説明

積層ウエブの原反ロール、積層ウエブの積層方法、包装袋及び包装体

【課題】 接着剤を全く使用しない水接着であるか接着剤を補助的に微量使用し水接着が主体であることにより、水接着が主体である全くと言って良いほど接着剤のランニングコストがかからないこと。
【解決手段】 単層フィルム又は積層ウエブと、透湿性フィルムを用いかつ両方の被接着面にコロナ放電等の濡れ性を付与する処理を施した一対のウエブを、両方の被接着面の全面に形成する水膜により接着してロール状に巻いてエージングされ該エージング中に前記水膜が前記透湿性の大きいフィルム層を通じて外部へ拡散して消失し接着していることにより包材としての必要な接着強度を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、接着剤を全く使用しない水接着であるか接着剤を補助的に微量使用し水接着が主体である積層ウエブの原反ロール、積層ウエブの積層方法、包装袋及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単層フィルム同士、又は単層フィルムと積層フィルム、又は積層フィルム同士の積層のための接着には、一方のフィルムの被接着面に溶剤系接着剤または水性接着剤を塗布し乾燥により溶剤又は水を蒸散させて、他方のフィルムの被接着面と重ね合わせて転圧を加えて巻き取り、エージングを行っていた。フィルム同士の積層のための接着には、例えば、特許文献1に示すように、接着剤が必ず使用されている。
【0003】
フィルム同士の積層において溶剤系接着剤を使用する場合は、大気汚染の原因になり、大気圏で分解して地球温暖化の原因となる炭酸ガスを生成して堆積することになり、積層ウエブの被接着面に残留して被包装物に臭いを与えるという問題点が指摘されている。また溶剤系接着剤の使用は、例えば埼玉県条例によれば揮発したトルエン等の溶剤の回収を条件としており、回収できないときは使用不可とする、規制になっている。そこで、水性接着剤の使用が進んでいるが、水が溶媒であり、バインダーポリマーの種類が限定されてくるという問題点が指摘されている。
さらに溶剤系接着剤と水性接着剤は、いずれの場合も、500mm幅で1000mの面積に対して5リットル位の量を使用しており、包材の積層工程において大きなコストを占めている。
【特許文献1】特開2004−237668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、接着剤を全く使用しない水接着であるか接着剤を補助的に微量使用し水接着を主体とすることによって全くと言って良いほど接着剤のランニングコストがかからない積層ウエブの原反ロール、積層ウエブの積層方法、包装袋及び包装体を提供することを目的としている。
又、本発明は、接着剤を全く使用しない水接着であるか接着剤を補助的に微量使用し水接着が主体であることにより、大気汚染の原因を解消し、地球温暖化の原因となる炭酸ガスを生成する原因物質の排出を無くし、被包装物に臭いを与えることになっている原因物質が積層ウエブの接着面に残留するのを無くし、揮発したトルエン等の溶剤の回収を条件としている埼玉県条例の規制に見られるように溶剤系接着剤の使用の撤廃に対応することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明にかかる積層ウエブの原反ロールは、単層フィルム又は積層ウエブと、透湿性フィルムとを積層した積層ウエブの原反ロールであって、両方の被接着面に濡れ性処理を施し両方の被接着面の全面に形成する水膜を介在させ残留空気を無くして密着しロール状に巻きエージングして該エージング中に前記水膜が前記透湿性フィルム層を通じて外部へ拡散して消失し包材としての必要な接着強度を有していることを特徴とする。ここで濡れ性処理は、例えばコロナ放電等により形成することができる。
【0006】
請求項2に記載の発明にかかる積層ウエブの積層方法は、単層フィルム又は積層ウエブと透湿性フィルムである一対のウエブを水によって接着して包材に必要な接着強度を有す
る積層ウエブとするウエブ積層方法であって、前記一対のウエブの少なくとも一方の被接着面となるフィルム層には透湿性フィルムを用いかつ両方の被接着面に濡れ性処理を施し、各ウエブの密着面に気泡の残留を排除するための水膜を形成してから一対の転圧ロール間に通して密着・加圧して前記被接着面間の水膜の水分を絞り取りその後ロール状に巻き取り、さらにその後にエージングを行うことにより前記被接着面間に残留する水膜を前記透湿性フィルムを通じて外部に拡散させて被接着面同士に包材に必要な接着強度を得ることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明にかかる積層ウエブの積層方法は、請求項1に記載の積層ウエブの原反ロールの製造技術に関する構成である。
