説明

神経障害性疼痛及びその関連する症状を治療するためのイブジラスト

本発明は、神経障害性疼痛を治療するイブジラストの使用に関し、神経障害性疼痛がイブジラストの投与により効果的に治療又は予防できるという驚くべき発見に基づく。一実施形態では、該方法には、神経障害性疼痛を経験している哺乳類被験体を選択し、続いて被験体に、少なくとも約100〜約125ng/mlのイブジラスト又はそれ以上の最大血漿濃度を達成する上で有効なイブジラストの初期治療投薬量を投与し、当該投与の結果として、被験体が神経障害性疼痛の軽減(即ち、減衰若しくは低減、除去、又は逆転)を経験する工程が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は一般的に、神経障害性疼痛を治療する方法に関する。特に、本発明は、イブジラスト(3−イソブチリル−2−イソプロピルピラゾロ[1,5−a]ピリジン)の投与により、神経障害性疼痛及びその関連する症状を治療又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
近年、疼痛管理は、高齢者人口の増加、生活の質を取り巻く問題、及び疼痛を患うと言われる患者数の増大等により、医業において益々注目されている領域である。疼痛は、感覚的及び感情的の両方の経験であり、一般的に組織の損傷又は炎症を伴う。一般的に、疼痛は二つの一般的な分類、即ち急性疼痛及び慢性疼痛に分けられる。何れも、病因、病態生理、診断、及び最も重要なことには治療が異なる。
【0003】
急性疼痛は短期間であり、一般的には容易に確認できる原因がある。急性疼痛を患う患者は、一般的には投薬法に良好に反応する。対照的に、3〜6ヶ月又はそれ以上続く疼痛と医学的に定義される慢性疼痛は、外見から判る損傷と関連しておらず、事実、患者は、初期傷害を発症してから数ヶ月間又は数年間持続する遅延性疼痛に苦められる可能性がある。急性疼痛は一般的に投薬法により良好に治療されるが、慢性疼痛は治療することがはるかに困難な場合が多く、一般的には専門的な医療が必要となる。報告されているところでは、米国慢性疼痛協会によると、8千6百万人を超える米国人が慢性疼痛を患っており、慢性疼痛の管理は、未だに対処されていない臨床上の必要性として長い間認識されている。大部分の慢性疼痛は、事実上神経障害性である(神経痛とも呼ばれる)。神経障害性疼痛は、例えば、焼けるような、刺すような、衝撃のような感覚として現れる可能性がある。
【0004】
残念なことに、神経障害性疼痛の管理は、ひいき目に見ても一貫しておらず、多くの場合は効果がない。これは、疼痛の主観的な性質に起因するばかりでなく、特に慢性疼痛が明らかに神経損傷又はその他の傷害を伴わない時には、不正確な診断にも起因する。更に、慢性疼痛の治療に有望として開発されている医療用医薬品は、たとえあったとしてもごく僅かしかない。むしろ、慢性疼痛の治療に使用されている現行の投薬法は、他の疾患から「流用した」ものであり、最も一般的には抗てんかん薬及び抗うつ薬がある。
【0005】
慢性疼痛の現行の一次治療には、オピオイド、ギャバペンチンのような鎮痛薬、及び三環系抗うつ薬が含まれる。オピオイドの場合は、長期間投与すると、薬物耐性、薬物依存、更には生理学的耽溺のような望ましくない副作用を生じる可能性がある。慢性疼痛に現在利用可能な治療レジメンの内、せいぜい凡そ30%が疼痛を有意に軽減する上で有効であり、経時的に効果を失う場合がある。数多くの薬物が神経障害性疼痛の治療に利用可能であるが、絶対的な治療は、依然として見つかっていない状況である。
【0006】
単剤による治療が効果的でないことが証明されている場合には、二次治療として併用療法が多くの場合に探求されている。例えば、当該併用療法は、佐剤の鎮痛薬を伴うオピオイド剤の投与を使用する場合があるが、それぞれの相対投与量は長期にわたる試行錯誤を招くことが多い。多く場合、3剤療法が必要となる。当該療法は一般的に、三環系抗うつ薬、抗てんかん薬、及び全身性局所麻酔の組み合わせを含む。しかし、治療が複数の薬物の投与を必要とすると、患者の服薬順守が著しく低下する。最近、研究者等は、神経痛を制御する目的で無作為研究においてモルヒネとギャバペンチンの組み合わせを使用した例を報告した(非特許文献1)。
【0007】
更に、全体的な疼痛の軽減を考慮するだけでなく、疼痛の軽減の種類を考慮することも重要である。例えば、慢性疼痛は一般的に異痛症又は痛覚過敏と見なされる。異痛症は、通常痛みを伴わない刺激による痛覚である。異痛症は一般的に物理的な刺激により引き起こされるため、触覚又は機械的異痛症と呼ばれる。痛覚過敏は、通常痛みを伴う刺激による過大感覚である。痛覚過敏は、多様な刺激から引き起こされる可能性があるが、一般的には、冷温刺激に対する患者の反応が報告されている。重要なことには、現行の医薬品が痛覚過敏を軽減する上で最も有効であると医者が報告することが多いものの、大部分の患者は異痛症、特に機械的異痛症を訴えていることである。
【0008】
前記投薬法は、効果が乏しく、一貫していないことに加えて、有害事象、作用の持続時間、並びに複雑な投与及び滴定レジメンのような、その他幾つかの望ましくない特性を有する。
【0009】
非アヘン薬の最も一般的な副作用は、鎮静作用又は傾眠である。当該医薬品の添付文書のデータによると、20〜30%もの患者が鎮静作用を経験しているとのことである。前述の通り、慢性疼痛の最も危険性のある集団は高齢者である。高齢者では、顕著で持続する鎮静作用を経験すると、その他の危険性、主に運動機能障害を誘発する。当該運動機能障害は、転倒を引き起こし、運転のような多くの日常の機能を行えなくなる可能性がある。
【0010】
作用の持続時間も、大部分の第一線の治療にとっては制限である。これは、疼痛、特に夜間の疼痛が、患者の生活の質全体に影響を与える、うつ、不眠症及びその他の要因をもたらす可能性があるため、特に重要である。最近の研究では、慢性疼痛と同時に大うつ病及び不眠症を有する患者が最高レベルの疼痛関連障害を報告することが示唆されている。前記研究では又、大うつ病を伴わない不眠症も疼痛及び苦痛の増大に関連していることも判明している(非特許文献2)。したがって、一晩中軽減される十分な持続期間をもって疼痛の軽減を達成することが、神経障害性疼痛薬にとっては重要な要素となる。ギャバペンチンのような疼痛軽減薬は、疼痛を軽減するために、一晩に1回以上摂取されるため、睡眠が妨害され、患者の生活の質全体が悪化する。
【0011】
最後に、ギャバペンチンのような第一線の医薬品の投与又は滴定は、複雑になる可能性がある。例えば、ヘルペス後神経痛の成人において推奨されるギャバペンチンの開始用量は、1日目では単回の300mg用量、2日目では600mg/日(分割BID)、3日目では900mg/日(分割TID)である。これらの用量で軽減が得られない場合には、続いて用量を、疼痛軽減の必要性に応じて1800mg/日(分割TID)用量まで滴定することができる。臨床研究では、1800mg/日から3600mg/日の用量範囲で効果が実証され、該用量範囲にわたって同等の効果が実証されている(Neurontin(登録商標) Full U.S. Prescribing Information)。その他の抗てんかん薬及び抗うつ薬は、同様の用量スケジュールを有しており、同様に複雑で、服薬順守を妨げ、不正確な投与、更には過剰投与の可能性が増大する。更に、当該医薬品を中断する際に、困難を伴う可能性もある。例えば、Neurontin(登録商標) Full U.S. Prescribing Informationで記載されているように、「・・・用量を低減する、中断する、又は代替療法に代えるが、このことは最低1週間かけて徐々に行わなければならない」。
【0012】
一般的に神経障害性疼痛(NP)は、損傷を受けた神経から疼痛が発生し、損傷の程度と不釣り合いな疼痛を生じる、不適応な慢性状態と考えられている。損傷は、外傷のような物理的損傷から、又は化学療法剤(例えば、パクリタキセル)のような化学的損傷から起こる可能性がある。この種の神経障害性疼痛は、多様な病因を持つ複数の症候群の重要な構成要素であり、その一般的な性質は長期で深在性の疼痛状態の発生である。当該状態には、脊髄損傷、ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、幻肢痛、断端/神経腫痛、虚血後疼痛(発作)、線維筋痛、反射性交感神経性ジストロフィ(RSD)、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、癌化学療法誘発性の神経障害性疼痛、椎間板破損、三叉神経痛等がある。
【0013】
しかし、確認できる神経損傷がなくても神経障害性疼痛が現れる可能性があることが、最近になって認識されている。当該適応症にはAIDS及び鏡像疼痛が含まれる。神経損傷はないものの、明らかな慢性疼痛は、神経障害性疼痛状態の維持におけるグリア細胞の役割に対する関心の高まりをもたらした(非特許文献3)。より具体的には、グリアが、疼痛情報を脊髄に中継する神経伝達物質の放出を増強し、更に興味を引くことには、脊髄において疼痛反応性ニューロンの興奮性を増加させる物質を放出することが、最近の研究で実証されている。炎症誘発性サイトカインと呼ばれる前記物質は、悪化した又は病理学的な疼痛反応を引き起こし、維持する。グリアの活性を阻止と、炎症誘発性サイトカインが低減され、病理学的疼痛が逆転する。これまでのところ、神経障害性疼痛の治療向けの、推定されるグリア減衰機序を有する治療薬は認可されていない。グリア減衰剤である分子は、神経障害性疼痛の治療に重要な役割を果たす場合がある。
【0014】
小型の分子であるイブジラスト(3−イソブチリル−2−イソプロピルピラゾロ[1,5−a]ピリジン)は、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)の非選択的阻害剤である(非特許文献4)。イブジラストは又、LTD4拮抗薬、抗炎症剤、PAF拮抗薬、及び血管拡張剤としても作用する(Thompson Current Drug Report)。イブジラストは、おそらくグリア細胞の活性化の抑制を介して、哺乳動物の中枢神経系において神経保護の役割を果たすと考えられる(非特許文献5)。イブジラストは、虚血性発作又は気管支喘息に関連する症状を軽減するために、日本において広く使用されている。日本で市販されているイブジラストの適用には、アレルギー、眼の組織再生、眼の疾患の治療、及びアレルギー性眼科疾患の治療を目的とした血管拡張薬としての使用が含まれる(Thompson Current Drug Reports)。最近の臨床試験では、中枢神経系の炎症性疾患である多発性硬化症の治療における使用も探求されている(News.Medical.Net;Pharmaceutical News, 2 Aug 2005)。幾つかの異なる適応症でのイブジラストの使用がこれまでに報告されているものの、出願者の知る限り、神経障害性疼痛並びに異痛症等の関連する状態の治療におけるイブジラストの使用は、これまでほとんど探求されていない。
【非特許文献1】Gilron, I.ら、New Eng.J.of Medicine(2005年3月31日)Vol 352:1281〜82,No.13
【非特許文献2】Wilsonら、Clin J Pain 2002 Mar−Apr;18(2):77〜83
【非特許文献3】WatkinsおよびMaier Drug Disc.Today: Ther. Strategies(2004)1(1):83〜88
【非特許文献4】Fujimoto,T.ら、J.of Neuroimmunology,(1999)95 35〜92
【非特許文献5】Mizunoら、Neuropharmacology(2004)46:404〜411
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
慢性疼痛を治療する現行の手法における上記の欠点を考慮すると、疼痛、特に神経障害性疼痛及び関連する症状、より詳細には、とりわけ線維筋痛のような特定の状態に関連する神経障害性疼痛を治療する組成物及び方法を改善する必要がある。理想的には、当該手法が、慢性疼痛を治療する既存の方法に関連する問題の一つ以上を克服するはずである。本発明は、前記の必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
本発明は、神経障害性疼痛を治療する新規手法に関し、神経障害性疼痛がイブジラストの投与により効果的に治療又は予防できるという驚くべき発見に基づく。標準的な神経障害性疼痛モデルを使用して、本発明者等は、イブジラストの全身投与が、多様な症候群に関連するもののような慢性神経障害性疼痛を、除去するとまではいかなくても、予防及び減衰する上で有効であることを発見した。場合によっては、イブジラストの投与が、既存の治療に非反応性の神経障害性疼痛関連状態に有効な治療を提供する可能性もある。更に、イブジラストは、一晩にわたり機械的異痛症を有意に減衰する上で有効であり、したがって、ギャバペンチンのような既存の慢性疼痛薬に対して著しい利点をもたらすことが見出されている。当該持続的効果は、大部分の神経障害性疼痛薬において稀なものである。
【0017】
したがって、一態様では、本発明が、被験体に治療上有効な量のイブジラストを投与することによって、神経障害性疼痛を患う哺乳類被験体を治療する方法を提供する。
【0018】
一実施形態では、該方法に、神経障害性疼痛を経験している哺乳類被験体を選択し、続いて被験体に、少なくとも約100〜約125ng/mlのイブジラスト又はそれ以上の最大血漿濃度を達成する上で有効なイブジラストの初期治療投薬量を投与し、当該投与の結果として、被験体が神経障害性疼痛の軽減(即ち、減衰若しくは低減、除去、又は逆転)を経験する工程が含まれる。
【0019】
治療のために選択する上で適した哺乳類被験体には、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、並びにヘルペス、HIV、外傷性神経損傷、発作、虚血後疼痛、線維筋痛、反射性交感神経性ジストロフィ、複合性局所疼痛症候群からなる群より選択される状態に関連する神経障害性疼痛、及び癌化学療法誘発性の神経障害性疼痛を患う被験体が含まれる。
【0020】
一つ以上の代替の実施形態では、イブジラストの初期治療投薬量が、少なくとも約100、125、150、175、200、225、250、275又は300ng/mlのイブジラストの最大血漿濃度を達成する上で有効な投与量となる。
【0021】
該方法の更に別の実施形態では、約30〜200mg/日、又は約30〜100mg/日の範囲の1日投与量でイブジラストが投与される。
【0022】
