説明

積層型有機感光性デバイス

第1の電極と、第2の電極と、特性吸収波長λ1を有する第1の光活性領域と、特性吸収波長λ2を有する第2の光活性領域とを有するデバイスを提供する。光活性領域は、第1の電極と第2の電極の間に配置されており、さらに、第1の光活性領域の方が第2の光活性領域より反射層に近くなるように、反射層の同じ面に配置されている。光活性領域を含む材料は、λ1とλ2が少なくとも約10%異なるように選択することができる。このデバイスは、個々の光活性領域の有機アクセプタ材料に隣接して、有機アクセプタ材料と直接接触して配置された励起子阻止層をさらに含むことができる。ここで、カソードに最も近い励起子阻止層以外の各励起子阻止層のLUMOは、アクセプタ材料のLUMOより最大で約0.3eV大きいだけである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に有機感光性光電子デバイスに関する。より詳細には、本発明は、効率が向上した有機感光性光電子デバイスを対象としている。
【背景技術】
【0002】
光電子デバイスは、材料の光学特性および電子特性を利用して、電磁放射を電子的に生成または検出し、あるいは周囲の電磁放射から電気を生成する。
【0003】
感光性光電子デバイスは、電磁放射を電気に変換する。光起電性(photovoltaic,PV)デバイスともよばれている太陽電池は、とりわけ電力をうみだすために使用される一種の感光性光電子デバイスである。太陽光以外の光源から電気エネルギーを生成することができるPVデバイスを使用して電力消費負荷体を駆動して、たとえば光、熱を提供し、もしくは計算器、ラジオ、コンピュータまたは遠隔監視あるいは通信機器などの電子回路またはデバイスに電力を供給することができる。また、これらの電力生成用途には、太陽または他の光源からの直接照明を利用することができない場合に動作を継続することができるよう、あるいはPVデバイスの電力出力と特定用途による必要とをバランスさせるために、バッテリの充電あるいは他のエネルギー貯蔵デバイスを必要とすることがしばしばである。本明細書に使用されているように、「抵抗負荷」という用語は、電力を消費または電力を貯蔵する任意の回路、デバイス、機器またはシステムを意味している。
【0004】
もう1つのタイプの感光性光電子デバイスは、光伝導体セルである。この機能の場合、信号検出回路がデバイスの抵抗をモニタして光の吸収による変化を検出する。
【0005】
他のタイプの感光性光電子デバイスは、光検出器である。動作に関して、光検出器は、電磁放射への露光によって光検出器が生みだす電流を測定する電流検出回路と共に使用され、場合によっては印加バイアス電圧を有している。本明細書で説明されている検出回路は、光検出器にバイアス電圧を提供し、電磁放射に対する光検出器の電子応答を測定することができる。
【0006】
これらの3つのクラスの感光性光電子デバイスは、以下で定義されている整流接合が存在するかどうかによって、また、バイアスまたはバイアス電圧としても知られている外部供給電圧によってデバイスが作動しているかどうかによって特徴づけることができる。光伝導体セルは、整流接合を有しておらず、通常、バイアスによって作動している。PVデバイスは、少なくとも1つの整流接合を有しており、バイアスで作動してはいない。光検出器は、少なくとも1つの整流接合を有しており、常にそうとはいえないが、通常、バイアスで作動している。一般に、光電池は、回路、デバイスまたは機器に電力を提供するが、制御検出回路に信号または電流を提供することはなく、あるいは検出回路からの情報の出力を提供することはない。一方、光検出器または光伝導体は、制御検出回路に信号または電流を提供し、あるいは検出回路からの情報の出力を提供しているが、回路、デバイスまたは機器に電力を提供してはいない。
【0007】
従来、感光性光電子デバイスは、多数の無機半導体、たとえば結晶性シリコン、多結晶シリコンおよびアモルファスシリコン、ヒ化ガリウム、テルル化カドミウム等で構築されている。本明細書における「半導体」という用語は、熱または電磁励起によって電荷担体が誘起されると電気を導通させることができる材料を意味している。「光伝導性」という用語は、通常、電磁放射エネルギーが吸収され、それにより、電荷担体が材料中に電荷を導く、つまり電荷を輸送することができるよう、電荷担体の励起エネルギーに変換されるプロセスに関連している。「光伝導体」および「光伝導性材料」という用語は、本明細書においては、電磁放射を吸収して電荷担体を生成するそれらの特性に対して選択される半導体材料を意味するべく使用されている。
【0008】
PVデバイスは、入射するソーラーパワーをPVデバイスが有用な電力に変換することができる効率によって特性づけることができる。結晶性シリコンまたはアモルファスシリコンを利用しているデバイスは、商用用途を支配しており、そのうちのいくつかは、23%以上の効率を達成している。しかしながら、著しい効率低下欠陥を伴うことなく大きな結晶を製造することに内在する問題があるため、結晶系の有効なデバイス、とりわけ表面積の広いデバイスは、その製造が困難であり、高価である。一方、効率の高いアモルファスシリコンデバイスは、依然として安定性の問題を抱えている。現在市販されているアモルファスシリコンセルは、4%と8%の間で安定化された効率を有している。より最近の努力は、経済的な製造コストで許容可能な光電変換効率を達成するべく、有機光電池の使用に焦点が当てられている。
【0009】
PVデバイスは、標準の照明条件(つまり1000W/m2、AM1.5スペクトル照明である標準試験条件)の下で最大の電力が発生し、最大の光電流×光電圧が生成されるように最適化することができる。標準照明条件の下でのこのようなセルの電力変換効率は、(1)ゼロバイアスの下での電流、つまり短絡電流 Isc、(2)開放回路条件の下での光電圧、つまり開放回路電圧 Voc、および(3)フィルファクタ ffの3つのパラメータで決まる。
【0010】
PVデバイスは、PVデバイスが負荷の両端間に接続され、光が照射されると、光生成電流を生成する。PVデバイスは、無限負荷の下で照射されると、その最大可能電圧V open-circuitつまりVocを生成する。PVデバイスは、その電気コンタクトが短絡した状態で照射されると、その最大可能電流I short-circuitつまりIscを生成する。電力を生成するために実際に使用する場合、PVデバイスは、有限抵抗性負荷に接続され、電力出力は、電流と電圧の積I×Vで与えられる。PVデバイスによって生成される最大総電力は、本質的に積Isc×Vocを超えることはできない。最大の電力が引き出されるように負荷の値が最適化された場合には、電流および電圧は、それぞれImaxおよびVmaxの値を有することになる。
【0011】
PVデバイスの良度指数はフィルファクタ ffであり、
ff = {ImaxVmax}/{IscVoc} (1)
で定義される。実際の使用に際しては、IscおよびVocは同時には絶対に得られないため、ffは常に1未満である。しかしながらffが1に近づくにつれて、デバイスの直列抵抗または内部抵抗がより小さくなり、したがって最適条件の下で負荷にIscとVocの積のより大きいパーセント割合が引き渡される。Pincがデバイスに入射するパワーである場合、そのデバイスの電力効率ηpは、
ηp = ff*(Isc*Voc)/Pinc
で計算することができる。
【0012】
適切なエネルギーの電磁放射が半導電性有機材料、たとえば有機分子結晶(organic molecular crystal: OMC)材料または重合体に入射すると、光子を吸収して励起分子状態を生成することができる。これは、S0 + hv => S0*のように記号で表される。S0およびS0*は、それぞれ基底分子状態および励起分子状態を表している。このエネルギー吸収は、HOMOエネルギー準位(π結合でありうる)における束縛状態から、LUMOエネルギー準位(π結合でありうる)へ電子の励起に伴うものであるか、あるいは等価なものとして、LUMOエネルギー準位からHOMOエネルギー準位への正孔の励起であってもよい。有機薄膜光伝導体においては、生じる分子状態は、通常、励起子、すなわち、束縛状態にある電子-正孔対であると考えられており、これは準粒子として輸送される。励起子は、対再結合の前にある程度の寿命を有することができ、これは別のペアからの正孔または電子との再結合ではなく、元の電子と正孔の相互の再結合プロセスといわれている。電子-正孔対は、光電流を生成するために、通常、2つの非類似の接触有機薄膜の間のドナー-アクセプタ界面で分離するようになる。電荷が分離しない場合、それらは、入射光のエネルギーより低いエネルギーの光を放出することによって放射的に、あるいは熱を生成することによって非放射的に、消光(クエンチング)としても知られている対再結合プロセスで再結合することができる。これらの結果は、いずれも、感光性光電子デバイスにとっては望ましくないものである。
【0013】
コンタクト部分における電界または異質性は、励起子がドナー-アクセプタ界面で解離するのではなく、消滅する原因になり、そのために電流に対する正味の寄与をもたらさないことがありうる。したがって、光で生成した励起子をコンタクト部分から遠ざけることが望ましい。これには、励起子の拡散を接合部の近傍の領域に制限し、それにより、関係する電界が、接合部の近傍の励起子の解離によって自由になった電荷担体を分離するための、より高められたチャンスを有するという効果がある。
【0014】
十分な体積を占める内部生成電界を生成するための通常の方法は、とりわけ分子量子エネルギー状態の分布に対して適切に選択された伝導特性を備えた材料の2つの層を並置することである。これらの2つの材料の界面は、光起電力ヘテロ接合とよばれている。従来の半導体理論では、PVヘテロ接合を形成するための材料は、通常、n型またはp型のいずれかの材料であることが示されている。n型は、大半の担体のタイプが電子であることを示している。これは、比較的自由なエネルギー状態の電子を多数有している材料とみることができる。p型は、大半の担体のタイプが正孔であることを示している。このような材料は、比較的自由なエネルギー状態の正孔を多数有している。バックグラウンドの(つまり光生成されたものではない)大半の担体のタイプの濃度は、主として欠陥または不純物による意図していないドーピングに左右される。最高被占軌道(HOMO)エネルギー準位と最低空軌道(LUMO)エネルギー準位の間のHOMO-LUMOギャップとよばれているギャップ内におけるフェルミエネルギーの値または準位は、不純物のタイプおよび濃度で決まる。フェルミエネルギーは、占有の確率が1/2に等しいエネルギーの値によって表される分子量子エネルギー状態の統計的占有を特徴づけている。LUMOエネルギー準位に近いフェルミエネルギーは、電子が支配的担体であることを示している。HOMOエネルギー準位に近いフェルミエネルギーは、正孔が支配的担体であることを示している。したがってフェルミエネルギーは、従来の半導体を特徴づける主要な特性であり、原型となるPVヘテロ接合は、従来、p-n界面である。
【0015】
「整流」という用語は、とりわけ、界面が非対称な伝導特性を有していること、つまり界面が好ましくは一方向の電荷輸送をサポートしていることを意味している。整流は、通常、適切に選択された材料間のヘテロ接合部分に生じる固有の電界に関連している。
【0016】
