説明

積層フィルム

【課題】耐衝撃性及び透明性のバランスに優れ、シュリンク包装に好適に用いられる積層フィルムを提供すること。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂(i)からなる延伸層〔I〕および、(A)(1)プ
ロピレンから導かれる単位を50〜95モル%の量で、炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を5〜50モル%の量で含有し、(2)示差走査熱量測定(DSC)にて測定される融点(Tm)が110℃以下であるか、またはDSCにて融点ピークが観測されず、(3)135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.1〜12dl/gであり、(4)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下であるプロピレン・α−オレフィン共重合体と、(B)融点が120℃以上のポリプロピレン系樹脂とを、(A)/(B)の重量比で0.1/99.9〜4.5/95.5の割合で含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる延伸層〔II〕を有する積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。詳しくは、本発明は、耐衝撃性及び透明性のバランスに優れ、シュリンク包装に好適に用いられる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
シュリンク包装は、包装体の商品価値を向上させるための外装および内容物への直接的な衝撃を避けるための包装、あるいはガラスビンおよびプラスチックボトルの保護と商品の表示を兼ねることを目的として広く使用されている。シュリンク包装は、熱可塑性樹脂延伸フィルムの加熱により収縮(シュリンク)する性質を利用したものである。
【0003】
シュリンク包装は一般的には、被包装物を熱可塑性樹脂延伸フィルムで包み、針やレーザーでその延伸フィルムに穴をあけて空気の逃げ道を作り、そして加熱して延伸フィルムを収縮させることによって行われる。また、あらかじめ穴をあけた熱可塑性樹脂延伸フィルムで被包装物を包み、そして加熱して延伸フィルムを収縮させることによっても行われる。
【0004】
シュリンク包装に用いられる熱可塑性樹脂材料としては、以下に示す熱収縮性及びリサイクル性などに優れたポリプロピレン系樹脂からなるフィルムが知られている。
特許文献1には、メルトインデックスが0.1〜20である結晶性ポリプロピレン(A)50〜95重量部と、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(B)5〜50重量部とを含有しているポリプロピレン組成物から形成され、かつ、縦方向および横方向の少なくとも一方向に延伸されたフィルムであり、該プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(B)は、(1)プロピレンから導かれる構成単位を50〜95モル%の量で、1−ブテンから導かれる構成単位を5〜50モル%の量で含有し、(2)135℃、デカリン中で測
定される極限粘度[η]が0.1〜12dl/gであり、(3)ゲルパーミエイションクロマ
トグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3以下であり、(4)共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示すパラメータB値が、1.0〜1.5であるこ
とを特徴とする収縮包装用ポリプロピレンフィルムが開示されているが、このフィルムは単層フィルムである。
【0005】
また、特許文献2には、ポリプロピレンとプロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンとのランダム共重合により得られる重合体であって、示差走査熱量分析(DSC)で測定した融点範囲が40〜115℃であり、プロピレン以外のα−オレフィン含有量が5〜70モル%であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)1〜20重量%及びポリプロピレン樹脂(B)80〜99重量%から形成されるポリプロピレン樹脂組成物、及びこのポリプロピレン樹脂組成物から形成されるフィルムを少なくとも一層とし、これにポリオレフィン樹脂組成物を積層して多層フィルムとし、これを一軸ないしは二軸方向へ配向させたポリプロピレン延伸フィルムが開示されている。
【0006】
ところでシュリンク包装では、包装時や輸送時に小孔(被包装体の内部に取り込まれた空気を脱気するためにフィルムにあけられた穴)からフィルムが破れてしまったり、突起(被包装体の角など)を有する被包装体との接触によってフィルムが裂けてしまうという問題点がある。
【0007】
以上のことからシュリンク包装用フィルムには、優れた熱収縮性、外観に影響する透明性、耐衝撃性(フィルムが破れたり裂けたりしにくい性質)などが求められる。
上記特許文献1および2の実施例では、製造したフィルムの熱収縮性などは評価してい
るが、耐衝撃性及び透明性については、何ら評価していない。
【特許文献1】特開平9−278909号公報
【特許文献2】特開2004−59652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
また、上記特許文献1および2に開示されたフィルムをはじめとした従来のシュリンク包装用延伸フィルムでは、プロピレン・1−ブテン(α−オレフィンランダム共重合体)共重合体などのゴム成分の含有量が多いため、針で延伸フィルムに穴をあける場合には、その針にゴム成分が付着するので、針を洗浄する必要があるという問題点もある。
【0009】
以上のことから本発明は、耐衝撃性及び透明性のバランスに優れ、シュリンク包装に好適に用いられる積層フィルムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の積層フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(i)からなる延伸層〔I〕及び、
(A)(1)プロピレンから導かれる単位を50〜95モル%の量で、炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を5〜50モル%の量で含有し、
(2)示差走査熱量測定(DSC)にて測定される融点(Tm)が110℃以下であるか、またはDSCにて融点ピークが観測されず、
(3)135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.1〜12dl/gであり、
(4)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下であるプロピレン・α−オレフィン共重合体と、
(B)融点が120℃以上のポリプロピレン系樹脂とを、
(A)/(B)の重量比で0.1/99.9〜4.5/95.5の割合で含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる延伸層〔II〕を有する積層フィルムである。
【0011】
前記プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、
(5)示差走査型熱量計によって測定される融点Tmが50〜110℃であり、かつ該融点Tmと、前記炭素数2または4〜20のα−オレフィン構成単位含量M(モル%)との関係が、
−2.6M+130≦Tm≦−2.3M+155であることが好ましい。
【0012】
本発明の積層フィルムは、前記延伸層〔I〕及び延伸層〔II〕を貫通する、エア抜き用
の穴を有することが好ましい。
前記プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、
下記一般式(1a)で表される遷移金属化合物(1a)を含む触媒の存在下に、プロピレンと炭素数2または4〜20のα−オレフィンとを共重合して得られたものであることが好ましい。
【0013】
【化1】

(式(1a)中、R1、R3は水素であり、R2、R4は炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は水素、炭化水素基、
ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R5からR12までの、
隣接する炭素に結合した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
13とR14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
Mは第4族遷移金属であり、Yは炭素原子であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれ、jは1〜4の整数である。)
【0014】
前記延伸層〔I〕を構成するポリプロピレン系樹脂は、プロピレンから導かれる単位及
び炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を有するプロピレン系ランダム共重合体であることが好ましい。
【0015】
