説明

積層セラミック電子部品及びその製造方法

【課題】本発明は、誘電体層と内部電極との接着力に優れた積層セラミック電子部品に関する。
【解決手段】本発明は、誘電体層を含むセラミック本体と、当該セラミック本体内で当該誘電体層を介して対向配置される内部電極と、を含み、上記誘電体層の平均厚さをtd、上記内部電極の平均厚さをteとすると、0.1μm≦te≦0.5μmであり、(td+te)/te≦2.5を満足し、上記内部電極の中心線平均粗さをRa、十点平均粗さをRzとすると、5nm≦Ra≦30nm、150nm≦Rz≦td/2及び8≦Rz/Ra≦20を満足する積層セラミック電子部品を提供する。本発明によると、誘電体層と内部電極との接着力及び耐電圧特性が向上して信頼性に優れた大容量積層セラミック電子部品の具現が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体層と内部電極との接着力に優れた積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子製品の小型化傾向に伴い、積層セラミック電子部品の小型化及び大容量化も求められている。
【0003】
これにより、誘電体層と内部電極の薄膜化及び多層化が多様な方法で試みられており、近年では、誘電体層の厚さが薄くなり且つ積層数が増加する積層セラミック電子部品が製造されている。
【0004】
また、内部電極の薄膜化のために微細な金属粉末を用いて内部電極を形成したセラミック電子部品が製造されている。
【0005】
この場合、内部電極の表面粗度が次第に小さくなる長所はあるが、これにより、誘電体層と内部電極との接着力が低下する問題がある。
【0006】
これは、積層セラミック電子部品の製造において、誘電体層と内部電極との剥離による信頼性低下の問題をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、誘電体層と内部電極との接着力に優れた積層セラミック電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、誘電体層を含むセラミック本体と、当該セラミック本体内で当該誘電体層を介して対向配置される第1及び第2の内部電極と、を含み、上記誘電体層の平均厚さをtd、上記内部電極の平均厚さをteとすると、0.1μm≦te≦0.5μmであり、(td+te)/te≦2.5を満足し、上記内部電極の中心線平均粗さをRa、十点平均粗さをRzとすると、5nm≦Ra≦30nm、150nm≦Rz≦td/2及び8≦Rz/Ra≦20を満足する。
【0009】
上記誘電体層の平均厚さは、td≦1.5μmを満足することができる。
【0010】
上記誘電体層の平均厚さは、上記セラミック本体の幅(W)方向の中央部に沿う長さ及び厚さ(L−T)方向の断面における誘電体層の平均厚さであることができる。
【0011】
上記内部電極の平均厚さは、上記セラミック本体の幅(W)方向の中央部に沿う長さ及び厚さ(L−T)方向の断面における内部電極の平均厚さであることができる。
【0012】
上記内部電極に用いられる金属粉末は、第1の粒子と、当該第1の粒子より粒径が小さい第2の粒子と、を含み、上記第1の粒子の粒径は、上記第2の粒子の粒径の1.5〜2.5倍であることができる。
【0013】
また、上記第1の粒子の添加量は、上記金属粉末100重量部に対して9〜20重量部であることができる。
【0014】
本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品は、誘電体層と、当該誘電体層を介して対向配置される第1及び第2の内部電極と、を有するセラミック本体を含み、上記誘電体層の平均厚さをtd、上記内部電極の平均厚さをteとすると、td≦1.5μm及び0.1μm≦te≦0.5μmであり、上記内部電極の中心線平均粗さをRa、十点平均粗さをRzとすると、8≦Rz/Ra≦20を満足する。
【0015】
上記誘電体層の平均厚さtd及び上記内部電極の平均厚さteは、(td+te)/te≦2.5を満足することができる。
【0016】
上記十点平均粗さRzは、150nm≦Rz≦td/2を満足することができる。
【0017】
上記誘電体層の平均厚さは、上記セラミック本体の幅(W)方向の中央部に沿う長さ及び厚さ(L−T)方向の断面における中央部の誘電体層の平均厚さであることができる。
【0018】
上記内部電極の平均厚さは、上記セラミック本体の幅(W)方向の中央部に沿う長さ及び厚さ(L−T)方向の断面における中央部の内部電極の平均厚さであることができる。
【0019】
上記内部電極に用いられる金属粉末は、第1の粒子と、当該第1の粒子より粒径が小さい第2の粒子と、を含み、上記第1の粒子の粒径は、上記第2の粒子の粒径の1.5〜2.5倍であることができる。
【0020】
また、上記第1の粒子の添加量は、上記金属粉末100重量部に対して9〜20重量部であることができる。
【0021】
本発明のさらに他の実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法は、誘電体を含むセラミックグリーンシートを製造する段階と、第1の粒子と当該第1の粒子より粒径が小さい第2の粒子とを有する金属粉末を含み上記第1の粒子の添加量が上記金属粉末100重量部に対して9〜20重量部である金属ペーストを用いて上記セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する段階と、当該内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層し焼結することにより内部電極の平均厚さteが0.1μm≦te≦0.5μmであり上記内部電極の中心線平均粗さRaが5nm≦Ra≦30nmを満足し上記内部電極の中心線平均粗さRaに対する十点平均粗さRzの比Rz/Raが8≦Rz/Ra≦20を満足するセラミック本体を形成する段階と、を含む。
