説明

穀物搬送装置

【課題】従来技術では、穀物の搬送始端側にのみエアノズルを設ける構成であるため、大量のエアを強力に吹き込む必要があり、エア少量では確実な除去作用が期待できない課題がある。
【解決手段】本発明は、穀物の搬送樋(11)内に横送り式の搬送ラセン(12)を内装し、複数のエアノズル(15N1),(15N2),(15N3)を搬送経路の搬送上手側から下手側にわたって複数個所に設けてエアを複数個所から吹き付けるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送樋内の搬送ラセンにより穀物を搬送する穀物搬送装置に関し、収穫機、乾燥機、籾摺機等に利用される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送樋内にエアを吹き込んでラセン底部に残留した穀粒を除去する残粒除去手段を備えた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−55279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、穀物の搬送始端側にのみエアノズルを設ける構成であるため、大量のエアを強力に吹き込む必要があり、エア少量では確実な除去作用が期待できない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、穀物の搬送樋(11)内に横送り式の搬送ラセン(12)を内装し、複数のエアノズル(15N1),(15N2),(15N3)を搬送経路の搬送上手側から下手側にわたって複数個所に設けてエアを複数個所から吹き付けるように構成してあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、受入口(13)より搬送樋(11)内に投入された穀物は、回転する搬送ラセン(12)によって始端側から終端側に向けて搬送され、終端の出口(14)より排出される。
【0007】
搬送樋(11)の底部に残留した穀物を除去する場合には、搬送経路の上手側から下手側にわたって複数個所に設けられた複数のエアノズル(15N1),(15N2),(15N3)からエアを噴出し、搬送樋内の底部にエアを吹き付けることによって残留穀物が除去される。
【0008】
要するに、この搬送経路内へは複数個所からエアを吹き付けるので、少量のエアでもって確実に残留穀物を除去することができる。
請求項2記載の本発明は、請求項1において、前記搬送樋(11)の底部に凹部(16)を形成して設け、該凹部(16)内にエアノズル(15N2),(15N3)を内装してあることを特徴とする。
【0009】
上記構成によると、搬送樋(11)の底部に形成した凹部(16)内にエアノズルを内装するため、搬送途中部にあってもラセンに当接しない適切な位置にノズルを設けることができる。
【0010】
請求項3記載の本発明は、請求項2において、前記凹部(16)は横長に形成すると共に、該凹部の搬送上手側にエアノズル(15N2),(15N3)を設け、エアノズルの噴出口部(15a)を搬送下手側に向けると共に、該凹部の搬送下手部に傾斜面(17)を設けてあることを特徴とする。
【0011】
上記構成によると、エアが搬送樋内における搬送下手側に向かって噴出しやすく穀物を効果的に除去することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上要するに、請求項1の本発明によれば、搬送経路内に複数個所からエアを吹き付けるので、少量のエアでもってラセン底に残留する穀物を確実に除去することができる。
請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、搬送樋の底部に形成した凹部内にエアノズルを内装するため、搬送途中部にあってもラセンに当接しない位置でのノズル設定が容易に行える。
【0013】
請求項3の本発明によれば、請求項2の発明効果を奏するものでありながら、搬送樋内に噴出するエアが搬送下手側に向かって噴出しやすくなり、穀物を効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】籾摺機の側面図
【図2】籾摺施設の穀物処理の流れを示す展開図
【図3】風選部の側面図
【図4】穀物搬送装置の側断面図
【図5】同上要部の平面図
【図6】同上要部の背面図
【図7】昇降機の一部の側面図
【図8】同上一部の背面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、揺動選別式籾摺機を示し、図2は、各部の構造及び穀物処理の流れを示す。1は籾タンク、2は籾摺部、3は風選部、4は揺動選別部、5は籾・しいな戻し昇降機、6は籾選別昇降機、7は籾選別機、8は粒選別昇降機、9は粒選別機を示す。
【0016】
籾摺部2は、籾タンク1から流下する籾を一対の脱浮ロール2aによって籾摺されると共に、摺り落された処理物は下方の風選部3で風選されるようになっている。
風選部3は、図3に示すように、籾摺部2からの処理物を風選する風選路3aと、風選路3aに選別風を送る圧風ファン3bと、穀物の1番物や2番物を受ける1番ラセン樋3c及び2番ラセン樋3dと、籾殻を受ける籾殻受樋3eや籾殻搬送バルブ3fなどを備えている。
【0017】
図2に示すように、籾選別機7からの穀物(混合米)を受け入れて横搬送した後、籾選別昇降機6に還元する搬送樋11とこの搬送樋内に内装軸架する横送り式搬送ラセン12とからなる穀物搬送装置10が備えられている。
【0018】
穀物搬送装置10の詳細については、図4〜図6に示すような構造になっている。すなわち、穀物受入口13より搬送樋11内の上手側(始端側)に投入された穀物は、回転する搬送ラセン12により搬送樋11内を下手側(終端側)に向かって搬送され、終端の出口14より排出されて籾選別昇降機6に還元されるようになっている。
【0019】
穀物の搬送樋11には、搬送樋の底部に残留する穀物を除去するための複数のエアノズル15N1,15N2,15N3…が搬送経路の搬送上手側から下手側にわたって複数個所に設けられ、エアを複数個所から搬送樋底面に吹き付けて残留する穀物を除去するように構成されている。
【0020】
エアノズル15N1は、搬送樋11の底面上に設置され、エアノズル15N2,15N3は、搬送樋11の底面を下方に凹入形成した凹部16内に内装されている。
