説明

移動端末、移動端末の制御方法、移動端末用コンピュータプログラム、および移動情報収集システム

【課題】収集後のデータ処理に要する時間を少なくすることが可能なデータを収集する移動端末等を提供する。
【解決手段】移動端末1の位置情報を検出する位置情報取得部11と、位置情報とその取得時刻情報とを関連させた通行情報を記憶する通行情報記憶部122と、通行情報記憶部122に記憶されている時間的に連続した通行情報に基づいて、予め定められた解析時間内に道路の同一区間を3回連続して通過した暫定すれ違い困難道路区間を特定する暫定すれ違い困難道路区間推定部121と、暫定すれ違い困難道路区間に関する通行情報の群71〜78を、無線通信を介して情報センターに送信する送信部141とを備える移動端末1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され情報センターに無線ネットワークを介して接続される移動端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、狭い道路において対向車とのすれ違いが困難かどうかを車両の運転者に報知するナビゲーション装置が利用されている。
そのような従来のナビゲーション装置として、例えば、道幅データと自車両の車幅データとに基づいてすれ違い困難な道路区間を解析する手段を備え、解析したすれ違い困難な道路区間を自車両の運転者に報知するナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
上記従来のナビゲーション装置によれば、どこで対向車とすれ違えばよいかを運転者に事前に知らせて、狭い道路を安全に走行するように支援することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−245610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のナビゲーション装置のような解析を行なうためには、詳細な道幅データが必要である。詳細な道幅データを整備するには膨大な測量データを収集する必要があるが、膨大な測量データの処理に時間がかかりすぎるという問題点がある。
本発明は、収集後のデータ処理に要する時間が少なくなるようにデータを収集する移動端末、移動端末の制御方法、移動端末用コンピュータプログラム、および移動情報収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の移動端末は、車両に搭載され情報センターに無線ネットワークを介して接続される移動端末において、前記移動端末の位置情報を検出する位置情報取得部と、前記位置情報とその取得時刻情報とを関連させた通行情報を記憶する通行情報記憶部と、前記通行情報記憶部に記憶されている時間的に連続した前記通行情報に基づいて、予め定められた解析時間内に道路の同一区間を3回連続して通過した暫定すれ違い困難道路区間を特定する暫定すれ違い困難道路区間特定部と、前記暫定すれ違い困難道路区間に関する前記通行情報を、前記無線ネットワークを介して前記情報センターに送信する送信部とを備えたことを特徴とする。
なお、上述した特徴は、本発明の特徴のすべてを列挙したものではなく、これらを要部とする構成(または方法)もまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、予め定められた解析時間内に道路の同一区間を3回連続して通過した暫定すれ違い困難道路区間を特定し、この暫定すれ違い困難道路区間に関する通行情報の群を情報センターに送信することから、収集される通行情報が暫定すれ違い困難道路区間のものに絞られるので、情報センターにおいては収集後のデータの処理に要する時間を少なくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施例の移動情報収集システムの構成を示す図である。
【図2】図1の移動端末の構成を示すブロック図である。
【図3】図1の情報センターの構成を示すブロック図である。
【図4】移動端末の全体の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】移動端末が暫定すれ違い困難道路区間を特定する処理のフローチャートである。
【図6】(a)〜(d)は、対向しあう車両同士がすれ違うときの状況の一例を説明する図である。
【図7】情報センターがすれ違い困難道路区間を推定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】すれ違い困難道路区間を推定する処理の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を具体化した実施形態を説明する。