本明細書に使用されているように、また、当業者には一般に理解されるように、第1の「最高被占軌道」(HOMO)エネルギー準位または「最低空軌道」(LUMO)エネルギー準位は、前記第1のエネルギー準位が真空エネルギー準位により近い場合、第2のHOMOエネルギー準位または第2のLUMOエネルギー準位「より大きい」かまたは「より高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空レベルに対する負のエネルギーとして測定されるため、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有するIP(小さいマイナスのIP)に対応している。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有する電子親和力(EA)(小さいマイナスのEA)に対応している。真空レベルが一番上に位置している従来のエネルギー準位図上では、材料のLUMOエネルギー準位は、同じ材料のHOMOエネルギー準位より高い(上である)。「より高い」HOMOエネルギー準位またはLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMOエネルギー準位またはLUMOエネルギー準位よりも、このような図の一番上の近くに位置している。
【0017】
有機材料のコンテキストにおいては、「ドナー」および「アクセプタ」という用語は、接触している2つの異なる有機材料のHOMOエネルギー準位およびLUMOエネルギー準位の相対的位置をいうものである。これは、「ドナー」および「アクセプタ」が、それぞれ無機n型層および無機p型層を生成するために使用することができるドーパントのタイプを表しうる、無機コンテキストにおけるこれらの用語の使用と対照をなしている。有機コンテキストにおいては、別の材料と接触している1つの材料のLUMOエネルギー準位がより低い場合、その材料はアクセプタである。そうでない場合、その材料はドナーである。外部バイアスが存在しない場合、ドナー-アクセプタ接合部分の電子がアクセプタ材料中へ移動し、正孔がドナー材料中へ移動することは、エネルギー的に有利である。
【0018】
有機半導体における重要な特性は、担体移動度である。移動度は、電荷担体が電界に応じて伝導材料を通って移動することができる容易性を測る。有機感光性デバイスのコンテキストにおいては、高い電子移動度のために電子によって優先的に導通する材料を含む層は、電子輸送層つまりETLということができる。高い正孔の移動度のために正孔によって優先的に導通する材料を含む層は、正孔輸送層つまりHTLということができる。必ずしもその必要はないが、アクセプタ材料がETLであり、ドナー材料がHTLであることが好ましい。
【0019】
従来の無機半導体PVセルは、p-n接合を用いて内部電界を確立している。Tang, Appl. Phys Lett. 48, 183(1986)によって報告されているような初期の有機薄膜セルには、従来の無機PVセルに用いられているヘテロ接合と類似したヘテロ接合が含まれている。しかしながら、p-n型接合の確立に加えて、ヘテロ接合のエネルギー準位オフセットが重要な役割を果していることが今や認識されている。
【0020】
有機D-Aヘテロ接合部分におけるエネルギー準位オフセットは、有機材料における光生成プロセスの基本的性質のために、有機PVデバイスの作動にとって重要であると考えられる。有機材料を光励起すると、局在フレンケル励起子または電荷移動励起子が生成される。電気検出または電流生成を生じさせるためには、束縛された励起子を、それらを構成している電子および正孔に分離しなければならない。このようなプロセスは、組み込まれた電界(ビルトイン電界)によって誘導することができるが、有機デバイスに典型的に存在する電界(F〜106V/cm)での効率は低い。有機材料中における最も有効な励起子分離は、ドナー-アクセプタ(D-A)界面で起こる。このような界面では、イオン化ポテンシャルが小さいドナー材料が、大きな電子親和力をもつアクセプタ材料とヘテロ接合を形成している。ドナー材料およびアクセプタ材料のエネルギー準位の配置に応じて、励起子の分離がこのような界面でエネルギー的に有利になり、アクセプタ材料中に自由電子ポーラロンがもたらされ、また、ドナー材料中に自由正孔ポーラロンがもたらされることになる。
【0021】
有機PVセルは、従来のシリコンをベースとするデバイスと比較すると、潜在的な多くの利点を有している。有機PVセルは、軽量で、使用材料が経済的であり、フレキシブルプラスチックフォイルなどの低コスト基板の上に堆積させることができる。しかしながら、いくつかの有機PVデバイスは、通常、1%以下程度の比較的小さい外部量子効率しかもっていない。これは、一部には、固有の光伝導プロセスの二次的性質によるものと考えられている。つまり、担体の生成には、励起子の生成、拡散およびイオン化または収集が必要である。これらのプロセスの各々に関連する効率ηが存在する。電力効率を表すP、外部量子効率を表すEXT、光子吸収を表すA、励起子拡散を表すED、電荷収集を表すCC、および内部量子効率を表すINTなどの添字を使用することができる。この表記法を使用すると、
ηp〜ηEXTA * ηED * ηcc
ηEXTA * ηINT
となる。
【0022】
励起子の拡散距離(LD)は、通常、光吸収距離(〜500Å)よりはるかに短く(LD〜50Å)、厚い、したがって抵抗性の、複数の界面または高度に折り畳まれた界面をもつセルの使用と、低い光吸収効率しかもたない薄いセルの使用との間のトレードオフが必要である。
【0023】
通常、光を吸収して有機薄膜中に励起子が形成されると、一重項励起子が形成される。この一重項励起子は、項間交差のメカニズムによって、三重項励起子に減衰しうる。このプロセスでエネルギーが失われ、デバイスの効率がより小さくなる。項間交差によるエネルギーの損失がないのであれば、三重項励起子を生成する材料を使用することが望ましく、なぜなら三重項励起子は、通常、一重項励起子より長い寿命をもっており、したがって一重項励起子がもっているよりも長い拡散距離をもっているからである。
【特許文献1】米国特許第6,657,378号
【特許文献2】米国特許第6,580,027号
【特許文献3】米国特許第6,352,777号
【特許文献4】米国特許第6,420,031号
【特許文献5】米国特許第5,703,436号
【特許文献6】米国特許第6,097,147号
【特許文献7】米国出願第10/723,953号
【特許文献8】米国特許第6,333,458号
【特許文献9】米国特許第6,440,769号
【特許文献10】米国特許出願第10/857,747号
【特許文献11】米国特許出願第10/822774号
【非特許文献1】Tang, Appl. Phys Lett., 48、183(1986)
【非特許文献2】Peumans et al, Applied Physics Letters, 2000, 76, 2650〜52
【非特許文献3】「Inorganic Chemistry」(2nd Edition) by Gary L. Miessler 及び Donald A. Tarr, Prentice Hall(1998)
【非特許文献4】A. Yakimov and S.R. Forrest, Appl. Phys. Lett., 80, 1667 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
第1の電極と、第2の電極と、特性吸収波長λ1を有する第1の光活性領域と、特性吸収波長λ2を有する第2の光活性領域とを有するデバイスを提供する。光活性領域は、第1の電極と第2の電極の間に配置されており、さらに、第2の光活性領域よりも第1の光活性領域の方が反射層に近くなるようにして、反射層の同じ側に配置されている。光活性領域を含む材料は、λ1がλ2と少なくとも約10%異なるように選択することができる。このデバイスは、さらに、個々の光活性領域の有機アクセプタ材料に隣接し、且つ有機アクセプタ材料と直接接触して配置された励起子阻止層を含むことができ、ここで、カソードに最も近い励起子阻止層以外の各励起子阻止層のLUMOは、アクセプタ材料のLUMOより最大でも約0.3eV大きいだけである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
有機感光性光電子デバイスを提供する。本発明の実施形態の有機デバイスを使用して、たとえば、入射する電磁放射から有効な電流を生成することができ(たとえばPVデバイス)、あるいは入射する電磁放射を検出することができる。本発明の実施形態は、アノード、カソード、およびアノードとカソードの間の光活性領域を含むことができる。この光活性領域は、感光性デバイスの、電磁放射を吸収して励起子を生成する部分である。この励起子は、電流を生成するために分離しうる。また、有機感光性光電子デバイスは、入射する放射がデバイスに吸収されることを可能にするために、少なくとも1つの透明電極を備えることができる。参照により本明細書にその全体を援用する米国特許第6,657,378号、第6,580,027号および第6,352,777号に、いくつかのPVデバイス材料および構成が記載されている。
【0026】
図1は、有機感光性光電子デバイス100を示したものである。この図は、必ずしもスケール通りには描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、アノード平坦化層120、ドナー層125、アクセプタ層130、阻止層135およびカソード140を備えることができる。カソード140は、第1の伝導層および第2の伝導層を有する複合カソードであってもよい。デバイス100は、上で説明した層を順番に堆積させることによって製造することができる。電荷分離は、ドナー層125とアクセプタ層130の間の有機ヘテロ接合部分で主に生じさせることができる。ヘテロ接合部分の固有ポテンシャルは、接触してヘテロ接合を形成している2つの材料間のHOMO-LUMOエネルギー準位差によって決まる。ドナー材料とアクセプタ材料の間のHOMO-LUMOギャップオフセットがドナー/アクセプタ界面に電界を生じさせ、それがドナー/アクセプタ界面の励起子拡散距離の範囲内で生じる励起子の電荷分離を容易にしている。
【0027】
図1に示す層の特定の構造は例示的なものにすぎず、本発明を何ら制限するものではない。たとえばいくつかの層(阻止層など)を省略することができる。その他の層(反射層または追加のアクセプタ層およびドナー層など)を追加することができる。層の順序は変更が可能である。具体的に説明したもの以外の配置を使用することもできる。
【0028】
基板(基材)は、所望の構造特性を提供する適切な任意の基板を使用することができる。基板は、柔軟な基板であっても、あるいは剛直な基板であってもよく、また、平らであっても、あるいは平らでなくてもよい。基板は、透明であっても、半透明であっても、あるいは不透明であってもよい。プラスチックおよびガラスは、好ましい剛性基板材料の例である。プラスチックおよび金属箔は、好ましい柔軟基板材料の例である。基板の材料および厚さは、所望の構造特性および光学特性が得られるように選択することができる。
【0029】
参照により本明細書に援用する米国特許第6,352,777号は、感光性光電子デバイスに使用することができる電極または接点(コンタクト)の例を提供している。本明細書で使用する場合、「電極」および「コンタクト」という用語は、光生成電流を外部回路に引き渡し、あるいはバイアス電圧をデバイスに提供するための媒体を提供する層を意味している。つまり、電極またはコンタクトは、有機感光性光電子デバイスの活性領域と、電荷担体を外部回路に輸送しあるいは電荷担体を外部回路から輸送するためのワイヤ、リード線、トレースまたはその他の手段との間のインタフェースを提供している。感光性光電子デバイスにおいては、デバイスの外部からの最大量の周囲電磁放射が、光伝導性活性内部領域に入射することを可能にすることが望ましい。つまり、電磁放射は、光伝導吸収によって電磁放射を電気に変換することができる1つまたは複数の光伝導層に到達しなければならない。このことは、しばしば、複数の電気コンタクトのうちの少なくとも1つは、入射する電磁放射を最低限でしか吸収せず、最低限でしか反射するべきでないことを意味している。つまり、そのようなコンタクトは、実質的に透明でなければならない。反対側の電極は反射性の材料であってよく、それによって、吸収されることなくセルを通過した光が反射してセルを通って戻る。本明細書に使用されているように、材料の一つの層または異なる材料の一連の複数の層は、その層またはそれらの層が、関連する波長の周囲電磁放射の少なくとも50%をその層またはそれらの層を通して透過させる場合に、「透明」であると言われる。同様に、関連する波長の周囲電磁放射の一部(ただし50%未満)を透過させる層は、「半透明」であると言われる。
