説明

積層光回路の製造方法

【課題】コアまたはクラッドの上層にさらにクラッドを形成する場合において、上層のクラッドの厚みを高精度に制御して、クラッドを平坦化できる積層光回路の製造方法を提供する。
【解決手段】クラッド上に形成されたコアの直上に金属マスクを形成する金属マスク形成工程101と、コア及び金属マスクをクラッドで埋め込むクラッド埋込工程102と、金属マスクが露出するまでクラッドを研磨して平坦化する研磨工程103と、露出した金属マスクを除去する金属マスク除去工程104と、平坦化したクラッドとコアとの段差の距離を計測する距離計測工程105と、平坦化したクラッド上及び金属マスク除去後のコア上に、段差の距離及びコアと次層のコアとの間の所望の距離に応じた厚さのクラッドを形成し、熱処理によってクラッドを一体成型することにより段差を平坦化する平坦化行程106とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成されるクラッド及びコアを積層化して、光回路を製造する積層光回路の製造方法、及び、スポットサイズ変換器を製造するスポットサイズ変換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では光回路に関する研究が進んでおり、光インターコネクトや光波長スイッチングなどの全光処理が光回路上で実現されている。今後、より高度かつ高速な全光処理を実現するためには、光回路の集積密度を上げることが重要であり、光回路を積層化することが必要である。光回路を積層化する方法として、以下のような方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には三次元コア導波路を有する石英系ガラス導波路の製造方法が記載されている。特許文献1に記載の製造方法では、まず、石英ガラス基板及びその基板上に形成された金属膜付き第1コア導波路上に第1クラッド層用膜を形成する。次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)法により、第1コア導波路と金属膜との接続面より上側の第1クラッド層用膜を除去して、平坦化された第1クラッド層を形成する。そして、残りの金属膜をエッチングにより除去した第1コア導波路及び残った第1クラッド層の上に第2クラッド層を形成する。
【0004】
また、特許文献2には、コア及び石英基板をクラッド膜で覆設したあと、安定化、透明化のための熱処理を行うことで、石英基板及びクラッド膜の界面が部分融解して両者が一体化し、光導波路素子が得られる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−215352号公報(段落0025〜0034、図1)
【特許文献2】特開2005−292716号公報(段落0006、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これまでの積層光回路の製造方法には有効なものがなく、その開発が課題として残されていた。以下、一般的な積層光回路の製造方法におけるプロセス及びその問題点について説明する。
【0007】
図12は、一般的な積層光回路の製造方法を示す説明図である。まず、基板4上に形成された下層クラッド63の上に下層コア61を成膜し(図12(a))、パターニングを行う(図12(b))。次に、下層コア61をクラッド64で埋めこむことによって光回路を形成したあと(図12(c))、クラッド64の上部平坦化を行う(図12(d))。クラッド64の上部平坦化後は、さらにクラッド64上に上層コア62を形成(図12(e))するプロセスを繰り返すことによって積層光回路が製造される。
【0008】
図12(c)に示すような埋め込み後のクラッドの山なり形状は問題になる。この山なり形状の上に更に光回路を形成する場合、下地の形状を受けて上層コア62は歪み、この歪みが導波損失を発生させてしまうからである。したがって、積層光回路の製造において、埋め込みクラッドの上部平坦性を確保することが重要である。そのため、一般的には、特許文献1に記載されたCMPを用いる方法やあるいはスピンコート成膜による埋め込みクラッドの平坦化が行われている。
【0009】
CMPを用いた研磨による平坦化手法とは、コアの埋め込み後にクラッドの研磨を行い、クラッド上部の平坦化を行う方法である。図12を参照して説明すると、CMPを用いた平坦化手法とは、図12(c)の状態から、クラッド64の研磨を行い、図12(d)に示すように、クラッド64上部の平坦化を行う方法である。
【0010】
しかし、この方法では、コア直上のクラッドの厚みを正確に知ることができないため、上層コアと下層コアの間隔を高精度に把握することが困難である。そのため、光を縦方向に結合する際に所望の強度を得ることが非常に難しい。光を所望の強度で縦方向に結合できないのであれば、積層化のメリットは大きく失われてしまう。
【0011】
このような課題を解決するため、コアの高さまで研磨を行い、あらためてクラッドを成膜することで、厚みの知れた平坦なクラッド形成を可能にする方法が考えられる。しかしながら、この方法にも、研磨終了のタイミングが非常にシビアになるという問題がある。なぜなら、研磨が過剰であればコアが研磨されて薄くなってしまい、研磨が不足であれば残ったクラッドの上にさらにクラッドが形成され、下層及び上層コア間の距離が広がってしまうからである。
【0012】
特許文献1に記載された製造方法では、クラッドで埋め込んだ後のCMPによる研磨が過剰にならないように、まず、金属マスクをコア直上に形成する。そして、金属マスクの高さまでCMPで研磨を行い、研磨後に金属マスクを除去する。しかし、特許文献1に記載された方法では、研磨及び金属マスクの除去後に、コアとクラッドの高さに多少なりとも段差が発生してしまうという問題がある。さらに、コアとクラッドとの間に段差がある状態でクラッドの埋め込みが行われると、埋め込み後のコア直上のクラッドの厚みが設計値とずれてしまうという問題もある。そのため、特許文献1に記載された方法を用いて下層及び上層コア間のクラッドの厚みを高精度に制御することは困難である。
【0013】
