神経精神障害を診断および処置するための組成物および方法
本発明は、精神障害(例えば、精神分裂病等の精神病性障害、並びに大うつ病及び双極性障害等の気分障害)の診断方法を提供する。本発明は又、このような精神障害の調節物質を同定する方法、及びこのような精神障害に罹患している患者を処置するためにこれらの調節物質を使用する方法を提供する。本発明は、正常な対照患者と比べた、精神分裂病に罹患している患者の脳の選択領域における遺伝子発現の差を証明する。これらの遺伝子には、表1に記載の転写物;表2に記載の遺伝子;表3に記載の遺伝子;表4に記載の遺伝子が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2005年3月31日に出願された、USSN 60/667,299号、および2006年2月22日に出願された、USSN 60/776,103号に対する優先権を主張する。USSN 60/667,299号、およびUSSN 60/776,103号は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(連邦政府に支援された研究および開発からなされた発明の権利に関する記載)
なし
(発明の背景)
精神分裂病等の精神病性障害、並びに大うつ病及び双極性障害等の気分障害は、重要な公衆衛生上の問題であり、毎年、アメリカ合衆国の成人人口のかなりの部分を占める人々がこのような障害に悩まされている。精神分裂病等の精神病性障害、並びに大うつ病及び双極性障害等の気分障害をはじめとする精神障害は、遺伝的根源を有するという仮説が立てられているが、複雑な遺伝的起源を有する多くの疾患に当てはまるように、これらの障害を引き起こす役割を果たす遺伝子配列及び遺伝子産物の同定における進展は殆どない(例えば、非特許文献1を参照)。特定の脳経路及び領域において発現する特定の遺伝子が、精神障害の発症に関与する可能性があるという発見を基に、本発明は、精神分裂病等の精神障害の診断及び処置方法、並びに精神障害の処置に有効な化合物を同定する方法を提供する。
【非特許文献1】Burmeister, Biol. Psychiatry 45:522−532 (1999)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
精神分裂病等の精神病性障害の神経生物学に関する理解を深めるため、本願の発明者等は、DNAマイクロアレイを使用して、精神分裂病と診断されたヒト患者由来の死後の脳の発現プロフィールを試験した。この研究は、精神分裂病に関与する経路又は回路である6つの脳の領域、即ち前帯状皮質(AnCg)、背面前頭葉皮質(DLPFC)、小脳皮質(CB)、上側頭回(STG)、頭頂葉皮質(PC)、及び側坐核(nAcc)に焦点を当てた。
【0004】
本発明は、正常な対照患者と比べた、精神分裂病に罹患している患者の脳の選択領域における遺伝子発現の差を証明する。これらの遺伝子には、表1に記載の転写物;Affymetrixチップ、及び末期因子(agonal factor)を有さない脳を使用してAnCg中に特異に発現する、表2に記載の遺伝子;Affymetrixチップ及び末期因子を有さない脳を使用してDLPFC中に特異に発現する、表3に記載の遺伝子;リンパ芽球性及び脳組織中で有意な調節不全をきたす、表4に記載の遺伝子が含まれる。
【0005】
更に、本発明は、脳組織内では特異的に調節されないが、精神分裂病患者のリンパ芽球細胞では特異的に調節される遺伝子を同定する(表5)。又、精神分裂病患者の脳及びリンパ球の両方で調節不全をきたした遺伝子である、アスパルチルグルコサミン尿(AGA)に関連する単一ヌクレオチド多型マーカーの一覧(表6)も示す。表7及び8は、精神分裂病、大うつ病及び双極性障害において調節異常である遺伝子を示す。
【0006】
本発明は又、大うつ病、双極性障害及び/又は精神分裂病と診断された患者における扁桃体中で特異に発現する遺伝子も提供する(表9〜13)。
【0007】
本発明は又、リチウムで処置した双極性障害被験体、及びリチウムで処置した非ヒト霊長類の扁桃中で特異に発現するリチウム応答遺伝子も提供する(表14)。
【0008】
本発明は又、うつを示す患者の中から双極性障害患者を区別する、又は双極性障害を診断するのに有用な診断ツールとして、挿入欠失変異を有する変異型PSPHLのバリデーションも提供する。
【0009】
精神神経疾患において特異的に発現する遺伝子は、精神病性障害及び気分障害の診断において有用であり、例えば、PCR及びチップアッセイに使用するSNP、バイオマーカー、診断用プローブセットの他、ELISA及び免疫組織化学アッセイ等の免疫アッセイに使用する抗原及び抗体を提供する。精神病性障害及び気分障害は主に、障害に関与する回路又は経路の一部である特定の脳領域に影響を及ぼすことから、脳領域による特異な発現は、同様に有用な診断及び処置ツールである。配列特異的なアンチセンス放射性医薬品及び新規のアプタマーベースのプローブを使用した脳内在性遺伝子発現のイメージングは、強力な診断ツールである。これらのプローブは、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)又は陽電子放出断層撮影(PET)の画像診断法と併用できる蛍光及び放射性標識を使用して検出することができる。又、精神病性障害及び気分障害に関与する遺伝子、タンパク質及び生化学的アッセイを同定することで、低分子、SiRNA及び抗体等の抗精神病性障害治療薬の創薬のための手段が得られる。
【0010】
従って、本発明は、被験体が精神障害に罹患しているか否か、又は精神障害にかかりやすいか否かを判定する方法を提供する。本発明は又、予後診断を提供する方法、及び疾患の進行及び処置を監視する方法も提供する。更に、本発明は、精神障害の治療薬のアッセイのための核酸及びタンパク質も提供する。
【0011】
一実施形態において、これらの方法は、(i)被験体から生物学的試料を得る;(ii)表1〜14に記載のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされるポリヌクレオチド又はポリペプチドと選択的に結合する試薬と試料を接触させる;及び(iii)試料と選択的に結合する試薬のレベルを測定し、それによって、被験体が精神障害に罹患しているか否か、又は精神障害にかかりやすいか否かを判定する手順を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、試薬は抗体である。幾つかの実施形態において、試薬は核酸である。幾つかの実施形態において、試薬はポリヌクレオチドと結合する。幾つかの実施形態において、試薬はポリペプチドと結合する。幾つかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表1〜14に記載のヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは、表1〜14に記載の遺伝子のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、試料と結合する試薬のレベルは、精神障害に罹患していないヒトに関連するレベルと異なる(即ち、高いまたは低い)。幾つかの実施形態において、生物学的試料は、リンパ球、羊水、髄液又は唾液から得られる。幾つかの実施形態において、精神障害は気分障害である。幾つかの実施形態において、精神障害は精神分裂病等の精神病性障害である。
【0013】
本発明は又、精神障害を処置するための化合物を同定する方法も提供する。幾つかの実施形態において、これらの方法は、(i)表1〜14のヌクレオチド配列を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと化合物を接触させる;及び(ii)ポリペプチドに対する化合物の機能的効果を測定し、それによって気分障害、例えば精神分裂病の処置のための化合物を同定する手順を含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、接触手順はインビトロにて実施される。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは、表1〜14に記載の遺伝子のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは細胞又は生物学的試料中で発現され、この細胞又は生物学的試料を化合物と接触させる。幾つかの実施形態において、これらの方法は更に、動物に化合物を投与し、動物、例えば無脊椎動物、脊椎動物又は哺乳動物に対する効果を測定することを含む。幾つかの実施形態において、測定手順は、動物の精神機能を試験することを含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、これらの方法は、(i)表1〜14のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む細胞と化合物を接触させる;及び(ii)ポリヌクレオチドの発現を調節する化合物を選択し、それによって精神障害を処置するための化合物を同定する手順を含む。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは、表1〜14に記載のヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態において、ポリヌクレオチドの発現は増加する。幾つかの実施形態において、ポリヌクレオチドの発現は減少する。幾つかの実施形態において、これらの方法は更に、動物に化合物を投与し、動物に対する効果を測定することを含む。幾つかの実施形態において、測定手順は、動物の精神機能を試験することを含む。幾つかの実施形態において、精神障害は気分障害又は精神病性傷害である。幾つかの実施形態において、精神障害は精神分裂病である。幾つかの実施形態において、気分障害は大うつ病又は双極性障害である。
【0016】
本発明は又、被験体における精神障害を処置する方法も提供する。幾つかの実施形態において、これらの方法は、前記方法を使用して同定される化合物の治療有効量を被験体に投与することを含む。幾つかの実施形態において、精神障害は気分障害又は精神病性障害である。幾つかの実施形態において、化合物は有機低分子、抗体、アンチセンス分子、アプタマー、siRNA分子又はペプチドである。
【0017】
本発明は又、患者における精神障害を処置する方法であって、表1〜14の核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるヌクレオチドの治療有効量を被験体に投与する手順を含む方法も提供する。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは、表1〜14に記載の遺伝子配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、精神障害は気分障害又は精神病性障害である。
【0018】
本発明は又、被験体における精神障害を処置する方法であって、表1〜14の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドの治療有効量を被験体に投与する手順を特徴とする方法も提供する。幾つかの実施形態において、精神障害は気分障害又は精神病性障害である。幾つかの実施形態において、精神病性障害は精神分裂病である。幾つかの実施形態において、気分障害は双極性障害又は大うつ病である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
定義
「精神障害」又は「精神病」又は「精神疾患」又は「精神病性又は神経精神疾患又は病又は障害」は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition(DSMIV)に記載の通り、気分障害(例えば、大うつ病、躁病、及び双極性障害)、精神病性障害(例えば、精神分裂病、統合失調性感情障害、分裂病様障害、妄想病、短期精神病性障害、及び共用精神病性障害)、人格障害、不安障害(例えば、強迫性障害)、並びに物質関連障害、小児性障害、痴呆、自閉症、適応障害、精神錯乱、多発梗塞性痴呆、及びトゥーレット症候群等のその他の精神障害を指す。通常、このような障害は、複雑な遺伝的及び/又は生化学的成分を有する。
【0020】
「精神病性障害」は、精神に影響を及ぼし、現実との接触を少なくとも多少喪失する病態を指す。精神病性障害の症状には、例えば、幻覚、現実、妄想等に基づかない行動の変化が含まれる。例えば、DSM IMを参照されたい。精神分裂病、統合失調性感情障害、分裂病様障害、妄想病、短期精神病性障害、物質誘導性精神病性障害及び共用精神病性障害は、精神病性障害の具体例である。
【0021】
「精神分裂病」は、個体による現実からの離脱症状に関与する精神病性障害を意味する。症状には、1ヶ月の少なくとも一部にわたり、以下の複数の症状:即ち、妄想(宇宙船において太陽からの外転されるような、妄想が異様である場合は、1種の症状のみが要求される);幻覚(幻覚が、互いに会話する少なくとも2種の声によるものか、又は患者の思考若しくは活動における実況解説を管理する声によるものである場合は、1種の症状のみが要求される);解体した会話(例えば、脱線又は支離滅裂):著しく解体した又は強硬な挙動;又は否定的な症状、即ち、感情の平坦化、失語又は意欲減退が含まれる。精神分裂病の診断については、例えば、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition (DSM IV)に記載されている。精神分裂病の種類には、例えば、妄想型、破瓜型、緊張型、識別不能型、及び後遺症が含まれる。
【0022】
「気分障害」は、長期間にわたり個体によって経験される情調又は感情の分裂を指す。気分障害には、大うつ病(即ち、単極性障害)、躁病、情動不安、双極性障害、気分変調、気分循環症及びその他が含まれる。例えば、DSM IVを参照されたい。
【0023】
「大うつ病」、「大うつ病性障害」又は「単極性障害」は、以下の何れかの症状を含む気分障害を意味する:即ち、持続的な悲しみ、不安、又は中身のない気分;望みのない、又は悲観的な感情;罪責感、価値のなさ、又は無力感;性欲を含む、趣味、及びかつては楽しんだ活動における興味又は喜びの喪失;エネルギーの低下、疲労、速度の減少集中、記憶すること、決定するの困難;不眠、朝早く目が覚めること、又は寝過ごし;食欲及び/又は体重の減少、又は食べ過ぎ及び体重の増加;死について考えること、又は自殺又は自殺の企図;不穏状態又は怒りっぽいこと;又は持続的な身体症状に対する治療に対して応答しない、頭痛、消化性の障害、及び慢性的な痛み。
【0024】
「双極性障害」は、極端な気分の期間が変化することによって特徴付けられる気分障害である。双極性障害の患者は、通常、非常に元気又は怒りっぽい(躁病)ことから、悲しみ及び望みのない(うつ)ことへ揺れ動き、次いで、その間に正常な気分の期間を有して再び戻る、気分の周期を経験する。双極性障害の診断は、例えばDSM IVに記載されている。双極性障害には、双極性障害I(大うつ病を伴うか、又は伴わない躁病)及び双極性障害II(大うつ病を伴う軽躁)が含まれる。例えばDSM IVを参照されたい。
【0025】
不安障害、学習及び記憶障害、認知障害はDSM IVに記載されている。不安障害は、うつ病と一緒の移動性を示し、学習及び記憶障害は、精神分裂病と一緒の移動性を示す。
【0026】
「作用物質」は、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに結合し、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性化又は発現を刺激し、増加し、活性化し、促進し、活性化を向上し、又は上方制御する薬剤を指す。
【0027】
「拮抗物質」は、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現を阻害するか、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性と結合し、部分的又は全体的に刺激を遮断し、減少し、防止し、活性化を遅らせ、不活性化し、脱感作し、又は下方制御する薬剤を指す。
【0028】
発現又は活性の「阻害剤」、「活性化剤」及び「調節物質」は、発現又は活性についてのインビトロ及びインビボアッセイを使用して確認される、阻害的、活性化又は調節分子、例えば、リガンド、作用物質、拮抗物質、及びそれらの相同体及び模倣物質を指すとして使用される。「調節物質」という用語には、阻害剤及び活性化剤が含まれる。阻害剤は、例えば、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現を阻害するか、又は結合して刺激又は酵素活性を部分的又は全体的に遮断し、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性を低下、阻止、活性化の遅延、不活性化、脱感作、又は下方制御する物質、例えば、拮抗物質である。活性化剤は、例えば、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現を誘導又は活性化するか、又は結合して活性化又は酵素活性を刺激、上昇、活発化(open)、活性化、促進、増強し、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性を感作、又は情報制御する物質、例えば、作用物質である。調節物質には、天然及び合成リガンド、拮抗物質、作用物質、小化学分子等が含まれる。阻害剤及び活性化剤を同定するためのアッセイには、例えば、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの存在又は非存在下、推定上の調節物質化合物を細胞へ適用し、次いで、本発明の活性のポリペプチド又はポリヌクレオチドについての機能的効果を測定する方法が含まれる。可能性のある活性化剤、阻害剤、又は調節物質と処理される本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを含む試料又はアッセイを、効果の程度を調べるために、阻害剤、活性化剤、又は調節物質のない対照試料と比較する。対照試料(調節物質と処理しない)を、100%の相対的活性値とする。対照に対する、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性値が約80%、必要に応じて50%又は25〜1%である場合、阻害が得られる。対照に対する、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性値が110%、必要に応じて150%、必要に応じて200〜500%、又は1,000〜3,000高い場合、活性が得られる。
【0029】
本明細書で使用されるように、「試験化合物」又は「薬剤候補」又は「調節物質」又は文法的に同等なもの例えば、タンパク質、オリゴペプチド(例えば、約5〜約25アミノ酸長、好ましくは約10〜20又は12〜18アミノ酸長、好ましくは、12、15又は18アミノ酸長)、有機低分子、多糖類、脂質、脂肪酸、ポリヌクレオチド、RNAi、オリゴヌクレオチド等の天然又は合成の何れかの分子を表わす。試験化合物は、多様性の十分な範囲を提供する、組み合わせ又はランダムなライブラリー等の、試験化合物のライブラリーの形態で使用されることができる。化合物は、標的化合物、レスキュー化合物(rescue compounds)、二量体化合物、安定化化合物、アドレス可能化合物、及び他の機能性部分等の融合パートナーと結合していてもよい。通常、有用な性質を有する化学物質は、幾つかの所望の性質又は活性、例えば、阻害活性を有する試験化合物(リード化合物と呼ばれる)を同定し、リード化合物を変形させ、これらの変形化合物の性質及び活性を評価することによって生成される。しばしば、このような分析のために、ハイスループット・スクリーニング法が使用される。
【0030】
「有機低分子」は、約50ダルトンを超え、約2500ダルトン未満、好ましくは約2000ダルトン未満、好ましくは約100〜約1000ダルトン、更に好ましくは約200〜約500ダルトンの分子量を有する。天然又は合成の有機分子を指す。「siRNA」又は「RNAi」は、二本鎖RNAであって、遺伝子又は標的遺伝子として同じ細胞中にsiRNAが発現した場合に、二本鎖RNAが遺伝子又は標的遺伝子の発現を現象又は阻害する能力を有するRNAを形成する核酸を指す。従って、「siRNA」又は「RNAi」は、相補鎖によって形成される二本鎖RNAを指す。二本鎖分子を形成するためにハイブリダイズするSiRNAの相補性部分は、通常、実質的な、又は完全な同一性を有する。一実施形態において、siRNAは、標的遺伝子と実質的又は完全に同一性を有し、二本鎖siRNAを形成する核酸を指す。典型的には、siRNAは、少なくとも約15〜50ヌクレオチド長(例えば、二本鎖siRNAの各相補配列は15〜50ヌクレオチド長であり、二本鎖siRNAは約15〜50塩基対長、好ましくは約20〜30塩基ヌクレオチド、好ましくは約20〜25又は約24〜29ヌクレオチド長、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチド長)である。
【0031】
「機能的効果の測定」は、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチド(表1から6のポリヌクレオチド、又は表1〜6の遺伝子によってコードされるポリペプチド)の影響下で間接的又は直接的であるパラメータを増加又は減少する化合物についての、物理的及び化学的又は表現型の効果を測定する等のアッセイを指す。このような機能的効果は、例えば、スペクトル特性(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)、水力学特性(例えば、形状)、クロマトグラフィー、又はタンパク質についての溶解性の変化;タンパク質の誘導マーカー又は転写活性の測定;リガンド結合親和力の測定;カルシウム流入の測定;本発明のポリペプチドの酵素的産物の蓄積又は基質の結合の測定;本発明のポリペプチドのタンパク質レベルの変化の測定;RNA安定性の測定;Gタンパク質結合;GPCRリン酸化又は脱輪酸化;シグナル変換;例えば、受容体−リガンド相互作用、第二のメッセンジャー濃度(例えば、cAMP、IP3又は細胞内Ca2+);レポーター遺伝子発現(CAT、ルシフェラーゼ、β−gal、GFP等の下流の同定);化学発光、蛍光、比色法、抗体結合、誘導マーカー、及びリガンド結合アッセイ等の、当業者に既知の何れかの方法によって測定することができる。
【0032】
可能性のある阻害剤、活性化剤又は調節物質で処理した、本明細書に開示される核酸又はタンパク質を含む試料、又はアッセイを、阻害剤、活性化剤又は調節物質を有さない対照試料と比較し、阻害の程度を調べる。対照試料(阻害剤と処理しない)を、100%の相対的タンパク質活性値とする。対照に対する活性値が約80%、好ましくは50%、更に好ましくは25〜0%である場合、阻害が得られる。対照(活性化剤で処理しない)に対する、活性値が110%、更に好ましくは150%、更に好ましくは200〜500%(即ち、対照と比較し、2〜5倍高い)、更に好ましくは1000〜3000%高い場合、活性が得られる。
【0033】
「生物学的試料」には、生検及び検死試料、組織病理の目的のために冷凍された切片等の組織が含まれる。このような試料には、血液、血清、リンパ球、髄液、唾液、組織、溶解された細胞、脳生検、培養細胞、例えば、一次組織、移植片、及び形質転換細胞、便、尿等が含まれる。生物学的試料は、通常、真核生物、最も好ましくは、例えば、チンパンジー又はヒト;牛;犬;猫等の、霊長類等の哺乳動物;例えば、モルモット、ラット、マウス等のげっし動物;又は鳥、は虫類又は魚から得られる。生物学的試料は、核酸及びタンパク質を試験するために使用することができる。
【0034】
「抗体」は、検体(抗原)に特異的に結合し、認識する免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子群、又はそれらの断片によって実質的にコードされるポリペプチドを指す。認識される免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域、及び無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κ又はλの何れかとして分類される。重鎖は、それぞれ、順番に免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを定義する、γ、μ、α、δ又はεとして分類される。
【0035】
具体的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は四量体を含む。各四量体は、各対が1本の「軽」鎖(約25kD)及び1本の「重」鎖(約50〜70kD)を有する、2つの同一のポリペプチド鎖からなる。各鎖のN末端は、主として抗原認識に関与する約100〜110、又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を定義する。可変の軽鎖(VL)及び可変の重鎖(VH)は、それぞれ軽、及び重鎖を指す。
【0036】
抗体は、例えば、インタクトの免疫グロブリン、又は種々のペプチダーゼによって消化されることによって生産される、十分に特徴付けされた種々の断片として存在する。従って、例えば、ペプシンはヒンジ領域中のジスルフィド結合で抗体を消化し、それ自身、ジスルフィド結合によってVH−CHと結合する軽鎖であるFabの二量体である、F(ab)’2を産生する。該F(ab)’2は穏和な条件下で還元され、ヒンジ領域中のジスルフィド結合が破壊され、それによって、該F(ab)’2二量体はFab’単量体に変換される。該Fab’単量体は、基本的に、ヒンジ領域の一部を有するFabである(Paul (Ed.) Fundamental Immunology, Third Edition, Raven Press, NY (1993)を参照)。インタクトの抗体の消化の点から種々の抗体断片が定義されるが、当業者は、このような断片が、化学的、又は組換えDNA法を使用することによりデノボ合成できることを理解するだろう。従って、本明細書で使用されるように、抗体なる用語は、全抗体の修飾によって産生された断片、又は組換えDNA法(例えば、一本鎖Fv)を使用して合成されたものも含む。
【0037】
「ペプチド模倣薬」という用語は、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗物質又は作用物質の実質的に同一の構造及び機能特性を有する合成的な化合物を指す。ペプチド類似体は、通常、鋳型ペプチドの性質と類似の性質を有する、非ペプチド薬剤として、製薬工業において通常に使用される。従って、これらの種類の非ペプチド化合物は「ペプチド模倣薬」、又は「ペプチド模倣薬」と呼ばれる(本明細書に参考組み入れられている、Fauchere, Adv. Drug. Res. 15:29 (1986);Veber and Freidinger TINS p.392 (1985);及びEvans, et al., J. Med. Chem. 30:1229 (1987))。治療上有用なペプチドと構造的に同一であるペプチド模倣薬は、治療的又は予防的効果に相当する、又は向上させるために使用することができる。一般的に、ペプチド模倣薬は、CCX CKR等のパラダイムポリペプチド(即ち、生物学的又は薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に同一であるが、例えば、−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、−CH=CH−(シス及びトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−、及びのCH2SO−からなる群から選択される結合によって置換されていてもよい、1つ以上のペプチド結合を有する。この模倣薬は、完全に、合成の、アミノ酸の非天然類似体からなっていてもよく、又は部分的に天然のペプチドアミノ酸及び部分的にアミノ酸の非天然の類似体のキメラ分子であってもよい。このような置換が、模倣薬の構造及び/又は活性を実質的に変化させない限り、この模倣薬は、任意の量の、天然の保存的なアミノ酸置換を組み込むことができる。例えば、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの結合又は酵素活性を実施することができるか、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの酵素活性又は発現を阻害又は上昇することができる場合、模倣薬組成物は本発明の範囲内である。
【0038】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAの断片を意味し、コード領域の前後の領域、及び個々のコード断片(エクソン)の間に入る配列(イントロン)が含まれる。
【0039】
「単離する」という用語は、核酸又はタンパク質に適用する場合、天然の状態に関連して、核酸又はタンパク質が、他の細胞成分を本質的に含まないことを意味する。例え、乾燥又は水溶液の何れかにあっても、好ましくは均一な状態である。純度及び均一性は、通常、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、又は高速液体クロマトグラフィー等の分析化学技法を使用して測定することができる。調製物中に存在する優勢な種であるタンパク質が、実質的に精製されている。特に、単離された遺伝子は、該遺伝子に隣接し、興味ある遺伝子以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから単離される。「精製された」という用語は、電気泳動ゲルにおいて基本的に1本のバンドを生じさせる、核酸又はタンパク質を意味する。特に、核酸又はタンパク質は、少なくとも85%純粋、更に好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは99%純粋である。
【0040】
「核酸」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、一本又は二本鎖形態の何れかにおける、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそのポリマーを指す。特に限定されない限り、この用語は、基準核酸と同様の結合特性を有し、天然ヌクレオチドと同様の方法で代謝される、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する。特に指示がない限り、特定の核酸配列は又、それらの保存的に修飾された変異形(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、相同分子種、SNP、ハプロタイプ、及び相補配列、並びに明示的に示される配列を暗に包含する。具体的に、縮重コドンの置換は、1つ以上の選択された(又は全ての)コドンの第三の位置を、混合された塩基及び/又はデオキシイノシン残基と置換される配列を生成することにより達成される場合がある(Batzer, et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991);Ohtsuka, et al., J. Biol. Chem. 260:2605−2608 (1985);及びCassol, et al., (1992);Rossolini, et al., Mol. Cell. Probes 8:91−98 (1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、及び遺伝子によってコードされるmRNAと交換可能に使用される。
【0041】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書において、アミノ酸残基のポリマーを指すように、交換可能に使用される。用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的化学模倣薬であるアミノ酸ポリマー、及び天然のアミノ酸ポリマー、及び非天然のアミノ酸ポリマーにあてはまる。本明細書で使用されるように、用語は、アミノ酸残基が共有結合ペプチド結合によって結合している、全長タンパク質(即ち、抗原)を含む、任意の長さのアミノ酸鎖を含む。
【0042】
「アミノ酸」という用語は、天然及び合成アミノ酸、及び天然のアミノ酸と同様な方法で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物質を指す。天然のアミノ酸は、遺伝コードによってコードされるもの、及びヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、及びO−ホスホセリン等の、後に修飾されるアミノ酸である。アミノ酸類似体は、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム等の、天然のアミノ酸と同一の基本的化学構造、即ち、水素に結合しているα炭素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基を有する化合物を指す。このような類似体はR基(例えば、ノルロイシン)によって修飾されるか、又はペプチドの骨格が修飾されているが、天然のアミノ酸としての基本的化学構造を保持している。「アミノ酸模倣体」は、アミノ酸の一般的化学構造と異なる構造を有するが、天然のアミノ酸と同一の様式で機能する化合物を指す。
【0043】
アミノ酸は、IUPAC−IUB生化学命名法委員会に推奨されている、通常に知られている3文字の記号、又は1文字記号で称することができる。同様に、ヌクレオチドは、通常に認められる1文字コドンで称することができる。
【0044】
「保存的に修飾された変形」は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列について、「保存的に修飾された変形」は、同一又は実質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を意味し、又はアミノ酸配列をコードしない核酸は基本的に同一配列を指す。遺伝コードの縮重のため、多くの機能的に同一の核酸が、あるタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは、全てアミノ酸アラニンをコードする。従って、コドンによってアラニンが特定される全ての位置において、コドンは、コードされるペプチドを変化させることなく、関連するコドンの何れかに変化することができる。このような核酸の変異は、保存的修飾変形の一種である、「サイレント変異」である。本明細書における、ポリペプチドをコードする全ての核酸配列は又、核酸の全ての可能なサイレント変異を表す。当業者は、核酸における全てのコドンが、機能的に同一の分子を得るために修飾され得る(通常、メチオニンについての唯一のコドンであるAUG、及び通常、トリプトファンについて唯一のコドンであるTGGを除き)ことを認識するだろう。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、各記載された配列において絶対的である。
【0045】
アミノ酸配列として、当業者は、コード配列中において、単一のアミノ酸又はわずかな割合のアミノ酸が変化し、付加され、又は欠失された核酸、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の配列への個々の置換、欠失又は付加が、変化が、化学的に同様なアミノ酸を使用してアミノ酸置換をもたらす「保存的に修飾された変形」であることを認識する。機能的に同様なアミノ酸をもたらす保存的置換表は当業者に周知である。更に、このような保存的に修飾された変形は、本発明の多様な形式の変形、種間の相同対、及び対立遺伝子を排除しない。
【0046】
以下の8種の群のそれぞれは、相互に保存的な置換であるアミノ酸を含有する。
【0047】
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)
4)アルギニン(R)、リシン(K)
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);及び
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creghton, Proteins (1984)を参照)
「配列の同一性の割合」は、基準配列と比較すると(付加又は欠失を含まない)、付加又は欠失(即ち、gap)を含む比較ウィンドウ(comparison window)を越えて2種の最適に整列された配列を比較することによって決定される。割合は、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列で起こる位置の数を決定することによって適合する位置の数を得て、比較ウィンドウの位置の総数により適合された位置の数を除算し、そして結果に100を乗算して、配列同一性の割合を得ることによって算出される。
【0048】
2種以上の核酸又はポリペプチドとの関連で、「同一の」又は割合の「同一性」という用語は、比較し、比較ウィンドウの全体に最大の一致について整列化し、又は以下の配列比較アルゴリズムを使用して、又は手動の配列及び外観検査により測定するように領域を指定した場合に、同一であるか、又は特定の割合の同一である(即ち、特定の領域の範囲内で60%同一、必要に応じて65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%同一)アミノ酸残基又はヌクレオチドを有する2種以上の配列を指す。その結果、このような配列は、「実質的に同一」であると考えられる。又、この定義は試験配列の相補体を指す。任意に、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド長の領域にわたり、更に好ましくは100〜500又は1000以上のヌクレオチド長野領域にわたって存在する。
【0049】
配列の比較のために、通常、1個の配列が、試験配列が比較される基準配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び基準配列をコンピュータに入力し、次いで、必要であれば座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを使用することができ、又は多のパラメータを指定することができる。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づき、基準配列に対する試験配列についての配列同一性の割合を算出する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「比較ウィンドウ」には、配列が、2種の配列が任意に配列された後に隣接位置の同一の数の基準配列と比較される、20〜600、通常は約50〜約200、更には約100〜150からなる群から選択される隣接位置の数の何れかの部分に対する基準が含まれる。比較のための配列方法は当業界で周知である。比較のための配列の最適な配列は、例えば、Smith and Waterman (1970) Adv. Appl. Math, 2:482cのローカルホモロジーアルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48, 443のホモロジー配列アルゴリズム、Pearson and Lipman (1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 2444の類似法についての検索、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)のコンピュータ処理された実行、又は手動の配列及び外観検査(例えば、Ausubel, et al., Current Protocols in Molecular Biology(1995年追補)により実施することができる。
【0051】
配列同一性の割合及び配列同一性を決定するために適しているアルゴリズムの具体例は、それぞれ、Altschul, et al., (1977) Nuc. Acids Res, 25:3389−3402,及びAltschul, et al., (1990) J Mol Biol 215:403−410に開示されている、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムである。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センターを通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムはまず、データベース中の同じ長さの単語を配列した時に、幾つかの正の値の閾値スコアTに適合するか満足させる疑問のある配列中の長さWの短い単語を同定することによって、ハイスコアリング配列対(HSP)を同定する。Tは、隣接するワードスコア閾値として言及される(Altschul, et al.,同上)。初期隣接ワードは、それらを含む、長いHSPsを発見するための調査を開始するための種として機能する。累積された配列スコアが増加することができる限りは、ワードヒットは、各配列にそって両方向に伸びる。ヌクレオチドのための累積的なスコアは、パラメータM(適合した残基のペアについてのレワードスコアは、いつも>0である)及びN(ミスマッチの残基についてのペナルティスコア;いつも<0である)アミノ酸配列について、スコアリングマトリックスは、累積的なスコアを計算するために使用される。累積的な配列スコアが、その最大獲得値から量Xによって減少した時;1つ以上の負のスコアの残基の配列の蓄積のため、累積的スコアが0又はそれ以下になった時;又はそれぞれの配列の末端に達した時に、各方向におけるワードヒットの伸長は停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、配列の感度及び速度を決定する。BLASTINプログラム(ヌクレオチド配列についての)はデフォルトとして、11のワード長(W)、予想(E)又は10、M=5、N−4及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムが、デフォルトとして、3のワード長、10の予想、及び50のBLOSUM62スコアリングマトリックス配列(B)、10の予想(E)M=5、N=4及び両鎖の比較を使用する。
【0052】
又、BLASTアルゴリズムは、2個の配列の間の同一性の統計的分析を実施する(例えば、Karlin and Altschul (1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873−5787を参照)。BLASTアルゴリズムによって供給される同一性の1つの基準は、最少額可能性であり(PN)、それは、偶然に生じる2種のヌクレオチド又はアミノ酸配列の間の適合による可能性の徴候をもたらす。例えば、核酸は、基準核酸への試験核酸の比較における最小額可能性が約0.2未満であり、好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、基準配列と同一であると考えられる。
【0053】
2種の核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であるという表示は、後述するように、第一の核酸によってコードされるポリペプチドが第二の核酸によってコードされるポリペプチドに対して産生された抗体と、免疫学的に交差反応性を有することである。従って、例えば、2種のペプチドが保存的置換のみで異なる場合、ポリペプチドは、第二のポリペプチドと実質的に同一である。2種の核酸配列が同一であるという他の表示は、2種の分子又はそれらの相補対が、ストリントな条件下で相互にハイブリダイズすることである。2種の核酸配列が実質的に同一であるという、更に他の表示は、該配列を増幅するために同一のプライマーを使用することができることである。
【0054】
「選択的に(又は特異的に)ハイブリダイズする」という語句は、配列が複合混合物中に存在する場合、ストリンジェントな条件下で、特定のヌクレオチド配列とのみ、結合し、二重鎖を形成し、又はハイブリダイズすることを指す(例えば、全細胞又はライブラリーDNA又はRNA)。
【0055】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、通常、核酸の複合混合物中で、プローブが標的配列とハイブリダイズするが、他の配列とはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェント条件は配列依存的であり、異なる環境下では異なる。より長い配列は、高温で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範囲のガイドは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Probes, “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays” (1993)に見られる。一般的に、ストリンジェントな条件は、予め決められたイオン強度pHで特異的配列についての熱融解点より約5〜10℃低いように選択される。Tmは、50%のプローブが、平衡状態Tmにおいて、標的配列が過剰に存在するとして、50%のプローブが平衡状態である)で標的配列に相補的にハイブリダイズ温度(定義されたイオン強度、pH、及び核酸濃度の下)である。ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0〜8.3で約1.0Mナトリウムイオン未満、通常、約0.01〜1.0Mナトリウムイオン(又は他の塩)濃度であり、温度は、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)について少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば50ヌクレオチドを超える)について少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件は又、ホルムアミド等の不安定化剤の添加により達成される。選択的又は特異的ハイブリダイゼーションのため、ポジティブなシグナルはバックグランドの数なくとも2倍であり、必要に応じて、バックグランドの10倍である。具体的なハイブリダイゼーション条件は以下の通りであり得る。50%ホルムアミド、5×SSC、及び1%SDS、42℃でインキュベーション、又は5×SSC、1%SDS、65℃でインキュベーション、65℃で、0.2×SSC、及び0.1%SDSで洗浄するが、このような洗浄は、5、15、30、60、120分又はそれ以上実施することができる。表1〜6に記載された遺伝子とハイブリダイズする核酸は本発明に含まれる。
【0056】
コードするポリペプチドが実質的に同一である場合、ストリンジェントな条件下で相互にハイブリダイズしない核酸は、実質的に同一である。例えば、核酸のコピーが、遺伝コードにより可能とされた、最大のコドン縮重を使用して生成される場合、このようなことが起こる。このような場合、核酸は通常、中程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。具体的な「中程度のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」には、37℃での40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、及び45℃での1×SSC中での洗浄が含まれる。このような洗浄は、5、15、30、60、120分又はそれ以上実施することができる。ポジティブなハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、他のハイブリダイゼーション及び洗浄条件が、同一のストリンジェンシーの条件をもたらすように利用されることを認識する。
【0057】
PCRについて、約36℃の温度は低ストリンジェンシーな増幅のために通常であるが、アニーリング温度はプライマーの長さに依存し約32℃及び48℃の間で変化する。高ストリンジェンシーPCR増幅のためには、約62℃の温度が通常であるが、高ストリンジェンシーアニーリング温度は、プライマーの長さ及び特異性に依存し、約50℃〜約65℃の範囲であり得る。高ストリンジェンシー及び低ストリンジェンシーの両方についての典型的なサイクル条件には、30秒から2分の90℃〜95℃の変性段階、持続的な30秒から2分のアニーリング段階、及び約72℃で1〜2分の伸長段階が含まれる。低ストリンジェンシー及び高ストリンジェンシー増幅のプロトコール及びガイドラインは、例えば、Innis, et al., PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications(1990)によって供給される。
【0058】
「核酸配列コーディング」という語句は、rRNA、tRNA、又は特定のタンパク質又は一次アミノ酸配列構造的RNA配列情報、又はトランス作用因子制御物質のための結合部位を含む核酸を指す。この語句は、特に、自然の配列、又は特定の宿主細胞におけるコドン優先度に適合するために導入される配列の縮重コドン(即ち、同一のアミノ酸をコードするコドン)を含む。
【0059】
「組換え体」という用語は、例えば、細胞、又は核酸、タンパク質、又はベクターに関して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質又はベクターが、異種核酸又はタンパク質の導入、又は野生型の核酸又はタンパク質の改変によって修飾されるか、又は細胞がこのように修飾された細胞に由来することを示す。従って、例えば、組換え体細胞は野生型(非組換え体)内には見出されないか、又はそうでなければ、異常に発現するか、低い発現か、発現しない野生型遺伝子を発現する。
【0060】
「異種」という用語は、核酸の一部に関して使用される場合、核酸は、天然において相互に同一の関連において示されない、複数のサブシークエンスを含むことを示す。例えば、核酸は、通常組換えにより産生される新規の機能的核酸、例えば、1つの源由来のプロモーター及び別の源由来のコード領域を製造するために配列された、関係ない遺伝子からの複数の配列を有する。同様に、異種タンパク質は、天然において相互に同一の関連性において見出される複数の配列を含むタンパク質(融合タンパク質)を示す。
【0061】
「発現ベクター」は、宿主細胞内で特定の核酸の翻訳を可能にする、特定の核酸成分を有する、組換え的又は合成的に精製された核酸構築物である。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス又は核酸断片の一部であり得る。通常、発現ベクターには、プロモーターに動作可能に結合した、転写される核酸が含まれる。
【0062】
「抗体に特異的に(又は選択的に)結合」、又は「特異的に(又は選択的に)免疫反応」という語句は、タンパク質又はペプチドに言及する場合、タンパク質及び他の生物学的分子の異種不均質な集団の存在下に、タンパク質の存在を決定することができる結合反応を指す。従って、指摘される免疫アッセイ条件下に、特定の抗体は特定のタンパク質と結合し、試料中に存在する、かなりの量の他のタンパク質とは結合しない。このような条件下における抗体に対する特異的結合は、特定のタンパク質についての特異性のために選択される抗体を必要とする。例えば、本発明の何れかのポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質に対して産生された抗体は、タンパク質との抗体特異的免疫反応(多型変異体を除く、他のタンパク質とは反応しない)を得るために選択することができる。種々の免疫反応が、特定のタンパク質と特異的に免疫反応するタンパク質を選択するために使用することができる。例えば、固相ELISA免疫アッセイ、ウェスタンブロット、免疫組織化学が、タンパク質と特異的に免疫反応するモノクローナル抗体を選択するために使用される。特異的な免疫反応を測定するために使用することができる免疫アッセイ及び条件の記載については、Harlow and Lane Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, NY (1988)を参照されたい。通常、特異的な、又は選択的な反応は、バックグラウンドシグナル又はノイズの少なくとも2倍であり、更に典型的にはバックグラウンドの10〜100倍である。