【0030】
本明細書に使用されているように、「最上部(トップ)」は、基板から最も離れていることを意味し、また、「底部(ボトム)」は、基板に最も近いことを意味している。たとえば、2つの電極を有するデバイスの場合、底部電極は基板に最も近い電極であり、通常、最初に製造される電極である。底部電極は、基板に最も近い底部表面と、基板からより離れた最上部表面の2つの表面を有している。第1の層が、第2の層の「上に配置された」層として記述されている場合、この第1の層は、基板からより離れて配置されている。第1の層と第2の層が「物理的に接触している」と特定されていない限り、第1の層と第2の層の間に他の層が存在してもよい。たとえば、カソードは、様々な有機層が間に存在していても、アノードの「上に配置された」電極として記述することができる。
【0031】
電極は、金属または「金属代替物」から構成されることが好ましい。本明細書においては、「金属」という用語は、元素として純粋な金属、たとえばMgから構成された金属と、複数の元素として純粋な金属、たとえばMgおよびAgから構成された、Mg:Agで表される金属である金属合金との両方を包含するべく使用されている。ここで、「金属代替物」という用語は、通常の定義内での金属ではないが、適切な特定用途において望ましい、金属に類似した特性を有する材料を意味している。電極および電荷輸送層に一般に使用されている金属代替物には、ドープされた広いバンドギャップ半導体、たとえばインジウムスズ酸化物(ITO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、および亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)などの透明伝導性酸化物がある。特に、ITOは、高度にドープされた、光バンドギャップが約3.2eVの縮退n+半導体であり、約3900Aより長い波長に対してITOを透明にしている。他の適切な金属代替物は、透明伝導性重合体ポリアニリン(PANI)およびその化学的関連物である。金属代替物は、さらに、広範囲におよぶ非金属材料から選択することができる。ここで「非金属」という用語は、その材料が化学的に非結合形態の金属を含まないことを条件として、広範囲にわたる材料を包含することを意味している。それに代えて、単独であれ、あるいは合金のように1つまたは複数の他の金属との組合せであれ、化学的に非結合形態で金属が存在している場合には、その金属は、金属形態で存在している、または「自由金属(フリーメタル)」である、ということができる。したがって、本発明の金属代替物電極は、場合によっては「メタルフリー」とよぶことができ、「メタルフリー」という用語は、化学的に非結合形態の金属を含まない材料を包含することを明確に意味している。自由金属は、通常、金属格子全体にわたって電子伝導帯中で自由に移動することができる無数の伝導電子によって生じる金属結合の形態を有している。金属代替物は、金属成分を含有することができるが、それらは、いくつかの理由で「非金属」である。金属代用物は、純粋な自由金属ではなく、また、自由金属の合金でもない。金属がその金属形態で存在している場合には、電子伝導帯は、その他の金属特性の中でも、高い伝導率ならびに光放射に対する高い反射率をもたらす傾向がある。
【0032】
本発明の実施態様は、感光性光電子デバイスの複数の透明電極のうちの1つまたは複数として、参照によりいずれもその全体を本明細書に援用する、Parthasarathyらの米国特許第6,420,031号(「Parthasarathy'031」)に開示されているような高度に透明な非金属低抵抗カソード、またはForrestらの米国特許第5,703,436号(「Forrest'436」)に開示されているような優れた効率の低抵抗金属/非金属複合カソードを含むことができる。カソードの各タイプは、それぞれ、高度に透明な非金属低抵抗カソードを形成するために、銅フタロシアニン(CuPc)などの有機材料にITO層をスパッタ堆積させるか、あるいは高い効率の低抵抗金属/非金属複合カソードを形成するために、薄いMg:Ag層上にITO層をスパッタ堆積させるステップを含む製造プロセスで作製されることが好ましい。
【0033】
本明細書においては、「カソード」という用語は、次のように使用されている。周囲照射の下で、抵抗性負荷に接続され、外部から電圧が印加されてない積層型PVデバイスの単一ユニットまたは非積層型PVデバイス、たとえばPVデバイスにおいては、電子は、光伝導材料からカソードへ移動する。同様に、本明細書においては、「アノード」という用語は、照明の下でのPVデバイスにおいて、正孔は、光伝導材料からアノードへ移動する、というように使用されており、電子が逆のやり方で移動するのと等価である。これらの用語が本明細書に使用されている場合、アノードおよびカソードは、電極または電荷移動層であってもよいことに留意されたい。
【0034】
有機感光性デバイスは、光を吸収して、次に電子および正孔に分離しうる励起状態、すなわち「励起子」、を形成する少なくとも1つの光活性領域を含むことができる。励起子の分離は、通常、アクセプタ層とドナー層を並置することによって形成されるヘテロ接合部分で起こる。たとえば、図1に示すデバイスにおいては、「光活性領域」は、ドナー層125およびアクセプタ層130を含むことができる。
【0035】
アクセプタ材料は、たとえばペリレン類、ナフタレン類、フラーレン類またはナノチューブ類からなっていてもよい。アクセプタ材料の一例は、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシルビスベンゾイミダール(PTCBI)である。あるいは、アクセプタ層は、参照によりその全体を本明細書に援用する米国特許第6,580,027号に記載されているフラーレン材料からなっていてもよい。有機ドナー型材料の層がアクセプタ層に隣接している。アクセプタ層とドナー層の境界は、内部生成電界をうみだすことができるヘテロ接合を形成している。ドナー層の材料は、フタロシアニンもしくはポルフィリン、またはそれらの誘導体もしくは遷移金属錯体、たとえば銅フタロシアニン(CuPc)などであってもよい。その他の適切なアクセプタ材料およびドナー材料を使用することもできる。
【0036】
光活性領域に有機金属材料を使用することにより、このような材料を組み込んだデバイスは、三重項励起子を有効に利用することができる。有機金属化合物については、一重項-三重項の混合が非常に強力なので、吸収は一重項基底状態から三重項励起状態への直接の励起に関与し、一重項励起状態から三重項励起状態への変換に伴う損失を除去しうると考えられる。三重項励起子と比較して、一重項励起子のより長い寿命とより長い拡散距離は、より厚い光活性領域の使用を可能にすることができるが、なぜなら、三重項励起子は、デバイスの効率を犠牲にすることなく、より長い距離を拡散してドナー-アクセプタヘテロ接合に到達することができるためである。有機金属以外の材料を使用することも可能である。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、積層型有機層は、米国特許第6,097,147号、Peumans et al, Applied Physics Letters, 2000, 76, 2650〜52、および1999年11月26日出願の同時係属出願第09/449,801号に記載されている1または複数の励起子阻止層(EBL)を含むことができる。これらの両文献は、いずれも参照により本明細書に援用する。EBLを含めることにより、光で生成した励起子を解離界面の近傍の領域に閉じこめ、且つ感光性有機/電極界面における寄生励起子の消光を防止することによって、より高い内部および外部量子効率が達成されている。また、EBLは、励起子が拡散することができる体積を制限することに加えて、電極を堆積させている間に導入される物質に対する拡散障壁としても作用することができる。いくつかの状況では、EBLは、有機PVデバイスが機能を発揮しなくなることになるピンホールを充填し、あるいは欠陥を短絡させるだけの十分な厚さにすることができる。したがって、EBLは、電極を有機材料上に堆積させる場合に生じる損傷から、壊れ易い有機層を保護することを助けることができる。
【0038】
EBLは、励起子が阻止されている隣接する有機半導体のLUMO-HOMOエネルギーギャップよりも実質的に大きなLUMO-HOMOエネルギーギャップをもつことによって、EBLの励起子阻止特性を導き出していると考えられる。したがって、束縛された励起子は、エネルギーを考慮に入れれば、EBL内での存在が禁止される。EBLが励起子を阻止することは望ましいが、EBLがすべての電荷を阻止することは望ましくない。しかしながら、隣接するエネルギー準位の性質のため、EBLは、1つの符号の電荷担体を阻止することができる。設計により、EBLは、2つの別の層の間、一般的には有機感光性半導体層と電極または電荷移動層との間に存在することができる。あるコンテキストにおいては、隣接する電極または電荷移動層は、カソード、あるいはアノードであろう。したがって、デバイス内の与えられた位置におけるEBL用の材料は、所望の符号の担体が、電極または電荷転送層へのその輸送において妨害されないように選択される。エネルギー準位を適切に整列させることにより、電荷輸送に対する障壁が存在しないことが保証され、直列抵抗の増加が防止される。たとえば、カソード側のEBLとして使用される材料の場合、隣接するETL材料のLUMOエネルギー準位に緊密に整合したLUMOエネルギー準位をもたせて、電子に対する望ましくないあらゆる障壁が最小化することが望ましい。
【0039】
材料の励起子阻止性は、そのHOMO-LUMOエネルギーギャップの固有の特性ではないことを理解されたい。所定の材料が励起子ブロッカー(励起子阻止体)として作用するかどうかは、隣接する有機感光性材料の相対的なHOMOエネルギー準位およびLUMOエネルギーに左右される。したがって、励起子ブロッカーが用いられるデバイスの状況を考慮することなく、ある群の化合物を独立して励起子ブロッカーとして同定することは不可能である。しかしながら、本明細書における教示により、当業者は、選択された材料の組合せ(セット)を用いて有機PVデバイスを構築する場合に、所定の材料が励起子阻止層として機能するかどうかを識別することができる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態においては、EBLは、アクセプタ層とカソードの間に配置されている。EBLのための好ましい材料には、約3.5eVのLUMO-HOMOエネルギー準位分離を有していると考えられている2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(バソキュプロインまたはBCPともよばれている)、またはビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)-アルミニウム(III)フェノレート(Alq2OPH)が含まれる。BCPは、アクセプタ層からカソードへ電子を容易に輸送することができる有効な励起子ブロッカーである。
