン含有バイロン337などがある。
【0059】
(4)フォスファゼンオリゴマー
フォスファゼンオリゴマーとしてはフェノキシフォスファゼン化合物が有効であり、置換もしくは無置換フェノキシフォスファゼンオリゴマー又は3量体、4量体、5量体の環状物があり、液状や固体粉末のものがあるがいずれも好適に使用することができる。市販品としては、(株)伏見製薬所製FP−100、FP−300、FP−390などがある。この中でも、アルキル基もしくは水酸基やシアノ基などの極性基で置換されたフェノキシフォスファゼンオリゴマーが、カルボキシル基含有樹脂への溶解性が高く、多量に添加しても再結晶などの不具合がないため好ましい。
【0060】
これら難燃剤としてのリン含有化合物(E)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、0〜200質量部の範囲が望ましく、特に好ましくは0〜100質量部である。これ以上多量に配合すると、得られる硬化皮膜の折り曲げ特性等が悪くなるので好ましくない。
【0061】
光硬化性樹脂組成物を組成するために用いられる光重合開始剤(F)としては、下記一般式(II)で表される基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、下記一般式(III)で表される基を有するα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、又は/及び下記式(IV)で表される基を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤よりなる群から選択される1種以上の光重合開始剤を使用することが好ましい。
【化2】

式中、Rは、水素原子、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表し、
は、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表し、
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基又はアリールアルキル基を表し、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は2つが結合した環状アルキルエーテル基を表し、
10及びR11は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アリール基、又はハロゲン原子、アルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたアリール基を表し、但し、R10及びR11の一方は、R−C(=O)−基(ここでRは、炭素数1〜20の炭化水素基)を表してもよい。
【0062】
前記一般式(II)で表される基を有するオキシムエステル系光重合開始剤としては、好ましくは、下記式(V)で表される2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン、下記一般式(VI)で表される化合物、及び下記一般式(VII)で表される化合物が挙げられる。
【化3】

【0063】
【化4】

式中、R12は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基(アルコキシル基を構成するアルキル基の炭素数が2以上の場合、アルキル基は1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、又はフェノキシカルボニル基を表し、
13、R15は、それぞれ独立に、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表し、
14は、水素原子、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表す。
【0064】
【化5】

式中、R16、R17及びR22は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基を表し、
18、R19、R20及びR21は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、
Mは、O、S又はNHを表し、
m及びpは、それぞれ独立に0〜5の整数を表す。
【0065】
前記オキシムエステル系光重合開始剤の中でも、前記一般式(V)で表される2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン、及び式(VI)で表される化合物がより好ましい。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のCGI−325、イルガキュアー(登録商標)OXE01、イルガキュアーOXE02、ADEKA社製のN−1919等が挙げられる。これらのオキシムエステル系光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
前記一般式(III)で表される基を有するα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
【0067】
前記一般式(IV)で表される基を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
【0068】
前記した光重合開始剤の中でも特に好ましいのは、前記一般式(IV)で表される基を有するアシルホスフィンオキサイド系開始剤であり、フォトブリーチ性能から光の透過性がもっとも良く、且つ難燃性に効果がある。また、前記一般式(II)で表される基を有するオキシムエステル系開始剤は、開始剤効率が良く、少量で感度向上に効果的であるため、レジスト皮膜形成後の熱処理時のアウトガスが少なく、皮膜の反り低減に効果的であるので好ましい。特に好ましいのは両者の併用である。
【0069】
前記したような光重合開始剤(F)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜30質量部、好ましくは0.5〜15質量部の範囲が適当である。光重合開始剤(F)の配合量が0.01質量部未満であると、銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離したり、耐薬品性等の塗膜特性が低下するので好ましくない。一方、30質量部を超えると、光重合開始剤(F)のソルダーレジスト塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向があるために好ましくない。
なお、前記式(II)で表される基を有するオキシムエステル系光重合開始剤の場合、その配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.01〜5質量部の範囲が望ましい。
【0070】
他に本発明の光硬化性樹脂組成物に好適に用いることができる光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、キサントン化合物、及び3級アミン化合物等を挙げることができる。
【0071】
ベンゾイン化合物の具体例を挙げると、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルである。
