説明

磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリおよび磁気記録装置

【課題】本発明の目的は、スピントルク発振のための臨界電流密度が低下したスピントルク発振子を備える磁気記録ヘッドを提供することである。
【解決手段】磁気記録媒体に記録磁界を発生させるための主磁極と、前記主磁極と対を成すリターンヨークと、前記主磁極と前記リターンヨークとの間に積層して設けられた、第1磁性体層、第2磁性体層および第3磁性体層を含むスピントルク発振子とを含む磁気記録ヘッドであって、前記第3磁性体層はFeNから成り、前記第1磁性体層から前記第3磁性体層の方向に電流を通電するように構成されている磁気記録ヘッドが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スピントルク発振子を用いた磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリおよび磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスピントルク発振子として、発振層およびスピン注入層を含むスピントルク発振子が存在する。このようなスピントルク発振子において、スピントルク発振を開始するための駆動電流密度、すなわち臨界電流密度を下げることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−3354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、スピントルク発振のための臨界電流密度が低下したスピントルク発振子を備える磁気記録ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、磁気記録媒体に記録磁界を発生させるための主磁極と、前記主磁極と対を成すリターンヨークと、前記主磁極と前記リターンヨークとの間に積層して設けられた、第1磁性体層、第2磁性体層および第3磁性体層を含むスピントルク発振子とを含む磁気記録ヘッドであって、前記第3磁性体層はFeNから成り、前記第1磁性体層から前記第3磁性体層の方向に電流を通電するように構成されている磁気記録ヘッドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施形態の磁気記録ヘッドおよび磁気記録媒体の一例を示す斜視図。
【図2】第1の実施形態の磁気記録ヘッドを示す図。
【図3】第2の実施形態の磁気記録ヘッドを示す図。
【図4】第3の実施形態の磁気記録ヘッドを示す図。
【図5】実施例に係る磁気記録ヘッドを示す図。
【図6】実施形態の磁気ヘッドアセンブリを示す図。
【図7】実施形態の磁気記録装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0008】
(磁気記録ヘッド)
図1には、実施形態の磁気記録ヘッドおよび磁気記録媒体の一例が示される。磁気記録ヘッド100が磁気記録媒体230上に設けられている。磁気記録ヘッド100は書き込みヘッド部110および再生ヘッド部120を含む。なお、磁気記録ヘッド100の磁気記録媒体230に対向する面を媒体対向面と称する。
【0009】
書き込みヘッド部110は、主磁極112、リターンヨーク113およびそれらの間に挟持されたスピントルク発振子111を含む。スピントルク発振子111は、書き込みヘッド部110において媒体対向面に設けられている。また、コイル114が、主磁極112およびリターンヨーク113を通る磁路の一部に巻きつけられている。図1に示されるスピントルク発振子111では、主磁極112側から第1磁性体層1、第1中間層5、第2磁性体層2、第2中間層6および第3磁性体層3が積層されている。
【0010】
再生ヘッド部120では、磁気再生素子121が磁気シールド122および123の間に設けられている。
【0011】
磁気記録媒体230は、媒体基板232およびその表面に設けられている磁気記録層231を含む。磁気記録媒体230上の、磁気記録層231には、記録により多数の記録単位233が形成される。
【0012】