請求項1と2に記載の発明は、一対のウエブのいずれの被接着面にも印刷を行わないことを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明にかかる積層ウエブの原反ロールは、単層フィルム又は積層ウエブと、透湿性フィルムとを積層した積層ウエブの原反ロールであって、両方の被接着面に濡れ性処理を施した一対のウエブを、被接着面間の少なくとも両側縁が線状に又は被接着面の全域にドット状に塗布した接着剤により接着しているとともに、両方の被接着面の全面に形成する水膜により接着してロール状に巻いてエージングされ該エージング中に前記水膜が前記透湿性フィルム層を通じて外部へ拡散して消失し接着していることにより包材としての必要な接着強度を有していることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明にかかる積層ウエブの積層方法は、単層フィルム又は積層ウエブと透湿性フィルムである一対のウエブを水によって接着して包材に必要な接着強度を有する積層ウエブとするウエブ積層方法であって、前記一対のウエブの少なくとも一方の被接着面となるフィルム層には透湿性フィルムを用いかつ両方の被接着面に濡れ性処理を施すとともに、接着剤を一方又は両方の前記ウエブの被接着面の少なくとも両側縁に線状に又は被接着面の全域にドット状に塗布し、各ウエブの密着面に気泡の残留を排除するための水膜を形成してから一対の転圧ロール間に通して密着・加圧して前記被接着面間の水膜の水分を絞り取りその後ロール状に巻き取り、さらにその後にエージングを行うことにより前記被接着面間に残留する水膜を前記透湿性の大きいフィルム中に浸透拡散させて被接着面同士に包材に必要な接着強度を得ることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明にかかる積層ウエブの積層方法は、請求項3に記載の積層ウエブの原反ロールの製造技術に関する構成である。
請求項3と4に記載の発明は、一対のウエブのいずれの被接着面にも印刷を行わないことを特徴としているとともに、一対のウエブのいずれかの被接着面に接着剤を微量に塗布して補助的な接着を行ってエージング中に水膜が透湿性フィルム層を通じて外部へ拡散して消失し接着面の端縁からの蒸散と同端縁から接着面への空気の侵入を皆無にしている特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明にかかる積層ウエブの原反ロールは、単層フィルム又は積層ウエブと、透湿性フィルムとを積層した積層ウエブの原反ロールであって、いずれか一方のウエブの被接着面に印刷が行われていて印刷が行われていない方のウエブの被接着面となるフィルム層には透湿性フィルムを用いかつ印刷が行われている被接着面と印刷が行われていない被接着面のいずれにも濡れ性処理を施した一対のウエブを、両方の被接着面の全面に形成する水膜により転圧をかけて接着して積層ウエブとしてロール状に巻いてエージングして該エージング中に前記水膜を前記透湿性フィルム層を通じて外部へ拡散していることにより包材としての必要な接着強度を有していることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明にかかる積層ウエブの積層方法は、単層フィルム又は積層ウエブ
と透湿性フィルムであり、いずれか一方のウエブの被接着面に印刷が行われている一対のウエブを水によって接着して包材に必要な接着強度を有する積層ウエブとするウエブ積層方法であって、被接着面に印刷が行われていない方のウエブの被接着面となるフィルム層には透湿性フィルムを用いかつ印刷が行われている被接着面と印刷が行われていない被接着面のいずれにも濡れ性処理を施し、各ウエブの密着面に気泡の残留を排除するための水膜を形成してから一対の転圧ロール間に通して密着・加圧して前記被接着面間の水膜の水分を絞り取りその後ロール状に巻き取り、さらにその後にエージングを行うことにより前記被接着面間に残留する水膜を前記透湿性フィルム中に浸透拡散させて被接着面同士に包材に必要な接着強度を得ることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明にかかる積層ウエブの積層方法は、請求項5に記載の積層ウエブの原反ロールの製造技術に関する構成である。
請求項5と6に記載の発明は、一対のウエブのいずれかの被接着面に印刷を行っていることを特徴としている。印刷は裏刷りと表刷りの場合がある。
【0014】