【0022】
上記第1の粒子の粒径は、上記第2の粒子の粒径の1.5〜2.5倍であることができる。
【0023】
上記誘電体層の平均厚さtdは、td≦1.5μmであり、(td+te)/te≦2.5を満足することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、誘電体層と内部電極との接着力及び耐電圧特性が向上して信頼性に優れた大容量積層セラミック電子部品を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを概略的に示す斜視図である。
【図2】図1のB−B'線に沿う断面図である。
【図3】図2の内部電極及び誘電体層の厚さを示す拡大図である。
【図4】図3の内部電極の中心線平均粗さRaを示す概略図である。
【図5】図3の内部電極の十点平均粗さRzを示す概略図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態による積層セラミックキャパシタの製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態は、多様な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当業界における通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及びサイズなどは、より明確な説明のために誇張されることがある。なお、図面上において同一符号で表示される要素は、同一の要素である。
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを概略的に示す斜視図であり、図2は、図1のB−B'線に沿う断面図であり、図3は、図2の内部電極及び誘電体層の厚さを示す拡大図である。
【0029】
図1から図3を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、誘電体層1を含むセラミック本体10と、当該セラミック本体10内で当該誘電体層1を介して対向配置される第1及び第2の内部電極21、22と、を含み、上記誘電体層1の平均厚さをtd、上記第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さをteとすると、0.1μm≦te≦0.5μmであり、(td+te)/te≦2.5を満足し、上記内部電極の中心線平均粗さをRa、十点平均粗さをRzとすると、5nm≦Ra≦30nm、150nm≦Rz≦td/2及び8≦Rz/Ra≦20を満足することができる。
【0030】
以下、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を積層セラミックキャパシタとして説明するが、これに制限されるものではない。
【0031】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層1を形成する原料は、十分な静電容量が得られるものであれば特に制限されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末であることができる。
【0032】
上記誘電体層1の材料としては、チタン酸バリウム(BaTiO)等のパウダーに、本発明の目的に応じて多様なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤等が添加されたものを用いることができる。
【0033】
上記誘電体層1の形成に用いられるセラミック粉末の平均粒径は、特に制限されず、本発明の目的達成のために、例えば、400nm以下に調節されることができる。
【0034】
上記第1及び第2の内部電極21、22の材料としては、例えば、パラジウム(Pd)、パラジウム−銀(Pd−Ag)合金等の貴金属材料及びニッケル(Ni)、銅(Cu)を用いることができるが、これに制限されるものではない。これらの材料のうち一つ以上の物質からなる導電性ペーストを用いて上記第1及び第2の内部電極21、22を形成することができる。
【0035】
外部電極3は、静電容量の形成のために、上記セラミック本体10の外側に形成され、上記第1及び第2の内部電極21、22と電気的に連結されることができる。
【0036】
上記外部電極3は、内部電極と同じ材質の導電性物質、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)等で形成されることができるが、これに制限されるものでない。
【0037】
上記外部電極3は、上記金属粉末にガラスフリットを添加して製造された導電性ペーストを塗布し焼成することにより形成されることができる。
【0038】
図2及び図3を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタは、上記第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さteが0.1μm≦te≦0.5μmであることができる。
【0039】