治療量は、1日1回(即ち、単一用量)、1日2回(即ち、2回分割用量)、1日3回投与することにより達成される場合もあれば、数日間、数週間、更には数ヶ月の期間にわたる複数回用量として投与される場合もある。当該投与は一般的に、神経障害性疼痛の軽減、理想的には除去、更には逆転をもたらす上で有効な持続時間にわたる。治療の代表的な持続時間には、少なくとも約1週間、1週間から1ヶ月、2週間から2ヶ月、約6ヶ月以内、約12ヶ月以内、更にはそれ以上の期間が含まれる。一つの特定の実施形態では、治療が約1週間から約50週間継続する。
【0023】
該治療方法の好ましい実施形態では、該投与が、神経障害性疼痛の除去をもたらす上で有効な持続時間にわたる。
【0024】
更に別の実施形態では、イブジラストの投与が、被験体の経験する神経障害性疼痛の量を、投与後少なくとも16時間まで低下する上で有効である。
【0025】
該方法の更に別の実施形態では、イブジラストの投与は、制吐薬の投与を伴わない。
【0026】
この方法の更なる実施形態では、イブジラストは、疼痛を治療する上で有効な他の少なくとも1種の薬剤と組み合わせて投与される。当該薬剤には、とりわけ、ギャバペンチン、メマンチン、プレギャバリン、モルヒネ及び関連するアヘン剤、カンナビノイド、トラマドール、ラモトリジン、カルバマゼピン、デュロキセチン、ミルナシプラン、及び三環系抗うつ薬が含まれる。好ましい実施形態では、神経障害性疼痛を治療する第二の薬剤は、イブジラストと異なる作用機序を有するものである。
【0027】
更に別の実施形態では、イブジラストが、単独又は併用治療の一部として投与される時には、全身又は中枢系(例えば、鞘内投与、即ち、脊髄を取り囲む脳脊髄液中への投与)の何れかに投与される。当該イブジラスト投与は、潜在的にはグリア活性化の抑制を介して病理学的疼痛状態を減衰する新規の機序をもたらす。
【0028】
尚更なる実施形態によると、イブジラストは、神経障害性疼痛、例えば神経障害性疼痛症候群を治療するために、全身に、例えば、静脈内、皮下、経口、鼻腔内、舌下又はその他の全身経路を介して、哺乳類、例えばヒト被験体に投与される。
【0029】
別の態様では、本発明が、神経障害性疼痛を治療する上で有効な組成物又は組み合わせを提供する。該組成物は、(i)イブジラスト及び(ii)神経障害性疼痛を治療する上で有効な少なくとも1種の追加薬剤との組み合わせからなり、各成分は、単一の組成物又は剤形の何れかに(例えば、混合物中に)含有されているか、又は個々の若しくは個別の実体で(例えば、キット内に)存在する。
【0030】
本発明の組成物には、場合により1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤が含まれる場合がある。
【0031】
更に別の態様では、本発明に、同時、連続又は個別の使用を目的とした、(i)イブジラスト及び(ii)神経障害性疼痛を治療する上で有効な少なくとも1種の追加薬剤からなる、神経障害性疼痛又は関連する症候群の治療のための薬剤の組み合わせからなるキットが包含される。
【0032】
本明細書に記載される本発明の特徴はそれぞれ、特に指示のない限り、本明細書に記載される何れの実施形態にも等しく適用されるものとして意図される。
【0033】
本発明の追加の目的、利点及び新規の特徴は、以下の説明において定められ、一部は以下を読むことで当業者に明らかになり、或いは本発明の実施により習得される場合もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、特に指示のない限り、当該技術分野の範囲内で、化学、生化学及び薬理学の従来の方法を使用する。当該技法は、文献において詳細に説明されている。例えば、A.L. Lehninger, Biochemisty (Worth Publishers, Inc., current addition); Morrison and Boyd, Organic Chemistry (Allyn and Bacon, Inc., current addition); J. March, Advanced Organic Chemistry (McGraw Hill, current addition); Remington: The Science and Practice of Pharmacy, A. Gennaro, Ed., 20th Ed.; Goodman & Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics, J. Griffith Hardman, L.L. Limbird, A. Gilman, 10th Ed.)を参照されたい。
【0035】
本明細書に引用される全ての出版物、特許及び特許出願は、上記、下記の何れについても、全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0036】
(定義)
本発明を詳細に記載する前に、本発明が特定の投与様式、患者群等に限定されず、添付の記載及び図面から明らかなように、様々に変化する場合があることを理解するべきである。
【0037】
本明細書及び意図される請求項で使用される単数形「a」、「an」、「the」には、特に文脈において明確に指示されない限り、複数形の言及も含まれることに留意しなければならない。したがって、例えば「医薬品(a drug)」の言及には、単一の医薬品と共に2種以上の同一又は異なる医薬品も含まれ、「任意の賦形剤(an optional excipient)」の言及は、単一の任意の賦形剤と共に2種以上の同一又は異なる任意の賦形剤も表す、といった解釈となる。
【0038】
本発明を説明し、請求するに当たって、以下の用語を後述の定義に従って使用する。
【0039】
「薬学的に許容可能な賦形剤又は担体」とは、本発明の組成物に場合により含まれる場合があり、患者に対する著しく有害な毒性作用を引き起こすことがない賦形剤を表す。
【0040】
「薬学的に許容可能な塩」には、アミノ酸塩、無機酸から調製される塩(例えば、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化物及び硝酸塩)、又は前記の何れかの対応する無機塩形態から調製される塩(例えば、塩酸塩等)、又は有機塩により調製される塩(例えば、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラ−トルエンスルホン酸塩、パルモ酸塩、サリチル酸塩及びステアリン酸塩)、並びにエストレート塩、グルセプテート塩及びラクトビオン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。同様に、薬学的に許容可能なカチオンを含有する塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム及びアンモニウム(置換アンモニウムも含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書に記載される「活性分子」又は「活性薬剤」には、in vivo又はin vitroで実証できる幾らかの薬理学的な、且つ多くの場合に有益な効果をもたらす、任意の薬剤、医薬品、化合物、物質の組成物、又は混合物が含まれる。これには、食物、栄養補助食品、栄養素、栄養補給食品、医薬品、ワクチン、抗体、ビタミン、及びその他の有益な薬剤が含まれる。本明細書で使用される該用語には更に、患者に局所又は全身効果をもたらす、あらゆる生理学的又は薬理学的活性物質が含まれる。
【0042】
「実質的に」又は「事実上」とは、任意の特定量のほぼ全体又は全部、例えば95%以上を意味する。
【0043】
「場合による」又は「場合により」とは、続いて記載される状況が起こる場合もあれば、起こらない場合もあり、そのため該記載には、該状況が起こる場合と起こらない場合を含むことを意味する。
【0044】
「病理学的疼痛」とは、機能障害及び/又は病理学的変化、病変、熱傷等のような病因によりもたらされる疼痛を意味する。病理学的疼痛の一つの形態には、「神経障害性疼痛」であり、これは、最初に神経損傷によりもたらされるが、グリア細胞活性等の機序により拡張又は悪化すると考えられる疼痛がある。病理学的疼痛の例には、熱的又は機械的痛覚過敏、熱的又は機械的異痛症、糖尿病疼痛、過敏性腸又はその他の内臓疾患により生じる疼痛、子宮内膜症疼痛、幻肢痛、複合性局所疼痛症候群、線維筋痛、腰痛、癌性疼痛、感染により生じる疼痛、末梢神経又は中枢神経系の炎症又は外傷、多発性硬化症、絞扼性疼痛等が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
「痛覚過敏」とは、過剰な鋭敏性又は感受性によりもたらされる疼痛のような、異常に増大した疼痛感覚を意味する。痛覚過敏の例には、冷又は熱痛覚過敏が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
「痛覚鈍麻(又は痛覚減退)」とは、痛覚の低下を意味する。
【0047】
「異痛症」とは、通常皮膚又は体表面への非毒性刺激によりもたらされる疼痛を意味する。異痛症の例には、冷又は熱異痛症、触覚又は機械的異痛症等が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
「侵害受容」とは、本明細書では痛覚として定義される。本明細書において「侵害受容器」とは、侵害受容を仲介する構造を表す。該侵害受容は、機械的、電気的、熱的又は化学的刺激のような物理的な刺激によりもたらされる場合がある。侵害受容器は、体のほぼ全ての組織に存在する。
【0049】
「鎮痛」とは、意識を失うことのない疼痛の軽減として本明細書で定義される。「鎮痛薬」とは、同様に意識を失うことなく疼痛を軽減する上で有用な薬剤又は医薬品である。
【0050】
「中枢神経系」又は「CNS」という用語には、脊椎動物の脳及び脊髄の全ての細胞及び組織が含まれる。したがって、該用語には、神経細胞、グリア細胞、星状膠細胞、脳脊髄液(CSF)、間質腔等が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
「グリア細胞」とは、小膠細胞、星状膠細胞及び希突起神経膠細胞としても知られているCNSの多様な細胞を指す。
【0052】
「被験体」、「個人」又は「患者」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物を指す。哺乳動物には、ネズミ、齧歯類、サル、ヒト、家畜、運動競技用動物、及びペットが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で規定される組成物又は薬剤の「薬理学的有効量」又は「治療上有効な量」という用語は、神経障害性疼痛の低減又は逆転のような所望の反応をもたらす組成物又は薬剤の、非毒性であるが十分な量を指す。必要とされる正確な量は、種、年齢、被験体の一般的な状態、治療中の状態の重篤度、使用する特定の医薬品、投与様式等によって、被験体毎に変わる。個別の症例における適切な「有効」量は、本明細書で提示される情報に基づき、日常的な実験を使用して当業者によって決定される場合がある。
【0054】
「約」という用語は、特に所定の量を参照する時、+又は−5%の偏差を包含するものとして意図される。
【0055】
神経障害性疼痛の「治療」又は神経障害性疼痛を「治療する」という用語には、(1)疼痛を予防すること、即ち、疼痛に曝される又は疼痛を被りやすい傾向があるものの、まだ疼痛を経験又は表していない被験体において、疼痛を発症させない又はより少ない激しさで起こさせること、(2)疼痛を阻害すること、即ち、疼痛の発生を阻止する又は疼痛を逆転すること、又は(3)疼痛を軽減すること、即ち、被験体が経験する疼痛の量を低下させることが含まれる。
【0056】
「存在する疼痛を治療する」とは、少なくとも24時間、例えば24〜96時間又はそれ以上、例えば、25...30...35...40...45...48...50...55...65...72...80...90...96...100等の時間にわたり疼痛を経験している被験体において、神経障害性疼痛を減衰、軽減又は逆転することを意味する。該用語は又、数週間、数ヶ月、更には数年間のような長期間にわたり患う疼痛を治療することも意図する。
【0057】
(神経障害性疼痛の治療方法)
前述の通り、本発明者等は、イブジラストが神経障害性疼痛、例えば、とりわけウイルス性神経痛(例えば、ヘルペス、AIDS)、糖尿病性神経障害、幻肢痛、断端/神経腫痛、虚血後疼痛(発作)、線維筋痛、反射性交感神経性ジストロフィ(RSD)、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、癌性疼痛、椎間板破損、及び三叉神経痛、癌化学療法誘発性の神経障害性疼痛のような特定の症候群に関連する神経障害性疼痛の治療に驚くほど有効であることを発見した。本明細書に記載される通りに標準的疼痛モデルを使用した結果に基づき、本発明者等は、多様な方法及び1日1回の低頻度で投与できるイブジラストの投与が、神経障害性疼痛の重篤度に相当な低減をもたらす上で、特に、機械的異痛症のような特定の種類の神経障害性疼痛を、逆転するとはいかなくても、重篤度に相当な低減をもたらす上で驚くほど有効であることを見出した。本発明の更なる特徴を本明細書に記載する。
【0058】
(イブジラスト)
神経障害性疼痛の治療のための本発明の方法は、該分子であるイブジラストの投与に基づいている。イブジラストは、以下に示す構造を有する小型の分子医薬品(分子量230.3)である。
【0059】
【化1】

イブジラストは又、ChemBank ID 3227、CAS # 50847−11−5及びBeilsten Handbook Reference No. 5−24−03−00396において見出される。その分子式は、C1418Oに対応する。イブジラストは又、2−メチル−1−(2−(1−メチルエチル)ピラゾロ(1,5−a)ピリジン−3−イル)1−プロパノン;3−イソブチリル−2−イソプロピルピラゾロ(1,5−a)ピリジン];及び1−(2−イソプロピル−ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−3−イル)−2−メチル−プロパン−1−オン等の多様な化学名称でも知られている。イブジラストのその他の異名には、Ibudilastum(Latin)、BRN 0656579、KC−404、MN−166が含まれる。ブランド名はKetas(登録商標)である。本明細書で言及するイブジラストは、投与のために意図される製剤での使用が適切であれば、薬学的に許容可能なその塩形態、プロドラッグ形態(例えば、対応するケタール)、溶媒和物等の何れか又は全てを含むものとして意図される。
【0060】
