説明

移動装置

【課題】非常時であっても確実に可動部を停止させることができるとともに装置に損傷を与えること防止する移動装置を提供する。
【解決手段】搬送装置10は、可動部としてのリニアステージ12を移動させるリニア搬送部11と、電力の供給を受けてリニア搬送部11を駆動する駆動手段としてのサーボドライバ13と、サーボドライバ13に電力を供給する電力供給手段としての電力装置14と、強制停止指示が入力される強制停止入力部16と、前記強制停止指示の入力に応じてサーボドライバ13の駆動状態を制御し、リニアステージ12を停止させる制御コンピュータ19と、前記強制停止指示の入力に応じて、前記入力から所定時間の経過後に、サーボドライバ13への電力の供給を停止する電力遮断部32とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部を移動及び停止させる移動停止装置に係り、非常時に可動部を確実に停止させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可動部を移動及び停止させる機能を有し、例えば基板等の物品の搬送及び位置決め等を行う搬送装置等に適用される移動装置として、所定の搬送経路に沿って可動部を移動させる移動手段と、電力の供給を受けて移動手段を駆動する駆動手段と、駆動手段に電力を供給する電力供給手段と、を備えた移動装置が知られている。
【0003】
この種の搬送装置において、操作ミスや障害物等による非常時に用いられる強制停止方法として、移動手段を駆動するための電力供給を遮断し、回生ブレーキを用いて停止させる方法が知られている。
【0004】
一方、リニアモータが搭載されている移動装置や、回生ブレーキが搭載されていない移動装置においては、電力供給を遮断しても慣性によって可動部が移動するため、可動部を確実に停止させることは出来ない。
【0005】
このため、リニアモータを搭載した移動装置や、回生ブレーキが搭載されていない移動装置では、非常時における強制停止方法として、電力供給を遮断せずに、制御手段から、停止指示を駆動手段に送信して停止させる方法が用いられている。すなわち、制御手段からの停止指示によるソフトウェアを介して停止させている。
【0006】
また、リニアモータを搭載した移動装置や、回生ブレーキが搭載されていない移動装置では、非常時に、可動部とガイド部とを機械的に係合させて停止させる方法も用いられている。例えば可動部に開閉可能なメカブレーキを搭載し、非常時にこのメカブレーキを閉状態としてガイド部を把持することで摩擦力により機械的に停止させる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2000−276231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記技術には以下のような問題がある。すなわち、非常時に電源供給を遮断せずにソフトウェアを介して非常停止を行う方法では、例えば駆動手段に不適切なゲイン値が設定されているような場合に、駆動手段が発振状態になり、停止出来ずに暴走する可能性がある。したがって、確実に停止動作を行うことが困難である。
【0008】
一方、メカブレーキのみによる非常停止は、ブレーキの際の機械的な干渉により装置に損傷を与える可能性がある。このため復旧に支障を与える原因となる。
【0009】
そこで、本発明は、非常時であっても確実に可動部を停止させることができるとともに装置に損傷を与えることを防止する移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る移動装置は、所定の経路に沿って可動部を移動させる移動手段と、電力の供給を受けて前記移動手段を駆動する駆動手段と、前記駆動手段に電力を供給する電力供給手段と、強制停止指示が入力される入力手段と、前記強制停止指示の入力に応じて前記駆動手段の駆動状態を制御し、前記移動手段の前記可動部を停止させる制御手段と、前記強制停止指示の入力に応じて、前記入力から所定時間の経過後に、前記駆動手段への電力の供給を停止する電力遮断手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非常時であっても確実に可動部を停止させることができるとともに装置に損傷を与えることを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る移動装置としての搬送装置10について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、各図において説明のため、適宜、構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0013】