本発明の一実施形態において、上記第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さは、図2に示されるように上記セラミック本体10の長さ方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Eletron Microscope)でイメージスキャンすることにより測定されることができる。
【0040】
例えば、図2に示されるように上記セラミック本体10の幅(W)方向の中央部に沿う長さ及び厚さ(L−T)方向の断面を走査電子顕微鏡でスキャンしたイメージから取り出された任意の内部電極に対し、長さ方向に等間隔の30箇所の厚さを測定することにより、その平均値を求めることができる。
【0041】
上記等間隔の30箇所は、上記第1及び第2の内部電極21、22が重なる領域を意味する容量形成部で測定されることができる。
【0042】
なお、このような平均値の測定を10個以上の内部電極に拡張して行うと、内部電極の平均厚さをより一般化することができる。
【0043】
また、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタは、上記誘電体層1の平均厚さをtdとすると、(td+te)/te≦2.5を満足することができる。
【0044】
本発明の一実施形態において、上記誘電体層1の平均厚さは、上記第1及び第2の内部電極21、22の間に配置される誘電体層1の平均厚さを意味することができる。
【0045】
上記誘電体層1の平均厚さは、図2に示されるように上記セラミック本体10の長さ方向の断面を走査電子顕微鏡でイメージスキャンすることにより測定されることができる。
【0046】
例えば、図2に示されるように上記セラミック本体10の幅(W)方向の中央部に沿う長さ及び厚さ(L−T)方向の断面を走査電子顕微鏡でスキャンしたイメージから取り出された任意の誘電体層に対し、長さ方向に等間隔の30箇所の厚さを測定することにより、その平均値を求めることができる。
【0047】
上記等間隔の30箇所は、上記第1及び第2の内部電極21、22が重なる領域を意味する容量形成部で測定されることができる。
【0048】
上記誘電体層1の平均厚さtdは、td≦1.5μmを満足することができる。
【0049】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層1の平均厚さtdと上記第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さteとが(td+te)/te≦2.5を満足するように調節することにより、耐電圧特性が向上することができる。
【0050】
一方、上記誘電体層1の平均厚さtdと上記第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さteとの関係式(td+te)/teが2.5を超える場合は、上記誘電体層1の厚さが厚いため、耐電圧特性に問題がない。
【0051】
図4は、図3の内部電極の中心線平均粗さRaを示す概略図であり、図5は、図3の内部電極の十点平均粗さRzを示す概略図である。
【0052】
図4及び図5を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタは、上記内部電極の中心線平均粗さをRa、十点平均粗さをRzとすると、5nm≦Ra≦30nm、150nm≦Rz≦td/2及び8≦Rz/Ra≦20を満足することができる。
【0053】
上記内部電極の中心線平均粗さRaは、表面に粗度が形成された内部電極の粗さを算出した値で、上記粗度の仮想中心線を基準に平均値を求めて算出された内部電極の粗さを意味することができる。
【0054】
以下、上記内部電極の中心線平均粗さRaを算出する方法について、図4を参照して具体的に説明する。まず、上記内部電極の一表面に形成されている粗度に対し、仮想中心線を引くことができる。
【0055】
次に、上記粗度の仮想中心線を基準にそれぞれの距離(例えば、r、r、r・・・r13)を測定した後、下記式1からそれぞれの距離の平均値を求めて上記内部電極の中心線平均粗さRaを算出することができる。
【0056】
【数1】

【0057】
上記十点平均粗さRzは、上記粗度の仮想中心線を基準に当該仮想中心線の上方にある5個の最高点及び当該仮想中心線の下方にある5個の最低点のそれぞれの距離の平均値を求めて算出された値を意味することができる。
【0058】
以下、上記十点平均粗さRzを算出する方法について、図5を参照して具体的に説明する。まず、上記内部電極の一表面に形成されている粗度に対し、仮想中心線を引くことができる。
【0059】
次に、上記粗度の仮想中心線を基準に当該仮想中心線の上方にある5個の最高点(r+r+r+r+r)及び当該仮想中心線の下方にある5個の最低点(r+r+r+r+r10)のそれぞれの距離を測定した後、下記式2からそれぞれの距離の平均値を求めて上記十点平均粗さRzを算出することができる。
【0060】
【数2】

【0061】
上記内部電極の中心線平均粗さRaを5nm≦Ra≦30nmの範囲に調節することにより、耐電圧特性に優れ誘電体層と内部電極との接着力が向上し信頼性に優れた積層セラミックキャパシタを具現することができる。
【0062】
上記内部電極の中心線平均粗さRaが5nm未満の場合は、誘電体層と内部電極との接着力が低下して剥離(Delamination)不良が生じることがあり、上記内部電極の中心線平均粗さRaが30nmを超える場合は、薄膜の誘電体層1を介して第1及び第2の内部電極21、22の層間間隔が狭くなって耐電圧特性が低下することがある。
