説明

硬化性組成物

【課題】透明で強靭性を有する硬化物を与える硬化性組成物、それを用いた電子素子用の接着剤および封止剤を提供する。
【解決手段】(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個含有する化合物、(B)SiH基を1分子中に少なくとも3個含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、を必須成分として含有する硬化性組成物であって、上記(A)成分が、(α1)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個含有する有機化合物と、(β1)SiH基を1分子中に2個含有するケイ素化合物とを、ヒドロシリル化反応させて得ることができる化合物であり、上記(B)成分が、(α2)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物と、(β2)SiH基を1分子中に少なくとも2個含有するケイ素化合物とを、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることを特徴とする硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物に関するものであり、更に詳しくは、高い耐光耐久性を有し、透明でありかつ強靭性を有する硬化物を与える硬化性組成物、およびそれを用いた電子素子用の接着剤および封止剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子素子用の接着剤、封止剤には、はんだリフロー工程に耐える高い耐熱性が必要とされる。特に光半導体用の接着剤、封止剤においては、従来に増した高い耐光耐久性が必要とされてきている。
【0003】
これらの要求に対応できる材料として、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機化合物(A)、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する硬化剤(B)及びヒドロシリル化触媒(C)、を含有す硬化性組成物が提案されている(特許文献1)。さらに、これらの強靭化のために改良された硬化性組成物も提案されている(特許文献2)。
【0004】
ところが、これらの改良された硬化性組成物においても、さらなる強靭化について改良の余地があった。
【0005】
また、一般に極性基を有する有機化合物はポリシロキサン類と相溶性が悪いため、上記(A)成分として極性基を有する有機化合物を用いた場合に、硬化剤(B)としてポリシロキサンを用いると、均一な硬化性組成物が作成できないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−317048号公報
【特許文献2】特開2003−113310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、透明でありかつ強靭性を有する硬化物を与える硬化性組成物、およびそれを用いた電子素子用の接着剤および封止剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために本発明者らは鋭意研究の結果、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個含有する特定構造の化合物と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する特定構造の化合物と、ヒドロシリル化触媒、とを必須成分として硬化性組成物とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個含有する化合物、(B)SiH基を1分子中に少なくとも3個含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、を必須成分として含有する硬化性組成物であって、
上記(A)成分が、(α1)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個含有する有機化合物と、(β1)SiH基を1分子中に2個含有するケイ素化合物とを、ヒドロシリル化反応させて得ることができる化合物であり、
上記(B)成分が、(α2)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物と、(β2)SiH基を1分子中に少なくとも2個含有する環状ポリオルガノシロキサンとを、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることを特徴とする硬化性組成物(請求項1)であり、
上記(α1)成分が、下記一般式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中R1は水素原子、あるいは炭素数1〜50の一価の有機基であって、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含まない基を表す。)で表される有機化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物(請求項2)であり、
上記(α1)成分ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートであることを特徴とする、請求項2に記載の硬化性組成物(請求項3)であり、
上記(β1)成分が、下記一般式(II)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中R2は炭素数1〜50の一価の有機基であって、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含まない基を表し、複数のR2は同一であっても異なっていてもよく、nは0〜100の数を表す。)で表されるケイ素化合物であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化性組成物(請求項4)であり、
上記(β1)成分のR2がメチル基あるいはフェニル基から選ばれる基であることを特徴とする、請求項4に記載の硬化性組成物(請求項5)であり、
上記(A)成分の数平均分子量が1,000〜1,000,000であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の硬化性組成物(請求項6)であり、
上記(α2)成分が、下記一般式(III)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中R3は水素原子、あるいは炭素数1〜50の一価の有機基であって、複数のR3は同一であっても異なっていてもよく、3個のR3のうち少なくとも1個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む基である。)で表される有機化合物であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の硬化性組成物(請求項7)であり、
上記(α2)成分がモノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートあるいはトリアリルイソシアヌレートから選ばれる化合物であることを特徴とする請求項7の硬化性組成物(請求項8)であり、
上記(β2)成分が、下記一般式(IV)
【0016】
【化4】