【0041】
EBL層には適切なドーパントをドープすることができ、ドーパントには3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(PTCDI)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸-ビス-ベンゾイミダール(PTCBI)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、およびそれらの誘導体が包含されるが、それらに限定されない。デバイスに堆積されたBCPは、アモルファスであると考えられる。この明らかにアモルファスであるBCP励起子阻止層は、特に高い光強度下で急速な膜再結晶を示しうる。多結晶材料に対して結果として生じる形態学的変化は、電極材料の短絡、ボイド、または侵入などの欠陥が存在する可能性のある低品質の膜をもたらす。したがって、この効果を示すいくつかのEBL材料、例えばBCPを、適切な、比較的大きく、安定した分子でドーピングすることにより、EBL構造を安定化させ、性能を劣化させる形態学的変化を防止することができることが発見されている。また、所定のデバイス中で電子を輸送しているEBLに、そのEBLのLUMOエネルギー準位に近いLUMOエネルギー準位を有する材料をドーピングすることが、空間電荷の蓄積をもたらし且つ性能を低下させうる電子トラップが形成されないことをさらに保証することを理解されたい。加えて、比較的低いドーピング密度が、孤立したドーパントサイトにおける励起子の生成を最小化することを理解されたい。このような励起子は、周囲のEBL材料によってその拡散が効果的に禁止されるので、そのような吸収はデバイスの光変換効率を低下させる。
【0042】
代表的な実施形態は、透明な電荷移動層または電荷再結合層を含むこともできる。本明細書において説明するように、電荷移動層は、必ずしもそうである必要はないが、電荷移動層がしばしば無機(金属であることがしばしばである)であり、また、光伝導的に活性ではないようにそれらを選択できるという事実により、アクセプタ層およびドナー層と区別される。本明細書においては、「電荷移動層(charge transfer layer)」という用語は、電極に類似しているが、電荷移動層では光電子デバイスの1つのサブセクションから隣接するサブセクションへと電荷担体を引き渡すのみである点で電極とは異なる層をいうのに用いる。本明細書においては、「電荷再結合層(charge recombination layer)」という用語は、電極に類似しているが、電荷再結合層は、タンデム感光性デバイス間での電子および正孔の再結合を許容し、かつ、1つまたは複数の活性層の近傍の内部光学フィールド強度を強化しうる点で電極とは異なる層をいうのに用いる。電荷再結合層は、参照によりその全体を本明細書に援用する米国特許第6,657,378号に記載されている半透明金属ナノクラスター、ナノ粒子またはナノロッドを用いて構築することができる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、アノード平坦化層は、アノードとドナー層の間に位置している。この層のための好ましい材料には、3,4-ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホナート(PEDOT:PSS)の膜が含まれる。アノード(ITO)とドナー層(CuPc)の間へのPEDOT:PSS層の導入は、製造歩留りを著しく改善することができる。これは、その粗い表面が薄い分子層を通して短絡する可能性があるITOを平坦化する、スピン塗布されたPEDOT:PSS膜の能力による。
【0044】
本発明のさらなる実施形態では、次の層を堆積させる前に、1つまたは複数の層を、プラズマで処理することができる。これらの層は、たとえば、マイルドアルゴンプラズマまたはマイルド酸素プラズマで処理することができる。直列抵抗を小さくするので、この処理は有利である。次の層の堆積に先立って、PEDOT:PSS層にマイルドプラズマ処理を施すことがとりわけ有利である。
【0045】
図1に示す単純な層構造は、非制限的実施例として提供したものにすぎず、本発明の実施形態は、広範囲にわたる様々な他の構造と共に使用することができることを理解されたい。説明されている特定の材料および構造は、事実上例示であり、他の材料および構造を使用することも可能である。機能デバイスは、説明されている様々な層を異なる方法で組み合わせることによって達成することができ、あるいは設計、性能およびコスト要因に基づいて層を完全に省略することもできる。具体的に説明されていないその他の層を含むこともできる。具体的に説明されている材料以外の材料を使用することもできる。本明細書に提供されている実施例の多くは、単一の材料を含むように様々な層を記述しているが、材料の組み合わせ、例えば、ホストとドーパントの混合物、またはより一般的な混合物、を使用できることがわかる。また、これらの層は、様々な副層(サブレイヤー)を有することができる。本明細書において様々な層に付与されている名称は、それらの名称に厳密に限定されることを意図してはいない。光活性領域の一部ではない有機層、つまり、通常は、光電流に大きく寄与している光子を吸収しない有機層は、「非光活性層」とよぶことができる。非光活性層の例には、EBLおよびアノード平坦化層が含まれる。その他のタイプの非光活性層を用いることもできる。
【0046】
感光性デバイスの光活性層に使用するための好ましい有機材料には、シクロメタル化された有機金属化合物(シクロメタル化有機金属化合物)が含まれる。本明細書に使用される「有機金属」という用語は、当業者に一般的に理解されるとおりであり、たとえば「Inorganic Chemistry」(2nd Edition) by Gary L. Miessler and Donald A. Tarr, Prentice Hall(1998)に記載されてとおりである。したがって、有機金属という用語は、炭素-金属結合を介して金属に結合された有機基を有する化合物を意味する。この部類には、本質的に、異種原子からの供与結合のみを有する物質、たとえばアミンの金属錯体、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物(CN等)などの配位化合物は含まれない。実際には、有機金属化合物は、有機種への1つまたは複数の炭素-金属結合の他に、異種原子からの1つまたは複数の供与結合を通常は含む。上記の有機種への炭素-金属結合は、金属と、有機基、たとえばフェニル、アルキル、アルケニルなどの炭素原子との間の直接結合をいうが、「無機炭素」、例えばCNまたはCOの炭素、への金属結合を意味しない。「シクロメタル化」という用語は、二座有機金属配位子を含み、金属と結合すると、環構成員の1つとしてその金属を含む環構造が形成される化合物をいう。
【0047】
有機層は、真空蒸着、スピンコーティング、有機気相蒸着、インクジェット印刷、および当分野で公知のその他の方法を使用して製造することができる。
【0048】
有機感光性光電子デバイスは、PV、光検出器、または光伝導体として機能することができる。本発明の有機感光性光電子デバイスがPVデバイスとして機能する場合はいつでも、光伝導性有機層に使用される材料およびその厚さは、たとえば、そのデバイスの外部量子効率が最適化されるように選択できる。本発明の有機感光性光電子デバイスが光検出器または光伝導体として機能する場合はいつでも、光伝導性有機層に使用される材料およびその厚さは、たとえば、所望のスペクトル領域に対するそのデバイスの感度が最大化されるように選択することができる。
【0049】
この結果は、層の厚さを選択する際に使用することができるいくつかのガイドラインを考慮することによって達成することができる。励起子分離の大部分は界面で生じると考えられるため、励起子拡散距離LDは、層の厚さLより長いか、あるいは層の厚さに匹敵する長さにすることが望ましい。LDがLより短い場合は、分離する前に多くの励起子が再結合しうる。光伝導性層の合計の厚さは、電磁放射吸収長1/α(αは吸収係数である)の程度の厚さであることがさらに望ましく、それにより、PVデバイスに入射するほぼすべての放射が吸収されて励起子が生成される。さらに、有機半導体の大きなバルク抵抗率による過剰な直列抵抗を回避するために、光伝導性層の厚さは、可能な限り薄くするべきである。
【0050】
したがって、感光性光電子セルの光伝導性有機層の厚さを選択する場合、競合するこれらのガイドラインは、本質的にトレードオフを必要とする。したがって、一方では、入射する放射の最大量を吸収するためには吸収距離に匹敵する厚さ、または吸収距離より厚い厚さが望ましい(単一セルデバイスの場合)。他方では、光伝導性層の厚さが厚くなるにつれて、2つの望ましくない影響が大きくなる。1つは、有機半導体の直列抵抗が大きいため、より厚い有機層の厚さのためにデバイスの抵抗が大きくなり、効率が低下することである。もう1つの望ましくない影響は、光伝導性層の厚さの増大が、電荷分離界面における有効電界から離れた位置で励起子が生成される傾向を増大させ、したがって対再結合の確率を高め、ここでも、効率を低下させることである。したがって、デバイスがデバイス全体に対する高い外部量子効率を生み出すように、競合するこれらの影響の間のバランスをとるデバイス構成であることが望ましい。
【0051】
本発明の有機感光性光電子デバイスは、光検出器として機能することができる。この実施形態においては、デバイスは、たとえば参照によりその全体を本明細書に援用する、2003年11月26日出願の米国出願第10/723,953号に記載されている多層有機デバイスであってもよい。この場合、外部電界は、通常、分離した電荷の抽出を容易にするために印加することができる。
【0052】
濃縮器もしくはトラッピング構成を用いて、有機感光性光電子デバイスの効率を高くすることができ、この場合には、光子は、薄い吸収領域を複数回通過するようにされる。参照によりその全体を本明細書に援用する米国特許第6,333,458号および第6,440,769号は、高い吸収のため及び集光効率を高くする光濃縮器と共に用いるために、光学幾何構造を最適化することによって感光性光電子デバイスの光変換効率を高める構造設計を用いることにより、この問題に対処している。感光性デバイスのためのこのような幾何構造は、入射する放射を反射空洞または導波構造内に閉じ込め、それによって光応答材料を通る多重反射によって光をリサイクルすることにより、その材料を通る光路を実質的に長くしている。したがって、米国特許第6,333,458号および第6,440,769号に開示されている幾何構造は、バルク抵抗の実質的な増加を引き起こすことなく、デバイスの外部量子効率を改善している。このようなデバイスの幾何構造には、第1の反射層;光微小空洞干渉効果を防止するために、すべてのディメンションにおいて入射光の光可干渉距離より長くなければならない透明絶縁層;前記透明絶縁層に隣接する第1の透明電極層;前記透明電極に隣接する感光性ヘテロ構造;および、同じく反射性である第2の電極、が含まれる。
【0053】
コーティングを使用して光エネルギーをデバイスの所望の領域に集束させることができる。参照によりその全体を援用する米国特許出願第10/857,747号は、このようなコーティングの例を提供している。
【0054】
有機セルの電力変換効率(ηP)は、新しい材料を使用し、且つ新規なデバイス構造を導入することによって改善することができる。有機セルの効率は、長い励起子拡散距離をもつ (LD≒400Å)アクセプタ材料C60を使用することによって改善することができ、あるいはドナー材料およびアクセプタ材料の相互浸入ネットワークが近傍の「局部」D-A界面への励起子拡散確率を高めるバルクヘテロ接合構造を形成することによって改善することができる。本発明の一実施形態は、均質なドナー層とアクセプタ層の間に挟まれた混合D-A層からなるハイブリッドプレーナ混合ヘテロ接合(PM-HJ)を組み込んだ銅フタロシアニン(CuPc)/C60有機セルを提供する。このデバイスは、模擬AM1.5G太陽照明の下でηP=5%を実証している。
