説明

移動通信システム、携帯電話端末及びそれらに用いるローノイズアンプ切替え閾値制御方法

【課題】 ローノイズアンプを極力ローゲインモードで使用可能とし、消費電流を削減可能な携帯電話端末を提供する。
【解決手段】 ディジタル信号処理装置12はRSSIレベルを測定し、その測定値に応じてRF装置14に受信ゲイン制御信号やLNAのモード切替え信号を送る。ディジタル信号処理装置12はハイゲイン閾値≧RSSIであることを検出すると、RF装置14のLNAをローゲインモードからハイゲインモードに切替える信号を送り、RF装置14のLNAはローゲインモードからハイゲインモードに切替わる。ディジタル信号処理装置12はローゲイン閾値≦RSSIであることを検出すると、RF装置14のLNAをハイゲインモードからローゲインモードに切替える信号を送り、RF装置14のLNAはハイゲインモードからローゲインモードに切替わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動通信システム、携帯電話端末及びそれらに用いるローノイズアンプ切替え閾値制御方法並びにそのプログラムに関し、特に携帯電話端末において受信レベルによってゲイン切替えを行える仕組みを持つLNA(Low Noise Amplifier:ローノイズアンプ)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LNAのゲインモード切替えの閾値としては、通信レートによらず一定であるため、通信レートが高い場合でも受信感度劣化が発生しない受信レベルが設定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このLNAの一般的な構成を図8に示す。図8において、LNA回路30は、LNA31と、バイアス(Bias)回路32と、スイッチ33と、ロジック(Logic)回路34とから構成されている。
【0004】
LNA回路30においては、ハイゲインモードとローゲインモードとがあり、ハイゲインモード時にLNA31をオンにして信号を増幅させ、S/N(Signal/Noise)比(信号とノイズとの比)を大きくしている。逆に、ローゲインモード時にはLNA31をオフにし、かつLNA31をバイパスする経路(スイッチ33を経由する経路)を持たせ、信号を増幅させずに出力している。
【0005】
よって、受信信号レベルが十分大きい場合には、ローゲインモードにすることで、LNA31をオフにしている分だけの消費電流を削減することができるというメリットがある。そのため、通常、携帯電話端末では、受信レベルが大きい場合、LNA31を極力ローゲインモードとし、消費電流を下げ、逆に受信レベルが小さくなり、つまりS/N比が悪くなり、受信レベルが受信感度レベル付近になると、ハイゲインモードに切替え、S/N比を改善させ、受信感度を向上させている。
【0006】
しかしながら、一般的に、通信レートが高くなると、所要S/N比は厳しくなり、受信感度レベルは通信レートが大きくなるほど悪くなるため、LNA31のローゲインモードからハイゲインモードへの切替えを行う切替え閾値となる受信レベルを、通信レートが低い場合の受信感度レベルから数dB高い受信レベルに設定してしまうと、通信レートが高い場合に、所要S/N比以下になってもLNA31がローゲインモードからハイゲインモードへ切替わらないため、受信感度を大幅に悪化させてしまう。
【0007】
例えば、3GPP(3rd Generation Partnership Project)で標準化された通信方式であるWCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)の場合、図9に示すように、通信レートによって受信感度(参考例)が異なる。つまり、LNA31のローゲインモードで、通信レートが384kbpsにもかかわらず、LNA31のローゲインモードからハイゲインモードへの切替えを行う受信レベルを384kbpsの受信感度レベル以下の、例えば、−90dBmに設定して、受信レベルがー85dBmであった場合、データを正確に復調することができない。
【0008】
逆に、LNA31のローゲインモードからハイゲインモードへの切替えを行う閾値となる受信レベルを、通信レートが高い場合の受信感度レベルから数dB高い受信レベルに設定すると、通信レートが低く、かつ必要十分のS/N比がある場合でも、LNA31はハイゲインモードであるため、電流を無駄に消費させてしまう。
【0009】