【0063】
本明細書で使用されるような、「精神障害にかかりやすい」ヒトとは、一般集団における平均的な個体と比べた時に、精神障害の発現の傾向又は一層高い可能性を有するヒトであることを意味する。
【0064】
I.序論
精神障害の複雑な遺伝的基礎を理解するため、本発明は、精神病性障害及び気分障害に罹患している被験体の中枢神経系で特に特異的に発現する遺伝子の発現パターンの調査を実施する研究を提供する。精神障害に関連する広いスペクトルは、精神障害に罹患している患者における、複雑な遺伝的基礎及び複雑な遺伝子発現を反映している。本明細書に開示される遺伝子の異なる組み合わせは、1つ以上の精神障害に関与する。更に、脳経路又は回路、及び細胞内経路は、精神障害の発現及び診断を理解するために重要である。本明細書で開示される、選択された脳領域(前帯状皮質(AnCg)、背面前頭葉皮質(DLPFC)、小脳皮質(CB)、嗅内皮質(ERC)、上側頭回(STG)、頭頂葉皮質(PC)、側坐核(nAcc)、腹側視床(VThal)、内側視床(MThal)、扁桃体(AMY)及び/又は海馬(HC))が、精神病性障害及び気分障害等の精神障害の臨床症状において関係している。従って、特定の脳領域に焦点を当てた脳撮像研究、脳領域における細胞構造の変化、脳領域における、重要な神経伝達物質又は関連分子の発現、精神障害の発現の原因となる全ての脳領域における細胞内経路は、本明細書において使用される、診断及び処置において考慮すべき重要なことである。
【0065】
本発明は、正常な個体と比較した場合の、種々の脳領域、又は精神障害(例えば、精神分裂病、MDD及びBPD)に罹患している患者のリンパ球(例えば、表4〜6)での、mRNA又はタンパク質レベルにおける表1〜4及び6の遺伝子の発現の変化(上昇又は減少の何れも)(例えば、表1〜4及び6)を証明する。従って、本発明は、表1〜14に記載された遺伝子及び関連する生化学経路の転写又は翻訳産物のレベルを測定することにより、精神分裂病、MDD及びBPD等の精神障害、及び他の精神障害を診断する方法を提供する。このような遺伝子の染色体位置は、特定の障害の発現と結びつく領域中の他の遺伝子の発見に使用することができる。本発明の表6は又、AGAと関連する調節部位と関連する単一ヌクレオチド多型を提供する。
【0066】
更に、本発明は、本明細書に開示された、翻訳産物又は転写物の発現の機能的効果を修飾する化合物を選択することにより、このような疾患の処置に有用な化合物を同定する方法を提供する。本発明は又、例えば、遺伝子療法により本発明の化合物を投与することにより、このような精神障害に罹患している患者を処置する方法を提供する。治療化合物には、抗体、ペプチド、アンチセンス分子、siRNA、及び有機低分子が含まれる。
【0067】
精神病性障害及び気分障害と関連する遺伝子、及び該遺伝子がコードするポリペプチドは、全ての精神障害又は選択された精神障害に特異的なプローブセットを含む、GeneChipTM等の種々の分子診断手段の設計及び開発を促進するのに、又、遺伝カウンセリングと併せて新生児をスクリーニングするための出生の前及び/又は後の診断手段として有用である。他の診断的応用には、疾患へのかかりやすさ、予後の評価、疾患又は治療の過程の監視、患者の臨床応答を有する特定のゲノムモチーフを個別医薬品と関連付けることによる、予測的な薬物プロファイリングシステムを通じた個別医薬品の供給が含まれる。更に、本発明は、遺伝子、mRNA、タンパク質及び経路レベル(例えば、Basile VS,Masellis M,Potkin SG,Kennedy JL.Pharacogenomics in schizophrenia:the quest for individualized therapy)における薬理遺伝学的標的の同定を含むが、これらに限定されない。スプライシング変異株は又、診断及び処置的用途に有用である。診断キットは本発明によって意図され、アレイ、ナノ粒子及び磁気ビーズが含まれる。マーカーの組み合わせは、有用な診断をもたらす。脳発現パターン、領域、経路、及び回路は、インビボでの画像化及び診断において有用である。
【0068】
本明細書で開示された、遺伝子及び該遺伝子がコードするポリペプチドは、精神障害の治療又は予防のための治療薬の開発のための薬剤標的として有用である。精神障害は、パーキンソン病又はアルツハイマー病等の神経系疾患等と高い共通の病的状態を有する。従って、本発明は、精神分裂病等の精神障害を含む、複数の病状を有する患者の診断及び処置に使用することができる。
【0069】
抗精神病性障害薬は一般的に、精神分裂病の処置に対して同等の効果であるが、異なる機序で作用する。精神分裂病の治療薬の同様の効果は、それらの治療薬が未だに同定されていない共通の経路を介して作用することを示唆している。本明細書に示される結果により実証される通り、これらの薬剤は、共通の遺伝子及び/又は遺伝子の共通のグループ、並びに固有の組の遺伝子を調節する。
【0070】
本明細書に記載の遺伝子は、気分障害及び精神病性障害の特異的な診断又は予後診断を提供するために使用されてもよい。場合により、特異的に発現する遺伝子は、自殺未遂等の特定の症状又は転帰を予測及び処置するために使用されてもよい。本明細書に記載の治療薬は、既知の治療薬と組み合わせて使用されてもよい。核酸治療薬はアデノウイルスを使用して送達されてもよいが、ペプチド、核酸及びその他の治療薬分子は、ナノ粒子及び転移ペプチドを使用して送達されてもよい。経口により利用できるペプチドは、D−アミノ酸又はペグ化を使用して製造されてもよく、血清半減期はアルブミン結合等を使用して延長されてもよい。
【0071】
II.本発明で使用するための一般的組換え核酸法
本発明の多数の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドが単離され、組換え法を使用してクローニングされる。このようなポリヌクレオチドには、例えば、タンパク質の発現、又は変形、誘導体発現カセットの発現又は生成の際に、異なる種における本発明の配列を単離又は検出するために遺伝子発現を監視し、例えば、本発明の核酸又はポリペプチドの突然変異を検出、又は発現レベルを測定するために、患者中で診断の目的のために使用される、表1〜14に記載されたものが含まれる。幾つかの実施形態において、本発明の配列は、任意に異種プロモーターに結合していてもよい。一実施形態において、本発明の核酸は、例えば、特に、ヒト、マウス、ラット、霊長類等を含む、任意の哺乳動物由来のものである。
【0072】
A.組換え核酸の一般的方法
本発明は、組換え遺伝学の分野における通常の技法に基づいている。本発明において使用される一般的方法を開示する基本的テキストには、Sambrook, et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3rd ed. 2001);Krigler, Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual (1990);及びCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel, et al., eds., 1994)が含まれる。
【0073】
核酸については、サイズは、キロベース(kb)又は塩基対(bp)で表わされる。これらは、配列決定された核酸、又は公開されたDNA配列から、アガロース又はアクリルアミドゲル電気泳動によって得られる。タンパク質については、サイズはキロダルトン(kDa)又はアミノ酸残基数で表される。タンパク質のサイズは、配列決定されたタンパク質、誘導されたアミノ酸配列から、又は公開されたタンパク質の配列から、電気泳動で評価される。
【0074】
市販されていないオリゴヌクレオチドは、最初に、Beaucage & Caruthers, Tetrahedron Letts. 22:1859−1862 (1981)に記載された固相ホスホラミダイトトリエステル法に従い、Van Devanter, et al., Nucleic Acids Res. 12:6159−6168 (1984)に記載されたような自動化シンセサイザーを使用して化学的に合成することができる。オリゴヌクレオチドの精製は、Pearson & Reanier, J. Chrom. 255:137−149 (1983)に記載されたように、未変性アクリルアミドゲル電気泳動、又は陰イオン交換HPLCの何れかによる。
【0075】
クローニングされた遺伝子、及び合成オリゴヌクレオチドの配列は、クローニング後に、例えば、Wallance, et al., Gene 16:21−26(1981)の二重鎖鋳型の配列決定のためのチェーンターミネーション法を使用して証明することができる。
【0076】
B.所望のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の単離のためのクローニング法
対象のタンパク質をコードする核酸は、cDNA又はゲノムDNAをコードするために生成されたDNA配列ライブラリーからクローニングされる。特定の配列はオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズすることにより配置することができ、その配列は、表1〜6に記載された遺伝子及び/又はSNPの配列から得られ、PCRプライマーのための基準をもたらし、特異的なプローブを単離するのに好適な領域を定義する。又、配列が発現ライブラリーにクローニングされる場合、発現組換えタンパク質は、表1〜14に記載された遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドに対する抗血清又は精製された抗体を使用して免疫学的に検出することができる。
【0077】
ゲノム及びcDNAライブラリーを製造し、スクリーニングする方法は、当業者に周知である(例えば、Gubler and Hoffman, Gene 25:263−269 (1983);Benton and Davis, Science, 196:180−182 (1977):及びSambrook,同上を参照)。脳細胞は、本発明のRNA及びcDNA配列を単離するのに好適な細胞の例である。
【0078】
簡潔に述べると、cDNAラブラリーを生成するために、mRNA及びcDNA配列が豊富な起源を選択すべきである。次いで、mRNAをcDNAにし、組換えベクター中に結合し、増殖、スクリーニング及びクローニングのための組換え宿主中に形質転換する。ゲノムライブラリーのために、DNAを機械的に剪断するか、酵素的に消化して、適切な組織から抽出し好ましくは約5〜100kbの断片を得る。次いで、断片を勾配遠心分離によって所望でないサイズから分離し、バクテリオファージλベクター中に構築する。これらのベクター及びファージはインビトロにてパッケージされ、組換えファージをプラークハイブリダイゼーションにより分析する。Grunstein, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,72:3961−3965 (1975)に一般的に記載されているように、コロニーハイブリダイゼーションを実施する。
【0079】
代替的な方法としては、mRNA又はDNA鋳型上で、ポリメラーゼ伸長と、合成オリゴヌクレオチドプライマーの使用を組み合わせる。適切なプライマーは、本発明の特定の配列から設計することができる。このポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法は、mRNA、cDNA、ゲノムライブラリー又はcDNAライブラリーから、直接、対象となるタンパク質をコードする核酸を増幅する。制限エンドヌクレアーゼ部位を、プライマー中に導入することができる。ポリメラーゼ連鎖反応、又は、例えば、特定のタンパク質をコードし、該タンパク質を発現する核酸をクローニングし、生理的試料中で、本発明のポリペプチドをコードするmRNAの存在を検出するためのプローブとして使用される核酸を合成するためのその他のインビトロ増幅反応も有用である。PCR反応により増幅された遺伝子は、アガロースゲルから精製し、適当なベクター中でクローニングすることができる。
【0080】
哺乳動物組織由来の本発明のポリヌクレオチドを同定するための適当なプライマー及びプローブは、本明細書で提供された配列から誘導することができる。PCRの概要については、Innis, et al., PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press, San Diego (1990)を参照されたい。
【0081】
合成オリゴヌクレオチドは、遺伝子を構築するために使用することができる。これは、遺伝子のセンス及びアンチセンス鎖を表す、通常40〜120bp長の一連の重複するオリゴヌクレオチドを使用して行われる。次いで、これらのDNA断片がアニーリング、結合、そしてクローニングされる。
【0082】
本発明のポリペプチドをコードする遺伝子は、発現のために哺乳動物細胞に形質転換する前に、中間ベクターを使用してクローニングすることができる。これらの中間ベクターは、通常、原核生物ベクター又はシャトルベクターである。タンパク質は、当業者に周知の標準的な方法を使用して、原核生物に、又は後述する真核生物の何れかに発現してもよい。
【0083】
III.本発明のタンパク質の精製
本発明の天然又は組換え型ポリペプチドは何れも、機能アッセイで使用するために精製することができる。天然のポリペプチド、例えば表1〜14に記載の遺伝子によってコードされるポリペプチドが、例えば、脳又は相同分子種のその他何れかの源等のマウス又はヒトの組織から精製されてもよい。組換え型ポリペプチドは、何れかの好適な発現システムから精製されてもよい。
【0084】
本発明のポリペプチドは、硫酸アンモニウム等の物質による選択的沈殿、カラムクロマトグラフィー、免疫沈降法等(例えば、Scopes, Protein Purification: Principles and Practice (1982);米国特許第4,673,641号;Ausubel, et al.,同上;及びSambrook, et al.,同上を参照)を含めた標準的な技法により、実質的に純粋にまで精製される場合がある。
【0085】
組換え型ポリペプチドが精製される場合、幾つかの手順を使用することができる。例えば、確立された分子接着特性を有するタンパク質は、本発明のポリペプチドと可逆的に融合することができる。適切なリガンドを使用することで、これらのポリペプチドは、精製カラムに選択的に吸着した後、相対的に純粋な形態でカラムから溶出することができる。次に、この融合タンパク質を酵素活性により除去し、最終的には、免疫親和性カラムを使用してポリペプチドを精製することができる。
【0086】
A.組換え型細菌からのタンパク質の精製
形質転換された細菌によって、プロモーター誘導の後に組換えタンパク質が大量に発現する場合は通常、発現は構成的であるが、タンパク質は不溶性の凝集体に形成され得る。タンパク質の封入体の精製のために適している幾つかのプロトコールがある。例えば、凝集タンパク質(以下、封入体として言及される)は、通常は細菌細胞の破壊による通常、抽出、分離及び/又は精製(通常、約100〜150μg/mLのリゾチーム及び0.1%の非イオン性界面活性剤Nonidet P40の緩衝剤中でのインキュベーションによる)を必要とする。細胞懸濁液を、Polytronグラインダー(Brinkman Instruments[米国ニューヨーク州ウェストベリー])を使用して粉砕することができる。又、細胞を氷上で超音波処理することができる。細菌を溶解する他の方法は、両方とも、当業者には明らかである、Ausubel, et al.及びSambrook, et al.に記載されている。
【0087】
一般的に、細胞懸濁液を遠心し、封入体を含む沈殿物を、封入体を溶解しないが洗浄する20mM Tris−HCl(pH7.2),1mM EDTA,150mM NaCL及び2%Triton−X100等の緩衝剤中に再懸濁する。細胞残屑を除去するために、可能な限り洗浄手順を繰り返す必要がある。残存する、封入対の沈殿物を適切な緩衝剤(例えば、20mMリン酸ナトリウム,pH6.8,150mM NaCl)に再懸濁してもよい。他の適切な緩衝剤は当業者に明らかであろう。
【0088】
洗浄手順に続き、強力な水素受容体及び強力な水素供与体(又は、これらの特性をそれぞれ有する溶媒の組み合わせ)である溶媒の添加により、封入体を可溶化する。次いで、封入体を形成するタンパク質を希釈によって再生し、相溶性の緩衝剤で透析する。適当な溶媒には、尿素(約4M〜約8M)、ホルムアミド(少なくとも80%、容量/容量基準)、及び塩酸グアニジン(約4M〜約8M)が含まれるが、これらに限定されない。SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)及び70%ギ酸等の、凝集形成タンパク質を可溶化することができる幾つかの溶媒は、タンパク質の非可逆的な変性の可能性、それに伴う免疫原性及び/又は活性の欠失のため、この手順において使用するのに不適当である。塩酸グアニジン、及び同様の物質は変性剤であるが、この変性は非可逆的でなく、変性剤の除去(例えば、透析による)又は希釈によって再生が起こり、対象となるタンパク質の免疫原性及び/又は生物学的活性の再形成を可能にする。溶解化後、標準的分離技法により、タンパク質を他の細菌性タンパク質から分離することができる。
【0089】
或いは、細菌ペリプラズムからタンパク質を精製することが可能である。タンパク質を細菌のペリプラズムへ輸送する場合、細菌のペリプラズム画分は、当業者に既知のその他の方法に加えて、冷浸透圧ショックにより単離することができる(Ausubel, et al.,同上を参照)。ペリプラズムから組換えタンパク質を単離するため、細菌の細胞を遠心分離して沈殿物を形成する。沈殿を、20%ショ糖を含む緩衝剤に再懸濁する。細胞を溶解するため、細菌を遠心分離し、沈殿を、氷冷した5mM MgSO4中に再懸濁し、氷浴中で10分間維持する。細胞懸濁液を遠心分離し、上清を移し保存した。上清中に存在する組換えタンパク質は、当業者に周知の標準分離技法によって、宿主タンパク質から分離することができる。
【0090】
B.タンパク質精製のための標準タンパク質分離技法
1.溶解度分別
しばしば最初の手順として、及びタンパク質混合物が複合体である場合、初期の塩分別は、対象となる組換えタンパク質から多くの不要な宿主タンパク質の細胞タンパク質を分離することができる。好ましい塩は硫酸アンモニウムである。硫酸アンモニウムは、タンパク質混合物中の水の量を効果的に減少することにより、タンパク質を沈殿させる。次いで、タンパク質は、それらの溶解度を基準として沈殿する。タンパク質の疎水性が増すと、より低い濃度の硫酸アンモニウムで沈殿すると思われる。典型的なプロトコールは、得られる硫酸アンモニウム濃度が20〜30%になるように、タンパク質溶液に飽和硫酸アンモニウムを加えることである。これは、最も疎水性のタンパク質を沈殿させる。沈殿を捨て(対象となるタンパク質が疎水性でない場合)、上清に硫酸アンモニウムを既知の濃度まで添加して、対象となるタンパク質を沈殿させる。次いで、沈殿物を緩衝剤中で溶解し、必要に応じて透析又はダイアフィルトレーションにより、過剰な塩を除去する。冷エタノール沈殿等のタンパク質の溶解性に基づくその他の方法は、当業者に周知であり、複合タンパク質混合物を分画するために使用することができる。
【0091】
2.サイズ分画濾過
計算された分子量に基づき、より大きい、及びより小さいサイズのタンパク質を、異なるポアサイズの膜(例えば、Amicon又はMillipore膜)を通じた超遠心分離を使用して分離することができる。第一の手順として、タンパク質混合物を、対象となるタンパク質の分子量よりも小さい分子量のカットオフを有するポアサイズを有する膜を通じて超遠心する。次いで、超遠心の残留物を対象となるタンパク質の分子量より大きいカットオフを有する膜に対して限外濾過する。組換えタンパク質は、ろ液中の膜を通過する。次いで、ろ液を後述するようにクロマトグラフィー分析する。
【0092】
3.カラムクロマトグラフィー
対象となるタンパク質は又、それらのサイズ、正味の表面電荷、疎水度及びリガンドに対する親和性に基づいて、他のタンパク質から分離することができる。更に、タンパク質に対して産生した抗体を、カラムマトリックスに結合し、タンパク質を免疫精製することができる。これらの全ての方法は当業界で周知である。
【0093】
クロマトグラフィー技法は、任意のスケールで、且つ多くの異なる製造業者(例えば、Pharmacia Biotech)の機器を使用して実施できることは、当業者に明らかである。
【0094】
IV.遺伝子発現の検出
本発明のポリヌクレオチドの発現の検出が多くの用途を有することは、当業者
が認識するであろう。例えば、本明細書で考察する通り、患者における本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドのレベルの検出は、気分障害又は精神病性障害の診断、又は気分障害又は精神病性障害のかかりやすさを調べるのに有用である。更に、遺伝子発現の検出が、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現の調節物質を同定するのに有用である。
【0095】
核酸ハイブリダイゼーション技法を使用した特異的DNA及びRNAを測定する種々の方法は、当業者に既知である(例えば、Sambrook,同上を参照)。幾つか方法は電気泳動分離(例えば、DNAを検出するサザンブロット、及びRNAを検出するノーザンブロット)を含むが、DNA及びRNAの測定は、電気泳動分離の非存在下でも実施できる(例えば、ドットブロットによる)。ゲノムDNA(例えば、ヒト由来)のサザンブロットは、本発明のポリペプチドに影響を及ぼす遺伝病の存在を検出する、制限断片長多型(RFLP)のスクリーニングに使用することができる。
【0096】
核酸ハイブリダイゼーションのフォーマットの選択は、それほど重要というわけではない。種々の核酸ハイブリダイゼーションフォーマットが、当業者に公知である。例えば、一般的なフォーマットには、サンドイッチアッセイ及び競合又は置換アッセイが含まれる。ハイブリダイゼーション技法は、Hames and Higgins, Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach, IRL Press (1985);Gall and Pardue, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 63:378−383 (1969);及びJohn, et al., Nature, 223:582−587 (1969)に概説されている。
【0097】
ハイブリダイゼーション複合体の検出は、標的に対する二重鎖に対するシグナル発生複合体、及びヌクレオチド又は核酸プローブを必要とする。通常、このような結合は、リガンド結合プローブ、及びシグナルを有するリガンド結合体等の、リガンド及び抗リガンド相互作用を通じて生じる。シグナル発生複合体の結合は又、超音波エネルギーにさらすことにより、容易に加速される。
【0098】
又、標識は、ハイブリダイゼーション複合体の直接の検出を可能にする。例えば、標識がハプテン又は抗原である場合、試料は抗体を使用することによって検出することができる。これらのシステムにおいて、蛍光又は酵素分子を抗体に結合することにより、又は場合によって放射性標識に結合することにより、シグナルが生成される(例えば、Tijssen, “Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,” Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Burdon and van Knippenberg Eds., Elsevier (1985), pp.9−20を参照)。
【0099】
プローブは、通常、同位元素、発色団、ルミフォア(lumiphores)、色素原と同様に、直接的に、又は後にストレプトアビジン複合体結合し得るビオチンと同様に、間接的に標識化される。従って、本発明のアッセイにおいて使用される検出可能な標識は、一次標識(標識が、直接検出されるか、又は直接検出可能な成分を生産する成分)又は二次標識(一次標識に結合した、検出ラベル、例えば、免疫学的標識においては通常にあるもの)であり得る。通常、標識化シグナル核酸は、ハイブリダイゼーションを検出するために使用される。相補的な核酸又はシグナル核酸は、ハイブリダイズしたポリヌクレオチドの存在を検出するために通常に使用される、幾つかの方法の何れか1つの方法によって標識化される。最も一般的な検出方法は、3H、125I、35S、14C又は32Pで標識されたプローブ等を使用したオートラジオグラフィーの使用である。
【0100】
他の標識には、例えば、標識されたリガンドのための特異的結合対のメンバーとして供給することのできる、標識抗体、フルオロフォア、化学発光剤、酵素及び抗体と結合するリガンドが含まれる。標識への導入、標識方法及び標識の検出は、Polak and Van Noorden Introduction to Immunocytochemistry, 2nd ed., Spring Verlag, NY (1997);及びHaugland Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, a combined handbook and catalogue Published by Molecular Probes, Inc. (1996)に見出される。
【0101】
一般的に、特定のプローブ又はプローブの組み合わせを監視する検出器は、検出試薬の標識を検出するために使用される。通常の検出器には、分光光度計、光電管及び光ダイオード、顕微鏡、シンチレーションカウンター、カメラ、フィルム等、及びそれらの組み合わせが含まれる。好適な検出器の例は、当業者に既知の種々の商業的供給源から広く利用される。一般的に、結合標識部分を含む基板の視像は、その後のコンピュータ分析のためにデジタル化される。
【0102】
最も一般的には、RNAの量は、検出試薬の結合により固相に固定された標識の量を定量化することによって測定される。通常、インキュベーションの際の調節物質の存在は、固相に固定化された標識の量を、調節物質を含まない対照インキュベーションと比較し、又は特定の反応型について確立されたベースラインと比較して増加又は減少させる。標識を検出及び定量化する手段は、当業者に周知である。
【0103】
好ましい実施形態において、標的核酸又はプローブは、固相に固定化される。本発明のアッセイでの使用に好適な固相は、当業者に既知である。本明細書で使用される通り、固相は、実質的に固定された配置中の材料のマトリックスである。
【0104】
種々の自動化固相アッセイ技法が、また適している。例えば、Affymetrix, Inc.(米国カリフォルニア州サンタクララ)から得られる、非常に大きいスケールの固定化ポリマーアレイ(VLSIPSTM)が、同時に同じ制御経路において必要とされる複数の遺伝子の発現レベルにおける変化を検出することができる。例えば、Tijssen,同上、Fodor, et al., (1991) Science, 251:767−777;Sheldon, et al., (1993) Clinical Chemistry 39(4):718−719、及びKozal, et al., (1996) Nature Medicine 2(7):753−759を参照されたい。
【0105】
検出は、例えば、二重鎖核酸に特異的に結合する、標識化検出部分(例えば、RNA−DNA二重鎖に特異的な抗体)を使用することによって達成することができる。1つの好ましい具体例は、抗体が酵素に結合している(通常は、組換え又は共有化学結合)、DNA−RNAヘテロ二重鎖を認識する抗体を使用する。抗体は、酵素がその基質と反応し、検出可能な産物を生成した時に検出される。Coutlee, et al., (1989), Analytical Biochemistry 181:153−162;Bogulavski, et al., (1986),J. Immunol. Methods 89:123−130;Prooijen−Knegt (1982), Exp. Cell Res. 141:397−407;Rudkin (1976), Nature 265:472−473, Stollar (1970), Proc. Natl Acad. Sci. USA 65:993−1000;Ballard (1982), Mol. Immunol. 19:793−799;Pisetsky and Caster (1982), Mol. Immunol. 19:645−650;Visidi, et al., (1988), J. Clin. Microbial. 41:199−209;及びKiney, et al., (1989), J. Clin. Microbiaol. 27:6−12は、ホモ及びヘテロ二重鎖を含むRNA二重鎖に対する抗体を開示している。Digene Diagnostics, Inc(米国メリーランド州ベルツビル)由来の、DNA:RNAハイブリッドについて特異的な抗体を含むキットは利用することができる。
【0106】
利用できる抗体に加えて、当業者は、既存の技法を使用して核酸二重鎖に特異的な抗体を容易に製造することができ、又、市販されているか、公的に入手可能な抗体を修飾することができる。前述の参考文献に加えて、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を産生する一般的な方法は、当業者に既知である(例えば、Paul (3rd ed.), Fundamental Immunology Raven Press, Ltd., NY (1993);Coligan, Current Protocols in Immunolog Wiley/Greene, NY (1991);Harlow and Lane Antibodies;A laboratory Manual Cold Spring Harbor Press, NY (1998);Stites, et al., (eds.), Basic and Clinical Immunology (4th ed.) Lange Medical Publications, Los Altos, CA、及びそれらに引用されている文献;Goding Monoclonoal Antibodies: Principles and Practice (2d ed) Academic Press, New York, NY, (1986);及びKohler and Milstein, Nature 256:495−497 (1975)を参照)。抗体調製のその他の好適な技法には、ファージ又は同様のベクターにおける組換え抗体のライブラリーの選択が含まれる(Huse, et al., Science 246:1275−1281 (1989);及びWard, et al., Nature 341:544−546 (1989)を参照)。特異的なモノクローナウ及びポリクローナル抗体及び抗血清は通常、少なくとも約0.1μM、好ましくは少なくとも約0.01μM以上、最も一般的且つ好ましくは0.001μM以上のKDと結合する。
【0107】
本発明において使用される核酸は、ポジティブ又はネガティブプローブの何れであってもよい。ポジティブプローブはその標的に結合し、二重鎖の形成の存在が、標的の存在の証拠である。ネガティブプローブは、疑わしい標的に結合せず、二重鎖の形成の非存在が、標的の存在の証拠である。例えば、野生型に特異的な核酸プローブ又はPCRプライマーの使用は、対象となるヌクレオチド配列が存在する場合にのみ、アッセイ試料中のネガティブプローブとして供給される。
【0108】
ハイブリダイゼーションアッセイの感度は、検出される標的核酸を増やす核酸増幅システムの使用を通じて向上する。このようなシステムの具体例には、ポリメラーゼ連鎖(PCR)システム、特に、RT−PCR又はリアルタイムPCR、及びリガーゼ連鎖反応(LCR)システムが含まれる。最近、この分野で開示された他の方法には、核酸配列に基づく増幅法(NASBA、Cangene[カナダ オンタリオ州ミシソーガ])及びQβレプリカーゼシステムが含まれる。これらのシステムは、選択された配列が存在する場合にのみ、伸長し、結合するように、PCR又はLCRプライマーが設計される場合、突然変異を直接同定するために使用することができる。又、選択された配列は、一般的に、例えば、非特異的なPCRプライマー、及び変異を示す特異的な配列について後に調査される増幅された標的領域を使用して増幅される。
【0109】
本発明の核酸の発現レベルを測定するための代替の手段は、in situハイブリダイゼーションである。in situハイブリダイゼーションアッセイは周知であり、一般的に、Angerer, et al., Methods Enzymol. 152:649−660 (1987)に開示されている。in situハイブリダイゼーションアッセイにおいては、優先的に、選択された脳領域由来のヒト細胞又は組織が固相、通常はスライドガラスに固定される。DNAが調査される場合、細胞を熱又はアルカリで変性する。次いで、細胞を、中程度の温度でハイブリダイゼーション溶液と接触させ、標識化される特異的なプローブをアニーリングさせる。好ましくは、プローブは放射性同位元素又は蛍光レポーターで標識化される。
【0110】
V.本発明のポリペプチドの免疫学的検出
核酸ハイブリダイゼーション技術を使用した、ポリヌクレオチド発現の検出に加え、本発明のポリペプチドを検出するために免疫アッセイを使用することができる。免疫アッセイは、ポリペプチドを、定性的又は定量的に分析するために使用することができる。適用可能な技術の概要は、Harlow & Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (1988)に記載されている。
【0111】
A.標的ポリペプチド又は免疫原に対する抗体
対象となるタンパク質又は他の免疫原と特異的に反応する、治療的及び診断的ポリクローナル及びモノクローナル抗体を産生する方法は、当業者に既知である(例えば、Coligan,同上;及びHarlow and Lane,同上;Stites, et al.,同上、及び本明細書に記載の文献;Goding,同上;及びKohler and Milstein, Nature, 256:495−497 (1975)を参照)。このような技法には、ファージ又は同様のベクター中の組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体の調製が含まれる(Huse, et al.,同上;及びWard, et al.,同上を参照)。例えば、免疫アッセイにおいて使用するための抗血清を産生するために、対象となるタンパク質又は抗原断片が本明細書に記載の通り単離される。例えば、組換えタンパク質は形質転換細胞系中で産生される。マウス又はウサギの純系の株を、フロイントのアジュバント等の標準的なアジュバント、及び標準的な免疫プロトコールを使用してタンパク質で免疫する。又、本明細書に開示された配列から得られる合成ペプチド、及びキャリアータンパク質との結合体を、免疫原として使用することができる。
【0112】
ポリクローナル血清を集め、例えば、固相上に固定化した免疫原を使用した固相免疫アッセイ等の免疫アッセイにより免疫原に対して滴定する。104以上のポリクローナル抗血清を選択し、競合結合免疫アッセイを使用して、未処理のタンパク質、又は他の生物からの他の同種タンパク質に対する交差反応性を試験する。特定のモノクローナル及びポリクローナル抗体及び抗血清は、通常、少なくとも約0.1mM、更には少なくとも1μM、好ましくは少なくとも灼く0.1μM又はそれより良好な、最も好ましくは0.01μM又はそれより良好なKDで結合する。
【0113】
免疫原を含む、本発明の幾つかのタンパク質は、対象となるタンパク質と特異的又は選択的に結合する抗体を産生するために使用することができる。組換えタンパク質は、モノクローナル又はポリクローナル抗体を産生するための好ましい免疫原である。表1〜14に記載された遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を含むもの等の、天然のタンパク質は又、純粋な、又は純粋でない形態の何れかで使用することができる。本明細書に記載のタンパク質配列を使用して製造された合成ペプチドは又、タンパク質に対する抗体の産生のための免疫原として使用することができる。組換えタンパク質は、真核生物又は原核生物細胞中で発現され、一般的に前述の通り生成される。次いで、生成物を、抗体を産生することができる動物に注入する。モノクローナル又はポリクローナル抗体の何れもが、タンパク質を測定するための免疫アッセイにおいて使用されるために生成される。
【0114】
ポリクローナル抗体を産生する方法は、当業者に既知である。即ち、免疫原、好ましくは精製タンパク質をアジュバントと混合し、動物を免疫する。免疫原調整物に対する動物の免疫応答を、試験採決によって監視し、対象となるポリペプチドに対する反応性の力価を測定する。免疫原に対する抗体の適切に高い力価が得られた時に、動物から血液を集め、抗血清を調製する。必要であれば、抗血清を、タンパク質に対する反応性に富む抗体に分画することができる(Harlow and Lane,同上を参照)。
【0115】
モノクローナル抗体は、当業者に周知の種々の技法を使用して得ることができる。典型的には、所望の抗原で免疫した動物由来の脾臓細胞を、一般的にはミエローマ細胞と融合することによって不死化する(Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol. 6:511−519 (1976)を参照)。不死化の他の方法には、例えば、エプスタインバーウイルス、癌遺伝子、又はレトロウイルス、又は当業界で周知の方法を使用した形質転換が含まれる。単一の不死化した細胞から発生したコロニーを、抗原についての所望の特異性及び親和性を有する抗体の生産のためにスクリーニングし、このような細胞によって産生された抗体の生産量は、脊椎動物宿主の腹腔への注入を含む、種々の技術によって向上させることができる。又、Huse, et al.,同上に概説されている一般的なプロトコールに従って、ヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体又はその結合フラグメントをコードするDNA配列を単離することができる。
【0116】
標的となるタンパク質に特異的な抗体が一旦得られると、種々の免疫アッセイ方法により、臨床医に利用できる、定量的及び定性的結果と共に、タンパク質を測定することができる。一般的な免疫学的及び免疫アッセイ手法の総説については、Stites,同上を参照されたい。更に、本発明の免疫アッセイは、Maggio Enzyme Immunoassay, CRC Press, Boca Raton, Florida (1980);Tijssen,同上;及びHarlow and Lane,同上に広範囲に概説されている、幾つかの構成の何れかにおいて実施することができる。
【0117】
ヒト試料において標的試料を測定するための免疫アッセイは、タンパク質(例えば、表1〜14に記載された遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を有するもの)又はその断片に対して産生されたポリクローナル抗血清を使用することができる。この抗血清は、異なるタンパク質に対する低い交差反応性を有し、このような交差反応性は、免疫アッセイで使用する前の免疫吸収によって除去される。
【0118】
B.免疫学的結合アッセイ
好ましい実施形態において、対象となるタンパク質は、幾つかの周知の免疫学的結合アッセイの何れかを使用して検出及び/又は定量化される(例えば、米国特許第4,366,241号、第4,376,110号、第4,517,288号、及び第4,837,168号参照)。一般的な免疫アッセイの概説については、Asai, Methods in Cell Biology Volume 37:Antibodies in Cell Biology, Academic Press, Inc. NY (1993);Sites,同上を参照されたい。免疫学的結合アッセイ(又は免疫アッセイ)は、通常、特異的に結合し、しばしば検体に固定化する「捕捉剤」を使用する(この場合は、本発明のポリペプチド、又はその抗原性サブ配列)。該捕捉剤は、検体と特異的に結合する部分である。好ましい実施形態において、該捕捉剤は、例えば、本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体である。該抗体は、当業者に周知であり、前述したような、種々の方法の何れかによって産生することができる。
【0119】
又、免疫アッセイは、しばしば、特異的に結合し、捕捉剤及び検体によって形成された結合複合体を標識するための標識薬剤を使用する。該標識薬剤は、それ自身、抗体/献体複合体を含む部分の1つである。又、標識薬剤は抗体/タンパク質複合体と特異的に結合する他の抗体を含む第三の部分であってもよい。
【0120】
好ましい実施形態において、標識薬剤は、標識を有する二次抗体である。又、二次抗体は、標識を欠失していてもよいが、二次抗体が誘導される種の抗体に特異的である、標識された三次抗体によって結合されている。二次抗体は、酵素標識したストレプトアビジン等の第三の標識分子が特異的に結合することができる、ビオチン等の検出可能な部分で修飾することができる。
【0121】
免疫グロブリンの定常領域と特異的に結合することのできる他のタンパク質、例えば、プロテインA又はプロテインGは又、標識薬剤として使用することができる。これらのタンパク質は、連鎖球菌の細胞壁の正常な成分である。それらは、様々な種に由来する免疫グロブリン定常領域との強力な非免疫原的反応性を示す(一般的に、Kronval, et al., J. Immunol., 111:1401−1406 (1973);及びAkerstrom, et al., J. Immunol., 135:2589−2542 (1985)を参照)。
【0122】
アッセイの間中、インキュベーション及び/又は洗浄手順は、各試薬の組み合わせの後に必要である。インキュベーション手順は、約5秒から数時間、好ましくは約5分〜約24時間の間で変化し得る。インキュベーション時間は、アッセイフォーマット、検体、溶液の容量、濃度等に依存する。通常、アッセイは、10℃〜40℃等の、室温の範囲を超えて実施することができるが、アッセイは、通常室温で実施される。
【0123】
1.非競合的アッセイフォーマット
組織試料からの対象となるタンパク質を検出するための免疫アッセイは、競合的又は非競合的の何れであってもよい。非競合的免疫アッセイは、捕捉された検体が直接的に測定されるアッセイである。好ましい、1種の「サンドイッチ」アッセイにおいては、例えば、捕捉剤(例えば、表1〜14に記載された遺伝子によってコードされるポリペプチドに特異的な抗体)は、それが固定化された固相に直接結合することができる。次いで、これらの固定化された抗体は、試験試料中に存在するポリペプチドを捕捉する。従って、ポリペプチドは、標識を有する二次抗体等の標識薬剤によって結合する。又、二次抗体は標識を欠失していてもよいが、二次抗体が誘導される種の抗体に特異的である、標識された三次抗体によって結合されている。二次抗体は、酵素標識したストレプトアビジン等の第三の標識分子が特異的に結合することができる、ビオチン等の検出可能な部分で修飾することができる。
【0124】
2.競合アッセイフォーマット
競合的アッセイにおいては、試料中に存在する検体(表1〜14に記載された遺伝子によってコードされるポリペプチド等)の量は、試料中に存在する検体によって捕捉剤(例えば、検体に特異的な抗体)から置換される(又は競合)、加えられる(外来性)検体の量を測定することによって間接的に測定される。1つの競合的アッセイにおいては、対象となるタンパク質の(この場合)既知の量を試料に添加した後、試料を捕捉剤、この場合は本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体と接触させる。抗体に結合する免疫原の量は、試料中に存在する免疫原の濃度に逆比例する抗体に結合する。特に好ましい実施形態において、抗体を固相上に固定化する。例えば、抗体に結合するポリペプチドの量は、タンパク質/抗体複合体中に存在する対象のタンパク質の量を測定するか、又は残存する未複合型タンパク質の量を測定することによって測定することができる。タンパク質の量は、標識タンパク質分子を供給することによって測定される。
【0125】
競合的結合フォーマットにおける免疫アッセイは、交差反応性判定のために使用することができる。例えば、対象となるタンパク質は固相上に固定化される。タンパク質は、固定化された抗原に対する抗血清の結合と競合するアッセイに加えられる。固定化されたタンパク質に対する抗血清の結合と競合する前述のタンパク質の性能を、対象となるタンパク質のものと比較する。前述のタンパク質についての交差反応性の割合を、標準的計算によって計算する。前述のタンパク質のそれぞれと10%未満の交差反応性を有する抗血清を選択し、貯蔵する。交差反応抗体は、考慮されるタンパク質(例えば、遠縁の相同体)を使用した免疫吸収によって貯蔵した抗血清から任意に除去される。
【0126】
次いで、免疫吸収された、貯蔵された抗血清を、前述の通り競合的結合免疫アッセイにおいて使用した分、本発明のタンパク質と考えられる第二のタンパク質を、免疫原と比較する。この比較を実施するため、2種のタンパク質を、広い濃度範囲においてそれぞれアッセイし、固定化したタンパク質に対する抗血清の結合を50%阻害するのに必要な各タンパク質の量を測定する。第二のタンパク質に必要な量が、本明細書の配列によって部分的にコードされるタンパク質の必要量より10倍以上低い場合、第二のタンパク質は、標的タンパク質からなる免疫原に対して生成される抗体に対して特異的に結合すると考えられる。
【0127】
3.他のアッセイフォーマット
特定の好ましい実施形態において、試料中の本発明のポリペプチドの存在を検出し、定量化するために、ウェスタンブロット分析が使用される。この技法は、一般的に、分子量に基づきゲル電気泳動によって試料タンパク質を分離し、分離されたタンパク質を適当な固相(例えば、ニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルター、又は誘導化ナイロンフィルター等)に転写し、対象となるタンパク質と特異的に結合する抗体と試料をインキュベーションすることを特徴とする。例えば、抗体は、固相上の対象となるポリペプチドと特異的に結合する。これらの抗体は、直接に標識化されるか、又は対象となるタンパク質に対する抗体に特異的に結合する標識化抗体(例えば、標識された羊抗−マウス抗体)を使用して後で検出してもよい。
【0128】
その他のアッセイフォーマットには、特定の分子(例えば、抗体)に結合し、封入された試薬又はマーカーを放出するように設計されたリポソームを使用する、リポソーム免疫アッセイ(LIA)が含まれる。次いで、放出された化学物質を、標準的な技法を使用して検出する(Monroe, et al., (1986) Amer. Clin. Prod. Rev.5:34−41)を参照)。
【0129】
4.標識
上記アッセイにおいて使用される、特定の標識又は検出可能な基は、アッセイで使用される抗体の特異的結合と有意に干渉しない限りは、本発明の重大な特徴ではない。検出可能な基は、検出可能な物理的又は化学的性質を有する任意の物質であってもよい。このような検出可能な標識は、免疫アッセイの分野で十分に開発されており、一般的に、このような方法において最も有用な標識を本発明に適用することができる。従って、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的又は化学的手段によって検出可能な任意の組み合わせである。本発明において有用な標識には、磁気ビーズ(例えばDynabeadsTM)、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン等)、放射標識(例えば、3H、125I、35S、14C、又は32P)、酵素(例えば、ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及びELISAにおいて通常に使用される他の酵素)、及び金コロイド又は着色ガラス又はプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズ等の比色標識が含まれる。
【0130】
標識は、当業界で周知の方法によって、所望のアッセイ成分と直接的又は間接的に結合してもよい。前述の通り、必要とされる感度、化合物との結合の容易性、安定性の要求、利用可能な器具、及び廃棄設備に依存する方式の選択により、広範囲の標識が使用される。
【0131】
非放射標識は、しばしば間接的な手段によって結合される。又、分子は、シグナル発生化合物に直接的に、酵素又は蛍光化合物との結合によって結合することができる。種々の酵素及び蛍光化合物が、本発明の方法に使用することができ、当業者に周知である(使用される、種々の標識又はシグナル生成システムについては、例えば、米国特許第4,391,904号を参照)。
【0132】
標識を検出する手段は、当業者に周知である。従って、例えば、方式が放射方式である場合、検出のための手段には、オートラジオグラフィーにおけるようなシンチレーションカウンター、又は写真用フィルムが含まれる。標識が蛍光標識である場合、適当な波長の光で蛍光色素を励起し、得られる蛍光を検出することによって検出することができる。蛍光は、写真用フィルムを使用し電荷結合素子(CCD)又は光電子増倍管等を使用することによって視覚的に検出することができる。同様に、酵素的標識は、酵素のための適切な基質を供給し、得られた反応生成物を検出することによって検出することができる。最終的に単一の比色標識は、標識に関連する色を観察することによって直接検出することができる。従って、種々のディップスティック法において、結合した金はしばしばピンクに見えるが、結合したビーズはビーズの色に見える。
【0133】
あるアッセイフォーマットは、標識された成分を必要としない。例えば、凝集アッセイは、標的抗体の存在を検出するために使用することができる。この場合は、抗原をコーティングした粒子が、標的抗体を含む試料によって凝集する。このフォーマットにおいては、標識化される成分はなく、標的抗体は単純な外観検査によって検出される。
【0134】
VI.本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドの調節物質のスクリーニング
本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドの調節物質、即ち、ポリペプチド又はポリヌクレオチド発現の活性又は調節物質の作用物質又は拮抗物質は、気分障害又は精神病性障害を含む、幾つかのヒトの疾患の処置に有用である。作用物質、拮抗物質、又は本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現を修飾する、他の物質の投与は、気分障害又は精神病性障害に罹患している患者の治療に使用することができる。
【0135】
A.スクリーニング方法
細胞、特に哺乳動物、特にヒト細胞内で、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドの発現又は活性のレベルを修飾する物質を同定するために、幾つかの異なるスクリーニングプロトコールを使用することができる。大まかに言えば、スクリーニング方法は、例えば、本発明のポリペプチドに結合することによってポリペプチドの活性を修飾するか、ポリペプチドへの阻害剤の結合を修飾するか、ポリペプチドの発現を活性化する物質を同定するための多数の薬剤をスクリーニングすることを特徴とする。
【0136】
1.結合アッセイ
