説明

積層セラミックコンデンサ

【課題】Y5V特性を有する積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】多数に積層された誘電体層110と該誘電体層110間に形成された内部電極120を備えるセラミック積層体130と、該内部電極120に電気的に接続され、該セラミック積層体130の外面に配設された外部電極140とを含み、該誘電体層110は、(Ba1-xCa(Ti1-zZr)O(ここで、0.03≦x≦0.07mol%、0.05≦z≦0.15mol%、1≦m≦1.05mol%を満たす)を含み、該内部電極120は、ニッケル粉末、BaTiO(BT)を含有するセラミック粉末及びキュリー温度シフタを含む導電性ペーストで形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Y5V特性を有する積層セラミックコンデンサに関するもので、ニッケルパウダの収縮を防止すると共に、導電性ペーストの密度を増加させることができるBTパウダ及びキュリー温度シフタを備える導電性ペーストで設けられた内部電極を含むY5V特性を有する積層セラミックコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ(Multi Layer Ceramic Capacitor:MLCC)は、電気を一時に蓄え得る電子部品であり、移動通信機器、デジタルAV機器、コンビュータ、車載電子機器等、様々な産業分野においてその需要が急増してきている。
【0003】
近年、電気及び電子機器の産業の高性能化及び軽薄短小化に伴って、電子部品も小型化及び薄型化が要求されている。このような趨勢につれて、電子部品のうち積層セラミックコンデンサは高容量化、薄型化及び多層化が進行されてきている。
【0004】
このような、積層セラミックコンデンサを製造するために、まず誘電体シート上に導電性ペーストを印刷して内部電極層を形成する。続いて、該内部電極層を含む誘電体シートを多数層に積層した後、焼成して、積層体を形成する。続いて、該積層体の外面に内部電極層と電気的に接続された外部電極を形成する。
【0005】
ここで、積層セラミックコンデンサは、優秀な特性を有するように、高誘電率の誘電体に向けての開発がなされている。該高誘電率の誘電体のうち、(Ba1-xCa(Til-zZr)O(以下、適宜BCTZという)はY5V特性を有する高誘電率材料に広く利用されている。Y5V特性は、BaTiOにBaZrOやCaTiO等を添加し、キュリー温度(Curie Temperature)の値を移したり、キュリー温度寄りで誘電率変化を分散させることによって、−30℃〜85℃にて静電容量の温度変化率(Temperature Characteristic Coefficient:TCC)が−22%〜82%の範囲を有するのを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
積層セラミックコンデンサの費用を低くするため、内部電極層は安価のニッケルで形成している。ここで、Y5V特性を有する誘電体は、1300℃以上の高温の焼結温度を有するため、ニッケル電極が収縮され、結晶粒の大きさが増加して、超高容量及び超薄型のコンデンサへの適用の際に、充分な信頼性及び容量などを具現するのに限界があった。
【0007】
ここで、ニッケルの収縮を防止するために、内部電極の形成のための導電性ペーストは阻害剤を含む。内部電極の焼結が完了の後、該阻害剤は誘電体に抜け出して該誘電体の電気的特性に影響を及ぼすことになる。そのため、該阻害剤は誘電体と類似なセラミックパウダ、例えばBCTZを利用した。
【0008】
しかしながら、導電性ペーストが誘電体層と同じ組成を有する阻害剤を使用する場合、該阻害剤の粒子サイズが誘電体層の粒子サイズより相対的に小さく、それ自体の焼結駆動力が大きくなる。そのため、焼結温度が上昇するほど、誘電体層よりも導電性ペーストの阻害剤が先に焼結される恐れがある。即ち、内部電極に用いられた阻害剤が誘電体層よりも先に焼結されると、導電性ペーストの焼結収縮を抑制するような効果が減少し、該導電性ペーストの電極切れや容量減少のような特性の低下を引き起こすという不都合がある。
【0009】
従って、本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、ニッケルパウダの収縮を防止すると共に導電性ペーストの密度を増加させ得るBTパウダ及びキュリー温度シフタを備える導電性ペーストで形成された内部電極を含み、キュリー温度が高温に上昇するのを防止し、該内部電極の連続性を改善することができるY5V特性を有する積層セラミックコンデンサを提供することに、その目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するために、本発明の一つの好適な実施形態によるY5V特性を有する積層セラミックコンデンサは、多数に積層された誘電体層と該誘電体層間に形成された内部電極とを備えるセラミック積層体と、前記内部電極に電気的に接続され、前記セラミック積層体の外面に配設された外部電極とを含む。
