説明

硬化性樹脂組成物、硬化物、反射防止フィルム、偏光板、画像表示装置、フルオロオレフィン共重合体およびその製造方法

【課題】低い屈折率と耐擦傷性とを両立した硬化性樹脂組成物およびこれを用いた硬化物、反射防止フィルム、偏光板、および画像表示装置の提供。
【解決手段】ヘキサフルオロプロピレンと、式CH(OR―OH)=CH2(式中、Rは炭素数1〜20のアルキレン基)で表される水酸基含有ビニルエーテルとを単量体成分として有し、ヘキサフルオロプロピレンを上記水酸基含有ビニルエーテルに対して1.6当量以上5.0当量以下の範囲で反応させて得られるフルオロオレフィン共重合体中を含む硬化性樹脂組成物。該硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物を低屈折率層5に用いた反射防止フィルム1aまたは1b。該反射防止フィルムを保護フィルムとして有する偏光板。該偏光板を画像表示部に有する画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロオレフィン共重合体を含有する硬化性樹脂組成物、硬化物、反射防止フィルム、偏光板、画像表示装置、該共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようにディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
反射防止フィルムは、一般的に支持体上に、該支持体より低屈折率の、適切な膜厚の低屈折率層を形成することにより作製できる。低い反射率を実現するために、低屈折率層にはできるだけ屈折率の低い材料の使用が望まれる。また反射防止フィルムは、ディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性が要求される。厚さ100nm前後の薄膜において、高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度が必要である。
【0004】
材料の屈折率を下げるには、(1)フッ素原子を導入する、(2)密度を下げる(空隙を導入する)などの手段があるが、いずれも皮膜強度や界面の密着性が低下し、耐擦傷性が低下する方向であり、低い屈折率と高い耐傷性の両立は困難な課題であった。
【0005】
ヘキサフルオロプロピレンと、エチルビニルエーテルとを単量体成分として有し、ヘキサフルオロプロピレンを単量体成分として47.8mol%以下含むフルオロオレフィン共重合体を用いた樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。低い屈折率と耐擦傷性とを両立した樹脂組成物の提供が望まれている。
【特許文献1】特開平2−251555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低い屈折率と耐擦傷性とを両立した硬化性樹脂組成物およびこれを用いた硬化物、反射防止フィルム、偏光板、および画像表示装置の提供にある。また本発明の別の目的は、該組成物に含有するフルオロオレフィン共重合体およびその製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、ヘキサフルオロプロピレンを水酸基含有ビニルエーテルに対して過剰に反応させることによって得られた共重合体を成分とする硬化性樹脂組成物を用いることにより、反射率が低く、耐擦傷性に優れた硬化物およびその用途を見出した。すなわち本発明の上記課題は、以下の手段によって達成された。
【0008】
1)ヘキサフルオロプロピレンと、下記一般式Aで表される水酸基含有ビニルエーテルとを単量体成分として有し、ヘキサフルオロプロピレンを単量体成分として51〜60mol%含むフルオロオレフィン共重合体を含有する硬化性樹脂組成物。
【0009】
一般式A
CH(OR―OH)=CH2
【0010】
(一般式A中、Rは炭素数1〜20のアルキレン基を表す。)
2)前記フルオロオレフィン共重合体中の水酸基と反応し得る硬化剤をさらに含有する上記1)に記載の硬化性樹脂組成物。
3)上記1)または2)に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
4)上記1)または2)に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる層を低屈折率層として有する反射防止フィルム。
5)2枚の保護フィルムの間に偏光膜を有する偏光板であって、上記4)に記載の反射防止フィルムを少なくとも一方の保護フィルムとして有する偏光板。
6)上記4)に記載の反射防止フィルムまたは上記5)に記載の偏光板のいずれかを画像表示部に有する画像表示装置。
7)ヘキサフルオロプロピレンと、下記一般式Aで表される水酸基含有ビニルエーテルとを単量体成分として有し、ヘキサフルオロプロピレンを単量体成分として51〜60mol%含むフルオロオレフィン共重合体。
【0011】
一般式A
CH(OR―OH)=CH2
【0012】
(一般式A中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
8)ヘキサフルオロプロピレンを単量体成分として53〜60mol%含む上記7)に記載のフルオロオレフィン共重合体。
9)ヘキサフルオロプロピレンを単量体成分として55〜60mol%含む上記8)に記載のフルオロオレフィン共重合体。
10)ヘキサフルオロプロピレンと、下記一般式Aで表される水酸基含有ビニルエーテルとを単量体成分として有し、ヘキサフルオロプロピレンを単量体成分として51〜60mol%含むフルオロオレフィン共重合体の製造方法であって、ヘキサフルオロプロピレンを下記一般式Aで表される水酸基含有ビニルエーテルに対して1.6当量以上5.0当量以下の範囲で反応させる工程を有するフルオロオレフィン共重合体の製造方法。
【0013】
一般式A
CH(OR―OH)=CH2
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フッ素含率が高い共重合体を含有する硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物は皮膜の屈折率が低く、高い耐擦傷性を有する。該皮膜を低屈折率層に用いた反射防止フィルムは保ちつつ反射防止能に優れる。この反射防止フィルムを用いた偏光板および液晶表示装置は、外光の映り込みが十分に防止されている。
【0015】
また、本発明によれば、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPということがある)を過剰に仕込むことにより従来では得ることのできなかったHFPの導入率の高い共重合体を得ることができる。本発明の共重合体は、フッ素含率が高いために、屈折率が低く、耐擦傷性に優れる。
【0016】
さらに、本発明のフルオロオレフィン共重合体の製造方法によれば、ビニルエーテルモノマーの残存がほとんど起こらない。従来、耐擦傷性等の性能を劣化させ屈折率を上げてしまう残存モノマーを除去するために再沈操作を行う必要があった。しかし、本発明ではこれが不要になり、得られた共重合体を次の工程に用いることができる。加えて本発明の共重合体の製造方法によれば、共重合体を高収率で得ることができ、生産性向上、コストダウンにつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、フルオロオレフィン共重合体に関して説明する。該共重合体は、ヘキサフルオロプロピレンと水酸基含有ビニルエーテルを構成成分(単量体成分)とし、必要に応じてその他の構成成分(ビニルモノマー等)とともに共重合させたものである。
【0018】
HFPは、最も屈折率の低い部類のフッ素源であり、結晶性が低く、溶解性・透明性に優れている。また、重合安定性や入手性の観点からも優れており、フルオロオレフィンの中では最も汎用性の高いモノマーの一つである。しかしながら、α位にCF基が導入されていることにより電子求引性が強く、モノマーの極性効果の指標であるe値が2.48{参考文献:J.Org.Chem.,48、4734(1983)}と非常に高い。このe値が高くなると、互いに電気反発しあって単独重合性は低くなる。しかし、e値が大きくとも正負反対符号のモノマーを組み合わせると、反対に非常に交互共重合しやすくなる。ビニルエーテルモノマーは、α位に電子供与性基が導入されていることによりe値は負の方向に大きい。このため、HFPとビニルエーテル類は共に単独重合性はほとんど無く、逆に極めて交互共重合性が高い。このため、従来、HFPとビニルエーテル類の共重合体は、1:1のモル比でのみ合成され、HFP含率を51mol%以上にすることは困難であった。
【0019】
しかし、本発明の手法は、HFPを過剰に仕込むことによって反応系中の気液平衡が劇的に変化するため、ポリマー鎖に部分的にHFPが連続して導入されたり、ポリマー鎖末端がHFPで終わる確率が上昇する。このことにより、従来では得ることのできなかった、HFP導入率の高い共重合体を得ることができる。
【0020】
加えて、本発明の手法によると、ビニルエーテルモノマーを十分に消費できるだけの量のHFPが液相に存在するため、ビニルエーテルモノマーの残存はほとんど起こらない。従って、耐擦傷性等の性能を劣化させ、屈折率を上げてしまう残存モノマーを除去する為の再沈操作は不要になり、生産性向上、コストダウンにつながる。
【0021】
本発明の手法によって合成されるフルオロオレフィン共重合体は、下記構造式(1)で表されることが好ましい。
一般式(1):
【0022】
【化1】