アセトフェノン化合物の具体例を挙げると、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンである。
【0072】
アントラキノン化合物の具体例を挙げると、例えば、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンである。
チオキサントン化合物の具体例を挙げると、例えば、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンである。
【0073】
ケタール化合物の具体例を挙げると、例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールである。
ベンゾフェノン化合物の具体例を挙げると、例えば、ベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィドである。
【0074】
3級アミン化合物の具体例を挙げると、例えば、エタノールアミン化合物、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物、例えば、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達社製ニッソキュアーMABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−メチルクマリン)等のジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアーEPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)である。
【0075】
前記した化合物の中でも、チオキサントン化合物及び3級アミン化合物が好ましい。本発明の組成物には、チオキサントン化合物が含まれることが深部硬化性の面から好ましく、中でも、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物が好ましい。
このようなチオキサントン化合物の配合量としては、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下の割合が適当である。チオキサントン化合物の配合量が多すぎると、厚膜硬化性が低下して、製品のコストアップに繋がるので、好ましくない。
【0076】
3級アミン化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物が好ましく、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、最大吸収波長が350〜410nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物が特に好ましい。ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが、毒性も低く好ましい。最大吸収波長が350〜410nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物は、最大吸収波長が紫外線領域にあるため、着色が少なく、無色透明な感光性組成物はもとより、着色顔料を用い、着色顔料自体の色を反映した着色ソルダーレジスト膜を提供することが可能となる。特に、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンが波長400〜410nmのレーザー光に対して優れた増感効果を示すことから好ましい。
【0077】
このような3級アミン化合物の配合量としては、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部の割合である。3級アミン化合物の配合量が0.1質量部未満であると、十分な増感効果を得ることができない傾向にある。一方、20質量部を超えると、3級アミン化合物による乾燥ソルダーレジスト塗膜の表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。
【0078】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、感度を向上するために連鎖移動剤として公知慣用のNフェニルグリシン類、フェノキシ酢酸類、チオフェノキシ酢酸類、メルカプトチアゾール等を用いることができる。連鎖移動剤の具体例を挙げると、例えば、メルカプト琥珀酸、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メチオニン、システイン、チオサリチル酸及びその誘導体等のカルボキシル基を有する連鎖移動剤;メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトプロパンジオール、メルカプトブタンジオール、ヒドロキシベンゼンチオール及びその誘導体等の水酸基を有する連鎖移動剤;1−ブタンチオール、ブチル−3−メルカプトプロピオネート、メチル−3−メルカプトプロピオネート、2,2−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチオール、4−メチルベンゼンチオール、ドデシルメルカプタン、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、1−オクタンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、チオグリセロール、4,4−チオビスベンゼンチオール等である。
【0079】
さらに、連鎖移動剤として働くメルカプト基を有する複素環化合物として、例えば、メルカプト−4−ブチロラクトン(別名:2−メルカプト−4−ブタノリド)、2−メルカプト−4−メチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−エチル−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−ブチロチオラクトン、2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エトキシ−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−4−ブチロラクタム、2−メルカプト−5−バレロラクトン、2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−メチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−メトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム、N−(2−エトキシ)エチル−2−メルカプト−5−バレロラクタム及び2−メルカプト−6−ヘキサノラクタム等が挙げられる。
【0080】
特に、光硬化性樹脂組成物の現像性を損なうことがない連鎖移動剤であるメルカプト基を有する複素環化合物として、メルカプトベンゾチアゾール、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾールが好ましい。これらの連鎖移動剤は、単独で又は2種以上を併用することができる。
【0081】
これらの光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