前記延伸層〔II〕を構成するポリプロピレン系樹脂(B)は、プロピレン単独重合体であることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいて、前記延伸層〔I〕の厚さが10〜30μmであり、前記延伸層〔II〕の厚さが5.0〜30μmであることが好ましい。
本発明の積層フィルムは、シュリンク包装に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐衝撃性及び透明性のバランスに優れ、シュリンク包装に好適に用いられる積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の積層フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(i)からなる延伸層〔I〕および、
特定のプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)と、特定のポリプロピレン系樹脂(B)とを、特定の割合で含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる延伸層〔II〕を有する。特に本発明の積層フィルムは、延伸層〔I〕及び延伸層〔II〕のみからなる二層積層型の
積層フィルムであることが好ましい。
【0018】
このような積層構造を有する本発明の積層フィルムは、シュリンク包装においてヒートシールする時の過剰な熱量による破損が防止され、また被包装体の保護に有用である。
以下、前記延伸層〔I〕を構成するポリプロピレン系樹脂(i)、プロピレン・α−オ
レフィン共重合体(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)、プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)とポリプロピレン系樹脂(B)とを特定の割合で含むポリプロピレン系樹脂組成物の順に、詳細に説明する。
【0019】
<延伸層〔I〕を構成するポリプロピレン系樹脂(i)>
延伸層〔I〕を構成するポリプロピレン系樹脂(i)は、特に限定はないが、通常はD
SCで測定される融点(Tm)が130℃以上のポリプロピレン系樹脂が用いられる。本発明では、ポリプロピレン系樹脂(i)として従来公知のポリプロピレンを広く用いることができる。
【0020】
このポリプロピレン系樹脂(i)は、ホモポリプロピレンであってもよく、プロピレンと少量(たとえば10モル%以下、好ましくは5モル%未満の量)のプロピレン以外のオレフィンとから導かれる単位を含むプロピレン系共重合体であってもよい。共重合体はランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。プロピレン系共重合体を形成する他のオレフィンとしては、具体的には、炭素数2または4〜20のα−オレフィンが挙げられ、より具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−ヘキサデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。
【0021】
本発明では通常、ポリプロピレン系樹脂(i)として、プロピレンおよび炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を含むプロピレン系ランダム共重合体が用いられる。前記炭素数2または4〜20のα−オレフィンとしては、炭素数2または4〜10のα−オレフィンが好ましく、特に炭素数2または4〜8のα−オレフィンが好ましい。
【0022】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(i)は、従来公知の固体状チタン触媒成分あるいはメタロセン化合物触媒成分を用いて、公知の方法により製造することができる。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(i)は、通常融点(Tm)が130℃以上、好ましくは130〜170℃、より好ましくは130〜150℃である。融点がこの範囲にあるポリプロピレン系樹脂(i)は、柔軟性に優れており、延伸性が良好である。ポリプロピレン系樹脂(i)は、後述する延伸層〔II〕に含まれるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)やポリプロピレン系樹脂(B)よりも通常融点が高い。
【0023】
また、ポリプロピレン系樹脂(i)のメルトフローレートMFR(ASTM D1238;230℃、2.16kg荷重下)は、通常0.1〜20g/10分、好ましくは1.0〜10g/10分であることが望ましい。
【0024】
上記ポリプロピレン系樹脂は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
また、ポリプロピレン系樹脂(i)には、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば帯電防止剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、滑剤等が挙げられる。
【0025】
帯電防止剤としては、例えば多価アルコール脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミン、高級脂肪酸アマイド、高級脂肪酸アミン、アマイドのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。帯電防止剤は、前記ポリプロピレン系樹脂(i)100重量部あたり、通常は0.
1〜1.0重量部の範囲で用いられる。
【0026】
耐熱安定剤としては、例えば脂肪酸カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、アルキルフェノレート酸、マレイン酸モノエステル塩、アルキルメルカプチド、メルカプト酸エステル塩などが挙げられる。耐熱安定剤は、前記ポリプロピレン系樹脂(i)100重量部あたり、通常は0.01〜0.05重量部の範囲で用いられる。
【0027】
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤やフェノール系酸化防止剤などを挙げることができる。
リン系酸化防止剤として、例えばトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンフォスフォナイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトが挙げられる。リン系酸化防止剤は、前記ポリプロピレン系樹脂(i)100重量部あたり、通常は0.05〜0.2重量部の範囲で用いられる。
【0028】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレイト、テトラキス[メチレン−3(3′,5′ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロプオネートが挙げられる。フェノール系酸化防止剤は、前記ポリプロピレン系樹脂(i)100重量部あたり、通常は0.01〜0.03重量部の範囲で用いられる。
【0029】
紫外線吸収剤としては、例えば2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールが挙げられる。紫外線吸収剤は、前記ポリプロピレン系樹脂(i)100重量部あたり、通常は0.5〜2.0重量部の範囲で用いられる。
【0030】
光安定剤としては、例えばコハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジンが挙げられる。光安定剤は、前記ポリプロピレン系樹脂(i)100重量部あたり、通常は0.1〜1.0重量部の範囲で用いられる。
【0031】
ブロッキング防止剤としては、例えばシリカ、タルク、雲母、ゼオライト、ポリメタクリル酸メチル、メラミンホルマリン樹脂、メラミン尿素樹脂、金属アルコキシドを焼成して得た金属酸化物粒子が挙げられる。ブロッキング防止剤は、前記ポリプロピレン系樹脂(i)100重量部あたり、通常は0.05〜1.0重量部の範囲で用いられる。
【0032】
滑剤としては、例えばラウリン酸アミド、バルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ブライジン酸アミド、エライジ
ン酸マミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、アセチル酸グリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。滑剤は、前記ポリプロピレン系樹脂(i)100重量部あたり、通常は0.01〜0.5重量部の範囲で用いられる。
【0033】
<(A)プロピレン・α−オレフィン共重合体>
本発明に使用されるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)(以下、単に共重合体(A)ともいう)は、以下の(1)〜(4)の要件を満たすものであり、好ましくは、さらに以下の(5)、(6)の要件の一つ以上を満たすものである。延伸層〔II〕を形成するポリプロピレン系樹脂組成物へこのような共重合体(A)を配合することにより、従来技術に比べて低温でのヒートシールが可能となり、ヒートシール加工の高速化が期待できる。特に好ましい共重合体(A)は、(1)〜(6)の要件の全てを満たす。