【特許文献1】特開2005−223583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来の携帯電話端末では、通信レートが低く、十分受信感度に余裕がある状況でも、LNAがハイゲインモードに切替わる状況が発生し、その分だけ、無駄にLNAで電流が消費されるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、ローノイズアンプを極力ローゲインモードで使用することができ、消費電流を削減することができる移動通信システム、携帯電話端末及びそれらに用いるローノイズアンプ切替え閾値制御方法並びにそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による移動通信システムは、基地局と、前記基地局からの受信レベルによってゲイン切替えを行える仕組みを持つローノイズアンプを含み、低速から高速までの通信レートに対応する携帯電話端末とからなる移動通信システムであって、
前記携帯電話端末は、前記通信レートを測定する手段と、その測定された通信レートに応じて前記ローノイズアンプのゲイン切替えの閾値を変更する制御を行う制御手段とを備えている。
【0013】
本発明による携帯電話端末は、基地局からの受信レベルによってゲイン切替えを行える仕組みを持つローノイズアンプを含み、低速から高速までの通信レートに対応する携帯電話端末であって、
前記通信レートを測定する手段と、その測定された通信レートに応じて前記ローノイズアンプのゲイン切替えの閾値を変更する制御を行う制御手段とを備えている。
【0014】
本発明によるローノイズアンプ切替え閾値制御方法は、基地局からの受信レベルによってゲイン切替えを行える仕組みを持つローノイズアンプを含み、低速から高速までの通信レートに対応する携帯電話端末に用いるローノイズアンプ切替え閾値制御方法であって、
前記携帯電話端末が、前記通信レートを測定する処理と、その測定された通信レートに応じて前記ローノイズアンプのゲイン切替えの閾値を変更する制御を行う制御処理とを実行している。
【0015】
本発明によるプログラムは、基地局からの受信レベルによってゲイン切替えを行える仕組みを持つローノイズアンプを含み、低速から高速までの通信レートに対応する携帯電話端末が実行するプログラムであって、
前記携帯電話端末の制御装置に、前記通信レートを測定する処理と、その測定された通信レートに応じて前記ローノイズアンプのゲイン切替えの閾値を変更する制御を行う処理とを実行させている。
【0016】
すなわち、本発明のローノイズアンプ切替え閾値制御方法は、低速から高速までの通信レートに対応した携帯電話端末が、受信レベルによってゲイン切替えを行える仕組みを持つLNA(Low Noise Amplifier:ローノイズアンプ)を有し、通信レートに応じてそのLNAのゲイン切替えの閾値を変更する制御を行うことを特徴としている。
【0017】
つまり、本発明のローノイズアンプLNA切替え閾値制御方法では、上記の問題を解決するために、通信レートに応じてLNAがローゲインモードからハイゲインモードに切替わる際の閾値となる受信レベルを動的に切替える仕組みを備えているため、受信特性を維持しつつ、消費電力を極力低減することが可能となる。
【0018】
上記のように、本発明のローノイズアンプ切替え閾値制御方法では、通信レートに対応して、LNAがローゲインモードからハイゲインモードに切替わる際の閾値を変更しているため、LNAを極力ローゲインモードで使うことが可能になり、消費電流を削減することが可能となる。
【0019】
また、本発明のローノイズアンプ切替え閾値制御方法では、通信レートに対応して、LNAがローゲインモードからハイゲインモードに切替わる際の閾値を変更しているため、LNAを極力ローゲインモードで使用することが可能になるうえ、通信レートが高い場合でも受信感度劣化が発生しない。
【0020】
さらに、本発明のローノイズアンプ切替え閾値制御方法では、フェージング環境等によって受信レベル変動が大きい場合に、LNAのゲインモード切替えをある時間内での回数を制限することによって、受信感度劣化を抑制することが可能となる。
【0021】
さらにまた、本発明のローノイズアンプ切替え閾値制御方法では、フェージング環境等によって受信レベル変動が大きい場合でも、SIR(Signal to Interference power Ratio)値より受信環境が良い場合、LNAのゲインモード切替えが頻繁に起こることを許容している。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記のような構成及び動作とすることで、ローノイズアンプを極力ローゲインモードで使用することができ、消費電流を削減することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は本発明の第1の実施例による携帯電話端末の構成例を示すブロック図である。図1において、本発明の第1の実施例による携帯電話端末は、CPU(中央処理装置)装置11と、その基本的制御下にあるディジタル信号処理装置12と、アナログ信号処理装置13と、RF(Radio Frequency)装置14と、メモリ装置15と、電源装置16と、バッテリ17と、アンテナ18,19とから構成されている。
【0025】