図1及び図2に示す搬送装置10は、基板等の搬送対象物Pを載置する可動部としてのリニアステージ12を所定の搬送経路に沿って搬送する移動手段としてのリニア搬送部11と、リニア搬送部11を駆動するとともに駆動状態に応じてリニアステージ12を移動及び停止させる駆動手段としてのサーボドライバ13と、サーボドライバ13へ電力を供給し、あるいは電力を遮断する機能を有する電力装置14と、オペレータにより強制停止入力指示が入力される入力手段としての強制停止入力部16と、強制停止入力部16の入力からの時間をカウントし所定時間の経過後に電力を遮断するよう作動するタイマリレー17と、リニアステージ12を機械的に停止させるメカブレーキ18と、これら各部の動作を制御する制御手段としての制御コンピュータ19と、を備えている。
【0014】
リニア搬送部11は、移動可能なリニアステージ12と、所定の搬送経路に沿ってリニアステージ12を案内して移動させるリニア電動機21とを備えて構成される。
【0015】
リニアステージ12は、例えば基板等の搬送対象物Pを載置する板状のステージ部23と、ステージ部23を支持する支持部24とを備えている。支持部24はリニア電動機21のガイド部26の間に配置されるとともに、このガイド部26に設けられた後述する磁性体ユニット27に対向する磁石ユニット25を有している。
【0016】
磁性体ユニット27との間に発生する磁界によって、リニアステージ12が浮上しながら搬送経路に沿って移動することにより、ステージ部23に載置された基板等の搬送対象物Pを搬送する。
【0017】
リニア電動機21は、一対のガイド部26と、このガイド部26に設けられた一対の磁性体ユニット27で構成されるリニアモ―タと、を備えている。
【0018】
この磁性体ユニット27がサーボドライバ13により励磁されて発生する磁界によって、リニアステージ12を浮上させるとともに磁石ユニット25に推力を与え、リニアステージ12を正方向及び逆方向に走行させ、または停止させる。
【0019】
制御コンピュータ19は、入力部からの情報や所定のプログラムに応じてサーボドライバ13の駆動状態やメカブレーキ18の作動状態を制御する。制御コンピュータ19は、搬送経路上の適宜の位置に設置されてリニアステージ12の通過や存在を検出するセンサ(不図示)から信号を受けて、サーボドライバ13を制御することにより、リニア電動機21の磁性体とリニアステージ12の磁石ユニット25の間で働く磁気力を制御する。
【0020】
サーボドライバ13は、制御コンピュータ19からの信号を受け、電力装置14から電力の供給を受け、対応する磁性体ユニット27を正相励磁または逆相励磁し、リニアステージ12に非接触状態での推力またはこれと逆方向の推力を与えて前進または後進、停止、させる機能を有する。
【0021】
電力装置14は、サーボドライバ13に電力を供給する電源部31と、タイマリレー17に応じて電源部31からの電源供給を遮断する遮断部32と、を備えている。
【0022】
電力遮断部32は、例えば電磁接触器で構成され、通電状態と遮断状態とを切り替えることにより電力の供給状態を切換可能である。すなわち、サーボドライバ13と電源部31との間に設置した電磁接触器の励磁コイルにタイマリレー17が接続されている。例えば、強制停止入力部16の入力後、予め設定された所定時間であるt0が経過すると、電磁接触器が動作し、通電状態から遮断状態に切り替えられる。
【0023】
強制停止入力部16は、押圧等により操作される非常停止ボタン16aを有し、非常停止ボタン16aが押圧操作されることにより非常事態を検知して制御コンピュータ19へ送信するとともに、ボタン押圧によりタイマリレー17を発動させる機能を有する。
【0024】
タイマリレー17は、入力操作に応じて発動し、予め設定された所定の停止時間t0が経過した時点で電力装置14の遮断部32を作動させる。
【0025】
なお、タイマリレー17及び電力遮断部32は、制御コンピュータ19とは独立して動作する。すなわち、強制停止における停止動作は、制御コンピュータ19による通常の停止動作と、この停止動作を確実なものとするための電力遮断部32による停止動作とを併用しており、これらの動作の系は互いに独立している。
【0026】
メカブレーキ18は、リニアステージ12のステージ部23の下方においてガイド部26に対向して設けられ、ガイド部26を把持する閉状態と、ガイド部26を開放する開状態との間で開閉可能に構成されている。閉状態においてガイド部26を把持し、摩擦力によって機械的にリニアステージ12を停止させる。
【0027】
以下本実施形態に係る搬送装置10における非常停止動作について、図3及び図4を参照して説明する。
【0028】
本搬送装置10の非常停止動作では、制御コンピュータ19によるソフトウェアからの非常停止動作と、電源遮断による非常停止動作の2系統の停止動作がそれぞれ独立してなされる。それぞれの停止動作について図3及び図4にフローチャートに示す。
【0029】
図3に示すように、制御コンピュータ19においては、例えば操作ミスや障害物等による非常時にオペレータが非常停止スイッチを押下げることにより非常停止指示を入力する(ST11)と、その直後に、制御コンピュータ19からサーボドライバ13に停止命令を送信する(ST12)。なお、このとき同時に、後述するように、タイマリレー17が発動する(図4で示すST21)。サーボドライバ13はリニア電動機21を逆送励磁させることによりリニアステージ12を停止する(ST13)。
