説明

積層パターン形成方法とその形成装置、積層体、電子回路部品及び多層回路基板の製造方法

【課題】積層パターン形成工程の連続処理化を可能として、製造設備の簡素化と製造コストの低減を図ることのできる、多層配線基板等の製造に用いる積層体の積層パターン形成方法、その形成装置及び積層体を提供する。また、その積層パターン形成方法に基づき製造される多層回路基板の製造方法及びその多層回路基板を用いた電子回路部品を提供する。
【解決手段】単一又は複数の感光ドラム1を用いて、認識カメラCにより絶縁性基体13及び/又は直前の絶縁体層又は導体層の一部又は全部を位置合わせの基準位置として判別し、判別した基準位置に基づき、絶縁性基体上に導体層と絶縁体層の組を1組以上積層定着させた積層パターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子部品を実装して電子機器を構成するための電子回路部品や多層配線基板等の製造に用いる積層体の積層パターン形成方法及びその形成置に関する。また、本発明はその積層パターン形成方法に基づき製造される多層回路基板の製造方法及びその多層回路基板を用いた電子回路部品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近は、電子機器の小型化あるいは高機能化が進んでおり、それに実装される電子部品あるいは電子回路実装基板の小型化、高集積化あるいは高密度化がより一層必要となっている。また、かかる小型化等を実現するために、実装段階あるいは製造段階におけるコスト低減も求められている。
【0003】
近年、複数の配線基板を積層することにより3次元的な配線の引き回しを可能とする多層配線基板を用いて、電子回路実装基板の小型化、高集積化あるいは高密度化が図られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、配線基板上の導体配線パターンを転写シートを用いた転写法によって形成する多層配線基板の製造方法が開示されている。転写法による製造は、以下の工程により行われる。
まず、絶縁基材の表面に第1層の導体パターンが形成された配線基板を作製し、その基材面に絶縁性スラリーを塗布して絶縁層を形成する。その絶縁層に第1層の導体パターンと連絡するビアホールをレーザ加工等によって形成し、ビアホール内に導電ペーストを充填する。更に、あらかじめ転写シート上に形成しておいた第2層の導体パターンを絶縁層に転写し、導電ペーストを介して、第1層と第2層の導体パターンを接続形成する。導体パターンは、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の転写シート上に貼着された導体層をウェットエッチング法によりパターニングして形成される。3層以上の導体層を形成する場合には、上記の工程を繰り返して行う。
【特許文献1】特開平10−107445号公報
【特許文献2】特開2002−231557号公報
【特許文献3】特許第3909728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記転写シートによる製造方法においては、絶縁層の積層工程、孔あけ工程、導電ペーストの充填工程、導体パターンの転写工程などの個別工程を必要とするため、工程が複雑になり、製造コストが高くなるといった問題があった。
【0006】
また、半導体電子部品については連続製造工程による多量製造が可能となっている。しかし、例えば、特許文献2に示された積層コンデンサ等のセラミックス電子部品などでは、多数のセラミックス基板を積層したり、導体層を形成したりする工程を必要するため、半導体処理工程のように連続処理化ができず、製造コストの低減の実現が難しかった。
【0007】
従って、この発明の目的は、積層パターン形成工程の連続処理化を可能として、製造設備の簡素化と製造コストの低減を図ることのできる、多層配線基板等の製造に用いる積層体の積層パターン形成方法、その形成置及び積層体を提供することである。また、本発明はその積層パターン形成方法に基づき製造される多層回路基板の製造方法及びその多層回路基板を用いた電子回路部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の形態は、導体パターンに対応する導体パターン静電潜像が形成された像受容体の表面に、導体用粒子を帯電付着させることにより、前記導体パターン静電潜像を導体用粒子像として顕在形成し、前記導体用粒子像を絶縁性基体上に転写した後、前記導体用粒子像を定着処理して導体層を前記絶縁性基体上に形成する第1工程と、次に、絶縁体パターンに対応する絶縁体パターン静電潜像が形成された像受容体の表面に、絶縁体用粒子を帯電付着させることにより、前記絶縁体パターン静電潜像を絶縁体用粒子像として顕在形成し、前記絶縁体用粒子像を前記導体パターン像の所定位置に転写した後、前記絶縁体用粒子像を定着処理して絶縁体層を前記導体層の上に形成する第2工程からなり、前記第1工程と前記第2工程からなる連続工程を前記絶縁性基体上に積層しながら1回以上反復処理し、前記絶縁性基体上に前記導体層と前記絶縁体層の組をこの順に1組以上積層定着させた積層パターンを形成する積層パターン形成方法である。
【0009】
本発明の第2の形態は、前記第1の形態において、前記第1工程と前記第2工程からなる連続工程を前記絶縁性基体上に積層しながら1回以上反復処理した後、その最上層に最終工程として前記第1工程を行い、前記絶縁性基体上に前記導体層と前記絶縁体層の組をこの順に1組以上積層定着させ、その上に最上層として前記導体層を備えた積層パターンを形成する積層パターン形成方法である。
【0010】
本発明の第3の形態は、前記第1又は第2の形態において、前記積層パターンの最上層の上に前記絶縁性基体と同材料からなる被覆用絶縁層を被覆形成する積層パターン形成方法である。
【0011】
本発明の第4の形態は、前記第1、第2又は第3の形態において、前記導体用粒子像又は前記絶縁体用粒子像を転写する際に、位置合わせの基準として、前記絶縁性基体及び/又は直前の絶縁体層又は導体層の一部又は全部を用いる積層パターン形成方法である。
【0012】
本発明の第5の形態は、前記第1〜第4のいずれかの形態において、前記絶縁層がスルーホールを有する場合に、前記第1工程において、前記スルーホールを充填する前記導体用粒子像を転写して、前記スルーホールを充填した導体層を形成する積層パターン形成方法である。