一方、スピンコート成膜によっても、コアを平坦に埋め込むこむことができる。スピンコート成膜は、パターニングしたコア(図12(b)参照。)に液体樹脂をスピンコート塗布し、ベイクすることで、平坦なクラッドを形成する方法である。しかしながら、この方法では、コア埋め込み後のクラッドの厚みの制御が困難である。なぜなら、スピンコート成膜は、スピンコート回転数の微小な変化によって膜の厚みが変わりやすく、また、膜の厚みが基板内で大きな場所依存性をもってしまうからである。したがって、下層及び上層コアの距離を高精度に制御する場合には、スピンコート成膜は不向きな方法であるといえる。
【0014】
また、後述の図8に示すような複層のスポットサイズ変換器を製造する場合も、クラッドやコアの上層にさらにクラッドが形成される。高さや幅が異なるコアをスムーズに変換する必要性から、スポットサイズ変換器のコアやクラッドの厚みは、高精度に制御されることが必要である。また、変換時の結合損失を抑えるためにも、コアとクラッドとは平坦に形成されていることが好ましい。
【0015】
そこで、本発明は、コアまたはクラッドの上層にさらにクラッドを形成する場合において、上層のクラッドの厚みを高精度に制御して、クラッドを平坦化できる積層光回路の製造方法、及び、複層のスポットサイズ変換器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による積層光回路の製造方法は、積層化された光回路を製造する積層光回路の製造方法であって、クラッド上に形成されたコアの直上に金属マスクを形成する金属マスク形成工程と、コア及び金属マスクをクラッドで埋め込むクラッド埋込工程と、金属マスクが露出するまでクラッドを研磨して平坦化する研磨工程と、露出した金属マスクを除去する金属マスク除去工程と、平坦化したクラッドとコアとの段差の距離を計測する距離計測工程と、平坦化したクラッド上及び金属マスク除去後のコア上に、段差の距離及びコアと次層のコアとの間の所望の距離に応じた厚さのクラッドを形成し、熱処理によってクラッドを一体成型することにより段差を平坦化する平坦化行程とを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明によるスポットサイズ変換器の製造方法は、くさび形状に形成されたくさび形クラッドの直上に金属マスクを形成する第一金属マスク形成工程と、くさび形クラッド及び金属マスクを、そのくさび形クラッドよりも屈折率が低いクラッドである異屈折率クラッドで埋め込む第一クラッド埋込工程と、金属マスクが露出するまで異屈折率クラッドを研磨して平坦化する第一研磨工程と、露出した金属マスクを除去する第一金属マスク除去工程と、平坦化した異屈折率クラッドとくさび形クラッドとの段差の距離を計測する第一距離計測工程と、平坦化した異屈折率クラッド上及び金属マスク除去後のくさび形クラッド上に、段差の距離及びくさび形クラッドと次層のコアとの間の所望の距離に応じた厚さの第一のクラッドを成膜し、くさび形クラッド及び異屈折率クラッドを、成膜した第一のクラッドと熱処理によって一体成型することにより段差を平坦化する第一平坦化行程と、平坦化した第一のクラッド上に、異屈折率クラッドよりも大きい屈折率のコアを形成するコア形成工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コアまたはクラッドの上層にさらにクラッドを形成する場合において、上層のクラッドの厚みを高精度に制御して、クラッドを平坦化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による積層光回路の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図2】所望の厚みのクラッドを成膜する場合の例を示す説明図である。
【図3】積層光回路の例を示す説明図である。
【図4】研磨終了検出機構の例を示す説明図である。
【図5】スポットサイズ変換器の形成工程の例を示す説明図である。
【図6】スポットサイズ変換器の形成工程の例を示す説明図である。
【図7】スポットサイズ変換器の形成工程の例を示す説明図である。
【図8】スポットサイズ変換器を斜め上方向から参照した構成例を示す説明図である。
【図9】縦方向インターコネクトの例を示す説明図である。
【図10】本発明による積層光回路の製造方法の最小構成の例を示す説明図である。
【図11】本発明によるスポットサイズ変換器の製造方法の最小構成の例を示す説明図である。
【図12】一般的な積層光回路の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0021】
実施形態1.
図1は、本発明による積層光回路の製造方法の一実施形態を示す工程図である。まず、基板4上に形成された下層クラッド21の上に下層コア11(導波路11と記すこともある。)を形成し、さらにその下層コア11上に金属マスク3を形成する。そして、形成された下層コア11及び金属マスク3のパターニングを行う(図1(a))。次に、下層コア11及び金属マスク3をクラッド22で埋め込み(図1(b))、CMPでクラッド22上部を平坦化する(図1(c))。このとき、金属マスク3が露出するまでクラッド22を研磨して平坦化する。次に、露出した金属マスク3を除去する(図1(d))。金属マスク3の除去には、液体エッチングなどを用いればよい。そして、その上にクラッド23を成膜し、熱処理を施すことで、金属マスクの除去後に発生した微小な段差を平坦化する(図1(e))。クラッド23の平坦化後、次層の上層コア12(導波路12と記すこともある。)及び金属マスク3を下層コア11上にパターニングする(図1(f))。以降はこれらの工程の繰り返しである。
【0022】
ここで、微小な段差を平坦化する(図1(e))際に、平坦化したクラッド22上及び金属マスク除去後の下層コア11上に、段差の距離及び下層コア11と次層の上層コア12との間の所望の距離に応じた厚さのクラッド23を形成する。そして、熱処理によってクラッド22と成膜したクラッド23とを一体成型することによって段差を平坦化する。なお、微小の段差を測定するには、AFM(Automatic Force Microscope:原子間力顕微鏡)などの段差測定器を用いればよい。AFMでは段差測定がnm(ナノメートル)オーダーで可能なため、平坦化後に必要な膜の厚みを高精度に割り出すことができる。このようにすることで、下層コア11と次層の上層コア12との距離を高精度に制御できる。