図1に示される磁気記録ヘッド100および磁気記録媒体230では、磁気記録ヘッド100が、磁気記録媒体230の特定の位置上に相対的に移動し、磁気記録層231に対して記録情報の書き込みまたは再生を行う。磁気記録媒体230上における磁気記録ヘッド100の位置は、磁気記録媒体230の回転および磁気記録ヘッド100の平行移動によって制御される。例えば、磁気記録媒体230の回転による、磁気記録ヘッド100の磁気記録媒体230上での相対的な移動方向を130で示す。
【0013】
書き込みヘッド部110は、磁気記録層231に情報を書き込む。コイル114に対して記録磁界発生用電源から電流が供給されると、主磁極112、磁気記録媒体230およびリターンヨーク113を通る書き込み磁界が生じる。書き込み磁界によって、主磁極112の直下に存在する磁気記録層231に垂直方向の磁化が生じる。このような書き込み磁界の印加と同時に、スピントルク発振子111が磁気記録層231に高周波を印加する。これにより、磁気記録層231の保磁力が低下し、主磁極112による書き込みが容易になる。
【0014】
再生ヘッド部120は、記録単位233に書き込まれた記録情報を読み取る。磁気再生素子121が、その直下に存在する記録単位233の磁界を電気信号に変換する。例えば、磁気再生素子121として磁気抵抗効果素子を用いる場合、記録単位233の磁界によって磁気抵抗効果素子の抵抗率が変化する。この変化を記録情報として読み取ることができる。磁気シールド122および123は、読み取ろうとする記録単位233に起因しない磁界を磁気再生素子121から遮断する。例えば、書き込みヘッド部110から生じる書き込み磁界を遮断する。
【0015】
図2には、第1の実施形態の磁気記録ヘッドが示される。この図には、スピントルク発振子111および主磁極112のみが示される。第1の実施形態の磁気記録ヘッドでは、スピントルク発振子111は、主磁極112側から、第1磁性体層1、第1中間層5、第2磁性体層2、第2中間層6および第3磁性体層3が積層された積層体を含む。
【0016】
第1磁性体層1は垂直磁気異方性を有する金属磁性体によって形成されている。図2には、第1磁性体層1が垂直磁気異方性を有することが、垂直な矢印によって模式的に表されている。第1磁性体層1は、第2の磁性体層2に対してスピンを注入する役割を担うため、スピン注入層と称することもできる。
【0017】
第2磁性体層2は金属磁性体によって形成されている。第2の磁性体層2は、スピン注入層からスピンが注入されると、スピンの歳差運動が生じることで発振する。このとき、主磁極112とリターンヨーク113との間に生じるギャップ磁界20が膜面垂直方向に向いているため、スピンの歳差運動の回転軸も膜面垂直方向となる。図2には、このような歳差運動の様子が模式的に表されている。第2磁性体層2は発振するため発振層と称することもできる。
【0018】
第3磁性体層3はFeNから成る。図2には、第3磁性体層3の磁化が垂直方向に向いている様子が模式的に表されている。第3磁性体層3は、第2磁性体層2に対してスピンを注入する。このため、第3磁性体層3も、第1磁性体層1と同様にスピン注入層と称することができる。従来のスピントルク発振子では、この第3磁性体層3が設けられていない。これに対し実施形態に係るスピントルク発振子111では、第1磁性体層1だけでなく第3磁性体層3も利用してスピン注入を行うことで、その効率を上げることができ、発振のための臨界電流密度を下げることができる。すなわち、より低い電流密度で発振させることができる。
【0019】
第1の実施形態において、スピントルク発振子111の発振のための電流は、第1磁性体層1から第3磁性体層3へと流される。すなわち、電子は、図示されるように第3磁性体層3から第1磁性体層1へと移動する。この電子の移動に伴って、第2磁性体層2へのスピン注入が生じる。
【0020】
第3磁性体層3から第2磁性体層2へのスピン注入はスピントルクの透過22として生じる。すなわち、第3磁性体層3から第2磁性体層2へダウンスピンが移動する。これは、FeNのダウンスピンの3d電子が伝導に支配的に寄与しているためである。
【0021】
一方、第1磁性体層1から第2磁性体層2へのスピン注入はスピントルクの反射21として生じる。すなわち、第2磁性体層2から第1磁性体層1へは主にアップスピンが移動する一方、ダウンスピンはそのような移動が困難であるため、ダウンスピンが第2磁性体層2に留まる。これは、第1磁性体層1のアップスピン電子が伝導に支配的に寄与しているためである。
【0022】