【0013】
本発明の第6の形態は、前記第1〜第5のいずれかの形態において、前記第1工程と前記第2工程に用いる像受容体は、前記導体用粒子又は前記絶縁体用粒子を回転面に帯電付着させる回転体からなり、前記回転体を回転させながら前記導体用粒子像又は前記絶縁体用粒子像の前記転写を行う積層パターン形成方法である。
【0014】
本発明の第7の形態は、導体パターンに対応する静電潜像を形成する像受容体と、前記像受容体の表面に導体用粒子を帯電付着させることにより、前記静電潜像を導体用粒子像として顕在形成する導体用粒子付着手段と、前記導体用粒子像を絶縁性基体上に転写する転写手段と、前記導体用粒子像を定着処理して前記絶縁性基体上に導体層を定着形成する定着手段と、前記絶縁性基体及び/又は前記導体層の一部又は全部を位置合わせの基準位置として判別する判別手段と、前記基準位置に基づき、絶縁体パターンに対応する絶縁体用粒子像を前記導体層に転写する積層転写手段とを有し、前記積層転写手段により前記絶縁性基体上に前記導体層と前記絶縁体層の組を1組以上積層定着させた積層パターンを形成する積層パターン形成装置である。
【0015】
本発明の第8の形態は、前記第7の形態において、前記像受容体は、前記導体用粒子又は前記絶縁体用粒子を回転面に帯電付着させる回転体からなり、前記回転体を回転させながら前記導体用粒子像又は前記絶縁体用粒子像の前記転写を行う積層パターン形成装置である。
【0016】
本発明の第9の形態は、導体パターンに対応する静電潜像を形成する第1の像受容体と、絶縁体パターンに対応する静電潜像を形成する第2の像受容体と、前記第1の像受容体の表面に導体用粒子を帯電付着させることにより、前記静電潜像を導体用粒子像として顕在形成する導体用粒子付着手段と、記第2の像受容体の表面に絶縁体用粒子を帯電付着させることにより、前記静電潜像を絶縁体用粒子像として顕在形成する絶縁体用粒子付着手段と、前記導体用粒子像を絶縁性基体上に転写する導体転写手段と、前記導体用粒子像を定着処理して前記絶縁性基体上に導体層を定着形成する導体定着手段と、前記絶縁性基体及び/又は前記導体層の一部又は全部を位置合わせの基準位置として判別する判別手段と、前記基準位置に基づき、前記絶縁体用粒子像を前記導体層に転写する絶縁体転写手段と、前記絶縁体用粒子像を定着処理して前記導体層上に絶縁体層を定着形成する絶縁体定着手段とを有し、前記絶縁性基体上に前記導体層と前記絶縁体層の組を1組以上積層定着させた積層パターンを形成する積層パターン形成装置である。
【0017】
本発明の第10の形態は、前記第9の形態において、前記第1の像受容体及び第2の像受容体は、前記導体用粒子又は前記絶縁体用粒子を回転面に帯電付着させる回転体からなり、前記回転体を回転させながら前記導体用粒子像又は前記絶縁体用粒子像の前記転写を行う積層パターン形成装置である。
【0018】
本発明の第11の形態は、前記第1〜第6のいずれかの形態に係る積層パターン形成方法により、絶縁性基体上に導体層及び絶縁体層からなる積層パターンが積層された積層体である。
【0019】
本発明の第12の形態は、前記第11の形態に係る積層体を焼成して多層回路基板を製造する多層回路基板の製造方法である。
【0020】
本発明の第13の形態は、前記第12の形態に係る多層回路基板の製造方法により製造された多層回路基板である。
【0021】
本発明の第13の形態は、前記第13の形態に係る多層回路基板の表面及び/又は裏面に電子部品を実装した電子回路部品である。
【発明の効果】
【0022】
本出願人は、特許文献3において、電子写真方式を利用して配線基板の配線パターンを高密度、高精度かつ安価に製造することができる製造装置を開示している。本発明は、かかる電子写真方式を利用した配線基板製造方法により多層配線基板の製造過程を自動化できる点に着目してなされたものであり、本発明の第1の形態によれば、導体パターンに対応する導体パターン静電潜像が形成された像受容体の表面に、導体用粒子を帯電付着させることにより、前記導体パターン静電潜像を導体用粒子像として顕在形成し、前記導体用粒子像を絶縁性基体上に転写した後、前記導体用粒子像を定着処理して導体層を前記絶縁性基体上に形成する第1工程と、次に、絶縁体パターンに対応する絶縁体パターン静電潜像が形成された像受容体の表面に、絶縁体用粒子を帯電付着させることにより、前記絶縁体パターン静電潜像を絶縁体用粒子像として顕在形成し、前記絶縁体用粒子像を前記導体パターン像の所定位置に転写した後、前記絶縁体用粒子像を定着処理して絶縁体層を前記導体層の上に形成する第2工程からなり、前記第1工程と前記第2工程からなる連続工程を前記絶縁性基体上に積層しながら1回以上反復処理し、前記絶縁性基体上に前記導体層と前記絶縁体層の組をこの順に1組以上積層定着させた積層パターンを形成する。従って、前記第1工程により、像受容体の表面に顕在形成した前記導体用粒子像を絶縁性基体上に転写し、定着処理して導体層を前記絶縁性基体上に形成し、次に前記第2工程により、像受容体の表面に顕在形成した前記絶縁体用粒子像を前記導体パターン像の所定位置に転写し、定着処理して絶縁体層を前記導体層の上に形成する連続工程を反復処理するので、中間に導体層を絶縁体層で挟み、最上層を絶縁体層とした積層パターンを円滑に連続形成することができ、製造設備の簡素化と製造コストの低減を図ることができる。この最上層を絶縁体層とした積層パターンは、例えば積層コンデンサ等の積層セラミックス電子部品等の多層構造部品に好適である。
【0023】
本発明の第2の形態によれば、前記第1工程と前記第2工程からなる連続工程を前記絶縁性基体上に積層しながら1回以上反復処理した後、その最上層に最終工程として前記第1工程を行い、前記絶縁性基体上に前記導体層と前記絶縁体層の組をこの順に1組以上積層定着させ、その上に最上層として前記導体層を備えた積層パターンを形成するので、中間に導体層を絶縁体層で挟み、最上層を導体層とした積層パターンを円滑に連続形成することができ、製造設備の簡素化と製造コストの低減を図ることができる。この最上層を導体層とした積層パターンは、例えば表面に電子部品を実装する多層配線基板に好適である。