イブジラストは、(PDE−3及びPDE−4に対して最も活性の高い)非選択的ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤であり、LTD4及びPAF拮抗活性を有することも報告されている。そのプロフィールは、抗炎症性であり、他のPDE阻害剤及び抗炎症性剤と比べて固有であると思われる。PDEは、3′−炭素でリン酸エステル結合の加水分解を触媒して、対応する5′−ヌクレオチド−リン酸塩を生じる。したがって、環状ヌクレオチドの細胞濃度を調節する。多くのホルモン及び神経伝達物質の細胞外受容体が、環状ヌクレオチドを第二のメッセンジャーとして利用するため、PDEは、前記の細胞外信号に対する細胞反応も調節する。少なくとも以下の8種類のPDEが存在する:即ち、Ca2+/カルモジュリン依存性PDE(PDE1);cGMP刺激PDE(PDE2);cGMP阻害PDE(PDE3);cAMP特異性PDE(PDE4);cGMP結合PDE(PDE5);光受容体PDE(PDE6);高親和性のcAMP特異性PDE(PDE7);及び高親和性のcGMP特異性PDE(PDE9)。イブジラストは、炎症性細胞(例えば、グリア細胞)に対する作用によって炎症を抑制するように作用し、炎症誘発性媒介物質及び神経刺激性媒介物質の放出の抑制をもたらす。前記に関連する参考文献には、次のものが含まれる:Obernolte, R.ら、(1993) “The cDNA ofa human lymphocyte cyclic−AMP phosphodiesterase (PDE IV) reveals a multigene family” Gene 129: 239−247; Rile, G.ら、(2001) “Potentiation of ibudilast inhibition of platelet aggregation in the presence of endothelial cells” Thromb. Res. 102: 239−246; Souness, J. E.ら、(1994) “Possible role of cyclic AMP phosphodiesterases in the actions of ibudilast on eosinophil thromboxane generation and airways smooth muscle tone” Br. J. Pharmacol. 111: 1081−1088; Suzumura, A.ら、(1999) “Ibudilast suppresses TNFα production by glial cells functioning mainly as type III phosphodiesterase inhibitor in CNS” Brain Res. 837: 203−212; Takuma, K.ら、(2001) “Ibudilast attenuates astrocyte apoptosis via cyclic GMP signaling pathway in an in vitro reperfusion model” Br. J. Pharmacol. 133: 841−848。
【0061】
前述の通り、本明細書に記載される1種以上の医薬品の何れか、特にイブジラストに対する参照は、適用可能な場合、鏡像異性体、ラセミ混合物を含む鏡像異性体の混合物、プロドラッグ、薬学的に許容可能な塩形態、水和物(例えば、一水和物、二水和物等)、溶媒和物、異なる物理的形態(例えば、結晶質固体、非晶質固体)、代謝産物等の何れか及び全てを包含することを意味する。
【0062】
(投与方法)
前述の通り、本発明は、イブジラストの治療上有効な投与量を投与することによる、神経障害性疼痛を患う哺乳類被験体を治療する方法である。当該投与は、被験体が経験する神経障害性疼痛の量を低下すること、即ち、添付の実施例で実証されているように、神経障害性疼痛の有意な減衰、更には逆転をもたらす上で有効である。イブジラストは、好ましくは、少なくとも約100ng/ml、125ng/ml、150ng/ml、175ng/ml、200ng/ml、225ng/ml、250ng/ml、若しくは300ng/ml、又はそれ以上の最大血漿濃度(Cmax)を達成する上で有効な初期投与レベルで投与される。好ましい実施形態では、少なくとも約125ng/mlのCmaxを達成する上で有効な投与レベルで投与される。更により好ましくは、相当な効果に相関するイブジラストの初期治療投薬量が、少なくとも約350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700若しくは1800ng/ml、又はそれ以上のCmaxに関連する投与量となる。
【0063】
本発明の方法は、特定の場合において、イブジラストを投与する前に神経障害性疼痛を経験している被験体を選択する工程からなる場合がある。当該被験体は一般的に、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、並びにヘルペス、HIV、外傷性神経損傷、発作、虚血後疼痛、線維筋痛、反射性交感神経性ジストロフィ、複合性局所疼痛症候群、脊髄損傷、幻肢痛、多発性硬化症、坐骨神経痛及び癌性疼痛又は癌化学療法誘発性の神経障害性疼痛からなる群より選択される状態に関連する神経障害性疼痛を患うものから選択される。特定の場合において、選択された神経障害性疼痛被験体は、固有インスリン産生が非障害性(即ち、非糖尿病性)である被験体である。
【0064】
添付の実施例からも分かるように、本発明の方法は、神経障害性疼痛、例えば機械的異痛症を有意に減衰するばかりでなく、更には逆転する上でも有効である。最初の投与の直後に、イブジラストの治療上有効なレベルの投与によって、疼痛軽減が長続きするような持続的効果が示された。したがって、現在市販されているその他多くの神経障害性疼痛薬剤とは対照的に、イブジラストの投与は、神経障害性疼痛の減衰を一晩持続させる上で有効である。例えば、イブジラストの治療上有効な用量は、少なくとも4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、18時間、更には20時間まで、又はそれ以上に長い持続時間にわたり神経障害性疼痛を治療する上で有効である。イブジラストの持続性放出形態の薬物動態予測に基づきヒト用に翻訳することが期待される、動物で観測された前記の1日1回経口効果は、既存の臨床適応におけるイブジラストの推奨頻度(BID又はTID)から考えると、期待されないように思われる。
【0065】
イブジラストは又、神経障害性疼痛を治療する上で有効な追加薬剤と組み合わせて投与される場合もある。好ましい実施形態では、当該薬剤が、イブジラストと異なる作用機序を有する。代表的な薬剤には、ギャバペンチン、メマンチン、プレギャバリン、モルヒネ及び関連するアヘン剤、カンナビノイド、トラマドール、ラモトリジン、リドカイン、カルバマゼピン、デュロキセチン、ミルナシプラン、及び三環系抗うつ薬が含まれる。実施例1で示したように、代表的な疼痛薬剤であるモルヒネと組み合わせてイブジラストを投与しても、モルヒネのアヘン剤神経障害性疼痛効果に悪影響を与えることはなく、モルヒネを同時に投与しても、イブジラストの効果に悪影響を及ぼすことはなかった。併用治療は、単独投与された何れの薬剤により示されたものよりも大きな治療効果をもたらした。
【0066】
イブジラストは又、癌化学療法剤誘発神経障害を減衰する上で有効であるばかりでなく、実施例3に示す通り、当該神経障害の発症を防止することもできる。患者に神経障害をもたらすことが知られている化学療法剤の例には、タキソール、ビンブラスチン及びビンクリスチンが含まれる。イブジラストの投与は、癌の治療のために当該薬剤を投与することに伴う神経障害性疼痛を減衰又は逆転する上で有効である。
【0067】
本発明の更に別の利点は、神経障害性疼痛を治療するために治療上有効な投与量のイブジラストを投与すると、投与される治療量に基づき予測されうる、被験体の関連する嘔吐を驚くほどほとんど回避できることである。従って、本発明の一実施形態では、イブジラストの投与に制吐剤の投与が伴われない。換言すると、動物モデルに基づいて、嘔吐をもたらさないか、又は最初(即ち、イブジラストが投与された最初の数回)に嘔吐を起こすものの、当該初期投与期間(1、2、3、4又は5日間)の後には、もはや嘔吐が問題とならないような効果が、特定の場合にヒトの投与レジメンでも観察されることが期待される。
【0068】
既存の神経障害性疼痛投薬剤は主要な副作用として鎮静作用を有するものの、イブジラストは有さないことから、本発明の方法は、既存の神経障害性疼痛治療よりも更なる利点をもたらす。
【0069】
神経障害性疼痛の治療のためにイブジラスト系治療製剤を送達する好ましい方法には、全身及び局所送達、即ち、中枢神経への直接の送達が含まれる。当該投与経路には、経口、動脈内、鞘内、髄腔内、筋肉内、腹腔内、静脈内、鼻腔内、及び吸入経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
より具体的には、本発明のイブジラスト系製剤は、経口、直腸内、経鼻、局所(経皮、エアロゾル、頬側及び舌下を含む)、膣内、非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)、鞘内、及び肺を含むがこれらに限定されない何れかの適切な経路によって治療のために投与される場合がある。好ましい経路は、当然のことながら、摂取者の状態及び年齢、治療中の特定の神経痛関連症候群、及び使用する医薬品の特定の組み合わせにより変わる。
【0071】
イブジラストの送達のための一つの好ましい投与様式は、定位注入のような当該技術分野で既知の神経外科技法を使用した、針、カテーテル又は関連する機器による、例えば脳室領域への、並びに線条体(例えば、線条体の尾状核又は被殻)、脊髄及び神経筋接合部への注入により、例えば脊髄グリア細胞を標的にすることを目的とした、末梢神経、網膜、脊髄後根神経節、神経筋接合部のような神経組織、並びにCNSへの直接投与である(例えば、Steinら、J Virol 73: 3424−3429, 1999; Davidsonら、PNAS 97: 3428−3432, 2000; Davidsonら、Nat. Genet. 3: 219−223, 1993;及びAlisky and Davidson, Hum. Gene Ther. 11: 2315−2329, 2000を参照)。
【0072】
脊髄グリア細胞を標的にする特に好ましい方法は、髄組織自体への送達ではなく、鞘内送達による方法である。
【0073】
本発明のイブジラスト系組成物を投与する別の好ましい方法は、例えば、硬膜外空間への注入に続くDRGへの拡散による、脊髄神経節(DRG)ニューロンへの送達による方法である。例えば、イブジラスト系組成物は、イブジラストがDRGへ拡散する条件下で、鞘内カニューレ挿入によって送達することができる。例えば、Chiangら、Acta Anaesthesiol. Sin. (2000) 38: 31−16; Jain, K.K., Expert Opin. Investig. Drugs (2000) 9: 2403−2410を参照されたい。
【0074】
CNSへの更に別の投与様式は、対流増強送達(CED)系を使用する。前記の方法では、イブジラストを、CNSの広い領域にわたる多くの細胞に送達することができる。任意の対流増強送達装置が、イブジラストの送達に適切となる場合がる。好ましい実施形態では、該装置が、浸透圧ポンプ又は注入ポンプとなる。浸透圧及び注入の両ポンプは、多様な納入業者、例えば、Alzet Corporation、Hamilton Corporation、Alza Inc.(米国カリフォルニア州パロ・アルト)から市販されている。一般的に、本発明のイブジラスト系組成物は、以下の通りCED装置を介して送達される。カテーテル、カニューレ又はその他の注入装置は、選択した被験体のCNS組織内に挿入される。定位地図及び位置決め装置は、例えばASI Instruments(米国ミシガン州ウォレン)から入手可能である。位置決めは又、選択した標的に注入装置を誘導する助けとして、CT及び/又はMRI画像により得られる解剖地図を使用することによって実施される場合もある。CED送達に関する詳細については、全体が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,309,634号を参照されたい。
【0075】
本発明のイブジラスト組成物は、1種以上の活性薬剤からなる場合、イブジラスト、並びに神経障害性疼痛の治療に有効な少なくとも1種の追加活性薬剤の組み合わせからなる、単一の複合組成物として投与される場合がある。患者の服薬順守及び投与の容易さの観点から、当該手法が好ましいとされるが、それは、治療の持続期間にわたって複数の丸剤又は剤形を、多くの場合1日に複数回摂取することに患者が反対することが多いためである。或いは、あまり好ましくはないが、本発明の組み合わせが個別の剤形でも投与される。本発明の治療組成物からなる医薬品が個別の剤形で投与され、且つ同時投与が必要な場合には、イブジラスト及び追加の各活性薬剤が、同時に、任意の順序で連続的に、又は個別に投与される場合がある。
【0076】
(投与量)
治療量は、経験的に決定することができ、治療中の特定の状態、被験体、及び組成物に含有される各活性薬剤の効果及び毒性によって変わる。投与する実際の用量は、被験体の年齢、体重及び一般的な状態、並びに治療中の状態の重篤度、医療専門家の判断、及び投与する特定の組み合わせによって変わる。
【0077】
治療上有効な量は、当業者によって決定することができ、各特定症例の要件に合わせて調整される。一般的に、イブジラストの治療上有効な量は、約0.1〜200mg/日の1日総投与量の範囲となり、より好ましくは1〜200mg/日、30〜200mg/日、1〜100mg/日、30〜100mg/日、30〜300mg/日、1〜60mg/日、1〜40mg/日、又は1〜10mg/日の量が、単回投与又は複数回投与の何れかにより投与される。好ましい投与量には、約10mgBID又はTIDを超える投与量が含まれる。換言すると、好ましい投与量は、約20mg/日を超えるか、又は30mg/日を超える。投与量は、30mg/日、40mg/日、50mg/日、60mg/日、70mg/日、80mg/日、90mg/日、若しくは100mg/日、又はそれ以上から選択される場合がある。投与量及び治療する正確な状態に応じて、投与は、1日から数日間、数週間、数ヶ月、更には数年間の期間にわたる1日1回、2回又は3回の投与となる可能性があるが、更には患者の生涯にわたる場合もある。代表的な投与レジームは、少なくとも約1週間、約1〜4週間、1〜3週間、1〜6週間、1〜50週間、1〜12ヶ月、又はそれ以上の期間継続する。
【0078】
