説明

硬質フォーム成形部材を両面被覆する方法

本発明は、a)カプセル中の成形部材をフィルム間に距離比をもって配置しかつ固定し、b)空気をカプセルから排気し、およびc)それによってフィルムを成形部材の対抗した面上に、フィルム間に真空下維持されている間に押圧することを特徴とする、硬質フォーム成形部材をプラスチックフィルムで両面被覆する方法および装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
a)カプセル中の成形部材をフィルム間に距離比をもって配置しかつ固定し、
b)空気をカプセルから排気し、および
c)それによってフィルムを成形部材の対抗した面上に、フィルム間に真空下維持されている間に押圧することを特徴とする、硬質フォーム成形部材をプラスチックフィルムで両面被覆する方法に関する。
【0002】
フォーム成形部材の事後の表面処理のために、公知技術水準ではこれまで単に片面の被覆法が記載されていた(欧州特許第746458号明細書およびWO 95/23682参照)。多面の被覆が望まれる場合には、処理は、数回繰り返さなければならない。更に、被覆すべき硬質フォームは、欧州特許第746458号明細書に記載されているように、前記方法を一般に使用することができるようにするために、液体および空気に通過させなければならない。硬質フォーム成形部材の完全な被覆は、刊行物に公知の方法を手間を掛けてのみ実現させることができる。
【0003】
形、色および表面は、フォーム成形部材の場合、事後に変更できない訳ではない。フォーム成形部材のまさに外見および性質、例えば触感および耐候性は、しばしば改めるべき点がある。
【0004】
従って、本発明の課題は、フォーム成形部材の簡単な事後の表面形成を可能にする方法を見出すことであった。
【0005】
意外なことに、冒頭に記載された方法は、硬質フォーム成形部材の場合に事後の表面形成を実施するのに卓越して好適あることが見出された。
【0006】
ドアを被覆するための比較可能な方法は、既にWO 01/032400の記載から公知である。しかし、WO 01/032400の記載から、どのようにしてフォーム成形部材を前記方法で被覆することができるのかは、確認することができない。
【0007】
この場合、表現に関しては、WO 01/032400に記載された方法が引き合いに出される。殊に、個々に使用されるかまたは特に組み合わせて使用される、WO 01/032400の次の方法の特徴および装置の特徴が明らかに指摘される:
赤外加熱、それによってプラスチックフィルムは、押圧前に、特に軟化点を越えて加熱される。それによって、気泡形成、フィルムの引裂きまたは端縁でのフィルムの壊れやすさ(Weissbruch)は、回避され;
フォーム成形部材とフィルムとの間の室(室A)ならびにフィルムとカプセル壁との間の室(室B)の別々の室。好ましくは、室AおよびBは、同時にまたは特に連続して真空に引かれる。それによって、フィルムの折れ曲がりが回避されるか、またはフィルムとフォーム成形部材との早期の接触は、回避される。室B中の真空を大気圧に放圧することによって、フィルムは、フォーム成形部材上に押圧され、他方、室A中の真空は、なお維持される。
【0008】
対抗する面上でフィルムでのフォーム成形部材の同時の被覆、例えばこれは、フォーム成形部材を木材、金属またはプラスチックからなる枠内に固定し、被覆室の中心に同心配置して枠の頭端部での保持によって保持することにより、達成される。硬質フォーム成形部材の下方には、もう1つのフィルムが導入され、それによってこのフィルムと下方のカプセル壁との間には、第3の室Cが生じる。更に、全部で3つの室は、既に上記したように真空に引かれ、フォーム成形部材は、フィルムの加熱後に室Aおよび室Cの開放によって相応して両面被覆される。
【0009】
フォーム成形部材上でのフィルムの持続した付着力を可能にする接着剤でのプラスチックフィルムまたは特にフォーム成形部材の被覆。
【0010】
硬質フォーム成形部材をプラスチックフィルムで両面被覆する本発明による方法は、
a)カプセル中の成形部材をフィルム間に距離比をもって配置しかつ固定し、
b)空気をカプセルから排気し、および
c)それによってフィルムを成形部材の対抗した面上に、フィルム間に真空下維持されている間に押圧することによって特徴付けられる。
【0011】
本発明による方法は、意外なことに、これまでプラスチックフィルムでの被覆に数工程でのみ利用することができた硬質フォームの2面または多面の被覆に適している。硬質フォームは、本発明の範囲内でDIN 7726(05/1982)によるフォームであり、このフォームは、圧力負荷下での変形に比較的高い抵抗で抵抗する(DIN 53421、06/1984、≧80kPaによる10%の圧縮または圧力強度での圧力応力)。
【0012】
被覆処理中でのフォーム成形部材の変形を回避させるために、成形部材は、全ての方法の間に一時的な枠中で張力下に置くことができる。