図1は、本実施例の移動情報収集システムの構成を示す図である。本実施例における移動情報収集システムは、車両4に搭載される移動端末1、およびこの移動端末1と無線通信を介して接続される情報センター2より構成されるものである。
【0009】
図2は、図1の移動端末1の構成を示すブロック図である。
本実施例の移動端末1は、車両4に取り付けが可能で、かつ携帯して持ち運びすることが可能なPND(Personal Navigation Device)であり、位置情報取得部11、計算機12、無線機14、入力部15および表示部16を備えている。
【0010】
位置情報取得部11は、複数のGPS衛星より送信された電波を受信して、電波に含まれるGPSデータに基づいて3次元測位を行ない、移動端末1の現在位置を算出することにより位置情報を検出するGPS受信機である。
【0011】
計算機12は、コンピュータプログラムや処理条件等が予め記憶されているROMやRAM等の内部記憶装置、このコンピュータプログラムを実行するCPU、およびデータの読み書きが可能な小型のハードディスクやフラッシュメモリ等の外部記憶装置を備えた小型のコンピュータである。本実施例の移動端末1における計算機12は、コンピュータプログラムを実行することにより実現される所定の機能を有するユニットを複数備えている。具体的には、計算機12は、位置情報取得部11が検出した位置情報とその取得時刻情報とを関連させた通行情報を記憶する通行情報記憶部121、道路地図情報を含む地図情報を記憶する地図情報記憶部122、後述する暫定すれ違い困難道路区間を特定する暫定すれ違い困難道路特定部123を備えている。
【0012】
無線機14は、送信部141、受信部142およびアンテナ143より構成されるトランシーバである。送信部141は、増幅回路や高調波除去フィルタ等により構成される送信機であり、受信部142は、帯域通過フィルタ等により構成される受信機であり、アンテナ143は、送信部141から出力されたデータを無線信号として基地局に送信するとともに、基地局からの無線信号を受信してデータを受信部142に出力するアンテナである。基地局はインターネットWに接続されており、基地局に送信されたデータはインターネットWを通して情報センター2に送られる。
【0013】
また、入力部15は、キーボードやタッチパネル等の入力デバイスであり、表示部16は、LCD等の画像表示装置である。
【0014】
なお、本実施例の移動情報収集システムは、移動端末1が数多く用いられるという前提で採用されるものであり、通行情報を多く集めることにより、後述する情報センター2にて実際の道路状態をより正確に推定することを目的とするものである。
【0015】
図3は、図1の情報センター2の構成を示すブロック図である。
本実施例の情報センター2は、移動端末1より送信された通行情報を収集する情報収集用サーバであり、通信部21、入力部22、表示部23、および計算機24を備えている。
【0016】
通信部21は、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)や光ファイバーによりインターネットWと接続する機能を備えており、インターネットWから無線通信を介して移動端末1と接続される。
【0017】
入力部22は、キーボードやマウス等の入力デバイスであり、表示部23は、LCD等の画像表示装置である。
【0018】
計算機24は、コンピュータプログラムや処理条件等が予め記憶されているROMやRAM等の内部記憶装置、このコンピュータプログラムを実行するCPU、およびデータの読み書きが可能な大容量のハードディスクやフラッシュメモリ等の外部記憶装置を備えた大型のコンピュータである。本実施例の情報センター2における計算機24は、コンピュータプログラムを実行することにより実現される所定の機能を有するユニットを複数備えている。具体的には、計算機12は、複数の移動端末1から受信した通行情報を収集した統計情報を記憶する統計情報記憶部251、後述する通行制限区間を推定する通行制限区間推定部241を備えている。
【0019】
次に、移動端末1が、対向しあう車両同士のすれ違いが困難な可能性がある暫定すれ違い困難道路区間を特定し、その結果として、暫定すれ違い困難道路区間に関する通行情報を情報センター2に送信する処理について説明する。
図4は、移動端末1の全体の処理の流れを示すフローチャートである。
【0020】
<位置情報の検出>