【0017】
(式中R4は炭素数1〜50の一価の有機基であって、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含まない基を表し、mは3〜10の数を表す。)で表されるケイ素化合物であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の硬化性組成物(請求項9)であり、
上記(β2)成分のR4がメチル基あるいはフェニル基から選ばれる基であることを特徴とする、請求項9に記載の硬化性組成物(請求項10)であり、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなる、電子素子用の接着剤(請求項11)であり、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなる、電子素子用の封止剤(請求項12)であり、
上記電子素子が光半導体素子であることを特徴とする、請求項11に記載の接着剤(請求項13)であり、
上記電子素子が光半導体素子であることを特徴とする、請求項12に記載の封止剤(請求項14)である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の硬化性組成物は室温より低い温度においても強靭性を有する硬化物を与えるため、電子素子用の接着剤および封止剤として用いた場合に信頼性の高い電子部品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するにあたって好ましい形態について具体的に説明する。
【0020】
(A)成分
本発明の(A)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個含有する化合物であり、(α1)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個含有する有機化合物と、(β1)SiH基を1分子中に2個含有するケイ素化合物とを、ヒドロシリル化反応させて得ることができる化合物である。
【0021】
(α1)成分
ここで用いられる(α1)成分としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個含有する有機化合物であれば特に限定されず種々のものを用いることができる。
【0022】
(α1)成分の有機化合物としてはポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではないことが好ましい。シロキサン単位を含むものの場合は、得られる硬化物のガス透過性が高くなり易く電子部品の信頼性を損なう場合があったり、はじきの問題が生じ易く工業的適用性が困難になる場合がある。構成元素としてはC、H、N、O、S、ハロゲン以外の元素を含まない化合物であることがより好ましいが、置換基として、ジアルコキシアルキルシリル基、トリアルコキシシリル基等を含有させることも可能である。
【0023】
(α1)成分の有機化合物は、有機重合体系の化合物と有機単量体系化合物に分類できる。有機重合体系化合物としては例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物を用いることができる。また有機単量体系化合物としては例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系化合物;直鎖系、脂環系等の脂肪族炭化水素系化合物;トリアジン系等の複素環系化合物およびこれらの混合物等を用いることができる。
【0024】
これらの化合物中に含有されるSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置としては特に限定されず、骨格中、置換基として、重合体の末端等、分子内のどこに存在してもよい。
【0025】
(α1)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、ヒドロシリル化反応の反応性が良好であるという点においては、下記一般式(V)
【0026】
【化5】

【0027】
(式中R6は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される基が好適である。その中でも、さらに原料の入手が容易であるという点からは、
【0028】
【化6】

【0029】
示される基が特に好ましい。
【0030】
一方で、得られる硬化物の耐熱性が高くなり易いという点においては、(α1)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(VI)
【0031】
【化7】

【0032】
(式中R7は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される脂環式の基が好適である。その中でも、さらに原料の入手が容易であるという点からは、
【0033】
【化8】

【0034】
示される脂環式の基が特に好ましい。
【0035】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合は(α1)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。この亜場合の2価以上の置換基としては炭素数0〜10の置換基であれば特に限定されないが、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンのみを含むものが好ましい。これらの置換基の例としては、
【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
等が挙げられる。また、これらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
【0039】
以上のようなSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有し、骨格部分に結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、
【0040】
【化11】

【0041】
等が挙げられる。
【0042】
(α1)成分としては、上記のように骨格部分とアルケニル基とに分けて表現しがたい、ブタジエン等の低分子量化合物も用いることができる。
【0043】
以上のような(α1)成分の具体的な例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン系化合物;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン等の脂肪族環状ポリエン系化合物;ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン系化合物;ジアリルフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ジアリリデンペンタエリスリット、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルベンゼン
【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
の他、従来公知のエポキシ樹脂のグルシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置き換えたもので、アリル基を1分子中に2個含有する化合物等が挙げられる。
【0047】
(α1)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.001mol以上含有するものが好ましく、1gあたり0.005mol以上含有するものがより好ましく、0.007mol以上含有するものがさらに好ましい。
【0048】
(α1)成分としては、力学的耐熱性が高いという観点および得られる(A)成分の粘度が高くなく、成形性、取扱い性が良好であるという観点からは、分子量が900未満のものが好ましく、700未満のものがより好ましく、500未満のものがさらに好ましい。
【0049】
(α1)成分としては、得られる硬化物の着色特に黄変の抑制の観点からはフェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものが好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等に例示される芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基を示し、フェノール性水酸基の誘導体とは上述のフェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アセトキシ基等のアシル基等により置換された基を示す。
【0050】
また、複屈折率が低い、光弾性係数が低い等のように光学特性が良好であるとともに耐候性が良好であるという観点からは、芳香環の(α1)成分中の成分重量比が50重量%以下であるものが好ましく、40重量%以下のものがより好ましく、30重量%以下のものがさらに好ましい。最も好ましいのは芳香族炭化水素環を含まないものである。
【0051】
得られる硬化物の着色が少なく、光学的透明性が高く、耐光性が高いという観点からは、(α1)成分としてはビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、下記一般式(I)
【0052】
【化14】