図3には、第2の実施形態の磁気記録ヘッドが示される。この図には、スピントルク発振子111および主磁極112のみが示される。第2の実施形態では、第1の実施形態と比較して、スピントルク発振子111を構成する各層が逆順に積層されている。すなわち、主磁極112側から、第3磁性体層3、第2中間層6、第2磁性体層2、第1中間層5および第1磁性体層1が順に積層されている。ギャップ磁界20の方向は第1の実施形態の場合と同一であるが、電流の流れる方向は、第1磁性体層1と第3磁性体層3との順番が入れ替わったことにあわせて逆となっている。言い換えれば、第2の実施形態においても、電流は第1磁性体層1から第3磁性体層3へと流される。
【0023】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、第1磁性体層1だけでなく第3磁性体層3を利用してスピン注入を行うため、発振のための臨界電流密度を下げるという効果が得られる。すなわち、第1磁性体層1から第2磁性体層2へはスピントルクの反射21によってスピンが注入され、第3磁性体層3から第2の磁性体層2へはスピントルクの透過22によってスピンが注入される。
【0024】
図4には、第3の実施形態の磁気記録ヘッドが示される。この図には、スピントルク発振子111および主磁極112のみが示される。第3の実施形態におけるスピントルク発振子111は、第1の実施形態におけるスピントルク発振子111に対して、さらに第4磁性体層4を設けた構成となっている。すなわち、主磁極112側から、第1磁性体層1、第1中間層5、第2磁性体層2、第2中間層6、第3磁性体層3および第4磁性体層4が積層されている。第4磁性体層4は膜面垂直方向に磁化容易軸を有する磁性材料から成る。
【0025】
第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、第1磁性体層1だけでなく第3磁性体層3を利用してスピン注入を行うため、発振のための臨界電流密度を下げるという効果が得られる。また、第4磁性体層4が第3磁性体層3の垂直方向の磁化を安定化させる。すなわち、第4磁性体層4と第3磁性体層3との間の交換結合力によって、第3磁性体層3を垂直磁場で飽和させることができる。第3磁性体層3からスピン注入が生じると、その反作用により第3磁性体層3の垂直方向の磁化が揺らぐが、第4磁性体層4による垂直磁場がそのような揺らぎの影響を最小化することができる。結果として、第3磁性体層3から第2磁性体層2へのスピン注入の効率が上昇し、発振のための臨界電流密度はさらに低下する。
【0026】
以下に、実施形態に係る磁気記録ヘッドにて使用できる各層の例を説明する。
【0027】
第2磁性体層2(発振層)としては、磁気異方性エネルギーの小さな磁性材料を用いることができる。具体的には、CoFe、CoNiFe、NiFe、CoZrNb、FeN、FeSi、FeAlSi、FeCoAl、FeCoSi、FeCoB、FeCoGa、FeCoGe、FeCoMn、FeCoCrといった材料を使用できる。第2磁性体層2の厚さは5nmから30nmであることが好ましく、例えば13nmである。第2磁性体層2の飽和磁束密度は、0.5Tから2.3Tであることが好ましい。
【0028】
第1磁性体層1(スピン注入層)としては、CoCrPt、CoCrTa、CoCrTaPt、CoCrTaNb等のCoCr系合金、TbFeCo等のRE−TM系アモルファス合金、Co/Pd、Co/Pt、CoCrTa/Pd、Co/Ni、CoFe/Ni、FeCo/Ni等の人工格子、CoPt系やFePt系の合金、SmCo系合金を用いることができる。あるいは、これらの材料と、FeCo合金、Co基ホイスラー合金等の磁気異方性エネルギーが比較的小さい材料との積層構造を用いることができる。例えば、CoおよびNiを積層した積層体とすることができる。第1磁性体層1の厚さは、3nmから30nmであることが好ましい。
【0029】
第3磁性体層3(スピン注入層)としてはFeNが用いられる。第3磁性体層3の厚さは、磁気体積KuVが第2磁性体層2の材料と比較して大きくなるように設定することが好ましい。例えば、5nmから30nmとすることができる。このような設定とすることで、第2磁性体層2からの反射のスピントルクによる擾乱を受けにくくなり、第2磁性体層2へのスピン注入が効率的になる。
【0030】