【0023】
一般式(1)において、Aは水酸基含有ビニルエーテル重合単位を表す。a、bはそれぞれ各構成成分のモル分率(%)であり、51≦a≦60、0<b≦49である。a+bが100%に成らない場合は、本発明の共重合体は、ヘキサフルオロプロピレンおよび水酸基含有ビニルエーテル以外に、他の構成成分(単量体成分)を含む。
【0024】
HFPの導入量は、重合時にHFPモノマーを1.6当量〜5.0当量の範囲で仕込むことによって51mol%以上60mol%まで向上させることができる。HFPの導入量は、単量体の合計に対して53mol%以上60mol%以下であることが好ましく、55mol%以上60mol%以下であることがより好ましい。
【0025】
本発明のフルオロオレフィン共重合体の製造方法は、HFPを下記一般式Aで表される水酸基含有ビニルエーテルに対して1.6当量以上5.0当量以下の範囲で反応させる方法である。仕込み量は、残存ビニルエーテルモノマーの量を減らし、HFPの導入量を上げるために、1.6当量以上が好ましく、1.8当量以上がさらに好ましく、特に好ましくは2.0当量以上である。また、未反応のHFPに関しては回収して再利用できるため、特に上限は無いが、操作の煩雑性や製造釜の耐圧限界の観点から、HFPの仕込み量は、1.6当量以上5.0当量以下であり、1.8当量以上4.5当量以下がより好ましく、2.0当量以上4.5当量以下がさらに好ましく、2.0当量以上4.0当量以下が特に好ましい。
【0026】
(水酸基含有ビニルエーテル)
本発明では、水酸基含有ビニルエーテルを単量体成分として用いる。水酸基含有ビニルエーテルは、下記一般式Aで表される。
【0027】
一般式A
CH(OR―OH)=CH2
【0028】
一般式A中、Rは炭素数1〜20のアルキレン基を表す。アルキレン基としては特に限定されないが直鎖、分岐、環状のアルキレン基が挙げられる。アルキレン基の炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数2〜4がさらに好ましい。具体例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等が挙げられる。
【0029】
重合単位Aで表される水酸基含有ビニルエーテルモノマーの具体的としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、8−ヒドロキシオクチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチルビニルエーテルなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0030】
これら重合単位Aの導入量、すなわち一般式(1)におけるbの値は、0<b≦49モル%の範囲であり、5≦b≦49モル%の範囲であることが好ましく、10≦b≦49モル%の範囲であることがより好ましい。
【0031】
(構成成分B)
本発明の共重合体の単量体成分以外に他の構成成分(単量体成分)Bを含んでよい。構成成分Bとしては、硬度、基材への密着性、溶媒への溶解性、透明性等種々の観点から適宜選択することができる。例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類を例として挙げることができる。また、ポリシロキサン構造を有するモノマーも防汚性付与の観点から好ましい。例えば、チッソ(株)製の「サイラプレーンFM−0711」、「サイラプレーンFM−0721」、「サイラプレーンFM−0725」などが挙げられる。
【0032】
また、構成成分Bは、架橋反応に関与し得る反応性基を含有する重合単位であることも皮膜強度向上の観点から好ましく、特に下記一般式(2)で表される重合単位であることが好ましい。
一般式(2)
【0033】
【化2】

【0034】
一般式(2)中、Lは単結合または2価の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、酸素、窒素、硫黄から選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。RおよびRは、それぞれ水素原子またはメチル基を表す。
【0035】
連結基Lの好ましい例としては、*−O−(CH−O−**、*−O−(CH−NH−**、*−O−(CH−O−**、*−O−(CH−O−**、*−O−(CH−O−(CH−O−**、*−O−CONH−(CH−O−**、*−O−CHCH(OH)CH−O−*、*−O−CHCHOCONH(CH−O−**(*は共重合体主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す)等が挙げられる。
【0036】
本発明の共重合体(Ps)への(メタ)アクリロイル基の導入法は、特に限定されるものではないが、例えば:
(1)水酸基、アミノ基等の求核基を有する共重合体を合成した後に、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸とメタンスルホン酸の混合酸無水物等を作用させる方法、
(2)上記求核基を有する共重合体に、硫酸等の触媒存在下、(メタ)アクリル酸を作用させる方法、
(3)上記求核基を有する共重合体にメタクリロイルオキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、
(4)エポキシ基を有する共重合体を合成した後に(メタ)アクリル酸を作用させる方法、
(5)カルボキシル基を有する共重合体にグリシジルメタクリレート等のエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、
(6)3−クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーを重合させた後で脱塩化水素を行う方法、
などが挙げられる。
【0037】
これらの中で、本発明では、特に水酸基を含有する共重合体に対して、(1)または(2)の手法によって(メタ)アクリロイル基を導入することが好ましい。
【0038】
構成成分Bの導入量は、51≦a≦60、0<b≦49であり、かつa+bが100%に成らない場合に、適宜を決めることができる。構成成分Bの導入量(c)は、好ましくは0≦c≦45モル%の範囲であり、共重合体のF含率を高め、かつ、皮膜の硬度を高めるためには0≦c≦40モル%の範囲であることが好ましい。
【0039】
以下に、一般式(2)で示される、本発明のフルオロオレフィン共重合体における重合単位の好ましい例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
【化3】

【0041】
本発明におけるフルオロオレフィン共重合体の質量平均分子量(Mw)は、10〜10であることが好ましく、より好ましくは5×10〜5×10であり、特に好ましくは10〜10の場合である。
【0042】
表1で本発明の有用なポリマーの具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、表1には重合単位のモル分率(%)を示す。また、表中のFM−0721とは、ポリシロキサン構造を有するマクロモノマーで、「サイラプレーンFM−0721」(数平均分子量5,000){チッソ(株)製}を指す。
【0043】
【表1】