【0063】
また、上記十点平均粗さRzを150nm≦Rz≦td/2の範囲に調節することにより、耐電圧特性及び誘電体層と内部電極との接着力がより向上した積層セラミックキャパシタを具現することができる。
【0064】
上記十点平均粗さRzが150nm未満の場合は、誘電体層と内部電極との接着力が低下して剥離不良が生じることがあり、上記十点平均粗さRzがtd/2を超える場合は、第1及び第2の内部電極21、22間のショート不良等が生じ耐電圧特性が低下することがある。
【0065】
また、上記内部電極の中心線平均粗さRaと十点平均粗さRzとの比Rz/Raを8≦Rz/Ra≦20の範囲内に調節することにより、耐電圧特性及び誘電体層と内部電極との接着力がより向上した積層セラミックキャパシタを具現することができる。
【0066】
内部電極を形成するために粒径が小さい微細な金属粉末を用いる場合、上記内部電極の中心線平均粗さRaを減らして内部電極の薄層化が可能となる。
【0067】
しかしながら、粒径が小さい微細な金属粉末のみを用いる場合、上記内部電極の中心線平均粗さRaが小さくなりすぎるため、誘電体層と内部電極との接着力が低下して剥離不良が生じることがある。
【0068】
したがって、粒径が小さい微細な金属粉末に粒径が相対的に大きい金属粉末を適宜混合して上記十点平均粗さRzを適宜高めると、誘電体層と内部電極との接着力を向上させることができる。
【0069】
このように、上記内部電極の中心線平均粗さRaに対する十点平均粗さRzの比Rz/Raを適宜調節すると、内部電極の薄層化が可能となり、耐電圧特性及び誘電体層と内部電極との接着力をより向上させることができる。
【0070】
即ち、上記内部電極の中心線平均粗さRaと十点平均粗さRzとの比Rz/Raを8≦Rz/Ra≦20の範囲内に調節することにより、内部電極の薄層化が可能となり、耐電圧特性及び誘電体層と内部電極との接着力をより向上させることができる。
【0071】
上記内部電極の中心線平均粗さRaと十点平均粗さRzとの比Rz/Raが8未満の場合は、誘電体層と内部電極との接着力が低下して剥離不良が生じることがあり、上記内部電極の中心線平均粗さRaと十点平均粗さRzとの比Rz/Raが20を超える場合は、耐電圧特性が低下することがある。
【0072】
したがって、本発明の一実施形態によると、上記内部電極の中心線平均粗さをRa、十点平均粗さをRzとすると、5nm≦Ra≦30nm、150nm≦Rz≦td/2及び8≦Rz/Ra≦20を満足するように調節することにより、誘電体層と内部電極との接着力が強化され耐電圧特性が向上し信頼性に優れた大容量積層セラミック電子部品を具現することができる。
【0073】
上記のように内部電極の中心線平均粗さRa、十点平均粗さRz及びその比Rz/Raを上記範囲内に調節するために、本発明の一実施形態によると、上記第1及び第2の内部電極21、22に用いられる金属粉末は、第1の粒子と、当該第1の粒子より粒径が小さい第2の粒子と、を含むことができる。
【0074】
上記第1の粒子の粒径は、上記第2の粒子の粒径の1.5〜2.5倍であることができる。
【0075】
即ち、内部電極の薄層化を図ると共に耐電圧特性を向上させるために、上記Ra、Rz及びRz/Raを一定範囲内に調節する上で、上記第1及び第2の内部電極21、22に用いられる金属粉末としては、異種サイズの粉末を混合したものを用いることができる。
【0076】
上記異種サイズの粉末は、第1の粒子と、当該第1の粒子より粒径が小さい第2の粒子と、を含み、上記第1の粒子の粒径は、上記第2の粒子の粒径の1.5〜2.5倍であることができる。
【0077】
上記第1の粒子の粒径が上記第2の粒子の粒径の1.5倍未満の場合は、粒径の差が小さいため、誘電体層と内部電極との接着力が低下して剥離不良が生じることがあり、上記第1の粒子の粒径が上記第2の粒子の粒径の2.5倍を超える場合は、耐電圧特性が低下することがある。
【0078】
上記金属粉末の粒径は、特に制限されず、例えば、第1の粒子の粒径は300nm以下であり、当該第1の粒子より粒径が小さい第2の粒子の粒径は200nm以下であることができる。このように異なるサイズを有する第1の粒子と第2の粒子とを混合して上記金属粉末として用いることができる。
【0079】
上記第1の粒子の添加量は、上記金属粉末100重量部に対して9〜20重量部であることができる。
【0080】
上記第1の粒子の添加量が9重量部未満の場合は、粒径が大きい粒子の添加量が少ないため、誘電体層と内部電極との接着力が低下して剥離不良が生じることがあり、上記第1の粒子の添加量が20重量部を超える場合は、耐電圧特性が低下することがある。
【0081】
本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品は、誘電体層1と、当該誘電体層1を介して対向配置される第1及び第2の内部電極21、22と、を有するセラミック本体10を含み、上記誘電体層1の平均厚さをtd、上記第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さをteとすると、td≦1.5μm及び0.1μm≦te≦0.5μmであり、上記内部電極の中心線平均粗さをRa、十点平均粗さをRzとすると、8≦Rz/Ra≦20を満足することができる。
【0082】
