説明

磁性重合体粒子及びその製造方法、水分散体

【課題】エチレン性不飽和単量体の重合体中に高濃度で磁性粉が分散し、水分散性が良好な磁性重合体粒子及びこれを用いた水分散体、並びに、水性媒体中での懸濁重合によって上記磁性重合体粒子を得る場合でも、重合反応の後処理も容易で、粒子同士の凝集を抑制でき、良好な収率で所望の粒子を得ることができる磁性重合体粒子の製造方法を提供することである。
【解決手段】磁性粉と、エチレン性不飽和単量体の重合体とを含んで構成され、前記磁性粉の含有率が2.5〜50質量%の範囲であり、前記エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体と、カルボキシ基を有する単量体と、水酸基及びカルボキシ基を有しない疎水性単量体とを含み、且つ、磁性粉を含まない前記重合体の水酸基量が0.3〜5.0mmol/gであり、カルボキシル基量が0.005〜0.5mmol/gの範囲である磁性重合体粒子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性重合体粒子およびその製造方法、並びに水分散体に関し、更に詳しくは、特に水分散体として利用される、画像形成材料、磁性流体、診断薬及び医薬品担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤並びに化粧品添加剤のような用途に好適に使用可能な磁性重合体粒子及びその製造方法、並びに水分散体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性重合体粒子としては、電子写真における静電荷現像用の磁性トナーが公知である。また、その製造方法としては、親油化処理が施された磁性粉を重合性モノマーに分散させ、この重合性モノマーを、難水溶性無機粉末を懸濁保護剤に用いて懸濁重合する方法(例えば、特許文献1参照)、あるいは、磁化処理及び親油化処理が施された磁性粉を重合性モノマーに分散させ、この重合性モノマーを懸濁重合して磁性ポリマー粒子を得る方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。しかしながら、これらの方法は乾式トナーの作製を目的としており、得られた粒子は疎水性が大きく水分散体として使用することは困難である。さらに、個数平均粒径が0.5〜5.0μmの小粒子を作製しようとする場合、重合中の粒子同士の凝集がより起こりやすくなり、収率を低下させるだけでなく、粒子内部での磁性粉の分散性が悪いという問題があった。
【0003】
一方、水分散体として利用される磁性重合体粒子としては、生理活性物質の固定用粒子が公知である。例えば、炭化水素油中に分散された磁性粉を、ビニル芳香族モノマーを含む有機相に分散させ、この分散体を、ホモジナイザーを用いて水性相へ均質に分散させた後重合することにより、比較的小粒径の磁性ポリマー粒子を得る方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、あらかじめナノオーダーの磁性粒子を炭化水素油中に分散させる必要があり、工程が煩雑でコストがかかる。
【0004】
また、特定の官能基を有する多孔ポリマー粒子の存在下に鉄化合物を析出させ、この鉄化合物を酸化することで、前記多孔ポリマー粒子の内部に磁性粉を導入し、2μm以上の粒径でかつ均一径の磁性ポリマー粒子を得る方法が開示されているが(例えば、特許文献4参照)、この方法は製造工程が複雑であり、また、グリシジルメタクリレートのごとき架橋剤を多量に使用するので、得られた粒子は高度に架橋されており、紙やフィルムへの定着性を必要とする画像形成材料には適用できない。
【0005】
また、親油処理した磁性粉を、(メタ)アクリル酸エステルとスチレンのごとき疎水性単量体中に分散させて単量体組成物を調製し、この単量体組成物を水相に乳化分散させて懸濁液を得、得られた懸濁液にメタクリル酸メチルのごとき親水性単量体とアクリル酸などのカルボキシル基を有する親水性単量体を添加した後重合し、磁性重合体粒子を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献5参照)。しかし、この方法で作製される磁性重合体粒子は0.2〜0.3μmの小粒径粒子に限られ、粒径が0.5μm以上の粒子を作製することはきわめて困難であった。すなわち、この方法では水中に水溶性の親水性単量体を後添加するので、メタクリル酸メチルのごとき親水性の低い単量体であればともかく、メタクリル酸や2−ヒドロキシエチルメタクリレートのような親水性の高い単量体を前記親水性単量体として用いた場合、重合体粒子中にこれらの単量体が効率よく入り込むことは困難であり、このため粒径が0.5μm以上の粒子を得ることはできないだけでなく、粒子中にカルボキシル基や水酸基を導入することは事実上できないため、水分散性の高い磁性重合体粒子を得ることは困難であった。
【0006】
また、生理活性物質を固定するための磁性重合体粒子として、カルボキシル基を有する粒子が知られている。例えば、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と磁性粉との混合物を懸濁重合して得られた粒子を、有機性塩基、水溶性溶剤で処理し、表面電荷を増大させることにより生理活性物質の固定用粒子とする技術が開示されている(例えば、特許文献6、7参照)。この方法は、得られたベース粒子をアンモニアやアミンのような有機塩基で処理することが必須であるが、処理後の洗浄工程で粒子中に浸透した有機塩基を除去することが困難であるという問題があった。さらに粒子にアミン等の有機塩基が浸透した結果、粒子のガラス転移温度(Tg)が下がり、粒子同士が凝集しやすくなり、結果として収率を低下させてしまい、非架橋の粒子の場合は特に大きな問題であった。
【0007】
また、1〜30nmの酸化鉄のごとき磁性粉がスチレンとグリシジルメタクリレートとからなる架橋ポリマーに内包されている免疫測定用粒子の磁性粒子が開示されている(例えば、特許文献8参照)。この粒子は、過硫酸カリウム(KPS)のごとき水溶性重合開始剤を用いて乳化重合すると同時に、同じ水溶液中で塩化鉄を酸化させて酸化鉄を生成することにより得られる。しかしながら、この方法で得られる磁性重合体粒子は、粒径が0.05〜0.5μmまでの小粒径粒子に限られ、0.5μm以上の粒子を作製することはきわめて困難であった。
【0008】
これに対し、磁気テープを作製するための磁性塗料としてカルボキシル基を有するポリマーをバインダー樹脂として使用する方法は公知である。例えば、特定割合の水酸基とカルボン酸基とを有する塩化ビニル系共重合体を磁性粉のバインダー樹脂とする磁性塗料が開示されているが(例えば、特許文献9参照)、前記バインダー樹脂を溶解させるために有機溶剤を必要とし、溶剤を除去した後に形成される塗膜は疎水性である。したがってこの技術を利用して、水分散性の高い粒子を作製することは困難であった。
【特許文献1】特開昭57−102666号公報
【特許文献2】特開昭59−221302号公報
【特許文献3】特公平4−3088号公報
【特許文献4】特公平5−10808号公報
【特許文献5】特開平9−208788号公報
【特許文献6】特開平10−87711号公報
【特許文献7】特開平10−270233号公報
【特許文献8】特開2004−331953号公報
【特許文献9】特公平4−34578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、エチレン性不飽和単量体の重合体中に高濃度で磁性粉が分散し、水分散性が良好な磁性重合体粒子及びこれを用いた水分散体を提供することを目的とする。また、本発明は、水性媒体中での懸濁重合によって上記磁性重合体粒子を得る場合でも、重合反応の後処理も容易で、粒子同士の凝集を抑制でき、良好な収率で所望の粒子を得ることができる磁性重合体粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題は、以下の本発明によって達成される。すなわち本発明は、
<1> 磁性粉と、エチレン性不飽和単量体の重合体とを含んで構成され、前記磁性粉の含有率が2.5〜50質量%の範囲であり、前記エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体と、カルボキシル基を有する単量体と、水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体とを含み、且つ、磁性粉を含まない前記重合体の水酸基量が0.3〜5.0mmol/gであり、カルボキシル基量が0.005〜0.5mmol/gの範囲である磁性重合体粒子である。
【0011】
<2> 前記カルボキシル基の一部または全部が塩構造を形成している<1>に記載の磁性重合体粒子である。
【0012】
<3> <1>に記載の磁性重合体粒子を含む水分散体である。
【0013】
<4> A質量部の水酸基を有する単量体と、B質量部のカルボキシル基を有する単量体と、C質量部の水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体とを(A+B)<Cなる関係を満たして含むエチレン性不飽和単量体、重合開始剤及び表面が疎水化処理された磁性粉を含有する混合物を、塩が溶解され且つ分散安定剤を加えた水性媒体中に分散して懸濁重合させる工程を有する磁性重合体粒子の製造方法である。
【0014】
<5> さらに、前記懸濁重合で得られた粒子を、塩基性化合物で処理する工程を有する<4>に記載の磁性重合体粒子の製造方法である。
【0015】