予備的なスクリーニングは、本発明のポリペプチドに結合することができる薬剤を、このようにして同定された薬剤の少なくとも幾つかがポリペプチド活性の調節物質であるようにして、スクリーニングすることによって実施することができる。結合アッセイは、通常、本発明のポリペプチドを1つ以上の試験薬剤と接触させ、タンパク質と試験薬剤とが結合複合体を形成するのに十分な時間放置することを特徴とする。形成される任意の結合複合体は、幾つかの確立された分析技法の何れかを使用して検出することができる。タンパク質結合アッセイには、未変性SDS−ポリアクリルアミドゲルにおける共沈物、共移動物、ウェスタンブロットにおける共移動物を測定する方法(例えば、Bennet and Yamamura, (1985) “Neurotransmitter, Hormone or Drug Receptor Binding Methods,” Neurotransmitter Receptor Binding (Yamamura, H.L., et al., eds.), pp.61−89)が含まれるが、これらに限定されない。このようなアッセイにおいて利用されるタンパク質は、天然に発現するもの、クローニングされたもの、又は合成されたものであってもよい。
【0137】
結合アッセイは、例えば、本発明のポリペプチドと相互作用する内在性タンパク質を同定するのに有用である。例えば、本発明のポリペプチドと結合する抗体、受容体又は他の分子は、結合アッセイにおいて同定することができる。
【0138】
2.発現アッセイ
特定のスクリーニング方法には、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現を、上方又は下方調整する化合物についてのスクリーニングが含まれる。このような方法は一般的に、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを発現する1つ以上の細胞と試験化合物を接触させる、細胞に基づいたアッセイを実施し、次いで発現(転写、翻訳産物、又は触媒産物)の上昇又は減少を検出することを含む。
【0139】
ポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現は、幾つかの異なる方法で検出することができる。後述の通り、細胞内における本発明のポリヌクレオチドの発現レベルは、本発明のポリヌクレオチドの転写物と特異的にハイブリダイズするプローブを使用して、細胞内で発現するmRNAを調査することによって検出することができる。調査は、細胞を溶解し、ノーザンブロットを実施するか、細胞を溶解せずに、in situハイブリダイゼーション技法を使用することによって実施することができる。又、本発明のポリペプチドは、細胞溶解物を、本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体を使用して調査する、免疫学的方法を使用して検出することができる。
【0140】
その他の細胞に基づくアッセイは、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを発現しない細胞を使用して実施する。特定のこれらのアッセイは、検出可能な産物をコードするレポーター遺伝子と動作可能に結合した、本発明のポリヌクレオチドのプロモーターを含む異種核酸構築物を使用して実施される。幾つかの異なるレポーター遺伝子を使用することができる。幾つかのレポーターは、本質的に検出可能である。このようなレポーターの具体例は、蛍光検出器で検出することができる蛍光を放射する緑色蛍光タンパク質である。他のレポーターは、検出可能な産物を生成する。このようなレポーターは、しばしば酵素である。具体的な酵素レポーターには、β−グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT);(Alton and Vapnek (1979) Nature 282:864−869)、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びアルカリホスファターゼ(Toh, et al., (1980) Eur. J. Biochem. 182:231−238;及びHall, et al., (1983) J. Mol. Appl. Gen. 2:101)が含まれるが、これらに限定されない。
【0141】
これらのアッセイにおいて、レポーター構築物を含む細胞を試験化合物と接触させる。それと結合することによってプロモーターを活性化するか、又はプロモーターを活性化する分子を産生するカスケードを誘導する試験化合物は、検出可能なレポーターの発現を引き起こす。他の特定のレポーターアッセイは、本発明のポリヌクレオチド、及びそれに作動可能に結合したレポーターの発現を活性化する転写制御エレメントを含む異種構築物を含む細胞を使用して実施される。又、ここで、レポーターの発現を活性化する転写制御エレメントに結合するか、又はレポーターの発現を活性化するための転写制御エレメントに結合する薬剤の形成を誘導する薬剤は、レポーターの発現と関連するシグナルの生成によって同定することができる。
【0142】
発現又は活性のレベルをベースライン値と比較することができる。前述の通り、ベースライン値は、対照集団についての発現レベルの代表値である、対照試料についての値、又は統計的な値であってもよい。発現レベルは又、陰性対照としての本発明のポリヌクレオチドを発現しない細胞について測定することができる。さもなければ、このような細胞は、一般的に、試験細胞と遺伝的に同一である。
【0143】
種々の異なる種類の細胞を、レポーターアッセイに使用することができる。本発明の内在性ポリペプチド又はポリヌクレオチドを発現する細胞には、例えば、小脳、前帯状領域、又は背面前頭葉皮質を含む脳細胞が含まれる。本発明のポリヌクレオチドを内在的に発現する細胞は原核生物であってもよいが、好ましくは真核生物である。真核生物は、組換え核酸構築物を含む細胞を生成するために使用される細胞の何れであってもよい。具体的な真核細胞には、酵母、COS、CHO及びHeLa細胞系及び幹細胞、例えば、神経幹細胞等の種々の高等真核細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
レポーター構築物を欠失する細胞を使用するか、又はレポーター構築物を含む細胞を試験化合物と接触させないことによる併発反応を実施することを含む、観察される活性が信頼できることを保証するための種々の管理を実施することができる。化合物は又、以下の記載する通り更に認証される。
【0145】
3.触媒活性
本発明のポリペプチドの触媒活性は、酵素産物の生産を測定することにより、又は基質の消費を測定することにより測定することができる。活性は、触媒速度、又は基質と結合するポリペプチドの能力(Km)、又は触媒産物の放出能力(Kd)の何れかを意味する。
【0146】
本発明のポリペプチドの活性の分析は、一般的な生化学的分析に基づき実施される。このようなアッセイには、細胞をベースとするアッセイ、並びに精製又は部分精製されたポリペプチド又は粗細胞溶解物を伴うインビトロアッセイが含まれる。アッセイは一般的に、基質の既知量を供給し、時間を関数として産物を定量化することを伴う。
【0147】
4.検証
以前のスクリーニング方法の何れかによって最初に同定された薬剤を、視覚的な活性を検証するために更に試験することができる。好ましくは、このような研究は適切な動物モデルを使用して実施される。このような方法の基礎的なフォーマットは、初期のスクリーニングの際に同定されたリード化合物を、ヒトのモデルとなる動物に投与し、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現又は活性が実際に上方制御されているかどうかを判定することを含む。バリデーション試験で使用する動物モデルは、一般的にあらゆる種類の哺乳動物である。好適な動物の具体的な例には、霊長類、マウス、ラットが含まれるが、これらに限定されない。
【0148】
5.動物モデル
精神障害の動物モデルもまた、調節物質についてのスクリーニングにおいて使用される。一実施形態において、精神分裂病、又はうつ等のその他の精神障害のラットのモデルが、スクリーニングのために使用される。一実施形態において、ショウジョウバエモデル等の無脊椎動物が使用され、本明細書で開示されるヒト遺伝子のショウジョウバエ相同分子種についてのスクリーニングに使用することができる。他の実施形態において、遺伝子ノックアウトを含むトランスジェニック動物技術、例えば、適切な遺伝子標的ベクターを使用した同種組換え、又は遺伝子過剰発現は、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの欠乏、減少又は増加した発現をもたらすであろう。同じ技術は、ノックアウト細胞の製造にも応用することができる。所望の時には、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの組織特異的発現又はノックアウトが必要な場合がある。このような方法により生成されたトランスジェニック動物は、精神障害の動物モデルとしての使用が見出され、精神障害の調節物質についてのスクリーニングにおいて有用である。
【0149】
ノックアウト細胞又はトランスジェニックマウスは、相同的組換えによる、マウスゲノムの内在性遺伝子部位へのマーカー遺伝子又は他の異種遺伝子の挿入により製造することができる。このようなマウスは又、本発明の内在性ポリヌクレオチドをポリヌクレオチドの変異バージョンと置換することにより、又は内在性ポリヌクレオチドを例えば発癌物質にさらすことによって変異させることにより、製造することができる。
【0150】
適切な幹細胞の開発のため、DNA構築物を、胚幹細胞の核に導入する。新規に設計された遺伝的障害を含む細胞を、受け取るメスに再移植される、宿主のマウスの胚に注入する。これらの胚の幾つかは、変異細胞系から部分的に由来する生殖細胞を有するキメラマウス中で発生する。従って、キメラマウスを育種することにより、導入された遺伝的損傷を含むマウスの新規の系を得ることが可能である。キメラ標的マウスは、Hogan, et al., Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988);及びTeratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach, Robertson, ed., IRL Press, Washington, D.C., (1987)に従って得ることができる。
【0151】
B.本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの調節物質
本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの調節物質として試験される薬剤は、任意の低分子量の化合物であっても、タンパク質、糖、核酸又は脂質糖の生物学的存在であってもよい。又、調節物質は、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの遺伝的に変形したバージョンであってもよい。通常、試験化合物は、低分子量分子及びペプチドである。基本的に、任意の化合物は、本発明のアッセイにおける潜在的な調節物質又はリガンドとして使用することができるが、殆どの場合、水性又は有機(特にDMSO−をベースとするもの)溶媒に溶解することができる化合物が使用される。アッセイは、アッセイ手順を自動化し、大きな化学ライブラリーをスクリーニングするように設計され、通常、平行して実施される、アッセイに対する好都合な起源からの化合物を供給する。Sigma(米国ミズーリ州セントルイス)、Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)、Sigma−Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)、Fluka Chemika−Biochemica Analytika(スイス ブーフス)等を含めた化合物の多くの供給業者が存在することが理解されたい。調節物質には又、本発明のmRNAのレベル(例えば、アンチセンス分子、リボザイム、DNAザイム等)、又はmRNAからの転写レベルを減少するように設計された薬剤が含まれる。
【0152】
好ましい一実施形態において、ハイスループットスクリーニング法は、多くの潜在的な治療化合物を含む、化学又はペプチドライブラリーの組み合わせを供給することを特徴とする。次いで、このような「組み合わせ化学ライブラリー」又は「リガンドライブラリー」を、所望の特徴的活性を示す、これらのライブラリーメンバーを同定するために、本明細書で開示するように、1つ以上のアッセイでスクリーニングする。このようにして同定される化合物は、通常の「リード化合物」として供給され、又はそれ自身が潜在的又は実際の治療薬として使用される。
【0153】
組み合わせ化学ライブラリーは、化学合成又は生物学的合成の何れか、試薬等の幾つかの化学的な構成要素によって生成される、種々の化合物の集まりである。例えば、ポリペプチドライブラリー等の組み合わせの化学ライブラリーは、所定の長さ(即ち、ポリペプチド化合物におけるアミノ酸の数)の化合物について、全ての可能な方法における化学的基礎単位(アミノ酸)を組み合わせることによって形成される。何百万の化合物が、化学的基礎単位のこのような組み合わせ混合によって合成することができる。
【0154】
組み合わせ化学ライブラリーは当業者に周知である。このような組み合わせ化学ライブラリーにはペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号、Furka, Int. J. Pept. Prot. Res. 37:487−493 (1991)及びHoughton, et al., Nature 354:84−88 (1991)を参照)が含まれるが、これらに限定されない。化学的多様性ライブラリーを生成するための化学を使用してもよい。このような化学には、ペプチド(例えば、PCT出願公開WO91/19735)、コードされたペプチド(例えば、PCT出願公開WO93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、PCT出願公開WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン及びジペプチド等のディバーソマー(Hobbs, et al., Proc. Nat. Proc. Acad. Sci. USA 90:6906−6913 (1993))、ビニル性ポリペプチド(Hagihara, et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:6568 (1992))、グルコース付着物を有する非ペプチド性ペプチドドメイン(Hirschmann, et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:9217−9218 (1992))、低分子化合物ライブラリーの類似有機合成(Chen, et al., J. Amer. Chem. Soc. 116:2661 (1994))、オリゴカルバメート(Cho, et al., Science 261:1303 (1993)、及び/又はペプチジルホスフェート(Campbell, et al., J. Org. Chem, 59:658 (1994))、核酸ライブラリー(Ausubel, Berger及びSambrook、全て同上)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号参照)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughn, et al., Nature Biotechnology, 14(3):309−314 (1996)及びPCT/US96/10287を参照)、炭水化物ライブラリー(例えば、Liang, et al., Science, 274:1520−1522 (1996)及び米国特許第5,593,853明細書)、低分子量有機分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN, Jan 18, page 33 (1993);イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノン及びメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号及び第5,519,134号、モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、第5,288,514号等)が含まれるが、これらに限定されない。
【0155】
組み合わせライブラリーの調製装置は市販されている(例えば、357MPS、390MPS、Advanced Chem Tech[米国ケンタッキー州ルイビル];Symphony、Rainin[米国マサチューセッツ州ウーバン];433A、Applied Biosystems[米国カリフォルニア州フォスターシティー];9050 Plus、Millipore[米国マサチューセッツ州ベッドフォード])。更に、多数の組み合わせライブラリー自身が市販されている(例えば、ComGenex[米国ニュージャージー州プリンストン];Tripos, Inc.[米国ミズーリ州セントルイス];3D Pharaceuticals[米国ペンシルバニア州エクストン];Martek Bioscience[米国メリーランド州コロンビア]等を参照)。
【0156】
C.固相及び可溶性ハイスループットアッセイ
本発明のハイスループットアッセイにおいては、一日で、数千の異なる調節物質をスクリーニングすることが可能である。特に、マイクロタイタープレートの各ウェルは、選択された潜在的な調節物質に対する別々のアッセイを実施するために使用することができ、又は濃度又はインキュベーション時間の効果を観察する場合、各5〜10のウェルが単一の調節物質を試験することができる。従って、単一の標準的マイクロタイタープレートは、約100(例えば、96)種類の調節物質をアッセイすることができる。1536枚のウェルプレートを使用する場合、単一のプレートは、約100〜約1550種類の異なる化合物を容易にアッセイすることができる。1日あたり幾つかの異なるプレートをアッセイすることが可能であり、約6,000〜20,000種の異なる化合物についてのアッセイスクリーニングは、本発明の集積システムを使用することが可能である。最近になって、試薬を取り扱うためのマイクロ流体手法が開発されてきた。
【0157】
対象となる分子は固体成分に、直接又は間接的に、共有結合又は非共有結合、例えばタグによって結合することができる。タグは、任意の種々の成分であってもよい。一般的に、タグと結合する分子(タグバインダー)は固体に固定されており、タグを付けた対象となる分子が、タグ及びタグバインダーの相互作用によって固体に付着する。
【0158】
文献で詳細に説明されている既知の分子相互作用に基づき、幾つかのタグ及びタグバインダーを使用することができる。例えば、タグが天然のバインダー、例えば、ビオチン、プロテインA又はプロテインGを有する場合、適切なタグバインダー(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、免疫グロブリンのFc領域等)と共に使用することができる。ビオチン等の天然のバインダー、及び適切なタグバインダーを有する分子(SIGMA Immunochemicals 1998カタログSIGMA,St.Louis MOを参照)に対する抗体は、広く利用することができる。
【0159】
同様に、ハプテン性又は抗原性の化合物を、タグ/タグバインダー対を形成するために適切な抗体と組み合わせて使用することができる。何千もの特異的抗体が市販されており、多くの更なる抗体が文献で説明されている。例えば、一つの一般的な構成において、タグは一次抗体であり、タグバインダーは、一次抗体を認識する二次抗体である。抗体−抗原相互作用に加え、細胞膜受容体の作用物質及び拮抗物質等の、受容体−リガンド相互作用も、タグ及びタグバインダー対として適している(例えば、トランスフェリン、c−kit、ウイルス受容体リガンド、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン受容体及び抗体、カドヘリンファミリー、インテグリンファミリー、セレクチンファミリー等の受容体−リガンド相互作用、例えば、Pigott & Power, The Adhesion Molecule Facts Book I (1993)を参照)。同様に、毒素及び毒物、ウイルスエピトープ、ホルモン(例えば、鎮痛剤、ステロイド等)、細胞内受容体(例えば、ステロイド、甲状腺ホルモン、レチノイド及びビタミンD等の種々の低分子リガンド、ペプチドの効果を媒介するもの)、薬剤、レクチン、等、核酸(直鎖及び感情ポリマー構成の両方)、オリゴ糖、タンパク質、リン脂質及び抗体は、種々の細胞受容体と相互作用することができる。
【0160】
ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリーレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミド、及びポリアセテートも、適切なタグ又はタグバインダーを形成することができる。その他多くのタグ/タグバインダーも、本明細書に記載のアッセイシステムにおいて有用であり、このことは、この開示内容のレビューにより当業者に明らとなる。
【0161】
ペプチド、ポリエーテル等の一般的なリンカーは、約5〜200アミノ酸のポリ−Gly配列等のポリペプチド配列を含む。このような柔軟なリンカーは、当業者に既知である。例えば、ポリ(エチレングリコール)リンカーは、Shearwater Polymers, Inc.(米国アラバマ州ハンツビル)から得られる。これらのリンカーは、場合によりアミド結合、スルフィドリル結合、又はヘテロヘテロ官能性結合を有する。
【0162】
バインダーは、現在利用できる種々の方法の何れかを使用して個体基板に固定される。固体基板は、通常、誘導体化され、又は基質の全て又は一部を、バインダータグの一部と反応性を有する化学置換基を表面に固定する化学試薬にさらすことにより機能的にされる。例えば、より長い鎖部分と結合するのに適した置換基には、アミン、ヒドロキシ、チオール、チオール及びカルボキシル基が含まれる。アミノアルキルシラン及びヒドロキシアルキルシランは、ガラス表面等の、種々の表面を機能的にするために使用することができる。このような固相バイオポリマーアレイの構築は文献に十分に開示されている(例えば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149−2154 (1963)(例えば、ペプチドの合成固相を開示する);Geysen, et al., J. Immun. Meth. 102:259−274 (1987)(ピン上の固相成分の合成を開示する);Frank and Dorning, Tetrahedron 44:60316040 (1988)(セルロースディスク上の種々のペプチド配列の合成を開示する);Fodor, et al., Science, 251:767−777 (1991);Sheldon, et al., Clinical Chemistry 39(4):718−719 (1993);及びKozal, et al., Nature Medicine 2(7):753759 (1986)(全て、固体基板へ固定化されたバイオポリマーのアレイを開示する)を参照)。タグバインダーを基板へ固定化するための非化学的手法には、加熱、UV照射よる架橋等が含まれる。
【0163】
本発明は、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現又は活性を修飾することができる化合物を高スループットの形式で同定するインビトロアッセイを提供する。好ましい実施形態において、本発明の方法にはこのような対照反応が含まれる。記載された各アッセイ形式について、調節物質を含まない「調節物質なし」の対照反応は、結合活性のバックグランドレベルを供給する。
【0164】
幾つかのアッセイにおいては、アッセイ成分が適切に機能することを保証するための陽性対照を有することが好ましい。少なくとも2種類の陽性対照が適している。第一に、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの既知の活性化因子を、アッセイの一試料とインキュベートし、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの、上昇した発現レベル又は活性から得られるシグナルにおける上昇を、本発明に従って測定する。第二に、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの既知の阻害剤を加え、発現又は活性についてのシグナルの得られる減少を同様に測定することができる。
【0165】
D.コンピュータベースのアッセイ
本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性を調節する化合物のための更に他の方法には、そのアミノ酸又はヌクレオチド配列によりコードされる構造情報に基づき、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの三次元構造を生成するためにコンピュータシステムを使用する、コンピュータ支援薬物設計が含まれる。入力した配列は、予め確立したアルゴリズムとコンピュータプログラム内で直接相互作用し、分子の二次、三次及び四次構造モデルを得る。本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの潜在的受容体又は結合パートナーについて同様の分析を実施することができる。次いで、例えば、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを結合する能力を有する構造の領域を同定するための試験を行う。次いで、これらの領域を、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドと結合するポリペプチドを同定するために使用する。
【0166】
タンパク質の三次元構造モデルを、少なくとも10アミノ酸残基のタンパク質のアミノ酸配列、又は潜在的な受容体をコードする、関連核酸配列をコンピュータシステムに入力することによって生成する。核酸配列によってコードされるアミノ酸配列は、タンパク質の構造情報をコードする、タンパク質の一次配列又はサブ配列を表す。アミノ酸配列の少なくとも10残基を、コンピュータキーボード、コンピュータ読み取り可能なディスク、テープ、カートリッジ及びチップ)、光媒体(例えばCD ROM)、インターネット差異母により配信される上方、及びRAMによりコンピュータシステムに入力する。次いで、タンパク質の三次元構造モデルを、当業者に既知のソフトウェアを使用して、アミノ酸配列の相互作用及びコンピュータシステムにより生成する。
【0167】
アミノ酸配列は、対象となるタンパク質の二次、三次及び四次構造を形成するために必要な情報をコードする一次構造を表す。ソフトウェアは構造モデルを生成するための一次配列によってコードされる特定のパラメータを見る。これらのパラメータは「エネルギーターム(energy term)」を意味し、主として、静電ポテンシャル、疎水性ポテンシャル、溶媒に接触可能な表面、及び水素結合が含まれる。二次エネルギータームにはファンデルワールス力が含まれる。生物学的分子は、累積的な方法におけるエネルギータームを最小化する構造を形成する。従って、コンピュータプログラムは、一次構造又はアミノ酸配列によってコードされ、二次構造モデルを形成する用語として使用される。
【0168】
次いで、二次構造によってコードされるタンパク質の三次構造を、二次構造のエネルギータームを基礎として形成する。この点で、ユーザーは、タンパク質が膜に結合しているか、可溶性であるか、身体内の位置、及び細胞の位置、例えば、細胞質、表面、又は核等の追加の変数を入力することができる。二次構造のエネルギータームを伴うこれらの変数は、三次構造のモデルを形成するために使用される。三次構造を形づくることにおいて、コンピュータプログラムは、二次構造の疎水性表面、及び二次構造の親水性表面に適合する。
【0169】
構造が一旦生成されると、潜在的なリガンド結合領域はコンピュータシステムによって同定される。潜在的なリガンドについての三次元構造は、前述の通り、アミノ酸又はヌクレオチド配列、又は化学構造を入力することによって生成される。次いで、潜在的なリガンドの三次元構造を、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドと対比し、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの結合部位を同定する。タンパク質及びリガンドの結合親和性をエネルギータームを使用して測定し、リガンドが、タンパク質との結合能力を向上させるかどうかを判定する。
【0170】
本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドをコードする遺伝子の突然変異、多型、変異、対立遺伝子及び種間相同体をスクリーニングするためにも、コンピュータシステムが使用される。このような突然変異は、病状又は遺伝形質と関連し、診断に使用することができる。前述の通り、GeneChipTM及び関連技術は、突然変異、多型、変異、対立遺伝子及び種間相同体をスクリーニングするために使用することができる。変異が一旦同定されると、診断アッセイは、このような変異遺伝子を有する患者を同定するために使用することができる。本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの変異の同定は、本発明のポリペプチドの第一のアミノ酸配列(又は、本発明のポリペプチドをコードする第一の核酸配列)、対象となるアミノ配列と、例えば、少なくとも60%、必要に応じて少なくとも70%又は85%の同一性を有するアミノ酸配列、又はそれらの保存的に修飾されたバージョンの入力を必要とする。前述の通り、配列をコンピュータシステムに入力する。次いで、第一の核酸又はアミノ酸配列を、実質的に第一の配列と同一である第二の核酸又はアミノ酸配列と比較する。前述した方法で、第二の配列をコンピュータシステムに入力する。第一及び第二の配列を一旦比較すると、該配列の間の相違点が同定される。このような配列は、本発明のSNPs及び/又はハプロイドを含む種々のポリヌクレオチド中の対立遺伝子の相違、及び、病状と遺伝形質とが関連する突然変異を表わすことができる。
【0171】
VII.組成物、キット及び集積システム
本発明は、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチド、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに特異的な抗体等を使用した、本明細書に記載のアッセイを実施するための組成物、キット及び集積システムを提供する。
【0172】
本発明は、固相アッセイで使用されるアッセイ組成物を提供する。このような組成物には、例えば、固相に固定化された本発明の1つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド、及び標識試薬が含まれてもよい。何れの場合にも、アッセイ組成物には、ハイブリダイゼーションに好ましい追加の試薬が含まれてもよい。本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現又は活性の調節物質が、これらのアッセイ組成物中に含まれてもよい。
【0173】
本発明は又、本発明の治療又は診断方法を実施するためのキットも提供する。これらのキットは通常、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに特異的に結合する抗体、プローブの存在を検出するための標識を含む。これらのキットには、本発明のポリペプチドをコードする幾つかのポリヌクレオチド配列が含まれる場合がある。キットには、前述の何れかの組成物が含まれてもよく、場合により更に、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現に対する、又は本発明のポリペプチドの活性に対する影響をアッセイする高スループットの方法を実施するための取扱説明書、1つ以上の容器又は区画(例えば、プローブ、標識等を保持するための)、本発明のポリペプチドの発現又は活性の対照調節物質、キット成分を混合するためのロボット電機子等の追加の構成品が含まれてもよい。
【0174】
本発明は又、本発明のポリペプチドの発現又は活性における効果のための潜在的な調節物質のハイスループットなスクリーニングのための集積システムが提供される。該システムは、典型的には、液体を起源から目標にまで移すロボットのような電機子、ロボットのような電機子を制御するコントローラー、標識検出器、標識の検出を記録するデータ貯蔵ユニット、反応混合物、又は固定化された核酸又は固定化部分を含む基質ウェルを含むマイクロタイターシャーレが含まれる。
【0175】
いくつかのロボット液体移動システムを利用することができ、又は既存の成分から容易に製造することができる。例えば、Microlab 2200(Hamilton;米国ネバダ州レノ)ピペッティングステーションを使用したZymate XP(Zymark Corporation;米国マサチューセッツ州ホプキントン)自動化ロボットを、幾つかの平行な同時のSTAT結合アッセイをセットアップするための96ウェルのマイクロタイタープレートに、平行している試料を移動するために使用することができる。カメラ、又は他の記録装置(例えば、光ダイオード及びデータ貯蔵装置)により観察される(及び、必要に応じて記録される)光学イメージは、任意に、本明細書の実施形態の何れかにおいて更に処理される。例えば、画像をデジタル化し、コンピュータ上に画像を貯蔵し、分析する。種々の市販の周辺装置及びソフトウェアは、光学画像のデジタル化、貯蔵及び分析に利用でき、例えば、PC,MACINTOSH(登録商標)、UNIX(登録商標)をベースとするコンピュータ(例えば、SUN(登録商標)ワークステーション)を使用する。幾つかの伝統的システムは、検体の領域から当業界で通常に使用されている、冷却した電荷結合素子(CCD)カメラに光を運ぶ。CCDカメラには、画素(ピクセル)のアレイが含まれる。試料由来の光はCCD上で画像化される。試料の領域に関連する特定の画素(例えば、生物学的ポリマーのアレイ上の個々のハイブリダイゼーション部位)をサンプリングし、各位置についての光強度読み取りを得る。複数のピクセルは、上昇した速度に平行して有する。本発明の装置及び方法は、例えば、蛍光又は暗視野顕微鏡技法により、任意の試料を観察するために容易に使用される。レーザービームも使用することができる。
【0176】
VIII.投与及び医薬組成物
本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの調節物質(例えば、拮抗物質又は作用物質)は、インビボで分子の活性を修飾するために哺乳動物被験体に直接投与することができる。治療すべき組織と最終的に接触する調節物質化合物を導入するために、当業者に周知である、正常な任意の経路によって投与される。特定の組成物を投与するために、1つ以上の経路を使用することができるが、特定の経路は、しばしば、他の経路よりも、更に即効性で更に効果的な反応をもたらし得る。
【0177】
治療することができる疾患には、Morrison, DSM−IV Made Easy, 1995からの対応する参照番号を含む以下のもの、即ち、緊張性、亜慢性精神分裂病(295.21);緊張性、慢性精神分裂病(295.22);緊張性で急激な悪化を伴う亜慢性精神分裂病(295.23);緊張性で急激な悪化を伴う慢性精神分裂病(295.24);寛解における緊張性精神分裂病(295.55);特定されていない、緊張性精神分裂病(295.20);組織が破壊される、亜慢性精神分裂病(295.11);組織が破壊される、慢性精神分裂病(295.12);急激な悪化を伴う、組織が破壊される、亜慢性精神分裂病(295.13);急激な悪化を伴う、組織が破壊される、慢性精神分裂病(295.14);寛解における、組織が破壊される精神分裂病(295.15);特定されていない、組織が破壊される精神分裂病(295.10);妄想性の亜慢性精神分裂病(295.31);妄想性の慢性精神分裂病(295.32);急激な悪化を伴う、妄想性の亜慢性精神分裂病(295.33);急激な悪化を伴う、妄想性の慢性精神分裂病(295.34);寛解における妄想性の精神分裂病(295.35);特定されていない、妄想性精神分裂病(295.30);区別されていない、亜慢性精神分裂病(295.91);特定されていない、慢性精神分裂病(295.92);急激な悪化を伴う、特定されていない、亜慢性精神分裂病(295.32);急激な悪化を伴う、特定されていない、慢性精神分裂病(295.94);寛解における、区別されていない精神分裂病(295.95);特定されていない、区別されていない精神分裂病(295.90);慢性精神分裂病後遺症(295.62);急激な悪化を伴う、亜慢性精神分裂病後遺症(295.63);急激な悪化を伴う、慢性精神分裂病後遺症(295.94);寛解における、精神分裂病後遺症(295.65);特定されていない、精神分裂病後遺症(295.60);妄想障害(297.10);短期反応精神病(298.80);分裂病様障害(295.40)分裂情動性障害(295.70);感応精神障害(297.30);精神病性障害NOS(非定型精神病)(298.90);人格障害、偏執症(301.00);人格障害、分裂病様障害(301.20);人格障害、精神分裂病(301.22);人格障害、反社会的(301.70);人格障害、境界線(301.83)及び双極性障害、狂人、軽躁、胸腺機能不全又は循環病、薬剤誘導性大うつ病、分裂情動性障害、及び薬物誘導性精神病性障害を有する精神分裂病(偏執症、緊張病、妄想)を含む精神病性障害が含まれる。
【0178】
幾つかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの調節物質は、精神分裂病等の精神病性障害、双極性障害又は大うつ病等の気分障害を含む精神障害を処置するために有用な他の薬剤と組み合わせることができる。ある好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの調節物質と、米国特許第6,297,262号;第6,284,760号;第6,284,771号、第6,232,326;第6,187,752号;第6,117,890号;第6,239,162号又は第6,166,008号に開示されたような、精神分裂病、双極性障害又は大うつ病の治療に有用な少なくとも1種の化合物とを組み合わせて含む。
【0179】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。薬学的に許容される担体は、組成物を投与するために使用される特定の方法によって、投与される特定の組成物によって一部測定される。従って、多種多様の適切な、本発明の医薬組成物の製剤がある(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed, 1985)。
【0180】
本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現又は活性の調節物質(例えば、作用物質又は拮抗物質)は、単独で又はその他の好適な成分と組み合わせて、吸入を介して又は注射に有用な組成物中で投与されるエアゾール製剤(即ち、「噴霧」可能な製剤)に製造することができる。エアゾール製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の、加圧を許容する噴霧剤中に収納される。
【0181】
投与に適した製剤には、水性及び非水性溶媒、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び緩衝剤を等張にする溶質、及び沈殿防止剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び保存剤を含んでいてもよい、等張無菌溶媒が含まれる。本発明の実施において、組成物は、例えば、傾向的、経鼻的、局所的、静脈内、腹腔内又はくも膜下注射で投与することができる。化合物の製剤は、単一投与又は複数投与封入容器中に存在してもよい。溶液及び懸濁液は、前述の種類の無菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。調節物質は又、調製された食餌又は薬剤の一部として投与することもできる。
【0182】
本発明との関連で、患者に投与される濃度は、長時間にわたり、被験体中で有益な応答をもたらすのに十分であるべきである。何れかの患者についての経口投与の最適なレベルは、使用する特定の調節物質の有効性、年齢、体重、身体活動、患者の食餌、他の薬剤との可能な組み合わせ、精神障害の重症度を含む、種々の因子に依存するだろう。投与量は、特定の被験体における、特定の化合物又はベクターの投与を伴う、任意の有害な副作用の存在、性質、程度によって決定されるだろう。
【0183】
調節物質の有効量を決定するため、医師は調節物質の循環血漿レベル、調節物質の毒性、及び抗調節物質抗体の産生を評価することができる。一般的に、調節物質の投与量は、通常の被験体について、約1ng/kg〜10mg/kgである。
【0184】
投与のために、本発明の調節物質は、被験体の体重及び全体的な健康に適合するように、調節物質のLD50、および種々の濃度における調節物質の副作用によって決めた速度で投与することができる。投与は、単一回、又は分けた回数によって実施することができる。
【0185】
IX.遺伝子治療適用
ヒトの種々の疾患が、遺伝子が転写され、遺伝子産物が細胞内で生産されるように、遺伝子をヒト細胞に安定に導入することを特徴とする、治療的手法によって治療することができる。この手法によって治療を受け入れる疾患には、欠陥が単一又は複数の遺伝子であるものが含まれる。又、遺伝子療法は、後天性疾患及び他の病状の治療にも有用である。遺伝的治療及び後天性疾患に対する遺伝子療法の応用に関する考察については、Miller, Nature 357:455−460 (1992);及びMulligan, Science 260:926−932 (1993)を参照されたい。
【0186】
本発明に照らし、遺伝子療法は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドが関与する、種々の疾患及び/又は障害を標的とするために使用することができる。例えば、ポリヌクレオチドを含む化合物は、精神障害を処置することにおいて有効であるとして、本発明の方法によって同定することができる。これらのポリヌクレオチドの遺伝子療法による導入は、例えば、気分障害又は精神病性障害(例えば、精神分裂病)を含む精神障害を処置することができる。
【0187】
A.遺伝子送達のためのベクター
細胞又は器官への送達のため、本発明のポリヌクレオチドをベクターに組み込むことができる。このような目的のために使用されるベクターの具体例には、標的細胞中で核酸の発現を命令することができる発現プラスミドが含まれる。他の具体例については、このベクターは、核酸が標的細胞を形質転換することができるウイルスゲノム中に導入されたウイルスベクターシステムである。好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、所望の標的宿主細胞中で遺伝子の発現を命令することができる、発現及び制御配列に動作可能に結合している。従って、標的細胞内で適切な条件下、核酸を発現させることができる。
【0188】
B.遺伝子送達システム
核酸の発現に有用なウイルスベクターシステムには、例えば、天然又は組換ウイルスベクターシステムが含まれる。特定の用途に依存し、適切なウイルスベクターには、複製可能性、複製欠損性、及び条件付きで複製されるウイルスベクターが含まれる。例えば、ウイルスベクターは、ヒト遺伝子又はウシアデノウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、マウスの微小ウイルス(MVM)、HIV、シンドビズウイルス、及びレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスに限定されない)、及びMoMLVから誘導され得る。通常、対象となる遺伝子はこのようなベクターに挿入され、通常、ウイルスDNAを伴う遺伝子構築物のパッケージ、感受性宿主細胞の感染、及び対象となる遺伝子の発現を可能にする。
【0189】
本明細書で使用されるように、「遺伝子送達システム」は、本発明の核酸を標的細胞に送達するための任意の手段を意味する。本発明の幾つかの実施形態において、核酸を、DNA結合部分等の、適当な結合部分を通じて取り込み(例えば、コーティングしたピットの勧誘及びエンドソームの内部移行)を促進するための細胞受容体リガンドに核酸を結合する(Wu, et al., J. Biol. Chem. 263:14621−14624 (1988);WO92/06180)。例えば、核酸をポリリジン部分を通して、肝細胞のアシアロ糖タンパク質受容体のリガンドである、アシアロ−オロムコシドに結合することができる。
【0190】
同様に、本発明の核酸を含む、遺伝子構築物を封入するためのウイルスエンベロープは、特定の細胞内への受容体媒介エンドーシスを可能にするため、受容体リガンド又は受容体に特異的な抗体の付加により修飾することができる(例えば、WO93/20221、WO93/14188及びWO94/06923を参照)。本発明の幾つかの実施形態において、本発明のDNA構築物が、エンドサイトーシスを促進するために、アデノウイルス粒子等のウイルスタンパク質に結合する(Curiel, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88:8850−8854 (1991)。一実施形態において、本発明の分子結合体には、微小管阻害剤(WO/9406922)、インフルエンザウイルス血球凝集素様合成ペプチド(Plank, et al., J. Biol. Chem. 269:12918−12924 (1994)、及びSV40T抗原等の核局在化シグナル(WO93/19768)が含まれる。
【0191】
又、レトロウイルスは、本発明の核酸を細胞又は生物に導入するのに有用である。レトロウイルスベクターは、レトロウイルスを遺伝的に操作することによって産生される。レトロウイルスのウイルスゲノムはRNAである。感染により、このゲノムRNAはDNAコピーに逆転写され、高安定性及び高効率で形質導入細胞の染色体DNAに組み込まれる。組み込まれたDNAコピーはプロウイルスと呼ばれ、他の遺伝子のように、娘細胞によって遺伝する。野生型のレトロウイルスゲノム及びプロウイルスDNAは3種の遺伝子、gag、pol及びenv遺伝子を有し、2本の長い末端反復配列(LTR)に隣接する。gag遺伝子は、内部構造(ヌクレオキャプシド)タンパク質をコードし、pol遺伝子はRNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)をコードし;env遺伝子はウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする。5’及び3’LTRは転写、及びウイルス粒子RNAのポリアデニル化を促進する。5’LTRへの隣接は、ゲノム(tRNAプライマー結合部位))の逆転写、ウイルスRNAの粒子(Psi部位)への効率的な封入に必要な配列である(Mulligan, In:Experimental Manipulation of Gene Expression, Inouye (ed), 155−173 (1983);Mann, et al., Cell 33:153−159 (1983);Cone and Mulligan, Proceedings of the National Academy of Sciences, U.S.A., 81:6349−6353 (1984))。
【0192】
レトロウイルスベクターの構造は当業者に周知である。簡潔に述べると、キャプシド形成(又はレトロウイルスRNAの感染粒子へのパッケージ)に必要な配列は、ウイルスゲノムから欠落する場合、結果は、ゲノムRNAのキャプシド形成を阻止するシス活性欠損である。しかし、得られた変異体は、全てのウイルスタンパク質の合成を方向付けることができる。これらの配列が、染色体と安定して統合された変態ゲノムを含む細胞株と同時に除去されたレトロウイルスのゲノムは当業界で周知であり、レトロウイルスのベクターを構成するのに使用される。レトロウイルスベクターの調製及びそれらの使用は、例えば、欧州特許出願EPA0178220号;米国特許第4,405,712号、Gilboa Biotechniques 4:504−512)1986);Mann, et al., Cell 33:153−159 (1983);Cone and Mulligan Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6349−6353 (1984);Eglitis, et al., Biotechniques 6:608−614 (1988);Miller, et al., Biotecniques 7:981−990 (1989);Miller (1992),同上;Mulligan (1993),同上;及びWO92/07943を含む多くの文献に記載されている。
【0193】
レトロウイルスベクター粒子は、所望のヌクレオチド配列をレトロウイルスベクターに組換えにより挿入し、パッケージ細胞系を使用してレトロウイルスキャプシドタンパク質でベクターをパッケージングすることによって調製される。得られたレトロウイルスベクター粒子は、宿主細胞内で複製する能力がないが、所望のヌクレオチド配列を含むプロウイルス配列として宿主細胞ゲノムを組み込む能力を有する。結果として、例えば、患者は本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを製造することができ、それ故細胞を正常の表現形に回復する。
【0194】
レトロウイルス粒子の調製に使用されるパッケージング細胞系は、通常、パッケージに必要なウイルス構造タンパク質を生産するが、感染性ウイルス粒子を製造する能力がない、組換え哺乳動物組織培養細胞系である。一方、使用される、欠陥のあるレトロウイルスベクターは、これらの構造遺伝子を欠損するが、パッケージに必要な残りのタンパク質をコードする。パッケージング細胞系を調製するため、パッケージング部位が欠落した、所望のレトロウイルスの感染性クローンを構築することができる。この構築物を含む細胞は、全てのウイルスの構造タンパク質を発現するが、導入されたDNAは、パッケージングする能力がない。又、パッケージング細胞系は、細胞系を、適切なコア及びエンベロープタンパク質をコードする1つ以上の発現プラスミドで異質転換することにより産生することができる。これらの細胞において、gag、pol及びenv遺伝子は、同一又は異なるレトロウイルスに由来してもよい。
【0195】
本発明に好適な幾つかのパッケージング細胞系は又、先行技術でも使用可能である。これらの細胞系の具体例には、Crip、GPE86、PA317及びPG13(Miller, et al., J. Virol. 65:2220−2224 (1991)を参照)が含まれる。その他のパッケージング細胞系の例は、Cone and Mulligan, Proceedings of the National Academy of Sciences, USA, 81:6349−6553 (1984);Danos and Mulligan, Proceedings of the National Academy of Science, USA, 85:6460−6464 (1988);Eglitis, et al., (1998),同上;及びMiller (1990),同上に記載されている。
【0196】
キメラエンベロープタンパク質を有するレトロウイルスベクター粒子を産生できるパッケージング細胞系が使用され得る。或いは、PA317及びGPXパッケージング細胞系によって産生されるような、両種性又は異種指向性エンベロープタンパク質が、レトロウイルスベクターのパッケージングに使用され得る。
【0197】