上記誘電体層1の平均厚さtd及び上記第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さteは、(td+te)/te≦2.5を満足することができる。
【0083】
上記十点平均粗さRzは、150nm≦Rz≦td/2を満足することができる。
【0084】
上記内部電極の平均厚さは、上記セラミック本体の幅(W)方向の中央部に沿う長さ及び厚さ(L−T)方向の断面における中央部の内部電極の平均厚さであることができる。
【0085】
上記誘電体層の平均厚さは、上記セラミック本体の幅(W)方向の中央部に沿う長さ及び厚さ(L−T)方向の断面における中央部の誘電体層の平均厚さであることができる。
【0086】
なお、このような平均値の測定を10個以上の誘電体層に拡張して行うと、誘電体層の平均厚さをより一般化することができる。
【0087】
本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品において、上述した本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品と重なる説明は省略する。
【0088】
図6は、本発明のさらに他の実施形態による積層セラミックキャパシタの製造工程図である。
【0089】
図6を参照すると、本発明のさらに他の実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法は、誘電体を含むセラミックグリーンシートを製造する段階と、第1の粒子と当該第1の粒子より粒径が小さい第2の粒子とを有する金属粉末を含み上記第1の粒子の添加量が上記金属粉末100重量部に対して9〜20重量部である金属ペーストを用いて上記セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する段階と、当該内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層し焼結することにより内部電極の平均厚さteが0.1μm≦te≦0.5μmであり上記内部電極の中心線平均粗さRaが5nm≦Ra≦30nmを満足し上記内部電極の中心線平均粗さRaに対する十点平均粗さRzの比Rz/Raが8≦Rz/Ra≦20を満足するセラミック本体を形成する段階と、を含むことができる。
【0090】
以下、本発明のさらに他の実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法を詳細に説明する。
【0091】
まず、誘電体を含むセラミックグリーンシートを製造することができる。上記セラミックグリーンシートは、セラミック粉末とバインダーと溶剤とを混合して形成されたスラリーをドクターブレード法により数μmの厚さを有するシート状にすることにより製造されることができる。
【0092】
その後、第1の粒子と当該第1の粒子より粒径が小さい第2の粒子とを有する金属粉末を含み上記第1の粒子の添加量が上記金属粉末100重量部に対して9〜20重量部である金属ペーストを用いて、上記セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成することができる。
【0093】
上記第1の粒子の粒径は、上記第2の粒子の粒径の1.5〜2.5倍であることができる。
【0094】
次に、上記内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層し焼結することにより、内部電極の平均厚さteが0.1μm≦te≦0.5μmであり、上記内部電極の中心線平均粗さRaが5nm≦Ra≦30nmを満足し、上記内部電極の中心線平均粗さRaに対する十点平均粗さRzの比Rz/Raが8≦Rz/Ra≦20を満足するセラミック本体を形成することができる。
【0095】
上記誘電体層の平均厚さtdは、td≦1.5μmであり、(td+te)/te≦2.5を満足することができる。
【0096】
本実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法において、上述した本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品と重なる説明は省略する。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これに制限されるものではない。
【0098】
本実施例は、0.1μm≦te≦0.5μmの平均厚さを有する第1及び第2の内部電極21、22が適用された積層セラミックキャパシタに対し、当該第1及び第2の内部電極21、22に用いられる異種サイズの金属粒子間の混合比、内部電極の中心線平均粗さRa、十点平均粗さRz、その比Rz/Ra及び誘電体層の平均厚さtdによる信頼性向上の有無を試験したものである。
【0099】
本実施例による積層セラミックキャパシタは、下記のような段階により製作された。
【0100】
まず、平均粒径が0.1μmのチタン酸バリウム(BaTiO)等のパウダーを含んで形成されたスラリーをキャリアフィルム上に塗布し乾燥することにより製造された複数のセラミックグリーンシートで誘電体層1を形成した。
【0101】
その後、ニッケル粒子の平均サイズがそれぞれ0.3μmと0.2μmの第1の粒子と第2の粒子とを4:1〜10:1の重量比で混合した内部電極用導電性ペーストを製造した。
【0102】
次に、上記セラミックグリーンシート上に上記内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷工法により塗布して内部電極を形成した後、190〜250層積層して積層体を製造した。