請求項7に記載の発明にかかる積層ウエブの原反ロールは、単層フィルム又は積層ウエブと、透湿性フィルムとを積層した積層ウエブの原反ロールであって、いずれか一方のウエブの被接着面に印刷が行われていて印刷が行われていない方のウエブの被接着面となるフィルム層には透湿性フィルムを用いかつ印刷が行われている被接着面と印刷が行われていない被接着面のいずれにも濡れ性処理を施し接着剤を一方又は両方の前記ウエブの被接着面の少なくとも両側縁に線状に又は被接着面の全域にドット状に塗布した一対のウエブを、両方の被接着面の全面に形成する水膜により転圧をかけて接着して積層ウエブとしてロール状に巻いてエージングして該エージング中に前記水膜を前記透湿性フィルム層を通じて外部へ拡散していることにより包材としての必要な接着強度を有していることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明にかかる積層ウエブの積層方法は、単層フィルム又は積層ウエブと透湿性フィルムであり、いずれか一方のウエブの被接着面に印刷が行われている一対のウエブを水によって接着して包材に必要な接着強度を有する積層ウエブとするウエブ積層方法であって、被接着面に印刷が行われていない方のウエブの被接着面となるフィルム層には透湿性フィルムを用いかつ印刷が行われている被接着面と印刷が行われていない被接着面のいずれにも濡れ性処理を施し、接着剤を一方又は両方の前記ウエブの被接着面の少なくとも両側縁に線状に又は被接着面の全域にドット状に塗布し、各ウエブの密着面に気泡の残留を排除するための水膜を形成してから一対の転圧ロール間に通して密着・加圧して前記被接着面間の水膜の水分を絞り取りその後ロール状に巻き取り、さらにその後にエージングを行うことにより前記被接着面間に残留する水膜を前記透湿性フィルム中に浸透拡散させて被接着面同士に包材に必要な接着強度を得ることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明にかかる積層ウエブの積層方法は、請求項7に記載の積層ウエブの原反ロールの製造技術に関する構成である。
請求項7と8に記載の発明は、一対のウエブのいずれかの被接着面に印刷を行っていることを特徴としているとともに、一対のウエブのいずれかの被接着面に接着剤を微量に塗布して補助的な接着を行ってエージング中に水膜が透湿性フィルム層を通じて外部へ拡散して消失し接着面の端縁からの蒸散と同端縁から接着面への空気の侵入を皆無にしている特徴としている。印刷は裏刷りと表刷りの場合がある。
【0017】
請求項9に記載の発明にかかる包装袋は、請求項1、3、5、7のいずれか一に記載の積層ウエブの原反ロールにより製袋されたことを特徴とする。
また、請求項10に記載の発明にかかる包装体は、請求項1、3、5、7のいずれか一に記載の積層ウエブの原反ロールにより製袋された袋に被包装物を収容して開口を閉じて
なることを特徴とする。
袋の形態は、三方袋、四方袋、スタンドパウチ及びその他のボトムガセット付き袋、サイドガセットがあり角底が形成されるスタンドパック袋、ボトムガセットとサイドガセットとがあるスタンドパック、製袋機で作られるピロー包装袋やスタンドパック型ピロー包装袋、製袋充填包装機で作られる縦ピロー包装袋やスタンドパック型縦ピロー包装袋並びに横ピロー包装袋やスタンドパック型横ピロー包装袋、サイドガセット付き袋の上部にヘッダーを付けた袋、開口が斜めになっている袋等、カットテープやジッパーや面状ファスナが付いている袋、その他の全ての袋が含まれる。
【0018】
本発明によれば、単層ウエブ又は積層ウエブと、透湿性フィルムとを積層するものである。本発明は、透湿性フィルム同士の積層には限定されない。透湿性フィルムは、いわゆるシーラントフィルム等が挙げられる。しかし、透湿度は厚さと関係している。20μmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)の透湿度は、40μmの未延伸ポリプロピレン(CPP)の透湿度と同等であり、また80μmの低密度ポリエチレン(LDPE)の透湿度と同等である。
【0019】
従って、低密度ポリエチレン(LDPE)と未延伸ポリプロピレン(CPP)との積層とするならば、低密度ポリエチレンを80μm、未延伸ポリプロピレンを40μmとすれば、接着面の両側のフィルムに必要な透湿度を確保できる。また、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)と未延伸ポリプロピレン(CPP)との積層とするならば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)を20μm、未延伸ポリプロピレンを40μmとすれば、接着面の両側のフィルムに必要な透湿度を確保できる。本発明において透湿性フィルムとは、主にポリエチレンを指すが、さらに、ポリエチレンよりも透湿性フィルムとしては、ポリスチレンやPET(ポロエチレンテレフタレート)もある。高密度ポリエチレンフィルムや未延伸ポリプロピレン(CPP)も二軸延伸ポリプロピレン(OPP)に比べて透湿性は大きいので本発明において透湿性の大きいフィルムに含める。