また、前記凹部16は、横長、つまり、搬送方向に長く形成され、そして、該凹部16の搬送方向上手側にエアノズル15N2,15N3が内装されるようになっており、各エアノズルの噴出口15aは、噴出風が搬送方向上手側から下手側に向かって噴出されるように指向されている。また、前記凹部16の搬送方向下手側部には、該凹部の底面から搬送樋の底面に向けて搬送下手側が上位にすべく傾斜する昇り傾斜面17が設けられている。
【0021】
次に複数のエアノズル15N1,15N2,15N3が噴き出す制御のタイミングについて説明する。
まず、搬送上手側のエアノズル15N1と搬送途中のエアノズル15N2が搬送ラセン12が駆動した状態で所定時間A(例えば30秒)噴出して、搬送上手側の残留穀物を搬送途中部へ搬送し、次いで搬送途中部のエアノズル15N2で残留穀物を搬送下手側へ搬送する。この間搬送下手側のエアノズル15N3は噴出しを停止している。
【0022】
前記所定時間Aが経過すると、搬送上手側のエアノズル15N1の噴出しを停止し、搬送途中のエアノズル15N2と搬送下手側のエアノズル15N3の噴出しを所定時間B(例えば30秒)行い、搬送途中及び搬送下手側の穀物を搬送樋11から排出する。
【0023】
前記所定時間Bが経過すると、搬送途中部のエアノズル15N2の噴出しを停止し、搬送下手側のエアノズル15N3の噴出しを所定時間C(例えば20秒)行い、搬送下手側に集まった穀物を搬送樋11外に排出する。
【0024】
かくして、一度に全てのエアノズルを吹き出すのではなく、必要なエアノズルを順次使用することで少ないエア量で最大限の残留穀物除去効果を得られる。
各エアノズル15N1〜15N3へのエア供給は、籾摺部2の近くに設置されたコンプレッサ18によってエアを供給するようになっている。
【0025】
図2に示すように、籾選別機7の仕上玄米の出口部に正逆転可能な無端コンベア20を配置して設け、この無端コンベアの正逆転によって循環と排出の切り替えが行えるようにしている。仕上げの循環、排出の切り替えは方向弁が一般的であるが、弁とケースの隙間などに塵埃や屑米などが挟まったりして動作が不確実となるので、本例ではこれを解消することができる。また、無端コンベア20上にイメージセンサ21を設けて、画像(数値)の変化で排出を循環へ、また、循環を排出へと切り替えることができる。これによると、上方から落ちてくる玄米が昇降機へ入るまでにはタイムラグがあり、製品への籾混入を確実に防止することができる。
【0026】
なお、無端コンベア上に籾玄米識別センサを設けることによって、該センサからの信号によりレベル表示や、変化ありの場合には確認の注意を促したり、仕上の経路を循環に自動切換えが行えるように構成することもできる。
【0027】
次に、図7、図8に示す昇降機のエアブローシステムについて説明する。
昇降機ケース24の下部に架設したバケットベルト25の張設輪26をテンション機構27により上下に移動させてバケットベルトを緊張調節する方式の昇降機において、穀物供給漏斗28側のシャッター29の下方側には、張設輪26の下方側に向けてエアを吹き出す第1エアノズル30と、第1エアノズル30の上側で該第1エアノズルの吹出し口30aを狙った場所に第2エアノズル31を配置して設けた構成としている。つまり、第2エアノズル31の吹出し口31aからの吹出し風は第1エアノズルの吹出し口30aに向けて吹き出されるようになっている。
【0028】
下部テンションによる場合は、張設輪の位置によっては大量に残粒が発生し、エアノズルの吹出し口が残留した穀物に埋もれてしまいエアブローによる効果が発揮できない。本例による場合は、下部張設輪の位置に拘わらず、上段の第2エアノズルからの吹出しエアにより下段の第1エアノズルの吹出し口が穀物の溜まった部分の上になるので、エアによる吹き飛ばしの効果を確実にするこができる。
【0029】
籾摺機のメンテナンス制御において、籾摺機の揺動選別部の軸受部にセンサを設け、このセンサが僅かな異常消耗状態を検知した時には、以後、何時間程度使用できるかの予測時間を表示し、その後の波形及びレベルの変化で、警報となるか、再度予測時間として表示させるかを制御するように構成することができる。これによれば、所期状態でも交換が必要か非かを自動的に検知でき、管理者は所期段階で部品を容易できるので、壊れる前に交換可能となる。予めの予測時間が把握できるので、運営状態を判断してメンテすることができ、メンテナンス効率が良い。
【0030】
また、上記構成において、上記のセンサが異常状態を検知した場合には、警告表示を行い、その後レベル変動が大きくなると警報を発し、そして、停止させる段階的な制御が行えるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0031】
10 穀物搬送装置 11 穀物搬送樋
12 搬送ラセン 15N1 エアノズル
15N2 エアノズル
15N3 エアノズル
16 凹部
17 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物の搬送樋(11)内に横送り式の搬送ラセン(12)を内装し、複数のエアノズル(15N1),(15N2),(15N3)を搬送経路の搬送上手側から下手側にわたって複数個所に設けてエアを複数個所から吹き付けるように構成してあることを特徴とする穀物搬送装置。
【請求項2】
前記搬送樋(11)の底部に凹部(16)を形成して設け、該凹部(16)内にエアノズル(15N2),(15N3)を内装してあることを特徴とする請求項1記載の穀物搬送装置。
【請求項3】
前記凹部(16)は横長に形成すると共に、該凹部の搬送上手側にエアノズル(15N2),(15N3)を設け、エアノズルの噴出口部(15a)を搬送下手側に向けると共に、該凹部の搬送下手部に傾斜面(17)を設けてあることを特徴とする請求項2記載の穀物搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−35936(P2012−35936A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175430(P2010−175430)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】