【0044】
なお、表1中の略号は以下の通り。
HFP:ヘキサフルオロプロピレン、
HEVE:2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、
HBVE:4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、
DEGVE:ジエチレングリコールビニルエーテル、
HMcHVE:4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチルビニルエーテル、
EVE:エチルビニルエーテル、
cHVE:シクロヘキシルビニルエーテル、
tBVE:t−ブチルビニルエーテル。
【0045】
(フルオロオレフィン共重合体の合成)
本発明に用いられるフルオロオレフィン共重合体の合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合によって行うことができる。また回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で合成することができる。
【0046】
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光または放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
【0047】
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いられる溶媒は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶媒の単独あるいは2種以上の混合物でもよいし、水との混合溶媒としてもよい。
【0048】
重合温度は、生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり0℃以下から100℃以上まで可能であるが、40〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
【0049】
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は0.01〜10MPa、好ましくは0.05〜5MPa、より好ましくは0.1〜2MPa程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
【0050】
得られたポリマーは、未反応のモノマー(残存モノマー)をほとんど含まないために、反応液をそのまま本発明の用途に用いることができる。
【0051】
(硬化性樹脂組成物)
[硬化剤(架橋剤)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、フルオロオレフィン共重合体を含有する硬化性樹脂組成物である。本発明の硬化性樹脂組成物は、該共重合体中の水酸基と反応し得る化合物(硬化剤)をさらに含有する硬化性樹脂組成物であることが好ましい。硬化剤は水酸基と反応する部位を2個以上有することが好ましく、4個以上有することが更に好ましい。
【0052】
硬化剤の構造は、水酸基と反応しうる官能基を前記個数有するものであれば特に限定はなく、例えばポリイソシアネート類、イソシアネート化合物の部分縮合物、多量体や、多価アルコール、低分子量ポリエステル皮膜などとの付加物、イソシアネート基をフェノールなどのブロック化剤でブロックしたブロックポリイソシアネート化合物、アミノプラスト類、多塩基酸またはその無水物などを挙げることができる。
【0053】
(アミノプラスト類)
中でも、保存安定性と架橋反応活性の両立の観点、および形成される膜の強度の観点から、酸性条件下で水酸基含有化合物と架橋反応するアミノプラスト類が好ましい。アミノプラスト類は、フルオロオレフィン共重合体中に存在する水酸基と反応可能なアミノ基、すなわちヒドロキシアルキルアミノ基もしくはアルコキシアルキルアミノ基、または窒素原子に隣接し、且つアルコキシ基で置換された炭素原子を含有する化合物である。具体的には、例えばメラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物等を挙げることができる。
【0054】
上記メラミン系化合物は、一般にトリアジン環に窒素原子が結合した骨格を有する化合物として知られているもので、具体的にはメラミン、アルキル化メラミン、メチロールメラミン、アルコキシ化メチルメラミン等を挙げることができる。特に、メラミンとホルムアルデヒドを塩基性条件下で反応して得られるメチロール化メラミンおよびアルコキシ化メチルメラミン、並びにその誘導体が好ましく、特に保存安定性からアルコキシ化メチルメラミンが特に好ましい。またメチロール化メラミンおよびアルコシ化メチルメラミンについて特に制約はなく、例えば「プラスチック材料講座[8]ユリア・メラミン樹脂」(日刊工業新聞社)に記載されているような方法で得られる、各種樹脂の使用も可能である。
【0055】
また上記尿素化合物としては、尿素の他、ポリメチロール化尿素その誘導体であるアルコキシ化メチル尿素、さらには環状尿素構造であるグリコールウリル骨格や2−イミダゾリジノン骨格を有する化合物も好ましい。前記尿素誘導体等のアミノ化合物についても前記「ユリア・メラミン樹脂」等に記載の各種樹脂の使用が可能である。
【0056】
また、上記ベンゾグアナミン系化合物としては、ベンゾグアナミンの他、ジメチロールベンゾグアナミン、トリメチロールベンゾグアナミン、テトラメチロールベンゾグアナミン等のアルカノールベンゾグアナミン化合物も好ましく使用できる。
【0057】
本発明において架橋剤として好適に用いられる化合物としては、本発明の共重合体との相溶性の点から、特にメラミン化合物またはグリコールウリル化合物が好ましく、その中でも反応性の観点から、架橋剤が分子中に窒素原子を含有し、且つ該窒素原子に隣接するアルコキシ基で置換された炭素原子を2個以上含有する化合物であることが好ましい。特に好ましい化合物は下記構造式(H−1)および(H−2)で表される構造を有する化合物、およびそれらの部分縮合体である。式中Rは炭素数1〜6のアルキル基または水素原子を表す。
構造式(H−1)および(H−2):
【0058】
【化4】

【0059】
フルオロオレフィン共重合体に対するアミノプラスト類の添加量としては、共重合体100質量部当たり、1〜50質量部であり、好ましくは3〜40質量部であり、さらに好ましくは5〜30質量部である。1質量部以上であれば、本発明の特徴である薄膜としての耐久性を十分に発揮することができ、50質量部以下であれば、光学用途に利用する際に本発明における低屈折率層の特徴である低屈折率を維持できるので好ましい。硬化剤を添加しても屈折率を低く保つという観点からは、添加しても屈折率の上昇が少ない硬化剤が好ましく、その観点では上記化合物のうち、H−2で表される骨格を有する化合物がより好ましい。
【0060】
[硬化触媒]
本発明の硬化性樹脂組成物における好ましい態様である、硬化性樹脂組成物の硬化剤として好ましく用いられるアミノプラスト類は、酸触媒により硬化が促進されるため、該硬化性樹脂組成物には、酸性物質を添加することが望ましい。保存安定性と硬化活性を両立するために、加熱および/または光照射により酸を発生する化合物を添加することがより好ましい。
【0061】
(熱酸発生剤)
上記の加熱により酸を発生する化合物、すなわち熱酸発生剤は、当該硬化性樹脂組成物の塗膜等を加熱して硬化させる場合に、その加熱条件を、より穏和なものに改善することができる物質である。
【0062】
この熱酸発生剤の具体例としては、各種脂肪族スルホン酸とその塩;クエン酸、酢酸、マレイン酸等の各種脂肪族カルボン酸とその塩;安息香酸、フタル酸等の各種芳香族カルボン酸とその塩、アルキルベンゼンスルホン酸とそのアンモニウム塩、種金属塩;リン酸や有機酸のエステル等を挙げることができる。この熱酸発生剤の使用割合は、上記硬化性樹脂組成物中のフルオロオレフィン共重合体100質量部に対して、好ましくは0〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部である。熱酸発生剤の割合が該上限値以下であれば、該硬化性樹脂組成物の保存安定性が悪くなるなどの不都合が生じないので好ましい。
【0063】
(感光性酸発生剤)
本発明で用いられる前記硬化性樹脂組成物に配合することができる光照射により酸を発生する化合物、すなわち感光性酸発生剤は、当該硬化性樹脂組成物の塗膜に感光性を付与し、例えば、光等の放射線を照射することによって当該塗膜を光硬化させることを可能にする物質である。
【0064】
代表的な感光性酸発生剤としては、例えば、(1)ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等の各種オニウム塩;(2)β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物等のスルホン化合物;(3)アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等のスルホン酸エステル類;(4)下記一般式(4)で示されるスルホンイミド化合物類;(5)下記一般式(5)で示されるジアゾメタン化合物類;その他を挙げることができる。
一般式(4):
【0065】
【化5】

【0066】
一般式(4)中、Y41は、アルキレン基、アリレーン基、アルコキシレン基等の2価の基を示し、R41は、アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アリール基等の1価の基を示す。
一般式(5):
【0067】
【化6】