【0020】
包材には多くの場合積層接着面に印刷が行われる。印刷部分の接着性は非印刷部分に比べて低下する。かかる接着性はインクの種類によっても異なる。印刷部分の接着性は、インクによって表面粗さが大きくなり接着面に微小気泡が取り残されることにも起因する。印刷を積層接着面に設ける場合、外層と内層の2層からなる積層ウエブにあっては外層の被接着面に裏刷りするかまたは内層の被接着面に表刷りし、外層と中間層と内層の3層からなる積層ウエブにあっては外層の被接着面に裏刷りするかまたは中間層の被接着面に表刷りする。
【0021】
従って、本発明では、印刷部分にコロナ放電等による濡れ性を高める処理を施した上で密着積層に際して被密着面全面に水膜を形成して各被接着面の表面粗さとして把握される凹凸に存在する空気を排除することにしている。この場合、水膜が厚いときは重力作用を受けて水滴となって集まり流動して水滴ができた箇所には空気が容易に侵入して接着を阻むことになるので、本発明では、単層ウエブ又は積層ウエブと、透湿性の大きいフィルムとを一対の転圧ロールに通し転圧をかけて密着しかつ転圧箇所の上流側に水を絶えることなく供給して水膜を形成して各被接着面の表面粗さとして把握される凹凸に存在する空気を全て排除しさらに転圧によって水膜を形成している水を可及的に搾り出すことによって重力作用を受けにくく水滴となって集まりにくいサブミクロン以下の水膜としている。さらに、一対のウエブを可及的に薄い水膜として接着したらロール状に巻き取って30℃〜40℃で2日〜3日間エージングを行うことにより水膜を透湿性の大きいフィルムを通じて外部に拡散させることとしている。エージングによって水膜が透湿性の大きいフィルムを通じて外部に拡散すると積層接着面は真空になり1気圧が加わり分子間引力であるファンデルワール力が大きく作用して包材として必要な接着強度が生じることになる。
【0022】
本発明に係る被密着面全面に水膜を形成するための水には、水が主体であれば少量の添加物を加えた場合も含まれる。例えば、僅かな量のアルコール、界面活性剤、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン、水性ウレタン系接着剤等を添加することにより、積層しようとするフィルムの組み合わせによっては接着強度アップに有効である。
【0023】
積層接着面の端縁近傍の水膜はエージング中に透湿性フィルム中に浸透拡散しないで端縁より蒸散することが考えられる。積層接着面の端縁近傍の水膜だけでなく積層接着面の幅方向中程の水膜まで積層接着面の端縁より蒸散するときには、その箇所では真空状態が形成されず1気圧が加わらずファンデルワール力が作用しないので接着強度を生じない。この事態が何処か1箇所で起きると不良品になる。本発明は、不良品を防ぐために、一対のウエブの密着積層に際して、被接着面間の少なくとも両側縁が線状に又は被接着面の全域にドット状に塗布した接着剤により接着している。これによって、積層接着面の端縁近傍の水膜が端縁から蒸散することを阻止することができ、積層接着面の幅方向中程の水膜が積層接着面の端縁より蒸散することを阻止することができる。
【0024】
20μmの厚さの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)とアルミ箔との積層は二軸延伸ポリプロピレンが20μmの厚さなので接着に必要な透湿度を確保できるので本発明の積層接着技術を適用できる。裏刷り印刷した20μmの厚さの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)とアルミ箔との積層は、二軸延伸ポリプロピレンの裏刷り印刷部分の透湿度が低いので、必要な接着強度が得るためには、被接着面の全域にドット状に塗布した接着剤により接着強度を補強し、かつ、エージングの日数を増やすと、水膜がインク膜を浸透し二軸延伸ポリプロピレンのフィルム中に浸透拡散して必要な接着強度が得られる。
【0025】
従って、本発明は、積層しようとする一方のウエブが二軸延伸ポリプロピレンや二軸延伸ナイロン等の透湿度を大きく確保した単層フィルムとアルミ箔とからなる積層ウエブを本発明の積層技術で積層し、次いで、該積層ウエブとシーラントフィルムとを本発明の積層技術で積層してなる3層の積層フィルムも対象に含まれ、4層以上の積層フィルムも対象に含まれる。
【0026】