【0034】
(1)プロピレンから導かれる単位を50〜95モル%、好ましくは60〜93モル%、より好ましくは70〜90モル%の量で含有し、炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を5〜50モル%、好ましくは7〜40モル%、より好ましくは10〜30モル%の量で含有する。
【0035】
プロピレンから導かれる単位が50モル%以下であると、共重合体(A)がベール状となるためハンドリング性が非常に悪化し、プロピレンから導かれる単位が95モル%以上であると、組み合わせるポリプロピレン系樹脂(B)との区別がつかず、好ましくない。
【0036】
本発明に使用されるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を複数組み合わせて含んでいてもよいが、プロピレンおよび1−ブテンから導かれる単位のみで構成されていることが特に好ましい。
【0037】
(2)示差走査熱量測定(DSC)にて測定される融点(Tm)が110℃以下であるか、またはDSCにて融点ピークが観測されない。
好ましくは、融点(Tm)が50〜110℃、より好ましくは60〜100℃、さらに好ましくは65〜90℃である。融点が50℃より低いと、室温で粘着性を持つようになり、ブロッキング等の問題を生じる可能性が高くなり、融点が110℃より高いと、発明の効果が薄れるので好ましくない。
【0038】
(3)135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.1〜12dl/g、好ましくは0.5〜12dl/g、より好ましくは1〜12dl/gである。
極限粘度[η]が12dl/gより大きいと、共重合体(A)及び後述のポリプロピレン系樹脂(B)を含む樹脂組成物の流動性が悪くなり、シート成形や延伸が困難になるので好ましくない。[η]が0.1dl/gより小さいと、積層フィルムの耐衝撃性等の機械強度が低下するので好ましくない。
【0039】
(4)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下であり、好ましくは2.0〜3.0であり、より好ましくは2.0〜2.5である。
【0040】
Mw/Mnが3.0より大きくなると、共重合体(A)として低分子量のものが多くなるので、積層フィルムの表層からブリードが起こり、積層フィルムの保管時に表層がべた付き、ブロッキングを生じてしまうので好ましくない。
【0041】
(5)示差走査型熱量計によって測定される融点Tmが50〜110℃、好ましくは6
0〜100℃、より好ましくは65〜90℃であり、かつ該融点Tmと、炭素数2または4〜20のα−オレフィン構成単位含量M(モル%)との関係が、
−2.6M+130≦Tm≦−2.3M+155
を満たす。上記TmとMが以上の関係を満たすことにより、低温ヒートシール性に優れ、ヒートシール強度が高く、延伸後のエージングによるシール強度の低下が少ない積層フィルムを得ることができる。なお、炭素数2または4〜20のα−オレフィン構成単位とは炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位のことである。
【0042】
(6)(i)頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖、または(ii)頭−尾結合したプロピレン単位とα−オレフィンとからなり、かつ第2単位目にプロピレン単位を含むプロピレン・α−オレフィン3連鎖を、3連鎖中の第2単位目のプロピレン単位の側鎖メチル基について、13C−NMRスペクトル(ヘキサクロロブタジエン溶液、テトラメチルシランを基準)で測定したとき、19.5〜21.9ppmに表れるピークの全面積を100%とした場合に、21.0〜21.9ppmに表れるピークの面積(トリアドタクティシティ)が90%以上、好ましくは92%以上、より好ましくは94%以上である。立体規則性を示すトリアドタクティシティが90%より低いと、結晶化度が低くなり、ヒートシール強度の低下を招くことがある。
【0043】
本発明に使用されるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の立体規則性は、トリアドタクティシティ(mm分率)によって評価することができる。
例えば、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体において、このmm分率は、ポリマー鎖中に存在する3個の頭−尾結合したプロピレン単位連鎖を表面ジグザグ構造で表したとき、そのメチル基の分岐方向が同一である割合として定義され、下記のように13C−NMRスペクトルから求められる。
【0044】
このmm分率を13C−NMRスペクトルから求める際には、具体的にポリマー鎖中に存在するプロピレン単位を含む3連鎖として、 (i)頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖
、および (ii)頭−尾結合したプロピレン単位とα−オレフィン単位とからなりかつ第
2単位目がプロピレン単位であるプロピレン単位・α−オレフィン単位3連鎖について、mm分率が測定される。
【0045】
これら3連鎖(i)および(ii)中の第2単位目(プロピレン単位)の側鎖メチル基のピーク強度からmm分率が求められる。以下に詳細に説明する。
プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の13C−NMRスペクトルは、サンプル管中でプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)をロック溶媒として少量の重水素化ベンゼンを含むヘキサクロロブタジエンに完全に溶解させた後、120℃においてプロトン完全デカップリング法により測定される。測定条件は、フリップアングルを45゜とし、パルス間隔を3.4T1以上(T1はメチル基のスピン格子緩和時間のうち最長の値)とする。メチレン基およびメチン基のT1はメチル基より短いので、この条件では試料中のすべ
ての炭素の磁化の回復は99%以上である。ケミカルシフトは、テトラメチルシランを基準として頭−尾結合したプロピレン単位5連鎖(mmmm)の第3単位目のメチル基炭素ピークを21.593ppmとして、他の炭素ピークはこれを基準とする。
【0046】
このように測定されたプロピレン・α−オレフィン共重合体の13C−NMRスペクトルのうち、プロピレン単位の側鎖メチル基が観測されるメチル炭素領域(約19.5〜21.9ppm)は、 第1ピーク領域(約21.0〜21.9ppm)、 第2ピーク領域(約20.2〜21.0ppm)、 第3ピーク領域(約19.5〜20.2ppm)に分
類される。
【0047】
そしてこれら各領域内には、表1に示すような頭−尾結合した3分子連鎖(i)及び(i
i)中の第2単位目(プロピレン単位)の側鎖メチル基ピークが観測される。
【0048】
【表1】

表1中、Pはプロピレンから導かれる単位、Bはブテンなどのα−オレフィンから導かれる単位を示す。
【0049】
表1に示される頭−尾結合3連鎖(i)および(ii)のうち、(i)3連鎖がすべてプロピレン単位からなるPPP(mm)、PPP(mr)、PPP(rr)についてメチル基の方向を下記に表面ジグザグ構造で図示するが、(ii)α−オレフィン単位を含む3連鎖(PPB、BPB)のmm、mr、rr結合は、このPPPに準ずる。
【0050】
【化2】

第1領域では、mm結合したPPP、PPB、BPB3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基が共鳴する。
【0051】
第2領域では、mr結合したPPP、PPB、BPB3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基およびrr結合したPPB、BPB3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基が共鳴する。
【0052】
第3領域では、rr結合したPPP3連鎖の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基が共鳴する。
したがってポリプロピレンのトリアドタクティシティ(mm分率)は、 (i)頭−尾結
合したプロピレン単位3連鎖、または(ii)頭−尾結合したプロピレン単位とα−オレフィン単位とからなり、かつ第2単位目にプロピレン単位を含むプロピレン・α−オレフィン3連鎖を、3連鎖中の第2単位目のプロピレン単位の側鎖メチル基について、13C−NMRスペクトル(ヘキサクロロブタジエン溶液、テトラメチルシランを基準)で測定した
とき、 19.5〜21.9ppm(メチル炭素領域)に表れるピークの全面積を100
%とした場合、 21.0〜21.9ppm(第1領域)に表れるピークの面積の割合(
百分率)として、下記式から求められる。
【0053】
【数1】

本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、このようにして求められるmm分率が、通常90%以上、好ましくは92%以上、より好ましくは94%以上である。
【0054】