【0055】
2以上のセルを直列に積み重ねる方法は、より多くの光子を取り入れ、セルの開放回路電圧(Voc)を大きくするための方法の1つである。A. Yakimov and S.R. Forrest, Appl. Phys. Lett., 80, 1667 (2002)に記載されているとおり、2つの薄いセルを直列に積み重ねることにより、サブセルとサブセルの間のAgナノクラスタが、光学フィールドの強化と有効な再結合サイトの両方を光生成電荷に提供し、個々のCuPc/PTCBIセル効率ηP=1%のηP=2.5%への2倍を超える増加が立証されている。この「タンデム」セルの光電圧は、個々のセル(あるいはサブセル)の光電圧の2倍になりうる。本発明の一実施形態は、直列の2つのCuPc/C60ハイブリッドPM-HJセルを含み、個々のセルが、C60に対するCuPcの異なる比率の有している。この構成により、1 sun = 100 mW/cm2模擬AM1.5G太陽照明の下で、単一ハイブリッドPM-HJセルより約15%大きいηP = (5.7±0.3)%が得られる。また、タンデムセルのVOCは、単一PVセルのVOCより大きく、高強度照明の下で最大約1.2Vに達している。本発明の一実施形態は、ハイブリッドプレーナ混合二重ヘテロ接合構造に、CuPcとC60の高い効率の材料の組合せを用いている。基板上の無反射コーティングを含むことなく、このタイプのタンデム構造を用いて、6.5%のソーラーパワー変換効率を有する有機PVセルが可能である。
【0056】
2つのサブセルCuPc/PTCBIタンデムセルは、2つのサブセルの各々からの対称なスペクトル応答を有している。入射光と金属カソードからの反射光との間の光学干渉は、有機/カソード界面からの直角光路長λ/4において、最大光強度がもたらす。ここで、λは、入射光の波長である。本明細書に使用されているように、「直角光路長」は、デバイスの表面に対して直角に測定し、かつ、光が通過する経路にわたって積分した距離/nを意味している。ここで、nは材料の屈折率であり、その材料中で変化しうる。したがって、長波長吸収性分子が豊富な前面セルおよび短波長吸収性分子が豊富な背面セルを備えた「非対称」タンデムセルは、各サブセルにCuPcとC60の同じ混合物を有する等価タンデムセルの場合よりも多くの入射光を吸収することができる。たとえば、CuPcがλ=550 nmと750 nmの間で吸収し、C60がλ=350 nmと550 nmの間で吸収する場合、非対称CuPc/C60ハイブリッドPM-HJタンデムセルは、背面セルより厚い均質なCuPc層および背面セルより薄いC60層を備えた前面セルを含むことができる。また、前記の均質な層の短い励起子拡散距離と、前記混合層中での低い電荷移動度のため、均質な層の厚さと混合層の厚さとの間のトレードオフを用いて、2つのサブセル内の光電流のバランスをとることも可能である。
【0057】
CuPc/C60ハイブリッドPM-HJタンデムセルの効率は、以下のように、サブセルi(i =1、2は、それぞれ前面セルおよび背面セルを表している)の電流密度対電圧(J-F)特性をモデル化することによって最大化することができる。
【0058】
【数1】

【0059】
式中、Jd,iおよびJPh,iは、それぞれ暗電流密度および光電流密度であり、JS,iは逆バイアス飽和電流、niは理想性係数、RS,iはセル直列抵抗、qは電子電荷、kはボルツマン定数、Tは温度である。すべての光生成電荷が電極に収集されると仮定すると、光干渉および励起子拡散の両方を考慮したモデルを使用して、入射する光パワー密度Poの下における光電流密度J0Ph,iを得ることができる。この仮定は、混合層を備えたセルに対しては成立しないかもしれず、そこでは、分子の相互混合のために電荷担体の移動度が均質な層の電荷担体の移動度より著しく小さく、そのことが混合層内での光生成電荷の再結合をもたらしうる。電荷収集効率ηCC、つまり、電極に収集される電荷の割合は、印加電圧Vおよび混合層の厚さdmの関数として、
【0060】
【数2】

【0061】
である。式中、L(V)=LCO(Vbi-V)/Vは電荷収集距離、LC0は定数、Vbiは固有電位(ビルトイン電位)である。Ji=Ji(Vi)(i=1,2)が与えられると、J=J1=J2およびV=V1+V2という要請からタンデムセルのJ-V特性が得られ、この特性からPVセルの性能パラメータ(短絡回路電流密度JSC、開放回路電圧VOC、フィルファクタFF、および電力変換効率ηP)が得られる。
【0062】
表1は、3つのタンデムセルのデバイス構造を示している。表2は、モデルに使用されるパラメータの値をまとめたものである。表1を参照すると、セルAは、所定の非対称均質層の厚さに基づく混合層の厚さを有しており、1sun AM1.5G太陽照明の下でηP=5.2%をもたらしている。セルBにおける光活性層(複数)の厚さの組み合わせは、より高い効率ηP=5.9%をもたらしている。また、前面セルのPTCBI層も、前面セルの均質C60層が除去された場合には、光電流に寄与することができ、したがって混合層中のCuPc分子は、PTCBIと共に励起子分離界面を形成することができる。このことが、セルCに、約λ=550nmにおいて、より高いJscおよび最大ηP=6.5%をもたらし、それはPTCBI吸収がCuPcの吸収領域とC60の吸収領域の間のギャップを埋めるからである。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
本発明の一実施形態では、光活性領域は、2つの電極の間に配置されている。本発明の好ましい実施形態では、光活性領域は、参照によりその全体を本明細書に援用する米国特許出願第10/822774号に記載されているハイブリッドプレーナ混合ヘテロ接合(PM-HJ)デバイスを含んでいる。
【0066】
図2は、本発明の一実施形態による有機光活性デバイス200を示したものである。デバイス200は、第1の電極220がその上に蒸着された基板210、第1の(または「前面」)有機光活性領域230、介在層240、第2の(または「背面」)光活性領域250、および第2の電極260を含みうる。有機光活性領域230および250は、有機アクセプタ材料および有機ドナー材料を含む。本発明の好ましい実施形態では、第1の光活性領域230は、さらに、非混合有機アクセプタ材料を含む第1の有機層231;非混合有機アクセプタ層231の有機アクセプタ材料と有機ドナー材料の混合物を含む第2の有機層232;第2の有機層232の非混合ドナー材料を含む第3の有機層233;および、励起子阻止層234、を備えている。他の好ましい実施形態では、アクセプタ層231および251またはドナー層233および253を省略することができる。本発明の他の好ましい実施形態では、第2の光活性領域250は、第1の光活性領域230と同様の有機材料の配列を含む。本発明の好ましい実施形態では、介在層240は、電荷再結合ゾーンを含む。別の好ましい実施形態では、介在層240は、1つまたは複数の電極を含むことができ、その場合は複数の電極を絶縁層によって分離してもよい。
【0067】
本発明の他の実施形態では、有機層232などの混合有機層中の有機アクセプタ材料と有機ドナー材料の混合物は、それぞれ重量で約10:1から約1:10までの範囲の比率にすることができる。一実施形態では、アクセプタ材料とドナー材料の混合物を含んだ有機層(有機層232など)、およびアクセプタ材料のみまたはドナー材料のみを含んだ有機層(第2の有機層231または233など)を存在させることができる。
【0068】
付着したカソードに隣接し且つ直接接触している層にEBLを堆積させる際に、EBLが損傷をうけることがある。この損傷は、電荷担体のEBLを横切る通過をより容易にし、励起子のEBLの両端間の通過を依然として防止することができる点で有利であると考えられる。EBLおよび有機アクセプタ層の材料を、各EBLのLUMOが、隣接するアクセプタ材料のLUMOより約0.3eVを超えて大きくならないように選択することにより、同様の結果が得られると考えられる。したがって有利な電荷輸送特性を得るためには、アクセプタ層に隣接して堆積されたEBLは、(1)光活性領域によって第2の電極から分離されていないこと;および/または(2)隣接する光活性領域のLUMOより約0.3eVを超えて大きいLUMOを有していないこと、が好ましい。特定のEBLが光活性領域によって第2の電極から分離されておらず、第2の電極を堆積させている間にEBLが損傷をうける場合は、EBLとアクセプタとの間のLUMOの差はそれほど重要ではなく、EBL材料を選択するために使用される規準は、LUMO以外の因子に対して、より大きな重みづけをすることができる。
【0069】
本デバイスの好ましい実施形態では、第2の励起子阻止層254は、第1の励起子阻止層234とは異なる材料を含む。励起子阻止層254は、光活性領域によって第2の電極から分離されていないので、より広範囲の材料を選択できる。励起子阻止層254の材料は、有機アクセプタ層253のLUMOより最大で約0.3eV大きいLUMOをもっていてよく、あるいはそれより大きいLUMOをもっていてもよいが、第2の電極260の堆積に起因する損傷のために電荷輸送は依然として有利でありうる。励起子阻止層254のための好ましい材料にはBCPが包含され、また、励起子阻止層234のための好ましい材料にはPTCBIが包含される。
【0070】
本発明の他の好ましい実施形態では、有機セル200は、さらに、介在層240を含む。介在層240は、電荷再結合ゾーンを含んでいることができる。本発明の好ましい実施形態では、電荷再結合ゾーンは、m-MTDATA:F4-TCNQまたはBTQBT:PTCDAなどのp-ドープ有機材料を含み、かつ電荷再結合ゾーンはナノ粒子241をさらに含む。このナノ粒子は、Agもしくは他の金属または金属材料を含んでいることが特に好ましい。その他の材料を使用することもできる。
【0071】
タンデムセルの場合、各サブセルにおいて、異なるアクセプタおよびドナー材料を使用し、あるいは同じアクセプタおよびドナー材料を異なる比率で使用することが有利でありうる。異なる材料の使用、あるいは異なる比率での同じ材料の使用は、各サブセルに同じ材料を同じ比率で使用した場合よりも広い範囲の波長の光をセルが吸収することを可能にする。本発明の好ましい実施形態では、有機領域230および250は、異なるアクセプタ材料およびドナー材料を含む。また、有機領域230および250は、同じアクセプタ材料およびドナー材料を含んでいてもよく、その場合、混合有機層232および252は、異なる比率のアクセプタ材料およびドナー材料を含む。有機領域230および250の有機アクセプタ材料は、C60であってもよい。光活性領域230および250の有機ドナー材料は、CuPcであってもよい。その他の適切な有機ドナー材料には、鉛フタロシアニン(PbPc)、金属含有ポルフィリン類、金属非含有ポルフィリン類、ルブレン、金属含有フタロシアニン類、金属非含有フタロシアニン類、ジアミン類(NPDなど)、およびナフタロシアニンを含めたそれらの官能化誘導体が包含される。その他の適切な有機アクセプタ材料には、PTCBI、C70、フラーレン類、ペリレン類、線状ポリアセンなどのカタ縮合共役分子系(アントラセン、ナフタレン、テトラセン、およびペンタセンを含む)、ピレン、コロネン、およびそれらの官能化誘導体が含まれる。上に挙げたリストは、すべてを網羅することを意味してはおらず、他の適切なアクセプタ材料およびドナー材料を使用することもできる。
【0072】