事実、本発明の任意の特定組成物又は活性薬剤の何れかの単位用量を、医者の判断、患者の要望等に応じて多様な投与スケジュールで投与することができる。固有の投与スケジュールは、当業者により既知であるか、又は日常的な方法により経験的に決定することができる。代表的な投与スケジュールには、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回等の投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
(神経障害性疼痛の治療手法)
現在の疼痛治療は主に、疼痛シグナルを中継するニューロンを標的にする。前記ニューロンは、長きわたり考察され、進化を重ねて維持されてきた、末梢から体性知覚皮質へ信号を伝達する脊椎動物の経路の一部に含まれる。ニューロンが持続的な疼痛状態の発症における唯一の実体でないことを示唆する文献は益々増えてきている(Watkins and Maier (2003) Nat. Rev. Drug Discov. 2: 973−85)。グリア細胞(小膠細胞及び星状膠細胞)は、十分に確立された動物モデルにおいて、神経障害性疼痛の主要な参加者であることが確立されており(Wieseler−Frankら、(2004) Neurochem. Int. 45: 389−95)ヒトの病因にも関係している(Watkins and Maier (2002) Physiol. Rev. 82: 981−1011)。
【0080】
免疫攻撃、感染及び/又は末梢炎症、並びに長期のニューロン−ニューロン伝達時に放出される物質(例えば、神経伝達物質、P物質、フラクタルカイン等)のような、幾つかのキューがグリアを活性化する。グリア機能は活性化によって著しく変化し、神経刺激性物質の放出の増加をもたらす。この時、該物質が神経伝達の獲得を増やし、球心性信号を増幅して、それにより痛覚を悪化させる。
【0081】
実験上の証拠は、グリア活性及びそれに続く事象が実験動物における疼痛促進に重要な役割を果たすことは、実験による証拠で実証されている。例えば、(i)インターロイキン1β(IL−β)又は組織壊死因子α(TNFα)のような炎症誘発性グリア活性化サイトカインの投与は、根源的な神経障害を悪化させる;(ii)グリア活性化の薬理学的阻止は、実験した動物モデルの全てにおいて疼痛促進を阻止及び/又は逆転する;(iii)疼痛促進は、活性グリアから放出される神経刺激性物質の拮抗により阻止及び/又は逆転することができる;(iv)正常な動物における疼痛反応は、グリア活性化の阻止又は炎症誘発性産物の拮抗の何れの影響も受けない;及び(v)グリア細胞は又、炎症誘発性サイトカイン、興奮性アミノ酸、並びに神経障害性疼痛を増幅することができるプロスタグランジンのような、その他の神経刺激性物質も放出する。
【0082】
イブジラストは、グリア活性の強力なサプレッサーである(Mizunoら、(2004) Neuropharmacology 46: 404−411)。用量依存的に、イブジラストは、一酸化窒素(NO)、反応性酸素種、インターロイキン(IL)−1β、IL−6、及び腫瘍壊死因子(TNF)の産生を抑制し、神経成長因子(NGF)、グリア誘発神経栄養因子(GDNF)、並びに活性化小膠細胞中のニューロトロフィン(NT)−4のような追加の神経栄養因子と共に、阻害性サイトカインであるIL−10の産生を増強することが証明されている。したがって、イブジラストにより仲介された神経保護は主に、炎症性媒介物質の阻害及び神経栄養因子の上方調節に起因することが見出されている。
【0083】
イブジラストは、全身に投与されると、血液脳関門を越えるため(Sugiyamaら、(1993) No To Shinkei 45(2): 139−42;図5)、神経障害性疼痛の病因に関わる炎症の中枢部位に到達するためのより侵襲的な投与方法は必要なくなる。グリア活性化を減衰することができるその他の既知の化合物には、フルオロクエン酸及びミノサイクリンが含まれ、神経障害性疼痛の齧歯類モデルにおいて効果が示されている。しかし、それぞれの化合物はヒトの治療には許容されない。フルオロクエン酸は、正常なCSNホメオスタシスの維持において必須となるグリアの一機能であるグリアの興奮性アミノ酸取り込みを阻止する可能性があるため(Berg−Johnsenら、(1993) Exp. Brain Res. 96(2): 241−6)、ヒトへの投与には適していない。ミノサイクリンは、グリア活性化を防止する上で潜在的に有用であるが、グリアの残存する疼痛促進を逆転するとは思われない(Raghavendraら、(2003) J. Pharmacol. and Exp. Therapeutics 306: 624−630)。したがって、十分な耐量レベルでの全身投与後における、神経障害性疼痛に対するイブジラストの効果の前記発見は、独特な治療を表す。
【0084】
要約すると、グリア及びその炎症誘発性産物は、疼痛制御の新たな戦略の機会を表すことができる。活性グリアから放出される物質の内、炎症誘発性サイトカイン(特に、IL−10及びTNFα)は、この種の疼痛促進において重要である。したがって、本発明の更に別の実施形態によると、イブジラストの投与は、炎症誘発性サイトカインの放出を阻止する上で有効である。
【0085】
(疼痛モデル)
神経障害性疼痛を治療するイブジラストの能力は、当該技術分野で既知の何れかの標準的疼痛モデルにより評価することができる。当該モデルの例は以下の通りである。
【0086】
カラギーナン誘発足疼痛過敏モデル:カラギーナン足疼痛過敏試験は、炎症性疼痛のモデルである。カラギーナンの皮下注入をラットの左後足に行う。該ラットは、カラギーナン注入前、例えば30分前、又はカラギーナン注入後、例えば2時間後に、選択した薬剤で処置する。カラギーナン注入から3時間後に、各動物の足圧力感受性を無痛覚計で試験する。Randallら、Arch. Int. Pharmacodyn. (1957) 111: 409−419を参照されたい。
【0087】
選択した薬剤のカラギーナン誘発足浮腫に対する効果を試験することも可能である。前記試験により(Vinegarら、J. Pharmacol Exp. Ther. (1969) 166: 96−103を参照)、足カラギーナン注入により誘発した浮腫形成を逆転又は予防する化合物の能力を評価することが可能になる。足浮腫試験は、プレチスモメーターを使用して足測定を行うことにより実施する。選択した薬剤の投与後、カラギーナン溶液を左後足の足底表面の外側足蹠に皮下注入する。カラギーナン処置から3時間後に、処置足(左)と未処置足(右)の容量を、プレチスモメーターを使用して測定する。
【0088】
von Freyフィラメント試験:機械的異痛症に対する化合物の効果は、有痛性末梢神経障害のモデルである、L−5脊髄神経の緊縛結紮のラットにおけるvon Freyフィラメント試験で決定することができる。外科手術は、Kimら、Pain (1992) 50: 355−363に記載される通りに実施する。目盛りを付けた一連のvon Freyフィラメントを使用して、機械的異痛症を評価する(Chaplanら、J. Neurosci. Methods (1994) 53: 55−63)。剛性の高いフィラメントを、左後足の坐骨神経分布における足底中央の表面に垂直に当てる。該フィラメントを、たわみが起こるまでゆっくりと押し下げ、その状態を4〜6秒間保持する。フィラメントの使用順序及び試験の数は、Dixonの上げ下げ法(Chaplanら、前掲)により決定した。結紮側の足を後ずさりしたり、舐めたり、逃避すれば、肯定的な反応と見なされる。
【0089】
慢性狭窄損傷:熱又は冷異痛症反応、並びに機械的異痛症の感覚は、慢性狭窄損傷(CCI)を有するラットで後述の通り評価することができる。Bennett et al, Pain (1988) 33: 87−107に記載される慢性狭窄損傷モデルを使用して、ラットに一側性の単発神経障害を引き起こす。麻酔をかけたラットに、以下の通りCCIを引き起こす。各ラットの後足側面の毛を剃り、ノルバサンで洗う。無菌技法を使用して、大腿中央部の高さで後足側面の切開を行う。大腿二頭筋を鈍的切開して坐骨神経を露出させる。各ラットの右後足では、4本の結紮糸(例えば、Chromic gut 4.0; Ethicon[Johnson and Johnsonグループ;米国ニュージャージー州サマービル])を凡そ1〜2mm間隔で坐骨神経の周りに軽く結ぶ。各ラットの左側にも、坐骨神経を結紮しないことを除き同様の切開を行う(擬似)。筋肉を、例えば4−0 Vicryl(Johnson and Johnson[米国ニュージャージー州サマービル])により連続縫合パターンで閉じ、表面を覆う皮膚を創傷クリップで閉じる。ラットには、識別の意味で耳標を付け、動物舎に戻す。
【0090】
神経障害性疼痛ラットのChungモデル:熱及び冷異痛症反応、並びに機械的異痛症の感覚は、脊髄神経障害(例えば、結紮、横切開)によるラットで後述の通り評価することができる。詳細については、SH Kim and JM Chung, Pain (1992) 50: 355−363の冒頭に記載されている。
【0091】
Hargreaves試験:Hargreaves試験(Hargreavesら、Pain (1998) 32: 77−88)も疼痛の放射熱モデルである。手術から少なくとも10日後に、CCIラットの熱痛覚過敏により試験する。試験器具は、高熱(80〜82°F)ガラス台から構成される。試験の少なくとも15分前には、台のガラス床の上に逆さにしたプラスチックケージの中に、ラット(全試験群)を一度に8匹個別に入れる。ガラスの下に置いた放熱源は、各ラットの後足の足底に向ける。そして、足を逃避するまで(逃避潜伏時間)、又は20秒が経過するまで熱を加える。この試験を擬似手術下肢にも行う。各足につき2〜4回の試験を、試験の間に少なくとも5分間の間隔を空けて交互に行う。前記の値の平均が逃避潜伏時間を表す。
【0092】
冷異痛症モデル:挙動試験の試験器具及び方法については、Gogasら、Analgesia (1997) 3: 111−118に記載されている。神経障害(CCI)ラットで冷異痛症を試験する器具は、チャンバの底から6cmに金属板を有するプレキシグラスチャンバから構成される。チャンバには金属板の2.5cm上まで氷水が入れてあり、槽の温度が試験の全体を通して0〜4℃に維持されている。各ラットを個別にチャンバの中に入れて、タイマーを始動させ、動物の反応潜伏時間を、10分の1秒まで測定する。「反応」は、動物が静止し、旋回していない時に、右結紮後足を水から完全に素早く逃避することとして定義される。動物が歩行及び旋回している間の誇張された跛行は反応として評価しない。水から結紮下肢を引っ込める動物のベースラインスコアは、一般的に7〜13秒の範囲となる。最大浸漬時間は20秒間であり、試験の間に20分間の間隔を空ける。
【0093】
神経障害性疼痛のモデルに関する補足情報については、以下の出版物で入手することができる:Bennett GJ, Xie YK (1988) “A peripheral mononeuropathy in rat that produces disorders of pain sensation like those seen in man” Pain 33: 87−197; Chaplan SR, Bach FW, Pogrel JW, Chung JM, Yaksh TL (1994) “Quantitative assessment of tactile allodynia in the rat paw” J. Neurosci. Meth. 53: 55−63; Fox A, Gentry C, Patel S, Kesingland A, Bevan S (2003) “Comparative activity of the anti−convulsants oxcarbazepine, carbamazepine, lamotrigin and gabapentin in a model of neuropathic pain in the rat and guinea−pig” Pain 104: 355−362; Milligan ED, Mehmert KK, Hinde JL, Harvey LOJ, Martin D, Tracey KJ, Maier SF, Watkins LR (2000) “Thermal hyperalgesia and mechanical allodynia produced by intrathecal administration of the Human Immunodeficiency Virus−1 (HIV−1) envelope glycoprotein, gp120” Brain Res. 861: 105−116; De Vry J, Kuhl E, Franken−Kunkel P, Eckel G (2004) “Pharmacological characterization of the chronic constriction injury model of neuropathic pain” Eur. J. Pharmacol. 491: 137−148; Polomano RC, Mannes AJ, Clark US, Bennett GJ (2001) “A painful peripheral neuropathy in the rat produced by the chemotherapeutic drug, paclitaxel” Pain 94: 293−304。
【0094】
(本発明の製剤)
本発明の治療製剤は、イブジラストからなるだけでなく、場合により、以下に記載する1種以上の追加の成分を含有する場合がある。
【0095】
(賦形剤/担体)
イブジラストに加えて、神経障害性疼痛を治療する本発明の組成物は更に、1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を含む場合がある。代表的な賦形剤には、ポリエチレングリコール(PEG)、硬化ヒマシ油(HCO)、クレモホル、炭水化物、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン)、無機塩、抗菌剤、酸化防止剤、結合剤/充填剤、界面活性剤、潤滑剤(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム)、タルクのような滑走剤、崩壊剤、希釈剤、緩衝剤、酸、塩基、フィルムコート、こられの組み合わせ等が含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