本発明の幾つかの実施形態において、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子とハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチドが投与される。アンチセンスポリペプチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドとして供給することができる(例えば、Murayama, et al., Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 7:109−114 (1997)を参照)。アンチセンス核酸をコードする遺伝子も供給することができ;このような遺伝子は、当業者に既知の方法によって細胞に導入することができる。例えば、B型肝炎ウイルス(例えば、Ji, et al., J. Viral Hepat. 4:167−173 (1997)を参照)において、アデノ随伴ウイルス(例えば、Xiao, et al., Brain Res. 756:76−83 (1997)を参照)において、又はHVJ(センダイウイルス)−リポソーム遺伝子送達システム(例えば、Kaneda, et al., Ann. NY Acad. Sci. 811:299−308 (1977)を参照)を含むがこれらに限定されないその他の系において、ペプチドベクター(例えば、Vidal, et al., CR Acad. Sci III 32:279−287 (1997)を参照)、エピソーム又はプラスミドベクター中の遺伝子として(例えば、Cooper, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:6450−6455 (1997)、Yew, et al., Hum Gene Ther. 8:575−584 (1997)を参照)、ペプチド−DNA凝集体として(例えば、Niidome, et al., J. Biol. Chem. 272:15307−15312 (1997)を参照)、「ネイキッドDNA」として(例えば、米国特許第5,580,859号及び第5,589,466号を参照)、脂質ベクターシステム(例えば、Lee, et al., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst. 14:173−206 (1997)を参照)、ポリマーコーティングリポソーム(米国特許第5,213,804号及び第5,013,556号)、カチオン性リポソーム(Epand, et al., 米国特許第5,283,185号、第5,578,475号、第5,279,833号及び第5,334,761号)、ガス充填ミクロスフェア(米国特許第5,542,935号)、リガンド−標的封入高分子(米国特許第5,108,921号、第5,521,291号、第5,554,386号、及び第5,166,320号)において、ウイルスベクターにアンチセンスヌクレオチド配列を導入することができる。
【0198】
精神分裂病と関連する、表1〜14に記載の上方制御された転写物は、前述の通り、標的における特異的な配列とハイブリダイズする1つ以上の低分子干渉RNA(siRNA)配列によってターゲティングされる場合がある。インビボにて特定の脳転写物をsiRNAによりターゲティングする方法は、例えば、血液脳関門を通るリポソーム封入siRNA分子の通過を促進するためにトランスフェリン受容体に対するモノクローナル抗体を使用した、Zhang, et al., J. Gene. Med., 12:1039−45 (2003)に報告されている。ターゲティングされたsiRNAは、病状、例えば精神分裂病に関連する過剰発現された転写物を減衰されるために有用な治療化合物となる。
【0199】
別の実施形態において、tet制御システム、及びRU−486システムに代表される、条件付きの発現システムを使用することができる(例えば、Gossen & Bujard, PNAS 89:5547 (1992);Oligino, et al., Gene Ther. 5:491−496 (1998);Wang, et al., Gene Ther. 4:432−441 (1997);Neering, et al., Blood 88:1147−1155 (1996);及びRendahl, et al., Nat. Biotechnol. 16:757−761 (1998)を参照)。これらのシステムは、対象となる標的遺伝子の発現に対する低分子制御をもたらす。
【0200】
C.医薬組成物
薬学的な目的での使用において、遺伝子療法に使用されるベクターは、リン酸緩衝剤食塩水、又はリン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム、トリス緩衝剤、グリシン緩衝剤、無菌水、並びにGood, et al., Biochemistry 5:467 (1966)に記載のもののような当業者に既知のその他の緩衝剤等、任意の薬学的に許容される緩衝剤であり得る好適な緩衝剤中で製剤化される。
【0201】
組成物には更に、安定剤、賦活薬又はその他の薬学的に許容される担体若しくは賦形剤が含まれてもよい。薬学的に許容される担体は、例えば、本発明の核酸及び関連するベクターを安定化するために作用する生理学的に許容される化合物を含有してもよい。例えば、生理学的に許容される化合物には、グルコース、ショ糖又はデキストラン等の炭水化物:アスコルビン酸又はグルタチオン等の酸化防止剤、キレート剤、低分子量タンパク質又は安定化剤又は賦形剤が含まれる。他の生理学的に許容される化合物には、湿潤剤、乳化剤、分散剤又は微生物の増殖又は作用を防止するのに特に有用な、保存剤が含まれる。種々の保存剤は周知であり、例えば、フェノール及びアスコルビン酸が含まれる。担体、安定化剤、又はある晩との具体例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed. (1985)に開示されている。
【0202】
D.製剤の投与
本発明の製剤は、当業者に既知の任意の送達方法を使用して、任意の組織又は器官に送達することができる。本発明の幾つかの実施形態において、本発明の核酸は、粘膜、局所及び/又は頬製剤、特に粘膜付着性ゲル及び局所ゲル製剤中で製剤化される。経皮送達のための具体的な浸透促進製剤、ポリマーマトリックス、及び粘膜付着性ゲル組成物は、米国特許第5,346,701号に開示されている。
【0203】
E.処置方法
本発明の遺伝子療法製剤は、通常、細胞に投与される。細胞は、上皮膜、又は組織培養中等の単離された細胞等の、組織の一部として供給されてもよい。細胞は、インビボ、エキソビボ又はインビトロにて供給されてもよい。
【0204】
製剤は、種々の方法により、インビボ又はエキソビボで対象となる組織に導入することができる。本発明の幾つかの実施形態において、本発明の核酸は、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム融合又は微粒子銃等により細胞中に導入される。更なる実施形態において、核酸は、対象となる組織によって直接取り込まれる。
【0205】
本発明の幾つかの実施形態において、本発明の核酸は、患者から外植培養した細胞又は組織にエキソビボにて投与された後、患者に戻される。治療遺伝子構築物のエキソビボ投与の例には、Nolta, et al., Proc Natl. Acad. Sci. USA 93(6):2414−9 (1996);Koc, et al., Seminars in Oncology 23(1):46−65 (1996);Raper, et al., Annals of Surgery 223(2):116−26 (1996);Dalesandro, et al., J. Thorac. Cardi. Surg., 11(2):416−22 (1996);及びMakarov, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(1):402−6 (1996)が含まれる。
【0206】
X.気分障害及び精神病性障害の診断
本発明は又、気分障害(例えば、大うつ病又は双極性障害)、精神病性障害(例えば、精神分裂病)の診断方法を提供する。好ましい実施形態において、該病状は精神病性障害を含む。診断は、患者における本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドのレベルを測定し、次いで、ベースライン又は範囲に対するレベルを比較することを特徴とする。通常、ベースライン値は、気分障害又は精神病性障害に罹患していないか、医薬又は他の薬剤の影響下にない健康なヒトにおける、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの代表値である。ベースライン範囲からの本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドのレベルの変化(上昇又は下降の何れか)は、患者が気分障害又は精神病性障害に罹患しているか、気分障害又は精神病性障害の少なくとも幾つかの症状の発生の危険性を有することを示す。幾つかの実施形態において、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドのレベルは、血液、尿、又は組織試料を患者から採取し、例えば、発現レベルの測定、これらの遺伝子に関連するSNP又はハプロタイプの測定等の、本明細書で考察されたような検出方法の何れかを使用して、試料中の本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの量を測定することによって測定される。本明細書に供給された遺伝子は又、PCR及びチップアッセイのためのプローブセットを開発するために使用することができる。
【0207】
又、一塩基変異多型(SNP)分析は、本発明のポリヌクレオチド(例えば、遺伝子)の対立遺伝子間の相違を検出するのに有用である。本発明のポリペプチドをコードする遺伝子と関連付けられたSNPは、その発生が、本発明の遺伝子配列と関連付けられている、疾患(例えば、双極性障害、大うつ病等の気分障害、及び精神病性障害)の診断に有用である。例えば、個体が本発明の遺伝子配列の疾患関連対立遺伝子と関連付けられている、少なくとも1種のSNPを有する場合、該個体は、1つ以上のこれらの疾患にかかりやすいと考えられる。個体が、疾患と関連付けられたSNPにとって同型である場合、該個体は、特に、これらの疾患が発生しやすい。幾つかの実施形態において、本発明の遺伝子配列と関連するSNPは、遺伝子配列から300,000塩基対;200,000塩基対;100,000塩基対;75,000塩基対;50,000塩基対;又は10,000塩基対以内に位置する。
【0208】
タックマン又は分子ビーコンをベースとするアッセイ(例えば、米国特許第5,210,015号、第5,487,972号;Tyagi, et al., Nature Biotechnology 14:303 (1996);及びPCT WO95/13399)を含む、種々のリアルタイプPCR法を、SPNを検出するために使用することができ、SNPの存在又は非存在を監視するのに有用である。追加のSNP検出方法には、例えば、DNA配列決定、ハイブリダイゼーションによる配列決定、ドットブロッティング、オリゴヌクレオチドアレイ(DNAチップ)ハイブリダイゼーション分析、又は、例えば、米国特許第6,177,249号;Landegren, et al., Genome Research, 8:769−76 (1998);Botstein, et al., Am J Human Genetics 32:314−331 (1980);Meyers, et al., Methods in Enzymology 155:501−527 (1987);Keen, et al., Trends in Genetics 7:5 (1991);Myers, et al., Science 230:1242−1246 (1985);及びKwok, et al., Genomics 23:138−144 (1994)に開示されている。
【0209】
幾つかの実施形態において、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの酵素産物のレベルを測定し、健康なヒトのベースライン値と比較する。ベースラインに対する産物の調節レベルは、患者が気分障害又は精神病性障害に罹患しているか、気分障害又は精神病性障害の少なくとも幾つかの症状の活性の危険性があることを示す。例えば、患者の試料は、血液、PBS、リンパ球、唾液、CSF、尿又は組織試料である。
【0210】
精神病性障害において特異的に発現する遺伝子の抗原及び抗体を使用した免疫アッセイは又、ELISA及び免疫組織化学的アッセイ等の免疫アッセイにも有用である。本明細書に記載の遺伝子は又、精神病性障害のための特異的な診断薬の製造にも有用である。
【0211】
幾つかの実施形態において、患者における精神分裂病は診断することができ、さもなければ、表1〜14の1つ以上の遺伝子配列のin situで発現を視覚化することによって評価される。生きている患者の脳内の核酸、ポリペプチド及び他の生化学的化合物を含む分子の存在又は発現を視覚化する当業者は、本明細書に開示された遺伝子発現情報が種々の視覚化法との関連で利用することができることを評価する。このような方法には、単一光子放射断層撮影(SPECT)及び陽電子放射断層撮影(PET)法が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Vassaux and Groot−wassink, “in vivo Nominvasive Imaging for Gene Therapy” J. Biomedicine and Biotechnology, 2:92−101 (2003);Turner, J. Symth, P., Fallon, J.F., Kennedy, J.L., Potkin, S.G., FIRST BIRN (2006). Imaging and genetics in schizophrenia. Neuroinformatics, in pressを参照されたい。
【0212】
PET及びSPECT画像化は、器官及び組織の化学的機能を示すが、その他の画像化技法(例えば、X線、CT及びMRI)は、構造を示す。PET及びSPECT画像化法の使用は、精神分裂病及び他の関連疾患等の脳疾患の発生を認定し、監視するのに有用である。ある例においては、PET又はSPECT画像化の使用は、症状の発生よりも早く疾患を検出することを可能にする。ポリペプチド及びヌクレオチドの存在又は発現を視覚化するための低分子量化合物の使用は、例えば、Herholz K, et al., Mol Imaging Biol,6(4):239−69 (2004);Nordberg A, Lancet Neurol., 3(9):519−27 (2004);Neutropsychol Rev., Zakzanis KK, et al., 13(1):1−18 (2003);Kung MP, et al., Brain Res., 1025(1−2):98−105 (2004);及びHerholz K, Ann Nucl Med., 17(2):79−89 (2003)に開示されたように、成功を収めた。
【0213】
表1〜14に記載された調節不全遺伝子、又はコードされるペプチド(もしあれば)又はその断片を、PET及びSPECT画像化法において使用することができる。PET及びSPECT法についての適切なトレーサー残基で修飾した後、表1〜14の転写物、又はそれらの転写物によってコードされるポリペプチドと相互作用又は結合する分子は、遺伝子のパターンを視覚化するために使用され、本明細書に開示されるように、精神分裂病の診断を促進する。同様に、コードされるポリペプチドが酵素をコードする場合、酵素による触媒作用の産物と相互作用する標識化分子は、本明細書に開示される、インビボ画像化及び診断用途に使用することができる。
【0214】
アンチセンス技術は、本明細書の表1〜14に同定される転写物を検出するのに特に好適である。例えば、111In等の放射性各種で標識されたアンチセンスペプチド核酸、及び生体膜バリアを透過することを可能にする脳薬剤システムとの複合体の使用は、脳癌における内在性遺伝子の発現の画像化を許容することを証明した。Suzuki, et al., Journal of Nuclear Medicine, 10:1766−1775 (2004)を参照されたい。Suzuki等は、血液脳関門において転移受容体を標的とし、PNAのバリア透過を促進するモノクローナル抗体を含む送達システムを使用している。この技法の修飾形態は、精神分裂病患者を処置する方法における、表1〜5に示される上方制御遺伝子等の、精神分裂病と関連する情報制御遺伝子を標的とするために使用される。
【0215】
他の実施形態においては、表1〜14に記載された調節不全遺伝子が、出生前及び新生児の診断方法において使用される。例えば、胎児又は新生児のリンパ球を単離し、適切な転写物の発現レベルを測定し、精神分裂病等の精神障害の可能性の存在又は上昇と相関させる。同様に、表6中で同定された1つ以上のSNPの存在が、ASGの調節不全の発現、及び胎児、新生児、小児及び成人患者における精神分裂病の可能性を推察又は確認するために使用される。
【0216】
他の実施形態において、本明細書に記載された脳標識化及び画像が技術又はそれらの変形は、法医学分析において、即ち、精神分裂病に罹患している個体が減少したかどうかを決定するために、表1〜4又は6の調節不全遺伝子配列の何れかと併せて使用することができる。同様に、表4〜5で同定された遺伝子の何れかのリンパ球発現の法医学調査は、精神分裂病に罹患している個体が減少したがどうかを決定するために、単独で、又は他の方法と組み合わせて使用することができる。
【0217】
本明細書に記載の実施例及び実施形態は、単に例示を目的としたものであり、これらに照らした種々の修飾又は変形は、当業者に示唆され、本出願の趣旨及び範囲、並びに添付の特許請求の範囲の適用範囲内に含まれることが理解される。
【実施例】
【0218】
実施例1:精神分裂病患者における遺伝子調節不全の同定
死後の精神障害の患者の脳、及び対照の脳を、本研究に使用した。それぞれ、一対の脳(患者及び対照)を、性、年齢、死後の経過時間に基づき適合させた。末期における患者の特定の状態(発作、昏睡、低酸素症、脱水及び発熱等の、末期の因子(agonal factor))、及び死後の脳組織の状態(死後の経過時間、及び冷凍時間等の、死後の因子)は、死後の脳組織におけるRNA保存における主要な影響である。脳のpHを、末期状態についての指標として、及びRNA保存の指標として評価した。RNAの品質が低下したと思われる場合、末期因子及び低pH試料を有する被験体は研究から除外した。
【0219】
本研究において、遺伝子発現の調節不全は、以下の6個の脳領域において試験した:即ち、前帯状皮質(AnCg)、背面前頭葉皮質(DLPFC)、小脳皮質(CB)、上側頭回(STG)、頭頂葉皮質(PC)、及び側坐核(nAcc)。そして、ヒトの死後の脳からの転写物が前述の厳密な品質管理基準に適合するか、即ち、供与者の末期の因子指数が0であり、各個体の脳のpHが少なくとも6.4であったかを照会するために、健常な対照と比べた精神分裂病患者における遺伝子発現パターンが、Affymetrix GeneChips{(HG_U133セット(A+B)}を使用して分析した(Tomita et al., 2004;Li et al., 2004を参照)。
【0220】
データ分析に使用されるプローブセット配列は、UniGeneの定義に特有の配列の重複を除去し、UMICH生命情報科学グループ(http://brainarray.mhri.med.umich.edu/Brainarray/)によって作成されたCDFファイルに定義される通りである。GeneChipハイブリダイゼーションデータを処理しれ、バックグラウンド補正した後、試料複製物の分析における因子として診断(SZ及び対照)及び現場{(カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)、ミシガン大学(UM)及びカリフォルニア大学デービス校(UCD))を使用して、最初にGCRMAと正規化した。(i)p<0.05の統計的有意性;(ii)必要に応じて、何れかの方向における対照と相対比較した、少なくとも1.2倍の発現の変化(FC);(iii)6個の分析された脳領域(前述した)の何れかにおける少なくとも10%の存在の(P)コールを示すプローブセットが、特異的に発現する遺伝子として、即ち調節不全遺伝子として選択された。
【0221】
分析された6箇所の脳領域の1つ以上において、対照の脳に対し精神分裂病において特異的に発現するとして、合計1336の転写物/遺伝子を同定した。それらのうち、246個の遺伝子がAnCgで;166個がCBで;156個がDLPFCで;124個がnAccで:76個がPCで;84個がSTGで上方制御されていた。138個の遺伝子がAnCgで;187個がCBで;94個がDLPFCで;83個がnAccで;125個がPCで;105個がSTGで下方制御されていた。このデータを表1に示す。
【0222】
6箇所の分析で、AnCg及びDLPFCのみは、Gene Ontology(GO)用語が濃縮され、KEGG経路の有意な濃縮は示されなかった。AnCgにおいて濃縮されたGO用語を表2に記載する。表2は、3種のGO用語がAnCg、特にGO:0050874、生物生理学的手順(11プローブセットを有する);GO:0058550、真核生物転写因子2複合体(3プローブセットを有する):及びGO:0005739、ミトコンドリア(25プローブセットを有する)において濃縮されていた。
【0223】
表3は、単一のGO用語がDLPFC、特に、GO:0005622細胞内(90プローブセットを有する)で濃縮されていることを示す。
【0224】
実施例2:脳内で見出された調節不全遺伝子の末梢バイオマーカー発現
本研究のため、精神分裂病に罹患している個体の別の集団(n=5)を、影響を受けない家系のメンバー(n=5)に対して性及び年齢を適合させた。各個体から単離した新鮮なリンパ球を、エプスタインバーウイルスを使用して形質転換し、15%牛胎児血清(加熱不活性)、2mM L−グルタミン及び25mgのゲンタマイシンを補充したRPMI−1640培地中でコンフルエントになるまで増殖させた。RNAを、約5×107個のリンパ球細胞から、標準的なTRIzol単離プロトコール(Invitrogen[米国カリフォルニア州カールスバッド])を使用して抽出した。製造業者のプロトコールに従い、Affymetrix Human Genome U133A Arrayを遺伝子発現のために使用した。遺伝子発現特性は、U133Aチップに由来し、ロバストマルチアレイ縮合アルゴリズム(RMA)により分析した。特異的遺伝子発現(本分析の目的のための遺伝子発現特性)を、影響を受けない家系のメンバーに対する、精神分裂病における有意な両側t−試験(p<0.05)を示す遺伝子として定義する。影響を受けないメンバーと比較し、精神分裂病におけるリンパ球の調節不全についてのt検定をパスする1344の遺伝子があった。この一覧を表1の遺伝子と比較した(精神分裂病における脳調節不全遺伝子を示す)。脳及びリンパ球の両方において調節不全を示す遺伝子を表4に示す。
【0225】
表4の84種の調節不全遺伝子の一覧は、脳及びリンパ球の間の傾向が一致する群、及び脳及びリンパ球の間の傾向が一致しない群にグループ分けされる。両方の調節不全遺伝子はバイオマーカーである。リンパ芽球は、脳組織において通常に示されるような、末期因子、pH、医薬の効果を有さない。従って、表4の遺伝子転写物は、治療中又は診断の目的のため、リンパ芽球を監視するために使用される。
【0226】
リンパ芽球のみ(即ち脳においては認められない)において有意な調節不全を示すものとしてマイクロアレイアッセイにより同定された1344種の遺伝子のサブセットを表5に示す。マイクロアレイデータを、Q−PCRを使用して評価し、リンパ球試料における遺伝子発現の変化及び傾向を調べた。8種の遺伝子が、Q−PCR中でt検定(両側)において統計的に有意であった。
【0227】
アスパルチルグルコサミヌリア(AGA)遺伝子発現は、精神分裂病に罹患している個体の脳及びリンパ球の両方において調節不全を示す(表4)。AGA遺伝子発現と関連する11種の単一ヌクレオチド多型マーカーが同定され、表6に示す。又、表6は、リンパ球遺伝子発現を伴う、遺伝子型の回帰p値を示す。11のマーカーのうち、8個が、シス調節部位と関連し(すなわち、シス値は5Mb未満)、3個がトランス調節部位と関連した(シス値は5Mbを超える)。これらのSNPの検出は、リンパ芽級におけるAGA遺伝子発現の予測を促進することができる。同様に、他の調節不全の発現と関連するSNPの検出は、これらの遺伝子の発現レベルの予測を促進することができる。表6のSNPは又、精神分裂病の診断又は治療のための、AGA制御された発現についての、又は変化したAGA発現と関連する他の疾患の診断及び処置についての標的を表す。SNP rs723820、rs723819、rs1112286、rs1375749について、表6は、重要でない対立遺伝子が、精神分裂病において減少したAGA発現と関連することを示す。
【0228】
実施例3:PSPHL挿入欠失突然変異の評価
本発明は、ホスホロセリンホスファターゼ様遺伝子の挿入−欠失多型に関連する以前の発見、及びPSPHLの欠失対立遺伝子及び双極性障害(BPD)に対する感受性の関連を広げた。
【0229】
本発明者等は、既に以下のことを決定した。1)PSPHL遺伝子は4個のエクソンからなる。エクソン1、2、3及び4は、それぞれ213bp、114bp、122bp及び501bp長であり、スパンイントロン1、2及び3(それぞれ、3221bp、829bp及び11939bp長)にわたる。2)PSPHL及びPSPHは、染色体7p11.2領域上で、相互に200kb離れて位置し、非常に相同的である。3)PSPHL遺伝子は、2種の転写物を有し、1つはエクソン1〜4(PSPHL−A)で使用するが、他はエクソン1、2及び4(PSPHL−B)を使用する。PSPHL−A及びPSPHL−Bの予測されるタンパク質は、エクソン1及び2から転写された、N末端の57個の共通のアミノ酸を共有する。PSPH及び予測されるPSPHL−A及びBは共通に31個のアミノ酸を有する。4)それらは、PSPHL座において挿入/欠失多型を示す。欠失したゲノム領域は、30kb以上にわたり、プロモーター領域、及びPSPHL遺伝子のエクソン1、2及び3を含む。5)PSPHLは、PSPHL座における挿入/欠失多型による、ヒトの集団の間の二分する(存在又は非存在)発現パターンを示す。6)PSPHLを発現する個体数は、対照群と比較してBPD患者群の方が有意に少なかった。7)PSPHはセリン合成の律速酵素であるため、PSPHLはセリンアミノ酸代謝経路に関与する場合がある、その他の経路にも関与する可能性がある。
【0230】
本発明において、本発明者等は以下を究明した。
【0231】
1)本発明者等は遺伝子の発現パターンにおける、PSPHL座での挿入−欠失他型の関与を証明した。
【0232】
PSPHL遺伝型及びPSPHLのmRNAに関して分析した、125のヒトの死後の脳組織(19人のBPD、22人のMDD、20人のSCZ患者及び64人の対照)のうち、81人の被験体(18人のBPD、8人のMDD、12人のSCZ及び43人の対照)が、PSPHL座についての対立遺伝子の同型パターン(Del/Del)を示し、81人のDel/Delの個体がPSPHLのmRNAの発現を欠如していた。一方、40人の患者(1人のBPD、13人のMDD、8人のSCZ患者及び18人の対照)は、PSPHL座について挿入及び欠失対立遺伝子の異型パターン(Ins/Del)を示し、そして4人の患者(1人のMDD、及び3人の対照)が、挿入対立遺伝子の同型パターン(Ins/Ins)を示した。少なくとも1種の挿入対立遺伝子を有する、44人の患者全て(40人のIns/Del及び4人のIns/Ins)がPSPHLのmRNA発現を示した。この発見は、PSPHLのmRNA発現の存在/非存在が、PSPHL座における挿入/欠失多型によることを支持する。64人の対照被験体における本発明者等の観察は、ハーディ−ヴァインベルグの予想に正確に適合した。PSPHL座についての挿入及び欠失についての対立遺伝子頻度は、それぞれ、0.18及び0.82と推定される。
【0233】
2)本発明者等は、BPD患者群におけるPSPHLを発現する固体の数が、対照群に比べて、有意に小さく、MDD患者群においては対照群より有意に大きいことを証明した。
【0234】
超幾何分布に基づき、19人のPBD患者において、PSPHLを発現していない1以下の個体についての累積的なp値は0.0015である。又、22人のMDD患者においてPSPHLを発現する14以上の個体についての累積的なp値は0.0002である。SCZ患者及び対照の間の分布に有意な差はない。PSPHLを発現しない個体はPBD患者において優勢であるが、PSPHLを発現する個体はMDD患者で優勢であることは注目すべきことである。BPD及びMDDの間の分布において観察される相違の可能性は、フィッシャーの直接確率検定に基づいて0.000098である。この発見は、持病の初期に医師に会いに来る、精神的に落ち込んだ患者の中から、潜在的なBPD患者を予想する遺伝的試験に応用することができる。
【0235】
3)本発明者等は、ヒトの死後の脳組織中、及びヒトの脳に由来する細胞系中で、PSPHL−BのmRNA発現レベルがPSPHL−Aに比べ約10倍高いことを特徴付けた。
【0236】
PSPHLは、少なくとも2種の転写物、即ちPSPHL−A(エクソン1、2、3及び4からなる)及びPSPHL−B(エクソン1、2及び4からなる)を有する。PSPHL−A及びPSPHL−Bに特異的なプライマーセット及びタックマンプローブを使用した、定量的RT−PCR評価に基づくと、PSPHL−A及びPSPHL−Bの両方が、少なくとも1種のPSPHL挿入対立遺伝子を有する被験体由来のヒトの死後の、前帯状皮質及び小脳皮質を含む脳皮質中で発現していた。PSPHL−BのmRNA発現レベルは、分析した脳組織中でPSPHL−Aより約10倍高かった。又、PSPHL−A及びPSPHL−Bはいずれも、ヒト神経芽細胞腫細胞系、SK−N−SH、ヒトグリオーマ細胞系、Hs683、及びヒトオリゴデンドロサイト誘発細胞系、少なくとも1種のPSPHL挿入対立遺伝子を有するOLを含むヒトの脳に由来する細胞系中で発現していた。PSPHL−BのmRNA発現レベルは、これらの細胞中でPSPHL−Aよりも約10倍高かった。同型のPSPHL欠失対立遺伝子を有するグリア芽腫細胞系、U87−MGは、PSPHL−A及びPSPHL−Bの発現を欠如する。
【0237】
4)本発明者等は、PSPHL遺伝子の5’領域のプロモーター活性を証明した。pGLをベースとするベクターにクローニングされたPSPHLの5’領域(1015bp断片)は、少なくともHela細胞及びヒト希突起膠細胞系(OL)において十分なプロモーター活性を示す。反対方向に同じ領域を含むベクター(陰性対照)は、プロモーター活性を示さなかった。
【0238】
【表1】
前述の実施例は、本発明を例示するために示されたものであり、本発明の適用範囲を限定するために示されたものではない。本発明のその他の変形は、当業者に容易に明らかであり、添付の特許請求の範囲に包含される。本明細書で引用される全ての刊行物、データベース、Genbank配列、GO用語、特許、及び特許出願は、参考として本明細書に組み入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1−1】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。記載した全ての遺伝子(列)について、UniGene ID、GenBank受入番号(“Acc”)、遺伝子記号、染色体番号(“Chr”)、及び発現レベルにおける変化の方向(上方又は下方)を、連続するカラムに記載する。最後のカラムには、特異的に発現する遺伝子、及び利用できる関連情報を記載する。
【図1−2】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−3】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−4】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−5】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−6】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−7】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−8】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−9】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−10】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−11】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−12】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−13】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−14】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−15】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−16】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−17】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−18】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−19】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−20】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−21】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−22】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−23】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−24】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−25】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−26】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−27】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−28】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−29】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−30】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−31】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−32】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−33】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−34】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−35】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−36】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−37】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−38】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−39】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−40】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−41】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−42】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図2−1】表2は、AnCg中に濃縮された遺伝子オントロジー(GO)用語を示す。濃縮されたGO用語を示し、初期値FDR補正限界基準に適合するプローブセット(http://brainarray.mhri.med.umich.edu/Brainarray/)を本明細書に記載する。それぞれ濃縮されたGO用語に基づき、個々の遺伝子を各列に記載する。LocusLink ID番号、UniGene ID番号、遺伝子記号及び遺伝子の概要に関連する情報を連続するカラムに記載する。
【図2−2】表2は、AnCg中に濃縮された遺伝子オントロジー(GO)用語を示す。
【図3−1】表3は、DLPFC中に濃縮されたGO用語を示す。濃縮されたGO用語を示し、初期値FDR補正限界基準に適合するプローブセット(http://brainarray.mhri.med.umich.edu/Brainarray/)を本明細書に記載する。それぞれ濃縮されたGO用語に基づき、個々の遺伝子を各列に記載する。LocusLink ID番号、UniGene ID番号、遺伝子記号及び遺伝子の概要を連続するカラムに記載する。
【図3−2】表3は、DLPFC中に濃縮されたGO用語を示す。
【図3−3】表3は、DLPFC中に濃縮されたGO用語を示す。
【図3−4】表3は、DLPFC中に濃縮されたGO用語を示す。
【図4−1】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−2】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−3】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−4】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−5】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−6】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−7】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−8】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図5】表5は、リンパ球のみにおいて有意な調節不全を示す16個の遺伝子を記載する。これらの遺伝子はマイクロアレイによって有意であり、変化の量及び方向はQ−PCRを使用して確認された。Q−PCRによって調べ、両側t―試験を使用して評価したところ、これらの7種の遺伝子(受入番号カラムに太字で記載)は、統計的に有意な調節不全を示した。
【図6】表6は、精神分裂病を有する個体の脳及びリンパ球の両方において調節不全を示すアスパルチルグルコサミヌリア(AGA)遺伝子発現に関連する11個の単一ヌクレオチド多型マーカーを記載する(下記表4を参照)。リンパ球遺伝子発現を伴う遺伝子型回帰p値を最後のカラムに示す。
【図7】表7は、気分障害及び精神病性障害に関与する遺伝子を記載する。
【図8】表8は、気分障害及び精神病性障害に関与する遺伝子を記載する。
【図9】表9は、気分障害及び精神病性障害に関与する扁桃体中で特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図10】表10は、気分障害及び精神病性障害に関与する扁桃体中で特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図11】表11は、気分障害及び精神病性障害に関与する扁桃体中で特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図12】表12は、気分障害及び精神病性障害に関与する扁桃体中で特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図13】表13は、気分障害及び精神病性障害に関与する扁桃体中で特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図14】表14は、扁桃体中で発現するリチウム応答遺伝子を記載する。
【背景技術】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2005年3月31日に出願された、USSN 60/667,299号、および2006年2月22日に出願された、USSN 60/776,103号に対する優先権を主張する。USSN 60/667,299号、およびUSSN 60/776,103号は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(連邦政府に支援された研究および開発からなされた発明の権利に関する記載)
なし
(発明の背景)
精神分裂病等の精神病性障害、並びに大うつ病及び双極性障害等の気分障害は、重要な公衆衛生上の問題であり、毎年、アメリカ合衆国の成人人口のかなりの部分を占める人々がこのような障害に悩まされている。精神分裂病等の精神病性障害、並びに大うつ病及び双極性障害等の気分障害をはじめとする精神障害は、遺伝的根源を有するという仮説が立てられているが、複雑な遺伝的起源を有する多くの疾患に当てはまるように、これらの障害を引き起こす役割を果たす遺伝子配列及び遺伝子産物の同定における進展は殆どない(例えば、非特許文献1を参照)。特定の脳経路及び領域において発現する特定の遺伝子が、精神障害の発症に関与する可能性があるという発見を基に、本発明は、精神分裂病等の精神障害の診断及び処置方法、並びに精神障害の処置に有効な化合物を同定する方法を提供する。
【非特許文献1】Burmeister, Biol. Psychiatry 45:522−532 (1999)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
精神分裂病等の精神病性障害の神経生物学に関する理解を深めるため、本願の発明者等は、DNAマイクロアレイを使用して、精神分裂病と診断されたヒト患者由来の死後の脳の発現プロフィールを試験した。この研究は、精神分裂病に関与する経路又は回路である6つの脳の領域、即ち前帯状皮質(AnCg)、背面前頭葉皮質(DLPFC)、小脳皮質(CB)、上側頭回(STG)、頭頂葉皮質(PC)、及び側坐核(nAcc)に焦点を当てた。
【0004】
本発明は、正常な対照患者と比べた、精神分裂病に罹患している患者の脳の選択領域における遺伝子発現の差を証明する。これらの遺伝子には、表1に記載の転写物;Affymetrixチップ、及び末期因子(agonal factor)を有さない脳を使用してAnCg中に特異に発現する、表2に記載の遺伝子;Affymetrixチップ及び末期因子を有さない脳を使用してDLPFC中に特異に発現する、表3に記載の遺伝子;リンパ芽球性及び脳組織中で有意な調節不全をきたす、表4に記載の遺伝子が含まれる。
【0005】
更に、本発明は、脳組織内では特異的に調節されないが、精神分裂病患者のリンパ芽球細胞では特異的に調節される遺伝子を同定する(表5)。又、精神分裂病患者の脳及びリンパ球の両方で調節不全をきたした遺伝子である、アスパルチルグルコサミン尿(AGA)に関連する単一ヌクレオチド多型マーカーの一覧(表6)も示す。表7及び8は、精神分裂病、大うつ病及び双極性障害において調節異常である遺伝子を示す。
【0006】
本発明は又、大うつ病、双極性障害及び/又は精神分裂病と診断された患者における扁桃体中で特異に発現する遺伝子も提供する(表9〜13)。
【0007】
本発明は又、リチウムで処置した双極性障害被験体、及びリチウムで処置した非ヒト霊長類の扁桃中で特異に発現するリチウム応答遺伝子も提供する(表14)。
【0008】
本発明は又、うつを示す患者の中から双極性障害患者を区別する、又は双極性障害を診断するのに有用な診断ツールとして、挿入欠失変異を有する変異型PSPHLのバリデーションも提供する。
【0009】
精神神経疾患において特異的に発現する遺伝子は、精神病性障害及び気分障害の診断において有用であり、例えば、PCR及びチップアッセイに使用するSNP、バイオマーカー、診断用プローブセットの他、ELISA及び免疫組織化学アッセイ等の免疫アッセイに使用する抗原及び抗体を提供する。精神病性障害及び気分障害は主に、障害に関与する回路又は経路の一部である特定の脳領域に影響を及ぼすことから、脳領域による特異な発現は、同様に有用な診断及び処置ツールである。配列特異的なアンチセンス放射性医薬品及び新規のアプタマーベースのプローブを使用した脳内在性遺伝子発現のイメージングは、強力な診断ツールである。これらのプローブは、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)又は陽電子放出断層撮影(PET)の画像診断法と併用できる蛍光及び放射性標識を使用して検出することができる。又、精神病性障害及び気分障害に関与する遺伝子、タンパク質及び生化学的アッセイを同定することで、低分子、SiRNA及び抗体等の抗精神病性障害治療薬の創薬のための手段が得られる。
【0010】
従って、本発明は、被験体が精神障害に罹患しているか否か、又は精神障害にかかりやすいか否かを判定する方法を提供する。本発明は又、予後診断を提供する方法、及び疾患の進行及び処置を監視する方法も提供する。更に、本発明は、精神障害の治療薬のアッセイのための核酸及びタンパク質も提供する。
【0011】
一実施形態において、これらの方法は、(i)被験体から生物学的試料を得る;(ii)表1〜14に記載のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされるポリヌクレオチド又はポリペプチドと選択的に結合する試薬と試料を接触させる;及び(iii)試料と選択的に結合する試薬のレベルを測定し、それによって、被験体が精神障害に罹患しているか否か、又は精神障害にかかりやすいか否かを判定する手順を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、試薬は抗体である。幾つかの実施形態において、試薬は核酸である。幾つかの実施形態において、試薬はポリヌクレオチドと結合する。幾つかの実施形態において、試薬はポリペプチドと結合する。幾つかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表1〜14に記載のヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは、表1〜14に記載の遺伝子のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、試料と結合する試薬のレベルは、精神障害に罹患していないヒトに関連するレベルと異なる(即ち、高いまたは低い)。幾つかの実施形態において、生物学的試料は、リンパ球、羊水、髄液又は唾液から得られる。幾つかの実施形態において、精神障害は気分障害である。幾つかの実施形態において、精神障害は精神分裂病等の精神病性障害である。
【0013】
本発明は又、精神障害を処置するための化合物を同定する方法も提供する。幾つかの実施形態において、これらの方法は、(i)表1〜14のヌクレオチド配列を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと化合物を接触させる;及び(ii)ポリペプチドに対する化合物の機能的効果を測定し、それによって気分障害、例えば精神分裂病の処置のための化合物を同定する手順を含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、接触手順はインビトロにて実施される。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは、表1〜14に記載の遺伝子のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは細胞又は生物学的試料中で発現され、この細胞又は生物学的試料を化合物と接触させる。幾つかの実施形態において、これらの方法は更に、動物に化合物を投与し、動物、例えば無脊椎動物、脊椎動物又は哺乳動物に対する効果を測定することを含む。幾つかの実施形態において、測定手順は、動物の精神機能を試験することを含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、これらの方法は、(i)表1〜14のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む細胞と化合物を接触させる;及び(ii)ポリヌクレオチドの発現を調節する化合物を選択し、それによって精神障害を処置するための化合物を同定する手順を含む。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは、表1〜14に記載のヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態において、ポリヌクレオチドの発現は増加する。幾つかの実施形態において、ポリヌクレオチドの発現は減少する。幾つかの実施形態において、これらの方法は更に、動物に化合物を投与し、動物に対する効果を測定することを含む。幾つかの実施形態において、測定手順は、動物の精神機能を試験することを含む。幾つかの実施形態において、精神障害は気分障害又は精神病性傷害である。幾つかの実施形態において、精神障害は精神分裂病である。幾つかの実施形態において、気分障害は大うつ病又は双極性障害である。
【0016】
本発明は又、被験体における精神障害を処置する方法も提供する。幾つかの実施形態において、これらの方法は、前記方法を使用して同定される化合物の治療有効量を被験体に投与することを含む。幾つかの実施形態において、精神障害は気分障害又は精神病性障害である。幾つかの実施形態において、化合物は有機低分子、抗体、アンチセンス分子、アプタマー、siRNA分子又はペプチドである。
【0017】
本発明は又、患者における精神障害を処置する方法であって、表1〜14の核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるヌクレオチドの治療有効量を被験体に投与する手順を含む方法も提供する。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは、表1〜14に記載の遺伝子配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、精神障害は気分障害又は精神病性障害である。
【0018】
本発明は又、被験体における精神障害を処置する方法であって、表1〜14の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドの治療有効量を被験体に投与する手順を特徴とする方法も提供する。幾つかの実施形態において、精神障害は気分障害又は精神病性障害である。幾つかの実施形態において、精神病性障害は精神分裂病である。幾つかの実施形態において、気分障害は双極性障害又は大うつ病である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
定義