【0068】
一般式(5)中、R51、R52は、互いに同一でも異なってもよく、アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アリール基等の1価の基を示す。
【0069】
感光性酸発生剤は、単独で、または2種以上を併用することができ、さらに前記熱酸発生剤と併用することもできる。感光性酸発生剤の使用割合は、硬化性樹脂組成物中のフルオロオレフィン共重合体100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部である。感光性酸発生剤の割合が該上限値以下であれば、得られる硬化膜の強度が優れたものとなり、透明性も良好なので好ましい。
【0070】
[溶媒]
本発明の硬化性樹脂組成物は、通常、フルオロオレフィン共重合体を適当な溶媒に溶解して作製される。この際、該共重合体の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが、一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1〜20質量%程度である。
【0071】
上記溶媒としては、フルオロオレフィン共重合体を含む組成物が沈殿を生じることなく、均一に溶解または分散されるものであれば特に制限はなく、2種類以上の溶媒を併用することもできる。好ましい例としては、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール等)、芳香族炭化水素類(例えばトルエン、キシレン等)、および水などを挙げることができる。
【0072】
<反射防止フィルム>
次に、以上のべた硬化性樹脂組成物を硬化してなる低屈折率層を有する、反射防止フィルムについて説明する。
【0073】
〔反射防止フィルムの基本的構成〕
本発明の実施の一形態として、好適な反射防止フィルムの基本的な構成を、図面を参照しながら説明する。
【0074】
図1(a)に模式的に示される断面図は、本発明の反射防止フィルムの一例である。反射防止フィルム1aは、透明支持体2、ハードコート層3、防眩ハードコート層4、そして低屈折率層5の順序の層構成を有する。
【0075】
防眩性ハードコート層4には、マット粒子(不図示)が分散しており、防眩性ハードコート層4のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.48〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層5の屈折率は1.20〜1.47の範囲にあることが好ましい。
【0076】
本発明においてハードコート層は、このように防眩性を有するハードコート層でもよいし、防眩性を有しないハードコート層でもよく、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。またはハードコート層はなくてもよい。従って、図1に示したハードコート層3および防眩性ハードコート層4は必須ではないが、フィルム強度付与のためにこれらのハードコート層のいずれかが塗設されることが好ましい。低屈折率層5は最外層に塗設される。
【0077】
図1(b)に模式的に示される断面図は、本発明の反射防止フィルムの一例であり、反射防止フィルム1bは、透明支持体2、ハードコート層3、中屈折率層6、高屈折率層7、低屈折率層(最外層)5の順序の層構成を有する。透明支持体2、中屈折率層6、高屈折率層7および低屈折率層5は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率。
【0078】
図1(b)のような層構成では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層が下記数式(1)、高屈折率層が下記数式(2)、低屈折率層が下記数式(3)をそれぞれ満足することがより優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる点で好ましい。
【0079】
数式(1):(hλ/4)×0.7<n<(hλ/4)×1.3
数式(2):(iλ/4)×0.7<n<(iλ/4)×1.3
数式(3):(jλ/4)×0.7<n<(jλ/4)×1.3
【0080】
数式(1)〜(3)において、hおよびiは正の整数(一般に1、2または3)であり、jは正の奇数(一般に1)である。n、nおよびnは、それぞれ中屈折率層、高屈折率層および低屈折率層の屈折率であり、そして、d、dおよびdは、それぞれ中屈折率層、高屈折率層および低屈折率層の層厚(nm)である。ここでλは反射率を低下させたい設計波長である。反射防止フィルムを通常のディスプレイ表面に用いる場合には、λは可視光線の波長(nm)であり、380〜680nmの範囲の値である。特に人間の視感度の高い500〜550nmの範囲にλを設定することで、視感反射率の低い反射防止フィルムを設計することが出来る。
【0081】
図1(b)のような層構成では、中屈折率層が下記数式(1−1)、高屈折率層が下記数式(2−1)、低屈折率層が下記数式(3−1)をそれぞれ満足することが、特に好ましい。ここで、λは500nm、hは1、iは2、jは1である。
【0082】
数式(1−1):(hλ/4)×0.80<n<(hλ/4)×1.00
数式(2−1):(iλ/4)×0.75<n<(iλ/4)×0.95
数式(3−1):(jλ/4)×0.95<n<(jλ/4)×1.05
【0083】
なお、ここで記載した高屈折率、中屈折率、低屈折率とは層相互の相対的な屈折率の高低をいう。また、図1(b)では、高屈折率層を光干渉層として用いており、極めて優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる。
【0084】
〔低屈折率層〕
次ぎに、本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層について以下に説明する。
本発明における低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.47であることが好ましく、より好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。
本発明における低屈折率層の厚みは、50nm以上400nm以下が好ましく、更に好ましくは、60nm以上150nm以下、最も好ましくは60nm以上130nm以下である。
【0085】
さらに、低屈折率層は前記のように数式(3)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(3):(jλ/4)×0.7<n<(jλ/4)×1.3
数式(3)中、jは正の奇数であり、nおよびdは、前記のとおり、それぞれ低屈折率層の屈折率および膜厚(nm)である。ここでλは反射率を低下させたい設計波長である。特に人間の視感度の高い500〜550nmの範囲にλを設定することで、視感反射率の低い反射防止フィルムを設計することが出来る。
なお、上記数式(3)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(3)を満たすj(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
【0086】
[低屈折率層用材料]
(皮膜形成用組成物)
本発明においては、以上述べた共重合体を含む硬化性樹脂組成物を低屈折率層形成用組成物として用い、これを透明支持体上に塗設して、低屈折率層を形成することにより、反射防止フィルムを作製することができる。
【0087】
本発明においては、低屈折率層は、上述の硬化性樹脂組成物における好ましい態様である、硬化剤および硬化触媒を含む硬化性樹脂組成物に、さらに無機微粒子や、後述するオルガノシラン化合物を含有させることも好ましい。
【0088】
(低屈折率層用無機微粒子)
低屈折率層中への無機微粒子の配合量は、1mg/m〜100mg/mが好ましく、より好ましくは5mg/m〜80mg/m、更に好ましくは10mg/m〜60mg/mである。無機微粒子の配合量が該下限値以上であれば、耐擦傷性の改良効果が顕著であり、該上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができて、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化するなどの不具合が生じないので、上述の範囲内とするのが好ましい。
【0089】
上記無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。例えば、フッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、シリカ微粒子が好ましい。
【0090】
これら無機微粒子のサイズは、好ましくは1〜200nm、更に好ましくは5〜90nmである。該無機微粒子の粒径が該下限値以上であれば、耐擦傷性の改良効果が大きくなり、該上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができて、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化するなどの不具合が生じないので、上述の範囲内とするのが好ましい。
【0091】
無機微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよく、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題ない。
【0092】
(オルガノシラン化合物)
本発明においては、低屈折率層はさらにオルガノシラン化合物を含んでなる硬化性樹脂組成物から形成されてもよい。オルガノシラン化合物の定義や好ましい化合物の構造などは特開2004−331812号公報の[0059]〜[0085]に記載されている内容と同じである。
【0093】
(その他の添加剤)
本発明の反射防止フィルムにおいて、硬化性樹脂組成物を低屈折率層形成用組成物として用いるとき、該組成物は前述の、主鎖にポリシロキサンセグメントを有するフッ素含有共重合体および、主鎖が炭素原子のみからなるフッ素含有共重合体に、必要に応じて、硬化剤、無機微粒子、オルガノシラン化合物、各種添加剤およびラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤を添加し、更にこれらを適当な溶媒に溶解して作製される。この際固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1%〜20質量%程度である。
【0094】
低屈折率層と直接接する下層との界面密着性等の観点からは、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト、多塩基酸またはその無水物等の硬化剤を少量添加することもできる。これらを添加する場合には低屈折率層皮膜の全固形分に対して30質量%以下の範囲とすることが好ましく、20質量%以下の範囲とすることがより好ましく、10質量%以下の範囲とすることが特に好ましい。
【0095】
また、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のシリコーン系化合物またはフッ素系化合物の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には硬化性樹脂組成物全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
【0096】
シリコーン系化合物の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む、化合物鎖の末端および/または側鎖に置換基を有するものが挙げられる。また、ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。
【0097】
シリコーン系化合物の分子量には特に制限はないが、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることが特に好ましく、3,000〜30,000であることが最も好ましい。
【0098】
シリコーン系化合物は、その転写を防ぐという観点で、水酸基または水酸基と反応して結合を形成する官能基を含有することが好ましい。この結合形成反応は、加熱条件下および/または触媒存在下で速やかに進行することが好ましい。そのような置換基としては、エポキシ基やカルボキシル基などが挙げられる。好ましい化合物の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
(水酸基を含むもの)
“X−22−160AS”、“KF−6001”、“KF−6002”、“KF−6003”、“X−22−170DX”、“X−22−176DX”、“X−22−176D”、“X−22−176F”{以上、信越化学工業(株)製};“FM−4411”、“FM−4421”、“FM−4425”、“FM−0411”、“FM−0421”、“FM−0425”、“FM−DA11”、“FM−DA21”、“FM−DA25”{以上、チッソ(株)製};“CMS−626”、“CMS−222”{以上、Gelest社製}。
【0100】
(水酸基と反応する官能基を含むもの)
“X−22−162C”、“KF−105”{以上、信越化学工業(株)製};“FM−5511”、“FM−5521”、“FM−5525”、“FM−6611”、“FM−6621”、“FM−6625”{以上、チッソ(株)製}。
【0101】
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖{例えば−CFCF、−CH(CFH、−CH(CFCF、−CHCH(CFH等}であっても、分岐構造{例えば−CH(CF、−CHCF(CF、−CH(CH)CFCF、−CH(CH)(CFCFH等}であっても、脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばペルフルオロシクロへキシル基、ペルフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)であってもよく、エーテル結合を有していてもよい(例えば−CHOCHCFCF、−CHCHOCHH、−CHCHOCHCH17、−CHCHOCFCFOCFCFH等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
【0102】
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成または相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。
【0103】
フッ素系化合物中のフッ素原子含有量には特に制限はないが、20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としては、ダイキン工業(株)製、“R−2020”、“M−2020”、“R−3833”、“M−3833”(以上商品名);大日本インキ化学工業(株)製、「メガファックF−171」、「メガファックF−172」、「メガファックF−179A」、「ディフェンサMCF−300」(以上商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
低屈折率層形成用の硬化性樹脂組成物には、防塵性、帯電防止等の特性を付与する目的で、さらに公知のカチオン系界面活性剤またはポリオキシアルキレン系化合物のような防塵剤、帯電防止剤等を適宜添加することもできる。これら防塵剤、帯電防止剤は、上記のシリコーン系化合物やフッ素系化合物に、その構造単位が機能の一部として含まれていてもよい。
【0105】
これらを添加剤として添加する場合には、硬化性樹脂組成物全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
【0106】
好ましい化合物の例としては、大日本インキ化学工業(株)製「メガファックF−150」(商品名)、東レダウコーニング(株)製“SH−3748”(商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0107】
(低屈折率層塗設用の溶媒)
本発明において、低屈折率層を形成するための塗布液(硬化性樹脂組成物)に用いられる溶媒としては、各成分を溶解または分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること等の観点で選ばれる各種の溶媒が使用できる。乾燥に掛かる負荷の少なさの観点からは、常圧、室温における沸点が100℃以下の溶媒を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点が100℃以上の溶媒を少量含有することが好ましい。