【0023】
図2は、コアの上に所望の厚みのクラッドを成膜する場合の例を示す説明図である。図2を参照して、導波路コアの上に厚み81のクラッドを成膜する場合について説明する。
【0024】
まず、金属マスクを除去した後のコアとクラッドの段差82を計測する。次に、熱処理によって平坦化されるクラッドを厚み83だけ成膜する。厚み83は、計測された段差82の厚みを設計値(所望の厚み)である厚み81から減じることで算出できる。下にコアがないクラッド上には、厚み83の高さまでクラッドが成膜され、下にコアがある部分では、厚み81の高さよりもやや低い高さまでクラッドが成膜される。このように成膜されたクラッドを、図2において一点鎖線で示す。この後、熱処理を行うことで、一点鎖線で示すクラッドは平坦化され、全体的に均一な厚みのクラッドが形成される。なお、コアが占める面積は、基板の面積と比べて微々たるものである。よって、一点鎖線で示された凹部84の面積も微々たるものであり、熱処理の前後で厚み83はほとんど変化しない。
【0025】
図1に例示する工程において、コアの直上に金属マスクを成膜することが1つの特徴である。金属マスクが成膜されていない場合、研磨終了のタイミングは非常にシビアなものになる。金属マスクを成膜することで、研磨終了のタイミングのトレランスを拡大することができる。すなわち、成膜されていない場合、研磨量トレランスの小ささが様々な問題を引き起こす。例えば、研磨が不足した場合、残ったクラッドの上にさらにクラッドが形成される。すると、下層及び上層コア間の距離が広がってしまうという問題を引き起こす。しかし、金属マスクが成膜されている場合、金属マスク及びクラッドの両方が研磨される段階で研磨を終了することでクラッドを十分に研磨することができる。さらに、コアへの研磨まで金属マスクの厚みの分だけ余裕がある。つまり、これは、金属マスクの厚みだけ研磨終了のタイミングが緩くなるということを意味する。よって、研磨が過剰になった場合でも、コアが研磨されて薄くなってしまうことを防止できる。
【0026】
なお、研磨後に金属マスクを除去すると、コアとクラッドとの段差は元の金属マスクの厚み以下になる。そこで、AFMなどの段差測定器でこの段差を計測し、その段差に基づいて所望の厚さのクラッドを形成する。あとは、クラッドを熱処理によって平坦化すれば、クラッドとコアの段差をなくすることができる。すなわち、このような工程を経ることで、クラッドの厚みを高精度に制御して、平坦なクラッドを形成できる。
【0027】
上記説明では、1つのコアを2層に積層化する光回路について説明した。ただし、一つの階層にパターニングするコアの数、及び積層化する光回路の階層数は、上記の数(1つのコア及び2層)に限定されない。コアの数は2つ以上であってもよく、また、階層数は3層以上であってもよい。
【0028】
図3は、下層のクラッド上に2つのコアを配置し、それぞれのコアの上層に、さらに2つずつコアを配置した3層の積層光回路の例を示す説明図である。この積層光回路を製造する場合、まず、基板4上に形成された下層クラッド21上の下層コア11の上に金属マスク3(図3において図示せず)を形成し、コアが2つになるように下層コア11及び金属マスク3のパターニングを行う。次に、下層コア11及び金属マスク3をクラッド22で埋め込み、クラッド22上部を平坦化した後で、露出した金属マスク3を除去する。そして、その上にクラッド23を成膜し、微小な段差を平坦化する。
【0029】
さらに、次層の上層コア12及び金属マスク3を、各下層コア11上に形成するようにパターニングする。そして、上層コア12及び金属マスク3を埋め込んだ上層クラッド24を平坦化し、金属マスク3の除去後、高次上層段差平滑薄膜25を成膜する。最後に、高次上層コア13を各上層コア12上に形成するようにパターニングする。そして、高次上層コア13を埋め込んだ高次上層クラッド26を平坦化する。以上の工程を経ることで、図3に例示する積層光回路を製造できる。このように、積層階層を多くすることで、より集積密度を上げることができる。
【0030】
以上のように、本実施形態による積層光回路の製造方法は、図1を参照すると、下層クラッド21上に形成された下層コア11の直上に金属マスク3を形成し、下層コア11及び金属マスク3をクラッド22で埋め込む。次に、金属マスク3が露出するまでクラッド22を研磨して平坦化し、露出した金属マスク3を除去する。ここで、平坦化したクラッド22と下層コア11との段差の距離を計測し、その段差の距離及び下層コア11と次層の上層コア12との間の所望の距離に応じた厚さのクラッド23をクラッド22及び下層コア11の上に形成する。最後に、熱処理によってクラッド22及びクラッド23を一体成型することによって段差を平坦化する。そのため、コアの上層にクラッドを形成する場合において、上層のクラッドの厚みを高精度に制御して、クラッドを平坦化できる。
【0031】
次に、上記実施形態における積層光回路の製造方法の変形例について説明する。上記実施形態では、金属マスク除去後に発生した段差から平坦化に必要な厚みを算出する。そのため、クラッドと金属マスクの両方が研磨される段階で研磨を終了することになる。研磨終了のタイミングのトレランスをそれほど拡大できない場合には、研磨終了のタイミングを高い精度で検知できるようにすることが望ましい。そこで、以下の説明では、金属マスクが露出するまでクラッドを研磨して平坦化する場合に、研磨終了のタイミングを高い精度で検知する方法について説明する。
【0032】
まず、図1(a)に例示する工程で下層コア11及び金属マスク3のパターニングと同時に、研磨終了をチェックするための金属パターン(図1において図示せず)を形成する。この金属パターンは、金属マスク3と一体形成され、形成する光回路の範囲に応じて予め定められた各地点に金属マスク3が配置されるように形成される。そして、図1(c)に例示する工程でクラッドを平坦化する際、このパターンにプローバなどを当てて適当な電圧を印加し、流れる電流の有無を判定する。電流を検知することができれば、金属マスクの露出が確認できたことになる。すなわち、金属の露出が確認できれば、研磨が十分であると判断できる。一方、電流を検知できなければ、誘電体(例えば、クラッド)が金属マスク上に残っているため、研磨が不十分であると判断できる。したがって、クラッドを平坦化する場合、金属パターンの各地点間に電圧を印加し、各地点間に電流が流れたことを条件に研磨を終了すればよい。