【0053】
(式中R1は水素原子、あるいは炭素数1〜50の一価の有機基であって、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含まない基を表す。)で表される有機化合物が好ましく、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートが特に好ましい。
【0054】
(α1)成分としてはその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有している場合には得られる硬化性組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0055】
(α1)成分は、単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0056】
(β1)成分
本発明の(β1)成分としては、SiH基を1分子中に2個含有するケイ素化合物であれば特に制限がなく使用できる。
【0057】
(β1)成分の例としては、1,1,3,5,5,7−ヘキサメチルシクロテトラシロキサンおよび下記一般式(II)
【0058】
【化15】

【0059】
(式中R2は炭素数1〜50の一価の有機基であって、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含まない基を表し、複数のR2は同一であっても異なっていてもよく、nは0〜100の数を表す。)で表されるケイ素化合物等が挙げられる。
【0060】
上記一般式(II)のR2としては、得られる硬化物の耐熱性が良好となり易いという点においては、メチル基あるいはフェニル基から選ばれる基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0061】
上記一般式(II)のnとしては、得られる(A)成分の(B)成分との相溶性が良くなり易いという点、得られる硬化物のガスバリア性が高くなり易いという点においては、平均として10以下であることが好ましく、平均として5以下であることがより好ましい。一方で得られる硬化物の強靭性が得られ易いという点においてはnは1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。
【0062】
(β1)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0063】
(α1)成分と(β1)成分の反応
上記(A)成分は、(α1)成分の有機化合物と(β1)成分のケイ素化合物とを、ヒドロシリル化反応させて得ることができる。この場合のヒドロシリル化反応は、必要に応じてヒドロシリル化触媒存在下に、(α1)成分の有機化合物と(β1)成分のケイ素化合物とを混合して加熱すること等によって実施することができる。
【0064】
この場合のヒドロシリル化触媒の説明としては後述する本発明の(C)成分の説明と同じである。
【0065】
上記(A)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個含有する化合物である必要があるため、ヒドロシリル化反応させる場合の(α1)成分の有機化合物と(β1)成分のケイ素化合物との混合比としては、(α1)成分の有機化合物のモル数(X)が(β1)成分のケイ素化合物のモル数(Y)より多いことが必要であり、X/Yの値の上限値は好ましくは2であり、より好ましくは1.5であり、さらに好ましくは1.3である。X/Yの値が高いと(A)成分の分子量が低くなり、得られる硬化物の強靭化の効果が得られ難くなる。一方で、X/Yの値の下限値は好ましくは1.01であり、より好ましくは1.02であり、さらに好ましくは1.1である。X/Yの値が低い(1に近い)と、(A)成分の分子量が高くなり、成形性が損なわれ易くなる。
【0066】
混合の方法としては種々の方法が適用できるが、ヒドロシリル化反応が進行し得る条件化で混合する場合(逐次添加反応の場合)には、反応中の高粘度化を抑制するために、(α1)成分の化合物中に(β1)成分の化合物を添加する方法が好ましい。反応させる温度は任意であるが、例えば50℃〜150℃が挙げられる。反応には必要に応じて任意の量の溶媒を使用しても良く、溶媒を用いたほうが安定に反応を実施することが可能であり、溶媒としては例えばトルエン等を挙げることができる。反応させた後反応物から揮発成分を除去するために、減圧脱揮等を適用することも任意である。
【0067】
以上のようにして得られた(A)成分の分子量としては特に制限なく種々の分子量のものを用いることができるが、数平均分子量の下限値は好ましくは500であり、より好ましくは1,000であり、さらに好ましくは2,000であり、3,000が特に好ましい。分子量が低い場合は柔軟化の効果が得られ難いことがある。また、数平均分子量の上限値は好ましくは1,000,000であり、より好ましくは100,000であり、さらに好ましくは10,000である。分子量が高い場合は硬化性組成物の粘度が高くなり、接着剤あるいは封止剤としての適用が困難になる場合がある。ここでいう数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0068】
(B)成分
本発明の(B)成分は、SiH基を1分子中に少なくとも3個含有する化合物であって、(α2)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物と、(β2)SiH基を1分子中に少なくとも2個含有するケイ素化合物とを、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物である。
【0069】
(α2)成分
ここで用いられる(α2)成分としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有機化合物であれば特に限定されず種々のものを用いることができ、詳細な説明や好ましい範囲については上記(α1)成分の説明と同様である。ただし、1分子中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は2である必要はない。
【0070】
(α2)成分の具体的な例としては、上記(α1)成分の具体的な例と同じ化合物の他、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−ウンデセン、出光石油化学社製リニアレン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3,3−トリメチル−1−ブテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン等のような鎖状脂肪族炭化水素系化合物類;シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、ノルボルニレン、エチリデンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、カンフェン、カレン、αピネン、βピネン等のような環状脂肪族炭化水素系化合物類;スチレン、αメチルスチレン、インデン、フェニルアセチレン、4−エチニルトルエン、アリルベンゼン、4−フェニル−1−ブテン等のような芳香族炭化水素系化合物;アルキルアリルエーテル、アリルフェニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリルエーテル類;グリセリンモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン等の脂肪族系化合物類;1,2−ジメトキシ−4−アリルベンゼン、o−アリルフェノール等の芳香族系化合物類;モノアリルジベンジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等の置換イソシアヌレート類;ビニルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェニルシラン等のシリコン化合物;片末端アリル化ポリエチレンオキサイド、片末端アリル化ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル系樹脂;片末端アリル化ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂;片末端アリル化ポリブチルアクリレート、片末端アリル化ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;等の1分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個含有する化合物を挙げることができ、トリアリルトリメリテート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2,−テトラアリロキシエタン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド等の1分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を3個以上含有する化合物も挙げることができる。
【0071】
(α2)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.001mol以上含有するものが好ましく、1gあたり0.005mol以上含有するものがより好ましく、0.007mol以上含有するものがさらに好ましい。
【0072】
得られる硬化物の着色が少なく、光学的透明性が高く、耐光性が高いという観点からは、(α2)成分としてはアリルグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、トリビニルシクロヘキサン、下記一般式(III)
【0073】
【化16】