<6> 前記水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体の含有量を、全単量体成分中の50.0〜90.0質量%の範囲とする<4>に記載の磁性重合体粒子の製造方法である。
【0016】
<7> 前記疎水化処理が、カップリング剤による表面被覆処理である<4>に記載の磁性重合体粒子の製造方法である。
【0017】
<8> 前記塩が、無機塩である<4>に記載の磁性重合体粒子の製造方法である。
【0018】
<9> 前記分散安定剤が、無機粉体である<4>に記載の磁性重合体粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エチレン性不飽和単量体の重合体中に高濃度で磁性粉が分散し、水分散性が良好な磁性重合体粒子及びこれを用いた水分散体を提供することができる。また、本発明は、水性媒体中での懸濁重合によって上記磁性重合体粒子を得る場合でも、重合反応の後処理も容易で、粒子同士の凝集を抑制でき、良好な収率で所望の粒子を得ることができる磁性重合体粒子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
<磁性重合体粒子>
本発明の磁性重合体粒子は、磁性粉と、エチレン性不飽和単量体の重合体とを含んで構成され、前記磁性粉の含有率が2.5〜50質量%の範囲であり、前記エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体と、カルボキシル基を有する単量体と、水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体とを含み、且つ、磁性粉を含まない前記重合体の水酸基量が0.3〜5.0mmol/gであり、カルボキシル基量が0.005〜0.5mmol/gの範囲であることを特徴とする。
【0021】
本発明の磁性重合体粒子は、主として磁性の印刷インクなどの水系分散体に用いられる粒子状の磁性重合体である。したがって、一定以上の磁力を保持しつつ、水などの水性媒体中に均一に分散させることが可能なものである。
【0022】
上記水性媒体中への良好な分散性を得るためには、粒子表面に水酸基及びカルボキシル基を存在させることが有効である。一方、粒子中での磁性粉の分散性向上のためには粒子中にカルボキシル基が存在することが望ましい。このため、粒子を構成する重合体の構成成分が水酸基及びカルボキシル基を有していることが好ましいが、例えば、重合体としてポリエステルを用いた場合には、水中で重合体が加水分解してしまうため適当でない。
【0023】
本発明では、重合体としてエチレン性不飽和単量体の重合体を用い、これに含まれる水酸基を有する単量体及びカルボキシル基を有する単量体の共重合比により、水性媒体における分散性と重合体粒子の安定性との視点から、最適な水酸基およびカルボキシル基量の範囲を検討した。さらに本発明では、重合体粒子に一定量の磁性粉を含むが、該磁性粉の粒子中での分散性、含有量との関係からも前記水酸基量およびカルボキシル基量が最適となる範囲を見出した。
【0024】
本発明の磁性重合体粒子における水酸基量及びカルボキシル基量は、磁性粉の含有量によって異なるので、磁性粉を除いた重合体成分の水酸基量及びカルボキシル基量として定義されるものであり、磁性粉を含まない前記重合体の水酸基量が0.3〜5.0mmol/gの範囲、カルボキシル基量が0.005〜0.5mmol/gの範囲であることが必要である。
【0025】
水酸基量が0.3mmol/gに満たないと、重合体粒子の水性媒体への分散性が悪くなる。5.0mmol/gを超えると、水中での重合体粒子の膨潤性が大きくなり操作性が悪くなる。
水酸基量は、0.4〜4.0mmol/gの範囲が好ましく、0.5〜3.0mmol/gの範囲であることがより好ましい。
【0026】
一方、カルボキシル基量が0.005mmol/gに満たないと、重合体粒子の水酸基量を大きくしても、水性媒体への分散性が悪くなってしまう。0.5mmol/gを超えると、水中での重合体粒子の膨潤性が大きくなり操作性が悪くなる。
カルボキシル基量は、0.008〜0.3mmol/gの範囲が好ましく、0.01〜0.1mmol/gの範囲であることがより好ましい。
【0027】
上記水酸基量は、一般的な滴定法により求めることができる。例えば、上記重合体に無水酢酸のピリジン溶液等の試薬を一定量加え、加熱して、水を加えて加水分解し、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、該上澄みをフェノールフタレイン等の指示薬を用いて、エタノール性水酸化カリウム溶液等で滴定することにより、その水酸基量を求めることができる。
【0028】
一方、カルボキシル基量も一般的な滴定法により求めることができる。例えば、上記重合体に水酸化カリウムのエタノール溶液等の試薬を一定量加えて中和反応を行い、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、過剰の水酸化カリウムが含まれる該上澄みを自動滴定装置を用いて、イソプロパノール塩酸溶液等で滴定することにより、そのカルボキシル基量を求めることができる。
カルボキシル基が後述する塩構造(−COO:ここでYはアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオン、もしくはアンモニウムなどの有機カチオンを示す)を形成している場合は、塩酸等の酸で塩をカルボン酸に変換した後、上述の滴定を行いカルボキシル基量を求めることができる。
すなわち、本発明におけるカルボキシル基量とは、カルボキシル基が塩構造を形成している場合には、該塩構造に寄与しているカルボキシル基を含めたカルボキシル基量をいう。
【0029】
また、本発明の磁性重合体粒子における磁性粉の含有率は、2.5〜50質量%の範囲であり、3.0〜40質量%の範囲であることが好ましく、5.0〜30質量%の範囲であることがより好ましい。
含有率が2.5質量%未満では、必要な磁力を得ることができない場合がある。50質量%を超えると、磁性粉の粒子中での均一分散性や重合体粒子の分散安定性が得られなくなる場合がある。
【0030】
本発明において、前記磁性粉は磁性重合体粒子中に均一に分散されていることが好ましい。この場合、磁性粉の含有率の粒径依存性が少ないこと(粒径により磁性粉の含有率が大きく変動しないこと)が好ましい。具体的には、個数平均粒径が2μmの磁性重合体粒子の磁性粉含有率(P質量%)と、5μmの磁性重合体粒子の磁性粉含有率(Q質量%)との比の(P/Q)が0.5以上であることが好ましく、0.6〜1.0の範囲であることがより好ましい。粒径によらず磁性粉の含有率をほぼ一定とすることにより、例えば磁性重合体粒子をマグネトグラフィ等に用いた場合に、現像性のコントロールがより行いやすくなるなどのメリットがある。
【0031】
また、粒子表面の磁性粉の存在状態は、表面の電子顕微鏡観察により確認することができ、本発明の磁性重合体粒子では、観察された重合体粒子すべての表面に飛び出した磁性粉が見られないことが好ましい。この観点からも、本願における磁性重合体粒子では重合体が、水酸基に加え磁性粉の分散性向上に効果があるカルボキシル基を有していることが有効に寄与している。
【0032】
本発明の水酸基含有重合体は粒子状であるが、個数平均粒径が0.5μm以上であることが好ましい。具体的には0.5〜5μmの範囲であることがより好ましく、1.0〜4.0μmの範囲であることがさらに好ましい。
個数平均粒径が0.5μmに満たないと、小粒径過ぎて取り扱いが困難になったり後述するような製造方法で水酸基等を有効に導入することできなくなったり、磁性粉を含有させることができなくなる場合がある。また、5μmを超えると、水分散体としたときに沈降が早くなりすぎて取り扱いに不便を生じる場合がある。また、例えば画像形成材料として用いたときに高画質が得られない場合がある。
【0033】
なお、上記個数平均粒径は、乾燥粒子を光学顕微鏡または電子顕微鏡にて写真撮影し、その中から無作為に選んだ100個から200個の粒子の粒子径を各々測定し、それらの合計を個数で除した値である。
【0034】
本発明の磁性重合体粒子は、水分散性に優れている。水分散性の評価は、重合体粒子質量の約20倍量の水に対し該磁性重合体粒子を投入し、これを攪拌したときの粒子状態の観察により行うことができる。この場合、前記水を収容する容器としては、開口面積が1〜10cm程度のガラス容器を用いる。この評価において、本発明の磁性重合体は、攪拌後に 重合体粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に良好に分散していることが好ましい。
【0035】
本発明の磁性重合体粒子は、その粒子表面および内部に存在するカルボキシル基の一部または全部が塩構造を形成していることが好ましい。水酸基量が少ない粒子の場合は特に塩構造を形成していることが水分散性に有効である。
ここで、前記塩構造とは、カルボキシル基の水素がアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンもしくはアンモニウムなどの有機カチオンに置換され、カルボン酸塩を形成していることを意味する。本発明においては、磁性重合体粒子におけるカルボキシル基の一部が塩構造を形成してもよいし、全部が塩構造を形成していてもよいが、全部が塩構造を形成していることがより好ましい。
【0036】
本発明に用いる磁性粉、エチレン性不飽和単量体等の具体的内容は、後述する本発明の磁性重合体粒子の製造方法において説明する。
本発明の磁性重合体粒子の製造方法は、特に制限されず、乾式の溶融混練粉砕法により製造してもよいし、各種湿式の製造方法により製造してもよいが、後述する本発明の磁性重合体粒子の製造方法により製造することが、均一な重合体粒子を得る観点等から好ましい。