【0011】
前記誘電体層は、(Ba1-xCa(Ti1-zZr)O(ここで、0.03≦x≦0.07mol%、0.05≦z≦0.15mol%、1≦m≦1.05mol%を満たす)を含むことができる。
【0012】
前記内部電極は、ニッケル粉末、BaTiO(以下、適宜BTという)を含むセラミック粉末及びキュリー温度シフタ(Curie Temperature shifter)を備える導電性ペーストで形成されることができる。
【0013】
ここで、前記セラミック粉末の含量は、前記導電性ペーストの全体を基準に5〜20wt%の範囲を有することができる。
【0014】
また、前記キュリー温度シフタは、Ba化合物、Mg化合物及び希土類化合物のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0015】
また、前記希土類化合物は、Y、Dy、Ho、Er及びYbのうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0016】
また、前記キュリー温度シフタの含量は、前記導電性ペーストの全体を基準に0.1〜10wt%の範囲を有することができる。
【0017】
また、前記ニッケル粉末の粒径範囲は、200nm〜400nmを有することができる。
【0018】
また、前記セラミック粉末の粒径は、前記ニッケル粉末の粒径に対して0.4倍よりも小さいサイズを有することができる。
【0019】
また、前記セラミック粉末は、球形形状を有することができる。
【発明の効果】
【0020】
従って、本発明によれば、ニッケルの収縮を防止するための阻害剤としてBTパウダを使用し、導電性ペーストの密度だけでなくニッケルの充填密度を高めることによって、内部電極の連続性を改善することができる。
【0021】
また、本発明の内部電極はキュリー温度シフタを含み、キュリー温度の上昇を防止することができるため、常温での誘電率の上昇及び誘電率損失係数の増加を防止することができる。
【0022】
また、本発明のキュリー温度シフタは、誘電体の焼成温度の前に導電性ペーストに含まれた阻害剤、即ちBTパウダの焼結を抑制し、焼結温度差によって発生する誘電体層と内部電極との間の界面でのクラック発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による積層セラミックコンデンサの断面図である。
【図2】比較例による導電性ペーストの微細構造を示す写真である。
【図3】本発明の実施形態による導電性ペーストの微細構造を示す写真である。
【図4】比較例と実施形態との焼成温度別BTパウダの粒成長を比較した写真である。
【図5】比較例と実施形態1及び2との焼成温度別収縮曲線を比較したグラフである。
【図6】本発明の実施形態1及び2の積層セラミックコンデンサの断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態は図面を参考にして詳細に説明する。次に示される各実施の形態は当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されることができるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は以下示している各実施の形態に限定されることなく他の形態で具体化されることができる。そして、図面において、装置の大きさ及び厚さなどは便宜上誇張して表現されることができる。明細書全体に亘って同一の参照符号は同一の構成要素を示している。
【0025】
図1は、本発明の実施形態による積層セラミックコンデンサの断面図である。
【0026】
図1を参照して、本発明の実施形態による積層セラミックコンデンサ100は、セラミック積層体130及び外部電極140を含むことができる。
【0027】
セラミック積層体130は、多数に積層された誘電体層110と該誘電体層110間に介した内部電極120とを備えることができる。
【0028】
誘電体層110は、Y5V特性を有するセラミックパウダを含む誘電体で形成されることができる。例えば、該セラミックパウダは、(Ba1-xCa(Ti1-zZr)O(以下、BCTZとする)であってもよい。ここで、0.03≦x≦0.07mol%、0.05≦z≦0.15mol%、1≦m≦1.05mol%を満たす。
【0029】