まず、移動端末1の計算機12は、位置情報取得部11により、移動端末1の位置情報を検出させる処理を実行する(ステップS51)。なお、本実施例においては、位置情報取得部11は、位置情報を検出した時刻を検出する機能も有している。具体的には、本実施例における移動端末1の位置情報取得部11は、数秒間に1回のタイミングで位置情報を検出するようにしており、また、タイミングをユーザが自由に設定調整することを可能なものとしている。
【0021】
<通行情報記憶工程>
ステップS51が終了すると、移動端末1の計算機12は、位置情報と、位置情報を検出したときの時刻とを関連させ、これを通行情報として生成する処理を実行する。本実施例においては位置情報取得部11がGPS受信機であることにより、高層ビル密集地帯や山あい等の道路上では大きな誤差が発生するため、移動端末1の計算機12は、生成した通行情報を、地図情報記憶部122を参照して読み出した地図情報に含まれるいずれかの道路のリンク上に位置するように修正するマップマッチング処理を行なっている(ステップS52)。具体的には、移動端末1の計算機12は、通行情報のうちの位置情報を最近傍の道路上へ垂線を下ろした地点を求めることにより通行情報を修正する処理を行なっている。
【0022】
ステップS52が終了すると、移動端末1の計算機12は、通行情報記憶部121により、この修正した通行情報を通行情報記憶部121に記憶する処理を実行する(ステップS53)。通行情報記憶部121に記憶されているデータは、後述する保持時間の判定により消去されるまで保持され続ける(ステップS54)。
【0023】
<暫定すれ違い困難道路区間に関する通行情報を送信>
ステップS54が終了すると、移動端末1の計算機12は、この通行情報記憶部121に保持されているデータ群を用いてすれ違いが困難な可能性がある暫定すれ違い困難道路区間を特定して送信する処理を実行する(ステップS55)。
【0024】
図5は、移動端末1が暫定すれ違い困難道路区間を特定して送信する処理の流れを示すフローチャートである。移動端末1の計算機12は、暫定すれ違い困難道路区間特定部123により、新しい通行情報が通行情報記憶部121に記憶される毎に、通行情報記憶部121に記憶されている時間的に連続した通行情報を分析し、通行情報記憶部121に記憶されている通行情報のうち、記憶時間が予め定められた解析時間内にある通行情報について、すれ違いが困難な可能性があると推定される時間的に連続した通行情報の群を暫定すれ違い困難道路区間として特定する処理を実行する(ステップS541)。具体的には、移動端末1の計算機12は、暫定すれ違い困難道路区間特定部123により、まず、道路の同一区間を3回連続して通過したという条件を満たしている通行情報の群を、暫定すれ違い困難道路区間であると特定するようにしている。すなわち、本実施例の移動端末1は、対向しあう車両同士がともに前進走行している状況において、一方の車両が、運転者の判断によりすれ違いが困難であると判断して前進走行を終了した地点から車両同士のすれ違いが可能な地点まで後進走行し、他方の車両がすれ違った後に前進走行を再開して、前進走行を終了した地点に再び到達するまでの区間を特定しようというものである。
【0025】
図6は、対向しあう車両同士がすれ違うときの状況の一例を説明する図である。図6(a)は、車両Aおよび車両Bが、道幅が狭い区間Xにほぼ同時に進入した様子を示している(1回目の通過)。また、図6(a)の車両Aおよび車両Bは、それぞれの運転者が、対向する車両を視認して道幅等の状況によりすれ違いが困難であると判断し、停止した状況を示している。図6(b)は、車両Aが後進走行することによって車両Bを道幅が広い区間Yへ誘導した様子を示し(2回目の通過)、図6(c)は、車両Aが再び道幅が狭い区間Xに進入し走行している様子を示している(3回目の通過)。図6(d)は、図6(a)〜(c)の結果として得られる移動軌跡をマップマッチング処理により修正した同一線上の通行情報の群71を示している。通行情報の群71の端点71Bは、通行情報の群71の2回目の通過から3回目の通過への変位点を示している。
【0026】
また、道路の同一区間を3回連続して通過したという条件だけでは、特例ではあるが、ループする道路区間を3回連続して通過したときの移動軌跡についても、すれ違いが困難な可能性がある暫定すれ違い困難道路区間であると判断されてしまうことがある。そこで、本実施例の移動端末1の計算機12は、暫定すれ違い困難道路区間特定部123において、上述した道路の同一区間を3回連続して通過したという条件とは別に、2回目の通過時の通行方向が、1回目および3回目の通過時の通行方向に対して逆方向であるという条件を設定し、これら2つの条件を満たしている場合に、暫定すれ違い困難道路区間であると特定するようにしている。このため、移動端末1の計算機12は、ループする道路区間を3回連続して通過したときの移動軌跡を、すれ違いが困難な可能性がある暫定すれ違い困難道路区間とは特定しないようにすることができる。