【0037】
<磁性重合体粒子の製造方法>
本発明の磁性重合体粒子の製造方法は、A質量部の水酸基を有する単量体と、B質量部のカルボキシル基を有する単量体と、C質量部の水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体とを(A+B)<Cなる関係を満たして含むエチレン性不飽和単量体、重合開始剤及び表面が疎水化処理された磁性粉を含有する混合物を、塩が溶解され且つ分散安定剤を加えた水性媒体中に分散して懸濁重合させる工程を有することを特徴とする
【0038】
本発明者等が前述の本発明の磁性重合体粒子を得るため、その製造方法について検討した結果、疎水性単量体と、水酸基を有する単量体及びカルボキシル基を有する単量体とを混合して水中で懸濁重合する場合には、重合中に粒子同士が凝集しやすく、また所望の共重合比の重合体を得ることが難しいということがわかった。その理由は、前記水酸基を有する単量体またはカルボキシル基を有する単量体が、水中に単量体混合物として分散された油滴から水中にも拡散し、油滴以外の水中でも重合してしまうためであった。
【0039】
そして、重合体として疎水性成分を含む場合には、磁性粉表面が比較的親水性であることから、重合体粒子中に磁性粉が含まれにくくなり、さらに、重合体粒子中で疎水性単量体重合成分と親水性単量体重合成分とが相分離すると、それに伴い磁性粉の分散性も不均一化する傾向があった。また、粒子中の水酸基量が少ない場合、得られた重合体粒子の水への再分散性が低下するという傾向があった。
【0040】
本発明者等は、上記問題に対し、(1)単量体混合物を水系媒体中に安定で均一な懸濁粒子として存在させること、(2)磁性粉の単量体混合物中での分散性を向上させること、(3)これらの粒子を重合中に凝集させないようにすること、さらに(4)得られた磁性重合体粒子の凝集を抑制することの4つの観点から改良を試みた。
【0041】
まず、前記(1)に対しては、単量体の混合量について、A質量部の水酸基を有する単量体と、B質量部のカルボキシル基を有する単量体と、C質量部の水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体とを用いる場合、これらを(A+B)<Cなる関係を満たすように混合することにより、水系媒体中で安定な懸濁粒子を形成することが可能となることがわかった。
【0042】
また、前記(2)に関しては、磁性粉の表面を疎水化処理することで対応可能となった。前記のように磁性粉の表面は基本的に親水性であるため、疎水化処理を行うことにより疎水性単量体に対する親和性を高めることができ、磁性粉の粒子中での分散均一性及び含有量を高めることができた。
【0043】
さらに、上記の場合でも懸濁粒子から水性媒体中への単量体(一部磁性粉を含む場合もある)の拡散を防止するため、水性媒体中に塩を溶解させ、塩析効果により親水性単量体を含む単量体混合物を懸濁重合系の油層中に優先的に配置させることができた。
【0044】
一方、前記(3)に対しては、上記水性媒体中への塩の溶解が懸濁重合中に発生する乳化重合の発生を抑制するため、同時に粒子の凝集にも効果があるといえる。そしてさらに、水性媒体中に分散安定剤を加えることにより、粒子の凝集同士の凝集が抑えられることが判明した。
【0045】
そして、前記(1)〜(3)のみによっても所望の性能を有する磁性重合体粒子が得られるが、さらに前記(4)として、重合後に得られた磁性重合体粒子を塩基で処理し、重合体粒子に存在するカルボキシル基の一部または全部を塩構造に変換することにより、重合体粒子の水酸基量が少ない場合においても、重合後の重合体粒子の水への分散性が良好になり凝集がより抑制されることがわかった。
【0046】
すなわち本発明においては、エチレン性不飽和単量体における水酸基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体及び疎水性単量体の混合量の調整、磁性粉表面への疎水化処理、水性媒体中への塩の溶解及び分散安定剤の添加の4つの条件が満たされて初めて前記(1)〜(3)の作用が発揮され、親水性単量体、疎水性単量体及び磁性粉を均一な状態で含む懸濁粒子中での安定した重合反応が可能となった。さらに、得られた重合体粒子を塩基で処理することにより、水への分散性を大幅に向上することが可能となった。
そして、このようにすることにより、所望の含有率で磁性粉を均一に分散した磁性重合体粒子を簡易にかつ良好な収率で製造することを実現した。
【0047】
以下、本発明の水酸基含有磁性重合体粒子の製造方法について詳細に説明する。なお、本発明におけるエチレン性不飽和単量体とは、ビニル基などのエチレン性不飽和基を有する単量体をいう。そして、下記水酸基を有する単量体及びカルボキシル基を有する単量体、および水酸基とカルボキシル基を有しない疎水性単量体ともに本発明におけるエチレン性不飽和単量体に含まれる。
【0048】
(単量体等を混合する工程)
−水酸基を有する単量体−
本発明で用いる水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−ヘキシルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸エステル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
尚ここで、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表す表現であり、以下において同様である。
【0049】
これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一つを用いることが、後述する疎水性単量体との共重合比のコントロール、重合反応の制御性等の観点から好ましい。
【0050】
−カルボキシル基を有する単量体−
本発明で用いるカルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリロオキシエチルモノフタレート、メタクリロオキシエチルモノマレエートおよびメタクリロオキシエチルモノスクシネートなどを挙げることができる。
これらの中では、メタクリロオキシエチルモノフタレートを用いることが、後述する疎水性単量体との共重合比のコントロール、重合体粒子中の磁性粉の分散、重合反応の制御性等の観点から好ましい。
【0051】
−水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体−
水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;炭素数1〜18(より好ましくは、2〜16)のアルキル基若しくはアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等);炭素数1〜12(より好ましくは、2〜10)のアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル(例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エキトシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アリクレート、n−ブトキシメチル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等);アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート等);アクリロニトリル、エチレン、塩化ビニル、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
【0052】
これら中でも、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましく、更には、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0053】
前記水酸基を有する単量体及びカルボキシル基を有する単量体と共重合可能な疎水性単量体の含有量としては、全単量体成分中、20〜99質量%の範囲であることが好ましく、50〜90質量%の範囲であることがより好ましい。
含有量が20質量%未満では、重合体中の水酸基及びカルボキシル基量が多くなりすぎ、本発明の手法によっても均一な重合ができなくなる場合があり、99質量%を超えると、重合体粒子として水酸基及びカルボキシル基による親水性の効果が得られなくなる場合がある。
【0054】
前述のように、本発明においては、A質量部の水酸基を有する単量体と、B質量部のカルボキシル基を有する単量体と、C質量部の水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体とを用いる場合、これらを(A+B)<Cなる関係を満たすように混合することが必要である。具体的には、用いる水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体の量を100質量部(C質量部)とした場合、A+Bを5〜50質量部の範囲とすることが好ましく、10〜30質量部の範囲とすることがより好ましい。
【0055】
また、水酸基を有する単量体量(A質量部)と、カルボキシル基を有する単量体量(B質量部)の比(A/B)は1000/1〜10/1の範囲とすることが好ましく、1000/5〜100/1の範囲とすることがより好ましい。
【0056】
−その他の単量体−