なおポリプロピレンは、上記のような頭−尾結合した3連鎖(i)および(ii)以外にも、下記構造(iii)、(iv)および(v)で示されるような位置不規則単位を含む部分構造を少量有しており、このような他の結合によるプロピレン単位の側鎖メチル基に由来するピークも上記のメチル炭素領域(19.5〜21.9ppm)内に観測される。
【0055】
【化3】

上記の構造(iii)、(iv)および(v)に由来するメチル基のうち、メチル基炭素Aおよびメチル基炭素Bは、それぞれ17.3ppm、17.0ppmで共鳴するので、炭素Aおよび炭素Bに基づくピークは、前記第1〜3領域(19.5〜21.9ppm)内には現れない。さらにこの炭素Aおよび炭素Bは、ともに頭−尾結合に基づくプロピレン3連鎖に関与しないので、上記のトリアドタクティシティ(mm分率)の計算では考慮する必要はない。
【0056】
またメチル基炭素Cに基づくピーク、メチル基炭素Dに基づくピークおよびメチル基炭素D'に基づくピークは、第2領域に現れ、メチル基炭素Eに基づくピークおよびメチル
基炭素E'に基づくピークは第3領域に現れる。
【0057】
したがって第1〜3メチル炭素領域には、PPE−メチル基(プロピレン−プロピレン−エチレン連鎖中の側鎖メチル基)(20.7ppm付近)、EPE−メチル基(エチレン−プロピレン−エチレン連鎖中の側鎖メチル基)(19.8ppm付近)、メチル基C、メチル基D、メチル基D'、メチル基Eおよびメチル基E'に基づくピークが現れる。
【0058】
このようにメチル炭素領域には、頭−尾結合3連鎖(i)および(ii)に基づかないメチル基のピークも観測されるが、上記式によりmm分率を求める際にはこれらは下記のように補正される。
【0059】
PPE−メチル基に基づくピーク面積は、PPE−メチン基(30.6ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができ、EPE−メチル基に基づくピーク面積は、EPE−メチン基(32.9ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができる。メチル基Cに基づくピーク面積は、隣接するメチン基(31.3ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができる。メチル基Dに基づくピーク面積は、前記構造(iv)のαβメチレン炭素に基づくピーク(34.3ppm付近および34.5ppm付近で共鳴)のピーク面積の和の1/2より求めることができ、メチル基D'に基づくピーク面積は、前
記構造(v)メチル基E'のメチル基の隣接メチン基に基づくピーク(33.3ppm付近
で共鳴)の面積より求めることができる。メチル基Eに基づくピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.7ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができ、メチル基E'に基づくピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.3ppm付近で共鳴)のピーク面
積より求めることができる。
【0060】
したがってこれらのピーク面積を第2領域および第3領域の全ピーク面積より差し引くことにより、頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖(i)および(ii)に基づくメチル基のピーク面積を求めることができる。
【0061】
以上により頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖(i)および(ii)に基づくメチル基のピーク面積を評価することができるので、上記式に従ってmm分率を求めることができる。なおスペクトル中の各炭素ピークは、文献(Polymer,30,1350(1989))を参考にして帰属
することができる。
【0062】
また、本発明に使用されるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)のメルトフローレート(ASTM D1238、温度230℃、荷重2.16kgf)は、通常0.1〜30g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、より好ましくは1.0〜10g/10分である。
【0063】
このような本発明に使用されるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、プロピレンと炭素数2または4〜20のα−オレフィンと、必要に応じて少量のその他のオレフィンとを、メタロセン化合物を含む触媒の存在下に共重合することにより好適に得ることができ、好ましくは、WO2004/087775号パンフレットまたはWO01/27124号パンフレットに記載の方法で製造することができる。
【0064】
より好ましくは、本発明に使用されるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、下記一般式(1a)で表される遷移金属化合物(1a)を含む触媒の存在下に、プロピレンと炭素数2または4〜20のα−オレフィンとを共重合して得られたものであることが望ましい。遷移金属化合物(1a)は、置換シクロペンタジエニル環および置換フルオレニル環が炭素で架橋された配位子が、遷移金属原子に配位した化合物である。
【0065】
ここで、遷移金属化合物(1a)を含む触媒は、(2a)有機金属化合物と、(2b)有機アルミニウムオキシ化合物と、(2c)遷移金属化合物(1a)と反応してイオン対を形成する化合物と、から選ばれる少なくとも1種の化合物を、遷移金属化合物(1a)とともに含む触媒であることが望ましい。
【0066】
【化4】

(式(1a)中、R1、R3は水素であり、R2、R4は炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は水素、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異
なっていてもよく、R5からR12までの、隣接した炭素に結合した置換基は互いに結合し
て環を形成してもよい。R13とR14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Mは第4族遷移金属であり、Yは炭素原子であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれ、jは1〜4の整数である。)
【0067】
上述の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、アリル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基などの直鎖状炭化水素基;
イソプロピル基、tert−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;
フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基;
ベンジル基、クミル基、1,1−ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基などの環状不飽和炭化水素基の置換した飽和炭化水素基;
メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、フリル基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−フェニルアミノ基、ピリル基、チエニル基等のヘテロ原子含有炭化水素基などを挙げることができる。
【0068】
上述のケイ素含有基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基などを挙げることができる。
【0069】
また、R5からR12までの、隣接した炭素に結合した置換基は互いに結合して環を形成
してもよい。このような置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基などを挙げることができる。
【0070】
13およびR14はアリール基であることが好ましい。アリール基としては、前述の環状不飽和炭化水素基、環状不飽和炭化水素基で置換された飽和炭化水素基、フリル基、ピリル基、チエニル基などのヘテロ原子含有環状不飽和炭化水素基等を挙げることができる。また、R13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
【0071】
前記一般式(1a)において、シクロペンタジエニル環に結合した置換基であるR2
4は炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1〜20の炭化水素基
としては、前述の炭化水素基を例示することができる。中でも、R2はtert−ブチル
基、アダマンチル基、トリフェニルメチル基のような嵩高い置換基であることがより好ましく、R4はメチル基、エチル基、n−プロピル基のようにR2より立体的に小さい置換基であることがより好ましい。ここでいう立体的に小さいとは、その置換基が占有する体積が小さいことを指す。
【0072】
前記一般式(1a)において、フルオレニル環に結合した置換基であるR5からR12