【0108】
沸点が100℃以下の溶媒としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル (90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃)、2−ブタノン(メチルエチルケトンと同じ、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−プロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
【0109】
沸点が100℃を以上の溶媒としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン{メチルイソブチルケトン(MIBK)と同じ、115.9℃}、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
【0110】
[低屈折率層の形成方法]
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層は、以下の塗布方法により形成することができるが、この方法に制限されるものではない。
【0111】
まず、低屈折率層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。得られた塗布液を用いて、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書参照)などにより透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。これらの塗布方式のうち、グラビアコート法で塗布すると、反射防止膜の各層を形成する場合のように、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができるので好ましい。グラビアコート法の中でも、マイクログラビア法は膜厚均一性が高く、より好ましい。
【0112】
本発明で用いられるマイクログラビアコート法とは、直径が約10〜100mm、好ましくは約20〜50mmで全周にグラビアパターンが刻印されたグラビアロールを支持体の下方に、且つ支持体の搬送方向に対してグラビアロールを逆回転させると共に、該グラビアロールの表面からドクターブレードによって余剰の塗布液を掻き落として、定量の塗布液を前記支持体の上面が自由状態にある位置におけるその支持体の下面に塗布液を転写させて塗工することを特徴とするコート法である。
【0113】
マイクログラビアコート法による塗工条件としては、グラビアロールに刻印されたグラビアパターンの線数は50〜800本/inが好ましく、100〜300本/inがより好ましく、グラビアパターンの深度は1〜600μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、グラビアロールの回転数は3〜800rpmであることが好ましく、5〜200rpmであることがより好ましく、支持体の搬送速度は0.5〜100m/分であることが好ましく、1〜50m/分がより好ましい。
【0114】
本発明の反射防止フィルムを高い生産性で供給するために、エクストルージョン法(ダイコート法)が好ましく用いられる。さらにダイコート法は前計量方式のため、膜厚制御が比較的容易であり、さらに塗布部における溶媒の蒸散が少ないため、好ましい。
【0115】
[低屈折率層硬化条件]
本発明における低屈折率層は、溶媒の乾燥の後のウェブの形体で、熱および/または電離放射線による塗膜硬化ゾーンを通過させ、低屈折率層を硬化することができる。硬化手段は、使用する素材により任意に選択することができるが、熱硬化単独でも電離照射線照射単独でも、両者を逐次行うことも好ましい。
【0116】
熱硬化の条件としては、バインダーが架橋反応を起こす限りにおいて特に制限はないが、好ましくは40〜200℃以下、更に好ましくは60〜130℃、最も好ましくは80〜120℃である。熱硬化の時間は、硬化成分の組成、触媒種・量などにより異なるが、30秒〜24時間、好ましくは60秒〜1時間、最も好ましくは3分〜20分である。
【0117】
フィルムの膜面温度を所望の温度にする方法に特に限定はないが、ロールを加熱してフィルムに接触させる方法、加熱した窒素を吹き付ける方法、遠赤外線あるいは赤外線の照射などが好ましい。特許2523574号に記載の回転金属ロールに温水や蒸気を流して加熱する方法も利用できる。一方、下記で述べる電離放射線の照射時においては、フィルムの膜面温度が上がる場合には、ロールを冷却してフィルムに接触させる方法が利用できる。
【0118】
本発明における電離放射線種は、特に制限されるものではなく、皮膜を形成する硬化性組成物の種類に応じて、紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができるが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。
【0119】
紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。このうち、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプを好ましく利用できる。
【0120】
また、電子線も同様に使用できる。電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
【0121】
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は10mJ/cm以上が好ましく、更に好ましくは、50mJ/cm〜10000mJ/cmであり、特に好ましくは、50mJ/cm〜2000mJ/cmである。その際、ウェブの幅方向の照射量分布は中央の最大照射量に対して両端まで含めて50〜100%の分布が好ましく、80〜100%の分布がより好ましい。
【0122】
本発明では、支持体上に積層された少なくとも一層を、電離放射線を照射しかつ電離放射線照射開始から0.5秒以上の間、膜面温度60℃以上に加熱した状態で、酸素濃度10体積%以下の雰囲気で電離放射線を照射する工程によって硬化することが好ましい。
また電離放射線照射と同時および/または連続して酸素濃度3体積%以下の雰囲気で加熱されることも好ましい。
特に最外層であり、かつ膜厚が比較的薄い低屈折率層がこの方法で硬化されることが好ましい。硬化反応が熱で加速され、物理強度、耐薬品性に優れた皮膜を形成することができる。
【0123】
電離放射線を照射する時間については0.7秒以上60秒以下がより好ましく、0.7秒以上10秒以下がさらに好ましい。
0.5秒以上であれば、硬化反応が完了することができ、十分な硬化を行うことができる。また長時間低酸素条件を維持することは、設備が大型化し、多量の不活性ガスが必要であり好ましくない。
【0124】
酸素濃度は6体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成することがより好ましく、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。必要以上に酸素濃度を低減するためには、窒素などの不活性ガスの多量の使用量が必要であり、製造コストの観点から好ましくない。
【0125】
また、低屈折率層の下の層の硬化率(100−残存官能基含率)が100%未満のある値とし、その上に低屈折率層を設けて電離放射線および/または熱により硬化した際に下層の硬化率が低屈折率層を設ける前よりも高くなると、下層と低屈折率層との間の密着性が改良され、好ましい。
【0126】
〔反射防止フィルムの層構成〕
本発明の反射防止フィルムは、透明支持体上に、該支持体とは屈折率の異なる機能層を有するものである。該機能層は、単層でも、複数層であってもよいが、機能層のうちの少なくとも一層は前記皮膜形成用組成物から形成された低屈折率層である。例えば、反射防止フィルムとして、透明支持体上に、必要に応じて後述のハードコート層を有し、その上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層された構成が挙げられる。
【0127】
低反射性の反射防止フィルムは、最も単純な構成では、透明支持体上に低屈折率層のみを塗設した構成である。更に反射率を低下させるには、反射防止層を、透明支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と、透明支持体よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成することが好ましい。構成例としては、透明支持体側から高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(透明支持体またはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。
【0128】
本発明の反射防止フィルムの好ましい層構成の例を下記に示す。下記構成において基材フィルムは、透明支持体として機能している。
・基材フィルム/低屈折率層、
・基材フィルム/帯電防止層/低屈折率層、
・基材フィルム/防眩層/低屈折率層、
・基材フィルム/防眩層/帯電防止層/低屈折率層、
・基材フィルム/帯電防止層/防眩層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/防眩層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/防眩層/帯電防止層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/帯電防止層/防眩層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/帯電防止層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/帯電防止層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層。
【0129】
光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。高屈折率層は防眩性のない光拡散性層であってもよい。また、帯電防止層は導電性ポリマー粒子または金属酸化物微粒子(例えば、ATO、ITO)を含む層であることが好ましく、塗布または大気圧プラズマ処理等によって設けることができる。
【0130】
〔低屈折率層以外の層〕
[皮膜形成バインダー]
本発明において、低屈折率層以外の層を形成する皮膜形成組成物の主たる皮膜形成バインダー成分としては、エチレン性不飽和基を有する化合物を用いることが、皮膜強度、塗布液の安定性、塗膜の生産性、などの点で好ましい。主たる皮膜形成バインダーとは、無機粒子を除く皮膜形成成分のうち10質量%以上をしめるものをいう。好ましくは、20質量%以上100質量%以下、更に好ましくは30質量%以上95%以下である。
【0131】
飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、且つ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
【0132】
形成される皮膜を高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、および窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
【0133】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等}、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等)、ビニルスルホン(例えばジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えばメチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
なお本明細書においては、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートまたはメタクリレート」を表す。
【0134】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0135】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤または熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
【0136】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
【0137】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。
【0138】
ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
【0139】
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
【0140】
また、「最新UV硬化技術」のP.159{発行人;高薄一弘、発行所;(株)技術情報協会、1991年発行}にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0141】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の「イルガキュア(651,184,907)」等が好ましい例として挙げられる。
【0142】
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0143】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0144】
熱ラジカル開始剤としては、有機または無機過酸化物、有機アゾおよびジアゾ化合物等を用いることができる。具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド;無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等;アゾ化合物として2−アゾビスイソブチロニトリル、2−アゾビスプロピオニトリル、2−アゾビスシクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0145】
本発明においてはポリエーテルを主鎖として有するポリマーを使用することもできる。多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤または熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
【0146】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに、またはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
【0147】
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
【0148】
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0149】
[ハードコート層]
(ハードコート層用材料)
本発明にはハードコート層を設けることが好ましい。ハードコート層は、バインダーに、防眩性を付与するためのマット粒子を添加して防眩層を兼ねることができる。また、高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを添加することで高屈折率層を兼ねることができる。さらには〔低屈折率層〕において記載した(オルガノシラン化合物)を添加して形成してもよい。
【0150】
(マット粒子)
ハードコート層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が0.1〜5.0μm、好ましくは1.5〜3.5μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有させることができる。
【0151】