CPU装置11はディジタル信号処理装置12、アナログ信号処理装置13、RF装置14、メモリ装置15、電源装置16の制御、及びディジタル信号処理装置12とのデータのやり取りを行う。
【0026】
RF装置14は無線信号の変復調を行い、アナログ信号処理装置13はRF装置14からの信号をAD(アナログ/ディジタル)変換し、AD変換した信号をディジタル信号処理装置12に送り、またディジタル信号処理装置12からの信号をDA(ディジタル/アナログ)変換し、DA変換した信号をRF装置14に送る。
【0027】
ディジタル信号処理装置12はアナログ信号処理装置13からの信号に対してディジタル信号処理を行ってその信号を復号し、復号した信号をCPU装置11へ送る。
【0028】
また、ディジタル信号処理装置12はRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度表示信号)レベルを測定し、その測定値に応じてRF装置14に受信ゲイン制御信号やLNA(Low Noise Amplifier:ローノイズアンプ)のモード切替え信号を送る。
【0029】
さらに、ディジタル信号処理装置12は送信信号のパワー制御を行うとともに、SIR(Signal to Interference power Ratio)測定を行う。
【0030】
メモリ装置15には制御情報等が書込まれており、CPU装置11がその制御に応じて読み書きを行うとともに、LNAのモード切替え用閾値データが格納されている。また、メモリ装置15にはCPU装置11が制御を行うためのプログラムやディジタル信号処理装置12が実行するプログラムも格納されている。
【0031】
電源装置16はCPU装置11からの制御にしたがって、CPU装置11、ディジタル信号処理装置12、アナログ信号処理装置13、RF装置14、メモリ装置15への電源供給を行う。バッテリ17は電源装置16経由で装置全体に電圧を供給する。アンテナ18,19においては、図示せぬ基地局からの信号を受信するとともに、携帯電話端末から基地局に信号を送信する。
【0032】
図2は図1のRF装置14の構成を示すブロック図である。図2において、RF装置14は、通常、使用するアンテナ18,19を切替えるアンテナスイッチ(ANTSW)141と、送信信号と受信信号とを分離するフィルタであるデュプレクサ142と、ノイズを極力抑えて信号増幅可能でかつハイゲインモードとローゲインモードとに切替え可能なLNA143と、受信信号以外の信号を減衰させるBPF(Band Path Filter)144と、信号の変復調回路、送信、受信用ゲイン可変アンプ、ベースバンドフィルタ、アンプ、PLL(Phase Locked Loop)シンセサイザからなるRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)145と、送信信号以外の信号を減衰させるBPF146と、高いパワーに増幅可能なアンプであるPA147と、高いパワーの信号を逆流させないアイソレータ148とから構成されている。
【0033】
これら図1及び図2を参照して本発明の第1の実施例によるLNA切替え閾値制御方法について説明する。以下、RSSI及びLNAゲインの求め方を一例として示す。この例では、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)の場合について述べる。
【0034】
WCDMAの場合、受信信号は復調後、I信号とQ信号とに分かれており、最初に、瞬時電力が求められる(RSSI計算#1)。この瞬時電力は、
RX_Level(n)=I(n)2 +Q(n)2
(n=0〜N)
という式で求められる。尚、Nは任意のサンプル数である。
【0035】
次に、平均瞬時電力が求められる(RSSI計算―2)。この平均瞬時電力は、
RX_Level2=1/N・ΣRX_Level(n)
という式で求められる。尚、Σはn=0〜Nの総和である。
【0036】
続いて、平均瞬時電力の値がdB変換される(RSSI計算#3)。dB変換は、
RX_Level_dB=10Log(RX_Level2)
という式で行われる。
【0037】
さらに、アンテナ18から既知レベル(例えば、−60dBmの信号)を入力し、ディジタル信号処理装置12にてRSSI計算#1からRSSI計算#3の計算を行う(RSSI計算#4)。
【0038】
ディジタル信号処理装置12では、LNA143がハイゲインモード時に、
RX_Level補正値
=−60dBm−RX_Level_dB
−LNA_GAIN−RFIC_GAIN
を求め、LNA143がローゲインモード時に、
RX_Level補正値
=−60dBm−RX_Level_dB
−RFIC_GAIN
を求める(RSSI計算#5)。
【0039】