【0033】
電圧印加による電流の導通チェックによって金属マスクの露出を検出する仕組み(研磨終了検出機構)について、図4を参照して詳細に説明する。図4は、光回路を基板の上方向から見た場合の例を示す説明図である。図4に例示する積層光回路形成領域6は、基板4上で積層光回路を形成する領域である。また、図4に例示する研磨終了検出用電極5は、金属マスクの露出を検出する金属パターンである。以下の説明では、積層光回路形成領域6の外側(外周用電極53)から中間地点(中間地点電極52)までは研磨が足りて金属マスクが露出し、中央(中央電極51)付近では、研磨不足により金属マスクがクラッドに埋もれているとする。この場合、外周用電極53と中央電極51とにプローバを当てて適当な電圧を印加しても電流は流れない。一方、外周用電極53と中間地点電極52とにプローバを当てて適当な電圧を印加すれば電流は流れる。
【0034】
このような金属パターンを基板全面に適用して導通チェックを行うことで、基板全面で研磨終了判定を行うことができる。よって、金属パターンは、形成する光回路の範囲に応じて形成すればよい。なお、この導通チェックに必要な冶具はプローバがあれば良いだけの簡単なものであり、試験自体も瞬時に完了する。また、この金属パターンは、金属マスク3を除去する工程で取り除かれるため、製造する光回路に影響を及ぼさない。
【0035】
タイミングのトレランスを拡大できない場合には、高い精度で研磨終了のタイミングを検知することが必要になる。しかし、コアにクラッドを埋め込む場合の厚みや、CMPによる研磨の厚みは、制作するたびに誤差が生じてしまうものである。そのため、毎回同じ条件で制作を行えば、必ず同じ結果が得られるというものではない。つまり、最適な研磨終了のタイミングは制作のたびに変わってしまうといえる。また、制作時の環境及び条件によっては研磨の厚みが場所依存性を若干有してしまうこともある。そのため、ある地点では研磨が十分であっても別の地点では研磨が不十分ということが起こり得る。
【0036】
しかし、本変形例によれば、形成する光回路の範囲に応じて予め定められた金属パターンの各地点に電圧を印加し、各地点間に電流が流れたことを条件に研磨を終了する。そのため、基板全面の研磨終了のタイミングを高い精度で検知できる。すなわち、上記のような研磨終了のタイミング検出機構を用いることで、下層及び上層コア間の距離を高精度に制御して積層光回路を製造できる。すなわち、クラッドの厚みを高精度に制御して、平坦なクラッドを形成できる。
【0037】
実施形態2.
第2の実施形態では、不純物ドープ濃度を調整した高屈折率クラッドの段差平滑薄膜を用いてスポットサイズ変換器を製造する方法について説明する。ここで、スポットサイズ変換器とは高さや幅が異なる2つの導波路を接続する際に、高さや幅をスムーズに変換する構造を備える接続器である。このような構造により、2つの導波路を接続する際の結合損失を低減することができる。以下、図5〜図7に例示する工程図を用いて、スポットサイズ変換器を製造する方法について説明する。
【0038】
図5は、コアの下層を形成する工程の例を示す工程図である。まず、基板4に形成された下層クラッド21の上に高屈折率クラッド71、及びその高屈折率クラッド71の上に金属マスク3を形成し、高屈折率クラッド71及び金属マスク3のパターニングを行う(図5(a))。このとき、高屈折率クラッド71及び金属マスク3は、くさび形にパターニングされる。次に、高屈折率クラッド71及び金属マスク3をクラッド22で埋め込み(図5(b))、CMPでクラッド22上部を研磨して平坦化する(図5(c))。そして、露出した金属マスク3を除去する(図5(d))。ここで、高屈折率クラッド71と、クラッド22とは、屈折率の異なるクラッドである。
【0039】
図6は、コアを形成する工程の例を示す工程図である。金属マスク3を除去した後に生じた微小な段差を計測し、クラッド22上及び金属マスク除去後の高屈折率クラッド71上に、その段差の距離及び高屈折率クラッド71と次層のコア41との間の所望の距離に応じた厚さの高屈折率クラッド72を成膜する。具体的には、金属マスク3を除去した後の高屈折率クラッド71とクラッド22の段差xを計測する。ここで、形成したい高屈折率クラッド72の厚さをzとすると、クラッド22上に成膜する高屈折率クラッド72の厚さtは、t=z−xで算出できる。よって、クラッド22上及び高屈折率クラッド71上に厚さtで高屈折率クラッド72を成膜すればよい。
【0040】
そして、高屈折率クラッド71及びクラッド22を、高屈折率クラッド72と熱処理によって一体成型することにより微小な段差を平坦化する(図6(e))。そして、この高屈折率クラッド72の上にコア41を形成する。以上の工程を経てクラッド及びコアを形成することで、スポットサイズ変換器を製造する際に、コア41とくさび形状の高屈折率クラッド71とを別々に形成することができる。
【0041】
なお、コアの上部に、さらにくさび形状の高屈折率クラッドを形成する場合、高屈折率クラッド72を平坦化(図6(e))した後、コア41及び金属マスク3を形成し(図6(f))、高屈折率クラッド72、コア41及び金属マスク3のパターニングを行う(図6(g))。次に、高屈折率クラッド72、コア41及び金属マスク3を上層クラッド24で埋め込み、CMPで上層クラッド24上部を研磨して平坦化する(図6(h))。そして、露出した金属マスク3を除去する(図6(i))。
【0042】
図7は、コアの上層を形成する工程の例を示す工程図である。金属マスク3を除去した後に生じた微小な段差を計測し、上層クラッド24上及び金属マスク除去後のコア41上に、その段差の距離及びコア41上に形成する所望の厚さに応じた高屈折率クラッド73を成膜する。なお、コア41の上に所望の厚みの高屈折率クラッド73を成膜する方法は、第1の実施形態と同様である。すなわち、上層クラッド24上に高屈折率クラッド73を成膜する厚さは、微小な段差の厚みをコア41上に成膜したい所望の厚みから減じることで算出できる。そして、コア41及び上層クラッド24を、高屈折率クラッド73と熱処理によって一体成型することにより微小な段差を平坦化する(図7(j))。そして、高屈折率クラッド73のパターニングを行う(図7(k))。このとき、高屈折率クラッド73は、くさび形にパターニングされる。最後に、高屈折率クラッド73を高次上層クラッド26で埋め込む(図7(l))。このようにして、スポットサイズ変換器を製造できる。