【0027】
また、本実施形態の移動端末1は、1回目の通過から2回目の通過へ変位したときに車両が後進走行していることを検出しており、計算機12が、検出したことを示す検出フラグを通行情報に付与している。そして、計算機12は、この検出フラグが付与された通行情報が通行情報記憶部121に記憶されたときに、暫定すれ違い困難道路区間特定部123による処理をスタートすることにしている。このため、本実施形態の移動端末1によれば、車両が後進走行しない場合には暫定すれ違い困難道路区間特定部123による処理が行なわれないので、計算機12への負荷が少なくなり、電力消費量が低減されたものとなっている。なお、本実施形態の移動端末1は、加速度センサを備えており、加速度センサにより車両が後進走行していることを検出するようにしている。また、このような処理を行なうことにより、Uターンしたときの移動軌跡をすれ違いが困難な可能性がある暫定すれ違い困難道路区間とは特定しないようにする効果を奏している。
【0028】
移動端末1の計算機12は、通行情報記憶部121に記憶されている時間的に連続した通行情報が暫定すれ違い困難道路区間を特定したとき(ステップS541:Yes)には、暫定すれ違い困難道路区間に関する通行情報の群を、無線機14の送信部141から無線通信を介して情報センター2に送信する処理を実行する(ステップS542)。また、移動端末1の計算機12は、通行情報記憶部121に記憶されている時間的に連続した通行情報が暫定すれ違い困難道路区間を特定しなかったとき(ステップS541:No)には、ステップS55を終了する。送信された通行情報の群は、情報センター2によって収集され、後述するデータ統計解析によりすれ違いが困難と思われる区間の推定に利用される。
【0029】
本実施例の移動端末1によれば、予め定められた解析時間内に道路の同一区間を3回連続して通過した暫定すれ違い困難道路区間を特定し、この暫定すれ違い困難道路区間に関する通行情報の群を情報センター2に送信することから、収集される通行情報が暫定すれ違い困難道路区間のものに絞られるので、情報センター2においてはデータを記憶するための容量を大きくする必要が無く、収集後のデータ統計解析の時間を短縮することができる。
【0030】
<通行情報を消去>
移動端末1の計算機12には、解析時間よりも長い時間に定められた保持時間が予め設定されており、移動端末1の計算機12は、通行情報記憶部121に記憶されている通行情報について、この保持時間を経過しているかどうかを判定する処理を実行する(ステップS56)。具体的には、移動端末1の計算機12は、保持時間を経過したと判定(ステップS56:Yes)した通行情報を消去する処理を実行する(ステップS57)し、保持時間を経過していないと判定(ステップS56:No)した通行情報についてはステップS54に戻す処理を実行して通行情報記憶部121に保持する。通行情報は、保持時間を経過したと判定される(ステップS56:Yes)まで、上述した暫定すれ違い困難道路区間を特定する処理のステップS55に採用される。なお、新しい通行情報が、次々に通行情報記憶部121へ記憶されていき、その都度、暫定すれ違い困難道路区間を特定する処理が実行されていくが、一度暫定すれ違い困難道路区間であると特定された区間の通行情報は以降の処理には採用されない。
【0031】
本実施例の移動端末1は、解析時間を経過した通行情報を、所定の時間が経過した後に消去していることから、データを記憶するための容量をより小さくすることが可能になり、計算機12の通行情報記憶部121としては小型で軽量なタイプを選定して搭載することができており、携帯して持ち運びやすいものとなっている。
このようにして移動端末1が特定したすれ違いが困難な可能性がある通行情報の群を利用して、情報センター2が、すれ違いが困難と思われるすれ違い困難道路区間を推定する。
【0032】
図7は、情報センター2がすれ違い困難道路区間を推定する処理の流れを示すフローチャートであり、図8は、すれ違い困難道路区間を推定する処理の流れを説明する図である。
【0033】
<通行情報を収集した統計情報を記憶>
情報サーバ2の計算機24は、複数の移動端末1から受信した通行情報の群71〜78を収集した統計情報70を記憶する処理を実行する(ステップS61)。本実施例において統計情報70には、道幅が狭い区間Xの一方側から侵入したときの通行情報の群71〜74、および道幅が狭い区間Xの他方側から侵入したときの通行情報の群75〜78の2通りが収集されている。
【0034】
<すれ違い困難道路区間を推定>