本発明の組成物には、1種以上の炭水化物、例えば、糖、誘導体化糖(例えば、アルジトール)、アルドン酸、エステル化糖、及び/又は糖ポリマーが含まれる場合がある。特定の炭水化物賦形剤には、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボース等のような単糖類;ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース等の二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン等のような多糖類;マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトール等のようなアルジトール類が含まれる。
【0097】
又、本発明の組成物における使用に適切なものとしては、ジャガイモ及びトウモロコシ由来デンプン、例えば、ナトリウムデンプングリコレート及び直接圧縮可能な変性デンプンがある。
【0098】
更なる代表的な賦形剤には、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸ナトリウム一塩基、リン酸ナトリウム二塩基、及びこれらの組み合わせのような無機塩又は緩衝剤が含まれる。
【0099】
本発明のイブジラスト含有組成物は、例えば微生物の増殖を防止又は抑止するために、抗菌剤を含むこともできる。本発明に適切な抗菌剤の非限定例には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0100】
本発明の組成物は又、1種以上の酸化防止剤を含有する場合もある。酸化防止剤は、酸化の防止に使用されるため、医薬品又は調合剤のその他の成分の劣化を防止する。本発明での使用に適した酸化防止剤には、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、プロピルガレート、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0101】
追加の賦形剤には、ポリソルベート、例えば「Tween 20」及び「Tween 80」のような界面活性剤、F68及びF88(何れもBASF[米国ニュージャージー州マウントオリーブ]から入手可能)のようなプルロニック、ソルビタンエステル、脂質(レシチン及びその他のホスファチジルコリン、及びホスファチジルエタノールアミンのようなリン脂質)、脂肪酸、脂肪酸エステル、コレステロールのようなステロール、並びにEDTA、亜鉛及びその他の適切なカチオンのようなキレート剤が含まれる。
【0102】
更に、本発明の組成物には、場合により、1種以上の酸又は塩基が含まれる場合もある。使用できる酸の例には、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される酸が含まれるが、これらに限定されない。適切な塩基の例には、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される塩基が含まれるが、これらに限定されない。
【0103】
該組成物中の個別の賦形剤の量は、賦形剤の役割、活性薬剤成分の投与量要件、及び該組成物の特定の必要性によって変わる。一般的に、任意の個別の賦形剤の最適量は、日常的な実験を介して、即ち、異なる量の賦形剤(低量から高量の範囲)を含有する組成物を調製し、安定性及びその他のパラメータを調べた後、有意な悪影響がなく最適な機能が得られる範囲を決定することによって決定される。
【0104】
しかし、一般的には、約1重量%〜約99重量%、好ましくは約5重量%〜約98重量%、より好ましくは約15〜約95重量%の量の賦形剤が組成物中に存在する。一般的に、本発明のイブジラスト組成物に存在する賦形剤の量は、以下から選択される:少なくとも約2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、更には95重量%。
【0105】
前記の医薬賦形剤については、他の賦形剤と共に、”Remington: The Science & Practice of Pharmacy,” 19th ed., Williams & Williams, (1995), the ”Physician’s Desk Reference”, 52nd ed., Medical Economics, Montvale, NJ (1998)及びKibbe, A.H., Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd Edition, American Pharmaceutical Association, Washington, D.C., 2000に記載されている。
【0106】
(他の活性作用物質)
本発明の製剤(又はキット)は、イブジラストに加えて、神経障害性疼痛を治療する上で有効な1種以上の追加の活性薬剤を含有する場合がある。好ましくは、該活性薬剤が、イブジラストと異なる作用機序を有する薬剤となる。当該活性作用物質には、ギャバペンチン、メマンチン、プレギャバリン、モルヒネ及び関連するアヘン剤、カンナビノイド、トラマドール、ラモトリジン、カルバマゼピン、デュロキセチン、ミルナシプラン、及び三環系抗うつ薬が含まれる。
【0107】
Neurontin(登録商標)としても知られるギャバペンチンは、神経伝達物質GABAと構造的に関連している。GABAと構造的に関連しているものの、ギャバペンチンは、GABA受容体と相互作用することもなければ、GABA又はGABA作動薬に代謝変換されることもなく、GABA取り込み又は分解の阻害剤でもない。ギャバペンチンは、脳のGABA取り込みキャリヤのGABAA又はGABAB受容体で活性を有さず、むしろ脳膜の高親和性結合部位(電位感受性Ca2+チャンネルの補助サブユニット)と相互作用する。作用の正確な機序は知られていないが、その作用の生理学的部位は脳である。ギャバペンチンは、構造的に血液脳関門を自由に通過することが可能である。in vitroにおいて、ギャバペンチンは、GABA合成酵素の作用の調節、神経組織からの非シナプス性GABA反応の増加、複数のモノアミン神経伝達物質の放出の低減等の、多くの薬理学的作用を有する。ギャバペンチンの1日投与量は一般的に、約600〜2400mg/日、より好ましくは約900〜1800mg/日の範囲であり、分割用量(例えば1日3回)で投与される。従来の1日量剤形は、カプセル剤が300又は400mg、錠剤が600又は800mgである。
【0108】
活性作用物質であるメマンチンは、受容体拮抗薬である。メマンチンは、NMDA受容体作動カチオンチャンネルに結合する、低から中程度の親和性の非拮抗的(開口チャンネル)NMDA受容体拮抗薬として機能すると考えられる。推奨される1日投与量は、一般的に約5mg〜20mgの範囲となる。
【0109】
アヘン剤であるモルヒネは、脳及び体中に広く分布するアヘン剤受容体を活性化することによって、その効果を誘発する。アヘン剤が脳に到達すると、多くの脳領域で見られるアヘン剤受容体を急速に活性化し、関連する脳の区域と相関する効果を生じる。アヘン剤受容体は、δ、μ及びκ受容体のように数種類が存在する。アヘン剤及びエンドルフィンは、μ受容体部位に結合することによって、疼痛信号を阻止するように機能する。
【0110】
カンナビノイド、例えば、テトラヒドロカンナビノールは、CBと呼ばれるカンナビノイド受容体に結合する。CB受容体は脳及び末梢組織にあり、CB受容体は、中枢神経系に大量に存在し、ほぼ全ての神経伝達物質受容体のレベルを超えている。「CB2」と呼ばれる追加のカンナビノイド受容体のサブタイプも同定されている。例えば、Martin, B.R.ら、The Journal of Supportive Oncology, Vol. 2, Number 4, July/August 2004を参照されたい。
【0111】
オピオイドであるトラマドールは、作用機序がまだ完全に明らかになっていないものの、GABA作動系、ノルアドレナリン作動系及びセロトニン作動系の調節を介して働くと考えられている。トラマドール及びM1として知られるその代謝産物は、μオピオイド受容体に結合して(それにより、GABA作動性の伝達に対して効果を発揮し)、5−HT及びノルアドレナリンの再取り込みを阻害することが判明している。トラマドールの鎮痛効果はμオピオイド受容体拮抗薬であるナノキソンにより完全に拮抗されないため、第二の機序が寄与すると考えられる。一般的な1日投与量は、4〜6時間毎に約5〜100mgの範囲であり、1日総投与量が400mgを超えることはない。
【0112】
ラモトリジンは、グルタミン酸及びアスパラギン酸(興奮性アミノ酸神経伝達物質)の放出を阻害する電位感受性ナトリウムチャンネルを阻止することによって、神経細胞膜を安定化させるフェニルトリアジンである。ラモトリジンの1日投与量は一般的に、25mg/日〜500mg/日の範囲となる。一般的な1日投与量には、50mg/日、100mg/日、150mg/日、200mg/日、300mg/日及び500mg/日が含まれるが、700mg/日を超えることはない。
【0113】
カルバマゼピンは、電位感受性ナトリウムチャンネルを阻止することにより作用する。一般的な成人投与量は、1日1回又は2回の100〜200mgから、一般的に2〜3回の分割用量で投与される増量した投与量の800〜1200mg/日の範囲となる。
【0114】
デュロキセチンは、セロトニン及びノルエピネフリンの神経細胞取り込みの強力な阻害剤であり、ドーパミン再取り込みの弱い阻害剤である。一般的な1日投与量は、1日1回の約40〜60mg、又は1日2回の20〜30mgの範囲となる。
【0115】
ミルナシプランは、セロトニン及びノルエピネフリン再取り込み阻害剤として作用する。1日投与量は一般的に、1日1回又は2回の約50〜100mgの範囲となる。
【0116】
上に規定する投与量は、単なる指針として意図されており、イブジラストの併用治療時に投与される第二の活性薬剤の正確な量は、当然のことながら、所期の患者群、治療する特定の神経障害性疼痛症候群又は状態、投与された活性作用物質の間の潜在的な相互作用等のような要因に応じて調整され、且つ左右され、本明細書に定める指針に基づき当業者により容易に決定される。
【0117】
(持続性送達製剤)
好ましくは、該組成物が、イブジラストの安定性を改善し、半減期を延長するために配合される。例えば、イブジラストは持続性放出製剤で送達される場合がある。徐放性又は持続性放出製剤は、リポソーム、非吸収性で不浸透性のポリマー(例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー及びHytrel(登録商標)コポリマー)、膨張性ポリマー(例えばヒドロゲル)、又は吸収性ポリマー(例えばコラーゲン及び特定のポリ酸)、又はポリエステル(例えば吸収性縫合糸の製造に使用されるポリエステル)のような担体又はビヒクルにイブジラストを組み込むことによって調製される。更に、イブジラストは粒状担体に封入する、吸収させる又は関連付けることができる。粒状担体の例には、ポリメチルメタクリレートポリマーから誘導される担体、並びにポリ(ラクチド)及びPLGとして知られるポリ(ラクチド−co−グリコリド)から誘導される微粒子が含まれる。例えば、Jefferyら、Pharm. Res. (1993) 10: 362−368;及びMcGeeら、J. Microencap. (1996)を参照されたい。
【0118】
(送達形態)
本明細書に記載されるイブジラスト組成物は、全ての種類の製剤、特に、全身又は鞘内投与に適しているものを包含する。経口剤形には、錠剤、ロゼンジ、カプセル剤、シロップ剤、経口懸濁剤、乳剤、顆粒、及びペレット剤が含まれる。代替の製剤には、エアロゾル、経皮パッチ、ゲル剤、クリーム剤、軟膏、坐剤、再構成できる粉末剤又は凍結乾燥剤、並びに液剤が含まれる。例えば、注入の前に固体組成物を再構成する上で適した希釈剤の例には、注入用静菌性水、水中5%のデキストロース、リン酸塩緩衝生理食塩水、リンゲル溶液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、及びこれらの組み合わせが含まれる。液体医薬組成物に関しては、液剤及び懸濁剤が考慮される。好ましくは、本発明のイブジラスト組成物が、経口投与に適したものとなる。
【0119】
ここで経口送達製剤の言及に移ると、錠剤は、場合により1種以上の付随成分又は添加剤を使用して圧縮又は成形することにより製造することができる。例えば、圧縮錠剤は、場合により、結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、ナトリウムデンプングリコレート、架橋ポビドン、架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース)及び/又は界面活性剤若しくは分散剤と混合した、粉末剤又は顆粒のような易流動性形態の活性成分を適切な錠剤機で圧縮することにより調製される。
【0120】
成形錠剤は、例えば、不活性液体希釈剤で湿潤された粉末化合物の混合物を適切な錠剤機で成形することにより製造される。該錠剤は、場合によりコーティングされることもあれば、刻み目を付けることもあり、又、所望の放出特性を提供するために、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを異なる比率で使用して、活性成分の遅効性又は徐放性をもたらすように配合される場合もある。錠剤には、場合により、薄膜、糖衣、又は腸溶コーティングを施し、胃以外の消化管の部分で放出をもたらすようにする場合がある。錠剤及びカプセル剤を製造するプロセス、装置、及び委託製造者は、当該技術分野で周知である。
【0121】
口腔への局所投与用の製剤には、一般的にスクロース及びアカシア又はトラガカントのような風味基中の活性成分からなるロゼンジ、及びゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアのような不活性基中の活性成分からなる香錠が含まれる。
【0122】
局所投与用の医薬組成物は又、軟膏、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、粉末剤、溶剤、ペースト剤、ゲル剤、噴霧剤、エアロゾル剤、又は油剤として配合される場合もある。
【0123】
或いは、該製剤は、パッチ(例えば経皮パッチ)の形態又は、活性成分及び場合により1種以上の賦形剤若しくは稀釈剤が含浸する帯具若しくは接着性硬膏剤のような包帯剤の形態である場合がある。局所製剤には更に、皮膚又はその他の罹患区域を通した成分の吸収又は浸透を増強する化合物が含まれる場合があり、数例を挙げると、ジメチルスルホキシデムビサボロール、オレイン酸、イソプロピルミリステート、及びD−リモネンがある。
【0124】