【0074】
(式中R3は水素原子、あるいは炭素数1〜50の一価の有機基であって、複数のR3は同一であっても異なっていてもよく、3個のR3のうち少なくとも1個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む基である。)で表される有機化合物が好ましく、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートあるいはトリアリルイソシアヌレートから選ばれる化合物がより好ましい。
【0075】
また、得られる(B)成分の(A)成分との相溶性が良くなり易いという点においては、スチレン、αメチルスチレン、アリルグリシジルエーテル、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0076】
(β2)成分
本発明の(β2)成分としては、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に限定されず種々のものを用いることができ、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
【0077】
これらのうち、比較的容易に工業的に入手が可能であるという点においては、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましく、(β2)成分の(α1)成分との相溶性、および得られる(B)成分の(A)成分との相溶性が良くなり易いという点からは、さらに、下記一般式(IV)
【0078】
【化17】

【0079】
(式中R4は炭素数1〜50の一価の有機基であって、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含まない基を表し、mは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
【0080】
一般式(IV)で表される化合物中の置換基R4は、C、H、Oから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基あるいはフェニル基であることがさらに好ましい。
【0081】
一般式(IV)で表される化合物としては、入手容易性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0082】
(β2)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、より流動性を発現しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は50であり、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは1,000、さらに好ましくは700である。
【0083】
(β2)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0084】
(α2)成分と(β2)成分の反応
上記(B)成分は、(α2)成分の有機化合物と(β2)成分のケイ素化合物とを、ヒドロシリル化反応させて得ることができる。この場合のヒドロシリル化反応についての説明は、上記(α1)成分と(β1)成分の反応の場合と同様である。
【0085】
ただし、上記(B)成分は、SiH基を1分子中に少なくとも3個含有する化合物である必要があるため、(α2)成分の有機化合物が1分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個含有する化合物である場合には、(β2)成分のケイ素化合物はSiH基を1分子中に少なくとも4個含有する化合物である必要があり、(α2)成分の有機化合物が1分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を2個含有する化合物である場合には、(β2)成分のケイ素化合物はSiH基を1分子中に少なくとも3個含有する化合物である必要があり、(α2)成分の有機化合物が1分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を3個以上含有する化合物である場合には、(β2)成分のケイ素化合物はSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物である必要がある。
【0086】
ヒドロシリル化反応させる場合の(α2)成分の有機化合物と(β2)成分のケイ素化合物との混合比としては、用いる(β2)成分のケイ素化合物中のSiH基の総モル数が用いる(α2)成分の有機化合物中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の総モル数より多いことが必要である。
【0087】
混合の方法としては種々の方法が適用できるが、ヒドロシリル化反応が進行し得る条件化で混合する場合(逐次添加反応の場合)には、反応中のゲル化を抑制するために、(β2)成分の化合物中に(α2)成分の化合物を添加する方法が好ましい。反応させる温度は任意であるが、例えば50℃〜150℃が挙げられる。反応には必要に応じて任意の量の溶媒を使用しても良く、溶媒を用いたほうが安定に反応を実施することが可能であり、溶媒としては例えばトルエン等を挙げることができる。反応させた後反応物から揮発成分を除去するために、減圧脱揮等を適用することも任意である。
【0088】
(A)成分と(B)成分の比率
本発明における組成物中の(A)成分と(B)成分の混合比率は、必要な強度を失わない限りは特に限定されないが、(B)成分中のSiH基の数(M)の(A)成分中の炭素−炭素二重結合の数(N)に対する比が、2.0≧M/N≧0.5であることが好ましく、1.5≧M/N≧0.7がより好ましい。2.0>M/NあるいはM/N<0.5の場合は、十分な硬化性が得られず、充分な強度が得られない場合があり、またM/N<0.5の場合は炭素−炭素二重結合が過剰となり着色の原因となりやすい。
【0089】
硬化性組成物中の(A)成分と(B)成分の量
本発明における組成物中の(A)成分と(B)成分の合計量は、組成物中のヒドロシリル化反応に関与する成分(すなわち炭素−炭素二重結合またはSiH基を有する成分)の全量に対して、通常70重量%以上であるが、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、95重量%以上であることが特に好ましい。
【0090】
(C)成分
次に(C)成分であるヒドロシリル化触媒について説明する。
【0091】
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号および3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0092】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。
【0093】
(C)成分の触媒としては、(A)成分あるいは/および(B)成分中に含まれるものを(C)成分として使用することも可能である。
【0094】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0095】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるために、SiH基1モルに対して、10-1〜10-8モルの範囲が好ましく、より好ましくは、10-2〜10-6モルの範囲である。
【0096】
その他の成分
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレエート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、触媒1モルに対して、10-2〜102モルの範囲が好ましく、より好ましくは10-1〜10モルの範囲である。