「精神障害」又は「精神病」又は「精神疾患」又は「精神病性又は神経精神疾患又は病又は障害」は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition(DSMIV)に記載の通り、気分障害(例えば、大うつ病、躁病、及び双極性障害)、精神病性障害(例えば、精神分裂病、統合失調性感情障害、分裂病様障害、妄想病、短期精神病性障害、及び共用精神病性障害)、人格障害、不安障害(例えば、強迫性障害)、並びに物質関連障害、小児性障害、痴呆、自閉症、適応障害、精神錯乱、多発梗塞性痴呆、及びトゥーレット症候群等のその他の精神障害を指す。通常、このような障害は、複雑な遺伝的及び/又は生化学的成分を有する。
【0020】
「精神病性障害」は、精神に影響を及ぼし、現実との接触を少なくとも多少喪失する病態を指す。精神病性障害の症状には、例えば、幻覚、現実、妄想等に基づかない行動の変化が含まれる。例えば、DSM IMを参照されたい。精神分裂病、統合失調性感情障害、分裂病様障害、妄想病、短期精神病性障害、物質誘導性精神病性障害及び共用精神病性障害は、精神病性障害の具体例である。
【0021】
「精神分裂病」は、個体による現実からの離脱症状に関与する精神病性障害を意味する。症状には、1ヶ月の少なくとも一部にわたり、以下の複数の症状:即ち、妄想(宇宙船において太陽からの外転されるような、妄想が異様である場合は、1種の症状のみが要求される);幻覚(幻覚が、互いに会話する少なくとも2種の声によるものか、又は患者の思考若しくは活動における実況解説を管理する声によるものである場合は、1種の症状のみが要求される);解体した会話(例えば、脱線又は支離滅裂):著しく解体した又は強硬な挙動;又は否定的な症状、即ち、感情の平坦化、失語又は意欲減退が含まれる。精神分裂病の診断については、例えば、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition (DSM IV)に記載されている。精神分裂病の種類には、例えば、妄想型、破瓜型、緊張型、識別不能型、及び後遺症が含まれる。
【0022】
「気分障害」は、長期間にわたり個体によって経験される情調又は感情の分裂を指す。気分障害には、大うつ病(即ち、単極性障害)、躁病、情動不安、双極性障害、気分変調、気分循環症及びその他が含まれる。例えば、DSM IVを参照されたい。
【0023】
「大うつ病」、「大うつ病性障害」又は「単極性障害」は、以下の何れかの症状を含む気分障害を意味する:即ち、持続的な悲しみ、不安、又は中身のない気分;望みのない、又は悲観的な感情;罪責感、価値のなさ、又は無力感;性欲を含む、趣味、及びかつては楽しんだ活動における興味又は喜びの喪失;エネルギーの低下、疲労、速度の減少集中、記憶すること、決定するの困難;不眠、朝早く目が覚めること、又は寝過ごし;食欲及び/又は体重の減少、又は食べ過ぎ及び体重の増加;死について考えること、又は自殺又は自殺の企図;不穏状態又は怒りっぽいこと;又は持続的な身体症状に対する治療に対して応答しない、頭痛、消化性の障害、及び慢性的な痛み。
【0024】
「双極性障害」は、極端な気分の期間が変化することによって特徴付けられる気分障害である。双極性障害の患者は、通常、非常に元気又は怒りっぽい(躁病)ことから、悲しみ及び望みのない(うつ)ことへ揺れ動き、次いで、その間に正常な気分の期間を有して再び戻る、気分の周期を経験する。双極性障害の診断は、例えばDSM IVに記載されている。双極性障害には、双極性障害I(大うつ病を伴うか、又は伴わない躁病)及び双極性障害II(大うつ病を伴う軽躁)が含まれる。例えばDSM IVを参照されたい。
【0025】
不安障害、学習及び記憶障害、認知障害はDSM IVに記載されている。不安障害は、うつ病と一緒の移動性を示し、学習及び記憶障害は、精神分裂病と一緒の移動性を示す。
【0026】
「作用物質」は、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに結合し、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性化又は発現を刺激し、増加し、活性化し、促進し、活性化を向上し、又は上方制御する薬剤を指す。
【0027】
「拮抗物質」は、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現を阻害するか、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性と結合し、部分的又は全体的に刺激を遮断し、減少し、防止し、活性化を遅らせ、不活性化し、脱感作し、又は下方制御する薬剤を指す。
【0028】
発現又は活性の「阻害剤」、「活性化剤」及び「調節物質」は、発現又は活性についてのインビトロ及びインビボアッセイを使用して確認される、阻害的、活性化又は調節分子、例えば、リガンド、作用物質、拮抗物質、及びそれらの相同体及び模倣物質を指すとして使用される。「調節物質」という用語には、阻害剤及び活性化剤が含まれる。阻害剤は、例えば、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現を阻害するか、又は結合して刺激又は酵素活性を部分的又は全体的に遮断し、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性を低下、阻止、活性化の遅延、不活性化、脱感作、又は下方制御する物質、例えば、拮抗物質である。活性化剤は、例えば、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現を誘導又は活性化するか、又は結合して活性化又は酵素活性を刺激、上昇、活発化(open)、活性化、促進、増強し、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性を感作、又は情報制御する物質、例えば、作用物質である。調節物質には、天然及び合成リガンド、拮抗物質、作用物質、小化学分子等が含まれる。阻害剤及び活性化剤を同定するためのアッセイには、例えば、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの存在又は非存在下、推定上の調節物質化合物を細胞へ適用し、次いで、本発明の活性のポリペプチド又はポリヌクレオチドについての機能的効果を測定する方法が含まれる。可能性のある活性化剤、阻害剤、又は調節物質と処理される本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを含む試料又はアッセイを、効果の程度を調べるために、阻害剤、活性化剤、又は調節物質のない対照試料と比較する。対照試料(調節物質と処理しない)を、100%の相対的活性値とする。対照に対する、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性値が約80%、必要に応じて50%又は25〜1%である場合、阻害が得られる。対照に対する、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性値が110%、必要に応じて150%、必要に応じて200〜500%、又は1,000〜3,000高い場合、活性が得られる。
【0029】
本明細書で使用されるように、「試験化合物」又は「薬剤候補」又は「調節物質」又は文法的に同等なもの例えば、タンパク質、オリゴペプチド(例えば、約5〜約25アミノ酸長、好ましくは約10〜20又は12〜18アミノ酸長、好ましくは、12、15又は18アミノ酸長)、有機低分子、多糖類、脂質、脂肪酸、ポリヌクレオチド、RNAi、オリゴヌクレオチド等の天然又は合成の何れかの分子を表わす。試験化合物は、多様性の十分な範囲を提供する、組み合わせ又はランダムなライブラリー等の、試験化合物のライブラリーの形態で使用されることができる。化合物は、標的化合物、レスキュー化合物(rescue compounds)、二量体化合物、安定化化合物、アドレス可能化合物、及び他の機能性部分等の融合パートナーと結合していてもよい。通常、有用な性質を有する化学物質は、幾つかの所望の性質又は活性、例えば、阻害活性を有する試験化合物(リード化合物と呼ばれる)を同定し、リード化合物を変形させ、これらの変形化合物の性質及び活性を評価することによって生成される。しばしば、このような分析のために、ハイスループット・スクリーニング法が使用される。
【0030】
「有機低分子」は、約50ダルトンを超え、約2500ダルトン未満、好ましくは約2000ダルトン未満、好ましくは約100〜約1000ダルトン、更に好ましくは約200〜約500ダルトンの分子量を有する。天然又は合成の有機分子を指す。「siRNA」又は「RNAi」は、二本鎖RNAであって、遺伝子又は標的遺伝子として同じ細胞中にsiRNAが発現した場合に、二本鎖RNAが遺伝子又は標的遺伝子の発現を現象又は阻害する能力を有するRNAを形成する核酸を指す。従って、「siRNA」又は「RNAi」は、相補鎖によって形成される二本鎖RNAを指す。二本鎖分子を形成するためにハイブリダイズするSiRNAの相補性部分は、通常、実質的な、又は完全な同一性を有する。一実施形態において、siRNAは、標的遺伝子と実質的又は完全に同一性を有し、二本鎖siRNAを形成する核酸を指す。典型的には、siRNAは、少なくとも約15〜50ヌクレオチド長(例えば、二本鎖siRNAの各相補配列は15〜50ヌクレオチド長であり、二本鎖siRNAは約15〜50塩基対長、好ましくは約20〜30塩基ヌクレオチド、好ましくは約20〜25又は約24〜29ヌクレオチド長、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチド長)である。
【0031】
「機能的効果の測定」は、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチド(表1から6のポリヌクレオチド、又は表1〜6の遺伝子によってコードされるポリペプチド)の影響下で間接的又は直接的であるパラメータを増加又は減少する化合物についての、物理的及び化学的又は表現型の効果を測定する等のアッセイを指す。このような機能的効果は、例えば、スペクトル特性(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)、水力学特性(例えば、形状)、クロマトグラフィー、又はタンパク質についての溶解性の変化;タンパク質の誘導マーカー又は転写活性の測定;リガンド結合親和力の測定;カルシウム流入の測定;本発明のポリペプチドの酵素的産物の蓄積又は基質の結合の測定;本発明のポリペプチドのタンパク質レベルの変化の測定;RNA安定性の測定;Gタンパク質結合;GPCRリン酸化又は脱輪酸化;シグナル変換;例えば、受容体−リガンド相互作用、第二のメッセンジャー濃度(例えば、cAMP、IP3又は細胞内Ca2+);レポーター遺伝子発現(CAT、ルシフェラーゼ、β−gal、GFP等の下流の同定);化学発光、蛍光、比色法、抗体結合、誘導マーカー、及びリガンド結合アッセイ等の、当業者に既知の何れかの方法によって測定することができる。
【0032】
可能性のある阻害剤、活性化剤又は調節物質で処理した、本明細書に開示される核酸又はタンパク質を含む試料、又はアッセイを、阻害剤、活性化剤又は調節物質を有さない対照試料と比較し、阻害の程度を調べる。対照試料(阻害剤と処理しない)を、100%の相対的タンパク質活性値とする。対照に対する活性値が約80%、好ましくは50%、更に好ましくは25〜0%である場合、阻害が得られる。対照(活性化剤で処理しない)に対する、活性値が110%、更に好ましくは150%、更に好ましくは200〜500%(即ち、対照と比較し、2〜5倍高い)、更に好ましくは1000〜3000%高い場合、活性が得られる。
【0033】
「生物学的試料」には、生検及び検死試料、組織病理の目的のために冷凍された切片等の組織が含まれる。このような試料には、血液、血清、リンパ球、髄液、唾液、組織、溶解された細胞、脳生検、培養細胞、例えば、一次組織、移植片、及び形質転換細胞、便、尿等が含まれる。生物学的試料は、通常、真核生物、最も好ましくは、例えば、チンパンジー又はヒト;牛;犬;猫等の、霊長類等の哺乳動物;例えば、モルモット、ラット、マウス等のげっし動物;又は鳥、は虫類又は魚から得られる。生物学的試料は、核酸及びタンパク質を試験するために使用することができる。
【0034】
「抗体」は、検体(抗原)に特異的に結合し、認識する免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子群、又はそれらの断片によって実質的にコードされるポリペプチドを指す。認識される免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域、及び無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κ又はλの何れかとして分類される。重鎖は、それぞれ、順番に免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを定義する、γ、μ、α、δ又はεとして分類される。
【0035】
具体的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は四量体を含む。各四量体は、各対が1本の「軽」鎖(約25kD)及び1本の「重」鎖(約50〜70kD)を有する、2つの同一のポリペプチド鎖からなる。各鎖のN末端は、主として抗原認識に関与する約100〜110、又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を定義する。可変の軽鎖(VL)及び可変の重鎖(VH)は、それぞれ軽、及び重鎖を指す。
【0036】
抗体は、例えば、インタクトの免疫グロブリン、又は種々のペプチダーゼによって消化されることによって生産される、十分に特徴付けされた種々の断片として存在する。従って、例えば、ペプシンはヒンジ領域中のジスルフィド結合で抗体を消化し、それ自身、ジスルフィド結合によってVH−CHと結合する軽鎖であるFabの二量体である、F(ab)’2を産生する。該F(ab)’2は穏和な条件下で還元され、ヒンジ領域中のジスルフィド結合が破壊され、それによって、該F(ab)’2二量体はFab’単量体に変換される。該Fab’単量体は、基本的に、ヒンジ領域の一部を有するFabである(Paul (Ed.) Fundamental Immunology, Third Edition, Raven Press, NY (1993)を参照)。インタクトの抗体の消化の点から種々の抗体断片が定義されるが、当業者は、このような断片が、化学的、又は組換えDNA法を使用することによりデノボ合成できることを理解するだろう。従って、本明細書で使用されるように、抗体なる用語は、全抗体の修飾によって産生された断片、又は組換えDNA法(例えば、一本鎖Fv)を使用して合成されたものも含む。
【0037】
「ペプチド模倣薬」という用語は、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗物質又は作用物質の実質的に同一の構造及び機能特性を有する合成的な化合物を指す。ペプチド類似体は、通常、鋳型ペプチドの性質と類似の性質を有する、非ペプチド薬剤として、製薬工業において通常に使用される。従って、これらの種類の非ペプチド化合物は「ペプチド模倣薬」、又は「ペプチド模倣薬」と呼ばれる(本明細書に参考組み入れられている、Fauchere, Adv. Drug. Res. 15:29 (1986);Veber and Freidinger TINS p.392 (1985);及びEvans, et al., J. Med. Chem. 30:1229 (1987))。治療上有用なペプチドと構造的に同一であるペプチド模倣薬は、治療的又は予防的効果に相当する、又は向上させるために使用することができる。一般的に、ペプチド模倣薬は、CCX CKR等のパラダイムポリペプチド(即ち、生物学的又は薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に同一であるが、例えば、−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、−CH=CH−(シス及びトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−、及びのCH2SO−からなる群から選択される結合によって置換されていてもよい、1つ以上のペプチド結合を有する。この模倣薬は、完全に、合成の、アミノ酸の非天然類似体からなっていてもよく、又は部分的に天然のペプチドアミノ酸及び部分的にアミノ酸の非天然の類似体のキメラ分子であってもよい。このような置換が、模倣薬の構造及び/又は活性を実質的に変化させない限り、この模倣薬は、任意の量の、天然の保存的なアミノ酸置換を組み込むことができる。例えば、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの結合又は酵素活性を実施することができるか、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの酵素活性又は発現を阻害又は上昇することができる場合、模倣薬組成物は本発明の範囲内である。
【0038】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAの断片を意味し、コード領域の前後の領域、及び個々のコード断片(エクソン)の間に入る配列(イントロン)が含まれる。
【0039】
「単離する」という用語は、核酸又はタンパク質に適用する場合、天然の状態に関連して、核酸又はタンパク質が、他の細胞成分を本質的に含まないことを意味する。例え、乾燥又は水溶液の何れかにあっても、好ましくは均一な状態である。純度及び均一性は、通常、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、又は高速液体クロマトグラフィー等の分析化学技法を使用して測定することができる。調製物中に存在する優勢な種であるタンパク質が、実質的に精製されている。特に、単離された遺伝子は、該遺伝子に隣接し、興味ある遺伝子以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから単離される。「精製された」という用語は、電気泳動ゲルにおいて基本的に1本のバンドを生じさせる、核酸又はタンパク質を意味する。特に、核酸又はタンパク質は、少なくとも85%純粋、更に好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは99%純粋である。
【0040】
「核酸」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、一本又は二本鎖形態の何れかにおける、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそのポリマーを指す。特に限定されない限り、この用語は、基準核酸と同様の結合特性を有し、天然ヌクレオチドと同様の方法で代謝される、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する。特に指示がない限り、特定の核酸配列は又、それらの保存的に修飾された変異形(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、相同分子種、SNP、ハプロタイプ、及び相補配列、並びに明示的に示される配列を暗に包含する。具体的に、縮重コドンの置換は、1つ以上の選択された(又は全ての)コドンの第三の位置を、混合された塩基及び/又はデオキシイノシン残基と置換される配列を生成することにより達成される場合がある(Batzer, et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991);Ohtsuka, et al., J. Biol. Chem. 260:2605−2608 (1985);及びCassol, et al., (1992);Rossolini, et al., Mol. Cell. Probes 8:91−98 (1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、及び遺伝子によってコードされるmRNAと交換可能に使用される。
【0041】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書において、アミノ酸残基のポリマーを指すように、交換可能に使用される。用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的化学模倣薬であるアミノ酸ポリマー、及び天然のアミノ酸ポリマー、及び非天然のアミノ酸ポリマーにあてはまる。本明細書で使用されるように、用語は、アミノ酸残基が共有結合ペプチド結合によって結合している、全長タンパク質(即ち、抗原)を含む、任意の長さのアミノ酸鎖を含む。
【0042】
「アミノ酸」という用語は、天然及び合成アミノ酸、及び天然のアミノ酸と同様な方法で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物質を指す。天然のアミノ酸は、遺伝コードによってコードされるもの、及びヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、及びO−ホスホセリン等の、後に修飾されるアミノ酸である。アミノ酸類似体は、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム等の、天然のアミノ酸と同一の基本的化学構造、即ち、水素に結合しているα炭素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基を有する化合物を指す。このような類似体はR基(例えば、ノルロイシン)によって修飾されるか、又はペプチドの骨格が修飾されているが、天然のアミノ酸としての基本的化学構造を保持している。「アミノ酸模倣体」は、アミノ酸の一般的化学構造と異なる構造を有するが、天然のアミノ酸と同一の様式で機能する化合物を指す。
【0043】
アミノ酸は、IUPAC−IUB生化学命名法委員会に推奨されている、通常に知られている3文字の記号、又は1文字記号で称することができる。同様に、ヌクレオチドは、通常に認められる1文字コドンで称することができる。
【0044】
「保存的に修飾された変形」は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列について、「保存的に修飾された変形」は、同一又は実質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を意味し、又はアミノ酸配列をコードしない核酸は基本的に同一配列を指す。遺伝コードの縮重のため、多くの機能的に同一の核酸が、あるタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは、全てアミノ酸アラニンをコードする。従って、コドンによってアラニンが特定される全ての位置において、コドンは、コードされるペプチドを変化させることなく、関連するコドンの何れかに変化することができる。このような核酸の変異は、保存的修飾変形の一種である、「サイレント変異」である。本明細書における、ポリペプチドをコードする全ての核酸配列は又、核酸の全ての可能なサイレント変異を表す。当業者は、核酸における全てのコドンが、機能的に同一の分子を得るために修飾され得る(通常、メチオニンについての唯一のコドンであるAUG、及び通常、トリプトファンについて唯一のコドンであるTGGを除き)ことを認識するだろう。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、各記載された配列において絶対的である。
【0045】
アミノ酸配列として、当業者は、コード配列中において、単一のアミノ酸又はわずかな割合のアミノ酸が変化し、付加され、又は欠失された核酸、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の配列への個々の置換、欠失又は付加が、変化が、化学的に同様なアミノ酸を使用してアミノ酸置換をもたらす「保存的に修飾された変形」であることを認識する。機能的に同様なアミノ酸をもたらす保存的置換表は当業者に周知である。更に、このような保存的に修飾された変形は、本発明の多様な形式の変形、種間の相同対、及び対立遺伝子を排除しない。
【0046】
以下の8種の群のそれぞれは、相互に保存的な置換であるアミノ酸を含有する。
【0047】
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)
4)アルギニン(R)、リシン(K)
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);及び
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creghton, Proteins (1984)を参照)
「配列の同一性の割合」は、基準配列と比較すると(付加又は欠失を含まない)、付加又は欠失(即ち、gap)を含む比較ウィンドウ(comparison window)を越えて2種の最適に整列された配列を比較することによって決定される。割合は、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列で起こる位置の数を決定することによって適合する位置の数を得て、比較ウィンドウの位置の総数により適合された位置の数を除算し、そして結果に100を乗算して、配列同一性の割合を得ることによって算出される。
【0048】
2種以上の核酸又はポリペプチドとの関連で、「同一の」又は割合の「同一性」という用語は、比較し、比較ウィンドウの全体に最大の一致について整列化し、又は以下の配列比較アルゴリズムを使用して、又は手動の配列及び外観検査により測定するように領域を指定した場合に、同一であるか、又は特定の割合の同一である(即ち、特定の領域の範囲内で60%同一、必要に応じて65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%同一)アミノ酸残基又はヌクレオチドを有する2種以上の配列を指す。その結果、このような配列は、「実質的に同一」であると考えられる。又、この定義は試験配列の相補体を指す。任意に、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド長の領域にわたり、更に好ましくは100〜500又は1000以上のヌクレオチド長野領域にわたって存在する。
【0049】
配列の比較のために、通常、1個の配列が、試験配列が比較される基準配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び基準配列をコンピュータに入力し、次いで、必要であれば座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを使用することができ、又は多のパラメータを指定することができる。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づき、基準配列に対する試験配列についての配列同一性の割合を算出する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「比較ウィンドウ」には、配列が、2種の配列が任意に配列された後に隣接位置の同一の数の基準配列と比較される、20〜600、通常は約50〜約200、更には約100〜150からなる群から選択される隣接位置の数の何れかの部分に対する基準が含まれる。比較のための配列方法は当業界で周知である。比較のための配列の最適な配列は、例えば、Smith and Waterman (1970) Adv. Appl. Math, 2:482cのローカルホモロジーアルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48, 443のホモロジー配列アルゴリズム、Pearson and Lipman (1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 2444の類似法についての検索、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)のコンピュータ処理された実行、又は手動の配列及び外観検査(例えば、Ausubel, et al., Current Protocols in Molecular Biology(1995年追補)により実施することができる。
【0051】
配列同一性の割合及び配列同一性を決定するために適しているアルゴリズムの具体例は、それぞれ、Altschul, et al., (1977) Nuc. Acids Res, 25:3389−3402,及びAltschul, et al., (1990) J Mol Biol 215:403−410に開示されている、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムである。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センターを通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムはまず、データベース中の同じ長さの単語を配列した時に、幾つかの正の値の閾値スコアTに適合するか満足させる疑問のある配列中の長さWの短い単語を同定することによって、ハイスコアリング配列対(HSP)を同定する。Tは、隣接するワードスコア閾値として言及される(Altschul, et al.,同上)。初期隣接ワードは、それらを含む、長いHSPsを発見するための調査を開始するための種として機能する。累積された配列スコアが増加することができる限りは、ワードヒットは、各配列にそって両方向に伸びる。ヌクレオチドのための累積的なスコアは、パラメータM(適合した残基のペアについてのレワードスコアは、いつも>0である)及びN(ミスマッチの残基についてのペナルティスコア;いつも<0である)アミノ酸配列について、スコアリングマトリックスは、累積的なスコアを計算するために使用される。累積的な配列スコアが、その最大獲得値から量Xによって減少した時;1つ以上の負のスコアの残基の配列の蓄積のため、累積的スコアが0又はそれ以下になった時;又はそれぞれの配列の末端に達した時に、各方向におけるワードヒットの伸長は停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、配列の感度及び速度を決定する。BLASTINプログラム(ヌクレオチド配列についての)はデフォルトとして、11のワード長(W)、予想(E)又は10、M=5、N−4及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムが、デフォルトとして、3のワード長、10の予想、及び50のBLOSUM62スコアリングマトリックス配列(B)、10の予想(E)M=5、N=4及び両鎖の比較を使用する。
【0052】
又、BLASTアルゴリズムは、2個の配列の間の同一性の統計的分析を実施する(例えば、Karlin and Altschul (1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873−5787を参照)。BLASTアルゴリズムによって供給される同一性の1つの基準は、最少額可能性であり(PN)、それは、偶然に生じる2種のヌクレオチド又はアミノ酸配列の間の適合による可能性の徴候をもたらす。例えば、核酸は、基準核酸への試験核酸の比較における最小額可能性が約0.2未満であり、好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、基準配列と同一であると考えられる。
【0053】
2種の核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であるという表示は、後述するように、第一の核酸によってコードされるポリペプチドが第二の核酸によってコードされるポリペプチドに対して産生された抗体と、免疫学的に交差反応性を有することである。従って、例えば、2種のペプチドが保存的置換のみで異なる場合、ポリペプチドは、第二のポリペプチドと実質的に同一である。2種の核酸配列が同一であるという他の表示は、2種の分子又はそれらの相補対が、ストリントな条件下で相互にハイブリダイズすることである。2種の核酸配列が実質的に同一であるという、更に他の表示は、該配列を増幅するために同一のプライマーを使用することができることである。
【0054】
「選択的に(又は特異的に)ハイブリダイズする」という語句は、配列が複合混合物中に存在する場合、ストリンジェントな条件下で、特定のヌクレオチド配列とのみ、結合し、二重鎖を形成し、又はハイブリダイズすることを指す(例えば、全細胞又はライブラリーDNA又はRNA)。
【0055】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、通常、核酸の複合混合物中で、プローブが標的配列とハイブリダイズするが、他の配列とはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェント条件は配列依存的であり、異なる環境下では異なる。より長い配列は、高温で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範囲のガイドは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Probes, “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays” (1993)に見られる。一般的に、ストリンジェントな条件は、予め決められたイオン強度pHで特異的配列についての熱融解点より約5〜10℃低いように選択される。Tmは、50%のプローブが、平衡状態Tmにおいて、標的配列が過剰に存在するとして、50%のプローブが平衡状態である)で標的配列に相補的にハイブリダイズ温度(定義されたイオン強度、pH、及び核酸濃度の下)である。ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0〜8.3で約1.0Mナトリウムイオン未満、通常、約0.01〜1.0Mナトリウムイオン(又は他の塩)濃度であり、温度は、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)について少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば50ヌクレオチドを超える)について少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件は又、ホルムアミド等の不安定化剤の添加により達成される。選択的又は特異的ハイブリダイゼーションのため、ポジティブなシグナルはバックグランドの数なくとも2倍であり、必要に応じて、バックグランドの10倍である。具体的なハイブリダイゼーション条件は以下の通りであり得る。50%ホルムアミド、5×SSC、及び1%SDS、42℃でインキュベーション、又は5×SSC、1%SDS、65℃でインキュベーション、65℃で、0.2×SSC、及び0.1%SDSで洗浄するが、このような洗浄は、5、15、30、60、120分又はそれ以上実施することができる。表1〜6に記載された遺伝子とハイブリダイズする核酸は本発明に含まれる。
【0056】
コードするポリペプチドが実質的に同一である場合、ストリンジェントな条件下で相互にハイブリダイズしない核酸は、実質的に同一である。例えば、核酸のコピーが、遺伝コードにより可能とされた、最大のコドン縮重を使用して生成される場合、このようなことが起こる。このような場合、核酸は通常、中程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。具体的な「中程度のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」には、37℃での40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、及び45℃での1×SSC中での洗浄が含まれる。このような洗浄は、5、15、30、60、120分又はそれ以上実施することができる。ポジティブなハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、他のハイブリダイゼーション及び洗浄条件が、同一のストリンジェンシーの条件をもたらすように利用されることを認識する。
【0057】
PCRについて、約36℃の温度は低ストリンジェンシーな増幅のために通常であるが、アニーリング温度はプライマーの長さに依存し約32℃及び48℃の間で変化する。高ストリンジェンシーPCR増幅のためには、約62℃の温度が通常であるが、高ストリンジェンシーアニーリング温度は、プライマーの長さ及び特異性に依存し、約50℃〜約65℃の範囲であり得る。高ストリンジェンシー及び低ストリンジェンシーの両方についての典型的なサイクル条件には、30秒から2分の90℃〜95℃の変性段階、持続的な30秒から2分のアニーリング段階、及び約72℃で1〜2分の伸長段階が含まれる。低ストリンジェンシー及び高ストリンジェンシー増幅のプロトコール及びガイドラインは、例えば、Innis, et al., PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications(1990)によって供給される。
【0058】
「核酸配列コーディング」という語句は、rRNA、tRNA、又は特定のタンパク質又は一次アミノ酸配列構造的RNA配列情報、又はトランス作用因子制御物質のための結合部位を含む核酸を指す。この語句は、特に、自然の配列、又は特定の宿主細胞におけるコドン優先度に適合するために導入される配列の縮重コドン(即ち、同一のアミノ酸をコードするコドン)を含む。
【0059】
「組換え体」という用語は、例えば、細胞、又は核酸、タンパク質、又はベクターに関して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質又はベクターが、異種核酸又はタンパク質の導入、又は野生型の核酸又はタンパク質の改変によって修飾されるか、又は細胞がこのように修飾された細胞に由来することを示す。従って、例えば、組換え体細胞は野生型(非組換え体)内には見出されないか、又はそうでなければ、異常に発現するか、低い発現か、発現しない野生型遺伝子を発現する。
【0060】
「異種」という用語は、核酸の一部に関して使用される場合、核酸は、天然において相互に同一の関連において示されない、複数のサブシークエンスを含むことを示す。例えば、核酸は、通常組換えにより産生される新規の機能的核酸、例えば、1つの源由来のプロモーター及び別の源由来のコード領域を製造するために配列された、関係ない遺伝子からの複数の配列を有する。同様に、異種タンパク質は、天然において相互に同一の関連性において見出される複数の配列を含むタンパク質(融合タンパク質)を示す。
【0061】
「発現ベクター」は、宿主細胞内で特定の核酸の翻訳を可能にする、特定の核酸成分を有する、組換え的又は合成的に精製された核酸構築物である。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス又は核酸断片の一部であり得る。通常、発現ベクターには、プロモーターに動作可能に結合した、転写される核酸が含まれる。
【0062】
「抗体に特異的に(又は選択的に)結合」、又は「特異的に(又は選択的に)免疫反応」という語句は、タンパク質又はペプチドに言及する場合、タンパク質及び他の生物学的分子の異種不均質な集団の存在下に、タンパク質の存在を決定することができる結合反応を指す。従って、指摘される免疫アッセイ条件下に、特定の抗体は特定のタンパク質と結合し、試料中に存在する、かなりの量の他のタンパク質とは結合しない。このような条件下における抗体に対する特異的結合は、特定のタンパク質についての特異性のために選択される抗体を必要とする。例えば、本発明の何れかのポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質に対して産生された抗体は、タンパク質との抗体特異的免疫反応(多型変異体を除く、他のタンパク質とは反応しない)を得るために選択することができる。種々の免疫反応が、特定のタンパク質と特異的に免疫反応するタンパク質を選択するために使用することができる。例えば、固相ELISA免疫アッセイ、ウェスタンブロット、免疫組織化学が、タンパク質と特異的に免疫反応するモノクローナル抗体を選択するために使用される。特異的な免疫反応を測定するために使用することができる免疫アッセイ及び条件の記載については、Harlow and Lane Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, NY (1988)を参照されたい。通常、特異的な、又は選択的な反応は、バックグラウンドシグナル又はノイズの少なくとも2倍であり、更に典型的にはバックグラウンドの10〜100倍である。
【0063】
本明細書で使用されるような、「精神障害にかかりやすい」ヒトとは、一般集団における平均的な個体と比べた時に、精神障害の発現の傾向又は一層高い可能性を有するヒトであることを意味する。
【0064】
I.序論
精神障害の複雑な遺伝的基礎を理解するため、本発明は、精神病性障害及び気分障害に罹患している被験体の中枢神経系で特に特異的に発現する遺伝子の発現パターンの調査を実施する研究を提供する。精神障害に関連する広いスペクトルは、精神障害に罹患している患者における、複雑な遺伝的基礎及び複雑な遺伝子発現を反映している。本明細書に開示される遺伝子の異なる組み合わせは、1つ以上の精神障害に関与する。更に、脳経路又は回路、及び細胞内経路は、精神障害の発現及び診断を理解するために重要である。本明細書で開示される、選択された脳領域(前帯状皮質(AnCg)、背面前頭葉皮質(DLPFC)、小脳皮質(CB)、嗅内皮質(ERC)、上側頭回(STG)、頭頂葉皮質(PC)、側坐核(nAcc)、腹側視床(VThal)、内側視床(MThal)、扁桃体(AMY)及び/又は海馬(HC))が、精神病性障害及び気分障害等の精神障害の臨床症状において関係している。従って、特定の脳領域に焦点を当てた脳撮像研究、脳領域における細胞構造の変化、脳領域における、重要な神経伝達物質又は関連分子の発現、精神障害の発現の原因となる全ての脳領域における細胞内経路は、本明細書において使用される、診断及び処置において考慮すべき重要なことである。
【0065】
本発明は、正常な個体と比較した場合の、種々の脳領域、又は精神障害(例えば、精神分裂病、MDD及びBPD)に罹患している患者のリンパ球(例えば、表4〜6)での、mRNA又はタンパク質レベルにおける表1〜4及び6の遺伝子の発現の変化(上昇又は減少の何れも)(例えば、表1〜4及び6)を証明する。従って、本発明は、表1〜14に記載された遺伝子及び関連する生化学経路の転写又は翻訳産物のレベルを測定することにより、精神分裂病、MDD及びBPD等の精神障害、及び他の精神障害を診断する方法を提供する。このような遺伝子の染色体位置は、特定の障害の発現と結びつく領域中の他の遺伝子の発見に使用することができる。本発明の表6は又、AGAと関連する調節部位と関連する単一ヌクレオチド多型を提供する。
【0066】
更に、本発明は、本明細書に開示された、翻訳産物又は転写物の発現の機能的効果を修飾する化合物を選択することにより、このような疾患の処置に有用な化合物を同定する方法を提供する。本発明は又、例えば、遺伝子療法により本発明の化合物を投与することにより、このような精神障害に罹患している患者を処置する方法を提供する。治療化合物には、抗体、ペプチド、アンチセンス分子、siRNA、及び有機低分子が含まれる。
【0067】
精神病性障害及び気分障害と関連する遺伝子、及び該遺伝子がコードするポリペプチドは、全ての精神障害又は選択された精神障害に特異的なプローブセットを含む、GeneChipTM等の種々の分子診断手段の設計及び開発を促進するのに、又、遺伝カウンセリングと併せて新生児をスクリーニングするための出生の前及び/又は後の診断手段として有用である。他の診断的応用には、疾患へのかかりやすさ、予後の評価、疾患又は治療の過程の監視、患者の臨床応答を有する特定のゲノムモチーフを個別医薬品と関連付けることによる、予測的な薬物プロファイリングシステムを通じた個別医薬品の供給が含まれる。更に、本発明は、遺伝子、mRNA、タンパク質及び経路レベル(例えば、Basile VS,Masellis M,Potkin SG,Kennedy JL.Pharacogenomics in schizophrenia:the quest for individualized therapy)における薬理遺伝学的標的の同定を含むが、これらに限定されない。スプライシング変異株は又、診断及び処置的用途に有用である。診断キットは本発明によって意図され、アレイ、ナノ粒子及び磁気ビーズが含まれる。マーカーの組み合わせは、有用な診断をもたらす。脳発現パターン、領域、経路、及び回路は、インビボでの画像化及び診断において有用である。
【0068】
本明細書で開示された、遺伝子及び該遺伝子がコードするポリペプチドは、精神障害の治療又は予防のための治療薬の開発のための薬剤標的として有用である。精神障害は、パーキンソン病又はアルツハイマー病等の神経系疾患等と高い共通の病的状態を有する。従って、本発明は、精神分裂病等の精神障害を含む、複数の病状を有する患者の診断及び処置に使用することができる。
【0069】
抗精神病性障害薬は一般的に、精神分裂病の処置に対して同等の効果であるが、異なる機序で作用する。精神分裂病の治療薬の同様の効果は、それらの治療薬が未だに同定されていない共通の経路を介して作用することを示唆している。本明細書に示される結果により実証される通り、これらの薬剤は、共通の遺伝子及び/又は遺伝子の共通のグループ、並びに固有の組の遺伝子を調節する。
【0070】
本明細書に記載の遺伝子は、気分障害及び精神病性障害の特異的な診断又は予後診断を提供するために使用されてもよい。場合により、特異的に発現する遺伝子は、自殺未遂等の特定の症状又は転帰を予測及び処置するために使用されてもよい。本明細書に記載の治療薬は、既知の治療薬と組み合わせて使用されてもよい。核酸治療薬はアデノウイルスを使用して送達されてもよいが、ペプチド、核酸及びその他の治療薬分子は、ナノ粒子及び転移ペプチドを使用して送達されてもよい。経口により利用できるペプチドは、D−アミノ酸又はペグ化を使用して製造されてもよく、血清半減期はアルブミン結合等を使用して延長されてもよい。
【0071】
II.本発明で使用するための一般的組換え核酸法
本発明の多数の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドが単離され、組換え法を使用してクローニングされる。このようなポリヌクレオチドには、例えば、タンパク質の発現、又は変形、誘導体発現カセットの発現又は生成の際に、異なる種における本発明の配列を単離又は検出するために遺伝子発現を監視し、例えば、本発明の核酸又はポリペプチドの突然変異を検出、又は発現レベルを測定するために、患者中で診断の目的のために使用される、表1〜14に記載されたものが含まれる。幾つかの実施形態において、本発明の配列は、任意に異種プロモーターに結合していてもよい。一実施形態において、本発明の核酸は、例えば、特に、ヒト、マウス、ラット、霊長類等を含む、任意の哺乳動物由来のものである。
【0072】
A.組換え核酸の一般的方法
本発明は、組換え遺伝学の分野における通常の技法に基づいている。本発明において使用される一般的方法を開示する基本的テキストには、Sambrook, et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3rd ed. 2001);Krigler, Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual (1990);及びCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel, et al., eds., 1994)が含まれる。
【0073】
核酸については、サイズは、キロベース(kb)又は塩基対(bp)で表わされる。これらは、配列決定された核酸、又は公開されたDNA配列から、アガロース又はアクリルアミドゲル電気泳動によって得られる。タンパク質については、サイズはキロダルトン(kDa)又はアミノ酸残基数で表される。タンパク質のサイズは、配列決定されたタンパク質、誘導されたアミノ酸配列から、又は公開されたタンパク質の配列から、電気泳動で評価される。
【0074】
市販されていないオリゴヌクレオチドは、最初に、Beaucage & Caruthers, Tetrahedron Letts. 22:1859−1862 (1981)に記載された固相ホスホラミダイトトリエステル法に従い、Van Devanter, et al., Nucleic Acids Res. 12:6159−6168 (1984)に記載されたような自動化シンセサイザーを使用して化学的に合成することができる。オリゴヌクレオチドの精製は、Pearson & Reanier, J. Chrom. 255:137−149 (1983)に記載されたように、未変性アクリルアミドゲル電気泳動、又は陰イオン交換HPLCの何れかによる。
【0075】
クローニングされた遺伝子、及び合成オリゴヌクレオチドの配列は、クローニング後に、例えば、Wallance, et al., Gene 16:21−26(1981)の二重鎖鋳型の配列決定のためのチェーンターミネーション法を使用して証明することができる。
【0076】
B.所望のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の単離のためのクローニング法
対象のタンパク質をコードする核酸は、cDNA又はゲノムDNAをコードするために生成されたDNA配列ライブラリーからクローニングされる。特定の配列はオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズすることにより配置することができ、その配列は、表1〜6に記載された遺伝子及び/又はSNPの配列から得られ、PCRプライマーのための基準をもたらし、特異的なプローブを単離するのに好適な領域を定義する。又、配列が発現ライブラリーにクローニングされる場合、発現組換えタンパク質は、表1〜14に記載された遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドに対する抗血清又は精製された抗体を使用して免疫学的に検出することができる。
【0077】
ゲノム及びcDNAライブラリーを製造し、スクリーニングする方法は、当業者に周知である(例えば、Gubler and Hoffman, Gene 25:263−269 (1983);Benton and Davis, Science, 196:180−182 (1977):及びSambrook,同上を参照)。脳細胞は、本発明のRNA及びcDNA配列を単離するのに好適な細胞の例である。
【0078】
簡潔に述べると、cDNAラブラリーを生成するために、mRNA及びcDNA配列が豊富な起源を選択すべきである。次いで、mRNAをcDNAにし、組換えベクター中に結合し、増殖、スクリーニング及びクローニングのための組換え宿主中に形質転換する。ゲノムライブラリーのために、DNAを機械的に剪断するか、酵素的に消化して、適切な組織から抽出し好ましくは約5〜100kbの断片を得る。次いで、断片を勾配遠心分離によって所望でないサイズから分離し、バクテリオファージλベクター中に構築する。これらのベクター及びファージはインビトロにてパッケージされ、組換えファージをプラークハイブリダイゼーションにより分析する。Grunstein, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,72:3961−3965 (1975)に一般的に記載されているように、コロニーハイブリダイゼーションを実施する。
【0079】
代替的な方法としては、mRNA又はDNA鋳型上で、ポリメラーゼ伸長と、合成オリゴヌクレオチドプライマーの使用を組み合わせる。適切なプライマーは、本発明の特定の配列から設計することができる。このポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法は、mRNA、cDNA、ゲノムライブラリー又はcDNAライブラリーから、直接、対象となるタンパク質をコードする核酸を増幅する。制限エンドヌクレアーゼ部位を、プライマー中に導入することができる。ポリメラーゼ連鎖反応、又は、例えば、特定のタンパク質をコードし、該タンパク質を発現する核酸をクローニングし、生理的試料中で、本発明のポリペプチドをコードするmRNAの存在を検出するためのプローブとして使用される核酸を合成するためのその他のインビトロ増幅反応も有用である。PCR反応により増幅された遺伝子は、アガロースゲルから精製し、適当なベクター中でクローニングすることができる。