LNA143のゲインであるLNA_GAINは、RSSI計算#5でのローゲインモード時のRSSIとハイゲインモード時のRSSIとの差であり、RFIC_GAINはRFIC145の受信可変アンプのゲインであり、ディジタル信号処理装置12が設定するので、既知の値である。例えば、RX_Level_dBの値が10dBm、LNA_GAIN=20dB、RFIC_GAIN=30dBとなるならば、RX_Level補正値は−10dBとなる。以上によって、
RSSI=RX_Level_dB+RX_Level_Comp
となる。本実施例では、RSSI=−10dBとなる(RSSI計算#6)。
【0040】
次に、LNA143のローゲインモードからハイゲインモードへの切替え方法を示す。当初、LNA143がローゲインモード時で、RSSI測定(RSSI計算#7)を行う。その際、例えば、ハイゲインモード切替えの閾値であるハイゲイン閾値(HIGHGAIN_TH)=−90dBmに設定した状態で、RSSI=−90dBmだった場合、ディジタル信号処理装置12はハイゲイン閾値≧RSSIであることを検出した後、LNA143をローゲインモードからハイゲインモードに切替える信号を送り、LNA143はローゲインモードからハイゲインモードに切替わる。その後のRSSI測定方法は、RSSI計算#6で行う。
【0041】
同様に、LNA143のハイゲインモードからローゲインモードへの切替え方法は、例えばローゲインモード切替えの閾値であるローゲイン閾値(LOWGAIN_TH)=−50dBmに設定した状態で、RSSI=−50dBmだった場合、ディジタル信号処理装置12はローゲイン閾値≦RSSIであることを検出した後、LNA143をハイゲインモードからローゲインモードに切替える信号を送り、LNA143はハイゲインモードからローゲインモードに切替わる。その後のRSSI測定方法は、RSSI計算#7で行う。
【0042】
以上のRSSIの求め方とLNAのローゲインモードからハイゲインモードへの切替わりの関係とに基づき、図3及び図4の制御手順を参照して本発明の一実施例によるLNA切替え閾値制御方法について説明する。本実施例では、3GPP(3rd Generation Partnership Project)で標準化された通信方式であるWCDMAの場合について説明するが、以下では本発明に関する制御手順についてのみを説明する。尚、図3及び図4の制御手順において、ディジタル信号処理装置12の処理はディジタル信号処理装置12がメモリ装置15のプログラムを実行することでも実現可能である。
【0043】
まず、CPU装置11は音声及びデータ通信を行うため、データチャネル(CH)[DPDCH(Dedicated Physical Data CHannel)、DPCCH(Dedicated Physical Control CHannel)]をある通信レート、例えば“384kbps”でオープンするよう、ディジタル信号処理装置12に命令し、その際、メモリ装置15から読出した通信レート(“384kbps”)、ハイゲイン閾値、ローゲイン閾値を設定する(図3のa1)。この例では、ハイゲイン閾値=−60dBm、ローゲイン閾値=−40dBmとする。
【0044】
次に、ディジタル信号処理装置12は、初期設定としてRF装置14のLNA143にローゲインモードを設定し(図3のa2)、データチャネルを使った通信を開始し、RF装置14に対して1スロット(667μs)単位で受信信号へのゲイン制御や、送信信号へのパワー制御を始め(図3のa3)、同時に1スロット間RSSI測定を行う。この時、測定したRSSIは−65dBmとする。
【0045】
ディジタル信号処理装置12はRSSIとハイゲイン閾値の値とを比較し、ハイゲイン閾値≧RSSIであることを検出するため(図3のa4)、次のスロット境界でLNA143をローゲインモードからハイゲインモードに切替え(図3のa5)、1スロット間RSSI測定を行う。この時、測定したRSSIは−35dBmとする。
【0046】
ディジタル信号処理装置12はRSSIとローゲイン閾値の値とを比較し、ローゲイン閾値≦RSSIであることを検出するため(図3のa6)、次のスロット境界でLNA143をハイゲインモードからローゲインモードに切替える(図3のa7)。以降、ディジタル信号処理装置12は上記と同様の制御を行う。
【0047】
次に、CPU装置11は音声及びデータ通信を止めるためにデータチャネルをクローズするよう、ディジタル信号処理装置12に命令する(図3のa8)。ディジタル信号処理装置12はRF装置14に対して1スロット(667μs)単位で受信信号へのゲイン制御や、送信信号へのパワー制御や、1スロット間RSSI測定を止め(図3のa9)、RF装置14のLNA143をローゲインモードに設定する(図3のa10)。
【0048】
その後に、CPU装置11は音声及びデータ通信を行うためにデータチャネルをある通信レート、例えば“12.2kbps”でオープンするよう、ディジタル信号処理装置12に命令し、その際、メモリ装置15から読出した通信レート(“12.2kbps”)、ハイゲイン閾値、ローゲイン閾値を設定する(図3のa11)。この例では、ハイゲイン閾値=−90dBm、ローゲイン閾値=−40dBmとする。