このような光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤の総量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して35質量部以下となる範囲であることが好ましい。35質量部を超えると、これらの光吸収により深部硬化性が低下する傾向にある。
【0082】
本発明の組成物を光硬化性樹脂組成物に組成するために用いられる光重合性モノマー(G)は、活性エネルギー線照射により、光硬化して、本発明の光硬化性樹脂組成物を、アルカリ水溶液に不溶化、又は不溶化を助けるものである。このような化合物としては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
【0083】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが、挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる
【0084】
このような分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマー(G)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、5〜100質量部、より好ましくは、1〜70質量部の割合である。前記配合量が、5質量部未満の場合、光硬化性が低下し、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像により、パターン形成が困難となるので、好ましくない。一方、100質量部を超えた場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が低下して、塗膜が脆くなるので、好ましくない。
【0085】
本発明の硬化性樹脂組成物は、着色剤(H)を配合することができる。着色剤(H)としては、赤、青、緑、黄などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されているものを挙げることができる。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しないことが好ましい。
【0086】
赤色着色剤:
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがあり、具体的には以下のものが挙げられる。
モノアゾ系:Pigment Red 1, 2, 3, 4, 5, 6, 8, 9, 12, 14, 15, 16, 17, 21, 22, 23, 31, 32, 112, 114, 146, 147, 151, 170, 184, 187, 188, 193, 210, 245, 253, 258, 266, 267, 268, 269。
ジスアゾ系:Pigment Red 37, 38, 41。
モノアゾレーキ系:Pigment Red 48:1, 48:2, 48:3, 48:4, 49:1, 49:2, 50:1, 52:1, 52:2, 53:1, 53:2, 57:1, 58:4, 63:1, 63:2, 64:1,68。
ベンズイミダゾロン系:Pigment Red 171、Pigment Red 175、Pigment Red 176、Pigment Red 185、Pigment Red 208。
ぺリレン系:Solvent Red 135、Solvent Red 179、Pigment Red 123、Pigment Red 149、Pigment Red 166、Pigment Red 178、Pigment Red 179、Pigment Red 190、Pigment Red 194、Pigment Red 224。
ジケトピロロピロール系:Pigment Red 254、Pigment Red 255、Pigment Red 264、Pigment Red 270、Pigment Red 272。
縮合アゾ系:Pigment Red 220、Pigment Red 144、Pigment Red 166、Pigment Red 214、Pigment Red 220、Pigment Red 221、Pigment Red 242。
アンスラキノン系:Pigment Red 168、Pigment Red 177、Pigment Red 216、Solvent Red 149、Solvent Red 150、Solvent Red 52、Solvent Red 207。
キナクリドン系:Pigment Red 122、Pigment Red 202、Pigment Red 206、Pigment Red 207、Pigment Red 209。
【0087】
青色着色剤:
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には:Pigment Blue 15、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:6、Pigment Blue 16、Pigment Blue 60。
染料系としては、Solvent Blue 35、Solvent Blue 63、Solvent Blue 68、Solvent Blue 70、Solvent Blue 83、Solvent Blue 87、Solvent Blue 94、Solvent Blue 97、Solvent Blue 122、Solvent Blue 136、Solvent Blue 67、Solvent Blue 70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0088】
緑色着色剤:
緑色着色剤としては、同様にフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系があり、具体的にはPigment Green 7、Pigment Green 36、Solvent Green 3、Solvent Green 5、Solvent Green 20、Solvent Green 28等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0089】
黄色着色剤:
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等があり、具体的には以下のものが挙げられる。
アントラキノン系:Solvent Yellow 163、Pigment Yellow 24、Pigment Yellow 108、Pigment Yellow 193、Pigment Yellow 147、Pigment Yellow 199、Pigment Yellow 202。
イソインドリノン系:Pigment Yellow 110、Pigment Yellow 109、Pigment Yellow 139、Pigment Yellow 179、Pigment Yellow 185。
縮合アゾ系:Pigment Yellow 93、Pigment Yellow 94、Pigment Yellow 95、Pigment Yellow 128、Pigment Yellow 155、Pigment Yellow 166、Pigment Yellow 180。