【0030】
ついで、非常停止指示の入力から所定の時間t0が経過した後に、リニアステージ12が停止しているか否かを判定する(ST14)。ST14において、リニアステージ12が停止している場合には非常停止動作を完了する(ST15)。
【0031】
一方、ST14において、リニアステージ12が停止していない場合には、メカブレーキ18を作動させる(ST16)。これにより、メカブレーキ18が閉状態に切り替わることにより、ガイド部26を把持することで摩擦力によりリニアステージ12が機械的に停止する。
【0032】
一方、図4に示すように、ST11において非常停止指示が入力されると、タイマリレー17が発動される(ST21)。タイマリレー17は、入力から一定時間が経過すると、電力装置14への動作停止命令を送信し(ST22)、電磁接触器のコイル端子間の導通を遮断することにより電動機への電源供給を遮断する(ST23)。
【0033】
本実施形態は以下に掲げる効果を奏する。すなわち、非常時に、制御コンピュータ19によるソフトウェアからの非常停止動作と、電源遮断による非常停止動作の2系統の停止動作がそれぞれ独立してなされることにより、制御ソフトウフトウェアに問題がある場合でも確実に停止動作を行うことができる。
【0034】
したがって、例えば、非常停止時またはサーボドライバ13に不適切なゲイン値が設定されて発振した場合に、即座にサーボドライバ13へ停止指示を送信し、設定したタイマ時間内にサーボドライバ13の電力供給を遮断する事で、非常停止することが出来るので、装置の安全性が向上する。また、一定時間で停止していない場合にメカブレーキ18を併用する事で、停止動作を確実なものとすることができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上記実施形態で例示した直線運動に限らず、円弧状等の曲線運動にも適用可能である。
【0036】
さらに、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる搬送装置を示すブロック図。
【図2】同搬送装置のリニア搬送部を概略的に示す斜視図。
【図3】同搬送装置の非常停止時の制御コンピュータによる停止動作を示すフローチャート。
【図4】同搬送装置の非常停止時の電力装置による停止動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0038】
10…搬送装置(移動装置)、11…リニア搬送部(移動手段)
12…リニアステージ(可動部)、13…サーボドライバ(駆動手段)、
14…電力装置(電力供給手段)、16…強制停止入力部、17…タイマリレー、
18…メカブレーキ、19…制御コンピュータ(制御手段)、21…リニア電動機、
23…ステージ部、24…支持部、25…磁石ユニット、26…ガイド部、
27…磁性体ユニット、31…電源部、32…電力遮断部(電力遮断手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の経路に沿って可動部を移動させる移動手段と、
電力の供給を受けて前記移動手段を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段に電力を供給する電力供給手段と、
強制停止指示が入力される入力手段と、
前記強制停止指示の入力に応じて前記駆動手段の駆動状態を制御し、前記移動手段の前記可動部を停止させる制御手段と、
前記強制停止指示の入力に応じて、前記入力から所定時間の経過後に、前記駆動手段への電力の供給を停止する電力遮断手段と、
を備えたことを特徴とする移動装置。
【請求項2】
前記電力遮断手段は、前記制御手段から独立して動作することを特徴とする請求項1記載の移動装置。
【請求項3】
前記移動手段は、所定の搬送経路を構成するガイド部と、前記ガイド部に対して移動する前記可動部とを備え、
前記制御手段に制御され、前記ガイド部と、前記可動部とを機械的に干渉させて前記可動部を停止させるメカブレーキ部と、
前記強制停止指示の入力から所定時間経過後に前記可動部の動作状態を検出する検出部と、
をさらに備え、
前記制御手段は、前記所定時間経過後に前記可動部が停止していない場合に前記メカブレーキ部を作動させ、前記ガイド部と前記可動部とを機械的に干渉させることを特徴とする請求項1記載の移動装置。
【請求項4】
前記ガイド部又は前記可動部は、前記駆動手段に駆動されて磁気力を発生する一対の磁性体を有し、
前記可動部は前記磁性体から生じる磁気力により浮上走行することを特徴とする請求項1記載の移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−115093(P2010−115093A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287928(P2008−287928)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】