【0043】
なお、クラッド22の屈折率は、くさび形のクラッドである高屈折率クラッド71,72,73の屈折率よりも、また、コア41の屈折率よりも低い。また、コア41の屈折率は、高屈折率クラッド71,72の屈折率以上である。すなわち、各クラッドの屈折率の関係は、「クラッド22の屈折率<高屈折率クラッド71,72,73の屈折率<=コア41の屈折率」と表わすことができる。
【0044】
図8は、このスポットサイズ変換器を斜め上方向から参照した構成例を示す説明図である。図8に例示するスポットサイズ変換器は、基板4上のクラッド2を成膜し、さらに、コア1の上下をくさび形の高屈折率クラッド7によって挟みこむことで、2つの導波路を接続する際の結合損失を低減することができるものである。本発明によれば、このようなスポットサイズ変換器を製造することができる。
【0045】
一般的に、コアの横幅を変化させて接続するスポットサイズ変換器は、接続部分付近で徐々にコアの幅を変化させるように形成される。一方、高さ方向のスポットサイズ変換器を形成する場合、図8に例示するように、コアの上下にくさび形状の構造体を形成する。通常、くさび形状の構造体の形成後にコアを成膜する方法は、これまでに述べてきたように平坦性の精度を確保することが困難である。そのため、このくさび形状の構造体は、コア及びくさび形状の構造体用膜の成膜後、コア形状のパターニングを行い、構造体をくさび形状にパターニングすることによって形成される。したがって、くさび形状の構造体の幅がコア幅以下であること、及び、くさび形状の構造体が形成できるのがコアの上部であること、という制約を受けてしまう。
【0046】
しかし、本発明によるスポットサイズ変換器の製造方法は、図5及び図6を参照すると、まず、くさび形状に形成された高屈折率クラッド71の直上に金属マスク3を形成し、高屈折率クラッド71及び金属マスク3をクラッド22で埋め込む。そして、金属マスク3が露出するまでクラッド22を研磨して平坦化し、露出した金属マスク3を除去する。そして、平坦化したクラッド22と高屈折率クラッド71との段差の距離を計測し、クラッド22上及び金属マスク除去後の高屈折率クラッド71上に、その段差の距離及び高屈折率クラッド71と次層のコア41との間の所望の距離に応じた厚さの高屈折率クラッド72を成膜する。そして、高屈折率クラッド71及びクラッド22を、熱処理によって、高屈折率クラッド72と一体成型することにより段差を平坦化する。最後に、平坦化した高屈折率クラッド72上にコア41を形成する。
【0047】
そのため、クラッドの上層にさらにクラッドを形成する場合において、上層のクラッドの厚みを高精度に制御して、クラッドを平坦化できる。このように、平坦性を十分に確保することができるため、コアとくさび形状の構造体とを別々に形成することが可能になる。そのため、上記制約を受けることなく高さ方向のスポットサイズ変換器を形成できる。具体的には、コア及びくさび形状の構造体を別々に形成することにより、くさび形状の構造体の横幅についての制約がなくなるため、図8に例示するように、コア幅よりも広いくさび形状の構造体を形成することができる。また、コアの下にくさび形状の構造体を形成することもできる。
【0048】
なお、上記説明では、コアの下、もしくは、コアの上下にくさび形の高屈折率クラッドを形成してスポットサイズ変換器を製造する場合について説明した。ただし、高屈折率クラッドを形成する位置は、コアの上だけであってもよい。また、高屈折率クラッドの形状は、くさび形でなくてもよい。
【実施例1】
【0049】
以下、具体的な実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲は以下に説明する内容に限定されない。すなわち、以下の具体例は、成膜方法及び装置に何ら制約を与えるものではない。第1の実施例では、コアとクラッドの成膜にプラズマ化学気相成長法を用いて石英膜を形成し、成膜時のドーパント濃度や成膜する材料の種類を変えることによって屈折率を調製する積層光回路の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、プラズマ化学気相成長法を、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)と記す。
【0050】
以下、図1に例示する工程を参照して説明する。まず、Si(シリコン)基板4上に下層クラッド21になるPSG(Phospho−Silicate−Glass:リンをドープした石英ガラス)を形成する。次に、下層コア11としてGPSG(ゲルマニウムPSG:ゲルマニウム及びリンをドープした石英ガラス)を成膜し、蒸着によってCr(銅)の薄膜(金属マスク3)を下層コア11につける(図1(a))。次にプラズマCVDを用いてクラッド22になるPSGを成膜し、下層コア11及び金属マスク3を埋め込む(図1(b))。その後、CMPによってCrが露出するまで研磨を行う(図1(c))。研磨終了後、液体エッチングによってCrを除去する(図1(d))。そして、BPSG(ボロンPSG:ボロン及びリンをドープした石英ガラス。クラッド23に相当。)を成膜し、アニール処理を施した後、コアを平坦に埋め込む(図1(e))。以降、光回路を積層化する場合には、上記工程(図1(a)〜(e))を繰り返す。
【0051】
例えば、コアにダメージを与えることを防止するために金属膜をコア上に形成する製造方法においては、通常、この金属膜は、コア層エッチング完了の際に除去される。本発明においては、この金属膜をそのまま金属マスクとして利用する。そのため、上記製造方法に比べ、新たな工程の追加やそれに伴うコスト増加は発生しない。
【0052】