ベンズイミダゾロン系:Pigment Yellow 120、Pigment Yellow 151、Pigment Yellow 154、Pigment Yellow 156、Pigment Yellow 175、Pigment Yellow 181。
モノアゾ系:Pigment Yellow 1, 2, 3, 4, 5, 6, 9, 10, 12, 61, 62, 62:1, 65, 73, 74, 75, 97, 100, 104, 105, 111, 116, 167, 168, 169, 182, 183。
ジスアゾ系:Pigment Yellow 12, 13, 14, 16, 17, 55, 63, 81, 83, 87, 126, 127, 152, 170, 172, 174, 176, 188, 198。
【0090】
その他、色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色、黒などの着色剤を加えてもよい。
具体的に例示すれば、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13、36、C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ14、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ46、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ63、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7等がある。
【0091】
前記したような着色剤(H)の配合割合は、特に制限はないが、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0〜10質量部、特に好ましくは0.1〜5質量部の割合で充分である。
【0092】
本発明の硬化性樹脂組成物は、その塗膜の物理的強度等を上げるために、必要に応じて、フィラーを配合することができる。このようなフィラーとしては、公知慣用の無機又は有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカ及びタルクが好ましく用いられる。また、難燃性を付与する目的で、水酸化マグネシウム、ベーマイトなども使用することができる。さらに、1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物や前記多官能エポキシ樹脂にナノシリカを分散したHanse−Chemie社製のNANOCRYL(商品名) XP 0396、XP 0596、XP 0733、XP 0746、XP 0765、XP 0768、XP 0953、XP 0954、XP 1045(何れも製品グレード名)や、Hanse−Chemie社製のNANOPOX(商品名) XP 0516、XP 0525、XP 0314(何れも製品グレード名)も使用できる。これらを単独で又は2種以上配合することができる。
【0093】
これらフィラーの配合量は、上記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは500質量部以下、より好ましくは0.1〜300質量部、特に好ましくは、0.1〜150質量部である。フィラーの配合量が、500質量部を超えた場合、硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり印刷性が低下したり、硬化物が脆くなるので好ましくない。
【0094】
本発明の硬化性樹脂組成物には、可撓性、指触乾燥性の向上を目的に、慣用公知のバインダーポリマーを使用することができる。バインダーポリマーとしては、セルロース系、ポリエステル系、フェノキシ樹脂系のポリマーが好ましい。セルロース系ポリマーとしてはイーストマン社製セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)シリーズが挙げられ、ポリエステル系ポリマーとしては東洋紡社製バイロンシリーズ、フェノキシ樹脂系ポリマーとしてはビスフェノールA、ビスフェノールF及びそれらの水添化合物のフェノキシ樹脂が好ましい。これらバインダーポリマーの添加量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは1〜30質量部、特に好ましくは5〜30質量部である。バインダーポリマーの配合量が、50質量部を超えた場合、硬化性樹脂組成物のアルカリ現像性が劣り、現像可能な可使時間が短くなるので好ましくない。
【0095】
本発明の硬化性樹脂組成物には、層間の密着性、又は感光性樹脂層と基材との密着性を向上させるために密着促進剤を用いることができる。具体的に例を挙げると、例えば、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、3−モルホリノメチル−1−フェニル−トリアゾール−2−チオン、5−アミノ−3−モルホリノメチル−チアゾール−2−チオン、2−メルカプト−5−メチルチオ−チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、アミノ基含有ベンゾトリアゾール、シランカップリング剤などがある。
【0096】
一般に、高分子材料の多くは、一度酸化が始まると、次々と連鎖的に酸化劣化が起き、高分子素材の機能低下をもたらすことから、本発明の硬化性樹脂組成物には、酸化を防ぐために(1)発生したラジカルを無効化するようなラジカル捕捉剤又は/及び(2)発生した過酸化物を無害な物質に分解し、新たなラジカルが発生しないようにする過酸化物分解剤などの酸化防止剤を添加することができる。
【0097】
ラジカル捕捉剤として働く酸化防止剤としては、具体的な化合物としては、ヒドロキノン、4−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン等のフェノール系、メタキノン、ベンゾキノン等のキノン系化合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、フェノチアジン等のアミン系化合物等などが挙げられる。
【0098】
ラジカル捕捉剤は市販のものであってもよく、例えば、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−330、アデカスタブAO−20、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−68、アデカスタブLA−87(以上、旭電化社製、商品名)、IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、TINUVIN 111FDL、TINUVIN 123、TINUVIN 144、TINUVIN 152、TINUVIN 292、TINUVIN 5100(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)などが挙げられる。
【0099】
過酸化物分解剤として働く酸化防止剤としては、具体的な化合物としてトリフェニルフォスファイト等のリン系化合物、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート等の硫黄系化合物などが挙げられる。
【0100】