また、誘電体は、アクセプタ、ドナー、焼結調剤、バインダー、溶媒などをさらに含むことができる。ここで、アクセプタは誘電体の耐還元性を与える働きを果たす。ここで、アクセプタとして用いられる組成の例には、HfO、MnO及びZrOが挙げられる。また、ドナーは、製造された積層セラミックコンデンサの信頼性を与える働きを果たす。ドナーに用いられる組成の例には、Y、AlO、V、Ta、Nb、Er等が挙げられる。焼結調剤は、セラミックパウダの焼結を助ける働きを果たす。焼結調剤の例にはグラス成分、LiO-SiO系グラス及びSiO等が挙げられる。バインダーは、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。溶媒は、バインダー樹脂との溶解度及び商用性を考慮して選択されることができる。溶媒の例にはアセテート系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒等が挙げられる。また、誘電体は添加剤、例えば分散剤、可塑剤などをさらに含むことができる。
【0030】
本発明の実施形態において、誘電体の組成に対してこれに限定するものではなくて、Y5V特性を満たす成分をさらに含むものであれば使用可能である。
【0031】
内部電極120は、導電性パウダ、阻害剤、キュリー温度シフタを含む導電性ペーストで形成されることができる。
【0032】
導電性パウダは、製品の価格を低くするため、他の材料に比べて低廉なニッケルパウダを利用することできる。ここで、ニッケルパウダの粒径範囲は、200nm〜400nmを有することができる。
【0033】
阻害剤は、導電性パウダの収縮を遅延させる働きを果たす。該阻害剤は、誘電体のセラミックパウダと異なる材料、例えばBaTiO(以下、BT)パウダを利用することができる。
【0034】
阻害剤、即ちBTパウダは、ニッケルの収縮を抑制して最終焼成されたニッケルの充填密度を高めると共に内部電極の接続性を改善することができる。
【0035】
BTパウダは、球形形状を有し、より効果的にニッケルの収縮を制御することができる。
【0036】
BTパウダの粒径範囲は、ニッケルパウダの粒径に対して0.4倍よりも小さくなければならない。例えば、BTパウダの粒径範囲は、10nm〜150nmであってもよい。これは、BTパウダの粒径がニッケルパウダの粒径に対して10nm未満の場合、ニッケルの収縮を防止するのに効果がないためである。一方、BTパウダの粒径がニッケルパウダの粒径に対して150nmを超過する場合、導電性ペーストにおいてニッケルパウダの充填密度が低下し、内部電極の切れ現象が生じ、内部電極の接続性がむしろ低下される恐れがある。
【0037】
BTパウダの含量は導電性ペーストの全体を基準に5wt%〜20wt%の範囲を有することができる。これは、BTパウダの含量が5wt%未満の場合、導電性ペーストでBTパウダの充填率が低下して、ニッケルの収縮を防止するのに大きい効果がない。また、BTパウダの含量が20wt%を超過する場合、ニッケルの充填率が低下して、積層セラミックコンデンサの電気的特性が低下されてしまう。
【0038】
BTパウダが阻害剤として用いられる場合、内部電極の焼成時のBTパウダが誘電体層に抜け出すこともある。これによって、誘電体の内部にキュリー温度を低温に移動させるシフタ(shifter)の役割を行う成分、例えばZrOの含量が減少するようになる。これにより、誘電体のキュリー温度が高温に上昇して常温での誘電率を増加させて損失係数(DF)を高めることができる。即ち、導電性ペーストは内部電極の接続性を改善するために、BTパウダを阻害剤として使用したが、阻害剤と誘電体との成分が異なり、常温での誘電率が増加して損失係数が高くなるという問題が発生する。
【0039】
これを解決するために、導電性ペーストはキュリー温度シフタをさらに含むことができる。該キュリー温度シフタは、誘電体の焼成時、誘電体に吸収されて該誘電体の粒成長を抑制する役割をする。これは、誘電体の粒子が小さくなるほどキュリー温度が低温に移動するためである。そのため、キュリー温度シフタを常温での誘電体の誘電率を減少させ、損失係数(DF)を低くすることができ、Y5V特性を維持して、内部電極の接続性を確保することができる。
【0040】
ここで、BTパウダは誘電体のBCTZパウダよりも小さい粒径を有するため、該BTパウダの焼成開始温度はBCTZパウダの焼成開始温度よりも低くなる。このようなBTパウダとBCTZパウダとの焼成開始温度差による収縮率差によって積層セラミックコンデンサの内部にクラックを引き起こす。ここで、キュリー温度シフタを導電性ペーストに含まれ、内部電極の焼成時にBTパウダの収縮を制御する働きをさらに果たすことができる。そのため、焼成工程で発生する積層セラミックコンデンサの内部、即ち誘電体層と内部電極との間の界面でのクラックを防止することができる。
【0041】
これにより、導電性ペーストはキュリー温度シフタを含み、キュリー温度を低温に減少させる役割だけでなく、阻害剤、即ちBTパウダの収縮を防止する役割を併せて行うことができる。
【0042】