本発明の特に好ましい実施形態では、アノードは、ガラス基板の上の透明な伝導性インジウムスズ酸化物(ITO)層を含み、また、カソードは、厚さ1000Åの熱蒸着Ag電極を含む。各サブセルの光活性領域は、ハイブリッドPM-HJ、つまり、均質なCuPc層とC60層の間に配置された混合CuPc:C60層を含み、これが均質な層(各電極への光生成電荷担体の良好な輸送)と混合層(高い励起子拡散効率)との間でプレーナHJの利点を結合する。3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ビスベンゾイミダール(PTCBI)およびバソキュプロイン(BCP)の薄層が、それぞれ、前面サブセル(ITOに最も近いサブセル)および背面サブセル(カソードに最も近いサブセル)の励起子阻止層(EBL)として使用され、それによって高い効率の二重ヘテロ接合PV構造を形成している。前面セルで生成される電子、および背面セルで生成される正孔のための電荷再結合ゾーンは、サブセルとサブセルの間に配置される。再結合の中心は、5モル%のテトラフルオロ-テトラシアノ-キノジメタン(F4-TCNQ)でp-ドープされた厚さ50Åの4,4',4"-トリス(3-メチル-フェニル-フェニル-アミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)中に配置された極薄層(平均厚さ〜5Å)中に堆積されたAgナノクラスタを含む。デバイス製造手順および特性評価法は、当分野で知られている手順および方法であってよい。
【0073】
本明細書で説明した実施形態は例示的なものにすぎないこと、また、本発明による他の実施形態を使用することも可能であることを理解されたい。たとえば、図に示す層の順序は変更が可能である。たとえば、有機層230と250の位置は、阻止層等を適切に再配置することによって入れ換えることができる。阻止層、電荷再結合層などの追加の層は、あっても、なくてもよい。たとえば、阻止層は除去することでき、かつ/または追加の阻止層が存在することもできる。非有機領域が存在してもよく、また、反射層に対して有機領域の位置を調節するために非有機領域を用いてもよい。具体的に説明した材料とは異なる材料を用いることもできる。たとえば、すべての電極がITOであるデバイスは、そのデバイスがある程度透明になるように製造できる。さらに、基板上にデバイスを製造し、次に支持体表面に適用し、堆積された最後の電極が支持体表面に最も近くなるようにすることができる。アクセプタ層およびドナー層は、存在していなくてもよい。たとえば、ドナー層またはアクセプタ層231、251、233、および253は、省略することができる。太陽電池に関連して多くの実施形態が説明されているが、他の態様を、別のタイプのデバイス、例えば光検出器、に用いてもよい。
【0074】
層が「非混合」アクセプタ層、またはドナー層として記述されている場合、「非混合」層は、極めて少量の正反対の材料を不純物として含有してもよい。濃度が層中のパーコレーションに必要な量より著しく小さい場合、すなわち重量で約5%未満である場合は、その材料は不純物と考えることができる。存在する不純物の量は、はるかに少ない量であることが好ましく、たとえば重量で1%未満であることが好ましく、あるいは重量で約0.1%未満であることが最も好ましい。デバイスの製造に使用されるプロセスおよびプロセスパラメータによっては、直近の層の材料のいくらかの不純物は不可避でありうる。
【0075】
有機材料は、特定の波長で極大をもつ吸収スペクトルを有しうる。本明細書で用いるように、「特性吸収波長」という用語は、材料の吸収スペクトルが極大になる波長をいう。
【0076】
デバイス200は、少なくとも1つの反射層を含むことができる。本発明の一実施形態では、第2の電極260は反射層である。個別の反射層の使用、あるいは基板または第1の電極が反射層である最上部放射(または吸収)デバイスなどの、他の構成を用いることができる。「反射」層は、金属層、あるいは反射する他のタイプの層、例えば、非周期的または周期的誘電体スタックなどであってもよい。反射層の使用は、波長と共に及び反射層に対して直角な方向の位置と共に変化する光学フィールド強度をもたらす。任意の所定の波長に対して、位置の関数として、最大光学フィールド強度に極大が存在する。たとえば図3を参照されたい。感光性デバイスに対しては、特定の吸収波長を有する光活性領域を以下のように配置することが望ましい。すなわち、特定の特性吸収波長について、位置の関数としての極大となる位置が、その光活性領域内またはその近傍に位置するように、光活性領域を配置することが望ましい。複数の材料を有する光活性領域の場合は、特性吸収波長は、その領域全体の吸収スペクトルの極大値に基づいている。「近傍」は、たとえば、問題としている光活性領域から最大でも約0.05λ/nの距離を意味する。ここで、nは、極大が生じる材料の屈折率である。極大値は、光活性領域内に配置されることが好ましい。光活性領域をこの方法で配置することにより、吸収を高めることができる。用途によっては、著しく異なる特性吸収波長をもつ光吸収領域を使用することが望ましい。このような差は、より広範囲の波長の吸収を可能にする。本発明の一実施形態では、有機領域250および230は、それぞれλ1およびλ2に特性吸収波長を有している。λ1は、λ2と、少なくとも約10%異なっていることが好ましい。特性吸収波長は、「異なる」吸収スペクトルを定量化するための唯一の方法である。様々な吸収スペクトルを定量化するための別の方法は、1つの光活性領域の最も高い3つの吸収ピークのうちの少なくとも1つの波長が、別の光活性領域の最も高い3つの吸収ピークのすべての波長から、少なくとも10%異なることである。様々な吸収スペクトルを定量化するためのさらに別の方法は、2つの正規化したスペクトルを互いに重ね合わせ、重なりあった面積を測定することである。この重なり合った面積が1つのスペクトルの総面積の80%以下である場合には、そのスペクトルは、著しく異なっていると考えることができる。たとえば、2つの材料は、類似した特性吸収波長をもちうるが、入射光の広いスペクトルを吸収する目的のための、著しく異なる他の特性(例えば、サブピーク)、及び可能性のある補完的性質であるその他の特性を有しうる。このような実施形態は、本発明の特定の態様の範囲内であることが意図されている。
【0077】
多くの光活性材料(および複数の材料を有する光活性領域のための材料の組合せ)は、複数の吸収ピークを有しうる。特定の波長の光を強く吸収する光活性領域は、その波長に対する光学フィールド強度が強い位置に置くことができる。一実施形態では、光活性領域の吸収スペクトルの局所ピークを用いて、その光活性領域にとって有利な位置を決定する。光活性領域は、光活性領域が極大を有する波長に対して光学フィールド強度が最大になる位置またはその近傍に配置することができる。太陽スペクトルの吸収を意図したデバイスの場合、350nmと1300nmの間の波長は非常に重要でありうる。一般に、特定の波長または特定の範囲の波長における光学フィールド強度と、これらの波長の強力な吸収体である光活性領域との重なりを大きくしまたは最大化することが好ましい。これを達成するための1つの方法は、光活性領域の吸収と光学フィールド強度(いずれも波長の関数として)との間により大きな重なり合いがある位置に向けて、光活性領域の位置を調整することである。もう1つの方法は、光活性領域の位置における吸収スペクトルと光学フィード強度(いずれも波長の関数として)の間のより大きい重なり合いを達成するために、光活性領域の材料を変更し、あるいは材料の比率を変更することによって光活性領域の吸収特性を変更することである。
【0078】
このような整合を記述するための1つの方法は、光活性領域に対して最も高い3つの吸収ピークの波長を決定し、これらの3つの波長のうちの1つに対する光学フィールド強度のピークが、光活性領域内に存在するか、または光活性領域の0.05λ/n内にあることである。ここで、λは光学フィールド強度の最大値と整合するピークの波長であり、nは光学フィールド強度内のピークが位置している層の屈折率である。このような整合を記述するためのもう1つの方法は、光活性領域(1つまたは複数)のすべての吸収ピークの波長を考慮することである。吸収ピークの「波長」は、そのピークに対する吸収スペクトルの極大であり、また、「最も高い3つの」ピークは、3つの最も高い極大を有するピークである。「トップ」波長(1つまたは複数)を決定する場合、いくつかの実施形態では波長の範囲が限定されうる。たとえば、太陽スペクトルの吸収を意図したいくつかのデバイスの場合には、太陽スペクトルの有用なエネルギーの大部分が350〜1300nmの範囲内であるため、考慮する波長の範囲をこの範囲の波長に限定することができる。しかしながら、太陽スペクトルの吸収を意図した実施形態を含むいくつかの実施形態では、もっと広い範囲を使用することもできる。
【0079】
光活性領域を上で説明したように配置することにより、吸収される入射光の量を多くすることができる。本発明の好ましい実施形態では、光活性領域の材料および位置を、総入射電界強度の少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約20%が、吸収特性を有する光活性領域に位置するように選択して、それによって、そのエネルギーを吸収できる。本明細書に使用されているように、「光学フィールド強度」は、ある領域にわたる電界の平方の積分を意味している。したがって、総入射電界強度は、デバイス全体にわたっての電界の平方の積分であり、かつ、光活性領域の総電界は、各光活性領域にわたって積分した電界の和である。したがって、ある領域Rについて、強度IRは、当業者には理解されるように、以下のように計算される:
【0080】
【数3】

【0081】
さらに、各ポイントにおける光学フィールド強度も、波長の関数である。デバイスの光活性領域上の位置の関数としての積分、つまり、光活性領域の吸収特性(位置および波長の関数でありうる)と光学フィールド強度(同様に位置および波長の両方の関数でありうる)の積の波長に対する積分、を大きくすることが好ましい。総光学フィールド強度で割ったこの量は、デバイスが吸収することができる光学フィールド強度の百分率であり、少なくとも10%であることが好ましく、少なくとも20%であることがより好ましい。吸収可能な光学フィールド強度の百分率は、たとえば、特定の波長の光の良好な吸収体である材料を選択し、その特定の波長に対する光学フィールド強度が大きい位置にそれらを配置することによって大きくすることができる。吸収可能な光学フィールド強度の百分率を大きくすることにより、光活性領域による吸収が増加し、したがってデバイスの効率が改善されると考えられる。好ましい実施形態では、光学フィールド強度は、太陽スペクトルに基づいている。ピークを整合させることは、上で説明した10%または20%を達成するための唯一の方法ではないことに留意されたい。特定の波長において強力な吸収を有する光活性領域(ピークの有無にかかわらず)を、光学フィールド強度におけるその波長に対する強い値と整合させることは、この目的を達成するためのそのような方法の1つである。上述した積分を計算することによって、デバイスが強い吸収を有するか否かを決定することができる。
【0082】