本発明における導体用粒子原料には、銅(Cu)、銀パラジウム(Ag−Pd)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)あるいは錫(Sn)など、通常電子配線基板に使用するような金属材料であればどのようなものでも使用することができる。特に亜鉛、錫、インジウム(In)などを使用すれば、300℃程度以下の低温でトナー像の導電性パターン化処理を行うことができる。また、本発明における絶縁体用粒子原料には、アルミナセラミックス、ムライトセラミックス、窒化珪素セラミックス、窒化アルミニウムセラミックス、ガラスセラミックス等から選択され、特に、導体金属の融点より低い焼成温度の素材として、ガラス粉末を含有させたセラミックス原料を使用することができる。
【0024】
本発明の第3の形態によれば、前記積層パターンの最上層の上に前記絶縁性基体と同材料からなる被覆用絶縁層を被覆形成するので、前記被覆用絶縁層を保護層として有した多層電子部品あるいは多層配線基板を製造することができる。
【0025】
本発明の第4の形態によれば、前記導体用粒子像又は前記絶縁体用粒子像を転写する際に、位置合わせの基準として、前記絶縁性基体及び/又は直前の絶縁体層又は導体層の一部又は全部を用いるので、位置ずれを生ずることなく、簡易かつ高精度に積層処理することができ、微細パターンを備えた、多層構造の電子部品あるいは多層配線基板を製造することができる。
【0026】
本発明の第5の形態によれば、前記絶縁層がスルーホールを有する場合に、前記第1工程において、前記スルーホールを充填する前記導体用粒子像を転写して、前記スルーホールを充填した導体層を形成するので、例えば、異なる導体層パターンを幾層にも備えた多層配線基板等を高精度に製造することができる。
【0027】
本発明の第6の形態によれば、前記第1工程と前記第2工程に用いる像受容体は、前記導体用粒子又は前記絶縁体用粒子を回転面に帯電付着させる回転体からなり、前記回転体を回転させながら前記導体用粒子像又は前記絶縁体用粒子像の前記転写を行うので、像受容体の回転駆動によって、帯電付着から転写までを連続した工程により行うことができ、連続処理工程の設備面での簡素化を図ることができる。なお、本発明における像受容体にはドラム型回転体の他に、無端ベルト型回転体を使用することができる。
【0028】
本発明の第7の形態によれば、単一の像受容体を用いて、前記絶縁性基体及び/又は前記導体層の一部又は全部を位置合わせの基準位置として判別し、前記基準位置に基づき、絶縁体パターンに対応する絶縁体用粒子像を前記導体層に転写する前記積層転写手段により前記絶縁性基体上に前記導体層と前記絶縁体層の組を1組以上積層定着させた積層パターンを形成するので、前記像受容体に対して前記絶縁体用粒子像又は前記導体用粒子像の形成を切り換えることにより、積層パターンの連続形成を可能とする、簡素化された積層パターン製造装置を実現することができる。
【0029】
本発明の第8の形態によれば、前記像受容体は、前記導体用粒子又は前記絶縁体用粒子を回転面に帯電付着させる回転体からなり、前記回転体を回転させながら前記導体用粒子像又は前記絶縁体用粒子像の前記転写を行うので、像受容体の回転駆動によって、帯電付着から転写までを連続した工程により行うことができ、連続処理工程の設備面での簡素化を図ることができる積層パターン製造装置を実現することができる。
【0030】
本発明の第9の形態によれば、前記第1の像受容体を用いて、帯電付着から転写までを連続した工程により導体層を形成し、前記第2の像受容体を用いて帯電付着から転写までを連続した工程により絶縁体層を形成し、更に前記絶縁性基体及び/又は前記導体層の一部又は全部を位置合わせの基準位置として判別し、前記基準位置に基づき、前記絶縁体用粒子像を前記導体層に転写して、前記絶縁性基体上に前記導体層と前記絶縁体層の組を1組以上積層定着させた積層パターンを形成するので、導体層の形成工程と絶縁体層の形成工程を連続処理化可能な積層パターン製造装置を実現することができる。
【0031】
本発明の第10の形態によれば、前記第1の像受容体及び第2の像受容体は、前記導体用粒子又は前記絶縁体用粒子を回転面に帯電付着させる回転体からなり、前記回転体を回転させながら前記導体用粒子像又は前記絶縁体用粒子像の前記転写を行うので、像受容体の回転駆動によって、帯電付着から転写までを連続した工程により行うことができ、連続処理工程の設備面での簡素化を図ることができる積層パターン製造装置を実現することができる。
【0032】
本発明の第11の形態によれば、前記第1〜第6のいずれかの形態に係る積層パターン形成方法により、絶縁性基体上に導体層及び絶縁体層からなる積層パターンが積層されたので、中間段階の製造コストを低減して、焼成等の後処理を経て、安価な多層構造電子部品又は多層配線基板を得ることのできる積層体の提供が可能となる。
【0033】
本発明の第12の形態によれば、前記第11の形態に係る積層体を焼成して多層回路基板を製造するので、本発明に係る積層パターン形成工程により製造コストを低減して、安価な多層回路基板を製造することができる。
【0034】
本発明の第13の形態によれば、前記第12の形態に係る多層回路基板の製造方法により製造されるので、基板の積層パターン形成工程の製造コストを低減して、安価な多層回路基板を提供することができる。
【0035】
本発明の第14の形態によれば、前記第12の形態に係る多層回路基板の表面及び/又は裏面に電子部品を実装したので、基板の積層パターン形成工程の製造コストを低減した安価な電子回路部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は、本発明の実施の一形態としての多層配線基板製造装置の概略的な構成を示す。像受容体である感光ドラム1は、表面に光導電性材料による皮膜が形成されている。感光ドラム1の周囲には、現像器2、帯電器4が配設され、現像器2から供給される現像剤粒子であるトナーを、電気絶縁性基体であるグリーンシート13の表面に転写させる。感光ドラム1は、図示の時計まわり方向に回転し、感光ドラム1の表面に付着している余分のトナーは、清掃器5により除去される。グリーンシート13は搬送ベルト又は搬送チェーンからなる搬送装置15により感光ドラム1の最下点の位置に向けて図の左方向に搬送される。感光ドラム1の最下点には転写器6が対向配置されている。
【0037】