本発明の積層技術において用いる水には、純水、イオン水、水道水等を問わない。なお、コロナ放電による濡れ性を付与する処理を行う前にシランカップリング剤等を含ませた水を微小な水膜を散布して乾固させることにより予備的に濡れ性を付与することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の積層ウエブの原反ロール、積層ウエブの積層方法、包装袋及び包装体によれば、接着剤を全く使用しない水接着であるか接着剤を補助的に微量使用し水接着が主体であることにより、水接着が主体である全くと言って良いほど接着剤のランニングコストがかからず、大気汚染の原因を解消し、地球温暖化の原因となる炭酸ガスを生成する原因物質の排出を無くし、被包装物に臭いを与えることになっている原因物質が積層ウエブの接着面に残留するのを無くし、揮発したトルエン等の溶剤の回収を条件としている埼玉県条例の規制に見られるように溶剤系接着剤の使用の撤廃に対応できる。
【0028】
従来においては、溶剤系接着剤と水性接着剤は、いずれの場合も、500mの面積(=幅500mm×長さ1000m)に対して約5Kg(5リットル)〔30%固形分〕の量を使用しており包材の積層に大きなコストを占めているのに対し、本発明は、請求項3、4、7、8に記載したように、接着剤を使用する場合にあっても、全面コートではなく必要最小限の補助的に使用であるので接着剤使用量は、500mの面積(=幅500mm×長さ1000m)に対して約0.1Kg(0.1リットル)〔30%固形分〕に抑えることができ、接着剤のコストが殆ど発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
請求項7に記載の発明である積層ウエブの原反ロールと請求項8に記載の発明である積層ウエブの積層方法の実施形態を図面を用いて説明する。この説明で請求項1〜6に記載の発明は把握できるので、請求項1〜6に記載の発明の実施形態の説明は省略する。なお、本実施形態における機械要素(例えば、ガイドロール等)の配置等は単なる例示である。
【0030】
図1において、符号1はコロナ放電処理装置、符号2は圧胴と版胴とドクターとインク皿等からなるグラビアコート方式の接着剤塗布装置、符号3は接着剤の溶媒乾燥装置、符号4aと4bは接着を行うための一対の転圧ロール、符号5は散水ノズル、符号6,7,8はガイドロールであり、符号9は巻取軸、符号10は積層ウエブWの巻取りロールである。
【0031】
また図1において、符号W1は外層側フィルムであり、符号W2は内層側フィルムである。外層側フィルムW1は単層フィルム又は積層ウエブ〔フィルム同士の複層又はフィルム
(表面層)とアルミ箔(中間層)の複層〕である。
【0032】
外層と中間層と内層の3層からなる積層ウエブを製造するに際して、外層と中間層との積層ウエブを製造する段階では、内層側フィルムW2はシーラントフィルムではない。外
層と中間層とを積層して2層の積層ウエブとして、次いで2層の積層ウエブの中間層と内層を積層する段階では、内層側フィルムW2はシーラントフィルムとする。
【0033】
外層側フィルムW1は、例えば厚さ20μmのポリエステルフィルム(PET)、二軸
延伸ポリプロピレンフィルムあるいは二軸延伸ナイロンフィルムである単層フィルムである。また内層側フィルムW2は、厚さ30μm〜60μmの高密度ポリエチレン(LLD
PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、あるいは厚さ30μm〜40μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)である。
【0034】
外層側フィルムW1には印刷されているフィルムと表刷り印刷又は裏刷り印刷されてい
るフィルムが含まれる。印刷は、アウトラインである図示しないグラビア輪転印刷機又はフソキソ印刷機により印刷される。
【0035】
外層側フィルムW1と内層側フィルムW2は、コロナ放電処理装置1内を通されて被接着面に40dyn/mm2程度のコロナ放電が行われ濡れ性が付与される。濡れ性が付与される
と水が付着し易くなるとともにファンデルワール力が作用し易くなる。
【0036】
コロナ放電処理は、印刷ラインの最後工程で行われても良いが、フィルムの貼り合わせの直前で行う方が効果が大きい。裏刷り印刷面については、コロナ放電処理を行うと接着強度を上げることができる。
【0037】
外層側フィルムW1の被接着面は、グラビアコート方式の接着剤塗布装置2により例え
ば30mmないし50mm間隔となるように線状に又は被接着面の全域にドット状に接着剤が塗布される。線状の塗布は少なくとも両側縁近傍に設ければ足りる。ドット状に接着のドット分布はグラビア印刷における最ハイライト部の分布以下で十分である。従って、接着剤の溶媒乾燥装置3は短尺で小さな発熱量で足りるので、ラインを小さくすることができる。