多くの実施形態の良好な近似である単一反射層については、反射層から光路長λ/4の距離において、特定の波長λに対し、光学フィールド強度に最大値が存在する。したがって、第1の光活性領域250の少なくとも一部は、第1の光活性領域に最も近い反射層の端から約λ1/4±25%の直角光路長に配置され、また、第2の光活性領域230の少なくとも一部は、第2の光活性領域に最も近い反射層の端から約λ2/4±25%の直角光路長に配置されることがさらに好ましい。ここで、λ1およびλ2は、第1および第2の光活性領域が強力な吸収体である波長である。「強力な吸収体」は、多くの方法で定量化することができる。一実施形態では、第2の光活性領域の吸収ピーク(複数)のうちの少なくとも1つの波長は、第1の光活性領域の吸収ピーク(複数)のうちの少なくとも1つの波長よりも長い可能性がある。別の実施形態では、第2の光活性領域の最も高い3つの吸収ピークのうちの少なくとも1つの波長は、第1の光活性領域の最も高い3つの吸収ピークのうちの少なくとも1つの波長より長い可能性がある。25%のマージンは、吸収ピークの波長および近傍のアベレングス(avelength)に対する強い光学フィールド強度と強い吸収との間の大きな重なり合いをなおも保ちつつ、その吸収ピークの波長が光学フィールド強度の極大値からどれだけ離れているかを表す尺度である。より一般的には、単一反射層、かつ、同様の光学フィールド強度プロファイルを有する構成の場合、より短い波長を吸収する材料より、より長い波長を吸収する材料を反射表面から比例的に遠くに配置することが好ましい。ここで、比例定数はλ/nであり、nは積層(スタック)中の材料の屈折率である。nがスタック全体を通して変化する場合、スタックを構成している材料の空間的な重み付けをした平均屈折率を使用することができる。より複雑な光学構成に対しても、当業者は、本開示を利用して、光学フィールド強度の最大値の位置を決定することが可能である。
【0083】
本発明の多くの実施形態について、2つの積層型セル(スタックセル)に関連して説明したが、より多くのスタックセルを使用することができ、また、セルおよびセルに隣接して使用される阻止層の配置に関する概念は、通常、2つより多いセルを有するスタックに適用することができることがわかる。
【0084】
本明細書に使用されているように、また、当業者には理解されるように、「阻止層」という用語は、その層が、電荷担体および/または励起子を必ず完全に阻止することを示唆することなく、デバイスを通っての電荷担体および/または励起子の輸送を顕著に禁止する障壁を提供することを意味している。このような阻止層がデバイスに存在することにより、阻止層を欠いている同様のデバイスと比較した場合、実質的により高い効率をもたらしうる。
【0085】
図3は、非対称有機タンデムセルB(このセルの構造は、図3の最上部に略図で示されている)のカソードからの距離の関数として、λ=450nm(実線)およびλ=650nm(破線)における光学フィールド強度を示している(表1参照)。λ=450nmにおける強度は、反射性Agカソードから約400Åの位置、つまりλ=650nmにおけるピークより約300Å近接した位置でピークに達している。したがって、前面セルを、より短い波長を吸収する材料(1つまたは複数)に富んだセルにし、また、背面セルを、より長い波長を吸収する材料(1つまたは複数)に富んだセルにすることにより、より多くの広域スペクトルを吸収することができる。セルBの場合、背面セルは、前面セルより著しく厚い均質C60層を有しており、図4に示すように、C60吸収領域(λ<550nm)に高い外部量子効率をもたらしている。均質CuPc層および混合層の厚さは、それらの光電流をバランスさせるために両方のサブセルでほぼ同じ厚さではあるが、λ≒650nmにおける光強度は主として前面セルに配置されているので、550nm<λ<750nmにおける量子効率は前面セルに対してより高くすることができる。
【0086】
図4は、セルBの前面セル(破線)および背面セル(実線)の、計算による外部量子効率スペクトルを示している。2つのサブセルからの非対称スペクトル応答は、非対称タンデムセル構造ならびに光干渉によるものである。
【0087】
図5は、暗所および様々な強度の模擬AM1.5G太陽照明の下での非対称有機タンデムセルAの電流密度対電圧(J-F)特性を示している。暗所および様々な強度の模擬AM1.5G太陽照明の下でのタンデムセルAの実験によるJ-V特性が示されている(白ぬき記号)。±1.5Vにおける105〜106の整流比率は、典型的なものである。開放回路電圧は、1sun照明の下でVOC=1.04Vであり、10sunの下では1.2Vに近づく。これは、単一CuPc/C60ハイブリッドPM-HJセルの開放回路電圧の2倍となりうる。実線は、モデル化されたJ-V特性であり、逆バイアス暗電流を除いて実験データと一致している。この場合、生成-再結合電流または熱促進トンネリングは、Jdに大きく寄与しうる。
【0088】
図6は、模擬AM1.5G太陽照明の下での、5%単一CuPc/C60ハイブリッドプレーナ混合ヘテロ接合セルの電力変換効率(ηP)の測定照明強度(Po)依存性(白抜き逆三角形)と比較した、様々な非対称有機タンデムセルの電力変換効率(ηP)の測定照明強度(Po)依存性(A;黒塗り正方形、B;白抜き円、C;黒塗り三角形)を示している。図5に示す実験J-V特性から導き出されたタンデムセルAの電力変換効率(黒塗り正方形)は、Po=0.34sunでηPの最大値=(5.4±0.3)%に達している。より高い強度の照明の下では、混合層が比較的厚いため、FFは減少している(図7参照)。混合層の厚さがより薄いタンデムセルB(白抜き円)は、約11sunの強烈な照明の下でさえ、高いFF=0.56を示している。これにより、P0≧1sunにおいてηP=(5.7±0.3)%が得られ、モデルと一致している。しかしながら、タンデムセルC(黒塗り三角形)は、主として小さいFF≒0.51のために、モデル予測(6.5%)より小さい効率を有している。これは、C60/PTCBI界面における微小なエネルギー障壁が電荷再結合ゾーンへの電子の輸送を妨害していることを示唆している可能性がある。しかしながら、タンデムセルAおよびBの効率は、5%単一CuPc/C60ハイブリッドPM-HJセル(図6に示す白抜き逆三角形)よりも高く、セルを積み重ねることの有効性を立証している。
【0089】
図7は、図6に示すタンデムセルおよび単一ハイブリッドPM-HJセルのフィルファクタ(FF)を示す。より高い強度の照明の下では、混合層の厚さが比較的厚いため、FFは減少している。混合層の厚さがより薄いタンデムセルB(白抜き円)は、約11sunの強烈な照明の下であっても、高いFF=0.56を示している。
【0090】
図8は、代表的な直角光路長815および825を備えたPVデバイス810および820の2つの可能な幾何構造を示している。この直角光路長は、デバイスの表面に対して直角に測定されている。
【0091】
図9は、ITOの上に堆積された様々な混合比のCuPc:C60膜の吸収スペクトルを示している。混合膜中のCuPcの濃度は、100%CuPc(CuPc単一層)910、62%920、40%930、33%940、および21%950である。純粋なCuPc膜は、620nmおよび695nmの波長を中心とする2つのピークを有している。より長い波長のピークは、分子フレンケル励起子の生成によるものであり、一方、より短い波長特性は、CuPc凝集体の形成によるものである。より長い波長のピークは、気相または希薄溶液中で優勢である。図9は、より長い波長のピークの大きさがC60含有量の増加と共に大きくなっていることを示している。したがって、CuPc分子は、C60含有量の増加と共にその凝集する傾向が小さくなることを示している。これは、C60の濃度の増加がCuPcの凝集を抑制し、それによって混合膜中の正孔輸送が減少し、低い担体収集効率をもたらす可能性を示唆している。そのために、CuPc:C60(1:2)混合層PVセルの電力効率(ηP=(2.6±0.1)%、表2参照)が低下することになる。しかしながら、1:1の濃度では、CuPc分子が十分に凝集することで正孔輸送の抵抗が小さくなり、また、対称性がはるかに高いC60分子はまた、電子をカソードに有効に輸送するためのパーコレーション経路を形成することもできる。
【0092】
表1は、3つの有機タンデム光電池の層の厚さ(Å)ならびに1sun AM1.5G太陽照明の下での予測性能パラメータ(短絡電流密度JSC、開放回路電圧VOC、フィルファクタFF、および電力変換効率ηP)を示している。各タンデムセルの電荷再結合ゾーンは、厚さ5ÅのAgナノクラスタ層および5モル%F4-TCNQでドープされた厚さ50Åのm-MTDATAからなっている。
【0093】
表2は、CuPc/C60ハイブリッドPM-HJタンデムPVセルのJ-V特性のモデル化に用いられるパラメータを示している。
【0094】
本明細書において説明されている実施形態は例示的なものにすぎないこと、また、本発明による他の実施形態を使用することも可能であることを理解されたい。たとえば、図に示した層の順序は変更が可能である。たとえば、図1および2において、光活性層すなわち有機領域230と250の位置は、阻止層等を適切に再配置することによって入れ換え可能である。阻止層、電荷再結合層などの追加の層は、追加しても、あるいは追加しなくてもよい。たとえば、阻止層は除去することが可能であり、かつ/または追加の阻止層を存在させることもできる。非光活性領域を存在させることができ、また、非光活性領域を用いて、反射層に対する光活性領域の位置を調整することができる。タンデム太陽電池などの様々な太陽電池構成を使用することができる。上で具体的に説明したものとは異なる材料を使用することもできる。たとえば、すべての電極がITOであるデバイスは、そのデバイスがある程度透明になるように製造することができる。さらに、基板の上にデバイスを製造し、次に、最後に堆積された電極が支持表面に最も近くなるように支持表面に適用することもできる。太陽電池に関連して多くの実施形態を説明したが、光検出器などのD-Aヘテロ接合を有する他のタイプの感光性デバイスには他の実施形態を使用してもよい。
【0095】
本発明の実施形態によって達成される電力効率は、有機太陽電池で達成された従来の効率より高い。これらの結果は、場合によっては本発明の態様のいくつかの特徴間の相互作用によるものであり、特徴には、混合有機光活性層と関連させた非混合有機光活性層の使用が含まれ、層の厚さ及び位置は想定した効率をもつように選択される。本発明の実施形態は、効率が7%〜10%である現在製造中のa-Siセルのものに近い電力変換効率に達することが可能である。本発明の実施形態と矛盾しないデバイスを改善することにより、これまで以上のより高い電力効率を達成することができることが予想される。たとえば、単純な無反射コーティングをガラス基板に施すことにより、効率をさらに10%改善することができ、ここで提案されているタンデムセル構造が7%を超える効率を達成することができることを示唆している。有効なセル構造を達成することはより困難であるが、3つ以上のセルを直列に積み重ねることにより、より多くの光の獲得を助けることができる。非対称タンデムセル構造の究極の利点は、非対称タンデムセル構造が、様々なドナー-アクセプタ材料の組合せを個々のサブセルに組み込み、それによって、現在のCuPc-C60システムよりも広い太陽スペクトル領域をカバーできることである。適切にパッケージ化された有機太陽電池モジュールで高い製造歩留りおよび長い動作寿命が可能であることを条件として、本非対称ハイブリッドPM-HJタンデムセルは、様々なアプリケーションに使用するためのかなりの潜在能力を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0096】
(実施例)
本発明の一実施形態では、有効な光電池が提供される。2つの積層型(スタック)ハイブリッドプレーナ混合ヘテロ接合セルを備えたセルを、透明伝導性ITOをプリコートしたガラス基板の上に作製した。このデバイスは、ITO/75Å CuPc/122Å CuPc:C60(重量で1.2:1)/80Å C60/50Å PTCBI/5Å Ag/50Å m-MTDATA:F4-TCNQ/60Å CuPc/132Å CuPc:C60(重量で1.2:1)/160Å C60/75Å BCP/Agの構造を有している。カソードから遠く離れたセルはCuPcが若干多く、550nmから750nmまでのスペクトル領域で吸収をしている。一方、カソードにより近いセルはC60が多く、350nmから550nmまでのスペクトル領域で吸収をしている。1ないし4sun模擬AM1.5G太陽照明の下で(5.6±0.3)%の最大電力効率が、測定された。