ステップS61が終了すると、情報サーバ2の計算機24は、この統計情報記憶部242に記憶されている統計情報70に基づいて、対向しあう車両同士の通行を制限するすれ違い困難道路区間を推定する処理を実行する(ステップS62)。具体的には、情報サーバ2の計算機24は、統計情報70について、地図情報記憶部243を参照して、道路上における通行情報の群71〜78の存在数を算出し、存在数が予め設定した第1閾値以上となる区間を対向しあう前記車両同士の通行を制限するすれ違い困難道路区間であると推定する。すなわち、本実施例においては、情報サーバ2の計算機24は、統計情報70に基づいて、通行情報の群71〜78がつながっている区間をすれ違い困難道路区間と推定している。
【0035】
本実施例の移動情報収集システムは、すれ違い困難道路区間であると推定する第1閾値を1に規定しており、通行情報の群71〜78の少なくとも1つ以上が存在する区間81,82を、対向しあう車両同士の通行を制限するすれ違い困難道路区間81,82と推定している。
【0036】
このため、本実施例の移動情報収集システムにおいては、通行情報を多くすれば、推定したすれ違い困難道路区間81,82の欠落部分は少なくなると期待される。通行情報を多くするには、移動端末1を数多く用いたり、移動端末1当たりの走行量を増やしたりすればよいので、本実施例の移動情報収集システムは、数多くの通行情報を収集することにより、対向しあう車両同士の通行を制限するすれ違い困難道路区間の抜けを少なくすることが期待されるものである。例えば、図8のすれ違い困難道路区間81,82の間の区間は、本来は道幅が狭い区間Xであってすれ違い困難道路区間となるべきであるが、これはこの道路に関する通行情報の数が8個しかないからであり、さらに多くの通行情報を収集すれば、このようなすれ違い困難道路区間の抜けが少なくなる可能性は高くなる。
【0037】
また、通行情報の群71〜78のうち、後進走行が終了したと思われる2回目の通過から3回目の通過への変位点71B〜78Bは、すれ違い困難道路区間の始点または終点付近であると思われる。ところが実際には、車両4の運転者の運転技術等によりその位置にバラツキが生じ、結果としては推定したすれ違い困難道路区間の出入口の位置は、道幅が広い区間Xから道幅が広い区間Y側へずれた位置になりやすいという傾向が出てくるものである。
【0038】
そこで、情報サーバ2の計算機24は、通行情報における群71〜78の2回目の通過から3回目の通過への変位点71B〜78Bが集中している区間をすれ違い困難道路区間から除くようにしている。具体的には、情報サーバ2の計算機24は、地図情報記憶部243を参照して1つのすれ違い困難道路区間を複数の短区間に区切り、それぞれの短区間について、通行情報における群71〜78の2回目の通過から3回目の通過への変位点71B〜78Bの存在数を算出し、存在数が予め設定した第2閾値以上となる短区間91,92を、すれ違い困難道路区間から除く処理を行なうようにしている。この第2閾値は、第1閾値に比べて高く設定するものであり、本実施例においては、第2閾値を3に規定している。
【0039】
従って、本実施例の移動情報収集システムによれば、2回目の通過から3回目の通過への変位点のバラツキ分を除くようにしたことから、推定したすれ違い困難道路区間の出入口の位置のずれが小さくなるので、すれ違い困難道路区間をより精度よく推定することができる。
【0040】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、改良が可能である。例えば、GPS受信機以外にも、複数の無線基地局より送信された電波を受信して移動端末1の位置を求める無線受信機を用いることもできる。
【0041】
また、本実施例において、暫定すれ違い困難道路区間特定部は、解析時間内という所定の規定内のものについて処理を行なっているが、このような規定に限定せず、例えば、通行情報のマップマッチング処理後の位置が道路の同一リンク上のものについて処理を行なうようにしてもよい。このような処理であれば、すれ違いが困難と思われる区間が、山間の道路等に時折みられる長い道路のリンク内に存在するような、長い区間のものであっても対応することができると期待される。
【0042】
また、本実施例において移動端末1はPNDとしているが、携帯電話やカーナビゲーション装置とすることも可能である。
【0043】
また、本実施例の移動情報収集システムにおいては、すれ違い困難道路区間を推定する処理までで作業を終了しているが、推定したすれ違い困難道路区間に実際に調査員を派遣して地図データを整備するために、この処理の結果を参考にするものとしても構わない。
【符号の説明】
【0044】
1…移動端末、
2…情報センター
4…車両
11…位置情報取得部
121…暫定すれ違い困難道路区間特定部
