説明

積層体の製造方法

【課題】 アンカーコート剤などの接着剤層を設けなくても、基材とポリオレフィン系樹脂との接着性に優れた積層体を得る。
【解決手段】 押出ラミネート法により、基材(金属蒸着フィルム、金属箔、ポリエステル、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物、エチレン・ビニルアルコール共重合体からなる群より選ばれる1種以上のフィルムまたはシート)に接着剤層を介さずにポリオレフィン系樹脂を積層した後、0.1〜1.0MPaで加圧しながら40〜140℃の温度で熱処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材とポリオレフィン系樹脂層間の接着強度に優れ、包装材料に適した積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリア性に優れた金属箔や金属蒸着フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリアミドなどの基材に対するポリオレフィン系樹脂の押出ラミネート成形は、食品や医療薬品などの包装を中心に広く採用されている方法である。従来、これらの基材と低密度ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂との接着性を実用可能なレベルにまで高めるため、アンカーコート剤と称される接着促進剤を塗布する方法やポリオレフィン系樹脂をアクリル酸や無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸で変性した変性ポリオレフィン系樹脂を用いる方法が採られていた。しかしながら、これらの方法は生産性やコストパフォーマンスに劣るため、改善が望まれていた。
【0003】
この改良方法として、押出ラミネート成形の際、溶融ポリオレフィン系樹脂にオゾンガスを吹付けた後、50℃以上の温度で5分間以上熱処理する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、PETなどのプラスチック基材とポリオレフィン系樹脂の積層体を40℃以上、または基材のガラス転移温度以上の温度で熱処理する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−193018号公報
【0005】
【特許文献2】特開平7−148899号公報 しかしながら、これらの方法では、実用上問題ない接着強度を得るためには、50〜60℃の温度にて数日間熱処理を施さなければならず、生産性の改善効果は小さかった。さらに、積層体をロール状に巻き取った後に熱処理を行うため、積層体の収縮によるブロッキングや印刷ピッチ不良などの問題が生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、アンカーコート剤などの接着剤層を設けなくても、基材とポリオレフィン系樹脂との接着性に優れた積層体の製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂を押出ラミネート法により積層した後に加圧下で加熱処理を行うことにより、アンカーコート剤などの接着剤層を設けなくても、基材とポリオレフィン系樹脂層とを強固に接着できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、押出ラミネート法により基材に接着剤層を介さずにポリオレフィン系樹脂を積層した後、0.1〜1.0MPaで加圧しながら40〜140℃の温度で熱処理することを特徴とする積層体の製造方法に関するものである。また、本発明は、前記ポリオレフィン系樹脂の押出成形温度が260〜330℃の範囲であり、かつ、基材と接するポリオレフィン系樹脂の表面をオゾン処理することを特徴とする積層体の製造方法に関するものであり、さらに、前記基材が、金属蒸着フィルムまたは金属箔であることを特徴とする積層体の製造方法に関するものである。
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の積層体を構成する基材としては、金、銀、銅、鉄、アルミニウムなどの金属箔、金属蒸着フィルムなどの金属類、ポリエステル、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物、エチレン・ビニルアルコール共重合体からなる群より選ばれる1種以上のフィルムまたはシートなどが挙げられる。これらの中でも各種金属蒸着フィルムやアルミ箔等の各種金属箔が好ましい。これらの基材の厚みには特に制限はなく、目的等に応じて適宜選定すればよいが、通常は5〜100μm程度である。これらのラミネート用基材は、ラミネートするポリオレフィン系樹脂との接着性を向上させるために、必要に応じてコロナ放電処理や火炎処理等の表面処理を行なってもよい。
【0011】
本発明を構成するポリオレフィン系樹脂は、一般的にポリオレフィン系樹脂と称されているものでよく、このようなポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜12のα−オレフィンの単独重合体または共重合体を示す。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体などのエチレン・α−オレフィン共重合体;エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等のエチレン・アクリル酸共重合体;エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体;ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体などのプロピレン系重合体;、ポリ1−ブテン;ポリ1−ヘキセン;ポリ4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらポリオレフィン系樹脂は、一種単独または二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、エチレン・α−オレフィン共重合体が熱処理後の接着性とコストパフォーマンスに優れるため好ましく、メタロセン触媒を用いて得られるエチレン・α−オレフィン共重合体が特に好ましい。
【0012】
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂のJIS K6922−1(1998年)に従って測定した密度が880〜910kg/mの範囲であると基材との接着性に優れるため好ましい。
【0013】
また、本発明で用いるポリオレフィン系樹脂のJIS K6922−1(1998年)に従って測定したメルトマスフローレートが5〜100g/10分の範囲であると接着性に優れるため好ましい。
【0014】
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂の厚みは特に制限はなく、目的等に応じて適宜選定すればよいが、通常は10〜200μmの範囲である。
【0015】
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂は、押出ラミネート法により基材上に積層されて、ポリオレフィン系樹脂層を構成する。本発明における押出ラミネートとは、押出機を用いてポリオレフィン系樹脂を加熱、溶融し、ダイからフィルム状に押出して基材上に積層し、成形と貼り合わせを同時に行う成形方法である。ポリオレフィン系樹脂層は、基材の片面または両面にコートすることができる。さらに、本発明の押出ラミネート法には、二種類以上の樹脂を同時に押出す共押出ラミネート法や、二台の押出機を用いて順次コーティングするタンデムラミネート法が含まれる。