現像器2では、粒状のトナー8がトナー容器7に貯留され、供給ローラ9を介して現像ローラ11の表面に供給される。供給ローラ9は、導電性繊維10が植毛されて形成され、トナー8を荷電させる。現像器2下部に配設されたトナー厚規制ブレード19は、現像ローラ11と微細な距離を隔てて離間し、現像ローラ11の表面に付着するトナー厚みを規制する。トナー容器7にはトナー8に荷電を与えるために電位が印加されている。清掃器5は、回収されるトナー8の電荷をリセットするためのブレードを有し、そのブレードは半導電性材料で形成され、接地又は電位が印加されている。
本実施形態においては、絶縁体及び導体層からなる多層配線基板を製造するために、絶縁体用トナーの現像器と、導体用トナーの現像器が使用され、それぞれ現像器2の構成を備える。絶縁体層及び導体層の各形成工程に応じて、感光ドラム1に対して装着される。
【0038】
現像ローラ11は、例えば弾性を有する半導電性(106 〜108 Ω)のゴム材料で形成され、トナー厚規制ブレード19も弾性ゴム材料で形成される。現像ローラ11の表面には、粒子層として2〜3層となる均一な厚みのトナー層が形成される。供給ローラ9によるトナー8への電荷付与は、摩擦帯電や電荷注入方式を主体として行われる。
【0039】
トナー定着時には、搬送装置15によりグリーンシート13は左方向に搬送され、感光ドラム1の回転に伴って、後述の所定のパターンの転写が行われた後、定着器14の加熱ローラ及び加圧ローラ間で加熱・加圧され、表面に付着しているトナーの定着が行われる。トナーが表面に定着されたグリーンシート13は、更に搬送路16を通じて焼成装置17に搬送されて、焼成される。グリーンシート13が、アルミナを主成分とするセラミックシートの焼成前の状態であるとき、焼成装置17における焼成温度は約1,000℃となる。焼成後のグリーンシートは、連続処理のために収納部18に搬送され、収納される。収納シートは多層形成のために、搬送路20を通じて再び感光ドラム1側に搬送される。
【0040】
搬送装置15の搬送路16には、搬送物通過センサSが配置され、通過センサSの検知によりグリーンシート13の位置検出が行われる。感光ドラム1の手前には、グリーンシート13の位置合わせマークを認識するための認識カメラCが配置されている。パターン転写のとき、通過センサSの検知後、グリーンシート13は認識カメラCの位置に搬送され、一旦停止する。グリーンシート13の位置合わせマークを認識カメラCにより認識した後、グリーンシート13の送り動作と感光ドラム1の回転動作を同調させて、所定の位置にパターン転写を行う。
【0041】
トナー層は、現像ローラ11の表面に、トナー8の層厚が粒子層として2〜3層という薄層で存在し、しかも均一に帯電している。所定の付着量の現像を行い、転写されるトナー像の精度を高める要求に対しては、必要最小限の量しか現像ローラ1の表面に存在しないために、感光ドラム1上の静電潜像に対応して現像されるトナーの量を単位面積あたりの付着トナー量として容易に制御することができる。
【0042】
図2は本実施形態における露光装置と制御部を示す。露光装置は2次元アレイの面発光レーザ307と、拡大レンズ308と凹面鏡309からなる。面発光レーザ307から射出されたレーザ光束は、拡大レンズ308により拡大された後、凹面鏡309により集光され反射されて、光照射3として感光ドラム1に照射される。感光ドラム1上に静電潜像を形成するために、帯電器4で感光ドラム1の表面を均一に帯電させ、光照射3の露光によって配線パターンに対応する静電潜像が形成される。
露光形成された静電潜像には、現像ローラ1の表面に均一に帯電しているトナーが吸引され、高精度のトナー像を顕在形成する現像を行うことができる。このトナー像は、電気絶縁性基体であるグリーンシート13に転写、定着され、所定のパターンが形成される。制御部300は、マイクロコンピュータからなり、絶縁体及び導体層の照射光パターンデータ、感光ドラム1及び搬送装置15の動作制御等のプログラムを記憶するROM301、ワーキングメモリ用RAM302を有する。制御部300には、通過センサSの検知出力303、認識カメラCの撮像データ304が与えられ、制御部300は搬送装置15及び感光ドラム1の各駆動部305,306の駆動制御を行う。
【0043】
本実施形態においては多層配線構造パターンを形成するために、絶縁体及び導体層用の2種類のトナーを使用する。
導体粒子は、銅(Cu)、銀パラジウム(Ag−Pd)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)あるいは錫(Sn)など、通常電子配線基板に使用するような金属材料であればどのようなものでも使用することができる。特に亜鉛、錫、インジウム(In)などを使用すれば、300℃程度以下の低温でも、トナー像の導電性パターン化処理を行うことができる。導体用トナーは、金属粒子の表面に樹脂被膜がコーティングされて形成される。トナー製造は、例えば、金属粒子(3μm以上)の表面をスチレンアクリル樹脂でコートするか、あるいは金属粒子微粉(2μm以下)をスチレンアクリルと熱混練し、その後粉砕して10μm前後に粒子化して行うことができる。例えば、銅などの金属粒子の比率が90%、平均粒径9μmの粒子である。
絶縁体粒子素材は、アルミナセラミックス、ムライトセラミックス、窒化珪素セラミックス、窒化アルミニウムセラミックス、ガラスセラミックス等から選択される。特に、絶縁体粒子素材としては、導体金属の融点より低い焼成温度の素材が好ましく、とりわけ800〜1,000℃の焼成温度のセラミックス原料が好ましので、ガラス粉末を含有させたセラミックス原料を使用することができる。絶縁体用トナーは、導体粒子と同様に、絶縁体粒子の表面に上記樹脂被膜がコーティングされて形成される。
【0044】
感光ドラム1の表面に形成されている静電潜像によって、現像ローラ11の表面のトナー12を静電的に移行させ、絶縁体又は導体層用のトナー12による像を感光ドラム1の表面に形成する。導体層用のトナー12のトナー像は、グリーンシート13上に転写される。この転写の際には、転写器6による静電的な吸引力を利用する。グリーンシート13の表面に付着したトナー像は、定着器14の加熱ローラによって加熱され、トナーの樹脂被膜が部分的に溶融して定着される。更に、グリーンシート13及び導体層用のトナー12を、例えば、1,000℃焼成すると、焼成セラミックシート上に金属粒子のみが残留し、導電性の配線パターンが得られる。更に絶縁体層を形成する場合には、同様にして、絶縁体層用トナー像は、定着器14の加熱ローラによって加熱され、トナーの樹脂被膜が部分的に溶融して定着される。
【0045】