過酸化物分解剤は市販のものであってもよく、例えば、アデカスタブTPP(旭電化社製、商品名)、マークAO−412S(アデカ・アーガス化学社製、商品名)、スミライザーTPS(住友化学社製、商品名)などが挙げられる。
上記の酸化防止剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0101】
また一般に、高分子材料は光を吸収し、それにより分解・劣化を起こすことから、本発明の硬化性樹脂組成物には、紫外線に対する安定化対策を行うために、上記酸化防止剤の他に、紫外線吸収剤を使用することができる。
【0102】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シンナメート誘導体、アントラニレート誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体などが挙げられる。ベンゾフェノン誘導体の具体的な例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン及び2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。ベンゾエート誘導体の具体的な例としては、2−エチルヘキシルサリチレート、フェニルサリチレート、p−t−ブチルフェニルサリチレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート及びヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール誘導体の具体的な例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)べンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。トリアジン誘導体の具体的な例としては、ヒドロキシフェニルトリアジン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどが挙げられる。
【0103】
紫外線吸収剤としては市販のものであってもよく、例えば、TINUVIN PS、TINUVIN 99−2、TINUVIN 109、TINUVIN 384−2、TINUVIN 900、TINUVIN 928、TINUVIN 1130、TINUVIN 400、TINUVIN 405、TINUVIN 460、TINUVIN 479(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)などが挙げられる。
上記の紫外線吸収剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、前記酸化防止剤と併用することで本発明の硬化性樹脂組成物より得られる成形物の安定化が図れる。
【0104】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、上記カルボキシル基含有樹脂(A)の合成や組成物の調整のため、又は基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
【0105】
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0106】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、酸化防止剤、防錆剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0107】
前記熱重合禁止剤は、前記重合性化合物の熱的な重合又は経時的な重合を防止するために用いることができる。熱重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、アルキル又はアリール置換ハイドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−メトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、塩化第一銅、フェノチアジン、クロラニル、ナフチルアミン、β−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−4−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ピリジン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ピクリン酸、4−トルイジン、メチレンブルー、銅と有機キレート剤反応物、サリチル酸メチル、及びフェノチアジン、ニトロソ化合物、ニトロソ化合物とAlとのキレートなどが挙げられる。
【0108】
本発明の硬化性樹脂組成物は、キャリアフィルム(支持体)と、該キャリアフィルム上に形成された上記硬化性樹脂組成物からなる層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。
ドライフィルム化に際しては、本発明の硬化性樹脂組成物を前記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10〜150μm、好ましくは20〜60μmの範囲で適宜選択される。
【0109】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
【0110】
キャリアフィルム上に成膜した後、さらに、膜の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、膜の表面に剥離可能なカバーフィルムを積層することが望ましい。
剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離するときに膜とキャリアフィルムとの接着力よりも膜とカバーフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0111】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。また、上記組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったドライフィルムの場合、ラミネーター等により硬化性樹脂組成物層が基材と接触するように基材上に張り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、樹脂絶縁層を形成できる。
【0112】
光硬化性樹脂組成物の場合は、その後、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光もしくはレーザーダイレクト露光機により直接パターン露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3wt%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。さらに熱硬化性成分(D)を含有している組成物の場合、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記カルボキシル基含有樹脂(A)のカルボキシル基と、分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分(D)が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。尚、熱硬化性成分(D)を含有していない場合でも、熱処理することにより、露光時に未反応の状態で残ったエチレン性不飽和結合が熱ラジカル重合し、塗膜特性が向上するため、目的・用途により、熱処理(熱硬化)してもよい。