【0080】
哺乳動物組織由来の本発明のポリヌクレオチドを同定するための適当なプライマー及びプローブは、本明細書で提供された配列から誘導することができる。PCRの概要については、Innis, et al., PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press, San Diego (1990)を参照されたい。
【0081】
合成オリゴヌクレオチドは、遺伝子を構築するために使用することができる。これは、遺伝子のセンス及びアンチセンス鎖を表す、通常40〜120bp長の一連の重複するオリゴヌクレオチドを使用して行われる。次いで、これらのDNA断片がアニーリング、結合、そしてクローニングされる。
【0082】
本発明のポリペプチドをコードする遺伝子は、発現のために哺乳動物細胞に形質転換する前に、中間ベクターを使用してクローニングすることができる。これらの中間ベクターは、通常、原核生物ベクター又はシャトルベクターである。タンパク質は、当業者に周知の標準的な方法を使用して、原核生物に、又は後述する真核生物の何れかに発現してもよい。
【0083】
III.本発明のタンパク質の精製
本発明の天然又は組換え型ポリペプチドは何れも、機能アッセイで使用するために精製することができる。天然のポリペプチド、例えば表1〜14に記載の遺伝子によってコードされるポリペプチドが、例えば、脳又は相同分子種のその他何れかの源等のマウス又はヒトの組織から精製されてもよい。組換え型ポリペプチドは、何れかの好適な発現システムから精製されてもよい。
【0084】
本発明のポリペプチドは、硫酸アンモニウム等の物質による選択的沈殿、カラムクロマトグラフィー、免疫沈降法等(例えば、Scopes, Protein Purification: Principles and Practice (1982);米国特許第4,673,641号;Ausubel, et al.,同上;及びSambrook, et al.,同上を参照)を含めた標準的な技法により、実質的に純粋にまで精製される場合がある。
【0085】
組換え型ポリペプチドが精製される場合、幾つかの手順を使用することができる。例えば、確立された分子接着特性を有するタンパク質は、本発明のポリペプチドと可逆的に融合することができる。適切なリガンドを使用することで、これらのポリペプチドは、精製カラムに選択的に吸着した後、相対的に純粋な形態でカラムから溶出することができる。次に、この融合タンパク質を酵素活性により除去し、最終的には、免疫親和性カラムを使用してポリペプチドを精製することができる。
【0086】
A.組換え型細菌からのタンパク質の精製
形質転換された細菌によって、プロモーター誘導の後に組換えタンパク質が大量に発現する場合は通常、発現は構成的であるが、タンパク質は不溶性の凝集体に形成され得る。タンパク質の封入体の精製のために適している幾つかのプロトコールがある。例えば、凝集タンパク質(以下、封入体として言及される)は、通常は細菌細胞の破壊による通常、抽出、分離及び/又は精製(通常、約100〜150μg/mLのリゾチーム及び0.1%の非イオン性界面活性剤Nonidet P40の緩衝剤中でのインキュベーションによる)を必要とする。細胞懸濁液を、Polytronグラインダー(Brinkman Instruments[米国ニューヨーク州ウェストベリー])を使用して粉砕することができる。又、細胞を氷上で超音波処理することができる。細菌を溶解する他の方法は、両方とも、当業者には明らかである、Ausubel, et al.及びSambrook, et al.に記載されている。
【0087】
一般的に、細胞懸濁液を遠心し、封入体を含む沈殿物を、封入体を溶解しないが洗浄する20mM Tris−HCl(pH7.2),1mM EDTA,150mM NaCL及び2%Triton−X100等の緩衝剤中に再懸濁する。細胞残屑を除去するために、可能な限り洗浄手順を繰り返す必要がある。残存する、封入対の沈殿物を適切な緩衝剤(例えば、20mMリン酸ナトリウム,pH6.8,150mM NaCl)に再懸濁してもよい。他の適切な緩衝剤は当業者に明らかであろう。
【0088】
洗浄手順に続き、強力な水素受容体及び強力な水素供与体(又は、これらの特性をそれぞれ有する溶媒の組み合わせ)である溶媒の添加により、封入体を可溶化する。次いで、封入体を形成するタンパク質を希釈によって再生し、相溶性の緩衝剤で透析する。適当な溶媒には、尿素(約4M〜約8M)、ホルムアミド(少なくとも80%、容量/容量基準)、及び塩酸グアニジン(約4M〜約8M)が含まれるが、これらに限定されない。SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)及び70%ギ酸等の、凝集形成タンパク質を可溶化することができる幾つかの溶媒は、タンパク質の非可逆的な変性の可能性、それに伴う免疫原性及び/又は活性の欠失のため、この手順において使用するのに不適当である。塩酸グアニジン、及び同様の物質は変性剤であるが、この変性は非可逆的でなく、変性剤の除去(例えば、透析による)又は希釈によって再生が起こり、対象となるタンパク質の免疫原性及び/又は生物学的活性の再形成を可能にする。溶解化後、標準的分離技法により、タンパク質を他の細菌性タンパク質から分離することができる。
【0089】
或いは、細菌ペリプラズムからタンパク質を精製することが可能である。タンパク質を細菌のペリプラズムへ輸送する場合、細菌のペリプラズム画分は、当業者に既知のその他の方法に加えて、冷浸透圧ショックにより単離することができる(Ausubel, et al.,同上を参照)。ペリプラズムから組換えタンパク質を単離するため、細菌の細胞を遠心分離して沈殿物を形成する。沈殿を、20%ショ糖を含む緩衝剤に再懸濁する。細胞を溶解するため、細菌を遠心分離し、沈殿を、氷冷した5mM MgSO4中に再懸濁し、氷浴中で10分間維持する。細胞懸濁液を遠心分離し、上清を移し保存した。上清中に存在する組換えタンパク質は、当業者に周知の標準分離技法によって、宿主タンパク質から分離することができる。
【0090】
B.タンパク質精製のための標準タンパク質分離技法
1.溶解度分別
しばしば最初の手順として、及びタンパク質混合物が複合体である場合、初期の塩分別は、対象となる組換えタンパク質から多くの不要な宿主タンパク質の細胞タンパク質を分離することができる。好ましい塩は硫酸アンモニウムである。硫酸アンモニウムは、タンパク質混合物中の水の量を効果的に減少することにより、タンパク質を沈殿させる。次いで、タンパク質は、それらの溶解度を基準として沈殿する。タンパク質の疎水性が増すと、より低い濃度の硫酸アンモニウムで沈殿すると思われる。典型的なプロトコールは、得られる硫酸アンモニウム濃度が20〜30%になるように、タンパク質溶液に飽和硫酸アンモニウムを加えることである。これは、最も疎水性のタンパク質を沈殿させる。沈殿を捨て(対象となるタンパク質が疎水性でない場合)、上清に硫酸アンモニウムを既知の濃度まで添加して、対象となるタンパク質を沈殿させる。次いで、沈殿物を緩衝剤中で溶解し、必要に応じて透析又はダイアフィルトレーションにより、過剰な塩を除去する。冷エタノール沈殿等のタンパク質の溶解性に基づくその他の方法は、当業者に周知であり、複合タンパク質混合物を分画するために使用することができる。
【0091】
2.サイズ分画濾過
計算された分子量に基づき、より大きい、及びより小さいサイズのタンパク質を、異なるポアサイズの膜(例えば、Amicon又はMillipore膜)を通じた超遠心分離を使用して分離することができる。第一の手順として、タンパク質混合物を、対象となるタンパク質の分子量よりも小さい分子量のカットオフを有するポアサイズを有する膜を通じて超遠心する。次いで、超遠心の残留物を対象となるタンパク質の分子量より大きいカットオフを有する膜に対して限外濾過する。組換えタンパク質は、ろ液中の膜を通過する。次いで、ろ液を後述するようにクロマトグラフィー分析する。
【0092】
3.カラムクロマトグラフィー
対象となるタンパク質は又、それらのサイズ、正味の表面電荷、疎水度及びリガンドに対する親和性に基づいて、他のタンパク質から分離することができる。更に、タンパク質に対して産生した抗体を、カラムマトリックスに結合し、タンパク質を免疫精製することができる。これらの全ての方法は当業界で周知である。
【0093】
クロマトグラフィー技法は、任意のスケールで、且つ多くの異なる製造業者(例えば、Pharmacia Biotech)の機器を使用して実施できることは、当業者に明らかである。
【0094】
IV.遺伝子発現の検出
本発明のポリヌクレオチドの発現の検出が多くの用途を有することは、当業者
が認識するであろう。例えば、本明細書で考察する通り、患者における本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドのレベルの検出は、気分障害又は精神病性障害の診断、又は気分障害又は精神病性障害のかかりやすさを調べるのに有用である。更に、遺伝子発現の検出が、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現の調節物質を同定するのに有用である。
【0095】
核酸ハイブリダイゼーション技法を使用した特異的DNA及びRNAを測定する種々の方法は、当業者に既知である(例えば、Sambrook,同上を参照)。幾つか方法は電気泳動分離(例えば、DNAを検出するサザンブロット、及びRNAを検出するノーザンブロット)を含むが、DNA及びRNAの測定は、電気泳動分離の非存在下でも実施できる(例えば、ドットブロットによる)。ゲノムDNA(例えば、ヒト由来)のサザンブロットは、本発明のポリペプチドに影響を及ぼす遺伝病の存在を検出する、制限断片長多型(RFLP)のスクリーニングに使用することができる。
【0096】
核酸ハイブリダイゼーションのフォーマットの選択は、それほど重要というわけではない。種々の核酸ハイブリダイゼーションフォーマットが、当業者に公知である。例えば、一般的なフォーマットには、サンドイッチアッセイ及び競合又は置換アッセイが含まれる。ハイブリダイゼーション技法は、Hames and Higgins, Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach, IRL Press (1985);Gall and Pardue, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 63:378−383 (1969);及びJohn, et al., Nature, 223:582−587 (1969)に概説されている。
【0097】
ハイブリダイゼーション複合体の検出は、標的に対する二重鎖に対するシグナル発生複合体、及びヌクレオチド又は核酸プローブを必要とする。通常、このような結合は、リガンド結合プローブ、及びシグナルを有するリガンド結合体等の、リガンド及び抗リガンド相互作用を通じて生じる。シグナル発生複合体の結合は又、超音波エネルギーにさらすことにより、容易に加速される。
【0098】
又、標識は、ハイブリダイゼーション複合体の直接の検出を可能にする。例えば、標識がハプテン又は抗原である場合、試料は抗体を使用することによって検出することができる。これらのシステムにおいて、蛍光又は酵素分子を抗体に結合することにより、又は場合によって放射性標識に結合することにより、シグナルが生成される(例えば、Tijssen, “Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,” Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Burdon and van Knippenberg Eds., Elsevier (1985), pp.9−20を参照)。
【0099】
プローブは、通常、同位元素、発色団、ルミフォア(lumiphores)、色素原と同様に、直接的に、又は後にストレプトアビジン複合体結合し得るビオチンと同様に、間接的に標識化される。従って、本発明のアッセイにおいて使用される検出可能な標識は、一次標識(標識が、直接検出されるか、又は直接検出可能な成分を生産する成分)又は二次標識(一次標識に結合した、検出ラベル、例えば、免疫学的標識においては通常にあるもの)であり得る。通常、標識化シグナル核酸は、ハイブリダイゼーションを検出するために使用される。相補的な核酸又はシグナル核酸は、ハイブリダイズしたポリヌクレオチドの存在を検出するために通常に使用される、幾つかの方法の何れか1つの方法によって標識化される。最も一般的な検出方法は、3H、125I、35S、14C又は32Pで標識されたプローブ等を使用したオートラジオグラフィーの使用である。
【0100】
他の標識には、例えば、標識されたリガンドのための特異的結合対のメンバーとして供給することのできる、標識抗体、フルオロフォア、化学発光剤、酵素及び抗体と結合するリガンドが含まれる。標識への導入、標識方法及び標識の検出は、Polak and Van Noorden Introduction to Immunocytochemistry, 2nd ed., Spring Verlag, NY (1997);及びHaugland Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, a combined handbook and catalogue Published by Molecular Probes, Inc. (1996)に見出される。
【0101】
一般的に、特定のプローブ又はプローブの組み合わせを監視する検出器は、検出試薬の標識を検出するために使用される。通常の検出器には、分光光度計、光電管及び光ダイオード、顕微鏡、シンチレーションカウンター、カメラ、フィルム等、及びそれらの組み合わせが含まれる。好適な検出器の例は、当業者に既知の種々の商業的供給源から広く利用される。一般的に、結合標識部分を含む基板の視像は、その後のコンピュータ分析のためにデジタル化される。
【0102】
最も一般的には、RNAの量は、検出試薬の結合により固相に固定された標識の量を定量化することによって測定される。通常、インキュベーションの際の調節物質の存在は、固相に固定化された標識の量を、調節物質を含まない対照インキュベーションと比較し、又は特定の反応型について確立されたベースラインと比較して増加又は減少させる。標識を検出及び定量化する手段は、当業者に周知である。
【0103】
好ましい実施形態において、標的核酸又はプローブは、固相に固定化される。本発明のアッセイでの使用に好適な固相は、当業者に既知である。本明細書で使用される通り、固相は、実質的に固定された配置中の材料のマトリックスである。
【0104】
種々の自動化固相アッセイ技法が、また適している。例えば、Affymetrix, Inc.(米国カリフォルニア州サンタクララ)から得られる、非常に大きいスケールの固定化ポリマーアレイ(VLSIPSTM)が、同時に同じ制御経路において必要とされる複数の遺伝子の発現レベルにおける変化を検出することができる。例えば、Tijssen,同上、Fodor, et al., (1991) Science, 251:767−777;Sheldon, et al., (1993) Clinical Chemistry 39(4):718−719、及びKozal, et al., (1996) Nature Medicine 2(7):753−759を参照されたい。
【0105】
検出は、例えば、二重鎖核酸に特異的に結合する、標識化検出部分(例えば、RNA−DNA二重鎖に特異的な抗体)を使用することによって達成することができる。1つの好ましい具体例は、抗体が酵素に結合している(通常は、組換え又は共有化学結合)、DNA−RNAヘテロ二重鎖を認識する抗体を使用する。抗体は、酵素がその基質と反応し、検出可能な産物を生成した時に検出される。Coutlee, et al., (1989), Analytical Biochemistry 181:153−162;Bogulavski, et al., (1986),J. Immunol. Methods 89:123−130;Prooijen−Knegt (1982), Exp. Cell Res. 141:397−407;Rudkin (1976), Nature 265:472−473, Stollar (1970), Proc. Natl Acad. Sci. USA 65:993−1000;Ballard (1982), Mol. Immunol. 19:793−799;Pisetsky and Caster (1982), Mol. Immunol. 19:645−650;Visidi, et al., (1988), J. Clin. Microbial. 41:199−209;及びKiney, et al., (1989), J. Clin. Microbiaol. 27:6−12は、ホモ及びヘテロ二重鎖を含むRNA二重鎖に対する抗体を開示している。Digene Diagnostics, Inc(米国メリーランド州ベルツビル)由来の、DNA:RNAハイブリッドについて特異的な抗体を含むキットは利用することができる。
【0106】
利用できる抗体に加えて、当業者は、既存の技法を使用して核酸二重鎖に特異的な抗体を容易に製造することができ、又、市販されているか、公的に入手可能な抗体を修飾することができる。前述の参考文献に加えて、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を産生する一般的な方法は、当業者に既知である(例えば、Paul (3rd ed.), Fundamental Immunology Raven Press, Ltd., NY (1993);Coligan, Current Protocols in Immunolog Wiley/Greene, NY (1991);Harlow and Lane Antibodies;A laboratory Manual Cold Spring Harbor Press, NY (1998);Stites, et al., (eds.), Basic and Clinical Immunology (4th ed.) Lange Medical Publications, Los Altos, CA、及びそれらに引用されている文献;Goding Monoclonoal Antibodies: Principles and Practice (2d ed) Academic Press, New York, NY, (1986);及びKohler and Milstein, Nature 256:495−497 (1975)を参照)。抗体調製のその他の好適な技法には、ファージ又は同様のベクターにおける組換え抗体のライブラリーの選択が含まれる(Huse, et al., Science 246:1275−1281 (1989);及びWard, et al., Nature 341:544−546 (1989)を参照)。特異的なモノクローナウ及びポリクローナル抗体及び抗血清は通常、少なくとも約0.1μM、好ましくは少なくとも約0.01μM以上、最も一般的且つ好ましくは0.001μM以上のKDと結合する。
【0107】
本発明において使用される核酸は、ポジティブ又はネガティブプローブの何れであってもよい。ポジティブプローブはその標的に結合し、二重鎖の形成の存在が、標的の存在の証拠である。ネガティブプローブは、疑わしい標的に結合せず、二重鎖の形成の非存在が、標的の存在の証拠である。例えば、野生型に特異的な核酸プローブ又はPCRプライマーの使用は、対象となるヌクレオチド配列が存在する場合にのみ、アッセイ試料中のネガティブプローブとして供給される。
【0108】
ハイブリダイゼーションアッセイの感度は、検出される標的核酸を増やす核酸増幅システムの使用を通じて向上する。このようなシステムの具体例には、ポリメラーゼ連鎖(PCR)システム、特に、RT−PCR又はリアルタイムPCR、及びリガーゼ連鎖反応(LCR)システムが含まれる。最近、この分野で開示された他の方法には、核酸配列に基づく増幅法(NASBA、Cangene[カナダ オンタリオ州ミシソーガ])及びQβレプリカーゼシステムが含まれる。これらのシステムは、選択された配列が存在する場合にのみ、伸長し、結合するように、PCR又はLCRプライマーが設計される場合、突然変異を直接同定するために使用することができる。又、選択された配列は、一般的に、例えば、非特異的なPCRプライマー、及び変異を示す特異的な配列について後に調査される増幅された標的領域を使用して増幅される。
【0109】
本発明の核酸の発現レベルを測定するための代替の手段は、in situハイブリダイゼーションである。in situハイブリダイゼーションアッセイは周知であり、一般的に、Angerer, et al., Methods Enzymol. 152:649−660 (1987)に開示されている。in situハイブリダイゼーションアッセイにおいては、優先的に、選択された脳領域由来のヒト細胞又は組織が固相、通常はスライドガラスに固定される。DNAが調査される場合、細胞を熱又はアルカリで変性する。次いで、細胞を、中程度の温度でハイブリダイゼーション溶液と接触させ、標識化される特異的なプローブをアニーリングさせる。好ましくは、プローブは放射性同位元素又は蛍光レポーターで標識化される。
【0110】
V.本発明のポリペプチドの免疫学的検出
核酸ハイブリダイゼーション技術を使用した、ポリヌクレオチド発現の検出に加え、本発明のポリペプチドを検出するために免疫アッセイを使用することができる。免疫アッセイは、ポリペプチドを、定性的又は定量的に分析するために使用することができる。適用可能な技術の概要は、Harlow & Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (1988)に記載されている。
【0111】
A.標的ポリペプチド又は免疫原に対する抗体
対象となるタンパク質又は他の免疫原と特異的に反応する、治療的及び診断的ポリクローナル及びモノクローナル抗体を産生する方法は、当業者に既知である(例えば、Coligan,同上;及びHarlow and Lane,同上;Stites, et al.,同上、及び本明細書に記載の文献;Goding,同上;及びKohler and Milstein, Nature, 256:495−497 (1975)を参照)。このような技法には、ファージ又は同様のベクター中の組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体の調製が含まれる(Huse, et al.,同上;及びWard, et al.,同上を参照)。例えば、免疫アッセイにおいて使用するための抗血清を産生するために、対象となるタンパク質又は抗原断片が本明細書に記載の通り単離される。例えば、組換えタンパク質は形質転換細胞系中で産生される。マウス又はウサギの純系の株を、フロイントのアジュバント等の標準的なアジュバント、及び標準的な免疫プロトコールを使用してタンパク質で免疫する。又、本明細書に開示された配列から得られる合成ペプチド、及びキャリアータンパク質との結合体を、免疫原として使用することができる。
【0112】
ポリクローナル血清を集め、例えば、固相上に固定化した免疫原を使用した固相免疫アッセイ等の免疫アッセイにより免疫原に対して滴定する。104以上のポリクローナル抗血清を選択し、競合結合免疫アッセイを使用して、未処理のタンパク質、又は他の生物からの他の同種タンパク質に対する交差反応性を試験する。特定のモノクローナル及びポリクローナル抗体及び抗血清は、通常、少なくとも約0.1mM、更には少なくとも1μM、好ましくは少なくとも灼く0.1μM又はそれより良好な、最も好ましくは0.01μM又はそれより良好なKDで結合する。
【0113】
免疫原を含む、本発明の幾つかのタンパク質は、対象となるタンパク質と特異的又は選択的に結合する抗体を産生するために使用することができる。組換えタンパク質は、モノクローナル又はポリクローナル抗体を産生するための好ましい免疫原である。表1〜14に記載された遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を含むもの等の、天然のタンパク質は又、純粋な、又は純粋でない形態の何れかで使用することができる。本明細書に記載のタンパク質配列を使用して製造された合成ペプチドは又、タンパク質に対する抗体の産生のための免疫原として使用することができる。組換えタンパク質は、真核生物又は原核生物細胞中で発現され、一般的に前述の通り生成される。次いで、生成物を、抗体を産生することができる動物に注入する。モノクローナル又はポリクローナル抗体の何れもが、タンパク質を測定するための免疫アッセイにおいて使用されるために生成される。
【0114】
ポリクローナル抗体を産生する方法は、当業者に既知である。即ち、免疫原、好ましくは精製タンパク質をアジュバントと混合し、動物を免疫する。免疫原調整物に対する動物の免疫応答を、試験採決によって監視し、対象となるポリペプチドに対する反応性の力価を測定する。免疫原に対する抗体の適切に高い力価が得られた時に、動物から血液を集め、抗血清を調製する。必要であれば、抗血清を、タンパク質に対する反応性に富む抗体に分画することができる(Harlow and Lane,同上を参照)。
【0115】
モノクローナル抗体は、当業者に周知の種々の技法を使用して得ることができる。典型的には、所望の抗原で免疫した動物由来の脾臓細胞を、一般的にはミエローマ細胞と融合することによって不死化する(Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol. 6:511−519 (1976)を参照)。不死化の他の方法には、例えば、エプスタインバーウイルス、癌遺伝子、又はレトロウイルス、又は当業界で周知の方法を使用した形質転換が含まれる。単一の不死化した細胞から発生したコロニーを、抗原についての所望の特異性及び親和性を有する抗体の生産のためにスクリーニングし、このような細胞によって産生された抗体の生産量は、脊椎動物宿主の腹腔への注入を含む、種々の技術によって向上させることができる。又、Huse, et al.,同上に概説されている一般的なプロトコールに従って、ヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体又はその結合フラグメントをコードするDNA配列を単離することができる。
【0116】
標的となるタンパク質に特異的な抗体が一旦得られると、種々の免疫アッセイ方法により、臨床医に利用できる、定量的及び定性的結果と共に、タンパク質を測定することができる。一般的な免疫学的及び免疫アッセイ手法の総説については、Stites,同上を参照されたい。更に、本発明の免疫アッセイは、Maggio Enzyme Immunoassay, CRC Press, Boca Raton, Florida (1980);Tijssen,同上;及びHarlow and Lane,同上に広範囲に概説されている、幾つかの構成の何れかにおいて実施することができる。
【0117】
ヒト試料において標的試料を測定するための免疫アッセイは、タンパク質(例えば、表1〜14に記載された遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を有するもの)又はその断片に対して産生されたポリクローナル抗血清を使用することができる。この抗血清は、異なるタンパク質に対する低い交差反応性を有し、このような交差反応性は、免疫アッセイで使用する前の免疫吸収によって除去される。
【0118】
B.免疫学的結合アッセイ
好ましい実施形態において、対象となるタンパク質は、幾つかの周知の免疫学的結合アッセイの何れかを使用して検出及び/又は定量化される(例えば、米国特許第4,366,241号、第4,376,110号、第4,517,288号、及び第4,837,168号参照)。一般的な免疫アッセイの概説については、Asai, Methods in Cell Biology Volume 37:Antibodies in Cell Biology, Academic Press, Inc. NY (1993);Sites,同上を参照されたい。免疫学的結合アッセイ(又は免疫アッセイ)は、通常、特異的に結合し、しばしば検体に固定化する「捕捉剤」を使用する(この場合は、本発明のポリペプチド、又はその抗原性サブ配列)。該捕捉剤は、検体と特異的に結合する部分である。好ましい実施形態において、該捕捉剤は、例えば、本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体である。該抗体は、当業者に周知であり、前述したような、種々の方法の何れかによって産生することができる。
【0119】
又、免疫アッセイは、しばしば、特異的に結合し、捕捉剤及び検体によって形成された結合複合体を標識するための標識薬剤を使用する。該標識薬剤は、それ自身、抗体/献体複合体を含む部分の1つである。又、標識薬剤は抗体/タンパク質複合体と特異的に結合する他の抗体を含む第三の部分であってもよい。
【0120】
好ましい実施形態において、標識薬剤は、標識を有する二次抗体である。又、二次抗体は、標識を欠失していてもよいが、二次抗体が誘導される種の抗体に特異的である、標識された三次抗体によって結合されている。二次抗体は、酵素標識したストレプトアビジン等の第三の標識分子が特異的に結合することができる、ビオチン等の検出可能な部分で修飾することができる。
【0121】
免疫グロブリンの定常領域と特異的に結合することのできる他のタンパク質、例えば、プロテインA又はプロテインGは又、標識薬剤として使用することができる。これらのタンパク質は、連鎖球菌の細胞壁の正常な成分である。それらは、様々な種に由来する免疫グロブリン定常領域との強力な非免疫原的反応性を示す(一般的に、Kronval, et al., J. Immunol., 111:1401−1406 (1973);及びAkerstrom, et al., J. Immunol., 135:2589−2542 (1985)を参照)。
【0122】
アッセイの間中、インキュベーション及び/又は洗浄手順は、各試薬の組み合わせの後に必要である。インキュベーション手順は、約5秒から数時間、好ましくは約5分〜約24時間の間で変化し得る。インキュベーション時間は、アッセイフォーマット、検体、溶液の容量、濃度等に依存する。通常、アッセイは、10℃〜40℃等の、室温の範囲を超えて実施することができるが、アッセイは、通常室温で実施される。
【0123】
1.非競合的アッセイフォーマット
組織試料からの対象となるタンパク質を検出するための免疫アッセイは、競合的又は非競合的の何れであってもよい。非競合的免疫アッセイは、捕捉された検体が直接的に測定されるアッセイである。好ましい、1種の「サンドイッチ」アッセイにおいては、例えば、捕捉剤(例えば、表1〜14に記載された遺伝子によってコードされるポリペプチドに特異的な抗体)は、それが固定化された固相に直接結合することができる。次いで、これらの固定化された抗体は、試験試料中に存在するポリペプチドを捕捉する。従って、ポリペプチドは、標識を有する二次抗体等の標識薬剤によって結合する。又、二次抗体は標識を欠失していてもよいが、二次抗体が誘導される種の抗体に特異的である、標識された三次抗体によって結合されている。二次抗体は、酵素標識したストレプトアビジン等の第三の標識分子が特異的に結合することができる、ビオチン等の検出可能な部分で修飾することができる。
【0124】
2.競合アッセイフォーマット
競合的アッセイにおいては、試料中に存在する検体(表1〜14に記載された遺伝子によってコードされるポリペプチド等)の量は、試料中に存在する検体によって捕捉剤(例えば、検体に特異的な抗体)から置換される(又は競合)、加えられる(外来性)検体の量を測定することによって間接的に測定される。1つの競合的アッセイにおいては、対象となるタンパク質の(この場合)既知の量を試料に添加した後、試料を捕捉剤、この場合は本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体と接触させる。抗体に結合する免疫原の量は、試料中に存在する免疫原の濃度に逆比例する抗体に結合する。特に好ましい実施形態において、抗体を固相上に固定化する。例えば、抗体に結合するポリペプチドの量は、タンパク質/抗体複合体中に存在する対象のタンパク質の量を測定するか、又は残存する未複合型タンパク質の量を測定することによって測定することができる。タンパク質の量は、標識タンパク質分子を供給することによって測定される。
【0125】
競合的結合フォーマットにおける免疫アッセイは、交差反応性判定のために使用することができる。例えば、対象となるタンパク質は固相上に固定化される。タンパク質は、固定化された抗原に対する抗血清の結合と競合するアッセイに加えられる。固定化されたタンパク質に対する抗血清の結合と競合する前述のタンパク質の性能を、対象となるタンパク質のものと比較する。前述のタンパク質についての交差反応性の割合を、標準的計算によって計算する。前述のタンパク質のそれぞれと10%未満の交差反応性を有する抗血清を選択し、貯蔵する。交差反応抗体は、考慮されるタンパク質(例えば、遠縁の相同体)を使用した免疫吸収によって貯蔵した抗血清から任意に除去される。
【0126】
次いで、免疫吸収された、貯蔵された抗血清を、前述の通り競合的結合免疫アッセイにおいて使用した分、本発明のタンパク質と考えられる第二のタンパク質を、免疫原と比較する。この比較を実施するため、2種のタンパク質を、広い濃度範囲においてそれぞれアッセイし、固定化したタンパク質に対する抗血清の結合を50%阻害するのに必要な各タンパク質の量を測定する。第二のタンパク質に必要な量が、本明細書の配列によって部分的にコードされるタンパク質の必要量より10倍以上低い場合、第二のタンパク質は、標的タンパク質からなる免疫原に対して生成される抗体に対して特異的に結合すると考えられる。
【0127】
3.他のアッセイフォーマット
特定の好ましい実施形態において、試料中の本発明のポリペプチドの存在を検出し、定量化するために、ウェスタンブロット分析が使用される。この技法は、一般的に、分子量に基づきゲル電気泳動によって試料タンパク質を分離し、分離されたタンパク質を適当な固相(例えば、ニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルター、又は誘導化ナイロンフィルター等)に転写し、対象となるタンパク質と特異的に結合する抗体と試料をインキュベーションすることを特徴とする。例えば、抗体は、固相上の対象となるポリペプチドと特異的に結合する。これらの抗体は、直接に標識化されるか、又は対象となるタンパク質に対する抗体に特異的に結合する標識化抗体(例えば、標識された羊抗−マウス抗体)を使用して後で検出してもよい。
【0128】
その他のアッセイフォーマットには、特定の分子(例えば、抗体)に結合し、封入された試薬又はマーカーを放出するように設計されたリポソームを使用する、リポソーム免疫アッセイ(LIA)が含まれる。次いで、放出された化学物質を、標準的な技法を使用して検出する(Monroe, et al., (1986) Amer. Clin. Prod. Rev.5:34−41)を参照)。
【0129】
4.標識
上記アッセイにおいて使用される、特定の標識又は検出可能な基は、アッセイで使用される抗体の特異的結合と有意に干渉しない限りは、本発明の重大な特徴ではない。検出可能な基は、検出可能な物理的又は化学的性質を有する任意の物質であってもよい。このような検出可能な標識は、免疫アッセイの分野で十分に開発されており、一般的に、このような方法において最も有用な標識を本発明に適用することができる。従って、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的又は化学的手段によって検出可能な任意の組み合わせである。本発明において有用な標識には、磁気ビーズ(例えばDynabeadsTM)、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン等)、放射標識(例えば、3H、125I、35S、14C、又は32P)、酵素(例えば、ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及びELISAにおいて通常に使用される他の酵素)、及び金コロイド又は着色ガラス又はプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズ等の比色標識が含まれる。
【0130】
標識は、当業界で周知の方法によって、所望のアッセイ成分と直接的又は間接的に結合してもよい。前述の通り、必要とされる感度、化合物との結合の容易性、安定性の要求、利用可能な器具、及び廃棄設備に依存する方式の選択により、広範囲の標識が使用される。
【0131】
非放射標識は、しばしば間接的な手段によって結合される。又、分子は、シグナル発生化合物に直接的に、酵素又は蛍光化合物との結合によって結合することができる。種々の酵素及び蛍光化合物が、本発明の方法に使用することができ、当業者に周知である(使用される、種々の標識又はシグナル生成システムについては、例えば、米国特許第4,391,904号を参照)。
【0132】
標識を検出する手段は、当業者に周知である。従って、例えば、方式が放射方式である場合、検出のための手段には、オートラジオグラフィーにおけるようなシンチレーションカウンター、又は写真用フィルムが含まれる。標識が蛍光標識である場合、適当な波長の光で蛍光色素を励起し、得られる蛍光を検出することによって検出することができる。蛍光は、写真用フィルムを使用し電荷結合素子(CCD)又は光電子増倍管等を使用することによって視覚的に検出することができる。同様に、酵素的標識は、酵素のための適切な基質を供給し、得られた反応生成物を検出することによって検出することができる。最終的に単一の比色標識は、標識に関連する色を観察することによって直接検出することができる。従って、種々のディップスティック法において、結合した金はしばしばピンクに見えるが、結合したビーズはビーズの色に見える。
【0133】
あるアッセイフォーマットは、標識された成分を必要としない。例えば、凝集アッセイは、標的抗体の存在を検出するために使用することができる。この場合は、抗原をコーティングした粒子が、標的抗体を含む試料によって凝集する。このフォーマットにおいては、標識化される成分はなく、標的抗体は単純な外観検査によって検出される。
【0134】
VI.本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドの調節物質のスクリーニング
本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドの調節物質、即ち、ポリペプチド又はポリヌクレオチド発現の活性又は調節物質の作用物質又は拮抗物質は、気分障害又は精神病性障害を含む、幾つかのヒトの疾患の処置に有用である。作用物質、拮抗物質、又は本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現を修飾する、他の物質の投与は、気分障害又は精神病性障害に罹患している患者の治療に使用することができる。
【0135】
A.スクリーニング方法
細胞、特に哺乳動物、特にヒト細胞内で、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドの発現又は活性のレベルを修飾する物質を同定するために、幾つかの異なるスクリーニングプロトコールを使用することができる。大まかに言えば、スクリーニング方法は、例えば、本発明のポリペプチドに結合することによってポリペプチドの活性を修飾するか、ポリペプチドへの阻害剤の結合を修飾するか、ポリペプチドの発現を活性化する物質を同定するための多数の薬剤をスクリーニングすることを特徴とする。
【0136】
1.結合アッセイ
予備的なスクリーニングは、本発明のポリペプチドに結合することができる薬剤を、このようにして同定された薬剤の少なくとも幾つかがポリペプチド活性の調節物質であるようにして、スクリーニングすることによって実施することができる。結合アッセイは、通常、本発明のポリペプチドを1つ以上の試験薬剤と接触させ、タンパク質と試験薬剤とが結合複合体を形成するのに十分な時間放置することを特徴とする。形成される任意の結合複合体は、幾つかの確立された分析技法の何れかを使用して検出することができる。タンパク質結合アッセイには、未変性SDS−ポリアクリルアミドゲルにおける共沈物、共移動物、ウェスタンブロットにおける共移動物を測定する方法(例えば、Bennet and Yamamura, (1985) “Neurotransmitter, Hormone or Drug Receptor Binding Methods,” Neurotransmitter Receptor Binding (Yamamura, H.L., et al., eds.), pp.61−89)が含まれるが、これらに限定されない。このようなアッセイにおいて利用されるタンパク質は、天然に発現するもの、クローニングされたもの、又は合成されたものであってもよい。
【0137】
結合アッセイは、例えば、本発明のポリペプチドと相互作用する内在性タンパク質を同定するのに有用である。例えば、本発明のポリペプチドと結合する抗体、受容体又は他の分子は、結合アッセイにおいて同定することができる。
【0138】
2.発現アッセイ
特定のスクリーニング方法には、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現を、上方又は下方調整する化合物についてのスクリーニングが含まれる。このような方法は一般的に、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを発現する1つ以上の細胞と試験化合物を接触させる、細胞に基づいたアッセイを実施し、次いで発現(転写、翻訳産物、又は触媒産物)の上昇又は減少を検出することを含む。
【0139】
ポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現は、幾つかの異なる方法で検出することができる。後述の通り、細胞内における本発明のポリヌクレオチドの発現レベルは、本発明のポリヌクレオチドの転写物と特異的にハイブリダイズするプローブを使用して、細胞内で発現するmRNAを調査することによって検出することができる。調査は、細胞を溶解し、ノーザンブロットを実施するか、細胞を溶解せずに、in situハイブリダイゼーション技法を使用することによって実施することができる。又、本発明のポリペプチドは、細胞溶解物を、本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体を使用して調査する、免疫学的方法を使用して検出することができる。
【0140】
その他の細胞に基づくアッセイは、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを発現しない細胞を使用して実施する。特定のこれらのアッセイは、検出可能な産物をコードするレポーター遺伝子と動作可能に結合した、本発明のポリヌクレオチドのプロモーターを含む異種核酸構築物を使用して実施される。幾つかの異なるレポーター遺伝子を使用することができる。幾つかのレポーターは、本質的に検出可能である。このようなレポーターの具体例は、蛍光検出器で検出することができる蛍光を放射する緑色蛍光タンパク質である。他のレポーターは、検出可能な産物を生成する。このようなレポーターは、しばしば酵素である。具体的な酵素レポーターには、β−グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT);(Alton and Vapnek (1979) Nature 282:864−869)、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びアルカリホスファターゼ(Toh, et al., (1980) Eur. J. Biochem. 182:231−238;及びHall, et al., (1983) J. Mol. Appl. Gen. 2:101)が含まれるが、これらに限定されない。
【0141】
これらのアッセイにおいて、レポーター構築物を含む細胞を試験化合物と接触させる。それと結合することによってプロモーターを活性化するか、又はプロモーターを活性化する分子を産生するカスケードを誘導する試験化合物は、検出可能なレポーターの発現を引き起こす。他の特定のレポーターアッセイは、本発明のポリヌクレオチド、及びそれに作動可能に結合したレポーターの発現を活性化する転写制御エレメントを含む異種構築物を含む細胞を使用して実施される。又、ここで、レポーターの発現を活性化する転写制御エレメントに結合するか、又はレポーターの発現を活性化するための転写制御エレメントに結合する薬剤の形成を誘導する薬剤は、レポーターの発現と関連するシグナルの生成によって同定することができる。
【0142】
発現又は活性のレベルをベースライン値と比較することができる。前述の通り、ベースライン値は、対照集団についての発現レベルの代表値である、対照試料についての値、又は統計的な値であってもよい。発現レベルは又、陰性対照としての本発明のポリヌクレオチドを発現しない細胞について測定することができる。さもなければ、このような細胞は、一般的に、試験細胞と遺伝的に同一である。
【0143】
種々の異なる種類の細胞を、レポーターアッセイに使用することができる。本発明の内在性ポリペプチド又はポリヌクレオチドを発現する細胞には、例えば、小脳、前帯状領域、又は背面前頭葉皮質を含む脳細胞が含まれる。本発明のポリヌクレオチドを内在的に発現する細胞は原核生物であってもよいが、好ましくは真核生物である。真核生物は、組換え核酸構築物を含む細胞を生成するために使用される細胞の何れであってもよい。具体的な真核細胞には、酵母、COS、CHO及びHeLa細胞系及び幹細胞、例えば、神経幹細胞等の種々の高等真核細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
レポーター構築物を欠失する細胞を使用するか、又はレポーター構築物を含む細胞を試験化合物と接触させないことによる併発反応を実施することを含む、観察される活性が信頼できることを保証するための種々の管理を実施することができる。化合物は又、以下の記載する通り更に認証される。
【0145】
3.触媒活性
本発明のポリペプチドの触媒活性は、酵素産物の生産を測定することにより、又は基質の消費を測定することにより測定することができる。活性は、触媒速度、又は基質と結合するポリペプチドの能力(Km)、又は触媒産物の放出能力(Kd)の何れかを意味する。
【0146】
本発明のポリペプチドの活性の分析は、一般的な生化学的分析に基づき実施される。このようなアッセイには、細胞をベースとするアッセイ、並びに精製又は部分精製されたポリペプチド又は粗細胞溶解物を伴うインビトロアッセイが含まれる。アッセイは一般的に、基質の既知量を供給し、時間を関数として産物を定量化することを伴う。
【0147】
4.検証
以前のスクリーニング方法の何れかによって最初に同定された薬剤を、視覚的な活性を検証するために更に試験することができる。好ましくは、このような研究は適切な動物モデルを使用して実施される。このような方法の基礎的なフォーマットは、初期のスクリーニングの際に同定されたリード化合物を、ヒトのモデルとなる動物に投与し、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現又は活性が実際に上方制御されているかどうかを判定することを含む。バリデーション試験で使用する動物モデルは、一般的にあらゆる種類の哺乳動物である。好適な動物の具体的な例には、霊長類、マウス、ラットが含まれるが、これらに限定されない。
【0148】
5.動物モデル
精神障害の動物モデルもまた、調節物質についてのスクリーニングにおいて使用される。一実施形態において、精神分裂病、又はうつ等のその他の精神障害のラットのモデルが、スクリーニングのために使用される。一実施形態において、ショウジョウバエモデル等の無脊椎動物が使用され、本明細書で開示されるヒト遺伝子のショウジョウバエ相同分子種についてのスクリーニングに使用することができる。他の実施形態において、遺伝子ノックアウトを含むトランスジェニック動物技術、例えば、適切な遺伝子標的ベクターを使用した同種組換え、又は遺伝子過剰発現は、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの欠乏、減少又は増加した発現をもたらすであろう。同じ技術は、ノックアウト細胞の製造にも応用することができる。所望の時には、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの組織特異的発現又はノックアウトが必要な場合がある。このような方法により生成されたトランスジェニック動物は、精神障害の動物モデルとしての使用が見出され、精神障害の調節物質についてのスクリーニングにおいて有用である。
【0149】
ノックアウト細胞又はトランスジェニックマウスは、相同的組換えによる、マウスゲノムの内在性遺伝子部位へのマーカー遺伝子又は他の異種遺伝子の挿入により製造することができる。このようなマウスは又、本発明の内在性ポリヌクレオチドをポリヌクレオチドの変異バージョンと置換することにより、又は内在性ポリヌクレオチドを例えば発癌物質にさらすことによって変異させることにより、製造することができる。
【0150】
適切な幹細胞の開発のため、DNA構築物を、胚幹細胞の核に導入する。新規に設計された遺伝的障害を含む細胞を、受け取るメスに再移植される、宿主のマウスの胚に注入する。これらの胚の幾つかは、変異細胞系から部分的に由来する生殖細胞を有するキメラマウス中で発生する。従って、キメラマウスを育種することにより、導入された遺伝的損傷を含むマウスの新規の系を得ることが可能である。キメラ標的マウスは、Hogan, et al., Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988);及びTeratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach, Robertson, ed., IRL Press, Washington, D.C., (1987)に従って得ることができる。
【0151】
B.本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの調節物質
本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの調節物質として試験される薬剤は、任意の低分子量の化合物であっても、タンパク質、糖、核酸又は脂質糖の生物学的存在であってもよい。又、調節物質は、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの遺伝的に変形したバージョンであってもよい。通常、試験化合物は、低分子量分子及びペプチドである。基本的に、任意の化合物は、本発明のアッセイにおける潜在的な調節物質又はリガンドとして使用することができるが、殆どの場合、水性又は有機(特にDMSO−をベースとするもの)溶媒に溶解することができる化合物が使用される。アッセイは、アッセイ手順を自動化し、大きな化学ライブラリーをスクリーニングするように設計され、通常、平行して実施される、アッセイに対する好都合な起源からの化合物を供給する。Sigma(米国ミズーリ州セントルイス)、Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)、Sigma−Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)、Fluka Chemika−Biochemica Analytika(スイス ブーフス)等を含めた化合物の多くの供給業者が存在することが理解されたい。調節物質には又、本発明のmRNAのレベル(例えば、アンチセンス分子、リボザイム、DNAザイム等)、又はmRNAからの転写レベルを減少するように設計された薬剤が含まれる。