第4磁性体層4(バイアス層)は、膜面垂直方向に磁化容易軸をもつ磁性材料を使用することができる。また、磁気異方性エネルギーKuが、1Merg/cc〜10Merg/ccの範囲である材料を使用することが好ましい。例えば、CoCrPt、CoCrTa、CoCrTaPt、CoCrTaNb等のCoCr系合金、TbFeCo等のRE−TM系アモルファス合金、Co/Pd、Co/Pt、CoCrTa/Pd、Co/Ni、CoFe/Ni、FeCo/Ni等の人工格子、CoPt系やFePt系の合金、SmCo系合金等を使用することができる。第4磁性体層4の厚さは、3nmから30nmとすることができる。
【0031】
第1中間層5および第2中間層6としては、非磁性であり且つスピン透過率の高い材料を用いることが好ましい。例えば、Cu、Ag、Al等を使用できる。これらの厚さは、発振層とスピン注入層との磁気結合を適度に制御でき、且つ出来る限り薄くなるように設定することが好ましい。例えば、0.2nm〜10nmの範囲とすることができ、好ましくは1nm〜3nmとすることができる。
【0032】
実施形態に係る磁気記録ヘッドまたはスピントルク発振子には、上記の通り説明した層以外の層を適宜設けることができる。例えば、主磁極112と接する面に下地層7を設けることができる。また、リターンヨーク113と接する面にキャップ層10を設けることができる。下地層7およびキャップ層10としては、Ti、Cu、Ru、Ta、Zr、Nb、Hf、Pt、Pd等を用いることができる。特に、第3磁性体層3におけるFeNの規則度を増大するために、下地層7には、Ta/Cr/Fe、TaNi/Cr/Fe、TaNi/Cr/Pt、NiNb/Cr/Fe、NiZr/Cr/Fe等の金属積層体であって、(001)面配向した材料を使用することができる。また、Ta、TaNi、NiNbまたはNiZrの表面は、Crの(001)面配向を実現する程度に酸素暴露することが好ましい。
【0033】
主磁極112およびリターンヨーク113としては、磁性金属を用いることができる。例えば、Fe、CoおよびNiから成る群から選択される金属の合金を使用することができる。主磁極112およびリターンヨーク113は、書き込み磁界の発生のための磁極としての機能のほかに、スピントルク発振子111に対して電流を流すための電極としての機能を兼ね備えさせることもできる。また、リターンヨーク113は、トレーリングシールドとしての機能を兼ね備えてよい。
【0034】
実施例として、実施形態に係る磁気記録ヘッドを製造した。図5にその構成を示す。当該磁気記録ヘッドは、スピントルク発振子111が主磁極112とリターンヨーク113との間に挟持されている。さらに、スピントルク発振子111は、主磁極112側から、下地層7、バッファ層8、Fe層9、第3磁性体層3、第2中間層6、第2磁性体層2、第1中間層5、第1中間層1およびキャップ層10が順に積層された積層体となっている。
【0035】
具体的には、主磁極112に対して、下地層7として厚さ4nmのTaNi、バッファ層8として厚さ4nmのCr、Fe層9として厚さ5nmのFe、第3磁性体層3として厚さ20nmのFeN、第2中間層6として厚さ2nmのCu、第2磁性体層2として厚さ13nmの(Fe50Co5080Al20、第1中間層5として厚さ2nmのCu、第1磁性体層1として厚さ0.2nmのCoと厚さ0.6nmのNiとを10回積層した積層体およびキャップ層10として厚さ15nmのRuを順に積層した後、その上にリターンヨーク113を形成した。
【0036】
また、比較例として従来の磁気記録ヘッドを製造した。すなわち、主磁極に対して、厚さ4nmのTa、厚さ2nmのRu、厚さ2nmのCu、スピン注入層として厚さ0.2nmのCoと厚さ0.6nmのNiとを15回積層した積層体、厚さ2nmのCu、発振層として厚さ13nmの(Fe50Co5080Al20、厚さ15nmのRuを順に積層した後、その上にリターンヨークを形成した。
【0037】
製造した実施例および比較例の磁気記録ヘッドについて、発振層を発振させる際の臨界電流密度を測定した。その結果、実施例に係る磁気記録ヘッドは、比較例よりも臨界電流密度が低減したことがわかった。
【0038】
(磁気ヘッドアセンブリ)
図6(a)は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を構成するヘッドスタックアセンブリ390を示す。一方、図6(b)は、ヘッドスタックアセンブリ390の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ(HGA))400を示す斜視図である。