【0097】
さらに本発明の組成物の保存安定性を改良する目的、あるいは製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、これらを併用してもかまわない。脂肪族不飽和結合を含有する化合物として、プロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示される。
【0098】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチンが好ましい。
【0099】
貯蔵安定性改良剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒1molに対し、10-1〜103モルの範囲が好ましく、より好ましくは1〜50モルの範囲である。
【0100】
本発明の組成物にはカップリング剤を添加することができる。カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0101】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0102】
シランカップリング剤の添加量は、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対して0.1〜50重量部が好ましく、0.5〜25重量部がより好ましい。0.1重量部より少ないと密着性改良効果が表れず、50重量部を超えると硬化物物性に悪影響を及ぼす。
【0103】
また、本発明においてはカップリング剤の効果を高めるために、さらにシラノール縮合触媒を用いることができ、密着性の向上および/あるいは安定化が可能である。このようなシラノール縮合触媒としては特に限定されないが、有機アルミニウム化合物および/あるいはほう酸エステルおよび/あるいはチタン系化合物が好ましい。これらのうち硬化時及び高温下での着色性が低い点からはほう酸エステルが好ましい。
【0104】
本発明に用いられる有機アルミニウム化合物としては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム等のアルミニウムアルコラート化合物;ナフテン酸、ステアリン酸、オクチル酸、安息香酸等のアルミニウム有機酸塩;アルミニウムエチルアセトアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセトアセテートジイソブチレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられるが、反応性、基材との接着性・密着性の観点から、アルミニウムキレート、及びアルミニウムアルコラートが好ましく、さらにヒドロシリル化硬化反応との相性からアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0105】
本発明に用いられるほう酸エステルとしては、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリメチル、ほう素メトキシエトキサイドを好適に用いることができる。入手性の点からは、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリノルマルブチルが好ましく、ほう酸トリメチルがさらに好ましい。一方、硬化時の揮発性を抑制出来る点からは、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイドが好ましく、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリフェニル、ほう酸トリノルマルブチルがさらに好ましい。また、揮発性の抑制、作業性の点からは、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピルが好ましく、ほう酸トリノルマルブチルがさらに好ましい。高温下での着色性が低い点からは、ほう酸トリエチルが好ましく、ほう酸トリメチルがさらに好ましい。
【0106】
本発明に用いられるチタン系化合物としては、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン類:チタンテトラアセチルアセトナート等のチタンキレート類:オキシ酢酸やエチレングリコール等の残基を有する一般的なチタネートカップリング剤が例示できる。
【0107】
これらのシラノール縮合触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。併用する場合の混合は事前に行なっても良く、また硬化物作成時に混合しても良い。
【0108】
シラノール縮合触媒を用いる場合の使用量は、シランカップリング剤100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、1〜15重量部が更に好ましい。硬化触媒の使用量が少なすぎると、シラノール縮合触媒の添加効果が現れず、多すぎると、硬化時に局部的な発熱や発泡が生じ、良好な硬化物が得られにくくなるので、好ましくない。
【0109】
本発明の組成物には必要に応じて無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーを添加すると、組成物の流動性の防止、材料の高強度化に効果がある。無機フィラーとしては光学特性を低下させない、微粒子状なものが好ましく、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカや疎水性超微粉シリカ、タルク、硫酸バリウム等を挙げることができる。
【0110】
フィラーを添加する方法としては、例えばアルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマーあるいはオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド、ハロゲン化物等を、本発明の組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法も挙げることができる。
【0111】
また更に、本発明の組成物の特性を改質する目的で、種々の熱硬化性樹脂を添加することも可能である。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂等が例示されるがこれに限定されるものではない。これらのうち、透明性が高く接着性等の実用特性に優れるという観点から、透明エポキシ樹脂が好ましい。
【0112】
透明エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ樹脂をヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物等の脂肪族酸無水物で硬化させるものが挙げられる。これらのエポキシ樹脂あるいは硬化剤はそれぞれ単独で用いても、複数のものを組み合わせてもよい。
【0113】
さらに、本発明の組成物には種々の発光ダイオード特性改善のための添加剤を添加してもよい。添加剤としては例えば、発光素子からの光を吸収してより長波長の蛍光を出す、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体等の蛍光体や、特定の波長を吸収するブルーイング剤等の着色剤、光を拡散させるための酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ、石英ガラス等の酸化ケイ素、タルク、炭酸カルシウム、メラミン樹脂、CTUグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のような各種無機あるいは有機拡散材、ガラス、アルミノシリケート等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ボロン等の金属窒化物等の熱伝導性フィラー等を挙げることができる。