【0013】
接着剤としては、有利にポリウレタンを基礎とする水性系の一成分系ならびに二成分系が使用される。
【0014】
一成分系の接着剤としては、PU分散液がこれに該当し、この場合、例示的には、Jowapur(登録商標)150.50が挙げられる。二成分系の接着剤としては、PU分散液、例えばJowapur(登録商標)150.30とイソシアネート、例えばJowat(登録商標)195.40との組合せがこれに該当する。しかし、一般にアクリレート樹脂またはエポキシ樹脂を基礎とする接着剤も使用に適している。
【0015】
接着剤の塗布は、従来の方法、例えば刷毛塗り、ロール塗布または吹き付けによって行なうことができ、この場合吹き付けは、特に有利である。記載された系の場合には、接着剤の塗布に続く室温での20分間の乾燥時間で十分である。
【0016】
殊に、例えばWO−A 96/23823およびWO−A 97/46608に記載されたようなエラストマーのスチレン−ブタジエン−ブロックポリマーを基礎とする付着助剤を有する二層のフィルムは、本発明方法による硬質フォームの被覆に適している。前記の付着フィルムを使用する場合には、一般に付加的な接着剤の使用を省略することができる。特に、例えばポリスチレン、HIPS、ASA、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリエステルのような担体層と前記スチレン−ブタジエン−ブロックポリマーのようなエラストマーの熱可塑性樹脂からなる付着補助層とからなる同時押出された二層フィルムが使用される。
【0017】
硬質フォーム、例えばElastogran社のポリウレタンElastopir(登録商標)またはElastopor(登録商標)およびBASF SE社のEPS(拡張ポリスチレン)は、本発明によるフォーム成形部材の製造に適している。EPSは、特に有利である。この硬質フォームは、一般に独立気泡のフォームである。
【0018】
硬質フォームからなる被覆すべき基質は、一般に数平方メートルまでのDIN A4フォーマットの寸法を有する。硬質フォームの層厚は、通常、50mmから2000mmまでに達する。
【0019】
ポリウレタンまたはEPSからなる独立気泡のフォームは、卓越した断熱特性を有する。低い空間質量は、前記の魅力的な特性プロフィールを補充する。
【0020】
従って、EPSからなるかかる独立気泡のフォームは、土木建築および運輸でエネルギー節約の目的をもって優先的に使用される。
【0021】
硬質フォームは、その積み荷および破壊からの安全性の点で本発明による被覆によって決定的に改善される。これは、硬質フォームとフィルムとの間の空気を完全に除去することによって達成され、この事実は、従来の貼合せ法では実現させることができなかった。更に、真空に引くことにより、フィルムは、硬質フォーム上に押圧され、それによってフィルムと硬質フォームとの間に堅固な結合が生じ、この結合は、接着剤の塗布によってなお強化させることができる。
【0022】
フォーム成形部材の液体の吸収は、プラスチックフィルムでの被覆によって殆んど完全に抑制することができる。
【0023】
更に、フォーム成形部材の耐候性および触感は、プラスチックフィルムでの被覆によって決定的に改善させることができる。
【0024】
最終的に、プラスチックフィルムは、基本フィルムとして機能することができ、この基本フィルムは、簡単な後処理、例えば塗装、印刷、例えば広告のスローガンを有する印刷等を可能にする。
【0025】
適当なプラスチックフィルムは、殊にポリ塩化ビニル、スチレンコポリマー、ポリプロピレン、ポリ弗化ビニリデン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)およびポリメチルメタクリレート(PMMA)である。外部での使用のために、殊にスチレンコポリマー、例えばSAN、AMSANおよび殊にASAは、耐候性のために適していることが証明された。例えば、ASAコポリマーの場合には、フィルムは、熱可塑性エラストマー0.5〜30質量%によって変性されていてよい。使用可能な典型的な熱可塑性エラストマーの種類は、次の通りである:TPE−O(オレフィンを基礎とする熱可塑性エラストマー、主にPP/EPDM)、TPE−V(オレフィンを基礎とする架橋された熱可塑性エラストマー、主にPP/EPDM)、TPE−U(ウレタンを基礎とする熱可塑性エラストマー)、TPE−E(熱可塑性コポリエステル)、TPE−S(スチレン−ブロックコポリマー、例えばSBS、SEBS、SEPS、SEEPS、MBS)およびTPE−A(熱可塑性コポリアミド、例えばPEBA)。
【0026】
このようなフィルムは、種々の単色で使用されてもよいし、印刷された表面に使用されてもよい。更に、前記表面は、異なる種類の型押しロールによってフィルムの押出中に構造化することができる。
