説明

移動式脱塩浄化処理装置及び脱塩浄化処理方法

【課題】海水または塩分を含む溶液に対して、安定した処理能力を維持し、しかも設備費が安く、スペースを取らず、かつ、維持管理費の少ない、省エネルギー型、詳しくは温暖化対策型の移動式脱塩浄化処理装置を提供する。
【解決手段】バクテリアが棲息する微生物担体チップの木細片またはセラミックスを主成分とし、微生物的処理を行う液体浄化処理装置内にはバクテリアの活動を補助するための螺旋状の電熱ヒーターと空気供給機と繋がっている空気供給口を設け、化学的処理を行う液体浄化処理装置内では薬注機からの薬剤とセラミックまたは逆浸透膜材を用いて化学的処理を行う。これらの微生物的処理と化学的処理を複合させた一連の処理行程を制御する自動制御盤を持つことを特徴とする移動式脱塩浄化処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水または塩分を含む溶液を脱塩することができる移動式脱塩浄化処理装置及び脱塩浄化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海水または塩分を含む溶液から淡水を得るには、塩分を含む溶液中に含まれるイオン類、微粒子、微小な有機、無機物質等を除去する処理(以下、省略して脱塩浄化処理という)を行う。脱塩浄化処理の具体例としては、逆浸透膜(Reverse Osmosis、以下、RO膜という)を用いた方法、イオン交換樹脂を用いた方法及び中空糸膜フィルターを用いた方法等がある。これらの方法のなかでも、RO膜を用いる方法では海水または塩分を含む溶液の供給側に圧力をかけ、水分子が強制的に浸透膜を通過するようにして脱塩浄化処理を行う。RO膜を用いると、RO膜を透過したろ過液の塩濃度を飲料水レベルや工業用水(中水)レベルとなるまで下げることは既に知られている。
【0003】
また、ろ過液の回収率を高くするため、供給する海水または塩分を含む溶液を熱交換器により加熱し、浸透膜を透過する水分子の量を多くする、すなわち回収率を高くする脱塩浄化処理技術が一般的であり、移動式の脱塩浄化処理装置については、車両に設置して移動させているものが殆どである。
【特許文献1】特開平8−2952
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このRO膜を用いた脱塩浄化処理方法では、供給される海水または塩分を含む溶液の一部がろ過されてろ過液として淡水が得られる一方、水分子が奪われることにより塩濃度が高くなった排液が排出される欠点があり、供給する海水に対して得られるろ過液の割合は回収率として表される。例えば海水の供給側にある一定の圧力をかけて脱塩処理すると、30〜60%の回収率で淡水を得ることができる。すなわち、70〜40%が排液として排出されてしまう。
【0005】
それが為に上記、RO膜を用いた脱塩浄化処理方法においては膜ろ装置、加熱器、熱交換機等の複雑な工程を踏まえている。従って、上記固定式脱塩浄化処理装置(プラント)が複雑な工程を踏まえる為に、多大な面積を有し、プラント全体のイニシャルコスト、ランニングコストを押し上げる結果となっている。また、RO膜を用いた方法、イオン交換樹脂を用いた方法及び中空糸膜フィルターを用いた方法でも、定期的にRO膜、イオン交換樹脂及び中空糸膜フィルター等の交換におけるメンテナンスをしなければならず、維持管理費に膨大な費用を余儀なくされている。
【0006】
従って、海水または塩分を含む溶液の固定式脱塩浄化処理装置(プラント)においてはイニシャルコスト、ランニングコストの低減化を可能とする排液の排出が低減できる省エネルギー型、詳しくは温暖化対策型の脱塩浄化処理装置を得る為の方法が要求されている。
【0007】