【0113】
上記基材としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR−4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0114】
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法及びノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
光硬化性樹脂組成物の場合、塗布し、溶剤を揮発乾燥した後に得られた塗膜に対し、露光(活性エネルギー線の照射)を行うことにより、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。
【0115】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20〜800mJ/cm、好ましくは20〜600mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0116】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【実施例】
【0117】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。尚、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0118】
合成例1
(A−1)前記カルボキシル基含有樹脂(2)に該当する樹脂の合成:
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ(株)製、TJ5650J、数平均分子量800)を3600g(4.5モル)、ジメチロールブタン酸を814g(5.5モル)、及び分子量調整剤(反応停止剤)としてn−ブタノールを118g(1.6モル)投入した。次に、芳香環を有しないイソシアネート化合物としてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート2009g(10.8モル)を投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで、固形分が60wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のカルボキシル基含有樹脂を得た。得られたカルボキシル基含有ポリウレタンの固形分の酸価は49.8mgKOH/gであった。
【0119】
合成例2
(A−2)前記カルボキシル基含有樹脂(5)に該当する樹脂の合成:
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ(株)製、TJ5650J、数平均分子量800)を2400g(3モル)、ジメチロールプロピオン酸を603g(4.5モル)、及びモノヒドロキシル化合物として2−ヒドロキシエチルアクリレートを238g(2.6モル)投入した。次いで、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート1887g(8.5モル)を投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。固形分が50質量%となるようにカルビトールアセテートを添加した。得られたカルボキシル基含有樹脂の固形分の酸価は50mgKOH/gであった。
【0120】
合成例3
(A−3)前記カルボキシル基含有樹脂(4)に該当する樹脂の合成:
セパラブルフラスコ中に、ビスフェノールA型エポキシ化合物として、日本化薬(株)製RE310S(2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:184g/当量)を368.0g、アクリル酸(分子量:72.06)を142.7g、熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを2.94g及び反応触媒としてトリフェニルフォスフィンを1.53g仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで反応させ、エポキシカルボキシレート化合物(a)(理論分子量:510.7)を得た。次いで、この反応液に反応溶媒としてカルビトールアセテートを588.2g、ジメチロールプロピオン酸(b)(分子量:134.16)105.5gを加え、45℃に昇温させた。この溶液にイソホロンジイソシアネート(c)(分子量:222.28)264.7gを反応温度が65℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、温度を80℃に上昇させ、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで6時間反応させ、さらに98℃の温度で2時間反応させ、アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂を60重量%含む樹脂溶液を得た。酸価を測定したところ、28.9mgKOH/g(固形分酸価:48.1mgKOH/g)であった。
【0121】
(A−4)前記カルボキシル基含有樹脂(7)に該当する樹脂:
前記カルボキシル基含有樹脂(7)に該当し、感光性基含有でビフェニルノボラック構造の多官能エポキシを使用した感光性カルボキシル基含有樹脂[日本化薬社製ZCR−1601H(固形分65%、樹脂としての酸価は98mgKOH/g)]を用いた。
【0122】
水酸化アルミニウムスラリーの調製:
水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製ハイジライト42M)700gと、溶剤としてカルビトーアセテート280g、BYK−110を20g混合攪拌し、ビーズミルにて0.5μmのジルコニアビーズを用い分散処理を行った。これを3回繰り返して3μmのフィルターを通した水酸化アルミニウムスラリー(C−1)を作製した。
【0123】
実施例1〜11、比較例1〜3
前記各合成例の樹脂溶液を用い、表1に示す種々の成分とともに表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、ソルダーレジスト用感光性樹脂組成物を調製した。ここで、得られた感光性樹脂組成物の分散度をエリクセン社製グラインドメータによる粒度測定にて評価したところ15μm以下であった。
【0124】
【表1】

【0125】
性能評価:
<最適露光量>
前記実施例2〜11及び比較例2,3の熱硬化性・光硬化性樹脂組成物を、銅厚35μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により全面に塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させる。乾燥後、メタルハライドランプ搭載の露光装置((株)オーク製作所製HMW−680−GW20)を用いてステップタブレット(Kodak No.2)を介して露光し、現像(30℃、0.2MPa、1wt%NaCO水溶液)を90秒で行った際に残存するステップタブレットのパターンが6段の時を最適露光量とした。