【0152】
好ましい一実施形態において、ハイスループットスクリーニング法は、多くの潜在的な治療化合物を含む、化学又はペプチドライブラリーの組み合わせを供給することを特徴とする。次いで、このような「組み合わせ化学ライブラリー」又は「リガンドライブラリー」を、所望の特徴的活性を示す、これらのライブラリーメンバーを同定するために、本明細書で開示するように、1つ以上のアッセイでスクリーニングする。このようにして同定される化合物は、通常の「リード化合物」として供給され、又はそれ自身が潜在的又は実際の治療薬として使用される。
【0153】
組み合わせ化学ライブラリーは、化学合成又は生物学的合成の何れか、試薬等の幾つかの化学的な構成要素によって生成される、種々の化合物の集まりである。例えば、ポリペプチドライブラリー等の組み合わせの化学ライブラリーは、所定の長さ(即ち、ポリペプチド化合物におけるアミノ酸の数)の化合物について、全ての可能な方法における化学的基礎単位(アミノ酸)を組み合わせることによって形成される。何百万の化合物が、化学的基礎単位のこのような組み合わせ混合によって合成することができる。
【0154】
組み合わせ化学ライブラリーは当業者に周知である。このような組み合わせ化学ライブラリーにはペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号、Furka, Int. J. Pept. Prot. Res. 37:487−493 (1991)及びHoughton, et al., Nature 354:84−88 (1991)を参照)が含まれるが、これらに限定されない。化学的多様性ライブラリーを生成するための化学を使用してもよい。このような化学には、ペプチド(例えば、PCT出願公開WO91/19735)、コードされたペプチド(例えば、PCT出願公開WO93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、PCT出願公開WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン及びジペプチド等のディバーソマー(Hobbs, et al., Proc. Nat. Proc. Acad. Sci. USA 90:6906−6913 (1993))、ビニル性ポリペプチド(Hagihara, et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:6568 (1992))、グルコース付着物を有する非ペプチド性ペプチドドメイン(Hirschmann, et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:9217−9218 (1992))、低分子化合物ライブラリーの類似有機合成(Chen, et al., J. Amer. Chem. Soc. 116:2661 (1994))、オリゴカルバメート(Cho, et al., Science 261:1303 (1993)、及び/又はペプチジルホスフェート(Campbell, et al., J. Org. Chem, 59:658 (1994))、核酸ライブラリー(Ausubel, Berger及びSambrook、全て同上)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号参照)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughn, et al., Nature Biotechnology, 14(3):309−314 (1996)及びPCT/US96/10287を参照)、炭水化物ライブラリー(例えば、Liang, et al., Science, 274:1520−1522 (1996)及び米国特許第5,593,853明細書)、低分子量有機分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN, Jan 18, page 33 (1993);イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノン及びメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号及び第5,519,134号、モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、第5,288,514号等)が含まれるが、これらに限定されない。
【0155】
組み合わせライブラリーの調製装置は市販されている(例えば、357MPS、390MPS、Advanced Chem Tech[米国ケンタッキー州ルイビル];Symphony、Rainin[米国マサチューセッツ州ウーバン];433A、Applied Biosystems[米国カリフォルニア州フォスターシティー];9050 Plus、Millipore[米国マサチューセッツ州ベッドフォード])。更に、多数の組み合わせライブラリー自身が市販されている(例えば、ComGenex[米国ニュージャージー州プリンストン];Tripos, Inc.[米国ミズーリ州セントルイス];3D Pharaceuticals[米国ペンシルバニア州エクストン];Martek Bioscience[米国メリーランド州コロンビア]等を参照)。
【0156】
C.固相及び可溶性ハイスループットアッセイ
本発明のハイスループットアッセイにおいては、一日で、数千の異なる調節物質をスクリーニングすることが可能である。特に、マイクロタイタープレートの各ウェルは、選択された潜在的な調節物質に対する別々のアッセイを実施するために使用することができ、又は濃度又はインキュベーション時間の効果を観察する場合、各5〜10のウェルが単一の調節物質を試験することができる。従って、単一の標準的マイクロタイタープレートは、約100(例えば、96)種類の調節物質をアッセイすることができる。1536枚のウェルプレートを使用する場合、単一のプレートは、約100〜約1550種類の異なる化合物を容易にアッセイすることができる。1日あたり幾つかの異なるプレートをアッセイすることが可能であり、約6,000〜20,000種の異なる化合物についてのアッセイスクリーニングは、本発明の集積システムを使用することが可能である。最近になって、試薬を取り扱うためのマイクロ流体手法が開発されてきた。
【0157】
対象となる分子は固体成分に、直接又は間接的に、共有結合又は非共有結合、例えばタグによって結合することができる。タグは、任意の種々の成分であってもよい。一般的に、タグと結合する分子(タグバインダー)は固体に固定されており、タグを付けた対象となる分子が、タグ及びタグバインダーの相互作用によって固体に付着する。
【0158】
文献で詳細に説明されている既知の分子相互作用に基づき、幾つかのタグ及びタグバインダーを使用することができる。例えば、タグが天然のバインダー、例えば、ビオチン、プロテインA又はプロテインGを有する場合、適切なタグバインダー(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、免疫グロブリンのFc領域等)と共に使用することができる。ビオチン等の天然のバインダー、及び適切なタグバインダーを有する分子(SIGMA Immunochemicals 1998カタログSIGMA,St.Louis MOを参照)に対する抗体は、広く利用することができる。
【0159】
同様に、ハプテン性又は抗原性の化合物を、タグ/タグバインダー対を形成するために適切な抗体と組み合わせて使用することができる。何千もの特異的抗体が市販されており、多くの更なる抗体が文献で説明されている。例えば、一つの一般的な構成において、タグは一次抗体であり、タグバインダーは、一次抗体を認識する二次抗体である。抗体−抗原相互作用に加え、細胞膜受容体の作用物質及び拮抗物質等の、受容体−リガンド相互作用も、タグ及びタグバインダー対として適している(例えば、トランスフェリン、c−kit、ウイルス受容体リガンド、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン受容体及び抗体、カドヘリンファミリー、インテグリンファミリー、セレクチンファミリー等の受容体−リガンド相互作用、例えば、Pigott & Power, The Adhesion Molecule Facts Book I (1993)を参照)。同様に、毒素及び毒物、ウイルスエピトープ、ホルモン(例えば、鎮痛剤、ステロイド等)、細胞内受容体(例えば、ステロイド、甲状腺ホルモン、レチノイド及びビタミンD等の種々の低分子リガンド、ペプチドの効果を媒介するもの)、薬剤、レクチン、等、核酸(直鎖及び感情ポリマー構成の両方)、オリゴ糖、タンパク質、リン脂質及び抗体は、種々の細胞受容体と相互作用することができる。
【0160】
ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリーレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミド、及びポリアセテートも、適切なタグ又はタグバインダーを形成することができる。その他多くのタグ/タグバインダーも、本明細書に記載のアッセイシステムにおいて有用であり、このことは、この開示内容のレビューにより当業者に明らとなる。
【0161】
ペプチド、ポリエーテル等の一般的なリンカーは、約5〜200アミノ酸のポリ−Gly配列等のポリペプチド配列を含む。このような柔軟なリンカーは、当業者に既知である。例えば、ポリ(エチレングリコール)リンカーは、Shearwater Polymers, Inc.(米国アラバマ州ハンツビル)から得られる。これらのリンカーは、場合によりアミド結合、スルフィドリル結合、又はヘテロヘテロ官能性結合を有する。
【0162】
バインダーは、現在利用できる種々の方法の何れかを使用して個体基板に固定される。固体基板は、通常、誘導体化され、又は基質の全て又は一部を、バインダータグの一部と反応性を有する化学置換基を表面に固定する化学試薬にさらすことにより機能的にされる。例えば、より長い鎖部分と結合するのに適した置換基には、アミン、ヒドロキシ、チオール、チオール及びカルボキシル基が含まれる。アミノアルキルシラン及びヒドロキシアルキルシランは、ガラス表面等の、種々の表面を機能的にするために使用することができる。このような固相バイオポリマーアレイの構築は文献に十分に開示されている(例えば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149−2154 (1963)(例えば、ペプチドの合成固相を開示する);Geysen, et al., J. Immun. Meth. 102:259−274 (1987)(ピン上の固相成分の合成を開示する);Frank and Dorning, Tetrahedron 44:60316040 (1988)(セルロースディスク上の種々のペプチド配列の合成を開示する);Fodor, et al., Science, 251:767−777 (1991);Sheldon, et al., Clinical Chemistry 39(4):718−719 (1993);及びKozal, et al., Nature Medicine 2(7):753759 (1986)(全て、固体基板へ固定化されたバイオポリマーのアレイを開示する)を参照)。タグバインダーを基板へ固定化するための非化学的手法には、加熱、UV照射よる架橋等が含まれる。
【0163】
本発明は、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現又は活性を修飾することができる化合物を高スループットの形式で同定するインビトロアッセイを提供する。好ましい実施形態において、本発明の方法にはこのような対照反応が含まれる。記載された各アッセイ形式について、調節物質を含まない「調節物質なし」の対照反応は、結合活性のバックグランドレベルを供給する。
【0164】
幾つかのアッセイにおいては、アッセイ成分が適切に機能することを保証するための陽性対照を有することが好ましい。少なくとも2種類の陽性対照が適している。第一に、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの既知の活性化因子を、アッセイの一試料とインキュベートし、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの、上昇した発現レベル又は活性から得られるシグナルにおける上昇を、本発明に従って測定する。第二に、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの既知の阻害剤を加え、発現又は活性についてのシグナルの得られる減少を同様に測定することができる。
【0165】
D.コンピュータベースのアッセイ
本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性を調節する化合物のための更に他の方法には、そのアミノ酸又はヌクレオチド配列によりコードされる構造情報に基づき、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの三次元構造を生成するためにコンピュータシステムを使用する、コンピュータ支援薬物設計が含まれる。入力した配列は、予め確立したアルゴリズムとコンピュータプログラム内で直接相互作用し、分子の二次、三次及び四次構造モデルを得る。本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの潜在的受容体又は結合パートナーについて同様の分析を実施することができる。次いで、例えば、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを結合する能力を有する構造の領域を同定するための試験を行う。次いで、これらの領域を、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドと結合するポリペプチドを同定するために使用する。
【0166】
タンパク質の三次元構造モデルを、少なくとも10アミノ酸残基のタンパク質のアミノ酸配列、又は潜在的な受容体をコードする、関連核酸配列をコンピュータシステムに入力することによって生成する。核酸配列によってコードされるアミノ酸配列は、タンパク質の構造情報をコードする、タンパク質の一次配列又はサブ配列を表す。アミノ酸配列の少なくとも10残基を、コンピュータキーボード、コンピュータ読み取り可能なディスク、テープ、カートリッジ及びチップ)、光媒体(例えばCD ROM)、インターネット差異母により配信される上方、及びRAMによりコンピュータシステムに入力する。次いで、タンパク質の三次元構造モデルを、当業者に既知のソフトウェアを使用して、アミノ酸配列の相互作用及びコンピュータシステムにより生成する。
【0167】
アミノ酸配列は、対象となるタンパク質の二次、三次及び四次構造を形成するために必要な情報をコードする一次構造を表す。ソフトウェアは構造モデルを生成するための一次配列によってコードされる特定のパラメータを見る。これらのパラメータは「エネルギーターム(energy term)」を意味し、主として、静電ポテンシャル、疎水性ポテンシャル、溶媒に接触可能な表面、及び水素結合が含まれる。二次エネルギータームにはファンデルワールス力が含まれる。生物学的分子は、累積的な方法におけるエネルギータームを最小化する構造を形成する。従って、コンピュータプログラムは、一次構造又はアミノ酸配列によってコードされ、二次構造モデルを形成する用語として使用される。
【0168】
次いで、二次構造によってコードされるタンパク質の三次構造を、二次構造のエネルギータームを基礎として形成する。この点で、ユーザーは、タンパク質が膜に結合しているか、可溶性であるか、身体内の位置、及び細胞の位置、例えば、細胞質、表面、又は核等の追加の変数を入力することができる。二次構造のエネルギータームを伴うこれらの変数は、三次構造のモデルを形成するために使用される。三次構造を形づくることにおいて、コンピュータプログラムは、二次構造の疎水性表面、及び二次構造の親水性表面に適合する。
【0169】
構造が一旦生成されると、潜在的なリガンド結合領域はコンピュータシステムによって同定される。潜在的なリガンドについての三次元構造は、前述の通り、アミノ酸又はヌクレオチド配列、又は化学構造を入力することによって生成される。次いで、潜在的なリガンドの三次元構造を、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドと対比し、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの結合部位を同定する。タンパク質及びリガンドの結合親和性をエネルギータームを使用して測定し、リガンドが、タンパク質との結合能力を向上させるかどうかを判定する。
【0170】
本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドをコードする遺伝子の突然変異、多型、変異、対立遺伝子及び種間相同体をスクリーニングするためにも、コンピュータシステムが使用される。このような突然変異は、病状又は遺伝形質と関連し、診断に使用することができる。前述の通り、GeneChipTM及び関連技術は、突然変異、多型、変異、対立遺伝子及び種間相同体をスクリーニングするために使用することができる。変異が一旦同定されると、診断アッセイは、このような変異遺伝子を有する患者を同定するために使用することができる。本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの変異の同定は、本発明のポリペプチドの第一のアミノ酸配列(又は、本発明のポリペプチドをコードする第一の核酸配列)、対象となるアミノ配列と、例えば、少なくとも60%、必要に応じて少なくとも70%又は85%の同一性を有するアミノ酸配列、又はそれらの保存的に修飾されたバージョンの入力を必要とする。前述の通り、配列をコンピュータシステムに入力する。次いで、第一の核酸又はアミノ酸配列を、実質的に第一の配列と同一である第二の核酸又はアミノ酸配列と比較する。前述した方法で、第二の配列をコンピュータシステムに入力する。第一及び第二の配列を一旦比較すると、該配列の間の相違点が同定される。このような配列は、本発明のSNPs及び/又はハプロイドを含む種々のポリヌクレオチド中の対立遺伝子の相違、及び、病状と遺伝形質とが関連する突然変異を表わすことができる。
【0171】
VII.組成物、キット及び集積システム
本発明は、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチド、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに特異的な抗体等を使用した、本明細書に記載のアッセイを実施するための組成物、キット及び集積システムを提供する。
【0172】
本発明は、固相アッセイで使用されるアッセイ組成物を提供する。このような組成物には、例えば、固相に固定化された本発明の1つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド、及び標識試薬が含まれてもよい。何れの場合にも、アッセイ組成物には、ハイブリダイゼーションに好ましい追加の試薬が含まれてもよい。本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現又は活性の調節物質が、これらのアッセイ組成物中に含まれてもよい。
【0173】
本発明は又、本発明の治療又は診断方法を実施するためのキットも提供する。これらのキットは通常、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに特異的に結合する抗体、プローブの存在を検出するための標識を含む。これらのキットには、本発明のポリペプチドをコードする幾つかのポリヌクレオチド配列が含まれる場合がある。キットには、前述の何れかの組成物が含まれてもよく、場合により更に、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現に対する、又は本発明のポリペプチドの活性に対する影響をアッセイする高スループットの方法を実施するための取扱説明書、1つ以上の容器又は区画(例えば、プローブ、標識等を保持するための)、本発明のポリペプチドの発現又は活性の対照調節物質、キット成分を混合するためのロボット電機子等の追加の構成品が含まれてもよい。
【0174】
本発明は又、本発明のポリペプチドの発現又は活性における効果のための潜在的な調節物質のハイスループットなスクリーニングのための集積システムが提供される。該システムは、典型的には、液体を起源から目標にまで移すロボットのような電機子、ロボットのような電機子を制御するコントローラー、標識検出器、標識の検出を記録するデータ貯蔵ユニット、反応混合物、又は固定化された核酸又は固定化部分を含む基質ウェルを含むマイクロタイターシャーレが含まれる。
【0175】
いくつかのロボット液体移動システムを利用することができ、又は既存の成分から容易に製造することができる。例えば、Microlab 2200(Hamilton;米国ネバダ州レノ)ピペッティングステーションを使用したZymate XP(Zymark Corporation;米国マサチューセッツ州ホプキントン)自動化ロボットを、幾つかの平行な同時のSTAT結合アッセイをセットアップするための96ウェルのマイクロタイタープレートに、平行している試料を移動するために使用することができる。カメラ、又は他の記録装置(例えば、光ダイオード及びデータ貯蔵装置)により観察される(及び、必要に応じて記録される)光学イメージは、任意に、本明細書の実施形態の何れかにおいて更に処理される。例えば、画像をデジタル化し、コンピュータ上に画像を貯蔵し、分析する。種々の市販の周辺装置及びソフトウェアは、光学画像のデジタル化、貯蔵及び分析に利用でき、例えば、PC,MACINTOSH(登録商標)、UNIX(登録商標)をベースとするコンピュータ(例えば、SUN(登録商標)ワークステーション)を使用する。幾つかの伝統的システムは、検体の領域から当業界で通常に使用されている、冷却した電荷結合素子(CCD)カメラに光を運ぶ。CCDカメラには、画素(ピクセル)のアレイが含まれる。試料由来の光はCCD上で画像化される。試料の領域に関連する特定の画素(例えば、生物学的ポリマーのアレイ上の個々のハイブリダイゼーション部位)をサンプリングし、各位置についての光強度読み取りを得る。複数のピクセルは、上昇した速度に平行して有する。本発明の装置及び方法は、例えば、蛍光又は暗視野顕微鏡技法により、任意の試料を観察するために容易に使用される。レーザービームも使用することができる。
【0176】
VIII.投与及び医薬組成物
本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの調節物質(例えば、拮抗物質又は作用物質)は、インビボで分子の活性を修飾するために哺乳動物被験体に直接投与することができる。治療すべき組織と最終的に接触する調節物質化合物を導入するために、当業者に周知である、正常な任意の経路によって投与される。特定の組成物を投与するために、1つ以上の経路を使用することができるが、特定の経路は、しばしば、他の経路よりも、更に即効性で更に効果的な反応をもたらし得る。
【0177】
治療することができる疾患には、Morrison, DSM−IV Made Easy, 1995からの対応する参照番号を含む以下のもの、即ち、緊張性、亜慢性精神分裂病(295.21);緊張性、慢性精神分裂病(295.22);緊張性で急激な悪化を伴う亜慢性精神分裂病(295.23);緊張性で急激な悪化を伴う慢性精神分裂病(295.24);寛解における緊張性精神分裂病(295.55);特定されていない、緊張性精神分裂病(295.20);組織が破壊される、亜慢性精神分裂病(295.11);組織が破壊される、慢性精神分裂病(295.12);急激な悪化を伴う、組織が破壊される、亜慢性精神分裂病(295.13);急激な悪化を伴う、組織が破壊される、慢性精神分裂病(295.14);寛解における、組織が破壊される精神分裂病(295.15);特定されていない、組織が破壊される精神分裂病(295.10);妄想性の亜慢性精神分裂病(295.31);妄想性の慢性精神分裂病(295.32);急激な悪化を伴う、妄想性の亜慢性精神分裂病(295.33);急激な悪化を伴う、妄想性の慢性精神分裂病(295.34);寛解における妄想性の精神分裂病(295.35);特定されていない、妄想性精神分裂病(295.30);区別されていない、亜慢性精神分裂病(295.91);特定されていない、慢性精神分裂病(295.92);急激な悪化を伴う、特定されていない、亜慢性精神分裂病(295.32);急激な悪化を伴う、特定されていない、慢性精神分裂病(295.94);寛解における、区別されていない精神分裂病(295.95);特定されていない、区別されていない精神分裂病(295.90);慢性精神分裂病後遺症(295.62);急激な悪化を伴う、亜慢性精神分裂病後遺症(295.63);急激な悪化を伴う、慢性精神分裂病後遺症(295.94);寛解における、精神分裂病後遺症(295.65);特定されていない、精神分裂病後遺症(295.60);妄想障害(297.10);短期反応精神病(298.80);分裂病様障害(295.40)分裂情動性障害(295.70);感応精神障害(297.30);精神病性障害NOS(非定型精神病)(298.90);人格障害、偏執症(301.00);人格障害、分裂病様障害(301.20);人格障害、精神分裂病(301.22);人格障害、反社会的(301.70);人格障害、境界線(301.83)及び双極性障害、狂人、軽躁、胸腺機能不全又は循環病、薬剤誘導性大うつ病、分裂情動性障害、及び薬物誘導性精神病性障害を有する精神分裂病(偏執症、緊張病、妄想)を含む精神病性障害が含まれる。
【0178】
幾つかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの調節物質は、精神分裂病等の精神病性障害、双極性障害又は大うつ病等の気分障害を含む精神障害を処置するために有用な他の薬剤と組み合わせることができる。ある好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの調節物質と、米国特許第6,297,262号;第6,284,760号;第6,284,771号、第6,232,326;第6,187,752号;第6,117,890号;第6,239,162号又は第6,166,008号に開示されたような、精神分裂病、双極性障害又は大うつ病の治療に有用な少なくとも1種の化合物とを組み合わせて含む。
【0179】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。薬学的に許容される担体は、組成物を投与するために使用される特定の方法によって、投与される特定の組成物によって一部測定される。従って、多種多様の適切な、本発明の医薬組成物の製剤がある(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed, 1985)。
【0180】
本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現又は活性の調節物質(例えば、作用物質又は拮抗物質)は、単独で又はその他の好適な成分と組み合わせて、吸入を介して又は注射に有用な組成物中で投与されるエアゾール製剤(即ち、「噴霧」可能な製剤)に製造することができる。エアゾール製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の、加圧を許容する噴霧剤中に収納される。
【0181】
投与に適した製剤には、水性及び非水性溶媒、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び緩衝剤を等張にする溶質、及び沈殿防止剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び保存剤を含んでいてもよい、等張無菌溶媒が含まれる。本発明の実施において、組成物は、例えば、傾向的、経鼻的、局所的、静脈内、腹腔内又はくも膜下注射で投与することができる。化合物の製剤は、単一投与又は複数投与封入容器中に存在してもよい。溶液及び懸濁液は、前述の種類の無菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。調節物質は又、調製された食餌又は薬剤の一部として投与することもできる。
【0182】
本発明との関連で、患者に投与される濃度は、長時間にわたり、被験体中で有益な応答をもたらすのに十分であるべきである。何れかの患者についての経口投与の最適なレベルは、使用する特定の調節物質の有効性、年齢、体重、身体活動、患者の食餌、他の薬剤との可能な組み合わせ、精神障害の重症度を含む、種々の因子に依存するだろう。投与量は、特定の被験体における、特定の化合物又はベクターの投与を伴う、任意の有害な副作用の存在、性質、程度によって決定されるだろう。
【0183】
調節物質の有効量を決定するため、医師は調節物質の循環血漿レベル、調節物質の毒性、及び抗調節物質抗体の産生を評価することができる。一般的に、調節物質の投与量は、通常の被験体について、約1ng/kg〜10mg/kgである。
【0184】
投与のために、本発明の調節物質は、被験体の体重及び全体的な健康に適合するように、調節物質のLD50、および種々の濃度における調節物質の副作用によって決めた速度で投与することができる。投与は、単一回、又は分けた回数によって実施することができる。
【0185】
IX.遺伝子治療適用
ヒトの種々の疾患が、遺伝子が転写され、遺伝子産物が細胞内で生産されるように、遺伝子をヒト細胞に安定に導入することを特徴とする、治療的手法によって治療することができる。この手法によって治療を受け入れる疾患には、欠陥が単一又は複数の遺伝子であるものが含まれる。又、遺伝子療法は、後天性疾患及び他の病状の治療にも有用である。遺伝的治療及び後天性疾患に対する遺伝子療法の応用に関する考察については、Miller, Nature 357:455−460 (1992);及びMulligan, Science 260:926−932 (1993)を参照されたい。
【0186】
本発明に照らし、遺伝子療法は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドが関与する、種々の疾患及び/又は障害を標的とするために使用することができる。例えば、ポリヌクレオチドを含む化合物は、精神障害を処置することにおいて有効であるとして、本発明の方法によって同定することができる。これらのポリヌクレオチドの遺伝子療法による導入は、例えば、気分障害又は精神病性障害(例えば、精神分裂病)を含む精神障害を処置することができる。
【0187】
A.遺伝子送達のためのベクター
細胞又は器官への送達のため、本発明のポリヌクレオチドをベクターに組み込むことができる。このような目的のために使用されるベクターの具体例には、標的細胞中で核酸の発現を命令することができる発現プラスミドが含まれる。他の具体例については、このベクターは、核酸が標的細胞を形質転換することができるウイルスゲノム中に導入されたウイルスベクターシステムである。好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、所望の標的宿主細胞中で遺伝子の発現を命令することができる、発現及び制御配列に動作可能に結合している。従って、標的細胞内で適切な条件下、核酸を発現させることができる。
【0188】
B.遺伝子送達システム
核酸の発現に有用なウイルスベクターシステムには、例えば、天然又は組換ウイルスベクターシステムが含まれる。特定の用途に依存し、適切なウイルスベクターには、複製可能性、複製欠損性、及び条件付きで複製されるウイルスベクターが含まれる。例えば、ウイルスベクターは、ヒト遺伝子又はウシアデノウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、マウスの微小ウイルス(MVM)、HIV、シンドビズウイルス、及びレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスに限定されない)、及びMoMLVから誘導され得る。通常、対象となる遺伝子はこのようなベクターに挿入され、通常、ウイルスDNAを伴う遺伝子構築物のパッケージ、感受性宿主細胞の感染、及び対象となる遺伝子の発現を可能にする。
【0189】
本明細書で使用されるように、「遺伝子送達システム」は、本発明の核酸を標的細胞に送達するための任意の手段を意味する。本発明の幾つかの実施形態において、核酸を、DNA結合部分等の、適当な結合部分を通じて取り込み(例えば、コーティングしたピットの勧誘及びエンドソームの内部移行)を促進するための細胞受容体リガンドに核酸を結合する(Wu, et al., J. Biol. Chem. 263:14621−14624 (1988);WO92/06180)。例えば、核酸をポリリジン部分を通して、肝細胞のアシアロ糖タンパク質受容体のリガンドである、アシアロ−オロムコシドに結合することができる。
【0190】
同様に、本発明の核酸を含む、遺伝子構築物を封入するためのウイルスエンベロープは、特定の細胞内への受容体媒介エンドーシスを可能にするため、受容体リガンド又は受容体に特異的な抗体の付加により修飾することができる(例えば、WO93/20221、WO93/14188及びWO94/06923を参照)。本発明の幾つかの実施形態において、本発明のDNA構築物が、エンドサイトーシスを促進するために、アデノウイルス粒子等のウイルスタンパク質に結合する(Curiel, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88:8850−8854 (1991)。一実施形態において、本発明の分子結合体には、微小管阻害剤(WO/9406922)、インフルエンザウイルス血球凝集素様合成ペプチド(Plank, et al., J. Biol. Chem. 269:12918−12924 (1994)、及びSV40T抗原等の核局在化シグナル(WO93/19768)が含まれる。
【0191】
又、レトロウイルスは、本発明の核酸を細胞又は生物に導入するのに有用である。レトロウイルスベクターは、レトロウイルスを遺伝的に操作することによって産生される。レトロウイルスのウイルスゲノムはRNAである。感染により、このゲノムRNAはDNAコピーに逆転写され、高安定性及び高効率で形質導入細胞の染色体DNAに組み込まれる。組み込まれたDNAコピーはプロウイルスと呼ばれ、他の遺伝子のように、娘細胞によって遺伝する。野生型のレトロウイルスゲノム及びプロウイルスDNAは3種の遺伝子、gag、pol及びenv遺伝子を有し、2本の長い末端反復配列(LTR)に隣接する。gag遺伝子は、内部構造(ヌクレオキャプシド)タンパク質をコードし、pol遺伝子はRNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)をコードし;env遺伝子はウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする。5’及び3’LTRは転写、及びウイルス粒子RNAのポリアデニル化を促進する。5’LTRへの隣接は、ゲノム(tRNAプライマー結合部位))の逆転写、ウイルスRNAの粒子(Psi部位)への効率的な封入に必要な配列である(Mulligan, In:Experimental Manipulation of Gene Expression, Inouye (ed), 155−173 (1983);Mann, et al., Cell 33:153−159 (1983);Cone and Mulligan, Proceedings of the National Academy of Sciences, U.S.A., 81:6349−6353 (1984))。
【0192】
レトロウイルスベクターの構造は当業者に周知である。簡潔に述べると、キャプシド形成(又はレトロウイルスRNAの感染粒子へのパッケージ)に必要な配列は、ウイルスゲノムから欠落する場合、結果は、ゲノムRNAのキャプシド形成を阻止するシス活性欠損である。しかし、得られた変異体は、全てのウイルスタンパク質の合成を方向付けることができる。これらの配列が、染色体と安定して統合された変態ゲノムを含む細胞株と同時に除去されたレトロウイルスのゲノムは当業界で周知であり、レトロウイルスのベクターを構成するのに使用される。レトロウイルスベクターの調製及びそれらの使用は、例えば、欧州特許出願EPA0178220号;米国特許第4,405,712号、Gilboa Biotechniques 4:504−512)1986);Mann, et al., Cell 33:153−159 (1983);Cone and Mulligan Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6349−6353 (1984);Eglitis, et al., Biotechniques 6:608−614 (1988);Miller, et al., Biotecniques 7:981−990 (1989);Miller (1992),同上;Mulligan (1993),同上;及びWO92/07943を含む多くの文献に記載されている。
【0193】
レトロウイルスベクター粒子は、所望のヌクレオチド配列をレトロウイルスベクターに組換えにより挿入し、パッケージ細胞系を使用してレトロウイルスキャプシドタンパク質でベクターをパッケージングすることによって調製される。得られたレトロウイルスベクター粒子は、宿主細胞内で複製する能力がないが、所望のヌクレオチド配列を含むプロウイルス配列として宿主細胞ゲノムを組み込む能力を有する。結果として、例えば、患者は本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを製造することができ、それ故細胞を正常の表現形に回復する。
【0194】
レトロウイルス粒子の調製に使用されるパッケージング細胞系は、通常、パッケージに必要なウイルス構造タンパク質を生産するが、感染性ウイルス粒子を製造する能力がない、組換え哺乳動物組織培養細胞系である。一方、使用される、欠陥のあるレトロウイルスベクターは、これらの構造遺伝子を欠損するが、パッケージに必要な残りのタンパク質をコードする。パッケージング細胞系を調製するため、パッケージング部位が欠落した、所望のレトロウイルスの感染性クローンを構築することができる。この構築物を含む細胞は、全てのウイルスの構造タンパク質を発現するが、導入されたDNAは、パッケージングする能力がない。又、パッケージング細胞系は、細胞系を、適切なコア及びエンベロープタンパク質をコードする1つ以上の発現プラスミドで異質転換することにより産生することができる。これらの細胞において、gag、pol及びenv遺伝子は、同一又は異なるレトロウイルスに由来してもよい。
【0195】
本発明に好適な幾つかのパッケージング細胞系は又、先行技術でも使用可能である。これらの細胞系の具体例には、Crip、GPE86、PA317及びPG13(Miller, et al., J. Virol. 65:2220−2224 (1991)を参照)が含まれる。その他のパッケージング細胞系の例は、Cone and Mulligan, Proceedings of the National Academy of Sciences, USA, 81:6349−6553 (1984);Danos and Mulligan, Proceedings of the National Academy of Science, USA, 85:6460−6464 (1988);Eglitis, et al., (1998),同上;及びMiller (1990),同上に記載されている。
【0196】
キメラエンベロープタンパク質を有するレトロウイルスベクター粒子を産生できるパッケージング細胞系が使用され得る。或いは、PA317及びGPXパッケージング細胞系によって産生されるような、両種性又は異種指向性エンベロープタンパク質が、レトロウイルスベクターのパッケージングに使用され得る。
【0197】
本発明の幾つかの実施形態において、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子とハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチドが投与される。アンチセンスポリペプチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドとして供給することができる(例えば、Murayama, et al., Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 7:109−114 (1997)を参照)。アンチセンス核酸をコードする遺伝子も供給することができ;このような遺伝子は、当業者に既知の方法によって細胞に導入することができる。例えば、B型肝炎ウイルス(例えば、Ji, et al., J. Viral Hepat. 4:167−173 (1997)を参照)において、アデノ随伴ウイルス(例えば、Xiao, et al., Brain Res. 756:76−83 (1997)を参照)において、又はHVJ(センダイウイルス)−リポソーム遺伝子送達システム(例えば、Kaneda, et al., Ann. NY Acad. Sci. 811:299−308 (1977)を参照)を含むがこれらに限定されないその他の系において、ペプチドベクター(例えば、Vidal, et al., CR Acad. Sci III 32:279−287 (1997)を参照)、エピソーム又はプラスミドベクター中の遺伝子として(例えば、Cooper, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:6450−6455 (1997)、Yew, et al., Hum Gene Ther. 8:575−584 (1997)を参照)、ペプチド−DNA凝集体として(例えば、Niidome, et al., J. Biol. Chem. 272:15307−15312 (1997)を参照)、「ネイキッドDNA」として(例えば、米国特許第5,580,859号及び第5,589,466号を参照)、脂質ベクターシステム(例えば、Lee, et al., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst. 14:173−206 (1997)を参照)、ポリマーコーティングリポソーム(米国特許第5,213,804号及び第5,013,556号)、カチオン性リポソーム(Epand, et al., 米国特許第5,283,185号、第5,578,475号、第5,279,833号及び第5,334,761号)、ガス充填ミクロスフェア(米国特許第5,542,935号)、リガンド−標的封入高分子(米国特許第5,108,921号、第5,521,291号、第5,554,386号、及び第5,166,320号)において、ウイルスベクターにアンチセンスヌクレオチド配列を導入することができる。
【0198】
精神分裂病と関連する、表1〜14に記載の上方制御された転写物は、前述の通り、標的における特異的な配列とハイブリダイズする1つ以上の低分子干渉RNA(siRNA)配列によってターゲティングされる場合がある。インビボにて特定の脳転写物をsiRNAによりターゲティングする方法は、例えば、血液脳関門を通るリポソーム封入siRNA分子の通過を促進するためにトランスフェリン受容体に対するモノクローナル抗体を使用した、Zhang, et al., J. Gene. Med., 12:1039−45 (2003)に報告されている。ターゲティングされたsiRNAは、病状、例えば精神分裂病に関連する過剰発現された転写物を減衰されるために有用な治療化合物となる。
【0199】
別の実施形態において、tet制御システム、及びRU−486システムに代表される、条件付きの発現システムを使用することができる(例えば、Gossen & Bujard, PNAS 89:5547 (1992);Oligino, et al., Gene Ther. 5:491−496 (1998);Wang, et al., Gene Ther. 4:432−441 (1997);Neering, et al., Blood 88:1147−1155 (1996);及びRendahl, et al., Nat. Biotechnol. 16:757−761 (1998)を参照)。これらのシステムは、対象となる標的遺伝子の発現に対する低分子制御をもたらす。
【0200】
C.医薬組成物
薬学的な目的での使用において、遺伝子療法に使用されるベクターは、リン酸緩衝剤食塩水、又はリン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム、トリス緩衝剤、グリシン緩衝剤、無菌水、並びにGood, et al., Biochemistry 5:467 (1966)に記載のもののような当業者に既知のその他の緩衝剤等、任意の薬学的に許容される緩衝剤であり得る好適な緩衝剤中で製剤化される。
【0201】
組成物には更に、安定剤、賦活薬又はその他の薬学的に許容される担体若しくは賦形剤が含まれてもよい。薬学的に許容される担体は、例えば、本発明の核酸及び関連するベクターを安定化するために作用する生理学的に許容される化合物を含有してもよい。例えば、生理学的に許容される化合物には、グルコース、ショ糖又はデキストラン等の炭水化物:アスコルビン酸又はグルタチオン等の酸化防止剤、キレート剤、低分子量タンパク質又は安定化剤又は賦形剤が含まれる。他の生理学的に許容される化合物には、湿潤剤、乳化剤、分散剤又は微生物の増殖又は作用を防止するのに特に有用な、保存剤が含まれる。種々の保存剤は周知であり、例えば、フェノール及びアスコルビン酸が含まれる。担体、安定化剤、又はある晩との具体例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed. (1985)に開示されている。
【0202】
D.製剤の投与
本発明の製剤は、当業者に既知の任意の送達方法を使用して、任意の組織又は器官に送達することができる。本発明の幾つかの実施形態において、本発明の核酸は、粘膜、局所及び/又は頬製剤、特に粘膜付着性ゲル及び局所ゲル製剤中で製剤化される。経皮送達のための具体的な浸透促進製剤、ポリマーマトリックス、及び粘膜付着性ゲル組成物は、米国特許第5,346,701号に開示されている。
【0203】
E.処置方法
本発明の遺伝子療法製剤は、通常、細胞に投与される。細胞は、上皮膜、又は組織培養中等の単離された細胞等の、組織の一部として供給されてもよい。細胞は、インビボ、エキソビボ又はインビトロにて供給されてもよい。
【0204】
製剤は、種々の方法により、インビボ又はエキソビボで対象となる組織に導入することができる。本発明の幾つかの実施形態において、本発明の核酸は、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム融合又は微粒子銃等により細胞中に導入される。更なる実施形態において、核酸は、対象となる組織によって直接取り込まれる。
【0205】
本発明の幾つかの実施形態において、本発明の核酸は、患者から外植培養した細胞又は組織にエキソビボにて投与された後、患者に戻される。治療遺伝子構築物のエキソビボ投与の例には、Nolta, et al., Proc Natl. Acad. Sci. USA 93(6):2414−9 (1996);Koc, et al., Seminars in Oncology 23(1):46−65 (1996);Raper, et al., Annals of Surgery 223(2):116−26 (1996);Dalesandro, et al., J. Thorac. Cardi. Surg., 11(2):416−22 (1996);及びMakarov, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(1):402−6 (1996)が含まれる。
【0206】
X.気分障害及び精神病性障害の診断
本発明は又、気分障害(例えば、大うつ病又は双極性障害)、精神病性障害(例えば、精神分裂病)の診断方法を提供する。好ましい実施形態において、該病状は精神病性障害を含む。診断は、患者における本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドのレベルを測定し、次いで、ベースライン又は範囲に対するレベルを比較することを特徴とする。通常、ベースライン値は、気分障害又は精神病性障害に罹患していないか、医薬又は他の薬剤の影響下にない健康なヒトにおける、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの代表値である。ベースライン範囲からの本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドのレベルの変化(上昇又は下降の何れか)は、患者が気分障害又は精神病性障害に罹患しているか、気分障害又は精神病性障害の少なくとも幾つかの症状の発生の危険性を有することを示す。幾つかの実施形態において、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドのレベルは、血液、尿、又は組織試料を患者から採取し、例えば、発現レベルの測定、これらの遺伝子に関連するSNP又はハプロタイプの測定等の、本明細書で考察されたような検出方法の何れかを使用して、試料中の本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの量を測定することによって測定される。本明細書に供給された遺伝子は又、PCR及びチップアッセイのためのプローブセットを開発するために使用することができる。
【0207】
又、一塩基変異多型(SNP)分析は、本発明のポリヌクレオチド(例えば、遺伝子)の対立遺伝子間の相違を検出するのに有用である。本発明のポリペプチドをコードする遺伝子と関連付けられたSNPは、その発生が、本発明の遺伝子配列と関連付けられている、疾患(例えば、双極性障害、大うつ病等の気分障害、及び精神病性障害)の診断に有用である。例えば、個体が本発明の遺伝子配列の疾患関連対立遺伝子と関連付けられている、少なくとも1種のSNPを有する場合、該個体は、1つ以上のこれらの疾患にかかりやすいと考えられる。個体が、疾患と関連付けられたSNPにとって同型である場合、該個体は、特に、これらの疾患が発生しやすい。幾つかの実施形態において、本発明の遺伝子配列と関連するSNPは、遺伝子配列から300,000塩基対;200,000塩基対;100,000塩基対;75,000塩基対;50,000塩基対;又は10,000塩基対以内に位置する。
【0208】
タックマン又は分子ビーコンをベースとするアッセイ(例えば、米国特許第5,210,015号、第5,487,972号;Tyagi, et al., Nature Biotechnology 14:303 (1996);及びPCT WO95/13399)を含む、種々のリアルタイプPCR法を、SPNを検出するために使用することができ、SNPの存在又は非存在を監視するのに有用である。追加のSNP検出方法には、例えば、DNA配列決定、ハイブリダイゼーションによる配列決定、ドットブロッティング、オリゴヌクレオチドアレイ(DNAチップ)ハイブリダイゼーション分析、又は、例えば、米国特許第6,177,249号;Landegren, et al., Genome Research, 8:769−76 (1998);Botstein, et al., Am J Human Genetics 32:314−331 (1980);Meyers, et al., Methods in Enzymology 155:501−527 (1987);Keen, et al., Trends in Genetics 7:5 (1991);Myers, et al., Science 230:1242−1246 (1985);及びKwok, et al., Genomics 23:138−144 (1994)に開示されている。
【0209】