【0103】
次いで、上記積層体を圧着し切断して0603規格サイズのチップを製造し、当該チップをH0.1%以下の還元雰囲気下で1050〜1200℃の温度で焼成した。
【0104】
次いで、外部電極形成工程、メッキ工程等を経て積層セラミックキャパシタを製作した。
【0105】
上記積層セラミックキャパシタの試料の断面を観察した結果、内部電極の平均厚さは0.10〜0.50μmであり、誘電体層の平均厚さは0.10〜0.80μmであった。
【0106】
下記表1は、誘電体層1の平均厚さtd、第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さte、及び誘電体層1の平均厚さtdと第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さteとの和と第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さteとの比による絶縁破壊電圧(Breakdown Voltage、BDV)を比較したものである。
【0107】
【表1】

【0108】
上記表1中、絶縁破壊電圧(Breakdown Voltage、BDV)は、1.0V/secの速度でDC電圧を印加しながら評価したもので、60Vの絶縁破壊電圧を基準に絶縁破壊が起こる場合をO、絶縁破壊が起こらない場合をXで表示した。
【0109】
上記表1を参照すると、第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さteと誘電体層1の平均厚さtdとの関係が(td+te)/te≦2.5を満足する場合、絶縁破壊が起こるため、信頼性試験において問題が生じる可能性があることが分かる。
【0110】
これに対し、上記数値範囲が2.5を超える試料1、8、12及び23の場合、誘電体層の厚さが厚いことから、絶縁破壊が起こらないため、耐電圧特性に問題がないことが分かる。
【0111】
しかしながら、第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さteと誘電体層1の平均厚さtdとの関係が(td+te)/te≦2.5を満足しても、後述する本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品によると、内部電極の中心線平均粗さRa、十点平均粗さRz及びその比Rz/Raを調節することにより、耐電圧特性を向上させることができることが分かる。
【0112】
下記表2は、第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さteが異なる場合、内部電極の中心線平均粗さRa、十点平均粗さRz及びその比Rz/Raによる剥離(Delamination)発生の有無を比較したものである。
【0113】
【表2】

【0114】
上記表2を参照すると、試料1は、内部電極の平均厚さteが0.5μmのもので、内部電極の中心線平均粗さRa、十点平均粗さRz及びその比Rz/Raが本発明の数値範囲を外れる場合に剥離が発生するため、信頼性試験において問題が生じる可能性があることが見られる。
【0115】
これに対し、試料2〜3は、内部電極の平均厚さteが0.5μmを超えるもので、内部電極の中心線平均粗さRa、十点平均粗さRz及びその比Rz/Raが本発明の数値範囲を外れる場合にも剥離が発生しないため、信頼性試験において問題が生じないことが分かる。
【0116】
したがって、後述する本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品によると、内部電極の平均厚さが0.5μm未満の場合に剥離不良の減少及び信頼性向上の効果があることが分かる。
【0117】
下記表3は、第1及び第2の内部電極21、22に用いられる異種サイズの金属粒子間の混合比、第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さte、誘電体層1の平均厚さtd、誘電体層1の平均厚さtdと第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さteとの和と第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さteとの比、内部電極の中心線平均粗さRa、十点平均粗さRz及びその比Rz/Raによる絶縁破壊の有無及び剥離発生の有無を比較したものである。
【0118】
【表3】

【0119】
上記表3から分かるように、内部電極の中心線平均粗さRa、十点平均粗さRz及びその比Rz/Raが本発明の数値範囲を外れる比較例1〜10の場合、最大電圧が60Vの絶縁破壊電圧(BDV)を基準に絶縁破壊が起こり剥離も発生するため、信頼性に問題があることが分かる。
【0120】
これに対し、本発明の数値範囲を満足する実施例1〜13の場合、第1及び第2の内部電極21、22の平均厚さteと誘電体層1の平均厚さtdとの関係が(td+te)/te≦2.5を満足しても、絶縁破壊が起こらず剥離も発生しないため、耐電圧特性及び信頼性に優れた積層セラミックキャパシタの具現が可能となることが分かる。