乳剤では、油相が、既知の方法により既知の成分から構成される。前記相は乳化剤からなる場合もあるが(他の場合ではエマルゲントとしても知られる)、望ましくは、少なくとも1種の乳化剤と脂肪及び/又は油の混合物からなる。好ましくは、安定剤として作用する親油性乳化剤と共に親水性乳化剤が含まれる。組み合わせた該乳化剤は、安定剤の有無に関係なく、いわゆる乳化ロウを作り出し、油及び/又は脂肪と組み合わさった該ロウは、クリーム製剤の油分散相を形成する、いわゆる乳化軟膏基を作り出す。例証となるエマルゲント及び乳剤安定剤には、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、及びラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0125】
直腸内投与用製剤は一般的に、例えば、カカオ脂又はサリチレートからなる適切な基を有する坐剤の形態である。
【0126】
膣内投与に適した製剤は一般的に、坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤、又は噴霧剤の形態をとる。
【0127】
担体が固体である、経鼻投与に適した製剤には、例えば約20〜約500ミクロンの範囲の粒径を有する粗粉末が含まれる。当該製剤は一般的に、例えば、鼻の近くに保持した粉末剤の容器から鼻道を介して急速に吸引することによって投与される。或いは、経鼻送達用の製剤は、液剤の形態、例えば、鼻内噴霧剤又は点鼻剤の形態である場合もある。
【0128】
吸入用のエアロゾル化製剤は、乾燥粉末形態(例えば、乾燥粉末吸入器による投与に適した形態)である場合もあれば、例えば、噴霧器での使用のために液体形態である場合もある。エアロゾル化液剤を送達する噴霧器には、AERxTM(Aradigm)、Ultravent(登録商標)(Mallinkrodt)、及びAcorn II(登録商標)(Marquest Medical Products)が含まれる。本発明の組成物は又、薬学的に不活性な液体噴射剤、例えばクロロフルオロカーボン又はフルオロカーボン中に本明細書に記載の複合製剤の液剤又は懸濁剤を含有する、定量式噴霧器(MDI)、例えばVentolin(登録商標)定量式噴霧器を使用して送達される場合もある。
【0129】
非経口投与に適した製剤には、注入に適した水性及び非水性等張滅菌液剤、並びに水性及び非水性滅菌懸濁剤が含まれる。
【0130】
本発明の非経口製剤は、場合により、単位用量又は多剤用量密閉容器、例えば、アンプル及びバイアルに含有されており、使用の直前に滅菌液体担体、例えば注入用の水の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)の状態で保存される場合がある。即席注入液剤及び懸濁剤は、前述の種類の滅菌粉末剤、顆粒及び錠剤から調製される場合がある。
【0131】
本発明の製剤は又、非持続放出製剤に比べて医薬品の各成分が経時的にゆっくりと放出又は吸収される、持続放出製剤である場合もある。持続放出製剤は、活性作用物質のプロドラッグ形態、リポソーム若しくはポリマーマトリックスのような遅延性放出医薬品送達系、ヒドロゲル、又はポリエチレングリコールのようなポリマーと活性作用物質の共有結合を使用する場合がある。
【0132】
上に具体的に記載した成分に加えて、本発明の製剤には、場合により、薬剤学の技術分野で一般的なその他の薬剤が含まれる場合があり、例えば経口投与形態で特定種類の製剤が使用される場合、経口投与用の組成物には又、甘味料、増粘剤又は風味剤として追加薬剤が含まれる場合もある。
【0133】
本発明の組成物は又、獣医学の用途に適した形態で調製される場合もある。
【0134】
(キット)
又、本明細書で定められるものとして、使用説明書を伴った、少なくとも1種の本発明の複合組成物を含有するキットがある。
【0135】
例えば、各医薬品自体が個々の又は個別の剤形として投与される場合、該キットは、使用説明書と共に、本発明の組成物を構成する各医薬品に加えて、イブジラストからなる。該医薬品成分は、投与説明書と共に考慮すると、包装に各医薬品成分の投与方法が明確に示されている限り、投与に適切な何れかの方法で包装される場合がある。
【0136】
例えば、イブジラストとギャバペンチンからなる代表的なキットの場合、該キットを、任意の適切な期間、例えば日中に組み立てる場合がある。例としては、1日目に、代表的なキットは、イブジラストとギャバペンチンそれぞれの単位用量からなる場合がある。各医薬品を1日2回投与する場合、該キットは、1日目に対応して、2列からなるイブジラストとギャバペンチンそれぞれの単位用量を、投与時期の説明書と共に含む場合がある。或いは、1種以上の医薬品が、組み合わせの他の医薬品成分と比べて、投与する単位用量形態の時期及び量が異なる場合、当該内容は、包装及び説明書に反映されることになる。上記に基づく種々の実施形態を容易に想像することができ、当然のことながら、イブジラストに加えて治療のために使用される医薬品の特定の組み合わせ、対応する剤形、推奨される投与量、所期の患者群等により左右されることになる。該包装は、医薬品の包装に一般的に使用される任意の形態である場合がある、種々の色、包装材、タンパーレジスタント包装、ブリスターパック、乾燥剤等のような複数の特徴の何れかを使用する場合がある。
【0137】
本発明を好ましい特定の実施形態と共に記載してきたが、前記の説明、並びに以下の実施例は、本発明の範囲を説明することを意図したものであり、限定することを意図したものではないことが理解されるはずである。本発明の範囲内の他の態様、利点及び変更は、本発明が関連する当業者に明白である。
【実施例】
【0138】
(実施例1)
神経障害性疼痛のラットCCIモデルにおける、機械的異痛症に対するイブジラストの効果
機械的異痛症に対するイブジラストの効果を、神経障害性疼痛のラット慢性狭窄損傷(CCI)モデルで評価した。
【0139】
(方法)
試験薬剤:イブジラストを、Sigma(米国ミズーリ州セントルイス)又はHaorui Pharma (米国ニュージャージー州エジソン)から純粋な粉末剤として得て、腹腔内(i.p.)投与用の溶剤として毎日調製した。適量のイブジラストを100%ポリエチレングリコール(PEG)400(Sigma)に溶解し、滅菌生理食塩水中で35%PEG400の最終濃度に稀釈した(注入の場合0.9%)。
【0140】
被検物質投与:イブジラストを2.5mg/kg(35%PEG/生理食塩水中2.8mg/mlの0.9ml/kg)、7.5mg/kg(35%PEG/生理食塩水中2.8mg/mlの2.7ml/kg)、又は10mg/kg(35%PEG/生理食塩水中2.7mg/mlの3.7ml/kg)にて1日2回、それぞれ朝(一般的には午前8時)及び午後(一般的には午後3時)に投与した。経口効果試験では、イブジラストを、10% HCO−60、10% PEG 400、生理食塩水で配合した製剤50mg/kgにて投与し、又は21〜25.5mg/kg(35%PEG/生理食塩水中3mg/mlの7〜8.5ml/kg)にて投与することができ、ラットCCIにおける機械的異痛症の減衰も観察された。医薬品の安定性及び濃度はHPLC/MS/MSにより確認した。
【0141】
動物:病原体のない成体雄Sprague−Dawleyラット(280〜350g;Harlan Labs)を全ての実験に使用した。ラットは、温度(23+/−3℃)及び光(明:暗=12:12;07:00時に点灯)の制御された、標準的な齧歯類用の食餌及び水が自由に摂取可能な部屋に収納し、明サイクルの間に挙動試験を実施した。
【0142】
慢性狭窄損傷(CCI):CCIを右後足の大腿中央部の高さに作り出した。4本の滅菌吸収性外科用クロム臓器縫合糸(角質4〜0、クロム臓器27″、切断FS−2;Ethicon, Somerville, NJ)を、イソフルラン麻酔(Phoenix Pharm, St. Joseph, MO)下で、穏やかに単離した坐骨神経の周りに軽く結んだ。擬似手術を施したラットの坐骨神経を露出したが、結紮はしなかった。縫合糸の位置は一般的に殺処理時に目視検査で確認した。各種処置群への無作為化及び投与の開始は、術後7〜8日目に行った。
【0143】
挙動測定von Frey試験:von Frey試験を後足の坐骨又は伏在神経支配領域内で実施した。簡潔に説明すると、対数シリーズの10本の目盛りを付けたSemmes−Weinsteinモノフィラメント(von Frey毛髪;Stoeliting[米国イリノイ州ウッドデール])を右後足に無作為に使用して、足逃避反応を誘発する上で必要な刺激強度閾値硬直を決定した。毛髪の対数硬直は、log10(ミリグラム×10)により決定する。10回の刺激では以下のlog硬直値が得られた(ミリグラムの値を括弧内に示す):3.61(407mg)、3.87(692mg)、4.08(1,202gm)、4.17(1,479mg)、4.31(2,041mg)、4.56(3,630mg)、4,74(5,495mg)、4.93(8,511mg)、5.07(11,749mg)、及び5.18(15,136mg)。前記実験で使用したモノフィラメントの範囲(0.407〜15.136mg)により対数等級曲線が生成された。挿入した50%反応閾値データは、log10(ミリグラム×10)における刺激強度として、又は繊維の力をグラムとして表す。評価は、(ベースライン)の前、及び腹腔内投与後の特定の時点で実施した。挙動試験は、処置群から隠した。反応を、最尤あてはめ法を使用して、ガウス整数心理測定的関数をあてはめて、50%足逃避閾値(絶対閾値)の計算に使用し、この当てはめ法は、パラメータ統計分析を可能にする。
【0144】
(試験及び結果)
用量選択試験:予備試験を、イブジラストの単回及び複数回の腹腔内投与に対するラットの耐性を評価するために設計した。≦5ml/kgの量で投与された、35%PEG/生理食塩水で配合された腹腔内(i.p.)用量>20mg/kgのイブジラストは、持続時間が1時間まで続いたラットで有害な挙動効果を生じた。これらには、長引く頭痛、呼吸数の増加、時折の回転挙動及び発声、並びに嗜眠が含まれる。同じ用量のビヒクルのみで処置したラットは、何れの有害な効果を示さなかった。対照的にi.p.用量≦15ml/kgは、一般的に耐性が良好であった。
【0145】
急性効果試験:最初に、小規模のセットの動物(n=3〜4/群;群=擬似対照、CCIビヒクル、CCIイブジラスト)を、試験薬剤10〜15mg/kgの単回i.p.投与後の、異痛症における急性低減を試験した。機械的異痛症を、ベースライン(投与の直前)と、投与の1、2,4及び16時間後で測定した。CCIビヒクル動物に対して、イブジラスト処置ラットは、異痛症の低減を示した。異痛症は、通常は無害の刺激に対する有痛性の逃避反応として定義する。これは、+1時間で明らかとなり、+2時間で最大となり、16時間でベースラインに戻った(データ掲載なし;図1も参照)。重要なことは、イブジラスト擬似動物では足逃避閾値に変化がなく、CCIラットでの神経障害性疼痛効果は、顕性麻酔に起因しないことを示した。
【0146】
神経障害性疼痛効果の複数日試験:一過性の効果を示す予備急性試験の結果を前提として、動物(n=擬似が4/群、及びCCIが5〜8/群)に、2.5、7.5、若しくは10mg/kgのイブジラスト又は35%PEG/生理食塩水ビヒクルを、1日2回i.p.で投与して、機械的異痛症を、投与後の異なる時間間隔でモニターする、1週間の試験を実施した。午前の投与後、+1時間及び+2時間の時点を得た。効果の永続性を評価するために、前日の午後の投与の約16時間後に、投与前試験をそれぞれの日に実施した。
【0147】
図1で示したように、イブジラスト処置は、CCIラットにおいて異痛症の程度を減衰した。とりわけ、逆転は、生物学的及び統計学的に有意であり、投与後+2時間で一貫して明らかとなった。更に、この1日2回のレジメンの2日間以内で、効果は、イブジラスト処置後16時間の間ずっと神経障害性疼痛の逆転が明白であったように、>2.5mg/kgの用量で既に持続性がより増してきた。当該持続的効果は、大部分の神経障害性疼痛薬には稀であり、薬物動態プロフィールから予測されるとは限らない。
【0148】
イブジラスト処置CCIラットにおけるグリア細胞活性化の減衰の試験:5日間の試験の終了時に、CCIビヒクル対照又はCCIイブジラスト群からの動物(4/群)を、安楽死させ、腰髄組織を単離し、BA Wilkelstein and JA DeLeo, Brain Research (2002) 965: 294−301に記載される通り、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)に対して反応性の抗体により、星状膠細胞活性化のために染色した。図6は、CCIビヒクル処置動物の一般的な染色プロフィールを表す。神経障害性疼痛の被験体(この場合はCCIラット)で一般的に観察される拡大(活性化)した星状膠細胞が、CCI群で見られる。対照的に、異痛症の良好な減衰を示す、イブジラスト処置ラットの代表的な画像が、提示されている。GFAP染色により測定される低減したグリア細胞活性が、イブジラスト処置動物で観察される。
【0149】
経口効果試験:動物(n=8/群)に、21mg/kgのイブジラスト又は35%PEG/生理食塩水ビヒクルを1日2回経口(p.o.)で2日間、次に25.5mg/kgのイブジラストに増加して更に3日間投与する、5日間試験を実施した。前及び後機械的異痛症試験を、1、3及び5日目に異なる時間間隔で実施した。午前の投与後に、+1時間及び+2時間の時点を得た。効果の永続性を評価するために、これらの日に投与前試験も実施した。異痛症の減衰を、イブジラスト処置動物において、最初の投与後の早ければ4時間後で観察し、処置の2日後に永続的になった(午後の投与から翌日の午前の投与試験の前まで継続した)(データは示さず)。
【0150】
又、イブジラストをラット(n≧6/群)に経口胃管栄養法により1日1回のみ(凡そ午前9時)投与する、1週間の試験で効果を評価した。ビヒクル製剤は、生理食塩水中の10%HCO−60、10%PEG400であった。図2に示す通り、経口イブジラスト投与は、午前の投与の直ぐ後の2日間の投与後、CCIラットにおいて異痛症の程度を有意に減衰し、一晩続いた永続的な効果が、投与の7日間内で観察された。
【0151】
薬物動態。効果と相関する血漿イブジラスト濃度:正常なラットにおける献身的な薬物動態試験は、医薬品血漿レベルと、機械的異痛症における変化(即ち、神経障害性疼痛効果)とを相関させるために、イブジラストをi.p.又はp.o.で投与して実施した。投与後(時間t=0)、n=3ラット/時点及び5分間から6時間まで間隔を置いた6時点で連続出血を得て、血漿を単離し、≦1ng/mlに感受性のある、HPLC及び二次元質量分析(LC/MS/MS)法により(実施例4に記載)、イブジラスト濃度を決定した。CCIラットでのイブジラストのi.p.処置−即ち、2.5mg/kg−の後の異痛症効果の第1の徴候と相関する最大血漿濃度(Cmax)は、平均125ng/mlの最大血漿濃度を生じた。神経障害性疼痛における有意な効果は、7.5mg/kgのi.p.で観察され、1714ng/mlの最大平均血漿濃度と相関した。PEG400/生理食塩水中の21mg/kg又は10%HCO−60/10%PEG/生理食塩水中の50mg/kgで経口投与される場合、明確に確認でき、統計的に有意な効果が観察され、平均最大血漿濃度は、それぞれ325ng/ml(図5B)又は387ng/mlであった。更に、Cmax、曲線下領域(AVU)及びCmaxを示す除去半減期(t1/2)を含むPKパラメータに関する薬物動態−薬力学分析は、効果を確立する重要なパラメータである。