発明は上述した事情により成されたものであり、本発明の目的は海水または塩分を含む溶液に対して、安定した処理能力を維持し、しかも設備費が安く、スペースを取らず、かつ、維持管理費の少ない、省エネルギー型、詳しくは温暖化対策型の移動式脱塩浄化処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の目的は海水または塩分を含む溶液に生息する好気性的バクテリアの一種である好塩菌の特性を生かした好気性的環境の基で海水または塩分を含む溶液を分解・触媒化することを主体とした微生物的処理と化学的処理を複合させた移動式脱塩浄化処理装置である。
【0009】
詳しくは、バクテリアが棲息する微生物担体チップの木細片またはセラミックスを主成分とし、微生物的処理を行う液体浄化処理装置内にはバクテリアの活動を補助するための螺旋状の電熱ヒーターと空気供給機と繋がっている空気供給口を設け、化学的処理を行う液体浄化処理装置内では薬注機からの薬剤とセラミックまたは逆浸透膜材を用いて化学的処理を行う。これらの微生物的処理と化学的処理を複合させた一連の処理行程を制御する自動制御盤を持つことを特徴とする移動式脱塩浄化処理装置によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
以上に述べた通り、本発明の移動式脱塩浄化処理装置によれば、第1処理ユニットAによって好気性的環境の基で行う微生物的処理、詳しくは、海水または塩分を含んむ溶液を吸着濾過並び分解・触媒化する微生物的処理と第2処理ユニットBによる薬剤と化学吸着の機能を持たせた加工石における化学吸着反応(イオン交換機能)のもとで行われる化学的処理または逆浸透膜材のもとで行われる化学的処理とを効率よく複合させた脱塩浄化処理を行うことで排液の排出量を大幅に軽減する顕著な効果を上げることができた。このために、従来のRO膜を持つ膜ろ装置、加熱器、熱交換機等の複雑な工程を用いた既存の固定式脱塩浄化処理装置(プラント)と比較し、第1処理ユニットAと第2処理ユニットBの相乗効果により、既存の固定式脱塩浄化処理措置(プラント)の持つ複雑な工程を省くことにより、投資コストの抑制、ランニングコストの格段な激減と設置スペースを削減化した可能とした省エネルギー型、詳しくは温暖化対策型の移動式で設置が簡単な当該移動式脱塩浄化処理装置を組み合わせることにより、従来の脱塩浄化処理装置(プラント)の設計・製作並びに運転維持は極めて容易に且つ安価となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の移動式脱塩浄化処理装置は大きく分ければ第1処理ユニットAと第2処理ユニットBに分けられ、第1処理ユニットAのバクテリアが棲息する微生物担体チップまたはセラミックスを用いて、浄化処理を行う液体浄化処理手段では海水または塩分を含んだ溶液を投入後、微生物的処理を行う液体浄化処理装置内では微生物担体チップまたはセラミックスである木細片やセラミックスの吸着濾過作用により、投入された海水または溶液の90〜95%は吸着濾過処理され、残りの5〜10%の海水または塩分を含んだイオン類、微粒子、微細な有機物質等は第1処理ユニットAである液体浄化処理装置内の微生物担体チップまたはセラミックスである木細片やセラミックス内において吸着され目詰を生じさせ、即ち吸着濾過作用で微生物担体チップまたはセラミックスである木細片やセラミックス内において、塩分を含んだイオン類、微粒子、微細な有機物質等は液体浄化処理装置内に設けられている、螺旋状の電熱ヒーターから熱エネルギーと空気供給機と繋がっている空気供給口から好気性的バクテリアの一種である好塩菌が必要とする空気(酸素)を受けながら最適な好気性の条件を維持確保する事ができ、好気性のエネルギー(発酵熱)を急速に発生させて好気性処理(微生物的処理)を第1処理ユニットA内で行い塩分を含んだイオン類、微粒子、微細な有機物物質等を分解・触媒化する。
【0012】
また、第2処理ユニットBにおいては薬剤とセラミックスまたは逆浸透膜材を用いる浄化処理を行う液体浄化処理装手段では、薬剤の次亜塩素酸ソーダを所定の比率で超多孔質のシリカ(SiO2)材を2〜25mmのサイズに加工調整し、1300〜1350℃で焼成し化学吸着の機能を持たせた加工石を充填した液体浄化処理装置内に薬注機で注入点滴し、液体浄化処理装置または逆浸透膜材を用いる第2処理ユニットBで行う液体浄化処理手段を化学的処理と称し、第1処理ユニットAである液体浄化処理装置内で吸着濾過処理と微生物的処理された、詳しくは分解・触媒化された処理水に薬剤の次亜塩素酸ソーダを注入して下記の効果をもたらす。