上記構成の多層配線基板製造装置において、単一の感光ドラム1を用いて、認識カメラCにより絶縁性基体及び/又は導体層の一部又は全部を位置合わせの基準位置として判別し、判別した基準位置に基づき、絶縁性基体上に導体層と絶縁体層の組を1組以上積層定着させた積層パターンを形成することができる。従って、導体用トナーの現像器と絶縁体用トナーの現像器を交互に使用して、感光ドラム1に対して絶縁体用粒子像又は導体用粒子像の形成を切り換えることにより、積層パターンの連続形成を可能とする、簡素化された多層配線基板製造装置を実現することができる。
【0046】
制御部300によって行われる、本実施形態の積層パターン連続形成のシーケンス手順を図12に示す。処理工程S1から処理工程S5までは一連の導体層形成工程を示し、処理工程S6から処理工程S10までは一連の絶縁体層形成工程を示す。ここでは、単一の多層配線基板の製造工程を例に説明するが、多量製造時には、導体層形成工程及び絶縁体層形成工程をそれぞれ、多数枚の基板シートにつき実施してバッチ処理を行い、現像器2の切り替え処理回数を削減するのが好ましい。
導体層形成工程では、導体用トナーの現像器2の装着等の準備が行われた後(処理工程S1)、出発基材としての電気絶縁性基体であるグリーンシート13の搬送導入が行われて、感光ドラム1により導体層用トナーパターンの転写処理が行われる(処理工程S2)。ついで、トナー定着処理工程S3、導体層焼成S4が行われ、収納部18に搬送され、収納される(処理工程S5)。次に、絶縁体層形成工程に移り、絶縁体用トナーの現像器2の装着等の準備が行われた後(処理工程S6)、収納部18から取り出した導体層形成済みシートの搬送導入が行われて、感光ドラム1により、導体層に積層して絶縁体層用トナーパターンの転写処理が行われる(処理工程S7)。ついで、トナー定着処理工程S8、導体層焼成S9が行われ、収納部18に搬送され、収納される(処理工程S10)。
【0047】
以上の導体層形成工程及び絶縁体層形成工程を繰り返した後(処理工程S11)、最終工程を導体層形成で終了することにより、後述の図7に示す、最上層に導体パターンが形成された多層配線基板を簡易な設備で低価格に製造することができる。
なお、本発明は、最上層を絶縁体層とした積層パターンを連続形成する場合にも適用することができる。また、積層パターンの最上層の上に、例えば絶縁性基体(グリーンシート)と同材料からなる被覆用絶縁層を被覆形成することにより、その被覆用絶縁層を保護層として有した多層電子部品あるいは多層配線基板を製造することができる。
【0048】
図3は、導体層形成用感光ドラム1と絶縁体層形成用感光ドラム21を別個に設けた本発明の別の実施形態に係る多層配線基板製造装置を示す。導体層形成用感光ドラム1側の導体パターン形成部は、前記実施形態の現像器2に導体用トナー8aの現像器とした場合と同様であり、また絶縁体層形成用感光ドラム21側の絶縁体パターン形成部は、前記実施形態の現像器2に絶縁体用トナーの現像器とした場合と同様であり、前者については図1と同じ符号を付している。
【0049】
導体層形成用感光ドラム1側の導体パターン形成部において導体パターンが形成されたグリーンシート39は、焼成後、連続処理のために収納部18に搬送され、順次収納される。ついで、収納部18より導体パターン形成済のシート40が取り出されて、搬送路35を通じて、次の絶縁体層形成用感光ドラム21側の工程に移送される。
絶縁体パターン形成部は、絶縁体層形成用感光ドラム21、感光ドラム1の周囲に配設された、現像器22、帯電器25からなり、現像器22から供給される現像剤粒子である絶縁体用トナー8bをシート40の表面に転写させる。感光ドラム21は、図示の時計まわり方向に回転し、感光ドラム21の表面に付着している余分のトナーは、清掃器5と同様の清掃器26より除去される。シート40は搬送装置15と同様の搬送装置34により感光ドラム21の最下点の位置に向けて図の左方向に搬送される。感光ドラム21の最下点には転写器32が対向配置されている。
【0050】
現像器22では、絶縁体用トナー8bがトナー容器27に貯留され、供給ローラ28を介して現像ローラ30の表面に付着トナー23として供給される。供給ローラ28は、導電性繊維29が植毛されて形成され、トナー8bを荷電させる。現像器22下部に配設されたトナー厚規制ブレード31は、現像ローラ30と微細な距離を隔てて離間し、現像ローラ30の表面に付着するトナー厚みを規制する。トナー容器27にはトナー8bに荷電を与えるために電位が印加されている。現像ローラ30及びトナー厚規制ブレード31は現像ローラ11、トナー厚規制ブレード19と同様の構成材料からなり、現像ローラ30の表面には、絶縁体粒子層として2〜3層となる均一な厚みのトナー層が形成される。供給ローラ28によるトナー8bへの電荷付与は、摩擦帯電や電荷注入方式を主体として行われる。
【0051】
導体層形成用感光ドラム1側の導体パターン形成部において導体パターンが形成されたシート40は、絶縁体トナー定着のために、搬送装置34により左方向に搬送される。そして、感光ドラム21の回転に伴って、前記導体パターンに積層して絶縁体のパターンの転写が行われた後、定着器33の加熱ローラ及び加圧ローラ間で加熱・加圧され、トナー定着が行われる。導体パターンと絶縁体パターンが積層されたシートは、更に搬送路35を通じて焼成装置36搬送されて、焼成される。焼成後のシートは、収納部37に一旦搬送されて収納され、更なる多層形成連続処理のために、搬送路38を通じて再び感光ドラム1側に搬送される。なお、焼成装置17における導体層の焼成温度は、例えば、導体原子が銅の場合には約1,100℃、ニッケル原子で約1,500℃である。また、焼成装置36における絶縁体層の焼成温度は、例えば、セラミックス原料の場合には約1,000℃である。図1又は図3の実施形態においては、焼成装置17、36を用いているが、焼成温度より低温の仮焼成を行うようにしてもよく、場合によっては焼成又は半焼成工程を省略し、積層パターン形成を終了した後に一括焼成するようにしてもよい。
【0052】
搬送装置34の搬送路35は搬送路16と同様に、搬送物通過センサSが配置され、通過センサSの検知によりシート40の位置検出が行われる。感光ドラム21の手前には、シート40の位置合わせマークを認識するための認識カメラC2が配置されている。