【0038】
外層側フィルムW1の被接着面への接着剤塗布は、外層側フィルムW1の種類によりまた裏刷り印刷が行われる面積の大きさにより、またインクの種類により、必要に応じて行わ
れる。例えば、裏刷り印刷が行われないポリエステルフィルムと、シーラントフィルムとの積層の場合には、外層側フィルムW1の被接着面への接着剤塗布は必要ではない。他方
、裏刷り印刷が行われるポリエステルフィルムには接着剤塗布を行うことが好ましい。
【0039】
外層側フィルムW1と内層側フィルムW2は、一対の転圧ロール4aと4bの間を転圧され密着して通る。外層側フィルムW1と内層側フィルムW2が一対の転圧ロール4aと4bの間を通される前に、外層側フィルムW1に対して散水ノズル5から散水が行われる。散
水ノズル5から散水された水は一対の転圧ロール4aと4bの転圧部に至り貯水部Pを形成する。貯水部Pの水は一対の転圧ロール4aと4bの転圧によって外層側フィルムW1
と内層側フィルムW2の密着が行われる前に両フィルムの表面から空気を追い出す。事前
に外層側フィルムW1と内層側フィルムW2の被接着面への濡れ性の付与を行うことにより被接着面の親水性が大きく確保される結果、貯水部Pの水はフィルム表面から空気を完全に追い出すことができる。外層側フィルムW1の裏刷り印刷された被接着面への濡れ性の
付与は印刷部分に対しても親水性が大きく確保することができ、貯水部Pの水で外層側フィルムW1の被接着面の印刷部分への濡れ性の付与は必須である。
【0040】
外層側フィルムW1と内層側フィルムW2は、一対の転圧ロール4aと4bの転圧によって水膜を有して密着する。このときの断面の状態を図2に示す。
一対の転圧ロール4aと4bの転圧力を大きくすることにより、サブミクロン以下の水膜となり、水膜を形成しようとする余分な水は貯水部Pへ搾り出される。このため、水膜を形成する水の使用量は500mm幅で1000mの面積に対して0.5リットル前後で足りる。従って、散水ノズル5からの散水は、貯水部Pをセンサで常時監視していて足りなくなる前に僅かな時間だけ行うようになっている。
【0041】
サブミクロン以下の水膜を介して密着した外層側フィルムW1と内層側フィルムW2は、巻取軸9に巻き取られて積層ウエブの原反ロールWとなる。一定長さに巻き取られた積層ウエブの原反ロールは、巻き解けないように巻取り端を接着テープで止められて30℃〜40℃で2日〜3日間エージングされる。
【0042】
エージングの初期に積層密着面に存在している水膜はエージングの進行によって積層密着面となっている透湿度が低いフィルム層を通じて外部へ拡散していき積層密着面から消失する。このため、積層密着面には水分子が無くなり真空となって1気圧が加わって密着し積層密着面に対峙するフィルムを構成する分子間距離が小さくなりファンデルワール力が作用して密着から接着に変わる。ここでも、外層側フィルムW1と内層側フィルムW2の被接着面への濡れ性の付与は接着力を大きくすることに関与する。水膜が消失したときに積層密着面に接着により大きく関与する結合機能分子を持たせるために、前記散水ノズル5から散水する水にはシランカップリング剤を例えば1%〜数%含ませるのが好ましい。全ての種類のフィルム同士の密着が接着に変わるわけではないが、例えば、ポリエステルフィルムとシーラントフィルムとの水接着の場合には包材に必要な接着強度が十分に大きく得られる。
【0043】
図3は、本発明の第2の実施の形態の積層ウエブの積層方法を実施する装置を示す拡大正面図である
【0044】
図3において、符号11はコロナ放電処理装置、符号12は圧胴と版胴とドクターとインク皿等からなるグラビアコート方式の接着剤塗布装置、符号13は接着剤の溶媒乾燥装置、符号14aと14bは接着を行うための一対の転圧ロール、符号15は散水ノズル、符号16,17,18,19,20はガイドロールであり、符号21は外層側フィルムW1の原反ロール、符号22は外層側フィルムW2の原反ロール、符号23は外層側フィルムW2と外層側フィルムW2との積層ウエブWの巻取りロールである。
【0045】
図3に示す装置と図1に示す装置との実質的は相違点はない。図3に示す装置では、接着剤の溶媒乾燥装置13が長尺なので乾燥容量が大きく、外層側フィルムW1の被積層面
の両端縁に接着剤塗布装置12で接着剤をしっかり塗布してから溶剤を乾燥できるように確保している。ライン構成上、コロナ放電処理装置11は外層側フィルムW1に照射する
ものと外層側フィルムW2に照射するものとに分かれている。
【実施例1】
【0046】
【表1】

【0047】
表1は、図3に示す装置でニップ直前に水を滴下しラインスピード50m/minで2