【0049】
ディジタル信号処理装置12はデータチャネルを使った通信を開始し、RF装置14に対して1スロット(667μs)単位で受信信号へのゲイン制御や、送信信号へのパワー制御を始め(図4のa13)、同時に1スロット間RSSI測定を行う。この時、測定したRSSIは−65dBmとする。
【0050】
ディジタル信号処理装置12はRSSIとハイゲイン閾値の値とを比較し、ハイゲイン閾値<RSSIであることを検出するため(図4のa14)、次のスロット境界でLNA143のモード変更は必要ない。1スロット間RSSI測定を行って、その測定結果が−95dBmだった場合、LNA143はローゲインモードなので、RSSI=−95dBmとなる。
【0051】
ディジタル信号処理装置12は、RSSIとハイゲイン閾値の値を比較し、ハイゲイン閾値≧RSSIであることを検出するため(図4のa15)、次のスロット境界でLNA143をローゲインモードからハイゲインモードに切替え(図4のa16)、1スロット間RSSI測定を行う。この時、測定したRSSIは−35dBmとする。
【0052】
ディジタル信号処理装置12はRSSIとローゲイン閾値の値を比較し、ローゲイン閾値≧RSSIであることを検出するため(図4のa17)、次のスロット境界でLNA143をハイゲインモードからローゲインモードに切替える(図4のa18)。以降、ディジタル信号処理装置12は上記と同様の制御を行う。
【0053】
この後に、CPU装置11は音声及びデータ通信を止めるため、データチャネルをクローズするよう、ディジタル信号処理装置12に命令する(図4のa19)。ディジタル信号処理装置12はRF装置14に対して1スロット(667μs)単位で受信信号へのゲイン制御や、送信信号へのパワー制御や、1スロット間RSSI測定を止め(図4のa20)、RF装置14のLNA143をローゲインモードに設定する(図4のa21)。
【0054】
このように、本実施例では、通信レートに応じてLNA143がローゲインモードからハイゲインモードに切替わる際の閾値となる受信レベルを動的に切替える仕組みを備えているため、受信特性を維持しつつ、消費電力を極力低減することができる。また、本実施例では、LNA143を極力ローゲインモードで使うことができ、消費電流を削減することができる。
【実施例2】
【0055】
図5は本発明の第2の実施例によるLNA切替え閾値制御方法の制御手順を示すシーケンスチャートである。尚、本発明の第2の実施例による携帯電話端末及びその携帯電話端末のRF装置各々の構成は、図1及び図2に示す本発明の第1の実施例と同様の構成となっている。これら図1と図2と図5とを参照して本発明の第2の実施例によるLNA切替え閾値制御方法の制御手順について説明する。尚、図5の制御手順において、ディジタル信号処理装置12の処理はディジタル信号処理装置12がメモリ装置15のプログラムを実行することでも実現可能である。
【0056】
本発明の第2の実施例は、ある時間内でのLNA143のモード切替え回数を制限し、フェージング等によって受信レベル変動が大きく、頻繁にモード切替え閾値(ローゲイン閾値、ハイゲイン閾値)を跨ぎ、頻繁にLNA143のモード切替えが発生することによる受信感度劣化を抑制する点で他の実施例と異なる。
【0057】
これは、通信レートが高い場合、ハイゲイン閾値の値が、通信レートが低い時と比べて高くなる一方、大きなレベルの信号を受信した場合でも、信号が飽和しないようにするため、通信レートによってローゲイン閾値の値を高くすることができないため、結果的にモード切替え閾値の間隔が、通信レートが低い時と比べて狭くなることによる。その結果、LNA143のモード切替えが頻繁に発生しやすくなり、特にLNA143のモード切替えが行われるスロット境界付近のデータエラーが発生する可能性があるため、フェージング等の瞬間的な受信レベル変動が大きい時だけ、極力、LNA143のモード切替えを行わないやり方を取るものである。
【0058】
まず、CPU装置11は音声及びデータ通信を行うため、データチャネルをある通信レート(例えば、“384kbps”)でオープンするよう、ディジタル信号処理装置12に命令し、その際、メモリ装置15から読出した通信レート“384kbps”、ハイゲイン閾値(HIGHGAIN_TH)、ローゲイン閾値(LOWGAIN_TH)、モード切替え回数制限値(SW_LIMIT)、モード切替えカウント時間(SW_COUNT_TIME)、モード切替え禁止時間(SW_PROHIBIT_TIME)を設定する(図5のb1)。この例では、ハイゲイン閾値=−60dBm、ローゲイン閾値=−40dBm、モード切替え回数制限値=4回、モード切替えカウント時間=6スロット、モード切替え禁止時間=2スロットとする。
【0059】