導体層形成用感光ドラム1側の導体パターンの形成部は、パターン転写のとき、通過センサSの検知後、シート39は認識カメラC1の位置に搬送され、位置合わせマークを認識カメラCにより確認した後、シート送り動作と感光ドラム1の回転動作を同調させて、所定の位置にパターン転写を行う。
絶縁体層形成用感光ドラム21側の絶縁体パターンの形成部は、パターン転写のとき、通過センサSの検知後、シート40は認識カメラC2の位置に搬送され、位置合わせマークを認識カメラCにより確認した後、シート送り動作と感光ドラム21の回転動作を同調させて、所定の位置にパターン転写を行う。絶縁体パターンの形成部における、光照射24による露光及び絶縁体パターンの静電潜像の顕在形成は、前記図2により説明した原理と同様にして行われる。
【0053】
図3の実施形態によれば、感光ドラム1(第1の像受容体)を用いて、帯電付着から転写までを連続した工程により導体層を形成し、感光ドラム21(第2の像受容体)を用いて帯電付着から転写までを連続した工程により絶縁体層を形成し、更に認識カメラC1又はC2により、絶縁性基体及び/又は前記導体層の一部又は全部を位置合わせの基準位置として判別し、その判別した基準位置に基づき、絶縁体用粒子像を導体層に転写して、絶縁性基体上に導体層と絶縁体層の組を1組以上積層定着させた積層パターンを形成することができる。従って、導体層の形成工程と絶縁体層の形成工程を連続処理化可能な多層配線基板製造装置を実現することができる。
【0054】
図1又は図3の多層配線基板製造装置を用いた多層配線基板製造工程を更に具体的に説明する。図7は製造例に係る5層構造の多層配線基板の断面構成を示す。この多層配線基板は、最下層の絶縁体層60、中間の絶縁体層62、64、66及び最上層の絶縁体層68と、最下層の導体層61、中間の導体層63、65、67、69及び最上層の導体層70、71からなる積層体である。この積層体を用いて、例えば、上層の導体層70、71に、抵抗体72を印刷形成し、裏面側の導体層61にバンプ電極73を形成し、バンプ電極73にICチップ74、75をハンダ付けして実装し、多層配線基板による複合電子部品を構成することができる。なお、絶縁体層及び導体層には上述した原料物質で構成される。導体層61、中間の導体層65、69は後述のビアホール80、81、82に埋め込み形成されるが、平面配線用導体層63、67より充填性のよい導電材を使用してもよい。
【0055】
図4〜図6は本発明の図1の多層配線基板製造装置を用いた、上記構造の多層配線基板の製造工程を示す。まず、PET(ポリエチレンテレフタレート)又はポリイミド等からなる層形成用キャリアシート50が搬送路16に搬送され、絶縁体の最下層形成が行われる。キャリアシート50にはあらかじめ位置合わせマーク(図示せず)が印刷形成されており、その位置合わせマークを認識カメラCにより認識した後、キャリアシート50の送り動作と感光ドラム1の回転動作を同調させて、所定の位置に下層の絶縁体層60のパターン転写が行われる(図4の4A)。最下層の絶縁体層60には、埋め込み導体のためのビアホール80が設けられている。次の導体パターン形成工程(図4の4B)では、ビアホール80への導体層61の埋め込み形成が行われる。ついで、中間配線用の導体層領域を除いた絶縁体層62が形成された後(図4の4C)、その導体層領域への導体層63が形成される(図4の4D)。次に、ビアホール81を有する、中間の絶縁体層64が積層形成され(図5の5A)、上記(4B)と同様に、ビアホール81への導体層65の埋め込み形成(図5の5B)、中間配線用の導体層領域を除いた絶縁体層66の形成、その導体層領域への導体層67の形成が行われる(図5の5C)。更に、最上層の絶縁体層68の形成と、絶縁体層68のビアホール82への導体層69の埋め込み形成が行われる(図6の6A)。最後に、最上層の導体層70、71の積層形成を行われる(図6の6B)。以上の連続処理工程により形成された多層配線基板をキャリアシート50に載置した状態で抵抗体72の印刷形成工程に移送することにより複合電子部品の連続製造工程を実現することができる。
【0056】
上記製造工程では、ビアホールの導体層埋め込み形成や中間の絶縁体層64が積層形成を別の工程で行っているが、上層の導体層や絶縁体層と同時形成するようにしてもよい。図11は、中間の絶縁体層64工程を行わずに、上層絶縁体層と同時形成する製造工程の要部を示す。図4〜図6と同一部材等については同じ符号を付している。図4の(4A)及び(4B)と同様にして、ビアホール80を設けた最下層の絶縁体層60に、導体層61の埋め込み形成が行われる(図11の11A、11B)。ついで、中間配線用の導体層63が形成される(図11の11C)。次に、ビアホール121を有するとともに導体層63のない領域を覆う段差構造の絶縁体層120が積層形成される(図11の11D)。ついで、ビアホール121を充填するように導体層65の埋め込み形成が行われ(図11の11E)、2層目の埋め込み導体層が形成され、以下同様の肯定を繰り返して、上記と同様の多層配線基板の積層体を製造することができる。導体層埋め込み形成を省く場合には、例えば、導体層61と導体層63を同一工程で同時形成すればよい。このようにビアホールの導体層埋め込み形成や中間の絶縁体層の積層形成を上層の工程と同時に形成することにより製造工程の簡略化を実現でき、製造コストを一層低価格化することができる。
【0057】
本発明の多層配線基板製造装置を用いて多層配線基板を量産化する場合には、大型の出発基材を使用して多数個のパターン転写を行えばよい。図10の(10A)は出発基材のグリーンシート200を用意し、その中に多数個の基板領域201に上記図4〜図6に示した同一の積層パターンを個々形成する場合である。グリーンシート200には位置合わせマーク202が非パターン形成部位に形成されている。積層パターンを個々形成する段階で各層にも位置合わせマーク204を層形成材を用いて形成して、位置合わせマーク202、204を認識して位置合わせを各層形成段階で行うことにより高精度に積層形成を行うことができる。多層形成を終了した後、各基板領域201間の分離領域203で分割切断処理することにより個別の多層配線基板を得ることができる。
【0058】
図10の(10A)の場合には各基板領域201を分離領域203を介して島状に形成したが、(10B)に示すように、各基板領域205を縦横の分離領域206、207も含めて同一層状に積層形成するようにしてもよい。多層形成を終了した後、各基板領域205を分離領域206,207で分割切断処理することにより個別の多層配線基板を得ることができ、この場合には、積層パターンを個々形成する段階で位置合わせマーク208を分離領域206,207に形成することができる。