【0152】
モルヒネを用いる併用治療の利益:35%PEG/生理食塩水中の7.5mg/kgのイブジラストの1日2回のi.p投与を単独で、又は1mg/kgのモルヒネの皮下(s.c.)投与と組み合わせて、治療の数日間にわたって実施する、ラットCCI効果試験を実施した。ビヒクル対照と比較したモルヒネによる異痛症の逆転は、イブジラストによるものよりも大きく、モルヒネとイブジラストの組み合わせは、何れかの薬剤単独よりも優れていた。(データ示さず)。したがって、組み合わせに投与におけるイブジラスト治療は、アヘン剤神経障害性疼痛効果を妨げず、その逆もまた同様であり、併用治療効果は、何れかの薬剤単独に対して増強されている。同様の結果が、ギャバペンチン、シンバルタ等を含むその他の神経障害性疼痛薬でも予測される。
【0153】
(結論)
主な効果のエンドポイントが機械的異痛症である、神経障害性疼痛の典型的な実証済みモデル(ラットCCI)では、1日1回又は2回の1日頻度での全身(i.p.又はp.o.)イブジラスト投与は、顕著に異痛症を減衰した。加えて、イブジラストはモルヒネのような他の神経障害性疼痛治療と組み合わせることができ、組み合わせで観察される得られる神経障害性疼痛効果は、何れかの薬剤単独で観察されるものよりも大きいことが、確定した。
【0154】
神経障害性疼痛効果と相関する全身投与イブジラストの血漿濃度は、最大血漿濃度(Cmax)の≧125ng/mlと相関し、これは、イブジラストで治療する喘息又は発作後の患者で一般的に観察される血漿濃度を超えている。ヒトにおいて推奨され、最も実践されているイブジラストの投与レジメンは、1日2回又は3回の10mgであり、これは、単回投与でCmaxの25ng/ml(Ketas(登録商標)添付文書)又は複数回投与の定常状態でCmaxの45ng/mlを生じる(Z Cai−Liら、(2003) Acta Pharmacol Sin 4: 342−343)。本明細書で提示されているデータに基づいて、ヒトにおける神経障害性疼痛に有用である最適な実際の用量レベルは、1日2回又は3回の10mgを超えるイブジラスト(Ketas(登録商標)及びその他市販される一般的な形態で施される)の投与レベルを必要とする。
【0155】
神経障害性疼痛を経験しているラットからの脊髄組織におけるGFAP免疫反応性のために染色することによって(CCI手順)、神経障害の後で一般的に観察される星状膠細胞活性化は、イブジラストの全身投与(i.p.)の後で低減することが示される。更に、GFAP免疫反応性の当該低減は、機械的異痛症を低減するイブジラスト効果に相関する。
【0156】
(実施例2)
神経障害性疼痛のラットのChungモデルにおける機械的異痛症に対するイブジラストの効果
神経障害性疼痛のラットのChungモデルにおける機械的異痛症に対するイブジラストの効果を評価した。
【0157】
(方法)
試験薬剤:Haorui及びShigmaイブジラストを上記のように配合した。イブジラストを、1日2回10mg/kg(35%PEG/生理食塩水中の2.7mg/mlの3.7ml/kg)のi.pでそれぞれの朝(一般的には午前8時)及び午後(一般的には午後3時)に投与した。
【0158】
動物:病原体のない成体雄Wistarラット(150〜200g;Elevage Janvier)を実験に使用した。ラットは、温度(23+/−3℃)及び光(明:暗=12:12;07:00時に点灯)の制御された、標準的な齧歯類用の食餌及び水が自由に摂取可能な部屋に収納し、明サイクルの間に挙動試験を実施した。
【0159】
Chungモデル:ラットにイソフラン(酸素100%中、誘導では4〜5%、維持では2〜3%)で麻酔をかけ、L4−S2レベルで切開を実施して、左L5及びL6脊髄神経を露出した。それぞれの神経の周りに結紮糸をきつく結んだ。次に創傷を縫合した。ラットに、クラモキシルの注入を受けさせ、回復させた。神経を結紮しないことを除いて、擬似対照を同じ手術手順に付した。
【0160】
挙動測定von Frey試験:von Frey試験を、CCIモデルについて前述の通り実施した。
【0161】
(試験及び結果)
神経障害性疼痛効果の複数日試験:動物(n=擬似が3〜4/群、及びChung動物が5/群)に、10mg/kgのイブジラスト又は35%PEG/生理食塩水ビヒクルを、1日2回投与して、機械的異痛症を、投与後の異なる時間間隔でモニターする、3日間の試験を実施した。午前の投与後、+1時間、+2時間及び+4時間の時点を得た。効果の永続性を評価するために、投与前の読み取りをそれぞれの日に得た。
【0162】
図3に示す通り、イブジラスト治療は、Chungラットにおいて異痛症の程度を減衰した。とりわけ、持続的な減衰が、1日2回の投与の2日目に始まり、投与後+2時間で明白となった。更に、神経障害性疼痛の逆転も、イブジラスト治療の後、16時間の間ずっと(投与後の読み取り)明白であったように、この1日2回のレジメンの2日間以内で、効果は、既に持続性がより増してきたことが明らかである。
【0163】
(結論)
神経障害性疼痛の別の典型的なモデルを使用する、本明細書に記載される試験の結果は、Chungラットへのイブジラストの全身投与が機械的異痛症を減衰することを示す。重要なことは、単回投与後に観察される幾分一過性の異痛症減衰は、1日2回レジメンの2日目から長続きするようになる。
【0164】
(実施例3)
タキソール誘発神経障害性疼痛のラットモデルにおける機械的異痛症に対するイブジラストの効果
タキソール誘発神経障害性疼痛のラットモデルにおける機械的異痛症に対するイブジラストの効果を、下記に記載されるように評価した。
【0165】
(方法)
試験薬剤:イブジラストを前述の通り配合した。イブジラストを、7.5mg/kg(35%PEG/生理食塩水中2.8mg/mlの2.7ml/kg)でi.p.によりそれぞれの朝(一般的には午前8時)及び午後(一般的には午後3時)に投与した。
【0166】
動物:病原体のない成体雄Sprague−Dawleyラット(280〜350;Harlan Labs)を全ての実験に使用した。ラットは、温度(23+/−3℃)及び光(明:暗=12:12;07:00時に点灯)の制御された、標準的な齧歯類用の食餌及び水が自由に摂取可能な部屋に収納し、明サイクルの間に挙動試験を実施した。
【0167】
タキソールモデル:神経障害性疼痛を、隔日(0、2、4及び6日目)に1mg/kgのタキソール(Paclitaxel(登録商標)、蓄積量4mg/kg)をi.p.注入で投与することによって誘発した。神経障害性疼痛発症は、タキソール投与(0日目)の凡そ19日後に最大となった。イブジラスト又はビヒクル対照治療を、19日目(治療パラダイム)又は12日目(予防パラダイム)の何れかで開始した。異痛症の結果を、ビヒクル又はイブジラストの朝の投与の前に、決定した。
【0168】
挙動測定vonFrey試験:vonFrey試験を、CCIモデルについて先に記載した通りに、後足の坐骨又は伏在神経支配領域内で実施した。全ての試験を、その日のイブジラストの朝の投与の前に実施した。
【0169】
(試験及び結果)
神経障害性疼痛効果の複数日試験:7.5mg/kgのイブジラストを、1日2回、最初のタキソール投与(0日目)の20日後から開始して7日間投与した。機械的異痛症を、それぞれの日にイブジラストの最初の投与の前に評価した。
【0170】
図4に示す通り、イブジラスト治療の投与は、タキソールを投与したラットの異痛症の程度を減衰した。1日2回のレジメンは、毎日の投与の前の足逃避閾値の増加により示されるように、投与期間の全体を通して異痛症の減衰を持続した。イブジラスト投与の中断は、ラットを1日以内に異痛症の状態に戻した。
【0171】
タキソール誘発神経障害の予防:イブジラスト又はビヒクル対照投与を、異痛症が明白になった12日目に開始した以外は、前述の複数日試験と事実上同一に実施した。イブジラスト治療は、更なる神経障害の進行を防止し、低いレベルの異痛症を、非化学療法対照動物と有意に異なることのないレベルに減衰した。
【0172】
(結論)
神経障害性疼痛のモデルを使用する本明細書に記載されている試験の結果は、タキソールを投与したラットへのイブジラストの全身投与が、機械的異痛症を減衰することを示す。異痛症の減衰は、1日2回の投与の間持続し(即ち、明らかに一夜から朝の試験までの期間)、イブジラストの投与を中断すると、ラットを異痛症の状態に戻す。重要なことは、イブジラスト治療は、癌化学療法(タキソール)誘発神経障害(この実施例では、異痛症)の発生を予防することが、図4Bでも示された。癌化学療法誘発性の神経障害性疼痛のタキソールモデルによる当該所見は、患者に神経障害をもたらすことが知られているその他の癌化学療法薬にも広がることが予測される。
【0173】
機械的異痛症は、慢性神経障害性疼痛の動物モデル及びヒトにおける神経障害性疼痛の、一般的で壊滅的な合併症である。したがって、本明細書に記載される結果は、哺乳動物における多様な種類の慢性神経障害性疼痛症候群、特に機械的異痛症が一般的な症状である症候群の治療のための、イブジラストの治療的な使用について初めて知られる開示を表す。
【0174】
(実施例4)
ラットイブジラスト血漿PK及び組織分布
血漿、筋肉、脳、及び脊髄へのイブジラストの薬物動態及び分布を、以下のように評価した。
【0175】
(方法)
試験薬剤:イブジラストを15%エタノール/生理食塩水で調製した。医薬品の安定性及び濃度をHPLC/MS/MSで確認した。
【0176】
動物:病原体のない成体雄Sprague−Dawleyラット(280〜350;Harlan Labs)を全ての実験に使用した。ラットは、温度(23+/−3℃)及び光(明:暗=12:12;07:00時に点灯)の制御された、標準的な齧歯類用の食餌及び水が自由に摂取可能な部屋に収納し、明サイクルの間に挙動試験を実施した。
【0177】
PK分析:ラット(n=3/群)に5mg/kgのイブジラストをi.p.で投与し、血漿、筋肉、脳、及び脊髄を、投与の5、15、60、180、及び420分後に採取した。
【0178】
組織濃度分析:DMSO中のイブジラスト(Haorui)0.5mg/mlの溶液を、処置貯蔵溶液として使用した。DMSO中のイブジラスト0.5mg/mlの溶液は、試験試料として用意された粉末イブジラストを使用して調製し、処置貯蔵溶液として使用した。血漿における較正基準は、100中の0.5mg/mlの各貯蔵溶液1をラットの血漿に稀釈して、5000ng/ml(5μl+495μl)にし、次に、血漿による3倍連続稀釈法で更に稀釈して、2.29ng/mlにした。標準3、5及び7を、それぞれ低、中、及び高QC試料として使用した。
【0179】
較正基準、QC、及び血漿試験試料は、HPLC注入のために、25μlの血漿を、内標準として50ng/mlのジフェンヒドラミン及び100ng/mlのデキストロメトルファンを含有する、3×容量(75μl)の氷冷アセトニトリルに沈殿させることによって調製した。組織試験試料は、HPLC注入にために、組織1mg当たり1μlの水と、内標準として50ng/mlのジフェンヒドラミン及び100ng/mlのデキストロメトルファンを含有する、3×容量(水に対して)の氷冷アセトニトリルとを加え、次に、電気ホモジナイザーで均質化することによって調製した。6100gで30分間の遠心分離の後、40μlの各上澄みを、水中の0.2%ギ酸200μlで稀釈し、以下のLC/MS/MS条件で分析した。
【0180】
HPLC: Shimazu VP System
移動相: 水中0.2%ギ酸(A)及びメタノール(B)
カラム: 2×100mm Peek Scientific DuraGel G C18保護カートリッジ
注入量: 100μl
勾配: 0.75分間の洗浄の後、5〜95%のBを2分間
流量: 400μl/分
質量分析計: Applied Biosystems/MDS SCIEX API 3000
界面: 400℃でTurboIonSpray (ESI)
イオン化モード: 陽イオン
Q1/Q3イオン:イブジラストで231.2/161.2。
【0181】
(試験及び結果)
イブジラストの腹腔内投与は、良好な血漿濃度を生じ、二相的にCmaxから低下する。イブジラストは、抹消(例えば、筋肉)及び中枢(例えば、脳及び脊髄)組織に十分に分布している(図5A)。血漿及びCNS組織における最大濃度(Cmax)は、記載されているように、約5mg/kgのイブジラスト製剤のi.p.投与後で、約1μg/mlであった。除去半減期は、全ての組織区画で100〜139分間の範囲であった。
【0182】
(結論)
上記に基づいて、イブジラストは、単回投与後の組織動態において、血漿区画と同様に、末梢及び中枢に十分に分布している。35%PEG400/生理食塩水で配合され、ラットに21mg/kgで経口投与されるイブジラストのPK試験を、表5Bに表す。製剤、用量、及び経路は、当該条件下でCCIラットに異痛症の減衰を示す前記の結果に基づいて選択した。血漿濃度対時間プロフィールから誘導される薬物動態パラメータを、以下の表及び図に示す。したがって、当該パラメータは、神経障害性疼痛効果に相関する薬物動態を表す。
【0183】
(実施例5)
神経障害性疼痛の治療におけるイブジラストの前向き二重盲検無作為化プラセボ対照ヒト試験
この試験の目的は、治療の終了時の視覚アナログ尺度の疼痛指数(VASPI)のスコアをベースラインと比較し、治療群間のVASPIスコアの変化を比較する。安定性、耐性、及び薬物動態も評価する。
【0184】
(方法)
これは、二重盲検試験である。試験の最初の7日間は単純盲検プラセボならし期間から構成される。試験の2日目に、被験体を、10mg、20mg、30mg、又は40mgの何れかのイブジラストの単回投与を受けるように順次割り当てる。薬物動態試料を、試験の2日目に得る。VASPIスコアを毎日集める。試験の8日目に、VASPIスコアのベースラインから30%変化したと定義された、ならし期間で好ましく反応した被験体を、次の14日間のプラセボ治療に割り当てる。ならし期間で好ましく反応しなかった被験体は、イブジラストの1日2回又は3回の何れかの治療を受けるように無作為化する。20mg、30mg及び40mgを使用する3用量コホートを、それぞれのコホートに登録した被験体20人に使用する。最初の被験体群を1日2回又は3回の20mgに割り当て、2番目のコホートは1日2回又は3回の30mgを割り当て、3番目のコホートの被験体は1日2回又は3回の40mgを割り当てるという、連続した順序で、コホートを満たす。より高いコホートへの用量増加は、より低い用量コホートで観察された許容可能な安全性及び耐性次第で決まる。有害な事象、臨床検査値、及びNIH(又はEU同等)毒性等級スケールを使用した評価が報告される。試験の薬剤の盲検性を維持するために、全ての被験体は、1日3回の投与を8日目から21日目まで受ける。