【0114】
発光ダイオード特性改善のための添加剤は均一に含有させても良いし、含有量に傾斜を付けて含有させてもよい。この様なフィラー含有樹脂部は発光面前面のモールド部材用の樹脂を型に流した後、引き続いて、フィラーを含有させた樹脂を流し発光面後方のモールド部材として形成させることができる。また、モールド部材形成後リード端子を表裏両面からテープを張り付けることによって覆い、この状態でリードフレーム全体をフィラー含有樹脂を溜めたタンク内に発光ダイオードのモールド部材の下半分を浸漬した後、引き上げて乾燥させフィラー含有樹脂部を形成させても良い。
【0115】
本発明の組成物には、その他、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、滑剤、顔料、溶剤、金属不活性化剤、物性調整剤などを本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0116】
接着剤、封止剤の作成方法
本発明の組成物は、各成分をあらかじめ混合することによって、電子素子用の接着剤および封止剤とすることができる。
【0117】
(A)成分、(B)成分、(C)成分およびその他の成分の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、(A)成分に(C)成分を混合したものと、(B)成分にを混合する方法が好ましい。(A)成分、(B)成分の混合物に(C)成分を混合する方法だと反応の制御が困難である。(B)成分に(C)成分を混合したものに(A)成分を混合する方法をとる場合は、(C)成分の存在下(B)成分が環境中の水分と反応性を有するため、貯蔵中などに変質することもある。その他の各成分の混合の方法としては、相溶性、貯蔵安定性、粘度調整その他の目的で各種の方法をとることができる。(A)成分に混合してもよいし、(B)成分に混合してもよいし、適当な割合で(A)、(B)各成分に分けて混合してもよい。
【0118】
混合した後反応条件の制御や置換基の反応性の差の利用により組成物中の官能基の一部のみを反応(Bステージ化)させて接着剤および封止剤とすることもできる。これらの方法により容易に粘度調整ができる。Bステージ化する場合には、(A)、(B)、(C)各成分の必要量を一度に混合して反応させてもよいが、一部を混合して反応させた後残量を混合してさらに反応させる方法をとることもできる。
【0119】
硬化方法
本反応の硬化性組成物は、組成物中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合とSiH基の一部または全部およびを反応させることによって硬化することができる。
【0120】
硬化させる方法としては、単に混合するだけで反応させることもできるし、加熱して反応させることもできる。反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られやすいという観点から加熱して反応させる方法が好ましい。
【0121】
反応温度としては種々設定できるが、例えば30〜300℃の温度が適用でき、100〜250℃がより好ましく、150〜200℃がさらに好ましい。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと成形加工が困難となりやすい。
【0122】
反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が歪のない均一な硬化物が得られやすいという点においてので好ましい。
【0123】
反応時間も種々設定できるが、高温短時間で反応させるより、比較的低温長時間で反応させた方が歪のない均一な硬化物が得られやすいという点においてので好ましい。
【0124】
反応時の圧力も必要に応じ種々設定でき、常圧、高圧、あるいは減圧状態で反応させることもできる
成形する方法も従来の熱硬化性樹脂の成形方法をはじめとして種々の方法をとることができる。例えば、キャスト法、プレス法、注型法、トランスファー成形法、コーティング法、RIM法などの成形方法を適用することができる。
【0125】
成形時に必要に応じ各種処理を施すこともできる。例えば、成形時に発生するボイドの抑制のために組成物あるいは一部反応させた組成物を遠心、減圧などにより脱泡する処理、プレス時に一旦圧力を開放する処理などを適用することもできる。
【0126】
用途
本発明の硬化性組成物は電子素子用の接着剤および封止剤として用いることができる。
【0127】
この場合の電子素子としては、種々のものに適用することができるが、例としては、ロジック、メモリー等に用いられる半導体素子、発光ダイオード素子、半導体レーザー素子、有機EL素子、受光素子、各種センサー用の素子、太陽電池素子等を上げることができる。
【0128】
その他、本発明の硬化性組成物は、耐光耐久性が高いため、各種の光学用材料としても用いることができる。ここで言う光学用材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。
【0129】
より具体的には、液晶ディスプレイ分野における基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料である。また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止剤、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、また発光ダイオード表示装置に使用される発光素子のモールド材、発光ダイオードの封止材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤である。
【0130】
光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤などである。
【0131】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部である。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーである。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤などである。光センシング機器のレンズ用材料、封止剤、接着剤、フィルムなどである。
【0132】
光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止剤、接着剤などである。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止剤、接着剤などである。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、発光素子の封止剤、接着剤などである。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などである。
【0133】
光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーである。
【0134】
半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料である。
【0135】
自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品である。また、鉄道車輌用の複層ガラスである。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コートである。
【0136】
建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料である。農業用では、ハウス被覆用フィルムである。
【0137】