【0097】
有機ハイブリッドプレーナ混合ヘテロ接合光電池を、シート抵抗が15Ω/sqの厚さ〜1500Åの透明伝導性ITOアノードがプリコートされたガラス基板の上に作製した。この基板は、溶媒中で洗浄し、引き続いて5分間、UVオゾン処理した。有機層および金属カソードは、ベース圧力が〜2×10-7トール(Torr)の高真空チャンバ内での熱蒸着によって蒸着した。厚さdDが〜50Å〜200ÅのCuPc層、厚さdmが〜0Å〜300ÅのCuPc:C60(重量で1:1)のコブデポジテッド層、および厚さdAが〜250Å〜400ÅのC60層をITOアノード上に順次蒸着し、続いて厚さ100ÅのBCP励起子阻止層を蒸着した。最後に、厚さ1000ÅのAgカソードを、直径1mmの開口部を備えたシャドーマスクを通して蒸着した。
【0098】
暗所、及び150W Xeアークランプ(Oriel Instruments)からの模擬AM1.5G太陽照明の下でのPVセルの25℃における電流-電圧特性を、HP 4155B半導体パラメータアナライザを使用して測定した。照明強度は、ニュートラル・デンシティ・フィルタを使用して変化させ、較正済みの広帯域光パワーメータ(Oriel Instruments)を使用して測定した。
【0099】
特定の実施例および好ましい実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、これらの実施例および実施形態に制限されないことを理解されたい。したがって特許請求する本発明には、当業者には明らかなように、本明細書において説明した特定の実施例および好ましい実施形態からの変形形態が包含される。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、アノード、アノード平坦化層、ドナー層、アクセプタ層、阻止層、およびカソードを備えた有機PVデバイスを示す図である。
【図2】図2は、2つのセルを直列に積み重ねることによって形成された有機タンデムデバイスを示す図である。
【図3】図3は、非対称有機タンデムセルB(このセルの構造は、図3の最上部に略図で示されている)のカソードからの距離の関数として、λ=450nm(実線)およびλ=650(破線)における光学フィールド強度を示すグラフである(表1参照)。
【図4】図4は、セルBの前面セル(破線)および背面セル(実線)に対して計算した外部量子効率スペクトルを示すグラフである。
【図5】図5は、暗所及び様々な強度の模擬AM1.5G太陽照明の下での、非対称有機タンデムセルAの電流密度対電圧(J-V)特性を示すグラフである。
【図6】図6は、5%単一CuPc/C60ハイブリッド平面混合ヘテロ接合セル(白ぬきの逆三角形)のものと比較した、模擬AM1.5G太陽照明の下での非対称有機タンデムセルの電力変換効率(ηp)の照明強度(Po)依存性(A:黒塗り正方形、B:白抜き円、C:黒塗り三角形)を示すグラフである。
【図7】図7は、図6に示したタンデムセルおよび単一ハイブリッドPM-HJセルのフィルファクタ(FF)を示すグラフである。
【図8】図8は、代表的な直角光路長をもつPVデバイスの2つの可能な幾何構造を示す図である。
【図9】図9は、ITOの上に堆積させた様々な混合比のCuPc:C60膜の吸収スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0101】
100 有機感光性光電子デバイス
110、210 基板
115 アノード
120 アノード平坦化層
125 ドナー層
130 アクセプタ層
135 阻止層
140 カソード
200 有機光活性デバイス(有機セル)
220、260 電極
230 第1の有機光活性領域
231 第1の有機層(アクセプタ層)
232 第2の有機層(混合有機層)
233 第3の有機層(ドナー層)
234 第1の励起子阻止層
240 介在層
241 ナノ粒子
250 第2の光活性領域
251 アクセプタ層
252 混合有機層
253 ドナー層
253 有機アクセプタ層
254 第2の励起子阻止層(励起子阻止材料)
810、820 PVデバイス
815、825 直角光路長
910 100%CuPc(CuPc単一層)
920 62%CuPc
930 40%CuPc
940 33%CuPc
950 21%CuPc

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードの間に配置され且つそれらに電気接続された複数の積層型有機光活性領域であって、各有機光活性領域が有機アクセプタ材料および有機ドナー材料を含む、複数の積層型有機光活性領域と、
各有機光活性領域の前記有機アクセプタ材料に隣接し且つ前記有機アクセプタ材料と物理的に直接接触して配置された励起子阻止層と
を含むデバイスであって、
前記カソードに最も近い励起子阻止層以外の各励起子阻止層のLUMOが、前記アクセプタ材料のLUMOよりも最大でも約0.3eV大きいだけであるデバイス。
【請求項2】
各光活性領域が、
有機アクセプタ材料と有機ドナー材料の混合物を含む第1の有機層と、
前記第1の有機層と直接接触している第2の有機層であって、前記第1の有機層の有機ドナー材料の非混合層を含む第2の有機層と、
前記第1の有機層と直接接触している第3の有機層であって、前記第1の有機層の有機アクセプタ材料の非混合層を含む第3の有機層と
をさらに含み、
前記励起子阻止層が、前記第3の有機層に隣接し且つ前記第3の有機層と物理的に直接接触して配置された、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
各光活性領域が、
有機アクセプタ材料と有機ドナー材料の混合物を含む第1の有機層と、
前記第1の有機層と直接接触している第2の有機層であって、前記第1の有機層の有機ドナー材料の非混合層を含む第2の有機層と
をさらに含み、前記励起子阻止層が、前記第1の有機層に隣接し且つ前記第1の有機層と物理的に直接接触して配置された、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
各光活性領域が、
有機アクセプタ材料と有機ドナー材料の混合物を含む第1の有機層と、
前記第1の有機層と直接接触している第2の有機層であって、前記第1の有機層の有機アクセプタ材料の非混合層を含む第2の有機層と
からなり、前記励起子阻止層が、前記第2の有機層に隣接し且つ前記第2の有機層と物理的に直接接触して配置された、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
各光活性領域が、
前記アクセプタ・ドナー材料の非混合層を含む第1の有機層と、
前記有機ドナー材料の非混合層を含み、前記第1の有機層と直接接触している第2の有機層と
をさらに含み、前記励起子阻止層が、前記第1の有機層に隣接し且つ前記第1の有機層と物理的に直接接触して配置された、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
各光活性領域が、
有機アクセプタ材料と有機ドナー材料の混合物を含む第1の有機層からなり、
前記励起子阻止層が、前記第1の有機層に隣接し且つ前記第1の有機層と物理的に直接接触して配置された、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
積層型有機光活性領域の隣接する各対の間に配置され、且つ前記各対に電気的に接続された電荷再結合ゾーンをさらに備えた、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記カソードに最も近い前記励起子阻止層の材料がBCPを含み、その他のすべての励起子阻止層の材料がPTCBIを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記電荷再結合ゾーンが、ナノ粒子がその中に分散されているp-ドープ有機材料の層を含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記p-ドープ有機材料が、F4-TCNQでドープされたm-MTDATAである、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記p-ドープ有機材料が、PTCDAでドープされたBTQBTである、請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
各有機光活性領域の前記有機ドナー材料がCuPcであり、且つ各有機光活性領域の前記有機アクセプタ材料がC60である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記カソードに最も近い前記励起子阻止材料のLUMOが、隣接するアクセプタ材料のLUMOより最大でも約0.3eV大きいだけである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記カソードに最も近い前記励起子阻止材料のLUMOが、隣接するアクセプタ材料のLUMOよりも約0.3eVより大きい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記有機アクセプタ材料が、フラーレン、ペリレン、カタ縮合共役分子系、ピレン、コロネン、およびそれらの官能化誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記有機ドナー材料が、金属含有ポルフィリン類、金属非含有ポルフィリン類、ルブレン、金属含有フタロシアニン類、金属非含有フタロシアニン類、ジアミン類、およびナフタロシアニン類を含めたそれらの官能化誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記デバイスが光起電性デバイスである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記デバイスが光検出器である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記カタ縮合共役分子系が線状ポリアセン類を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項20】
前記複数の積み重ねられた有機光活性領域が、
第1の有機アクセプタ材料および第1の有機ドナー材料を含む第1の有機光活性領域と、
第2の有機アクセプタ材料および第2の有機ドナー材料を含む第2の有機光活性領域と
を含み、
前記第1の有機アクセプタ材料、前記第1の有機ドナー材料、前記第2の有機アクセプタ材料、および第2の有機ドナー材料が異なる材料である、請求項1に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−509559(P2008−509559A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524923(P2007−524923)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/027478
【国際公開番号】WO2006/017530
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(591003552)ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ (68)
【Fターム(参考)】