ディジタル信号処理装置12は初期設定としてRF装置14のLNA143にローゲインモードを設定し(図5のb2)、データチャネルを使った通信を開始し、RF装置14に対して1スロット(667μs)単位で受信信号へのゲイン制御や、送信信号へのパワー制御を始め、同時に1スロット間RSSI測定を行う(図5のb3)。この時、測定したRSSIは−65dBmとする。
【0060】
ディジタル信号処理装置12はRSSIとハイゲイン閾値の値とを比較し、ハイゲイン閾値≧RSSIであることを検出するため、モード切替え回数を「1」とカウントし(図5のb4)、次のスロット境界でLNA143をローゲインモードからハイゲインモードに切替え(図5のb5)、1スロット間RSSI測定を行う。この時、測定したRSSIは−35dBmとする。
【0061】
ディジタル信号処理装置12はRSSIとローゲイン閾値の値とを比較し、ローゲイン閾値≦RSSIであることを検出するため、モード切替え回数を「2」とカウントし(図5のb6)、次のスロット境界でLNA143をハイゲインモードからローゲインモードに切替え(図5のb7)、1スロット間RSSI測定を行う。この時、測定したRSSIは−65dBmとする。
【0062】
ディジタル信号処理装置12はRSSIとハイゲイン閾値の値とを比較し、ハイゲイン閾値≧RSSIであることを検出するため、モード切替え回数を「3」とカウントし(図5のb8)、次のスロット境界でLNA143をローゲインモードからハイゲインモードに切替え(図6のb9)、1スロット間RSSI測定を行う。この時、測定したRSSIは−35dBmとする。
【0063】
ディジタル信号処理装置12はRSSIとローゲイン閾値の値とを比較し、ローゲイン閾値≦RSSIであることを検出するため、モード切替え回数を「4」とカウントし(図5のb10)、次のスロット境界でLNA143をハイゲインモードからローゲインモードに切替える(図5のb11)。この時点で、6スロット内でモード切替え回数制限値の回数を超えたため、以降2スロットは、モード切り替えを禁止する(ステップB−12)。以降、ディジタル信号処理装置12は上記と同様の制御を行う。
【0064】
このように、本実施例では、ある時間内でのLNA143のモード切替え回数を制限することで、フェージング等によって受信レベル変動が大きく、頻繁にモード切替え閾値を跨ぎ、頻繁にLNA143のモード切替えが発生することによる受信感度劣化を抑制することができる。
【実施例3】
【0065】
図6は本発明の第3の実施例におけるSIRの求め方を示す図であり、図7は本発明の第3の実施例によるLNA切替え閾値制御方法の制御手順を示すシーケンスチャートである。尚、本発明の第3の実施例による携帯電話端末及びその携帯電話端末のRF装置各々の構成は、図1及び図2に示す本発明の第1の実施例と同様の構成となっている。これら図1と図2と図6と図7とを参照して本発明の第3の実施例によるLNA切替え閾値制御方法の制御手順について説明する。尚、図7の制御手順において、ディジタル信号処理装置12の処理はディジタル信号処理装置12がメモリ装置15のプログラムを実行することでも実現可能である。
【0066】
本発明の第3の実施例は、SIRが良好な場合、フェージング等によって受信レベル変動が大きく、頻繁にモード切替え閾値(ローゲイン閾値、ハイゲイン閾値)を跨ぎ、頻繁にLNA143のモード切替えが発生している場合も、LNA143のモード切替え制限を行わない点で他の実施例と異なる。
【0067】
まず、SIRの求め方を示す。WCDMAの場合、受信信号の復調後、I信号とQ信号とに分かれ、I信号とQ信号とは直交しているため、複素平面上で表すとシンボル点ができるが、理想的には、1点にシンボル点が集まるが、実際には干渉波の影響でその点は広がりを持つ。この様子を図6に示す。
【0068】
理想的なシンボル点までの強さをRSCP(Received Signal Code Power:希望波平均信号電力)といい、これは逆拡散後の信号の電力である。広がりの強さ(シンボル点の分散)をISCP[Interference Signal Code Power:干渉波(妨害波とも言う)信号平均電力]といい、逆拡散前と逆拡散後とのシンボル点の差とも言える。そして、SIRとは、RSCPとISCPとの比で導出される。
【0069】
すなわち、SIR=RSCP÷ISCPとなり、干渉波が大きい程、その値は小さくなる。また、RSSIとRSCPとから、ビット辺りの希望信号エネルギとノイズとの比であるEc÷No(=RSCP÷RSSI)をSIRの代わりに使うこともある。この処理は、全てディジタル信号処理装置12で行われる。
【0070】