【0039】
図6(a)に示すように、ヘッドスタックアセンブリ390は、軸受部380と、この軸受部380から延出したヘッドジンバルアセンブリ400と、軸受部380からヘッドジンバルアセンブリ400と反対方向に延出しているとともにボイスコイルモータのコイル410を支持した支持フレーム420を有する。
【0040】
図6(b)に示すように、ヘッドジンバルアセンブリ400は、軸受部380から延出したアクチュエータアーム360と、アクチュエータアーム360から延出したサスペンション350とを有する。
【0041】
実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ(HGA))400は、磁気記録ヘッド100と、磁気記録ヘッド100が設けられたヘッドスライダ280と、ヘッドスライダ280を一端に搭載するサスペンション350と、サスペンション350の他端に接続されたアクチュエータアーム360とを備える。
【0042】
サスペンション350は、信号の書き込み及び読み取り用、浮上量調整のためのヒータ用、スピントルク発振子111用のリード線(図示せず)を有し、このリード線とヘッドスライダ280に組み込まれた磁気記録ヘッド100の各電極とが電気的に接続される。電極パッド(図示せず)はヘッドジンバルアセンブリ400に設けられる。実施形態では、電極パッドは8個設けられる。主磁極112のコイル用の電極パッドが2つ、磁気再生素子121用の電極パッドが2つ、DFH(ダイナミックフライングハイト)用の電極パッドが2つ、スピントルク発振子111用の電極パッドが2つ設けられている。
【0043】
サスペンション350の先端には、磁気記録ヘッド100を有するヘッドスライダ280が設けられている。
【0044】
ヘッドスライダ280は、Al/TiCなどからなり、磁気ディスクなどの磁気記録媒体230の上を、浮上又は接触しながら相対的に運動できるように設計されている。ヘッドスライダ280は薄膜状のサスペンション350の先端に取り付けられている。
【0045】
磁気記録媒体230が回転すると、サスペンション350により押し付け圧力とヘッドスライダ280の媒体対向面(ABS)で発生する圧力とがつりあう。ヘッドスライダ280の媒体対向面は、磁気記録媒体230の表面から所定の浮上量をもって保持される。ヘッドスライダ280が磁気記録媒体230と接触する「接触走行型」としてもよい。
【0046】
(磁気記録装置)
図7は実施形態に係る磁気記録装置を示す斜視図である。
【0047】
実施形態に係る磁気記録装置310は、磁気記録媒体230と、磁気記録ヘッド100と、磁気記録媒体230と磁気記録ヘッド100とを離間させ、又は、接触させた状態で対峙させながら相対的に移動可能とした可動部と、磁気記録ヘッド100を磁気記録媒体230の所定記録位置に位置あわせする位置制御部と、磁気記録ヘッド100を用いて磁気記録媒体230への書き込みと読み出しを行う信号処理部385とを備える。上記の可動部は、ヘッドスライダ280を含むことができる。上記の位置制御部は、ヘッドジンバルアセンブリ400を含むことができる。
【0048】
図7に示すように、実施形態に係る磁気記録装置310は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。磁気記録媒体230は、スピンドルモータ330に設けられ、駆動制御部(図示せず)からの制御信号に応答するモータ(図示せず)により媒体移動方向270の方向に回転する。磁気記録装置310は、複数の磁気記録媒体230を備えてもよい。
【0049】
サスペンション350は、駆動コイル(図示せず)を保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム360の一端に接続されている。アクチュエータアーム360の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ370が設けられている。ボイスコイルモータ370は、アクチュエータアーム360のボビン部に巻き上げられた駆動コイル(図示せず)と、この駆動コイルを挟み込むように対向して設けられた永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路から構成することができる。