後述する水性媒体に分散される反応性の混合物(前記エチレン性不飽和単量体等を含むもの)には、必要に応じて架橋剤を混合することができる。単量体混合液中への架橋剤の添加量を制御することにより、水酸基及びカルボキシル基に起因する水に対する膨潤性をコントロールすることができる。
【0057】
用いる架橋剤としては、公知の架橋剤を適宜選択して用いることができ、好ましいものとしては、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられる。これらの中でも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、更には、ジビニルベンゼンが特に好ましい。
架橋剤の添加量としては、全単量体成分100質量部に対して0.1〜100質量部であることが好ましく、更には0.5〜50質量部であることがより好ましい。
【0058】
また、その他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリルアミド類、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらも必要に応じて、前記水酸基を有する単量体及びカルボキシル基を有する単量体及び疎水性単量体に加えて用いることができる。
【0059】
−磁性粉−
磁性粉としては、磁性を示すMO・FeまたはM・Feの一般式で表されるマグネタイト、フェライト等を好ましく用いることができる。ここで、Mは2価あるいは1価の金属イオン(Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、Cd、Li等)であり、Mとしては単独あるいは複数の金属を用いることができる。例えばマグネタイト、γ酸化鉄、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Li系フェライト、Cu−Zn系フェライトの如き鉄系酸化物を挙げることができる。中でも安価なマグネタイトをより好ましく用いることができる。
【0060】
また、他の金属酸化物として、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Sn、Ba、Pb等の金属を単独あるいは複数用いた非磁性の金属酸化物および上記磁性を示す金属酸化物を使用できる。例えば非磁性の金属酸化物として、Al、SiO、CaO、TiO、V、CrO、MnO、Fe、CoO、NiO、CuO、ZnO、SrO、Y、ZrO系等を使用することができる。
【0061】
後述する疎水化処理前の磁性粉の平均一次粒子径は、0.02〜2.0μmの範囲であることが好ましい。磁性粉の平均一次粒子径が上記範囲にないと、磁性粉が凝集し易くなり、重合性単量体中への均一な分散が難しくなる場合がある。
【0062】
本発明においては、磁性粉はその表面が疎水化処理されている必要がある。疎水化処理の方法としては特に制限されず、各種カップリング剤、シリコーンオイル、樹脂などの疎水化剤を磁性粉の表面に被覆処理すること等により行うことができるが、これらの中ではカップリング剤により表面被覆処理することが好ましい。
【0063】
前記カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、下記一般式(1)で示される構造のシラン化合物が特に好ましい。
一般式(1): RmSiYn
(上記式中、Rはアルコオキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基の如き炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
【0064】
具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピリトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0065】
特に、C2p+1−Si−(OC2q+1(式中、pは2〜20の整数を表し、qは1〜3の整数を表す。)で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤、C−C2r−Si−(OC2s+1(式中、rは2〜20の整数を示し、sは1〜3の整数を示す。)で示されるアラルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用して磁性粉を疎水化処理するのが好ましい。なお、ここで使用される“アラルキル” は、芳香族構造および脂肪族構造の両方を有する炭化水素基を意味する。即ち、アルキル基の水素原子の代わりに置換または未置換のアリール基が置換されている。そのアラルキル基の例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−メシチル基等が挙げられる。
【0066】
上記各式におけるp、rが2より小さいと、疎水化処理は容易となるが、疎水性を十分に付与することが困難であり、重合体粒子からの磁性粉の露出を抑制するのが難しくなる場合がある。またp、rが20より大きいと、疎水性は十分になるが、磁性粉同士の合一が多くなり、重合体粒子中へ磁性粉を十分に分散させることが困難になる場合がある。
また、q、sが3より大きいと、シランカップリング 剤の反応性が低下して疎水化が十分に行われにくくなる。
【0067】
前記のうちでは、特に、C2p+1−Si−(OC2q+1で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用することが、重合性単量体中での良好な分散性を得るうえで好ましい。
【0068】
磁性粉の疎水化処理は、例えばシランカップリング剤処理の場合は、磁性粉体を撹拌によりクラウド状としたものに気化したシランカップリング剤を反応させる乾式処理、又は、磁性粉体を溶媒中に分散させシランカップリング剤を滴下反応させる湿式法、あるいは、磁性粉体を溶媒中に分散させシランカップリング剤を混合した後ロータリーエバポレータのごとき蒸留装置で溶媒を蒸発させ、シランカップリング剤が付着した磁性粉体を熱処理する方法等の一般に知られた方法で処理することができる。また、前記の疎水化処理は適宜併用可能である。
【0069】
本発明における疎水化処理での磁性粉に対する疎水化剤の処理量は、磁性粉100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲が好ましく、0.1〜10質量部の範囲とするのがより好ましい。
【0070】
疎水化処理された磁性粉は、後述するように前記重合性単量体等の混合物に混合される。磁性粉の含有量としては、求める磁力によって決定されるのであるが、本発明においては、重合体粒子構成成分総量に対して2.5〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲であることがより好ましい。含有量が2.5質量%より少ないと、十分な磁力が得られない場合があり、50質量%より多いと、重合体粒子として水性媒体に分散させた場合に、水中で沈降が早く操作性が悪くなる場合がある。
【0071】
−重合開始剤−
本発明で使用する重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤等が好適なものとして挙げられるが、中でも油溶性開始剤が好ましい。
油溶性アゾ開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル等が挙げられる。油溶性過酸化物系開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル、o−メトキシ過酸化ベンゾイル、過酸化p−クロロベンゾイル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化炭酸ジイソプロピル、過酸化ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシル、過酸化アセチルシクロヘキシルスルフォニル、過イソ酪酸t−ブチル、過ビバリン酸t−ブチル、過2−エチルヘキサン酸t−ブチル、過酸化t−ブチル、過酸化t−ブチルクミル、過酸化ジクミル、過酸化メチルエチルケトン、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。等が挙げられる。
【0072】
上記重合開始剤は任意の量で使用することができるが、全単量体成分100質量部に対して0.05〜10質量部の範囲であることが好ましく、更には0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0073】
−その他の添加剤−
本発明の単量体混合物には、必要に応じて有機溶媒を添加することもできる。有機溶媒としては、水に難溶性で、沸点が重合時の反応温度よりも高く、重合を阻害しない有機溶媒であれば全ての有機溶媒が原理的には使用可能である。例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類などが挙げられるがこれらに制限されない。
炭化水素類としては、脂肪族炭化水素類や芳香族炭化水素類が挙げられる。脂肪族炭化水素類としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、石油系炭化水素、ナフテン系炭化水素などが挙げられ、芳香族炭化水素類としては、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、ドデシルベンゼンなどが挙げられる。
【0074】