また、CMPによるクラッドの平坦化の際、熱によって金属マスクが変質してしまうと、クラッドの平坦度の低下や、金属膜が後で除去できなくなるおそれがある。そのため、なるべく低温で石英膜の形成を行うことが望ましく、かつ、用いる金属膜としては、耐熱性の高い金属を選択することが望ましい。そこで、本実施例に示すように、プラズマCVDを用いることにより、クラッドの平坦度の低下や、金属マスクであるCrの熱による変質を防ぐことができる。また、耐熱性の高い金属膜として、クロムやタングステンなどを用いてもよい。
【0053】
なお、本実施例では、低温で石英膜を形成する方法として、プラズマCVDを用いる場合について説明した。ただし、金属マスクが耐えられる温度でコアおよびクラッドを形成できる方法であれば、石英膜を形成する方法はプラズマCVDに限定されない。また、金属膜を除去した後の、クラッド23(段差平滑薄膜23とも言う。)を形成する工程においては、すでに金属膜が除去されているため、特に低温で成膜する必要はない。よって、熱処理によってクラッドを一体成型することにより段差を平坦化する工程では、その段差が極力平坦に埋め込まれるような成膜方法、膜の種類及び熱処理の際の温度を選定すればよい。
【実施例2】
【0054】
第2の実施例では、第1の実施形態における製造方法を用いて製造された積層光回路を利用して、方向性結合器を用いることなく縦方向インターコネクトを製造する方法について説明する。
【0055】
光積層回路の場合、方向性結合器を用いても縦方向に光をインターコネクトすることが可能である。しかし、方向性結合器には波長特性があり、ある波長では光が別の層に移るが、ある波長では光が移らないという状況がある。そのため、全ての波長で光を別の層に移すことが求められる場合、別の光インターコネクト方法が必要であり、当然ながらできる限り簡易な方法が望まれる。本実施例では、積層化された光回路において、ダイシングソー等によって形成された溝の斜め端に反射金属マスクをつけた構造を形成することで、縦方向インターコネクトを製造する方法について説明する。ここで、ダイシングソーとは、基板をノコギリ運動によって切断するものである。
【0056】
図9は、縦方向インターコネクトの例を示す説明図である。以下の説明では、導波路11から導波路12に向けて光が送信されるものし、図中の実践矢印は光の流れを表すものとする。また、通常、図9に例示する導波路11と同じ高さには導波路11とは別の導波路が形成され、同様に、導波路12と同じ高さにも導波路12とは別の導波路が形成されるが、ここでは記載を省略する。なお、以下の説明では、下層(導波路11)から上層(導波路12)に向けて光が送信される場合について説明するが、光が送信される方向は、逆(すなわち、上層(導波路12)から下層(導波路11))に向けて流れる場合であってもよい。
【0057】
まず、第1の実施形態で説明した方法により、基板4上のクラッド2の内部に積層化された導波路11,12を形成する。そして、導波路11,12の形成後、例えば、ダイシングソーによってレ形状の2つの溝を形成し、その溝に反射金属マスク8a,8bを形成する。ダイシングソーとして使用する刃にレ形状のものを選択し、切断前にダイシングを終了することで、図9に例示する溝が作成される。具体的には、導波路11及び導波路12の延長線上に、光が斜めに入射するためのレ形状の溝14,15及び反射金属マスク8a,8bを形成する。レ形状の溝14,15は、導波路11から入射した光を反射し、さらに、導波路12に光を入射する角度に形成される。また、形成されたレ形状の溝14,15には、光の屈折率を調整するための屈折率マッチング材9が充填される。
【0058】
すなわち、本実施例における縦方向インターコネクトは、下層の導波路11と同一の高さに、下層の光回路上を導波する光を上層の光回路に反射させて導波する反射金属マスク8aが形成される。さらに、上記縦方向インターコネクトは、その光の反射を受けて、上層の光回路と同一の高さに、導波路12にその光を導波する反射金属マスク8bが形成される。反射金属マスクを使用する理由は、ミラー(反射金属マスク)には、ほぼ波長特性がないからである。そのため、反射金属マスクによって光を反射することで、波長によらず別の層の導波路に光を移すことが可能になる。なお、反射金属マスクやミラーは、光を反射する膜状の素材であることから反射膜ということができる。
【0059】
本発明における製造方法を適用することにより、図9における下層コア11上部と、上層コア12下部との距離が正確な積層光回路が製造できる。よって、この積層光回路を用いて形成された縦方向インターコネクトを用いることで、複雑な光処理が可能になる。
【0060】
また、上記の縦方向インターコネクトでは、本発明による製造方法を適用して積層化された導波路が形成されているため、各層における光回路の平坦性が担保されている。例えば、導波路12の下部であって、導波路11と同じ高さに別の導波路が存在する場合、光回路の平坦性が担保されていない場合には、導波路12に導波損失が発生する可能性がある。しかし、本発明では、平坦性が担保されていることで、導波損失を抑えることが可能になる。
【0061】
次に、本発明による積層光回路の製造方法の最小構成の例を説明する。図10は、本発明による積層光回路の製造方法の最小構成の例を示す説明図である。本発明による積層光回路の製造方法は、積層化された光回路を製造する積層光回路の製造方法であって、クラッド(例えば、クラッド21)上に形成されたコア(例えば、下層コア11)の直上に金属マスク(例えば、金属マスク3)を形成する金属マスク形成工程101(例えば、図1(a))と、コア及び金属マスクをクラッド(例えば、クラッド22)で埋め込むクラッド埋込工程102(例えば、図1(b))と、金属マスクが露出するまでクラッドを研磨して平坦化する(例えば、CMPで平坦化する)研磨工程103(例えば、図1(c))と、露出した金属マスクを(例えば、液体エッチングにより)除去する金属マスク除去工程104(例えば、図1(d))と、平坦化したクラッドとコアとの段差の距離を計測する(例えば、AFMを用いて計測する)距離計測工程105と、平坦化したクラッド上及び金属マスク除去後のコア上に、段差の距離及びコアと次層のコア(例えば、上層コア12)との間の所望の距離に応じた厚さのクラッドを形成し、熱処理によってクラッドを一体成型することにより段差を平坦化する平坦化行程106(例えば、図1(e))とを含む。