キュリー温度シフタは、キュリー温度を低くするだけでなく、阻害剤の収縮を防止することができる化合物、例えばBa化合物、Mg化合物及び希土類化合物のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。即ち、キュリー温度シフタは、単一化合物よりなるか、または、2化合物以上の混合物からなることができる。ここで、該化合物は導電性ペーストにおいて炭酸化物または炭化物の形状を有することができる。また、化合物は焼成工程後に酸化物形状を有することができる。酸化物の例にはBaO、MgO及び希土類酸化物、例えばR等が挙げられる。ここで、Rは、Y、Dy、Ho、Er及びYbのうちのいずれか一つであってもよい。
【0043】
キュリー温度シフタの含量は、導電性ペーストの全体を基準に0.1wt%〜10wt%の範囲を有することができる。これは、キュリー温度シフタの含量が、0.1wt%未満の場合、高温でキュリー温度シフタが誘電体に抜け出されなくなって、誘電体の粒成長を制御できず、該誘電体のキュリー温度を低くすることができない。一方、キュリー温度シフタの含量が10wt%を超過する場合、キュリー温度シフタが誘電体に拡散されて積層セラミックコンデンサの容量が低下されることになる。
【0044】
加えて、導電性ペーストはバインダー樹脂、溶媒及び添加剤をさらに含むことができる。ここで、バインダー樹脂の例には、ポリビニルブチラル(Polyvinyl butyral)樹脂、エチルセルロース(Ethyl cellulose)樹脂、アクリル(Acrycle)系樹脂、シリコーン系樹脂及びフェノール系樹脂等が挙げられる。溶媒の例にはテルピネオール、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ブチルカルビトール及びエチレングリコール等が挙げられる。また、添加剤の例には可塑剤、酸化防止剤及び分散剤等が挙げられる。
【0045】
外部電極140は、内部電極120と電気的に接続して積層体130の外面に配設されている。ここで、外部電極140を形成する材料の例には、銅、ニッケル、タングステン及びモリブデンが挙げられ、本発明の実施形態でこれらに限定するものではない。
【0046】
図2は、比較例による導電性ペーストの微細構造を示す写真である。
【0047】
図3は、本発明の実施形態による導電性ペーストの微細構造を示す写真である。
【0048】
図2のように、比較例による導電性ペーストは、ニッケルパウダ(A)とBCTZパウダ(B)とを含む。ここで、比較例による導電性ペーストにおいて、ニッケルパウダの充填率は45.3vol%であり、ニッケルパウダ(A)とBCTZパウダ(B)との充填率は61.9vo1%であった。ここで、比較例による導電性ペーストの乾燥膜密度は5.38g/cmであった。
【0049】
一方、図3のように、本発明の実施形態による導電性ペーストはニッケルパウダ(A)とBTパウダ(C)とを含む。ここで、本発明の実施形態による導電性ベーストにおいて、ニッケルパウダの充填率は47.6vol%で、ニッケルパウダ(A)とBCTZパウダ(B)との充填率は65vol%であった。ここで、本発明の実施形態による導電性ペーストの乾燥膜密度は5.65g/cmであった。
【0050】
そのため、導電性ペーストは阻害剤としてBCTZパウダを使用する場合に比べて、BTパウダを使用する場合、ニッケルパウダの充填率、導電性ペーストの充填率及び乾燥膜密度を高めることができた。これのように、ニッケルパウダだけでなく、導電性ペーストの充填率を高めることによって、内部電極の接続性を改善することができることが認められた。
【0051】
図4は、比較例と実施形態との焼成温度別BTパウダの粒成長を比較した写真である。
【0052】
ここで、比較例はBTパウダの焼結状態を観察した。一方、実施形態はBTパウダにBaO、MgO及びYを混合の後、BTパウダの焼結状態を観察した。
【0053】
図4のように、BTパウダを単独に焼結した時よりBTパウダにBaO、MgO及びYを混合した場合にBTパウダの粒成長が減少することが認められた。
【0054】
図5は、比較例と実施形態1及び2の焼成温度別収縮曲線を比較したグラフである。
【0055】
ここで、比較例による導電性ペーストはニッケルパウダ、BTパウダを含む。一方、実施形態1による導電性ペーストはBaOをさらに含み、実施形態2による導電性ペーストはBaO及びMgOの混合物をさらに含むことを除いては比較例と同じ組成にした。
【0056】
図5のように、比較例による収縮曲線(S1)に比べて、実施形態1及び2において他の収縮曲線(S2、S3)が高温に移動するのが認められた。
【0057】
これにより、導電性ペーストはキュリーシフタであるBaOまたはBaO及びMgOの混合物を含む場合に、ニッケルパウダだけでなく阻害剤の粒成長を制御することができることが認められた。
【0058】