前記アルコール類としては、炭素数8〜24(好ましくは12〜22)の脂肪族アルコール等が使用でき、非環式脂肪族アルコール及び脂環式アルコールの何れでもよい。また、天然アルコール及び合成アルコール(チーグラーアルコール及びオキソアルコール等)の何れでもよい。また、アルキル基部分は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0075】
非環式脂肪族アルコールとしては、飽和脂肪族アルコール及び不飽和脂肪族アルコール等が用いられる。非環式の飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、イソアミルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール(ラウリルアルコール)、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール及びテトラコセニルアルコール等が挙げられる。また、非環式の不飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、オクテニルアルコール、デセニルアルコール、ドデセニルアルコール、トリデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、オレイルアルコール、テトラコセニルアルコール、ガドレイルアルコール及びリノレイルアルコール等が挙げられる。
【0076】
脂環式アルコールとしては、単環式脂肪族アルコール及び複環式脂肪族アルコール等が用いられる。単環式脂肪族アルコールとしては、例えば、エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、オクチルシクロヘキシルアルコール、ノニルシクロヘキシルアルコール及びステアリルシクロヘキシルアルコール等が挙げられる。また、複環式脂肪族アルコールとしては、例えば、アダマンチルアルコール及びジシクロヘキシルアルコール等が挙げられる。
【0077】
前記ケトン類としては、炭素数6〜22(好ましくは7〜12)の脂肪族ケトン、芳香族ケトン等が使用でき、脂肪族ケトンでは非環式脂肪族ケトン及び脂環式ケトンの何れでもよい。また、アルキル基部分は直鎖状でも分岐状でもよい。例えば、ジプロピルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。
前記エーテル類としては、炭素数6〜22(好ましくは7〜12)の脂肪族エーテル、芳香族エーテル等が使用でき、脂肪族エーテルでは非環式脂肪族エーテル及び脂環式エーテルの何れでもよい。また、アルキル基部分は直鎖状でも分岐状でもよい。例えば、エチレングリコールジブチルエーテル、メチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは数種類を混合して使用することができる。
【0078】
本発明の磁性重合体粒子には、更にポリマーの着色を目的とした染料、顔料、カーボンブラックなどを含有させることができる。その場合には磁性粉が分散された前記単量体等の混合物に前記各添加剤を含ませることもできるし、磁性粉および前記単量体等の混合物にあらかじめ混合し、磁性粉の分散処理と前記各添加剤お分散処理を同時に行うこともできる。
【0079】
以上のような各単量体等を含む混合物としては、まず前記エチレン性不飽和単量体、重合開始剤及びその他の必要な成分とを混合して単量体混合物が作製される。混合の方法は特に制限されない。
また、上記単量体混合物への磁性粉の分散には公知の方法が適用できる。すなわち、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機が使用できる。あらかじめ、単量体成分を別途重合し、得られた重合体に磁性粉を分散させる場合には、ニーダー、バンバリーミキサー、エクストルーダー等の混練機が使用できる。
【0080】
(混合物を水性媒体中に懸濁する工程)
−水性媒体−
本発明における水性媒体としては、水、若しくは水にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を加えたものが好適に用いられ、この中でも水単独が特に好ましい。水溶性有機溶媒を添加する場合の添加量は、懸濁させる単量体の性状にもよるが、全溶媒に対し30質量%以下が好ましく、10質量%以下が特に好ましい。添加量を30質量%以下とすることにより、分散安定性を良好に保つことができる場合がある。
【0081】
−塩−
本発明においては、上記水性媒体に塩を溶解することを必須の要件とする。塩析効果によって乳化重合の反応が抑制され、懸濁粒子の分散安定性が得られ、良好な収率を実現することができる。
【0082】
溶解させる塩としては、水溶性の無機或いは有機塩類とも用いることができるが、特に無機塩類が前記塩析効果を有効に発揮できるため好ましい。該無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられ、これらの中でも、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、塩化カルシウムがより好ましく、更には塩化ナトリウムが特に好ましい。
【0083】
塩の添加量としては、分散安定性の観点から、水性媒体に対し5質量%以上溶解させることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。
溶解量が5質量%未満では、前記塩析効果が十分に得られず、乳化重合が起こりやすくなる場合がある。
【0084】
−分散安定剤−
本発明においては、さらに前記水性媒体中に分散安定剤を存在させることを必須の要件とする。上記分散安定剤としては、公知の分散安定剤が使用できるが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等の無機粉体を用いることが、本発明における懸濁粒子の分散性を高める上で有効であり、粒子同士の凝集を抑えることができるため好ましい。また、上記無機粉体表面に表面改質剤がコーティングされていることが分散粒子の安定性を高める点で好ましい。さらに、前記無機紛体に加え、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤等の界面活性剤を併用することもできるが、界面活性剤を併用する場合は、臨界ミセル濃度未満の添加が好ましい。
【0085】
上記分散安定剤は任意の量で使用することができるが、前記単量体及び磁性粉等を含む混合物100質量部に対して1〜100質量部の範囲であることが好ましく、2〜90質量部の範囲であることがより好ましい。1質量部以上であることにより、良好な分散状態とすることができ、一方、100質量部以下であることにより微細粒子の派生を抑制し、懸濁粒子の粒度分布をシャープにすることができるという利点がある。
【0086】
本発明における水性媒体には、懸濁粒子の粒度調節の目的で増粘剤を加えることもできる。該増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリカルボン酸塩を添加することができる。
これらの増粘剤を用いた場合、水性媒体の粘度は100〜10000mPa・sの範囲とすることが好ましい。
【0087】
前記単量体等を含む混合物の前記塩等を含む水性媒体(以下、「分散媒体」という場合がある)への懸濁は、以下のようにして行うことができる。
すなわち、前記塩を溶解し且つ分散安定剤を存在させた水性媒体中に、親水性単量体、疎水性単量体、磁性粉、重合開始剤、架橋剤等を加えた混合物を投入し、懸濁させる。懸濁の方法としては、公知の懸濁方法が利用できる。例えば、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を高速で回転させ水性媒体中に単量体等を懸濁させる方法、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で懸濁する方法、超音波によって懸濁する方法等の機械的な懸濁方法が挙げられる。
【0088】
その他、上記の単量体等を添加した液体を準備し、それを多孔質膜から水性媒体中に押し出す、膜乳化法として知られる乳化方法を使って懸濁することもできる。
なお、懸濁される混合物と分散媒体との混合質量比(混合物/分散媒体)は10/100〜100/100の範囲とすることが好ましく、また、懸濁された粒子の個数平均粒径は0.5〜5.0μmの範囲とすることが好ましい。
【0089】
(懸濁粒子を重合する工程)
本発明においては、前記懸濁させた単量体及び磁性粉等を含む粒子を懸濁重合させることにより重合体粒子を得る。重合反応は、大気下のみならず、加圧下においても行うことができるが、これらその他の反応条件は、必要に応じて適用されるもので、特に限定されるものではない。
【0090】
反応条件としては、例えば、大気圧下で、前記懸濁粒子が分散した懸濁液を攪拌しながら、40〜100℃の反応温度で1〜24時間反応させることが、高い収率で重合体粒子を得る等の観点から好ましい。
【0091】
以上述べた方法により磁性粉を含む重合体粒子が得られるが、このような本発明の製造方法においては、塩が溶解され且つ無機粉体を主成分とする分散安定剤が加えられた水性媒体中に、単量体混合物を分散することにより、0.5μmに満たない分散液滴の生成が抑制されるため、粒径が0.5μmに満たないような小粒径の粒子はほとんど形成されない。このため、本発明の磁性重合体粒子の製造方法は、水酸基量やカルボキシル基量の制御のしやすさの点だけでなく、前記本発明の磁性重合体粒子として好ましい個数平均粒径が0.5μm以上のものを容易に得ることができる点でも優れている。
【0092】
(塩基性化合物で処理する工程)
こうして得られた重合体粒子は、分散安定剤を除去した後、そのまま洗浄、乾燥してもよいが、本発明においては、前記のように好ましくはさらに塩基性化合物で処理する。これにより、重合体粒子中のカルボキシル基が塩構造に変化される。