【0016】
本発明において、加圧下における熱処理により接着強度を向上させるには、ポリオレフィン系樹脂を260〜330℃、好ましくは280〜320℃の温度範囲で成形することが好ましい。成形温度が低すぎると、成形後に加圧加熱処理を行っても接着強度が向上しない恐れがあり、成形温度が高すぎる場合には、成形時の発煙やヒートシール性などが悪化するため好ましくない。
【0017】
また、押出されたポリオレフィン系樹脂に溶融状態でオゾン処理を施すことが好ましく、オゾン処理により、加圧下の熱処理による接着性改善効果が顕著になる。オゾンの吹付け量は、溶融ポリオレフィン系樹脂1mあたり0.1〜200mgが好適である。
【0018】
本発明における加圧下の熱処理は、0.1〜1.0MPaで加圧しながら40〜140℃の温度で行うことを特徴とする。圧力が0.1MPa未満では接着性の改善効果が不十分であり、圧力が1.0MPaを超える場合は積層体が変形するため好ましくない。また、温度が40℃未満では接着性の改善効果が不十分であり、140℃を超える場合は積層体が変形するため好ましくない。このような処理方法としては、加熱した二本ロール間に積層体を通過させる方法や熱板によりプレスする方法などを例示することができる。また、加圧加熱時間は特に限定するものではないが、0.01〜10秒程度が生産性の点から好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法により、アンカーコート剤などの接着剤層を設けなくても、基材とポリオレフィン系樹脂との接着性に優れた積層体を得ることが可能である。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(1)メルトマスフローレート(MFR)
JIS K6922−1(1998年)に準拠。
(2)密度
JIS K6922−1(1998年)に準拠。
(3)基材との接着性
基材とポリオレフィン系樹脂組成物層間を剥離し、引張試験機(島津製作所(株)製、商品名オートグラフDCS500)を用い、サンプル巾15mm、剥離速度300mm/分、180度剥離での剥離強度を測定し、該剥離強度を接着強度とした。
【0021】
実施例および比較例におけるポリオレフィン系樹脂としては、以下に示す二種類のポリエチレン[(P1),(P2)]を用いた。
(P1)高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ペトロセン203、MFR=8g/10分、密度=919kg/m
(P2)エチレン・1−オクテン共重合体(ダウケミカル(株)製、商品名アフィニティ PT1450、MFR=8g/10分、密度=902kg/m
実施例1
ポリオレフィン系樹脂(P1)を90mmΦのスクリューを有する押出ラミネーターの押出機へ供給し、320℃の温度でTダイ(開口長600mm)より押出し、基材であるアルミ箔(住軽アルミ箔(株)製)と、サンドイッチ基材として厚み25μmの低密度ポリエチレンフィルムと厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを予め積層した積層フィルム(以下、PE−PETと記す。)との間に、成形速度100m/分で15μmの厚みとなるようにラミネートした。その後、圧縮成形機にて0.2MPaの加圧下、140℃で1秒間熱処理を行い、アルミ箔/ポリオレフィン系樹脂/PE−PETからなる積層体を得た。得られた積層体のアルミ箔とポリオレフィン系樹脂との間の接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0022】
実施例2
圧縮成形機にて140℃、0.4MPaの条件で加熱加圧処理を1秒間行う以外は、実施例1と同様の操作で積層体を得て、接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0023】
実施例3
ポリオレフィン系樹脂として(P2)を用い、押出温度を280℃とし、ポリエチレン溶融膜の接着面側にオゾン30g/mを含む空気を1時間あたり3mの流量で吹き付けて押出ラミネートする以外は実施例1と同様の操作で積層し、加熱加圧処理を行って積層体を得た。得られた積層体のアルミ箔とポリオレフィン系樹脂との間の接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0024】
実施例4
厚み12μmのPETに、真空蒸着法により600Åの厚みでアルミニウムを蒸着した基材を使用し、蒸着面側に実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂層を押出ラミネート成形法により積層し、加熱加圧処理を行って積層体を得た。得られた積層体のアルミ箔とポリオレフィン系樹脂との間の接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0025】
比較例1
実施例1においてラミネート成形後に加熱加圧処理を行わない以外は同様の方法で積層体を得た。得られた積層体の接着強度を測定した。結果を表1に示すが、接着性が劣っていた。
【0026】
比較例2
実施例1においてラミネート成形後に圧力を加えることなく加熱処理を行い積層体を得た。得られた積層体の接着強度を測定した。結果を表1に示すが、接着性が劣っていた。
【0027】
比較例3
実施例3においてラミネート成形後に加熱加圧処理を行わない以外は同様の方法で積層体を得た。得られた積層体の接着強度を測定した。結果を表1に示すが、接着性が劣っていた。
【0028】
比較例4
実施例4においてラミネート成形後に加熱加圧処理を行わない以外は同様の方法で積層体を得た。得られた積層体の接着強度を測定した。結果を表1に示すが、接着性が劣っていた。
【0029】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出ラミネート法により基材に接着剤層を介さずにポリオレフィン系樹脂を積層した後、0.1〜1.0MPaで加圧しながら40〜140℃の温度で熱処理することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂の押出成形温度が260〜330℃の範囲であり、かつ、基材と接するポリオレフィン系樹脂の表面をオゾン処理することを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
基材が、金属蒸着フィルムまたは金属箔であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
基材が、ポリエステル、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物、エチレン・ビニルアルコール共重合体からなる群より選ばれる1種以上のフィルムまたはシートであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂が、JIS K6922−1(1998年)に従って測定した密度が880〜910kg/mの範囲であり、JIS K6922−1(1998年)に従って測定したメルトマスフローレートが5〜100g/10分の範囲であるエチレン・α−オレフィン共重合体を30重量%以上含む樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜4に記載の積層体の製造方法。

【公開番号】特開2006−15609(P2006−15609A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195687(P2004−195687)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】