【0121】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されることなく添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載の本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で当該技術分野における通常の知識を有する者による多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これもまた本発明の範囲に属する。
【符号の説明】
【0122】
1 誘電体層
21、22 第1及び第2の内部電極
3 外部電極
10 セラミック本体
td 誘電体層の平均厚さ
te 内部電極の平均厚さ
Ra 内部電極の中心線平均粗さ
Rz 内部電極の十点平均粗さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体内で前記誘電体層を介して対向配置される第1及び第2の内部電極と
を含み、
前記誘電体層の平均厚さをtd、前記内部電極の平均厚さをteとすると、0.1μm≦te≦0.5μmであり、(td+te)/te≦2.5を満足し、前記内部電極の中心線平均粗さをRa、十点平均粗さをRzとすると、5nm≦Ra≦30nm、150nm≦Rz≦td/2及び8≦Rz/Ra≦20を満足する、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記誘電体層の平均厚さtdは、td≦1.5μmを満足する、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
誘電体層と、当該誘電体層を介して対向配置される第1及び第2の内部電極と、を有するセラミック本体を含み、
前記誘電体層の平均厚さをtd、前記内部電極の平均厚さをteとすると、td≦1.5μm及び0.1μm≦te≦0.5μmであり、前記内部電極の中心線平均粗さをRa、十点平均粗さをRzとすると、8≦Rz/Ra≦20を満足する、積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記誘電体層の平均厚さtd及び前記内部電極の平均厚さteは、(td+te)/te≦2.5を満足する、請求項3に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記十点平均粗さRzは、150nm≦Rz≦td/2を満足する、請求項3または4に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記誘電体層の平均厚さtdは、前記セラミック本体の幅(W)方向の中央部に沿う長さ及び厚さ(L−T)方向の断面における中央部の誘電体層の平均厚さである、請求項1から5の何れか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記内部電極の平均厚さは、前記セラミック本体の幅(W)方向の中央部に沿う長さ及び厚さ(L−T)方向の断面における中央部の内部電極の平均厚さである、請求項1から6の何れか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記内部電極に用いられる金属粉末は、第1の粒子と、当該第1の粒子より粒径が小さい第2の粒子と、を含む、請求項1から7の何れか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記第1の粒子の粒径は、前記第2の粒子の粒径の1.5〜2.5倍である、請求項8に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記第1の粒子の添加量は、前記金属粉末100重量部に対して9〜20重量部である、請求項8または9に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
誘電体を含むセラミックグリーンシートを製造する段階と、
第1の粒子と当該第1の粒子より粒径が小さい第2の粒子とを有する金属粉末を含み前記第1の粒子の添加量が前記金属粉末100重量部に対して9〜20重量部である金属ペーストを用いて、前記セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する段階と、
前記内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層し焼結することにより、内部電極の平均厚さteが0.1μm≦te≦0.5μmであり、前記内部電極の中心線平均粗さRaが5nm≦Ra≦30nmを満足し、前記内部電極の中心線平均粗さRaに対する十点平均粗さRzの比Rz/Raが8≦Rz/Ra≦20を満足するセラミック本体を形成する段階と
を含む、積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記第1の粒子の粒径は、前記第2の粒子の粒径の1.5〜2.5倍である、請求項11に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記誘電体の層の平均厚さtdは、td≦1.5μmであり、(td+te)/te≦2.5を満足する、請求項11または12に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58718(P2013−58718A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−282107(P2011−282107)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】