【0013】
その効果としてはアルカリの溶液で安定しているため、第1処理ユニットAの微生物的処理行程で完全に分解・触媒化ができない海水または溶液に含まれる微粒子、微細な有機物質に対しては、還元・酸化剤となりイオン交換機能を行うことにより、一種の増幅作用がなされ酸化、還元、中和、雑菌等の機能をする。
【0014】
また、逆浸透膜材を用いた場合においても、第1処理ユニットAの微生物的処理行程で完全に分解・触媒化ができない海水または溶液に含まれる微粒子、微細な有機、無機物質に対しては、濾過材として機能する。
【0015】
このように、第1処理ユニットAと第2処理ユニットBの液体浄化処理装置で微生物的処理と化学的処理ができ、これらの複合型の脱塩浄化処理方法により、海水または塩分を含んだイオン類、微粒子、微細な有機、無機物質等を分解・消化させる移動式脱塩浄化処理装置によって達成される。
【実施例】
【0016】
図1は本発明の原理を実証するための装置の概要構成を示す図である。全体の移動式脱塩浄化処理装置15は海水または塩分を含んだ溶液を吸着濾過処理と微生物的処理により分解・触媒化する第1処理ユニットA内の液体浄化処理装置4と化学的処理をする第2処理ユニットB内の薬注機8と液体浄化処理装置10から構成され、自動制御盤12をもって一連の行程を制御する。
【0017】
第1処理ユニットAのバクテリアが棲息する微生物担体チップまたはセラミックスを用いて、浄化処理を行う液体浄化処理手段では海水または溶液1を送水ポンプ2と送水管3をかえして投入し微生物的処理を行う液体浄化処理装置内4では微生物担体チップまたはセラミックスである木細片やセラミックス7の吸着濾過作用により、投入された海水または溶液1の90〜95%は吸着濾過処理され、残りの5〜10%の塩分を含んだイオン類、微粒子、微細な有機物質等は第1処理ユニットAである液体浄化処理装置内4の微生物担体チップまたはセラミックスである木細片やセラミックス内7で吸着濾過されると共に、微生物担体チップまたはセラミックスである木細片やセラミックス7を目詰りさせ、その塩分を含んだイオン類、微粒子、微細な有機物質等は液体浄化処理装置内4に設けられている、螺旋状の電熱ヒーター5から熱エネルギーと空気供給機6と繋がっている空気供給口から好気性バクテリアの必要とする空気(酸素)を受けながら最適な好気性の条件を維持確保する事ができ、好気性のエネルギー(発酵熱)を急速に発生させ好気性的処理(微生物的処理)を促進し、海水中の塩分及び微粒子、微細な有機物質等を分解・触媒化する。このような好気性的環境の基で微生物的処理をする。
【0018】
また、第2処理ユニットBでは第1処理ユニットAで微生物的処理された処理水に対し5〜50mg/リットルの範囲で薬注機8を用いて薬剤である次亜塩素酸ソーダを液体浄化処理装置内10に注入点滴する。液体浄化処理装置内10では超多孔質のシリカ(SiO2)材11を主成分とするサイズ2〜25mmに加工調整し1300℃〜1350℃で焼成された加工石の化学吸着作用と添加された次亜塩素酸ソーダが還元・酸化剤となりイオン交換機能を行うことにより、一種の増幅作用がなされ酸化、還元、中和、雑菌等の化学的処理が行われ、または逆浸透膜材を用いた場合においても、第1処理ユニットAの微生物的処理行程で完全に分解・触媒化ができない海水または溶液に含まれる微粒子、微細な有機、無機物質に対しては、濾過材として機能し、配水管13をかえして放流される。
【0019】
また、移動式脱塩浄化処理装置15の底部には移動をより可能としたキャスター14が設けられ、既存の脱塩浄化処理装置等(プラント)の海水または塩分を含む溶液を貯める原水槽若しくは貯留槽に汎用的に設置が可能である。また、既存の固定式脱塩浄化処理装置等(プラント)の改造をしないまま設置が可能である。
【0020】