マット粒子とバインダー間の屈折率差は大きすぎるとフィルムが白濁し、小さすぎると十分な光拡散効果をえることができないため、0.02〜0.20であることが好ましく、0.04〜0.10であることが特に好ましい。マット粒子のバインダーに対する添加量も屈折率同様、大きすぎるとフィルムが白濁し、小さすぎると十分な光拡散効果をえることができないため、3〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
【0152】
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、シリカ粒子が好ましい。
マット粒子の形状は、真球または不定形のいずれも使用できる。
【0153】
異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。
2種類以上のマット粒子を用いる場合には両者の混合による屈折率制御を効果的に発揮するために屈折率の差が0.02以上、0.10以下であることが好ましく、0.03以上、0.07以下であることが特に好ましい。またより大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与するマット粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なるマット粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0154】
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては、単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほどよい。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
【0155】
上記マット粒子は、形成されたハードコート層中のマット粒子量が好ましくは10〜1000mg/m、より好ましくは100〜700mg/mとなるようにハードコート層に含有される。
【0156】
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0157】
(無機フィラー)
ハードコート層には、層の屈折率を高めるため、および硬化収縮を低減するために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
【0158】
また、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いたハードコート層では、層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は上記の無機フィラーと同じである。
【0159】
ハードコート層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO、ZrO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITO、SiO等が挙げられる。TiOおよびZrOが高屈折率化の点で特に好ましい。
【0160】
無機フィラーは表面をシランカップリング処理またはチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
【0161】
これらの無機フィラーの添加量は、ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜70%である。
【0162】
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0163】
本発明におけるハードコート層の、バインダーおよび無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダーおよび無機フィラーの種類および量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0164】
このようにして形成された本発明の反射防止フィルムは、ヘイズ値が3〜70%、好ましくは4〜60%の範囲にあり、そして450nmから650nmの平均反射率が3.0%以下、好ましくは2.5%以下である。本発明の反射防止フィルムが該範囲のヘイズ値および平均反射率であることにより、透過画像の劣化を伴わずに良好な防眩性および反射防止性が得られる。
【0165】
〔支持体〕
本発明の反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル{例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フイルム(株)製“TAC−TD80U”、“TAC−TD80UF”等}、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂{「アートン」(商品名)、JSR(株)製}、非晶質ポリオレフィン{「ゼオネックス」(商品名)、日本ゼオン(株)製}などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
【0166】
また、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアシレートフィルム、およびその製造法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されており、ここに記載されたセルロースアシレートも本発明に好ましく用いることができる。
【0167】
[鹸化処理]
本発明の反射防止フィルムを画像表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置する。反射防止フィルムの透明支持体がトリアセチルセルロースの場合は、偏光板の偏光膜を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の反射防止フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの上では好ましい。
【0168】
本発明の反射防止フィルムは、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用したりする場合には、十分に接着させるため、透明支持体上にフルオロオレフィン共重合体を主体とする最外層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。
【0169】
鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗し、また希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面が親水化される。
【0170】
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏光膜と接着させる際に、偏光膜と反射防止フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
【0171】
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の、透明支持体の表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0172】
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の(1)および(2)の2つの手段から選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止フィルム面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れている。
【0173】
(1)透明支持体上に反射防止層(低屈折率層)を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)透明支持体上に反射防止層を形成する前または後に、アルカリ液を反射防止フィルムの反射防止層を形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗および/または中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0174】
〔塗膜形成方法〕
本発明の反射防止フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
【0175】
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。塗布液を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書参照)等により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。
【0176】
これらの塗布方式のうち、グラビアコート法での塗布では、反射防止フィルムの各層のような、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができるので好ましい。グラビアコート法の中でも、マイクログラビア法は膜厚均一性が高く、より好ましい。
【0177】
またダイコート法を用いても、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができ、さらにダイコート法は、前計量方式のため膜厚制御が比較的容易であり、さらに塗布部における溶媒の蒸散が少ないため、好ましい。
【0178】
複数の層からなる反射防止フィルムにおいては、2層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2,761,791号、同第2,941,898号、同第3,508,947号、同第3,526,528号の各明細書および原崎勇次著、「コーティング工学」、253頁、{朝倉書店(1973年)}に記載がある。
【0179】
<反射防止フィルムの用途>
〔偏光板〕
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0180】
[偏光膜]
偏光膜としては、公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。
【0181】
偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は、以下の方法により作製される。すなわち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を、保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45゜傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0182】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落0020〜0030に詳しい記載がある。
【0183】
〔画像表示装置〕
本発明の画像表示装置は、前記反射防止フィルムまたは前記偏光板をディスプレイの最表面に用いたものである。例えば、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた態様では、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0184】
VAモードの液晶セルには、
(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、
(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル{“SID97,Digest of tech.Papers”(予稿集)、28集(1997年)、p.845記載}、
(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および、
(4)SURVAIVALモードの液晶セル(「LCDインターナショナル98」で発表)が含まれる。
【0185】
VAモードの液晶セル用には、2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムを、本発明の反射防止フィルムと組み合わせて作製した偏光板が好ましく用いられる。2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムの作製方法については、例えば、特開2001−249223号公報、特開2003−170492号公報などに記載の方法を用いることが好ましい。
【0186】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許第4,583,825号、同第5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0187】
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」{東レリサーチセンター発行(2001年)}などに記載されている。
【0188】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを、偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【実施例】
【0189】
以下に実施例に基づき本発明について更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の実施例、合成例中、特に断らない限り%は質量%を表す。
【0190】
<反射防止フィルムの作製>
[フルオロオレフィン共重合体の合成]
合成例1:(Ps−1)の合成
内容量200mLのステンレス製攪拌機付きオートクレーブに、メチルエチルケトン36mL、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)10.58g、エチルビニルエーテル(EVE)2.88g、および過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)60.01g(ビニルエーテル類に対して2.5当量)をオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は0.67MPa(6.8kg/cm)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.42MPa(4.3kg/cm)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られたポリマーの固形分濃度は54.7%、ポリマー収率97.3%であり、得られたポリマーの質量平均分子量は3.8万であった。
【0191】
合成例2:(Ps−19)の合成
内容量200mLのステンレス製攪拌機付きオートクレーブに、メチルエチルケトン48mL、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)10.58g、エチルビニルエーテル(EVE)2.88g、シクロヘキシルビニルエーテル(cHVE)5.68gおよび過酸化ジラウロイル0.58gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)49.20g(ビニルエーテル類に対して1.6当量)をオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は0.67MPa(6.8kg/cm)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.42MPa(4.3kg/cm)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られたポリマーの固形分濃度は54.0%、ポリマー収率92.2%であり、得られたポリマーの質量平均分子量は7.3万であった。
【0192】
合成例3〜8:(Ps−2)、(Ps−4)、(Ps−7)、(Ps−8)、(Ps−11)、(Ps−16)の合成
合成例1または2とほぼ同様にして、(Ps−2)、(Ps−4)、(Ps−7)、(Ps−8)、(Ps−11)、(Ps−16)を合成した。それぞれの各構成成分のモル分率(モル%)と質量平均分子量は、前記の表1に示した通りである。
【0193】
比較合成例1:比較共重合体(U−1)の合成
合成例1において、HFPの仕込み量を28.80g(ビニルエーテル類に対して1.2当量)へと変更すること以外は同様にして、下記比較共重合体(U−1)を合成した。U−1の固形分濃度は43.6%、ポリマー収率77.6%であり、得られたポリマーの質量平均分子量は3.4万であった。
比較共重合体(U−1):
【0194】
【化7】