種類のフィルムを貼り合わせ、35℃の熟成室で2日(48時間)保管してから、15mm幅に切って、2種類のフィルムの接着していない端縁を掴んで互いに離間して行きそのときのテンションを測定した結果を示す。
いわゆる180度捲りを行うとどの位の力で剥離するかを見るテストである。従来の接着剤を使う場合における接着強度は500g/15mm位の180度捲り剥離強度がある
ので、PE/PEの組み合わせは各種包装用に実用できる接着強度に近い。OP/PEの組み合わせは、数値が低いものの容易に飴等の個包装には適用できる接着強度である。Nyl/PEの組み合わせは、手揉みしても2枚のフィルムの接着が剥がれるレベルではなく、包装に十分に実用できる。
【実施例2】
【0048】
【表2】

【実施例3】
【0049】
【表3】

【0050】
表2と表3は、図3に示す装置でニップ直前に水を滴下しラインスピード50m/mi
nで2種類のフィルム(裏刷り印刷したOPP♯30とPE)を貼り合わせ、35℃の熟成
室で2日(48時間)保管してから、15mm幅に切って、2種類のフィルムの接着していない端縁を掴んで互いに離間して行きそのときのテンションを測定した結果を示す。表2と表3の相違は、インクメーカーの相違である。
求める色を単色で裏刷り印刷したOPP♯30とPEの貼り合わせで接着強度が十分に得られなくても、白を重ね刷りしたOPP♯30とPEの貼り合わせにすると、接着強度が実用レベルで得られる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態の積層ウエブの積層方法を実施する装置を示す拡大正面図である。
【図2】図1の実施の形態の積層ウエブの積層方法で積層されるウエブの断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の積層ウエブの積層方法を実施する装置を示す拡大正面図である。
【符号の説明】
【0052】
W 積層ウエブの原反ロール
W1 外層側フィルム
W2 内層側フィルム
1 コロナ放電処理装置
2 接着剤塗布装置
3 接着剤の溶媒乾燥装置
4a,4b 一対の転圧ロール
5 散水ノズル 6,7,8 ガイドロール
9 巻取軸
11 コロナ放電処理装置
12 接着剤塗布装置
13 接着剤の溶媒乾燥装置
14a,14b 一対の転圧ロール
15 散水ノズル
16,17,18,19,20 ガイドロール
21 外層側フィルムの原反ロール
22 外層側フィルムの原反ロール
23 積層ウエブの巻取りロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層フィルム又は積層ウエブと、透湿性フィルムとを積層した積層ウエブの原反ロールであって、両方の被接着面に濡れ性処理を施し両方の被接着面の全面に形成する水膜を介在させ残留空気を無くして密着しロール状に巻きエージングして該エージング中に前記水膜が前記透湿性フィルム層を通じて外部へ拡散して消失し包材としての必要な接着強度を有していることを特徴とする積層ウエブの原反ロール。
【請求項2】
単層フィルム又は積層ウエブと透湿性フィルムである一対のウエブを水によって接着して包材に必要な接着強度を有する積層ウエブとするウエブ積層方法であって、前記一対のウエブの少なくとも一方の被接着面となるフィルム層には透湿性フィルムを用いかつ両方の被接着面に濡れ性処理を施し、各ウエブの密着面に気泡の残留を排除するための水膜を形成してから一対の転圧ロール間に通して密着・加圧して前記被接着面間の水膜の水分を絞り取りその後ロール状に巻き取り、さらにその後にエージングを行うことにより前記被接着面間に残留する水膜を前記透湿性フィルムを通じて外部に拡散させて被接着面同士に包材に必要な接着強度を得ることを特徴とする積層ウエブの積層方法。
【請求項3】
単層フィルム又は積層ウエブと、透湿性フィルムとを積層した積層ウエブの原反ロールであって、両方の被接着面に濡れ性処理を施した一対のウエブを、被接着面間の少なくとも両側縁が線状に又は被接着面の全域にドット状に塗布した接着剤により接着しているとともに、両方の被接着面の全面に形成する水膜により接着してロール状に巻いてエージングされ該エージング中に前記水膜が前記透湿性フィルム層を通じて外部へ拡散して消失し接着していることにより包材としての必要な接着強度を有していることを特徴とする積層ウエブの原反ロール。
【請求項4】