【0050】
アクチュエータアーム360は、軸受部380の上下2箇所に設けられたボールベアリング(図示せず)によって保持され、ボイスコイルモータ370により回転摺動が自在にできるようになっている。その結果、磁気記録ヘッド100を磁気記録媒体230の任意の位置に移動可能となる。
【0051】
信号処理部385(図示せず)が、図7に示す磁気記録装置310の図面中の背面側に設けられる。信号処理部385は、磁気記録ヘッド100を用いて磁気記録媒体230への信号の書き込みと読み出しを行う。信号処理部385の入出力線は、ヘッドジンバルアセンブリ400の電極パッドに接続され、磁気記録ヘッド100と電気的に結合される。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…第1磁性体層(スピン注入層)、2…第2磁性体層(発振層)、3…第3磁性体層(スピン注入層)、4…第4磁性体層(バイアス層)、5…第1中間層、6…第2中間層、7…下地層、8…バッファ層、9…Fe層、10…キャップ層、20…ギャップ磁界、21…スピントルクの反射、22…スピントルクの透過、100…磁気記録ヘッド、110…書き込みヘッド部、111…スピントルク発振子、112…主磁極、113…リターンヨーク(トレーリングシールド)、114…コイル、120…再生ヘッド部、121…磁気再生素子、122…磁気シールド、123…磁気シールド、130…移動方向、230…磁気記録媒体、231…磁気記録層、232…媒体基板、233…記録単位、270…媒体移動方向、280…ヘッドスライダ、310…磁気記録装置、330…スピンドルモータ、350…サスペンション、360…アクチュエータアーム、370…ボイスコイルモータ、380…軸受部、385…信号処理部、390…ヘッドスタックアセンブリ、400…磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ(HGA))、410…コイル、420…支持フレーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体に記録磁界を発生させるための主磁極と、
前記主磁極と対を成すリターンヨークと、
前記主磁極と前記リターンヨークとの間に積層して設けられた、第1磁性体層、第2磁性体層および第3磁性体層を含むスピントルク発振子と
を含む磁気記録ヘッドであって、
前記第3磁性体層はFeNから成り、前記第1磁性体層から前記第3磁性体層の方向に電流を通電するように構成されている磁気記録ヘッド。
【請求項2】
前記第1磁性体層と前記第2磁性体層との間に第1中間層を備える請求項1に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項3】
前記第2磁性体層と前記第3磁性体層との間に第2中間層を備える請求項1に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項4】
前記第3磁性体層の前記第2磁性体層と反対側の面に積層された、膜面垂直方向に磁化容易軸を有する第4磁性体層を備える請求項1に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項5】
請求項1に記載の磁気記録ヘッドが搭載されたヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダを一端に搭載するサスペンションと、
前記サスペンションの他端に接続されたアクチュエータアームと、
を備える磁気ヘッドアセンブリ。
【請求項6】
磁気記録媒体と、
請求項5に記載の磁気ヘッドアセンブリと、
前記磁気ヘッドアセンブリに搭載された前記磁気記録ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への信号の書き込みおよび読み出しを行う信号処理部と、
を備える磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−119027(P2012−119027A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267067(P2010−267067)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】