うち、R6、R7、R10、R11のうちの任意の二つ以上は炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、前述の炭化水素基を例示することができる。特に配位子の合成上の容易さから、左右対称、すなわちR6とR11および
7とR10が同一の基であることが好ましい。このような好ましい態様の中には、R6とR7が脂肪族環(AR−1)を形成し、かつ、R10とR11が脂肪族環(AR−1)と同一な
脂肪族環(AR−2)を形成している場合も含まれる。
【0073】
前記一般式(1a)において、シクロペンタジエニル環とフルオレニル環を架橋するYは炭素原子である。このYに結合した置換基であるR13とR14は同時に炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。炭素数6〜20のアリール基としては、前述の環状不飽和炭化水素基、環状不飽和炭化水素基で置換された飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有環状不飽和炭化水素基を挙げることができる。また、R13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。このような置換基としては、フルオレニリデン基、10−ヒドロアントラセニリデン基、ジベンゾシクロヘプタジエニリデン基などが好ましい。
【0074】
前記一般式(1a)において、Mは第4族遷移金属であり、具体的にはTi、Zr、Hf等が挙げられる。
また、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれる。jは1〜4の整数であり、jが2以上の時は、複数あるQは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0075】
ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、炭化水素基の具体例としては前述と同様のものなどが挙げられる。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシなどのアルコキシ基、アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類等が挙げられる。Qは少なくとも1つがハロゲンまたはアルキル基であることが好ましい。
【0076】
このような遷移金属化合物(1a)としては、例えばジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド、イ
ソプロピリデン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、 ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0077】
本発明に使用されるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)を製造する際に好適に用いられる触媒は、上述の遷移金属化合物(1a)とともに、(2a)有機金属化合物、(2b)有機アルミニウムオキシ化合物、(2c)遷移金属化合物(1a)と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。これらの(2a)、(2b)、(2c)の化合物には特に制限はないが、好ましくは、WO2004/087775号パンフレットまたはWO01/27124号パンフレットに記載の化合物が挙げられ、例えば以下のものが挙げられる。
【0078】
(2a)有機金属化合物としては、下記のような第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が用いられる。
(2a−1)一般式:RamAl(ORbnpq
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である)で表される有機アルミニウム化合物。
【0079】
このような化合物の具体例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどを例示することができる。
【0080】
(2a−2)一般式:M2AlRa4
(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す)で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
このような化合物としては、LiAl(C254、LiAl(C7154などを例示
することができる。
【0081】
(2a−3)一般式:Rab3
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである)で表される第2
族または第12族金属のジアルキル化合物。
【0082】
これらの有機金属化合物(2a)のなかでは、有機アルミニウム化合物が好ましい。また、このような有機金属化合物(2a)は、1種単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0083】
(2b)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく
、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0084】
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。2)ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0085】
なお、上記アルミノキサンは、アルミノキサン以外の少量の有機金属成分を含有してもよい。また、回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(2a−1)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同一の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0086】
また、ベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物としては、60℃のベンゼンに対する溶解量(100ミリグラム原子のアルミニウムに相当する有機アルミニウムオキシ化合物を100mlのベンゼンに懸濁させ、60℃で撹拌しながら6時間混合した後、ジャケット付きG5ガラス製フィルターを用いて60℃で熱時濾過を行い、フィルター上に分離した固体を60℃のベンゼン50mlで4回洗浄して濾液を回収し、濾液中に存在するアルミニウム原子の存在量(ミリモル)を測定することによって求められる。)が、アルミニウム原子換算で通常10ミリモル以下、好ましくは5ミリモル以下、特に好ましくは2ミリモル以下であるものが好ましく、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であるものが好ましい。これらの有機アルミニウムオキシ化合物(2b)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0087】
(2c)遷移金属化合物(1a)と反応してイオン対を形成する化合物としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号明細書などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。このような(2c)の化合物は、1種単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0088】
本発明に使用されるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の製造においては、遷移金属化合物(1a)とともに、メチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(2b)を併用した触媒を用いると、特に高い重合活性を達成できるため好ましい。
【0089】
また、本発明に使用されるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の製造に用いる
重合用触媒は、必要に応じて担体を用いたものであってもよく、その他の助触媒成分を含むものであってもよい。
【0090】
このような触媒は、あらかじめ各成分を混合するか、または担体に担持させて調製してもよく、重合系に各成分を同時にまたは逐次に添加して用いてもよい。
本発明に使用されるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、好適には、上述の触媒の存在下に、プロピレンと、炭素数2または4〜20のα−オレフィン、特に好ましくは1−ブテンと、必要に応じて少量のその他のオレフィンとを共重合して得られる。共重合に際し、各モノマーは、製造するプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)中の各構成単位量が所望の比率となる量で用いられればよく、具体的には、プロピレン/α−オレフィンのモル比が50/50〜95/5、好ましくは60/40〜93/7、より好ましくは70/30〜90/10となる割合で用いられる。
【0091】