【0059】
図1又は図3の多層配線基板製造装置はトナー材料を変更することにより積層コンデンサ等のセラミックス電子部品の製造に応用することができる。例えば、図13に示す積層コンデンサの製造工程例を図8及び図9を用いて説明する。この積層コンデンサの積層体は、セラミックス層100、102、104、106、108と、内部電極層101、103、105、107とからなる。この積層体は、焼成処理の後、外部電極109及び110を外被して積層セラミックスコンデンサ部品となる。図8及び図9の積層体製造工程では、積層体の形成後に加圧処理及び焼成処理されるために、図1の製造装置を使用するが、焼成装置17による焼成処理は省かれる。まず、層形成用キャリアシート111が搬送路16に搬送され、絶縁体の最下層100の形成が行われる。キャリアシート111にはあらかじめ位置合わせマーク(図示せず)が印刷形成されており、その位置合わせマークを認識カメラCにより認識した後、キャリアシート111の送り動作と感光ドラム1の回転動作を同調させて、所定の位置に下層のセラミックス層100のパターン転写が行われる。最下層のセラミックス層100の形成後、第1層目の内部電極101の導体パターン形成が行われる(図8の8A)。内部電極101の長さはセラミックス層100より短く、端部に空隙段差112が形成される。次に、空隙段差112を埋める段差形状のセラミックス層102が積層形成される(図8の8B)。更に、第2層目の内部電極103の導体パターン形成が行われ(図8の8C)、その上にセラミックス層104が積層形成される(図8の8D)。以上の工程を繰り返して、更に内部電極層105、107、セラミックス層106、108の多層形成が行われて(図9の9A〜9C)、未焼成の積層体が形成される。この積層体を加圧、焼成することにより積層セラミックコンデンサの素体が形成され、外部電極109及び110を形成して積層コンデンサのセラミックス電子部品を製造することができる。上記製造工程においては、内部電極層とセラミックス層の積層パターンが連続処理されるため、製造コストを低減して、焼成等の後処理を経て、安価な多層構造電子部品を得ることができる。
【0060】
本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例や設計変更をその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでも無い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る積層パターン形成装置により、単一又は複数の像受容体に対して絶縁体用粒子像又は導体用粒子像の形成を行って、絶縁体層及び導体層の積層パターンの連続形成が可能となり、製造コストの低減を実現できる。従って、本発明により安価な多層電子部品、あるいは多層配線基板の提供が可能となり、本発明に係る各種電子部品を、例えば、家電用電子部品、自動車用電子部品、産業用電子部品、宇宙用電子部品などとして広範囲な分野に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の一形態としての多層配線基板製造装置の概略構成図である。
【図2】図1の実施形態における露光装置と制御部を示す概略構成図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る多層配線基板製造装置の概略構成図である。
【図4】図1の多層配線基板製造装置を用いた、多層配線基板の製造工程を示す断面図である。
【図5】図1の多層配線基板製造装置を用いた、多層配線基板の製造工程を示す断面図である。
【図6】図1の多層配線基板製造装置を用いた、多層配線基板の製造工程を示す断面図である。
【図7】図1又は図3の多層配線基板製造装置を用いて製造した多層配線基板の概略縦断面図である。
【図8】本発明をセラミックス電子部品の製造に応用したときの製造工程を示す図である。
【図9】本発明をセラミックス電子部品の製造に応用したときの製造工程を示す図である。
【図10】多数個の基板領域を形成する場合の積層パターン形成例を説明するための基材平面図である。
【図11】本発明に係る多層配線基板の別の製造工程を示す断面図である。
【図12】図1の本実施形態の積層パターン連続形成のシーケンス手順を示す図である。
【図13】図1の本実施形態の積層パターン連続形成のシーケンス手順を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 感光ドラム
2 現像器
3 光照射
4 帯電器
5 清掃器
6 転写器
7 トナー容器
8 トナー
8a トナー
8b トナー
9 供給ローラ
10 導電性繊維
11 現像ローラ
12 トナー
13 グリーンシート
14 定着器
15 搬送装置
16 搬送路
17 焼成装置
18 収納部
19 トナー厚規制ブレード
20 搬送路
21 感光ドラム
22 現像器
23 トナー
24 光照射
25 帯電器
26 清掃器
27 トナー容器
28 供給ローラ
29 導電性繊維
30 現像ローラ
31 トナー厚規制ブレード
32 転写器
33 定着器
34 搬送装置
35 搬送路
36 焼成装置
37 収納部
38 搬送路
39 グリーンシート
40 シート
41 シート
50 キャリアシート
60 絶縁体層
61 導体層
62 絶縁体層
63 導体層
64 絶縁体層
65 導体層
66 絶縁体層
67 導体層
68 絶縁体層
69 導体層
70 導体層
71 導体層
72 抵抗体
73 バンプ電極
74 ICチップ
75 ICチップ
80 ビアホール
81 ビアホール
82 ビアホール
100 セラミックス層
101 内部電極層
102 セラミックス層
103 内部電極層
104 セラミックス層
105 内部電極層
106 セラミックス層
107 内部電極層
108 セラミックス層
109 外部電極
110 外部電極
111 キャリアシート
112 空隙段差
120 絶縁体層
121 ビアホール
200 グリーンシート
201 基板領域
202 位置合わせマーク
203 分離領域
204 位置合わせマーク
205 基板領域
206 分離領域
207 分離領域