【0062】
そのような構成により、コアの上層にクラッドを形成する場合において、上層のクラッドの厚みを高精度に制御して、クラッドを平坦化できる。
【0063】
さらに、本発明によるスポットサイズ変換器の製造方法の最小構成の例を説明する。図11は、本発明によるスポットサイズ変換器の製造方法の最小構成の例を示す説明図である。本発明によるスポットサイズ変換器の製造方法は、くさび形状に形成された一のクラッド(例えば、高屈折率クラッド71)の直上に金属マスク(例えば、金属マスク3)を形成する第一金属マスク形成工程111(例えば、図5(a))と、一のクラッド及び金属マスクをその一のクラッドとは屈折率の異なる他のクラッド(例えば、クラッド22)で埋め込む第一クラッド埋込工程112(例えば、図5(b))と、金属マスクが露出するまで他のクラッドを研磨して平坦化する第一研磨工程113(例えば、図5(c))と、露出した金属マスクを除去する第一金属マスク除去工程114(例えば、図5(d))と、平坦化した他のクラッドと一のクラッドとの段差の距離を計測する(例えば、AFMを用いて計測する)第一距離計測工程115と、平坦化した他のクラッド上及び金属マスク除去後の一のクラッド上に、段差の距離及び一のクラッドと次層のコアとの間の所望の距離に応じた厚さの一のクラッド(例えば、高屈折率クラッド72)を成膜し、くさび形状の一のクラッド及び他のクラッドを、成膜した一のクラッドと熱処理によって一体成型することにより段差を平坦化する第一平坦化行程116(例えば、図6(e))と、平坦化した一のクラッド上にコア(例えば、コア41)を形成するコア形成工程117(例えば、図6(f))とを含む。
【0064】
そのような構成により、クラッドの上層にさらにクラッドを形成する場合においても、上層のクラッドの厚みを高精度に制御して、クラッドを平坦化できる。
【0065】
なお、少なくとも以下に示すような積層光回路の製造方法及びスポットサイズ変換器の製造方法も、上記に示すいずれかの実施形態に開示されている。
【0066】
(1)積層化された光回路を製造する積層光回路の製造方法であって、クラッド(例えば、クラッド21)上に形成されたコア(例えば、下層コア11)の直上に金属マスク(例えば、金属マスク3)を形成する金属マスク形成工程(例えば、図1(a))と、コア及び金属マスクをクラッド(例えば、クラッド22)で埋め込むクラッド埋込工程(例えば、図1(b))と、金属マスクが露出するまでクラッドを研磨して平坦化する(例えば、CMPで平坦化する)研磨工程(例えば、図1(c))と、露出した金属マスクを(例えば、液体エッチングにより)除去する金属マスク除去工程(例えば、図1(d))と、平坦化したクラッドとコアとの段差の距離を計測する(例えば、AFMを用いて計測する)距離計測工程と、距離に基づいて、平坦化したクラッド上及び金属マスク除去後のコア上に、そのコアと次層のコア(例えば、上層コア12)とが所望の距離になるようにクラッドを形成し、熱処理によってクラッドを一体成型することにより段差を平坦化する平坦化行程(例えば、図1(e))とを含む積層光回路の製造方法。
【0067】
(2)金属マスク形成工程で、形成する光回路の範囲(例えば、積層光回路形成領域6)に応じて予め定められた各地点に金属マスク(例えば、金属パターン)を形成し、研磨工程で、金属マスクの各地点間に電圧を印加し、各地点間に電流が流れたことを条件に研磨を終了する積層光回路の製造方法。
【0068】
(3)研磨工程で、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD)を用いてクラッドを研磨する積層光回路の製造方法。
【0069】
(4)積層化された第一の層の光回路(例えば、導波路11)と同一の高さに、その光回路上を導波する光を反射させて第二の層の光回路(例えば、導波路12)に導波する第一の反射膜(例えば、反射金属マスク8a)を形成する第一反射膜形成工程と、光の反射を受けて、第二の層の光回路と同一の高さに、その光回路上に光を導波する第二の反射膜(例えば、反射金属マスク8b)を形成する第二反射膜形成工程とを含み、積層光回路として縦方向インターコネクトを製造する積層光回路の製造方法。
【0070】
(5)平坦化行程で、所望の距離(例えば、厚み81)から段差の距離(例えば、段差82)を減算した厚さ(例えば、厚み83)のクラッドを平坦化したクラッド上及び金属マスクの除去後のコア上に形成する積層光回路の製造方法。
【0071】
(6)くさび形状に形成されたくさび形クラッド(例えば、高屈折率クラッド71)の直上に金属マスクを形成する第一金属マスク形成工程(例えば、図5(a))と、くさび形クラッド及び金属マスクを、そのくさび形クラッドよりも屈折率が低いクラッドである異屈折率クラッド(例えば、クラッド22)で埋め込む第一クラッド埋込工程(例えば、図5(b))と、金属マスクが露出するまで異屈折率クラッドを研磨して平坦化する第一研磨工程(例えば、図5(c))と、露出した金属マスクを除去する第一金属マスク除去工程(例えば、図5(d))と、平坦化した異屈折率クラッドとくさび形クラッドとの段差の距離を計測する(例えば、AFMを用いて計測する)第一距離計測工程と、平坦化した異屈折率クラッド上及び金属マスク除去後のくさび形クラッド上に、段差の距離及びくさび形クラッドと次層のコア(例えば、コア41)との間の所望の距離に応じた厚さの第一のクラッド(例えば、高屈折率クラッド72)を成膜し、くさび形クラッド及び異屈折率クラッドを、成膜した第一のクラッドと熱処理によって一体成型することにより段差を平坦化する第一平坦化行程(例えば、図6(e))と、平坦化した第一のクラッド上に、異屈折率クラッドよりも大きい屈折率のコアを形成するコア形成工程(例えば、図6(f))とを含むスポットサイズ変換器の製造方法。
【0072】