以上の条件により、移動式脱塩浄化処理装置15によって処理した最終処理水16と、その海水1の水質とを試験項目別に比較して表1に示す。何れの項目も満足すべき結果を示している。
【0021】
【表1】

※但し、原水は海水とする。
BOD:生物化学的酸素要求量
COD:化学的酸素要求量
SS :浮遊物質量
NaCl:塩分
測定器:水質測定器
:塩分計
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態例の脱塩浄化処理装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0023】
A 第1処理ユニット
B 第2処理ユニット
1.海水または塩分を含んだ溶液
2.送水ポンプ
3.送水管
4.液体浄化処理装置
5.ヒーター
6.空気供給機
7.木細片やセラミックス
8.薬注機
9.薬タンク
10.液体浄化処理装置
11.セラミックス材または逆浸透膜材
12.自動制御盤
13.配水管
14.キャスター
15.移動式脱塩浄化処理装置
16.最終処理水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バクテリアが棲息する微生物担体チップまたはセラミックスを用いて、浄化処理を行う液体浄化処理手段と薬剤とセラミックスまたは逆浸透膜材を用いて、浄化処理を行う液体浄化処理手段とを有することを特徴とする移動式脱塩浄化処理装置。
【請求項2】
前記バクテリアが棲息する微生物担体チップまたはセラミックスを用いる液体浄化処理手段は、微生物的処理を行う液体浄化処理装置を配置し、前記薬剤とセラミックスまたは逆浸透膜材を用いる液体浄化処理手段は化学的処理を行う液体浄化処理装置を配置することを特徴とする請求項1記載の移動式脱塩浄化処理装置。
【請求項3】
前記バクテリアが棲息する微生物担体チップが、木細片またはセラミックスを主成分とし、微生物的処理を行う液体浄化処理装置内にはバクテリアの活動を補助するための螺旋状の電熱ヒーターと空気供給機と繋がっている空気供給口を設け、それらの一連の行程を制御する自動制御盤を持つことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の移動式脱塩浄化処理装置。
【請求項4】
前記薬剤に次亜塩素酸ソーダとセラミックスにシリカ(SiO2)材を主成分として化学的処理を行う液体浄化処理装置を配置し、それら一連の行程を制御する自動制御盤を用いていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の移動式脱塩浄化処理装置。
【請求項5】
前記逆浸透膜材を主成分として化学的処理を行う液体浄化処理装置を配置し、それら一連の行程を制御する自動制御盤を用いていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の移動式脱塩浄化処理装置。
【請求項6】
前記バクテリアが棲息する微生物担体チップの木細片が0.2〜5mmまたはセラミックスが2〜5mmのサイズを用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の移動式脱塩浄化処理装置。
【請求項7】
前記セラミックスのサイズが2〜25mmの超多孔質のシリカ(SiO2)材を加工調整し、1300〜1350℃で焼成した加工石を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の移動式脱塩浄化処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−185624(P2007−185624A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7012(P2006−7012)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(599056057)株式会社 省エネルギー・ドット・コム (7)
【Fターム(参考)】