【0195】
本発明のフルオロオレフィン共重合体(Ps−2)、(Ps−4)、(Ps−7)、(Ps−8)、(Ps−11)、(Ps−16)および比較共重合体(U−1)のHFPモル%とポリマー収率は以下の表2に示すとおりである。
【0196】
【表2】

【0197】
〔反射防止フィルムの作製〕
実施例1−1〜1−20および比較例1−1〜1−2
[低屈折率層用塗布液(Ln1〜Ln20)の調製]
表3に示す各成分を混合し、2−ブタノンにて希釈して固形分6質量%の低屈折率層形成用組成物を作製した。なお、いずれも合成したフルオロオレフィン共重合体の再沈は行わずに反応液をそのまま調製した。表3中の量の欄の数字は各成分の固形分の質量部を表す。
【0198】
【表3】

【0199】
なお表3中、コロイダルシリカは日産化学工業(株)製“MEK−ST”を表し、CY303は「サイメル303」、日本サイテックインダストリーズ(株)製メチロール化メラミンを表す。H−11、H−21はそれぞれ下記構造の化合物を表す。また、PTSはp−トルエンスルホン酸一水和物を表す。
【0200】
【化8】

【0201】
[比較例用低屈折率層用塗布液(Lnr1〜Lnr2)の調製]
上記の低屈折率層用塗布液の例と同じように、表4に示す各成分を混合し、2−ブタノンに溶解して固形分6%の比較例低屈折率層用塗布液を作製した。表4中の量の欄は各成分の固形分の質量部を表し、略号の意味は前述したとおりである。
【0202】
【表4】