208 位置合わせマーク
300 制御部
301 ROM
302 RAM
303 検知出力
304 撮像データ
305 駆動部
306 駆動部
307 面発光レーザ
308 拡大レンズ
309 凹面鏡
C 認識カメラ
C1 認識カメラ
C2 認識カメラ
S 通過センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パターンに対応する導体パターン静電潜像が形成された像受容体の表面に、導体用粒子を帯電付着させることにより、前記導体パターン静電潜像を導体用粒子像として顕在形成し、前記導体用粒子像を絶縁性基体上に転写した後、前記導体用粒子像を定着処理して導体層を前記絶縁性基体上に形成する第1工程と、次に、絶縁体パターンに対応する絶縁体パターン静電潜像が形成された像受容体の表面に、絶縁体用粒子を帯電付着させることにより、前記絶縁体パターン静電潜像を絶縁体用粒子像として顕在形成し、前記絶縁体用粒子像を前記導体パターン像の所定位置に転写した後、前記絶縁体用粒子像を定着処理して絶縁体層を前記導体層の上に形成する第2工程からなり、前記第1工程と前記第2工程からなる連続工程を前記絶縁性基体上に積層しながら1回以上反復処理し、前記絶縁性基体上に前記導体層と前記絶縁体層の組をこの順に1組以上積層定着させた積層パターンを形成することを特徴とする積層パターン形成方法。
【請求項2】
前記第1工程と前記第2工程からなる連続工程を前記絶縁性基体上に積層しながら1回以上反復処理した後、その最上層に最終工程として前記第1工程を行い、前記絶縁性基体上に前記導体層と前記絶縁体層の組をこの順に1組以上積層定着させ、その上に最上層として前記導体層を備えた積層パターンを形成する請求項1に記載の積層パターン形成方法。
【請求項3】
前記積層パターンの最上層の上に前記絶縁性基体と同材料からなる被覆用絶縁層を被覆形成する請求項1又は2に記載の積層パターン形成方法。
【請求項4】
前記導体用粒子像又は前記絶縁体用粒子像を転写する際に、位置合わせの基準として、前記絶縁性基体及び/又は直前の絶縁体層又は導体層の一部又は全部を用いる請求項1、2又は3に記載の積層パターン形成方法。
【請求項5】
前記絶縁層がスルーホールを有する場合に、前記第1工程において、前記スルーホールを充填する前記導体用粒子像を転写して、前記スルーホールを充填した導体層を形成する請求項1〜4のいずれかに記載の積層パターン形成方法。
【請求項6】
前記第1工程と前記第2工程に用いる像受容体は、前記導体用粒子又は前記絶縁体用粒子を回転面に帯電付着させる回転体からなり、前記回転体を回転させながら前記導体用粒子像又は前記絶縁体用粒子像の前記転写を行う請求項1〜5のいずれかに記載の積層パターン形成方法。
【請求項7】
導体パターンに対応する静電潜像を形成する像受容体と、前記像受容体の表面に導体用粒子を帯電付着させることにより、前記静電潜像を導体用粒子像として顕在形成する導体用粒子付着手段と、前記導体用粒子像を絶縁性基体上に転写する転写手段と、前記導体用粒子像を定着処理して前記絶縁性基体上に導体層を定着形成する定着手段と、前記絶縁性基体及び/又は前記導体層の一部又は全部を位置合わせの基準位置として判別する判別手段と、前記基準位置に基づき、絶縁体パターンに対応する絶縁体用粒子像を前記導体層に転写する積層転写手段とを有し、前記積層転写手段により前記絶縁性基体上に前記導体層と前記絶縁体層の組を1組以上積層定着させた積層パターンを形成することを特徴とする積層パターン形成装置。
【請求項8】
前記像受容体は、前記導体用粒子又は前記絶縁体用粒子を回転面に帯電付着させる回転体からなり、前記回転体を回転させながら前記導体用粒子像又は前記絶縁体用粒子像の前記転写を行う請求項7に記載の積層パターン形成装置。
【請求項9】
導体パターンに対応する静電潜像を形成する第1の像受容体と、絶縁体パターンに対応する静電潜像を形成する第2の像受容体と、前記第1の像受容体の表面に導体用粒子を帯電付着させることにより、前記静電潜像を導体用粒子像として顕在形成する導体用粒子付着手段と、前記第2の像受容体の表面に絶縁体用粒子を帯電付着させることにより、前記静電潜像を絶縁体用粒子像として顕在形成する絶縁体用粒子付着手段と、前記導体用粒子像を絶縁性基体上に転写する導体転写手段と、前記導体用粒子像を定着処理して前記絶縁性基体上に導体層を定着形成する導体定着手段と、前記絶縁性基体及び/又は前記導体層の一部又は全部を位置合わせの基準位置として判別する判別手段と、前記基準位置に基づき、前記絶縁体用粒子像を前記導体層に転写する絶縁体転写手段と、前記絶縁体用粒子像を定着処理して前記導体層上に絶縁体層を定着形成する絶縁体定着手段とを有し、前記絶縁性基体上に前記導体層と前記絶縁体層の組を1組以上積層定着させた積層パターンを形成することを特徴とする積層パターン形成装置。
【請求項10】
前記第1の像受容体及び第2の像受容体は、前記導体用粒子又は前記絶縁体用粒子を回転面に帯電付着させる回転体からなり、前記回転体を回転させながら前記導体用粒子像又は前記絶縁体用粒子像の前記転写を行う請求項9に記載の積層パターン形成装置。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の積層パターン形成方法により、絶縁性基体上に導体層及び絶縁体層からなる積層パターンが積層されたことを特徴とする積層体。
【請求項12】
請求項11に記載の積層体を焼成して多層回路基板を製造することを特徴とする多層回路基板の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の多層回路基板の製造方法により製造されたことを特徴とする多層回路基板。
【請求項14】
請求項13に記載の多層回路基板の表面及び/又は裏面に電子部品を実装したことを特徴とする電子回路部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−54832(P2009−54832A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220827(P2007−220827)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(591040292)大研化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】