まず、CPU装置11は音声及びデータ通信を行うため、データチャネルをある通信レート(例えば、“384kbps”)でオープンするよう、ディジタル信号処理装置12に命令し、その際、メモリ装置15から読出した通信レート“384kbps”、ハイゲイン閾値(HIGHGAIN_TH)、ローゲイン閾値(LOWGAIN_TH)、モード切替え回数制限値(SW_LIMIT)、モード切替えカウント時間(SW_COUNT_TIME)、モード切替え禁止時間(SW_PROHIBIT_TIME)、モード切替え許容SIR閾値(SW_SIR_TH)を設定する(図7のc1)。この例では、ハイゲイン閾値=−60dBm、ローゲイン閾値=−40dBm、モード切替え回数制限値=3回、モード切替えカウント時間=6スロット、モード切替え禁止時間=2スロット、モード切替え許容SIR閾値=−16dBとする。
【0071】
ディジタル信号処理装置12は初期設定としてRF装置14のLNA143にローゲインモードを設定し(図7のc2)、データチャネルを使った通信を開始し、RF装置14に対して1スロット(667μs)単位で受信信号へのゲイン制御や、送信信号へのパワー制御を始め、同時に1スロット間RSSI測定、SIR測定を行う(図7のc3)。この時、測定したRSSIは−65dBmとする。
【0072】
ディジタル信号処理装置12はRSSIとハイゲイン閾値の値とを比較し、ハイゲイン閾値≧RSSIであることを検出するため、モード切替え回数を「1」とカウントし(図7のc4)、次のスロット境界でLNA143をローゲインモードからハイゲインモードに切替え(図7のc5)、1スロット間RSSI測定を行う。この時、測定したRSSIは−35dBmとする。また、このスロットにてLNA143のモード切替えが起こっているため、ディジタル信号処理装置12はこのスロットのSIR値を保管しておく。
【0073】
ディジタル信号処理装置12はRSSIとローゲイン閾値の値とを比較し、ローゲイン閾値≦RSSIであることを検出するため、モード切替え回数を「2」とカウントし(図7のc6)、次のスロット境界でLNA143をハイゲインモードからローゲインモードに切替え(図7のc7)、1スロット間RSSI測定を行う。この時、測定したRSSIは−65dBmとする。また、このスロットにてLNA143のモード切替えが起こっているため、ディジタル信号処理装置12はこのスロットのSIR値を保管しておく。
【0074】
ディジタル信号処理装置12はRSSIとハイゲイン閾値の値とを比較し、ハイゲイン閾値≧RSSIであることを検出するため、モード切替え回数を「3」とカウントし(図7のc8)、次のスロット境界でLNA143をローゲインモードからハイゲインモードに切替え(図7のc9)、1スロット間RSSI測定を行う。この時、測定したRSSIは−35dBmとする。また、このスロットにてLNA143のモード切替えが起こっているため、ディジタル信号処理装置12はこのスロットのSIR値を保管しておく。
【0075】
ディジタル信号処理装置12はRSSIとローゲイン閾値の値とを比較し、ローゲイン閾値≦RSSIであることを検出するため、モード切替え回数を「4」とカウントし(図7のc10)、次のスロット境界でLNA143をハイゲインモードからローゲインモードに切替える(図7のc11)。
【0076】
続いて、ディジタル信号処理装置12は次のスロットのSIR測定を行い、モード切替えが発生したスロットのSIR値の平均値(SW_SIR_AVE)を求め、その値(SW_SIR_AVE)をモード切替え許容SIR閾値(SW_SIR_TH)と比較する。ディジタル信号処理装置12は、SW_SIR_AVE>SW_SIR_THならば、モード切替え回数をクリアし、SW_SIR_AVE≦SW_SIR_THならば、この時点で、6スロット内でモード切替え回数制限値の回数を超えたため、以降2スロットは、モード切替えを禁止する(図7のc12)。以降、ディジタル信号処理装置12は上記と同様の制御を行う。
【0077】
このように、本実施例では、SIRが良好な場合、フェージング等によって受信レベル変動が大きく、頻繁にモード切替え閾値を跨ぎ、頻繁にLNA143のモード切替えが発生している場合も、LNA143のモード切替え制限を行わないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施例による携帯電話端末の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のRF装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施例によるLNA切替え閾値制御方法の制御手順を示すシーケンスチャートである。
【図4】本発明の第1の実施例によるLNA切替え閾値制御方法の制御手順を示すシーケンスチャートである。
【図5】本発明の第2の実施例によるLNA切替え閾値制御方法の制御手順を示すシーケンスチャートである。
【図6】本発明の第3の実施例におけるSIRの求め方を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施例によるLNA切替え閾値制御方法の制御手順を示すシーケンスチャートである。
【図8】従来のLNAの一般的な構成を示す図である。