【0027】
フィルム、例えば上記のASAフィルムは、事後に色および形に関連して適当な後処理、例えば刷毛塗り、印刷または型押しによって変えることができる。この種の基本フィルムで被覆されたフォームは、事後に外見および形に関連して簡単に変更させることができる。
【0028】
使用されるフィルムは、50〜750μm、有利に100〜500μm、特に有利に200〜350μmの厚さを有する。このフィルムは、相応する出発物質から顆粒の形で公知方法によってフィルムの製造のために製造されてよく、この場合押出法は、注型によるフィルム製造に有利である。
【0029】
接着剤の性質を改善するために、フィルムは、コロナ放電処理の1つの側ならびに2つの側に掛けることができる。
【0030】
EPSフォーム(例えば、Styropor(登録商標))を被覆するために、殊にASA、ポリスチレンおよびHIPSフィルムは、有利であることが証明された。こうして、特に耐衝撃性の破壊の危険がない被覆された硬質フォームを製造することができ、この硬質フォームは、例えばパレットに適している。更に、EPSフォームを被覆するために、殊にWO−A 96/23823およびWO−A 97/46608に記載された、同時押出された二層フィルムを使用することができる。二層フィルムは、例えばASA、ポリスチレンまたはHIPSのような担体層と例えばStyroflex(登録商標)(BASE SE)のようなエラストマーのスチレン−ブタジエン−ブロックポリマーを基礎とする付着補助層とからなる。a)例えばLuran(登録商標)S(BASF SE)のような担体層およびb)例えばStyroflex(登録商標)のようなエラストマーのスチレン−ブタジエン−ブロックポリマーの二層のフィルムの使用は、このように被覆された物体が極めて良好な耐候性を有するという利点を有する。この場合には、既に前述したように、多くの場合に付加的な接着剤を省略することができる。同時押出されたフィルムは、付着補助層がEPSフォーム表面と直接に接触するようにEPSフォーム上に押圧される。
【0031】
被覆されたフォーム成形部材は、良好な断熱性のために有利に建築分野で使用することができる。
【0032】
殊に、本発明による成形部材は、天井被覆および壁面被覆としてこれに該当する。
【0033】
更に、フォーム成形部材は、僅かな質量および簡単な表面形成のために見本市の建設に適している。官公庁の壁面、空間の仕切り、舞台装置は、簡単な建築様式で極めて簡単に創造することができる。
【0034】
本発明によるフォーム成形部材は、断熱挙動、効果を示す表面および高い柔軟性のために、卓越して例えばケーブルシャフト、ローラーブラインドボックスおよびカーテンアタッチメントの被覆に好適である。前記の成形部材は、例えば切断、屈曲等によって所定の要件に迅速に適合させることができる。
【0035】
フォームは、一般に例えば座席の設備およびテーブルの製作に卓越して好適である。既に記載したように、例えば人工皮革のような相応するプラスチックフィルムは、効果を示す外観を付与することができる。
【0036】
しかし、室内競技場、ガレージおよび駐車場の壁面ならびにガードレールの被覆についても考えることができる。前記の壁面またはガードレールは、少なくとも自動車の高さで相応して強化させることができ、例えば駐車の際の自動車の損傷を回避することができる。
【0037】
フィルムで被覆された硬質フォームは、有利にパレットとして使用することができる。貼合せ技術で製造されたパレットと比較して、本発明による方法で製造されたパレットは、よりいっそう高い負荷能力を有する。
【0038】
また、EPSフォームは、包装のために利用されるか、または機器の外側被覆として利用される。殊に、加熱管および熱水管、冷却装置、冷蔵庫および冷凍庫は、硬質フォームの良好な断熱特性のために本発明による方法で製造され被覆された硬質フォームで被覆することができる。
【実施例】
【0039】
使用例:
実施例1
ASAフィルムでのネオポレンNeopolenの硬質フォームの両面被覆
二面に被覆すべき支持体として、BASF SE社の架橋されたポリエチレンを基礎とする商業的に使用可能なフォームNeopolen(登録商標)からなる硬質フォーム成形部材を使用した。成形部材は、120cmの長さ、80cmの幅および8cmの高さであった。第1の作業工程で、最初に接着剤を塗布した。接着剤として、塗布の直前に2つの個々の成分を混合することによって製造された、ポリウレタンを基礎とする水性二成分系(結合剤および硬化剤からなる)を使用した。均一な混合物を得るために、前記混合物を室温でKPG攪拌機を用いて少なくとも3分間攪拌した。引続き、前記接着剤を型Walther Pilotの吹き付けガンを用いて約80g/m2の量で成形部材の2つの表面上および4つの端縁上に塗布した。引続き、この形成部材を室温で20分間乾燥させた。