【0203】
[ハードコート層用塗布液(HC−1)の調製]
“PET−30” 50.0g
「イルガキュア184」 2.0g
“SX−350”(30質量%) 1.5g
架橋アクリル−スチレン粒子(30質量%) 13.9g
“KBM−5103” 10.0g
トルエン 38.5g
【0204】
上記の混合液を、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用塗布液(HC−1)を調製した。
【0205】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
“PET−30”:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物{日本化薬(株)製}
「イルガキュア184」:重合開始剤{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}
“SX−350”:平均粒径3.5μm架橋ポリスチレン粒子{屈折率1.60、綜研化学(株)製、30質量%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用}。
架橋アクリル−スチレン粒子:平均粒径3.5μm{屈折率1.55、綜研化学(株)製、30質量%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用}。
“KBM−5103”:アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン{信越化学工業(株)製}。
【0206】
[反射防止フィルムの作製]
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”{富士写真フイルム(株)製}を、ロール形態で巻き出して、直接、上記のハードコート層用塗布液(HC−1)を、線数180本/in、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールと、ドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下酸素濃度0.1体積%で160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量110mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの層を形成し、巻き取った。このようにして作製した試料得られたハードコート層の表面粗さは、Ra=0.18μm、Rz=1.40μm、ヘイズ35%であった。
【0207】
このようにして得られたハードコート層の上に、前記低屈折率層用塗布液(本発明Ln1〜20および比較例Lnr1〜2)を用いて、低屈折率層膜厚が95nmになるように調節して反射防止フィルム(101)〜(120)および(R01)〜(R02)を作製した。低屈折率層の乾燥条件は120℃、10分とし、紫外線硬化条件は、酸素濃度が0.01体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度120mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。得られたそれぞれの反射防止フィルムに用いられた、ハードコート層用塗布液および低屈折率層用塗布液の組み合わせを表5に示す。
【0208】
[反射防止フィルムの鹸化処理]
得られた反射防止フィルムは以下の鹸化標準条件で処理・乾燥した。
(1)アルカリ浴:1.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液、55℃−120秒
(2)第1水洗浴:水道水、60秒
(3)中和浴:0.05mol/L硫酸、30℃−20秒
(4)第2水洗浴:水道水、60秒
(5)乾燥:120℃−60秒
【0209】
[反射防止フィルムの評価]
このようにして得られた鹸化済みの反射防止フィルムを用いて、以下の評価を行った。得られた結果を表4に示す。
【0210】
(評価1)平均反射率の測定
分光光度計“V−550”{日本分光(株)製}を用い、380〜780nmの波長領域において、積分球を用いて、入射角5°における分光反射率を測定した。分光反射率の評価において、450〜650nmの平均反射率を用いた。
測定は、反射防止フィルムの裏面を粗面化処理した後、黒色のインクで光吸収処理(380〜780nmにおける透過率が10%未満)を行い、黒色の台上にて行った。
【0211】
(評価2)耐擦傷性(1)−スチールウール耐性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行った。
評価環境条件:25℃、60%RH、
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にスチールウール“No.0000”{(株)日本スチールウール製}を巻いて、動かないようバンド固定した。その上で下記条件の往復こすり運動を与えた。
移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、
荷重:200g/cm2
先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
A:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
B:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
C:弱い傷が見える。
D:中程度の傷が見える。
E:一目見ただけで分かる傷がある。
【0212】
(評価3)耐擦傷性(2)−消しゴム擦り耐性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行った。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にプラスチック消しゴム{(株)トンボ鉛筆製“MONO”}を固定した。
移動距離(片道):4cm、こすり速度:2cm/秒、荷重:500g/cm2、先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:100往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
A:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
B:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
C:弱い傷が見える。
D:中程度の傷が見える。
E:一目見ただけで分かる傷がある。
F:一面膜が傷ついている。
【0213】
【表5】

【0214】
本実施例で明らかなように、本発明の反射防止フィルムは、低屈折率層に用いる本発明のフルオロオレフィン共重合体の屈折率が低いため、比較例(フィルムNo.R01〜R02)と比較して非常に低い表面反射率を誇る。また、本発明のフルオロオレフィン共重合体は残存モノマー量が少ないため、残存モノマーが多く存在する比較例(フィルムNo.R01〜R02)と比較して耐擦傷性に優れていることがわかる。
【0215】
<画像表示装置の作製>
実施例2−1〜2−20および比較例2−1〜2−2
上記実施例および比較例で作製した反射防止フィルム(フィルムNo.101〜120およびR01〜R02)を、日本電気(株)より入手したパーソナルコンピューター“PC9821NS/340W”の液晶ディスプレイ表面に貼り付け、画像表面装置サンプルを作製し、その表面反射による風景映り込み程度を目視にて評価した。
【0216】
本発明の実施例の反射防止フィルム(フィルムNo.101〜120)を設置した画像表示装置は、周囲の風景映り込みが殆どなく、快適な視認性を示しかつ充分な表面強度を有するものであったのに対し、比較例の反射防止フィルム(フィルムNo.R01〜R02)を設置した画像表示装置は、周囲の映り込みはある程度低減できるものの表面強度に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】本発明の反射防止膜が複合膜の場合の層構成を示す断面模式図であり、(a)は4層構成、(b)は5層構成の例を示す。
【符号の説明】
【0218】
1a:反射防止フィルム
1b:反射防止フィルム
2:透明支持体
3:ハードコート層
4:防眩ハードコート層
5:低屈折率層(最外層)
6:中屈折率層
7:高屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサフルオロプロピレンと、下記一般式Aで表される水酸基含有ビニルエーテルとを単量体成分として有し、ヘキサフルオロプロピレンを単量体成分として51〜60mol%含むフルオロオレフィン共重合体を含有する硬化性樹脂組成物。
一般式A
CH(OR―OH)=CH2
(一般式A中、Rは炭素数1〜20のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
前記フルオロオレフィン共重合体中の水酸基と反応し得る硬化剤をさらに含有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる層を低屈折率層として有する反射防止フィルム。
【請求項5】
2枚の保護フィルムの間に偏光膜を有する偏光板であって、請求項4に記載の反射防止フィルムを少なくとも一方の保護フィルムとして有する偏光板。
【請求項6】
請求項4に記載の反射防止フィルムまたは請求項5に記載の偏光板のいずれかを画像表示部に有する画像表示装置。
【請求項7】
ヘキサフルオロプロピレンと、下記一般式Aで表される水酸基含有ビニルエーテルとを単量体成分として有し、ヘキサフルオロプロピレンを単量体成分として51〜60mol%含むフルオロオレフィン共重合体。
一般式A
CH(OR―OH)=CH2
(一般式A中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【請求項8】
ヘキサフルオロプロピレンを単量体成分として53〜60mol%含む請求項7に記載のフルオロオレフィン共重合体。
【請求項9】
ヘキサフルオロプロピレンを単量体成分として55〜60mol%含む請求項8に記載のフルオロオレフィン共重合体。
【請求項10】
ヘキサフルオロプロピレンと、下記一般式Aで表される水酸基含有ビニルエーテルとを単量体成分として有し、ヘキサフルオロプロピレンを単量体成分として51〜60mol%含むフルオロオレフィン共重合体の製造方法であって、ヘキサフルオロプロピレンを下記一般式Aで表される水酸基含有ビニルエーテルに対して1.6当量以上5.0当量以下の範囲で反応させる工程を有するフルオロオレフィン共重合体の製造方法。
一般式A
CH(OR―OH)=CH2

【図1】
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【公開番号】特開2008−106101(P2008−106101A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288508(P2006−288508)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】