図6は、本発明の実施形態1及び2の積層セラミックコンデンサの断面写真である。
【0059】
図6のように、キュリーシフタを単独に使用した場合に比べて、混合して使用した場合、1213℃までに焼成温度を減少する時、誘電体の焼結性を効果良く確保するのが認められた。
下記の表1は、焼成温度による実施形態1及び2の積層セラミックコンデンサのチップ容量及び損失係数(DF)を比較したものである。
【0060】
【表1】

【0061】
上記表1のように、実施形態1及び実施形態2において、焼成温度が減少するに伴って容量及びDFが減少する傾向を示す。特に、実施形態2において、1213℃まで焼成温度が低くなっても容量の急激な減少にならず、DFが減少した。これは、図6に示すように、焼成温度が1213℃までに低くなっても誘電体が十分に焼結され、誘電体の粒子が小さくなるためである。
【0062】
これにより、焼成温度を従来よりも20℃以下に下げても従来と同レベルの容量及びDFを具現化すると共に、内部電極のかたまりを減らして、誘電体の粒成長の抑制及び均一化が可能なことを確認することができた。
【0063】
したがって、本発明は、ニッケルの収縮を防止するための阻害剤としてBTパウダを使用し、導電性ペーストの密度だけでなくニッケルの充填密度を高めることによって内部電極の連続性を改善することができた。
【0064】
また、本発明のキュリー温度シフタは、誘電体の焼成温度以前に導電性ベーストに含まれた阻害剤、即ちBTパウダの焼結を抑制する共に、焼結温度差によって発生する誘電体層と内部電極との間の界面でのクラック発生を防止することができた。
【0065】
また、本発明の内部電極は、キュリー温度シフタを含み、誘電体の粒成長を抑制することによってキュリー温度の上昇を防止するため、常温での誘電率の上昇及び誘電率損失係数の増加を防止することができた。
【0066】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
100 積層セラミックコンデンサ
110 誘電体層
120 内部電極
130 積層体
140 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数に積層された誘電体層と該誘電体層間に形成された内部電極とを備えるセラミック積層体と、前記内部電極に電気的に接続され、前記セラミック積層体の外面に配設された外部電極とを含むY5V用積層セラミックコンデンサであって、
前記誘電体層は、(Ba1-xCa(Ti1-zZr)O(ここで、0.03≦x≦0.07mol%、0.05≦z≦0.15mol%、1≦m≦1.05mol%を満たす)を含み、
前記内部電極は、ニッケル粉末、BaTiOを含有するセラミック粉末及びキュリー温度シフタを含む導電性ペーストで形成される積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記セラミック粉末の含量は、前記導電性ペーストの全体を基準に5〜20wt%の範囲を有する請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記キュリー温度シフタは、Ba化合物、Mg化合物及び希土類化合物のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記希土類化合物は、Y、Dy、Ho、Er及びYbのうちの少なくともいずれか一つを含む請求項3に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記キュリー温度シフタの含量は、前記導電性ペーストの全体を基準に0.1〜10wt%の範囲を有する請求項1から4のいずれか1つに記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記ニッケル粉末の粒径範囲は、200nm〜400nmを有する請求項1から5のいずれか1つに記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記セラミック粉末の粒径は、前記ニッケル粉末の粒径に対して0.4倍より小さいサイズを有する請求項1から6のいずれか1つに記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
前記セラミック粉末は、球形形状を有する請求項1から7のいずれか1つに記載の積層セラミックコンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−199252(P2011−199252A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237101(P2010−237101)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】