(7)第一のクラッド上に形成されたコアの直上に金属マスクを形成する第二金属マスク形成工程(例えば、図6(f),(g))と、コア及び金属マスクを異屈折率クラッド(例えば、上層クラッド24)で埋め込む第二クラッド埋込工程と、金属マスクが露出するまで異屈折率クラッドを研磨して平坦化する第二研磨工程(例えば、図6(h))と、露出した金属マスクを除去する第二金属マスク除去工程(例えば、図6(i))と、平坦化した異屈折率クラッドとコアとの段差の距離を計測する第二距離計測工程と、平坦化した異屈折率クラッド上及び金属マスク除去後のコア上に、段差の距離及びコア上に形成する所望の厚さに応じた第二のクラッド(例えば、高屈折率クラッド73)を成膜し、コア及び異屈折率クラッドを、成膜した第二のクラッドと熱処理によって一体成型することにより段差を平坦化する第二平坦化行程(例えば、図7(j))と、平坦化した第二のクラッドをくさび形状に形成するクラッド形成工程(例えば、図7(k))とを含み、第二平坦化行程で、異屈折率クラッドよりも屈折率が大きく、コアの屈折率以下の第二のクラッドを成膜するスポットサイズ変換器の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、基板上に形成されるクラッド及びコアを積層化して光回路を製造する積層光回路の製造方法に好適に適用される。
【符号の説明】
【0074】
1,41 コア
11,61 下層コア(導波路)
12,62 上層コア(導波路)
13 高次上層コア
2 クラッド
21,63 下層クラッド
22,64 クラッド
23 段差平滑薄膜(クラッド)
24 上層クラッド
25 高次上層段差平滑薄膜
26 高次上層クラッド
3 金属マスク
4 基板
5 研磨終了検出用電極
51 中央電極
52 中間地点電極
53 外周用電極
6 積層光回路形成領域
7,71,72,73 高屈折率クラッド
8a,8b 反射金属マスク
9 屈折率マッチング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層化された光回路を製造する積層光回路の製造方法であって、
クラッド上に形成されたコアの直上に金属マスクを形成する金属マスク形成工程と、
前記コア及び金属マスクをクラッドで埋め込むクラッド埋込工程と、
前記金属マスクが露出するまで前記クラッドを研磨して平坦化する研磨工程と、
露出した金属マスクを除去する金属マスク除去工程と、
平坦化したクラッドとコアとの段差の距離を計測する距離計測工程と、
平坦化したクラッド上及び金属マスク除去後のコア上に、前記段差の距離及び前記コアと次層のコアとの間の所望の距離に応じた厚さのクラッドを形成し、熱処理によってクラッドを一体成型することにより前記段差を平坦化する平坦化行程とを含む
ことを特徴とする積層光回路の製造方法。
【請求項2】
金属マスク形成工程で、形成する光回路の範囲に応じて予め定められた各地点に金属マスクを形成し、
研磨工程で、前記金属マスクの各地点間に電圧を印加し、各地点間に電流が流れたことを条件に研磨を終了する
請求項1記載の積層光回路の製造方法。
【請求項3】
研磨工程で、プラズマ化学気相成長法を用いてクラッドを研磨する
請求項1または請求項2に記載の積層光回路の製造方法。
【請求項4】
積層化された第一の層の光回路と同一の高さに、当該光回路上を導波する光を反射させて第二の層の光回路に導波する第一の反射膜を形成する第一反射膜形成工程と、
前記光の反射を受けて、第二の層の光回路と同一の高さに、当該光回路上に前記光を導波する第二の反射膜を形成する第二反射膜形成工程とを含み、
積層光回路として縦方向インターコネクトを製造する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の積層光回路の製造方法。
【請求項5】
平坦化行程で、所望の距離から段差の距離を減算した厚さのクラッドを平坦化したクラッド上及び金属マスクの除去後のコア上に形成する
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の積層光回路の製造方法。
【請求項6】
くさび形状に形成されたくさび形クラッドの直上に金属マスクを形成する第一金属マスク形成工程と、
前記くさび形クラッド及び金属マスクを、当該くさび形クラッドよりも屈折率が低いクラッドである異屈折率クラッドで埋め込む第一クラッド埋込工程と、
前記金属マスクが露出するまで前記異屈折率クラッドを研磨して平坦化する第一研磨工程と、
露出した金属マスクを除去する第一金属マスク除去工程と、
平坦化した前記異屈折率クラッドと前記くさび形クラッドとの段差の距離を計測する第一距離計測工程と、
平坦化した異屈折率クラッド上及び金属マスク除去後のくさび形クラッド上に、前記段差の距離及び前記くさび形クラッドと次層のコアとの間の所望の距離に応じた厚さの第一のクラッドを成膜し、前記くさび形クラッド及び前記異屈折率クラッドを、成膜した第一のクラッドと熱処理によって一体成型することにより前記段差を平坦化する第一平坦化行程と、
前記平坦化した第一のクラッド上に、前記異屈折率クラッドよりも大きい屈折率のコアを形成するコア形成工程とを含む
ことを特徴とするスポットサイズ変換器の製造方法。
【請求項7】
第一のクラッド上に形成されたコアの直上に金属マスクを形成する第二金属マスク形成工程と、
前記コア及び金属マスクを異屈折率クラッドで埋め込む第二クラッド埋込工程と、
前記金属マスクが露出するまで前記異屈折率クラッドを研磨して平坦化する第二研磨工程と、
露出した金属マスクを除去する第二金属マスク除去工程と、
平坦化した異屈折率クラッドとコアとの段差の距離を計測する第二距離計測工程と、
平坦化した異屈折率クラッド上及び金属マスク除去後のコア上に、前記段差の距離及び前記コア上に形成する所望の厚さに応じた第二のクラッドを成膜し、コア及び異屈折率クラッドを、成膜した第二のクラッドと熱処理によって一体成型することにより前記段差を平坦化する第二平坦化行程と、
前記平坦化した第二のクラッドをくさび形状に形成するクラッド形成工程とを含み、
前記第二平坦化行程で、異屈折率クラッドよりも屈折率が大きく、コアの屈折率以下の第二のクラッドを成膜する
請求項6記載のスポットサイズ変換器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−70107(P2011−70107A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223039(P2009−223039)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】