【0093】
塩構造を形成する方法は、磁性重合体粒子を、水もしくは水と水溶性有機溶剤との混合液、もしくは有機溶剤の存在下、塩基性化合物で処理すればよい。本発明においては、磁性重合体粒子の水系分散液に塩基性化合物を添加して処理を行ってもよいし、塩基性化合物が溶解した水系溶液に磁性重合体粒子を混合して処理しても良い。
【0094】
前記塩基性化合物としては、無機塩基性化合物、有機塩基性化合物のいずれをも使用することができる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基性化合物;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機塩基性化合物;その他、塩基性のトリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、モルホリン等のアルカノールアミン類;等が挙げられる。
これらの塩基性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、処理後の塩基性化合物の除去のしやすさから、無機塩基性化合物を用いることが好ましい。
【0095】
本発明において、上記塩基性化合物の使用量は、磁性重合体粒子の水系分散液の0.1〜20質量%の範囲とすることが好ましい。前記のように、本処理工程により得られる磁性重合体粒子においては、カルボキシル基が全て塩構造を形成していることが好ましいが、通常は前記使用量の範囲において、塩基性化合物は重合体粒子のカルボキシル基量に対して過剰となるように設定される。
【0096】
この際、磁性重合体粒子の水系分散液のpHは9以上である必要があり、好ましくは11以上である。処理温度には特に制限はないが、50℃〜80℃程度に加温しても良い。処理時間には制限はないが、通常0.5〜5時間である。さらに、処理時の磁性重合体粒子の濃度は特に制限はないが、通常、1〜50質量%の範囲である。処理時間中に磁性重合体粒子が沈降する場合は、適度の撹拌を行うことが好ましい。そして、処理後は水洗により前記塩基性化合物が除去される。
【0097】
以上のようにして得られた磁性重合体粒子は、重合後あるいは処理後、場合によってはメタノール等の溶媒に希釈分散させ、濾別し、更に水洗及び/または溶剤洗浄の後、噴霧乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段によって粉体として単離することができる。
【0098】
得られた磁性重合体粒子における水酸基量、カルボキシル基量、個数平均粒径は、前記と同様の方法により求めることができる。本発明の水酸基含有磁性重合体粒子の製造方法により得られる重合体粒子の好ましい水酸基量、カルボキシル基量、個数平均粒径は、前記本発明の水酸基含有磁性重合体粒子において説明した内容と同様である。
なお、個数平均粒径の測定において、凝集粒子(複数の粒子が凝集したもの、あるいは1つの粒子に微粒子が付着して変形した状態となったもの)がまったく見られないことが好ましい。
【0099】
また、本発明における水酸基含有磁性重合体粒子の分子量(数平均分子量)は、その用途によって異なるものの、前記重合工程において架橋剤を加えていない場合には、5000〜1000000の範囲が好ましく、10000〜500000の範囲がより好ましい。
【0100】
なお、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した。GPCは、HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)を用い、カラムは、TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製、6.0mmID×15cm)を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定した。
【0101】
<水分散体>
本発明の水分散体は、前記本発明の磁性重合体粒子を水などの水性媒体中に分散させた粒子分散体である。本発明の磁性重合体粒子においては、前述のように粒子中に磁性粉が均一に分散しているため、粒子表面にほとんど磁性粉が存在しない。また、表面に水酸基及びカルボキシル基を有するため、良好な水分散性を示す。このため、本発明の水分散体は、後述するような分散された粒子特性が均一あるいは効率よく反映される各種の用途に用いられる。
【0102】
水性媒体としては、前記懸濁工程で説明したものと同様のものを用いることができる。
水分散体の製造に当たっては、通常の水分散体に使用することのできる各種副資材、例えば、分散剤、乳化剤、界面活性剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、沈降防止剤、帯電制御剤、帯電防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等を併用してもよい。
磁性重合体粒子の水分散性は、前記と同様の方法で評価することができ、本発明により得られた磁性重合体粒子の好ましい水分散性は、前記本発明の磁性重合体粒子で述べた内容と同様である。
【0103】
本発明の水分散体における分散粒子径は、平均粒子径で0.5〜5μm程度の範囲とすることが可能であるが、1〜4μmの範囲とすることが好ましい。
また、水分散体の固形分濃度は特にこれを限定するものではないが、1〜50質量%の範囲が好ましく、5〜30質量%の範囲がより好ましい。
【0104】
以上、本発明の磁性重合体粒子及びその製造方法、並びに水分散体について詳細に説明したが、本発明により得られた磁性重合体粒子及びその水分散体は、画像形成材料、磁性流体、診断薬及び医薬品担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤及び化粧品添加剤のような用途に好適に使用可能である。特に前記磁性重合体粒子では、一定量以上の磁性粉が均一に分散されており、また表面の水酸基による水性媒体での分散性に優れることから、磁性インクや湿式の画像形成法に用いる画像形成材料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中に示した「部」及び「%」は、特に断りのない限りそれぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0106】
<表面処理磁性粉の作製>
(磁性粉1)
乾燥したエタノール150部に磁性粉(戸田工業社製、商品名:MTS−010、平均粒径:0.13μm)150部を加え、ここに、2.5部のシランカップリング剤(チッソ社製、商品名:フェネチルトリメトキシシラン)を加え、超音波で磁性粉を分散した。この分散液をロータリーエバポレータでエタノールを蒸留し、磁性粉を乾固させた後、150℃で5時間熱処理した。このように処理した磁性粉は水になじまず(少量を水に混合して攪拌しても水面に浮いて沈降しない、以下同様)、表面が疎水化されていた。これを磁性粉1とした。
【0107】
(磁性粉2)
磁性粉(戸田工業社製、商品名:MTS−010)600部にスチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)400部を加え、加圧ニーダーで混練して、表面が樹脂被覆処理された磁性粉2を得た。
【0108】
<実施例1>
(磁性重合体粒子の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)20部、メタクリロオキシエチルモノフタレート(シグマ アルドリッチ(株)製)2部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)75部、及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、前記磁性粉1:30部を加え、ボールミルで48時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)5部を加えて、単量体及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0109】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水160部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)30部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)3.5部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は約2.0μmであった。
【0110】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、目開き100μmの篩を通した。通過した分散液を0.5Nの水酸化ナトリウムでpH12に調整し、室温で1時間攪拌した。処理後、1000部のイオン交換水で洗浄し、さらに500部のエタノールとイオン交換水で洗浄を行い、磁性重合体粒子Aを得た。
【0111】
この磁性重合体粒子Aを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ82部で、収率は86%であった。
【0112】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
この磁性重合体粒子Aを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群A1と平均粒径3μmの粒子群A2とに分画した。