共重合条件は特に限定されるものではなく、たとえば、重合温度は通常−50〜+200℃、好ましくは0〜170℃の範囲、重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧の条件下で行うことができる。また、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる二段以上に分けて行うことも可能である。プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができ、触媒中の(2a)、(2b)または(2c)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量はモノマー1kgあたり0.001〜100NL程度が適当である。
【0092】
<(B)ポリプロピレン系樹脂>
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(B)は、融点が120℃以上である。
このようなポリプロピレン系樹脂(B)としては、DSCで測定される融点(Tm)が120℃以上のポリプロピレン系樹脂を制限なく用いることができ、本発明では、ポリプロピレン系樹脂(B)として従来公知のポリプロピレンを広く用いることができる。
【0093】
このポリプロピレン系樹脂(B)は、ホモポリプロピレンであってもよく、プロピレンと少量(たとえば10モル%以下、好ましくは5モル%未満の量)のプロピレン以外のオレフィンとから導かれる単位を含むプロピレン系共重合体であってもよい。本発明においてポリプロピレン系樹脂(B)としては、ホモポリプロピレン、つまりプロピレン単独重合体が好ましい。
【0094】
共重合体はランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。本発明では共重合体の中では、プロピレンランダム共重合体が好ましく用いられる。
プロピレンランダム共重合体を形成する他のオレフィンとしては、具体的には、プロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられ、より具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。
【0095】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(B)は、従来公知の固体状チタン触媒成分を用いて、公知の方法により製造されたポリプロピレンが好適である。またメタロセン化合物触媒成分を用いて得られるポリプロピレンも使用することができる。
【0096】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(B)は、融点(Tm)が120℃以上、好ましくは120〜170℃、より好ましくは120〜160℃、さらに好ましくは130〜150℃である。融点がこの範囲にあると、耐衝撃性と低温ヒートシール性のバランスに優れた積層フィルムが得られる。
【0097】
ポリプロピレン系樹脂(B)としては、このような融点のポリプロピレンのうちでも、ポリプロピレン系樹脂(B)の融点(TmB)と上述のプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の融点(TmA)との差(TmB−TmA)が10〜100℃、好ましくは20〜100℃となるポリプロピレンが望ましい。
【0098】
またこのポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレートMFR(ASTMD1238;230℃、2.16kg荷重下)は、通常0.1〜400g/10分、好ましくは0.5〜100g/10分である。
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂(B)は、通常、プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)に比べ硬度が高い。
【0099】
<プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)とポリプロピレン系樹脂(B)とを特定の割合で含むポリプロピレン系樹脂組成物>
本発明に使用されるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)とポリプロピレン系樹脂(B)とを特定の割合で含むポリプロピレン系樹脂組成物(以下単に樹脂組成物ともいう)は、(A)プロピレン・α−オレフィン共重合体と、(B)ポリプロピレン系樹脂とを、(A)/(B)の重量比が0.1/99.9〜4.5/95.5、好ましくは2.0/98.0〜4.5/95.5となる割合で含む。このような割合で共重合体(A)およびポリプロピレン系樹脂(B)を含むことにより、ヒートシール強度の低下がなく、耐衝撃性及び透明性のバランスに優れた積層フィルムを得ることができる。
【0100】
本願発明では上記のように共重合体(A)の含有量を少なくしたことにより、針で延伸フィルムに穴をあける場合にも、針にゴム成分が付着しないので、延伸フィルムに穴をあけた後に針を洗浄する必要があるという問題も本発明によって解決される。
【0101】
また本発明に使用される樹脂組成物中には、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
本発明において、共重合体(A)とポリプロピレン系樹脂(B)とを含むポリプロピレン系樹脂組成物を調製する方法としては、従来公知の任意の方法を採用することができ、たとえばV型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機により混合する方法、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の混練機により混練する方法が挙げられる。またこれらの方法を組み合わせてもよい。
【0102】
混合して得られた樹脂組成物は、ペレット状ないし顆粒状などに調製してもよく、そのまま樹脂組成物からなる延伸層〔II〕となるフィルム状もしくはシート状などの成形体に成形してもよい。
次に、本発明の積層フィルムを構成する延伸層〔I〕及び延伸層〔II〕、及び積層フィ
ルムの製造方法について説明する。
【0103】
<延伸層〔I〕及び延伸層〔II〕>
本発明において延伸層〔I〕は、上記のポリプロピレン系樹脂(i)から形成された延
伸層である。延伸層〔I〕の厚さは、積層フィルムの耐傷付性及び耐白化性の観点から通
常10〜60μmであり、好ましくは10〜30μmである。
【0104】
本発明において延伸層〔II〕は、上記プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)とポリプロピレン系樹脂(B)とを特定の割合で含むポリプロピレン系樹脂組成物から形成された延伸層である。延伸層〔II〕の厚さは、耐衝撃性の向上効果を発揮する観点から通常0.5〜40μmであり、好ましくは5.0〜30μmである。
なお、延伸層とは、本発明の積層フィルムを製造する際のいずれかの工程で、延伸が施
されている層を示す。
【0105】
<積層フィルムの製造方法>
延伸層〔I〕及び延伸層〔II〕を有する積層フィルムの製造方法は、特に限定されず
、例えば以下の方法で製造することができる。
【0106】
(1):前記ポリプロピレン系樹脂(i)と、前記ポリプロピレン系樹脂組成物とを、シングルマニホールド法、マルチマニホールド法等のTダイ等を用いて共押出することにより、積層体を成形し、該積層体を延伸し、本発明の積層フィルムを製造する方法。
【0107】
(2):前記ポリプロピレン系樹脂(i)を溶融押出することにより、ポリプロピレン系樹脂(i)からなるフィルムやシートを成形し、必要に応じて一軸または二軸延伸を施し、前記フィルムもしくはシート上に前記ポリプロピレン系樹脂組成物を熔融押出して、得られた積層体を延伸する方法。
【0108】
(3):前記ポリプロピレン系樹脂(i)を溶融押出することにより、ポリプロピレン系樹脂(i)からなるフィルムやシートを成形し、一軸または二軸延伸を施し、前記フィルムもしくはシート上に、予め成形し、延伸した前記ポリプロピレン系樹脂組成物からなるフィルムもしくはシートを積層し、本発明の積層フィルムを得る方法。
【0109】
前記方法(3)において、前記ポリプロピレン系樹脂(i)からなるフィルムもしくはシートに、前記ポリプロピレン系樹脂組成物からなるフィルムもしくはシートを積層する場合には、通常接着剤で貼り合わせることにより積層する。
【0110】
上記、(1)、(2)及び(3)の方法において、延伸は縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の少なくとも一方向に行い、本発明の積層フィルムは、一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムである。
【0111】
延伸方法としては特に制限はなく、公知の任意の延伸方法、例えばバッチ法、Tダイ成形法、チューブ法、インフレーション成形法、テンター法等を採用することができる。
延伸成形の方法としては、一軸延伸法、二軸延伸法が挙げられる。
【0112】
バッチ法としては、あらかじめ単層あるいは多層の未延伸シートを成形して得られたものから所定の大きさに切り出し、未延伸シートの縦・横方向の周囲両端部をクリップで挟んで固定し、未延伸シートを加熱することによって軟化させ延伸を行う槽と、延伸されたフィルムを冷却する槽を有する卓上型延伸機(機器によっては、1種の槽で併用する場合がある。)によって、一軸延伸および二軸延伸のフィルムを得ることが可能である。