【図9】通信レートによって受信感度が異なる例を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
11 CPU装置
12 ディジタル信号処理装置
13 アナログ信号処理装置
14 RF装置
15 メモリ装置
16 電源装置
17 バッテリ
18,19 アンテナ
141 アンテナスイッチ
142 デュプレクサ
143 LNA
144,146 BPF
145 RFIC
147 PA
148 アイソレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、前記基地局からの受信レベルによってゲイン切替えを行える仕組みを持つローノイズアンプを含み、低速から高速までの通信レートに対応する携帯電話端末とからなる移動通信システムであって、
前記携帯電話端末は、前記通信レートを測定する手段と、その測定された通信レートに応じて前記ローノイズアンプのゲイン切替えの閾値を変更する制御を行う制御手段とを有することを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
前記携帯電話端末は、前記ローノイズアンプのゲイン切替え回数を計数する計数手段を含み、
前記制御手段は、前記計数手段の計数値を基に一定時間内での前記ローノイズアンプのゲイン切替え回数を制限することを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項3】
前記携帯電話端末は、SIR(Signal to Interference power Ratio)値の測定を行う手段を含み、
前記制御手段は、その測定されたSIR値によって受信環境が良いことを検出した場合、前記ローノイズアンプのゲイン切替え回数の制限を解除することを特徴とする請求項2記載の移動通信システム。
【請求項4】
基地局からの受信レベルによってゲイン切替えを行える仕組みを持つローノイズアンプを含み、低速から高速までの通信レートに対応する携帯電話端末であって、
前記通信レートを測定する手段と、その測定された通信レートに応じて前記ローノイズアンプのゲイン切替えの閾値を変更する制御を行う制御手段とを有することを特徴とする携帯電話端末。
【請求項5】
前記ローノイズアンプのゲイン切替え回数を計数する計数手段を含み、
前記制御手段が、前記計数手段の計数値を基に一定時間内での前記ローノイズアンプのゲイン切替え回数を制限することを特徴とする請求項4記載の携帯電話端末。
【請求項6】
SIR(Signal to Interference power Ratio)値の測定を行う手段を含み、
前記制御手段は、その測定されたSIR値によって受信環境が良いことを検出した場合、前記ローノイズアンプのゲイン切替え回数の制限を解除することを特徴とする請求項5記載の携帯電話端末。
【請求項7】
基地局からの受信レベルによってゲイン切替えを行える仕組みを持つローノイズアンプを含み、低速から高速までの通信レートに対応する携帯電話端末に用いるローノイズアンプ切替え閾値制御方法であって、
前記携帯電話端末が、前記通信レートを測定する処理と、その測定された通信レートに応じて前記ローノイズアンプのゲイン切替えの閾値を変更する制御を行う制御処理とを実行することを特徴とするローノイズアンプ切替え閾値制御方法。
【請求項8】
前記携帯電話端末が、前記ローノイズアンプのゲイン切替え回数を計数する計数処理を実行し、
前記制御処理において、前記計数処理での計数値を基に一定時間内での前記ローノイズアンプのゲイン切替え回数を制限することを特徴とする請求項7記載のローノイズアンプ切替え閾値制御方法。
【請求項9】
前記携帯電話端末が、SIR(Signal to Interference power Ratio)値の測定を行う処理を実行し、
前記制御処理において、その測定されたSIR値によって受信環境が良いことを検出した場合、前記ローノイズアンプのゲイン切替え回数の制限を解除することを特徴とする請求項8記載のローノイズアンプ切替え閾値制御方法。
【請求項10】
基地局からの受信レベルによってゲイン切替えを行える仕組みを持つローノイズアンプを含み、低速から高速までの通信レートに対応する携帯電話端末が実行するプログラムであって、
前記携帯電話端末の制御装置に、前記通信レートを測定する処理と、その測定された通信レートに応じて前記ローノイズアンプのゲイン切替えの閾値を変更する制御を行う処理とを実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−53873(P2008−53873A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225971(P2006−225971)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】