これらについて、各々熱重量分析(TGA)による加熱による重量減少量から粒子中の磁性粉含有量を算出したところ、A1では23質量%、A2では20質量%であり、概ね一致していた。なお、TGAの測定は、昇温速度10℃/分として600℃まで昇温し、600℃で10分間保持する条件として行った。
【0113】
−水酸基量−
磁性重合体粒子Aを秤量してキャップ付き試験管に入れ、あらかじめ調製した無水酢酸(和光純薬(株)製)のピリジン(和光純薬(株)製)溶液を一定量加え、95℃の温度条件で24時間加熱した。
更に、蒸留水を加えて試験管中の無水酢酸を加水分解させた後、3000rpmで5分間遠心分離して粒子と上澄みとに分けた。粒子を更にエタノール(和光純薬(株)製)で超音波分散と遠心分離を繰り返し洗浄し、上澄みと洗浄液とをコニカルビーカーに集め、指示薬にフェノールフタレイン(和光純薬(株)製)を用いて0.1Mのエタノール性水酸化カリウム溶液(和光純薬(株)製)で滴定した。
【0114】
磁性重合体粒子を用いないブランク実験も行い、その差分から下式(1)に従って水酸基量(mmol/g)を算出した。
水酸基量=((B−C)×0.1×f)/(w−(w×D/100)) ・・・ 式(1)
上記式(1)中、Bはブランク実験での滴下量(ml)、Cはサンプルの滴下量(ml)、fは水酸化カリウム溶液のファクター、wは粒子の重量(g)、Dは粒子中の磁性粉含有率(%)である。
その結果、磁性重合体粒子Aの水酸基量は1.2mmol/gであった。
【0115】
−カルボキシル基量−
磁性重合体粒子Aを10倍量のイオン交換水に再分散し、1N塩酸を加えてpHを3にした。このまま1時間室温で攪拌を続け、濾過後、10倍量のイオン交換水で繰り返し洗浄した。遠心分離後、60℃で凍結乾燥した。得られた重合体粒子を秤量してキャップ付き試験管に入れ、0.1Mのエタノール性水酸化カリウム溶液(和光純薬(株)製)を一定量加え、常温で3時間反応させた。
これを3000rpmで5分間遠心分離して粒子と上澄みとに分けた後、粒子を更にエタノール(和光純薬(株)製)で超音波分散と遠心分離を繰り返し洗浄し、上澄みと洗浄液とをコニカルビーカーに集め、指示薬にメチルオレンジ(和光純薬(株)製)を用いて0.1Mの2−プロパノール性塩酸溶液(和光純薬(株)製)で滴定した。
【0116】
磁性重合体粒子を用いないブランク実験も行い、その差分から下式(2)に従ってカルボキシル基量(mmol/g)を算出した。
カルボキシル基量=((E−F)×0.1×f)/(x−(x×G/100)) ・・・ 式(2)
上記式(2)中、Eはブランク実験での滴下量(ml)、Fはサンプルの滴下量(ml)、fは水酸化カリウム溶液のファクター、xは粒子の重量(g)、Gは粒子中の磁性粉含有率(%)である。
その結果、磁性重合体粒子Aのカルボキシル基量は0.04mmol/gであった。
【0117】
−個数平均粒径及び粒子形状−
前述のように、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から磁性重合体粒子Aの個数平均粒径を求めたところ、2.0μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0118】
−粒子表面の磁性粉の存在状態−
磁性重合体粒子Aの表面の磁性粉の存在状態を、走査型電子顕微鏡(SEM)により確認した。具体的には、倍率を10000倍として100個の粒子について表面状態を確認したところ、すべての粒子において表面に磁性粉が飛び出している状態は観察されなかった。
【0119】
(水分散体の作製、特性)
乾燥させた磁性重合体粒子Aを1部とり、開口面積が4cmのガラス容器に収容した20部の純水に入れ攪拌し水分散体とした。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、平均粒径は3.4μmであった。
【0120】
<実施例2>
(磁性重合体粒子の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)15部、メタクリロオキシエチルモノフタレート(シグマ アルドリッチ(株)製)2部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)57部、シクロヘキサノン30部及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、前記磁性粉2:40部(磁性粉含有率:60%)を加え、ボールミルで48時間分散した。この磁性粉分散液120部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)5部を加えて、単量体及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0121】
塩化ナトリウム56部をイオン交換水320部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)60部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)7部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体400部に前記混合物を投入して、乳化装置(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は約2.0μmであった。
【0122】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、1000部のエタノールで繰り返し洗浄した後、再度1000部のイオン交換水で置換した。0.5Nの水酸化ナトリウムでpH12に調整し、室温で1時間攪拌した。処理後、イオン交換水で洗浄し、さらに500部のエタノールとイオン交換水で洗浄を行い、磁性重合体粒子Bを得た。
この磁性重合体粒子Bを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ83部で、収率は89%であった。
【0123】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
実施例1と同様に、この磁性重合体粒子Bを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群B1と平均粒径3μmの粒子群B2とに分画し、各々の粒子群中の磁性粉含有量を算出したところ、B1では21質量%、B2では19質量%で、概ね一致していた。
【0124】
−個数平均粒径及び粒子形状−
実施例1と同様に、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.2μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0125】
−水酸基量、カルボキシル基量、表面状態−
磁性重合体粒子Bの水酸基量を実施例1と同じ方法で測定したところ、この粒子の水酸基量は1.2mmol/gであった。また、同様にカルボキシル基量は0.02mmol/gであった。
次に、粒子表面の磁性粉の存在状態についても実施例1と同様に確認を行ったが、同様に粒子表面に飛び出した磁性粉は観察されなかった。
【0126】
(水分散体の作製、特性)
実施例1と同様にして、乾燥させた磁性重合体粒子Bを用いて水分散体を作製した。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、平均粒径は3.2μmであった。
【0127】
<実施例3>
(磁性重合体粒子の製造)
ポリエチレングリコールメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE200)20部、メタクリロオキシエチルモノフタレート(シグマ アルドリッチ(株)製)1部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)70部及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合し、前記磁性粉2:40部(磁性粉含有率:60%)を加え、ボールミルで48時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)5部を加えて、単量体及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0128】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水160部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)30部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)3.5部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒径は約1.9μmであった。
【0129】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、0.5Nの水酸化ナトリウムでpH12に調整し、室温で1時間攪拌した。処理後、1000部のイオン交換水で洗浄し、さらに500部のエタノールとイオン交換水で洗浄を行い、磁性重合体粒子Cを得た。
この磁性重合体粒子Cを40℃で凍結乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ80部で、収率は86%であった。
【0130】
(磁性重合体粒子の特性評価)
−磁性粉含有率−