次世代の光・電子機能有機材料としては、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などである。
【0138】
光学材料としては発光ダイオードの封止材も含まれる。
【0139】
電子材料としては、電子部品、電気回路、電気接点あるいは半導体素子等の封止材料、ダイボンド剤、導電性接着剤、異方性導電性接着剤、ビルドアップ基板を含む多層基板の層間接着剤、パッシベーション膜、ソルダーレジスト等を挙げることができる。
【実施例】
【0140】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0141】
(合成例1)
200mLの4つ口フラスコに、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコに(α1)成分としてジアリルモノグリシジルイソシアヌレート10.0g、トルエン50gおよび白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)39mgを入れ、窒素雰囲気下攪拌しながらオイルバス中で内温95℃に加熱した。このフラスコに、(β1)成分として1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン3.0gを滴下漏斗から間欠的に90分かけて滴下した。滴下終了後同温で2時間加熱攪拌した後放冷し、減圧で揮発分を留去して無色の粘ちょうな液体(反応物A)を得た。
【0142】
1H−NMRによりこのものはジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが2.2/1.2の比率で反応したものであることがわかった。また、1、2−ジブロモエタンを内部標準に用いた1H−NMR測定により、生成物は2.78mmol/gのアリル基を含有することがわかった。
【0143】
(合成例2)
用いた1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの量を4.0gとした以外は合成例1と同様にして無色の粘ちょうな液体(反応物B)を得た。
【0144】
1H−NMRによりこのものはジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが4.5/3.5の比率で反応したものであることがわかった。また、1、2−ジブロモエタンを内部標準に用いた1H−NMR測定により、生成物は1.27mmol/gのアリル基を含有することがわかった。
【0145】
(合成例3)
5Lの4つ口フラスコに、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトルエン1800gおよび(β2)成分として1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、窒素雰囲気下120℃に加熱したオイルバス中で加温、攪拌した。このフラスコに、(α2)成分としてトリアリルイソシアヌレート200gおよび白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mLをトルエン200gで希釈したものを滴下漏斗から50分かけて滴下した。同温で6時間加熱攪拌した後放冷し、1−エチニルシクロヘキサノール2.95gを加えて混合し、減圧で揮発分を留去して薄い黄色のやや粘ちょうな液体(反応物C)723gを得た。
【0146】
1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したものであることがわかった。また、1、2−ジブロモエタンを内部標準に用いた1H−NMR測定により、生成物は9.15mmol/gのSiH基および0.164mmol/gのアリル基を含有することがわかった。
【0147】
(合成例4)
2Lオートクレーブにトルエン525g、(β2)成分として1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン570gを加えて、内温が105℃になるように加熱した。そこに、(α2)成分としてジアリルモノグリシジルイソシアヌレート120g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.05g、トルエン120gの混合物を滴下した。滴下中、内温が109℃まで上昇した。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去し、薄い黄色のやや粘ちょうな液体(反応物D)を得た。
【0148】
1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと反応したものであることがわかった。また、1、2−ジブロモエタンを内部標準に用いた1H−NMR測定により、生成物は7.7mmol/gのSiH基を含有することがわかった。
【0149】
(合成例5)
1Lの4つ口フラスコに、磁気攪拌子、滴下漏斗、冷却管をセットした。このフラスコにトルエン200g、(β2)成分として1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン200gを入れ、窒素雰囲気下オイルバス中で50℃に加熱、攪拌した。(α2)成分としてアリルグリシジルエーテル95.0g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)31.5μL、トルエン50gの混合物を滴下漏斗から、30分かけて滴下した。1時間同温で加熱した後、未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去し、無色の液体(反応物E)を得た。
【0150】
1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がアリルグリシジルエーテルとヒドロシリル化反応したものであることがわかった。また、1,2−ジブロモメタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、6.63mmol/gのSiH基を含有していることがわかった。
【0151】
(合成例6)
500mLの4つ口フラスコに、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトルエン100gおよび(β2)成分として1、1、3、3−テトラメチルジシロキサン54.2gを入れ、104℃に加熱したオイルバス中で加温、攪拌した。このフラスコに、(α2)成分としてトリアリルイソシアヌレート33.6gおよび白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)242μLをトルエン100gで希釈したものを滴下漏斗から40分かけて滴下した。オイルバスの温度を118℃まで昇温し4.5時間加熱攪拌した後放冷し、減圧で揮発分を留去して薄い茶色のやや粘ちょうな液体(反応物F)78.3gを得た。
【0152】
1H−NMR測定によりこのものは1、1、3、3−テトラメチルジシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したものであることがわかった。また、1、2−ジブロモエタンを内部標準に用いた1H−NMR測定により、生成物は3.10mmol/gのSiH基および0.070mmol/gのアリル基を含有することがわかった。
【0153】
(実施例1〜5、比較例1、2)
表に示した配合で各成分を混合して得られた組成物を、2枚のガラス板に3mm厚みのシリコーンゴムシートをスペーサーとしてはさみこんで作成したセルに流し、熱風乾燥機中で60℃/6時間、80℃/1時間、100℃/1時間、120℃/1時間、150℃/1時間、180℃/30分加熱して硬化物を得た。
【0154】
得られた硬化物の性状を表に示した。
【0155】
【表1】