【0113】
一軸延伸法の場合には、通常、Tダイ成形、あるいはインフレーション成形によって得られた未延伸シートあるいはフィルムを、冷却した後に、遅(前)駆動ロールと速(後)駆動ロールとの間に導入するなどして、縦方向に所定の倍率に延伸することで、延伸フィルムを得ることができる。
【0114】
Tダイを装備した押出機を用いて、テンター法で延伸する場合には、通常、押出機の入り口側の温度を140〜200℃の温度範囲、押出機の出口側の温度を200〜300℃の温度範囲、ダイスの温度を200〜280℃の温度範囲で設定し、樹脂温度が200℃〜280℃の範囲になるようにTダイから押出し、所望の縦横率となるように延伸することによって得られる。
【0115】
インフレーション成形により得た未延伸フィルムを一軸延伸する場合には、通常、押出
機の入り口側の温度を130〜180℃の温度範囲、押出機の出口側の温度を140〜260℃の温度範囲、リングダイの温度を140〜250℃の温度範囲で設定し、樹脂温度が140〜250℃の範囲となるようにリングダイから押出し、所望の縦横率になるように延伸することによって得られる。また、結晶化が遅い樹脂を使用する場合には、必要に応じて、リングダイより押出しされたフィルムを水冷却して延伸フィルムを得る。
【0116】
二軸延伸法としては、テンター法、チューブ法が挙げられる。
テンター法の場合には、通常、押出機で原料を熔融混練してTダイから押出し、得られた熔融混練物をキャスティングドラム上で冷却固化した後、遅(前)駆動ロールと速(後)駆動ロールとの間に導入して、縦方向に所定の倍率に延伸し、次いで、縦方向に延伸されたフィルムをテンターに入れ、横両端を保持して加熱しつつ、横方向に更に延伸することで、二軸延伸フィルムが得られる。
【0117】
チューブ法の場合には、通常、押出機で原料を熔融混練してリングダイから熔融樹脂をチューブ状に押出し、冷却槽で急冷した後に、このチューブ状のものを加熱して、内部にエアを導入して加圧、あるいはチューブの外部を減圧して、横方向に延伸しつつ、縦方向に張力を加えて縦方向にも延伸することで、二軸延伸フィルムが得られる。
【0118】
延伸倍率は、縦方向、横方向、それぞれ通常3倍〜10倍、好ましくは4倍〜9倍である。延伸倍率が上記範囲内になるように延伸を行なうと、フィルム内部の分子配向が十分であり、熱処理により十分な熱収縮が得られる積層フィルムを得ることができ、そのようなフィルムは延伸時に膜切れを起こすこともない。
【0119】
本発明の積層フィルムの製造方法としては、上記(1)の方法が量産化に好適な製造方法であり、また積層フィルムの透明性及びシュリンク包装する際に均一にシュリンクさせるためにも好ましい。
【0120】
以上のようにして形成される本発明の積層フィルムは、耐衝撃性及び透明性のバランスに優れ、シュリンク包装に好適に用いられる。
シュリンク包装に用いる場合には、例えば被包装体を本発明の積層フィルムで包み、その積層フィルムをヒートシールし、針あるいはレーザーで、積層フィルムに延伸層〔I〕
及び延伸層〔II〕を貫通するエア抜き用の穴をあけ、加熱することによってシュリンク包装を行うことができる。エア抜き用の穴の形成は、被包装体を積層フィルムで包む前に行ってもよい。
【実施例】
【0121】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
なお、製造例で得られた重合体の1−ブテン含量、分子量分布、融点、極限粘度[η]およびメルトフローレート、積層フィルムの突き刺し強度、引き裂き強度、透明性、ヒートシール性および収縮寸法変化率については、以下の方法で試験を行った。
【0122】
(1)1−ブテン含量
13C−NMRを利用して求めた。
【0123】
(2)分子量分布
分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)により測定して求めた。測定には、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用いた。分離カラムとしては、TSKgel GNH6−HTを2本、およびTSKgel GNH6−HTLを2本用い、これらのカラムサイズは
いずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用いて、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mlとし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンとしては、分子量がMw<1000、およびMw>4×106については東
ソー社製を用いて、1000≦ Mw ≦4×106についてはプレッシャーケミカル社
製を用いた。なおMwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量を表す。
【0124】
(3)融点
重合体の融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)によって、240℃で10分間保持した重合体サンプルを、30℃まで冷却して5分間保持した後に、10℃/分で昇温させたときの結晶溶融ピークから算出した。
【0125】
(4)極限粘度[η]
135℃デカリン中で測定を行い、dl/gで示した。
【0126】
(5)メルトフローレート(MFR)
230℃、2.16kg荷重の条件で、ASTM D1238の方法で測定した。
【0127】
(6)突き刺し強度
固定された積層フィルムに直径1/2インチ、先端形状直径1/4インチの半円形の針を200mm/分の速度で突き刺し、針が積層フィルムを貫通する際の最大荷重を測定した。測定時の雰囲気温度は、23±2℃とした。
【0128】
(7)引き裂き強度
引き裂き強度は、JIS K7128−2で規定されたエルメンドルフ引裂法に準拠して測定した。
【0129】
(8)透明性(ヘイズ)
全ヘイズおよび内部ヘイズは、ASTM D1003に準拠して測定した。
【0130】
(9)ヒートシール性(ヒートシール接着強度)
ポリプロピレン系樹脂組成物(B)からなる積層フィルムの延伸層〔II〕の面どうしを重ね合わせて、幅5mmのシールバーで温度160℃、圧力0.2MPaで1秒間かけて横方向にヒートシールし、その後放冷した。次いで、ヒートシール部を含んだ積層フィルムからそれぞれ横方向に幅15mm、縦方向に長さ100mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。その試験片のヒートシール部を中央にして180°に開き、試験片の両端を引張試験機のつかみに取り付け、クロスヘッド速度300mm/分でヒートシール部が破断するまで引張荷重を加え、その時の最大荷重(N/15mm)を測定した。
【0131】
(10)収縮寸法変化率
収縮寸法変化率は、JIS C2330で規定されたB法に準拠して測定した。ただし、積層フィルムのアニール条件(前処理)はそれぞれ、(a)温水80℃で10秒間、(b)温水90℃で10秒間、(c)エアーオーブン40℃で7日間、とし、これらの操作を行った後の寸法変化を測定した。
【0132】
[製造例1]
[プロピレン・1−ブテン共重合体の製造]
プロピレン・1−ブテン共重合体は、具体的には以下の方法に準じ、スケールアップして必要量のポリマーを得た。
【0133】
充分に窒素置換した2リットル容量の重合器に、乾燥ヘキサンを866ml、1−ブテンを90g仕込んで、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、重合器の内温を65℃に昇温した後、プロピレンを供給して0.7MPaまで加圧した。
【0134】
次に、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002ミリモルと、アルミニウム換算で0.6ミリモルのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液200mlを重合器内へ添加し、内温65℃、プロピレン圧力0.7MPaを保持しながら30分間重合し、メタノール20mlを添加して重合を停止した。
【0135】
脱圧後、2リットル容器内のメタノール中で重合溶液からポリマーを析出させ、130℃で12時間減圧乾燥した。得られたポリマーの収量は、12.5gであった。
このポリマーは、1−ブテンから導かれる構成単位の含有量が28モル%であり、メルトフローレート(ASTM D1238、温度230℃、荷重2.16kgf)が7.0g/10分であり、GPCにより求めた分子量分布(Mw/Mn)が2.1であり、融点(Tm)が75℃であり、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]が1.90dl/gであった。
【0136】
更に、得られたポリマーを、ペレタイザーを装備した単軸押出機(スクリュー口径φ40mm、住友重機械モダン社製)でポリマーの温度が230℃になるように熔融してペレットを作製した。
【0137】
[実施例1]
エチレン含有量が2.2モル%、メルトフローレート(ASTM D1238、温度230℃、荷重2.16kgf)が7.0g/10分、融点が138℃のポリプロピレン系樹脂(i)(プライムポリマー社製プライムポリプロF327)を延伸層〔I〕に供した