122…通行情報記憶部
141…送信部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され情報センターに無線通信により接続される移動端末において、
前記移動端末の位置情報を検出する位置情報取得部と、
前記位置情報とその取得時刻情報とを関連させた通行情報を記憶する通行情報記憶部と、
前記通行情報記憶部に記憶されている時間的に連続した前記通行情報に基づいて、所定の規定内に道路の同一区間を3回連続して通過した暫定すれ違い困難道路区間を特定する暫定すれ違い困難道路区間特定部と、
前記暫定すれ違い困難道路区間に関する前記通行情報を、前記無線通信を介して前記情報センターに送信する送信部と
を備えたことを特徴とする移動端末。
【請求項2】
前記規定が予め定められた解析時間であることを特徴とする請求項1に記載の移動端末。
【請求項3】
前記通行情報記憶部は、記憶している前記通行情報を、前記解析時間よりも長い予め定められた保持時間を経過した後に消去することを特徴とする請求項2に記載の移動端末。
【請求項4】
道路情報を含む地図情報を記憶する地図情報記憶部を備え、
前記通行情報記憶部は、前記通行情報を、前記地図情報に含まれるいずれかの道路上に位置するように修正して記憶することを特徴とする請求項1に記載の移動端末。
【請求項5】
前記規定が、修正された位置が道路の同一リンクであることを特徴とする請求項4に記載の移動端末。
【請求項6】
前記暫定すれ違い困難道路区間特定部において、前記暫定すれ違い困難道路区間は、2回目の通過時の通行方向が、1回目および3回目の通過時の通行方向に対して逆方向であることを特徴とする請求項1に記載の移動端末。
【請求項7】
車両に搭載され情報センターに無線通信により接続される移動端末の制御方法において、
コンピュータが前記移動端末の位置情報を検出する位置情報取得工程と、
コンピュータが前記位置情報とその取得時刻情報とを関連させた通行情報を記憶する通行情報記憶工程と、
コンピュータが前記通行情報記憶部に記憶されている時間的に連続した前記通行情報に基づいて、予め定められた解析時間内に道路の同一区間を3回連続して通過した暫定すれ違い困難道路区間を特定する暫定すれ違い困難道路区間特定工程と、
コンピュータが前記暫定すれ違い困難道路区間に関する前記通行情報を、前記無線通信を介して前記情報センターに送信する送信工程と
を含む移動端末の制御方法。
【請求項8】
車両に搭載され情報センターに無線通信により接続される移動端末に含まれるコンピュータに、
前記移動端末の位置情報を検出する処理と、
前記位置情報とその取得時刻情報とを関連させた通行情報を記憶する処理と、
前記通行情報に基づいて、予め定められた解析時間内に道路の同一区間を3回連続して通過した暫定すれ違い困難道路区間を特定する処理と、
前記暫定すれ違い困難道路区間に関する前記通行情報を、前記無線通信を介して前記情報センターに送信する処理と
を実行させるための移動端末用コンピュータプログラム。
【請求項9】
車両に搭載される複数の移動端末、および該移動端末と無線通信により接続される情報センターを含む移動情報収集システムにおいて、
前記移動端末は、
前記移動端末の位置情報を検出する位置情報取得部と、
前記位置情報とその取得時刻情報とを関連させた通行情報を記憶する通行情報記憶部と、
前記通行情報記憶部に記憶されている時間的に連続した前記通行情報に基づいて、所定の規定内に道路の同一区間を3回連続して通過した暫定すれ違い困難道路区間を特定する暫定すれ違い困難道路区間特定部と、
前記暫定すれ違い困難道路区間に関する前記通行情報を、前記無線通信を介して前記情報センターに送信する送信部とを備え、
前記情報センターは、
複数の前記移動端末から受信した前記通行情報を収集した統計情報を記憶する統計情報記憶部と、
前記統計情報に基づいて、前記通行情報が含まれる区間を含むすれ違い困難道路区間を推定するすれ違い困難道路区間推定部と
を備えたことを特徴とする移動情報収集システム。
【請求項10】
前記すれ違い困難道路区間推定部は、前記通行情報における2回目の通過から3回目の通過への変位点が集中している地点を前記すれ違い困難道路区間から除くことを特徴とする請求項9に記載の移動情報収集システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−218387(P2010−218387A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66319(P2009−66319)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】