【0156】
表に示すとおり、実施例の硬化物は均一で透明であり、また強靭性を有しているが、比較例の硬化物は不均一で白濁していたか、強靭性に欠けるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個含有する化合物、(B)SiH基を1分子中に少なくとも3個含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、を必須成分として含有する硬化性組成物であって、
上記(A)成分が、(α1)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個含有する有機化合物と、(β1)SiH基を1分子中に2個含有するケイ素化合物とを、ヒドロシリル化反応させて得ることができる化合物であり、
上記(B)成分が、(α2)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物と、(β2)SiH基を1分子中に少なくとも2個含有するケイ素化合物とを、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
上記(α1)成分が、下記一般式(I)
【化18】

(式中R1は水素原子、あるいは炭素数1〜50の一価の有機基であって、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含まない基を表す。)で表される有機化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
上記(α1)成分ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートであることを特徴とする、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
上記(β1)成分が、下記一般式(II)
【化19】

(式中R2は炭素数1〜50の一価の有機基であって、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含まない基を表し、複数のR2は同一であっても異なっていてもよく、nは0〜100の数を表す。)で表されるケイ素化合物であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
上記(β1)成分のR2がメチル基あるいはフェニル基から選ばれる基であることを特徴とする、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
上記(A)成分の数平均分子量が1,000〜1,000,000であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
上記(α2)成分が、下記一般式(III)
【化20】

(式中R3は水素原子、あるいは炭素数1〜50の一価の有機基であって、複数のR3は同一であっても異なっていてもよく、3個のR3のうち少なくとも1個はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む基である。)で表される有機化合物であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
上記(α2)成分がモノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートあるいはトリアリルイソシアヌレートから選ばれる化合物であることを特徴とする請求項7の硬化性組成物。
【請求項9】
上記(β2)成分が、下記一般式(IV)
【化21】

(式中R4は炭素数1〜50の一価の有機基であって、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含まない基を表し、mは3〜10の数を表す。)で表されるケイ素化合物であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
上記(β2)成分のR4がメチル基あるいはフェニル基から選ばれる基であることを特徴とする、請求項9に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなる、電子素子用の接着剤。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなる、電子素子用の封止剤。
【請求項13】
上記電子素子が光半導体素子であることを特徴とする、請求項11に記載の接着剤。
【請求項14】
上記電子素子が光半導体素子であることを特徴とする、請求項12に記載の封止剤。

【公開番号】特開2011−63670(P2011−63670A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213910(P2009−213910)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】