幾つかの実施形態において、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの酵素産物のレベルを測定し、健康なヒトのベースライン値と比較する。ベースラインに対する産物の調節レベルは、患者が気分障害又は精神病性障害に罹患しているか、気分障害又は精神病性障害の少なくとも幾つかの症状の活性の危険性があることを示す。例えば、患者の試料は、血液、PBS、リンパ球、唾液、CSF、尿又は組織試料である。
【0210】
精神病性障害において特異的に発現する遺伝子の抗原及び抗体を使用した免疫アッセイは又、ELISA及び免疫組織化学的アッセイ等の免疫アッセイにも有用である。本明細書に記載の遺伝子は又、精神病性障害のための特異的な診断薬の製造にも有用である。
【0211】
幾つかの実施形態において、患者における精神分裂病は診断することができ、さもなければ、表1〜14の1つ以上の遺伝子配列のin situで発現を視覚化することによって評価される。生きている患者の脳内の核酸、ポリペプチド及び他の生化学的化合物を含む分子の存在又は発現を視覚化する当業者は、本明細書に開示された遺伝子発現情報が種々の視覚化法との関連で利用することができることを評価する。このような方法には、単一光子放射断層撮影(SPECT)及び陽電子放射断層撮影(PET)法が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Vassaux and Groot−wassink, “in vivo Nominvasive Imaging for Gene Therapy” J. Biomedicine and Biotechnology, 2:92−101 (2003);Turner, J. Symth, P., Fallon, J.F., Kennedy, J.L., Potkin, S.G., FIRST BIRN (2006). Imaging and genetics in schizophrenia. Neuroinformatics, in pressを参照されたい。
【0212】
PET及びSPECT画像化は、器官及び組織の化学的機能を示すが、その他の画像化技法(例えば、X線、CT及びMRI)は、構造を示す。PET及びSPECT画像化法の使用は、精神分裂病及び他の関連疾患等の脳疾患の発生を認定し、監視するのに有用である。ある例においては、PET又はSPECT画像化の使用は、症状の発生よりも早く疾患を検出することを可能にする。ポリペプチド及びヌクレオチドの存在又は発現を視覚化するための低分子量化合物の使用は、例えば、Herholz K, et al., Mol Imaging Biol,6(4):239−69 (2004);Nordberg A, Lancet Neurol., 3(9):519−27 (2004);Neutropsychol Rev., Zakzanis KK, et al., 13(1):1−18 (2003);Kung MP, et al., Brain Res., 1025(1−2):98−105 (2004);及びHerholz K, Ann Nucl Med., 17(2):79−89 (2003)に開示されたように、成功を収めた。
【0213】
表1〜14に記載された調節不全遺伝子、又はコードされるペプチド(もしあれば)又はその断片を、PET及びSPECT画像化法において使用することができる。PET及びSPECT法についての適切なトレーサー残基で修飾した後、表1〜14の転写物、又はそれらの転写物によってコードされるポリペプチドと相互作用又は結合する分子は、遺伝子のパターンを視覚化するために使用され、本明細書に開示されるように、精神分裂病の診断を促進する。同様に、コードされるポリペプチドが酵素をコードする場合、酵素による触媒作用の産物と相互作用する標識化分子は、本明細書に開示される、インビボ画像化及び診断用途に使用することができる。
【0214】
アンチセンス技術は、本明細書の表1〜14に同定される転写物を検出するのに特に好適である。例えば、111In等の放射性各種で標識されたアンチセンスペプチド核酸、及び生体膜バリアを透過することを可能にする脳薬剤システムとの複合体の使用は、脳癌における内在性遺伝子の発現の画像化を許容することを証明した。Suzuki, et al., Journal of Nuclear Medicine, 10:1766−1775 (2004)を参照されたい。Suzuki等は、血液脳関門において転移受容体を標的とし、PNAのバリア透過を促進するモノクローナル抗体を含む送達システムを使用している。この技法の修飾形態は、精神分裂病患者を処置する方法における、表1〜5に示される上方制御遺伝子等の、精神分裂病と関連する情報制御遺伝子を標的とするために使用される。
【0215】
他の実施形態においては、表1〜14に記載された調節不全遺伝子が、出生前及び新生児の診断方法において使用される。例えば、胎児又は新生児のリンパ球を単離し、適切な転写物の発現レベルを測定し、精神分裂病等の精神障害の可能性の存在又は上昇と相関させる。同様に、表6中で同定された1つ以上のSNPの存在が、ASGの調節不全の発現、及び胎児、新生児、小児及び成人患者における精神分裂病の可能性を推察又は確認するために使用される。
【0216】
他の実施形態において、本明細書に記載された脳標識化及び画像が技術又はそれらの変形は、法医学分析において、即ち、精神分裂病に罹患している個体が減少したかどうかを決定するために、表1〜4又は6の調節不全遺伝子配列の何れかと併せて使用することができる。同様に、表4〜5で同定された遺伝子の何れかのリンパ球発現の法医学調査は、精神分裂病に罹患している個体が減少したがどうかを決定するために、単独で、又は他の方法と組み合わせて使用することができる。
【0217】
本明細書に記載の実施例及び実施形態は、単に例示を目的としたものであり、これらに照らした種々の修飾又は変形は、当業者に示唆され、本出願の趣旨及び範囲、並びに添付の特許請求の範囲の適用範囲内に含まれることが理解される。
【実施例】
【0218】
実施例1:精神分裂病患者における遺伝子調節不全の同定
死後の精神障害の患者の脳、及び対照の脳を、本研究に使用した。それぞれ、一対の脳(患者及び対照)を、性、年齢、死後の経過時間に基づき適合させた。末期における患者の特定の状態(発作、昏睡、低酸素症、脱水及び発熱等の、末期の因子(agonal factor))、及び死後の脳組織の状態(死後の経過時間、及び冷凍時間等の、死後の因子)は、死後の脳組織におけるRNA保存における主要な影響である。脳のpHを、末期状態についての指標として、及びRNA保存の指標として評価した。RNAの品質が低下したと思われる場合、末期因子及び低pH試料を有する被験体は研究から除外した。
【0219】
本研究において、遺伝子発現の調節不全は、以下の6個の脳領域において試験した:即ち、前帯状皮質(AnCg)、背面前頭葉皮質(DLPFC)、小脳皮質(CB)、上側頭回(STG)、頭頂葉皮質(PC)、及び側坐核(nAcc)。そして、ヒトの死後の脳からの転写物が前述の厳密な品質管理基準に適合するか、即ち、供与者の末期の因子指数が0であり、各個体の脳のpHが少なくとも6.4であったかを照会するために、健常な対照と比べた精神分裂病患者における遺伝子発現パターンが、Affymetrix GeneChips{(HG_U133セット(A+B)}を使用して分析した(Tomita et al., 2004;Li et al., 2004を参照)。
【0220】
データ分析に使用されるプローブセット配列は、UniGeneの定義に特有の配列の重複を除去し、UMICH生命情報科学グループ(http://brainarray.mhri.med.umich.edu/Brainarray/)によって作成されたCDFファイルに定義される通りである。GeneChipハイブリダイゼーションデータを処理しれ、バックグラウンド補正した後、試料複製物の分析における因子として診断(SZ及び対照)及び現場{(カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)、ミシガン大学(UM)及びカリフォルニア大学デービス校(UCD))を使用して、最初にGCRMAと正規化した。(i)p<0.05の統計的有意性;(ii)必要に応じて、何れかの方向における対照と相対比較した、少なくとも1.2倍の発現の変化(FC);(iii)6個の分析された脳領域(前述した)の何れかにおける少なくとも10%の存在の(P)コールを示すプローブセットが、特異的に発現する遺伝子として、即ち調節不全遺伝子として選択された。
【0221】
分析された6箇所の脳領域の1つ以上において、対照の脳に対し精神分裂病において特異的に発現するとして、合計1336の転写物/遺伝子を同定した。それらのうち、246個の遺伝子がAnCgで;166個がCBで;156個がDLPFCで;124個がnAccで:76個がPCで;84個がSTGで上方制御されていた。138個の遺伝子がAnCgで;187個がCBで;94個がDLPFCで;83個がnAccで;125個がPCで;105個がSTGで下方制御されていた。このデータを表1に示す。
【0222】
6箇所の分析で、AnCg及びDLPFCのみは、Gene Ontology(GO)用語が濃縮され、KEGG経路の有意な濃縮は示されなかった。AnCgにおいて濃縮されたGO用語を表2に記載する。表2は、3種のGO用語がAnCg、特にGO:0050874、生物生理学的手順(11プローブセットを有する);GO:0058550、真核生物転写因子2複合体(3プローブセットを有する):及びGO:0005739、ミトコンドリア(25プローブセットを有する)において濃縮されていた。
【0223】
表3は、単一のGO用語がDLPFC、特に、GO:0005622細胞内(90プローブセットを有する)で濃縮されていることを示す。
【0224】
実施例2:脳内で見出された調節不全遺伝子の末梢バイオマーカー発現
本研究のため、精神分裂病に罹患している個体の別の集団(n=5)を、影響を受けない家系のメンバー(n=5)に対して性及び年齢を適合させた。各個体から単離した新鮮なリンパ球を、エプスタインバーウイルスを使用して形質転換し、15%牛胎児血清(加熱不活性)、2mM L−グルタミン及び25mgのゲンタマイシンを補充したRPMI−1640培地中でコンフルエントになるまで増殖させた。RNAを、約5×107個のリンパ球細胞から、標準的なTRIzol単離プロトコール(Invitrogen[米国カリフォルニア州カールスバッド])を使用して抽出した。製造業者のプロトコールに従い、Affymetrix Human Genome U133A Arrayを遺伝子発現のために使用した。遺伝子発現特性は、U133Aチップに由来し、ロバストマルチアレイ縮合アルゴリズム(RMA)により分析した。特異的遺伝子発現(本分析の目的のための遺伝子発現特性)を、影響を受けない家系のメンバーに対する、精神分裂病における有意な両側t−試験(p<0.05)を示す遺伝子として定義する。影響を受けないメンバーと比較し、精神分裂病におけるリンパ球の調節不全についてのt検定をパスする1344の遺伝子があった。この一覧を表1の遺伝子と比較した(精神分裂病における脳調節不全遺伝子を示す)。脳及びリンパ球の両方において調節不全を示す遺伝子を表4に示す。
【0225】
表4の84種の調節不全遺伝子の一覧は、脳及びリンパ球の間の傾向が一致する群、及び脳及びリンパ球の間の傾向が一致しない群にグループ分けされる。両方の調節不全遺伝子はバイオマーカーである。リンパ芽球は、脳組織において通常に示されるような、末期因子、pH、医薬の効果を有さない。従って、表4の遺伝子転写物は、治療中又は診断の目的のため、リンパ芽球を監視するために使用される。
【0226】
リンパ芽球のみ(即ち脳においては認められない)において有意な調節不全を示すものとしてマイクロアレイアッセイにより同定された1344種の遺伝子のサブセットを表5に示す。マイクロアレイデータを、Q−PCRを使用して評価し、リンパ球試料における遺伝子発現の変化及び傾向を調べた。8種の遺伝子が、Q−PCR中でt検定(両側)において統計的に有意であった。
【0227】
アスパルチルグルコサミヌリア(AGA)遺伝子発現は、精神分裂病に罹患している個体の脳及びリンパ球の両方において調節不全を示す(表4)。AGA遺伝子発現と関連する11種の単一ヌクレオチド多型マーカーが同定され、表6に示す。又、表6は、リンパ球遺伝子発現を伴う、遺伝子型の回帰p値を示す。11のマーカーのうち、8個が、シス調節部位と関連し(すなわち、シス値は5Mb未満)、3個がトランス調節部位と関連した(シス値は5Mbを超える)。これらのSNPの検出は、リンパ芽級におけるAGA遺伝子発現の予測を促進することができる。同様に、他の調節不全の発現と関連するSNPの検出は、これらの遺伝子の発現レベルの予測を促進することができる。表6のSNPは又、精神分裂病の診断又は治療のための、AGA制御された発現についての、又は変化したAGA発現と関連する他の疾患の診断及び処置についての標的を表す。SNP rs723820、rs723819、rs1112286、rs1375749について、表6は、重要でない対立遺伝子が、精神分裂病において減少したAGA発現と関連することを示す。
【0228】
実施例3:PSPHL挿入欠失突然変異の評価
本発明は、ホスホロセリンホスファターゼ様遺伝子の挿入−欠失多型に関連する以前の発見、及びPSPHLの欠失対立遺伝子及び双極性障害(BPD)に対する感受性の関連を広げた。
【0229】
本発明者等は、既に以下のことを決定した。1)PSPHL遺伝子は4個のエクソンからなる。エクソン1、2、3及び4は、それぞれ213bp、114bp、122bp及び501bp長であり、スパンイントロン1、2及び3(それぞれ、3221bp、829bp及び11939bp長)にわたる。2)PSPHL及びPSPHは、染色体7p11.2領域上で、相互に200kb離れて位置し、非常に相同的である。3)PSPHL遺伝子は、2種の転写物を有し、1つはエクソン1〜4(PSPHL−A)で使用するが、他はエクソン1、2及び4(PSPHL−B)を使用する。PSPHL−A及びPSPHL−Bの予測されるタンパク質は、エクソン1及び2から転写された、N末端の57個の共通のアミノ酸を共有する。PSPH及び予測されるPSPHL−A及びBは共通に31個のアミノ酸を有する。4)それらは、PSPHL座において挿入/欠失多型を示す。欠失したゲノム領域は、30kb以上にわたり、プロモーター領域、及びPSPHL遺伝子のエクソン1、2及び3を含む。5)PSPHLは、PSPHL座における挿入/欠失多型による、ヒトの集団の間の二分する(存在又は非存在)発現パターンを示す。6)PSPHLを発現する個体数は、対照群と比較してBPD患者群の方が有意に少なかった。7)PSPHはセリン合成の律速酵素であるため、PSPHLはセリンアミノ酸代謝経路に関与する場合がある、その他の経路にも関与する可能性がある。
【0230】
本発明において、本発明者等は以下を究明した。
【0231】
1)本発明者等は遺伝子の発現パターンにおける、PSPHL座での挿入−欠失他型の関与を証明した。
【0232】
PSPHL遺伝型及びPSPHLのmRNAに関して分析した、125のヒトの死後の脳組織(19人のBPD、22人のMDD、20人のSCZ患者及び64人の対照)のうち、81人の被験体(18人のBPD、8人のMDD、12人のSCZ及び43人の対照)が、PSPHL座についての対立遺伝子の同型パターン(Del/Del)を示し、81人のDel/Delの個体がPSPHLのmRNAの発現を欠如していた。一方、40人の患者(1人のBPD、13人のMDD、8人のSCZ患者及び18人の対照)は、PSPHL座について挿入及び欠失対立遺伝子の異型パターン(Ins/Del)を示し、そして4人の患者(1人のMDD、及び3人の対照)が、挿入対立遺伝子の同型パターン(Ins/Ins)を示した。少なくとも1種の挿入対立遺伝子を有する、44人の患者全て(40人のIns/Del及び4人のIns/Ins)がPSPHLのmRNA発現を示した。この発見は、PSPHLのmRNA発現の存在/非存在が、PSPHL座における挿入/欠失多型によることを支持する。64人の対照被験体における本発明者等の観察は、ハーディ−ヴァインベルグの予想に正確に適合した。PSPHL座についての挿入及び欠失についての対立遺伝子頻度は、それぞれ、0.18及び0.82と推定される。
【0233】
2)本発明者等は、BPD患者群におけるPSPHLを発現する固体の数が、対照群に比べて、有意に小さく、MDD患者群においては対照群より有意に大きいことを証明した。
【0234】
超幾何分布に基づき、19人のPBD患者において、PSPHLを発現していない1以下の個体についての累積的なp値は0.0015である。又、22人のMDD患者においてPSPHLを発現する14以上の個体についての累積的なp値は0.0002である。SCZ患者及び対照の間の分布に有意な差はない。PSPHLを発現しない個体はPBD患者において優勢であるが、PSPHLを発現する個体はMDD患者で優勢であることは注目すべきことである。BPD及びMDDの間の分布において観察される相違の可能性は、フィッシャーの直接確率検定に基づいて0.000098である。この発見は、持病の初期に医師に会いに来る、精神的に落ち込んだ患者の中から、潜在的なBPD患者を予想する遺伝的試験に応用することができる。
【0235】
3)本発明者等は、ヒトの死後の脳組織中、及びヒトの脳に由来する細胞系中で、PSPHL−BのmRNA発現レベルがPSPHL−Aに比べ約10倍高いことを特徴付けた。
【0236】
PSPHLは、少なくとも2種の転写物、即ちPSPHL−A(エクソン1、2、3及び4からなる)及びPSPHL−B(エクソン1、2及び4からなる)を有する。PSPHL−A及びPSPHL−Bに特異的なプライマーセット及びタックマンプローブを使用した、定量的RT−PCR評価に基づくと、PSPHL−A及びPSPHL−Bの両方が、少なくとも1種のPSPHL挿入対立遺伝子を有する被験体由来のヒトの死後の、前帯状皮質及び小脳皮質を含む脳皮質中で発現していた。PSPHL−BのmRNA発現レベルは、分析した脳組織中でPSPHL−Aより約10倍高かった。又、PSPHL−A及びPSPHL−Bはいずれも、ヒト神経芽細胞腫細胞系、SK−N−SH、ヒトグリオーマ細胞系、Hs683、及びヒトオリゴデンドロサイト誘発細胞系、少なくとも1種のPSPHL挿入対立遺伝子を有するOLを含むヒトの脳に由来する細胞系中で発現していた。PSPHL−BのmRNA発現レベルは、これらの細胞中でPSPHL−Aよりも約10倍高かった。同型のPSPHL欠失対立遺伝子を有するグリア芽腫細胞系、U87−MGは、PSPHL−A及びPSPHL−Bの発現を欠如する。
【0237】
4)本発明者等は、PSPHL遺伝子の5’領域のプロモーター活性を証明した。pGLをベースとするベクターにクローニングされたPSPHLの5’領域(1015bp断片)は、少なくともHela細胞及びヒト希突起膠細胞系(OL)において十分なプロモーター活性を示す。反対方向に同じ領域を含むベクター(陰性対照)は、プロモーター活性を示さなかった。
【0238】
【表1】
前述の実施例は、本発明を例示するために示されたものであり、本発明の適用範囲を限定するために示されたものではない。本発明のその他の変形は、当業者に容易に明らかであり、添付の特許請求の範囲に包含される。本明細書で引用される全ての刊行物、データベース、Genbank配列、GO用語、特許、及び特許出願は、参考として本明細書に組み入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1−1】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。記載した全ての遺伝子(列)について、UniGene ID、GenBank受入番号(“Acc”)、遺伝子記号、染色体番号(“Chr”)、及び発現レベルにおける変化の方向(上方又は下方)を、連続するカラムに記載する。最後のカラムには、特異的に発現する遺伝子、及び利用できる関連情報を記載する。
【図1−2】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−3】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−4】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−5】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−6】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−7】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−8】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−9】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−10】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−11】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−12】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−13】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−14】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−15】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−16】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−17】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−18】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−19】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−20】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−21】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−22】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−23】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−24】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−25】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−26】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−27】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−28】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−29】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−30】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−31】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−32】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−33】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−34】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−35】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−36】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−37】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−38】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−39】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−40】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−41】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図1−42】表1には、6ヶ所の脳領域のそれぞれにおいて、対照患者に比べて、精神分裂病において特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図2−1】表2は、AnCg中に濃縮された遺伝子オントロジー(GO)用語を示す。濃縮されたGO用語を示し、初期値FDR補正限界基準に適合するプローブセット(http://brainarray.mhri.med.umich.edu/Brainarray/)を本明細書に記載する。それぞれ濃縮されたGO用語に基づき、個々の遺伝子を各列に記載する。LocusLink ID番号、UniGene ID番号、遺伝子記号及び遺伝子の概要に関連する情報を連続するカラムに記載する。
【図2−2】表2は、AnCg中に濃縮された遺伝子オントロジー(GO)用語を示す。
【図3−1】表3は、DLPFC中に濃縮されたGO用語を示す。濃縮されたGO用語を示し、初期値FDR補正限界基準に適合するプローブセット(http://brainarray.mhri.med.umich.edu/Brainarray/)を本明細書に記載する。それぞれ濃縮されたGO用語に基づき、個々の遺伝子を各列に記載する。LocusLink ID番号、UniGene ID番号、遺伝子記号及び遺伝子の概要を連続するカラムに記載する。
【図3−2】表3は、DLPFC中に濃縮されたGO用語を示す。
【図3−3】表3は、DLPFC中に濃縮されたGO用語を示す。
【図3−4】表3は、DLPFC中に濃縮されたGO用語を示す。
【図4−1】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−2】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−3】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−4】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−5】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−6】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−7】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図4−8】表4は、リンパ球及び脳組織の両方において有意な調節不全を示す84個の遺伝子を記載する。
【図5】表5は、リンパ球のみにおいて有意な調節不全を示す16個の遺伝子を記載する。これらの遺伝子はマイクロアレイによって有意であり、変化の量及び方向はQ−PCRを使用して確認された。Q−PCRによって調べ、両側t―試験を使用して評価したところ、これらの7種の遺伝子(受入番号カラムに太字で記載)は、統計的に有意な調節不全を示した。
【図6】表6は、精神分裂病を有する個体の脳及びリンパ球の両方において調節不全を示すアスパルチルグルコサミヌリア(AGA)遺伝子発現に関連する11個の単一ヌクレオチド多型マーカーを記載する(下記表4を参照)。リンパ球遺伝子発現を伴う遺伝子型回帰p値を最後のカラムに示す。
【図7】表7は、気分障害及び精神病性障害に関与する遺伝子を記載する。
【図8】表8は、気分障害及び精神病性障害に関与する遺伝子を記載する。
【図9】表9は、気分障害及び精神病性障害に関与する扁桃体中で特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図10】表10は、気分障害及び精神病性障害に関与する扁桃体中で特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図11】表11は、気分障害及び精神病性障害に関与する扁桃体中で特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図12】表12は、気分障害及び精神病性障害に関与する扁桃体中で特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図13】表13は、気分障害及び精神病性障害に関与する扁桃体中で特異的に発現する遺伝子を記載する。
【図14】表14は、扁桃体中で発現するリチウム応答遺伝子を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体が精神障害に罹患しているか否か、又は精神障害にかかりやすいか否かを判定する方法であって、
(i)被験体から生物学的試料を得る手順;
(ii)表1〜14に記載のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされるポリヌクレオチド又はポリペプチドと選択的に結合する試薬と、該試料とを、接触させる手順;および
(iii)該試料と選択的に結合する試薬のレベルを測定し、それによって、該被験体が精神障害に罹患しているか否か、又は精神障害にかかりやすいか否かを判定する手順、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記試薬が抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試薬が核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試薬がポリヌクレオチドと結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試薬が、表6に記載のSNPの少なくとも1つを含むポリヌクレオチドと選択的に結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記試薬がポリペプチドと結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記試料と結合する試薬のレベルが、精神障害に罹患していないヒトに関連するレベルと異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的試料が羊水から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記精神障害が精神病性障害又は気分障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が脳組織又はリンパ球に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記試料が脳組織に由来する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、前帯状皮質(AnCg)、背面前頭葉皮質(DLPFC)、小脳皮質(CB)、上側頭回(STG)、頭頂葉皮質(PC)、側坐核(nAcc)及び扁桃体(amy)からなる群から選択される脳領域に由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記試料と結合する試薬のレベルが、精神障害に罹患していないヒトに関連するレベルよりも高い、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記精神病性障害が精神分裂病である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記気分障害が大うつ病又は躁鬱病である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
精神障害を処置するための化合物を同定する方法であって、
(i)表1〜14に記載のヌクレオチド配列を含む核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと、該化合物とを、接触させる手順;及び
(ii)ポリペプチドに対する該化合物の機能的効果を測定し、それによって、精神障害を処置するための化合物を同定する手順、
を包含する、方法。
【請求項17】
前記接触手順がインビトロにて実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリペプチドが細胞内で発現され、該細胞が該化合物と接触される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記精神障害が精神病性障害である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記精神病性障害が精神分裂病である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記精神障害が気分障害である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記精神病性障害が大うつ病又は双極性障害である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記化合物を動物に投与し、該動物に対する効果を測定する手順をさらに包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記測定手順が、前記動物の精神機能を試験する手順を包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
被験体における精神障害を処置するための化合物を同定する方法であって、
(i)表1〜14に記載のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む細胞と、該化合物とを、接触させる手順;及び
(ii)該ポリヌクレオチドの発現を調節する化合物を選択し、それによって、精神障害を処置するための化合物を同定する手順、
を包含する、方法。
【請求項26】
前記ポリヌクレオチドの発現が増大する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリヌクレオチドの発現が減少する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物を動物に投与し、該動物に対する効果を測定する手順をさらに包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記測定手順が、前記動物の精神機能を試験することを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記精神障害が精神病性障害である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記精神病性障害が精神分裂病である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記精神障害が気分障害である、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記精神病性障害が大うつ病又は双極性障害である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
被験体における精神障害を処置する方法であって、請求項16又は請求項25に記載の方法を使用して同定される化合物の治療有効量を該被験体に投与する手順を包含する、方法。
【請求項35】
前記精神障害が精神病性障害又は気分障害である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記化合物が有機低分子である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記精神病性障害が精神分裂病である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記気分障害が大うつ病又は双極性障害である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
被験体における精神障害を処置する方法であって、表1〜14に記載のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの治療有効量を該被験体に投与する手順を包含する、方法。
【請求項40】
前記精神障害が精神分裂病、大うつ病又は双極性障害である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
被験体における精神障害を処置する方法であって、表1〜14に記載のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸の治療有効量を該被験体に投与する手順を包含する、方法。
【請求項42】
前記精神障害が精神分裂病、大うつ病又は双極性障害である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
被験体が精神障害に罹患しているか否か、又は精神障害にかかりやすいか否かを判定する方法であって、
(i)該被験体の脳の1つ以上の領域の組織と、表1〜14の何れかに記載の遺伝子と選択的に結合する、検出可能に標識された分子とを、接触させる手順;
(ii)該脳組織中における検出可能に標識された該分子の分布を視覚化する手順;及び
(iii)該検出可能に標識された分子の分布を、該被験体中の精神分裂病の存在は発症傾向と関連付ける手順、
を包含する、方法。
【請求項44】
前記の1つ以上の領域が、前帯状皮質(AnCg)、背面前頭葉皮質(DLPFC)、小脳皮質(CB)、上側頭回(STG)、頭頂葉皮質(PC)、側坐核(nAcc)及び扁桃体(amy)からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記標識された分子がアンチセンスRNA分子である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記接触がインビボで生じる、請求項43に記載の方法。
【請求項1】
被験体が精神障害に罹患しているか否か、又は精神障害にかかりやすいか否かを判定する方法であって、
(i)被験体から生物学的試料を得る手順;
(ii)表1〜14に記載のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされるポリヌクレオチド又はポリペプチドと選択的に結合する試薬と、該試料とを、接触させる手順;および
(iii)該試料と選択的に結合する試薬のレベルを測定し、それによって、該被験体が精神障害に罹患しているか否か、又は精神障害にかかりやすいか否かを判定する手順、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記試薬が抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試薬が核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試薬がポリヌクレオチドと結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試薬が、表6に記載のSNPの少なくとも1つを含むポリヌクレオチドと選択的に結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記試薬がポリペプチドと結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記試料と結合する試薬のレベルが、精神障害に罹患していないヒトに関連するレベルと異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的試料が羊水から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記精神障害が精神病性障害又は気分障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が脳組織又はリンパ球に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記試料が脳組織に由来する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、前帯状皮質(AnCg)、背面前頭葉皮質(DLPFC)、小脳皮質(CB)、上側頭回(STG)、頭頂葉皮質(PC)、側坐核(nAcc)及び扁桃体(amy)からなる群から選択される脳領域に由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記試料と結合する試薬のレベルが、精神障害に罹患していないヒトに関連するレベルよりも高い、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記精神病性障害が精神分裂病である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記気分障害が大うつ病又は躁鬱病である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
精神障害を処置するための化合物を同定する方法であって、
(i)表1〜14に記載のヌクレオチド配列を含む核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと、該化合物とを、接触させる手順;及び
(ii)ポリペプチドに対する該化合物の機能的効果を測定し、それによって、精神障害を処置するための化合物を同定する手順、
を包含する、方法。
【請求項17】
前記接触手順がインビトロにて実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリペプチドが細胞内で発現され、該細胞が該化合物と接触される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記精神障害が精神病性障害である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記精神病性障害が精神分裂病である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記精神障害が気分障害である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記精神病性障害が大うつ病又は双極性障害である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記化合物を動物に投与し、該動物に対する効果を測定する手順をさらに包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記測定手順が、前記動物の精神機能を試験する手順を包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
被験体における精神障害を処置するための化合物を同定する方法であって、
(i)表1〜14に記載のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む細胞と、該化合物とを、接触させる手順;及び
(ii)該ポリヌクレオチドの発現を調節する化合物を選択し、それによって、精神障害を処置するための化合物を同定する手順、
を包含する、方法。
【請求項26】
前記ポリヌクレオチドの発現が増大する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリヌクレオチドの発現が減少する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物を動物に投与し、該動物に対する効果を測定する手順をさらに包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記測定手順が、前記動物の精神機能を試験することを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記精神障害が精神病性障害である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記精神病性障害が精神分裂病である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記精神障害が気分障害である、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記精神病性障害が大うつ病又は双極性障害である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
被験体における精神障害を処置する方法であって、請求項16又は請求項25に記載の方法を使用して同定される化合物の治療有効量を該被験体に投与する手順を包含する、方法。
【請求項35】
前記精神障害が精神病性障害又は気分障害である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記化合物が有機低分子である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記精神病性障害が精神分裂病である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記気分障害が大うつ病又は双極性障害である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
被験体における精神障害を処置する方法であって、表1〜14に記載のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの治療有効量を該被験体に投与する手順を包含する、方法。
【請求項40】
前記精神障害が精神分裂病、大うつ病又は双極性障害である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
被験体における精神障害を処置する方法であって、表1〜14に記載のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸の治療有効量を該被験体に投与する手順を包含する、方法。
【請求項42】
前記精神障害が精神分裂病、大うつ病又は双極性障害である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
被験体が精神障害に罹患しているか否か、又は精神障害にかかりやすいか否かを判定する方法であって、
(i)該被験体の脳の1つ以上の領域の組織と、表1〜14の何れかに記載の遺伝子と選択的に結合する、検出可能に標識された分子とを、接触させる手順;
(ii)該脳組織中における検出可能に標識された該分子の分布を視覚化する手順;及び
(iii)該検出可能に標識された分子の分布を、該被験体中の精神分裂病の存在は発症傾向と関連付ける手順、
を包含する、方法。
【請求項44】
前記の1つ以上の領域が、前帯状皮質(AnCg)、背面前頭葉皮質(DLPFC)、小脳皮質(CB)、上側頭回(STG)、頭頂葉皮質(PC)、側坐核(nAcc)及び扁桃体(amy)からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記標識された分子がアンチセンスRNA分子である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記接触がインビボで生じる、請求項43に記載の方法。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図1−4】
【図1−5】
【図1−6】
【図1−7】
【図1−8】
【図1−9】
【図1−10】
【図1−11】
【図1−12】
【図1−13】
【図1−14】
【図1−15】
【図1−16】
【図1−17】
【図1−18】
【図1−19】
【図1−20】
【図1−21】
【図1−22】
【図1−23】
【図1−24】
【図1−25】
【図1−26】
【図1−27】
【図1−28】
【図1−29】
【図1−30】
【図1−31】
【図1−32】
【図1−33】
【図1−34】
【図1−35】
【図1−36】
【図1−37】
【図1−38】
【図1−39】
【図1−40】
【図1−41】
【図1−42】
【図2−1】
【図2−2】
【図3−1】
【図3−2】
【図3−3】
【図3−4】
【図4−1】
【図4−2】
【図4−3】
【図4−4】
【図4−5】
【図4−6】
【図4−7】
【図4−8】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1−2】
【図1−3】
【図1−4】
【図1−5】
【図1−6】
【図1−7】
【図1−8】
【図1−9】
【図1−10】
【図1−11】
【図1−12】
【図1−13】
【図1−14】
【図1−15】
【図1−16】
【図1−17】
【図1−18】
【図1−19】
【図1−20】
【図1−21】
【図1−22】
【図1−23】
【図1−24】
【図1−25】
【図1−26】
【図1−27】
【図1−28】
【図1−29】
【図1−30】
【図1−31】
【図1−32】
【図1−33】
【図1−34】
【図1−35】
【図1−36】
【図1−37】
【図1−38】
【図1−39】
【図1−40】
【図1−41】
【図1−42】
【図2−1】
【図2−2】
【図3−1】
【図3−2】
【図3−3】
【図3−4】
【図4−1】
【図4−2】
【図4−3】
【図4−4】
【図4−5】
【図4−6】
【図4−7】
【図4−8】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−538238(P2008−538238A)
【公表日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504526(P2008−504526)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/012465
【国際公開番号】WO2006/105516
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(599108976)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・レランド・スタンフォード・ジュニア・ユニバーシティ (61)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE LELAND STANFORD JUNIOR UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/012465
【国際公開番号】WO2006/105516
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(599108976)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・レランド・スタンフォード・ジュニア・ユニバーシティ (61)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE LELAND STANFORD JUNIOR UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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