【0185】
被験体は、薬物動態パラメータが得られた日は、院内にいる(1、2、8、9、21及び22日目)。
【0186】
試験集団:糖尿病性神経障害又は複合性局所疼痛症候群を持つ男性又は女性被験体。組み入れ基準には、同意書を提供した被験体、年齢18〜70歳の男性又は女性被験体、少なくとも6ヶ月間の糖尿病性神経障害又は複合性局所疼痛症候群の診断、試験の少なくとも2週間前に4以上のVASPIスコアが含まれる。妊娠可能な女性被験体は、外科的に不妊にするか、又は有効な避妊法を使用しなければならない。妊娠可能な女性被験体は、試験の1日目には妊娠試験で陰性でなければならない。除外基準には、イブジラスト又はその成分に過敏性があることが知られている被験体、薬物吸収、代謝又は排出に影響を与える可能性のある状態のあらゆる病歴のある被験体、精神病、薬物耽溺、薬物乱用又はアルコール中毒の病歴のある被験体、過去90日に献血をしたか、又は献血に際して困難を経験した被験体、B型肝炎、HIV若しくは薬物スクリーニングテストで陽性な被験体、妊娠しているか、又は授乳期間中の母親である被験体、及び過去90日に臨床試験用医薬品を摂取した被験体が含まれる。
【0187】
評価には、安全性、例えば、有害事象、臨床検査評価、生命徴候、12誘導ECG、及び薬物動態が含まれる。
【0188】
イブジラストアッセイにおいて血液試料(1.5mL)を、血漿レベルのために収集する。試料を、分析の前に凡そ(−20又は−70℃)で凍結する。
【0189】
【表1】

1〜7日目は、8:00に単回投与、8〜20日目は、8:00及び20:00に1日2回投与、8:00、14:00及び20:00に1日3回投与。
血液の抜き取りは投与前に行う。食事は9:00、13:00及び18:00に与える。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】実施例1に記載される神経障害性疼痛のラット慢性狭窄損傷(CCI)モデルにおける1日2回イブジラスト腹腔内(i.p.)投与による機械的異痛症の減衰における、期間及び用量反応を表す。疼痛は、Frey線維により評価される50%逃避閾値により示す。データポイントは平均+/−標準誤差を表す。35%PEG/生理食塩水の擬似(−○−);35%PEG400/生理食塩水のCCI(−▲−);イブジラスト10mg/kgのCCI(‥△‥);イブジラスト7.5mg/kgのCCI(−■−);イブジラスト2.5mg/kgのCCI(−□−)。n=擬似中4/群及びCCIでは≧5/群。=スチューデントt試験によるビヒクル対照からp<0.05。
【図2】実施例1に記載される神経障害性疼痛のラット慢性狭窄損傷モデルにおけるイブジラスト経口投与による機械的異痛症の減衰における、期間及び用量反応を表す。疼痛は、Frey線維により評価される50%逃避閾値により示す。データポイントは、平均+/−標準誤差を表す。ビヒクル対照(10%HCO−60、10%PEG400、生理食塩水)の擬似(黒塗りの円);ビヒクル対照のCCI(白抜きの三角形);イブジラスト50mg/kgのCCI(黒塗りの三角形)。n≧5/群。=スチューデントt試験によるビヒクル対照からp<0.05。
【図3】von Frey線維による50%逃避閾値により測定した、神経障害性疼痛のラットChungモデルにおける1日2回イブジラストi.p.投与後の機械的異痛症の減衰における、期間を表す。実験の詳細は実施例2に提示されている。データポイントには、平均+/−標準誤差を表す誤差指示線が含まれる。35%PEG/生理食塩水の擬似(−○−);イブジラスト10mg/kgの擬似(‥●‥);イブジラスト10mg/kgのCCI(−△−)。n≧5/群。
【図4A】50%逃避閾値により測定した、タキソール誘発神経障害性疼痛のラットモデルにおける機械的異痛症の期間を表す。実施例3を参照されたい。朝にイブジラストを投与する前に異痛症を測定してから、イブジラストを1日2回投与した。図4Aは、タキソール誘発神経障害が完全に確立した後における異痛症の減衰を表す。データは両後足における異痛症測定値の平均である。データポイントは平均+/−標準誤差を表す。タキソール+35%PEG/生理食塩水(−■−);タキソール+7.5mg/kgのイブジラスト(黒塗りの円)。異痛症の動物では≧5/群、非タキソール正常対照では≧2。22、24及び25日目におけるイブジラスト群の平均値データポイントは、スチューデント試験によるビヒクル対照と統計的に有意に異なる。
【図4B】50%逃避閾値により測定した、タキソール誘発神経障害性疼痛のラットモデルにおける機械的異痛症の期間を表す。実施例3を参照されたい。朝にイブジラストを投与する前に異痛症を測定してから、イブジラストを1日2回投与した。 図4Bは、個別の研究であり、癌化学療法誘発神経障害が発症し始めた時(タキソール治療を始めてから12日後)にイブジラスト投与(図4Aと同様)を始めた場合における異痛症発症の予防を表す。データポイントは、後足における異痛症測定値の平均+/−標準誤差である。非タキソールではなく、タキソールビヒクルで治療し、次にPEG/生理食塩水ビヒクル(三角)又はイブジラスト(ひし形)で治療した対照と、タキソールで治療し、次にPEG/ビヒクル(黒塗りの四角形)又は7.5mg/kgのイブジラスト(円)を1日2回i.p.投与したラットの比較。
【図5A】実施例4に記載される、二つの個別の試験から得た、腹腔内投与後(5A)又は経口胃管栄養法後(5B)におけるラットのイブジラスト血漿薬物動態及び組織分布(5A)を表す。データポイントは、代表的な各組織における各時間点でのイブジラストの平均濃度を表す。挿入図に示される血漿及び組織は凡例を表す。N=3匹/時点。WinNonlin分析によるPKパラメータが記載される。
【図5B】実施例4に記載される、二つの個別の試験から得た、腹腔内投与後(5A)又は経口胃管栄養法後(5B)におけるラットのイブジラスト血漿薬物動態及び組織分布(5A)を表す。データポイントは、代表的な各組織における各時間点でのイブジラストの平均濃度を表す。挿入図に示される血漿及び組織は凡例を表す。N=3匹/時点。WinNonlin分析によるPKパラメータが記載される。
【図6】CCIビヒクル対照又はイブジラスト治療ラット由来の腰髄切片のGFAP免疫組織化学を表す。CCI外科処置の8日後に、ラットは、イブジラスト(7.5mg/kg)又はビヒクル対照(35%PEG400/生理食塩水)を1日2回、5日間i.p.投与を受けた。スライドは、各治療群の分析した代表的動物4匹を40倍で表す。左側=ビヒクル対照動物;右側=イブジラスト治療動物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経障害性疼痛を患う哺乳類被験体を治療する方法であって、
神経障害性疼痛を経験している哺乳類被験体を選択する工程、および
該被験体に、少なくとも約125ng/mlのイブジラストの最大血漿濃度を達成する上で有効なイブジラストの初期治療投薬量を投与する工程を包含し、該投与の結果として、該被験体が該神経障害性疼痛の軽減を経験する、方法。
【請求項2】
前記投与工程が、少なくとも200ng/mlのイブジラストの最大血漿濃度を達成する上で有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択工程が、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、並びにヘルペス、HIV、外傷性神経損傷、発作、虚血後疼痛、線維筋痛、反射性交感神経性ジストロフィ、複合性局所疼痛症候群、脊髄損傷、坐骨神経痛、幻肢痛、多発性硬化症からなる群より選択される状態に関連する神経障害性疼痛、及び癌化学療法誘発性の神経障害性疼痛を患う哺乳類被験体を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記投与工程が、イブジラストを全身投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記イブジラストが、経口、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、及び舌下から選択される経路により投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記投与工程が、鞘内、脊髄内及び鼻腔内から選択される経路でイブジラストを中枢投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記投与工程が、1日約30〜300mg、約30〜200mg、及び約30〜100mgのイブジラストからなる群より選択されるイブジラストの1日投与量を投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記投与工程が、1日約30mgから約100mgのイブジラストを投与することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記投与が1日1回投与することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記投与が1日2回又は3回投与することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記投与に少なくとも約1週間の期間を要する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記投与に約1週間から50週間の範囲の期間を要する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記投与工程が制吐薬の投与を伴わない、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記被験体が異痛症を経験しており、前記投与が該被験体の経験する異痛症を軽減する上で有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記投与が、前記被験体の経験する神経障害性疼痛をイブジラストの投与後少なくとも16時間まで減衰する上で有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記投与工程が、神経障害性疼痛を治療する上で有効な追加薬剤と組み合わせてイブジラストを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記追加薬剤がイブジラストと異なる作用機序を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記追加薬剤が、ギャバペンチン、メマンチン、プレギャバリン、モルヒネ及び関連するアヘン剤、カンナビノイド、トラマドール、ラモトリジン、リドカイン、カルバマゼピン、デュロキセチン、ミルナシプラン、及び三環系抗うつ薬からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
神経障害性疼痛を患う哺乳類被験体を治療する方法であって、
該被験体に、イブジラストと、神経障害性疼痛を治療する上で有効な追加薬剤とを組み合わせて投与する工程を包含し、該投与の結果として、該被験体の経験する神経障害性疼痛を、何れかの薬剤を単独投与して達成されるよりも大きな量で減衰する、方法。
【請求項20】
神経障害性疼痛を治療する医薬の調製を目的としたイブジラストの使用であって、該医薬が、少なくとも125ng/mlのイブジラストの最大血漿濃度を達成する上で有効な初期投与量で哺乳類被験体に投与される、使用。
【請求項21】
前記投与工程が、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、並びにヘルペス、HIV、外傷性神経損傷、発作、虚血後疼痛、線維筋痛、反射性交感神経性ジストロフィ、複合性局所疼痛症候群、脊髄損傷、幻肢痛、多発性硬化症、坐骨神経痛からなる群より選択される状態に関連する神経障害性疼痛、及び癌化学療法誘発性の神経障害性疼痛を経験している哺乳類被験体に前記医薬を投与することを含む、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記医薬を投与する工程が全身投与を含む、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記医薬を投与する工程が、経口、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、及び舌下投与による、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
前記医薬を投与する工程が、中枢投与を含む、請求項20に記載の使用。
【請求項25】
前記医薬を投与する工程が、制吐薬の投与を伴わない、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
異痛症を治療する医薬の調製を目的とした、請求項20に記載の使用であって、該医薬を投与する工程が、前記被験体の経験する異痛症を減衰する上で有効である、使用。
【請求項27】
前記医薬を投与する工程が、前記被験体の経験する神経障害性疼痛の量を、イブジラストの投与後少なくとも16時間まで低下させる上で有効である、請求項20に記載の使用。
【請求項28】
前記医薬を投与する工程が、神経障害性疼痛を治療する上で有効な追加薬剤と組み合わせてイブジラストを投与することを含む、請求項20に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−522979(P2008−522979A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544628(P2007−544628)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/044258
【国際公開番号】WO2006/063048
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(500544200)アビジェン, インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】