【0126】
特性試験:
上記各実施例1〜11及び比較例1〜3の組成物を、パターン形成されたポリイミドフィルム基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で30分乾燥し、室温まで放冷した。実施例1及び比較例1の熱硬化性樹脂組成物は、得られた基板を150℃で60分加熱して硬化した。実施例2〜11及び比較例2,3の光硬化性樹脂組成物については、得られた基板にメタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)を用いて最適露光量でソルダーレジストパターンを露光し、30℃の1wt%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で90秒間現像を行い、レジストパターンを得た。この基板を、150℃で60分加熱して硬化した。得られたプリント基板(評価基板)に対して以下のように特性を評価した。
【0127】
<回路隠蔽性>
上記のようにして得られた基板を、140℃でさらに1時間加熱する。ソルダーレジストによって被覆された部分の銅回路の色が、140℃、1時間の加熱によって変色したかを確認した。
○:銅回路の変色がないもの
×:銅回路の変色が認められるもの
【0128】
<はんだ耐熱性>
ロジン系フラックスを塗布した評価基板を、予め260℃に設定したはんだ槽に浸漬し、変性アルコールでフラックスを洗浄した後、目視によるレジスト層の膨れ・剥がれについて評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:10秒間浸漬を1回で剥がれが認められない
△:5秒間浸漬を1回で剥がれが認められない
×:5秒間浸漬を1回でレジスト層に膨れ、剥がれがある
【0129】
<低反り性>
カプトン100H(東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)上に作製した硬化被膜を50×50mmに切り出し、4角の反りを測定して平均値を求め、以下の基準で評価した。
○:反りが1mm未満であるもの
△:反りが1mm以上、4mm未満であるもの
×:反りが4mm以上であるもの
【0130】
<解像性>
実施例2〜11及び比較例2,3の感光性樹脂組成物を銅べた基板上にスクリーン印刷で前面塗布し、80℃で30分乾燥させた。L/S(ライン/スペース)=100/500μmのネガフィルムを用いて最適露光量で露光し、上記条件で現像する。現像後、100μmのラインが残っているかどうか確認する。
○:銅べた基板上に100μmのラインが残っている。
×:銅べた基板上に100μmのラインが残っていない。
【0131】
<難燃性>
各実施例及び比較例の組成物を、12.5μm又は25μm厚のポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製カプトン50H、100H)にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で20分乾燥して室温まで放冷した。さらに裏面を同様にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で20分乾燥して室温まで放冷し、両面塗布基板を得た。実施例1及び比較例1の熱硬化性樹脂組成物は、得られた両面塗布基板を150℃で60分加熱して硬化した。実施例2〜11及び比較例2,3の光硬化性樹脂組成物については、得られた両面塗布基板にメタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)を用いて最適露光量でソルダーレジストを全面露光し、30℃の1wt%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で90秒間現像を行い、150℃で60分間熱硬化を行い評価サンプルとした。この難燃性評価用サンプルついて、UL94規格に準拠した薄材垂直燃焼試験を行った。評価はUL94規格に基づいて、VTM−0又はVTM−1と表した。
【0132】
前記各評価試験の結果を表2にまとめて示す。
【表2】

【0133】
実施例12
表1に示す実施例3に示す組成物をシリコーン系消泡剤を配合せずに調製した硬化性樹脂組成物をメチルエチルケトンで希釈し、キャリアフィルム上に塗布し、加熱乾燥して、厚さ20μmの感光性樹脂組成物層を形成し、その上にカバーフィルムを貼り合わせてドライフィルムを得た。その後、カバーフィルムを剥がし、パターン形成された銅箔基板に、ラミネーターを用いフィルムを貼り合わせ、試験基板を作製した。前述した試験方法及び評価方法と同様にして、各特性の評価試験を行なった。結果を表3に示す。
【0134】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)酸化チタン及び(C)水酸化アルミニウムを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに(D)分子中に2つ以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分を含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(E)リン含有化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(F)光重合開始剤及び(G)光重合性モノマーを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸化チタン(B)以外の着色剤(H)を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)が、ウレタン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)が、ビフェニルノボラック構造とエチレン性不飽和基を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記分子中に2つ以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分(D)が、ビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
ソルダーレジストであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルム。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物、又はこの硬化性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布・乾燥させて得られるドライフィルムを、熱硬化及び/又は光硬化して得られる硬化物。
【請求項12】
前記請求項11に記載の硬化物を有するプリント配線板。

【公開番号】特開2010−224171(P2010−224171A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70762(P2009−70762)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】