単層フィルム又は積層ウエブと透湿性フィルムである一対のウエブを水によって接着して包材に必要な接着強度を有する積層ウエブとするウエブ積層方法であって、前記一対のウエブの少なくとも一方の被接着面となるフィルム層には透湿性フィルムを用いかつ両方の被接着面に濡れ性処理を施すとともに、接着剤を一方又は両方の前記ウエブの被接着面の少なくとも両側縁に線状に又は被接着面の全域にドット状に塗布し、各ウエブの密着面に気泡の残留を排除するための水膜を形成してから一対の転圧ロール間に通して密着・加圧して前記被接着面間の水膜の水分を絞り取りその後ロール状に巻き取り、さらにその後にエージングを行うことにより前記被接着面間に残留する水膜を前記透湿性フィルム中に浸透拡散させて被接着面同士に包材に必要な接着強度を得ることを特徴とする積層ウエブの積層方法。
【請求項5】
単層フィルム又は積層ウエブと、透湿性フィルムとを積層した積層ウエブの原反ロールであって、いずれか一方のウエブの被接着面に印刷が行われていて印刷が行われていない方のウエブの被接着面となるフィルム層には透湿性フィルムを用いかつ印刷が行われている被接着面と印刷が行われていない被接着面のいずれにも濡れ性処理を施した一対のウエブを、両方の被接着面の全面に形成する水膜により転圧をかけて接着して積層ウエブとしてロール状に巻いてエージングして該エージング中に前記水膜を前記透湿性フィルム層を通じて外部へ拡散していることにより包材としての必要な接着強度を有していることを特徴とする積層ウエブの原反ロール。
【請求項6】
単層フィルム又は積層ウエブと透湿性フィルムであり、いずれか一方のウエブの被接着面に印刷が行われている一対のウエブを水によって接着して包材に必要な接着強度を有する積層ウエブとするウエブ積層方法であって、被接着面に印刷が行われていない方のウエブの被接着面となるフィルム層には透湿性フィルムを用いかつ印刷が行われている被接着面と印刷が行われていない被接着面のいずれにも濡れ性処理を施し、各ウエブの密着面に
気泡の残留を排除するための水膜を形成してから一対の転圧ロール間に通して密着・加圧して前記被接着面間の水膜の水分を絞り取りその後ロール状に巻き取り、さらにその後にエージングを行うことにより前記被接着面間に残留する水膜を前記透湿性フィルム中に浸透拡散させて被接着面同士に包材に必要な接着強度を得ることを特徴とする積層ウエブの積層方法。
【請求項7】
単層フィルム又は積層ウエブと、透湿性フィルムとを積層した積層ウエブの原反ロールであって、いずれか一方のウエブの被接着面に印刷が行われていて印刷が行われていない方のウエブの被接着面となるフィルム層には透湿性フィルムを用いかつ印刷が行われている被接着面と印刷が行われていない被接着面のいずれにも濡れ性処理を施し接着剤を一方又は両方の前記ウエブの被接着面の少なくとも両側縁に線状に又は被接着面の全域にドット状に塗布した一対のウエブを、両方の被接着面の全面に形成する水膜により転圧をかけて接着して積層ウエブとしてロール状に巻いてエージングして該エージング中に前記水膜を前記透湿性フィルム層を通じて外部へ拡散していることにより包材としての必要な接着強度を有していることを特徴とする積層ウエブの原反ロール。
【請求項8】
単層フィルム又は積層ウエブと透湿性フィルムであり、いずれか一方のウエブの被接着面に印刷が行われている一対のウエブを水によって接着して包材に必要な接着強度を有する積層ウエブとするウエブ積層方法であって、被接着面に印刷が行われていない方のウエブの被接着面となるフィルム層には透湿性フィルムを用いかつ印刷が行われている被接着面と印刷が行われていない被接着面のいずれにも濡れ性処理を施し、接着剤を一方又は両方の前記ウエブの被接着面の少なくとも両側縁に線状に又は被接着面の全域にドット状に塗布し、各ウエブの密着面に気泡の残留を排除するための水膜を形成してから一対の転圧ロール間に通して密着・加圧して前記被接着面間の水膜の水分を絞り取りその後ロール状に巻き取り、さらにその後にエージングを行うことにより前記被接着面間に残留する水膜を前記透湿性フィルム中に浸透拡散させて被接着面同士に包材に必要な接着強度を得ることを特徴とする積層ウエブの積層方法。
【請求項9】
請求項1、3、5、7のいずれか一に記載の積層ウエブの原反ロールより製袋されたことを特徴とする包装袋。
【請求項10】
請求項1、3、5、7のいずれか一に記載の積層ウエブの原反ロールにより製袋された袋に被包装物を収容して開口を閉じてなることを特徴とする包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−23134(P2009−23134A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186512(P2007−186512)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(307027717)株式会社彫刻プラスト (6)
【出願人】(593031849)
【Fターム(参考)】