直ぐ次の工程で硬質フォーム成形部材を2つの頭端部(対向する側面)での保持によって固定し、被覆カプセルの中心に位置決めした。この場合、塗布すべき2つのプラスチックフィルムは、それぞれカプセル壁と成形部材との間に取り付けた。それによって、被覆カプセル中に3つの室が生じた:中心に硬質フォーム成形部材が位置決めされた、2つのプラスチックフィルムの間の室(室A)。2つの別の室は、それぞれプラスチックフィルムとカプセル壁との間に存在した(室B、C)。プラスチックフィルムとして、Luran(登録商標)S、BASF SE社から商業的に入手可能なASAコポリマー、からなる厚さ250μmの白色顔料を有する注型フィルムを使用した。引続き、カプセル中で全部で3つの別々の室(A、B、C)を同時に排気した。25ミリバールの真空が達成された後、2つのプラスチックフィルムを、カプセル壁に取り付けられたIRエミッタを用いて150℃の温度に加熱した。前記温度の達成後、加熱を終結させ、室BおよびCを空気で大気圧に放圧し、この場合同時に室A内の真空は、維持されたままであった。室BおよびCを充満させることにより、過圧を生じさせ、それによって加熱されたプラスチックフィルムを、成形部材の接着剤で吹き付けられた表面上および端縁上に押圧した。2つのプラスチックフィルムは、側面の高さで互いに衝突し、この位置で溶接継目が形成され、この溶接継目は、側面で枠状で全ての成形部材の周囲に置かれた。それによって、被覆処理は、終結した。更に、処理中のIR線での加熱により、接着剤を成形部材の上面および側面で活性化し、それによって既に処理の終結後に接着剤とプラスチックフィルムとの間で極めて良好な付着を達成した。被覆工程の終結後、被覆された成形部材は、カプセルから取り出すことができた。溶接継目上にさらに延在する、上方に存在するフィルムを、鋭利なカミソリの刃で手動で除去した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質フォーム成形部材をプラスチックフィルムで両面被覆する方法において、
a)カプセル中の成形部材をフィルム間に距離比をもって配置しかつ固定し、
b)空気をカプセルから排気し、および
c)それによってフィルムを成形部材の対抗した面上に、フィルム間に30ミリバールより低い真空下維持されている間に押圧することを特徴とする、硬質フォーム成形部材をプラスチックフィルムで両面被覆する方法。
【請求項2】
フィルムは、カプセルを3つの室に分割し、この場合1つの室は、フィルム間に存在し、別の2つの室は、大気圧に脱気され、フィルムは、成形部材の対向した面と接触する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程b)の前に成形部材上および/またはプラスチックフィルム上に接着剤を塗布する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
硬質フォームは、EPSフォームである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
硬質フォームは、ポリウレタン硬質フォームである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
フィルムは、簡単に後処理することができる基本フィルムである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
フィルムは、ポリ塩化ビニル、スチレンコポリマー、ポリプロピレン、ポリ弗化ビニリデン、熱可塑性ポリウレタンおよび/またはポリメチルメタクリレートからなり、100〜500μmの層厚を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
フィルムは、2つの層:a)ASA、ポリスチレンまたは耐衝撃性ポリスチレンを含有する担体層およびb)エラストマーの熱可塑性樹脂からなる付着補助層からなる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
成形材は、パレットである、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
成形部材は、ケーシングの外側被覆である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−525972(P2010−525972A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506913(P2010−506913)
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055489
【国際公開番号】WO2008/135550
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】