【0138】
次に、上記製造例1で得られたプロピレン・1−ブテン共重合体(A)と、エチレン含有量が3.4モル%、メルトフローレート(ASTM D1238、温度230℃、荷重2.16kgf)が2.6g/10分、融点が128℃のプロピレンランダムコポリマー樹脂(プライムポリマー社製プライムポリプロF233DR)(B)とを、(A)/(B)の重量比が1.0/99.0になる割合で秤量し、ヘンシュルミキサーで混合した配合材料を延伸層〔II〕に供した。
【0139】
積層フィルムの作製には、2種2層シート成形機(連結された2台のスクリュー口径φ30mm押出機に成形用Tダイを装備しているもの。ジーエムエンジニアリング社製)を使用し、前記ポリプロピレン系樹脂(i)及び配合材料を別々に熔融混練し、樹脂温度240℃の状態で、ポリプロピレン系樹脂(i)から形成される層と配合材料から形成される層とが積層されるようにTダイへ供給し、厚さ250μm(ポリプロピレン系樹脂(i)から形成される層(延伸層〔I〕となる層)の厚みが100μm、配合材料から形成さ
れる層(延伸層〔II〕となる層)の厚みが150μmになるように調整)の未延伸の積層体を得た。
【0140】
更に、得られた未延伸の積層体を縦方向に90cm、横方向に90cmの大きさに切り取り、バッチ式延伸機(ブルックナー社製)にて120℃で1分間加熱した後、未延伸の積層体の縦方向へ引張速度10m/分で5倍延伸して20秒間保持した後に空冷し、厚み50μmの一軸延伸された積層フィルム(延伸層〔I〕の厚みは20μmであり、延伸層
〔II〕の厚みは30μmであった。)を得た。
得られた積層フィルムの突き刺し強度、引き裂き強度、透明性、ヒートシール性及び収縮寸法変化率については、上記方法で試験を行った。結果を表2に示す。
【0141】
[実施例2]
実施例1において、延伸層〔II〕に供する上記製造例1で得られたプロピレン・1−ブテン共重合体(A)およびプロピレンランダムコポリマー樹脂(B)の使用量を、(A)/(B)の重量比が2.0/98.0となる量に変更した以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの一軸延伸された積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの突き刺し強度、引き裂き強度、透明性、ヒートシール性及び収縮寸法変化率については、上記方法で試験を行った。結果を表2に示す。
【0142】
[実施例3]
実施例1において、延伸層〔II〕に供する上記製造例1で得られたプロピレン・1−ブテン共重合体(A)およびプロピレンランダムコポリマー樹脂(B)の使用量を、(A)/(B)の重量比が3.0/97.0となる量に変更した以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの一軸延伸された積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの突き刺し強度、引き裂き強度、透明性、ヒートシール性及び収縮寸法変化率については、上記方法で試験を行った。結果を表2に示す。
【0143】
[実施例4]
実施例1において、延伸層〔II〕に供する上記製造例1で得られたプロピレン・1−ブテン共重合体(A)およびプロピレンランダムコポリマー樹脂(B)の使用量を、(A)/(B)の重量比が4.5/95.5となる量に変更した以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの一軸延伸された積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの突き刺し強度、引き裂き強度、透明性、ヒートシール性及び収縮寸法変化率については、上記方法で試験を行った。結果を表2に示す。
【0144】
[比較例1]
実施例1において、延伸層〔II〕に供する上記製造例1で得られたプロピレン・1−ブテン共重合体(A)を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの一軸延伸された積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの突き刺し強度、引き裂き強度、透明性、ヒートシール性及び収縮寸法変化率については、上記方法で試験を行った。結果を表2に示す。
【0145】
[比較例2]
実施例1において、延伸層〔II〕に供する上記製造例1で得られたプロピレン・1−ブテン共重合体(A)およびプロピレンランダムコポリマー樹脂(B)の使用量を、(A)/(B)の重量比が10.0/90.0となる量に変更した以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの一軸延伸された積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの突き刺し強度、引き裂き強度、透明性、ヒートシール性及び収縮寸法変化率については、上記方法で試験を行った。結果を表2に示す。
【0146】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂(i)からなる延伸層〔I〕および、
(A)(1)プロピレンから導かれる単位を50〜95モル%の量で、炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を5〜50モル%の量で含有し、
(2)示差走査熱量測定(DSC)にて測定される融点(Tm)が110℃以下であるか、またはDSCにて融点ピークが観測されず、
(3)135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.1〜12dl/gであり、
(4)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下であるプロピレン・α−オレフィン共重合体と、
(B)融点が120℃以上のポリプロピレン系樹脂とを、
(A)/(B)の重量比で0.1/99.9〜4.5/95.5の割合で含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる延伸層〔II〕を有する積層フィルム。
【請求項2】
前記プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)が、
(5)示差走査型熱量計によって測定される融点Tmが50〜110℃であり、かつ該融点Tmと、前記炭素数2または4〜20のα−オレフィン構成単位含量M(モル%)との関係が、
−2.6M+130≦Tm≦−2.3M+155であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記延伸層〔I〕及び延伸層〔II〕を貫通する、エア抜き用の穴を有することを特徴と
する請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)が、
下記一般式(1a)で表される遷移金属化合物(1a)を含む触媒の存在下に、プロピレンと炭素数2または4〜20のα−オレフィンとを共重合して得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
【化1】

(式(1a)中、R1、R3は水素であり、R2、R4は炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は水素、炭化水素基、
ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R5からR12までの、
隣接する炭素に結合した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
13とR14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよ
い。
Mは第4族遷移金属であり、Yは炭素原子であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれ、
jは1〜4の整数である。)
【請求項5】
前記ポリプロピレン系樹脂(i)が、プロピレンから導かれる単位及び炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を有するプロピレン系ランダム共重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記ポリプロピレン系樹脂(B)が、プロピレン単独重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記延伸層〔I〕の厚さが10〜30μmであり、
前記延伸層〔II〕の厚さが5.0〜30μmであることを特徴とする請求項1〜6のい
ずれかに記載の積層フィルム。
【請求項8】
シュリンク包装に用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルム。

【公開番号】特開2009−234095(P2009−234095A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84227(P2008−84227)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】