実施例1と同様に、この磁性重合体粒子Cを1μmのナイロン篩を通し、平均粒径1μmの粒子群C1と平均粒径3μmの粒子群C2とに分画し、各々の粒子群中の磁性粉含有量を算出したところ、C1では18質量%、C2では14質量%で、概ね一致していた。
【0131】
−個数平均粒径及び粒子形状−
実施例1と同様に、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.0μmであった。また、前記写真において、凝集粒子は全く見られなかった。
【0132】
−水酸基量、カルボキシル基量、表面状態−
磁性重合体粒子Cの水酸基量を実施例1と同じ方法で測定したところ、この粒子の水酸基量は0.6mmol/gであった。また、同様にカルボキシル基量は0.03mmol/gであった。
次に、粒子表面の磁性粉の存在状態についても実施例1と同様に確認を行ったが、同様に粒子表面に飛び出した磁性粉は観察されなかった。
【0133】
(水分散体の作製、特性)
実施例1と同様にして、乾燥させた磁性重合体粒子Cを用いて水分散体を作製した。この水分散体においては、粒子が水面に浮いたり容器壁面に堆積したりすることなく、粒子全体が良好に水中に再分散した。
また、水分散体中の粒子の分散粒径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により測定したところ、平均粒径は3.2μmであった。
【0134】
<比較例1>
実施例2の磁性重合体粒子の製造において、メタクリロオキシエチルモノフタレート(シグマ アルドリッチ(株)製)2部をスチレン2部に変更した以外は同様の処方で懸濁重合を行い、磁性重合体粒子Dを得た。磁性重合体粒子Dを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ83部で、収率は89%と良好であった。
また、実施例1と同様にして乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.2μmであり、凝集粒子は全く見られなかった。
【0135】
しかし、実施例1と同様にして、この磁性重合体粒子Dを平均粒径1μmの粒子群D1と、平均粒径3μmの粒子群D2とに分画し、粒子中の磁性粉含有量を算出したところ、D1では22質量%、D2では10質量%であり、磁性粉含有量の粒径依存性が大きかった。
なお、磁性重合体粒子Dの水酸基量を実施例1と同じ方法で測定したところ、この粒子の水酸基量は1.2mmol/gであったが、カルボキシル基量は0.001mmol/gであった。
【0136】
<比較例2>
実施例1の磁性重合体粒子の製造において、ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)20部をスチレン20部に変更した以外は同様の処方で懸濁重合を行い、磁性重合体粒子Eを得た。磁性重合体粒子Eを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ63部で、収率は66%と低下した。
【0137】
実施例1と同様にして、乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、2.5μmであり、凝集粒子が散在していた。また、実施例1と同様にしてこの磁性重合体粒子Dを平均粒径1μmの粒子群E1と、平均粒径3μmの粒子群E2とに分画し、粒子中の磁性粉含有量を算出したところ、E1では23質量%、E2では10質量%であり、磁性粉含有量の粒径依存性が大きかった。
なお、磁性重合体粒子Eの水酸基量を実施例1と同じ方法で測定したところ、この粒子の水酸基量は0.01mmol/gであり、カルボキシル基量は0.04mmol/gであった。
【0138】
次に、粒子表面の磁性粉の存在状態について実施例1と同様にSEMで観察したところ、粒子表面に磁性粉が飛び出している部分が見られた。また、実施例1と同様にして水分散体を作製しようとしたが、水面でダマ(粒子同士が固まったもの)になってしまい水中に良好に再分散せず、得られた磁性重合体粒子Eは水になじみにくいものであった。
【0139】
<比較例3>
実施例1の磁性重合体粒子の製造において、ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)20部を75部とし、メタクリロオキシエチルモノフタレート(シグマ アルドリッチ(株)製)2部は変更せず、スチレン単量体75部を20部とした以外は同様の処方で懸濁重合を行い、磁性重合体粒子Fを得た。磁性重合体粒子Fを60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ24部で、収率は25%と大きく低下した。
【0140】
実施例1と同様にして乾燥粒子の電子顕微鏡観察による写真から重合体粒子の個数平均粒径を求めたところ、30μmであり、凝集粒子が多かった。また、実施例1と同様にしてこの磁性重合体粒子Fを平均粒径1μmの粒子群F1と、平均粒径3μmの粒子群F2とに分画しようとしたが、分離できなかった。
なお、磁性重合体粒子Eの水酸基量を実施例1と同じ方法で測定したところ、この粒子の水酸基量は4.6mmol/gであり、カルボキシル基量は0.1mmol/gであった。
【0141】
<比較例4>
実施例1の磁性重合体粒子の製造において、分散媒体調製時に塩化ナトリウムを加えない以外は、実施例1と同様の処理を行って単量体及び磁性粉を含む混合物を懸濁させ、重合を行ったところ、イオン交換水による洗浄工程で、濾紙(ADVANTEC社製、No.5C、保留粒子径:1μm)を通過する白色の微小粒子が認められた。これにより、分散媒体中で乳化重合が派生していることが確認された。得られた磁性重合体粒子Gの収量を測定したところ38部で、収率は40%に低下した。
【0142】
磁性重合体粒子Gについて水酸基量を実施例1と同じ方法で測定したところ、この粒子の水酸基量は0.03mmol/gと低かった。また、これらの重合体粒子を顕微鏡観察したところ、粒径のばらつきが大きかったが個数平均粒径は2.0μmであった。なお、凝集粒子が相当数観察された。
【0143】
<比較例5>
実施例1の磁性重合体粒子の製造において、分散媒体調製時に炭酸カルシウムを加えない以外は、実施例1と同様の処理を行って単量体及び磁性粉を含む混合物を懸濁させ、重合を行おうとしたが、混合物は分散媒体中に良好に懸濁することができず、重合すると団子状の塊になってしまった。
【0144】
以上のように、実施例の本発明の磁性重合体粒子の製造方法によれば、重合時の懸濁粒子が安定しているため凝集を生じることがなく、高濃度で磁性粉が均一分散し、水への分散性に優れた磁性重合体粒子を得ることができる。これに対し、前記本発明における製造条件のうち、1つでも不足する比較例では、収率、粒子状態等に何らかの問題が発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉と、エチレン性不飽和単量体の重合体とを含んで構成され、前記磁性粉の含有率が2.5〜50質量%の範囲であり、前記エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体と、カルボキシル基を有する単量体と、水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体とを含み、且つ、磁性粉を含まない前記重合体の水酸基量が0.3〜5.0mmol/gであり、カルボキシル基量が0.005〜0.5mmol/gの範囲であることを特徴とする磁性重合体粒子。
【請求項2】
前記カルボキシル基の一部または全部が塩構造を形成していることを特徴とする請求項1に記載の磁性重合体粒子。
【請求項3】
請求項1に記載の磁性重合体粒子を含むことを特徴とする水分散体。
【請求項4】
A質量部の水酸基を有する単量体と、B質量部のカルボキシル基を有する単量体と、C質量部の水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体とを(A+B)<Cなる関係を満たして含むエチレン性不飽和単量体、重合開始剤及び表面が疎水化処理された磁性粉を含有する混合物を、塩が溶解され且つ分散安定剤を加えた水性媒体中に分散して懸濁重合させる工程を有することを特徴とする磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項5】
さらに、前記懸濁重合で得られた粒子を、塩基性化合物で処理する工程を有することを特徴とする請求項4に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項6】
前記水酸基及びカルボキシル基を有しない疎水性単量体の含有量を、全単量体成分中の50.0〜90.0質量%の範囲とすることを特徴とする請求項4に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項7】
前記疎水化処理が、カップリング剤による表面被覆処理であることを特徴とする請求項4に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項8】
前記塩が、無機塩であることを特徴とする請求項4に記載の磁性重合体粒子の製造方法。
【請求項9】
前記分散安定剤が、無機粉体であることを特徴とする請求項4に記載の磁性重合体粒子の製造方法。

【公開番号】特開2008−13640(P2008−13640A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185275(P2006−185275)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】